(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】可撓性ホース
(51)【国際特許分類】
F16L 11/02 20060101AFI20230714BHJP
F16L 11/24 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
F16L11/02
F16L11/24
(21)【出願番号】P 2019221055
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤本 佑一
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-038175(JP,A)
【文献】実開平04-068278(JP,U)
【文献】実開昭51-155424(JP,U)
【文献】実公昭34-008660(JP,Y1)
【文献】特開2004-270752(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0012507(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0103258(KR,A)
【文献】米国特許第06158477(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/02
F16L 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅の可撓性条帯(2)を所定の折返し形状としつつらせん状に捲回し、互いに隣接する可撓性条帯(2)の端縁部分同士を、金属製の条帯(3)によりかしめ接合した可撓性ホース(1)であって、
前記可撓性条帯(2)は、織布を樹脂によりコーティングした複合素材により構成されており、
前記金属製条帯(3)は、
ホースの一端側に位置する端縁部が、ホース外側かつ金属製条帯中央部に向かって折り返された金属製条帯第1折返し部(31)とされるとともに、
ホースの他端側に位置する端縁部が、ホース外側かつ金属製条帯中央部に向かって折り返された金属製条帯第2折返し部(32)とされており、
前記可撓性条帯(2)において、
ホースの一端側に位置する前記可撓性条帯の端縁部分を可撓性条帯第1端縁部(2A)とし、可撓性条帯第1端縁部(2A)には、ホース内側かつ可撓性条帯中央部に向かって折り返された可撓性条帯第1折返し部(21)が設けられており、
可撓性条帯第1折返し部(21)の内側に金属製条帯第2折返し部(32)の末端(32a)が位置する状態で、金属製条帯第2折返し部(32)がかしめられており、
前記可撓性条帯(2)において、
ホースの他端側に位置する前記可撓性条帯の端縁部分を可撓性条帯第2端縁部(2B)とし、可撓性条帯第2端縁部(2B)には、ホース内側かつ可撓性条帯中央部に向かって折り返された可撓性条帯第2折返し部(22)が設けられ、
かつ、可撓性条帯第2端縁部(2B)には、可撓性条帯第2折返し部(22)よりもさらに端縁に近い側に、ホース内側かつホースの他端側に向かって折り返された可撓性条帯第3折返し部(23)が設けられ、
可撓性条帯第2折返し部(22)の内側に金属製条帯第1折返し部(31)の末端(31a)が位置し、かつ、金属製条帯第1折返し部(31)の内側に可撓性条帯第3折返し部(23)が位置する状態で、金属製条帯第1折返し部(31)がかしめられており、
可撓性条帯第2端縁部(2B)には、可撓性条帯第3折返し部(23)よりもさらに端縁に近い側に、末端部(25)が延在しており、可撓性条帯第2端縁部(2B)の末端部(25)は、金属製条帯の第1折返し部(31)と第2折返し部(32)の間からホース外側に延出して、金属製条帯第1折返し部(31)もしくは金属製条帯第2折返し部(32)に対応する部分の外周を覆っている、
可撓性ホース(1)。
【請求項2】
前記織布が、無機繊維を主体に構成され、シリコーン樹脂もしくはフッ素樹脂によりコーティングされている、
請求項1に記載の可撓性ホース。
【請求項3】
金属製条帯第1折返し部(31)と金属製条帯第2折返し部(32)とで比較して、径の大きい方の折返し部に対応する部分の外周を、可撓性条帯第2端縁部(2B)の末端部(26)が覆っている、
