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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】車両用バンパー装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/26 20060101AFI20230714BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20230714BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
B60R19/26
F16F7/00 K
F16F7/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019197072
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070380
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 詩穂
(72)【発明者】
【氏名】西村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】三浦 寿久
(72)【発明者】
【氏名】北 恭一
(72)【発明者】
【氏名】正保 順
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007598(JP,A)
【文献】特開2019-108974(JP,A)
【文献】特開2015-155704(JP,A)
【文献】特開2019-060366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/26
F16F 7/00
F16F 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のサイドメンバと対向して開口する開口部と、前記開口部から連なる中空部とを形成し、車両幅方向に延びるバンパーリインフォースメントと、
前記開口部に配置される被締結部を有し、前記バンパーリインフォースメントから前記サイドメンバに向けて突出する衝撃吸収部材と、
前記被締結部および前記バンパーリインフォースメントを締結する締結部材とを備え
前記衝撃吸収部材は、ケース体をさらに有し、
前記被締結部は、前記ケース体に設けられ、前記締結部材が挿入される金属製のスリーブであり、
前記ケース体は、前記サイドメンバに締結される筐体部と、前記スリーブの外周面を覆い、前記筐体部に接続される筒状部とを含む、車両用バンパー装置。
【請求項2】
前記衝撃吸収部材は、木材をさらに有し、
前記ケース体は、前記木材を収容し、
前記ケース体は、樹脂製であり、
前記筐体部は、前記木材を覆っている、請求項1に記載の車両用バンパー装置。
【請求項3】
前記締結部材は、前記衝撃吸収部材を貫通するように設けられる、請求項1または2に記載の車両用バンパー装置。
【請求項4】
記木材および前記被締結部は、前記ケース体に埋設される、請求項に記載の車両用バンパー装置。
【請求項5】
前記ケース体には、車両前後方向において前記締結部材と並び、車両前後方向に延びる溝部が設けられる、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用バンパー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用バンパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2019-60366号公報(特許文献1)には、フロンバンパーのバンパーリインフォースと、車両前後方向に延びるサイドメンバとの間に取り付けられた衝撃吸収部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-60366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるように、衝撃吸収部材を備えた車両用バンパー装置が開示されている。衝撃吸収部材は、車両衝突時の衝突荷重を受けて潰れることによって、その衝撃荷重を吸収する。このような車両用バンパー装置においては、衝撃吸収部材の潰れ代を十分に確保することによって、車両衝突時の衝撃荷重を効果的に吸収することが求められる。
【0005】
