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特許7313247計測システムおよび静電容量型センサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】計測システムおよび静電容量型センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/12 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
G01L9/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019178166
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021056052
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市原 純
(72)【発明者】
【氏名】吉川 康秀
(72)【発明者】
【氏名】小原 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】石原 卓也
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-331328(JP,A)
【文献】特開2011-008726(JP,A)
【文献】特開2007-086002(JP,A)
【文献】特開2006-329637(JP,A)
【文献】特開2016-188793(JP,A)
【文献】特開2019-035666(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0224027(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L 27/00-27/02
G01L 1/14
G01P 15/125
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測する物理量に応じて変化する静電容量に対応したセンサ信号を出力するセンサ素子を有するセンサ部、前記センサ部からの前記センサ信号のうち、設定された周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタおよび前記バンドパスフィルタを通過した信号を検波する整流回路を有する検波回路部並びに検波回路部からの信号を平滑する平滑部を有する静電容量型センサと、
複数のセンサ駆動周波数の交流信号から選択された1つの信号を発生させる信号発生装置と
を備え、
前記バンドパスフィルタは、前記信号発生装置から前記センサ素子に供給される前記センサ駆動周波数の前記交流信号に対応して、フィルタのパラメータを変更することができる変更回路を有する計測システム。
【請求項2】
前記バンドパスフィルタは、前記フィルタのキャパシタンスを選択するキャパシタンス選択スイッチを変更回路として有する請求項に記載の計測システム。
【請求項3】
前記バンドパスフィルタは、前記フィルタの抵抗値を選択するレジスタンス選択スイッチを変更回路として有する請求項または請求項に記載の計測システム。
【請求項4】
計測する物理量に応じて変化する静電容量に対応したセンサ信号を出力するセンサ素子を有するセンサ部、前記センサ部からの前記センサ信号のうち、設定された周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタおよび前記バンドパスフィルタを通過した信号を検波する整流回路を有する検波回路部並びに前記検波回路部からの信号を平滑するローパスフィルタを有する平滑部を有する静電容量型センサと、
複数のセンサ駆動周波数の交流信号から選択された1つの信号を発生させる信号発生装置と
を備え、
前記検波回路部は、
前記信号発生装置から前記センサ素子に供給可能な複数の前記センサ駆動周波数の前記交流信号に対応する前記バンドパスフィルタおよび前記整流回路の組を複数有し、
前記センサ素子に供給される前記センサ駆動周波数の前記交流信号に合わせて、前記バンドパスフィルタおよび前記整流回路の組を選択する選択スイッチを有する計測システム。
【請求項5】
前記平滑部は、
前記バンドパスフィルタおよび前記整流回路の各組に対応した前記ローパスフィルタを有する請求項に記載の計測システム。
【請求項6】
前記センサ部は、計測する物理量に応じて静電容量が変化するセンサダイアフラムとともに変位する可動電極と、前記可動電極に対向して設けられた固定電極とを前記センサ素子として有し、
前記センサ部には、前記センサダイアフラムを共振させないように設定した前記センサ駆動周波数の前記交流信号が供給される請求項1~請求項のいずれか一項に記載の計測システム。
【請求項7】
