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  • 特許-インナーロータ型モータの固定子 図1
  • 特許-インナーロータ型モータの固定子 図2
  • 特許-インナーロータ型モータの固定子 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】インナーロータ型モータの固定子
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/14 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
H02K1/14 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019163036
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021044864
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100135622
【弁理士】
【氏名又は名称】菊地 挙人
(72)【発明者】
【氏名】溝口 勝俊
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-046420(JP,A)
【文献】特開2005-229726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2コイルがそれぞれ巻回された第1及び第2コイルボビンと、
円環状部、前記円環状部の内側から所定方向に突出して前記第1コイルボビンが挿入された第1ティース部、前記円環状部の内側から前記所定方向とは反対方向に突出して前記第1ティース部に対向し前記第2コイルボビンが挿入された第2ティース部、を含むステータコアと、
前記第1ティース部からの前記第1コイルボビンの抜去方向の移動を規制し前記第2ティース部からの前記第2コイルボビンの抜去方向の移動を規制する第1及び第2ホルダと、を備え、
前記ステータコアは、周方向に分割されておらずに一体に形成されており、
前記ステータコアには、前記第1及び第2ティース部以外のティース部は設けられておらず、
前記第1及び第2コイルボビンは、前記所定方向に並んで配置され、
前記第1及び第2ホルダは、前記ステータコアの中心軸心と前記所定方向とに直交する方向に並んで配置され、
前記第1ホルダは、前記第1ティース部と前記第2ティース部との間の前記円環状部の内側に組付けられ、
前記第2ホルダは、前記第1ホルダとは反対側の、前記第1ティース部と前記第2ティース部との間の前記円環状部の内側に組付けられ、
前記第1ティース部は、第1先端面を有し、
前記第2ティース部は、前記第1先端面に対向した第2先端面を有し、
前記所定方向での前記第1先端面と前記第2先端面との間の最短距離をX1とし、
前記所定方向での前記第1及び第2ティース部のそれぞれの最短長さをX2とし、
前記円環状部の内径をDOとすると、
DO>X1≧X2が成立し、
0.15×DO≦X2≦X1≦0.3×DOが成立する、インナーロータ型モータの固定子。
【請求項2】
X1=X2が成立する、請求項1のインナーロータ型モータの固定子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーロータ型モータの固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
インナーロータ型モータのステータコアには、予め周方向に複数に分割された、所謂分割コアが採用されたものがある(例えば特許文献1参照)。分割コアのティース部には、コイルが巻回されたコイルボビンが取り付けられ、その後に分割コア同士が接合されてステータコアが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-022971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して、上記のような分割コアではなく、周方向に分割されておらずに一体に形成されたものが知られている。このような場合には、コイルボビンをティース部に挿入する作業が煩雑となり、組み立て工程が煩雑になる場合がある。
【0005】
そこで本発明は、組み立てが簡易化されたインナーロータ型モータの固定子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、第1及び第2コイルがそれぞれ巻回された第1及び第2コイルボビンと、円環状部、前記円環状部の内側から所定方向に突出して前記第1コイルボビンが挿入された第1ティース部、前記円環状部の内側から前記所定方向とは反対方向に突出して前記第1ティース部に対向し前記第2コイルボビンが挿入された第2ティース部、を含むステータコアと、を備え、前記ステータコアは、周方向に分割されておらずに一体に形成されており、前記第1ティース部は、第1先端面を有し、前記第2ティース部は、前記第1先端面に対向した第2先端面を有し、前記所定方向での前記第1先端面と前記第2先端面との間の最短距離をX1とし、前記所定方向での前記第1及び第2ティース部のそれぞれの最短長さをX2とし、前記円環状部の内径をDOとすると、DO>X1≧X2が成立する、インナーロータ型モータの固定子によって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
