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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】管寄せ管台及びボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/22 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
F22B37/22 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019129033
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021014940
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】時吉 巧
(72)【発明者】
【氏名】片渕 紘希
(72)【発明者】
【氏名】下田 純之
(72)【発明者】
【氏名】富永 公彦
(72)【発明者】
【氏名】本田 雅幹
(72)【発明者】
【氏名】駒井 伸好
(72)【発明者】
【氏名】本田 尊士
(72)【発明者】
【氏名】浦田 幹康
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-041406(JP,A)
【文献】特表2015-507164(JP,A)
【文献】特開平09-280508(JP,A)
【文献】特開2019-100690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/00 - 37/78
F28F 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温高圧の流体が内部を流通可能な管寄せ管台であって、
管寄せと、
前記管寄せに接続される複数の管台と、
前記管寄せに接続され、前記複数の管台よりも径が大きい枝管と、
を備え、
前記管寄せの軸方向において、前記複数の管台のうち前記枝管の中心線に最も近い管台と、前記中心線との前記軸方向に沿った距離Lは、前記管寄せの外径をDとし、前記管寄せの肉厚をTとし、係数をαとしたときに、次式(A)を満たし、
L≧α×[{(D-T)/2}×T]1/2・・・(A)
前記係数αの値は、2以上である
管寄せ管台。
【請求項2】
前記管寄せは、接手部と、前記接手部を介して接続された一対の管とを有し、
前記複数の管台の少なくとも一部は、前記一対の管の少なくとも一方に接続されている
請求項1に記載の管寄せ管台。
【請求項3】
前記軸方向において前記中心線に最も近い前記管台は、前記一対の管の少なくとも一方に接続されている
請求項2に記載の管寄せ管台。
【請求項4】
高温高圧の流体が内部を流通可能な管寄せ管台であって、
管寄せと、
前記管寄せに接続される複数の管台と、
前記管寄せに接続され、前記複数の管台よりも径が大きい枝管と、
を備え、
前記複数の管台のうち前記管寄せの周方向に沿った周方向位置が前記枝管から最も遠い管台であって前記管寄せの軸方向において前記枝管の中心線に最も近い管台と、前記中心線との前記軸方向に沿った距離Lは、前記管寄せの外径をDとし、前記管寄せの肉厚をTとし、係数をαとしたときに、次式(A)を満たし、
L≧α×[{(D-T)/2}×T]1/2・・・(A)
前記係数αの値は、2以上である
管寄せ管台。
【請求項5】
前記複数の管台のうち、前記周方向における第1位置において前記中心線に最も近い前記管台は、前記第1位置よりも前記周方向に沿って前記枝管に近い第2位置において前記中心線に最も近い前記管台よりも前記軸方向に沿った位置が前記中心線から離れている
請求項4に記載の管寄せ管台。
【請求項6】
前記係数αの値は、3以上である
請求項1乃至5の何れか一項に記載の管寄せ管台。
【請求項7】
前記管寄せは、高クロム鋼で形成されている
請求項1乃至6の何れか一項に記載の管寄せ管台。
【請求項8】
前記管寄せ管台は、ボイラに用いられる
請求項1乃至7の何れか一項に記載の管寄せ管台。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の管寄せ管台
を備えるボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管寄せ管台及びボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