計測する物理量に応じて静電容量が変化するセンサダイアフラムとともに変位する可動電極と、前記可動電極に対向して設けられた固定電極とをセンサ素子として有するセンサ部と、
前記センサ部から送られるセンサ信号のうち、設定された周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタおよび前記バンドパスフィルタを通過した信号を検波する整流回路の組を複数有する検波回路部と、
検波回路部からの信号を平滑する平滑部とを備える静電容量型センサの製造方法であって、
前記センサダイアフラムの固有振動数に基づく共振周波数を計測する工程と、
計測した前記共振周波数から、信号発生装置が発生する複数のセンサ駆動周波数の交流信号の中から前記センサ部に供給する前記交流信号の前記センサ駆動周波数を決定し、前記信号発生装置が発生する前記交流信号を、決定した前記センサ駆動周波数に設定する工程を有する静電容量型センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計測対象の物理量を静電容量に変換し、物理量の検出を行う静電容量型センサを備える計測システムおよび静電容量型センサの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、静電容量(キャパシタンス)の変化を利用して、物理量の検出および計測を行う静電容量型センサがある。隔膜真空計などに用いられる静電容量型センサは、一般的に、センサ素子に、電極を有するセンサダイアフラム(隔膜)を有し、物理量の大きさに基づくセンサダイアフラムの変位を信号に変換することを検出原理としている。静電容量型センサは、圧力センサとして利用される(たとえば、特許文献1参照)。静電容量型センサを圧力センサとして利用する場合に、センサダイアフラムは、被計測媒体の圧力を受けて撓み、位置が変位する。センサダイアフラムは、受ける圧力に応じて撓む。圧力センサは、センサダイアフラムに対向する固定電極を有しており、センサダイアフラムの変位により、電極間距離が変位することで、電極における静電容量が変化する。このため、静電容量から被計測媒体の圧力を検出することができる。このような圧力センサは、ガス種依存性が少ないことから、半導体設備を始め、工業用途において使用されることが多い。
【0003】
静電容量型センサでは、センサ素子に、正弦波(たとえば、センサ駆動周波数f、振幅A)の交流電圧を印加する。センサ素子を流れる電流は、電荷増幅回路によって増幅され、物理量の大きさに対応した信号となる。この信号は、検波回路により検波(整流)される。検波された信号は、さらに、ローパスフィルタで平滑され、直流信号が得られる。直流信号は、たとえば、ΔΣ型AD変換器などのAD変換器によってデジタル信号に変換される。静電容量型センサで用いられるフィルタは、センサ素子に印加される正弦波の周波数成分を通過させるように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-331328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、静電容量型センサに、交流電圧を印加すると、センサダイアフラムがクーロン力によって振動する。このため、センサダイアフラムが有する固有振動数による共振周波数とセンサ駆動周波数とが一致すると、センサダイアフラムが共振を起こしてしまい、物理量の変化で振動しているかまたは電気的要因で振動しているかが区別できなくなってしまう。したがって、センサ駆動周波数が、共振周波数とは外れた周波数となるように設定する必要がある。また、ノイズ成分などを避けるために、他にもセンサ駆動周波数として外したい周波数がある場合もある。
【0006】
しかし、たとえば、センサダイアフラムの共振周波数は、個体差、物理量の検出範囲などによって、ばらつきが広範囲になる。このため、センサ駆動周波数を特定して設定することは困難である。
【0007】
本発明は、このような課題を解決する計測システムおよび静電容量型センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明の計測システムは、計測する物理量に応じて変化する静電容量に対応したセンサ信号を出力するセンサ素子を有するセンサ部、センサ部からのセンサ信号のうち、設定された周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタおよびバンドパスフィルタを通過した信号を検波する整流回路を有する検波回路部並びに検波回路部からの信号を平滑する平滑部を有する静電容量型センサと、複数のセンサ駆動周波数の交流信号から選択された1つの信号を発生させる信号発生装置とを備え、バンドパスフィルタは、信号発生装置からセンサ素子に供給されるセンサ駆動周波数の交流信号に対応して、フィルタのパラメータを変更することができる変更回路を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、センサ素子において、センサダイアフラムを共振させないように設定したセンサ駆動周波数など、信号発生装置から供給される選択された交流信号のセンサ駆動周波数に対応した交流信号を、センサ部に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に係る静電容量型センサを中心とする計測システムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る静電容量型センサの構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態1に係るセンサ部の要部の構成を示す図である。
