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特許7313171流動焼却炉の制御装置および流動焼却炉の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】流動焼却炉の制御装置および流動焼却炉の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20230714BHJP
   F23G 5/30 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
F23G5/50 E ZAB
F23G5/50 G
F23G5/50 H
F23G5/30 B
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019061898
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159655
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100097319
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】古閑 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】田村 英輔
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特公平01-022539(JP,B2)
【文献】特開昭63-226590(JP,A)
【文献】国際公開第2011/016556(WO,A1)
【文献】特開2005-028251(JP,A)
【文献】特開2013-204926(JP,A)
【文献】特開2004-239470(JP,A)
【文献】特開平03-129206(JP,A)
【文献】特開平10-109018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 1/00 - 7/14
F23N 1/00 - 5/26
F23C 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水から取り出した下水汚泥を脱水して生成されるケーキまたはさらに乾燥工程を経て乾燥した乾燥ケーキである焼却対象物を焼却する流動焼却炉を制御する流動焼却炉の制御装置において、
前記流動焼却炉に供給される前記焼却対象物と空気とを含み、さらに、前記流動焼却炉に供給される燃料と水とを含む複数種の供給物を供給する各供給路に接続される計測器であって、複数の性状のうち、少なくとも流量を計測する流量計が各々の供給路に備えられ、
前記複数種の供給物の量に基づいて、
前記流動焼却炉から排出される排ガスの量である補正排ガス量を算出する第1算出部と、
算出された前記補正排ガス量に基づいて前記流動焼却炉の空塔速度を算出する第2算出部と、
算出された前記空塔速度が目標値から外れた場合、前記複数種の供給物の各々を前記流動焼却炉にそれぞれ供給する複数の供給装置の少なくともいずれかに供給物の供給量を調節させる指示を発行する供給制御部と
を有し、
前記第1算出部は、
前記流動焼却炉へのケーキの供給量、補助燃料の供給量、空気の供給量および水の供給量(注水量)を取得し、取得した各種供給量に基づいて、前記流動焼却炉で発生する標準状態での排ガス量である標準排ガス量を以下の式(1)にて算出し、

標準排ガス量=ケーキの理論燃焼排ガス量+補助燃料の理論燃焼排ガス量+注水分の排ガス量+過剰空気量・・・(1)
ここで、
ケーキの理論燃焼排ガス量:ケーキを空気比1で燃焼させたときに発生する排ガス量の値
補助燃料の理論燃焼排ガス量:補助燃料を空気比1で燃焼させたときに発生する排ガス量の値
注水分の排ガス量:流動焼却炉の温度を下げるために流動焼却炉に供給する水により発生する水蒸気量の値
過剰空気量:流動焼却炉に供給した空気のうち、燃焼に使用されない空気の量であり、流動焼却炉に供給された空気量からケーキおよび補助燃料の空気比1での燃焼に使用される空気量(理論燃焼空気量)を引くことで算出される値

前記標準排ガス量を炉内温度と炉内圧力を用いて補正するのに、以下の式(3)にて補正排ガス量を算出する

補正排ガス量[m/s]=標準排ガス量[Nm/s]×(273.15+炉内温度[℃])÷273.15×101.325÷(101.325+炉内圧力[kPa])・・・(3)

ことを特徴とする流動焼却炉の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流動焼却炉の制御装置において、
前記第1算出部は、前記焼却対象物が持つ複数の性状である含水率、有機成分率および元素組成に基づいて前記焼却対象物を焼却した場合の前記排ガス量を算出する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の流動焼却炉の制御装置において、
前記焼却対象物を前記流動焼却炉に供給する供給路に接続される計測器であって、前記複数の性状の少なくともいずれかを計測する計測器が前記流動焼却炉を有する焼却システムに含まれる場合、前記第1算出部は、前記計測器により計測される性状と前記計測器により計測されない性状の予測値とを使用して前記焼却対象物を焼却した場合の排ガスの量を算出する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流動焼却炉の制御装置において、
前記供給制御部は、前記空塔速度が第1設定値より低い場合、前記複数の供給装置の少なくともいずれかに供給物の供給量を増加させる指示を発行し、前記空塔速度が第1設定値以上である第2設定値より高い場合、前記複数の供給装置の少なくともいずれかに供給物の供給量を減少させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流動焼却炉の制御装置において、
前記供給制御部は、前記複数の供給装置の1つである空気供給装置に、前記流動焼却炉に供給する空気の量を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流動焼却炉の制御装置において、
前記流動焼却炉は過給式の焼却炉であり、
前記供給制御部は、過給機のコンプレッサから前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調節する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流動焼却炉の制御装置において、
前記流動焼却炉は過給式の焼却炉であり、
前記供給制御部は、過給機のタービンに供給する排ガスの一部をタービン下流流路にバイパスするバイパス路にある調節弁の開度を調整する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の圧力を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流動焼却炉の制御装置において、
前記流動焼却炉は過給式の焼却炉であり、
前記供給制御部は、過給機のタービンに供給する排ガスの量を調節する調節器に、前記タービンに供給する排ガスの量を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御装置。
【請求項9】
下水から取り出した下水汚泥を脱水して生成されるケーキまたはさらに乾燥工程を経て乾燥した乾燥ケーキである焼却対象物を焼却する過給式の流動焼却炉を制御する流動焼却炉の制御装置において、
前記流動焼却炉から排出される排ガスに含まれる固形成分を取り除く集塵機を、前記流動焼却炉の排ガス出口と過給機のタービン入口の間に設置し、
前記過給機のコンプレッサの圧縮空気出口と前記流動焼却炉の空気入口との間を接続する圧縮空気の供給用の配管に接続されて制御装置からの制御信号により開度が調節される余剰空気調節弁と、
前記過給機のタービン入口とタービン出口とを接続するバイパス経路に設けられ制御装置からの制御信号により開度が調節されるバイパス調節弁と、
前記流動焼却炉に供給される前記焼却対象物と空気とを含み、さらに、前記流動焼却炉に供給される燃料と水とを含む複数種の供給物を供給する各供給路に接続される計測器であって、各々の供給路には、複数の性状のうち、少なくとも流量を計測する流量計
を備え、
前記制御装置は、
記集塵機の排ガス出口側に配置される流量計により計測される排ガス量を取得する取得部と、
取得した前記排ガス量を炉内温度と炉内圧力を用いて補正するのに、以下の式(3)にて補正排ガス量を算出する第1算出部と、

補正排ガス量[m /s]=標準排ガス量[Nm /s]×(273.15+炉内温度[℃])÷273.15×101.325÷(101.325+炉内圧力[kPa])・・・(3)

演算した前記補正排ガス量に基づいて前記流動焼却炉の空塔速度を算出する第2算出部と
出した前記空塔速度が目標値から外れた場合、前記余剰空気調節弁と前記バイパス調節弁との少なくともいずれかに対し、それぞれを通過する気体の供給量を調節させる指示を発行する供給制御部と
を有することを特徴とする流動焼却炉の制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の流動焼却炉の制御装置において、
前記供給制御部は、前記排ガス出口側に設けられる過給機のコンプレッサから前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調整する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御装置。
【請求項11】
請求項9に記載の流動焼却炉の制御装置において、
前記供給制御部は、前記排ガス出口側に設けられる過給機のタービンに供給する排ガスの一部をタービン下流流路にバイパスするバイパス路にある調節弁の開度を調整する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の圧力を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御装置。
【請求項12】
請求項9に記載の流動焼却炉の制御装置において、
前記供給制御部は、前記排ガス出口側に設けられる過給機のタービンに供給する排ガスの量を調節する調節器に、前記タービンに供給する排ガスの量を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御装置。
【請求項13】
下水から取り出した下水汚泥を脱水して生成されるケーキまたはさらに乾燥工程を経て乾燥した乾燥ケーキである焼却対象物を焼却する流動焼却炉の制御方法において、
前記流動焼却炉に供給される前記焼却対象物と空気とを含み、さらに、前記流動焼却炉に供給される燃料と水とを含む複数種の供給物を供給する各供給路に接続される計測器であって、複数の性状のうち、少なくとも流量を計測する流量計が各々の供給路に備えられ、
