(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】マット材、排ガス浄化装置及び排気管
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20230714BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20230714BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230714BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
F01N3/28 311N
F01N13/14 ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J35/04 301Z
(21)【出願番号】P 2019067264
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】向後 雄太
(72)【発明者】
【氏名】五島 謙綱
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-195021(JP,A)
【文献】特表2002-509221(JP,A)
【文献】特開昭61-279549(JP,A)
【文献】特表2012-520974(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1944974(CN,A)
【文献】特開2000-028078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/28
F01N 13/14
B01D 53/94
B01J 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面を有するマット材であって、
前記マット材は、前記第1主面側に配置される第1マットと、前記第2主面側に配置される第2マットと、前記第1マット及び前記第2マットとの間に配置される金属箔とからなり、
前記第1主面から前記金属箔までの距離D1よりも前記第2主面から前記金属箔までの距離D2の方が長く、
前記第2主面が受熱面とな
り、
前記第1マットは、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維から選択される少なくとも1種を含み、
前記第2マットは、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とするマット材。
【請求項2】
前記距離D1と、前記距離D2との比が、距離D1:距離D2=2:98~48:52である請求項1に記載のマット材。
【請求項3】
前記マット材の厚さは4~60mmであり、前記第1マットの厚さは2~29mmであり、前記第2マットの厚さは3~31mmである請求項1又は2に記載のマット材。
【請求項4】
前記金属箔は、ステンレス鋼、アルミニウム、金、銀、銅、スズ、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも1種の金属からなる請求項1~3のいずれかに記載のマット材。
【請求項5】
前記金属箔の前記第2主面側の表面は鏡面である請求項1~4のいずれかに記載のマット材。
【請求項6】
排ガス処理体と、前記排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、前記排ガス処理体と前記金属ケーシングとの間に配置され、前記排ガス処理体を保持するマット材とを備える排ガス浄化装置であって、
前記マット材は、第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面を有し、
前記マット材は、前記第1主面側に配置される第1マットと、前記第2主面側に配置される第2マットと、前記第1マット及び前記第2マットとの間に配置される金属箔とからなり、
前記第1主面から前記金属箔までの距離D1よりも前記第2主面から前記金属箔までの距離D2の方が長く、
前記マット材は、前記第2主面が前記排ガス処理体に接するように配置されて
おり、
前記第1マットは、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維から選択される少なくとも1種を含み、
前記第2マットは、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項7】
排気管と、
前記排気管を覆うように配置されたマット材と、
前記マット材の外側に配置された金属カバーとを備えるマット材付き排気管であって、
前記マット材は、第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面を有し、
