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特許7313193軸継手装置および軸継手装置の回転位相調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】軸継手装置および軸継手装置の回転位相調整方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/79 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
F16D3/79 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019099997
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020193671
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176992
【氏名又は名称】三木プーリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 久雄
(72)【発明者】
【氏名】木下 聡
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-257619(JP,A)
【文献】実開平3-80127(JP,U)
【文献】実開平3-85726(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シャフトと第2シャフトとの間で回転力を伝達するように構成された軸継手装置であって、
前記第1シャフトに相対回転不能に取り付けられるように構成された第1継手部材と、
前記第2シャフトに相対回転不能に取り付けられるように構成された第2継手部材と、
前記軸継手装置の軸線が延在する方向における前記第1継手部材と前記第2継手部材との間に配置されて、前記第1継手部材および前記第2継手部材の夫々に固定されるとともに、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの間のミスアライメントを許容するように構成された中間部材と、を備え、
前記第2継手部材は、
前記中間部材に第1締結装置により固定されるように構成されたベース部材と、
前記第2シャフトに相対回転不能に取り付けられるように構成された軸取付部材であって、前記軸線の周方向に沿って延在する長孔を有し、且つ、前記長孔を挿通する第2締結装置により前記ベース部材に着脱可能に固定されるように構成された軸取付部材と、を含む
軸継手装置。
【請求項2】
前記ベース部材および前記軸取付部材のうちの一方の部材は、前記軸線が延在する方向において他方の端面に対向する端面から前記軸線と同軸状になるように突出し、且つ、前記軸線に直交する断面が円形状に形成された突出軸部を含み、
前記ベース部材および前記軸取付部材のうちの他方の部材は、前記他方の端面に設けられ、且つ、前記突出軸部が嵌合するように構成されるとともに、前記軸線に直交する断面が円形状に形成された内周面を有する嵌合孔部を含む。
請求項1に記載の軸継手装置。
【請求項3】
前記一方の部材における前記他方の端面に対向する前記端面は、前記突出軸部よりも外周側に位置し、前記軸線に交差する方向に沿って延在する軸部側端面を含み、
前記他方の部材における前記他方の端面は、前記嵌合孔部よりも外周側に位置し、前記軸線に交差する方向に沿って延在する孔部側端面を含み、
前記一方の部材および前記他方の部材は、前記軸部側端面と前記孔部側端面とが当接配置されるように構成された
請求項2に記載の軸継手装置。
【請求項4】
前記中間部材は、前記軸線に交差する方向に沿って延在し、前記軸線に交差する方向に沿って弾性撓み可能に構成された少なくとも一つの板ばね部材を含む
請求項1乃至3の何れか1項に記載の軸継手装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つの板ばね部材は、前記第1継手部材に締結されるように構成された第1の締結部と、前記ベース部材に締結されるように構成された第2の締結部と、を含む
請求項4に記載の軸継手装置。
【請求項6】
前記第1継手部材は、前記軸線に交差する方向に沿って延在する第1フランジ部を含み、
前記第1フランジ部は、第3締結装置により前記中間部材に締結されるように構成された第1継手側締結部と、前記中間部材側の端面に形成される前記第1締結装置が緩く嵌入可能に構成された第1逃げ凹部と、を含む
請求項1乃至5の何れか1項に記載の軸継手装置。
【請求項7】
前記ベース部材は、前記軸線に交差する方向に沿って延在する第2フランジ部を含み、
前記第2フランジ部は、前記第1締結装置により前記中間部材に締結されるように構成された第2継手側締結部と、前記中間部材側の端面に形成される前記第3締結装置が緩く嵌入可能に構成された第2逃げ凹部と、を含む
請求項6に記載の軸継手装置。
【請求項8】
前記中間部材は、前記第1継手部材および前記ベース部材に対して前記軸線が延在する方向に隙間を有して固定されるように構成された
請求項1乃至7の何れか1項に記載の軸継手装置。
【請求項9】
前記第1シャフトおよび前記第2シャフトのうちの一方は、ディーゼル機関の駆動シャフトを含み、
前記第1シャフトおよび前記第2シャフトのうちの他方は、前記ディーゼル機関に液体燃料を圧送するように構成された燃料圧送ポンプの従動シャフトを含む
請求項1乃至8の何れか1項に記載の軸継手装置。
【請求項10】
第1シャフトと第2シャフトとの間で回転力を伝達するように構成された軸継手装置の回転位相調整方法であって、
前記軸継手装置は、
前記第1シャフトに相対回転不能に取り付けられるように構成された第1継手部材と、
前記第2シャフトに相対回転不能に取り付けられるように構成された第2継手部材と、
前記軸継手装置の軸線が延在する方向における前記第1継手部材と前記第2継手部材との間に配置されて、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの間のミスアライメントを許容するように構成された中間部材と、を備え、
前記第2継手部材は、
前記中間部材に第1締結装置により固定されるように構成されたベース部材と、
前記第2シャフトに相対回転不能に取り付けられるように構成された軸取付部材であって、前記軸線の周方向に沿って延在する長孔を有し、且つ、前記長孔を挿通する第2締結装置により前記ベース部材に着脱可能に固定されるように構成された軸取付部材と、を含み、
前記軸継手装置の回転位相調整方法は、
前記軸取付部材を前記ベース部材に対して相対回転させる相対回転ステップと、
前記相対回転ステップの後に、前記第2締結装置により前記軸取付部材を前記ベース部材に固定する固定ステップと、を備える
