(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】線材配設装置及び線材配設方法
(51)【国際特許分類】
B65H 59/38 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
B65H59/38 Z
B65H59/38 A
(21)【出願番号】P 2019181841
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】NITTOKU株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雅史
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-163267(JP,A)
【文献】特開2019-029337(JP,A)
【文献】特開2019-001617(JP,A)
【文献】特開2016-178149(JP,A)
【文献】特開2012-186922(JP,A)
【文献】特開昭51-048189(JP,A)
【文献】特開平02-188378(JP,A)
【文献】特開2016-016442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 59/00 - 59/40
B65H 67/00 - 67/08
H01B 13/00
13/004 - 13/016
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル(21)から線材(11)を所定の速度で繰出す線材繰出手段(25)と、
前記ノズル(21)から繰出された前記線材(11)が湾曲した後に配索されるように被配設部材(12)を支持する部材支持手段(13)と、
前記被配設部材(12)に対して前記ノズル(21)を少なくとも配索方向に移動させる相対移動手段(40)と、
前記ノズル(21)から繰出されて前記被配設部材(12)に配索される前記線材(11)に張力を付与する張力付与手段(33)と
を備えた線材配設装置
において、
前記張力付与手段(33)が、
回動支点の回りで回動可能なテンションバー(36)と、
前記テンションバー(36)に取付けられて湾曲する前記線材(11)の湾曲内側に当接する線材ガイド(37)と、
前記線材ガイド(37)が前記線材(11)の湾曲外側に向かうように前記テンションバー(36)を回転付勢する弾性部材(38)と
を備えたことを特徴とする線材配設装置。
【請求項2】
テンションバー(36)の回動角度を検出する検出手段(39)と、
前記検出手段(39)により検出された回動角度が所定の角度となるように前記線材繰出手段(25)による線材(11)のノズル(21)からの繰出し速度を制御する繰出速度制御手段(14)と
を備えた
請求項1記載の線材配設装置。
【請求項3】
ノズル(21)から繰出されて湾曲した後の線材(11)を被配設部材(12)に押付ける押付部材(61)が更に備えられた
請求項1又は2記載の線材配設装置。
【請求項4】
ノズル(21)から所定の速度で繰出される線材(11)を湾曲させて被配設部材(12)に配索する線材配設方法において、
回動支点の回りで回動可能なテンションバー(36)に設けられた線材ガイド(37)を前記ノズル(21)から繰出されて湾曲する前記線材(11)の湾曲内側に当接させ、
前記線材ガイド(37)を前記線材(11)の湾曲外側に向けて付勢することにより前記ノズル(21)から繰出される前記線材(11)に張力を付与し、
前記テンションバー(36)の回動角度が所定の角度となるように前記線材(11)の前記ノズル(21)からの繰出速度を制御しつつ、
前記ノズル(21)から繰出されて張力が付与された前記線材(11)を前記被配設部材(12)に配索する
ことを特徴とする線材配設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的太い線材を均一な張力で配設し得る線材配設装置及び線材配設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁誘導作用により鍋底を発熱させ、鍋の中の食品を調理する電磁調理器の渦巻形加熱コイルにあっては、一般的に、絶縁物(耐熱樹脂)からなるベースに線材を渦巻き状に配設したものが知られている。このような加熱コイルに使用される線材としては、複数の電線を撚ったリッツ線なるものが用いられ、そのリッツ線は複数の電線を撚ることにより得られるものであるから、比較的太い線材となることが知られている。
【0003】
一方、このようなリッツ線を被配設物であるベースに配設する線材配設装置にあっては、複数の電線を撚ったリッツ線の、その撚りの程度を均一にした状態で被配設物に配設する必要から、そのリッツ線における張力を均一にした状態で配設することが求められる。