高温高圧の環境下で長時間使用される、例えばボイラの配管では、例えば配管同士等の溶接部においては、クリープ損傷により亀裂が発生する。クリープ損傷による亀裂は進展するため、亀裂の有無や溶接部の厚さ方向での亀裂の長さ(亀裂の高さ)に応じて余寿命を評価し、溶接部に対し適時補修を行う必要がある。そこで、溶接部内の亀裂の有無や亀裂の長さを測定して余寿命を評価する技術の開発が行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-151107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、例えばボイラの配管では、例えば配管同士等の溶接部においてクリープ損傷により亀裂が発生し易いことが分かっていたため、例えばボイラの配管に関しては、溶接部を主体に保守管理が行われてきた。
ところで、最近になって、溶接部ではなく、配管の母材に亀裂が発生する場合があることが分かってきた。そのため、配管の設計段階で何らかの対策を行うことが望まれる。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、管寄せ管台の損傷を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る管寄せ管台は、
管寄せと、
前記管寄せに接続される複数の管台と、
前記管寄せに接続され、前記複数の管台よりも径が大きい枝管と、
を備え、
前記管寄せの軸方向において、前記複数の管台のうち前記枝管の中心線に最も近い管台と、前記中心線との前記軸方向に沿った距離Lは、前記管寄せの外径をDとし、前記管寄せの肉厚をTとし、係数をαとしたときに、次式(A)を満たし、
L≧α×[{(D-T)/2}×T]1/2・・・(A)
前記係数αの値は、2である。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る管寄せ管台は、
管寄せと、
前記管寄せに接続される複数の管台と、
前記管寄せに接続され、前記複数の管台よりも径が大きい枝管と、
を備え、
前記複数の管台のうち前記管寄せの周方向に沿った周方向位置が前記枝管から最も遠い管台であって前記管寄せの軸方向において前記枝管の中心線に最も近い管台と、前記中心線との前記軸方向に沿った距離Lは、前記管寄せの外径をDとし、前記管寄せの肉厚をTとし、係数をαとしたときに、次式(A)を満たし、
L≧α×[{(D-T)/2}×T]1/2・・・(A)
前記係数αの値は、2である。
【0008】
(3)本開示の少なくとも一実施形態に係るボイラは、
上記構成(1)又は(2)の管寄せ管台を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、管寄せ管台の損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】幾つかの実施形態に係る管寄せ管台が設けられているボイラの全体構成を模式的に示す図である。
図2】一実施形態に係る出口側の管寄せ管台の一部を示した模式的な図である。
図3】一実施形態に係る出口側の管寄せ管台を管寄せの軸方向から見た模式的な断面図である。
図4】他の実施形態に係る管寄せ管台の一部を示した模式的な図である。
図5】管台の設置位置について説明するための図である。
図6】管台の設置位置についての他の実施形態を示す図である。
図7】横軸に係数αをとり、縦軸に開口による応力の増加率をとったときの両者の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
(ボイラ1について)
図1は、幾つかの実施形態に係る管寄せ管台が設けられているボイラの全体構成を模式的に示す図である。図1に示すボイラ1の壁は水が流れる炉壁管で構成され、ボイラ1の下部には、燃料や燃焼用空気が供給されるバーナ風箱11が炉壁の四隅に設けられている。ボイラ上部の煙道2には、一般的に複数の過熱器や再熱器等の熱交換器が設けられている。図1では、このうち一つの熱交換器100だけを図示している。すなわち、図1に示した熱交換器100は、過熱器101であってもよく、再熱器103であってもよい。
熱交換器100は、入口側の管寄せ管台108a及び出口側の管寄せ管台108bと、これらに接続されたボイラ管群140とで構成されている。バーナ風箱11付近で形成された燃焼ガスgは、例えば、図示のように旋回しながら上昇し、炉壁管を加熱すると共に、煙道2に配置されたボイラ管群140を加熱する。
【0013】
(管寄せ管台108について)
図2は、一実施形態に係る出口側の管寄せ管台108bの一部を示した模式的な図である。図3は、一実施形態に係る出口側の管寄せ管台108bを管寄せ110の軸方向から見た模式的な断面図である。図2及び図3では、管台120を簡略化して描いている。なお、入口側の管寄せ管台108aは、出口側の管寄せ管台108bと同様の構成である。
以下の説明では、入口側の管寄せ管台108aと出口側の管寄せ管台108bとを特に区別する必要がない場合、単に管寄せ管台108と呼ぶこととする。
