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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】洋上施設用浮体構造物及びその設置構造
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/44 20060101AFI20230714BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20230714BHJP
【FI】
B63B35/44 C
B63B35/00 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019124680
(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公開番号】P2021011124
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】若林 正憲
(72)【発明者】
【氏名】武藤 香穂
(72)【発明者】
【氏名】金子 研一
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0259050(US,A1)
【文献】特開2001-165032(JP,A)
【文献】国際公開第2019/102434(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/220878(WO,A1)
【文献】特開2016-032948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/50,35/00-35/70
F03D 1/00-80/80
E01D 1/00-24/00
A01K 61/60-61/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上施設を備えたセミサブ型の中央浮体と、
前記中央浮体の周囲に配設された3つ以上のセミサブ型の外側浮体と、
前記中央浮体と前記外側浮体をそれぞれ揺動可能に連結する内側連結部材と、
隣り合う前記外側浮体同士を連結する外側連結部材と、を備え、
前記外側連結部材は、両側の前記外側浮体に剛結合された少なくとも1つの第一外側連結部材と、両側の前記外側浮体と揺動可能に保持された第二外側連結部材とを備え
前記内側連結部材及び前記外側連結部材は、鋼製とされており、
前記内側連結部材は、両端が水平な軸部を介して前記中央浮体と前記外側浮体とにそれぞれ接続され、
前記第二外側連結部材は、両端が水平な軸部を介して隣り合う前記外側浮体にそれぞれ接続されている、
ことを特徴とする洋上施設用浮体構造物。
【請求項2】
前記洋上施設は風力発電機である請求項1に記載された洋上施設用浮体構造物。
【請求項3】
前記中央浮体と前記外側浮体は略円弧版状のセグメントを組み合わせてそれぞれ円筒状に形成されている請求項1または2に記載された洋上施設用浮体構造物。
【請求項4】
前記外側浮体は4つ以上配設され、前記外側浮体を両側で剛結合した前記第一外側連結部材が対向して一対配設され、他の前記外側連結部材は前記第二外側連結部材である請求項1から3のいずれか1項に記載された洋上施設用浮体構造物。
【請求項5】
前記中央浮体は筒状の補強支持体で囲われており、前記補強支持体は下部から上部に向けて拡径するテーパ状に形成され、前記中央浮体は前記補強支持体に挿入された部分がテーパ状に形成されている請求項1から4のいずれか1項に記載された洋上施設用浮体構造物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された洋上施設用浮体構造物において、
前記第一外側連結部材を洋上で波の進行方向に直交する向きに配設したことを特徴とする洋上施設用浮体構造物の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば洋上に浮かべた風車等の洋上施設を備えた洋上施設用浮体構造物及びその設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置は世界的に導入普及が進んでいる。近年では、従来の陸上風力発電装置のみならず、 海洋上に風車を含む風力発電装置を設置した洋上風力発電装置が急成長している。洋上風力発電装置は陸上風力発電装置と比較して、風の乱れが小さく大型風車の導入が容易であり、景観や騒音等への影響が小さいといったメリットがある。
【0003】