前記複数種の供給物の量に基づいて、
前記流動焼却炉から排出される排ガスの量である補正排ガス量を算出し、
算出された前記補正排ガス量に基づいて前記流動焼却炉の空塔速度を算出し、
算出された前記空塔速度が目標値から外れた場合、前記複数種の供給物の各々を前記流動焼却炉にそれぞれ供給する複数の供給装置の少なくともいずれかに供給物の供給量を調節させる指示を発行し、
前記流動焼却炉へのケーキの供給量、補助燃料の供給量、空気の供給量および水の供給量(注水量)を取得し、取得した各種供給量に基づいて、前記流動焼却炉で発生する標準状態での排ガス量である標準排ガス量を以下の式(1)にて算出し、

標準排ガス量=ケーキの理論燃焼排ガス量+補助燃料の理論燃焼排ガス量+注水分の排ガス量+過剰空気量・・・(1)
ここで、
ケーキの理論燃焼排ガス量:ケーキを空気比1で燃焼させたときに発生する排ガス量の値
補助燃料の理論燃焼排ガス量:補助燃料を空気比1で燃焼させたときに発生する排ガス量の値
注水分の排ガス量:流動焼却炉の温度を下げるために流動焼却炉に供給する水により発生する水蒸気量の値
過剰空気量:流動焼却炉に供給した空気のうち、燃焼に使用されない空気の量であり、流動焼却炉に供給された空気量からケーキおよび補助燃料の空気比1での燃焼に使用される空気量(理論燃焼空気量)を引くことで算出される値

前記標準排ガス量を炉内温度と炉内圧力を用いて補正するのに、以下の式(3)にて補正排ガス量を算出する

補正排ガス量[m/s]=標準排ガス量[Nm/s]×(273.15+炉内温度[℃])÷273.15×101.325÷(101.325+炉内圧力[kPa])・・・(3)

ことを特徴とする流動焼却炉の制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載の流動焼却炉の制御方法において、
前記焼却対象物が持つ複数の性状である含水率、有機成分率および元素組成に基づいて前記焼却対象物を焼却した場合の前記排ガス量を算出する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御方法。
【請求項15】
請求項14に記載の流動焼却炉の制御方法において、
前記焼却対象物を前記流動焼却炉に供給する供給路に接続される計測器であって、前記複数の性状の少なくともいずれかを計測する計測器が前記流動焼却炉を有する焼却システムに含まれる場合、前記計測器により計測される性状と前記計測器により計測されない性状の予測値とを使用して前記焼却対象物を焼却した場合の排ガスの量を算出する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御方法。
【請求項16】
請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の流動焼却炉の制御方法において、
前記空塔速度が第1設定値より低い場合、前記複数の供給装置の少なくともいずれかに供給物の供給量を増加させる指示を発行し、前記空塔速度が第1設定値以上である第2設定値より高い場合、前記複数の供給装置の少なくともいずれかに供給物の供給量を減少させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御方法。
【請求項17】
請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の流動焼却炉の制御方法において、
前記複数の供給装置の1つである空気供給装置に、前記流動焼却炉に供給する空気の量を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御方法。
【請求項18】
請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の流動焼却炉の制御方法において、
前記流動焼却炉は過給式の焼却炉であり、
過給機のコンプレッサから前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調節する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御方法。
【請求項19】
請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の流動焼却炉の制御方法において、
前記流動焼却炉は過給式の焼却炉であり、
過給機のタービンに供給する排ガスの一部をタービン下流流路にバイパスするバイパス路にある調節弁の開度を調整する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の圧力を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御方法。
【請求項20】
請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の流動焼却炉の制御方法において、
前記流動焼却炉は過給式の焼却炉であり、
過給機のタービンに供給する排ガスの量を調節する調節器に、前記タービンに供給する排ガスの量を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御方法。
【請求項21】
下水から取り出した下水汚泥を脱水して生成されるケーキまたはさらに乾燥工程を経て乾燥した乾燥ケーキである焼却対象物を焼却する過給式の流動焼却炉の制御方法において、
前記流動焼却炉から排出される排ガスに含まれる固形成分を取り除く集塵機を、前記流動焼却炉の排ガス出口と過給機のタービン入口の間に設置し、
前記過給機のコンプレッサの圧縮空気出口と前記流動焼却炉の空気入口との間を接続する圧縮空気の供給用の配管に接続されて制御装置からの制御信号により開度が調節される余剰空気調節弁と、
前記過給機のタービン入口とタービン出口とを接続するバイパス経路に設けられ制御装置からの制御信号により開度が調節されるバイパス調節弁と、
前記流動焼却炉に供給される前記焼却対象物と空気とを含み、さらに、前記流動焼却炉に供給される燃料と水とを含む複数種の供給物を供給する各供給路に接続される計測器であって、各々の供給路には、複数の性状のうち、少なくとも流量を計測する流量計
が備えられ、
記集塵機の排ガス出口側に配置される流量計により計測される排ガス量を取得し、
取得した前記排ガス量を炉内温度と炉内圧力を用いて補正するのに、以下の式(3)にて第1算出部により補正排ガス量を算出し、

補正排ガス量[m /s]=標準排ガス量[Nm /s]×(273.15+炉内温度[℃])÷273.15×101.325÷(101.325+炉内圧力[kPa])・・・(3)

演算した前記補正排ガス量に基づいて第2算出部にて前記流動焼却炉の空塔速度を算出し
出した前記空塔速度が目標値から外れた場合、前記余剰空気調節弁と前記バイパス調節弁との少なくともいずれかに対し、それぞれを通過する気体の供給量を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御方法。
【請求項22】
請求項21に記載の流動焼却炉の制御方法において、
前記排ガス出口側に設けられる過給機のコンプレッサから前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調整する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御方法。
【請求項23】
請求項21に記載の流動焼却炉の制御方法において、
前記排ガス出口側に設けられる過給機のタービンに供給する排ガスの一部をタービン下流流路にバイパスするバイパス路にある調節弁の開度を調整する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の圧力を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御方法。
【請求項24】
請求項21に記載の流動焼却炉の制御方法において、
前記排ガス出口側に設けられる過給機のタービンに供給する排ガスの量を調節する調節器に、前記タービンに供給する排ガスの量を調節させる指示を発行する
ことを特徴とする流動焼却炉の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動焼却炉内で流動する流動媒体の流動状態を制御する流動焼却炉の制御装置および流動焼却炉の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流動焼却炉は、炉に入れた砂等の流動媒体を炉の下部から送り込まれる空気により流動させて流動層(流動床)を生成し、熱せられた流動層内に投入された下水汚泥または都市ゴミ等の焼却対象物を流動媒体とともに撹拌させて焼却する焼却炉である。流動焼却炉内の流動状態は、炉に供給する空気、焼却対象物や補助燃料等の量、および炉内の温度、圧力に依存して変化し、流動状態を最適にすることは、焼却対象物の燃焼効率を上げるために重要である。
【0003】
例えば、流動焼却炉において、炉内の明るさ、焼却対象物の供給量、温度、酸素濃度または炉内の圧力に応じて流動媒体を流動させるために炉内に供給する空気量を調節する手法が提案されている(特許文献1参照)。また、流動焼却炉において、排ガスの酸素濃度と炉内上部の水分濃度とに基づいて下水汚泥のケーキの含水率の増減を推定し、推定結果に基づいて炉に供給する空気の量、炉内温度、炉に供給する焼却対象物の量等を調節することで、燃焼の安定化を計る手法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許3108742号公報
【文献】特開2004-125332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流動焼却炉内の流動状態を示す指標の1つに空塔速度がある。例えば、流動焼却炉を設計する際には、所定の負荷での運転時に適した空塔速度が設定され、設定された空塔速度で焼却対象物が焼却されるように焼却炉の大きさや流動媒体の粒子径等が決められる。炉内の流動状態は炉内の空塔速度と相関があるため、設計値ではない運転中の空塔速度を求めることができれば流動状態を間接的に確認することが可能である。例えば、空塔速度が適正範囲を下回り、流動媒体の流動不足が発生すると、燃焼効率が低下し、さらに、燃焼により発生した灰が炉から排出されにくくなることにより炉内の流動砂に灰分を含めた流動媒体が増加してしまう。一方、空塔速度が適正範囲を上回り、流動媒体が過剰に流動すると、良好に排出される灰に加えさらに流動砂である流動媒体が炉外に飛散し、炉内の流動媒体が減少してしまう。増加した流動媒体の炉からの引き抜き、および減少した流動媒体の炉への補充は、流動焼却炉の運転コストを上昇させる。したがって、空塔速度が適正範囲に収まるように流動焼却炉を運転することが望ましい。
【0006】