前記マット材は、前記第1主面側に配置される第1マットと、前記第2主面側に配置される第2マットと、前記第1マット及び前記第2マットとの間に配置される金属箔とからなり、
前記第1主面から前記金属箔までの距離D1よりも前記第2主面から前記金属箔までの距離D2の方が長く、
前記マット材は、前記第2主面が前記排気管に接するように配置されて
おり、
前記第1マットは、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維から選択される少なくとも1種を含み、
前記第2マットは、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とするマット材付き排気管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マット材、排ガス浄化装置及び排気管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用、特に自動車の動力源として、ガソリンや軽油を燃料とする内燃機関が百年以上にわたり用いられてきた。しかしながら、排気ガスが健康や環境に害を与えることが次第に問題となってきている。それゆえ、最近では排気ガス中に含まれているCO、NOx、HC等の有害成分を除去する排気ガス浄化用触媒コンバータや、PM(パティキュレートマター)等を除去するDPF(Diesel Particulate Filter)等の排ガス浄化装置が各種提案されるに至っている。
通常の排気ガス浄化装置は、排ガス処理体(触媒担体)と、前記触媒担体の外周を覆う金属ケーシングと、これらの間に配置される保持材とを備えている。また、排ガス処理体には白金等の触媒が担持されている。
【0003】
排ガス処理体に担持された触媒が、排ガス中の有害成分を分解するためには、所定の活性化温度まで到達する必要がある。
内燃機関から放出された排ガスは高温であり、触媒は排ガスにより加熱されることにより活性温度まで到達することになる。
排ガスは排気管を通って排ガス浄化装置に到達することになるが、触媒を速やかに活性温度まで到達させるために、この際の熱のロスはできるだけ少ない方が望ましい。
【0004】
このような熱のロスを防ぐための排ガス浄化装置として、特許文献1には、燃焼プロセスからの排ガスを処理するための一体型排気処理ユニットであり、長手軸線と平行に伸長している外面を有している一体型構造物と、前記外面の周りに被覆されている少なくとも2つの支持マットからなる層と、該少なくとも2つの支持マットからなる層間に挟まれている金属箔からなる少なくとも1つの層と、を備えていることを特徴とするユニットが開示されている。
特許文献1に記載の一体型排気処理ユニットでは、2つの支持マットで金属箔を挟む構造とすることにより、熱のロスを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の一体型排気処理ユニットには、白金触媒やパラジウム触媒が担持されることになる。
近年、排ガス温度が1000℃を超えることがあり、一体型排気処理ユニットの温度が、白金触媒の耐熱温度(約550℃)やパラジウム触媒の耐熱温度(約700℃)を超え、触媒機能を失う可能性がある。そのため、マット材には、放熱性も求められている。
また、特許文献1では、一体型排気処理ユニットに到達するまでの排ガスの熱のロスに関して考慮されておらず、排ガスが排気管を通る際の熱のロスの抑制は改良の余地があった。
【0007】
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、排ガス浄化装置の排ガス処理体を充分に保温することができ、かつ、放熱性が高いマット材、及び、排気管を通る際の熱のロスを充分に抑制することができるマット材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明のマット材は、第1主面と、上記第1主面と反対側の第2主面を有するマット材であって、上記マット材は、上記第1主面側に配置される第1マットと、上記第2主面側に配置される第2マットと、上記第1マット及び上記第2マットとの間に配置される金属箔とからなり、上記第1主面から上記金属箔までの距離D1よりも上記第2主面から上記金属箔までの距離D2の方が長く、上記第2主面が受熱面となることを特徴とする。
【0009】
本発明のマット材では、第1主面から金属箔までの距離D1よりも第2主面から金属箔までの距離D2の方が長い。
このようなマット材は、第2主面を受熱面として、100~380℃の熱を受けた場合、第1主面側に熱が移動しにくくなる。
また、第2主面を受熱面として、800℃以上の熱を受けた場合、第1主面側に熱が移動することをある程度防げ、第1主面からの放熱量を大きくすることができる。すなわち、保温性と放熱性とを両立させることができる。
