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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230714BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019187541
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021064661
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岐部 太一
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-188321(JP,A)
【文献】特開2008-047657(JP,A)
【文献】国際公開第2012/019017(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に略直交する第1の表面を有する第1の部材と、
前記第1の部材に接合された第2の部材であって、前記第1の表面に対向する第2の表面と、前記第2の表面とは反対側の第3の表面と、を有し、前記第2の表面から前記第3の表面まで貫通する貫通孔が形成され、熱膨張係数が前記第1の部材の熱膨張係数とは異なる第2の部材と、
前記第1の部材の前記第1の表面の側に配置された給電パッドと、
前記給電パッドに接合され、少なくとも一部が前記貫通孔の内部に位置している第1の給電端子と、
前記第2の部材の前記第3の表面の側に配置され、少なくとも一部が前記貫通孔の内部に位置している第2の給電端子と、
前記貫通孔の内部における前記第1の給電端子と前記第2の給電端子との間に配置された第3の給電端子と、を備える保持装置において、
前記第1の給電端子と前記第3の給電端子の少なくとも一方は、前記第1の給電端子と前記第3の給電端子との間の電気的導通が可能であり、前記第1の方向に略直交する方向に伸縮する第1のばねを有し、
前記第2の給電端子と前記第3の給電端子の少なくとも一方は、前記第2の給電端子と前記第3の給電端子との間の電気的導通が可能であり、前記第1の方向に略直交する方向に伸縮する第2のばねを有し、
前記第3の給電端子は、前記貫通孔を画定する前記第2の部材の壁面との間に隙間が形成されるように配置され、前記第1の方向に略直交する方向に移動可能なように備えられている、
ことを特徴とする、保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置において、
前記第1の給電端子は、前記第3の給電端子に対向する第4の表面を有し、前記第4の表面から前記第1の方向に突出する第1の凸部を有し、
前記第2の給電端子は、前記第3の給電端子に対向する第5の表面を有し、前記第5の表面から前記第1の方向に突出する第2の凸部を有し、
前記第3の給電端子の前記第1の給電端子の側の端部には、前記第1の方向に凹む第1の凹部が形成され、
前記第1の凹部には、前記第1の凸部の少なくとも一部が挿入され、
前記第3の給電端子の前記第2の給電端子の側の端部には、前記第1の方向に凹む第2の凹部が形成され、
前記第2の凹部には、前記第2の凸部の少なくとも一部が挿入され、
前記第1のばねは、前記第1の凸部と前記第1の凹部との少なくとも一方の少なくとも一部を形成し、
前記第2のばねは、前記第2の凸部と前記第2の凹部との少なくとも一方の少なくとも一部を形成している、
ことを特徴とする、保持装置。
【請求項3】
請求項2に記載の保持装置において、
前記第4の表面と前記第5の表面とのそれぞれは、前記第1の方向視で前記第3の給電端子を内包し、
前記第1の凹部の深さが前記第1の凸部の高さよりも大きく、
前記第2の凹部の深さが前記第2の凸部の高さよりも大きい、
ことを特徴とする、保持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の保持装置において、
前記第1の部材と前記第2の部材との少なくとも一方に配置され、加熱または冷却を行う温度調整手段を備える、
ことを特徴とする、保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体を製造する際にウェハを保持する保持装置として、静電チャックが用いられる。静電チャックは、例えばセラミックスにより構成され、所定の方向(以下、「第1の方向」という。)に略直交する略平面状の表面(以下、「吸着面」という。)を有する板状部材と、板状部材の内部に配置されたチャック電極と、例えば金属により構成され、板状部材の吸着面とは反対側の表面(以下、「第1の表面」という。)に対向する表面(以下、「第2の表面」という。)を有するベース部材とを備えている。静電チャックは、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、板状部材の吸着面にウェハを吸着して保持する。
【0003】
静電チャックの吸着面に保持されたウェハの温度が所望の温度にならないと、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがあるため、静電チャックにはウェハの温度分布を制御する性能が求められる。そのため、静電チャックの使用時には、板状部材に配置されたヒータ電極による加熱や、ベース部材に形成された冷媒流路に冷媒を供給することによる冷却によって、板状部材の吸着面の温度分布の制御(ひいては、吸着面に保持されたウェハの温度分布の制御)が行われる。
【0004】
