(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】複合膜
(51)【国際特許分類】
B32B 5/28 20060101AFI20230714BHJP
B01D 67/00 20060101ALI20230714BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20230714BHJP
D04H 1/4374 20120101ALI20230714BHJP
D04H 1/728 20120101ALI20230714BHJP
D04H 3/02 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
B32B5/28 Z
B01D67/00
B01D69/12
D04H1/4374
D04H1/728
D04H3/02
(21)【出願番号】P 2017125583
(22)【出願日】2017-06-27
【審査請求日】2020-05-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】角前 洋介
(72)【発明者】
【氏名】倉持 政宏
(72)【発明者】
【氏名】小坂 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】多羅尾 隆
【合議体】
【審判長】藤原 直欣
【審判官】森本 哲也
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/046564(WO,A1)
【文献】特開2016-182701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
D04H1/42-1/4391
D04H3/02-3/037
B01D67/00
B01D69/12
D04H1/728
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一繊維層と第二繊維層を備える積層体、および、膜構成樹脂を有しており、
前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を有する、複合 膜であって、
複合膜における前記第一繊維層側の主面に前記膜構造部分が存在しており、
複合膜における前記第一繊維層側の主面を1000倍で撮影した電子顕微鏡写真に写る前記膜構造部分には、繊維形状が存在している部分および開孔が存在している部分は認められないものであって、
前記第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径は3μm以下であり、
前記第一繊維層は前記 第二繊維層よりも親水性が低い、
複合膜。
【請求項2】
(1)繊維集合体を用意する工程、
(2)前記繊維集合体における一方の主面上に別の繊維集合体を形成することで、前記別 の繊維集合体由来の第一繊維層ならびに前記繊維集合体由来の第二繊維層を備える積層体 を調製する工程、
(3)前記積層体における前記第二繊維層が露出している主面に、親水性樹脂溶液を付与 する工程、
(4)前記付与した親水性樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第二繊維層の構成繊 維間に前記親水性樹脂を存在させる工程、
(5)前記積層体における前記第一繊維層が露出している主面に、膜構成樹脂溶液を付与 する工程、
(6)前記付与した膜構成樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第一繊維層の構成繊 維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を形成する工程、
(7)前記親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いて、前記第二繊維層の構成繊維間に存在す る前記親水性樹脂を除去する工程、
を備える、
請求項1に記載の複合膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からフィルムなどの膜構造部分を備えた複合膜は、例えば、水処理膜などの液体分離膜や気体分離膜、燃料電池の高分子電解質膜、キャパシタや一次/二次電池など電気化学素子用セパレータ、医療用材料、イオン交換膜、透析膜などといった様々な産業用途に使用されている。
そして、様々な産業用途に使用する際の機能向上を目的として、膜構造部分の薄膜化が検討されている。
しかしながら、膜構造部分を薄膜化しようとする場合、膜構造部分の強度が弱いため寸法変化あるいは亀裂や破断が生じやすいという物性上の問題、例えば、膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を製造するのが困難であるという製造上の問題、そして、ハンドリング性が悪いという取り扱い上の問題などが発生すると考えられた。
【0003】
このような問題を解決し得ると考えられる、膜構造部分を備えた複合膜およびその製造方法として、例えば、以下の従来技術が知られている。
特開2016-182701号公報(特許文献1)には、基材上に繊維堆積層を備えた積層体の該繊維堆積層へ、熱硬化性樹脂溶液を付与することで製造されたフィルム材が開示されている。特許文献1の膜構造部分は、繊維堆積層を構成する繊維によって補強されてなるため、膜構造部分を薄膜化した場合であっても、上述の問題が発生し難いと考えられる。
なお、特許文献1には、その具体的な態様として、
・基材の材質として、樹脂シート、紙シート、布シート、ガラス繊維シートなどを用いることができ、基材の厚さは10~100μmであるのが好ましいこと、
・繊維堆積層の構成繊維は、特に限定されず各種樹脂を使用して製造できるものであり、電界紡糸法により繊維堆積層を製造する場合、使用する樹脂はPESが好ましいこと、
・繊維堆積層の平均繊維径は例えば1μm以下であり、繊維堆積層の厚さは1~3μmであるのが好ましいこと、
・熱硬化性樹脂の種類は特に限定されないものであり、使用する樹脂はエポキシ樹脂が好ましいこと、
・膜材における、繊維堆積層の空隙中に熱硬化性樹脂溶液が浸透してなる層の厚さは5~100μmであること、
が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
本願発明者らは、特許文献1などの従来技術を参考に、第一繊維層と第二繊維層を備える積層体、および、膜構成樹脂を有しており、前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を有する、複合膜の調製を検討した。
しかし、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を備えた複合膜を提供しようとした際に、調製した複合膜における第一繊維層側の主面に、膜化していない部分(例えば、繊維形状が存在している部分や意図せず開孔が存在している部分があるなど)があった。
そして、この問題は上述のとおり、第一繊維層と第二繊維層を備える積層体と膜構成樹脂を用いて複合膜を提供しようとする際に生じ易いものであった。
【0006】
問題の発生原因を本願発明者らが検討したところ、膜構造部分を構成し得る第一繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂が十分に存在できない結果、上述の現象が発生したものであると考えられた。
そのため従来技術を参照する限りでは、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えることで、様々な産業用途に有用な複合膜を提供することが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えることで、様々な産業用途に有用な複合膜の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明は、
「第一繊維層と第二繊維層を備える積層体、および、膜構成樹脂を有しており、
前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を有する、複合 膜であって、
複合膜における前記第一繊維層側の主面に前記膜構造部分が存在しており、
複合膜における前記第一繊維層側の主面を1000倍で撮影した電子顕微鏡写真に写る前記膜構造部分には、繊維形状が存在している部分および開孔が存在している部分は認められないものであって、
前記第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径は3μm以下であり、
前記第一繊維層は前記 第二繊維層よりも親水性が低い、
複合膜。」
である。
また、本発明の請求項2に係る発明は、
「(1)繊維集合体を用意する工程、
(2)前記繊維集合体における一方の主面上に別の繊維集合体を形成することで、前記別 の繊維集合体由来の第一繊維層ならびに前記繊維集合体由来の第二繊維層を備える積層体 を調製する工程、
(3)前記積層体における前記第二繊維層が露出している主面に、親水性樹脂溶液を付与 する工程、
(4)前記付与した親水性樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第二繊維層の構成繊 維間に前記親水性樹脂を存在させる工程、
(5)前記積層体における前記第一繊維層が露出している主面に、膜構成樹脂溶液を付与 する工程、