洋上風力発電装置は、海底に直接風力発電装置を設置する着床式と、海上に浮体として浮かべて鎖やワイヤ等で固定した浮体式とがある。海面から海底まで水深50メートルを超える場合、設置コストや発電効率の面から浮体式の風力発電装置の方が好適とされているが、波などの気象条件の影響を受け易いというデメリットがある。さらに浮体式は、縦長で低重心化するスパー型と、水平方向に支え部を配設したセミサブ型との2つの洋上風力発電装置が実用化されている。
【0004】
現行の洋上風力発電装置では、大型風車は強風や波浪等によって生じる大きな傾きに耐え得る設計になっていない。図10に示す浮体構造物100は、風力発電装置101を備えた中央浮体102とその周囲に設けた複数の外側浮体103とが連結部材104によって互いに連結されている。そのため、洋上で風や波浪を受けると浮体構造物100全体が傾いてしまうことになるため、風や波浪による傾斜を数度以内に抑制できる安定性の確保が求められている。
【0005】
また、特許文献1に記載されたセミサブ型の洋上施設用浮体構造物は、セミサブ型の中央浮体とその周囲に配設された3つの外側浮体とを備え、中央浮体と外側浮体とが第1連結部材によって放射状に連結され、外側浮体同士が第2連結部材によって連結されている。そして、水深が浅い区域では喫水を浅くし水深が深い区域では喫水を深くするようバラストを調整して、浮体構造物の動揺を抑制して安定性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-280301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された洋上施設用浮体構造物は、中央浮体と外側浮体が第1連結部材と第2連結部材によって互いに剛結合されている。そのため、中央浮体または外側浮体が上下動すると他の外側浮体や中央浮体が引っ張られて傾斜し、浮体構造物全体が傾斜してしまう。そのため、洋上において浮体構造物を水深の深い区域に設置すると、喫水を深くしたとしても風や波浪によって傾斜してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、水深の深さに関わらず風や波浪によって洋上施設が大きく傾斜することを抑制できるようにした洋上施設用浮体構造物及びその設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による洋上施設用浮体構造物は、洋上施設を備えたセミサブ型の中央浮体と、中央浮体の周囲に配設された3つ以上のセミサブ型の外側浮体と、中央浮体と前記外側浮体をそれぞれ揺動可能に連結する内側連結部材と、隣り合う外側浮体同士を連結する外側連結部材と、を備え、外側連結部材は、両側の外側浮体に剛結合された少なくとも1つの第一外側連結部材と、両側の外側浮体と揺動可能に保持された第二外側連結部材とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、外側浮体を剛結合した第一外側連結部材を波の進行方向に略直交する方向に配設することで、高波を受けた際に第一外側連結部材及びその両側に固定された外側浮体が一体に上下動し、中央浮体や他の外側浮体は揺動可能な第二外側連結部材や内側連結部材を介して個々に順次上下動するため、中央浮体や他の外側浮体に引っ張られて傾斜することがなく、洋上施設用浮体構造物は鉛直性を維持できる。
【0010】
洋上施設は風力発電機であることが好ましい。
また、中央浮体と外側浮体は略円弧版状のセグメントを組み合わせてそれぞれ円筒状に形成されていてもよい。
セグメントを組み合わせて円筒状に形成したものを中央浮体や外側浮体として採用できる。
【0011】
また、外側浮体は4つ以上配設され、外側浮体を両側で剛結合した第一外側連結部材が対向して一対配設され、他の外側連結部材は第二外側連結部材であることが好ましい。
高波を受けた際に、前側の第一外側連結部材及びその両側に固定された外側浮体が一体に上下動し、次いで中央浮体の上下動を介して対向する後側の第一外側連結部材及びその両側に固定された外側浮体が一体に上下動する。これらの動作に連動して一対の第二外側連結部材が上下方向に傾斜して揺動することで、一対の第一外側連結部材及び外側浮体が順次上下動する動作を許容する。そのため、洋上施設用浮体構造物は傾斜することがなく鉛直性を維持できる。
【0012】
また、中央浮体は筒状の補強支持体で囲われており、補強支持体は下部から上部に向けて拡径するテーパ状に形成され、中央浮体は補強支持体に挿入された部分がテーパ状に形成されていてもよい。
洋上施設を有する中央浮体のテーパ状部分はテーパ状の補強支持体に納まるため、安定して支持できる。