静電チャックには、ヒータ電極への給電のための構成が設けられる(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1の静電チャックは、板状部材の第1の表面(吸着面とは反対側の表面)の側に配置された給電パッドと、ベース部材の第2の表面(板状部材の第1の表面に対向する表面)から第2の表面とは反対側の表面(以下、「第3の表面」という。)まで貫通する貫通孔に配置された給電端子を備える。当該給電端子は、給電パッドに接合された第1の給電端子と、ベース部材の第3の表面の側に配置された第2の給電端子と、第1の給電端子と第2の給電端子との間に配置された第3の給電端子とにより構成されている。第3の給電端子は、ベース部材に対してねじにより固定されている。第1の給電端子の先端は、第1の方向に略直交する方向に伸縮する第1のばねを形成しており、第1のばねは、第3の給電端子に接触している。第2の給電端子の先端は、第1の方向に略直交する方向に伸縮する第2のばねを形成しており、第2のばねは、第3の給電端子に接触している。このような構成では、電源から、第2の給電端子、第3の給電端子、第1の給電端子、給電パッド等を介して、ヒータ電極に電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4522517号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成を有する従来の静電チャックでは、板状部材とベース部材との間で熱膨張係数が異なることにより、板状部材とベース部材との間の熱膨張差に起因してベース部材が板状部材に対して第1の方向に略直交する方向(以下、「第2の方向」という。)に相対的に変位することがある。これにより、第1の給電端子等に第2の方向の力がかかり、例えば第1の給電端子と給電パッドとの接合部分にクラックが発生する等、第1の給電端子や他の部材が損傷するおそれがある。上記構成を有する従来の静電チャックでは、第2の方向に伸縮する第1のばねおよび第2のばねの存在により、ベース部材の相対的な変位に起因して第1の給電端子等に第2の方向の力がかかることをある程度は抑制できる。しかしながら、第3の給電端子がベース部材に対してねじにより固定されているため、ベース部材の相対的な変位による力が第3の給電端子にかかりやすく(ひいては、第1の給電端子等にかかりやすく)、そのため、ベース部材の変位に起因して第1の給電端子等に第2の方向の力がかかり、第1の給電端子や他の部材が損傷することを十分には抑制することができない。
【0007】
なお、このような課題は、第2の給電端子、第3の給電端子、第1の給電端子、給電パッド等を介して、ヒータ電極に電力が供給される静電チャックに限らず、第2の給電端子、第3の給電端子、第1の給電端子、給電パッド等を介して、特定部材(ヒータ電極以外の別の部材を含む。例えば、チャック電極)に電力が供給される保持装置に共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される保持装置は、第1の方向に略直交する第1の表面を有する第1の部材と、前記第1の部材に接合された第2の部材であって、前記第1の表面に対向する第2の表面と、前記第2の表面とは反対側の第3の表面と、を有し、前記第2の表面から前記第3の表面まで貫通する貫通孔が形成され、熱膨張係数が前記第1の部材の熱膨張係数とは異なる第2の部材と、前記第1の部材の前記第1の表面の側に配置された給電パッドと、前記給電パッドに接合され、少なくとも一部が前記貫通孔の内部に位置している第1の給電端子と、前記第2の部材の前記第3の表面の側に配置され、少なくとも一部が前記貫通孔の内部に位置している第2の給電端子と、前記貫通孔の内部における前記第1の給電端子と前記第2の給電端子との間に配置された第3の給電端子と、を備える保持装置において、前記第1の給電端子と前記第3の給電端子の少なくとも一方は、前記第1の給電端子と前記第3の給電端子との間の電気的導通が可能であり、前記第1の方向に略直交する方向に伸縮する第1のばねを有し、前記第2の給電端子と前記第3の給電端子の少なくとも一方は、前記第2の給電端子と前記第3の給電端子との間の電気的導通が可能であり、前記第1の方向に略直交する方向に伸縮する第2のばねを有し、前記第3の給電端子は、前記貫通孔を画定する前記第2の部材の壁面との間に隙間が形成されるように配置され、前記第1の方向に略直交する方向に移動可能なように備えられている。
【0011】
本保持装置では、上述の通り、前記第3の給電端子は、前記貫通孔を画定する前記第2の部材の壁面との間に隙間が形成されるように配置され、前記第1の方向に略直交する方向に移動可能なように備えられている。そのため、前記第1の部材と前記第2の部材との間の熱膨張差に起因して前記第2の部材が前記第1の部材に対して相対的に変位したときに、上記従来の静電チャックよりも、前記第1の給電端子等に力がかかることを抑制することができ、その結果、上記従来の静電チャックよりも、前記第1の給電端子や他の部材の損傷を抑制することができる。
【0012】
(2)上記保持装置において、前記第1の給電端子は、前記第3の給電端子に対向する第4の表面を有し、前記第4の表面から前記第1の方向に突出する第1の凸部を有し、前記第2の給電端子は、前記第3の給電端子に対向する第5の表面を有し、前記第5の表面から前記第1の方向に突出する第2の凸部を有し、前記第3の給電端子の前記第1の給電端子の側の端部には、前記第1の方向に凹む第1の凹部が形成され、前記第1の凹部には、前記第1の凸部の少なくとも一部が挿入され、前記第3の給電端子の前記第2の給電端子の側の端部には、前記第1の方向に凹む第2の凹部が形成され、前記第2の凹部には、前記第2の凸部の少なくとも一部が挿入され、前記第1のばねは、前記第1の凸部と前記第1の凹部との少なくとも一方の少なくとも一部を形成し、前記第2のばねは、前記第2の凸部と前記第2の凹部との少なくとも一方の少なくとも一部を形成している、構成としてもよい。本保持装置においては、より効果的に、前記第1の給電端子等に力がかかることを抑制することができ、その結果、より効果的に、前記第1の給電端子や他の部材の損傷を抑制することができる。
【0013】
(3)上記保持装置において、前記第4の表面と前記第5の表面とのそれぞれは、前記第1の方向視で前記第3の給電端子を内包し、前記第1の凹部の深さが前記第1の凸部の高さよりも大きく、前記第2の凹部の深さが前記第2の凸部の高さよりも大きい、構成としてもよい。本保持装置では、前記第1の給電端子は、前記第1の凸部が前記第1の凹部の底面に接触しない位置で位置決め(前記第1の方向の位置決め。以下、同様)され、前記第2の給電端子は、前記第2の凸部が前記第2の凹部の底面に接触しない位置で位置決めされる。従って、本保持装置においては、前記第1の凸部が前記第1の凹部の底面に接触(または衝突)したり、前記第2の凸部が前記第2の凹部の底面に接触(または衝突)したりすることにより前記第1の凸部や前記第2の凸部が損傷することが防止される。
【0014】
(4)上記保持装置において、前記第1の部材と前記第2の部材との少なくとも一方に配置され、加熱または冷却を行う温度調整手段を備える、構成としてもよい。そのため、本保持装置においては、前記温度調整手段による加熱または冷却を行うことにより、前記第1の部材と前記第2の部材との間の熱膨張差に起因して前記第2の部材が前記第1の部材に対して相対的に変位する可能性が高い。そのため、このような構成において本発明を適用することは、特に有効である。