軸継手装置の回転位相調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一対の回転シャフト間で回転力を伝達するための軸継手装置、および該軸継手装置の回転位相調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の回転シャフト間で回転力を伝達するための軸継手装置には、一対のシャフトの軸心間のミスアライメント(偏芯、偏角および軸端間距離の変位)を許容するように構成された撓み軸継手(フレキシブルカップリング)がある(特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、駆動シャフトに連結される駆動側継手と、従動シャフトに連結される従動側継手と、駆動シャフトと従動シャフトとの間に配置されて回転力を伝達するとともに、駆動シャフトと従動シャフトの軸心間のミスアライメントを吸収する中間部材と、を備える撓み軸継手が開示されている。また、特許文献1には、上記中間部材がたわみ性および復元性を有する金属板ばねを含むことが開示されている。
【0004】
上記撓み軸継手は、ディーゼル機関の駆動シャフトと機械式燃料圧送ポンプの従動シャフトとを連結することがある。機械式燃料圧送ポンプは、駆動シャフトから伝達された駆動力により動作し、ディーゼル機関に使用される燃料を加圧するとともに、加圧されて噴射圧力に相当する高圧の燃料をディーゼル機関に圧送する装置である。ディーゼル機関に圧送された燃料は、燃焼室内に噴射される。機械式燃料圧送ポンプでは、燃料の噴射タイミングが従動シャフトの回転位相に応じて決まるものである。このため、駆動シャフトと従動シャフトと連結する際には、従動シャフトの駆動シャフトに対する相対回転位相の調整が行われる。また、ディーゼル機関の使用用途に応じて噴射タイミングを変更すること、すなわち、従動シャフトの駆動シャフトに対する相対回転位相の再調整を行うこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-372068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従動シャフトの駆動シャフトに対する相対回転位相の調整作業を容易に行うための手段としては、駆動側継手の軸線の周方向に形成された締結用ボルト孔(丸孔)を、必要な位相変化代だけ周方向に広げた長孔とし、所望の噴射タイミングを得られるように、駆動側継手の回転位相を従動側継手や金属板ばねの回転位相に対してずらすことが考えられる。しかし、締結用ボルト孔を長孔にすると、以下のような問題が生じる。
【0007】
駆動側継手は、締結用のボルトやナットを介して、金属板ばね(中間部材)に締結されており、締結用ボルト孔の開口端縁には、締結用のボルトやナットの座面が直接、又はワッシャを介して密着している。金属板ばねは、駆動側継手だけでなく従動側継手にも連結されているので、駆動シャフトと従動シャフトの軸心間のミスアライメントを吸収するために撓むようになっている。金属板ばねと駆動側継手を締結する締結用のボルトは、金属板ばねから金属板ばねが元の形状に戻ろうとする復元力を受ける。上記復元力は、長孔の延在する方向にも作用することがある。
【0008】
駆動側継手は、締結用ボルト孔を長孔にすると、締結用ボルト孔を挿通するボルトの軸線の周りにおける、ボルトなどとの接触面積の分布が不均一となり、締結力も不均一に伝達されることになる。つまり、上記締結力は、長孔の延在する方向には大きく作用しない。このため、長孔を有する駆動側継手は、締結用のボルトが金属板ばねから長孔の延在する方向に沿った方向から力が加えられた際に、締結用のボルトに対して滑りを発生させる虞がある。駆動側継手が滑ると、軸継手装置が破損する虞がある。
【0009】
上述した事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、一対のシャフト間の相対回転位相を容易に調整可能であるとともに、軸継手装置における滑りの発生を防止することができる軸継手装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の少なくとも一実施形態にかかる軸継手装置は、
第1シャフトと第2シャフトとの間で回転力を伝達するように構成された軸継手装置であって、
上記第1シャフトに相対回転不能に取り付けられるように構成された第1継手部材と、
上記第2シャフトに相対回転不能に取り付けられるように構成された第2継手部材と、
上記軸継手装置の軸線が延在する方向における上記第1継手部材と上記第2継手部材との間に配置されて、上記第1シャフトと上記第2シャフトとの間のミスアライメントを吸収するように構成された中間部材と、を備え、
上記第2継手部材は、
上記中間部材に第1締結装置により固定されるように構成されたベース部材と、
上記第2シャフトに相対回転不能に取り付けられるように構成された軸取付部材であって、上記軸線の周方向に沿って延在する長孔を有し、且つ、上記長孔を挿通する第2締結装置により上記ベース部材に着脱可能に固定されるように構成された軸取付部材と、を含む。
【0011】
上記(1)の構成によれば、第2継手部材は、中間部材に第1締結装置により固定されるように構成されたベース部材と、軸線の周方向に沿って延在する長孔を有し、且つ、長孔を挿通する第2締結装置によりベース部材に着脱可能に固定されるように構成された軸取付部材と、を含む。つまり、第2継手部材を、ベース部材と軸取付部材の二つに分割可能であり、中間部材は、長孔を有する軸取付部材ではなく、ベース部材に固定される。このため、中間部材が、上述したミスアライメントを吸収する際に変形し、元の形状に戻ろうとする復元力を生じたとしても、上記復元力は、第1締結装置を介してベース部材に作用する。つまり、長孔を有する軸取付部材に上記復元力が作用することを防止できるので、軸取付部材の滑りを防止することができる。
【0012】
また、上記(1)の構成によれば、軸継手装置は、第2締結装置によるベース部材と軸取付部材の固定を解除し、第2締結装置が長孔を挿通する位置をずらすように、軸取付部材をベース部材に対して相対回転させた後に、第2締結装置によりベース部材と軸取付部材を固定することで、ベース部材に対する軸取付部材の相対回転位相を容易に調整可能である。ベース部材は、第1シャフトに相対回転不能に取り付けられた第1継手部材に、中間部材を介して固定されている。また、軸取付部材は、第2シャフトに相対回転不能に取り付けられている。このため、ベース部材に対する軸取付部材の相対回転位相を調整することで、第1シャフトに対する第2シャフトの相対回転位相を調整可能である。
【0013】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の軸継手装置であって、上記ベース部材および上記軸取付部材のうちの一方の部材は、上記軸線が延在する方向において他方の端面に対向する端面から上記軸線と同軸状になるように突出し、且つ、上記軸線に直交する断面が円形状に形成された突出軸部を含み、上記ベース部材および上記軸取付部材のうちの他方の部材は、上記他方の端面に設けられ、且つ、上記突出軸部が嵌合するように構成されるとともに、上記軸線に直交する断面が円形状に形成された内周面を有する嵌合孔部を含む。