図4は、他の実施形態に係る管寄せ管台108の一部を示した模式的な図である。
【0014】
図2図4に示すように、幾つかの実施形態に係る管寄せ管台108は、管寄せ110と、管寄せ110に接続される複数の管台120と、管寄せ110に接続され、複数の管台120よりも径が大きい枝管130と、を備える。図4に示す管寄せ管台108では、管寄せ110は、接手部115と、接手部115を介して接続された一対の管113とを有している。なお、図2及び図3で示した一実施形態に係る管寄せ管台108では、枝管10は管寄せ110の管111に直接接続されている。
以下の説明では、管寄せ110の軸線(中心線)AXhに沿った方向を単に軸方向とも呼び、管寄せ110の周方向を単に周方向とも呼ぶ。
【0015】
幾つかの実施形態では、枝管130は、熱交換器100へ流入する蒸気、又は熱交換器100から流出する蒸気が流通するように構成された管である。例えば熱交換器100が3次過熱器であって管寄せ管台108が入口側の管寄せ管台108aであれば、枝管130は、例えばこの入口側の管寄せ管台108aと2次過熱器における出口側の管寄せ管台とを接続する連絡管である。また、例えば熱交換器100が最終段の過熱器であって管寄せ管台108が出口側の管寄せ管台108bであれば、枝管130は、例えばこの出口側の管寄せ管台108bと主蒸気管とを接続する管である。このように、幾つかの実施形態では、枝管130は、管寄せ110の管111や一対の管113と同等の径を有していてもよい。
【0016】
図3及び図4に示すように、幾つかの実施形態に係る管寄せ管台108は、ボイラ1の天井壁4より上方に配置され、ボイラ管群140はこれらから吊下され、天井壁4の上方で管台120を構成している。ボイラ管群140は天井壁4を貫通して、煙道2に配置されている。ボイラ管群140は図示しない支持部材によって支持されている。ボイラ管群140を構成するボイラ管141は、管台付根部位で管寄せ管台108に溶接されている。図4に示した他の実施形態に係る管寄せ管台108では、複数の管台120の少なくとも一部は、一対の管113の少なくとも一方に接続されているとよい。
【0017】
(管寄せ管台108における亀裂の発生について)
図5は、管台120の設置位置について説明するための図である。
上述したように構成される幾つかの実施形態に係る管寄せ管台108では、例えば図2に示すように、管寄せ110において枝管130に連通する開口117が存在する。このような管寄せ管台108では、軸方向に沿った管寄せ110の領域のうち開口117を含む領域では、開口117が存在するため周方向に閉じていない。そのため、例えばボイラ1に用いられる熱交換器100のように、比較的温度が高く比較的圧力が高い蒸気が内部を流通する管寄せ管台108では、蒸気の圧力によって時間の経過とともに開口117が広がるように変形するおそれがある。
発明者らが鋭意検討した結果、この開口117の変形に起因して、管寄せ110の軸方向において枝管130の軸線(中心線)Cbに近く、管寄せ110の周方向に沿った周方向位置が枝管130から遠い領域151(図5参照)において応力が集中する傾向があることが判明した。また、発明者らが鋭意検討した結果、このような位置に管台120を設置すると、さらに応力が集中することとなり、管寄せ110の部材(管111又は一対の管113)の内部に亀裂が生じ易くなることが判明した。
【0018】
(管台120の好ましい設置範囲について)
ここで、管寄せ110の軸方向において、複数の管台120のうち枝管130の中心線Cbに最も近い管台(以下、最接近管台とも呼ぶ)120aと、枝管130の中心線Cbとの軸方向に沿った距離をLとする。
発明者らが鋭意検討した結果、この距離Lをある程度以上確保することで、上述した開口117の影響を抑制して、管寄せ110の部材の内部の亀裂を抑制できることが判明した。
具体的には、幾つかの実施形態において、管寄せ110の外径をDとし、管寄せ110の肉厚をTとし、係数をαとしたときに、次式(A)を満たすとよいことが判明した。
L≧α×[{(D-T)/2}×T]1/2・・・(A)
【0019】
図7は、横軸に係数αをとり、縦軸に開口117による応力の増加率をとったときの両者の関係を示すグラフである。なお、開口117による応力の増加率は、開口117による応力集中の影響がないと考えられる場合を1としたときの無次元数である。
図7から、係数αの値を2としたときの距離Lとなる位置に最接近管台120aを設置すると、管寄せ110のうち最接近管台120aの近傍の領域153において管寄せ110の部材に作用する応力が上述した開口117の影響をほとんど受けない領域における応力の1.1倍となることが判明した。なお、係数αの値が大きくなるほど距離Lが大きくなり、上述した開口117の影響を抑制できる。