【0015】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、保持装置およびその製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】本実施形態における、チャック電極40およびヒータ電極50への給電のための構成(図2のPx部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.本実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、図3は、本実施形態における、チャック電極40およびヒータ電極50への給電のための構成(図2のPx部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
【0018】
静電チャック100は、対象物(例えば半導体ウェハW。以下、単に「ウェハW」という。)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置された板状部材10およびベース部材20を備える。なお、静電チャック100は、特許請求の範囲における保持装置に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当し、板状部材10は、特許請求の範囲における第1の部材に相当する。
【0019】
板状部材10は、上述した配列方向(Z軸方向)に略直交する略円形平面状の上面(以下、「吸着面」という)S1および下面(吸着面S1とは反対側の表面)S2を有する部材であり、例えばセラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。板状部材10の直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、板状部材10の厚さは例えば1mm~10mm程度である。なお、板状部材10の下面S2は、特許請求の範囲における第1の表面に相当する。
【0020】
図2に示すように、板状部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40に電源(図示せず)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが板状部材10の吸着面S1に吸着固定される。
【0021】
板状部材10の内部には、また、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)を含む抵抗発熱体により構成されたヒータ電極50が配置されている。ヒータ電極50に電源(図示せず)から電圧が印加されると、ヒータ電極50が発熱することによって板状部材10が温められ(加熱され)、板状部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが温められる(加熱される)。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。なお、ヒータ電極50は、特許請求の範囲における温度調整手段に相当する。
【0022】
ベース部材20は、板状部材10の下面S2に対向する上面S3と、上面S3とは反対側の下面S4とを有している。板状部材10とベース部材20とは、板状部材10の下面S2とベース部材20の上面S3とが、後述する接合部30を挟んで上記配列方向(Z軸方向)に対向するように配置される。ベース部材20は、例えば板状部材10と同径の、または、板状部材10より径が大きい略円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。従って、ベース部材20の熱膨張係数は、板状部材10の熱膨張係数とは異なっている。より具体的には、本実施形態では、ベース部材20の熱膨張係数は、板状部材10の熱膨張係数よりも大きい。ベース部材20の直径は、例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm~40mm程度である。なお、ベース部材20の上面S3は、特許請求の範囲における第2の表面に相当し、ベース部材20の下面S4は、特許請求の範囲における第3の表面に相当する。
【0023】
ベース部材20は、板状部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接合部30によって、板状部材10に接合されている。接合部30の厚さは、例えば0.1mm~1.5mm程度である。接合部30は、例えば樹脂材料(接着材料)により形成されている。接合部30を形成する樹脂材料としては、シリコーン樹脂やフッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の種々の樹脂材料を用いることができる。
【0024】
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接合部30を介したベース部材20と板状部材10との間の伝熱(熱引き)により板状部材10が冷却され、板状部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。なお、冷媒流路21は、特許請求の範囲における温度調整手段に相当する。
【0025】
A-2.チャック電極40およびヒータ電極50への給電のための構成:
次に、図2および図3を用いて、チャック電極40およびヒータ電極50への給電のための構成について説明する。静電チャック100は、ヒータ電極50への給電のための構成を備えている。すなわち、図3に示すように、静電チャック100には、ベース部材20の下面S4から板状部材10の内部に至るヒータ電極用端子用孔150が形成されている。ヒータ電極用端子用孔150は、ベース部材20を上下方向に貫通する貫通孔25と、接合部30を上下方向に貫通する貫通孔35と、板状部材10の下面S2側に形成された凹部15とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。本実施形態では、ヒータ電極用端子用孔150を構成する貫通孔25,35は、断面(Z軸方向に直交する方向に平行な断面)が略円形状の孔である。