(6)前記付与した膜構成樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第一繊維層の構成繊 維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を形成する工程、
(7)前記親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いて、前記第二繊維層の構成繊維間に存在す る前記親水性樹脂を除去する工程、
を備える、請求項1に記載の複合膜の製造方法。」
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、「第一繊維層と第二繊維層を備える積層体、および、膜構成樹脂を有しており、前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を有する、複合膜であって、複合膜における前記第一繊維層側の主面に前記膜構造部分が存在して」いる複合膜に係る発明である。
そして、「第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径は3μm以下」であることによって、第一繊維層の厚さが均一かつ薄いものであるため、厚さが均一かつ薄い膜構造部分を備えた複合膜を提供できる。
更に、本願発明者らは上述の課題を解決するため検討を続けた結果、第一繊維層と第二繊維層の関係性が、「前記第一繊維層は前記第二繊維層よりも親水性が低い」という組み合わせを満足するときに、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供できることを見出した。
以上から、本発明は、様々な産業用途に有用な複合膜を提供できる。
【0010】
特に、本発明の複合膜は上述した構成を備えているため、例えば水などの液体や、二酸化炭素、アンモニア、水蒸気、塩化水素などの気体といった親水性の流体用分離膜として有用である。
つまり、本発明の複合膜は、以下の機能が発揮される複合膜であると考えられる。
・複合膜を構成している積層体のうち第一繊維層は親水性が低く、親水性の流体によって溶解や膨潤あるいは収縮などの変形が発生し難い構成部材である。そのため、変形が発生し難い第一繊維層により複合膜を構成する膜構造部分が補強されていることで、複合膜が親水性の流体に曝されても、複合膜に寸法変化あるいは亀裂や破断が生じやすいという物性上の問題や、ハンドリング性が悪いという取り扱い上の問題などが発生するのを防止できる。
・第二繊維層は繊維で構成されている部材であるため、通気性と通液性を備えている。そして、複合膜を構成している積層体のうち第二繊維層は親水性が高く、親水性の流体との親和性が高い構成部材である。そのため、第二繊維層は親水性の流体を保持しやすく膜構造部分へ流体を供給しやすい。
更に、第二繊維層は膜構造部分を外側からも補強する役割を担うことができる部材であり、複合膜に寸法変化あるいは亀裂や破断が生じやすいという物性上の問題や、ハンドリング性が悪いという取り扱い上の問題などが発生するのを防止できる。
【0011】
また、別の本発明は、上述した本発明に係る複合膜の製造方法である。
本製造方法は、「(1)繊維集合体を用意する工程、
(2)前記繊維集合体における一方の主面上に別の繊維集合体を形成することで、前記別の繊維集合体由来の第一繊維層ならびに前記繊維集合体由来の第二繊維層を備える積層体を調製する工程、
(3)前記積層体における前記第二繊維層が露出している主面に、親水性樹脂溶液を付与する工程、
(4)前記付与した親水性樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第二繊維層の構成繊維間に前記親水性樹脂を存在させる工程、
(5)前記積層体における前記第一繊維層が露出している主面に、膜構成樹脂溶液を付与する工程、
(6)前記付与した膜構成樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を形成する工程、
(7)前記親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いて、前記第二繊維層の構成繊維間に存在する前記親水性樹脂を除去する工程、
を備える、前記積層体における前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を有する複合膜の製造方法」に係る発明である。
そして、「前記第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径は3μm以下」であることによって、厚さが均一かつ薄い第一繊維層を調製できるため、厚さが均一かつ薄い膜構造部分を備えた複合膜を提供できる。
更に、本発明の製造方法は「前記第一繊維層は前記第二繊維層よりも親水性が低い」という製造条件を有していると共に、上述した複合膜の製造方法において(3)と(4)および(7)の製造工程を上述した工程順で備えているため、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供できる。
【0012】
本発明の製造方法が、本発明にかかる複合膜を製造できる理由は完全に明らかになっていないが、以下の効果が発揮されているためだと考えられる。
つまり、上述の工程(3)(4)を経た後の積層体は、第二繊維層の構成繊維間に親水性樹脂が存在していることで、膜構成樹脂溶液が第二繊維層の構成繊維間に進入し難い態様を備えている。
そのため、上述の工程(3)(4)を経た後の積層体における、第一繊維層が露出している主面に膜構成樹脂溶液を付与する工程(5)において、膜構成樹脂溶液が第一繊維層から第二繊維層へ移動するのが防止されており、付与された膜構成樹脂溶液は第一繊維層の構成繊維間に留まり易いという効果が発揮される。
特に、本効果は、第二繊維層よりも第一繊維層に対する親和性が高い膜構成樹脂溶液を採用した場合のみならず、例えば、第一繊維層と第二繊維層の双方に対し同等に親和性を有する膜構成樹脂溶液や、第一繊維層よりも第二繊維層に対する親和性が高い膜構成樹脂溶液を採用した場合であっても(換言すれば、第一繊維層から第二繊維層へ移動し易い膜構成樹脂溶液を採用した場合であっても)、膜構成樹脂溶液が第一繊維層から第二繊維層へ移動するのが防止されていることで、付与された膜構成樹脂溶液は第一繊維層の構成繊維間に留まり易いという効果が発揮される。
そのため、第一繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂溶液が十分かつ潤沢に存在した状態で、膜構成樹脂溶液が付与された積層体を、次の工程である溶媒を除去して膜構造部分を形成する工程(6)へ供することができる。その後、親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いて、第二繊維層の構成繊維間に存在する親水性樹脂を除去する工程(7)を経ることで、本発明にかかる複合膜を提供できる。
その結果、第一繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂が十分に存在していることで、膜化していない部分が存在するのを防止して、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供できる。
【0013】
以上から、本発明は、様々な産業用途に有用な複合膜を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1で調製した複合膜における、膜構成樹脂溶液を付与した側の主面を1000倍で撮影した、電子顕微鏡写真である。
【
図2】実施例2で調製した複合膜における、膜構成樹脂溶液を付与した側の主面を1000倍で撮影した、電子顕微鏡写真である。
【
図3】実施例3で調製した複合膜における、膜構成樹脂溶液を付与した側の主面を1000倍で撮影した、電子顕微鏡写真である。
【
図4】比較例1で調製した複合膜における、膜構成樹脂溶液を付与した側の主面を1000倍で撮影した、電子顕微鏡写真である。
【
図5】比較例2で調製した複合膜における、膜構成樹脂溶液を付与した側の主面を1000倍で撮影した、電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。
【0016】
本発明の複合膜は、第一繊維層と第二繊維層を備える積層体、および、膜構成樹脂を有している。
本発明でいう第一繊維層および第二繊維層(以降、合わせて各繊維層と称することがある)とは、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などのシート状の布帛由来の繊維からなる層である。
【0017】
各繊維層を構成する繊維の調製方法は適宜選択できるが、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、紡糸液に電界を作用させ紡糸する方法である静電紡糸法、遠心力を用いて紡糸する方法、特開2011-012372号公報などに記載の随伴気流を用いて紡糸する方法、特開2005-264374号公報などに記載の静電紡糸法の一種である中和紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法など公知の方法を使用することができる。
【0018】
上述した方法を用いて調製した繊維を、例えば、乾式法、湿式法へ供することで繊維ウェブを調製でき、調製した繊維ウェブの構成繊維を絡合および/または一体化させて不織布を調製できる。