そこでこの発明の目的は、車両衝突時の衝撃荷重を効果的に吸収することが可能な車両用バンパー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の1つの局面に従った車両用バンパー装置は、車体のサイドメンバと対向して開口する開口部と、開口部から連なる中空部とを形成し、車両幅方向に延びるバンパーリインフォースメントと、開口部に配置される被締結部を有し、バンパーリインフォースメントからサイドメンバに向けて突出する衝撃吸収部材と、被締結部およびバンパーリインフォースメントを締結する締結部材とを備える。衝撃吸収部材は、ケース体をさらに有する。被締結部は、ケース体に設けられ、締結部材が挿入される金属製のスリーブである。ケース体は、サイドメンバに締結される筐体部と、スリーブの外周面を覆い、筐体部に接続される筒状部とを含む。
この発明の別の局面に従った車両用バンパー装置は、車体のサイドメンバと対向して開口する開口部と、開口部から連なる中空部とを形成し、車両幅方向に延びるバンパーリインフォースメントと、開口部に配置される被締結部を有し、バンパーリインフォースメントからサイドメンバに向けて突出する衝撃吸収部材と、被締結部およびバンパーリインフォースメントを締結する締結部材とを備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明に従えば、車両衝突時の衝撃荷重を効果的に吸収することが可能な車両用バンパー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両を示す上面図である。
図2】本実施の形態における車両用バンパー装置を示す斜視図である。
図3図2中の2点鎖線IIIで囲まれた範囲の車両用バンパを示す斜視図である。
図4図3中の矢印IVに示す方向に見た車両用バンパー装置を示す側面図である。
図5図3中の矢印Vに示す方向に見た車両用バンパー装置を示す上面図である。
図6図3中のVI-VI線上の矢視方向に見た車両用バンパー装置を示す断面図である。
図7図3中の衝撃吸収部材を示す斜視図である。
図8図7中のVIII-VIII線上の矢視方向に見た衝撃吸収部材を示す断面図である。
図9】車両衝突時における車両用バンパー装置の変形を示す斜視図である。
図10】車両衝突時における車両用バンパー装置の変形を示す断面図である。
図11】比較例における車両用バンパー装置を模式的に示す側面図である。
図12】車両衝突時における、図11中の車両用バンパー装置の変形を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0010】
図1は、車両を示す上面図である。図1に示されるように、車両12は、サイドメンバ14(14L,14R)と、フロントバンパー16と、本実施の形態における車両用バンパー装置20とを有する。
【0011】
サイドメンバ14は、車両12の車体の骨格をなしている。サイドメンバ14は、車両前後方向に延びている。サイドメンバ14Lおよびサイドメンバ14Rは、左右一対に設けられている。サイドメンバ14Lおよびサイドメンバ14Rは、車両幅方向に互いに間隔を設けて配置されている。フロントバンパー16は、車両12の前端部に設けられている。
【0012】
車両用バンパー装置20は、フロントバンパー16の車両後方に設けられている。車両用バンパー装置20は、車両前後方向において、フロントバンパー16およびサイドメンバ14(14L,14R)の間に設けられている。
【0013】
なお、本発明における車両用バンパー装置は、上記に限られず、車両前後方向において、サイドメンバ14(14L,14R)と、車両の後端部のリヤバンパーとの間に設けられてもよい。
【0014】
図2は、本実施の形態における車両用バンパー装置を示す斜視図である。図1および図2に示されるように、車両用バンパー装置20は、バンパーリインフォースメント31と、衝撃吸収部材51(51L,51R)とを有する。
【0015】
バンパーリインフォースメント31は、フロントバンパー16の車両後方に設けられている。バンパーリインフォースメント31は、サイドメンバ14の前端部から車両前方に離れた位置に設けられている。バンパーリインフォースメント31は、車両幅方向に延びている。
【0016】
衝撃吸収部材51は、車両前後方向において、バンパーリインフォースメント31およびサイドメンバ14の間に設けられている。衝撃吸収部材51は、バンパーリインフォースメント31およびサイドメンバ14に接続されている。
【0017】
衝撃吸収部材51Lおよび衝撃吸収部材51Rは、左右一対に設けられている。衝撃吸収部材51Lは、車両前後方向において、バンパーリインフォースメント31およびサイドメンバ14Lの間に設けられている。衝撃吸収部材51Rは、車両前後方向において、バンパーリインフォースメント31およびサイドメンバ14Rの間に設けられている。
