(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】ウェビング巻取装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/46 20060101AFI20230714BHJP
B60R 22/48 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
B60R22/46 166
B60R22/48 102
(21)【出願番号】P 2020053432
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴雅
(72)【発明者】
【氏名】杉山 元規
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-000988(JP,A)
【文献】特開2011-110974(JP,A)
【文献】特開2014-046854(JP,A)
【文献】特開2014-046856(JP,A)
【文献】特開2014-004853(JP,A)
【文献】特開2014-113871(JP,A)
【文献】特開2014-084072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/46
B60R 22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状のウェビングの長手方向基端部が係止され、巻取方向への回転によって前記ウェビングの長手基端側から前記ウェビングを巻取るスプールと、
駆動されることによって出力軸が回転される駆動手段と、
前記出力軸へ連結されて前記出力軸の回転が入力されると共に、前記スプールへの回転の伝達が可能な状態で前記出力軸の所定方向への回転を前記スプールへ伝えて前記スプールを巻取方向へ回転させる第1回転伝達手段と、
前記出力軸へ連結されて前記出力軸の回転が入力されると共に、前記出力軸から前記スプールまでの前記出力軸の回転の減速比が前記第1回転伝達手段よりも大きく設定され、前記スプールへの回転の伝達が可能な状態では前記出力軸の回転を前記スプールへ伝えて前記スプールを巻取方向へ回転させる第2回転伝達手段と、
前記第1回転伝達手段を介した回転の伝達による前記スプールの回転速度が前記第2回転伝達手段を介した回転の伝達による前記スプールの回転速度未満になることで前記出力軸から前記スプールへの回転の伝達経路を前記第1回転伝達手段から前記第2回転伝達手段へ切替える切替手段と、
を備えるウェビング巻取装置。
【請求項2】
前記切替手段は、
前記第1回転伝達手段に伝わった前記出力軸の所定方向の回転を前記スプールへ伝えると共に、作動されることによって前記第1回転伝達手段から前記スプールへの回転の伝達を遮断する第1クラッチと、
前記第2回転伝達手段から前記スプールへの回転の伝達を遮断すると共に、前記第1回転伝達手段を介した回転の伝達による前記スプールの回転速度が前記第2回転伝達手段を介した回転の伝達による前記スプールの回転速度未満になることで作動されて前記第2回転伝達手段を前記スプールへ繋げて前記第2回転伝達手段を介して前記出力軸の前記所定方向への回転を前記スプールへ伝え、更に、前記第1クラッチを作動させる第2クラッチと、
を備える請求項1に記載のウェビング巻取装置。
【請求項3】
前記第1クラッチは、
前記出力軸の前記所定方向への回転によって回転される第1回転体を含んで構成され、
前記第2クラッチは、
前記第1回転体に対する同軸上で、前記出力軸の前記所定方向への回転によって前記第1回転体の回転速度以下の回転速度で回転される第2回転体と、
前記第2回転体に設けられ、移動することによって前記第2回転体の回転を前記スプールへ伝達可能な状態にする連結部材と、
を含んで構成され、
前記第1回転体と共に回転可能に前記第1回転体に設けられ、前記第2回転体の回転速度が前記第1回転体の回転速度を越えることによって前記連結部材を押圧して前記連結部材を移動させる押圧部材を備える請求項2に記載のウェビング巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートベルト装置を構成するウェビング巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に開示されたウェビング巻取装置では、モータの出力軸からスプールまでの回転の伝達経路が2系統設けられている。これらの伝達経路は、減速比が異なっている。すなわち、一方の系統の伝達経路は、減速比が大きく、スプールの巻取方向への回転速度は、低速である。これに対して、他方の系統の伝達経路は、減速比が小さく、スプールの回転速度は、高速である。
【0003】
