(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】皮膚バリア弱体化対策用局所的組成物中での1,3ジグリセリドの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20230714BHJP
A61K 31/23 20060101ALI20230714BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230714BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K31/23
A61P17/00
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018529577
(86)(22)【出願日】2016-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2016080295
(87)【国際公開番号】W WO2017097919
(87)【国際公開日】2017-06-15
【審査請求日】2019-12-04
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-29
(32)【優先日】2015-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500166231
【氏名又は名称】ピエール、ファブレ、デルモ‐コスメティーク
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE DERMO-COSMETIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、レドゥル
(72)【発明者】
【氏名】グウェンダル、ジョス
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】野田 定文
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/084646(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
[式中、
R1およびR2の基は、互いに独立して、C15~C19飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリド、および皮膚への局所適用のための少なくとも1つの化粧賦形剤または皮膚用賦形剤を含んでなる、
皮膚の保護に使用するための、局所的な化粧用または皮膚用の組成物
であって、
1,3ジグリセリドが、組成物の合計重量に対して、0.5重量%~10重量%の量で組成物中に存在しており、
組成物がさらに1,2ジグリセリドを含む場合、組成物中の1,2ジグリセリドの重量が、1,3および1,2ジグリセリドの合計重量に対して、10重量%を超えない、組成物。
【請求項2】
一般式(I):
【化2】
[式中、
R1およびR2の基は、互いに独立して、C15~C19飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリド、および皮膚への局所適用のための少なくとも1つの化粧賦形剤または皮膚用賦形剤を含んでなる、皮膚バリアの弱体化対策に使用するための、局所的な化粧用または皮膚用の組成物であって、
1,3ジグリセリドが、組成物の合計重量に対して、0.5重量%~10重量%の量で組成物中に存在しており、
組成物がさらに1,2ジグリセリドを含む場合、組成物中の1,2ジグリセリドの重量が、1,3および1,2ジグリセリドの合計重量に対して、10重量%を超えない、組成物。
【請求項3】
刺激、アレルギー反応または酸化ストレスを治療または予防するための、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
一般式(I):
【化3】
[式中、
R1およびR2の基は、互いに独立して、C15~C19飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリド、および皮膚への局所適用のための少なくとも1つの化粧賦形剤または皮膚用賦形剤を含んでなる、皮膚バリアの弱体化に続く皮膚内への外因性分子の透過を防止または低減するために使用するための、局所的な化粧用または皮膚用の組成物であって、
1,3ジグリセリドが、組成物の合計重量に対して、0.5重量%~10重量%の量で組成物中に存在しており、
組成物がさらに1,2ジグリセリドを含む場合、組成物中の1,2ジグリセリドの重量が、1,3および1,2ジグリセリドの合計重量に対して、10重量%を超えない、組成物。
【請求項5】
前記皮膚バリアが、環境的要因の影響下で弱体化する、請求項2~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記環境的要因が、冷えまたは熱である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記R1およびR2の基が同一である、請求項1
~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記1,3ジグリセリドが、1,3ジパルミチン酸グリセリル、1,3ジステアリン酸グリセリルまたはそれらの混合物である、請求項1