【0018】
なお、衝撃吸収部材51Lおよび衝撃吸収部材51Rは、左右対称の構造を有する。以下においては、代表的に、衝撃吸収部材51Lと、衝撃吸収部材51Lが接続されるバンパーリインフォースメント31とを参照しながら、車両用バンパー装置20の構造について説明する。
【0019】
図3は、図2中の2点鎖線IIIで囲まれた範囲の車両用バンパを示す斜視図である。図4は、図3中の矢印IVに示す方向に見た車両用バンパー装置を示す側面図である。図5は、図3中の矢印Vに示す方向に見た車両用バンパー装置を示す上面図である。図6は、図3中のVI-VI線上の矢視方向に見た車両用バンパー装置を示す断面図である。
【0020】
図2から図6に示されるように、バンパーリインフォースメント31は、金属製である。バンパーリインフォースメント31は、たとえば、アルミニウム合金から形成されている。
【0021】
バンパーリインフォースメント31は、前壁部32と、上壁部33と、下壁部34とを有する。
【0022】
前壁部32は、バンパーリインフォースメント31の前端部に設けられている。前壁部32は、上下方向に立設され、車両幅方向に延在する壁形状をなしている。上壁部33および下壁部34は、水平方向に横たわり、車両幅方向に延在する壁形状をなしている。上壁部33の前端部は、前壁部32の上端部に接続されている。下壁部34の前端部は、前壁部32の下端部に接続されている。上壁部33および下壁部34は、上下方向において、互いに対向している。
【0023】
バンパーリインフォースメント31は、開口部36と、中空部37とを形成している。開口部36は、サイドメンバ14と対向して開口している。開口部36は、上壁部33の後端部と、下壁部34の後端部との間で開口面をなしている。中空部37は、開口部36から連なっている。中空部37は、上下方向において、上壁部33および下壁部34に挟まれた空間に対応している。中空部37は、車両前後方向において、前壁部32および開口部36に挟まれた空間に対応している。
【0024】
図7は、図3中の衝撃吸収部材を示す斜視図である。図8は、図7中のVIII-VIII線上の矢視方向に見た衝撃吸収部材を示す断面図である。図7および図8に示されるように、衝撃吸収部材51は、木材58と、ケース体52と、複数の被締結部56とを有する。
【0025】
木材58は、直方体形状を有する。木材58としては、たとえば、杉材が用いられている。
【0026】
ケース体52は、木材58を収容している。ケース体52は、衝撃吸収部材51の外観をなしている。ケース体52は、樹脂製である。ケース体52の樹脂材料としては、たとえば、ポリプロピレンまたはポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、もしくは、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられている。
【0027】
ケース体52は、筐体部53と、複数の筒状部55と、フランジ部54とを有する。筐体部53、複数の筒状部55およびフランジ部54は、樹脂材料により一体に成形されている。
【0028】
筐体部53は、木材58の形状に対応する直方体の筐体形状を有する。筐体部53は、木材58を覆うように設けられている。筐体部53は、前板部71と、後板部72と、上板部73と、下板部74とを有する。前板部71は、木材58の車両前方に設けられている。後板部72は、木材58の車両後方に設けられている。上板部73は、木材58の上方に設けられている。下板部74は、木材58の下方に設けられている。
【0029】
複数の筒状部55は、筐体部53の車両前方に設けられている。複数の筒状部55は、前板部71に接続されている。筒状部55は、上下方向に延びる筒形状を有する。筒状部55は、円筒形状を有する。複数の筒状部55は、車両幅方向において、互いに間隔を設けて配置されている。
【0030】
フランジ部54は、筐体部53の車両後方に設けられている。フランジ部54は、後板部72から、車両前後方向に直交する平面内において鍔状に広がっている。フランジ部54には、複数のボルト挿入孔81が設けられている。ボルト挿入孔81は、車両前後方向において、フランジ部54を貫通する貫通孔からなる。衝撃吸収部材51は、ボルト挿入孔81に挿入されるボルト(不図示)によって、図2中のサイドメンバ14に締結されている。
【0031】
被締結部56は、金属製のスリーブからなる。被締結部56は、上下方向に延びる円筒形状を有する。複数の被締結部56は、車両幅方向において、互いに間隔を設けて配置されている。
【0032】