【0010】
本発明のマット材では、上記距離D1と、上記距離D2との比が、距離D1:距離D2=2:98~48:52であることが望ましい。
このような範囲であると、第2主面を受熱面として、100~380℃の熱を受けた場合、熱が受熱面と反対側の面により移動しにくくなる。
また、第2主面を受熱面として、800℃以上の熱を受けた場合の保温性と放熱性とのバランスがさらによくなる。
【0011】
本発明のマット材では、上記マット材の厚さは4~60mmであり、上記第1マットの厚さは2~29mmであり、上記第2マットの厚さは3~31mmであることが望ましい。
このような厚さであると、金属箔をしっかり挟むことができ、また、断熱性能も向上する。
【0012】
本発明のマット材では、上記金属箔は、ステンレス鋼、アルミニウム、金、銀、銅、スズ、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも1種の金属からなることが望ましい。
これらの金属は、好適に熱を反射することができる。そのため、金属箔がこれらの金属からなると、マット材の断熱性能を向上させることができる。
【0013】
本発明のマット材では、上記金属箔の上記第2主面側の表面は鏡面であってもよい。
金属箔の表面が鏡面であると、熱が金属箔により反射されやすくなる。そのため、第1マット及び第2マットとの間に配置される金属箔の鏡面が、受熱面側に位置するようにマット材を配置することにより、マット材の断熱性能が向上する。
【0014】
本発明の排ガス浄化装置は、排ガス処理体と、上記排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、上記排ガス処理体と上記金属ケーシングとの間に配置され、上記排ガス処理体を保持するマット材とを備える排ガス浄化装置であって、上記マット材は、第1主面と、上記第1主面と反対側の第2主面を有し、上記マット材は、上記第1主面側に配置される第1マットと、上記第2主面側に配置される第2マットと、上記第1マット及び上記第2マットとの間に配置される金属箔とからなり、上記第1主面から上記金属箔までの距離D1よりも上記第2主面から上記金属箔までの距離D2の方が長く、上記マット材は、上記第2主面が上記排ガス処理体に接するように配置されていることを特徴とする。
【0015】
排ガス浄化装置には、800℃以上の排ガスが流入し、排ガス処理体も800℃以上に加熱されることになる。
本発明の排ガス浄化装置では、マット材の第2主面が排ガス処理体と接触している。すなわち、マット材の第2主面が受熱面となる。
さらに、本発明の排ガス浄化装置では、マット材の第1主面から金属箔までの距離D1よりもマット材の第2主面から金属箔までの距離D2の方が長い。
このようなマット材において、マット材の第2主面を受熱面として、800℃以上の熱を受けた場合、第1主面側に熱が移動することをある程度防げ、第1主面からの放熱量を大きくすることができる。すなわち、保温性と放熱性とを両立させることができる。
そのため、排ガス処理体を適度な温度に保つことができる。
【0016】
本発明のマット材付き排気管は、排気管と、上記排気管を覆うように配置されたマット材と、上記マット材の外側に配置された金属カバーとを備えるマット材付き排気管であって、上記マット材は、第1主面と、上記第1主面と反対側の第2主面を有し、上記マット材は、上記第1主面側に配置される第1マットと、上記第2主面側に配置される第2マットと、上記第1マット及び上記第2マットとの間に配置される金属箔とからなり、上記第1主面から上記金属箔までの距離D1よりも上記第2主面から上記金属箔までの距離D2の方が長く、上記マット材は、上記第2主面が前記排気管に接するように配置されていることを特徴とする。
【0017】
通常、排ガスが排気管内を通過する際、排気管の外面は約380℃程度になる。
本発明のマット材付き排気管では、マット材の第2主面が排気管と接触している。すなわち、マット材の第2主面が受熱面となる。
さらに、本発明のマット材付き排気管では、マット材の第1主面から金属箔までの距離D1よりもマット材の第2主面から金属箔までの距離D2の方が長い。
このようなマット材において、第2主面を受熱面として、380℃程度の熱を受けた場合、第1主面側に熱が移動しにくくなる。
そのため、排気管から放出される熱を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るマット材の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明のマット材を備える排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