請求項1もしくは請求項2に記載の可撓性ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の幅の可撓性条帯をらせん状に捲回し、互いに隣接する可撓性条帯の端縁部同士を、金属製の条帯によりかしめ接合した可撓性ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の幅の可撓性条帯をらせん状に捲回し、互いに隣接する可撓性条帯の端縁部同士を、金属製の条帯によりかしめ接合した可撓性ホースは、送風ダクト等の用途に使用されている。かかる可撓性ホースは軽量で、可撓性に優れ、ホースがつぶれにくい
【0003】
例えば、特許文献1には、所定の繊維構成を有する無機繊維織布製の条帯をらせん状に巻いて、金属製条帯によりかしめて接合した可撓性ダクトの技術が開示されており、当該可撓性ダクトによれば、耐熱性の可撓性ダクトの強度が向上できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1にあるような構造の可撓性ホースでは、金属製の条帯の部分がホースの補強体として機能し、織布製の条帯の部分が可撓性のホース壁として機能する。そして、ホースの構造上、金属製条帯の外側に、ホース壁となる織布製条帯が位置している。
【0006】
そのため、ホースの配管時などに引きずられたりすると、金属製条帯の外側の部分で、ホース壁となる織布製条帯が摩擦により損耗することがある。織布製条帯が損耗すると、ホース壁の気密性が損なわれたり、織布を構成する繊維が切れたりして、ホース壁の強度が低下したりするおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、ホース壁の損耗を抑制可能な可撓性ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、鋭意検討の結果、金属製条帯にかしめられる可撓性条帯の末端部を長くしておいて、金属製条帯によりかしめられている部分のホース外周を、当該末端部により覆うようにすると、上記課題が解決できることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、所定の幅の可撓性条帯(2)を所定の折返し形状としつつらせん状に捲回し、互いに隣接する可撓性条帯(2)の端縁部分同士を、金属製の条帯(3)によりかしめ接合した可撓性ホース(1)であって、前記可撓性条帯(2)は、織布を樹脂によりコーティングした複合素材により構成されており、前記金属製条帯(3)は、ホースの一端側に位置する端縁部が、ホース外側かつ金属製条帯中央部に向かって折り返された金属製条帯第1折返し部(31)とされるとともに、ホースの他端側に位置する端縁部が、ホース外側かつ金属製条帯中央部に向かって折り返された金属製条帯第2折返し部(32)とされており、前記可撓性条帯(2)において、ホースの一端側に位置する前記可撓性条帯の端縁部分を可撓性条帯第1端縁部(2A)とし、可撓性条帯第1端縁部(2A)には、ホース内側かつ可撓性条帯中央部に向かって折り返された可撓性条帯第1折返し部(21)が設けられており、可撓性条帯第1折返し部(21)の内側に金属製条帯第2折返し部(32)の末端(32a)が位置する状態で、金属製条帯第2折返し部(32)がかしめられており、前記可撓性条帯(2)において、ホースの他端側に位置する前記可撓性条帯の端縁部分を可撓性条帯第2端縁部(2B)とし、可撓性条帯第2端縁部(2B)には、ホース内側かつ可撓性条帯中央部に向かって折り返された可撓性条帯第2折返し部(22)が設けられ、かつ、可撓性条帯第2端縁部(2B)には、可撓性条帯第2折返し部(22)よりもさらに端縁に近い側に、ホース内側かつホースの他端側に向かって折り返された可撓性条帯第3折返し部(23)が設けられ、可撓性条帯第2折返し部(22)の内側に金属製条帯第1折返し部(31)の末端(31a)が位置し、かつ、金属製条帯第1折返し部(31)の内側に可撓性条帯第3折返し部(23)が位置する状態で、金属製条帯第1折返し部(31)がかしめられており、可撓性条帯第2端縁部(2B)には、可撓性条帯第3折返し部(23)よりもさらに端縁に近い側に、末端部(25)が延在しており、可撓性条帯第2端縁部(2B)の末端部(25)は、金属製条帯の第1折返し部(31)と第2折返し部(32)の間からホース外側に延出して、金属製条帯第1折返し部(31)もしくは金属製条帯第2折返し部(32)に対応する部分の外周を覆っている、可撓性ホース(1)。である(第1発明)。