一般的に、応力が1.1倍となると、寿命は約1/2になることが分かっている。
したがって、係数αの値が2であるときの上述した式(A)を満たすように幾つかの実施形態に係る管寄せ管台108を構成することで、管寄せ110のうち最接近管台120aの近傍の領域153において、上述した開口117の影響をほとんど受けない領域における寿命の約1/2以上の寿命とすることができる。これにより、上述した開口117の影響を抑制して管寄せ管台108の損傷を抑制できる。
【0020】
図4に示した他の実施形態に係る管寄せ管台108では、最接近管台120aは、一対の管113の少なくとも一方に接続されているとよい。
すなわち、図4に示すように、接手部115に管台120を設けないことで、上述した開口117の影響によって接手部115の部材の内部に亀裂が発生することを抑制できる。
この場合には、管台120の設置領域をできるだけ多く確保するため、接手部115の軸方向の長さができるだけ短くなるように、接手部115を構成するとよい。
なお、係数αの値が2以上であるときの上述した式(A)を満たすのであれば、管台120は、接手部115にも設けられていてもよい。
【0021】
なお、上述したように開口117の変形に起因した応力の集中の影響は、管寄せ110の周方向に沿った周方向位置が枝管130から遠くなるほど大きくなることが判明した。換言すると、開口117の変形に起因した応力の集中の影響は、管寄せ110の周方向に沿った周方向位置が枝管130に近づくほど小さくなる。
そこで、周方向位置が枝管130から最も遠い管台120のうち、軸方向において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120b(図2、5参照)についての上記距離Lが係数αの値を2以上としたときの上記式(A)を満たすようにすることで、開口117の影響を抑制して管寄せ管台の損傷を抑制できる。
【0022】
図6は、管台120の設置位置についての他の実施形態を示す図である。
このように、周方向位置が枝管130から最も遠い管台120のうち、軸方向において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120bについての上記距離Lが係数αの値を2以上としたときの上記式(A)を満たしていれば、周方向位置が該管台120bよりも枝管130に近い管台120は、上記距離Lが上記式(A)を必ずしも満たしている必要はない。
説明の便宜上、図6に示すように、周方向位置が枝管130から最も遠い管台120bにおける周方向位置を第1位置P1とする。第1位置P1に次いで周方向位置が枝管130から遠い管台120cにおける周方向位置を第2位置P2とする。第2位置P2に次いで周方向位置が枝管130から遠い管台120dにおける周方向位置を第3位置P3とする。第3位置P3に次いで周方向位置が枝管130から遠い管台120eにおける周方向位置を第4位置P4とする。
【0023】
ここで、複数の管台120のうち、周方向における第1位置P1において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120bは、第1位置P1よりも周方向に沿って枝管130に近い第2位置P2において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120cよりも軸方向に沿った位置が枝管130の中心線Cbから離れていてもよい。換言すると、第2位置P2において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120cは、第1位置P1において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120bよりも軸方向に沿った位置が枝管130の中心線に近くてもよい。
【0024】
上述したように、周方向位置が枝管130に近い領域では、周方向位置が枝管130から遠い領域よりも開口117の変形に起因する応力の集中の影響が少ない。
そこで、図6に示すように、周方向位置が枝管130から最も遠い管台120のうち、軸方向において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120bについての上記距離Lが係数αの値を2以上としたときの上記式(A)を満たしていれば、周方向位置が該管台120bよりも枝管130に近い他の管台120c、120d、120eは、上記管台120bよりも軸方向において枝管130の中心線Cbに近づいていてもよい。これにより、枝管の中心線に近い領域に管台を設置できるので、管台の数を増やすことができる。
【0025】
(係数αの値について)