~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
1,3ジグリセリドの量が、組成物の合計重量に対して、
1重量%~5重量%である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
1,3ジグリセリドが、分散した固体粒子の形態で組成物中に存在している、請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所投与することを意図した、以下で定義される少なくとも1つの1,3ジグリセリドを含んでなる、化粧組成物または皮膚用組成物、ならびに、特に冷えまたは熱などの環境的要因に対する角質層の耐性を改善させるためのその使用に関し、そのようにしてその皮膚バリアとしての性質が維持される。
【背景技術】
【0002】
皮膚の主要な機能の1つは物理的なバリアを形成することであり、そうすることで侵攻型の微生物の要素または化学的な要素の侵入を防止することによる環境に対する防御的役割に加えて、その相対的疎水性によって水分の喪失を制限することにより有機体の生理的溶液の維持を提供しなければならない。経皮的通過の種々の経路については依然として議論はあるものの、主に角質細胞間の(intercorneocytory)空間を介した浸透が皮膚の透過性を調節する役割を果たすことが認められている[1]。分子の角質層のラメラ層を通る分散に関係する、吸収-脱着の順序の実質数が皮膚バリアの有効性を決定する。後者の特徴化に使用するX線回折によって反復距離を6nmおよび13nmとする2つのラメラ相の存在が明らかにされており、それらはほとんど結晶性横方向相(crystalline lateral phase)(斜方横方向配置)に位置している[2、3、4]。例えば、生理的温度では、セラミドおよび脂肪酸の脂肪族長鎖はコレステロールおよびそれらのエステルと一緒に、水の経皮的な流れに不透過性であるゲル化状態を形成する。
【0003】
皮膚バリアが損なわれていない被験体では、水の経皮的な流れ(経皮水分喪失-TransEpidermal Water Loss -TEWLとも呼ばれる)は、約5mg/cm2[5]であるが、種々の冷えまたは熱などの環境的要因による外部からの透過の場合にはより高い値に達することがある。これに関しては、平均的な屋外での日光(屋外気温26.6℃)という条件下で、平均して3時間、単純に曝すことが、皮膚の温度(最初は31.7℃)として4.7℃の上昇を引き起こすには十分であること[6]、および後者は夏の正午の日光では、たった20分間太陽に曝しただけで40℃を超えることがあること[7]が示されてきた。このような皮膚温度の上昇は、次いで角質細胞間の空間の脂質の液体化を引き起こし、それは液体結晶の種類の状態に変化して経皮水分喪失の実質的増加を引き起こす[4]。
【0004】
したがって、皮膚バリアの変化/弱体化は、外因性物質(汚染薬剤、刺激性薬剤またはアレルギー物質(アレルゲンとも呼ばれる))、好ましくは脂溶性外因性物質による透過の増加を許し、刺激またはアレルギー反応または酸化ストレスを引き起こす場合がある。
【0005】
アレルギー性であることに加えて、排気ガスから放出されたベンゾ[a]ピレンなどの一定の揮発性の有機汚染薬剤は発癌性であるとも考えられている(発癌性物質の第1群)。
【0006】
ジグリセリドは、文献において既知であり、生物学的、化粧的および/または治療的な活性を有している。KR2013058299の文書では、高色素沈着を予防または治療するための、1,3-ジオレインまたは1,3-ジリノレオイル-rac-グリセロールを含んでなる組成物の使用が知られている。同様なものとしては、中でも皮膚の老化対策のためとしてジグリセリドを主張することができた脂肪酸誘導体塩基での調合物(WO03/014073Al)、皮膚軟化剤としてのもの(JP02115117A)または唇をケアするためのスティックでの使用(JP52061240A)がある。一定のジグリセリドは、化粧組成物中でテクスチャ剤として低濃度(1重量%未満)で使用される。しかしながら、今までに、1,3ジグリセリドが、特に環境的要因(冷え、熱)の影響下で、皮膚バリア機能の弱体化を克服するための興味深い特性を有し得ることを記載または示唆した文書はない。
【発明の開示】
【0007】
したがって、本発明は、角質細胞間の空間の活性安定剤を提案することによって、特に環境的要因の影響下での皮膚バリアの弱体化対策のためのそれらの化粧組成物または皮膚用組成物中での使用を提案することによって、先行技術の短所を克服することを目的とする。角質細胞間の空間のより大きな安定性を得ることは、化粧品およびスキンケアの皮膚科学、および/または顔の皮膚、身体の皮膚、および頭皮などの皮膚用化粧品の分野で新しい観点を開くことが可能となるだろう。このような有効成分は、顔の皮膚、身体の皮膚、および頭皮などの皮膚を、特に、外因性物質の皮膚への透過(このような皮膚への透過は熱などの環境的要因の影響下で増加する)に起因する幾つかの悪影響(アレルギー、刺激など)から保護するための、局所的な化粧組成物または皮膚用組成物に使用することができる。
【0008】
したがって、驚くべきかつ完全に予想されない形態で、化粧組成物または皮膚用組成物中での、一般式(I):