構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウエブを加熱処理へ供するなどしてバインダあるいは接着繊維によって構成繊維同士を接着一体化あるいは溶融一体化させる方法などを挙げることができる。
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、カレンダーロールにより加熱加圧する方法、熱風乾燥機により加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている有機樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
【0019】
あるいは、直接紡糸法を用いて、紡糸を行うと共に繊維を捕集して繊維ウェブや不織布を調製してもよい。
なお、直接紡糸法を用いて紡糸した繊維を捕集することで、平均繊維径が細いと共に繊維径の均一な繊維からなる繊維ウェブや不織布を調製でき好ましい。特に、静電紡糸法を用いることで、より平均繊維径が細いと共により繊維径の均一な繊維からなる繊維ウェブや不織布を調製でき好ましい。
静電紡糸法を採用する場合には、曳糸性を有する紡糸液を用いるのが好ましい。曳糸性を有する紡糸液を用いることで、より繊維径が均一かつ細い繊維を調製でき好ましい。なお、紡糸溶液が曳糸性を有するか否かは、特開2017-053078号公報に記載の方法で判別することができる。
【0020】
上述のようにして調製した繊維を織るあるいは編むことで、織物や編物を調製できる。
【0021】
なお、繊維ウェブ以外にも不織布あるいは織物や編物など布帛を、上述した構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法へ供しても良い。
【0022】
第一繊維層は膜構成樹脂と共に膜構造部分を構成する部材であって、膜構成樹脂中に第一繊維層の構成繊維が存在する(換言すれば、第一繊維層の構成繊維間に膜構樹脂が存在する)ことで、膜構造部分を補強でき、膜構造部分を薄膜化した際に生じる上述の各種問題が発生するのを防止できる部材である。
第一繊維層を構成する繊維は、膜化していない部分が存在するのを防止し、厚さが均一かつ薄い膜構造部分を実現できるよう、その平均繊維径は3μm以下であり、2μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのが好ましく、800nm以下であるのが好ましい。平均繊維径の下限値は適宜選択するが、10nm以上であるのが現実的である。
【0023】
第二繊維層は第一繊維層と積層してなる積層体を構成する部材であって、膜構造部分を外側からも補強する役割を担うことができる部材である。
第二繊維層を構成する繊維の平均繊維径は適宜選択でき、平均繊維径が細いほど薄い複合膜を提供し易いことから、第二繊維層を構成する繊維の平均繊維径は、15μm以下であるのが好ましく、10μm以下であるのが好ましく、5μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのが好ましく、800nm以下であるのが好ましい。平均繊維径の下限値は適宜選択するが、10nm以上であるのが現実的である。
【0024】
ここでいう「平均繊維径」は、複合膜の表面や断面など繊維を含む測定対象部分を撮影した5000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定した、50点の繊維における各繊維径の算術平均値をいう。なお、繊維の断面形状が非円形である場合には、断面積と同じ面積の円の直径を繊維径とみなす。
【0025】
各繊維層を構成する繊維の繊維長は適宜選択するが、特定長を有する短繊維や長繊維、あるいは、実質的に繊維長を測定することが困難な程度の長さの繊維長を有する連続繊維であることができる。
第一繊維層に含まれている繊維端部の数が少ないことで、表面が平滑で厚さが均一かつ薄い膜構造部分を実現し易いことから、第一繊維層は構成繊維として連続長を有する繊維を含んでいるのが好ましく、第一繊維層の構成繊維が連続長を有する繊維のみであるのがより好ましい。
また、第二繊維層に含まれている繊維端部の数が少ないことで、厚さが均一かつ薄い複合膜を提供し易いことから、第二繊維層は構成繊維として連続長を有する繊維を含んでいるのが好ましく、第二繊維層の構成繊維が連続長を有する繊維のみであるのがより好ましい。
このような連続長を有する繊維は、直接紡糸法(特に、静電紡糸法)を用いて調製することができる。
【0026】
ここでいう「繊維長」は、複合膜の表面や断面など繊維を含む測定対象部分を撮影した5000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定でき、繊維の繊維長が長すぎて測定が困難である場合には、5000倍より低い倍率の電子顕微鏡写真をもとに測定できる。
【0027】
各繊維層を構成する繊維は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ乳酸、全芳香族ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、アラミド樹脂などの芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、パーフルオロスルホン酸樹脂など)、多糖類(デンプン、セルロース系樹脂プルラン、アルギン酸、ヒアルロン酸など)、たんぱく質類(ゼラチン、コラーゲンなど)、ビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなど)、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリビニルピロリドンポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の樹脂を備えた繊維であることができ、一種類の樹脂のみで構成された繊維であっても、混合樹脂など複数種類の樹脂で構成された繊維であってもよい。
これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でもよい。また、樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでもよい。
【0028】
また、各繊維層を構成する繊維は単繊維であっても、フィブリル状の繊維であっても、複合繊維でも構わない。複合繊維として、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの繊維であることができる。
各繊維層を構成する繊維は横断面の形状が、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維であってもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維を例示できる。
【0029】
各繊維層を構成する繊維の種類や混在比率は適宜選択でき、一種類の繊維のみで構成された繊維層であっても、複数種類の繊維が混在してなる繊維層であってもよい。
【0030】
本発明でいう積層体とは、第二繊維層の一方の主面上に第一繊維層を備えた構造体を指す。
第一繊維層と第二繊維層の積層態様は適宜選択でき、第一繊維層と第二繊維層がただ重ね合わされているだけの態様、第一繊維層と第二繊維層の層間がバインダで一体化している態様、第一繊維層と第二繊維層の構成繊維同士が両繊維層間を超え絡合する(例えば、ニードルパンチ処理、水流絡合処理、第二繊維層の主面上に第一繊維層を構成する繊維を抄き上げることで、第一繊維層の構成繊維を第二繊維層中へ入り込ませる方法など)ことで一体化している態様、構成繊維が熱溶融することで繊維間接着がなされ第一繊維層と第二繊維層の層間が一体化している態様、第一繊維層と第二繊維層の層間が超音波接着などにより一体化している態様などであることができる。
特に、直接紡糸法(特に、静電紡糸法)を用いて紡糸した繊維を第二繊維層の一方の主面上に捕集することで第一繊維層を形成して積層体を調製すると、バインダによる接着や構成繊維の熱溶融による接着をすることなく第一繊維層と第二繊維層の層間が一体化してなる積層体を調製できることから、バインダや溶融した構成繊維により通気度など物性が意図せず変化するのを防止して、第一繊維層と第二繊維層の層間を一体化でき好ましい。
【0031】
本発明でいう膜構成樹脂は、本発明の複合膜における第一繊維層の構成繊維間に存在することで、第一繊維層の構成繊維と共に後述する膜構造部分を形成できる樹脂をいう。
膜構成樹脂の種類は、複合膜やその膜構造部分に求める特性、第一繊維層の構造やその構成繊維との親和性などによって、適宜選択することができる。例えば、各繊維層を構成可能な樹脂として挙げた上述の樹脂を、単体樹脂あるいは混合樹脂で膜構成樹脂として使用できる。また、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でもよい。更に、樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでもよい。
【0032】
本発明でいう膜構造部分とは、第一繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂が存在することで、膜状の態様をなしている部分をいう。なお、膜構造部分は、第一繊維層の構成繊維間のみに膜構成樹脂が存在してなる態様であっても、第一繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂が存在してなる態様に加えて第二繊維層の構成繊維間にも膜構成樹脂が存在してなる態様であってもよい。また、前述の態様に加え膜構成樹脂のみからなる層を備えていてもよい。
