(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】ツリーテント
(51)【国際特許分類】
E04H 15/04 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
E04H15/04
(21)【出願番号】P 2019180026
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】397019139
【氏名又は名称】上田技研産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 全宏
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-033158(JP,U)
【文献】米国特許第04056902(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0017250(US,A1)
【文献】実開平05-077468(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 15/04,15/56
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木の幹の上下方向途中部に設置可能なテントであって、
平面視において略中央部に前記樹木の幹が挿通可能な開口部を有し、略水平に支持される
組み立て可能な床と、
前記床よりも上方で樹木に取り付けられる上部固定部材と、
前記床の周縁に所定間隔で取り付けられる複数個の接続部材と、
前記複数個の接続部材と前記上部固定部材との間に張設され、前記樹木の幹の上下方向途中部に前記床を支持する複数本の第1紐状部材と、
前記複数個の接続部材又は前記上部固定部材に取り付けられ、前記複数本の第1紐状部材の巻き取り及び巻き出しを行う複数個のウインチと、
を備え
、
前記床は組み立てられた後、前記複数個のウインチで樹木の幹の所望高さの設置位置まで吊り上げられる
ことを特徴とするツリーテント。
【請求項2】
前記床よりも下方で樹木に取り付けられる下部固定部材と、
前記複数個の接続部材と前記下部固定部材との間に張設される第2紐状部材をさらに備える請求項1に記載のツリーテント。
【請求項3】
前記床が、複数本の棒状部材が組み合わされた枠体と、前記枠体上に設置された床板とを有し、
前記複数本の棒状部材は前記接続部材によって組み合わされる請求項1
又は2に記載のツリーテント。
【請求項4】
樹木の幹の上下方向途中部に設置可能なテントであって、
平面視において略中央部に前記樹木の幹が挿通可能な開口部を有し、略水平に支持される床と、
前記床よりも上方で樹木に取り付けられる上部固定部材と、
前記床の周縁に所定間隔で取り付けられる複数個の接続部材と、
前記複数個の接続部材と前記上部固定部材との間に張設され、前記樹木の幹の上下方向途中部に前記床を支持する複数本の第1紐状部材と、
を備え
、
前記床が、複数本の棒状部材が組み合わされた枠体と、前記枠体上に設置された床板とを有し、
前記接続部材が2本の棒状部材を組み合わせ可能であって、一方の棒状部材が挿通可能な第1空間と、他方の棒状部材の端部が挿入可能な第2空間とを有し、第1空間の棒状部材の挿通方向中央部に、第2空間の棒状部材の挿通方向端部が連通することを特徴とするツリーテント。
【請求項5】
前記第1空間は、第1空間を形作る仕切り壁に第1貫通孔を有し、
前記一方の棒状部材に形成された第1係止孔と第1貫通孔が同軸上となるように、前記一方の棒状部材が第1空間に挿通され、第1貫通孔及び第1係止孔に棒状の係止具が挿通されることによって前記一方の棒状部材が第1空間に接続固定される請求項
4に記載のツリーテント。
【請求項6】
第2空間は、第2空間を形作る対向する一対の仕切り壁の対応する位置に第2貫通孔を有し、
前記他方の棒状部材の端部に形成された第2係止孔と第2貫通孔が同軸上となるように、前記他方の棒状部材が第2空間に挿入され、第2貫通孔及び第2係止孔に棒状の係止具が挿通されることによって前記他方の棒状部材が第2空間に接続固定される請求項