しかしながら、焼却炉内の空塔速度は、炉に供給される空気の量だけでなく、焼却対象物や補助燃料の燃焼により発生するガスの量に依存して変化する。さらに、炉内で発生するガスの量は、炉内の温度および圧力に依存して変化する。このため、例えば、空気の供給量だけを用いて求めた空塔速度では、炉内の流動状態を正確に表すことはできない。また、流動焼却炉内に流量計等を設置して空塔速度を計測する場合、炉内で流動する流動媒体や焼却灰などが流量計に付着するため、空塔速度を正確に計測することは困難である。
【0007】
特許文献1では、設計時に各要素制御の結果により制御可能な空塔速度範囲を設定しているが、上述のように実際の空塔速度の計測が難しく実施していない。
【0008】
本発明は、流動焼却炉内の空塔速度を正確に算出することで、流動焼却炉内での流動媒体を最適な流動状態に制御し、焼却対象物を安定して燃焼することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の流動焼却炉の制御装置の一態様は、下水から取り出した下水汚泥を脱水して生成されるケーキまたはさらに乾燥工程を経て乾燥した乾燥ケーキである焼却対象物を焼却する流動焼却炉を制御する流動焼却炉の制御装置において、前記流動焼却炉に供給される前記焼却対象物と空気とを含み、さらに、前記流動焼却炉に供給される燃料と水とを含む複数種の供給物を供給する各供給路に接続される計測器であって、複数の性状のうち、少なくとも流量を計測する流量計が各々の供給路に備えられ、前記複数種の供給物の量に基づいて、前記流動焼却炉から排出される排ガスの量である補正排ガス量を算出する第1算出部と、算出された前記補正排ガス量に基づいて前記流動焼却炉の空塔速度を算出する第2算出部と、算出された前記空塔速度が目標値から外れた場合、前記複数種の供給物の各々を前記流動焼却炉にそれぞれ供給する複数の供給装置の少なくともいずれかに供給物の供給量を調節させる指示を発行する供給制御部とを有し、前記第1算出部は、前記流動焼却炉へのケーキの供給量、補助燃料の供給量、空気の供給量および水の供給量(注水量)を取得し、取得した各種供給量に基づいて、前記流動焼却炉で発生する標準状態での排ガス量である標準排ガス量を以下の式(1)にて算出し、
標準排ガス量=ケーキの理論燃焼排ガス量+補助燃料の理論燃焼排ガス量+注水分の排ガス量+過剰空気量・・・(1)
ここで、
ケーキの理論燃焼排ガス量:ケーキを空気比1で燃焼させたときに発生する排ガス量の値
補助燃料の理論燃焼排ガス量:補助燃料を空気比1で燃焼させたときに発生する排ガス量の値
注水分の排ガス量:流動焼却炉の温度を下げるために流動焼却炉に供給する水により発生する水蒸気量の値
過剰空気量:流動焼却炉に供給した空気のうち、燃焼に使用されない空気の量であり、流動焼却炉に供給された空気量からケーキおよび補助燃料の空気比1での燃焼に使用される空気量(理論燃焼空気量)を引くことで算出される値
前記標準排ガス量を炉内温度と炉内圧力を用いて補正するのに、以下の式(3)にて補正排ガス量を算出する
補正排ガス量[m/s]=標準排ガス量[Nm/s]×(273.15+炉内温度[℃])÷273.15×101.325÷(101.325+炉内圧力[kPa])・・・(3)
ことを特徴とする。
また、前記第1算出部は、前記焼却対象物が持つ複数の性状である含水率、有機成分率および元素組成に基づいて前記焼却対象物を焼却した場合の前記排ガス量を算出してもよい。さらに、前記焼却対象物を前記流動焼却炉に供給する供給路に接続される計測器であって、前記複数の性状の少なくともいずれかを計測する計測器が前記流動焼却炉を有する焼却システムに含まれる場合、前記第1算出部は、前記計測器により計測される性状と前記計測器により計測されない性状の予測値とを使用して前記焼却対象物を焼却した場合の排ガスの量を算出してもよい。
【0010】
前記供給制御部は、前記空塔速度が第1設定値より低い場合、前記複数の供給装置の少なくともいずれかに供給物の供給量を増加させる指示を発行し、前記空塔速度が第1設定値以上である第2設定値より高い場合、前記複数の供給装置の少なくともいずれかに供給物の供給量を減少させる指示を発行してもよい。例えば、前記供給制御部は、前記複数の供給装置の1つである空気供給装置に、前記流動焼却炉に供給する空気の量を調節させる指示を発行する。
【0011】
例えば、前記流動焼却炉は過給式の焼却炉であり、前記供給制御部は、過給機のコンプレッサから前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調節する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調節させる指示を発行する。あるいは、前記流動焼却炉は過給式の焼却炉であり、前記供給制御部は、過給機のタービンに供給する排ガスの一部をタービン下流流路にバイパスするバイパス路にある調節弁の開度を調整する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の圧力を調節させる指示を発行する。あるいは、前記流動焼却炉は過給式の焼却炉であり、前記供給制御部は、過給機のタービンに供給する排ガスの量を調節する調節器に、前記タービンに供給する排ガスの量を調節させる指示を発行する。
【0014】
本発明の流動焼却炉の制御装置の別の態様は、下水から取り出した下水汚泥を脱水して生成されるケーキまたはさらに乾燥工程を経て乾燥した乾燥ケーキである焼却対象物を焼却する過給式の流動焼却炉を制御する流動焼却炉の制御装置において、前記流動焼却炉から排出される排ガスに含まれる固形成分を取り除く集塵機を、前記流動焼却炉の排ガス出口と過給機のタービン入口の間に設置し、前記過給機のコンプレッサの圧縮空気出口と前記流動焼却炉の空気入口との間を接続する圧縮空気の供給用の配管に接続されて制御装置からの制御信号により開度が調節される余剰空気調節弁と、前記過給機のタービン入口とタービン出口とを接続するバイパス経路に設けられ制御装置からの制御信号により開度が調節されるバイパス調節弁と、前記流動焼却炉に供給される前記焼却対象物と空気とを含み、さらに、前記流動焼却炉に供給される燃料と水とを含む複数種の供給物を供給する各供給路に接続される計測器であって、各々の供給路には、複数の性状のうち、少なくとも流量を計測する流量計を備え、前記制御装置は、記集塵機の排ガス出口側に配置される流量計により計測される排ガス量を取得する取得部と、取得した前記排ガス量を炉内温度と炉内圧力を用いて補正するのに、以下の式(3)にて補正排ガス量を算出する第1算出部と、
補正排ガス量[m /s]=標準排ガス量[Nm /s]×(273.15+炉内温度[℃])÷273.15×101.325÷(101.325+炉内圧力[kPa])・・・(3)
演算した前記補正排ガス量に基づいて前記流動焼却炉の空塔速度を算出する第2算出部と、算出した前記空塔速度が目標値から外れた場合、前記余剰空気調節弁と前記バイパス調節弁との少なくともいずれかに対し、それぞれを通過する気体の供給量を調節させる指示を発行する供給制御部とを有することを特徴とする。
【0015】
また、前記供給制御部は、前記排ガス出口側に設けられる過給機のコンプレッサから前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調整する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調節させる指示を発行してもよい。あるいは、前記供給制御部は、前記排ガス出口側に設けられる過給機のタービンに供給する排ガスの一部をタービン下流流路にバイパスするバイパス路にある調節弁の開度を調整する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の圧力を調節させる指示を発行してもよい。あるいは、前記供給制御部は、前記排ガス出口側に設けられる過給機のタービンに供給する排ガスの量を調節する調節器に、前記タービンに供給する排ガスの量を調節させる指示を発行してもよい。
【0016】
本発明の流動焼却炉の制御方法の一態様は、下水から取り出した下水汚泥を脱水して生成されるケーキまたはさらに乾燥工程を経て乾燥した乾燥ケーキである焼却対象物を焼却する流動焼却炉の制御方法において、前記流動焼却炉に供給される前記焼却対象物と空気とを含み、さらに、前記流動焼却炉に供給される燃料と水とを含む複数種の供給物を供給する各供給路に接続される計測器であって、複数の性状のうち、少なくとも流量を計測する流量計が各々の供給路に備えられ、前記複数種の供給物の量に基づいて、前記流動焼却炉から排出される排ガスの量である補正排ガス量を算出し、算出された前記補正排ガス量に基づいて前記流動焼却炉の空塔速度を算出し、算出された前記空塔速度が目標値から外れた場合、前記複数種の供給物の各々を前記流動焼却炉にそれぞれ供給する複数の供給装置の少なくともいずれかに供給物の供給量を調節させる指示を発行し、前記流動焼却炉へのケーキの供給量、補助燃料の供給量、空気の供給量および水の供給量(注水量)を取得し、取得した各種供給量に基づいて、前記流動焼却炉で発生する標準状態での排ガス量である標準排ガス量を以下の式(1)にて算出し、
標準排ガス量=ケーキの理論燃焼排ガス量+補助燃料の理論燃焼排ガス量+注水分の排ガス量+過剰空気量・・・(1)
ここで、
ケーキの理論燃焼排ガス量:ケーキを空気比1で燃焼させたときに発生する排ガス量の値
補助燃料の理論燃焼排ガス量:補助燃料を空気比1で燃焼させたときに発生する排ガス量の値
注水分の排ガス量:流動焼却炉の温度を下げるために流動焼却炉に供給する水により発生する水蒸気量の値
過剰空気量:流動焼却炉に供給した空気のうち、燃焼に使用されない空気の量であり、流動焼却炉に供給された空気量からケーキおよび補助燃料の空気比1での燃焼に使用される空気量(理論燃焼空気量)を引くことで算出される値
前記標準排ガス量を炉内温度と炉内圧力を用いて補正するのに、以下の式(3)にて補正排ガス量を算出する
補正排ガス量[m/s]=標準排ガス量[Nm/s]×(273.15+炉内温度[℃])÷273.15×101.325÷(101.325+炉内圧力[kPa])・・・(3)
ことを特徴とする。
また、前記焼却対象物が持つ複数の性状である含水率、有機成分率および元素組成に基づいて前記焼却対象物を焼却した場合の前記排ガス量を算出してもよい。さらに、前記焼却対象物を前記流動焼却炉に供給する供給路に接続される計測器であって、前記複数の性状の少なくともいずれかを計測する計測器が前記流動焼却炉を有する焼却システムに含まれる場合、前記計測器により計測される性状と前記計測器により計測されない性状の予測値とを使用して前記焼却対象物を焼却した場合の排ガスの量を算出してもよい。
【0017】
前記空塔速度が第1設定値より低い場合、前記複数の供給装置の少なくともいずれかに供給物の供給量を増加させる指示を発行し、前記空塔速度が第1設定値以上である第2設定値より高い場合、前記複数の供給装置の少なくともいずれかに供給物の供給量を減少させる指示を発行してもよい。例えば、前記複数の供給装置の1つである空気供給装置に、前記流動焼却炉に供給する空気の量を調節させる指示を発行する。