ところで、下記特許文献1に開示された構成では、モータが正転駆動されると、一方の系統の伝達経路でモータの出力軸の回転(正転)がスプールへ伝えられてスプールが巻取方向へ回転される。これに対して、モータが逆転駆動されると、他方の系統の伝達経路でモータの出力軸の回転(逆転)がスプールへ伝えられてスプールが巻取方向へ回転される。このように、一方の系統の伝達経路でモータの出力軸の回転をスプールへ伝える場合と、他方の系統の伝達経路でモータの出力軸の回転をスプールへ伝える場合とでモータの出力軸の回転方向を変えなくてはならない。このため、モータの制御が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、モータの制御が容易なウェビング巻取装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のウェビング巻取装置は、長尺帯状のウェビングの長手方向基端部が係止され、巻取方向への回転によって前記ウェビングの長手基端側から前記ウェビングを巻取るスプールと、駆動されることによって出力軸が回転される駆動手段と、前記出力軸へ連結されて前記出力軸の回転が入力されると共に、前記スプールへの回転の伝達が可能な状態で前記出力軸の所定方向への回転を前記スプールへ伝えて前記スプールを巻取方向へ回転させる第1回転伝達手段と、前記出力軸へ連結されて前記出力軸の回転が入力されると共に、前記出力軸から前記スプールまでの前記出力軸の回転の減速比が前記第1回転伝達手段よりも大きく設定され、前記スプールへの回転の伝達が可能な状態では前記出力軸の回転を前記スプールへ伝えて前記スプールを巻取方向へ回転させる第2回転伝達手段と、前記第1回転伝達手段を介した回転の伝達による前記スプールの回転速度が前記第2回転伝達手段を介した回転の伝達による前記スプールの回転速度未満になることで前記出力軸から前記スプールへの回転の伝達経路を前記第1回転伝達手段から前記第2回転伝達手段へ切替える切替手段と、を備えている。
【0007】
本発明の第1の態様のウェビング巻取装置では、駆動手段が駆動されると駆動手段の出力軸が所定方向へ回転される。駆動手段の出力軸は、第1回転伝達手段へ連結されており、第1回転伝達手段からスプールへ回転の伝達が可能な状態であれば、駆動手段の出力軸の回転は、第1回転伝達手段を介してスプールへ伝わり、スプールが巻取方向へ回転される。これによって、ウェビングがスプールに巻取られる。
【0008】
一方、駆動手段の出力軸は、第2回転伝達手段へ連結されており、駆動手段の出力軸の所定方向への回転は、第2回転伝達手段へ伝わる。第2回転伝達手段からスプールへの回転の伝達が可能な状態であれば、駆動手段の出力軸の所定方向への回転は、スプールへ伝わり、スプールは、巻取方向へ回転される。
【0009】
ところで、駆動手段の出力軸の所定方向への回転が第1回転伝達手段を介してスプールに伝わっている状態で、スプールの巻取方向への回転速度が第2回転伝達手段を介して回転がスプールへ伝わった際のスプールの巻取方向への回転速度未満になると、切替手段によって 駆動手段の出力軸からスプールへの回転の伝達経路が第1回転伝達手段から第2回転伝達手段へ切替えられる。これによって、駆動手段の出力軸の回転は、第2回転伝達手段を介してスプールへ伝わり、スプールが巻取方向へ回転される。
【0010】
ここで、駆動手段の出力軸からスプールまでの第2回転伝達手段の減速比は、駆動手段の出力軸からスプールまでの第1回転伝達手段の減速比よりも大きい。したがって、駆動手段の出力軸からスプールへの回転の伝達経路が切替手段によって第1回転伝達手段から第2回転伝達手段へ切替えられることで、スプールが巻取方向へ回転される際の回転トルクを大きくできる。
【0011】
本発明の第2の態様のウェビング巻取装置は、本発明の第1の態様のウェビング巻取装置において、前記切替手段は、前記第1回転伝達手段に伝わった前記出力軸の所定方向の回転を前記スプールへ伝えると共に、作動されることによって前記第1回転伝達手段から前記スプールへの回転の伝達を遮断する第1クラッチと、前記第2回転伝達手段から前記スプールへの回転の伝達を遮断すると共に、前記第1回転伝達手段を介した回転の伝達による前記スプールの回転速度が前記第2回転伝達手段を介した回転の伝達による前記スプールの回転速度未満になることで作動されて前記第2回転伝達手段を前記スプールへ繋げて前記第2回転伝達手段を介して前記出力軸の前記所定方向への回転を前記スプールへ伝え、更に、前記第1クラッチを作動させる第2クラッチと、を備えている。
【0012】
本発明の第2の態様におけるウェビング巻取装置では、駆動手段が駆動されて駆動手段の出力軸が所定方向へ回転されると、出力軸の回転は、第1回転伝達手段及び第2回転伝達手段の双方へ伝えられる。
【0013】
第1回転伝達手段に伝わった出力軸の回転は、第1クラッチによってスプールへ伝えられ、これによってスプールが巻取方向へ回転される。この状態で、スプールの巻取方向への回転速度が第2回転伝達手段を介して回転がスプールへ伝わった際のスプールの巻取方向への回転速度未満になると、第2クラッチが作動される。これによって、第2回転伝達手段に伝わった出力軸の回転がスプールへ伝えられ、これによってスプールが巻取方向へ回転される。
【0014】
また、第2クラッチが作動されることによって第1クラッチが作動される。これによって、第1回転伝達手段からスプールへの回転の伝達が遮断される。
【0015】
本発明の第3の態様のウェビング巻取装置は、本発明の第2の態様のウェビング巻取装置において、前記第1クラッチは、前記出力軸の前記所定方向への回転によって回転される第1回転体を含んで構成され、前記第2クラッチは、前記第1回転体に対する同軸上で、前記出力軸の前記所定方向への回転によって前記第1回転体の回転速度以下の回転速度で回転される第2回転体と、前記第2回転体に設けられ、移動することによって前記第2回転体の回転を前記スプールへ伝達可能な状態にする連結部材と、を含んで構成され、前記第1回転体と共に回転可能に前記第1回転体に設けられ、前記第2回転体の回転速度が前記第1回転体の回転速度を越えることによって前記連結部材を押圧して前記連結部材を移動させる押圧部材を備えている。