図3(b)は、
図3(a)のA-A線断面図である。
【
図4】
図4は、本発明のマット材を備えるマット材付き排気管の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、マット材の断熱性試験を模式的に示す模式図である。
【0019】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明のマット材について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0020】
本発明に係るマット材を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るマット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、マット材10は、第1主面11と、第1主面11と反対側の第2主面12を有する。
また、マット材10は、第1主面11側に配置される第1マット21と、第2主面12側に配置される第2マット22と、第1マット21及び第2マット22との間に配置される金属箔30とからなる。
また、マット材10では、第1主面11から金属箔30までの距離D1よりも第2主面12から金属箔30までの距離D2の方が長い。
また、マット材10では、第2主面12が受熱面となる。
【0021】
マット材10を対象物に巻き付ける際に、端部同士が嵌合するように、マット材10の一方の端部13には凸部13aが設けられており、もう一方の端部14に凹部14aが設けられている。
このような凸部13a及び凹部14aが設けられていると、マット材10を後述する排ガス浄化装置に配置した際に、シール性が向上する。
なお、本発明のマット材は、マット材の端部に凸部及び凹部を有していなくてもよい。
【0022】
このようなマット材10は、第2主面12を受熱面として、100~380℃の熱を受けた場合、第1主面11側に熱が移動しにくくなる。
また、第2主面12を受熱面として、800℃以上の熱を受けた場合、第1主面11側に熱が移動することをある程度防げ、第1主面11からの放熱性を充分に高くすることができる。すなわち、保温性と放熱性とを両立させることができる。
【0023】
マット材10では、距離D1と、距離D2との比が、距離D1:距離D2=2:98~48:52であることが望ましく、5:95~45:55であることがより望ましい。
このような範囲であると、第2主面12を受熱面として、100~380℃の熱を受けた場合、熱が受熱面と反対側の面により移動しにくくなる。
また、第2主面12を受熱面として、800℃以上の熱を受けた場合、第1主面11側に熱が移動することをある程度防げ、第1主面11からの放熱性を充分に高くすることができる。すなわち、保温性と放熱性とを両立させることができる。
【0024】
マット材10の厚さは、4~60mmであることが望ましく、10~40mmであることがより望ましい。
また、第1マット21の厚さは、2~29mmであることが望ましく、4~19mmであることがより望ましい。
また、第2マット22の厚さは、3~31mmであることが望ましく、6~21mmであることがより望ましい。
このような厚さであると、金属箔30をしっかり挟むことができ、また、断熱性能も向上する。
【0025】
後述するように、マット材10は、対象物に巻き付けられて使用されてもよい。マット材10を対象物に巻き付ける際には内周長と外周長に差(内外周差)が生じる。
そのため、マット材10を対象物に巻き付けた際に、内外周差により隙間が生じないようにするために、第1マット21及び第2マット22のうち、外側に配置されるマットを内側に配置されるマットよりも長くすることが望ましい。
また、内外周差による隙間は、あらかじめ計算できるため、隙間が丁度埋まるように第1マット21及び第2マット22の長さを調整することがより望ましい。
また、金属箔30の長さも隙間が生じないように調整することが望ましい。なお、金属箔30は、マット材10を対象物に巻き付けた際に、一部が重なる長さであってもよい。
【0026】
以下、マット材10の各構成について説明する。
【0027】
(第1マット及び第2マット)
第1マット21は、特に限定されないが、無機繊維からなることが望ましい。
無機繊維としては、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維から選択される少なくとも1種を含むことが望ましい。
第1マット21がこれらの無機繊維からなると耐熱性が充分になる。
【0028】
第1マット21を構成する無機繊維は、平均繊維径が3~50μmであり、平均繊維長が100~100000μmであることが望ましい。
【0029】
第1マット21のかさ密度は、0.05~0.30g/cm3であることが望ましい。