【0033】
膜構造部分には、膜性能を向上させる為の粒子や機能材を添加あるいは充填することができる。充填する方法は、粒子や機能材を含んだ膜構成樹脂溶液を利用して成膜しても、第一繊維層に粒子や機能材を充填したあとに膜構成樹脂溶液を利用して成膜しても良い。粒子の種類は適宜選択できるが、例えば、シリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、イットリア安定化ジルコニア粒子、アルミナ粒子、金属有機構造体(MOF)、各種ポリマー粒子が利用できる。また、これらの粒子の表面が改質されていてもよい。
粒子形状も適宜選択でき、繊維状、扁平状、球状、数珠状、棒状などであることができる。また、粒子は中実粒子でも中空粒子でもよく、多孔を有する粒子形状であってもよい。
【0034】
繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂が存在することで、膜構造部分が膜状の態様をなしているか否かは、以下の方法で判断することができる。
(膜状の態様をなしているか否かの判断方法(ピンホール簡易検査))
(1) 複合膜の一方の主面を上面にして、メッシュ基材上に複合膜を配置する。
(2) 先端に円形(直径:25mm)の吸気部を有する、0mlの目盛り位置から10mLの目盛り位置まで1mlごとに目盛りのある10mLシリンジを用意する。シリンジの吸気部の円周には、Oリングが付属されている。
(3) 吸気部を複合膜の主面に40Nの力で密着させた状態でシリンジのピストンに力を作用させ、ピストンにおける複合膜側端部を、0mlの目盛り位置から10mLの目盛り位置まで引き上げる。
(4) シリンジのピストンに作用させている力を解放する。
(5) 上述した(1)~(4)の工程を、測定対象の複合膜における両主面に対し各々行った結果、両主面のうち少なくとも一方の主面において、シリンジのピストンに作用させている力を解放した後に、ピストンにおける複合膜側端部が0ml~1mlの目盛り範囲まで戻った場合には、複合膜は膜状の態様をなす膜構造部分を有している(換言すれば、複合膜は膜化していない部分が存在するのが防止されてなる膜構造部分を有している)と判断する。
一方、両主面のいずれにおいても、ピストンにおける複合膜側端部が0ml~1mlの目盛り範囲まで戻らなかった場合には、複合膜は膜状の態様をなす膜構造部分を有していない(換言すれば、複合膜は膜化していない部分が存在するのが防止されてなる膜構造部分を有していない)と判断する。
【0035】
第一繊維層が第二繊維層よりも親水性が低いか否かは、以下の方法で判断することができる。
(親水性の判断方法)
(1)導電率が10μS/cm以下の水(以降、水と称する)を用意する。
(2)第一繊維層あるいは第一繊維層を構成する繊維集合体の主面上に、水を3μL滴下し、液滴設置後15秒経過後における液滴がなす接触角を、接触角装置(DM500、協和界面科学(株)製)を用い、θ/2法により測定する。
(3)第二繊維層あるいは第二繊維層を構成する繊維集合体の主面に対し、(2)の項目の方法を用いて接触角を測定し、各測定結果を比較する。
上述した方法において、第一繊維層あるいは第一繊維層を構成する繊維集合体の主面に対し水が為す接触角が、第二繊維層あるいは第二繊維層を構成する繊維集合体の主面に対し水が為す接触角よりも大きい場合、第一繊維層は第二繊維層よりも親水性が低いと判断する。
【0036】
好適には、上述した(2)の工程において、液滴設置後15秒経過後における液滴がなす接触角が80°以上の第一繊維層(第一繊維層を構成する繊維集合体)であるのが好ましく、90°以上の第一繊維層(第一繊維層を構成する繊維集合体)であるのがより好ましく、100°以上の第一繊維層(第一繊維層を構成する繊維集合体)であるのがより好ましい。
【0037】
また、上述した(3)の工程において、液滴設置後15秒経過後における液滴がなす接触角が50°以下の第二繊維層(第二繊維層を構成する繊維集合体)であるのが好ましく、40°以下の第二繊維層(第二繊維層を構成する繊維集合体)であるのがより好ましく、30°以下の第二繊維層(第二繊維層を構成する繊維集合体)であるのがより好ましい。
【0038】
本発明の複合膜は上述した構成に加えて、第二繊維層よりも膜構成樹脂溶液と親和性が高い第一繊維層を備える複合膜であると、更に、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供でき好ましい。
【0039】
第一繊維層が第二繊維層よりも膜構成樹脂溶液と親和性が高いものか否かは、以下の方法で判断することができる。
(親和性の判断方法)
(1)膜構成樹脂を溶解可能な溶媒に濃度1~20質量%となるように溶解させ、膜構成樹脂溶液を用意する。
(2)第一繊維層あるいは第一繊維層を構成する繊維集合体の主面上に、膜構成樹脂溶液を3μL滴下し、液滴設置後15秒経過後における液滴がなす接触角を、接触角装置(DM500、協和界面科学(株)製)を用い、θ/2法により測定する。
(3)第二繊維層あるいは第二繊維層を構成する繊維集合体の主面に対し、(2)の項目の方法を用いて接触角を測定し、各測定結果を比較する。
上述した方法において、第一繊維層あるいは第一繊維層を構成する繊維集合体の主面に対し膜構成樹脂溶液が為す接触角が、第二繊維層あるいは第二繊維層を構成する繊維集合体の主面に対し膜構成樹脂溶液が為す接触角よりも小さい場合、第一繊維層は第二繊維層よりも膜構成樹脂溶液と親和性が高いと判断する。
【0040】
好適には、上述した(2)の工程において、液滴設置後15秒経過後における液滴がなす接触角が50°以下の第一繊維層(第一繊維層を構成する繊維集合体)であるのが好ましく、40°以下の第一繊維層(第一繊維層を構成する繊維集合体)であるのがより好ましく、30°以下の第一繊維層(第一繊維層を構成する繊維集合体)であるのがより好ましい。
特に、膜構成樹脂溶液が第一繊維層(第一繊維層を構成する繊維集合体)に浸透し易いほど、更に、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供し易い。そのため、上述した(2)の工程において、液滴設置後15秒経過後における液滴がなす接触角が0°である、換言すれば、液滴設置後15秒経過後には膜構成樹脂溶液が浸透して、主面上に膜構成樹脂溶液の液滴が存在しなくなる第一繊維層(第一繊維層を構成する繊維集合体)であるのが最も好ましい。
また、膜構成樹脂溶液が第二繊維層(第二繊維層を構成する繊維集合体)に浸透し難いほど、更に、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供し易い。そのため、上述した(3)の工程において、液滴設置後15秒経過後における液滴がなす接触角が80°以上の第二繊維層(第二繊維層を構成する繊維集合体)であるのが好ましく、90°以上の第二繊維層(第二繊維層を構成する繊維集合体)であるのがより好ましく、100°以上の第二繊維層(第二繊維層を構成する繊維集合体)であるのが最も好ましい。
【0041】
複合膜の厚さは適宜選択するが、30μm以下であることができ、20μm以下であることができ、15μm以下であることができる。一方、厚さの下限値は適宜調整するが、1μm以上であるのが現実的である。
複合膜における膜構造部分の厚さは適宜選択するが、10μm以下であることができ、8μm以下であることができ、6μm以下であることができる。一方、厚さの下限値は適宜調整するが、0.1μm以上であるのが現実的である。
複合膜における第二繊維層の厚さは適宜選択するが、30μm以下であることができ、20μm以下であることができ、10μm以下であることができる。一方、厚さの下限値は適宜調整するが、1μm以上であるのが現実的である。
【0042】
複合膜における膜構造部分の厚さは、複合膜を厚さ方向で切断した断面の電子顕微鏡写真を用いて測定できる。具体的には、複合膜の厚さ方向における膜構造部分の長さを測定し、これを複合膜における膜構造部分の厚さとする。
また、複合膜における該反対側の主面から、該反対側の主面を構成する繊維のみからなる部分の、厚さ方向の長さを測定し、これを複合膜における第二繊維層の厚さとする。
なお、厚さ方向とは、一方の主面(最も広い面)と対抗する反対側の主面間の最短距離をなす方向をいい、厚さとは両主面間における厚さ方向の長さをいう。
【0043】
上述の複合膜は、そのまま使用してもよいが、別途補強層などの部材を設けてなる複合膜であってもよい。また、複合膜は用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜いたり、プリーツ形状や巻回形状を取り得るように加工されたものであってもよい。
【0044】
次に、本発明に係る複合膜の製造方法について説明する。なお、上述の複合膜について説明した項目と構成を同じくする点については説明を省略する。
【0045】
本発明にかかる複合膜の製造方法は適宜選択することができるが、一例として、
(1)繊維集合体を用意する工程、
(2)前記繊維集合体における一方の主面上に別の繊維集合体を形成することで、前記別の繊維集合体由来の第一繊維層ならびに前記繊維集合体由来の第二繊維層を備える積層体を調製する工程、
(3)前記積層体における前記第二繊維層が露出している主面に、親水性樹脂溶液を付与する工程、
(4)前記付与した親水性樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第二繊維層の構成繊維間に前記親水性樹脂を存在させる工程、
