(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】構造物の目地止水継手
(51)【国際特許分類】
E03F 3/04 20060101AFI20230714BHJP
E04B 1/684 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
E03F3/04 Z
E04B1/684 A
(21)【出願番号】P 2020012150
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000196624
【氏名又は名称】西武ポリマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(72)【発明者】
【氏名】小柳 友哉
(72)【発明者】
【氏名】森田 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】辻 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥村 宏敬
(72)【発明者】
【氏名】福田 興士
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 勲
(72)【発明者】
【氏名】津田 剛男
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-144438(JP,A)
【文献】特開2005-133453(JP,A)
【文献】特開2006-257712(JP,A)
【文献】特開2014-214585(JP,A)
【文献】特開2006-233743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 3/04
E04B 1/684
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の目地部が交差する目地交差部を止水する構造物の目地止水継手であって、
前記目地部の長さ方向に沿って延び前記目地部の直交方向に伸縮する第1の伸縮部と、前記第1の伸縮部の両側に配置される平板状の前記構造物への第1の固定部とを備える第1の止水部材と、
前記第1の止水部材が前記目地部の形状に対応して前記目地交差部を囲む交差領域部に配置され、前記交差領域部の中心部に環状に配置されて伸縮する環状伸縮部と、前記交差領域部の隣接する前記第1の止水部材の間に配置されて伸縮する第2の伸縮部と、前記第2の伸縮部の外側に配置される平板状の前記構造物への第2の固定部と、を備える第2の止水部材と、を有し、
前記第1の止水部材と前記第2の止水部材とが前記目地部の形状に対応する形状に一体に形成され、前記交差領域部で交差する前記第1の止水部材の隣接する前記第1の伸縮部と前記第2の伸縮部とが連続し、前記第1の止水部材の隣接する前記第1の固定部と前記第2の固定部とが連続している、
ことを特徴とする構造物の目地止水継手。
【請求項2】
前記交差領域部は、前記目地交差部の外側を囲む略八角形状に形成されて構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の構造物の目地止水継手。
【請求項3】
前記交差領域部の前記環状伸縮部は、前記目地交差部の前記目地部に頂部を備える略四角形状、または前記交差領域部の前記中心部を中心とする略円形状に形成されて構成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の構造物の目地止水継手。
【請求項4】
前記構造物の前記目地部が十字状に交差する部分には、4方向の前記第1の止水部材と前記交差領域部の前記第2の止水部材とが前記目地部の形状に対応して一体的に形成されて構成される、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の構造物の目地止水継手。
【請求項5】
前記構造物の前記目地部がT字状に交差する部分には、前記交差領域部の一方向の前記第1の伸縮部の端部が閉塞されて外側に第3の固定部が形成され、他の3方向の前記第1の止水部材と前記交差領域部の前記第2の止水部材とが前記目地部の形状に対応して一体的に形成されて構成される、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の構造物の目地止水継手。
【請求項6】
前記交差領域部には、前記目地部に交差して外側を覆う補強部材を備えて構成される、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の構造物の目地止水継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の目地止水継手に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の目地部を止水する必要がある場合の1つに沈殿池や調整池等の水槽・管廊部等のコンクリート構造物の目地部がある。構造物の目地部は、例えば十字状やT字状に交差して形成される場合があり、目地交差部の変位を許容しつつ止水するため目地止水継手が用いられている。
【0003】