4又は5に記載のツリーテント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はツリーテントに関し、より詳細には樹木の幹の上下方向途中部に設置可能なテントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでキャンプ場などに設営されるテントは地上に設置されるものが大半であった。このような従来の地上に設置されるテントでは地表の起伏の影響を受け、例えば傾斜地にテントを設営する場合、テントの床面を水平に設置することは難しく床面は不可避的に傾斜していた。また地上に設置されるテントでは、野生動物などに襲われる危険性があった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1,2では、樹木の幹の上下方向途中部に設けるテントが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平3-33158号公報
【文献】実開平5-77468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記提案のテントは、樹木の幹の外周側部に設置されるものであり、平面視において樹木の中心位置とテントの重心位置との距離が離れているのでテントの設置状態が不安定で、テントに人が載った場合にテントに樹木を中心として回転力が生じるおそれがある。また、樹木の軸方向(上下方向)に対して交差する方向にテントの重さが加わるので、細い幹の樹木であると幹が撓むあるいは折れるおそれがある。そしてまた、テントを設営する樹木の高さ位置においてテントを組立てる必要があると考えられ、テントの設営作業に労力を要し危険も伴うと考えられる。
【0006】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹木の幹の上下方向途中部に設営するツリーテントにおいて、少ない労力と最小限の高所作業で組立可能で、床面を水平状態に安定して維持できるツリーテントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成する本発明に係るツリーテントは、樹木の幹の上下方向途中部に設置可能であって、平面視において略中央部に前記樹木の幹が挿通可能な開口部を有し、略水平に支持される床と、前記床よりも上方で樹木に取り付けられる上部固定部材と、前記床の周縁に所定間隔で取り付けられる複数個の接続部材と、前記複数個の接続部材と前記上部固定部材との間に張設され、前記樹木の幹の上下方向途中部に前記床を支持する複数本の第1紐状部材とを備えることを特徴とする。
【0008】
前記構成のツリーテントにおいて、前記複数個の接続部材又は前記上部固定部材に取り付けられ、前記複数本の第1紐状部材の巻き取り及び巻き出しを行う複数個のウインチをさらに備える構成とするのが好ましい。
【0009】
また前記構成のツリーテントにおいて、前記床よりも下方で樹木に取り付けられる下部固定部材と、前記複数個の接続部材と前記下部固定部材との間に張設される第2紐状部材をさらに備える構成とするのが好ましい。
【0010】
また前記構成のツリーテントにおいて、前記床が、複数本の棒状部材が組み合わされた枠体と、前記枠体上に設置された床板とを有し、前記複数本の棒状部材は前記接続部材によって組み合わされる構成としてもよい。
【0011】
また前記構成のツリーテントにおいて、前記接続部材が2本の棒状部材を組み合わせ可能であって、一方の棒状部材が挿通可能な第1空間と、他方の棒状部材の端部が挿入可能な第2空間とを有し、第1空間の棒状部材の挿通方向中央部に、第2空間の棒状部材の挿通方向端部が連通する構成としてもよい。
【0012】
また前記構成のツリーテントにおいて、前記第1空間は、第1空間を形作る仕切り壁に第1貫通孔を有し、前記一方の棒状部材に形成された第1係止孔と第1貫通孔が同軸上となるように、前記一方の棒状部材が第1空間に挿通され、第1貫通孔及び第1係止孔に棒状の係止具が挿通されることによって前記一方の棒状部材が第1空間に接続固定される構成としてもよい。
【0013】
また前記構成のツリーテントにおいて、第2空間は、第2空間を形作る対向する一対の仕切り壁の対応する位置に第2貫通孔を有し、前記他方の棒状部材の端部に形成された第2係止孔と第2貫通孔が同軸上となるように、前記他方の棒状部材が第2空間に挿入され、第2貫通孔及び第2係止孔に棒状の係止具が挿通されることによって前記他方の棒状部材が第2空間に接続固定される構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のツリーテントは、平面視において床の略中央部に形成された開口部を樹木の幹が挿通するように設置されるので、従来のツリーテントに比べて水平安定性に優れる。また、テントの重さは樹木の略軸方向(上下方向)に加わるので樹木の幹が撓むあるいは折れるおそれが抑えられる。
