(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/38 20060101AFI20230714BHJP
H01H 50/18 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
H01H50/38 H
H01H50/18 U
(21)【出願番号】P 2019051034
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2022-01-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】村越 拓治
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-027892(JP,A)
【文献】実開昭54-072634(JP,U)
【文献】実開昭60-162351(JP,U)
【文献】特開2013-037775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 50/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1接点を有する第1の端子と、
前記一対の第1接点にそれぞれ接離可能に対向する一対の第2接点が固定された1つの第2の端子と、
前記第1の端子の、前記一対の第1接点とは反対側であって前記一対の第1接点の間に、前記第1の端子に対し非接触に配置される第1磁石とを備え、
前記第1磁石は、前記一対の第1接点と前記一対の第2接点とが対向する方向へ磁化されている、電磁継電器。
【請求項2】
前記第1の端子は、前記一対の第1接点を支持する先端部と、該先端部から延長される第1の延長部とを有し、
前記第2の端子は、前記一対の第2接点を支持する先端部と、該先端部から延長される第2の延長部とを有し、
前記第1の延長部と前記第2の延長部とは互いに逆方向へ延長される、請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記第1の端子は、前記一対の第1接点を支持する先端部と、前記第1接点と前記先端部への取付部とを各々に有する一対の接点部材とを備え、
前記第1磁石は、前記一対の接点部材の前記取付部の間の空間に受容される寸法を有する、請求項
1又は2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
一対の第1接点を有する第1の端子と、
前記一対の第1接点にそれぞれ接離可能に対向する一対の第2接点を有する第2の端子と、
前記第1の端子の、前記一対の第1接点とは反対側であって前記一対の第1接点の間に、前記第1の端子に対し非接触に配置される第1磁石とを備え、
前記第1磁石は、前記一対の第1接点と前記一対の第2接点とが対向する方向へ磁化されており、
前記第2の端子の、前記一対の第2接点とは反対側であって前記一対の第2接点の間に、前記第2の端子に対し接触して配置される第2磁石をさらに備え、
前記第2磁石は、前記一対の第1接点と前記一対の第2接点とが対向する方向へ、前記第1磁石の極性とは逆向きの極性を持つように磁化されている、電磁継電器。
【請求項5】
前記第1磁石に取り付けられて磁路を形成するヨークを備える、請求項1から
4のいずれか一項に記載の電磁継電器。
【請求項6】
前記第1の端子、前記第2の端子及び前記第1磁石を支持する筐体を備え、
前記筐体は、前記一対の第1接点の間に隙間を有して前記第1磁石の上面を部分的に保持する保持壁を備える、請求項1から
5のいずれか一項に記載の電磁継電器。
【請求項7】
前記一対の第1接点の一方及び前記一対の第2接点の一方からなる第1の接点組と、前記一対の第1接点の他方及び前記一対の第2接点の他方からなる第2の接点組とは、前記電磁継電器の閉動作時に電気的に並列接続される、請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項8】
前記第1の接点組と前記第2の接点組とでは、発生したアークが引き伸ばされる方向が互いに異なる、請求項
7に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁石により接点を開閉する電磁継電器は、電磁石と、接極子と、可動接点を有する可動端子と、固定接点を有する固定端子とを備え、電磁石の励磁により接極子を動かして可動端子を押圧することで、可動接点と固定接点とを互いに接触させる。
【0003】
特許文献1には、一対の可動接点を有する1つの可動接触片とそれぞれが1つの固定接点を有する2つの固定接触片とを備えた開閉部を有する電磁継電器が開示されている。この電磁継電器は、開閉部で発生するアークを消弧させるための一対の永久磁石と、永久磁石を磁気的に接続する磁性材料の接続部材とを有するアーク消弧部材を備える。
【0004】