第1マットのかさ密度が0.05g/cm3未満であると、無機繊維のからみ合いが弱く、無機繊維が剥離しやすいため、マット材の形状を所定の形状に保ちにくくなる。
第1マットのかさ密度が0.30g/cm3を超えると、マット材が硬くなり、対象物への巻き付け性が低下し、マット裂けが発生しやすくなる。
【0030】
第1マット21は、有機バインダを含んでいてもよい。
第1マット21が有機バインダを含むと、無機繊維を固定しやすくなる。そして、第1マット21の引張強度向上ができ、さらに、第1マット21から無機繊維が脱落すること、及び、飛散することを抑止することができる。
【0031】
第1マット21は、無機バインダを含んでいてもよい。
さらに、無機バインダは、無機繊維の表面に付着することで、第1マット21の面圧及び断熱性を向上させることができる。
【0032】
第1マット21の主面には、可撓性シートが配置されていてもよい。
可撓性シートが配置されていると、巻き付けの際にマット材が割れることを防止できる。
可撓性シートとしては、有機フィルムや不織布等が挙げられる。
【0033】
第2マット22は、第1マット21と同様の無機繊維からなることが望ましく、かさ密度も第1マット21と同様であることが望ましい。
また、第2マット22は、第1マット21と同様に、有機バインダや無機バインダを含んでいてもよい。
また、第2マット22の主面にも、第1マット21と同様に可撓性シートが配置されていてもよい。
【0034】
図1に示す第1マット21及び第2マット22はニードルパンチマットであるが、本発明の第1実施形態に係るマット材では、第1マット及び第2マットはニードルパンチがされていないマットであってもよい。
【0035】
このような第1マット及び第2マットを作製する方法としては、ブローイング法や抄造法等の従来の方法を採用することができる。
また、第1マット及び第2マットは、トムソン刃等により無機繊維マットを打ち抜くことにより作製してもよい。
【0036】
(金属箔)
金属箔30は、特に限定されないが、ステンレス鋼、アルミニウム、金、銀、銅、スズ、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも1種の金属からなることが望ましい。
これらの金属は、好適に熱を反射することができる。そのため、金属箔がこれらの金属からなると、マット材の断熱性能を向上させることができる。
【0037】
金属箔30の厚さは、1~100μmであることが望ましく、5~50μmであることがより望ましい。
金属箔の厚さが1μm未満であると、金属箔が薄いので破損しやすくなる。
金属箔の厚さが100μmを超えると、金属箔が厚いため曲げるのに大きな力が必要になり、マット材全体が曲げにくくなる。
【0038】
マット材10では、金属箔30の第2主面12側の表面は鏡面であってもよい。
金属箔30の表面が鏡面であると、熱が金属箔30により反射されやすくなる。そのため、第1マット21及び第2マット22との間に配置される金属箔30の鏡面が、受熱面側に位置するようにマット材10を配置することにより、マット材10の断熱性能が向上する。
【0039】
金属箔30は、大きな金属箔をカッター等により切り抜くことにより成形されてもよい。
また、トムソン刃で打ち抜くことにより第1マット及び第2マットを作製する場合、打ち抜かれることになるマットの上に金属箔を配置し、トムソン刃でマットを打ち抜く際に、同時にトムソン刃で金属箔を打ち抜いて成形してもよい。
さらに、トムソン刃で打ち抜いて第1マット及び第2マットを作製する際に、第1マット及び第2マットの長さが異なるのであれば、長くなる方に金属箔を配置し、トムソン刃で打ち抜いてもよい。
【0040】
マット材10では、金属箔30は、有機バインダや無機バインダ等の接着剤により第1マット21及び第2マット22に貼付されていてもよい。
また、マット材10は、金属箔30を第1マット21及び第2マット22で挟み、バンド等で固定されていてもよい。
【0041】
マット材10では、金属箔30は、第1マット21及び第2マット22の2枚のマットにより挟まれているが、本発明のマット材では、距離D1よりも距離D2の方が長ければ、さらに別のマットが積層されていてもよい。
【0042】
次に、本発明のマット材の使用方法の一例である、本発明のマット材を備えた排ガス浄化装置について説明する。
なお、本発明のマット材を備える排ガス浄化装置は、本発明の排ガス浄化装置でもある。
図2は、本発明のマット材を備える排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
【0043】
図2に示すように、排ガス浄化装置100は、排ガス処理体40と、排ガス処理体40を収容する金属ケーシング50と、排ガス処理体40と金属ケーシング50との間に配置され、排ガス処理体40を保持するマット材10とを備える。