【0013】
本発明による洋上施設用浮体構造物の設置構造は、上述した洋上施設用浮体構造物において、第一外側連結部材を洋上で波の進行方向に直交する向きに配設したことを特徴とする。
本発明によれば、洋上施設用浮体構造物の第一外側連結部材を波の進行方向に直交する向きに配設したため、第一外側連結部材及び剛結した外側浮体に続いて中央浮体と他の外側浮体を個々に上下動させることができて、高波による洋上施設用浮体構造物の傾斜を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による洋上施設用浮体構造物及びその設置構造は、外側浮体と剛結した外側連結部材を波の方向に略直交する向きに配設することで、風や波浪が大きくても洋上施設用浮体構造物が傾斜することを抑制して安定して鉛直性を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による洋上風力発電装置の正面図である。
図2図1に示す洋上風力発電装置の側面図である。
図3】洋上風力発電装置の平面図である。
図4】内側連結部材と中央浮体との連結構造を示すもので、(a)は要部分解図、(b)は連結状態の要部平面図である。
図5】高波を受けた洋上風力発電装置をA-A線方向から見た図である。
図6】洋上風力発電装置の浮体基礎部をB-B線方向から見た図である。
図7】高波を受けた洋上風力発電装置をB-B線方向から見た図である。
図8】変形例による洋上風力発電装置の平面図である。
図9】中央浮体及び補強支持体の変形例を示す図である。
図10】従来の洋上風力発電装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態による洋上風力発電装置1について添付図面により説明する。
図1図7は本発明の実施形態による洋上風力発電装置1を示すものである。図1乃至図3に示す洋上風力発電装置1は、海上や湖上等に設置して浮遊状態で使用するセミサブ型の洋上施設用浮体構造物である。セミサブ型とは洋上風力発電装置1が水中に一部没した半潜水型または半没水型の装置である。
【0017】
この洋上風力発電装置1は例えば海上に設置されており、上部に風車2を有するタワー5が連結された例えば円柱型の中央浮体3と、中央浮体3の周囲に配設された例えば円柱型の4つの外側浮体4とを備えている。風車2の羽根の回転による風力発電機は風車2内に設置してもよいし、陸地に設置してもよい。
中央浮体3及び外側浮体4は一般的に鋼製であるが、コンクリート製でもよい。中央浮体3及び外側浮体4は、例えば四角形板状で略円弧版状に湾曲されたセグメントを継手を介してリング状に連結すると共に上下方向に連結することで構築してもよい。セグメントは鋼製セグメント、RCセグメントのいずれで製作してもよい。風車2を設けたタワー5も同様にセグメントで構築してもよい。
【0018】
図3において、4本の外側浮体4は例えば中央浮体3を中心に置いた正方形の各角部に相当する位置に設置されている。中央浮体3の外周面は所定長さに亘って円筒状の補強支持体6によって覆われている。この場合、補強支持体6は中央浮体3に固定ボルト等で連結されていることが好ましい。
しかも、中央浮体3の補強支持体6と4つの外側浮体4とは内側連結部材7によってそれぞれ連結されている。また、隣接する外側浮体4同士は外側連結部材8によってそれぞれ連結されている。図3において、各外側浮体4は波が押し寄せる右側上から外側浮体4a、外側浮体4b、外側浮体4c、外側浮体4dで示すことがある。なお、中央浮体3及び外側浮体4と、これらを互いに連結する内側連結部材7及び外側連結部材8は浮体基部9を構成する。内側連結部材7及び外側連結部材8は例えば鋼製とされている。
【0019】
図4(a)、(b)に示すように、内側連結部材7は例えば棒状の鋼材からなり、その両端部に補強支持体6または外側浮体4にそれぞれ連結するための貫通孔7aを有する第一連結片7bが形成されているが、図では一方の第一連結片7bのみを開示している。補強支持体6及び外側浮体4には突起状の固定部10が連結され、固定部10の端部には断面略コの字状に突出する2片に貫通孔10aを有する第二連結片10bが形成されている。
【0020】
そして、第一連結片7bを第二連結片10bのコの字状凹部内に嵌合させて貫通孔7aと貫通孔10aをほぼ同軸に配列させ、軸部11を貫通させて揺動可能に保持する。軸部11が各貫通孔7a、10aから外れないように両端にフランジ部11aを設けている。そのため、補強支持体6と外側浮体4は内側連結部材7を介して互いに連結され且つ互いに揺動可能とされている。4つの外側浮体4と中央浮体3の補強支持体6とは、それぞれ内側連結部材7を介して軸部11を中心に互いに揺動可能に支持されている。中央浮体3及び補強支持体6と外側浮体4は高波を受けた場合でも個別に上下動可能とされている。