【0004】
ここで、通常の巻線機において、一定の張力が付与された線材を巻線する場合には、線材に張力を付与する張力装置を巻線機の手前に設置し、所定の張力が付与された線材を巻線機において巻線する様なことが行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、通常の巻線機のように、予め張力が付与された線材をノズルによりベースのような被配設部材に案内していると、その線材がリッツ線のように比較的太いものであると、その線材とノズルとの間に生じる摺動抵抗により、線材の張力がノズルの前後において相違することに成り、ノズルを通過した後における線材の張力が変動して安定しないという不具合があった。
【0007】
本発明の目的は、ノズルを通過して配設される線材の張力を安定させ得る線材配設装置及び線材配設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ノズルから線材を所定の速度で繰出す線材繰出手段と、ノズルから繰出された線材が湾曲した後に配索されるように被配設部材を支持する部材支持手段と、被配設部材に対してノズルを少なくとも配索方向に移動させる相対移動手段と、ノズルから繰出されて被配設部材に配索される線材に張力を付与する張力付与手段とを備えた線材配設装置である。
【0009】
この場合の張力付与手段は、回動支点の回りで回動可能なテンションバーと、テンションバーに取付けられて湾曲する線材の湾曲内側に当接する線材ガイドと、線材ガイドが線材の湾曲外側に向かうようにテンションバーを回転付勢する弾性部材とを備えることが好ましい。
【0010】
そして、テンションバーの回動角度を検出する検出手段と、検出手段により検出された回動角度が所定の角度となるように線材繰出手段による線材のノズルからの繰出し速度を制御する繰出速度制御手段とを備えることが好ましく、ノズルから繰出されて湾曲した後の線材を被配設部材に押付ける押付部材を更に備えることが好ましい。
【0011】
別の本発明は、ノズルから所定の速度で繰出される線材を湾曲させて被配設部材に配索する線材配設方法の改良である。
【0012】
その特徴有る点は、ノズルから繰出される線材に張力を付与し、ノズルから繰出されて張力が付与された線材を被配設部材に配索するところにある。
【0013】
線材の張力の付与が、ノズルから繰出されて湾曲する線材の湾曲内側に当接する線材ガイドを線材の湾曲外側に向けて付勢することにより行われることが好ましく、回動支点の回りで回動可能なテンションバーに線材ガイドを設ける場合、テンションバーの回動角度が所定の角度となるように線材のノズルからの繰出速度を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の線材配設装置及び線材配設方法では、ノズルから繰出されて被配設部材に配索される線材に張力を付与するので、線材とノズルとの間に生じる摺動抵抗は、線材に付与される張力に影響を与えるようなことは無い。よって、ノズルを通過した後に張力を付与する本発明では、ノズルを通過して配設される線材の張力を安定させることが可能になるのである。
【0015】
そして、線材ガイドを線材に接触させることにより張力を付与する場合であって、その線材ガイドを回動支点の回りで回動可能なテンションバーに設ける場合、そのテンションバーの回動角度が所定の角度となるように線材のノズルからの繰出速度を制御することにより、比較的太い線材であっても所望の張力で線材を被配設物に配設し得るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態における線材配設装置を示す
図6のC部拡大図である。
【
図2】その線材に比較的大きな張力が付与される場合を示す
図1に対応する図である。
【
図3】その線材に比較的小さな張力が付与される場合を示す
図1に対応する図である。
【
図4】その線材繰出手段を示す
図6のB-B線断面図である。
【
図5】その被配設部材を示す
図6のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳しく説明する。
【0018】
図6及び
図7に本発明における線材配設装置10を示す。各図において、互いに直交するX,Y,Zの3軸を設定し、X軸が略水平横方向、Y軸が略水平前後方向、Z軸が鉛直方向に延びるものとし、この線材配設装置10の構成について説明する。
【0019】
この線材配設装置10は、ノズル21から線材11を所定の速度で繰出す線材繰出手段20と、そのノズル21から繰出された線材11が湾曲した後に配索されるように被配設部材12を支持する部材支持手段13と、その被配設部材12に対してノズル21を少なくとも配索方向に移動させる相対移動手段40と、そのノズル21から繰出されて被配設部材12に配索される線材11に張力を付与する張力付与手段33(