コンクリート構造物の十字状の目地部分に用いられる目地止水継手としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。この目地止水継手は、目地の長さ方向に沿って延び、目地の直交方向の断面形状が波形とされた伸縮部を備えたゴムシートを目地交差部で先端部を突き合わせて十字状に形成されて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この目地止水継手では、構造物が地震などのため変位する場合、目地交差部以外の十字状の直線部分では、目地の直交方向への変位が生じたとしても伸縮部の変位によって許容変位量の範囲で変位が可能である。ところが、目地交差部では、直交する2つの方向の変位が組み合わさり複合変位となって直線部の変位に比べ大きな変位が生じることになり、直線部分を突き合わせた目地止水継手では、目地交差部の複合変位が許容変位量を越えてしまう場合がある。
このため、目地交差部の複合変位に対応できる目地止水継手が必要となり、直線部分の許容変位量が大きいものを使用しなければならず、直線部分の幅が広くなるとともに、直線部分に対しては過剰な品質(許容変位)になるという問題がある。なお、実際に設置された状態の目地止水継手では、地震などによる変位は、平面状での変位だけでなく、平面に交差する方向などの変位が組み合わされて生じる。
【0006】
本発明は、かかる従来技術に鑑みてなされたものであって、構造物の目地がいずれの方向に変位しても追随して変位の吸収と止水性を維持でき、目地交差部でもそれ以外でも過剰な品質にならない構造物の目地止水継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の構造物の目地止水継手は、
構造物の目地部が交差する目地交差部を止水する構造物の目地止水継手であって、
前記目地部の長さ方向に沿って延び前記目地部の直交方向に伸縮する第1の伸縮部と、前記第1の伸縮部の両側に配置される平板状の前記構造物への第1の固定部とを備える第1の止水部材と、
前記第1の止水部材が前記目地部の形状に対応して前記目地交差部を囲む交差領域部に配置され、前記交差領域部の中心部に環状に配置されて伸縮する環状伸縮部と、前記交差領域部の隣接する前記第1の止水部材の間に配置されて伸縮する第2の伸縮部と、前記第2の伸縮部の外側に配置される平板状の前記構造物への第2の固定部と、を備える第2の止水部材と、を有し、
前記第1の止水部材と前記第2の止水部材とが前記目地部の形状に対応する形状に一体に形成され、前記交差領域部で交差する前記第1の止水部材の隣接する前記第1の伸縮部と前記第2の伸縮部とが連続し、前記第1の止水部材の隣接する前記第1の固定部と前記第2の固定部とが連続している、
ことを特徴とする。
【0008】
前記交差領域部は、前記目地交差部の外側を囲む略八角形状に形成されて構成されている、ことが好ましい。
【0009】
前記交差領域部の前記環状伸縮部は、前記目地交差部の前記目地部に頂部を備える略四角形状、または前記交差領域部の前記中心部を中心とする略円形状に形成されて構成されている、ことが好ましい。
【0010】
前記構造物の前記目地部が十字状に交差する部分には、4方向の前記第1の止水部材と前記交差領域部の前記第2の止水部材とが前記目地部の形状に対応して一体的に形成されて構成される、ことが好ましい。
【0011】
前記構造物の前記目地部がT字状に交差する部分には、前記交差領域部の一方向の前記第1の伸縮部の端部が閉塞されて外側に第3の固定部が形成され、他の3方向の前記第1の止水部材と前記交差領域部の前記第2の止水部材とが前記目地部の形状に対応して一体的に形成されて構成される、ことが好ましい。
【0012】
前記交差領域部には、前記目地部に交差して外側を覆う補強部材を備えて構成される、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、構造物の目地がいずれの方向に変位しても追随して変位の吸収と止水性を維持でき、目地交差部でもそれ以外でも過剰な品質にならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態の十字状の構造物の目地止水継手の概略斜視図である。
【
図6】目地止水継手の変位と複合変位の関係の説明図であり、(a)は通常状態の平面図、(b)はY軸方向にのみ変位が生じた状態の平面図、(c)はX軸方向およびY軸方向の変位による複合変位が生じた状態の平面図である。
【
図7】本発明の一実施の形態のY軸方向に変位が生じた状態の概略斜視図である。
【
図8】本発明の一実施の形態の複合変位が生じた状態の概略斜視図である。
【
図9】本発明の一実施の形態のZ軸方向に変位が生じた状態の概略斜視図である。
【
図12】本発明の一実施の形態の補強部材を設け複合変位が生じた状態の概略斜視図である。
【
図13】本発明の一実施の形態のT字状の構造物の目地止水継手の概略斜視図である。
【
図14】T字状の目地止水継手の閉塞部材の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明では、目地部を原点Oを中心に±X軸方向及び±Y軸方向に配置し、X軸方向とY軸方向に交差する十字状に目地止水継手を配置した例で説明する。
【0016】
目地止水継手(構造物の目地止水継手)10は、例えば、十字状にコンクリート製の構造物1の目地部2が交差する平面状の目地部分の止水に用いるもので、可撓性材料であるゴム・合成樹脂からなり十字状の目地部2の形状に対応して目地止水継手10が一体に形成されており、構造物の地震などによるX軸、Y軸、Z軸(
図9参照)の複合変位を許容しつつ目地部2を止水する(
図1、
図4、
図6、
図9参照)。なお、構造物1の変位は、
図6に示すX-Y軸平面上での変位に限らず、
図9に示すX-Y軸平面と交差するZ軸方向の変位も生じる。
目地止水継手10は、
図1および
図4に示すように、X軸方向及びY軸方向に十字状に配置される4つの直線状止水部材(第1の止水部材)20と、4つの直線状止水部材20の中心部(X軸-Y軸方向の原点Oを含む領域)に配置される交差領域部止水部材(第2の止水部材)30と、が一体とされて目地部2の形状に対応する十字状に構成されている。