【0016】
本発明の第3の態様におけるウェビング巻取装置では、駆動手段が駆動されて駆動手段の出力軸が所定方向へ回転されると、出力軸の回転は、第1回転伝達手段及び第2回転伝達手段の双方へ伝えられる。第1回転伝達手段に伝わった出力軸の回転は、第1クラッチによってスプールへ伝えられ、これによってスプールが巻取方向へ回転される。
【0017】
また、出力軸の回転が第1回転伝達手段及び第2回転伝達手段の双方に伝わると、第1クラッチの第1回転体が回転されると共に、第2クラッチの第2回転体が回転される。この状態で、スプールの巻取方向への回転速度が第2回転伝達手段を介して回転がスプールへ伝わった際のスプールの巻取方向への回転速度未満になると、第1クラッチの第1回転体の回転速度が第2クラッチの第2回転体の回転速度よりも遅くなる。これによって、第1回転体に設けられた押圧部材が第2回転体に設けられた連結部材を押圧して連結部材を移動させる。これによって、第2回転伝達手段がスプールへ連結され、出力軸の回転は第2回転伝達手段を介してスプールへ伝わり、スプールが巻取方向へ回転される。
【0018】
このように第2クラッチが作動されると、第1クラッチが作動され、第1回転伝達手段を介したスプールへの回転伝達が遮断される。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように、本発明の第1の態様のウェビング巻取装置では、駆動手段の出力軸の回転方向を変えなくても、回転の伝達経路を第1回転伝達手段から第2回転伝達手段に切替えて、スプールの巻取方向への回転を高速から低速へ変えることができ、駆動手段の制御を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るウェビング巻取装置の概略的な正面図である。
【
図2】第1クラッチの構成を示す分解斜視図である。
【
図3】第1クラッチのスライドベースを装置右側から見た側面図である。
【
図5】第2クラッチを装置右側から見た側面図である。
【
図6】スライダが連結パウルへ当接した状態を示す
図5に対応した側面図である。
【
図7】連結パウルが連結方向へ回動された状態を示す
図6に対応した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、
図1から
図7の各図に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において適宜に示される矢印LHは、ウェビング巻取装置10の装置左側を示し、矢印UPは、装置上側を示す。また、矢印Aは、スプール18の回転方向のうち、巻取方向側を示す。
【0022】
(本実施の形態の構成)
図1に示されるように、本実施の形態に係るウェビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は、車両の車体としてのセンターピラー(図示省略)の車両下側部分に固定されている。また、フレーム12は、脚板14、16を備えており、脚板14と脚板16とは、装置左右方向(
図1の矢印LH方向及びその反対方向)に対向されている。
【0023】
また、本ウェビング巻取装置10は、スプール18を備えている。スプール18は、略円筒形状に形成されており、フレーム12の脚板14と脚板16との間に配置されている。スプール18の中心軸線方向は、脚板14と脚板16との対向方向(すなわち装置左右方向)に沿っており、スプール18は、中心軸線周りに回転可能とされている。
【0024】
スプール18には長尺帯状のウェビング20の長手方向基端部が係止されており、スプール18が巻取方向(
図2等の矢印A方向)へ回転されると、ウェビング20が長手方向基端側からスプール18に巻取られる。また、ウェビング20の長手方向先端側は、スプール18から車両上側へ延びている。さらに、ウェビング20の長手方向先端側は、フレーム12の車両上側でセンターピラーに支持されたスルーアンカ(図示省略)に形成されたスリット孔を通って車両下側へ折返されている。
【0025】
また、ウェビング20の長手方向先端部は、アンカプレート(図示省略)に係止されている。アンカプレートは、鉄等の金属板材によって形成されており、車両の床部(図示省略)又は本ウェビング巻取装置10に対応するシート(図示省略)の骨格部材等に固定されている。
【0026】
また、本ウェビング巻取装置10が適用された車両用のシートベルト装置は、バックル装置(図示省略)を備えている。バックル装置は、本ウェビング巻取装置10が適用されるシートの車幅方向内側に設けられている。シートに着座した乗員の身体にウェビング20が掛回された状態で、ウェビング20に設けられたタング(図示省略)がバックル装置に係合されることによって、ウェビング20が乗員の身体に装着される。
【0027】
また、脚板14の装置右側(
図1の矢印LH方向とは反頼側)にはロック手段としてのロック機構22が設けられている。ロック機構22は、例えば、車両が急減速状態になった場合及びスプール18が急激に引出方向に回転した場合の少なくとも一方の場合に作動する。ロック機構22が作動することによって、スプール18の引出方向への回転が直接又は間接的に制限され、スプール18からのウェビング20の引出しが制限される。
【0028】
また、脚板14の装置右側には、プリテンショナ26が設けられている。プリテンショナ26は、車両衝突時等の車両緊急時に作動される。プリテンショナ26が作動されることによって、スプール18は、巻取方向(