上述したように、係数αの値が2であるときの上述した式(A)を満たすように幾つかの実施形態に係る管寄せ管台108を構成することで、管寄せ110のうち最接近管台120aの近傍の領域153において、上述した開口117の影響をほとんど受けない領域における寿命の約1/2以上の寿命とすることができる。
また、例えば、係数αの値が3以上であると、開口117による応力の増加率は一層1に近づく。すなわち、係数αの値を3以上とすることで、上述した開口117の影響をほとんど受けない領域に管台120を設置できることとなる。したがって、係数αの値を3以上として上述した式(A)を満たすように幾つかの実施形態に係る管寄せ管台108を構成すれば、開口117の影響をより一層抑制して管寄せ管台108の損傷をより一層抑制できる。
【0026】
(管寄せ管台108の各部の材質について)
幾つかの実施形態では、管寄せ110や接手部115、管台120等、管寄せ管台108の各部は、例えばクロムを9~12質量%程度含有する高クロム鋼で形成されていてもよい。また、幾つかの実施形態では、管寄せ110や接手部115、管台120等、管寄せ管台108の各部は、例えばクロムを2~3質量%程度含有する低合金鋼で形成されていてもよい。なお、幾つかの実施形態において、管寄せ110や接手部115を高クロム鋼で構成し、管台120を高クロム鋼以外の材料で形成してもよい。
【0027】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した幾つか実施形態に係る管寄せ管台108は、例えば火力発電プラントにおけるボイラ1に用いられてもよい。また、上述した幾つか実施形態に係る管寄せ管台108は、例えば原子力発電プラントや化学プラントにおいて、比較的温度が高く比較的圧力が高い流体が内部を流れる管寄せとして用いられてもよい。
【0028】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る管寄せ管台108は、管寄せ110と、管寄せ110に接続される複数の管台120と、管寄せ110に接続され、複数の管台120よりも径が大きい枝管130と、を備える。
本開示の少なくとも一実施形態に係る管寄せ管台108では、管寄せ110の軸方向において、複数の管台120のうち枝管130の中心線Cbに最も近い管台(最接近管台120a)と、枝管130の中心線Cbとの軸方向に沿った距離Lは、管寄せ110の外径をDとし、管寄せ110の肉厚をTとし、係数をαとしたときに、上述した式(A)を満たす。
L≧α×[{(D-T)/2}×T]1/2・・・(A)
本開示の少なくとも一実施形態に係る管寄せ管台108では、係数αの値は、2以上である。
【0029】
上述したように、例えば比較的温度が高く比較的圧力が高い蒸気が内部を流通する管寄せ管台108では、蒸気の圧力によって時間の経過とともに開口117が変形するおそれがあり、管寄せ110の部材(管111又は一対の管113)の内部に亀裂が生じ易くなることが判明した。しかし、上述したように、上記距離Lをある程度以上確保することで、上述した開口117の影響を抑制して、管寄せ110の部材の内部の亀裂を抑制できることが判明した。
係数αの値が2であるときの上述した式(A)を満たすように幾つかの実施形態に係る管寄せ管台108を構成することで、上述したように、管寄せ110のうち最接近管台120aの近傍の領域153において、上述した開口117の影響をほとんど受けない領域における寿命の約1/2以上の寿命とすることができる。これにより、上述した開口117の影響を抑制して管寄せ管台108の損傷を抑制できる。
【0030】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、管寄せ110は、接手部115と、接手部115を介して接続された一対の管113とを有していてもよい。幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、複数の管台120の少なくとも一部は、上記一対の管113の少なくとも一方に接続されているとよい。
【0031】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、軸方向において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120bは、上記一対の管113の少なくとも一方に接続されているとよい。
【0032】
上記(3)の構成によれば、接手部115に管台120を設けないことで、上述した開口117の影響によって接手部115の部材の内部に亀裂が発生することを抑制できる。
【0033】
(4)本開示の少なくとも一実施形態に係る管寄せ管台108は、管寄せ110と、管寄せ110に接続される複数の管台120と、管寄せ110に接続され、複数の管台120よりも径が大きい枝管130と、を備える。