図4】本発明の実施の形態1に係るバンドパスフィルタについて説明する図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る静電容量型センサのバンドパスフィルタの回路構成を示す図である。
図6】本発明の実施の形態3に係る静電容量型センサの構成を示す図である。
図7】本発明の実施の形態4に係る静電容量型センサのバンドパスフィルタの回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る静電容量型センサを備える計測システムについて、図面などを参照しながら説明する。各図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。また、図面では、各構成部材の大きさの関係が、実際のものとは異なる場合がある。そして、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。特に、構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。そして、添字で区別などしている複数の同種の機器などについて、特に区別したり、特定したりする必要がない場合には、添字などを省略して記載する場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る静電容量型センサを中心とする計測システムの構成を示す図である。図1の計測システムは、静電容量型センサ100、信号発生装置200およびAD変換器300を有する。計測システムは、物理量の検出および計測を行う。ここで、本実施の形態では、静電容量型センサ100が検出する物理量は、被計測媒体の圧力であるものとする。
【0013】
信号発生装置200は、静電容量型センサ100に正弦波の交流電圧を印加し、物理量である圧力検出に関する電力となる交流信号を供給する。ここで、本実施の形態における信号発生装置200は、専用のIC回路を有し、発振周波数を複数に変更することができ、複数のセンサ駆動周波数の正弦波による交流信号を選択して供給することができる。ここで、信号発生装置200からの信号は、交流信号であれば特に限定するものではない。
【0014】
AD変換器300は、被計測媒体の圧力を検出して得られるアナログ信号である直流信号を、信号の大きさに基づく数値を表した二値データを含むデジタル信号に変換する。ここで、本実施の形態のAD変換器300は、ΔΣ型AD変換器であるとする。ΔΣ型AD変換器は、入力された直流信号に対して、差分および積分による演算を行うことで、高速および高精度の変換を行うことができる変換器である。ただし、AD変換器300は、ΔΣ型AD変換器に限定するものではない。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態1に係る静電容量型センサの構成を示す図である。図2において、静電容量型センサ100は、センサ部110、電荷増幅部120、検波回路部130および平滑部140を有する。センサ部110は、静電容量型のセンサ素子となるセンサチップで構成されている。センサ部110は、後述するように、検出側電極部118および参照側電極部119を有する。センサ部110については、後述する。
【0016】
電荷増幅部120は、センサ部110の静電容量に応じた増幅を行う。電荷増幅部120は、検出側増幅器121Aおよび参照側増幅器121Bの帰還部に、それぞれ検出側コンデンサ122Aおよび参照側コンデンサ122Bが配置されている。検出側増幅器121Aは、後述するセンサ部110の検出側電極部118に係る静電容量に応じて増幅した電流を検出信号として出力する。また、参照側増幅器121Bは、後述するセンサ部110の参照側電極部119に係る静電容量に応じて増幅した電流を参照信号として出力する。
【0017】