特許文献2には、1つの可動接点を有する可動端子と1つの固定接点を有する固定端子により構成される第1及び第2の開閉部を有し各開閉部が別個の回路を構成するリレーが開示されている。第1の開閉部には第1の永久磁石が、第2の開閉部には第2の永久磁石が設けられ、それぞれの永久磁石が対応する開閉部にて発生するアークを消弧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5085754号公報
【文献】特許第5202072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の可動接点及び複数の固定接点からなる接点構造を有する電磁継電器においては、アーク消弧のための構造が複雑となり、電磁継電器が大型化し、且つ、組立ての難易度が高くなる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、一対の第1接点を有する第1の端子と、前記一対の第1接点にそれぞれ接離可能に対向する一対の第2接点が固定された1つの第2の端子と、前記第1の端子の、前記一対の第1接点とは反対側であって前記一対の第1接点の間に、前記第1の端子に対し非接触に配置される第1磁石とを備え、前記第1磁石は、前記一対の第1接点と前記一対の第2接点とが対向する方向へ磁化されている、電磁継電器である。
【発明の効果】
【0008】
一態様の電磁継電器によれば、第1磁石の配置と磁化方向とにより、それぞれが第1接点と第2接点とからなる2つの接点組にそれぞれ発生するアークを、第1接点(又は第2接点)の並設方向とは異なる方向に引き伸ばして消弧できる。結果として、電磁継電器は、第1接点(又は第2接点)の並設方向の寸法を小さくしつつ、2つの接点組にそれぞれ発生するアークを消弧できる。また簡易な構造によりアークを消弧できるため、組立てが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による電磁継電器の分解斜視図である。
【
図2】
図1の電磁継電器の内部構造を示す上面図である。
【
図4】
図1の電磁継電器の筐体における構成部品の配置関係を示す図である。
【
図5】
図4の矢印V方向からみた第1磁石の配置を示す図である。
【
図7】変形例による第1磁石及びヨークの配置を示す図である。
【
図8】変形例による第1磁石及び第2磁石の配置を示す図である。
【
図9】変形例による取付部材と他の構成部品とを示す分解斜視図である。
【
図10】
図9の取付部材の固定方法を説明する図である。
【
図11】変形例によるヨークと他の構成部品とを示す分解斜視図である。
【
図12】変形例による筐体における構成部品の配置関係を示す図である。
【
図13】変形例による第1磁石の固定方法を説明する
図12の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
図1は電磁継電器2の分解斜視図である。電磁継電器2は、種々の構成部品が組み込まれる筐体4と、筐体4に取り付けられるカバー6とを有する。筐体4及びカバー6は、例えば樹脂により形成される。
図2はカバー6を取り外した状態の電磁継電器2の上面図である。
【0011】
筐体4に組み込まれる構成部品は、電磁石8と、アクチュエータ10と、一対の板状のアマチュア12、14と、永久磁石16と、カード18と、第1の端子20と、導電性の基部21と、第2の端子22とを含む。電磁石8は、コイル組立24と、鉄心26と、ヨーク28とを含む。
【0012】
コイル組立24は、4つのコイル端子30a、30b、30c、30dと、2つの巻線を有するコイル32と、コイル32が巻回されるボビン34とを含む。コイル32の一方の巻線にはコイル端子30a、30cが接続され、他方の巻線にはコイル端子30b、30dが接続される。ボビン34は、例えば樹脂により形成される。
【0013】
鉄心26は、軸26aを有する。軸26aは、ボビン34の空洞34a及びヨーク28の孔28aに挿入され、コイル32の中心に位置するように配置される。
【0014】
アクチュエータ10は、軸10aを有する。アクチュエータ10は、軸10aが筐体4の孔4a(
図4)に挿入されることで、筐体4に軸10aを中心として回動可能に取り付けられる。アクチュエータ10は、例えば樹脂により形成される。
【0015】
アマチュア12、14とカード18とは、アクチュエータ10に取り付けられる。アマチュア12、14は、例えば鉄等の磁性材料により形成される。
【0016】
永久磁石16は、アマチュア12、14の間に挟み込まれて配置される。結果として、永久磁石16とアマチュア12、14とが磁路を形成し、アマチュア12、14の間には定常的に磁束が発生する。
【0017】
第1の端子20は、一対の第1接点50、52を有する。より詳しくは、第1の端子20は、先端部62と、先端部62に取り付けられる一対の接点部材42、44とを備える。接点部材42は、第1接点50と先端部62への取付部54とを有する。接点部材44は、第1接点52と先端部62への取付部56とを有する。