【0014】
上記(2)の構成によれば、軸取付部材は、上記突出軸部が上記嵌合孔部に嵌合することで、軸取付部材の軸心とベース部材の軸心との位置合わせが行われるため、軸取付部材の軸心のベース部材の軸心に対する偏芯を防止することができる。軸取付部材の軸心のベース部材の軸心に対する偏芯を防止する構成にすることで、作業者は、ベース部材に対する軸取付部材の相対回転位相を調整する作業をより容易に行うことができる。
【0015】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の軸継手装置であって、上記一方の部材における上記他方の端面に対向する上記端面は、上記突出軸部よりも外周側に位置し、上記軸線に交差する方向に沿って延在する軸部側端面を含み、上記他方の部材における上記他方の端面は、上記嵌合孔部よりも外周側に位置し、上記軸線に交差する方向に沿って延在する孔部側端面を含み、上記一方の部材および上記他方の部材は、上記軸部側端面と上記孔部側端面とが当接配置されるように構成された。
【0016】
上記(3)の構成によれば、第2継手部材(ベース部材および取付部材)は、突出軸部よりも外周側に位置する軸部側端面と、嵌合孔部よりも外周側に位置する孔部側端面とが当接配置されることで、第2継手部材の強度(剛性)を高めることができる。また、上記(3)の構成によれば、ベース部材および取付部材は、軸部側端面と孔部側端面とが当接配置されるため、軸取付部材の軸心のベース部材の軸心に対する偏角を防止することができる。軸取付部材の軸心のベース部材の軸心に対する偏角を防止する構成にすることで、作業者は、ベース部材に対する軸取付部材の相対回転位相を調整する作業をより容易に行うことができる。
【0017】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)~(3)の何れかに記載の軸継手装置であって、上記中間部材は、上記軸線に交差する方向に沿って延在し、上記軸線に交差する方向に沿って弾性撓み可能に構成された少なくとも一つの板ばね部材を含む。
【0018】
上記(4)の構成によれば、少なくとも一つの板ばね部材は、軸線に交差する方向に沿って弾性撓み可能に構成されているので、軸継手装置は、板ばね部材を弾性的に撓ませることで、第1シャフトと第2シャフトの軸心間のミスアライメントを吸収することができる。
【0019】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の軸継手装置であって、上記少なくとも一つの板ばね部材は、上記第1継手部材に締結されるように構成された第1の締結部と、上記ベース部材に締結されるように構成された第2の締結部と、を含む。
【0020】
上記(5)の構成によれば、板ばね部材は、第1の締結部で第1継手部材に締結され、第2の締結部でベース部材に締結される。上記板ばね部材を備える軸継手装置は、いわゆるシングルディスクタイプの軸継手である。このような軸継手装置は、軸線の延在する方向における全長を短いものにすることができるため、第1シャフトと第2シャフトとの間の隙間が狭くても設置可能である。
【0021】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)~(5)の何れかに記載の軸継手装置であって、上記第1継手部材は、上記軸線に交差する方向に沿って延在する第1フランジ部を含み、上記第1フランジ部は、第3締結装置により上記中間部材に締結されるように構成された第1継手側締結部と、上記中間部材側の端面に形成される上記第1締結装置が緩く嵌入可能に構成された第1逃げ凹部と、を含む。
【0022】
上記(6)の構成によれば、第1継手部材は、第1フランジの第1継手側締結部において中間部材に締結される。また、第1継手部材は、上記第1フランジの中間部材側の端面に形成された第1逃げ凹部に、第1締結装置が緩く嵌入可能に構成されている。第1逃げ凹部を設けることで、中間部材と第1フランジとの間の間隔を小さくすることができる。中間部材と第1フランジとの間の間隔を小さくすることで、軸継手装置の全長を短いものにできるとともに、第1継手部材から回転力が伝達される中間部材の、第1継手部材に対する応答性を向上させることができる。
【0023】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載の軸継手装置であって、上記ベース部材は、上記軸線に交差する方向に沿って延在する第2フランジ部を含み、上記第2フランジ部は、上記第1締結装置により上記中間部材に締結されるように構成された第2継手側締結部と、上記中間部材側の端面に形成される上記第3締結装置が緩く嵌入可能に構成された第2逃げ凹部と、を含む。
【0024】
上記(7)の構成によれば、ベース部材は、第2フランジ部の第2継手側締結部において中間部材に締結される。また、ベース部材は、上記第2フランジ部の中間部材側の端面に形成された第2逃げ凹部に、第3締結装置が緩く嵌入可能に構成されている。第2逃げ凹部を設けることで、中間部材と第2フランジとの間の間隔を小さくすることができる。中間部材と第2フランジとの間の間隔を小さくすることで、軸継手装置の全長を短いものにできるとともに、中間部材から回転力が伝達される第2継手部材の、中間部材に対する応答性を向上させることができる。
【0025】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)~(7)の何れかに記載の軸継手装置であって、上記中間部材は、上記第1継手部材および上記ベース部材に対して上記軸線が延在する方向に隙間を有して固定されるように構成された。
【0026】
上記(8)の構成によれば、中間部材は、第1継手部材およびベース部材に対して軸線が延在する方向に隙間を有して固定される。このため、中間部材は、第1継手部材やベース部材に拘束されないので、回転力を伝達する際に生じる第1シャフトと第2シャフトの軸心間のミスアライメントを迅速に吸収することができる。
【0027】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)~(8)の何れかに記載の軸継手装置であって、上記第1シャフトおよび上記第2シャフトのうちの一方は、ディーゼル機関の駆動シャフトを含み、上記第1シャフトおよび上記第2シャフトのうちの他方は、上記ディーゼル機関に液体燃料を圧送するように構成された燃料圧送ポンプの従動シャフトを含む。
上記(9)の構成によれば、ディーゼル機関の駆動シャフトと燃料圧送ポンプの従動シャフトとの回転位相を調整する作業を容易に行うことができる。
【0028】
(10)本発明の少なくとも一実施形態にかかる軸継手装置の回転位相調整方法は、