【化1】
[式中、
R
1およびR
2の基は、互いに独立して、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリドの使用が、局所的に投与した後に、環境的要因に起因し得る皮膚バリアの弱体化の制限を可能にすることが見出された。本発明者らは、特に、これら1,3ジグリセリドが、皮膚に適用されると角質細胞間の空間中に存在する脂質の状態の変化を安定化させることを明らかにした(この状態の変化は、特に温度の影響下で観察されたものである)。
【0009】
本発明者らは、角質層の脂質相の組織の変化を評価するために、赤外線分光学法 (ATR-FTIR:減衰全反射-フーリエ変換赤外分光)を使用して、温度の影響下での、これら脂質のvCH2脂肪族鎖の基本的な振動バンドの変化を分析した。より詳細には、CH2の伸縮に対応する吸収バンドの位置は、約2848cm-1の波数の周辺に位置している。例えば、皮膚の温度の増加がこれらバンドのより高い波数への移動を引き起こす。この移動は、角質層中の脂質が、熱の影響下で、角質細胞間の空間を満たす炭化水素の流動性の増加が伴う、より秩序立っていない構造を採用することを明らかにする(例1を参照のこと)。
【0010】
本発明においては、一方では1,3ジグリセリドの加熱された脂質相に対する安定化力がエステル化された鎖の長さを増加させ(例2を参照のこと)、他方では、1,3ジグリセリドの加熱された脂質相に対する安定化力は、ジグリセリド1,2で観察されるものよりはるかに大きい(例3を参照のこと)ことが実証された。しかしながら、産業的製造条件によって存在することが多い少量の1,2ジグリセリドと一緒に混合物中に存在する1,3ジグリセリドを使用することは、本発明の範囲から除外されていない。
【0011】
加えて、健常ボランティアに対するin vivoでの研究では、1,3ジステアリン酸グリセリルの適用が、30~45℃の間の温度に熱した皮膚の角質細胞脂質の組織を安定化させることが可能であることを示すことができた。この有益な効果は、1,3ジステアリン酸グリセリルを適用してから少なくとも4時間は持続する(例4を参照のこと)。
【0012】
また、ex vivoアッセイでは、1,3ジステアリン酸グリセリルを皮膚に適用することで、熱による、ベンゾ[a]ピレン等の汚染薬剤の皮膚への透過の増加の制限が可能であることを実証することができる。
【0013】
したがって、本発明の目的は、一般式(I):
【化2】
[式中、
R
1およびR
2の基は、互いに独立して、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する少なくとも1つの1,3ジグリセリドを含んでなり、かつ、皮膚への局所投与のための少なくとも1つの化粧賦形剤または皮膚用賦形剤をさらに含んでなる、化粧用または皮膚用の組成物に関する。
【0014】
上記の一般式(I)を有する1,3ジグリセリドは、特に、Liuらの文献[9]に記載されている通りに調製することができる。それらは有効成分として本発明による組成物中で使用することができ、特に、角質細胞間の空間の安定化剤として使用することができる。
【0015】
「角質細胞間の空間」という用語は、皮膚バリアを形成する角膜層(cornea layer)(角質層(stratum corneum)-要約してSCとも呼ばれる)の角質細胞間に位置する脂質相を含有している空間を意味する。
【0016】
本願において、「角質細胞間の空間の安定化剤」という用語は、より詳細には、特に環境的要因の作用下で、角質細胞間の空間の不安定化を制限し、したがって特に環境的要因に曝された皮膚での、刺激性および/またはアレルギー性となり得る化学因子または微生物因子、または酸化ストレスを発生させる汚染薬剤などの外因性物質の透過に対抗することによるバリア効果を有する薬剤を指すために使用される。
【0017】
この、角質細胞間の空間の安定化/不安定化の効果は、とりわけ、例2の手順に従って評価することができる。
【0018】
外因性物質の透過に関しては、ex vivoアッセイ(例6を参照のこと)で、ベンゾ[a]ピレンの生物学的利用能が皮膚の温度に大きく影響されることを証明することができ、皮膚の温度が32℃~42℃を通過すると、それは2倍となった(皮膚へ適用された用量として2.95から6.95%に増加)。
【0019】
これは、特に、環境条件が外気温の増加(特に、約42℃以上)につながる場合での、外因性物質の透過を制限するための、角質細胞間の空間を安定化することによる皮膚バリア強化の必要性を示すものである。
【0020】
また、式(I)の1,3ジグリセリドを試験を行った皮膚へ適用した後のベンゾ[a]ピレンの生物学的利用能に対するex vivoアッセイにより、前に定義した通りの1,3ジグリセリド化合物がこの安定化、そして皮膚保護を可能にすることが確認された。
【0021】
例えば、式(I)の1,3ジグリセリド、特に1,3ジステアリン酸グリセリルを、3%または15%の用量で42℃の環境で維持した皮膚に適用した後に、ベンゾ[a]ピレンの透過が基礎的状態と比べて顕著に低下し、ビヒクルが観察された。
【0022】