【0026】
板状部材10におけるヒータ電極用端子用孔150を構成する凹部15の底面には、ヒータ電極用ビア51を介してヒータ電極50と電気的に接続されたヒータ電極用給電パッド52が配置されている。従って、ヒータ電極用給電パッド52は、板状部材10の下面S2の側に配置されている。ヒータ電極用給電パッド52およびヒータ電極用ビア51は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。なお、ヒータ電極用給電パッド52は、厚さ方向(Z軸方向)の全体が板状部材10から露出している。ただし、ヒータ電極用給電パッド52の下面が板状部材10から露出している限りにおいて、ヒータ電極用給電パッド52における厚さ方向の一部分または全体が、板状部材10に埋設されていてもよい。
【0027】
ベース部材20のヒータ電極用端子用孔150内には、絶縁性材料(例えばポリエーテルイミドなどの樹脂)により形成されたヒータ電極用絶縁管(インシュレーター)22が配置されている。ヒータ電極用絶縁管22の熱膨張係数は、板状部材10の熱膨張係数とは異なっている。より具体的には、本実施形態では、ヒータ電極用絶縁管22の熱膨張係数は、板状部材10の熱膨張係数よりも大きい。以下において、ベース部材20とヒータ電極用絶縁管22とにより構成される複合体を「ベース複合体200」という。また、「ベース部材20の上面S3」を「ベース複合体200の上面S3」ということがあり、「ベース部材20の下面S4」を「ベース複合体200の下面S4」ということがある。ここで、上述したように、ベース部材20の熱膨張係数と、ヒータ電極用絶縁管22の熱膨張係数とは、いずれも、板状部材10の熱膨張係数よりも大きい。従って、ベース複合体200の熱膨張係数は、板状部材10の熱膨張係数とは異なっている。
【0028】
ヒータ電極用絶縁管22は、ベース部材20の上面S3(より正確には、当該上面S3よりも少し上側)から下面S4まで延びている内部空間(以下、「ベース複合体200の貫通孔」という。)22aを有する管状の部材である。言い換えると、ベース複合体200の貫通孔22aは、ベース複合体200の上面S3から下面S4まで貫通している。本実施形態では、Z軸方向視でのベース複合体200の貫通孔22aの形状は、略円形(後述の幅広部22bを除く。)である。ヒータ電極用絶縁管22の存在により、後述するヒータ電極用の給電端子44とベース部材20との短絡が防止される。なお、本実施形態では、ベース複合体200は、特許請求の範囲における第2の部材に相当する。
【0029】
ヒータ電極用絶縁管22は、Z軸方向に略直交する方向(図3のXZ断面ではX軸方向)の幅が他の部分の幅よりも広い部分(以下、「幅広部」という。)22bを有している。ヒータ電極用絶縁管22の幅広部22bは、ヒータ電極用絶縁管22のうち、ベース部材20の下面S4の側に位置する。ヒータ電極用絶縁管22の幅広部22bは、ヒータ電極用絶縁管22におけるZ軸周りの周方向の一部に形成されている。ベース部材20のヒータ電極用端子用孔150を画定する壁面20aには、Z軸方向に略直交する方向(図3のXZ断面ではX軸方向)に凹む凹部(以下、「ベース部材凹部」という。)20bがZ軸周りの周方向の全周に亘って形成されている。ヒータ電極用絶縁管22の幅広部22bがベース部材凹部20bに配置されることにより、ヒータ電極用絶縁管22のZ軸方向の位置決めがなされる。なお、Z軸方向に平行な断面であって、図3のXZ断面とは別の断面において、ヒータ電極用絶縁管22の幅広部22bの幅よりも大きい内部空間が、Z軸方向におけるベース部材20の下面S4からベース部材凹部20bの上端まで形成されている。当該内部空間は、上記のベース部材凹部20bに連通している。ベース部材20にヒータ電極用絶縁管22の組み付ける際には、まず、ヒータ電極用絶縁管22の幅広部22bをベース部材20の下面S4側からベース部材凹部20bに差し込むことにより、幅広部22bをZ軸方向におけるベース部材凹部20bの位置に配置し、その後に、ヒータ電極用絶縁管22を、Z軸を中心として回転させることにより、ヒータ電極用絶縁管22の幅広部22bをベース部材凹部20bに配置する。また、ベース部材凹部20bとヒータ電極用絶縁管22の幅広部22bとの間には、接着剤(図示せず)が配置されており、当該接着剤により、Z軸方向に略直交する方向のヒータ電極用絶縁管22の位置ズレおよびZ軸を中心とした回転方向におけるヒータ電極用絶縁管22の位置ズレが防止される。なお、当該接着剤としては、例えば、耐腐食性を有するエポキシ接着剤を用いることができる。
【0030】
ベース複合体200の貫通孔22a(ヒータ電極用絶縁管22の内部空間)の内部には、ヒータ電極用の給電端子44が配置されている。ヒータ電極用の給電端子44は、ヒータ電極用の上側給電端子441(以下、単に「上側給電端子441」ともいう。)と、ヒータ電極用の下側給電端子442(以下、単に「下側給電端子442」ともいう。)と、ヒータ電極用の中央給電端子443(以下、単に「中央給電端子443」ともいう。)とから構成されている。上側給電端子441と、下側給電端子442と、中央給電端子443とは、いずれも、導電性を有する給電端子である。本実施形態では、各ヒータ電極用給電端子(上側給電端子441、下側給電端子442、中央給電端子443)のZ軸方向に略直交する断面の輪郭線は、略円形である。なお、ヒータ電極用の上側給電端子441は、特許請求の範囲における第1の給電端子に相当し、ヒータ電極用の下側給電端子442は、特許請求の範囲における第2の給電端子に相当し、ヒータ電極用の中央給電端子443は、特許請求の範囲における第3の給電端子に相当する。
【0031】
上側給電端子441の上端は、ヒータ電極用給電パッド52と隙間を介して対向しており、上側給電端子441は、ヒータ電極用ろう付け部78によってヒータ電極用給電パッド52に接合されている。下側給電端子442は、ベース部材20の下面S4の側に配置されている。中央給電端子443は、上側給電端子441と下側給電端子442との間に配置されている。
【0032】
上側給電端子441は、その下端において、導電性を有するばね(本実施形態では、板ばね。以下、「ヒータ電極用上側ばね」という。)441aを有している。本実施形態では、ヒータ電極用上側ばね441aは、上側給電端子441の他の部分と一体の部材として形成されている。ヒータ電極用上側ばね441aは、中央給電端子443に接触している。そのため、ヒータ電極用上側ばね441aを介した上側給電端子441と中央給電端子443との間の電気的導通が可能となっている。なお、ヒータ電極用上側ばね441aは、特許請求の範囲における第1のばねに相当する。