【0021】
また、4つの外側浮体4間の連結機構において、一方の対向する外側連結部材8は直接2つの外側浮体4a及び4b、4c及び4dにそれぞれ剛結合され、波を受けた場合には一体に上下動するように構成されている。他方の対向する外側連結部材8は内側連結部材7と同様にその両端が軸部11を介して固定部10と接続され、軸部11を中心に2つの外側浮体4同士が個別に揺動可能とされている。
これら両側の外側浮体4a及び4b、4c及び4dと剛結合された1組の外側連結部材8を第一外側連結部材8Aとする。両側の外側浮体4a及び4c、4b及び4dの各固定部10とそれぞれ軸部11を介して揺動可能に支持された他の1組の外側連結部材8を第二外側連結部材8Bとする。
【0022】
しかも、中央浮体3及び4つの外側浮体4にはそれぞれバラストが封入されており、波浪をうけても洋上でそれぞれ垂直状態に保持されている。バラストの封入量は必要に応じて調整する。
そして、海上の波は海上から浜、湾等の陸地に向かって略直角の方向に送られてきており、特に大きい波は海側から陸地に向かって平行に流れる。洋上に洋上風力発電装置1を設置する際、外側浮体4同士を剛結合した1組の第一外側連結部材8Aを波の方向に略直交する向きに設置している。また、洋上風力発電装置1はワイヤを介してアンカーを海底に埋設してその波の進行方向に対する第一外側連結部材8Aの向きが変わらないように設定することが好ましい。なお、洋上風力発電装置1を浅瀬に設置する場合にはアンカーを設置しなくてもよい。
【0023】
本実施形態による洋上風力発電装置1は上述の構成を有しており、次にその使用方法について説明する。
上述したように、洋上風力発電装置1は海上に設置する際、外側浮体4同士を剛結合した1組の第一外側連結部材8Aを波の方向に略直交する向きに設置している。そして、風を受けると風車2の羽根が回転し、風車2の回転を受けて風車2内または陸地に設けた不図示の風力発電機で発電することで風力発電を行える。
【0024】
洋上風力発電装置1は、海上の波が穏やかで波の影響が小さい場合には、図1及び図6に示すように、波が外側浮体4a及び4b同士、4c及び4d同士を剛結合した1組の第一外側連結部材8Aに略直交する方向に進んで外側浮体4a及び4bと剛結合された第一外側連結部材8Aと中央浮体3を順次乗り越える。その際、外側浮体4a、4bと中央浮体3は上下方向に揺動し、一対の第一外側連結部材8Aによってそれぞれ剛結合された2組の外側浮体4同士は第一外側連結部材8Aと一体に順次上下動する。
【0025】
また、2組の外側浮体4a、及び4c同士、4b及び4d同士をそれぞれ軸部11を中心に揺動可能に支持する第二外側連結部材8Bは、個々に上下方向に揺動する。これと同時に、中央浮体3及び各外側浮体4を接続する内側連結部材7は軸部11に対して個々に上下方向に揺動する。しかも、波の進行方向に直交する一対の第一外側連結部材8A及び外側浮体4a及び4b、外側浮体4c及び4dは一体に上下動するため、バランスを崩さない。
そのため、1つの外側浮体4や中央浮体3の上下動に他の外側浮体4が引っ張られて傾斜することを防止できる。中央浮体3と各外側浮体4は傾きが小さく且つ個々に上下動するため、風車2を含む洋上風力発電装置1は垂直状態を保持できる。
【0026】
また、強風や悪天候等により波が大きく高波となった場合、図5に示すように、外側浮体4a及び4b同士を剛結合した前方の第一外側連結部材8Aに略直交する方向に高波が進んで外側浮体4a、4b及び前方の第一外側連結部材8Aを一体に乗り越える。次いで中央浮体3を乗り越える。その際、外側浮体4a、4bと中央浮体3は上下方向に大きく揺動する。その後、後方の第一外側連結部材8Aによって剛結合された外側浮体4c及び4dは後方の第一外側連結部材8Aと一体に上下方向に大きく揺動する。
そのため、外側浮体4a及び4c、4b及び4d同士を軸部11を介して揺動可能に支持する2組の第二外側連結部材8Bは上下方向に大きく傾斜して揺動する。これと同時に、図7に示す各外側浮体4及び中央浮体3を連結する内側連結部材7も軸部11を介して上下方向に大きく傾斜して揺動する。
従って、波が小さい場合と大きい場合のいずれでも中央浮体3と各外側浮体4は傾きを抑えた状態で上下動するため内側連結部材7と第二外側連結部材8Bだけが傾斜し、風車2を含めて洋上風力発電装置1は傾きを抑制できる。
【0027】