図2等の矢印A方向)へ強制的に回転される。さらに、スプール18には、フォースリミッタ機構が設けられている。スプール18の引出方向(
図2等の矢印A方向とは反対方向)への回転がロック機構22のロック部材によって阻止された状態で、スプール18の引出方向の回転力が所定の大きさを越えると、フォースリミッタ機構のエネルギー吸収部材が変形されながらスプール18が引出方向へ回転される。このスプール18の引出方向への回転量だけウェビング20がスプール18から引出されると共に、スプール18の回転力の一部がエネルギー吸収部材の変形に供されて吸収される。
【0029】
一方、フレーム12の脚板16の装置左側(
図1の矢印LH方向側)には、スプリングハウジング28が設けられており、スプリングハウジング28の内側には、スプール付勢手段としてのぜんまいばね(図示省略)が設けられている。スプリングハウジング28内のぜんまいばねの渦巻き方向外側端部は、スプリングハウジング28に直接又は間接的に係止されている。また、スプリングハウジング28の内側には、軸部材(図示省略)が設けられており、ぜんまいばねの渦巻き方向内側端部は、軸部材に直接又は間接的に係止されている。
【0030】
スプリングハウジング28内の軸部材は、スプール18に対する同軸上に配置されており、スプリングハウジング28に回転自在に支持されている。スプリングハウジング28内の軸部材は、スプール18へ間接的に連結されており、スプール18に対する相対回転が制限されている。このため、スプール18は、スプリングハウジング28内のぜんまいばねによって巻取方向(
図2等の矢印A方向)へ付勢されている。
【0031】
また、スプリングハウジング28とフレーム12の脚板16との間には第1回転伝達手段としての第1ギヤ列30の第1ギヤハウジング32が設けられている。さらに、第1ギヤハウジング32とフレーム12の脚板16との間には第2回転伝達手段としての第2ギヤ列34の第2ギヤハウジング36が設けられている。第1ギヤハウジング32の内側には、
図2に示される第1ギヤ列最終ギヤ44を含んで構成される第1ギヤ列30が設けられている。これに対して、第2ギヤハウジング36の内側には、
図5等に示される第2回転体としての第2ギヤ列最終ギヤ46を含んで構成される第2ギヤ列34が設けられている。
【0032】
一方、
図1に示されるように、本ウェビング巻取装置10は、駆動手段としてのモータ40を備えている。モータ40は、フレーム12の脚板14と脚板16との間におけるスプール18の装置下側(
図1の矢印UP方向とは反対側)に設けられている。モータ40は、車両に搭載されたバッテリー(図示省略)に電気的に接続されていると制御手段としてのECU(図示省略)に電気的に接続されている。ECUは、車両前方を監視する前方監視装置(図示省略)に電気的に接続されている。
【0033】
前方監視装置では、例えば、車両前方へ発信されたミリ波レーダ等の電波が車両前方の障害物等によって反射されると、前方監視装置によって受信され、車両から車両前方の障害物までの距離が前方監視装置によって算出される。このようにして算出された車両から車両前方の障害物までの距離が所定値未満の場合には、前方監視装置からECUへ出力される障害物検出信号がLowレベルからHighレベルに切替わる。ECUに入力された障害物検出信号がLowレベルからHighレベルに切替わると、モータ40がECUによって正転駆動される。
【0034】
また、ECUは、バックルスイッチ(図示省略)に電気的に接続されている。バックルスイッチは、シートベルト装置を構成する上述したバックルに設けられており、タングがバックルに係合されると、バックルスイッチからECUへ出力されるタング検出信号がLowレベルからHighレベルに切替わる。これに対して、タングとバックルとの係合が解消されると、バックルスイッチから出力されるタング検出信号がHighレベルからLowレベルに切替わる。ECUに入力されたタング検出信号がLowレベル及びHighレベルの一方から他方へ切替わると、モータ40がECUによって正転駆動される。
【0035】
さらに、モータ40の出力軸42は、モータ40の本体部分から装置左側(
図1の矢印LH方向側)へ延びており、モータ40の出力軸42は、フレーム12の脚板14を通って第1ギヤハウジング32及び第2ギヤハウジング36に入っている。モータ40の出力軸42には駆動ギヤ(図示省略)が出力軸42に対する同軸上で出力軸42に対して一体的に設けられている。このモータ40の出力軸42の駆動ギヤは、第1ギヤハウジング32内の第1ギヤ列30の第1ギヤ列初段ギヤ(図示省略)へ噛合っている。
【0036】
このため、モータ40の駆動力(すなわち、出力軸42の回転力)は、第1ギヤ列30の第1ギヤ列初段ギヤへ伝えられ、第1ギヤ列初段ギヤが回転される。第1ギヤ列30の第1ギヤ列初段ギヤへ伝えられたモータ40の駆動力は、第1ギヤ列30によって減速されながら第1ギヤ列30の第1ギヤ列最終ギヤ44へ伝えられる。これによって、第1ギヤ列最終ギヤ44は、回転できる。
【0037】
さらに、モータ40の出力軸42の駆動ギヤは、第2ギヤハウジング36の内側で第2ギヤ列34の第2ギヤ列初段ギヤ(図示省略)へ噛合っている。このため、モータ40の駆動力(すなわち、出力軸42の回転力)は、第2ギヤ列34の第2ギヤ列初段ギヤへ伝えられ、第2ギヤ列初段ギヤが回転される。第2ギヤ列34の第2ギヤ列初段ギヤへ伝えられたモータ40の駆動力は、第2ギヤ列34によって減速されながら第2ギヤ列34の第2ギヤ列最終ギヤ46へ伝えられる。これによって、第2ギヤ列最終ギヤ46は、回転できる。