【0033】
下側給電端子442は、その上端において、導電性を有するばね(本実施形態では、板ばね。以下、「ヒータ電極用下側ばね」という。)442aを有している。本実施形態では、ヒータ電極用下側ばね442aは、下側給電端子442の他の部分と一体の部材として形成されている。ヒータ電極用下側ばね442aは、中央給電端子443に接触している。そのため、ヒータ電極用下側ばね442aを介した下側給電端子442と中央給電端子443との間の電気的導通が可能となっている。なお、ヒータ電極用下側ばね442aは、特許請求の範囲における第2のばねに相当する。
【0034】
下側給電端子442は、Z軸方向に略直交する方向(図3のXZ断面ではX軸方向)の幅が他の部分の幅よりも広い部分(以下、「幅広部」という。)442bを有している。下側給電端子442の幅広部442bは、下側給電端子442のうち、ベース部材20の下面S4の側に位置する。下側給電端子442の幅広部442bは、下側給電端子442におけるZ軸周りの周方向の一部に形成されている。ベース複合体200の貫通孔22a(ヒータ電極用絶縁管22の内部空間)を画定するヒータ電極用絶縁管22の壁面22cには、Z軸方向に略直交する方向(図3のXZ断面ではX軸方向)に凹む凹部(以下、「ヒータ電極用絶縁管凹部」という。)22dがZ軸周りの周方向の全周に亘って形成されている。下側給電端子442の幅広部442bがヒータ電極用絶縁管凹部22dに配置されることにより、下側給電端子442のZ軸方向の位置決めがなされる。なお、Z軸方向に平行な断面であって、図3のXZ断面とは別の断面において、下側給電端子442の幅広部442bの幅よりも大きい内部空間が、Z軸方向におけるベース部材20の下面S4からヒータ電極用絶縁管凹部22dの上端まで形成されている。当該内部空間は、上記のヒータ電極用絶縁管凹部22dに連通している。ヒータ電極用絶縁管22に下側給電端子442の組み付ける際には、まず、下側給電端子442の幅広部442bをベース部材20の下面S4側からヒータ電極用絶縁管凹部22dに差し込むことにより、幅広部442bをZ軸方向におけるヒータ電極用絶縁管凹部22dの位置に配置し、その後に、下側給電端子442を、Z軸を中心として回転させることにより、下側給電端子442の幅広部442bをヒータ電極用絶縁管凹部22dに配置する。また、ヒータ電極用絶縁管凹部22dと下側給電端子442の幅広部442bとの間には、接着剤(図示せず)が配置されており、当該接着剤により、Z軸方向に略直交する方向の下側給電端子442の位置ズレおよびZ軸を中心とした回転方向の下側給電端子442の位置ズレが防止される。なお、当該接着剤としては、例えば、耐腐食性を有するエポキシ接着剤を用いることができる。
【0035】
ヒータ電極50への給電のための構成は上述の通りである(上側給電端子441、下側給電端子442、および中央給電端子443の詳細構成については後述する)。静電チャック100の使用時には、電源(図示しない。)から、下側給電端子442、中央給電端子443、上側給電端子441、ヒータ電極用給電パッド52およびヒータ電極用ビア51を介してヒータ電極50に至る導通経路を介して、ヒータ電極50に電圧が印加されることにより、ヒータ電極50に電力が供給される。これにより、ヒータ電極50が発熱する。
【0036】
なお、チャック電極40への給電のための構成も、ヒータ電極50への給電のための構成と同様である。従って、基本的には、上記のヒータ電極50への給電のための構成において、「ヒータ電極50」を「チャック電極40」と読み替え、「ヒータ電極用端子用孔150」を「チャック電極用端子用孔140」と読み替え、「貫通孔25」を「貫通孔24」と読み替え、「貫通孔35」を「貫通孔34」と読み替え、「凹部15」を「凹部14」と読み替え、「ヒータ電極用ビア51」を「チャック電極用ビア41」と読み替え、「ヒータ電極用給電パッド52」を「チャック電極用電極パッド42」と読み替え、「ヒータ電極用ろう付け部78」を「チャック電極用ろう付け部」(図示せず)と読み替え、「ベース部材凹部20b」を「ベース部材凹部20c」と読み替え、「ヒータ電極用絶縁管22」を「チャック電極用絶縁管23」と読み替え、「ベース複合体200の貫通孔22a」を「ベース複合体200の貫通孔23a」と読み替え、「幅広部22b」を「幅広部22e」と読み替え、「ヒータ電極用絶縁管凹部22d」を「ヒータ電極用絶縁管凹部22f」と読み替え、「ヒータ電極用の給電端子44」を「チャック電極用の給電端子54」と読み替え、「ヒータ電極用の上側給電端子441」を「チャック電極用の上側給電端子541」と読み替え、「ヒータ電極用の下側給電端子442」を「チャック電極用の下側給電端子542」と読み替え、「ヒータ電極用の中央給電端子443」を「チャック電極用の中央給電端子543」と読み替え、「ヒータ電極用上側ばね441a」を「チャック電極用上側ばね541a」と読み替え、「ヒータ電極用下側ばね442a」を「チャック電極用下側ばね542a」と読み替えればよい。なお、チャック電極用の上側給電端子541は、特許請求の範囲における第1の給電端子に相当し、チャック電極用の下側給電端子542は、特許請求の範囲における第2の給電端子に相当し、チャック電極用の中央給電端子543は、特許請求の範囲における第3の給電端子に相当し、チャック電極用上側ばね541aは、特許請求の範囲における第1のばねに相当し、チャック電極用下側ばね542aは、特許請求の範囲における第2のばねに相当する。
【0037】
静電チャック100の使用時には、電源(図示しない。)から、チャック電極用の下側給電端子542、チャック電極用の中央給電端子543、チャック電極用の上側給電端子541、チャック電極用電極パッド42およびチャック電極用ビア41を介してチャック電極40に至る導通経路を介して、チャック電極40に電圧が印加される。これにより、ウェハWを吸着面S1に吸着固定するための静電引力が発生する。
【0038】
以下、ヒータ電極用の上側給電端子441とチャック電極用の上側給電端子541とをまとめて「上側給電端子441,541」ということがあり、ヒータ電極用の下側給電端子442とチャック電極用の下側給電端子542とをまとめて「下側給電端子442,542」ということがあり、ヒータ電極用の中央給電端子443とチャック電極用の中央給電端子543とをまとめて「中央給電端子443,543」ということがある。