上述したように本実施形態による洋上風力発電装置1は、外側浮体4a及び4b、4c及び4dをそれぞれ剛結合した一対の第一外側連結部材8Aを波の進行方向に略直交する方向に対向させて配設し、軸部11を介して揺動可能な第二外側連結部材8Bを波の進行方向に配設した。そのため、悪天候で高波が発生したとしても中央浮体3と周囲の4つの外側浮体4が傾きを抑えて垂直性を維持して個々に上下に揺動するため、軸部11を介して傾斜可能な第二外側連結部材8Bと内側連結部材7が傾斜して追従し、洋上風力発電装置1の傾斜を抑制して安定して変位し鉛直性を維持できる。
【0028】
以上、本発明の実施形態による洋上風力発電装置1について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能であり、これらはいずれも本発明に含まれる。以下に、本発明の変形例等について説明するが、上述の実施形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0029】
図8は本発明の変形例による洋上風力発電装置1Aを示すものである。
図8に示す洋上風力発電装置1Aは、中央浮体3の周囲に3つの外側浮体4が配設され、これら3つの外側浮体4は互いに外側連結部材8で連結されている。しかも、1本の第一外側連結部材8Aはその両端部で外側浮体4a、4bに固定され、剛結合されている。他の2本の第二外側連結部材8Bは、上述の実施形態と同様に、その両端部が各2つの外側浮体4a及び4c、4b及び4cに固定された固定部10と軸部11を介してそれぞれ接続されている。
また、3つの外側浮体4a、4b、4cと中央浮体3はそれぞれ固定部10を設けており、外側浮体4a、4b、4cの固定部10と中央浮体3の固定部10とがそれぞれ軸部11を介して内側連結部材7の両端と連結されている。
【0030】
本変形例では、洋上風力発電装置1Aを海上に設置する際、両側の外側浮体4a、4bを剛結合する第一外側連結部材8Aを波の進行方向に略直交する方向に配設し、これに対向する1つの外側浮体4cを陸地側に配設する。そして、洋上風力発電装置1Aが高波を受けた場合、第一外側連結部材8A及びその両側の外側浮体4a、4bが一体に上下動し、その後方の中央浮体3と残りの外側浮体4cが個別に上下動する。2本の第二外側連結部材8Bはそれぞれ軸部11を介して上下方向に揺動する。
そのため、本変形例においても、洋上風力発電装置1Aは、高波が発生したとしても中央浮体3と周囲の3つの外側浮体4a、4b、4cが傾きを抑えて鉛直性を維持して上下動する。そのため、第二外側連結部材8Bと内側連結部材7が上下方向に傾斜して追従し、洋上風力発電装置1Aの傾斜を抑制して安定して変位して鉛直性を維持できる。
【0031】
次に、図9により風車2を備えた中央浮体3の変形例について説明する。図9に示すように、中央浮体3は上側に対して下側が縮径されたテーパ状に形成され、この中央浮体3を収納する補強支持体6も上側が拡径されたテーパ状に形成されている。この構成により、風車2を備えた中央浮体3は補強支持体6内に自重で嵌合して安定的に支持される。
【0032】
なお、上述した実施形態や変形例では、風車2等の洋上施設を保持する中央浮体3の周囲に3つまたは4つの外側浮体4を配設して内側連結部材7と外側連結部材8によって互いに連結して支持するものとした。しかし、本発明による洋上風力発電装置1、1Aでは外側浮体4を5つ以上配設して内側連結部材7及び外側連結部材8で連結してもよい。この場合、少なくとも1組または対向する2組の両側に外側浮体4を固定した第一外側連結部材8Aを設けて、この第一外側連結部材8Aを波の進行方向に略直交する方向に配設すればよい。
【0033】
上述した実施形態等では、洋上風力発電装置1、1Aの設置構造として、外側浮体4を両側に剛結合する第一外側連結部材8Aが波の進行方向に対して略直交する方向を向くように、アンカーを海底に設置するものとした。しかし、必ずしもアンカーを設置する必要はない。
また、上述した実施形態や変形例では、洋上施設用浮体構造物として洋上風力発電装置1、1Aについて説明したが、本発明はこのような装置に限定されない。例えば、海洋掘削装置や石油・ガス生産設備等の各種の洋上施設にも適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 洋上風力発電装置
2 風車
3 中央浮体
4、4a、4b、4c、4d 外側浮体
6 補強支持体
7 内側連結部材
8 外側連結部材
8A 第一外側連結部材
8B 第二外側連結部材
10 固定部
11 軸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10