第1シャフトと第2シャフトとの間で回転力を伝達するように構成された軸継手装置の回転位相調整方法であって、
上記軸継手装置は、
上記第1シャフトに相対回転不能に取り付けられるように構成された第1継手部材と、
上記第2シャフトに相対回転不能に取り付けられるように構成された第2継手部材と、
上記軸継手装置の軸線が延在する方向における上記第1継手部材と上記第2継手部材との間に配置されて、上記第1シャフトと上記第2シャフトとの間のミスアライメントを許容するように構成された中間部材と、を備え、
上記第2継手部材は、
上記中間部材に第1締結装置により固定されるように構成されたベース部材と、
上記第2シャフトに相対回転不能に取り付けられるように構成された軸取付部材であって、上記軸線の周方向に沿って延在する長孔を有し、且つ、上記長孔を挿通する第2締結装置により上記ベース部材に着脱可能に固定されるように構成された軸取付部材と、を含み、
上記軸継手装置の回転位相調整方法は、
上記軸取付部材を上記ベース部材に対して相対回転させる相対回転ステップと、
上記相対回転ステップの後に、上記第2締結装置により上記軸取付部材を上記ベース部材に固定する固定ステップと、を備える。
【0029】
上記(10)の方法によれば、軸継手装置の回転位相調整方法は、軸取付部材をベース部材に対して相対回転させる相対回転ステップと、相対回転ステップの後に、第2締結装置により軸取付部材をベース部材に固定する固定ステップと、を備える。軸継手装置の回転位相調整方法は、相対回転ステップで第2締結装置が長孔を挿通する位置をずらすように、軸取付部材をベース部材に対して相対回転させた後に、固定ステップで第2締結装置によりベース部材と軸取付部材を固定する。このような軸継手装置の回転位相調整方法は、ベース部材に対する軸取付部材の相対回転位相を容易に調整可能であり、ひいては第1シャフトに対する第2シャフトの相対回転位相を容易に調整可能である。
【0030】
また、上記(10)の方法によれば、中間部材は、長孔を有する軸取付部材ではなく、ベース部材に固定される。このため、中間部材が、上述したミスアライメントを吸収する際に変形し、元の形状に戻ろうとする復元力を生じたとしても、上記復元力は、第1締結装置を介してベース部材に作用する。つまり、長孔を有する軸取付部材に上記復元力が作用することを防止できるので、軸取付部材の滑りを防止することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、一対のシャフト間の相対回転位相を容易に調整可能であるとともに、軸継手装置における滑りの発生を防止することができる軸継手装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態にかかる軸継手装置を備えるディーゼル機関の構成を概略的に示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる軸継手装置の概略分解斜視図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる軸継手装置をポンプ駆動ユニット側から視た状態を概略的に示す概略図である。
図4図3に示すA-A線矢視の断面図である。
図5図3に示すB-B線矢視の断面図である。
図6】本発明の一実施形態に軸継手装置を概略的に示す一部切り欠き斜視断面図である。
図7】本発明の他の実施形態にかかる軸継手装置の概略分解斜視図である。
図8】本発明の一実施形態にかかる軸継手装置の回転位相調整方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態にかかる軸継手装置を備えるディーゼル機関の構成を概略的に示す概略構成図である。
幾つかの実施形態にかかる軸継手装置1は、図1に示されるように、第1シャフト11と第2シャフト13に連結されて、第1シャフト11と第2シャフト13との間で回転力を伝達するように構成されている。
図示される実施形態では、図1に示されるように、軸継手装置1は、ディーゼル機関10に搭載される。第1シャフト11は、従動シャフト11Aを含み、第2シャフト13は、駆動シャフト13Aを含む。
【0035】
ディーゼル機関10は、図1に示されるように、シリンダ101とシリンダ101の内部に配置されたピストン102により区画される燃焼室103と、従動シャフト11Aを備える燃料圧送ポンプ12と、駆動シャフト13Aを備えるポンプ駆動ユニット14と、先端面同士が対向して配置される従動シャフト11Aと駆動シャフト13Aに連結されて、従動シャフト11Aと駆動シャフト13Aとの間で回転力を伝達するように構成された上記軸継手装置1と、を備える。
【0036】
軸継手装置1は、図1に示されるように、軸線LAの延在する方向における一端が従動シャフト11Aに連結され、軸線LAの延在する方向における他端が駆動シャフト13Aに連結されている。
図示される実施形態では、図1に示されるように、従動シャフト11Aの軸線LBおよび駆動シャフト13Aの軸線LCの夫々は、軸継手装置1の軸線LAに対して同軸上に配置されている。
【0037】
なお、従動シャフト11Aや駆動シャフト13Aは、後述する中間部材6により軸心間のミスアライメントを許容することができる範囲(許容可能範囲)内であれば、従動シャフト11Aの軸線LBや駆動シャフト13Aの軸線LCが、軸線LAに対して偏芯や偏角をしていてもよく、上記許容可能範囲内の偏芯や偏角であれば、軸線LBや軸線LCは、軸線LAに対して同軸上に配置されているものとする。
【0038】
駆動シャフト13Aは、燃焼室103において発生させた駆動力が伝達されるように構成されており、燃焼室103から伝達された駆動力により軸線LCを中心として回転可能に構成されている。従動シャフト11Aは、図1に示されるように、駆動シャフト13Aから軸継手装置1を介して伝達された駆動力(回転力)により軸線LBを中心として回転可能に構成されている。
【0039】
換言すると、燃料圧送ポンプ12は、図1に示されるように、ポンプ駆動ユニット14より駆動力を伝達されるとともに、伝達された駆動力により従動シャフト11Aが回転されるように構成されている。
【0040】
燃料圧送ポンプ12は、図1に示されるように、高圧の液体燃料をディーゼル機関10に圧送するように構成されている。図示される実施形態では、燃料圧送ポンプ12は、図1に示されるように、ポンプ駆動ユニット14から伝達された駆動力(回転力)によって機械的に動作するように構成されている。
【0041】
図1に示される実施形態では、燃料圧送ポンプ12(機械式燃料圧送ポンプ)は、図1に示されるように、シリンダ121およびプランジャ122に画定される少なくとも一つ(図1では六つ)の圧送室123を内部に画定するように構成されている。燃料圧送ポンプ12(機械式燃料圧送ポンプ)は、従動シャフト11Aの回転に連動して昇降するプランジャ122によって、圧送室123内に送られたディーゼル機関10に使用される液体燃料を、噴射圧力に相当する高圧に加圧するとともに、圧送室123内で加圧された液体燃料を燃焼室103に圧送するように構成されている。
