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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】熱交換器の解体方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20230714BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20230714BHJP
   B09B 3/00 20220101ALI20230714BHJP
【FI】
G21F9/30 531H
G21F9/30 535C
B09B5/00 T
B09B3/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020056436
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021156702
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】520106781
【氏名又は名称】スタズビック ウエスト マネジメント テクノロジー アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】西川 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】中山 準平
(72)【発明者】
【氏名】パー リーダー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス バーナーソン
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-106048(JP,A)
【文献】特開昭61-213404(JP,A)
【文献】特開2014-055747(JP,A)
【文献】特開平6-092600(JP,A)
【文献】特表平11-514588(JP,A)
【文献】米国特許第04905630(US,A)
【文献】特開2014-059149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30
B09B 3/30
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管と、この伝熱管を固定する管板と、上記伝熱管及び管板を格納する円筒状の胴部とを備え、原子力施設で使用される熱交換器の解体方法であって、
上記伝熱管が、円弧部と、この円弧部の両端からそれぞれ上記胴部の中心軸に対して平行に延び、上記管板をその表面から裏面に向かって貫通する直管部とを有し、上記直管部が、上記管板の裏面側で上記管板に溶接されており、
上記伝熱管の円弧部を除去する工程と、
上記管板をその表面に平行に輪切りにすることで、上記直管部の上記管板への溶接部分を除去する工程と、
上記円弧部除去工程及び上記溶接部分除去工程後に、上記直管部を引き抜く工程と
を備える熱交換器の解体方法。
【請求項2】
上記引抜工程で、上記直管部を上記管板の裏面側から引き抜く請求項1に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項3】
上記直管部が、上記管板の貫通部分で拡径されて上記管板に密着されており、
上記溶接部分処理工程後に、上記直管部の拡径部分を処理する工程をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項4】
上記拡径部分処理工程を、上記直管部の管壁の切削により行う請求項3に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項5】
上記拡径部分処理工程を、上記直管部と上記管板との密着力の緩和により行う請求項3に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項6】
上記密着力の緩和方法として、上記直管部の管壁の一部を上記管板の板厚方向に切除する方法を用いる請求項5に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項7】
上記密着力の緩和方法として、少なくとも上記管板の加熱及び冷却を行う方法を用いる請求項5に記載の熱交換器の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力施設の設備更新や廃止措置では、老朽化したタンクや熱交換器のような機器が撤去される。これらの機器には放射性物質が付着している。この放射性物質が付着している部分を取り除き、放射性物質が付着していない部分あるいは放射性物質の付着量がわずかであり除染可能な部分を金属原料等として再利用すれば、放射性廃棄物の低減を図ることができる。
【0003】
熱交換器の場合、管板に固定されている伝熱管及び水室の内部に放射性物質が付着していることがある。一方、管板には放射性物質が表面にのみ付着しており、容易に除去可能である。この場合、伝熱管を撤去すれば、管板を再利用することが可能となる。