図6)と、を備える。
【0020】
図5に示すように、この実施の形態における被配設部材12は、絶縁物から成り、ノズル21(
図6)から繰出される線材11がその表面に渦巻き状に配設される円板状のベース板12であって、その表面には、線材11が収納される凹溝12aが渦巻き状に形成されるものとする。そして、この被配設部材である板状のベース板12の周囲には、このベース板12を取付けるための取付部12bが周囲から突出して形成されたものを示し、この取付部12bには、取付ネジ12cが挿通する取付孔が形成されるものとする。なお、図示しないが、渦巻き状に形成された凹溝12aの始端と終端には、線材11を係止する係止片が形成されるものとする。
【0021】
このような板状の被配設部材12を支持する部材支持手段は、水平な上面を有する可動台13であって、
図5及び
図6に示すように、その上面には被配設部材12の取付部12bが載置されるボス13aが上方に突出して設けられ、このボス13aには取付ネジ12cが螺着される雌ねじ孔がそれぞれ形成されるものとする。そして、被配設部材であるベース板12は、その取付部12bをボス13aに載置した状態で、取付孔に挿通された取付ネジ12cをボス13aにおける雌ねじに螺着することにより、その被配設部材12を支持するように構成される。
【0022】
相対移動手段40は、被配設部材12を支持する可動台13を移動させる
図6に示す台移動手段41と、ノズル21を3軸方向に移動させる
図7に示す装置移動手段51とを備える。
【0023】
図6に示す様に、この実施の形態における台移動手段41は、可動台13を水平面内において回転させる回転モータ42と、その回転モータ42を可動台13とともに略水平横方向であるX軸方向に移動させるX軸方向アクチュエータ43と、そのX軸方向アクチュエータ43を可動台13とともに略水平前後方向であるY軸方向に移動させるY軸方向アクチュエータ44とを備える。
【0024】
このY軸方向アクチュエータ44は、サーボモータ44aによって回動駆動されるボールネジ44bと、このボールネジ44bに螺合して平行移動する従動子44cを備え、従動子44cがY軸方向に移動可能に、そのハウジング44dが基台9にY軸方向に延びて取付けられる。
【0025】
X軸方向アクチュエータ43は、Y軸方向アクチュエータ44と同一構造であって、その従動子43cがX軸方向に移動可能に、そのハウジング43dがY軸方向アクチュエータ44の従動子44cにX軸方向に延びて取付けられる。
【0026】
X軸方向アクチュエータ43の従動子43cはハウジング43dの上部においてX軸方向に移動可能に設けられ、この従動子43cに回転モータ42がその回転軸42aを上方にした状態でその本体42bが取付けられる。そして、その回転軸42aの上端に可動台13がその上面を水平にした状態で取付けられる。
【0027】
X軸方向アクチュエータ43におけるサーボモータ43a、Y軸方向アクチュエータ44におけるサーボモータ44a及び回転モータ42には、この線材配設装置10を制御するコントローラ14(
図1~
図3)の制御出力がそれぞれ接続される。そして、このような構成の台移動手段41にあっては、その可動台13を水平面内で回転させるとともに、その可動台13を水平面内において2軸方向に移動可能に構成される。
【0028】
図6に示す様に、ノズル21から線材11を所定の速度で繰出す線材繰出手段20は、可動台13の上方において、そのノズル21が被配設部材12の表面に対して直交するように、即ち、この実施の形態において、そのノズル21は鉛直方向(Z軸方向)に向くように設けられる場合を示す。
【0029】
ここで、線材11は比較的太いものを示し、複数の電線を撚ったリッツ線等が例示される。けれども、この線材11は、複数の電線を撚ったものに限られず、湾曲して被配設部材12に配設可能で有る限り、芯材が単一のいわゆる単線であっても良い。
【0030】
図4に示すように、この実施の形態において、線材繰出手段20におけるノズル21は分割されて台座23に設けられるものとし、上側ノズル片21aとその上側ノズル片21aの延長上に設けられた下側ノズル片21bとを有するものを示す。これらは線材11が通過可能な内径を有する管状体であって、台座23に取付ブラケット24を介して同軸に取付けられる。
【0031】
同軸に設けられた上側ノズル片21aと下側ノズル片21bとの間には隙間が形成され、線材繰出手段20は、この隙間に表出する線材11を挟む一対のローラ26,27を備え、台座23には、その内の一方のローラ26を回転させる繰出しモータ28が設けられる。