【0042】
ディーゼル機関10は、燃料圧送ポンプ12から燃焼室103に圧送され、燃焼室103内に噴射された液体燃料が自然発火することで、駆動シャフト13Aを回転させる上述した駆動力を発生させる。
【0043】
燃料圧送ポンプ12が上述した機械式燃料圧送ポンプである場合には、液体燃料の燃焼室103への噴射タイミングが、従動シャフト11Aの回転位相に応じて決まるようになっている。或る実施形態では、燃料圧送ポンプ12は、ピストン102が圧縮上死点の手前の所定位置に位置しているときに、燃焼室103内に液体燃料を噴射させるように、従動シャフト11Aに対する駆動シャフト13Aの相対回転位相が所定角度になるように調整されている。
【0044】
図2は、本発明の一実施形態にかかる軸継手装置の概略分解斜視図である。
以下の説明では、軸継手装置1の軸線LAの延在する方向をX軸方向とし、X軸方向の一方側をX1側とし、X軸方向の他方側をX2側として説明する。また、燃料圧送ポンプ12が位置する側を上記X1側とし、ポンプ駆動ユニット14が位置する側を上記X2側とする。
【0045】
幾つかの実施形態にかかる軸継手装置1は、図2に示されるように、X1側から順に、従動側継手部材2と、中間部材6、駆動側継手部材3と、を備える。駆動側継手部材3は、X1側から順に、ベース部材4と、軸取付部材5と、を含む。つまり、中間部材6は、X軸方向における従動側継手部材2とベース部材4の間に配置され、ベース部材4は、X軸方向における中間部材6と軸取付部材5の間に配置されている。
【0046】
図2に示されるように、従動側継手部材2、中間部材6、ベース部材4および軸取付部材5の夫々の軸線は、軸継手装置1の軸線LAに対して同軸上に配置されている。また、従動側継手部材2、中間部材6、ベース部材4および軸取付部材5の夫々は、取り付け状態では、X軸方向に隣り合うもの同士が締結装置7A~7Cにより互いに固定されている。
【0047】
図3は、本発明の一実施形態にかかる軸継手装置をポンプ駆動ユニット側から視た状態を概略的に示す概略図である。図4は、図3に示すA-A線矢視の断面図である。図5は、図3に示すB-B線矢視の断面図である。
【0048】
図4に示されるように、従動側継手部材2は、従動シャフト11Aに相対回転不能に取り付けられるように構成されている。
図示される実施形態では、従動側継手部材2は、図4に示されるように、X軸方向に交差(直交)する方向に沿って延在するフランジ部21と、フランジ部21の中央からX軸方向に沿ってX2側に突出する突出部22と、を含む。従動側継手部材2の中心には、軸線LAに沿って貫通するシャフト挿入孔23が形成されている。
【0049】
シャフト挿入孔23は、図4に示されるように、X1側からX2側に向かうにつれて徐々に内径が小さくなるようなテーパ面231を有する。テーパ面231は、X軸方向における全長にわたり設けられている。
従動シャフト11Aの先端部111は、図4に示されるように、X1側(基端側)からX2側(先端側)に向かうにつれて徐々に外径が小さくなるようなテーパ面112を有し、X1側からシャフト挿入孔23に嵌入可能に構成されている。
【0050】
図示される実施形態では、従動シャフト11Aは、図4に示されるように、先端部111の先端面114からX軸方向に沿って凹んで形成されたボルト孔115(被螺合部)を有する。従動シャフト11Aは、先端部111がシャフト挿入孔23に挿入された状態で、ボルト孔115に、X2側から締結部材16(ボルト)の軸部161(螺合部)が螺合することにより、従動側継手部材2に固定される。締結部材16の頭部162は、シャフト挿入孔23のX2側の開口よりも外形寸法が大きいため、従動シャフト11Aの先端部111をシャフト挿入孔23から引き抜けないようになっている。この場合には、従動側継手部材2は、従動シャフト11Aに相対回転不能に取り付けられている。
図示される実施形態では、締結部材16はボルトを含んでいたが、他の幾つかの実施形態では、締結部材16はナットを含んでいてもよい。すなわち、他の幾つかの実施形態では、従動シャフト11Aは、ボルト孔115を有しておらず、シャフト挿入孔23よりX2側に突出する突出部の外周面に形成された雄ネジ部(螺合部)に、締結部材16(ナット)の雌ネジ部(被螺合部)が螺合することにより、従動側継手部材2に固定されるようになっていてもよい。締結部材16(ナット)は、シャフト挿入孔23のX2側の開口よりも外形寸法が大きく構成されている。この場合にも、従動側継手部材2は、従動シャフト11Aに相対回転不能に取り付けられている。なお、図5に示される締結部材16も同様に、ボルトでもナットでもよい。
【0051】
図示される実施形態では、図4に示されるように、従動側継手部材2のシャフト挿入孔23および従動シャフト11Aの先端部111の夫々には、キー溝24、113が形成されている。従動側継手部材2は、キー溝24およびキー溝113の両方に嵌め込まれるキー15を介するキー締結により従動シャフト11Aに相対回転不能に連結されている。
【0052】
図5に示されるように、軸取付部材5(駆動側継手部材3)は、駆動シャフト13Aに相対回転不能に取り付けられるように構成されている。
図示される実施形態では、軸取付部材5は、図5に示されるように、X軸方向に交差(直交)する方向に沿って延在するフランジ部51と、フランジ部51の中央からX軸方向に沿ってX2側に突出するハブ52と、を含む。軸取付部材5の中心には、軸線LAに沿って貫通するシャフト挿入孔53が形成されている。駆動シャフト13Aの先端部131は、図5に示されるように、X2側からシャフト挿入孔53に嵌入可能に構成されている。
【0053】
また、図示される実施形態では、図5に示されるように、軸取付部材5のシャフト挿入孔53および駆動シャフト13Aの先端部131の夫々には、キー溝54、132が形成されている。軸取付部材5は、キー溝54およびキー溝132の両方に嵌め込まれるキー17を介するキー締結により駆動シャフト13Aに相対回転不能に連結されている。
【0054】
駆動シャフト13Aの先端部131は、図3に示されるように、ボルト18の締結力でシャフト挿入孔53の内側寸法を小さくすることにより、軸取付部材5のシャフト挿入孔53から引き抜き不能に固定される。
【0055】
図示される実施形態では、軸取付部材5は、図3に示されるようなX軸方向視において、放射方向に沿って延在して軸取付部材5を周方向に分断するすり割り55が形成されている。軸取付部材5におけるすり割り55により分断された一方の部分(図3中右側)を第1分断部分56とし、他方の部分(図3中左側)を第2分断部分57とする。
図3に示されるように、ハブ52の第1分断部分56には、X軸方向視において、すり割り55の延在する方向に交差(直交)する方向に沿って延在し、ボルト18の軸部181を緩く挿通可能な貫通孔561が形成されている。また、ハブ52の第2分断部分57には、貫通孔561と同軸方向に沿って延在し、ボルト18の軸部181が螺合可能なボルト孔571が形成されている。