【0039】
A-3.上側給電端子441,541、下側給電端子442,542、および中央給電端子443,543の詳細構成:
次に、図3を用いて、上側給電端子441,541、下側給電端子442,542、および中央給電端子443,543の詳細構成について説明する。
【0040】
上側給電端子441(ヒータ電極用の上側給電端子441)は、中央給電端子443(ヒータ電極用の中央給電端子443)に対向する下面441bを有する略平板部441cと、略平板部441cの下面441bの略中央から下方向(Z軸方向の一方)に突出する第1の凸部441dとを有している。下側給電端子442(ヒータ電極用の下側給電端子442)は、中央給電端子443に対向する上面442cを有する部分442dと、当該部分442dの上面442cから上方向(Z軸方向の他方)に突出する第2の凸部442eとを有している。なお、上側給電端子441の下面441bと、下側給電端子442の上面442cとのそれぞれは、上下方向(Z軸方向)視で中央給電端子443を内包している。なお、上側給電端子441の下面441bは、特許請求の範囲における第4の表面に相当し、下側給電端子442の上面442cは、特許請求の範囲における第5の表面に相当する。
【0041】
中央給電端子443における上側給電端子441の側の端部には、下方向(Z軸方向の一方)に凹む第1の凹部443aが形成されている。第1の凹部443aの深さd1は、上側給電端子441の第1の凸部441dの高さh1よりも大きい。そのため、上側給電端子441は、第1の凸部441dが第1の凹部443aの底面に接触しない位置で位置決め(Z軸方向の位置決め)される。
【0042】
第1の凹部443aには、上側給電端子441の第1の凸部441dの一部が挿入されている。また、第1の凹部443aに挿入された第1の凸部441dの当該一部の先端によって、上述したヒータ電極用上側ばね441a(本実施形態では、板ばね)が形成されている。
【0043】
中央給電端子443における下側給電端子442の側の端部には、上方向(Z軸方向の他方)に凹む第2の凹部443bが形成されている。第2の凹部443bの深さd2は、下側給電端子442の第2の凸部442eの高さh2よりも大きい。そのため、下側給電端子442は、第2の凸部442eが第2の凹部443bの底面に接触しない位置で位置決め(Z軸方向の位置決め)される。
【0044】
第2の凹部443bには、下側給電端子442の第2の凸部442eの一部が挿入されている。また、第2の凹部443bに挿入された第2の凸部442eの当該一部の先端によって、上述したヒータ電極用下側ばね442a(本実施形態では、板ばね)が形成されている。
【0045】
上下方向(Z軸方向)に略直交する方向における中央給電端子443の直径は、ベース複合体200の貫通孔22a(ヒータ電極用絶縁管22の内部空間)の直径よりも小さい。そのため、ベース複合体200の貫通孔22aを画定するヒータ電極用絶縁管22の壁面22cとの間に隙間G1が形成されている。そのため、中央給電端子443は、Z軸方向に略直交する方向(例えば、図3のXZ断面ではX軸方向)に移動可能である。
【0046】
ヒータ電極用の上側給電端子441、ヒータ電極用の下側給電端子442、およびヒータ電極用の中央給電端子443の詳細構成は上述の通りである。なお、チャック電極用の上側給電端子541、チャック電極用の下側給電端子542、およびチャック電極用の中央給電端子543の詳細構成も、ヒータ電極用の上側給電端子441、ヒータ電極用の下側給電端子442、およびヒータ電極用の中央給電端子443の詳細構成と同様である。従って、基本的には、上記のヒータ電極用の上側給電端子441、ヒータ電極用の下側給電端子442、およびヒータ電極用の中央給電端子443の詳細構成において、「ヒータ電極用の上側給電端子441」を「チャック電極用の上側給電端子541」と読み替え、「ヒータ電極用の下側給電端子442」を「チャック電極用の下側給電端子542」と読み替え、「ヒータ電極用の中央給電端子443」を「チャック電極用の中央給電端子543」と読み替え、「下面441b」を「下面541b」と読み替え、「略平板部441c」を「略平板部541c」と読み替え、「第1の凸部441d」を「第3の凸部541d」と読み替え、「上面442c」を「上面542c」と読み替え、「部分442d」を「部分542d」と読み替え、「第2の凸部442e」を「第4の凸部542e」と読み替え、「第1の凹部443a」を「第3の凹部543a」と読み替え、「第2の凹部443b」を「第4の凹部543b」と読み替え、「壁面22c」を「壁面23c」と読み替え、「隙間G1」を「隙間G2」と読み替えればよい。なお、第3の凸部541dは、特許請求の範囲における第1の凸部に相当し、第4の凸部542eは、特許請求の範囲における第2の凸部に相当し、第3の凹部543aは、特許請求の範囲における第1の凹部に相当し、チャック電極用上側ばね541aは、特許請求の範囲における第1のばねに相当し、第4の凹部543bは、特許請求の範囲における第2の凹部に相当する。
【0047】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の静電チャック100は、板状部材10と、板状部材10に接合されたベース複合体200と、ヒータ電極用給電パッド52と、上側給電端子441(ヒータ電極用の上側給電端子441)と、下側給電端子442(ヒータ電極用の下側給電端子442)と、中央給電端子443(ヒータ電極用の中央給電端子443)とを備える。板状部材10は、Z軸方向に略直交する下面S2を有する。ベース複合体200は、板状部材10の下面S2に対向する上面S3と、上面S3とは反対側の下面S4とを有している。ベース複合体200の熱膨張係数は、板状部材10の熱膨張係数とは異なる。ベース複合体200には、上面S3から下面S4まで貫通する貫通孔22aが形成されている。ヒータ電極用給電パッド52は、板状部材10の下面S2の側に配置されている。上側給電端子441は、ヒータ電極用給電パッド52に接合され、ベース複合体200の貫通孔22aの内部に位置している。下側給電端子442は、ベース複合体200の下面S4の側に配置され、ベース複合体200の貫通孔22aの内部に位置している。中央給電端子443は、ベース複合体200の貫通孔22aの内部における上側給電端子441と下側給電端子442との間に配置されている。上側給電端子441は、上側給電端子441と中央給電端子443との間の電気的導通が可能であり、Z軸方向に略直交する方向(例えば、図3のXZ断面ではX軸方向)に伸縮するヒータ電極用上側ばね441aを有する。下側給電端子442は、下側給電端子442と中央給電端子443との間の電気的導通が可能であり、Z軸方向に略直交する方向(例えば、図3のXZ断面ではX軸方向)に伸縮するヒータ電極用下側ばね442aを有する。中央給電端子443は、ベース複合体200の貫通孔22aを画定する壁面22cとの間に隙間G1が形成されるように配置され、Z軸方向に略直交する方向(例えば、図3のXZ断面ではX軸方向)に移動可能なように備えられている。