【0017】
4つの直線状止水部材20は、目地部2の長さ方向(X軸に沿う方向またはY軸に沿う方向)に沿って延び、目地部2の直交方向(X軸に直交する方向またはY軸に直交する方向)およびZ軸方向(
図9等参照)に伸縮する伸縮部(第1の伸縮部)21と、その両側に配置される平板状の固定部(第1の固定部)22とを備える。伸縮部21は、例えば横断面形状が連続する波形とされ、中央部の谷部21aと、谷部21aの両側の山部21bとが連続して一体とされて伸縮できるように形成してある。固定部22は、山部21bの両側に平板状とされて帯状に一体に形成され、例えば、押え板100(
図7~
図9等参照)を介してアンカーボルトとナットで締め付けることにより構造物1に固定される。
伸縮部21の横断面方向の波形に沿う長さ(周長)が目地止水継手10の目地部2の直交方向およびZ軸方向(
図9等参照)の許容変位に対応して定められ、許容変位の範囲内での止水性を確保している。
なお、伸縮部21は、許容変位を確保できれば、連続する波形に限らず、Ω形に折り畳むなど他の形状であっても良く、連続する波形の谷部21aと山部21bとの数も上記のものに限るものでなく、直線状止水部材20の幅bや高さなどの制限に対応できるものであれば良い。また、許容変位には、X-Y軸平面に直交するZ軸方向やX-Y軸平面に交差する方向の変位なども含まれる(
図9等参照)。
【0018】
固定部22は、伸縮部21の両側に配置されて平板状の帯状に形成され、アンカーボルトによって直接固定する場合には、ボルト孔が所定のピッチで形成され、アンカーボルトに通し、押え板100(
図7等参照)を当ててナットで締め付けて固定される。また、図示省略したが、アンカーボルトに直接固定せず、アンカーボルトに押え金具を締め付け、押え金具の先端部で固定部22に当てた押え部材(押え板100(
図7など参照))を介して押えることで、ボルト孔を形成せずに固定できるようにしても良く、構造物1に止水性を確保して固定できれば良い。なお、固定部22には、止水性を確保する止水線部22aが構造物1側に突き出すように設けられる。詳細は、後述する。
【0019】
構造物の目地止水継手10は、
図1および
図4に示すように、これまでのように4つの幅をbとした直線状止水部材20を十字状に突き合わせて中心部の一辺がbの正方形状の目地交差部31で一体に形成すると、正方形状の目地交差部31での対角線方向(X軸方向とY軸方向の2等分線の方向)の変位、すなわち、隣接する2つの目地部がX軸方向とY軸方向に同時に変位する複合変位LやこれらにZ軸方向の変位が加わった複合変位Lが許容範囲を越えて大きくなり、複合変位Lを許容することができなくなる。
複合変位Lは、例えば十字状のX軸方向及びY軸方向の目地部2が目地部2に直交するY軸方向及びX軸方向に同時に100mm変位すると仮定すると、直交する2方向の間の対角線方向では、直角二等辺三角形の斜辺の長さに相当する100mm×√2倍の複合変位Lが生じることになり、約140mm変位することになる(
図6(c)参照)。
【0020】
そこで、4つの直線状止水部材20を突き合わせることで形成される一辺がbの直線状止水部材20の正方形状の目地交差部31(
図6参照)に対し、
図1および
図4に示すように、この正方形状の目地交差部31を囲む広い領域を交差領域部32とし、広い領域の交差領域部32を備える交差領域部止水部材30が用いられ、交差領域部止水部材30で大きな複合変位Lを許容して止水する。交差領域部止水部材30の交差領域部32は、幅がbの直線状止水部材20が突き合わされる一辺がbの正方形状の目地交差部31の外側を囲む領域とされ、ここでは、目地交差部31の外側の大きな正方形状の4つの角部を対角線方向に直交する斜めの直線部33で切り欠いた形状に形成され、略八角形状の領域としている。
【0021】
この略八角形状の交差領域部止水部材30は、
図1、
図4および
図5に示すように、交差領域部32の中心部に環状に配置されて伸縮する環状伸縮部34と、交差領域部32の隣接する2つの直線状止水部材20の間に配置されて伸縮する連結伸縮部(第2の伸縮部)35と、連結伸縮部35の外側に配置される平板状の構造物への連結固定部(第2の固定部)36と、を備える。なお、連結固定部36には、止水性を確保する止水線部36aが構造物1側に突き出すように設けられる。詳細は、後述する。
【0022】
構造物への連結固定部36は、アンカーボルトへのボルト孔が形成されてアンカーボルトに通し押え板100(
図7等参照)を介して直接固定するようにしたり、押え金具を介してボルト孔を形成せずに固定するようにする。また、押え金具同士の干渉を防止するため、ボルト孔による固定と組み合わせるようにしても良い。
【0023】
交差領域部32の形状は、上記の目地交差部31の外側を囲む正方形状の4つの角部を斜めの直線部33で結んで形成される略八角形状とする場合に限らず、直線部33に変えて凹状の円弧の曲線部で結んだ形状などであっても良い。交差領域部32は、目地交差部31の外側を囲む領域であって複合変位Lを許容する環状伸縮部34や直線状止水部材20の伸縮部21や固定部22と連結する連結伸縮部35や連結固定部36を形成する領域を確保できる大きさ(広さ)および形状であれば良い。
【0024】
環状伸縮部34は、例えば、正方形状の環状とされ、正方形の頂部(角部)が目地部2に配置されており、X軸方向及びY軸方向上に位置して目地交差部31の正方形に対し45度回転させたひし形状に配置されている。環状伸縮部34の横断面形状は、