【0015】
また、複数個のウインチを備えると、地上で床を組み立てた後、樹木の幹の所望高さまで床を吊り上げることが可能となり高所での組み立て作業が最小限に抑えられる。
【0016】
そしてまた、床よりも下方で樹木に取り付けられた下部固定部材と前記複数個の接続部材との間に第2紐状部材が張設されると、ツリーテントがさらに安定して水平維持される。
【0017】
前記接続部材によって枠体を構成する棒状部材が組み合わせ可能であると、ツリーテントの構成部品数を減少させることができると共に組立作業も簡便になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るツリーテントの一実施形態を示す正面全体図である。
【
図5】接続部材による棒状部材と棒状部材の組み立て斜視図である。
【
図6】接続部材による棒状部材と棒状部材の組み立て斜視図である。
【
図7】接続部材による棒状部材と棒状部材の組み立て斜視図である。
【
図8】接続部材による棒状部材と棒状部材の組み立て斜視図である。
【
図9】接続部材へのウインチの取り付け状態を示す斜視図である。
【
図10】接続部材へのワイヤーの取り付け状態を示す斜視図である。
【
図11】上部固定部材及び下部固定部材の一例を示す水平断面図である。
【
図12】上部固定部材及び下部固定部材の他の例を示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るツリーテントについて図に基づいて詳述するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。また、本明細書における「上下方向」、「左右方向」、「前後方向」は各図における「上下方向」、「左右方向」、「前後方向」を意味するものとする。
【0020】
図1は本発明に係るツリーテント(以下、単に「テント」と記すことがある。)の一実施形態を示す正面全体図である。なお、
図1ではテントTの骨組み等が分かり易くなるためにテント布地TFは破線で示している。また、テント布地TFの樹木を中心として左右対称に描かれた2つの台形状の破線はテント布地TFに設けられた窓部Wであって透光性部材からなる。
【0021】
図1に示すテントTは、平面視において四角形状の床1と、床1よりも上方で樹木の幹に取り付けられた上部固定部材2と、床1よりも下方で樹木の幹Stに取り付けられた下部固定部材3と、一方端がフックF1によって上部固定部材2のリング22に固定され、他方端がウインチ6を介して床1の四隅に取り付けられた接続部材4に固定された、幹Stの途中部に床1を支持する4本のロープ(第1紐状部材)51と、一方端が下部固定部材3のリング32に固定され、他方端がターンバックル7を介して床1の四隅に取り付けられた接続部材4のフック45に固定された4本のワイヤー(第2紐状部材)52とを有する。
【0022】
(床の構成)
床1は、枠体11と、枠体11上に設置される床板12とを有する。
図2に枠体11の平面図、
図3に床板12の平面図をそれぞれ示す。枠体11は、平面視において四角形状を有し、断面四角形の棒状部材が6本組み合わされてなる。具体的には、枠体11は、長手方向が前後方向で左右方向に所定距離隔てて対向配置された一対の棒状部材111a,111bと、長手方向が左右方向で一対の棒状部材111a,111b間に前後方向に所定間隔で配置された4本の棒状部材111c~111fとを有する。棒状部材111a~111f(以下、総称して「棒状部材111」と記すことがある。)の連結は、後述の接続部材4によってなされる。なお、一対の棒状部材111a,111bの左右方向の間隔及び棒状部材111dと棒状部材111eとの前後方向の間隔は、テントTが取り付けられる樹木の幹Stの外径よりも大きく設定されている。また、本実施形態では棒状部材111として角材を使用しているが、本発明の効果を発揮できる所定の強度を有する限りにおいて丸材やパイプ材など従来の公知の棒状部材であっても構わない。なお、枠体11の組立ては、樹木の幹Stが棒状部材111a,111b,111d,111eとで囲まれた領域に位置する状態で行われる。
【0023】
図3に示すように、床板12は、平面視において枠体11の外形よりも若干小さいか略同一の四角形状を有し、四隅には、ウインチ6を接続部材4の上板部41に取り付け可能とするための四角形状の切欠き121が形成されている。床体12の略中央部には樹木の幹Stが挿通可能な円形状の開口部122が形成されている。なお、開口部122の大きさはテントTが設けられる樹木の幹Stの太さや形状などを考慮して適宜決定される。