【0032】
即ち、この実施の形態では、回転軸28aに一方のローラ26が取付けられた繰出しモータ28が台座23に取付けられる場合を示し、他方のローラ27は揺動部材29を介して台座23に取付けられる。揺動部材29はノズル21に偏倚した状態でそのノズル21と平行に延びて設けられる。この揺動部材29は、その状態で基端が台座23に枢支され、その先端に他方のローラ27が枢支されるものとする。
【0033】
揺動部材29の中間にはコイルスプリング31の一端が取付けられ、コイルスプリング31は一方のローラ26側に引き延ばされて、その他端が台座23に取付けられる。これによりこのコイルスプリング31は、揺動部材29を介して他方のローラ27を一方のローラ26に押付けるように付勢し、ノズル21に線材11が挿通されて、上側ノズル片21aと下側ノズル片21bとの間に線材11が存在すると、一対のローラ26,27はその線材11を挟持する様に構成される。そして、この状態で繰出しモータ28が駆動して一方のローラ26を所定の速度で回転させると、一対のローラ26,27が挟持する線材11をノズル21の端部、この実施の形態ではその下端から所定の速度で繰出すように構成される。
【0034】
図1~
図3に示すように、台座23の上部には枢支台25が取付けられ、この枢支台25には、図示しない線材供給源から引き出された線材11を転向させて上側ノズル片21aの上端に真っ直ぐに案内する転向ローラ32が枢支される。そして、ノズル21から繰出された線材11に張力を付与する張力付与手段33は、下側ノズル片21bの下端に取付具34を介して取付けられた台板35に設けられる。
【0035】
具体的に、張力付与手段33は、その台板35に中間の回動支点の回りで回動可能に設けられたテンションバー36と、このテンションバー36の先端に取付けられてノズル21から繰出されて湾曲する線材11の湾曲内側に当接する線材ガイド37と、その線材ガイド37が線材11の湾曲外側に向かうようにテンションバー36を回転付勢する弾性部材38と、そのテンションバー36の回動角度を検出する角度検出手段39とを備える。
【0036】
この実施の形態における角度検出手段は、回動軸39aの回転角度を検出するポテンショメータ39であって、このポテンショメータ39が台板35に取付けられ、その回動軸39aにテンションバー36の中間が取付けられる。テンションバー36はノズル21と略平行に設けられ、その先端に線材ガイド37が設けられる。この実施の形態では、テンションバー36の先端に枢支されたローラから成る線材ガイド37を示す。
【0037】
一方、この実施の形態における弾性部材はコイルスプリング38であって、コイルスプリング38の一端がテンションバー36の基端に取付けられ、そのテンションバー36の基端をノズル21から遠ざける方向に付勢するように引き延ばされたコイルスプリング38の他端が台板35に取付けられる。
【0038】
このように引き延ばされた状態で取付けられたコイルスプリング38は、縮まろうとする付勢力により線材ガイド37を線材11に押しつけて、その線材ガイド37を線材11の湾曲外側に向かうようにテンションバー36を回転付勢し、それによりノズル21から繰出されて被配設部材12に向かう線材11に所定の張力を付与するように構成される。
【0039】
このため、コイルスプリング38により線材11に付与される張力の強さはテンションバー36の回転角度により表すことが可能とになり、その回転角度をポテンショメータ36が線材11に付与される張力の程度として検出することになる。そして、この線材配設装置10には、角度検出手段であるポテンショメータ39により検出された回転角度が所定の値となるように線材繰出手段20を制御可能な繰出速度制御手段14が備えられる。
【0040】
この実施の形態における繰出速度制御手段14は、この線材配設装置10の全体を制御するコントローラ14であって、張力付与手段33におけるポテンショメータ39の検出出力がその制御入力に接続され、その制御出力が線材繰出手段20における繰出しモータ28に接続されるものとする。そして、このコントローラ14は、ポテンショメータ39により検出されたテンションバー36の回転角度が所定の値となるように、即ちテンションバー36の角度が変化せずに一定となるように繰出しモータ28を制御するように構成される。
【0041】
なお、
図1~
図4に示すように、台板35には、この台板35に交差するように交差板46が取付けられ、この交差板46にはノズル21から繰り出されて湾曲する線材11を幅方向から挟む一対のローラ47,47が枢支される。そして、この一対のローラ47,47は、ノズル21から繰り出された線材11がその幅方向に向かうことを防止して、被配設部材12における配索方向に線材11を正確に湾曲させるように構成される。