【0056】
図3に示されるように、ボルト18の軸部181が貫通孔561を挿通して、ボルト孔571に螺合するとともに、ボルト18の頭部182がハブ52の貫通孔561の開口縁を有する側面521に係止することで、第1分断部分56の端面562と第2分断部分57の端面572との間に形成された隙間を狭くすることができる。この際、シャフト挿入孔53の内側寸法も狭くなるため、駆動シャフト13Aの先端部131は、シャフト挿入孔53に締め付けられて固定される。
【0057】
軸取付部材5は、図3に示されるように、フランジ部51のX2側に位置する段差面511に軸線LAの周方向に沿って延在する少なくとも一つの長孔512を有する。長孔512は、シャフト挿入孔53よりも外周側に設けられる。軸取付部材5は、少なくとも一つの長孔512を挿通する少なくとも一つの締結装置7Aによりベース部材4に着脱可能に固定されるように構成されている。
図示される実施形態では、図3に示されるように、二つの長孔512は、軸線LAを中心として対称に設けられている。
【0058】
図示される実施形態では、締結装置7Aは、図5に示されるように、ボルト70Aと、ベース部材4のボルト孔44と、を含む。ボルト70Aは、少なくとも外周面の一部にねじ部が形成された軸部71Aと、軸部71Aの基端部において軸部71Aよりも大径に形成された頭部72Aと、を備える。
【0059】
ボルト70Aは、X2側から長孔512に軸部71Aが挿通され、長孔512よりもX1側に突出した軸部71Aの先端が、ボルト孔44に螺合することで、ベース部材4に軸取付部材5を固定する。ボルト70Aによる締結を緩めることで、軸取付部材5とベース部材4との固定が解除される。軸取付部材5とベース部材4との固定されていないと、長孔512の周方向における縁部に軸部71Aが接触するまで、軸取付部材5をベース部材4に対して周方向にずらすことができる。つまり、軸取付部材5は、ボルト70Aによる締結を緩めることで、ベース部材4に対する相対回転位相を調整可能である。
なお、ボルト70Aの頭部72Aと軸取付部材5の段差面511の間にワッシャ19を配置してもよい。
【0060】
図示される実施形態では、図5に示されるように、ベース部材4は、軸線LAに交差(直交)する方向に沿って延在するフランジ部40を含む、平板円環状に形成されている。
【0061】
中間部材6は、第1シャフト11と第2シャフト13との間のミスアライメント吸収するように構成されている。図示される実施形態では、中間部材6は、たわみ性および復元性を有する少なくとも一つの弾性部材60を含む。図2、4~6に示される実施形態では、中間部材6は、弾性部材60としてX軸方向に交差(直交)する方向に沿って延在する板ばね部材60Aを含む。
【0062】
板ばね部材60Aは、図2に示されるように、中央に貫通孔65を有する平板環状に形成されており、貫通孔65よりも外周側に、少なくとも一つの従動側ボルト挿通孔61および少なくとも一つの駆動側ボルト挿通孔62を有する。
図示される実施形態では、図2に示されるように、複数の従動側ボルト挿通孔61および複数の駆動側ボルト挿通孔62の夫々は、同周円上に周方向に均等に設けられている。
【0063】
図6は、本発明の一実施形態に軸継手装置を概略的に示す一部切り欠き斜視断面図である。なお、図6では、軸取付部材5を省略して示している。
従動側継手部材2は、図6に示されるように、少なくとも一つの締結装置7Bにより板ばね部材60A(中間部材6)に固定されるように構成されている。ベース部材4は、図6に示されるように、少なくとも一つの締結装置7Cにより板ばね部材60A(中間部材6)に固定されるように構成されている。
【0064】
図示される実施形態では、締結装置7Bは、図6に示されるように、ボルト70Aと同様に軸部71Bおよび頭部72Bを備えるボルト70Bと、従動側継手部材2のボルト孔211と、を含む。ボルト70Bの軸部71Bが板ばね部材60Aの従動側ボルト挿通孔61を挿通し、従動側継手部材2のボルト孔211に螺合することで、従動側継手部材2は板ばね部材60Aに固定される。
【0065】
図示される実施形態では、締結装置7Cは、図6に示されるように、ボルト70Aと同様に軸部71Cおよび頭部72Cを備えるボルト70Cと、ベース部材4のボルト孔41と、を含む。ボルト70Cの軸部71Cが板ばね部材60Aの駆動側ボルト挿通孔62を挿通し、ベース部材4のボルト孔41に螺合することで、ベース部材4は板ばね部材60Aに固定される。
【0066】
板ばね部材60Aは、従動側継手部材2やベース部材4よりも剛性が低く、第1シャフト11と第2シャフト13との間のミスアライメントを吸収するために、撓んだりねじれたりするようになっている。
【0067】
幾つかの実施形態にかかる軸継手装置1は、例えば図2に示されるように、上述した従動側継手部材2(第1の継手部材)と、上述した中間部材6と、上述した駆動側継手部材3(第2の継手部材)と、を備える。上述した駆動側継手部材3は、上述したベース部材4と、上述した軸取付部材5と、を含む。
【0068】
上記の構成によれば、駆動側継手部材3(第2の継手部材)は、中間部材6に締結装置7C(第1締結装置)により固定されるように構成されたベース部材4と、軸線LAの周方向に沿って延在する長孔512を有し、且つ、長孔512を挿通する締結装置7A(第2締結装置)によりベース部材4に着脱可能に固定されるように構成された軸取付部材5と、を含む。つまり、駆動側継手部材3を、ベース部材4と軸取付部材5の二つに分割可能であり、中間部材6は、長孔512を有する軸取付部材5ではなく、ベース部材4に固定される。このため、中間部材6が、上述したミスアライメントを吸収する際に変形し、元の形状に戻ろうとする復元力を生じたとしても、上記復元力は、締結装置7Cを介してベース部材4に作用する。つまり、長孔512を有する軸取付部材5に上記復元力が作用することを防止できるので、軸取付部材5の滑りを防止することができる。
【0069】
また、上記の構成によれば、軸継手装置1は、によるベース部材4と軸取付部材5の固定を解除し、ボルト70A(締結装置7A)の軸部71Aが長孔512を挿通する位置をずらすように、軸取付部材5をベース部材4に対して相対回転させた後に、締結装置7Aによりベース部材4と軸取付部材5を固定することで、ベース部材4に対する軸取付部材5の相対回転位相を容易に調整可能である。ベース部材4は、従動シャフト11Aに相対回転不能に取り付けられた従動側継手部材2に、中間部材6を介して固定されている。また、軸取付部材5は、駆動シャフト13Aに相対回転不能に取り付けられている。このため、ベース部材4に対する軸取付部材5の相対回転位相を調整することで、従動シャフト11Aに対する駆動シャフト13Aの相対回転位相を調整可能である。