検波回路部130は、電荷増幅部120から出力された検出信号および参照信号を検波(整流)する。検波回路部130は、減算器131、バンドパスフィルタ(BPF)132A~バンドパスフィルタ132Cおよび整流回路133A~整流回路133Cを有する。減算器131は、検出信号と参照信号との差分となる差分信号を出力する。バンドパスフィルタ132A~バンドパスフィルタ132Cは、設定された周波数域の信号を通過させるフィルタである。また、整流回路133A~整流回路133Cは、バンドパスフィルタ132A~バンドパスフィルタ132Cを通過した信号を半波整流または全波整流を行う。実施の形態1においては、半波整流を行うものとする。ここで、バンドパスフィルタ132Aと整流回路133Aとは、差分信号の整流などを行う。また、バンドパスフィルタ132Bと整流回路133Bとは、検出信号の整流などを行う。そして、バンドパスフィルタ132Cと整流回路133Cとは、参照信号の整流などを行う。
【0018】
平滑部140は、ローパスフィルタ(LPF)141A~ローパスフィルタ141Cを有し、検波回路部130において検波された信号を平滑し、平均化した直流信号を、前述したAD変換器300に出力する。ここで、ローパスフィルタ141Aは、差分信号を平滑し、直流信号V1として出力する。また、ローパスフィルタ141Bは、検出信号を平滑し、直流信号V2として出力する。そして、ローパスフィルタ141Cは、参照信号を平滑し、直流信号V3として出力する。
【0019】
図3は、本発明の実施の形態1に係るセンサ部の要部の構成を示す図である。図3は、隔膜真空計などに用いられるセンサ部110を示している。実施の形態1において、センサ部110は、基台111、センサダイアフラム112、可動センサ電極(第1の電極)114、固定センサ電極(第2の電極)115、可動参照電極116および固定参照電極117を備える。実施の形態1のセンサ部110では、被計測媒体の圧力によりセンサダイアフラム112が圧され、センサダイアフラム112の位置を変化させる。センサダイアフラム112の位置により可動電極と固定電極との間の静電容量が変化する。このため、被計測媒体の圧力が静電容量に変換されることになる。
【0020】
基台111は、受圧部となるセンサダイアフラム112を支える。センサダイアフラム112は、例えば、サファイア、アルミナセラミックなどの耐熱性および耐食性を有する絶縁体の材料から構成されているものとする。ただし、これに限定するものではない。センサダイアフラム112は、平面視中央に凹部を有する基台111の支持部111aによって支持されている。センサダイアフラム112は、支持部111aの内側の可動領域112aにおいて、基台111の方向に変位可能とされている。可動領域112aは、圧力が均等にかかって変位させるため、たとえば、平面視において、円形状になっている。容量室113は、可動領域112aにおけるセンサダイアフラム112と基台111との間の真空空間である。
【0021】
可動センサ電極114は、容量室113の内部でセンサダイアフラム112の可動領域112aに形成されている。また、固定センサ電極115は、可動センサ電極114と、容量室113の内部で基台111の上に可動センサ電極114に対向して設置されている。実施の形態1のセンサ部110は、さらに、可動参照電極116および固定参照電極117を備える。可動参照電極116は、容量室113の内部でセンサダイアフラム112の可動領域112aにおいて可動センサ電極114の周囲(センサダイアフラム112の周縁部分)に形成されている。固定参照電極117は、容量室113の内部で固定センサ電極115の周囲の基台111の上に形成されている。可動参照電極116と固定参照電極117とは対向して設置されている。ここで、可動センサ電極114と可動参照電極116とでは、可動センサ電極114の方がよく撓むため、可動参照電極116よりも変位が大きくなる。ここで、可動センサ電極114と固定センサ電極115との組は、検出用の検出側電極部118となる。また、可動参照電極116と固定参照電極117との組は、参照用の参照側電極部119となる。したがって、2つのセンサ信号が出力される。
【0022】
図4は、本発明の実施の形態1に係るバンドパスフィルタについて説明する図である。図4に示すように、バンドパスフィルタは、通過させる周波数帯域の幅をあらかじめ設計することができる。そこで、実施の形態1のバンドパスフィルタ132は、信号発生装置200が出力可能な複数のセンサ駆動周波数による信号を通過させることができるフィルタで構成する。図4では、信号発生装置200のセンサ駆動周波数に合わせて、60kHzを中心として、±2kHzの範囲の帯域幅の信号を通過させることができる。
【0023】
一方、センサダイアフラム112の固有振動数に基づく共振周波数については、製造時の工程において、あらかじめインピーダンスアナライザなどにより計測しておく。そして、交流信号としてセンサダイアフラム112の共振周波数を避けたセンサ駆動周波数が選択され、信号発生装置200は、選択されたセンサ駆動周波数による正弦波の交流信号を供給する。たとえば、図4のバンドパスフィルタ132では、58kHz~62kHzの間でセンサ駆動周波数を選択することができる。
【0024】