【0038】
すなわち、本実施の形態では、モータ40が駆動されて出力軸42が回転されると、第1ギヤ列30の第1ギヤ列最終ギヤ44及び第2ギヤ列34の第2ギヤ列最終ギヤ46の双方が同じ方向へ回転される。ここで、第1ギヤ列30の第1ギヤ列最終ギヤ44及び第2ギヤ列34の第2ギヤ列最終ギヤ46の双方は、スプール18に対する同軸上に設けられている。また、第2ギヤ列34の減速比は、第1ギヤ列30の減速比よりも大きい。このため、モータ40が正転駆動されて出力軸42が回転されると、第1ギヤ列30の第1ギヤ列最終ギヤ44は、巻取方向へ回転されると共に、第2ギヤ列34の第2ギヤ列最終ギヤ46よりも高速で巻取方向へ回転される。
【0039】
第1ギヤハウジング32内の第1ギヤ列30は、
図2に示される第1クラッチ60を備えている。第1クラッチ60は、ベース62を備えている。ベース62は、円板部64を備えている。円板部64の装置左側(
図2の矢印LH方向側)には、ロータ板66が設けられている。ロータ板66は、円板形状とされており、円板部64に対する同軸上に設けられている。また、ロータ板66は、円板部64に対して装置左側へ離れた位置で円板部64に連結されており、円板部64に対する相対回転及び装置左右方向への相対移動が制限されている。
【0040】
ロータ板66の略中央には、支持孔68が形成されている。ロータ板66の支持孔68には、第1ギヤ列30の第1ギヤ列最終ギヤ44のギヤ軸部70が挿入されており、第1ギヤ列最終ギヤ44は、ロータ板66に対する同軸上で、ロータ板66に対して相対回転可能に支持されている。
【0041】
第1ギヤ列最終ギヤ44のギヤ軸部70には、第1クラッチスプリング72が設けられている。第1クラッチスプリング72は、コイルばねとされており、第1ギヤ列最終ギヤ44のギヤ軸部70は、第1クラッチスプリング72の内側に配置されている。第1ギヤ列最終ギヤ44が巻取方向(
図2の矢印A方向)へ回転されると、第1ギヤ列最終ギヤ44のギヤ軸部70と第1クラッチスプリング72との間の摩擦によって第1クラッチスプリング72が第1ギヤ列最終ギヤ44と共に巻取方向へ回転される。また、第1クラッチスプリング72の一端部は、ロータ板66に係合されている。これによって、第1ギヤ列最終ギヤ44の回転力が第1クラッチスプリング72を介してロータ板66へ伝達され、更に、ベース62に伝達される。
【0042】
一方、ベース62の円板部64の装置左側(
図2の矢印LH方向側)には、ベース軸部74が設けられている。ベース軸部74は、円柱形状に形成されており、スプール18に対する同軸上に配置され、円板部64に対して一体とされている。ベース軸部74には、レバー76が設けられており、レバー76は、巻取方向(
図2の矢印A方向)及び引出方向(
図2の矢印A方向とは反対方向)へ回動自在にベース軸部74に支持されている。レバー76には一対のレバー部78が設けられている。
【0043】
一方のレバー部78は、リング部92の径方向外側に配置され、他方のレバー部78は、レバー76の回動中心を挟んで一方のレバー部78とは反対側に配置されている。また、レバー76の両レバー部78からは装置右側(
図2の矢印LH方向とは反対方向側)へ向けて係合突起80が突出形成されている。これらの係合突起80は、ベース62の円板部64に形成された孔部82を通って円板部64の装置右側へ突出されている。
【0044】
ベース62の円板部64の装置右側には、一対のウエイト84が設けられている。これらのウエイト84には孔86が形成されている。孔86は、装置左右方向(
図2の矢印LH方向及びその反対方向)にウエイト84を貫通している。孔86には、ベース62の円板部64の装置右側の面から突出形成された支持軸(図示省略)が入っており、各ウエイト84は、装置左右方向を軸方向とする軸周り方向へ回動可能に支持軸に支持されている。これらのウエイト84には、係合爪88が形成されている。
【0045】
一方のウエイト84の係合爪88は、レバー76の一方のレバー部78の係合突起80に係合され、他方のウエイト84の係合爪88は、レバー76の他方のレバー部78の係合突起80に係合されている。ウエイト84がベース62の円板部64に形成された支持軸周りの一方(
図2の矢印B方向)へ回動されると、レバー76の両レバー部78の係合突起80がウエイト84の係合爪88によって引張られ、これによって、レバー76が引出方向へ回動される。
【0046】
ベース62には、リターンスプリング90が設けられている。リターンスプリング90は、圧縮コイルばねとされており、ベース62の円板部64の装置右側(
図2の矢印LH方向とは反対方向側)に配置されている。リターンスプリング90の一方の端部は、レバー76の一方のレバー部78へ係合されており、リターンスプリング90の他方の端部は、ベース62に係合されている。これによって、レバー76は、ベース62の円板部64に対して巻取方向(
図2の矢印A方向)側へ付勢されていると共に、リターンスプリング90の付勢力に抗することによって、ベース62の円板部64に対して巻取方向とは反対の引出方向へ回動できる。
【0047】