【0024】
床体12の下面には、床体12を枠体11に取り付ける際に位置決め及び床板補強のための凸条のリブ123a,123b,123cが設けられている。具体的には、リブ123a,123bは、床体12の左右方向両端縁から棒状部材111の厚み分内方に位置し、接続部材4に干渉しないよう接続部材4に対応する部分は所定間隔を空けて直線状に設けられている。またリブ123cは左右方向中央部に開口部122を挟んで前後方向に直線状に設けられている。床体12は枠体11上にリブ123a,123b,123cによって位置決めされ載置される。そして、必要により床体12は枠体11に釘などによって固定される。
【0025】
なお、樹木の幹Stが床体12の開口部122に位置するようにするため、床体12は少なくとも2つに分割可能であるか、床体12の縁端から開口部122に至る、幹Stが挿通可能な切り欠きを有する。そして、床体12の開口部122に樹木の幹Stが位置した後は、分割された床体12は接合され、切り欠き部は床体12と同一の板材などで封鎖される。
【0026】
(接続部材)
図4に、接続部材4の一例を示す斜視図を示す。この図に示す接続部材4は、鋼板などでよい高い剛性の板材を屈曲又は接合してなる。具体的には、矩形状の上板部41と下板部42とが上下方向に離隔して平行に位置し、上板部41の右側端部と下板部42の右側端部とが側板部(仕切り壁)43で接合され、前面視において「コ」字状をしている。そして、上板部41の下面と下板部42の上面との間に、前後方向中央部で左右方向に延出する互いに平行な一対の矩形状の仕切り板(仕切り壁)44a,44bが接合されている。一対の仕切り板44a,44bの左縁端は上板部41と下板部42の左縁端と同一平面上に位置し、一対の仕切り板44a,44bの右縁端は、側板部43の内面から棒状部材111の左右方向厚みよりも若干広く隔てて位置している。
【0027】
上板部41及び下板部42には、左側部の前後方向両側部に貫通孔411a,411b及び貫通孔421a,421bが形成され、左右方向略中央で前後方向両側部に貫通孔411c,411d及び貫通孔421c,421d(
図4において貫通孔421cは不図示)が形成されている。また側板部43には上下方向中央部に前後方向に長い2つの長孔431a,431b(
図4において長孔431bは不図示)が前後方向に所定距離隔てて形成されている。一対の仕切り板44a,44bの各々には、上下方向中央部に左右方向に長い2つの長孔441a,441b、長孔441c,441d(
図4において長孔441dは不図示)が左右方向に所定距離隔てて形成されている。
【0028】
(枠体の組立)
このような構造の接続部材4は2本の棒状部材111を接続可能である。すなわち、上板部41と、下板部42と、側板部43と、一対の仕切り板44a,44bの右縁端とによって一方の棒状部材111が挿通可能な第1空間91が規定され、上板部41と、下板部42と、一対の仕切り板44a,44bとによって他方の棒状部材111が挿通可能な第2空間92が規定される。換言すると、第1空間91の前後方向中央部に第2空間92の左右方向の右端部が連通する。
【0029】
図5~
図8に、接続部材4によって棒状部材111bと棒状部材111fとが接続される組み立て斜視図を示す。まず
図5及び
図6に棒状部材111bが接続部材4に固定される手順を示す。前後方向両端部に前後方向に所定間隔で2つの貫通孔(第1係止孔)112が形成された棒状部材111bの前端が、接続部材4の第1空間91の後側から前側に向って挿通される。そして、接続部材4の側板部43の長孔431a,431bと棒状部材111bの貫通孔112とが前後方向に重なるように棒状部材111bが接続部材4に対して位置決めされる。次いで、
図6に示すように、2本のピン(係止具)P1が長孔431a,431b及び貫通孔112に挿入され棒状部材111bは接続部材4に固定される。なお、係止具としてピンP1に換えてボルトを使用し、棒状部材111bの貫通孔112から突出したボルトの先端部にナットを螺合するようにしてもよい。この場合棒状部材111bの接続部材4への固定が不用意に外れるおそれがない。以下、ピンを用いた固定箇所には同様にボルトとナットによる固定を採用することができる。
【0030】
次に、棒状部材111bが固定された接続部材4に棒状部材111fを固定する。
図7及び