「環境的要因」という用語は、本発明の観点からは、角質細胞間の空間を不安定化し得る皮膚温度の変化を引き起こす、熱または冷え、好ましくは熱などの外的な条件を意味する。好ましい実施態様では、夏の時期の熱または太陽へ曝されたことによる熱などの熱は、特に約35℃超、特に約40℃超への、皮膚の温度の上昇を引き起こすことがあり、本発明でいう角質細胞間の空間の脂質の液体化を引き起こす。
【0023】
角質層の角質細胞間の空間の組織に対する外的温度の影響は、とりわけ、例1のモデル(vCH2振動の波数の変化の赤外線分光学を介した分析)に従って評価することができる。
【0024】
これに関して、上述のように、平均的な屋外での日光(屋外気温26.6℃)という条件下で、平均して3時間、単純に曝すことが、皮膚の温度(最初は31.7℃)として4.7℃の上昇を引き起こすには十分であること、および後者は夏の正午の日光では、たった20分間太陽に曝しただけで40℃を超えることがあること[7]が示されてきた。
【0025】
このような皮膚の温度の増加は、その後角質細胞間の空間の脂質の液体化を引き起こし、これは液体結晶型の状態に発展して実質的な経皮水分喪失を引き起こす[4]。
【0026】
本発明の特定の実施態様では、R1およびR2の基は、同一であり、かつC13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。
【0027】
本発明の別の実施態様によれば、R1およびR2の基は、互いに独立してC15~C23、特にC15~C19の飽和直鎖状アルキル基を表す。また、R1およびR2の基は、同一であり、かつC15~C23、特にC15~C19の飽和直鎖状アルキル基を表してもよい。
【0028】
同一または異なる、好ましくは同一のR1およびR2の基は、特に、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸の炭化水素鎖、すなわちペンタデシル基、ヘプタデシル基、ノナデシル基を表す。
【0029】
本発明によるジグリセリド1,3は、特に、1,3ジパルミチン酸グリセリル、1,3ジステアリン酸グリセリルまたはそれらの混合物である。
【0030】
本発明による式(I)を有する1,3ジグリセリドは、組成物の合計重量に対して、好ましくは0.5~10重量%、より特定的には1~5重量%、一層より特定的には3~5重量%を表している。
【0031】
別の実施態様によれば、本発明による式(I)を有する1,3ジグリセリドは、組成物の合計重量に対して5~10重量%に相当する。
【0032】
本発明による組成物は、1,2ジグリセリドを含有していてもよい。例えば、使用する1,3ジグリセリドは一般的に少量の残留1,2ジグリセリドを含有している。しかしながら、本発明による組成物中の1,2ジグリセリドの量は、1,3および1,2ジグリセリドの合計重量に対して、有利的には10重量%、特に5重量%を超えないであろう。
【0033】
本発明による局所的組成物は、皮膚に適用することを意図している。これら組成物は、多かれ少なかれ液体となり得、クリーム、ローション、ミルク、セラム、軟膏、ゲルまたはフォームの側面を有する。また、それらはスティックなどの固体の状態も有することができ、あるいは、エアロゾルの状態で皮膚へ適用することもできる。これら組成物は、特に油性溶液、水中油型;油中水型エマルジョンまたは多重エマルジョンの状態を有することができる。
【0034】
本発明による式(I)を有する1,3ジグリセリドは、好ましくは分散した状態で組成物中に組み込まれるだろう。
【0035】
本発明において「分散した状態」とは、本発明による式(I)を有する1,3ジグリセリドが分散相中で分散された固体粒子の形態であることを意味する。
【0036】
したがって、本発明による組成物は、有利的には、分散した状態の少なくとも1種の本発明による式(I)を有する1,3ジグリセリドを含んでなるだろう(即ち、分散した固体粒子の形態で組成物中に存在)。
【0037】
好ましい実施態様によれば、式(I)の1,3-ジグリセリドの固体粒子の平均直径は100nm超であり、50μm未満である。レーザー回折による粒径分布を測定することでこのような値を得ることが可能である。
【0038】
特定の実施態様では、本発明による式(I)の1,3-ジグリセリドは、脂肪相、例えばシリコーン、好ましくは非揮発性シリコーン、エステル、鉱油もしくは野菜油またはそれらの混合物中で分散される。シリコーンの中でも、ジメチコン(非揮発性)を挙げることができる。
【0039】
本発明による組成物は、1日を通して快適なままである皮膚バリアの保護を提供する。それは、特に敏感性、脆弱性および/または反応性の肌、特に乳児の肌に適用することができる。
【0040】
また、本発明は、目的として、顔の皮膚、身体の皮膚、および頭皮などの皮膚の保護に使用するための、上述の本発明による組成物に関する。
【0041】
また、本発明は、顔の皮膚、身体の皮膚、および頭皮などの皮膚を保護するための、上述の本発明による組成物の使用に関する。
【0042】
また、本発明は、顔の皮膚、身体の皮膚、および頭皮などの皮膚を保護する方法に関し、該方法は、それを必要とする人に、有効量の上述の組成物を投与することを含んでなる。
【0043】
また、本発明は、目的として、皮膚バリアの弱体化対策に使用するための上述の本発明による組成物に関する。
【0044】
また、本発明は、皮膚バリアの弱体化対策のための上述の組成物の使用に関する。
【0045】
また、本発明は、皮膚バリアの弱体化対策の方法に関し、該方法は、それを必要とする人に、有効量の上述の組成物を投与することを含んでなる。