【0018】
例えば、前記流動焼却炉は過給式の焼却炉であり、過給機のコンプレッサから前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調節する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調節させる指示を発行する。あるいは、前記流動焼却炉は過給式の焼却炉であり、過給機のタービンに供給する排ガスの一部をタービン下流流路にバイパスするバイパス路にある調節弁の開度を調整する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の圧力を調節させる指示を発行する。あるいは、前記流動焼却炉は過給式の焼却炉であり、過給機のタービンに供給する排ガスの量を調節する調節器に、前記タービンに供給する排ガスの量を調節させる指示を発行する。
【0021】
本発明の流動焼却炉の制御方法の別の態様は、下水から取り出した下水汚泥を脱水して生成されるケーキまたはさらに乾燥工程を経て乾燥した乾燥ケーキである焼却対象物を焼却する過給式の流動焼却炉の制御方法において、前記流動焼却炉から排出される排ガスに含まれる固形成分を取り除く集塵機を、前記流動焼却炉の排ガス出口と過給機のタービン入口の間に設置し、前記過給機のコンプレッサの圧縮空気出口と前記流動焼却炉の空気入口との間を接続する圧縮空気の供給用の配管に接続されて制御装置からの制御信号により開度が調節される余剰空気調節弁と、前記過給機のタービン入口とタービン出口とを接続するバイパス経路に設けられ制御装置からの制御信号により開度が調節されるバイパス調節弁と、前記流動焼却炉に供給される前記焼却対象物と空気とを含み、さらに、前記流動焼却炉に供給される燃料と水とを含む複数種の供給物を供給する各供給路に接続される計測器であって、各々の供給路には、複数の性状のうち、少なくとも流量を計測する流量計が備えられ、記集塵機の排ガス出口側に配置される流量計により計測される排ガス量を取得し、取得した前記排ガス量を炉内温度と炉内圧力を用いて補正するのに、以下の式(3)にて第1算出部により補正排ガス量を算出し、
補正排ガス量[m /s]=標準排ガス量[Nm /s]×(273.15+炉内温度[℃])÷273.15×101.325÷(101.325+炉内圧力[kPa])・・・(3)
演算した前記補正排ガス量に基づいて第2算出部にて前記流動焼却炉の空塔速度を算出し、算出した前記空塔速度が目標値から外れた場合、前記余剰空気調節弁と前記バイパス調節弁との少なくともいずれかに対し、それぞれを通過する気体の供給量を調節させる指示を発行することを特徴とする。
【0022】
また、前記排ガス出口側に設けられる過給機のコンプレッサから前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調整する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の量を調節させる指示を発行してもよい。あるいは、前記供給制御部は、前記排ガス出口側に設けられる過給機のタービンに供給する排ガスの一部をタービン下流流路にバイパスするバイパス路にある調節弁の開度を調整する調節器に、前記流動焼却炉に供給する圧縮空気の圧力を調節させる指示を発行してもよい。あるいは、前記排ガス出口側に設けられる過給機のタービンに供給する排ガスの量を調節する調節器に、前記タービンに供給する排ガスの量を調節させる指示を発行してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、流動焼却炉内の空塔速度を正確に算出することで、流動焼却炉内での流動媒体を最適な流動状態に制御することができ、焼却対象物を安定して燃焼することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施形態における流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す概要図である。
図2図1に示す制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図3図2のステップS12、S14、S16において制御装置が実行する演算の流れを示す説明図である。
図4】第2の実施形態における流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す概要図である。
図5】第3の実施形態における流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す概要図である。
図6】第4の実施形態における流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す概要図である。
図7】第5の実施形態における流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、第1の実施形態における流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す。図1に示す焼却システム100は、流動焼却炉200、ケーキ供給装置10、燃料供給装置12、14、空気供給装置16,18,20、水供給装置22および制御装置50を有する。また、焼却システム100は、流量計30,32,34,36,38,40,42、温度計44および圧力計46を有する。なお、焼却システム100は、流動焼却炉200から排出される排ガスを処理する図示しない処理設備を有してもよい。例えば、流動焼却炉200は、炉内の圧力が微負圧である気泡式の流動焼却炉である。なお、流動焼却炉200は、循環式の流動焼却炉または過給式の流動焼却炉でもよい。以下の説明では、流動焼却炉200は、焼却炉200とも称される。
【0027】
矢印の付いた実線は、ケーキ、補助燃料、空気または水の供給路を示し、矢印の付いた破線は、制御装置50に入出力される信号を示す。矢印の付いた破線の一部は、実線で示す供給路を跨いでいるが、各種信号を伝達する信号線が、供給路を物理的に跨ぐことを示すものではない。ケーキ、補助燃料、空気および水は、流動焼却炉200に供給される供給物の一例である。ケーキは、焼却炉200で焼却する焼却対象物の一例である。
【0028】
ケーキ供給装置10は、例えば、下水汚泥を脱水して得られるケーキを図示しないホッパ等を介して受け、制御装置50から出力される制御信号SO10に応じた量のケーキを焼却炉200に供給する。例えば、ケーキ供給装置10は、スクリューコンベヤ、一軸偏心ねじポンプまたはピストンポンプ等である。なお、焼却炉200に供給するケーキの量の調節が、後述する空塔速度の調節に使用されない場合、ケーキ供給装置10によるケーキの供給量は、焼却炉200の運用を管理する管理者または作業者等により手動で調節されてもよい。
【0029】
なお、焼却システム100は、下水から下水汚泥のケーキを生成する浄化設備を有してもよい。例えば、ケーキは、下水を浄化した後に下水から下水汚泥を取り出し、取り出した下水汚泥を脱水することで生成されるが、さらに乾燥工程を有して乾燥ケーキとしてもよい。下水汚泥のケーキは、いわゆるスラリー状物質である。スラリー状物質とは、固形分と水分とを含み流動性を有する物質である。
【0030】
燃料供給装置12は、制御装置50から出力される制御信号SO12に応じた量の補助燃料を、焼却炉200において、気泡式や過給式流動焼却炉では流動層の上部に設けられるフリーボード部に向けて供給する。また、循環式流動焼却炉や風箱式焼却炉では別な箇所に供給する。燃料供給装置14は、制御装置50から出力される制御信号SO14に応じた量の補助燃料を、焼却炉200の流動層に向けて供給する。燃料供給装置12、14は、補助燃料の焼却炉200への供給量をそれぞれ調節する流量調節弁等を含む。補助燃料は、液体燃料または気体燃料や固体燃料のいずれでもよい。なお、燃料供給装置12(または14)による補助燃料の量の調節が空塔速度の調節に使用されない場合、燃料供給装置12(または14)による補助燃料の供給量は、管理者または作業者等により手動で調節されてもよい。
【0031】
空気供給装置16は、制御装置50から出力される制御信号SO16に応じた量の空気を、例えば気泡式や過給式の流動焼却炉の場合にはフリーボード部に向けて供給する。例えば、燃料供給装置12から出力される補助燃料および空気供給装置16から供給される空気は、互いに混合された後にフリーボード部内に噴霧される。空気供給装置18は、制御装置50から出力される制御信号SO18に応じた量の空気を流動層に向けて供給する。例えば燃料供給装置14から出力される補助燃料および空気供給装置16から供給される空気は、互いに混合された後に流動層内に噴霧される。
【0032】
空気供給装置20は、制御装置50から出力される制御信号SO20に応じた量の空気を流動層の下部に設けられる散気装置24に供給する。例えば、空気供給装置16,18,20は、図示しない流動ブロワ等から供給される空気の焼却炉200への供給量をそれぞれ調節する流量調節弁等を含む。流量調節弁の開度を制御信号SO16,SO18,SO20に基づいてそれぞれ調節することにより、流動ブロワ等から供給される空気を所定の比率で焼却炉200の各個所に供給することができる。
【0033】
散気装置24は、空気供給装置20から送られる空気を焼却炉200内の下部に分散して吹き込む多数の穴を有する。散気装置24から吹き出す空気により砂等の流動媒体が流動することで流動層が形成される。なお、後述する空塔速度の調節時に空気供給装置16(および18,20)から焼却炉200に供給する空気の量を変えない場合、空気供給装置16(または18,20)による空気の供給量は、管理者または作業者等により手動で調節されてもよい。また、例えば、空気供給装置20による空気の量の調節が空塔速度の調節に使用され、空気供給装置16,18による空気の量の調節が空塔速度の調節に使用されない場合、空気供給装置20は、制御装置50により制御されて空気の供給量を調節し、空気供給装置16,18は、流量調節弁等が手動で調節されることで空気の供給量を調節してもよい。
【0034】
水供給装置22は、制御装置50から出力される制御信号SO22に応じた量の水を、例えば気泡式や過給式流動焼却炉の場合には、フリーボード部に供給(噴霧)する。水供給装置22は、焼却炉200への水の供給量を調節する流量調節弁等を含む。水供給装置22から焼却炉200に供給される水は、例えば焼却炉200の温度を下げるために使用される。なお、水供給装置22による水の量の調節が、空塔速度の調節に使用されない場合、水供給装置22による水の供給量は、管理者または作業者等により手動で調節されてもよい。
【0035】