【0004】
伝熱管を撤去する方法として、伝熱管の円弧部を除去した後、伝熱管の直線部と管板との接続を切断し、伝熱管の直線部を、その延在方向に沿って熱交換器の胴部から引き抜く熱交換器の解体方法が公知である(特開2014-59149号公報参照)。
【0005】
上記公報に記載の熱交換器では、伝熱管は、円弧部と、円弧部の両端から延びる直線部を有しており、複数の管支持板に挿通支持され、管板を介して胴部に固定されている。上記公報に記載の熱交換器の解体方法では、以下の手順によりこの伝熱管を撤去する。まず、伝熱管の円弧部及び管板に固定されている直線部の管板側端部を切断する。この切断により残された伝熱管は直線部のみが管支持板に真っ直ぐ挿通支持され、熱交換器の胴部の軸方向に沿って移動可能な状態となる。そして、伝熱管円弧部が除去された側から、この直線部を、その延在方向(上記軸方向)に沿って胴部から直線状のまま引き抜く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-59149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記公報に記載の熱交換器の解体方法では、管板に固定されている伝熱管の直線部の管板側端部を切断する。通常熱交換器は複数の伝熱管を有するため、個々の伝熱管を切断していかねばならず、手間がかかり易く作業中の被ばく量を十分に低減することが難しい。
【0008】
また、上記公報に記載の熱交換器の解体方法では、管板内に伝熱管が残る。管板を再利用する場合、管板を溶融炉で溶解し、加工して製品にするが、管板に伝熱管が残った状態で管板を再利用すると、伝熱管内面に放射性物質が付着している場合、汚染した再利用製品となる。管板と伝熱管の材質が異なる場合、そのまま溶融すると材質が混在し、再利用製品の品質が低下するおそれがある。
【0009】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、作業性に優れ被ばく量をさらに低減できるとともに、管板を金属材料として容易に再利用できる熱交換器の解体方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る熱交換器の解体方法は、伝熱管と、この伝熱管を固定する管板と、上記伝熱管及び管板を格納する円筒状の胴部とを備え、原子力施設で使用される熱交換器の解体方法であって、上記伝熱管が、円弧部と、この円弧部の両端からそれぞれ上記胴部の中心軸に対して平行に延び、上記管板をその表面から裏面に向かって貫通する直管部とを有し、上記直管部が、上記管板の裏面側で上記管板に溶接されており、上記伝熱管の円弧部を除去する工程と、上記管板をその表面に平行に輪切りにすることで、上記直管部の上記管板への溶接部分を除去する工程と、上記円弧部除去工程及び上記溶接部分除去工程後に、上記直管部を引き抜く工程とを備える。
【0011】
当該熱交換器の解体方法では、管板を平行に輪切りすることで、直管部の管板への溶接部分を除去する。このため、伝熱管の本数に関わらず一度の切断で全ての直管部を移動可能な状態とできる。また、当該熱交換器の解体方法では、上記溶接部分除去工程後に、直管部を引き抜くので、管板内の直管部も同時に引き抜かれる。このため、直管部を引き抜いた管板をそのまま金属材料として再利用することができる。従って、当該熱交換器の解体方法は、作業性に優れ被ばく量をさらに低減できるとともに、管板を金属材料として容易に再利用できる。
【0012】
上記引抜工程で、上記管板の裏面側から引き抜くとよい。管板から円弧部側に延びる直管部は一般に比較的長い。このように上記引抜工程で上記直管部を上記管板の裏面側から引き抜くことで、直管部が最後まで管板で支持されるため、長い直管部を安定して引き抜くことが可能となる。
【0013】
上記直管部が、上記管板の貫通部分で拡径されて上記管板に密着されており、上記溶接部分除去工程後に、上記直管部の拡径部分を処理する工程をさらに備えるとよい。施工時の拡管加工等により伝熱管が管板に強く密着している場合、溶接部分を除去するのみでは、容易に直管部の引き抜きを行えないおそれがある。このように直管部が管板の貫通部分で拡径されて管板に密着されている場合にあっては、溶接部分除去工程後に、上記直管部の拡径部分を処理する工程を備えることで、容易に直管部を引き抜くことが可能となる。
【0014】
上記拡径部分処理工程を、上記直管部の管壁の切削により行うとよい。このように上記拡径部分処理工程を、上記直管部の管壁の切削により行うことで、確実に管板と伝熱管との密着部分を除去できるので、さらに容易に直管部を引き抜くことが可能となる。
【0015】
上記拡径部分処理工程を、上記直管部と上記管板との密着力の緩和により行うとよい。このように上記拡径部分処理工程を、上記直管部と上記管板との密着力の緩和により行うことで、直管部の引き抜きとともに拡径部分を除去できるので、作業性が高められる。
【0016】