以上のように、実施の形態1の静電容量型センサ100によれば、検波回路部130のバンドパスフィルタ132は、信号発生装置200が供給可能な複数のセンサ駆動周波数に対応した信号を通過させる設計のフィルタとする。このため、信号発生装置200は、センサダイアフラムを共振させないセンサ駆動周波数の交流信号を、センサ部110に供給することができる。
【0025】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2に係る静電容量型センサのバンドパスフィルタの回路構成を示す図である。図5(a)は、バンドパスフィルタ132の回路構成の一例であり、図5(b)は、別の一例を示す。前述した実施の形態1では、検波回路部130のバンドパスフィルタ132は、信号発生装置200における複数のセンサ駆動周波数に対応した周波数帯域の信号を通過させる構成のフィルタであった。実施の形態2の静電容量型センサ100は、複数の通過周波数帯域のうちから、1の通過周波数帯域を選択できる構成のバンドパスフィルタ132を有するものである。
【0026】
図5のバンドパスフィルタ132は、増幅器151を有する。また、複数のコンデンサが並列に接続されるコンデンサ部152およびコンデンサ部153を有する。そして、抵抗器を有する抵抗部154、抵抗部155および抵抗部156を有する。ここでは、コンデンサ部152は、コンデンサ152Aおよびコンデンサ152Bを有する。また、コンデンサ部153は、コンデンサ153Aおよびコンデンサ153Bを有する。また、コンデンサ部152およびコンデンサ部153は、それぞれキャパシタンス選択スイッチ152Cおよびキャパシタンス選択スイッチ153Cを有する。図5(a)では、キャパシタンス選択スイッチ152Cおよびキャパシタンス選択スイッチ153Cを入れることにより、一方のコンデンサ(ここでは、それぞれコンデンサ152Bとコンデンサ153Bとする)を電気的に接続することができる。また、キャパシタンス選択スイッチ152Cおよびキャパシタンス選択スイッチ153Cを切ることにより、コンデンサ152Bとコンデンサ153Bとを電気的に遮断することができる。一方、図5(b)では、コンデンサ152Aまたはコンデンサ152Bのいずれかを選択することができる。また、コンデンサ153Aまたはコンデンサ153Bのいずれかを選択することができる。
【0027】
並列に接続されたコンデンサの静電容量(キャパシタンス)は、各コンデンサのキャパシタンスの和となる。このため、コンデンサ部152およびコンデンサ部153において、キャパシタンス選択スイッチ152Cおよびキャパシタンス選択スイッチ153Cの切替により、コンデンサ部152およびコンデンサ部153におけるキャパシタンスを異ならせることができる。ここで、コンデンサ部152およびコンデンサ部153におけるキャパシタンスをそれぞれC2およびC1とする。また、抵抗部156、抵抗部154および抵抗部155におけるレジスタンスをそれぞれR1、R2およびR3とする。このとき、バンドパスフィルタ132における通過周波数帯域fpは、次式(1)で表される。
【0028】
fp={(R1+R3)/(R1・R2・R3・C1・C2)}1/2/2π …(1)
【0029】
バンドパスフィルタ132を通過する信号において、周波数帯域の中心周波数は、キャパシタンスに依存する。そこで、信号発生装置200が供給可能な複数のセンサ駆動周波数の信号に合わせて、コンデンサ152Aおよびコンデンサ152B並びにコンデンサ153Aおよびコンデンサ153Bのキャパシタンスを設定する。そして、検査などにより確定したセンサダイアフラム112の共振周波数に基づいて、決定したセンサ駆動周波数に合わせて、キャパシタンス選択スイッチ152Cおよびキャパシタンス選択スイッチ153Cの切替設定を行う。
【0030】
以上のように、実施の形態2の静電容量型センサ100によれば、バンドパスフィルタ132のコンデンサ部152およびコンデンサ部153は、キャパシタンス選択スイッチ152Cおよびキャパシタンス選択スイッチ153Cを有し、複数のキャパシタンスを設定することができる。キャパシタンス選択スイッチ152Cおよびキャパシタンス選択スイッチ153Cの切替を行うことで、コンデンサ部152およびコンデンサ部153におけるコンデンサの静電容量(キャパシタンス)を切り替えることができる。その結果、通過周波数帯域を切り替えることができる。このため、センサダイアフラム112の共振周波数を避けたセンサ駆動周波数に基づく検出信号、参照信号および差分信号に対し、設定された周波数帯域の信号を通過させることができる。実施の形態2の静電容量型センサ100では、コンデンサ部152およびコンデンサ部153のキャパシタンスの大きさを自由に設計することができる。このため、信号発生装置200から送られる信号について、離れたセンサ駆動周波数を選択することができ、センサダイアフラム112の共振を、より確実に防ぐことができる。
【0031】
実施の形態3.