【0070】
上述した幾つかの実施形態では、従動側継手部材2を第1の継手部材とし、駆動側継手部材3を第2の継手部材としていたが、駆動側継手部材3を第1の継手部材とし、且つ、従動側継手部材2を第2の継手部材としてもよい。また、上述した幾つかの実施形態では、駆動側継手部材3が、上述したベース部材4と上述した軸取付部材5を含んでいたが、従動側継手部材2が、上述したベース部材4と上述した軸取付部材5を含むようにしてもよい。
【0071】
幾つかの実施形態では、図5に示されるように、上述した軸取付部材5は、X軸方向におけるベース部材4のX2側に位置する端面45に対向する端面513から軸線LAと同軸状になるように突出する突出軸部58を含む。上述したベース部材4は、上記端面45に軸線LAと同軸状になるように設けられるとともに、突出軸部58が嵌合するように構成された嵌合孔部46と、を含む。突出軸部58の外周面581と嵌合孔部46の内周面461の夫々は、軸線LAに直交する断面形状(横断面形状)が円形状に形成されている。
【0072】
図示される実施形態では、突出軸部58は、図5に示されるように、嵌合孔部46内に挿入されて、外周面581を嵌合孔部46の内周面461に接触させた状態で、摺動回転可能に構成されている。
【0073】
上記の構成によれば、軸取付部材5は、突出軸部58が嵌合孔部46に嵌合することで、軸取付部材5の軸心とベース部材4の軸心との位置合わせが行われるため、軸取付部材5の軸心のベース部材4の軸心に対する偏芯を防止することができる。軸取付部材5の軸心のベース部材4の軸心に対する偏芯を防止する構成にすることで、作業者は、ベース部材4に対する軸取付部材5の相対回転位相を調整する作業をより容易に行うことができる。
【0074】
上述した幾つかの実施形態では、上述した軸取付部材5が上述した突出軸部58を含み、上述したベース部材4が上述した嵌合孔部46を含むようになっていたが、他の幾つかの実施形態では、上述した軸取付部材5が上述した嵌合孔部46を含み、上述したベース部材4が上述した突出軸部58を含むようにしてもよい。
【0075】
幾つかの実施形態では、図5に示されるように、上述した軸取付部材5の端面513は、突出軸部58よりも外周側に位置し、軸線LAに交差する方向に沿って延在する軸部側端面513Aを含む。上述したベース部材4の端面45は、嵌合孔部46よりも外周側に位置し、軸線LAに交差する方向に沿って延在する孔部側端面45Aを含む。ベース部材4および軸取付部材5は、孔部側端面45Aと軸部側端面513Aとが当接配置されるように構成された。
【0076】
図示される実施形態では、図5に示されるように、軸部側端面513Aは、突出軸部58の外周面581の基端側縁部に隣接している内周縁近傍部分を含む。孔部側端面45Aは、嵌合孔部46の開口縁に隣接している内周縁近傍部分を含む。
【0077】
上記の構成によれば、駆動側継手部材3(ベース部材4および軸取付部材5)は、突出軸部58よりも外周側に位置する軸部側端面513Aと、嵌合孔部46よりも外周側に位置する孔部側端面45Aとが当接配置されることで、駆動側継手部材3の強度(剛性)を高めることができる。また、上記の構成によれば、ベース部材4および軸取付部材5は、軸部側端面513Aと孔部側端面45Aとが当接配置されるため、軸取付部材5の軸心のベース部材4の軸心に対する偏角を防止することができる。軸取付部材5の軸心のベース部材4の軸心に対する偏角を防止する構成にすることで、作業者は、ベース部材4に対する軸取付部材5の相対回転位相を調整する作業をより容易に行うことができる。
【0078】
幾つかの実施形態では、上述した中間部材6は、軸線LAに交差する方向に沿って延在し、少なくとも軸線LAに交差する方向に沿って弾性撓み可能に構成された少なくとも一つの板ばね部材60Aを含む。図示される実施形態では、板ばね部材60Aは、X軸方向に沿って、および軸線LAの周方向に沿っても弾性撓み可能に構成されている。また、少なくとも一つの板ばね部材60Aは、軸線LAに交差する方向に沿って延在し、且つX軸方向に積層される複数の板ばねを含んでいてもよい。
【0079】
上記の構成によれば、少なくとも一つの板ばね部材60Aは、軸線LAに交差する方向に沿って弾性撓み可能に構成されているので、軸継手装置1は、板ばね部材60Aを弾性的に撓ませることで、従動シャフト11Aと駆動シャフト13Aの軸心間のミスアライメントを吸収することができる。
【0080】
幾つかの実施形態では、上述した従動側継手部材2は、軸線LAに交差(直交)する方向に沿って延在する上述したフランジ部21(第1フランジ部)を含む。上述したフランジ部21は、図4に示されるように、締結装置7Bにより中間部材6に締結されるように構成されたボルト孔211(第1継手側締結部)を含む。また、上述したフランジ部21は、図5に示されるように、中間部材6側の端面213に形成されるボルト70C(第1締結装置)が緩く嵌入可能に構成された第1逃げ凹部212を含む。
図示される実施形態では、図5に示されるように、第1逃げ凹部212は、円筒状の内部空間を画定しており、内部にボルト70Cの頭部72Cが収容されるようになっている。
【0081】
上記の構成によれば、従動側継手部材2は、フランジ部21のボルト孔211(第1継手側締結部)において中間部材6に締結される。また、従動側継手部材2は、フランジ部21の中間部材6側の端面213に形成された第1逃げ凹部212に、ボルト70C(第1締結装置)が緩く嵌入可能に構成されている。第1逃げ凹部212を設けることで、中間部材6とフランジ部21との間の間隔を小さくすることができる。中間部材6とフランジ部21との間の間隔を小さくすることで、軸継手装置1の全長を短いものにできるとともに、従動側継手部材2から回転力が伝達される中間部材6の、従動側継手部材2に対する応答性を向上させることができる。
【0082】
幾つかの実施形態では、上述したベース部材4は、軸線LAに交差(直交)する方向に沿って延在する上述したフランジ部40(第2フランジ部)を含む。上述したフランジ部40は、図5に示されるように、締結装置7Cにより中間部材6に締結されるように構成されたボルト孔41(第2継手側締結部)を含む。また、上述したフランジ部40は、図4に示されるように、中間部材6側の端面47に形成されるボルト70B(第3締結装置)が緩く嵌入可能に構成された第2逃げ凹部42と、を含む。
図示される実施形態では、図4に示されるように、第2逃げ凹部42は、円筒状の内部空間を画定しており、内部にボルト70Bの頭部72Bが収容されるようになっている。また、第2逃げ凹部42は、端面45に向かって貫通するボルト締結用治具挿入用の孔43が連通している。
【0083】