流量計30は、例えば、静電容量式の電磁流量計である。流量計30は、ケーキ供給装置10から焼却炉200に供給されるケーキの流量を計測し、計測した流量を示す制御信号SI30を制御装置50に出力する。流量計32は、燃料供給装置12から焼却炉200に供給される補助燃料の流量を計測し、計測した流量を示す制御信号SI32を制御装置50に出力する。流量計34は、燃料供給装置14から焼却炉200に供給される補助燃料の流量を計測し、計測した流量を示す制御信号SI34を制御装置50に出力する。
【0036】
流量計36は、空気供給装置16から焼却炉200に供給される空気の流量を計測し、計測した流量を示す制御信号SI36を制御装置50に出力する。流量計38は、空気供給装置18から焼却炉200に供給される空気の流量を計測し、計測した流量を示す制御信号SI38を制御装置50に出力する。
【0037】
流量計40は、空気供給装置20から焼却炉200に供給される空気の流量を計測し、計測した流量を示す制御信号SI40を制御装置50に出力する。流量計42は、水供給装置22から焼却炉200に供給される水の流量を計測し、計測した流量を示す制御信号SI42を制御装置50に出力する。例えば、流量計32、34、36、38、40、42は、流路にオリフィスが設けられるダイヤフラム式流量計である。なお、空塔速度の調節に使用されない供給物(ケーキ、補助燃料、空気、水のいずれか)に対応する流量計(本実施形態における流量計30,32,34,36,38,40,42のいずれか)は、設けられなくてもよい。
【0038】
温度計44は、焼却炉200の温度を計測し、計測した温度を示す制御信号SI44を制御装置50に出力する。圧力計46は、焼却炉200の圧力を計測し、計測した圧力を示す制御信号SI46を制御装置50に出力する。以下の説明では、制御装置50に入力される制御信号SI30,SI32,SI34,SI36,SI38,SI40,SI42は、流量計測信号SIとも称される。制御装置50から出力される制御信号SO10、SO12,SO14,SO16,SO18,SO20,SO22は、流量制御信号SOとも称される。また、制御信号SI44は、温度信号SI44とも称され、制御信号SI46は、圧力信号SI46とも称される。例えば、流量計測信号SIおよび流量制御信号SOにより示される各種流量は、単位時間当たりの流量である。
【0039】
例えば、制御装置50は、PLC(Programmable Logic Controller)を含み、PLCが実行する制御プログラムに基づいて動作する。そして、制御装置50が実行する制御プログラムにより、後述する第1算出部、第2算出部および供給制御部の機能が実現される。制御装置50の動作の例は、図2に示す。
【0040】
図2は、図1に示す制御装置50の動作の一例を示す。すなわち、図2は、流動焼却炉の制御方法の一例を示す。図2に示す動作は、所定の周期で繰り返し実行される。特に限定されないが、所定の周期は、例えば、数秒から数十分の間である。なお、図2に示す処理は、空塔速度を算出するための各種入力信号や、演算した空塔速度の結果を次の制御へ伝える信号の信号変動を均す処理を行ってもよく、後述のロジック制御を示すステップS18からステップS24に代えて、例えば、PID(Proportional Integral Differential)制御またはファジー制御等のフィードバック制御の手法が用いられてもよい。あるいは、フィードフォワード制御の手法が用いられてもよい。
【0041】
まず、ステップS10において、制御装置50は、各種流量計測信号SIに基づいて、焼却炉200へのケーキの供給量、補助燃料の供給量、空気の供給量および水の供給量(注水量)を取得する。次に、ステップS12において、制御装置50は、ステップS10で取得した各種供給量に基づいて、焼却炉200で発生する標準状態での排ガス量である標準排ガス量を算出する。例えば、標準状態は、圧力が“101.325kPa”、温度が“0℃”の状態である。標準排ガス量は、式(1)により算出される。
【0042】
標準排ガス量=ケーキの理論燃焼排ガス量+補助燃料の理論燃焼排ガス量+注水分の排ガス量+過剰空気量 ‥(1)
【0043】
ケーキの理論燃焼排ガス量は、ケーキを空気比1で燃焼させたときに発生する排ガス量の値(計算値)である。補助燃料の理論燃焼排ガス量は、補助燃料を空気比1で燃焼させたときに発生する排ガス量の値(計算値)である。注水分の排ガス量は、例えば焼却炉200の温度を下げるために焼却炉200に供給する水により発生する水蒸気量の値(計算値)である。
【0044】
過剰空気量は、焼却炉200に供給した空気のうち、燃焼に使用されない空気の量であり、式(2)に示すように、焼却炉200に供給された空気量からケーキおよび補助燃料の空気比1での燃焼に使用される空気量(理論燃焼空気量)を引くことで算出される。なお、通常の運用時に焼却炉200に供給される空気の供給量は、ケーキおよび補助燃料の供給量に基づいて算出される燃焼に必要な最小限の空気量と余裕分の空気量とを含み、過剰空気量は、余裕分の空気量に相当する。
【0045】
過剰空気量=供給空気量-理論燃焼空気量 ‥(2)
【0046】
ケーキの理論燃焼排ガス量、補助燃料の理論燃焼排ガス量、注水分の排ガス量および過剰空気量の算出方法は、図3で説明する。
【0047】
次に、ステップS14において、制御装置50は、標準排ガス量を焼却炉200の炉内温度と炉内圧力を用いて補正し、補正排ガス量を算出する。ステップS12、S14により、排ガス量を算出する第1算出部の機能が実現される。例えば、補正排ガス量は、式(3)により算出される。炉内温度は温度信号SI44により示され、炉内圧力は圧力信号SI46により示される。標準排ガス量の単位の“N”はノルマル(標準状態)を示す。
【0048】
補正排ガス量[m3/s]=標準排ガス量[Nm3/s]×(273.15+炉内温度[℃])÷273.15×101.325÷(101.325+炉内圧力[kPa]) ‥(3)
【0049】
次に、ステップS16において、制御装置50は、式(4)に示すように、補正排ガス量を焼却炉200の横断面の面積(断面積)で除することで空塔速度を算出する。すなわち、制御装置50は、流量計測信号SI、温度信号SI44および圧力信号SI46に基づいて、焼却炉200内の空塔速度を算出する。ステップS16により、空塔速度を算出する第2算出部の機能が実現される。なお、断面積の値は、制御装置50の外部から供給されてもよく、制御装置50に内蔵されるフラッシュメモリ等の記憶部に予め記憶されてもよい。
【0050】
空塔速度[m/s]=補正排ガス量[m3/s]/断面積[m2] ‥(4)
【0051】
次に、ステップS18において、制御装置50は、ステップS16で算出した空塔速度が下限値より低いか否かを判定する。空塔速度が下限値より低い場合、制御装置は、ステップS20において、空塔速度を上げるために流量制御信号SOを出力し、処理を終了する。流量制御信号SOにより、ケーキ、補助燃料、空気、水の少なくともいずれかの供給量が増加される。
【0052】
これにより、排ガス量が増加し、空塔速度が上がるため、流動媒体の流動不足の発生を防止することができる。したがって、流動不足の発生による燃焼効率の低下を防止することができ、灰が炉から排出されにくくなることによる炉内の流動媒体の増加を防止することができる。この結果、流動焼却炉200を含む設備の運転を停止して、増加した流動媒体を引き抜く等の作業を不要にでき、運転コストの上昇を抑制することができる。
【0053】
上述したように、空塔速度は、焼却炉200に供給する空気、ケーキ、補助燃料、水の少なくともいずれかの量を増やすことで上げられる。なお、焼却炉200が過給式の流動焼却炉の場合、炉内の圧力を下げることで、空塔速度を上げてもよい。
【0054】
一方、ステップS18で空塔速度が下限値より高い場合、ステップS22において制御装置50は、ステップS16で算出した空塔速度が上限値より高いか否かを判定する。空塔速度が上限値以下の場合、制御装置50は、空塔速度は下限値と上限値の間の適正な値であると判断し、処理を終了する。すなわち、下限値から上限値までの範囲は、空塔速度の制御を実行しない不感帯である。
【0055】
空塔速度が上限値より高い場合、制御装置50は、ステップS24において、空塔速度を下げるために流量制御信号SOを出力し、処理を終了する。流量制御信号SOにより、ケーキ、補助燃料、空気、水の少なくともいずれかの供給量が減少される。
【0056】
これにより排ガス量は減少し、空塔速度は下がるため、流動媒体が過剰に流動することを防止することができる。したがって、流動媒体の炉外への飛散量を抑えることができ、流動媒体の焼却炉200への補充頻度を下げることができる。この結果、運転コストの上昇を抑制することができる。
【0057】
空塔速度は、焼却炉200に供給する空気、ケーキ、補助燃料、水の少なくともいずれかの量を減らすことで下がる。なお、焼却炉200が過給式の流動焼却炉の場合、炉内の圧力を上げることで、空塔速度を下げてもよい。
【0058】
焼却炉200に供給する空気、ケーキ、補助燃料、水の少なくともいずれかの量、もしくは過給式の流動焼却炉の場合で炉内の圧力の増減(上下)によって、空塔速度を上下させる場合、例えば水の量を増やした場合は、炉内温度が低下するなどの影響も併せて生じるため、例えば、水を増やした場合は水の増分に応じて補助燃料を増やすなど、焼却炉200の運転状態を維持するための動作を併せて行うことが望ましい。
【0059】
このように、ステップS18,S20,S22,S24の処理により、焼却炉200で実際に発生する排ガス量から算出された空塔速度に基づいて、ケーキを最適な条件で燃焼させる値に空塔速度を設定することができる。なお、ステップS18,S20,S22,S24により空塔速度を目標値に設定するために供給物の焼却炉200への供給量の調節する供給制御部の機能が実現される。
【0060】
流量制御信号SOは、焼却炉200への供給物(ケーキ、補助燃料、空気、水のいずれか)の供給量を増加または減少するために制御装置50が発行する指示の一例である。下限値は第1設定値の一例であり、上限値は第2設定値の一例である。下限値と上限値とが異なる場合、下限値から上限値までの範囲が空塔速度の目標値になり、下限値と上限値とが互いに同じ場合、下限値(=上限値)が空塔速度の目標値になる。すなわち、制御装置50は、空塔速度を下限値および上限値と比較する代わりに、空塔速度を1つの目標値と比較し、空塔速度が目標値より低い場合に空塔速度を上げ、空塔速度が目標値より高い場合に空塔速度を下げる制御を実行してもよい。
【0061】
但し、空気、ケーキ、補助燃料、水の少なくともいずれかの量を増加または減少してから排ガス量の変化を検出するまでには所定のタイムラグあるため、空塔速度の目標値は、下限値から上限値までの範囲で設定することが望ましい。空塔速度を増加または減少させる制御を実行しない不感帯を設けることで、空塔速度が期待する方向と逆に変化することを防止することができる。
【0062】