【0018】
また第1の端子20は、先端部62から延長される第1の延長部103と、第1の延長部103を挟んで先端部62の反対側に位置する基端部63とを有する。この実施形態では、先端部62、第1の延長部103及び基端部63は、導電性及びばね性を有する板の構成部分である。
【0019】
先端部62には一対の孔64、66が形成される。個々の接点部材42、44の取付部54、56を対応の孔64、66にそれぞれ挿入してかしめることで、先端部62に第1接点50、52が固定される。一対の第1接点50、52は導電性を有する板を介して電気的に接続される。
【0020】
第1の端子20は、一対の接続部材46、48により基部21に接続される。基部21は、電磁継電器2の外部に露出する先端部72と、先端部72から延長される延長部107と、延長部107を挟んで先端部72の反対側に位置する基端部74とを有する。
【0021】
第1の端子20の基端部63には一対の孔68、70が形成され、基部21の基端部74には一対の孔76,78が形成される。孔68と孔76とを重ね合わせ、且つ孔70と孔78とを重ね合わせた状態で、接続部材46の取付部58を対応の孔68、76に挿入し、接続部材48の取付部60を対応の孔70、78に挿入して、それぞれかしめることにより、第1の端子20が基部21に固定される。
【0022】
基部21は、ばね性を有する板を含む第1の端子20を支持することで、可動端子23を構成する。第1の端子20と基部21とは例えば金属板により形成される。
【0023】
第2の端子22は、一対の第2接点86、88を有する。より詳しくは、第2の端子22は、先端部94と、先端部94に取り付けられる一対の接点部材82、84とを備える。接点部材82は、第2接点86と先端部94への取付部90とを有する。接点部材84は、第2接点88と先端部94への取付部92とを有する。
【0024】
また第2の端子22は、先端部94から延長される第2の延長部105と、第2の延長部105を挟んで先端部94の反対側に位置する基端部96とを有する。この実施形態では、先端部94、第2の延長部105及び基端部96は、導電性を有する板の構成部分である。
【0025】
先端部94には一対の孔98、100が形成される。個々の接点部材82、84の取付部90、92を対応の孔98、100にそれぞれ挿入してかしめることで、先端部94に第2接点86、88が固定される。一対の第2接点86、88は導電性を有する板を介して電気的に接続される。
【0026】
第2接点86及び第1接点50と、第2接点88及び第1接点52とは、それぞれ接離可能に互いに対向する。また上記したように、一対の第1接点50、52は互いに電気的に接続され、一対の第2接点86、88は互いに電気的に接続されている。したがって、本実施形態に係る接点構造は、互いに電気的に接続される第1接点50、52と、互いに電気的に接続される第2接点86、88とにより開閉動作を行うツイン接点構造である。第2接点86及び第1接点50の接点組と第2接点88及び第1接点52の接点組とは、電磁継電器2の閉動作時に電気的に並列接続される。
【0027】
図2及び
図3を参照して、電磁継電器2の開閉動作を説明する。
図3は、アクチュエータ10に取り付けられた状態における、アマチュア12、14と、永久磁石16と、鉄心26と、ヨーク28との配置関係を示す。本実施形態では、第1の端子20が可動側の端子であり、第2の端子22が固定側の端子である。
【0028】
図3(a)は、第1接点50、52と第2接点86、88とが離れた状態における配置関係を示す。
図3(b)は、第1接点50、52と第2接点86、88とが接触した状態における配置関係を示す。
【0029】
図3(a)では、アマチュア12、14がそれぞれ鉄心26とヨーク28とに吸着している。
図3(b)では、アマチュア14がヨーク28から離れて、アマチュア12がヨーク28に吸着している。電磁石8を励磁しない状態では、永久磁石16の磁力により、
図3(a)(b)のいずれか一方の配置関係が維持される。以下の説明では、
図3(a)の配置を電磁石8の励磁前の状態として説明する。
【0030】
電磁継電器2は、例えばコイル端子30a、30c間への電圧印加により電磁石8を励磁し、
図3の矢印A方向に永久磁石16による磁力よりも大きな磁力を発生させることで、アマチュア12、14及び永久磁石16を
図3(a)の位置から
図3(b)の位置へ遷移させる。この遷移に伴い、アクチュエータ10は
図2の矢印101の方向に回動し、アクチュエータ10と連動するカード18が第1の端子20を押圧して
図2で上方向に動かし、第1接点50、52と第2接点86、88とを接触させる。
【0031】
続いて、例えばコイル端子30b、30d間への電圧印加により電磁石8を励磁し、
図3の矢印B方向に永久磁石16による磁力よりも大きな磁力を発生させることで、アマチュア12、14及び永久磁石16を