複数の被締結部56は、それぞれ、複数の筒状部55により保持されている。スリーブからなる被締結部56の外周面は、筒状部55によって覆われている。被締結部56の上端部56pは、筒状部55から上方に向けて突出している。被締結部56の下端部56qは、筒状部55から下方に向けて突出している。
【0033】
木材58および複数の被締結部56は、ケース体52に埋設されている。木材58および複数の被締結部56は、ケース体52の樹脂成形時におけるインサート成形によって、ケース体52と一体に設けられている。このような構成によれば、ケース体52に木材58および複数の被締結部56が一体化された衝撃吸収部材51を、インサート成形を利用して容易に製造することができる。
【0034】
図3から図6に示されるように、複数の被締結部56は、開口部36に配置されている。複数の筒状部55は、複数の被締結部56とともに開口部36に配置されている。複数の被締結部56は、バンパーリインフォースメント31の前壁部32から車両後方に離れた位置に設けられている。中空部37は、車両前後方向において、前壁部32と、複数の被締結部56(複数の筒状部55)との間に位置している。
【0035】
衝撃吸収部材51は、バンパーリインフォースメント31からサイドメンバ14に向けて突出している。衝撃吸収部材51の前端部が、開口部36に配置されている。衝撃吸収部材51の前端部が、上下方向において、バンパーリインフォースメント31の上壁部33および下壁部34の間に配置されている。
【0036】
車両用バンパー装置20は、複数の締結部材61をさらに有する。締結部材61は、被締結部56およびバンパーリインフォースメント31を締結している。締結部材61は、金属製である。
【0037】
締結部材61は、衝撃吸収部材51を貫通するように設けられている。締結部材61は、車両前後方向に直交する方向において、衝撃吸収部材51を貫通するように設けられている。締結部材61は、上下方向において、衝撃吸収部材51を貫通するように設けられている。
【0038】
図3および図6に示されるように、バンパーリインフォースメント31には、複数のボルト挿入孔38と、複数のボルト挿入孔39とが設けられている。ボルト挿入孔38は、上下方向において、上壁部33を貫通する貫通孔からなる。複数のボルト挿入孔38は、車両幅方向において、互いに間隔を設けて配置されている。ボルト挿入孔39は、上下方向において、下壁部34を貫通する貫通孔からなる。複数のボルト挿入孔39は、車両幅方向において、互いに間隔を設けて配置されている。ボルト挿入孔38およびボルト挿入孔39は、上下方向において、互いに重なる位置に設けられている。
【0039】
締結部材61は、ボルト62と、ナット66とを有する。ボルト62は、ボルト挿入孔38、被締結部56およびボルト挿入孔39に挿入されている。上壁部33上には、ボルト62の頭部62kが配置されている。スリーブからなる被締結部56の内側には、ボルト62の軸部62jが配置されている。下壁部34から突出するボルト62の軸部62jには、ナット66が螺合されている。
【0040】
このような構成により、衝撃吸収部材51における被締結部56と、バンパーリインフォースメント31の上壁部33および下壁部34とが締結されている。被締結部56として金属製のスリーブを用いることによって、バンパーリインフォースメント31および衝撃吸収部材51の間において、車両で発生する振動等に耐え得る締結強度を確保することができる。
【0041】
軸部62jの直径は、スリーブからなる被締結部56の内径よりも小さい。ボルト62の軸部62jの全長は、上下方向における木材58の長さよりも大きい。スリーブからなる被締結部56のその軸方向における全長は、上下方向における木材58の長さよりも大きい。車両前後方向における木材58の長さP2は、車両前後方向における、バンパーリインフォースメント31の前壁部32と、衝撃吸収部材51との間の中空部37の長さP1よりも大きい。
【0042】
なお、本実施の形態では、被締結部56およびバンパーリインフォースメント31の締結に2本のボルト62が用いられているが、これに限られず、1本のボルト62が用いられてもよいし、車両幅方向に互いに間隔を設けて配置された3以上の複数本のボルト62が用いられてもよい。また、1本のボルトが、バンパーリインフォースメント31の上壁部33を介して被締結部56に挿入され、1本のボルトが、バンパーリインフォースメント31の下壁部34を介して被締結部56に挿入される構成であってもよい。この場合、スリーブからなる被締結部56の内周面に雌ねじが設けられるとよい。
【0043】
本発明における締結部材は、上記のボルト62およびナット66の組み合わせに限られず、たとえば、両端にねじ部を有するスタッドボルトと、スタッドボルトの両端に螺合される2つのナットとの組み合わせであってもよい。