【0048】
従来の静電チャック(上記特許文献1)では、板状部材とベース部材との間で熱膨張係数が異なることにより、板状部材とベース部材との間の熱膨張差に起因してベース部材が板状部材に対して相対的に変位することがある。これにより、上側給電端子等に力がかかり、例えば上側給電端子と給電パッドとの接合部分にクラックが発生する等、上側給電端子や他の部材が損傷するおそれがある。従来の静電チャックでは、上下方向(Z軸方向)に略直交する方向に伸縮する第1のばねおよび第2のばねを備えることにより、ベース部材の相対的な変位に起因して上側給電端子等に力がかかることをある程度は抑制できる。しかしながら、中央給電端子がベース部材に対してねじにより固定されている(つまり、本実施形態の静電チャック100のようにZ軸方向に略直交する方向に移動することは不可能である)ため、ベース部材の変位に起因して上側給電端子等に力がかかることを十分には抑制することができない。
【0049】
これに対し、本実施形態の静電チャック100では、上述の通り、中央給電端子443は、ベース複合体200の貫通孔22aを画定するヒータ電極用絶縁管22の壁面22cとの間に隙間G1が形成されるように配置され、Z軸方向に略直交する方向に移動可能なように備えられている。そのため、板状部材10とベース複合体200との間の熱膨張差に起因してベース複合体200が板状部材10に対して相対的に変位したときに、上記従来の静電チャックよりも、上側給電端子441等に力がかかることを抑制することができ、その結果、上記従来の静電チャックよりも、上側給電端子441や他の部材の損傷を抑制することができる。なお、この効果の観点から、中央給電端子443と、ベース複合体200の貫通孔22aを画定する壁面22cとの間の隙間G1のZ軸方向に略直交する方向(例えば、図3のXZ断面ではX軸方向)の幅は、0.1mm以上(より好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上)であることが好ましい。また、中央給電端子443と、上側給電端子441および下側給電端子442との電気的接続性の観点から、ベース複合体200の貫通孔22aを画定する壁面22cとの間の隙間G1のZ軸方向に略直交する方向(例えば、図3のXZ断面ではX軸方向)の幅は、2mm以下(より好ましくは1mm以上、より好ましくは0.5mm以下)であることが好ましい。
【0050】
なお、静電チャック100の使用時または使用後においては、上記隙間(ベース複合体200の貫通孔22aを画定するヒータ電極用絶縁管22の壁面22cとの間の隙間)Gが一時的に無くなる場合もあるが、少なくとも静電チャック100の使用前において当該隙間G1があれば、上記のように、上側給電端子441等に力がかかることを抑制することができ、その結果、上記従来の静電チャックよりも、上側給電端子441や他の部材の損傷を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態の静電チャック100では、上側給電端子441は、中央給電端子443に対向する下面441bを有し、下面441bからZ軸方向に突出する第1の凸部441dを有している。下側給電端子442は、中央給電端子443に対向する上面442cを有し、上面442cからZ軸方向に突出する第2の凸部442eを有している。中央給電端子443の上側給電端子441の側の端部には、Z軸方向に凹む第1の凹部443aが形成されている。第1の凹部443aには、第1の凸部441dの一部が挿入されている。中央給電端子443の下側給電端子442の側の端部には、Z軸方向に凹む第2の凹部443bが形成されている。第2の凹部443bには、第2の凸部442eの一部が挿入されている。ヒータ電極用上側ばね441aは、第1の凸部441dの一部を形成している。ヒータ電極用下側ばね442aは、第2の凸部442eの一部を形成している。そのため、本実施形態の静電チャック100においては、より効果的に、上側給電端子441等に力がかかることを抑制することができ、その結果、より効果的に、上側給電端子441や他の部材の損傷を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態の静電チャック100では、上側給電端子441の下面441bと、下側給電端子442の上面442cとのそれぞれは、Z軸方向視で中央給電端子443を内包している。中央給電端子443の第1の凹部443aの深さd1は、上側給電端子441の第1の凸部441dの高さh1よりも大きい。中央給電端子443の第2の凹部443bの深さd2は、下側給電端子442の第2の凸部442eの高さh2よりも大きい。そのため、本実施形態の静電チャック100では、上側給電端子441は、第1の凸部441dが第1の凹部443aの底面に接触しない位置で位置決め(Z軸方向の位置決め。以下、同様)され、下側給電端子442は、第2の凸部442eが第2の凹部443bの底面に接触しない位置で位置決めされる。従って、本実施形態の静電チャック100においては、第1の凸部441dが第1の凹部443aの底面に接触(または衝突)したり、第2の凸部442eが第2の凹部443bの底面に接触(または衝突)したりすることにより第1の凸部441dや第2の凸部442eが損傷することが防止される。
【0053】
また、本実施形態の静電チャック100では、板状部材10に配置され、加熱を行うヒータ電極50と、ベース複合体200に配置され、冷却を行う冷媒流路21とを備える。そのため、本実施形態の静電チャック100においては、ヒータ電極50による加熱または冷媒流路21による冷却を行うことにより、板状部材10とベース複合体200との間の熱膨張差に起因してベース複合体200が板状部材10に対して相対的に変位する可能性が高い。そのため、このような構成において本発明を適用することは、特に有効である。