【0046】
また、本発明は、目的として、皮膚バリアの弱体化に続く外因性分子の皮膚内への透過を防止または低減するために使用するための、上述の組成物に関する。
【0047】
また、本発明は、皮膚バリアの弱体化に続く外因性分子の皮膚内への透過を防止または低減するための、上述の組成物の使用に関する。
【0048】
また、本発明は、皮膚バリアの弱体化に続く外因性分子の皮膚内への透過を防止または低減する方法に関し、該方法は、それを必要とする人に、有効量の上述の組成物を投与することを含んでなる。
【0049】
皮膚バリアの弱体化は、特に、冷えまたは熱、より特定的には熱などの、環境的要因の影響下で、特に太陽への曝露の場合に引き起こされ得る。
【0050】
この弱体化は特に、角質細胞間の空間の不安定化であって、とりわけ例1の手順に従って評価することができる不安定化をもたらす。
【0051】
外因性分子は、特に刺激性物質(生理用品、溶媒等)またはアレルギー性物質(香水、ハウスダスト、微生物因子等)であり得る。特に、外因性分子は親油性である。
【0052】
また、本発明は、目的として、顔の皮膚、身体の皮膚、および頭皮などの皮膚を保護するための、以下の一般式(I):
【化3】
[式中、
R
1およびR
2の基は、互いに独立して、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリドに関する。
【0053】
また、本発明は、顔の皮膚、身体の皮膚、および頭皮などの皮膚を保護することを目的とした局所的な化粧組成物または皮膚用組成物を製造するための、以下の一般式(I):
【化4】
[式中、
R
1およびR
2の基は、互いに独立して、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリドの使用に関する。
【0054】
また、本発明は、顔の皮膚、身体の皮膚、および頭皮などの皮膚を保護するための、以下の一般式(I):
【化5】
[式中、
R
1およびR
2の基は、互いに独立して、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリドの使用に関する。
【0055】
また、本発明は、顔の皮膚、身体の皮膚、および頭皮などの皮膚を保護する方法であって、それを必要とする人に、有効量の以下の一般式(I):
【化6】
[式中、
R
1およびR
2の基は、互いに独立して、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリドを投与することを含んでなる方法に関する。
【0056】
また、本発明は、目的として、皮膚バリアの弱体化対策に使用するための、以下の一般式(I):
【化7】
[式中、
R
1およびR
2の基は、互いに独立して、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリドに関する。
【0057】
また、本発明は、皮膚バリアの弱体化対策を目的とした局所的な化粧組成物または皮膚用組成物を製造するための、以下の一般式(I):
【化8】
[式中、
R
1およびR
2の基は、互いに独立して、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリドの使用に関する。
【0058】
また、本発明は、皮膚バリアの弱体化対策のための、以下の一般式(I):
【化9】
[式中、
R
1およびR
2の基は、互いに独立して、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリドの使用に関する。
【0059】
また、本発明は、皮膚バリアの弱体化対策の方法であって、それを必要とする人に、有効量の以下の一般式(I):
【化10】
[式中、
R
1およびR
2の基は、互いに独立して、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリドを投与することを含んでなる方法に関する。
【0060】
また、本発明は、目的として、皮膚バリアの弱体化に続く外因性分子の皮膚内への透過を防止または低減するために局所使用するための、以下の一般式(I):
【化11】
[式中、
R
1およびR
2の基は、互いに独立して、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリドに関する。
【0061】
また、本発明は、皮膚バリアの弱体化に続く外因性分子の皮膚内への透過を防止または低減することを目的とした局所的な化粧組成物または皮膚用組成物を製造するための、以下の一般式(I):
【化12】
[式中、
R
1およびR
2の基は、互いに独立して、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリドの使用に関する。
【0062】
また、本発明は、皮膚バリアの弱体化に続く外因性分子の皮膚内への透過を防止または低減するための、以下の一般式(I):
【化13】
[式中、
R
1およびR
2の基は、互いに独立して、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリドの使用に関する。特に、外因性分子は親油性である。
【0063】