【0010】
第1発明において、好ましくは、前記織布が、無機繊維を主体に構成され、シリコーン樹脂もしくはフッ素樹脂によりコーティングされている(第2発明)。また、第1発明もしくは第2発明において、好ましくは、金属製条帯第1折返し部(31)と金属製条帯第2折返し部(32)とで比較して、径の大きい方の折返し部に対応する部分の外周を、可撓性条帯第2端縁部(2B)の末端部(26)が覆っている(第3発明)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の可撓性ホース(第1発明)によれば、可撓性条帯の第2端縁部の末端部が、金属製条帯第1折返し部もしくは金属製条帯第2折返し部に対応する部分で、ホース最外周に位置するようになって、ホース壁の損耗が抑制される。
【0012】
さらに、第2発明のようにした場合には、耐熱性もしくは耐火性に優れた可撓性ホースのホース壁の損耗が抑制される。また、さらに、第3発明のようにした場合には、ホース壁の損耗がより抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の可撓性ホースの構造を示す一部断面図である。
【
図2】第1実施形態の可撓性ホースのかしめ部分の構造を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態の可撓性ホースの可撓性条帯の折返し形状を示す断面図である。
【
図4】第2実施形態の可撓性ホースのかしめ部分の構造を示す断面図である。
【
図5】第3実施形態の可撓性ホースのかしめ部分の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しながら、耐熱性の送気ダクトとして使用されうる可撓性ホースを例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0015】
図1は、第1実施形態の可撓性ホース1の構造を示す一部断面図である。可撓性ホース1は、所定の幅の可撓性条帯2を所定の折返し形状としつつらせん状に捲回し、互いに隣接する可撓性条帯の端縁部分同士を、金属製の条帯3によりかしめ接合した、円筒状の可撓性ホースである。
図2に可撓性ホースのかしめ部分の構造を断面図で示す。なお、
図1や
図2では、各条帯の折返し構造を見やすくするために条帯を適宜離間させて表記している。
【0016】
可撓性条帯2や金属製条帯3は、それぞれの両端縁部が所定の形状に折り返されて、可撓性条帯2の折返し部分と金属製条帯3の折返し部分とが互いにかみ合うように、可撓性条帯2と金属製条帯3がらせん状に捲回され、金属製条帯3の折返し部がかしめられて、可撓性条帯2と金属製条帯3とが接合された円筒状の可撓性ホース1となっている。
【0017】
可撓性ホース1では、可撓性条帯2の部分が可撓性を有するホース壁として機能し、金属製条帯3の部分がホースの円筒状形状を維持するらせん状の補強体として機能する。必須ではないが、かしめにより可撓性条帯2と金属製条帯3とが接合される部分は、シール部材や、粘着剤、接着剤などを併用してシールすることが好ましい。
【0018】
可撓性条帯は、織布を樹脂によりコーティングした複合素材により構成されている。織布を構成する繊維は特に限定されないが、木綿や麻などの天然繊維や、ポリエステルやポリアミド等の合成樹脂繊維、ガラス繊維や炭素繊維、シリカ繊維などの無機繊維などを用いた織布が利用できる。織布をコーティングする樹脂は特に限定されないが、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂や、熱可塑性エラストマーであってもよく、合成ゴム等の熱硬化性樹脂であってもよい。
【0019】
ホースの耐熱性や耐火性を高める観点から、織布が、無機繊維を主体に構成され、シリコーン樹脂もしくはフッ素樹脂によりコーティングされていることが好ましい。無機繊維としては、ガラス繊維やシリカ繊維、アルミナ繊維、カーボン繊維、セラミック繊維などが例示されるが、これらに限定されない。織布は無機繊維以外の繊維、例えば、合成樹脂繊維などを含んでいてもよい。シリコーン樹脂はシリコーンゴムであることが好ましく、フッ素樹脂は熱可塑性フッ素樹脂やフッ素ゴムであることが好ましい。本実施形態においては、ガラス繊維を主体とする織布が熱可塑性のフッ素樹脂によりコーティングされた複合素材が、所定の幅に裁断されたものを、可撓性条帯2として使用している。