図5に示すように、中央部の谷部34aとその両側の2つの山部34bと備えており、環状伸縮部34の横断面方向の波形に沿う長さ(周長)が目地止水継手10の目地部2の複合変位Lに対応して定められている。ここでは、直線状止水部材20の許容変位を、例えば100mmとすると、環状伸縮部34では、約140mmの許容変位を確保する必要があり、例えば
図2および
図3に示すように、波形に沿う長さを長くするため谷部34aと山部34bを直線状止水部材20の谷部21a,山部21bに比べて大きく高くしてある。なお、交差領域部止水部材30としては、後述するように、環状伸縮部34に加えてその外側に連結伸縮部35を形成することで、直線状止水部材20の伸縮部21と連続させることから、これら環状伸縮部34と連結伸縮部35とを組み合わせて複合変位Lを許容できる波形に沿う長さ(周長)に形成されていれば良い。
【0025】
なお、環状伸縮部34は、上記のように、平面形状を環状のひし形状に形成する場合に限らず、多角形状としたり、円形に形成しても良く、交差領域部32でX軸方向およびY軸方向に沿って伸びる4つの直線状止水部材20各々に生じる許容変位内の複合変位等のあらゆる方向の変位(X軸、Y軸、Z軸の変位やこれらを組み合わせた変位)の複合変位を許容できる形状であれば良い。環状に形成しておくことで、交差領域部32の中心部の構造が簡素化でき、止水性の確保も容易となる。また、環状伸縮部34は、1つの環状で構成する場合に限らず、複数の環状を多重に形成して構成することもでき、複合変位等のあらゆる方向の変位を許容できる形状であれば良い。
また、環状伸縮部を多重に形成する場合は、同一形状のもので構成したり、異なる形状のものを組み合わせても良く、例えばひし方形状の内側に円形のものを配置すれば、設置スペースを小さくすることができる。
【0026】
環状伸縮部34の外側には、隣接する直線状止水部材20と連続させるための連結伸縮部(第2の伸縮部)35と、連結固定部(第2の固定部)36が直線状止水部材20の伸縮部21と固定部22と同一の横断面形状に形成されて一体に連続できるようにしてある。そして、上記の複合変位Lに対しては、連結伸縮部35も環状伸縮部34に協働して変位を許容する。
【0027】
このような4つの直線状止水部材20と、交差領域部止水部材30とによる構造物の目地止水継手10は、十字状の目地部の形状に合わせて一体的に形成されている。すなわち、交差領域部32で交差する直線状止水部材20の隣接する直線状止水部材20の伸縮部21と交差領域部止水部材30の斜め45度の連結伸縮部35とが連続し、直線状止水部材20の隣接する固定部22と交差領域部止水部材30の斜め45度の連結固定部36とが連続するように一体に形成される。同様にして、4つの直線状止水部材20が四箇所で、伸縮部21と斜め45度の連結伸縮部35とが連続し、固定部22と斜め45度の連結固定部36とが連続するように一体に形成される。
【0028】
構造物の目地止水継手10は、製造に際しては、例えば、1つの成形金型を用いることにより、一工程で一体に成形され、目地形状に対応して十字状に構成される。
これにより、構造物の目地止水継手10は、機能上、直線状止水部材20と交差領域部止水部材30とに分けられるが、製品(目地止水継手10)としては一体とされてそれぞれが協働して機能することで、変位などを許容して止水性を確保する。したがって、直線状止水部材20と交差領域部止水部材30との境界は適宜設定すれば良い。
また、構造物の目地止水継手10では、一部図示省略したが、目地止水継手10の固定部22および連結固定部36の構造物との接触面に表面から突き出す突条の止水線部22a、36aが内側と外側に2列形成してあり、締め付け時に面圧を高めて設置状態での止水性を高めるようにしてある。
【0029】
このように構成した構造物の目地止水継手10は、構造物1の十字状に交差する目地部2に合わせて目地部2を覆うように配置され、予め所定のピッチで埋め込んであるアンカーボルトに押え板100(
図7等参照)を介して固定部22および連結固定部36が締め付けられて設置される。なお、コンクリート構造物でアンカーボルトが鉄筋と干渉する場合には、アンカーボルトの位置をずらす必要があり、この場合には、固定部22や連結固定部36のボルト孔を対応してずらすようにしておく。また、アンカーボルトにボルト孔を通して固定しない場合には、固定部22や連結固定部36への対応の必要はなく、位置をずらした押え金具により固定する。
【0030】
こうして構造物1の目地止水継手10が設置された状態で、地震などにより構造物1の目地部2が変位すると、X軸方向またはY軸方向にのみ変位する場合には、直線状止水部材20の伸縮部21によってそれぞれの軸方向に直交する変位を許容する(
図6(b)、
図7参照)。このような変位では、交差領域部32においては複合変位が生じることがなく、これまでの目地止水継手と同様に変位を許容して止水状態が保持される。
【0031】
一方、地震などにより構造物の目地部がX軸方向およびY軸方向の両方の変位が生じる場合には、
図6(c)、
図8に示すように、直線状止水部材20の伸縮部21によってX軸方向またはY軸方向の変位が許容される。これに加えて交差領域部32においては、X軸方向の変位とY軸方向の変位が合成された複合変位Lが生じることになる。この複合変位Lに対しては、交差領域部止水部材30の中心部の環状伸縮部34とその外側の連結伸縮部35とが変位することになり、例えば、X軸方向およびY軸方向の変位をそれぞれ100mmとした場合に、約140mmの変位が生じてもこの複合変位Lを許容して止水状態を保持することができる。
これにより、直線状止水部材20の伸縮部21の許容変位を、例えば140mmに設定して幅を大きくした目地止水継手を用いることなく、目地交差部31を囲む広い領域の交差領域部止水部材30を組み合わせることで、交差領域部32での140mmの複合変位Lを許容することができる。