また、本発明は、皮膚バリアの弱体化に続く外因性分子の皮膚内への透過を防止または低減する方法であって、それを必要とする人に、有効量の以下の一般式(I):
【化14】
[式中、
R
1およびR
2の基は、互いに独立して、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。]
を有する1,3ジグリセリドを投与することを含んでなる方法に関する。
【0064】
皮膚バリアの弱体化は、特に冷えまたは熱、より特定的には熱などの環境的要因の影響下で、特に太陽への曝露の場合に引き起こされ得る。
【0065】
この弱体化は特に、角質細胞間の空間の不安定化であって、とりわけ例1の手順に従って評価することができる不安定化をもたらす。
【0066】
外因性分子は、特に刺激性物質(生理用品、溶媒等)またはアレルギー性物質(香水、ハウスダスト、微生物因子等)であり得る。
【0067】
特定の実施態様では、R1およびR2の基は、同一であり、C13~C40飽和直鎖状アルキル基を表す。
【0068】
本発明の別の実施態様によれば、R1およびR2の基は、互いに独立してC15~C23、特にC15~C19の飽和直鎖状アルキル基を表す。また、R1およびR2の基は、同一であり、かつC15~C23、特にC15~C19の飽和直鎖状アルキル基を表してもよい。
【0069】
同一または異なる、好ましくは同一のR1およびR2の基は、特に、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸の炭化水素鎖、すなわちペンタデシル基、ヘプタデシル基、ノナデシル基を表す。
【0070】
本発明による1,3ジグリセリドは、特に1,3ジパルミチン酸グリセリル、1,3ジステアリン酸グリセリルまたはそれらの混合物とする。
【0071】
以下の図面および例で本発明を示す。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】
図1は、温度の関数としての、角質細胞間の脂質の脂肪族鎖のvCH
2振動の波数を示す図である。
【
図2】
図2は、1,3ジグリセリドの鎖の長さによる、1,3ジグリセリドが存在する状況と存在しない状況の間の、角質細胞間の脂質の脂肪族鎖のvCH
2振動の波数の変化を示す図である。
【
図3】
図3は、皮膚の事前処置を行ったかまたは行わなかった上での、28℃および43℃でのCH
2の対称の伸縮バンド変化を表す図である。
【
図4】
図4は、皮膚の事前処置を行ったかまたは行わなかった上での、28℃および43℃でのCH
2の対称の伸縮バンド変化を表す図である。
【
図5】
図5は、24時間後のフランツ拡散セルの異なる区画中で回収されたB(a)Pのパーセンテージ(平均±SEM;n=8)を表す図である。
【実施例】
【0073】
例1:熱の影響下での角質細胞間の空間の組織の変更
この研究は、できる限り現実に近いモデルで行うために前腕の角質層から抽出した脂質に対して実施された。我々は、温度の関数としての、脂肪族鎖の基本的vCH2振動バンドの変化を検討するために、赤外分光法(ATR-FTIR)を使用した。
【0074】
18℃と50℃の間の温度の関数としてのvCH
2振動の波数の変化は
図1に示す。
【0075】
低温では、純粋脂質の混合物のvCH2伸縮振動の値が2850.7cm-1に位置していることに留意すべきであり、これは斜方相/六角形相の特性であり、そして、後者は、液体相の特性である、2852.4cm-1に達するために、より高温でより高い波数へ変化することに留意すべきである。
【0076】
観察された波数の増加により、確かに温度の影響下での角質細胞間脂質の状態の変化および液体化が明らかとなる。
【0077】
例2:1,3ジグリセリドの安定化効果および角質細胞間脂質の組織に対するそれらの鎖長の効果の明白化
本試験は、前腕の角質層から抽出した脂質を使用して類似の実験条件で行われ、ここでは標準化された量のジグリセリドを添加した(サンプル30μgにつきジグリセリドを3μg)。
図2は、40℃で測定を行ったvCH
2パラメータに対する1,3ジグリセリドの鎖長の効果を示す。
【0078】
これらの結果から、グリセリドの脂肪族鎖の長さの影響を明らかにすることができた。生命体に近い温度では、1,3-ジカプリン(CIO)と同様に1,3-ジラウロイルグリセロール(C12)は角質細胞間脂質の組織に影響を及ぼさなかった。
図2から明らかなように、C14鎖長から開始して、顕著な安定化効果が現われ、C16鎖長から開始して、CH
2の伸縮振動数がジグリセリドを欠く抽出物と比較して低い数字に向かって維持されていることが見受けられる。さらに、これらの結果により、確かに熱の影響下での皮膚脂質の液体化に対してのジグリセリドのアルキル鎖の長さの安定化力の増加が明らかとなる。
【0079】
例3:1,3ジグリセリド/1,2ジグリセリドの比較
例2の試験を1,2-ジステアロイル-rac-グリセロール(1,2ジグリセリド)で再現し、1,3ジステアリン酸グリセリル(1,3ジグリセリド)で実施した試験と比較した。得られた結果を以下の表1に示す。
【0080】
【0081】
これらの結果によれば、角質細胞間の空間の安定化に対する1,3ジグリセリドの卓越した効果が明白に示される。
【0082】
例4:in vivoでの臨床症状での1,3-ジステアリン酸グリセリルの適用後における角質細胞間空間の組織の安定化効果の明白化