【0042】
このような張力付与手段33とともにノズル21を含む線材操出手段20を3軸方向に移動させる装置移動手段51は、
図7に示す様に、X,Y及びZ軸方向伸縮アクチュエータ52~54の組み合わせにより構成される。各伸縮アクチュエータ52~54は、サーボモータ52a~54aによって回動駆動されるボールネジ52b~54bと、このボールネジ52b~54bに螺合して平行移動する従動子52c~54cを備える。
【0043】
Z軸方向伸縮アクチュエータ54は、従動子54cが鉛直方向に移動可能に、そのハウジング54dがX軸方向伸縮アクチュエータ52の従動子52cに取付けられ、X軸方向伸縮アクチュエータ52は、従動子52cがZ軸方向伸縮アクチュエータ54とともにX軸方向に移動可能に、そのハウジング52dが基台9の側面に取付けられる。Z軸方向伸縮アクチュエータ54の従動子54cには、Y軸方向伸縮アクチュエータ53の従動子53cが取付けられ、そのY軸方向伸縮アクチュエータ53のY軸方向に延びるハウジング34dの端部には取付板56が取付けられる。そして、この取付板56にノズル21を含む線材操出手段20における台座23がネジ止めされる。
【0044】
各伸縮アクチュエータ52~54におけるサーボモータ52a~54aには、この線材配設装置10を制御するコントローラ14(
図1~
図3)の制御出力がそれぞれ接続され、このような構成の装置移動手段51は、コントローラ14からの指令により、線材操出手段20におけるノズル21を3軸方向に移動させるように構成される。そして、この装置移動手段51は、台移動手段41とともに、被配設部材12に対してノズル21を移動させる相対移動手段40を構成することになる。
【0045】
図6及び
図7に示すように、線材配設装置10には、ノズル21から繰出されて湾曲した後の線材11を被配設部材12に押付ける押付部材61が更に備えられる。この押付部材61は、ノズル21が取付けられた取付板56に、この押付部材61を3軸方向に移動させる部材移動手段62を介して、取付けられる。
【0046】
この部材移動手段62も装置移動手段51と同一構造で有り、X軸、Y軸及びZ軸方向伸縮アクチュエータ63~65の組み合わせにより構成される。Z軸方向伸縮アクチュエータ65は、従動子65cが鉛直方向に移動可能に、そのハウジング65dがY軸方向伸縮アクチュエータ64の従動子64cに取付けられ、Y軸方向伸縮アクチュエータ64は、従動子64cがY軸方向に移動可能に、そのハウジング64dがX軸方向伸縮アクチュエータ63の従動子63cに取付けられる。そして、X軸方向伸縮アクチュエータ63は、従動子63cがX軸方向に移動可能に、そのハウジング63dがX軸方向に延びて取付板56に取付けられる。
【0047】
Z軸方向伸縮アクチュエータ65の従動子65cには、押付部材61が鉛直方向に延びて取付けられる。この押付部材61は、下端がノズル21側に湾曲したへらであって、その下端における丸みに線材11が押しつけられてノズル21から繰出された線材11を被配設部材であるベース板12の表面に形成された凹溝12aに押し込むように構成される。
【0048】
次に、このように構成された線材配設装置を用いた本発明の線材配設方法について説明する。
【0049】
本発明の線材配設方法は、ノズル21から所定の速度で繰出される線材11を湾曲させて被配設部材12に配索する方法であって、ノズル21から繰出される線材11に張力を付与し、ノズル21から繰出されて張力が付与された線材11を被配設部材12に配索することを特徴とする。
【0050】
上記線材配設装置10を用いることから、被配設部材12は部材支持手段13に支持させる。被配設部材としてベース板12を用いるこの実施の形態では、
図5に示すように、その取付部12bを部材支持手段である可動台13のボス13aに載置した状態で、取付部12bにおける取付孔に挿通された取付ネジ12cを、ボス13aにおける雌ねじに螺着することにより、その被配設部材12を可動台13に支持させることになる。
【0051】
一方、被配設部材としてのベース板12に配設される線材11にあっては、例えば、図示しないドラムに巻回された状態で準備され、上記線材配設装置10を用いるので、その線材11を線材供給源となるドラムから引き出して、
図1~
図4に示すように、転向ローラ32により転向させて、その転向した線材11をノズル21に挿通させておく。
【0052】
そして、ノズル21に挿通した線材11を、
図4に示すように、上側ノズル片21aと下側ノズル片21bとの間において一対のローラ26,27により挟持させる。その状態で、繰出しモータ28を駆動して一対のローラ26,27を回転させて線材11をノズル21から繰出す。そして、所定量の線材11がノズル21から繰出した状態で、繰出しモータ28による一方のローラ26の回転を禁止させて、線材11のノズル21の端部から繰出しを停止させておく。