したがって、構造物の目地止水継手10は、構造物1の間に形成される目地部2が交差する場合に、目地部2がX-Y軸平面上でいずれの方向に変位しても、それぞれの方向及び複合された方向に追随して変位を吸収して止水性を維持することができる。
すなわち、目地交差部31の交差領域部止水部材30でもそれ以外の直線部分の直線状止水部材20でも、それぞれの部分に生じる変位を許容すれば良く、直線状止水部材20の幅bを広くして複合変位にも対応できるようにする必要がなく、過剰な品質になる許容変位の部分をなくすことができ、必要最小限の幅bにすることができる。
【0032】
次に、地震などにより構造物1の一つが-Z軸方向に沈下し、これにより目地止水継手10に変位が生じる場合について、
図9~
図11により説明する。
地震などにより構造物1の一つの構造物1b(X軸、-Y軸平面の構造物1b)が-Z軸方向に沈下する場合には、
図9~
図11に示すように、Z軸方向に変位しない3つの構造物1a,1c,1d(1a=X,Y平面、1c=-X,Y平面、1d=-X,-Y平面)との間で目地止水継手10に変位が生じることになる。すなわち、沈下する構造物1bと隣接する構造物1aまたは構造物1dとの間では、
図10に示すように、直線状止水部材20の伸縮部21によって沈下量に応じた斜め方向の変位が許容される。この斜め方向の伸縮部21の変位は小さく、止水性が確保された状態で構造物1bと隣接する構造物1aまたは構造物1dとの間の高さ位置が変化した状態となる。
【0033】
また、沈下する構造物1bと対角位置にある構造物1cとの間では、
図11に示すように、交差領域部32において、交差領域部止水部材30の中心部の環状伸縮部34とその外側の連結伸縮部35とによって沈下量に応じた斜め方向の変位が許容される。この斜め方向の環状伸縮部34とその外側の連結伸縮部35との変位は複合変位とはならずに小さく、止水性が確保された状態で構造物1bと対角位置の構造物1cとの間の高さ位置が変化した状態となる。
このような構造物1bに沈下が生じた場合を例に、構造物1にZ軸方向の変位が生じる場合の目地止水継手10の伸縮状態を説明したように、固定部22および連結固定部36のZ軸方向の位置(高さ)が変化するものの伸縮部21や環状伸縮部34および連結伸縮部35に大きな伸びなどが発生せず変位が生じてもこの変位を許容して止水状態を保持することができる。
これにより、直線状止水部材20の伸縮部21の許容変位を、例えば140mmに設定して幅を大きくした目地止水継手を用いることなく、目地交差部31を囲む広い領域の交差領域部止水部材30を組み合わせることで、Z軸方向の変位も許容することができる。
【0034】
構造物の目地止水継手10は、構造物1の間に形成される目地部2が交差する場合に、目地部2がX-Y軸平面上でいずれの方向に変位しても、それぞれの方向及び複合された方向に追随して変位を吸収して止水性を維持することができ、これに加えてZ軸方向の変位も吸収して止水性を維持することができる。
すなわち、目地交差部31の交差領域部止水部材30でもそれ以外の直線部分の直線状止水部材20でも、それぞれの部分に生じる変位を許容すれば良く、直線状止水部材20の幅bを広くして複合変位にも対応できるようにする必要がなく、過剰な品質になる許容変位の部分をなくすことができ、必要最小限の幅bにすることができる。
なお、Z軸方向に生じる変位として構造物の1つが沈下する場合を例に説明したが、隣接する2つの構造物1が沈下(隆起)する場合や対角位置の2つの構造物1が沈下(隆起)する場合にも、目地止水継手10に大きな変位(伸縮)が生じることもなく、止水性を維持することができるものである。
【0035】
このような構造物の目地止水継手10では、
図12に示すように、交差領域部止水部材30の変形を抑えるため目地部2に交差して外側を覆う補強部材40を設けるようにすることもできる。補強部材40は、可撓性材料であるゴム・合成樹脂からなる層間に繊維層などを配置することで、補強された帯状のシートが用いられる。交差領域部止水部材30の連結固定部36上に端部を当ててアンカーボルトや押え金具を介して目地止水継手10の固定の際に目地交差部31を交差して覆うように取り付ける。補強部材40の連結固定部36間の長さは、交差領域部止水部材30の対角線方向の環状伸縮部34の波形状の長さと連結伸縮部35の波形状の長さとを加えた周長に対して許容できる伸びを加えた長さとされる。こうすることで、交差領域部止水部材30の波形状が伸ばされて1つの円弧を形成するように膨らんでも弾性限界を超える伸びを抑えて破損などを生じることのない状態にできる。
【0036】
また、交差領域部止水部材30の変形を抑えることで、アンカーボルトを介した押え板100や押え金具で固定してある連結固定部36に加わる引き抜き力(引っ張り力)を抑えることができ、変位の許容だけでなく、連結固定部36の止水線部36a(
図5等参照)による止水性を確保することができる。
さらに、補強部材40により交差領域部止水部材30の波形状が伸ばされて1つの円弧を形成するように膨らんだ状態(自然長の状態)から水圧などにより伸びが発生し連結固定部36に引っ張り力が作用したり、連結固定部36の厚さが減少する「やせ」が生じて止水性が損なわれる状態になることを防止することができる。
【0037】
次に、コンクリート構造物1の目地部2がT字状に交差する平面状の目地部2の止水に用いるT字状の構造物の目地止水継手10Aについて、
図13および
図14により説明する。
構造物の目地止水継手10Aは、可撓性材料であるゴム・合成樹脂からなりT字状の目地部2の形状に対応して目地止水継手10Aが一体に形成されており、構造物1の地震などによる変位を許容しつつ目地部2を止水する。