また、ベース62の円板部64には、スプリング装着部92が形成されている。スプリング装着部92は、円板部64よりも小径の略円板形状とされており、円板部64の装置左側で円板部64に対する同軸上で円板部64に一体に形成されている。ベース62の円板部64のスプリング装着部92には、第2クラッチスプリング94が設けられている。第2クラッチスプリング94は、捻りコイルばねとされており、スプリング装着部92が第2クラッチスプリング94の内側に入っている。これによって、第2クラッチスプリング94は、スプリング装着部92に保持されている。
【0048】
第2クラッチスプリング94の一端部は、レバー76の一対のレバー部78の一方に係止されている。これに対して、第2クラッチスプリング94の他端部は、ベース62の円板部64に係止されている。このため、レバー76がベース62に対して引出方向(
図2の矢印A方向とは反対方向)へ回動されると、第2クラッチスプリング94のコイル部分がコイル部分の半径方向外側へ膨らむように弾性変形される。
【0049】
また、第2クラッチスプリング94のコイル部分の径方向外側には、第1回転伝達手段の第1回転体としてのスライダベース100が設けられている。スライダベース100は、リング部102を備えている。スライダベース100のリング部102は、ベース62に対する同軸上に配置されており、ベース62に対する相対回転が可能にベース62に支持されている。
【0050】
但し、上述したように、ベース62に設けられた第2クラッチスプリング94のコイル部分がコイル部分の半径方向外側へ膨らむ(変位する)ように弾性変形されると、第2クラッチスプリング94がスライダベース100のリング部102の内側部分に圧接される。この状態では、第2クラッチスプリング94とスライダベース100の内側部分との間の摩擦によってベース62の回転がスライダベース100に伝達される。これによって、スライダベース100が回転されるようになっている。
【0051】
すなわち、モータ40が正転駆動された際の出力軸42が第1ギヤ列30の第1ギヤ列最終ギヤ44へ伝わって、第1ギヤ列最終ギヤ44が巻取方向へ回転されると、スライダベース100が巻取方向へ回転される。但し、第1ギヤ列最終ギヤ44の巻取方向への回転状態で、スライダベース100の巻取方向への回転が制限されると、第2クラッチスプリング94のコイル部分は、スライダベース100の内側部分に対して巻取方向へ滑る。これによって、第2クラッチスプリング94のコイル部分からスライダベース100への巻取方向への回転の伝達が遮断される。
【0052】
一方、第2ギヤ列34の第2ギヤ列最終ギヤ46は、
図5に示される第2回転体として第2クラッチ110を構成している。第2ギヤ列最終ギヤ46は、スプール18に対する同軸上に設けられている。また、第2ギヤ列最終ギヤ46は、外歯が形成されたギヤ部112とギヤ部112の内側に設けられた底壁部114とを備えており、全体的には、装置右側へ向けて開口した浅底の有底筒形状とされている。ギヤ部112は、第2ギヤ列34において第2ギヤ列最終ギヤ46の前段のギヤ(図示省略)に噛合っており、モータ40の出力軸42の回転が第2ギヤ列34へ伝わると、ギヤ部112、すなわち、第2ギヤ列最終ギヤ46が回転される。
【0053】
第2ギヤ列最終ギヤ46の底壁部114には円孔116が形成されている。円孔116は、円形とされ、スプール18に対する同軸上に形成されている。円孔116には、連結部118の軸部120が貫通配置されている。連結部118の軸部120は、円柱形状とされ、第2ギヤ列最終ギヤ46は、連結部118の軸部120に回転自在に支持されている。連結部118の軸部120の装置左側(
図1等の矢印LH方向側)の部分は、第1クラッチ60のスライダベース100へ連結されている。連結部118は、第1クラッチ60のスライダベース100に対する巻取方向(
図5等の矢印A方向)及び引出方向(
図5等の矢印A方向とは反対方向)への相対回転が制限されている。
【0054】
一方、ギヤ部112の内側における底壁部114には一対のパウル支持軸122が設けられている。各パウル支持軸122の軸方向は、第2ギヤ列最終ギヤ46の中心軸方向と同じ方向とされている。これらのパウル支持軸122には、連結部材としての連結パウル124がパウル支持軸122周りに回動可能に支持されている。
【0055】
連結パウル124は、パウル支持軸122周りの一方である連結方向(
図6の矢印C方向)へ回動されると、第2ギヤ列最終ギヤ46のギヤ部112の内側に配置されたラチェットギヤ126へ噛合うことができる(
図7参照)。連結パウル124とラチェットギヤ126との噛合状態では、第2ギヤ列最終ギヤ46の巻取方向への回転をラチェットギヤ126へ伝えることができる。
【0056】
ラチェットギヤ126は、スプール18に対する同軸上に設けられており、連結部118の軸部120と一体にされている。さらに、ラチェットギヤ126は、スプール18へ直接又は間接的に連結されており、ラチェットギヤ126のスプール18に対する相対回転は、制限されている。このため、ラチェットギヤ126又は第1クラッチ60のスライダベース100が巻取方向(
図5等の矢印A方向)へ回転されると、この回転は、スプール18へ伝わり、スプール18が巻取方向へ回転される。
【0057】
一方、上記のパウル支持軸122の側方では、底壁部114上に一対の支持ピン128が設けられている。これらの支持ピン128の各々にはパウルリターンスプリング130が取付けられている。パウルリターンスプリング130の一端部は、連結パウル124へ圧接されており、これによって、連結パウル124は、連結方向とは反対方向(