上記の構成によれば、ベース部材4は、フランジ部40のボルト孔41(第2継手側締結部)において中間部材6に締結される。また、ベース部材4は、フランジ部40の中間部材6側の端面47に形成された第2逃げ凹部42に、ボルト70B(第3締結装置)が緩く嵌入可能に構成されている。第2逃げ凹部42を設けることで、中間部材6とフランジ部40との間の間隔を小さくすることができる。中間部材6とフランジ部40との間の間隔を小さくすることで、軸継手装置1の全長を短いものにできるとともに、中間部材6から回転力が伝達されるベース部材4(駆動側継手部材3)の、中間部材6に対する応答性を向上させることができる。
【0084】
幾つかの実施形態では、上述した中間部材6は、従動側継手部材2およびベース部材4に対してX軸方向に隙間を有して固定されるように構成された。換言すると、軸継手装置1は、X軸方向における中間部材6と従動側継手部材2との間にスペーサ8を設け、且つ、X軸方向における中間部材6とベース部材4との間にスペーサ8を設けた。
【0085】
上記の構成によれば、中間部材6は、従動側継手部材2およびベース部材4に対して軸線LAが延在する方向に隙間を有して固定される。このため、中間部材6は、従動側継手部材2およびベース部材4に拘束されないので、回転力を伝達する際に生じる第1シャフト11と第2シャフト13の軸心間のミスアライメントを迅速に吸収することができる。
【0086】
上述したように、幾つかの実施形態では、図1に示されるように、上述した第1シャフト11および上述した第2シャフト13のうちの一方は、ポンプ駆動ユニット14(ディーゼル機関10)の駆動シャフト13Aを含む。上述した第1シャフト11および上述した第2シャフト13のうちの他方は、燃焼室103(ディーゼル機関10)に液体燃料を圧送するように構成された燃料圧送ポンプ12の従動シャフト11Aを含む。この場合には、ポンプ駆動ユニット14(ディーゼル機関10)の駆動シャフト13Aと燃料圧送ポンプ12の従動シャフト11Aとの回転位相を調整する作業を容易に行うことができる。
【0087】
上述したように、幾つかの実施形態では、少なくとも一つの板ばね部材60Aは、図6に示されるように、上述した従動側継手部材2に締結されるように構成された第1の締結部63と、上述したベース部材4に締結されるように構成された第2の締結部64と、を含む。
図示される実施形態では、第1の締結部63は、従動側ボルト挿通孔61を含む、第2の締結部64は、駆動側ボルト挿通孔62を含む。
【0088】
上記の構成によれば、板ばね部材60Aは、第1の締結部63で従動側継手部材2に締結され、第2の締結部64でベース部材4に締結される。つまり、第1の締結部63および第2の締結部64を含む板ばね部材60Aを備える軸継手装置1は、いわゆるシングルディスクタイプの軸継手である。このような軸継手装置1は、軸線LAの延在する方向における全長を短いものにすることができるため、第1シャフト11と第2シャフト13との間の隙間が狭くても設置可能である。
【0089】
図7は、本発明の他の実施形態にかかる軸継手装置の概略分解斜視図である。
幾つかの実施形態では、図7に示されるように、中間部材6は、X1側から順に、締結装置7Bを介して従動側継手部材2に固定されるように構成された第1の板ばね部材60Bと、締結装置7Dを介して第1の板ばね部材60Bに固定されるように構成された連結部材9と、締結装置7Eを介して連結部材9に固定されるように構成されるとともに、締結装置7Cを介してベース部材4に固定されるように構成され第2の板ばね部材60Cと、を含む。つまり、図7に示される軸継手装置1は、いわゆるダブルディスクタイプの軸継手である。締結装置7Dおよび締結装置7Eは、締結装置7Bや7Cと同様の構成を有している。
【0090】
図8は、本発明の一実施形態にかかる軸継手装置の回転位相調整方法の一例を示すフロー図である。
幾つかの実施形態にかかる軸継手装置の回転位相調整方法100は、上述した軸継手装置1における軸取付部材5のベース部材4に対する相対回転位相の調整方法である。軸継手装置の回転位相調整方法100は、図8に示されるように、軸取付部材5をベース部材4に対して相対回転させる相対回転ステップS101と、相対回転ステップS101の後に、締結装置7Aにより軸取付部材5をベース部材4に固定する固定ステップS102と、を備える。
【0091】
図示される実施形態では、図8に示されるように、相対回転ステップS101の前に、締結装置7Aによるベース部材4と軸取付部材5との固定を解除する固定解除ステップS201をさらに備える。固定解除ステップS201では、固定解除ステップS201よりも前に、ベース部材4と軸取付部材5とを固定している締結装置7Aのボルト70Aを緩めることが行われる。ボルト70Aを緩めることで、軸取付部材5はベース部材4に対して相対回転可能な状態になる。
【0092】
上記の方法によれば、軸継手装置の回転位相調整方法100は、軸取付部材5をベース部材4に対して相対回転させる相対回転ステップS101と、相対回転ステップS101の後に、締結装置7Aにより軸取付部材5をベース部材4に固定する固定ステップS102と、を備える。軸継手装置の回転位相調整方法100は、相対回転ステップS101でボルト70Aの軸部71A(締結装置7A)が長孔512を挿通する位置をずらすように、軸取付部材5をベース部材4に対して相対回転させた後に、固定ステップS102で締結装置7Aによりベース部材4と軸取付部材5を固定する。このような軸継手装置の回転位相調整方法100は、ベース部材4に対する軸取付部材5の相対回転位相を容易に調整可能であり、ひいては第1シャフト11に対する第2シャフト13の相対回転位相を容易に調整可能である。
【0093】
また、上記の方法によれば、中間部材6は、長孔512を有する軸取付部材5ではなく、ベース部材4に固定される。このため、中間部材6が、上述したミスアライメントを吸収する際に変形し、元の形状に戻ろうとする復元力を生じたとしても、上記復元力は、締結装置7Cを介してベース部材に作用する。つまり、長孔512を有する軸取付部材5に上記復元力が作用することを防止できるので、軸取付部材5の滑りを防止することができる。
【0094】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0095】
1 軸継手装置
2 従動側継手部材
21 フランジ部
22 突出部
23 シャフト挿入孔
24 キー溝
3 駆動側継手部材
4 ベース部材
5 軸取付部材
51 フランジ部
52 ハブ
53 シャフト挿入孔
54 キー溝
55 すり割り
56 第1分断部分
57 第2分断部分
6 中間部材
60 弾性部材
60A 板ばね
7A~7E 締結装置
8 スペーサ
9 連結部材
10 ディーゼル機関
11 第1シャフト
11A 従動シャフト
12 燃料圧送ポンプ
13 第2シャフト
13A 駆動シャフト
14 ポンプ駆動ユニット
15,17 キー
16 締結部材
18 ボルト
101 シリンダ
102 ピストン
103 燃焼室
121 シリンダ
122 プランジャ
123 圧送室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8