【0044】
上記の通り、マット材10は、第1主面11と、第1主面11と反対側の第2主面12を有する。
そして、マット材10は、第1主面11側に配置される第1マット21と、第2主面12側に配置される第2マット22と、第1マット21及び第2マット22との間に配置される金属箔30とからなる。
またマット材10では、第1主面11から金属箔30までの距離D1よりも第2主面12から金属箔30までの距離D2の方が長い。
【0045】
排ガス浄化装置100では、マット材10は、第1主面11が排ガス処理体40に接するように配置されている。
【0046】
排ガス浄化装置100に800℃以上の排ガスが流入した場合(
図2中、排ガスを符号「G」で示し、ガスの流れを矢印で示す)、排ガス処理体40も800℃以上に加熱されることになる。
排ガス浄化装置100では、マット材10の第2主面12が排ガス処理体40と接触している。すなわち、マット材10の第2主面12が受熱面となる。
さらに、排ガス浄化装置100では、マット材10の第1主面11から金属箔30までの距離D1よりもマット材10の第2主面12から金属箔30までの距離D2の方が長い。
このようなマット材10において、第2主面12を受熱面として、800℃以上の熱を受けた場合、第1主面11側に熱が移動することをある程度防げ、第1主面11からの放熱量を大きくすることができる。すなわち、保温性と放熱性とを両立させることができる。
そのため、排ガス処理体を適度な温度に保つことができる。
【0047】
以下、排ガス浄化装置100を構成する排ガス処理体及び金属ケーシングについて説明する。
【0048】
(排ガス処理体)
図3(a)は、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
図3(b)は、
図3(a)のA-A線断面図である。
図3(a)及び(b)に示すように、排ガス浄化装置100に含まれる排ガス処理体40は、多数のセル41がセル壁42を隔てて長手方向に並設された円柱状のものである。
また、排ガス処理体40では、各々のセル41におけるいずれか一方が封止材43によって目封じされた排ガスフィルタ(ハニカムフィルタ)である。
【0049】
図3(b)に示すように、内燃機関から排出され排ガス処理体40に流入した排ガス(
図3(b)中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体40の排ガス流入側端面に開口した一のセル41に流入し、セル41を隔てるセル壁42を通過することになる。この際、排ガス中のPMがセル壁42で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス流出側端面に開口した他のセル41から流出し、外部に排出される。
【0050】
なお、
図3(a)及び(b)に示す排ガス処理体40は、セル41のいずれか一方の端部が封止材43で封止されているフィルタであるが、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、セルの端部が封止されていなくてもよい。このような排ガス処理体は、触媒担体として好適に使用することが可能となる。
【0051】
排ガス処理体40は、炭化ケイ素や窒化ケイ素などの非酸化多孔質セラミックからなっていてもよく、サイアロン、アルミナ、コーデェライト、ムライト等の酸化多孔質セラミックからなっていてもよい。これらの中では、炭化ケイ素であることが望ましい。
【0052】
排ガス処理体40が炭化ケイ素質の多孔質セラミックである場合、多孔質セラミックの気孔率は特に限定されないが、35~60%であることが望ましい。
気孔率が35%未満であると、排ガス処理体がすぐに目詰まりを起こすことがあり、一方、気孔率が60%を超えると、排ガス処理体の強度が低下して容易に破壊されることがある。
【0053】
また、多孔質セラミックの平均気孔径は5~30μmであることが望ましい。
平均気孔径が5μm未満であると、PMが容易に目詰まりを起こすことがあり、一方、平均気孔径が30μmを超えると、PMが気孔を通り抜けてしまい、PMを捕集することができず、フィルタとして機能することができないことがあるからである。
なお、上記気孔率及び気孔径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による測定の従来公知の方法により測定することができる。
【0054】
排ガス処理体40の断面におけるセル密度は、特に限定されないが、望ましい下限は、31.0個/cm2(200個/inch2)、望ましい上限は、93.0個/cm2(600個/inch2)である。また、より望ましい下限は、38.8個/cm2(250個/inch2)、より望ましい上限は、77.5個/cm2(500個/inch2)である。