【0054】
なお、上述した通り、チャック電極用の上側給電端子541、チャック電極用の下側給電端子542、およびチャック電極用の中央給電端子543の詳細構成も、ヒータ電極用の上側給電端子441、ヒータ電極用の下側給電端子442、およびヒータ電極用の中央給電端子443の詳細構成と同様である。従って、チャック電極用の上側給電端子541、チャック電極用の下側給電端子542、およびチャック電極用の中央給電端子543についても、ヒータ電極用の上側給電端子441、ヒータ電極用の下側給電端子442、およびヒータ電極用の中央給電端子443における上述の効果と同様の効果を奏する。
【0055】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0056】
上記実施形態において、ヒータ電極用上側ばね441aは、ヒータ電極用の上側給電端子441とは別体の部材によって構成されたものであってもよい。ヒータ電極用下側ばね442aは、ヒータ電極用の下側給電端子442とは別体の部材によって構成されたものであってもよい。チャック電極用上側ばね541aは、チャック電極用の上側給電端子541とは別体の部材によって構成されたものであってもよい。チャック電極用下側ばね542aは、チャック電極用の下側給電端子542とは別体の部材によって構成されたものであってもよい。
【0057】
上記実施形態(または上記変形例。以下、同様)において、ヒータ電極用上側ばね441aおよび/またはヒータ電極用下側ばね442aは、ヒータ電極用の中央給電端子443の一部(例えば、第1の凹部443a、第2の凹部443b)または全体によって形成されたものであってもよい。チャック電極用上側ばね541aおよび/またはチャック電極用下側ばね542aは、チャック電極用の中央給電端子543の一部(例えば、第3の凹部543a、第4の凹部543b)または全体によって形成されたものであってもよい。
【0058】
上記実施形態において、ヒータ電極用上側ばね441aおよび/またはヒータ電極用下側ばね442aは、ヒータ電極用の上側給電端子441および中央給電端子443とは別体の部材によって構成されたものであってもよい。チャック電極用上側ばね541aおよび/またはチャック電極用下側ばね542aは、チャック電極用の下側給電端子542および中央給電端子443とは別体の部材によって構成されたものであってもよい。
【0059】
上記実施形態において、ヒータ電極用上側ばね441a、ヒータ電極用下側ばね442a、チャック電極用上側ばね541a、およびチャック電極用下側ばね542aは、導電性を有し、Z軸方向に略直交する方向(例えば、図3のXZ断面ではX軸方向)に伸縮するばねであれば、ばねの材質や形状は特に限定されない。例えば、ヒータ電極用上側ばね441a、ヒータ電極用下側ばね442a、チャック電極用上側ばね541a、およびチャック電極用下側ばね542aは、板ばね以外のばね(例えば、コイルばね)であってもよい。
【0060】
上記実施形態において、上側給電端子441,541の全体がベース複合体200の貫通孔22a(チャック電極用の上側給電端子541の場合は、貫通孔23a)の内部に位置していてもよく、下側給電端子442,542の全体がベース複合体200の貫通孔22a(チャック電極用の下側給電端子542の場合は、貫通孔23a)の内部に位置していてもよい。
【0061】
上記実施形態において、上側給電端子441,541の第1の凸部441d(チャック電極用の上側給電端子541の場合は、第3の凸部541d)の全体が第1の凹部443a(チャック電極用の上側給電端子541の場合は、第3の凹部543a)に挿入されていてもよい。また、上記実施形態において、下側給電端子442,542の第2の凸部442e(チャック電極用の上側給電端子541の場合は、第4の凸部542e)の全体が第2の凸部442e(チャック電極用の上側給電端子541の場合は、第4の凹部543b)に挿入されていてもよい。
【0062】
上記実施形態において、冷却を行う装置が板状部材10に備えられていてもよく、加熱を行う装置がベース複合体200に備えられていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態の静電チャック100の各部材(板状部材10、ベース部材20、接合部30、上側給電端子441,541、下側給電端子442,542、中央給電端子443,543等)の形成材料は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、上記実施形態では、板状部材10がセラミックスにより形成されているが、板状部材10がセラミックス以外の材料(例えば、樹脂材料)により形成されるとしてもよい。
【0064】
また、本発明は、第2の給電端子(上記実施形態では、上側給電端子441,541)、第3の給電端子(上記実施形態では、下側給電端子442,542)、第1の給電端子(上記実施形態では、中央給電端子443,543)、給電パッド等を介して、ヒータ電極に電力が供給される静電チャックに限らず、第2の給電端子、第3の給電端子、第1の給電端子、給電パッド等を介して、特定部材(ヒータ電極以外の別の部材を含む。例えば、チャック電極)に電力が供給される他の保持装置(例えば、CVDヒータ等のヒータ装置や真空チャック等)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
10:板状部材 20:ベース部材 21:冷媒流路 22:ヒータ電極用絶縁管 30:接合部 40:チャック電極 41:チャック電極用ビア 42:チャック電極用電極パッド 44:ヒータ電極用の給電端子 50:ヒータ電極 51:ヒータ電極用ビア 52:ヒータ電極用給電パッド 54:チャック電極用の給電端子 78:ヒータ電極用ろう付け部 100:静電チャック 200:ベース複合体 441:ヒータ電極用の上側給電端子 441a:ヒータ電極用上側ばね 442:ヒータ電極用の下側給電端子 442a:ヒータ電極用下側ばね 443:ヒータ電極用の中央給電端子 541:チャック電極用の上側給電端子 541a:チャック電極用上側ばね 542:チャック電極用の下側給電端子 542a:チャック電極用下側ばね 543:チャック電極用の中央給電端子 W:ウェハ
図1
図2
図3