【0038】
目地止水継手10Aは、
図13および
図14に示すように、X軸方向両側(±X軸方向)とY軸方向の一方側(-Y軸方向)とでT字状に配置される3つの直線状止水部材(第1の止水部材)20と、3つの直線状止水部材20の中心部(X軸-Y軸方向の原点Oを含む領域)に配置される交差領域部止水部材(第2の止水部材)30と、が一体とされて目地部2の形状に対応するT字状に構成されている。
3つ(±X軸方向および-Y軸方向)の直線状止水部材20は、既に説明した目地止水継手10の各直線状止水部材20と同一であり、伸縮部21および固定部22の詳細については、同一部分に同一符号を記し、重複する説明を省略する。
各直線状止水部材20は、目地方向に沿い目地直交方向に伸縮する伸縮部21と、伸縮部21の両側に配置され構造物1に固定するための固定部22とが一体に形成されている。
【0039】
3つの直線状止水部材20がT字状に配置される交差領域部止水部材30は、既に説明した十字状の交差領域部止水部材30の+Y軸方向の直線状止水部材20を配置する側を塞ぐようにし、他の3方向(±X軸方向および-Y軸方向)に直線状止水部材20を配置できるようにしたものが用いられる。
交差領域部止水部材30は、構造物1の目地部2がT字状に交差する部分において、交差領域部32のY軸方向の端部としての直線状止水部材20の伸縮部21が閉塞部材37で閉塞される。閉塞部材37は、閉塞部37aを備え、閉塞部37aによってY軸方向の伸縮部21に隣接する両側の連結伸縮部35が閉塞される。閉塞部37aには、外側に閉塞固定部(第3の固定部)37bが直線状止水部材20の全幅bで形成され、構造物1に固定できるようにしてある。
すなわち、構造物の目地止水継手10Aは、交差領域部止水部材30のY軸方向を閉塞部材37で塞いだ交差領域部止水部材30に3方向の直線状止水部材(第1の止水部材)20が配置され、目地部2の形状に対応してT字状に一体的に形成されて構成されている。
【0040】
交差領域部止水部材30は、
図13および
図14に示すように、隣接する直線状止水部材20の伸縮部21をそれぞれ塞ぐ閉塞部37aと、閉塞部37aの外側の閉塞固定部37bとを備える閉塞部材37が交差領域部止水部材30に一体に形成されている。閉塞固定部37bの構造物1と接する面には、止水線部37cが形成され、連結固定部36の止水線部36aと一体に連続されて止水性を高める。
【0041】
このような構造物の目地止水継手10Aは、既に説明した目地止水継手10の成形金型(図示せず)のY軸方向の金型を分割金型としておき、分離した部分に閉塞部材37の閉塞部成形金型(図示せず)をセットし、閉塞部37aと閉塞固定部37bとを成形するとともに、3方向の直線状止水部材20も成形できるようにすることで、一体に形成する。こうして十字状の目地止水継手10の成形金型の一部を閉塞部成形金型に交換して用いることで、T字状の目地止水継手10Aの専用の全体形状を備える成形金型を別に用意することなく簡単に製造することができる。
【0042】
このように構成した構造物の目地止水継手10Aは、構造物1のT字状に交差する目地部2に合わせて目地部2を覆うように配置され、予め所定のピッチで埋め込んであるアンカーボルトを介して固定部22、連結固定部36および閉塞固定部37bが締め付けられて設置される。なお、コンクリート構造物でアンカーボルトが鉄筋と干渉する場合には、アンカーボルトの位置をずらす必要があり、この場合には、固定部22や連結固定部36のボルト孔を対応してずらすようにしておく。また、アンカーボルトに固定部22や連結固定部36のボルト孔を通して固定しない場合には、押え金具を用いて固定するようにしても良い。
【0043】
こうして構造物1に目地止水継手10Aが設置された状態で、地震などにより構造物1の目地部2が変位すると、X軸方向にのみ変位する場合においては、1つの-Y軸方向の直線状止水部材20の伸縮部21によって変位を許容し、Y軸方向にのみ変位する場合には、2つの±X軸方向の直線状止水部材20の伸縮部21によって変位を許容するとともに、いずれの場合にも交差領域部32においては、複合変位が生じることがなく、これまでの目地止水継手10と同様に変位を許容して止水状態が保持される。
【0044】
一方、地震などにより構造物の目地部がX軸方向およびY軸方向の両方の変位が生じる場合には、1つの-Y軸方向の直線状止水部材20の伸縮部21によってX軸方向の変位が許容されるとともに、2つの±X軸方向の直線状止水部材20の伸縮部21によってY軸方向の変位が許容される。これに加えて交差領域部32においては、X軸方向の変位とY軸方向の変位が合成された複合変位Lが生じることになる。この複合変位Lに対しては、十字状の場合と同様に、交差領域部止水部材30の中心部の環状伸縮部34とその外側の連結伸縮部35とが変位することになり、閉塞部材37での変位の許容がなくとも、例えば、X軸方向およびY軸方向の変位をそれぞれ100mmとした場合に、約140mmの複合変位Lが生じてもこの複合変位Lを許容して止水状態を保持することができる。
これにより、直線状止水部材20の伸縮部21の許容変位を、例えば140mmに設定して幅を大きくした目地止水継手を用いることなく、目地交差部31を囲む広い領域の交差領域部止水部材30を組み合わせることで、交差領域部32での140mmの複合変位Lを許容することができる。
したがって、構造物の目地止水継手10Aは、構造物1の間に形成される目地部2がT字状に交差する場合に、目地部2がいずれの方向に変位しても、それぞれの方向及び複合された方向に追随して変位を吸収して止水性を維持することができる。