【0055】
排ガス処理体40には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよく、担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が望ましく、この中では、白金がより望ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属を用いることもできる。これらの触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これら触媒が担持されていると、PMを燃焼除去しやすくなり、有毒な排ガスの浄化も可能になる。
【0056】
(金属ケーシング)
金属ケーシング50は、略円筒形である。
金属ケーシング50の内径(排ガス処理体を収容する部分の内径)は、マット材10が巻き付けられた排ガス処理体40の直径より若干短くなっていることが好ましい。
【0057】
金属ケーシング50は、特に限定されないが、ステンレス鋼からなることが望ましい。
【0058】
次に、本発明のマット材の使用方法の一例である、本発明のマット材を備えたマット材付き排気管について説明する。
なお、本発明のマット材を備えるマット材付き排気管は、本発明のマット材付き排気管でもある。
図4は、本発明のマット材を備えるマット材付き排気管の一例を模式的に示す断面図である。
【0059】
図4に示すように、マット材付き排気管200は、排気管60と、排気管60を覆うように配置されたマット材10と、マット材10の外側に配置された金属カバー70とを備える。
【0060】
上記の通り、マット材10は、第1主面11と、第1主面11と反対側の第2主面12を有する。
そして、マット材10は、第1主面11側に配置される第1マット21と、第2主面12側に配置される第2マット22と、第1マット21及び第2マット22との間に配置される金属箔30とからなる。
またマット材10では、第1主面11から金属箔30までの距離D1よりも第2主面12から金属箔30までの距離D2の方が長い。
【0061】
マット材付き排気管200では、マット材10は、第2主面12が排気管60に接するように配置されている。
【0062】
通常、排ガス(
図4中、排ガスを符号「G」で示し、ガスの流れを矢印で示す)が排気管60内を通過する際、排気管60の外面は約380℃程度になる。
マット材付き排気管200では、マット材10の第2主面12が排気管60と接触している。すなわち、マット材10の第2主面12が受熱面となる。
さらに、マット材付き排気管200では、マット材の第1主面から金属箔までの距離D1よりもマット材の第2主面から金属箔までの距離D2の方が長い。
このようなマット材10において、第2主面12を受熱面として、380℃程度の熱を受けた場合、第1主面11側に熱が移動しにくくなる。
そのため、排気管60から放出される熱を低減することができ、排ガスの温度を高温に保つことができる。
【0063】
マット材付き排気管200において、排気管60は、ステンレス等の金属からなることが好ましい。
また、マット材付き排気管200において、金属カバー70は、ステンレス等の金属からなることが好ましい。
【0064】
本発明のマット材の使用方法としては、上記マット材付き排気管用途に限られず、種々の断熱用途が挙げられる。
また、上記マット材付き排気管用途では、本発明のマット材は対象物(排気管)に巻き付けられていたが、本発明のマット材を使用する際には、マット材を対象物に巻き付けることは必須ではなく、単に配置するだけでもよい。
【0065】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
Al含有量が70g/Lであり、Al:Cl=1:1.8(原子比)となるように調製した塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後のセラミック繊維における組成比が、Al2O3:SiO2=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製した。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸してアルミナ繊維前駆体を作製した。
続いて、上記セラミック繊維前駆体を圧縮して所定の大きさの連続したシート状物を作製し、これにニードルパンチング処理を施し、その後、焼成処理を施して、平均繊維径が5μmであるアルミナ繊維のマット材を作製した。
その後、アルミナ繊維に有機バインダ(アクリレート樹脂ラテックス)を、有機分が1wt%になるように含浸付与し、水分を乾燥して、所定形状に打ち抜き、厚さが3.5mmの第1マットと、厚さが10.5mmの第2マットを作製した。
【0067】