ところで、流動焼却炉の設計では、空塔速度が決められた後に、決められた空塔速度でケーキが正常に燃焼するように、炉の長さ、炉の内径および流動媒体の粒径が決められることが多い。この場合、同メーカで同形式の流動焼却炉では空塔速度は流動焼却炉の大きさに依存しないことが多いため、ステップS18の下限値およびステップS22の上限値を、流動焼却炉に依存しない共通の値にすることもできる。このような場合では、制御装置50が実行する空塔速度を制御するプログラムを複数の流動焼却炉で共通にすることが可能になる。ただし、形式が異なる流動焼却炉では、適切な空塔速度は異なり流動砂種などでも異なってくる。
【0063】
これに対して、ステップS16による空塔速度の算出処理を省き、補正排ガス量を補正排ガス量の下限値および上限値と比較することで空塔速度を増減することが考えられる。しかしながら、補正排ガス量を補正排ガス量の下限値および上限値と比較する場合、補正排ガス量下限値および上限値というその値だけではほかの値との相関が判りにくい値での制御となり煩わしい。さらに同メーカで同形式の流動焼却炉ではいちいち焼却炉毎に排ガス量の下限値と上限値とを設定する必要があり、空塔速度を制御する制御装置の機能を複数の焼却炉で共通化することができない。
【0064】
図3は、図2のステップS12,S14,S16において制御装置50が実行する演算の流れを示す。
【0065】
ケーキの理論燃焼排ガス量は、流量計測信号SI30で示されるケーキの供給量に、予め求められた係数C1を乗じることで算出される(図3(a))。係数C1は、単位重量のケーキを空気比1で燃焼させたときに発生する排ガス量を示し、標準的な含水率、標準的な有機成分率および標準的な元素組成を有する所定重量のケーキを燃焼したときに発生する排ガス量(計算値)をケーキの単位重量で除することにより求められる。例えば、ケーキに含まれる有機成分の元素として、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄等がある。
【0066】
ここで、ケーキの重量に含水率を乗じることでケーキに含まれる水分量が分かり、水分量からケーキを燃焼させたときに発生する水蒸気量が算出される。また、ケーキの重量から水分量を引くことでケーキ中の固形分の重量が分かり、固形分の重量に有機成分率を乗じることで、ケーキ中の有機成分の重量が分かる。さらに、元素組成により有機成分中の各元素量(モル量)が分かり、ケーキを空気比1で燃焼させたときに発生する各元素を含むガスの量が算出される。そして、水蒸気量と各元素を含むガスの量とを加えることで、単位重量当たりに発生するケーキの排ガス量(ケーキの理論燃焼排ガス量)が求まる。
【0067】
補助燃料の理論燃焼排ガス量は、流量計測信号SI32、SI34で示される補助燃料の供給量に、予め求められた係数C2を乗じることで算出される(図3(b))。例えば、係数C2は、単位重量の補助燃料を空気比1で燃焼させたときに発生する排ガス量を示し、補助燃料の元素組成に基づいて予め算出される。
【0068】
過剰空気量は、式(2)に示したように、供給空気量から理論燃焼空気量を引くことで算出される。焼却炉200に供給された供給空気量は、流量計測信号SI36,SI38,SI40で示される供給空気量を積算することで算出される(図3(c))。ケーキおよび補助燃料の理論燃焼空気量は、ケーキの理論燃焼空気量と、補助燃料の理論燃焼空気量とを積算することで得られる。
【0069】
ケーキの理論燃焼空気量は、流量計測信号SI30で示されるケーキの供給量に、予め求められた係数C3を乗ずることで算出される(図3(d))。例えば、係数C3は、ケーキに含まれる有機成分の元素組成に基づいて、単位重量のケーキを燃焼させたときに有機成分の各元素と結合する酸素の量を算出することで求められる。すなわち、係数C3は、単位重量のケーキに含まれる有機成分中の各元素と結合する酸素量を有する空気の標準状態での体積を示す。ケーキに含まれる有機成分の量は、含水率から得られる水分量をケーキの重量から差し引いてケーキ中の固形分の重量を求め、固形分の重量に有機成分率を乗じることで求められる。
【0070】
補助燃料の理論燃焼空気量は、流量計測信号SI32,SI34で示される補助燃料の供給量の和に、予め求められた係数C4を乗ずることで算出される(図3(e))。例えば、係数C4は、補助燃料の元素組成に基づいて、単位重量の補助燃料を燃焼させたときに各元素と結合する酸素量を有する空気の標準状態での体積を示す。そして、供給空気量からケーキの理論燃焼空気量と補助燃料の理論燃焼空気量とを引くことで過剰空気量が算出される。
【0071】
注水分の排ガス量は、流量計測信号SI42で示される水の供給量に予め求められた係数C5を乗じることで算出される(図3(f))。係数C5は、単位重量の水から発生する標準状態の水蒸気量である。注水分の排ガス量は、水供給装置22から焼却炉200に供給される水が水蒸気になった場合のガス量を示す。
【0072】
次に、制御装置50は、式(1)に示したように、ケーキの理論燃焼排ガス量、補助燃料の理論燃焼排ガス量、過剰空気量および注水分の排ガス量を積算して標準排ガス量を算出する(図3(g))。さらに、制御装置50は、炉内温度と炉内圧力に基づいて式(3)に示した演算を実行し、標準排ガス量を焼却炉200の状態に合わせて補正して補正排ガス量を算出する(図3(h))。そして、制御装置50は、式(4)に示した補正排ガス量を焼却炉200の断面積で除する演算を実行することで空塔速度を算出する(図3(i))。
【0073】
以上、第1の実施形態では、流動焼却炉200に供給されるケーキ、空気、補助燃料および水の量に基づいて流動焼却炉200から排出される排ガスの量が算出される。すなわち、排ガス量は、排ガスを発生させる全ての供給物の量に基づいて算出される。さらに、算出された排ガス量は、流動焼却炉200の温度および圧力に基づいて補正される。これにより、流動焼却炉200に供給される供給物の量に基づいて、流動焼却炉200から排出される排ガス量を正確に算出することができ、排ガス量から空塔速度を正確に算出することができる。そして、算出された空塔速度を目標値(下限値と上限値の範囲内)にするためにケーキ、空気、補助燃料および水の量の少なくともいずれかの量を調節することで、流動焼却炉200内での流動媒体を最適な流動状態に制御することができ、ケーキを安定して燃焼することができる。換言すれば、流動焼却炉200で実際に発生する排ガス量から算出された空塔速度に基づいて、ケーキを最適な条件で燃焼させる値に空塔速度を設定することができる。
【0074】
また、空塔速度を上げることで、流動媒体の流動不足の発生を防止することができるため、流動不足の発生による燃焼効率の低下を防止することができ、炉内の流動媒体の増加を防止することができる。この結果、流動焼却炉200を含む設備の運転を停止して、増加した流動媒体を引き抜く等の作業を不要にでき、運転コストの上昇を抑制することができる。一方、空塔速度を下げることで、流動媒体が過剰に流動することを防止することができるため、流動媒体の炉外への飛散量を抑えることができる。この結果、流動媒体の焼却炉200への補充頻度を下げることができ、運転コストの上昇を抑制することができる。
【0075】
空塔速度の目標値を下限値から上限値までの範囲で設定することで、空塔速度を増加または減少させる制御を実行しない不感帯を設けることができ、空塔速度が期待する方向と逆に変化することを防止することができる。さらに、空塔速度は同メーカで同形式の場合は流動焼却炉200の大きさに依存しないことが多いため、空塔速度の目標値を流動焼却炉200の大きさに依存しない共通の値にすることができ、その場合は、制御装置50が実行する空塔速度を制御するプログラムを複数の流動焼却炉で共通にすることが可能になる。
【0076】
図4は、第2の実施形態における流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す。図1に示した焼却システム100と同じ要素については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0077】
図4に示す焼却システム102は、ケーキの性状を計測する性状計測装置60が図1に示した焼却システム100に対して追加され、図1に示した制御装置50の代わりに制御装置50Aを有する。性状計測装置60は、ケーキを焼却炉200に供給する供給路に接続される。図4では、性状計測装置60は、ケーキ供給装置10のケーキの入力側に接続されるが、ケーキ供給装置10のケーキの出力側に接続されてもよい。制御装置50Aは、性状計測装置60からケーキの性状を示す制御信号SI60(性状信号)を受けて動作する機能が、図1に示した制御装置50に追加されている。焼却システム102のその他の構成は、図1で説明した焼却システム100の構成と同様である。
【0078】
性状計測装置60は、ケーキの含水率、有機成分率および元素組成の少なくともいずれかをリアルタイムで計測する少なくとも1つの計測器を有する。例えば、ケーキの含水率を計測する場合、性状計測装置60は、マイクロ波または近赤外線をケーキに照射してケーキの含水率を計測する計測器を含む。ケーキの性状(含水率、有機成分率および元素組成の少なくともいずれか)をリアルタイムで計測することで、ケーキの性状が変化した場合にも、ケーキの燃焼により発生する排ガスの量をケーキの性状に応じて正確に算出することができる。したがって、流動焼却炉200から排出される排ガス量を正確に算出することができ、空塔速度を正確に算出することができる。この結果、流動焼却炉200内での流動媒体を最適な流動状態に制御することができ、ケーキを安定して燃焼することができる。
【0079】
例えば、ケーキの有機成分率を計測する場合、性状計測装置60は、ケーキの乾燥後の重量と燃焼後の重量(灰分)の差(有機成分)に基づいて有機成分率を計測する計測器を有する。ここで、ケーキに含まれる有機成分の重量は、式(5)により求まる。なお、灰分は、例えば、ケーキを600℃以上で燃焼した後に残る残留物(無機物)である。
【0080】
有機成分[g]=ケーキ量[g]-水分[g]-灰分[g] ‥(5)
【0081】
例えば、ケーキの元素組成を計測する場合、性状計測装置60は、蛍光X線分析装置またはCHNコーダー等の有機元素分析装置を含む。各計測器は、ケーキ供給装置10に供給されるケーキを所定の頻度でサンプリングし、サンプリングしたケーキの試料を用いて、ケーキの含水率、有機成分率または元素組成を計測する。
【0082】
性状計測装置60がケーキの含水率を計測する計測器のみを含む場合、標準的な性状のケーキを使用して予め計測された有機成分率および元素組成が予測値として制御装置50Aに供給され、あるいは、予め計測された有機成分率および元素組成が予測値として制御装置50Aに記憶される。なお、性状計測装置60がケーキの含水率を計測する計測器を持たない場合、標準的な性状のケーキを使用して予め計測された含水率が予測値として制御装置50Aに供給されてもよく、あるいは、予め計測された含水率が予測値として制御装置50Aに記憶されてもよい。また、ケーキの含水率、有機成分率および元素組成の全てが、性状計測装置60が有する各計測器によりリアルタイムで計測される場合、ケーキの含水率、有機成分率および元素組成の予測値は使用されない。