この研究は健常ボランティアで実施した。10cm2区域の前腕の内側面でのATR-FTIRセンサーの中間(intermediary)を介して赤外線データの回収を行った。
【0083】
処置を行った区域(1,3-ジステアリン酸グリセリルのin vivo適用あり)および対照区域(1,3-ジステアリン酸グリセリルの適用なし)を決定した。
【0084】
1,3-ジステアリン酸グリセリルの2つの濃度を評価した(表2:0.5mg/cm2および表3:0.15mg/cm2)。
【0085】
T0では、まず、皮膚を30~45℃の間に加熱した。
【0086】
次いで、処置を行った区域での1,3-ジステアリン酸グリセリルのin vivo適用後に、T0:T30分後、T1時間30分後およびT4時間後での異なる時間での、製品の適用がない(対照区域)参照測定との比較における、vCH2振動の波数に関係する波数の変化の評価を行った。
【0087】
得られたデータは、表2および3にまとめ、幾つかの考察を行うことを可能とする。
【0088】
【0089】
【0090】
表2および3は、1,3-ジステアリン酸グリセリルが存在しない参照測定と比較における、1,3-ジステアリン酸グリセリルの存在下での、40℃での角質細胞間脂質の脂肪族鎖のvCH2振動に関係する波数の変化を表す。
【0091】
まず、1,3-ジステアリン酸グリセリルの標準状態での使用によって30~45℃の間に熱せられた皮膚の角質細胞間の空間の組織を安定化させることが可能であることが示された。
【0092】
第二に、1,3-ジステアリン酸グリセリルが適用された直後に視認可能なこの安定化効果は、少なくとも4時間持続することが示された。
【0093】
例5:本発明による組成物の例
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
例6:ベンゾ[a]ピレンの皮膚透過に対する1,3ジグリセリドの影響の評価
1,3-ジグリセリドの角質層脂質の組織に対する影響およびバリア機能を評価するために、既知の汚染物質(ベンゾ[a]ピレン(B(a)P)による皮膚透過のin vitro試験を開発して実施した。同一のドナーでFTIR(Fourier transform infrared:フーリエ変換赤外)測定およびB(a)P皮膚透過を評価して、皮膚が42℃に熱せられた場合の、脂質組織および「外部からの(outside-in)」皮膚バリア機能の変調を関連付けた。
【0099】
第一には、皮膚の表面で温度が32℃から42℃に上昇すると、脂質組織が変更されて、B(a)Pの皮膚透過が増加したことによって証明されるように、「外部からの」皮膚バリア機能を変更することが実証された。
【0100】
第二には、ジメチコン内で処方された3%および15%の1,3ジステアリン酸グリセリルでの事前処置による、温度上昇によって誘発されたSC(角質層)脂質組織およびB(a)P皮膚透過への影響が評価された。
【0101】
【0102】
溶解性:
B(a)Pの溶解性は広く文献に記載されている。その物理化学的特性に起因して、B(a)Pの水中での溶解性は非常に悪い。Episuiteソフトウェアでは溶解性は13.3μg/Lと予測され、実験的データでは25℃でこの結果が確認された[11]。
【0103】
本研究では、レセプター液中に見られるB(a)Pのパーセンテージは、最悪の場合、適用用量の0.13%に達し、これは12.51μg/Lに相当する。これらのデータに基づき、我々はウシ血清アルブミン(bovine serum albumin (BSA))を4%添加してB(a)Pの溶解性を増加させ、皮膚の損傷を回避した。皮膚バリア機能の変更を回避するために、界面活性剤およびエタノールは禁止した。
【0104】
指針
本研究は、下記に従って実施した:
-化学薬品試験に関するOECDガイドライン;ガイドライン428、皮膚吸収:in vitro法(2004年4月13日);
-化粧品成分の皮膚吸収のin-vitro評価のための基本基準である、SCCSガイドライン、2006年3月更新。
【0105】
実験計画
温度設定:
FTIR測定:
皮膚サンプルは1分当たり1℃の速度で加熱し、28℃~43℃の間でスペクトルを回収した。
【0106】
【0107】
皮膚送達実験:
皮膚送達研究のために、2つの温度を設定した。皮膚送達研究のための、伝統的な皮膚表面の温度は32℃である。この温度は、in vivoでの皮膚表面の温度に相当する。
【0108】
生物物理学および画像化ユニット(Biophysic and Imaging Unit)により実行された、FTIRを用いたin vitro脂質に対する以前の研究では、40℃で脂質の無秩序化が視認可能となり始めることが示された。これらの研究に基づき、皮膚送達実験の間に脂質の無秩序化を観察できるように42℃という温度を選択した。
【0109】
【0110】
【0111】
皮膚透過研究は8人のドナーで実施し、全ての状態に同一のドナーを使用した。
【0112】
【0113】
脂質組織-FTIR測定:
事前処置を30分間行った後に、FTIR測定を行い、角質層中の脂質マトリックスの分子組織を評価した。手順は、約2850cm―1のCH2の対照性伸縮バンドの位置の皮膚温度に従って行い、温度に従い、皮膚サンプルを、1分当たりに1℃の速度で熱し、事前処置を行った上で、および行わなかった上で、28℃と43℃の間でスペクトルを回収した。CH2の対照性伸縮バンドの位置は脂質組織の特徴であり、バリア機能に関連づけることができる。