【0044】
図9は、車両衝突時における車両用バンパー装置の変形を示す斜視図である。図10は、車両衝突時における車両用バンパー装置の変形を示す断面図である。
【0045】
図9および図10に示されるように、車両衝突時(前突時)に、バンパーリインフォースメント31に車両前方からの過大な衝撃荷重が加わることによって、バンパーリインフォースメント31がサイドメンバ14に向かって移動する。このとき、バンパーリインフォースメント31と、衝撃吸収部材51における被締結部56とを締結する締結部材61(ボルト62の軸部62j)が、衝撃吸収部材51における木材58を潰しながらサイドメンバ14に向かって移動することによって、車両衝突時の衝撃荷重が吸収される。
【0046】
図11は、比較例における車両用バンパー装置を模式的に示す側面図である。図12は、車両衝突時における、図11中の車両用バンパー装置の変形を模式的に示す側面図である。
【0047】
図11および図12に示されるように、本比較例における車両用バンパー装置は、バンパーリインフォースメント131と、衝撃吸収部材151とを有する。
【0048】
バンパーリインフォースメント131は、前壁部132と、後壁部135と、上壁部133と、下壁部134とを有する。バンパーリインフォースメント131は、前壁部132と、後壁部135と、上壁部133と、下壁部134とに囲まれた閉断面を有する。衝撃吸収部材151の前端部は、バンパーリインフォースメント131の後壁部135に接続されている。衝撃吸収部材151の後端部は、サイドメンバ14に接続されている。
【0049】
このような比較例において、車両衝突時に、バンパーリインフォースメント131がサイドメンバ14に向かって移動すると、バンパーリインフォースメント131およびサイドメンバ14の間に配置された衝撃吸収部材151が車両前後方向において潰れることによって、車両衝突時の衝撃が吸収される。しかしながら、衝撃吸収部材151には、衝撃吸収部材151が潰れた後に残る部分(図12中の寸法Lにより示す部分)が不可避的に生じ、バンパーリインフォースメント131の移動量Stが小さくなる。このため、車両衝突時における衝撃荷重を十分に吸収することが難しい。
【0050】
図9および図10に示されるように、これに対して、本実施の形態における車両用バンパー装置20においては、衝撃吸収部材51における被締結部56が、バンパーリインフォースメント31の開口部36に配置されている。
【0051】
このような構成により、車両衝突時に、バンパーリインフォースメント31がサイドメンバ14に向かって移動すると、衝撃吸収部材51が、開口部36から連なるバンパーリインフォースメント31の中空部37に進入する。これにより、バンパーリインフォースメント31の移動量が大きくなって、締結部材61による木材58の潰れ代を十分に確保することが可能となる。結果、本実施の形態における車両用バンパー装置20によれば、衝撃吸収部材51によって車両衝突時の衝撃荷重を効果的に吸収することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、締結部材61が、衝撃吸収部材51を貫通するように設けられている。このような構成によれば、車両衝突時に、木材58が締結部材61の貫通方向における全範囲に渡って潰れるため、車両衝突時の衝撃荷重をさらに効果的に吸収することができる。
【0053】
また、衝撃吸収部材51における被締結部56として、締結部材61(ボルト62の軸部62j)が挿入される金属製のスリーブが用いられている。このような構成においては、車両衝突時に、締結部材61が、被締結部56と一体となって木材58を潰すことになる。この際、金属製のスリーブからなる被締結部56によって締結部材61を補強するとともに、木材58からの力をスリーブの外周面で受けることができるため、木材58をより確実に潰すことができる。
【0054】
図5から図8に示されるように、ケース体52には、複数の溝部76と、複数の溝部77とが設けられている。
【0055】
溝部76は、上板部73の表面から凹み、車両前後方向に沿って延びる溝形状を有する。複数の溝部76は、車両幅方向において、互いに間隔を設けて配置されている。複数の溝部76は、それぞれ、車両前後方向において複数の締結部材61と並んでいる。溝部76は、ボルト62の軸部62jの中心軸101を通り、車両前後方向に延びる仮想上の直線102上で延びている。
【0056】