すなわち、目地交差部31の交差領域部止水部材30でもそれ以外の直線部分の直線状止水部材20でも、それぞれの部分に生じる変位を許容できれば良く、直線状止水部材20の幅bを広くして複合変位にも対応できるようにする必要がなく、過剰な品質になる許容変位の部分をなくすことができ、必要最小限の幅bや大きさにすることができる。
【0045】
さらに、地震などにより構造物1の一つが-Z軸方向に沈下し、これにより目地止水継手10Aに変位が生じる場合についても、図示省略した(
図9~
図11参照)が、既に説明した十字状の目地止水継手10の場合と同様に、隣接する構造物1との間で目地止水継手10Aに変位が生じることになる。すなわち、沈下する構造物1と隣接する構造物1との間では、直線状止水部材20の伸縮部21によって沈下量に応じた斜め方向の変位が許容される。この斜め方向の伸縮部21の変位は小さく、止水性が確保された状態で構造物1と隣接する構造物1との間の高さ位置が変化した状態となる。また、交差領域部32においては、交差領域部止水部材30の中心部の環状伸縮部34とその外側の連結伸縮部35とによって沈下量に応じた斜め方向の変位が許容される。この斜め方向の環状伸縮部34とその外側の連結伸縮部35との変位は複合変位とはならずに小さく、止水性が確保された状態で構造物1bと対角位置の構造物1cとの間の高さ位置が変化した状態となる。
【0046】
このような構造物1に沈下が生じた場合を例にZ軸方向の変位が生じる場合の目地止水継手10Aの伸縮状態を説明したように、固定部22および連結固定部36のZ軸方向の位置(高さ)が変化するものの伸縮部21や環状伸縮部34および連結伸縮部35に大きな伸びなどが発生せず変位が生じてもこの変位を許容して止水状態を保持することができる。
これにより、直線状止水部材20の伸縮部21の許容変位を、例えば140mmに設定して幅を大きくした目地止水継手を用いることなく、目地交差部31を囲む広い領域の交差領域部止水部材30を組み合わせることで、Z軸方向の変位も許容することができる。
【0047】
構造物の目地止水継手10Aは、構造物1の間に形成される目地部2が交差する場合に、目地部2がX-Y軸平面上でいずれの方向に変位しても、それぞれの方向及び複合された方向に追随して変位を吸収して止水性を維持することができ、これに加えてZ軸方向の変位も吸収して止水性を維持することができる。すなわち、目地交差部31の交差領域部止水部材30でもそれ以外の直線部分の直線状止水部材20でも、それぞれの部分に生じる変位を許容すれば良く、直線状止水部材20の幅bを広くして複合変位にも対応できるようにする必要がなく、過剰な品質になる許容変位の部分をなくすことができ、必要最小限の幅bにすることができる。
なお、Z軸方向に生じる変位として構造物の1つが沈下する場合を例に説明したが、隣接する2つの構造物1が沈下(隆起)する場合にも、目地止水継手10Aに大きな変位(伸縮)が生じることもなく、止水性を維持することができるものである。
【0048】
このような構造物の目地止水継手10Aでは、交差領域部止水部材30の変形を抑えるため目地部2に交差して外側を覆う図示しない補強部材40(十字状の場合の
図12参照)を設けるようにすることもできる。補強部材は、可撓性材料であるゴム・合成樹脂からなる層間に繊維層などを配置することで、補強された帯状のシートが用いられる。交差領域部止水部材30の連結固定部36上に端部を当ててアンカーボルトや押え金具を介して目地止水継手10Aの固定の際に交差領域部32を交差して覆うように取り付けられる。補強部材の連結固定部36間の長さは、交差領域部止水部材30の対角線方向の環状伸縮部34の波形状の長さと連結伸縮部35の波形状の長さとを加えた周長などに対して許容できる伸びを加えた長さとされる。こうすることで、交差領域部止水部材30のそれぞれの対角線方向の波形状が伸ばされて1つの円弧を形成するように膨らんでも弾性限界を超える伸びで破損などを生じることのない状態にできる。
【0049】
また、交差領域部止水部材30の変形を抑えることで、アンカーボルトや押え金具で固定してある連結固定部36に加わる引き抜き力(引っ張り力)を抑えることができ、変位の許容だけでなく、連結固定部36や閉塞固定部37bの止水線部36a,37cによる止水性を確保することができる。
さらに、補強部材40により交差領域部止水部材30の波形状が伸ばされて1つの円弧を形成するように膨らんだ状態(自然長の状態)から水圧などにより伸びが発生し連結固定部36に引っ張り力が作用したり、連結固定部36や閉塞固定部37bの厚さが減少する「やせ」が生じて止水性が損なわれる状態になることを防止することができる。
【0050】
以上、実施の形態とともに、具体的に説明したように、本発明の構造物の目地止水継手10は、構造物1の目地部2が交差する目地交差部31を止水する構造物1の目地止水継手10であって、目地部2の長さ方向に沿って延び目地部2の直交方向に伸縮する第1の伸縮部21と、第1の伸縮部21の両側に配置される平板状の構造物1への第1の固定部22とを備える第1の止水部材20と、第1の止水部材20が目地部2の形状に対応して目地交差部31を囲む交差領域部32に配置され、交差領域部32の中心部に環状に配置されて伸縮する環状伸縮部34と、交差領域部32の隣接する第1の止水部材20の間に配置されて伸縮する第2の伸縮部35と、第2の伸縮部35の外側に配置される平板状の構造物1への第2の固定部36と、を備える第2の止水部材30と、を有し、第1の止水部材20と第2の止水部材30とが目地部2の形状に対応する形状に一体に形成され、交差領域部32で交差する第1の止水部材20の隣接する第1の伸縮部21と第2の伸縮部35とが連続し、第1の止水部材20の隣接する第1の固定部22と第2の固定部36とが連続している。