(5)前記積層体における前記第一繊維層が露出している主面に、膜構成樹脂溶液を付与する工程、
(6)前記付与した膜構成樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を形成する工程、
(7)前記親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いて、前記第二繊維層の構成繊維間に存在する前記親水性樹脂を除去する工程、
を備える、前記積層体における前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を有する複合膜の製造方法であって、
前記第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径は3μm以下であり、
前記第一繊維層は前記第二繊維層よりも親水性が低い、複合膜の製造方法を挙げることができる。
【0046】
まず、(1)繊維集合体を用意する工程、について説明する。
繊維集合体は積層体における第二繊維層を構成可能な部材であって、例えば、繊維ウェブや不織布、織物や編み物などのシート状の布帛を使用することができる。
繊維集合体は、乾式絡合や湿式抄造あるいは直接紡糸法を用いて形成することができるが、表面が平滑な布帛であることによって、厚さが均一かつ薄い複合膜を提供し易いことから、湿式抄造や直接紡糸法を用いてなる布帛であるのが好ましい。特に、直接紡糸法としては静電紡糸法を用いてなる布帛であると、平均繊維径が細いと共に繊維径の均一な繊維からなる繊維ウェブや不織布を調製でき、より厚さが均一かつ薄い複合膜を提供し易いため好ましい。
【0047】
繊維集合体を構成する繊維の平均繊維径は適宜選択できるが、15μm以下であるのが好ましく、10μm以下であるのが好ましく、5μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのが好ましく、800nm以下であるのが好ましい。平均繊維径の下限値は適宜選択するが、10nm以上であるのが現実的である。
【0048】
繊維集合体の目付は適宜選択できるが、目付は0.5~20g/m2であるのが好ましく、0.8~18g/m2であるのが好ましく、1~16g/m2であるのが好ましい。なお、本発明では、目付とは主面の面積1m2あたりの質量をいう。
【0049】
繊維集合体の厚さは適宜選択できるが、厚さは30μm以下であるのが好ましく、20μm以下であるのが好ましく、10μm以下であるのが好ましい。一方、厚さは1μm以上であるのが現実的である。
【0050】
繊維集合体の空隙率は適宜選択するが、複合膜における通気性や通液性が低下し過ぎることがないよう、空隙率は30%以上であるのが好ましく、35%以上であるのが好ましく、40%以上であるのが好ましい。一方、空隙率は98%以下であるのが現実的である。
【0051】
繊維集合体のガーレ透気度は適宜選択できるが、複合膜における通気性や通液性が低下し過ぎることがないよう、ガーレ透気度は300s/100mL以下であるのが好ましく、200s/100mL以下であるのが好ましく、100s/100mL以下であるのが好ましい。
【0052】
なお、本発明でいうガーレ透気度とは、例えば繊維集合体などの測定対象物をJIS P 8117:2009(紙及び板紙-透気度試験方法-ガーレー試験機法)に規定されている方法に供し測定された透気抵抗度をいう。なお、ガーレ値は低いほど通気性に優れていることを意味し、その値は0より大きい値となる。
【0053】
次いで、(2)前記繊維集合体における一方の主面上に別の繊維集合体を形成することで、前記別の繊維集合体由来の第一繊維層ならびに前記繊維集合体由来の第二繊維層を備える積層体を調製する工程、について説明する。
別の繊維集合体は積層体における第一繊維層を構成可能な部材であって、例えば、繊維ウェブや不織布、織物や編み物などのシート状の布帛を使用することができる。
【0054】
繊維集合体における一方の主面上に別の繊維集合体を形成する方法は適宜選択でき、
・繊維集合体における少なくとも一方の主面上に、別途調製した別の繊維集合体を積層する方法、
・繊維集合体の一方の主面上に、別の繊維集合体を構成可能な繊維を抄造するあるいは直接紡糸することで堆積させ、該繊維の堆積層(別の繊維集合体)を形成する方法、
などの方法によって、積層体を調製することができる。
このうち、直接紡糸法(特に、静電紡糸法)を用いて紡糸した繊維を繊維集合体の一方の主面上に捕集することで積層体を調製すると、バインダによる接着や構成繊維の熱溶融による接着をすることなく繊維集合体と別の繊維集合体の層間が一体化してなる積層体を調製できることから、バインダや溶融した構成繊維により透気度など物性が意図せず変化するのを防止して、繊維集合体と別の繊維集合体の層間を一体化でき好ましい。更に、厚さが均一かつ薄い膜構造部分を供える複合膜を提供でき好ましい。
【0055】
別の繊維集合体を構成する繊維の平均繊維径は適宜選択できるが、平均繊維径は3μm以下であり、2μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのが好ましく、800nm以下であるのが好ましい。平均繊維径の下限値は適宜選択するが、10nm以上であるのが現実的である。
【0056】
別の繊維集合体の目付は適宜選択できるが、目付は4g/m2以下であるのが好ましく、3g/m2以下であるのが好ましく、2g/m2以下であるのが好ましい。一方、目付は0.1g/m2以上であるのが現実的である。
【0057】
別の繊維集合体の厚さは適宜選択できるが、厚さは10μm以下であるのが好ましく、8μm以下であるのが好ましく、6μm以下であるのが好ましい。一方、厚さは0.4μm以上であるのが現実的である。
【0058】
別の繊維集合体の空隙率は適宜選択するが、空隙率は50%以上であるのが好ましく、60%以上であるのが好ましく、70以上%であるのが好ましい。一方、空隙率は98%以下であるのが現実的である。
【0059】
本工程において、第二繊維層よりも膜構成樹脂溶液と親和性が高い第一繊維層を備えた積層体を調製すると、更に、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供でき好ましい。
この理由は完全に明らかになっていないが、後述する工程(5)および(6)において、以下の効果が発揮されているためだと考えられる。
つまり、第一繊維層と第二繊維層を備える積層体に対し、後述の第一繊維層が露出している主面に膜構成樹脂溶液を付与する工程(5)において、第二繊維層よりも親和性が高い第一繊維層に対して膜構成樹脂溶液を付与することになり、膜構成樹脂溶液が第一繊維層に留まり易い。
そのため、第一繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂溶液が十分かつ潤沢に存在した状態で、膜構成樹脂溶液が付与された積層体を、次の工程である溶媒を除去する工程(6)へ供することができる。
【0060】
そして、(3)前記積層体における前記第二繊維層が露出している主面に、親水性樹脂溶液を付与する工程、および、(4)前記付与した親水性樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第二繊維層の構成繊維間に前記親水性樹脂を存在させる工程、について説明する。
親水性樹脂溶液は、親水性樹脂を溶解可能な溶媒に溶解させてなる溶液である。溶媒の種類は、親水性樹脂の種類に伴い適宜選択できる。なお、該溶媒は第一繊維層や第二繊維層に含まれている成分を溶解し難い溶媒であるのが好ましく、該成分を溶解しない溶媒であるのがより好ましい。このような溶媒を採用すると、構成部材の形状変形や機能低下などが意図せず発生するのを防止して複合膜を提供でき好ましい。なお、本発明において溶解するとは25℃の溶媒100gに対して測定対象物が0.5gよりも多く飽和して溶けることを指す。
【0061】
親水性樹脂溶液に含まれている親水性樹脂の種類やその濃度は、所望する膜構造部分を有する複合膜を提供できるよう適宜選択する。
具体的には親水性樹脂として、水溶性多糖類(例えば、プルラン、アミロース、デンプン、変性デンプン、ヒアルロン酸、キサンタンガムなど)、水溶性高分子たんぱく質(例えば、コラーゲン、ゼラチンなど)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、水溶性ポリアミド、水溶性ポリアミドイミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルメチルエーテルなどのエーテル結合した水溶性高分子、ポリアクリル酸などを採用することができる。なお、後述する親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いる工程(7)において、該溶媒による親水性樹脂の除去に伴い膜構成樹脂が除去されるのが防止されるよう、親水性樹脂は膜構成樹脂と異なる樹脂であるのが好ましい。
親水性樹脂溶液の温度は、構成部材の形状変形や機能低下などが意図せず発生し難いよう、適宜選択できる。具体的には、25℃の親水性樹脂溶液を採用することができる。
【0062】
親水性樹脂溶液を付与する方法は適宜選択できるが、スプレーやスピンコート、グラビアコート、バーコート、ダイコート、ブレードコート、エアナイフコート、ロールコーティング、リップコート、フロートコート、コンマロールコート、キスコート、スクリーン印刷、インクジェット印刷、などを用いて親水性樹脂溶液を散布あるいは塗布する方法、積層体における第二繊維層が露出している主面側を親水性樹脂溶液中に浸漬する方法などを採用することができる。