図5の矢印D方向)へ付勢されている。
【0058】
また、
図5に示されるように、第2ギヤ列最終ギヤ46の底壁部114には、一対の孔部132が形成されている。これらの孔部132には、押圧部材としてのスライダ134の当接部136が貫通配置されている。
図4に示されるように、スライダ134は、基部138を備えている。基部138は、細幅の板状とされ、基部138の幅方向は、概ね、装置左右方向(
図4の矢印LH方向及びその反対方向)とされている。
【0059】
図4に示されるように、スライダ134の基部138は、第1クラッチ60のスライダベース100に形成されたリング溝140の内側に配置されている。リング溝140は、円形とされ、スプール18に対する同軸上で、装置右側(
図2等の矢印LH方向とは反対方向)、すなわち、第2ギヤ列34の第2ギヤ列最終ギヤ46側へ開口されている。スライダ134の基部138は、リング溝140の内壁に圧接されており、基部138とリング溝140の内壁との間の摩擦によって保持されている。基部138とリング溝140の内壁との間の摩擦抵抗(最大摩擦力)を上回る力でスライダ134がリング溝140の周方向や接線方向へ押圧されると、スライダ134は、リング溝140の内側でリング溝140の周方向へスライダベース100に対して相対回転される。
【0060】
図3に示されるように、スライダ134の当接部136は、基部138の長手方向中間部から装置右側へ延出されている。
図5に示されるように、スライダ134の当接部136は、連結パウル124の巻取方向側(
図5等の矢印A方向とは反対方向)に配置されている。第2ギヤ列最終ギヤ46がスライダ134に対して相対的に巻取方向へ回転されると、連結パウル124は、スライダ134の当接部136へ接近されて当接される。この状態で、連結パウル124がスライダ134の当接部136を巻取方向へ押圧すると、連結パウル124がスライダ134の当接部136から押圧反力を受ける。この押圧反力が、上述したパウルリターンスプリング130から連結パウル124が受ける連結方向とは反対方向(
図5の矢印D方向)への付勢力を上回ると、連結パウル124は、連結方向へ回動される。
【0061】
(本実施の形態の作用、効果)
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0062】
本実施の形態では、ウェビング20が車両のシートに着座した乗員の身体に装着される際には、ウェビング20が乗員によって引張られ、これによって、ウェビング20がスプール18から引出される。ウェビング20から引出されたウェビング20は、乗員によって乗員の身体の車両前側へ掛回され、この状態で、ウェビング20に設けられたタングがシートベルト装置のバックルに係合される。
【0063】
タングがシートベルト装置のバックルに係合されると、バックルに設けられたバックルスイッチから出力されてECUに入力されるタング検出信号がLowレベルからHighレベルに切替わり、モータ40がECUによって正転駆動され、これによって、モータ40の出力軸42が回転される。モータ40の出力軸42の回転は、第1ギヤ列30によって減速されて第1ギヤ列30の第1ギヤ列最終ギヤ44へ伝わる。これによって、第1ギヤ列最終ギヤ44は、巻取方向(
図2等の矢印A方向)へ回転される。
【0064】
この第1ギヤ列最終ギヤ44の巻取方向への回転は、第1クラッチ60の第1クラッチスプリング72、ロータ板66を介してベース62に伝わる。これによって、ベース62が巻取方向へ回転される。このベース62の巻取方向への回転によって第1クラッチ60のウエイト84に遠心力が作用されると、ウエイト84は、パウル支持軸122周りの一方(
図2の矢印B方向)へ回動される。
【0065】
このウエイト84の回動によって、第1クラッチ60のレバー76がリターンスプリング90の付勢力に抗してベース軸部74周りに回動されると、第1クラッチ60の第2クラッチスプリング94のコイル部が径方向外側へ膨らむように変形され、第2クラッチスプリング94が第1クラッチ60のスライダベース100の内側部分へ圧接される。これにより、第1ギヤ列30の第1ギヤ列最終ギヤ44の巻取方向への回転が、スライダベース100へ伝達され、スライダベース100が巻取方向へ回転される。
【0066】
スライダベース100は、スプール18へ直接又は間接的に連結されており、スプール18に対する相対回転が制限されている。このため、スライダベース100の巻取方向への回転は、スプール18へ伝わり、これによって、スプール18が巻取方向へ回転される。これによって、ウェビング20がスプール18に巻取られて格納され、例えば、乗員の身体へのウェビング20の装着状態でのウェビング20の弛みを除去できる。
【0067】
ところで、モータ40がECUによって正転駆動された際の、モータ40の出力軸42の回転は、第2ギヤ列34を介して第2ギヤ列最終ギヤ46へ伝わり、第2ギヤ列最終ギヤ46が巻取方向へ回転される。ここで、第2ギヤ列34の減速比は、第1ギヤ列30の減速比よりも大きい。このため、この状態での第2ギヤ列最終ギヤ46の巻取方向への回転速度は、第1ギヤ列最終ギヤ44の巻取方向への回転速度(すなわち、スライダベース100の巻取方向への回転速度)よりも遅い。
【0068】
このため、この状態では、スライダ134の当接部136は、第2ギヤ列最終ギヤ46の底壁部114の孔部132の内周部における巻取方向側部分へ当接される(