溝部77は、下板部74の表面から凹み、車両前後方向に沿って延びる溝形状を有する。複数の溝部77は、車両幅方向において、互いに間隔を設けて配置されている。複数の溝部77は、それぞれ、車両前後方向において複数の締結部材61と並んでいる。溝部77は、衝撃吸収部材51を上面視した場合に、溝部76と重なる位置に設けられている。
【0057】
このような構成によれば、ケース体52が、溝部76,77が設けられた位置において脆弱となるため、車両衝突時に、締結部材61(ボルト62の軸部62j)が溝部76,77に沿って移動し易くなる。これにより、締結部材61は、車両後方に向かって真っ直ぐ進むため、木材58の潰れ代をより大きく確保することができる。
【0058】
なお、本発明における衝撃吸収部材は、上記の木材58を用いたものに限られず、たとえば、金属製の箱体であってもよい。
【0059】
以上に説明した、車両用バンパー装置20の構成および効果についてまとめる。
【0060】
車両用バンパー装置20は、車体のサイドメンバ14と対向して開口する開口部36と、開口部36から連なる中空部37とを形成し、車両幅方向に延びるバンパーリインフォースメント31と、開口部36に配置される被締結部56を有し、バンパーリインフォースメント31からサイドメンバ14に向けて突出する衝撃吸収部材51と、被締結部56およびバンパーリインフォースメント31を締結する締結部材61とを備える。
【0061】
このような構成によれば、車両衝突時に、衝撃吸収部材51における被締結部56と、バンパーリインフォースメント31とを締結する締結部材61が、衝撃吸収部材51を潰しながら、バンパーリインフォースメント31とともにサイドメンバ14に向かって移動する。この際、被締結部56は、バンパーリインフォースメント31の開口部36に配置されるため、衝撃吸収部材51が、開口部36から連なるバンパーリインフォースメント31の中空部37に進入する。これにより、バンパーリインフォースメント31の移動量が大きくなって、締結部材61による衝撃吸収部材51の潰れ代を十分に確保することが可能となる。結果、衝撃吸収部材51によって車両衝突時の衝撃荷重を効果的に吸収することができる。
【0062】
また、締結部材61は、衝撃吸収部材51を貫通するように設けられる。このような構成によれば、締結部材61によって衝撃吸収部材51が潰れる量が増えるため、車両衝突時の衝撃荷重をさらに効果的に吸収することができる。
【0063】
また、衝撃吸収部材51は、木材58と、木材58を収容するケース体52とをさらに有する。このような構成によれば、車両衝突時に、締結部材61が衝撃吸収部材51における木材58を潰すことによって、車両衝突時の衝撃荷重を効果的に吸収することができる。
【0064】
また、被締結部56は、ケース体52に設けられ、締結部材61が挿入される金属製のスリーブである。
【0065】
このような構成によれば、バンパーリインフォースメント31および衝撃吸収部材51の間の締結強度を向上させることができる。
【0066】
また、ケース体52は、樹脂製である。木材58および被締結部56は、ケース体52に埋設される。
【0067】
このような構成によれば、インサート成形を利用することによって、ケース体52に木材58および被締結部56が一体化された衝撃吸収部材51を容易に製造することができる。
【0068】
また、ケース体52には、車両前後方向において締結部材61と並び、車両前後方向に延びる溝部76,77が設けられる。
【0069】
このような構成によれば、車両衝突時に、締結部材61が、ケース体52における脆弱部である溝部76,77に沿って移動し易くなる。これにより、木材58の潰れ代をより大きく確保して、車両衝突時の衝撃荷重をさらに効果的に吸収することができる。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
この発明は、車両に搭載されるバンパー装置に適用される。
【符号の説明】
【0072】
12 車両、14,14L,14R サイドメンバ、16 フロントバンパー、20 車両用バンパー装置、31,131 バンパーリインフォースメント、32,132 前壁部、33,133 上壁部、34,134 下壁部、36 開口部、37 中空部、38,39,81 ボルト挿入孔、51,51L,51R,151 衝撃吸収部材、52 ケース体、53 筐体部、54 フランジ部、55 筒状部、56 被締結部、56p 上端部、56q 下端部、58 木材、61 締結部材、62 ボルト、62j 軸部、62k 頭部、66 ナット、71 前板部、72 後板部、73 上板部、74 下板部、76,77 溝部、101 中心軸、102 直線、135 後壁部。
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図12