図8に棒状部材111fが接続部材4に固定される手順を示す。左右方向両端部に左右方向に所定間隔で2つの貫通孔113が形成された棒状部材111fの右端が、接続部材4の第2空間92の左側から右側に向って挿入される。そして、棒状部材111fの右端が棒状部材111bの途中部に当接することによって位置決めがなされ、接続部材4の一対の仕切り板44a,44bの長孔441a,441b及び長孔441c,441dと棒状部材111fの貫通孔113とが左右方向に重なる。次いで、
図8に示すように、2本のピンP2が長孔441a,441b及び長孔441c,441dと貫通孔113に挿入され棒状部材111fは接続部材4に固定される。
【0031】
このような接続部材4による2本の棒状部材111の接続を繰り返すことによって
図2に示す床1の枠体11が組み立てられる。なお、枠体11の組立は、樹木の幹Stが棒状部材111a,111bと棒状部材111d,111eとの間に位置するように地上において組み立てられる。
【0032】
(ウインチ)
平面視において矩形状の枠体11の四隅に位置する接続部材4の上板部41には手動式のウインチ6が取り付けられている。ウインチ6は従来公知の市販品を用いることができ、上板部41に形成された貫通孔411b、411cにボルトとナットとによって固定される。ウインチ6のドラムに巻き付けられたロープ51の先端にはフックF1(
図1に図示)が取り付けられており、ウインチ6のドラムから巻き出されたロープ先端のフックF1(
図1に図示)は、樹木の幹Stの床1よりも上方位置に取り付け固定された上部固定部材2のリング22(
図11に図示)に接続される。ウインチ6はラチェット(メカニカルブレーキ、不図示)を備えており、ハンドル61を回すことによってロープ51の巻き取りは自由であるが巻き出しはラチェットを解除しない限り不可とされる。なお、ウインチ6の取付位置は四隅の接続部材4に限定されるものではなく、枠体11の周縁に所定間隔で取り付けられている他の接続部材4にも取り付けてもよい。
【0033】
(上部固定部材2及び下部固定部材3)
上部固定部材2と下部固定部材3とは同じ構造を有しているので、ここでは代表して上部固定部材2について説明する。
図11に上部固定部材2が樹木の幹Stに取り付けられた状態図を示す。上部固定部材2は、上下方向に所定幅を有し、平面視において半円状をなし、長手方向両端に外方に突出したフランジ部211を有する一対の半円状部材21a,21bを備え、フランジ部211の各々には前後方向に貫通する貫通孔(不図示)が形成されている。上部固定部材2の樹木の幹Stへの固定は、一対の半円状部材21a,21bが幹Stを挟み込むように配置され、対向位置したフランジ部211の貫通孔(不図示)にボルトBが挿通され、フランジ部211から突出するボルトBの先端にナットNが螺合され締め付けられることによって行われる。一対の半円状部材21a,21bの外周面には周方向所定間隔(
図11では90度間隔)でロープ51を固定するための4つのリング22が取り付けられており、後述するように、このリング22にウインチ6から巻き出されたロープ先端のフックF1(
図1に図示)が接続される。なお、一対の半円状部材21a,21bの内径及び形状は上部固定部材2が取り付けられる樹木の幹Stの太さ及び形状に合わせて適宜決定される。
【0034】
ところで、樹木の幹Stの最も外側の外樹皮のすぐ内側にある内樹皮は葉で生産された養分を根や木全体へと運ぶ役割を奏し、その内側に存在する形成層では細胞分裂が生じ木が年々太くなっていく。したがって、
図11に示すような、樹木の幹Stの外周を上部固定部材2や下部固定部材3で締め付けることは樹木にとっては本来好ましいことでない。そこで、幹Stに貫通孔を形成して上部固定部材2や下部固定部材3を幹Stに固定するようにしてもよい。
図12に、上部固定部材及び下部固定部材の他の例を示す。
【0035】
この図に示す上部固定部材2aは、幹Stの直径よりも若干長く、軸方向両端部に雌ネジ穴が形成された2本のロッド25a,25bを有する。これらのロッド25a,25bは、樹木の幹Stの直径方向に上下方向に間隔を空けて交差するように(
図12では直交するように)穿設された2つの貫通孔26の各々に挿通された後、ロッド25a,25bの軸方向両端部の雌ネジ穴にリングボルト27がそれぞれ取り付けられる。そして、これらのリングボルト27のリング部にロープ先端のフックF1が接続される。
【0036】
(テントの設営)