【0053】
この状態から、被配設部材12に線材11を配設する。そのために、相対移動手段40は、線材11の配設開始位置まで被配設部材12に対してノズル21を移動させ、そのノズル21から繰出されている線材11を被配設部材12の配設開始位置における図示しない係止片にその端部を係止させる。
【0054】
その後、平板状のベース板12の表面に形成された凹溝12aにノズル21の端部を対向させた状態で、線材11を繰出しつつノズル21を配索方向に移動させる。これにより、
図1に示す様に、そのノズル21から繰出される線材11を被配設部材12に配索する。
【0055】
ここで、被配設部材12に対するノズル21の移動にあっては、相対移動手段40(
図6及び
図7)により行われ、線材11のノズル21からの所定の速度での繰出しは、繰出しモータ28を駆動させて一方のローラ26を回転させて、一対のローラ26,27が挟持する線材11をノズル21を介してその端部から順次繰出すことにより行われる。
【0056】
図1に示す様に、上記線材配設装置10では、ノズル21を含む線材操出手段20が被配設部材12の上方に設けられ、そのノズル21は鉛直方向を向いて被配設部材12の表面に対して直交するように取付けられているので、ノズル21から鉛直方向下方に繰出された線材11は湾曲し、被配設部材12の上面に沿う様に水平方向に転向した後に被配設部材12に配索されることになる。
【0057】
そして、本発明の線材配設方法では、ノズル21から繰出される線材11に張力を付与する。上記線材配設装置10では、ノズル21から繰出される線材11に張力を付与する張力付与手段33を備えており、この張力付与手段33は、線材11の湾曲内側に当接する線材ガイド37を弾性部材38により線材11の湾曲外側に向けて付勢することにより行われる。
【0058】
このように、ノズル21から繰出されて被配設部材12に配索される線材11に張力を付与するので、線材11とノズル21との間に生じる摺動抵抗は、そのノズル21を通過した後に線材11に付与される張力に影響を与えるようなことは無い。よって、本発明では、ノズル21を通過した後に張力を付与することにより、被配設部材12に配設される線材11の張力を安定させることが可能になるのである。
【0059】
また、線材ガイド37を線材11の湾曲外側に向けて付勢することによりノズル21から繰出された線材11に張力を付与するので、
図2に示す様に、その線材11に比較的高い張力が付与されると、弾性部材であるコイルスプリング38が引き延ばされてノズル21から繰出された線材11は直ちに配索方向に転向することになる。
【0060】
その一方、
図3に示すように、その線材11に付与される張力が比較的低いと、弾性部材であるコイルスプリング38が引き延ばされるようなことはなく、ノズル21から繰出された線材11が直ちに配索方向に転向するようなことはない。
【0061】
このため、コイルスプリング38により付勢される線材ガイド37の位置により、線材11に付与される張力も異なることに成り、弾性部材であるコイルスプリング38の引き延ばされる程度は、線材ガイド37が先端に設けられたテンションバー36の回転角により変化することになる。よって、このテンションバー36の回転角度が一定であると、ノズル21から繰出された線材11に付与される張力も変動せずに一定となる。
【0062】
ここで、この実施の形態における線材11は比較的太いリッツ線であるので、このような比較的太い線材11を被配設物であるベース板12に配設する際には、複数の電線を撚ったリッツ線11の、その撚りの程度を均一にした状態で被配設物12に配設する必要から、そのリッツ線11における張力を一定にした状態で配設することが求められる。
【0063】
上記線材配設装置10では、線材11に実際に張力を付与することになる線材ガイド37が先端に設けられたテンションバー36の回転角度を、検出手段であるポテンショメータ39により検出するので、そのテンションバー36の回動角度が所定の角度となるように線材11のノズル21からの繰出速度を制御することにより、その線材11に付与される張力を常に一定にした状態で、線材11の配設作業を行うことが可能となる。
【0064】
即ち、例えば、
図2に示す様に、弾性部材であるコイルスプリング38が引き延ばされて線材11に比較的高い張力が付与されるテンションバー36の回動角度を維持するように、線材11のノズル21からの繰出速度を制御すれば、その線材11に比較的高い張力を付与した状態で、線材11の配設作業を行うことが可能となる。
【0065】
その一方、