【0114】
読み出し(READ-OUT)パラメータ
-温度に依存する皮膚移植のFTIR測定(CH2対照性伸縮バンドの位置);
-皮膚透過研究
・B(a)Pの全ての回収
・適用されたB(a)Pのパーセンテージでの区画に分けた配分
・μg/cm2での区画に分けた配分
【0115】
データ管理
研究は8人のドナーで実施し、全ての状態に同一のドナーを使用した。OECD 428およびSCCSのガイドラインに従い、B(a)P回収は適用用量の85%~115%からなる必要がある。
B(a)Pの結果は、下記のように、表およびグラフで提示される:
-表面、角質層、皮膚およびレセプター液での適用用量の%;
-表面、角質層、皮膚およびレセプター液でのB(a)Pのμg/cm2。
結果は、パーセンテージについては小数点以下2桁で示し、かつ量はμg/cm2で示した。この報告で使用した式は以下の通りである。
-平均の標準誤差:sem=Sd/√n
-生物学的利用能:皮膚およびレセプター液で発見された量の合計
Graph Padソフトウェアと組合せたスチューデントのt-検定によってグループ間の比較を実施した。統計的分析はn>5の場合に解釈することができる。
【0116】
結果:
脂質組織-FTIR測定
FTIR測定は、事前処置を行った上で、または行わなかった上で、ヒト皮膚外植片(ドナー8人)に対して実施した。1分当たり1℃の速度で皮膚サンプルを加熱し、28℃~43℃の間でスペクトルを回収した。
【0117】
図3および
図4は、CH
2の対照性伸縮バンドに対する温度の影響を示している。事前処置がないと、皮膚を熱した場合には、CH
2の対照性伸縮バンドが28℃で2851.2cm
-1から43℃で2852.12cm
-1に変化し、脂質組織の顕著な差異を見ることができた(T検定、p値<0.05)。3%または15%の1,3ジステアリン酸グリセリルでの事前処置によって脂質組織に対する熱による影響を顕著に減少させる(T検定、p値<0.05)ことができる。2851.2cm
-1(43℃基底)から2848.7cm
-1へのCH
2の対照性伸縮バンドの変化は、43℃での事前処置としての3%の1,3ジステアリン酸グリセリルで観察された。1,3ジステアリン酸グリセリルでの事前処置は皮膚の加熱によって引き起こされたCH
2の対照性伸縮バンドの変化を低減させる:3%の1,3ジステアリン酸グリセリルで事前処置した後の変化はたったの0.05cm
-1であったのに対し、事前処置がなかった場合は0.81cm
-1であった。
【0118】
皮膚透過研究
全ての回収:
全ての拡散セルの全ての回収は、適用用量の94.9%~97.6%の範囲である許容基準内であり、研究を実証することができた。
【0119】
適用用量のパーセンテージでの区画に分けた配分:
得られた結果は下表4および
図5で提示されている。
【0120】
【0121】
B(a)Pの適用用量の大半は表面で回収された(適用用量の最大94.5%)。
【0122】
B(a)P生物学的利用能(皮膚+レセプター液)は32℃で低い(即ち、適用用量の最大2.95%)。B(a)P生物学的利用能は、皮膚が42℃で熱せられると顕著に増加し、適用用量の6.95%に達する(T検定、p値<0.05)。
【0123】
ビヒクル単独(ジメチコン)での事前処置は、皮膚の温度が何度であってもB(a)Pの生物学的利用能を顕著に修正しない(T検定、p値<0.05)。ジグリセリドとして3%または15%での1,3ジステアリン酸グリセリドで事前処置した後に、43℃で顕著なB(a)Pの生物学的利用能の低下が観察された。確かに、適用用量の7.57%がビヒクル(ジメチコン)と生物学的に利用可能であり、3%または15%での1,3ジステアリン酸グリセリドで事前処置した後に、適用用量のそれぞれ5.35%および4.35%に低下する。
【0124】
42℃では、角質層中で発見されたB(a)Pのパーセンテージは、1,3ジステアリン酸グリセリドを適用した後に低下する。B(a)Pとしての物理化学的特性を有する化合物では、親油性区画である角質層がレザーバー(reservoir)としての役割を果たす。したがって角質層中で回収されたB(a)Pのパーセンテージを低下させることは、この化合物が、皮膚が熱せられていなくても皮膚の深層で拡散することを防止する。
【0125】
B(a)Pの皮膚透過について得られた結果は、FTIR測定から得られた結果と良く相関する。
【0126】
結果:
皮膚への適用から24時間後のB(a)Pの皮膚透過について得られた結果は、FTIR測定から得られた結果とよく相関する。これらデータは、42℃周辺での脂質組織の変異がバリア機能を弱体化させ、かつB(a)Pなどの外的汚染物質のような化合物の生物学的利用能を増加させることを誘発すると示した。これは1,3-ジグリセリドの使用がバリア機能を顕著に改善させ、ジメチコン中に製剤化した3%または15%での1,3ジステアリン酸グリセリドの両方での事前処置を評価した。B(a)Pの皮膚透過研究で実証されたように、1,3ジステアリン酸グリセリドでの事前処置は脂質組織(FTIR測定)の安定化を可能にし、「外部からの」バリア機能を改善させる。3%の1,3ジステアリン酸グリセリドでの事前処置であったとしても、バリア機能および脂質安定化の顕著な改善が観察された。
【0127】