上記密着力の緩和方法として、上記直管部の管壁の一部を上記管板の板厚方向に切除する方法を用いるとよい。このように上記密着力の緩和方法に上記直管部の管壁の一部を上記管板の板厚方向に切除する方法を用いることで、比較的少ない切除量で直管部を容易に引き抜くことが可能となる。従って、切除時に生じる放射性物質が付着した塵量を抑えられるので、被ばく量をさらに低減できる。
【0017】
上記密着力の緩和方法として、少なくとも上記管板の加熱及び冷却を行う方法を用いるとよい。このように上記密着力の緩和方法に少なくとも上記管板の加熱及び冷却を行う方法を用いることで、伝熱管の切削を伴わずに直管部を引き抜くことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の熱交換器の解体方法は、作業性に優れ被ばく量をさらに低減できるとともに、管板を金属材料として容易に再利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る熱交換器の解体方法を示すフロー図である。
図2図2は、図1の熱交換器の解体方法で解体する熱交換器を示す模式的断面図である。
図3図3は、図2のIII部分の模式的拡大断面図である。
図4図4は、熱交換器の頭部を除去した状態を示す模式図である。
図5図5は、熱交換器の円弧部を除去した状態を示す模式図である。
図6図6は、熱交換器の管板を輪切りにした状態を示す模式図である。
図7図7は、拡径部分を切削により処理する方法の一例を説明する模式的断面図である。
図8図8は、拡径部分を密着力の緩和により処理する方法の一例を説明する模式的上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について適宜図面を参照しつつ詳説する。
【0021】
図1に示す熱交換器の解体方法は、原子力施設で使用される熱交換器の解体方法であって、円弧部除去工程S1と、溶接部分除去工程S2と、拡径部分処理工程S3と、引抜工程S4とを備える。
【0022】
<熱交換器>
図2に、当該熱交換器の解体方法で解体する熱交換器1の構成を示す。熱交換器1は、複数の伝熱管10と、この伝熱管10を固定する管板20と、伝熱管10及び管板20を格納する円筒状の胴部30とを備える。
【0023】
(伝熱管)
伝熱管10は、円弧部11と、この円弧部11の両端からそれぞれ胴部30の中心軸に対して平行に延びる直管部12とを有する。複数の伝熱管10は、図2に示すように、楔止め金具13や管支持板14により胴部30内の位置を制御されている。ただし、伝熱管10は楔止め金具13や管支持板14に固定されているわけではなく、伝熱管10が移動可能に保持されている。
【0024】
(管板)
管板20は、直管部12の円弧部11とは反対側の端部を固定するための板である。管板20は、胴部30の下端部にその表面が胴部30の中心軸と直交するように配置されており、胴部30を上下に区画している。
【0025】
直管部12は、図3に示すように、管板20をその表面20aから裏面20bに向かって貫通している。直管部12は、管板20の裏面側で管板20に溶接されている(図3の溶接部分21)。また、直管部12は、管板20の貫通部分で拡径された拡径部分12aを有し、この拡径部分12aにより管板20に密着されている。
【0026】
(胴部)
胴部30は、管板20で上下に区画されており、その下部には冷却材が供給及び排出される水室31が設けられている。また、胴部30は、管板20で区画された上部に伝熱管10を浸漬するように被冷却材(例えば水)を供給できるように構成されている。
【0027】
(動作)
熱交換器1には、原子炉で加熱された高温の1次冷却材が水室31に供給される。この1次冷却材は伝熱管10の内部を流れて水室31に戻され、水室31から排出される。
【0028】
このとき、伝熱管10の周囲は被冷却材で満たされており、この被冷却材でと熱交換を行うこととなる。従って、排出される1次冷却材は、温度が下がっている。この低温になった1次冷却材は再び原子炉で加熱され、水室31へ供給されることとなる。
【0029】
一方、熱交換により加熱された被冷却材は、熱交換器1から取り出され、その熱エネルギーを利用される。
【0030】
原子力施設において熱交換器1はこのように使用されるので、伝熱管10や水室31の内部を放射性物質が通過する可能性がある。従って、放射性物質は伝熱管10や水室31の内部に主に含まれ、他の部分には含まれないか、含まれていても微量である可能性が高い。
【0031】
以下、これを踏まえて、当該熱交換器の解体方法の各工程について説明する。
【0032】
<円弧部除去工程>
円弧部除去工程S1では、伝熱管10の円弧部11を除去する。
【0033】
具体的には、以下の手順による。まず、熱交換器1の頭部をカッター等により切断することで除去する。この際、図4に示すように、伝熱管10は、切断することなく残す。伝熱管10に切れ目が生じない限り、放射性物質が外部に露出する可能性は低いため、切断部分を密閉する必要はない。
【0034】
次に、円弧部11を除去する。円弧部11を除去すると、伝熱管10の内部が露出するため、放射性物質が外部に排出されるおそれがある。従って、この円弧部11は放射性物質の漏出を防止できる解体室内で行われる。なお、以降の工程は、伝熱管10の内部が露出した状態で行われるため、解体完了まで解体室内で行われる。