【0063】
第二繊維層へ付与する親水性樹脂溶液の量も、所望する膜構造部分を有する複合膜を提供できるよう適宜選択する。なお、第二繊維層の構成繊維間の全体に親水性樹脂溶液が存在する量となるように第二繊維層へ親水性樹脂溶液を付与すると、第二繊維層の全体に親水性樹脂が存在することで膜構成樹脂溶液が第一繊維層から第二繊維層へ移動するのを防止して、付与された膜構成樹脂溶液を第一繊維層の構成繊維間に留める効果が発揮され易くでき好ましい。
このようにして、積層体における第二繊維層の主面側から親水性樹脂溶液を吸液させることで、第二繊維層の構成繊維間に親水性樹脂溶液を存在させる。
【0064】
親水性樹脂溶液に含まれている溶媒を除去する方法は適宜選択できるが、例えば、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機などの加熱機へ供し加熱する、室温雰囲気下や減圧雰囲気下に静置するなどして、親水性樹脂溶液を付与した積層体から溶媒を蒸発させることで除去できる。溶媒を除去する際の加熱温度は溶媒が揮発可能な温度であると共に、構成部材(第一繊維層や第二繊維層、親水性樹脂など)の形状や機能などが意図せず低下することがないよう、加熱温度の上限を選択する。
【0065】
更に、(5)前記積層体における前記第一繊維層が露出している主面に、膜構成樹脂溶液を付与する工程、および、(6)前記付与した膜構成樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を形成する工程、について説明する。
膜構成樹脂溶液は、膜構成樹脂を溶解可能な溶媒に溶解させてなる溶液である。溶媒の種類は、膜構成樹脂の種類に伴い適宜選択できる。なお、該溶媒は第一繊維層や第二繊維層、親水性樹脂に含まれている成分を溶解し難い溶媒であるのが好ましく、該成分を溶解しない溶媒であるのがより好ましい。このような溶媒を採用すると、構成部材の形状変形や機能低下などが意図せず発生するのを防止して複合膜を提供でき好ましい。
【0066】
膜構成樹脂溶液の温度は、構成部材の形状変形や機能低下などが意図せず発生し難いよう、適宜選択できる。具体的には、25℃の膜構成樹脂溶液を採用することができる。
膜構成樹脂溶液を付与する方法は適宜選択できるが、スプレーやスピンコート、グラビアコート、バーコート、ダイコート、ブレードコート、エアナイフコート、ロールコーティング、リップコート、フロートコート、コンマロールコート、キスコート、スクリーン印刷、インクジェット印刷、などを用いて膜構成樹脂溶液を散布あるいは塗布する方法、積層体における第一繊維層が露出している主面側を膜構成樹脂溶液中に浸漬する方法などを採用することができる。
このようにして、積層体における第一繊維層の主面側から膜構成樹脂溶液を吸液させることで、第一繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂溶液を存在させる。
【0067】
膜構成樹脂溶液に含まれている膜構成樹脂の種類やその濃度は、所望する膜構造部分を有する複合膜を提供できるよう適宜選択する。また、第一繊維層へ付与する膜構成樹脂溶液の量も、所望する膜構造部分を有する複合膜を提供できるよう適宜選択する。
【0068】
膜構成樹脂溶液に含まれている溶媒を除去する方法は適宜選択できるが、例えば、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機などの加熱機へ供し加熱する、室温雰囲気下や減圧雰囲気下に静置するなどして、膜構成樹脂溶液を付与した積層体から溶媒を蒸発させることで除去できる。溶媒を除去する際の加熱温度は溶媒が揮発可能な温度であると共に、構成部材(第一繊維層や第二繊維層、親水性樹脂や膜構成樹脂など)の形状や機能などが意図せず低下することがないよう、加熱温度の上限を選択する。
【0069】
最後に、(7)前記親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いて、前記第二繊維層の構成繊維間に存在する前記親水性樹脂を除去する工程、について説明する。
本工程で使用する溶媒は親水性樹脂を溶解可能なものであれば良く、適宜選択できるが、工程(3)で使用した親水性樹脂溶液を構成している溶媒を採用するのが好ましい。溶媒の具体例として、上述した(親水性の判断方法)の項目で使用した導電率が10μS/cm以下の水を採用できる。
なお、該溶媒は複合膜の構成部材(第一繊維層や第二繊維層、膜構成樹脂など)に含まれている成分を溶解し難い溶媒であるのが好ましく、該成分を溶解しない溶媒であるのがより好ましい。このような溶媒を採用し親水性樹脂を除去すると、構成部材の形状変形や機能低下などが意図せず発生するのを防止して複合膜を提供でき好ましい。好ましい態様としては、該溶媒が水の場合、複合膜の構成部材が非水溶性の成分のみから構成されているのが好ましい。
【0070】
親水性樹脂の除去に使用する該溶媒の温度は、構成部材の形状変形や機能低下などが意図せず発生し難いよう、適宜選択できる。例えば、工程(3)で使用した親水性樹脂溶液の温度と同じ温度の該溶媒や、それよりも低音あるいは高温の該溶媒を採用することができる。特に、工程(3)で使用した親水性樹脂溶液の温度よりも高温の該溶媒を採用すると、第二繊維層の構成繊維間に存在する親水性樹脂を効率良く除去でき好ましい。具体的には、25℃よりも高温の該溶媒を採用することができる。
【0071】
該溶媒を用いて親水性樹脂を除去する方法は適宜選択でき、親水性樹脂を含んだ積層体を該溶媒に浸漬する方法、親水性樹脂を含んだ積層体を流水などの流れている該溶媒に接触させる方法、親水性樹脂を含んだ積層体に該溶媒を付与した後にサクション装置などにより親水性樹脂が溶解した溶媒をサクション除去する方法、該溶媒の蒸気に親水性樹脂を含んだ積層体を接触させて親水性樹脂を除去する方法などを採用することができる。
【0072】
なお、第一繊維層および/または第一繊維層を構成可能な布帛を撥水・撥油・疎水化処理工程などの非親水化加工工程へ供してもよい。この撥水・撥油・疎水化処理工程としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンやシリコーンなどの撥水・撥油性樹脂のコーティング、撥油・撥水化剤の利用などを挙げることができる。
また、第二繊維層および/または第二繊維層を構成可能な布帛を親水化処理工程などの親水化加工工程へ供してもよい。この親水化処理工程としては、例えば、スルホン化処理、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、界面活性剤処理、放電処理、あるいは親水性樹脂付与処理などを挙げることができる。
【0073】
また、本発明の複合膜の製造方法の各工程において、繊維集合体や積層体あるいは複合膜を取り扱う際に単独での取り扱いが難しい場合、必要であれば、別途用意したメッシュなどの多孔体やフィルムといったサポート基材に繊維集合体や積層体あるいは複合膜を載せた状態で、あるいは、別途用意したメッシュなどの多孔体といったサポート基材で挟んだ状態で各工程へ供してもよい。
【0074】
上述の製造方法を用いることで、本発明に係る複合膜を製造することができる。
本発明の製造方法が、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を製造できる理由は完全に明らかになっていないが、以下の効果が発揮されているためだと考えられる。
【0075】
つまり、上述の工程(3)(4)を経た後の積層体は、第二繊維層の構成繊維間に親水性樹脂が存在していることで、膜構成樹脂溶液が第二繊維層の構成繊維間に進入し難い態様を備えている。
そのため、上述の工程(3)(4)を経た後の積層体における、第一繊維層が露出している主面に膜構成樹脂溶液を付与する工程(5)において、膜構成樹脂溶液が第一繊維層から第二繊維層へ移動するのが防止されており、付与された膜構成樹脂溶液は第一繊維層の構成繊維間に留まり易いという効果が発揮される。
【0076】
特に、本効果は、第二繊維層よりも第一繊維層に対する親和性が高い膜構成樹脂溶液を採用した場合のみならず、例えば、第一繊維層と第二繊維層の双方に対し同等に親和性を有する膜構成樹脂溶液や、第一繊維層よりも第二繊維層に対する親和性が高い膜構成樹脂溶液を採用した場合であっても(換言すれば、第一繊維層から第二繊維層へ移動し易い膜構成樹脂溶液を採用した場合であっても)、膜構成樹脂溶液が第二繊維層へ移動するのが防止されていることで、付与された膜構成樹脂溶液は第一繊維層の構成繊維間に留まり易いという効果が発揮される。
そのため、第一繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂溶液が十分かつ潤沢に存在した状態で、膜構成樹脂溶液が付与された積層体を、次の工程である溶媒を除去して膜構造部分を形成する工程(6)へ供することができる。その後、親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いて、第二繊維層の構成繊維間に存在する親水性樹脂を除去する工程(7)を経ることで、本発明にかかる複合膜を提供できる。
【0077】
その結果、第一繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂が十分に存在していることで、膜化していない部分が存在するのを防止して、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供できる。