図5参照)。第2ギヤ列最終ギヤ46の回転速度が、スライダベース100の回転速度よりも遅い。このため、この状態では、スライダ134の当接部136が底壁部114の孔部132の内周部へ当接されることで、スライダ134の基部138は、スライダベース100のリング溝140の内壁に対して滑る。これによって、スライダ134の当接部136が底壁部114の孔部132へ貫通配置されていても、スライダベース100及び第2ギヤ列最終ギヤ46の双方が回転できる。
【0069】
一方、例えば、第1ギヤ列30を介したスプール18への回転の伝達によって乗員の身体へ装着されたウェビング20の弛みが除去され、この状態でのスプール18の回転トルクでは、スプール18がウェビング20をそれ以上巻取れなくなると、スプール18の巻取方向への回転速度が遅くなるか、又は、スプール18が停止される。これによって、スライダベース100の回転速度が第2ギヤ列34の第2ギヤ列最終ギヤ46よりも遅くなり、又は、第1クラッチ60のスライダベース100が停止されると、第2ギヤ列最終ギヤ46の連結パウル124がスライダ134の当接部136へ接近される。
【0070】
これによって、
図6に示されるように、スライダ134の当接部136へ当接された連結パウル124が当接部136を押圧すると、連結パウル124は、当接部136から押圧反力を受ける。これによって、連結パウル124は、パウルリターンスプリング130からの付勢力に抗して連結方向(
図6の矢印C方向)へ回動されると、一対の連結パウル124の少なくとも一方は、ラチェットギヤ126へ噛合う。これによって、ラチェットギヤ126へ第2ギヤ列最終ギヤ46の巻取方向への回転が伝わる。
【0071】
ここで、第2ギヤ列34の減速比は、第1ギヤ列30の減速比よりも大きい。このため、第2ギヤ列最終ギヤ46からラチェットギヤ126へ伝わった巻取方向への回転トルクは、第1ギヤ列30を介して第1クラッチ60のスライダベース100へ伝わった巻取方向への回転トルクよりも大きい。ラチェットギヤ126は、スプール18へ直接又は間接的に連結されており、スプール18に対する相対回転が制限されている。このため、ラチェットギヤ126の巻取方向への回転は、スプール18へ伝わる。
【0072】
これによって、モータ40の出力軸42の回転が第1ギヤ列30を介してスプール18へ伝わった場合よりも、大きな回転トルクでスプール18が巻取方向へ回転される。これによって、モータ40の出力軸42の回転が第1ギヤ列30を介してスプール18へ伝わった場合では除去しきれなかったウェビング20の弛みを更に除去でき、乗員の身体をウェビング20によって更に強く拘束できる。したがって、例えば、走行中の車両の前側の障害物へ車両が接近した場合に、車両が障害物するまでの間に乗員の身体をウェビング20によって強く拘束できる。
【0073】
一方、モータ40の出力軸42の回転が第2ギヤ列34を介してスプール18へ伝わった状態では、ラチェットギヤ126と共に第1ギヤ列30のスライダベース100が巻取方向へ回転される。したがって、この状態では、スライダベース100の巻取方向への回転速度は、第1クラッチ60の第2クラッチスプリング94の巻取方向への回転速度よりも速い。このように、スライダベース100と第2クラッチスプリング94との間で回転に速度差が生じると、スライダベース100は、第2クラッチスプリング94に対して滑る。これによって、スライダベース100は、ラチェットギヤ126と共に巻取方向へ回転できる。
【0074】
このように、本実施の形態では、モータ40の出力軸42の回転を反転させなくても、出力軸42からスプール18への回転の伝達経路を第1ギヤ列30から第2ギヤ列34へ切替えることができる。このため、第1ギヤ列30から第2ギヤ列34への回転の伝達経路を切替えに際してのモータ40の制御が容易(不要)である。
【0075】
また、第1ギヤ列30から第2ギヤ列34への回転の伝達経路の切替えに際してモータ40の出力軸42を反転させなくてもよい。このため、出力軸42からスプール18への回転の伝達経路を素早く第1ギヤ列30から第2ギヤ列34へ切替えることができる。これによって、第1ギヤ列30から第2ギヤ列34へ切替えの際にウェビング20が緩むことを抑制できる。
【0076】
さらに、第1ギヤ列30から第2ギヤ列34への回転の伝達経路の切替えに際してのモータ40の出力軸42の回転速度の増減が不要である。したがって、これによってもモータ40の制御が容易になる。
【0077】
また、例えば、走行中の車両の前側の障害物へ車両が接近した場合であっても第1ギヤ列30を介した回転伝達によるスプール18の巻取方向への回転速度が、第2ギヤ列34の第2ギヤ列最終ギヤ46の回転速度より遅くなるまでは、第1ギヤ列30によってモータ40の出力軸42の回転がスプール18へ伝達される。このため、例えば、第1ギヤ列30を用いずに第2ギヤ列34だけでスプール18を巻取方向へ回転させる場合に比べて、ウェビング20によって乗員の身体を早く、しかも、強く拘束できる。
【符号の説明】
【0078】
10・・・ウェビング巻取装置、18・・・スプール、20・・・ウェビング、30・・・第1ギヤ列(第1回転伝達手段)、34・・・第2ギヤ列(第2回転伝達手段)、40・・・モータ(駆動手段)、42・・・出力軸、46・・・第2ギヤ列最終ギヤ(第2回転体)、60・・・第1クラッチ、100・・・スライダベース(第1回転体)、110・・・第2クラッチ、124・・・連結パウル(連結部材)、134・・・スライダ(押圧部材)