【0051】
かかる構成によれば、地震などにより構造物1の目地部2がそれぞれの目地直交方向にのみ変位する場合には、第1の止水部材(直線状止水部材)20の伸縮部21によってそれぞれの変位を許容することができ、止水状態が保持される。
一方、地震などにより構造物1の目地部2が2つの目地直交方向の両方に変位する場合には、交差領域部32においては、2つの方向の変位が合成された複合変位Lが生じることになるが、複合変位Lに対しては、第2の止水部材(交差領域部止水部材)30の中心部の環状伸縮部34とその外側の連結伸縮部35とが変位を許容することができ、複合変位Lを許容して止水状態を保持することができる。
これにより、目地交差部31の第2の止水部材30でもそれ以外の直線部分の第1の止水部材20でも、それぞれの部分に生じる変位を許容すれば良く、第1の止水部材20の幅bを広くして複合変位Lにも対応できるようにする必要がなく、過剰な品質になる許容変位の部分をなくすことができ、必要最小限の幅bにすることができる。
さらに、上下方向(Z軸方向)の変位に対してもこれを許容し、止水状態を保持することができる。
【0052】
本発明の構造物の目地止水継手10では、交差領域部32は、目地交差部31の外側を囲む略八角形状に形成されて構成されている。
かかる構成によれば、目地交差部31が十字状やT字状、その他の形状であっても交差領域部32の大きさを簡単に確保することができる。また、製造に用いる成形金型も簡素化することができる。
【0053】
本発明の構造物の目地止水継手10では、交差領域部32の環状伸縮部34は、目地交差部31の目地部2に頂部を備える略四角形状、または交差領域部32の中心部を中心とする略円形状に形成されて構成されている。
かかる構成によれば、環状伸縮部34によって複合変位等のあらゆる方向(平面上及びこれに交差する方向)の変位を許容することができ、環状に形成しておくことで、交差領域部32の中心部の構造が簡素化でき、領域の大きさ(広さ)を容易に確保でき、止水性の確保も容易となる。
【0054】
本発明の構造物の目地止水継手10では、構造物1の目地部2が十字状に交差する部分に、4方向の第1の止水部材20と交差領域部32の第2の止水部材30とが目地部2の形状に対応して一体的に形成されて構成される。
かかる構成によれば、4方向の第1の止水部材20と交差領域部32の第2の止水部材30とを目地部2の形状に対応して十字状に配置して一体的に形成することで、簡単な構造とすることができる。
【0055】
本発明の構造物の目地止水継手10Aでは、構造物1の目地部2がT字状に交差する部分に、交差領域部32の一方向の第1の伸縮部21の端部が閉塞されて外側に第3の固定部37bが形成され、他の3方向の第1の止水部材20と交差領域部の第2の止水部材30とが目地部2の形状に対応して一体的に形成されて構成される。
かかる構成によれば、4方向の第2の止水部材30を利用して1方向を塞ぐことで3方向の第2の止水部材30を構成することができ、T字状の目地止水継手10Aを簡単に構成することができる。特に、成形金型の一部の変更で簡単に成形することもできる。
【0056】
本発明の構造物の目地止水継手10,10Aは、交差領域部32には、目地部2に交差して外側を覆う補強部材40を備えて構成される。
かかる構成によれば、補強部材40によって第2の止水部材(交差領域部止水部材)30の波形状が伸ばされて1つの円弧を形成するように膨らんでも弾性限界を超える伸びを抑えて破損などを防止することができる。
また、第2の止水部材30の変形を抑えることで、構造物1に固定してある連結固定部36に加わる引き抜き力(引っ張り力)を抑えることができ、変位の許容だけでなく、連結固定部36の止水線部36aによる止水性を確保することができる。
さらに、補強部材40により交差領域部止水部材30の波形状が伸ばされて1つの円弧を形成するように膨らんだ状態(自然長の状態)から水圧などにより伸びが発生し連結固定部36に引っ張り力が作用したり、連結固定部36の厚さが減少する「やせ」が生じて止水性が損なわれる状態になることを防止することができる。
【0057】
なお、上記実施の形態では、コンクリート構造物の目地の形状が十字状またはT字状の場合を例に説明したが、これに限らずX字状やY字状の目地形状であっても良く、この場合には、交差領域部止水部材の形状を目地形状に対応するようにし、各構造物の変位が合成された場合で合ってもこれを許容できる環状伸縮部や連結伸縮部を形成するようにすれば良い。
【0058】
また、上記実施の形態では、コンクリート構造物の目地が平面上に位置する場合を例に説明したが、底部とこれに続く側面などの立体的に配置される目地部分に用いることもできる。
【0059】
また、構造物は、コンクリート製に限らず、鉄鋼製構造物やハイブリッド構造物などであっても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 構造物
1a,1b,1c,1d 構造物
2 目地部
10,10A 目地止水継手(構造物の目地止水継手)
20 直線状止水部材(第1の止水部材)
21 伸縮部(第1の伸縮部)
21a 谷部
21b 山部
22 固定部(第1の固定部)
22a 止水線部
30 交差領域部止水部材(第2の止水部材)
31 目地交差部
32 交差領域部
33 直線部
34 環状伸縮部
34a 谷部
34b 山部
35 連結伸縮部(第2の伸縮部)
36 連結固定部(第2の固定部)
36a 止水線部
37 閉塞部材
37a 閉塞部
37b 閉塞固定部(第3の固定部)
37c 止水線部
40 補強部材
100 押え板
b 直線状止水部材の幅
L 複合変位