【0078】
更に、本願発明者らは上述した複合膜の製造方法において、上述した(3)および(4)の工程を経て形成される、第二繊維層の構成繊維間に親水性樹脂が存在してなる層の厚さを調整することによって、複合膜が備える膜構造部分の膜厚を制御して、所望する膜厚であると共に厚さが均一な膜構造部分を有する複合膜を提供できることを見出した。
例えば、
・厚さが10μm以下の第一繊維層を備える積層体を用いると共に、第二繊維層の構成繊維間全体に親水性樹脂が存在してなる積層体を用いて複合膜を製造することで、あるいは、
・第二繊維層の構成繊維間全体に親水性樹脂が存在していると共に、第一繊維層における第二繊維層側にも親水性樹脂が存在していることで、親水性樹脂が存在していない部分の厚さが10μm以下の第一繊維層を備える積層体を用いて複合膜を製造することで、
厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供できる。
【0079】
また、第二繊維層の構成繊維間に親水性樹脂が存在してなる層の厚さが薄い積層体を採用することで、より厚さが厚い膜構造部分を備えた複合膜を提供し得る。このように、第二繊維層の構成繊維間に親水性樹脂が存在してなる層の厚さを調整することで、複合膜が備える膜構造部分の膜厚を制御して、所望する膜厚であると共に厚さが均一な膜構造部分を有する複合膜を提供できる
【0080】
なお、本発明でいう複合膜の膜構造部分の厚さが均一か否かは、複合膜の断面を撮影した5000倍の電子顕微鏡写真を撮影し、ランダムに選択した10点の複合膜における膜構造部分の厚さを測定することで評価できる。つまり、測定して得られた各厚さのうち最小の値と最大の値が共に、前記10点で測定して得られた膜構造部分の厚さから算出される平均値(膜構造部分の平均厚さ)の±20%以内に収まる場合、複合膜は厚さが均一な膜構造部分を供えるものである。
【0081】
上述の複合膜の製造方法では、更に、別途補強層などの部材を設けて複合膜を調製する工程、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜いたり、プリーツ形状や巻回形状を取り得るように加工する工程、などの、各種二次工程を備えた複合膜の製造方法であってもよい。
【実施例】
【0082】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない
【0083】
(紡糸液の調製方法)
ポリビニルアルコール樹脂(完全鹸化、重合度:900~1000、和光純薬社製)を導電率が10μS/cm以下の水へ完全に溶解させることで、ポリビニルアルコール樹脂濃度が15質量%の水溶液aを調製した。また、メチルビニルエーテル―無水マレイン酸コポリマー樹脂(ALDRICH社製)を導電率が10μS/cm以下の水へ完全に溶解させることで、メチルビニルエーテル―無水マレイン酸コポリマー樹脂濃度が濃度15質量%の水溶液bを調製した。
水溶液a80質量部と水溶液b20質量部を混合して、第一紡糸液を調製した。
また、第一紡糸液に対し濃度が1質量%となるように疎水化剤であるドデシルアミン塩酸塩を混合して、第二紡糸液を調製した。
【0084】
(静電紡糸条件)
・金属製ノズル(紡糸液吐出部分)における、紡糸液吐出部分の形状:内径0.44mmの円形状
・金属製ノズルの先端と、ドラム(繊維捕集体)との距離:8cm
・紡糸液へ印加した電圧:15~25kV
・金属製ノズルから吐出された紡糸液:1cc/時間
・静電紡糸環境の雰囲気:温度25℃、湿度50%RH
【0085】
(実施例1)
上述した静電紡糸条件のもと第一紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラムの主面上に捕集することで、ドラムの主面上に厚さ10μm、目付2.3g/m2の繊維集合体を形成した。
次いで、上述した静電紡糸条件のもと第二紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラム上の繊維集合体における露出している主面上に捕集することで、繊維集合体の主面上に厚さ1μm、目付0.2g/m2の別の繊維集合体を形成した。
このようにして形成した繊維集合体と別の繊維集合体を備えた積層体をドラムから剥離し、上述した「親水性の判断方法」へ供した結果、液滴設置後15秒経過後における別の繊維集合体の接触角は105°、繊維集合体の接触角は0°であり、別の繊維集合体は繊維集合体よりも親水性が低いことが判明した。
なお、積層体の構成は、別の繊維集合体由来の第一繊維層の厚さが1μm、繊維集合体由来の第二繊維層の厚さが10μm、第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.3μm、第二繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.3μmであった。
親水性樹脂溶液として、プルラン(林原工業社製)を導電率が10μS/cm以下の水へ完全に溶解させてなる、プルラン濃度が20質量%のプルラン水溶液を用意した。
スリット塗工装置(クリアランス:60μm)を用いて、表面平滑なガラス板の一方の主面上に25℃に調整したプルラン水溶液を塗工した。そして、積層体における第二繊維層の露出している主面を、該プルラン水溶液と接触させることで、積層体における第二繊維層が露出している主面にプルラン水溶液を付与した。
ガラス板と積層体が積層した態様のまま、80℃雰囲気下に30分間静置することで、プルラン水溶液の溶媒である水を除去し、積層体における第二繊維層の構成繊維間に親水性樹脂としてプルランを存在させた。
次いで、ガラス板と積層体が積層した態様のまま、積層体における第一繊維層が露出している主面にスリット塗工装置(クリアランス:30μm)を用いて、膜構成樹脂溶液として25℃に調整したスルホン化ポリエーテルスルホンのジメチルアセトアミド溶液(スルホン化ポリエーテルスルホン濃度:20質量%)を塗布することで付与した。
そして、ガラス板と積層体が積層した態様のまま、膜構成樹脂溶液を塗布した積層体を120℃雰囲気下に30分間静置し、その後、140℃雰囲気下に30分間静置することで、膜構成樹脂溶液の溶媒であるジメチルアセトアミドを除去した。
最後に、上述のジメチルアセトアミドを除去した後の積層体をガラス板から剥離し、得られた積層体を60℃に調整した導電率が10μS/cm以下の水中へ浸漬させることで、第二繊維層の構成繊維間に存在するプルランを水中へ溶出させ除去した。
水中から積層体を取り出した後、80℃雰囲気下に30分間静置することで水を除去して、複合膜(厚さ:10μm、別の繊維集合体由来の第一繊維層の構成繊維間にスルホン化ポリエーテルスルホンが存在している)を調製した。
【0086】
実施例1で調製した複合膜における、膜構成樹脂溶液を付与した側の主面を1000倍で撮影した、電子顕微鏡写真を
図1に示す。
図1に示した電子顕微鏡写真を確認したところ、複合膜における膜構成樹脂溶液を付与した側の主面には、繊維形状が存在している部分および意図せず開孔が存在している部分の存在が認められなかった。
調製した複合膜を、上述した「膜状の態様をなしているか否かの判断方法」へ供した結果、実施例1に係る複合膜は膜状の態様をなす膜構造部分を有しているものであった。
なお、実施例1の複合膜における、膜構造部分の平均厚さは1.8μm(膜構造部分の最大厚さ:2.1μm、膜構造部分の最小厚さ:1.6μm)であった。
【0087】
(実施例2)
上述した静電紡糸条件のもと第一紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラムの主面上に捕集することで、ドラムの主面上に厚さ10μm、目付2.3g/m2の繊維集合体を形成した。
次いで、上述した静電紡糸条件のもと第二紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラム上の繊維集合体における露出している主面上に捕集することで、繊維集合体の主面上に厚さ2μm、目付0.5g/m2の別の繊維集合体を形成した。
このようにして形成した繊維集合体と別の繊維集合体を備えた積層体をドラムから剥離し、上述した「親水性の判断方法」へ供した結果、液滴設置後15秒経過後における別の繊維集合体の接触角は112°、繊維集合体の接触角は0°であり、別の繊維集合体は繊維集合体よりも親水性が低いことが判明した。
なお、積層体の構成は、別の繊維集合体由来の第一繊維層の厚さが2μm、繊維集合体由来の第二繊維層の厚さが10μm、第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.3μm、第二繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.3μmであった。
このようにして調製した積層体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、複合膜(厚さ:10μm、別の繊維集合体由来の第一繊維層の構成繊維間にスルホン化ポリエーテルスルホンが存在している)を調製した。
【0088】
実施例2で調製した複合膜における、膜構成樹脂溶液を付与した側の主面を1000倍で撮影した、電子顕微鏡写真を
図2に示す。
図2に示した電子顕微鏡写真を確認したところ、複合膜における膜構成樹脂溶液を付与した側の主面には、繊維形状が存在している部分および意図せず開孔が存在している部分の存在が認められなかった。