【0083】
例えば、制御装置50Aは、PLCを含み、PLCが実行する制御プログラムに基づいて動作する。そして、制御装置50Aが実行する制御プログラムにより、第1算出部、第2算出部および供給制御部の機能が実現される。例えば、制御装置50Aは、ケーキの理論燃焼排ガス量を図3に示した係数C1を用いずに、ケーキの含水率、有機成分率および元素組成を用いて算出する。この場合、制御装置50Aは、図3で説明した係数C1の算出手法と同様に、ケーキの供給量とケーキの含水率とに基づいて、ケーキに含まれる水分量を算出し、ケーキを燃焼させたときに発生する水蒸気量を算出する。また、制御装置50は、ケーキの重量と水分量とからケーキ中の固形分の重量を算出し、固形分の重量に有機成分率を乗じることで、ケーキ中の有機成分の重量を算出する。さらに、有機成分の元素組成に基づいて有機成分中の各元素量を算出し、ケーキを理論燃焼空気量で燃焼させたときに発生する各元素を含むガスの量を算出する。そして、制御装置50は、水蒸気量と各元素を含むガスの量とを加えることで、ケーキの理論燃焼排ガス量を算出する。
【0084】
また、制御装置50Aは、ケーキの理論燃焼空気量を図3に示した係数C3を用いずに、ケーキの含水率、有機成分率および元素組成を用いて算出してもよい。この場合、制御装置50は、図3で説明した係数C3の算出手法と同様に、ケーキに含まれる有機成分中の各元素と結合する酸素の量を算出することで、ケーキの理論燃焼空気量を求める。
【0085】
制御装置50Aが実行する演算の流れは、ケーキの理論燃焼排ガス量およびケーキの理論燃焼空気量を、係数C1、C3を使用することなく、ケーキの含水率、有機成分率および元素組成を用いて算出することを除き、図3と同様である。すなわち、制御装置50Aの動作の例は、図2に示したフローにより実現される。
【0086】
以上、第2の実施形態の焼却システム102においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、流動焼却炉200に供給する供給物の量に基づいて算出された排ガス量から空塔速度を算出し、算出した空塔速度を目標値にするために複数種の供給物の少なくともいずれかの量を調節することで、流動焼却炉200内での流動媒体を最適な流動状態に制御することができ、ケーキを安定して燃焼することができる。また、流動焼却炉200からの流動媒体の引き抜きの頻度、および流動焼却炉200への流動媒体の補充頻度を下げることができ、運転コストの上昇を抑制することができる。
【0087】
さらに、第2の実施形態では、ケーキの性状(含水率、有機成分率および元素組成の少なくともいずれか)をリアルタイムで計測することで、ケーキの性状が変化した場合にも、ケーキの燃焼により発生する排ガスの量をケーキの性状に応じて正確に算出することができる。したがって、流動焼却炉200から排出される排ガス量を正確に算出することができ、空塔速度を正確に算出することができる。この結果、流動焼却炉200内での流動媒体を最適な流動状態に制御することができ、ケーキを安定して燃焼することができる。
【0088】
図5は、第3の実施形態における流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す。図1に示した焼却システム100と同じ要素については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0089】
図5に示す焼却システム104は、制御装置50B、ケーキ供給装置70、気泡式の流動焼却炉202、吸気弁72、流動ブロワ74、空気予熱器76、白煙防止ファン78、白煙防止予熱器80、集塵機82、排煙処理塔84、誘引ファン86および煙突88を有する。また、焼却システム104は、図1に示した制御装置50の代わりに制御装置50Bを有する。
【0090】
ケーキ供給装置70は、下水の浄化設備から送られてホッパ70aに貯められた下水汚泥のケーキを焼却炉202に順次供給する。流動ブロワ74は、吸気弁72を介して空気を取り込み、取り込んだ空気を燃焼用の空気として空気予熱器76を介して焼却炉202に向けて送り出す。吸気弁72の開度は、制御装置50Bが出力する流量制御信号SO72により調節される。すなわち、流動ブロワ74から焼却炉202に送り込まれる空気量は、制御装置50Bが出力する流量制御信号SO72により制御される。
【0091】
なお、空気量の調節を吸気弁72の開度により行う場合、図1に示した空気供給装置16,18,20(流量調節弁)の開度は固定にされてもよい。すなわち、空塔速度を調節するための空気量の調節は、供給空気を各所の分岐させる前に行われてもよく、これにより、少ない数の流量制御信号SOにより空気量を調節することができる。また、流動ブロワ74がインバータ式等の流量の微調節ができるブロワの場合、制御装置50Bは、流量制御信号SO72を流動ブロワ74に出力し、流動ブロワ74の空気供給量を調節してもよい。また、流動ブロワ74の代わりにコンプレッサ等の他の空気押込機が使用されてもよい。
【0092】
空気予熱器76は、流動ブロワ74から焼却炉202に出力される空気を焼却炉202から排出される排ガスと熱交換することにより昇温させる。昇温された空気は、図1に示した空気供給装置16,18,20等を介して焼却炉202の各種空気取入口に送られる。
【0093】
白煙防止ファン78は、取り込んだ空気を白煙防止予熱器80に送り込む。白煙防止予熱器80は、白煙防止ファン78から送り込まれる空気を空気予熱器76から排出される排ガスと熱交換して昇温させる。昇温された空気は煙突88に向けて送られる。集塵機82は、白煙防止予熱器80から排出される排ガスに含まれる灰を分離して回収し、灰が取り除かれた排ガスを排煙処理塔84に送り込む。排煙処理塔84は、排ガスに含まれる硫黄酸化物および煤塵などの大気汚染物質を排ガスから除去する。
【0094】
誘引ファン86は、排煙処理塔84で処理された排ガスを煙突88に誘引する。この際、白煙防止予熱器80で昇温された空気が排煙処理塔84からの排ガスと混ぜられることで、排煙処理塔84による処理で温度が低下した排ガスは昇温されて煙突88から排出される。これにより、水蒸気による白煙の発生が防止される。
【0095】
例えば、制御装置50Bは、PLCを含み、PLCが実行する制御プログラムに基づいて動作する。そして、制御装置50Bが実行する制御プログラムにより、第1算出部、第2算出部および供給制御部の機能が実現される。制御装置50Bは、図2に示した制御フローのステップS20,S24の処理において、例えば、流動ブロワ74から焼却炉202に供給する空気量を調節することにより、空塔速度を調節する。例えば、制御装置50Bは、空塔速度の増減の制御に流量制御信号SO10,SO12,SO14,SO16,SO18,SO20,SO22を使用しない。流量制御信号SO10,SO12,SO14,SO22は、焼却炉202の通常の運用において、焼却炉202へのケーキ、補助燃料の供給量または注水量を調節するために使用される。また、流量制御信号SO16,SO18,SO20は、焼却炉202への空気の供給量の比率(バランス)を調節するために使用されてもよい。図2において、ステップS20,S24以外の処理は、図2の説明と同様である。例えば、制御装置50Bが実行する演算の流れは、図3と同じである。
【0096】
以上、第3の実施形態においても、第1および第2の実施形態と同様に、排ガス量から算出した空塔速度を目標値にするために流動焼却炉202に供給する空気の量を調節することで、流動焼却炉202内での流動媒体を最適な流動状態に制御することができ、ケーキを安定して燃焼することができる。また、流動焼却炉202からの流動媒体の引き抜きの頻度、および流動焼却炉200への流動媒体の補充頻度を下げることができ、運転コストの上昇を抑制することができる。
【0097】
さらに、第3の実施形態では、焼却炉202に供給される空気の供給元である流動ブロワ74から送り出される空気の量を調節することで、少ない数の流量制御信号SO72により空塔速度を調節することができる。
【0098】
図6は、第4の実施形態における流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す。図1に示した焼却システム100、図4に示した焼却システム102および図5に示した焼却システム104と同じ要素については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0099】
図6に示す焼却システム106は、制御装置50C、ケーキ供給装置70、過給式の流動焼却炉204、空気予熱器76、集塵機90、過給機92、調節弁95,96、白煙防止ファン78、白煙防止予熱器80、排煙処理塔84および煙突88を有する。また、焼却システム106は、図1に示した制御装置50の代わりに制御装置50Cを有する。ケーキ供給装置70、空気予熱器76、白煙防止ファン78、白煙防止予熱器80、排煙処理塔84および煙突88のそれぞれは、図5に示すケーキ供給装置70、空気予熱器76、白煙防止ファン78、白煙防止予熱器80、排煙処理塔84および煙突88と同一または同様である。過給式の流動焼却炉では、昇温された圧縮空気を焼却炉204に供給し、高温・高圧の状態で焼却炉204内の焼却対象物を燃焼することで、燃焼速度を高くすることができ、窒素酸化物等の有害物質の排出量を減らすことができる。
【0100】
集塵機90は、空気予熱器76から排出される排ガスに含まれる灰等の固形成分を分離して回収し、灰等の固形成分が取り除かれた排ガスを過給機92と排ガスのバイパス経路97とを介して白煙防止予熱器80に送り込む。過給機92は、共通の回転軸に接続されたタービン93およびコンプレッサ94を有する。タービン93は、集塵機90から過給機92に送られる排ガスを受けて高速回転することで、コンプレッサ94を高速回転させる。コンプレッサ94は、過給機92に取り込まれた空気を圧縮し、圧縮した空気を空気予熱器76に送り込む。空気予熱器76では、排ガスと圧縮空気とが熱交換され、昇温された圧縮空気が図1に示した空気供給装置16,18,20等を介して焼却炉204の各種空気取入口に送られる。
【0101】
調節弁95は、コンプレッサ94と空気予熱器76との間を接続する圧縮空気の供給用の配管に接続され、制御装置50Cから出力される制御信号SO95に応じて開度が調節される。調節弁95は、制御装置50Cから出力される制御信号SO95に応じて開かれている間、コンプレッサ94から空気予熱器76に送られる圧縮空気の一部を開度に応じて余剰空気として配管の外に放出する。したがって、制御装置50Cが出力する制御信号SO95により、焼却炉204に供給される圧縮空気の量を調節することができる。また、調節弁95の開度と、後述の調節弁96の開度とを同時に調節する一例としては、例えば、過給機92の圧力損失を減少させ、焼却炉204内の圧力を下げるときに、供給する圧縮空気の供給量を変更したくない場合には、調節弁95の開度を減少させるなどの制御を行うことが挙げられる。