本開示の少なくとも一実施形態に係る管寄せ管台108では、複数の管台120のうち管寄せ110の周方向に沿った周方向位置が枝管130から最も遠い管台120であって管寄せ110の軸方向において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120と、枝管130の中心線Cbとの軸方向に沿った距離Lは、管寄せ110の外径をDとし、管寄せ110の肉厚をTとし、係数をαとしたときに、上述した式(A)を満たす。
L≧α×[{(D-T)/2}×T]1/2・・・(A)
本開示の少なくとも一実施形態に係る管寄せ管台108では、係数αの値は、2以上である。
【0034】
上述したように開口117の変形に起因した応力の集中の影響は、管寄せ110の周方向に沿った周方向位置が枝管130から遠くなるほど大きくなる。
そこで、周方向位置が枝管130から最も遠い管台120のうち、軸方向において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120b(図2、5参照)についての上記距離Lが係数αの値を2以上としたときの上記式(A)を満たすようにすることで、開口117の影響を抑制して管寄せ管台108の損傷を抑制できる。
【0035】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、複数の管台120のうち、周方向における第1位置P1において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120bは、第1位置P1よりも周方向に沿って枝管130に近い第2位置P2において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120cよりも軸方向に沿った位置が枝管130の中心線Cbから離れているとよい。換言すると、第2位置P2において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120cは、第1位置P1において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120bよりも軸方向に沿った位置が枝管130の中心線Cbに近くてもよい。
【0036】
上述したように、周方向位置が枝管130に近い領域では、周方向位置が枝管130から遠い領域よりも開口117の変形に起因する応力の集中の影響が少ない。したがって、第2位置P2において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120cは、第1位置P1において枝管130の中心線Cbに最も近い管台120bよりも軸方向に沿った位置が枝管130の中心線Cbに近くてもよい。これにより、枝管130の中心線Cbに近い領域に管台120を設置できるので、管台120の数を増やすことができる。
【0037】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、係数αの値は、3以上である。
【0038】
上述したように、係数αの値を3以上とすることで、上述した開口117の影響をほとんど受けない領域に管台120を設置できる。したがって、上記(6)の構成によれば、開口117の影響をより一層抑制して管寄せ管台108の損傷をより一層抑制できる。
【0039】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、管寄せ110は、高クロム鋼で形成されている。
【0040】
上記(1)乃至(6)の何れかの構成は、管寄せ110が高クロム鋼で形成されている管寄せ管台108に適している。
【0041】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、管寄せ管台108は、ボイラ1に用いられる。
【0042】
上記(1)乃至(7)の何れかの構成は、ボイラ1に用いられる管寄せ管台108に適している。
【0043】
(9)本開示の少なくとも一実施形態に係るボイラ1は、上記構成(1)乃至(8)の何れの管寄せ管台108を備える。
【0044】
上記(9)の構成によれば、上記構成(1)乃至(8)の何れの管寄せ管台108を備えるので、ボイラ1における管寄せ管台108の損傷を抑制できる。
【符号の説明】
【0045】
1 ボイラ
100熱交換器
101 過熱器
103 再熱器
108 管寄せ管台
110 管寄せ
111 管
113 管
115 接手部
120 管台
130 枝管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7