次に、厚さが10μmの両面が鏡面のステンレス鋼からなる金属箔を準備した。
【0068】
次に、第1マットと第2マットとの間に金属箔を挟み、実施例1に係るマット材を製造した。
実施例1に係るマット材では、第1マット側の主面を第1主面とし、第2マット側の主面を第2主面とした。
【0069】
(比較例1)
第1マットの厚さを10.5mmとし、第2マットの厚さを3.5mmとした以外は、実施例1と同様に比較例1に係るマット材を製造した。
【0070】
(比較例2)
第1マットの厚さを7mmとし、第2マットの厚さを7mmとした以外は実施例1と同様に比較例2に係るマット材を製造した。
【0071】
(比較例3)
Al含有量が70g/Lであり、Al:Cl=1:1.8(原子比)となるように調製した塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後のセラミック繊維における組成比が、Al2O3:SiO2=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製した。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸してアルミナ繊維前駆体を作製した。
続いて、上記セラミック繊維前駆体を圧縮して所定の大きさの連続したシート状物を作製し、これにニードルパンチング処理を施し、その後、焼成処理を施して、平均繊維径が5μmであるアルミナ繊維のマット材を作製した。
その後、アルミナ繊維に有機バインダ(アクリレート樹脂ラテックス)を、有機分が1wt%になるように含浸付与し、水分を乾燥して、所定形状に打ち抜き、厚さが14mmの比較例3に係るマット材を製造した。
比較例3に係るマット材では、マット材の主面の向きにより断熱効果等に差がないが、便宜上、一方の主面を第1主面とし、もう一方の主面を第2主面とした。
【0072】
(断熱性試験)
図5は、マット材の断熱性試験を模式的に示す模式図である。
断熱性試験では、
図5に示すように、断熱ブロック81の上にスペーサー82が配置され、スペーサー82の上に熱盤83が配置された熱盤試験機80を準備した。
【0073】
次に、熱盤83の上に、実施例1及び比較例1~3に係るマット材10を配置した。
この際、第2主面が熱盤83に接触するようにした。
【0074】
次に、マット材10の上に、厚さ1.5mmのステンレス鋼からなるSUS板90を配置した。
【0075】
次に、熱盤83の温度を、200℃にし、40分経過後、マット材10と接していない側のSUS板90の表面(
図5中、符号「P」で示す位置)の温度を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
【0077】
表1に示すように、実施例1に係るマット材は、第2主面を受熱面として、200℃の熱を受けた場合、SUS板の表面の温度が低かった。これは、第2主面側から第1主面側に熱が移動しにくかったからであると考えられる。
以上より、実施例1に係るマット材は、200℃程度の温度を第2主面に受ける場合、高い断熱効果を示すことが判明した。
【0078】
(放熱性試験)
上記断熱性試験と同様に、熱盤試験機80を準備し、熱盤83の上に、実施例1及び比較例1~3に係るマット材10を配置した。
この際、第2主面が熱盤83に接触するようにした。
【0079】
次に、マット材10の上に、厚さ1.5mmのステンレス鋼からなるSUS板90を配置した。
【0080】
次に、熱盤83の温度を800℃になるまで加熱し、40分経過後、マット材10と接していない側のSUS板90の表面(
図5中、符号「P」で示す位置)の温度を測定した。結果を表2に示す。
【0081】
その後、熱盤83への加熱を停止し、熱盤の温度が500℃になるまでの時間を測定し、降熱速度(放熱速度)(℃/min)を測定した。結果を表2に示す。
【0082】
【0083】
表2に示すように、800℃程度の温度を第2主面に受けた場合、実施例1に示すマット材は比較例3に係るマット材よりも高い断熱効果を示すことが判明した。
また、800℃程度の温度を第2主面に受けた場合、実施例1に示すマット材は、比較例1及び2に係るマット材よりも放熱性が高いことが判明した。
これらの結果より、実施例1に係るマット材は、保温性と放熱性とのバランスが良いことが判明した。
【符号の説明】
【0084】
10 マット材
11 第1主面
12 第2主面
13 一方の端部
13a 凸部
14 もう一方の端部
14a 凹部
21 第1マット
22 第2マット
30 金属箔
40 排ガス処理体
41 セル
42 セル壁
43 封止材
50 金属ケーシング
60 排気管
70 金属カバー
80 熱盤試験機
81 断熱ブロック
82 スペーサー
83 熱盤
90 SUS板
100 排ガス浄化装置
200 マット材付き排気管