図3に示すように、弾性部材であるコイルスプリング38の引き延ばし量を少なくして、線材11に比較的低い張力が付与されるテンションバー36の回動角度を維持するように、線材11のノズル21からの繰出速度を制御すれば、その線材11に比較的低い張力を付与した状態で、線材11の配設作業を行うことが可能となるのである。
【0066】
図5に示すように、この実施の形態における被配設部材12は、その表面に線材11が収納される凹溝12aが渦巻き状に形成されたものであるので、ノズル21は配索方向となる凹溝12aの長手方向に移動させることになり、
図1~
図3に示すように、そのノズル21から繰出されて所定の張力が付与された線材11は、被配設部材12の上面に沿う様に水平方向に転向した後にその凹溝12aに順次収容されて配設されることになる。
【0067】
そして、上記線材配設装置10は、ノズル21から繰出された後の線材11を被配設部材12に押付ける押付部材61を備えているので、ノズル21から繰出されて所定の張力が付与された後の線材11は、水平方向に転向された状態で、この押付部材61により凹溝12aに押し込まれることになり、線材ガイド37を押しつけることにより線材11に付与される張力により、その線材11が凹溝12aから抜け出るようなことを防止することが可能となるのである。
【0068】
なお、上述した実施の形態では、被配設部材12の上方に設けられるノズル21が鉛直方向を向いて、水平に取付けられる被配設部材12の表面に対して直交する場合を説明したので、上述したように、ノズル21から繰出された後の線材11は、湾曲した後にその繰出方向に対して略直角に転向した後に被配設部材12の上面に沿って配設されることになる。
【0069】
けれども、線材11が比較的太く、湾曲し難いようなものである場合には、
図8に示すように、被配設部材12の上方に設けられるノズル21を、被配設部材12の表面に対して傾斜するように取付けても良い。
【0070】
このようにノズル21を傾斜させた線材配設装置10では、ノズル21から繰出された後の線材11は、湾曲した後にその繰出方向に対してノズル21の傾斜角に相当する角度に転向した後に被配設部材12の上面に沿って配設されることになる。すると、転向角が直角未満となることから、線材11が比較的太く、湾曲し難いようなものであっても、その線材11を容易に被配設部材12に配設することができる。
【0071】
そして、このようにノズル21を傾斜させても、そのノズル21から繰出された後の線材11に所定の張力を付与することにより、ノズル21を通過して被配設部材12に配設される線材11の張力を安定させることが可能になる。
【0072】
また、線材11に張力を付与する線材ガイド37を回動支点の回りで回動可能なテンションバー36に設ければ、そのテンションバー36の回動角度が所定の角度となるように線材11のノズル21からの繰出速度を制御することにより、比較的太く、湾曲し難いような線材11であっても所望の張力で線材11を被配設物12に配設し得るものとなる。
【0073】
また、上述した実施の形態では、ノズル21から繰出されて湾曲した後の線材11を被配設部材12に押付ける押付部材61が備えられた線材配設装置10を説明したけれども、線材11を被配設物12に配設可能であれば、この押付部材61は必ずしも用いることを必要としない。
【0074】
また、上述した実施の形態では、被配設部材12が電磁調理器に用いられるものであって、その表面に凹溝12aが渦巻き状に形成された円板状のベース板である場合を説明した。けれども、線材11が配設可能で有る限り、被配設部材12は電磁調理器に用いられるものや円板状のものに限定されるものではなく、その配設形状は渦巻き状に限られずに例えば長円や楕円形状に配設するようなものであっても良い。そして、その表面に凹溝12aを形成していないようなものであっても良い。
【0075】
また、上述した実施の形態では、取付ネジ12cを用いて被配設部材12を部材支持手段である可動台13に支持させる場合を説明したけれども、被配設部材12の部材支持手段への支持は、取付ネジ12cを用いること無く、他の手段であって良い。
【0076】
更に、上述した実施の形態では、線材ガイド37がローラであって、押付部材61はその下端がノズル側に湾曲したへらである場合を説明した。けれども、これは一例であって、線材ガイド37が線材11を摺動させるへら状のものであって、押付部材61は線材11が外周に周回されて回転するローラであっても良い。
【符号の説明】
【0077】
10 線材配設装置
11 線材
12 被配設部材
13 部材支持手段
14 コントローラ(繰出速度制御手段)
21 ノズル
25 線材繰出手段
33 張力付与手段
36 テンションバー
37 線材ガイド
38 コイルスプリング(弾性部材)
39 ポテンショメータ(検出手段)
40 相対移動手段
61 押付部材