【0102】
調節弁96は、集塵機90の出力と白煙防止予熱器80の入力とを接続するバイパス経路97に設けられ、制御装置50Cから出力される制御信号SO96に応じて開度が調節される。調節弁96は、弁自体の開度の調整により、白煙防止予防器80に直接供給するバイパス経路97へと流れる排ガスの量と過給機92のタービン93に供給される排ガスの量とを調節する。例えば、排ガスバイパス経路97側に調整弁96を開けて流し、過給機92のタービン93に供給される排ガス量を減らした場合は、過給機の圧力損失が低下することにより炉内圧力を減少させることができる。同時に、過給機92の回転数低下により焼却炉204に供給される圧縮空気の量も減少させることができる。
【0103】
調整弁95の開度と、後述の調整弁96の開度とを同時に調整する一例としては、例えば、調整弁96の開度を増加させることで、過給機92の圧力損失を減少させ、焼却炉204内の圧力を下げるときに、過給機92の回転数が低下するため、供給する圧縮空気の供給量が低下する。供給する圧縮空気の供給量を変更したくない場合には、調整弁95の開度を減少させるなどの制御を行うことが挙げられる。
【0104】
なお、過給機92のタービン93を介して排出される排ガスは、バイパス経路97にバイパスされる排ガスと合流した後、白煙防止予熱器80に送り込まれる。白煙防止予熱器80で空気と熱交換された排ガスは、排煙処理塔84に送られる。第4の実施形態において、調節弁95,96を用いているが、これら調節弁95,96の代わりに流量を調節するダンパー等の調節設備を設けることも可能である。
【0105】
例えば、制御装置50Cは、PLCを含み、PLCが実行する制御プログラムに基づいて動作する。そして、制御装置50Cが実行する制御プログラムにより、第1算出部、第2算出部および供給制御部の機能が実現される。制御装置50Cは、図2に示した制御フローのステップS20、S24の処理において、例えば、調節弁95,96の開度に応じて過給機92から焼却炉204に供給する圧縮空気量や、炉内圧力の制御を行う。
【0106】
このとき、例えば、制御装置50Cは、空塔速度の増減の制御に流量制御信号SO10,SO12,SO14,SO16,SO18,SO20,SO22を使用しない。また、図2において、ステップS20、S24以外の処理は、図2の説明と同様である。制御装置50Cが実行する演算の流れは、図3と同じである。
【0107】
なお、流量制御信号SO10,SO12,SO14,SO22は、焼却炉202の通常の運用において、焼却炉202へのケーキ、補助燃料の供給量または注水量を調節するために使用されてもよい。また、流量制御信号SO16,SO18,SO20は、焼却炉202への空気の供給量の比率(バランス)を調節するために使用されてもよい。
【0108】
以上、第4の実施形態においても、第1、第2および第3の実施形態と同様に、排ガス量から算出した空塔速度を目標値にするために流動焼却炉204に供給する圧縮空気の量や、炉内圧力を調節することで、流動焼却炉204内での流動媒体を最適な流動状態に制御することができ、ケーキを安定して燃焼することができる。また、流動焼却炉204からの流動媒体の引き抜きの頻度、および流動焼却炉200への流動媒体の補充頻度を下げることができ、運転コストの上昇を抑制することができる。
【0109】
さらに、第4の実施形態では、圧縮空気の量の調節とともに流動焼却炉204内の圧力を調節することができ、圧縮空気の量と圧力との調節により、排ガス量を調節することができ、空塔速度を調節することができる。また、少ない数の流量制御信号SO95及びSO96により空塔速度を調節することができる。
【0110】
なお、第4の実施形態では、調節弁95,96の開度を各々調整することで空塔速度の調整を行っているが、調節弁95の開度の調整のみ、または調節弁96の開度の調整のみで、空塔速度の調整を行うことも可能となる。
【0111】
図7は、第5の実施形態における流動焼却炉の制御装置を含む焼却システムの一例を示す。図1に示した焼却システム100、図4に示した焼却システム102、図5に示した焼却システム104および図6に示した焼却システム106と同じ要素については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0112】
図7に示す焼却システム110は、制御装置50Cの代わりに制御装置50Dを有すること、および制御装置50Dが集塵機90から出力される排ガスの量に応じて空塔速度を調節することを除き、図6に示した焼却システム106と同様である。集塵機90から出力される排ガスの量は、集塵機90の排ガス出口側に配置される流量計98により計測される。流量計98は、計測した排ガス量を示す流量計測信号SI98を制御装置50Eに出力する。流量計98を集塵機90の排ガス出口側に配置することで、流動焼却炉204から排出される焼却灰等の固形成分が流量計98に付着することを防止することできる。これにより、流量計を流動焼却炉204内または流動焼却炉204の排ガス出口に配置する場合に比べて、正確な排ガス量を計測することができる。
【0113】
例えば、制御装置50Dは、PLCを含み、PLCが実行する制御プログラムに基づいて動作する。そして、制御装置50Dが実行する制御プログラムにより、後述する取得部、算出部および供給制御部の機能が実現される。制御装置50Dは、図2に示した制御フローのステップS10,S12を実行する代わりに、流量計98から出力される流量計測信号SI98に基づいて焼却炉204から実際に出力される標準排ガス量を取得する。
【0114】
そして、制御装置50Dは、図2に示したステップS14において焼却炉内における補正排ガス量に補正した後、図2に示したステップS16において、集塵機90から出力される排ガスの量に応じて空塔速度を算出する。また、制御装置50Dは、図2に示したステップS18,S20,S22,S24において、空塔速度が目標値になるように調節弁95,96の開度を調節する。例えば、制御装置50Dは、空塔速度の増減の制御に流量制御信号SO10,SO12,SO14,SO16,SO18,SO20,SO22を使用しない。制御装置50Dが実行する演算の流れは、図3の補正排ガス量の算出(h)以降と同じである。
【0115】
このように、制御装置50Dは、ステップS10,S12の代わりに流量計98から排ガス量を取得することで取得部の機能を実現し、ステップS16を実行することで空塔速度を算出する算出部の機能を実現する。また、制御装置50Dは、ステップS18,S20,S22,S24を実行することで各種供給物の供給量を調節する指示を発行する供給制御部の機能を実現する。なお、制御装置50Dは、図6で説明したように、調節弁95,96の開度を各々調節するのではなく、調節弁95、または調節弁96のいずれか一方の弁の開度を調整することで、空塔速度を調節してもよい。なお、第5の実施形態において流量計98は、集塵機90と過給機92の間に設置された例を示したが、排ガスの総量を計測できれば、集塵機90の出口から排煙処理塔84の入口までのいずれの箇所に設置してもよい。また、複数の流量計を設置して、合計値や平均値などを用いてもよい。
【0116】
以上、第5の実施形態においても、第1から第4の実施形態と同様に、排ガス量から算出した空塔速度を目標値にするために流動焼却炉204に供給する圧縮空気の量や、炉内圧力を調節することで、流動焼却炉204内での流動媒体を最適な流動状態に制御することができ、ケーキを安定して燃焼することができる。また、流動焼却炉204からの流動媒体の引き抜きの頻度、および流動焼却炉200への流動媒体の補充頻度を下げることができ、運転コストの上昇を抑制することができる。
【0117】
なお、上述した実施形態では、下水汚泥のケーキを焼却する流動焼却炉の空塔速度を制御する例について述べたが、都市ゴミまたは産業廃棄物等の下水汚泥のケーキ以外の焼却対象物を焼却する他の流動焼却炉の空塔速度を制御してもよい。また、図1に示した気泡式の流動焼却炉200および図4に示した気泡式の流動焼却炉202の代わりに、循環式の流動焼却炉が配置されてもよい。また、上述した実施形態では、流動焼却炉に燃焼用の空気を供給する例を述べたが、流動焼却炉に燃焼用の空気の他に酸素ガス単体を含む、空気より酸素濃度が高い気体や、空気より酸素濃度が低い気体を供給してもよい。
【0118】
上述した実施形態では、温度計44と圧力計46とを流動焼却炉(200等)に1つずつ設置する例を述べたが、複数の温度計44と複数の圧力計46が流動焼却炉に設置され、焼却炉の複数個所で温度および圧力が計測されてもよい。この場合、例えば、温度の平均と圧力の平均とに基づいて標準排ガス量を補正することで、より正確な排ガス量を算出することができ、より正確な空塔速度を算出することができる。
【0119】
さらに、例えば、図1に示す流動焼却炉200において、流動層の空塔速度とフリーボード部の空塔速度とをそれぞれ算出してもよい。この場合、例えば、流動層の排ガス量は式(6)により算出され、フリーボード部の標準状態の排ガス量は、式(7)により算出される。式(6)、(7)において、気体は全て標準状態での量を示すものとする。そして、それぞれの排ガス量から算出される空塔速度が、下限値と上限値との間に収まるように制御される。あるいは、各場所の空塔速度の平均値が下限値と上限値との間に収まるように制御されてもよい。
【0120】
流動層の排ガス量=(SI40+SI38)-(SI34の理論燃焼空気量)+(SI34の理論排ガス量) ‥(6)
【0121】
フリーボード部の排ガス量=(SI40+SI38+SI36)-(SI34の理論燃焼空気量+SI32の理論燃焼空気量+SI30の理論燃焼空気量)+{SI34の理論排ガス量+SI32の理論排ガス量+SI30の理論排ガス量(ケーキ水分の水蒸気も含む)}+(SI42分の水蒸気量) ‥(7)
【0122】
さらに、塔径が一様でない流動焼却炉では、塔径が異なる場所毎に空塔速度を算出し、各場所の空塔速度が下限値と上限値との間に収まるように制御してもよい。あるいは、各場所の空塔速度の平均値が下限値と上限値との間に収まるように制御してもよい。
【符号の説明】
【0123】
10…ケーキ供給装置;12、14…燃料供給装置;16、18、20…空気供給装置;22…水供給装置;30、32、34、36、38、40、42…流量計;44…温度計;46…圧力計;50、50A、50B、50C、50D、50E…制御装置;60…性状計測装置;70…ケーキ供給装置;70a…ホッパ;72…吸気弁;74…流動ブロワ;76…空気予熱器;78…白煙防止ファン;80…白煙防止予熱器;82…集塵機;84…排煙処理塔;86…誘引ファン;88…煙突;90…集塵機;92…過給機;93…タービン;94…コンプレッサ;95、96…調節弁;97…バイパス経路;98…流量計;100、102、104、106、108…焼却システム;200、202、204…流動焼却炉;SI、SO…制御信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7