【0020】
金属製条帯3は、メッキされた鉄、ステンレス、アルミニウム、真鍮等の金属材料性の薄板により構成されている。金属製条帯3は、ホースとなった際につぶれにくさを発揮する補強体として機能するため、また、条帯をかしめることにより、可撓性条帯2と金属製条帯3とを強固に接合するため、所定の厚さで設けられる。金属製条帯の厚みは、典型的には0.1mm~1.5mmである。本実施形態では、金属製条帯の厚みは0.25mmである。
【0021】
以下、可撓性条帯2や金属製条帯3の折返し形状やかしめ接合構造の詳細を説明する。
図2では、図の上側がホース外側に対応し、図の下側がホース内側に対応している。また、説明の便宜上、図中Aで示した方向をホースの一端側、図中Bで示した方向をホースの他端側と呼ぶ。
【0022】
可撓性ホース1では、金属製条帯3は、ホースの一端側に位置する端縁部(図中A側の端縁部)が、ホース外側かつ金属製条帯中央部33に向かって折り返された金属製条帯第1折返し部31とされている。なお、条帯の端縁部がホース外側かつ条帯中央部に向かって折り返される、とは、条帯の端縁部がホース外側に向かうように折り曲げられ、さらに条帯端縁部が条帯中央部に向かうよう、Uの字状に折り返されることを意味する。以下の記載における折返し部も同様に表記する。
さらに、金属製条帯3は、ホースの他端側に位置する端縁部(図中B側の端縁部)が、ホース外側かつ金属製条帯中央部33に向かって折り返された金属製条帯第2折返し部32とされている。すなわち、金属製条帯2は、ホース外側に開いた、つぶれたC字型の断面形状となるように折り曲げられている。
【0023】
図3に、可撓性ホース1における可撓性条帯2の折返し形状を断面図で示す。
可撓性条帯2において、ホースの一端側(図中A側)に位置する可撓性条帯2の端縁部分を可撓性条帯第1端縁部2Aと呼ぶ。可撓性条帯第1端縁部2Aには、ホース内側かつ可撓性条帯2の中央部29に向かって折り返された可撓性条帯第1折返し部21が設けられている。
【0024】
可撓性条帯第1折返し部21の内側に金属製条帯第2折返し部32の末端32aが位置する状態で、金属製条帯第2折返し部32がかしめられて、可撓性条帯2の第1端縁部2Aと金属製条帯3とが接合されている。
【0025】
必須ではないが、可撓性条帯の第1端縁部2Aには、可撓性条帯第1折返し部21よりもさらに端縁に近い側に、ホース内側かつホースの一端側(図中A側)に向かって折り返された可撓性条帯第4折返し部24が設けられていてもよい。すなわち、可撓性条帯の第1端縁部2AはS字状に折り曲げられていてもよい。第4折返し部24が設けられると、可撓性条帯2の第1端縁部2Aと金属製条帯3との接合強度が向上する。
【0026】
前記可撓性条帯2において、ホースの他端側(図中B側)に位置する可撓性条帯2の端縁部分を可撓性条帯第2端縁部2Bと呼ぶ。可撓性条帯第2端縁部2Bには、ホース内側かつ可撓性条帯2の中央部29に向かって折り返された可撓性条帯第2折返し部22が設けられている。
【0027】
さらに、可撓性条帯2の第2端縁部2Bには、可撓性条帯第2折返し部22よりもさらに端縁に近い側に、ホース内側かつホースの他端側(図中B側)に向かって折り返された可撓性条帯第3折返し部23が設けられている。すなわち、可撓性条帯2の第2端縁部2BはS字状に折り曲げられている。
【0028】
可撓性条帯第2折返し部22の内側に金属製条帯第1折返し部31の末端31aが位置し、かつ、金属製条帯第1折返し部31の内側に可撓性条帯第3折返し部23が位置する状態で、金属製条帯第1折返し部31がかしめられて、可撓性条帯2の第2端縁部2Bと金属製条帯3とが接合されている。
【0029】
可撓性条帯2の第2端縁部2Bには、可撓性条帯第3折返し部23よりもさらに端縁に近い側に、末端部25が延在している。可撓性条帯の第2端縁部2Bの末端部25は、
図2に示すように、金属製条帯3の第1折返し部31と第2折返し部32の間からホース外側に延出している、
【0030】