組み立てが簡易化されたインナーロータ型モータの固定子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施例の固定子の外観斜視図である。
図2図2は、本実施例の固定子の分解斜視図である。
図3図3は、Z方向から見たステータコアの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施例の固定子1の外観斜視図であり、図2は、本実施例の固定子1の分解斜視図である。固定子1は、インナーロータ型モータに採用される。固定子1は、ステータコア10、2つのコイルボビン20、2つのホルダ30、及び2つのコイルCを含む。ステータコア10内には、周方向で異なる極性に着磁された不図示のロータが回転可能に配置される。2つのコイルCが通電制御されることにより、ステータコア10とロータとの間に磁気的吸引力及び磁気的反発力が生じ、これによりロータが回転する。尚、図1及び図2には、互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向を示している。2つのコイルボビン20はX方向に並んで配置され、2つのホルダ30はY方向に並んで配置されている。また、ステータコア10の中心軸心は、Z方向に平行である。このステータコア10の中心軸心は、不図示のロータの回転軸心と一致する。
【0010】
ステータコア10は、金属製であり、図2に示すように円環状部12、及び2つのティース部14を含む。2つのティース部14は、円環状部12の内側から円環状部12の中心に向けて突出しており、X方向に並んでいる。ティース部14のYZ平面の断面は、略矩形状である。ティース部14の先端面は、ステータコア10の中心を中心とした円弧状に湾曲している。不図示のロータに対向する。ステータコア10は、周方向に分割されたいわゆる分割ステータコアから構成されたものではなく、周方向に一体的に成形されたものである。具体的にはステータコア10は、ケイ素鋼板、電磁鋼板等といった軟磁性鋼板等の板状の金属部材が、Z方向に複数積層されて形成されている。また、軟磁性粉体等の金属部材により一体成型されたものでもよい。
【0011】
コイルボビン20は、絶縁性を有した合成樹脂製であり、図2に示すように筒部22、外側フランジ部24、及び内側フランジ部26を含む。筒部22はX方向に延びており、筒部22の一端に外側フランジ部24が形成され、他端に内側フランジ部26が形成されている。コイルCは、外側フランジ部24及び内側フランジ部26の間で筒部22の外周部に巻回されている。内側フランジ部26は、外側フランジ部24よりも大きく形成されているが、これに限定されず、同じ大きさであってもよい。
【0012】
筒部22は、ステータコア10のティース部14が挿入される孔23を画定する。コイルボビン20は、内側フランジ部26が外側フランジ部24よりもステータコア10の中心側に位置するようにして、孔23にステータコア10のティース部14が挿入されて、ステータコア10に組み付けられる。従って、図1に示すように、2つのコイルボビン20のそれぞれの内側フランジ部26が対向するようにしてステータコア10に組み付けられている。ここで、孔23の内径とティース部14の外径とは略同じ大きさ及び形状であり、孔23にティース部14を圧入する必要がなく容易に挿入できる。このため、ステータコア10にコイルボビン20を容易に組み付けることができ、組み付け工程が簡略化されている。尚、「圧入する必要がない」とは、孔23にティース部14を挿入した際に、孔23が拡張するように弾性変形することはないことを意味する。
【0013】
ここで、2つのコイルボビン20の一方のティース部14への挿入方向は+X方向であり、他方のティース部14への挿入方向は-X方向である。従って、2つのコイルボビン20の一方のティース部14からの抜去方向は-X方向であり、他方のティース部14からの抜去方向は+X方向である。換言すれば、これらの抜去方向は、ティース部14が延びた方向でもあり、ステータコア10の中心に向かう方向でもある。
【0014】
ホルダ30は、絶縁性を有した合成樹脂製であり、図2に示すように被覆部32、鍔部34、及び規制突部36を含む。被覆部32は、Z方向でステータコア10の高さと略同じ高さを有して、ステータコア10の円環状部12の内側面と略同じ曲率で円弧状に湾曲している。規制突部36は、被覆部32と略同じZ方向の高さを有して被覆部32の内側から突出している。ホルダ30は、ステータコア10の2つのティース部14によって区画される円環状部12の一方側(+Y方向側)と、他方側(-Y方向側)とにそれぞれ組み付けられる。具体的にはホルダ30は、被覆部32が2つのティース部14との間での円環状部12の内側に位置し、鍔部34がステータコア10の円環状部12の上面に接触し、規制突部36がステータコア10の中心側に突出するようにして、ステータコア10に組み付けられている。鍔部34が円環状部12の上面に接触することにより、ステータコア10に対するホルダ30のZ方向での位置が規定される。尚、予めコイルCが巻回された2つのコイルボビン20をステータコア10に組み付けた後に、2つのホルダ30がステータコア10に組み付けられる。
【0015】
図1に示すように、規制突部36は、2つのティース部14にそれぞれ挿入された2つのコイルボビン20の、内側フランジ部26にそれぞれ接触している。即ち、ホルダ30の規制突部36は、2つのコイルボビン20の間に突出しており、2つのコイルボビン20の上述した抜去方向での移動を規制している。これにより、コイルボビン20がティース部14から脱落することが防止される。