図3(b)の位置から
図3(a)の位置へ遷移させる。この遷移に伴い、アクチュエータ10は
図2の矢印101と反対向きの方向に回動し、カード18による第1の端子20への押圧力が解除されて、第1接点50、52と第2接点86、88とは離れる。
【0032】
上記の構成及び原理により、電磁継電器2は、第1接点50、52と第2接点86、88とを開閉する。本実施形態は一例であり、開閉動作は任意の構成及び原理を採用し得る。例えばコイル端子30a、30c間、及び、コイル端子30b、30d間の電圧印加の方向を反対向きにして開閉動作をしても良い。また、第1の端子20を固定側の端子、第2の端子22を可動側の端子として構成しても良い。
【0033】
以下、
図4から
図6を参照して、第1磁石102の詳細を説明する。
図4、
図5、及び
図6は、第1の端子20と、基部21と、第2の端子22と、第1磁石102との配置関係を示す。
図4に示すように、第1磁石102は例えば直方体状に形成される。第1磁石102は例えばフェライト、サマリウムコバルト、ネオジウム等により形成される。
【0034】
電磁継電器2の開閉動作の際に第1の端子20と第2の端子22との間に電位差が生じることで、第1接点50と第2接点86との間や第1接点52と第2接点88との間にアークが発生することがある。第1磁石102は、アークを消弧するために電磁継電器2に備えられる。
【0035】
第1磁石102は、第1の端子20の、第1接点50、52とは反対側であって第1接点50、52の間に相当する位置に、第1の端子20に対し非接触に配置される。例えば第1磁石102は、基部21の面21a上に配置される。例えば第1磁石102は、第1接点50、52から等距離の位置に配置される。
【0036】
第1磁石102は、第1接点50、52と第2接点86、88とが対向する方向(
図5で上下方向)に磁化されている。
図5に示すように、例えば第1磁石102は、第1接点50、52に近い面102a側がN極、第1接点50、52に遠い面102b側がS極となる極性を持つように磁化され、磁束104、106を形成する。
【0037】
電流が第1の端子20から第1接点50、52及び第2接点86、88を通って第2の端子22に
図5で矢印108の方向に流れる場合を例として、第1磁石102がアークを消弧する原理を説明する。
【0038】
第1接点52と第2接点88との間において、磁束104は
図5で左方向に作用する。そのため、フレミングの左手の法則に基づき、第1接点52と第2接点88との間に発生するアークには
図5正面視奥側から手前側に向かってローレンツ力が作用する。結果として、アークは
図6で矢印C方向に引き伸ばされて消弧される。
【0039】
第1接点50と第2接点86との間において、磁束106は
図5で右方向に作用する。そのため、フレミングの左手の法則に基づき、第1接点50と第2接点86との間に発生するアークには
図5正面視手前側から奥側に向かってローレンツ力が作用する。結果として、アークは
図6で矢印D方向に引き伸ばされて消弧される。
【0040】
電流が
図5で矢印108と反対向きの方向に流れる場合は、フレミングの左手の法則に基づき、磁束104、106によるローレンツ力の方向がそれぞれ上記と反対向きとなる。そのため、第1接点52と第2接点88との間に発生するアークは矢印D方向、第1接点50と第2接点86との間に発生するアークは矢印C方向にそれぞれ引き伸ばされて消弧される。
【0041】
したがって、上記の構成により、第1接点50、52又は第2接点86、88の並設方向に第1磁石102を配置することなく、第1接点50と第2接点86との間、及び、第1接点52と第2接点88との間のそれぞれに発生するアークを消弧することができる。また、アークは第1接点50、52又は第2接点86、88の並設方向には引き伸ばされない。結果として、電磁継電器2は、アーク消弧能力を確保しつつ、第1接点50、52又は第2接点86、88の並設方向に寸法を小さくすることができ、且つ、簡易な構造によりアークを消弧できるため、組立てが容易となる。
【0042】
なお、第1磁石102は、面102a側がS極、面102b側がN極となる極性を持つように磁化されても良い。
【0043】
図4及び
図6に示すように、第1の延長部103と第2の延長部105とは互いに逆方向に延長される。アークが引き伸ばされるC方向又はD方向に導電性の第1の延長部103又は第2の延長部105が配置されることで、アークの端が第1接点50、52又は第2接点86、88に留まることなく第1の延長部103又は第2の延長部105上を移動するようにアークが引き伸ばされるため、確実にアークを消弧することができる。
【0044】
第1磁石102は、第1の延長部103と第2の延長部105との延長方向に沿う幅110が、他の方向の寸法よりも大きい。例えば幅110は、第1接点50及び52又は第2接点86及び88が並設する方向の幅112よりも長い。第1磁石102は、アークが引き伸ばされる方向に長い形状を有することで、アークが引き伸びていく空間へ高密度の磁束を発生させ、確実にアークを消弧することができる。