図6は、本発明の実施の形態3に係る静電容量型センサの構成を示す図である。実施の形態3の静電容量型センサ100は、信号発生装置200から供給可能な複数のセンサ駆動周波数の交流信号に合わせた、検波回路部130のバンドパスフィルタ132、整流回路133および平滑部140のローパスフィルタ141の組を複数備えるものである。そして、センサダイアフラム112の共振を避けることができる信号発生装置200のセンサ駆動周波数に基づく組み合わせを選択し、検出信号、参照信号および差分信号を送るようにしたものである。
【0032】
図6に示すように、実施の形態3の検波回路部130は、バンドパスフィルタ132A-1~バンドパスフィルタ132C-1およびバンドパスフィルタ132A-2~バンドパスフィルタ132C-2並びに整流回路133A-1~整流回路133C-1および整流回路133A-2~整流回路133C-2を有する。この点で、実施の形態1の検波回路部130とは異なる。また、実施の形態3の検波回路部130は、バンドパスフィルタ132A-1~バンドパスフィルタ132C-1またはバンドパスフィルタ132A-2~バンドパスフィルタ132C-2のいずれかに、検出信号、参照信号および差分信号を送るかを選択する組選択スイッチ134A~組選択スイッチ134Cを有する。そして、実施の形態3の平滑部140は、ローパスフィルタ141A-1~ローパスフィルタ141C-1およびローパスフィルタ141A-2~ローパスフィルタ141C-2を有する点で、実施の形態1の平滑部140とは異なる。ここで、本実施の形態では、2つの組を備える構成としたが、3以上の組を備える構成としてもよい。また、図6では、平滑部140のローパスフィルタ141を組にしたが、検波回路部130の送信側にも選択スイッチを有するなどして、ローパスフィルタ141を共通で用いるようにしてもよい。
【0033】
以上のように、実施の形態3の静電容量型センサ100では、信号発生装置200が供給可能な複数のセンサ駆動周波数に合わせた、検波回路部130のバンドパスフィルタ132、整流回路133および平滑部140のローパスフィルタ141の組を複数備える。そして、組選択スイッチ134により、用いられるセンサ駆動周波数に対応する組に、検出信号、参照信号および差分信号を送るようにした。このため、センサダイアフラム112の共振周波数を避けたセンサ駆動周波数に基づく検出信号、参照信号および差分信号に対し、設定された周波数帯域の信号を通過させることができる。また、実施の形態3の静電容量型センサ100では、センサ駆動周波数に合わせて各組を自由に設計することができる。このため、離れたセンサ駆動周波数を選択することができ、センサダイアフラム112の共振を、より確実に防ぐことができる。
【0034】
実施の形態4.
図7は、本発明の実施の形態4に係る静電容量型センサのバンドパスフィルタの回路構成を示す図である。図7(a)は、バンドパスフィルタ132の回路構成の一例であり、図7(b)は、別の一例を示す。前述した実施の形態2の静電容量型センサ100は、複数の通過周波数帯域のうちから、1の通過周波数帯域を選択できる構成のバンドパスフィルタ132を有する。そして、実施の形態2のバンドパスフィルタ132は、キャパシタンス選択スイッチ152Cおよびキャパシタンス選択スイッチ153Cを有し、バンドパスフィルタ132内のコンデンサ部152およびコンデンサ部153のキャパシタンスを変化させることができるものであった。実施の形態4のバンドパスフィルタ132は、抵抗部154、抵抗部155および抵抗部156の抵抗値(レジスタンス)を変化させ、バンドパスフィルタ132における通過周波数帯域fpを選択できるようにするものである。
【0035】
図7に示すように、実施の形態4のバンドパスフィルタ132は、コンデンサ部152およびコンデンサ部153は、それぞれ1つのコンデンサを有する。増幅器151を有する。また、複数の抵抗器が並列に接続される抵抗部154、抵抗部155および抵抗部156を有する。ここでは、抵抗部154は、抵抗器154Aおよび抵抗器154Bを有する。また、抵抗部155は、抵抗器155Aおよび抵抗器155Bを有する。そして、抵抗部156は、抵抗器156Aおよび抵抗器156Bを有する。また、抵抗部154、抵抗部155および抵抗部156は、それぞれレジスタンス選択スイッチ154C、レジスタンス選択スイッチ155Cおよびレジスタンス選択スイッチ156Cを有する。図7(a)では、レジスタンス選択スイッチ154C、レジスタンス選択スイッチ155Cおよびレジスタンス選択スイッチ156Cを入れることにより、一方の抵抗器(ここでは、それぞれ抵抗器154B、抵抗器155Bおよび抵抗器156Bとする)を電気的に接続することができる。また、レジスタンス選択スイッチ154C、155Cおよび156Cを切ることにより、抵抗器154B、抵抗器155Bおよび抵抗器156Bを電気的に遮断することができる。一方、図7(b)では、抵抗器154Aまたは抵抗器154Bのいずれかを選択することができる。また、抵抗器155Aまたは抵抗器155Bのいずれかを選択することができる。そして、抵抗器156Aまたは抵抗器156Bのいずれかを選択することができる。