まず、テントTを設営する樹木の幹Stが中央に位置する状態で棒状部材111と接続部材4とから構成される床1の枠体11が地上において組み立てられる。そして作製された枠体11上に床体12が設置され固定される。また一方でテントTを設営する樹木の幹Stの所定高さ位置に上部固定部材2が固定される。次に、枠体11の四隅に位置する接続部材4の上板部41にウインチ6が取り付けられる。そして、ウインチ6からロープ51が巻き出されてロープ先端のフックF1が上部固定部材2のリング22に係止される。その後、ウインチ6のハンドル61が回されロープ51が巻き取られて所定高さまで床1が上昇する。このとき、床1の四隅に配置された4つのウインチ6によってロープ51が所定長さづつ順番に繰り返し巻き取られることで、大きく傾かせることなく徐々に床1を上昇させてもよいし、あるいはウインチ6ごとにロープ51が一気に巻き取られ床1を所定高さとなるまで吊り上げてもよい。ただし、ウインチ6によって床1が所定高さまで吊り上げられたとき、床1が水平となるように各ウインチ6のロープ51の巻き取り量は調整される。これにより、
図1に示すように、設営地が傾斜地であっても床1は水平状態とすることが可能となる。
【0037】
次に、所定高さまで吊り上げられた床1よりも下方位置で樹木の幹Stに下部固定部材3が固定される。なお、下部固定部材3が固定された状態で幹Stが床1の開口部122を挿通可能である場合、床1が吊り上げられる前、例えば上部固定部材2が幹Stに固定される時に下部固定部材3も幹Stに固定されるようにしてもよい。そして、
図1に示すように、枠体11の四隅に位置する接続部材4の下板部42にフック45(
図10に図示)が取り付けられ、下部固定部材3のリング32と接続部材4のフック45との間にターンバックル7を介してワイヤー(第2紐状部材)52が張設される。具体的には下部固定部材3のリング32にワイヤー52の一方端のフックが接続され、ワイヤー52の他方端のフックがターンバックル7の一方のフック73に接続される。そして、
図10に示すように、ターンバックル7の他方のフック72は接続部材4に固定されたフック45に接続される。ワイヤー52の張力はターンバックル7の胴部71(
図10に図示)を回転させることによって調整可能である。
【0038】
以上説明した実施形態では、接続部材4は棒状部材111の組立てにも用いられていたが、単に上部固定部材2や下部固定部材3と床1とをロープ51やワイヤー52で接続する目的で使用する形態であってもよい。
【0039】
また、下部固定部材3を設けて床1の四隅に設けられた接続部材4と下部固定部材3とがワイヤー52で接続されているが、上部固定部材2によるロープ51での吊り下げだけで床1が安定保持される場合には下部固定部材3は特段設けなくてもよい。ただし、通常は安全性の観点などから下部固定部材3を設けて接続部材4とワイヤー52等で接続しておくのが望ましい。
【0040】
また平面視における床1の形状は矩形状に限定されるものではなく、多角形状や円形状であっても構わない。
【0041】
本発明に係るテントへの入退出は、例えば床1の外縁端と地面との間に梯子を設置して行うことができる。この場合、床1の外周縁と上部固定部材2との間を覆うように取り付けられる四角錐状のテント布地TFに入退出用の開口を設ける必要がある。当該開口は不使用時はファスナー等により封鎖可能であるのが望ましい。あるいは、床1に開口を設けて開口と地面との間に梯子を設置して入退出を行えるようにしてもよい。この場合も当該開口は不使用時は扉等により封鎖可能であるのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のツリーテントでは平面視において床の略中央部に形成された開口部を樹木の幹が挿通するように設置されるので、従来のツリーテントに比べて水平安定性に優れ、また、テントの重さが樹木の軸方向(上下方向)に加わるので樹木の幹が撓むあるいは折れるおそれが抑えられ有用である。
【符号の説明】
【0043】
T ツリーテント
1 床
2 上部固定部材
3 下部固定部材
4 接続部材
6 ウインチ
11 枠体
12 床板
43 側板部(仕切り壁)
44a,44b 仕切り板(仕切り壁)
51 ロープ(第1紐状部材)
52 ワイヤー(第2紐状部材)
91 第1空間
92 第2空間
P1,P2 ピン(係止具)
St 幹
TF テント布地
111 棒状部材
112 貫通孔(第1係止孔)
113 貫通孔(第2係止孔)
122 開口部
431a,431b 長孔(第1貫通孔)
441a,441b,441c,441d 長孔(第2貫通孔)