さらに、可撓性条帯の第2端縁部2Bの末端部25は、金属製条帯第2折返し部32に対応する部分の外周を覆っている。すなわち、末端部25は、ホース長さ方向で金属製条帯第2折返し部32に対応する部分で、可撓性ホース1の最外周部に位置している。
【0031】
本実施形態においては、可撓性条帯の第2端縁部2Bの末端部25が金属製条帯第2折返し部32に対応する部分の外周を覆うように設けられたが、
図4に示す実施形態のように、可撓性条帯の第2端縁部2Bの末端部26が金属製条帯第1折返し部31に対応する部分の外周を覆うように設けられてもよい。
【0032】
可撓性ホース1において、金属製条帯第1折返し部31と金属製条帯第2折返し部32とで比較して、これら2つの折返し部のうち、径の大きい方の折返し部に対応する部分の外周を、可撓性条帯1の第2端縁部2Bの末端部25が覆っていることが好ましい。
【0033】
必須ではないが、可撓性ホース1において、可撓性条帯の第2端縁部2Bの第3折返し部23の内側に、線材4が配置されていてもよい。線材4としては、特に限定されないが、金属線や樹脂線、ひもなどが例示される。線材4が配置されると、可撓性条帯の第2端縁部2Bと金属製条帯3の接合強度が向上する。同様に、必須ではないが、可撓性ホース1において、可撓性条帯の第1端縁部2Aの第4折返し部24の内側に、線材4が配置されていてもよい(図示せず)。
【0034】
可撓性ホース1は、公知の製造方法により製造可能である。まず、それぞれ所定の幅のリボン状にされた可撓性条帯2と金属製条帯3が準備される。可撓性条帯2と金属製条帯3は、それぞれ所定の折返し形状に折り曲げられながら、互いの折返し部がかみ合うように組み合わされつつ、らせん状に捲回され、金属製条帯3の折返し部をかしめて、可撓性ホース1が製造される。
【0035】
上記第1実施形態の可撓性ホース1の作用および効果について説明する。上記可撓性ホース1によれば、ホース壁の損耗が抑制できる。
【0036】
特許文献1に示されるような従来構造の可撓性ホースでは、可撓性条帯により構成されるホース壁が、金属製条帯により構成される補強体よりも、ホース外周側に位置していた。そのため、ホース配管時にホースが引きずられたりすると、金属製条帯の外側の部分で、ホース壁が地面や壁面に接触し損耗することがある。これにより、これら部位にピンホールが生じてホース壁の気密性が損なわれたりするおそれがある。あるいは、ホース壁の損耗により、可撓性条帯中の織布の繊維が切れてしまい、ホース壁の強度が損なわれるおそれがある。
【0037】
上記第1実施形態の可撓性ホース1では、可撓性条帯2の第2端縁部2Bの末端部25が、金属製条帯3の第1折返し部31と第2折返し部32の間からホース外側に延出して、金属製条帯第1折返し部31もしくは金属製条帯第2折返し部32に対応する部分の外周を覆っているので、末端部25が保護材となって、ホース壁となっている部分で可撓性条帯が損耗することが未然に抑制される。すなわち、金属製条帯第1折返し部31もしくは金属製条帯第2折返し部32に対応する部分で、末端部25がホースの最外周に位置することとなり、ホースが引きずられても、まず、末端部25が地面や壁面に接触し、末端部25から損耗していくことになる。可撓性条帯の末端部25はホースの気密性等には寄与しない部分であり、この部分が損耗しても可撓性ホースのホース壁の気密性等は損なわれない。
【0038】
ホース壁の損耗をより確実に抑制するとの観点からは、金属製条帯第1折返し部31と金属製条帯第2折返し部32とで比較して、径の大きい方の折返し部に対応する部分の外周を、可撓性条帯の第2端縁部2Bの末端部25が覆っていることが好ましい。
【0039】
また、可撓性ホース1において、可撓性条帯2を構成する織布が、無機繊維を主体に構成され、シリコーン樹脂もしくはフッ素樹脂によりコーティングされている織布であることが好ましい。かかる織布は耐熱性や耐火性に優れ、かかる織布の可撓性条帯で可撓性ホース1を製造すれば、耐熱性や耐火性を備えるホースにおいて、ホース壁の損耗を抑制できる。
【0040】
また、可撓性ホース1によれば、別個の保護部材を追加しなくても、既存の部材(可撓性条帯)の末端部を利用して、ホース壁の損耗が抑制でき、必要な資材や必要な設備の追加が少なくて済む。
【0041】
また、可撓性ホース1によれば、可撓性条帯2の端縁にほつれが生じることも抑制される。特許文献1に記載された構造の可撓性ホースのように、織布を樹脂によりコーティングした条帯をかしめてホースにする場合、特許文献1の