【0045】
また、
図5に示すように、第1磁石102の幅112は、取付部54、56の間の空間114に受容される寸法である。例えば幅112は、取付部54、56により画定される空間114の幅116よりも短い。第1の端子20は、電磁継電器2の開閉動作に伴って
図5で上下方向に移動可能である。したがって、第1の端子20の可動範囲を考慮し、第1の端子20と接触しないように配置する必要がある。
【0046】
第1磁石102の幅112を上記寸法とすることで、第1の端子20が
図5で下方に変位しても、取付部54、56と接触することなく第1の端子20に近づけて配置することができる。結果として、第1磁石102は、第1接点50と第2接点86との間、及び、第1接点52と第2接点88との間の磁束密度が高くなるように配置され、確実にアークを消弧することができる。
【0047】
図7は、ヨーク118を有する
図5の変形例を示す。
図7において、第1の端子20、第2の端子22、及び第1磁石102の配置関係、形状、及び大きさと、第1磁石102の極性とは
図5と同様である。ヨーク118は、底部120と、底部120からそれぞれ屈曲し、第1の端子20に向かって延長される壁部122、123とを有する。ヨーク118は、例えば鉄等の磁性材料により形成される。
【0048】
例えば、ヨーク118の面120aには、エポキシ樹脂等の接着剤により第1磁石102が接着されて磁路を形成する。磁束124が壁部122と底部120とを通り、且つ、磁束126が壁部123と底部120とを通ることで、磁束124と磁束126とを拡散させることなく、第1接点50と第2接点86との間、及び、第1接点52と第2接点88との間に集中させることができる。したがって、ヨーク118により、第1接点50と第2接点86との間、及び、第1接点52と第2接点88との間の磁束密度が高まり、アーク消弧能力を更に高めることができる。
【0049】
図8は、第2磁石128を有する
図5の変形例を示す。
図8において、第1の端子20、第2の端子22、及び第1磁石102の配置関係、形状、及び大きさと、第1磁石102の極性とは
図5と同様である。第2磁石128は、例えば第1磁石102と同一の形状及び大きさを有する。第2磁石128は例えばフェライト、サマリウムコバルト、ネオジウム等により形成される。
【0050】
第2磁石128は、第2の端子22の、第2接点86、88とは反対側であって第2接点86、88の間の位置に、第2の端子22に接触して配置される。例えば第2磁石128は、第2の端子22の面22a上であって、取付部90、92の間に配置される。例えば第2磁石128は第2接点86、88から等距離の位置に配置される。
【0051】
第2磁石128は、第1接点50、52と第2接点86、88とが対向する方向であって、第1磁石102の極性とは逆向きの極性を持つように磁化されている。
図8に示すように、例えば第2磁石128は、第2接点86、88に近い面128a側がN極、第2接点86、88に遠い面128b側がS極となる極性を持つように磁化され、磁束130、132を形成する。
【0052】
電流が第1の端子20から第1接点50、52及び第2接点86、88を通って第2の端子22に
図8で矢印108の方向に流れる場合を例として、第1磁石102及び第2磁石128がアークを消弧する原理を説明する。なお、第1磁石102については、アークに対して上記と同様に作用するため説明を省略する。
【0053】
上記磁化方向の場合には、第1接点52と第2接点88との間において、磁束130は磁束104と同一の方向となるため、フレミングの左手の法則に基づき、第1接点52と第2接点88との間に発生するアークには
図8正面視奥側から手前側に向かってローレンツ力が作用する。結果として、アークには、磁束104によるローレンツ力と、磁束130によるローレンツ力との合力が作用する。
【0054】
また第1接点50と第2接点86との間において、磁束132は磁束106と同一の方向となるため、フレミングの左手の法則に基づき、第1接点50と第2接点86との間に発生するアークには
図8正面視手前側から奥側に向かってローレンツ力が作用する。結果として、アークには、磁束106によるローレンツ力と、磁束132によるローレンツ力との合力が作用する。
【0055】
したがって、第1磁石102に加えて第2磁石128を配置することで、第1接点50と第2接点86との間、及び、第1接点52と第2接点88との間に発生するアークに対してより大きな力を作用させることができるため、アーク消弧能力を更に高めることができる。
【0056】
なお、第1磁石102及び第2磁石128は、それぞれ