【0036】
図7(a)において、並列に接続された抵抗器の抵抗値は、各抵抗器の抵抗値の逆数の和となる。このため、レジスタンス選択スイッチ154C、レジスタンス選択スイッチ155Cおよびレジスタンス選択スイッチ156Cの切替によって、抵抗部154、抵抗部155および抵抗部156における抵抗値を異ならせることができる。したがって、前述した(1)式のように、バンドパスフィルタ132における通過周波数帯域fpを異ならせることができる。
【0037】
そして、信号発生装置200が供給可能な複数のセンサ駆動周波数の信号に合わせて、抵抗器154Aおよび抵抗器154B、抵抗器155Aおよび抵抗器155B並びに抵抗器156Aおよび抵抗器156Bのレジスタンスを設定する。そして、検査などにより確定したセンサダイアフラム112の共振周波数に基づいて、決定したセンサ駆動周波数に合わせて、レジスタンス選択スイッチ154C、レジスタンス選択スイッチ155Cおよびレジスタンス選択スイッチ156Cの切替設定を行う。
【0038】
以上のように、実施の形態4の静電容量型センサ100によれば、バンドパスフィルタ132の抵抗部154、抵抗部155および抵抗部156は、レジスタンス選択スイッチ154C、レジスタンス選択スイッチ155Cおよびレジスタンス選択スイッチ156Cを有し、複数の抵抗値を設定することができる。レジスタンス選択スイッチ154C、レジスタンス選択スイッチ155Cおよびレジスタンス選択スイッチ156Cの切替を行うことで、抵抗部154、抵抗部155および抵抗部156の抵抗値を切り替えることができる。その結果、通過周波数帯域を切り替えることができる。このため、センサダイアフラム112の共振周波数を避けたセンサ駆動周波数に基づく検出信号、参照信号および差分信号に対し、設定された周波数帯域の信号を通過させることができる。
【0039】
実施の形態5.
上述した実施の形態1~実施の形態4においては、物理量として圧力を計測する静電容量型センサ100について説明したが、被計測対象および物理量は、湿度、重量、加速度など、圧力に限定するものではない。
【0040】
上述した実施の形態2においては、キャパシタンス選択スイッチ152Cおよびキャパシタンス選択スイッチ153Cを有し、バンドパスフィルタ132内のコンデンサ部152およびコンデンサ部153のキャパシタンスを変化させるようにした。ここで、キャパシタンス選択スイッチ152Cおよびキャパシタンス選択スイッチ153Cの代わりに、可変コンデンサにより、バンドパスフィルタ132のパラメータを変更する変更回路を構成し、キャパシタンスを変化させるようにしてもよい。
【0041】
また、上述した実施の形態4においては、レジスタンス選択スイッチ154C、レジスタンス選択スイッチ155Cおよびレジスタンス選択スイッチ156Cを有し、抵抗部154、抵抗部155および抵抗部156の抵抗値を複数設定することができるようにした。ここで、レジスタンス選択スイッチ154C、レジスタンス選択スイッチ155Cおよびレジスタンス選択スイッチ156Cの代わりに、可変抵抗器により、バンドパスフィルタ132のパラメータを変更する変更回路を構成し、抵抗値を変化させるようにしてもよい。
【0042】
以上、実施の形態を参照して、本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態の内容に限定されるものではない。本発明の構成、詳細などには、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0043】
100 静電容量型センサ、110 センサ部、111 基台、111a 支持部、112 センサダイアフラム、112a 可動領域、113 容量室、114 可動センサ電極、115 固定センサ電極、116 可動参照電極、117 固定参照電極、118 検出側電極部、119 参照側電極部、120 電荷増幅部、121A 検出側増幅器、121B 参照側増幅器、122A 検出側コンデンサ、122B 参照側コンデンサ、130 検波回路部、131 減算器、132,132A,132B,132C,132A-1,132B-1,132C-1,132A-2,132B-2,132C-2 バンドパスフィルタ、133,133A,133B,133C,133A-1,133B-1,133C-1,133A-2,133B-2,133C-2 整流回路、134,134A,134B,134C 組選択スイッチ、140 平滑部、141,141A,141B,141C,141A-1,141B-1,141C-1,141A-2,141B-2,141C-2 ローパスフィルタ、151 増幅器、152,153 コンデンサ部、152A,152B,153A,153B コンデンサ、152C,153C キャパシタンス選択スイッチ、154,155、156 抵抗部、154A,154B,155A,155B,156A,154B 抵抗器、154C,155C,156C レジスタンス選択スイッチ、200 信号発生装置、300 AD変換器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7