調製した複合膜を、上述した「膜状の態様をなしているか否かの判断方法」へ供した結果、実施例2に係る複合膜は膜状の態様をなす膜構造部分を有しているものであった。
なお、実施例2の複合膜における、膜構造部分の平均厚さは3.2μm(膜構造部分の最大厚さ:3.6μm、膜構造部分の最小厚さ:2.7μm)であった。
【0089】
(実施例3)
上述した静電紡糸条件のもと第一紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラムの主面上に捕集することで、ドラムの主面上に厚さ10μm、目付2.3g/m2の繊維集合体を形成した。
次いで、上述した静電紡糸条件のもと第二紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラム上の繊維集合体における露出している主面上に捕集することで、繊維集合体の主面上に厚さ4μm、目付1.1g/m2の別の繊維集合体を形成した。
このようにして形成した繊維集合体と別の繊維集合体を備えた積層体をドラムから剥離し、上述した「親水性の判断方法」へ供した結果、液滴設置後15秒経過後における別の繊維集合体の接触角は118°、繊維集合体の接触角は0°であり、別の繊維集合体は繊維集合体よりも親水性が低いことが判明した。
なお、積層体の構成は、別の繊維集合体由来の第一繊維層の厚さが4μm、繊維集合体由来の第二繊維層の厚さが10μm、第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.2μm、第二繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.2μmであった。
このようにして調製した積層体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、複合膜(厚さ:12μm、別の繊維集合体由来の第一繊維層の構成繊維間にスルホン化ポリエーテルスルホンが存在している)を調製した。
【0090】
実施例3で調製した複合膜における、膜構成樹脂溶液を付与した側の主面を1000倍で撮影した、電子顕微鏡写真を
図3に示す。
図3に示した電子顕微鏡写真を確認したところ、複合膜における膜構成樹脂溶液を付与した側の主面には、繊維形状が存在している部分および意図せず開孔が存在している部分の存在が認められなかった。
調製した複合膜を、上述した「膜状の態様をなしているか否かの判断方法」へ供した結果、実施例3に係る複合膜は膜状の態様をなす膜構造部分を有しているものであった。
なお、実施例3の複合膜における、膜構造部分の平均厚さは4.8μm(膜構造部分の最大厚さ:5.2μm、膜構造部分の最小厚さ:4.2μm)であった。
【0091】
(比較例1)
上述した静電紡糸条件のもと第二紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラムの主面上に捕集することで、ドラムの主面上に厚さ10μm、目付2.3g/m2の繊維集合体を調製した。なお、繊維集合体由来の繊維層を構成する繊維の平均繊維径は0.3μmであった。
親水性樹脂溶液として、プルラン(林原工業社製)を導電率が10μS/cm以下の水へ完全に溶解させてなる、プルラン濃度が20質量%のプルラン水溶液を用意した。
スリット塗工装置(クリアランス:60μm)を用いて、表面平滑なガラス板の一方の主面上に25℃に調整したプルラン水溶液を塗工した。そして、繊維集合体における一方の露出している主面を、該プルラン水溶液と接触させることで、繊維集合体における該一方の露出している主面にプルラン水溶液を付与した。
ガラス板と繊維集合体が積層した態様のまま、80℃雰囲気下に30分間静置することで、プルラン水溶液の溶媒である水を除去し、繊維集合体における該一方の露出している主面側の構成繊維間に親水性樹脂としてプルランを存在させた。
次いで、ガラス板と繊維集合体が積層した態様のまま、繊維集合体におけるもう一方の露出している主面にスリット塗工装置(クリアランス:30μm)を用いて、膜構成樹脂溶液として25℃に調整したスルホン化ポリエーテルスルホンのジメチルアセトアミド溶液(スルホン化ポリエーテルスルホン濃度:20質量%)を塗布することで付与した。
そして、ガラス板と繊維集合体が積層した態様のまま、膜構成樹脂溶液を塗布した繊維集合体を120℃雰囲気下に30分間静置し、その後、140℃雰囲気下に30分間静置することで、膜構成樹脂溶液の溶媒であるジメチルアセトアミドを除去した。
最後に、上述のジメチルアセトアミドを除去した後の繊維集合体をガラス板から剥離し、得られた繊維集合体を60℃に調整した導電率が10μS/cm以下の水中へ浸漬させることで、繊維集合体における該一方の露出している主面側の構成繊維間に存在するプルランを水中へ溶出させ除去した。
水中から積層体を取り出した後、80℃雰囲気下に30分間静置することで水を除去して、複合膜(厚さ:9μm、繊維集合体におけるもう一方の露出している主面側の構成繊維間にスルホン化ポリエーテルスルホンが存在している)を調製した。
【0092】
比較例1で調製した複合膜における、膜構成樹脂溶液を付与した側の主面を1000倍で撮影した、電子顕微鏡写真を
図4に示す。
図4に示した電子顕微鏡写真を確認したところ、複合膜における膜構成樹脂溶液を付与した側の主面には、繊維形状が存在している部分および意図せず開孔が存在している部分の存在が認められた。
調製した複合膜を、上述した「膜状の態様をなしているか否かの判断方法」へ供した結果、比較例1に係る複合膜は膜状の態様をなす膜構造部分を有していないものであった。
【0093】
(比較例2)
上述した静電紡糸条件のもと第二紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラムの主面上に捕集することで、ドラムの主面上に厚さ10μm、目付2.2g/m2の繊維集合体を調製した。
次いで、上述した静電紡糸条件のもと第一紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラム上の繊維集合体における露出している主面上に捕集することで、繊維集合体の主面上に厚さ1μm、目付0.2g/m2の別の繊維集合体を形成した。
このようにして形成した繊維集合体と別の繊維集合体を備えた積層体をドラムから剥離し、上述した「親水性の判断方法」へ供した結果、液滴設置後15秒経過後における別の繊維集合体の接触角は0°、繊維集合体の接触角は105°であり、別の繊維集合体は繊維集合体よりも親水性が高いことが判明した。
なお、積層体の構成は、別の繊維集合体由来の第一繊維層の厚さが1μm、繊維集合体由来の第二繊維層の厚さが10μm、第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.3μm、第二繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.3μmであった。
親水性樹脂溶液として、プルラン(林原工業社製)を導電率が10μS/cm以下の水へ完全に溶解させてなる、プルラン濃度が20質量%のプルラン水溶液を用意した。
スリット塗工装置(クリアランス:60μm)を用いて、表面平滑なガラス板の一方の主面上に25℃に調整したプルラン水溶液を塗工した。そして、積層体における第二繊維層の露出している主面を、該プルラン水溶液と接触させることで、積層体における第二繊維層が露出している主面にプルラン水溶液を付与した。
ガラス板と積層体が積層した態様のまま、80℃雰囲気下に30分間静置することで、プルラン水溶液の溶媒である水を除去た。
次いで、ガラス板と積層体が積層した態様のまま、積層体における第一繊維層が露出している主面にスリット塗工装置(クリアランス:30μm)を用いて、膜構成樹脂溶液として25℃に調整したスルホン化ポリエーテルスルホンのジメチルアセトアミド溶液(スルホン化ポリエーテルスルホン濃度:20質量%)を塗布することで付与した。
そして、ガラス板と積層体が積層した態様のまま、膜構成樹脂溶液を塗布した積層体を120℃雰囲気下に30分間静置し、その後、140℃雰囲気下に30分間静置することで、膜構成樹脂溶液の溶媒であるジメチルアセトアミドを除去した。
最後に、上述のジメチルアセトアミドを除去した後の積層体をガラス板から剥離し、得られた積層体を60℃に調整した導電率が10μS/cm以下の水中へ浸漬させることで、第二繊維層の構成繊維間に存在するプルランを水中へ溶出させ除去した。
水中から積層体を取り出した後、80℃雰囲気下に30分間静置することで水を除去して、複合膜(厚さ:9μm、別の繊維集合体由来の第一繊維層の構成繊維間にスルホン化ポリエーテルスルホンが存在している)を調製した。
【0094】
比較例2で調製した複合膜における、膜構成樹脂溶液を付与した側の主面を1000倍で撮影した、電子顕微鏡写真を
図5に示す。
図5に示した電子顕微鏡写真を確認したところ、複合膜における膜構成樹脂溶液を付与した側の主面には、繊維形状が存在している部分および意図せず開孔が存在している部分の存在が認められた。
調製した複合膜を、上述した「膜状の態様をなしているか否かの判断方法」へ供した結果、比較例2に係る複合膜は膜状の態様をなす膜構造部分を有していないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の複合膜は、例えば、水処理膜などの液体分離膜や気体分離膜、燃料電池の高分子電解質膜、キャパシタや一次/二次電池など電気化学素子用セパレータ、医療用材料、イオン交換膜、透析膜などといった様々な産業用途に使用できる。