【0016】
また、被覆部32は、ステータコア10の円環状部12の内側を覆っている。このため、コイルCがステータコア10の円環状部12の内側に接触することが防止され、ステータコア10とコイルCとの絶縁性が確保されている。また、コイルCは被覆部32に接触しており、コイルCは線径の大きいものが採用されており、これによりロータのトルクが確保されている。尚、コイルCが線径の小さいものであっても、被覆部32に接触するほどに多くの巻き数を確保することにより、アンペアターンを確保して、ロータのトルクを確保することもできる。
【0017】
また、ホルダ30が2つのコイルボビン20のそれぞれの抜去方向の移動を規制することにより、ホルダ30のステータコア10の円環状部12に対する周方向の移動が規制される。これにより、ホルダ30のがたつきなども防止される。
【0018】
また、2つのホルダ30が2つのコイルボビン20を互いに引き離すようにしてステータコア10に組み付けられているため、2つのコイルボビン20と2つのホルダ30とが安定してステータコア10に組み付けられており、これらの部材のがたつきが防止されている。
【0019】
本実施例では2つのホルダ30により2つのコイルボビン20の脱落を防止することに限定されず、例えば一つのホルダ30のみによっても2つのコイルボビン20の脱落を防止できるが、2つのコイルボビン20のがたつきの防止や、2つのコイルCのステータコア10への接触を回避する観点からは、2つのホルダ30を用いることが好ましい。また、2つのホルダ30が予め一体に形成されていてもよい。例えば、2つのホルダ30の鍔部34同士が、ステータコア10の上面上で周回するように連続して形成されていてもよい。
【0020】
また、本実施例では、ホルダ30の被覆部32のZ方向の長さは、円環状部12のZ方向の長さと略同じであることに限定されず、円環状部12のZ方向の長さよりも短くてもよいが、コイルCとステータコア10との接触を回避する観点からは、円環状部12のZ方向の長さと略同じ又は円環状部12よりも長いことが好ましい。
【0021】
図3は、Z方向から見たステータコア10の外観図である。図3においては、ティース部14の先端面16を符号を付しており、またステータコア10の中心軸心Aを示している。2つのティース部14は先端面16同士が互いに対向している。また、2つの先端面16のそれぞれは、Z方向から見て中心軸心Aを中心とした円弧状に形成されている。X1は、2つのティース部14の一方が円環状部12から伸びた+X方向で先端面16同士の最短距離である。X1は、換言すれば一方の先端面16の端部から他方の先端面16の端部との間の最短距離である。X2は、+X方向での2つのティース部14のそれぞれ最短長さである。X2は、換言すれば、円環状部12の内側面に連続したティース部14の根元部から、円弧状に形成された先端面16の中心までの最短距離である。DOは、円環状部12の内径である。ここで、DO>X1≧X2が成立する。DO>X1は、ティース部14が円環状部12の内側から延びていることの条件である。X1≧X2は、コイルボビン20を、先端面16同士の間から一方のティース部14へと挿入することが容易となる条件である。
【0022】
本実施例ではX1=X2に設定されている。これによりコイルボビン20のティース部14への挿入の容易性とともに、ティース部14に挿入されたコイルボビン20に巻回されたコイルCの、円環状部12の内側での占有スペースが確保されている。コイルCの占有スペースが確保されているため、コイルCの巻き数を増大させたり、線径の大きいものを採用することもできる。これにより、コイルボビン20のステータコア10への組付の容易性と、ロータの出力の向上との両立を図ることができる。
【0023】
更に本実施例では、0.15×DO≦X1=X2≦0.3×DOが成立する。X1、X2がこの範囲を満たす限り、ロータのマグネットの磁束のより多くをステータコア10に取り込むことができ、且つコイルCの占有スペースも確保できる。従って、よりロータの出力が向上している。
【0024】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0025】
X1、X2、及びDOの関係は、上述した場合に限られず、0.15×DO≦X2≦X1≦0.3×DOであってもよい。この場合、コイルボビン20のティース部14への挿入が容易となり、且つロータのマグネットの磁束のより多くをステータコア10に取り込むことができる。
【0026】
先端面16は中心軸心Aを中心とした円弧状であるが、これに限定されない。例えば先端面は、中心軸心A以外の点を中心とした円弧状であってもよいし、楕円弧状であってもよいし、ロータの外周面との距離が位置によって異なっている曲面状であってもよいし、平面状であってもよい。
【0027】
上記実施例では、ホルダ30は合成樹脂製であるが、ある程度剛性の高いゴム製であってもよい。また、ホルダ30は、コイルCが接触しないのであれば、絶縁性を有していない金属製であってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 固定子
10 ステータコア
12 円環状部
14 ティース部
20 コイルボビン
23 孔
30 ホルダ
32 被覆部
34 鍔部
36 規制突部
C コイル
図1
図2
図3