図8に示す極性と逆向きとなる極性を持つように磁化されても良い。また第2磁石128は、第2の端子22に対し非接触に配置されても良い。さらに、電磁継電器2は、第1磁石102を有さずに、第2磁石128を配置してアークを消弧するように構成しても良い。
【0057】
図9は取付部材134を有する変形例における、構成部品の配置関係を示す分解斜視図である。
図9において、第1の端子20と、基部21と、第2の端子22と、第1磁石102との配置関係は
図4から
図6と同様である。
【0058】
取付部材134は基部21へ第1磁石102を取り付けるための部材であり、例えば樹脂により形成される。取付部材134は、例えば箱形に形成され、
図9で下方に開口する収容部136に第1磁石102を収容する。
【0059】
取付部材134は、外面134aと外面134aの反対側の外面134bとから、それぞれ収容部136からみて外方に延長される延長板138、140を有する。延長板138、140にはそれぞれ
図9で下方に延長される円柱状の突起142、144が形成される。基部21には一対の穴146、148が形成される。突起142、144を対応の穴146、148にそれぞれ挿入してかしめることで、取付部材134は基部21に固定される。
【0060】
図10は、
図9において、取付部材134の固定方法を説明する図である。
図10(a)は取付部材134の固定前の状態を示し、
図10(b)は取付部材134の固定後の状態を示す。
【0061】
図10(a)に示すように、突起142、144を対応の穴146、148に挿入した状態で、突起142の先端142aと突起144の先端144aとは、基部21の面21b側に突出する。
図10(b)に示すように、突出した先端142aと先端144aとを例えば熱を加えて塑性変形させることで、取付部材134は基部21に固定される。本実施形態は一例であり、取付部材134は任意の形状及び固定方法が採用され得る。
【0062】
図11は、取付部材134に加えて、ヨーク150を有する変形例における、構成部品の配置関係を示す分解斜視図である。
図11において、ヨーク150を除く構成部品の配置関係は
図9と同様である。ヨーク150は例えば鉄等の磁性材料により形成され、
図7のヨーク118と同一の外形形状及び大きさを有する。ヨーク150は、取付部材134と基部21との間に配置され、且つ、第1磁石102に取り付けられて磁路を形成する。
【0063】
図11に示すように、ヨーク150は突起142、144がそれぞれ貫通する貫通穴152、154を有する。突起142は、貫通穴152を貫通すると共に穴146に挿入されてかしめられる。突起144は、貫通穴154を貫通すると共に穴148に挿入されてかしめられる。突起142、144をかしめることで、取付部材134はヨーク150を基部21に固定する。
【0064】
図12及び
図13を参照して、第1磁石102の固定方法に係る、他の変形例を説明する。
図12は、変形例における構成部品の配置関係を示す。
図13は
図12の部分拡大図であり、
図13(a)は第1磁石102の固定前の状態、
図13(b)は第1磁石102の固定後の状態をそれぞれ示す。
【0065】
筐体4は、第1磁石102を保持するための保持壁156を有する。保持壁156は、基部21と共に空間158を形成する。第1磁石102は、空間158に配置され、且つ保持壁156に保持されることで固定される。
【0066】
保持壁156は、第1接点50、52の間に相当する位置に隙間160を有する。第1磁石102の面102aは、隙間160から部分的に露出して第1の端子20と対向する。保持壁156が隙間160を有することで、保持壁156の厚みを考慮することなく、第1磁石102を第1の端子20に近づけて配置することができる。結果として、第1接点50と第2接点86との間、及び、第1接点52と第2接点88との間に高密度の磁束を発生させてアーク消弧能力を確保すると共に、固定構造を筐体4と一体的に形成することで、部品点数を増やすことなく第1磁石102を固定することができる。
【0067】
保持壁156は、第1磁石102を保持する任意の形状が採用され得る。例えば保持壁156は、第1磁石102を保持して、且つ、取付部材134により基部21に取り付けられるように構成されていても良い。
【0068】
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。また、それぞれの図において、同一または相当する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0069】
2 電磁継電器
4 筐体
20 第1の端子
21 基部
22 第2の端子
23 可動端子
42、44 接点部材
50、52 第1接点
54、56 取付部
62、94 先端部
86、88 第2接点
102 第1磁石
103 第1の延長部
105 第2の延長部
118 ヨーク
128 第2磁石
134 取付部材
142、144 突起
146、148 穴
150 ヨーク
152、154 貫通穴
156 保持壁