図2の断面構造のように、可撓性条帯の端縁が、金属製条帯のかしめ部分の間からホースの外側に露出する構造となることがある。この場合、金属製条帯をかしめる際に、かしめ金型やかしめローラーが可撓性条帯の端縁に接触してこすりつけることになり、可撓性条帯の端縁がほつれやすい。端縁にほつれが生ずると、ほつれた部分の繊維が飛散してごみとなったり、ほつれた部分が引っかかって可撓性条帯が抜けやすくなったりして好ましくない。
【0042】
上記実施形態の可撓性ホース1によれば、可撓性条帯2の第2端縁部2Bの末端部25は、金属製条帯第1折返し部31もしくは金属製条帯第2折返し部32に対応する部分の外周を覆っている。すなわち、可撓性条帯2の第2端縁部2Bの端縁25aは、金属製条帯第1折返し部31や金属製条帯第2折返し部32から外れた位置に設けられている。そのため、金属製条帯をかしめる際に、かしめ金型やかしめローラーが、可撓性条帯の端縁25aに接触せず、端縁のほつれが生じにくくなる。
【0043】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0044】
図4には、第2実施形態の可撓性ホースにおけるかしめ部の構造を示す。第2実施形態の可撓性ホースは、可撓性条帯の第2端縁部2Bの末端部26が設けられる方向が、第1実施形態における末端部25と比べ逆方向であるが、他の点は、第1実施形態の可撓性ホースと同様である。第2実施形態の可撓性ホースのように、可撓性条帯の第2端縁部2Bの末端部26によって、金属製条帯3の第1折返し部31に対応する部分の外周を覆うようにしてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、可撓性条帯2の第1端縁部2Aでは、第4折返し部24が設けられていない、そのため、金属製条帯3は、第1折返し部31の方が、第2折返し部32に比べ、径が大きくなっている。このように、金属製条帯3の2つの折返し部に径の大小がある場合には、径が大きい方の折返し部(第1折返し部31)に対応する部分の外周を覆うように、可撓性条帯2の末端部26を設けることが好ましい。
【0046】
図5には、第3実施形態の可撓性ホースにおけるかしめ部の構造を示す。第3実施形態の可撓性ホースでは、可撓性条帯の第2端縁部2Bの末端部27が折返し部28で折り返されていて、金属製条帯3の第1折返し部31に対応する部分と、金属製条帯3の第2折返し部32に対応する部分の両方で、可撓性条帯の第2端縁部2Bの末端部27がホース壁の外周を覆っている。かかる構成により、ホース壁の損耗が生じやすい金属製条帯が設けられた部分の全体にわたって、ホース壁の損耗をより確実に抑制できる。
【0047】
また、必須ではないが、可撓性ホース1において、末端部25の損耗の程度を目視により確認できることが好ましい。末端部が損耗していることが目視により発見できれば、それ以上損耗が進まないよう、留意することができるからである。
損耗の目視確認をたやすくする手段としては、例えば、織布の色とコーティングする樹脂の色を異ならせることが例示できる。この場合、織布の色が見えたら、末端部25に損耗が生じていることがわかる。あるいは、コーティングされた織布の色が表側と裏側で異なるようにしておいてもよく、この場合、表側から裏側のコーティングの色が見えたら、末端部25に損耗が生じていることがわかる。
【0048】
可撓性ホースの用途は特に限定されない。空調用の送風ダクトや、熱風を送る配管、内燃機関や燃焼装置等の排気ダクト、液体や粉体、粒体を送るための可撓性ホース、建物内部等で使用されるケーブル用シース部材などに、上記可撓性ホースは使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
上記可撓性ホースは送風ダクト等に使用でき、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0050】
1 可撓性ホース
2 可撓性条帯
2A 第1端縁部
2B 第2端縁部
29 中央部
21 第1折返し部
22 第2折返し部
23 第3折返し部
24 第4折返し部
25 末端部
3 金属製条帯
31 第1折返し部
32 第2折返し部
33 中央部
4 線材