【0035】
円弧部11の除去は、例えば公知の手法により行うことができる。例えば胴部30の円弧部11周辺を取り囲む部分を除去し、円弧部11を露出させた後、カッターやレーザー等の切断機で切断し回収する。回収した円弧部11は、放射性物質が付着しているため、放射性物質として廃棄される。
【0036】
これにより図5に示すように、熱交換器1は、管板20に複数の直管部12のみが林立する状態にまで解体される。
【0037】
<溶接部分除去工程>
溶接部分除去工程S2では、管板20をその表面に平行に輪切りにすることで、直管部12の管板20への溶接部分21を除去する。
【0038】
具体的には、例えば図3の切断位置Cで、例えば鋸刃式の切断機で切断する。
【0039】
切断位置Cとしては、特に限定されるものではない。輪切りにされ除去された溶接部分21を含む管板除去部を再利用する場合は、切断位置Cは管板20の表面側に近い方が、直管部12を貫通させる際の摩擦抵抗が減るため好ましい。
【0040】
これに対し、管板除去部を再利用しない場合は、切断位置Cは管板20の裏面側に近い方が、再利用される管板20の量を確保できるため好ましい。
【0041】
なお、この輪切りにより、管板除去部は水室31とともに一体的に除去され、図6に示すように、溶接部分を除去された管板20(以下、この溶接部分を除去された管板を継続して「管板」という)と直管部12とが残る。
【0042】
<拡径部分処理工程>
拡径部分処理工程S3では、溶接部分除去工程S2後に、直管部12の拡径部分12aを処理する。
【0043】
拡径部分12aを処理することなく、直管部12を引き抜くことも可能であるが、図3に示す直管部12のように施工時の拡管加工等により伝熱管10が管板20に強く密着している場合、溶接部分21を除去するのみでは、容易に直管部12の引き抜きを行えないおそれがある。このように直管部12が管板20の貫通部分で拡径されて管板20に密着されている場合にあっては、溶接部分除去工程S2後に、直管部12の拡径部分12aを処理する工程を備えることで、容易に直管部12を引き抜くことが可能となる。
【0044】
拡径部分12aを処理する方法としては、切削による方法、密着力の緩和による方法等を挙げることができる。
【0045】
(切削による方法)
切削による方法では、拡径部分処理工程S3を直管部12の管壁の切削により行う。
【0046】
具体的には、例えば図7に示すドリルDのような切削機により管板20の裏面側から拡径部分12aを削り取る。ドリルDに拡径部分12aの外径と同等もしくはわずかに大きい径のものを用いることで、拡径部分12aを削り落とすことが可能である。図7では、ドリルDを用いているが、他の研削機、例えばリーマー等を用いても同様に機能する。なお、拡径部分12aの全てを切削する必要はなく、直管部12を容易に引き抜くことが可能となる範囲でよい。この場合、管板20内に残留する直管部12は、引抜工程S4で管板20から引き抜かれる。
【0047】
このように拡径部分処理工程S3を、直管部12の管壁の切削により行うことで、確実に管板20と伝熱管10との密着部分を除去できるので、さらに容易に直管部12を引き抜くことが可能となる。
【0048】
(密着力の緩和による方法)
この方法では、拡径部分処理工程S3を、直管部12と管板20との密着力の緩和により行う。この方法では、直管部12と管板20との密着力を緩和した後に、後述する引抜工程S4で直管部12の引き抜きとともに拡径部分12aを除去できる。このため作業性が高められる。
【0049】
上記密着力の緩和方法として、直管部12の管壁の一部を管板20の板厚方向に切除する方法を用いるとよい。
【0050】
具体的には、図8に示すように、断面がC字状となるように直管部12の管壁の一部を管板20の板厚方向に切除する。つまり、切除後において、直管部12の管壁はその一部に管板20の板厚方向に延びる間隙Sを有する。拡径部分12aをこの間隙Sを狭めるように変形させることにより拡径部分12aの径を小さくすることができる。これにより直管部12と管板20との密着力を緩和できる。
【0051】
この間隙Sは、例えば公知のスロッター加工により行うことができる。なお、スロッター加工を行う際、直管部12の管壁のみを切除してもよいが、図8に示すように管板20の一部も合わせて切除するとよい。管板20の一部も合わせて切断することで、確実に直管部12の管壁の一部に間隙Sを設けることができる。
【0052】
このように上記密着力の緩和方法に直管部12の管壁の一部を管板20の板厚方向に切除する方法を用いることで、比較的少ない切除量で直管部12を容易に引き抜くことが可能となる。従って、切除時に生じる放射性物質が付着している粉塵量を抑えられるので、被ばく量をさらに低減できる。
【0053】
また、他の上記密着力の緩和方法として、少なくとも管板20の加熱及び冷却を行う方法を用いるとよい。
【0054】
この方法では、管板20のみ又は管板20及び拡径部分12aを加熱及び冷却を行うことで、熱膨張率の違いを利用して密着力の緩和を図る。この場合、加熱及び冷却は急速に行うことが好ましく、特に冷却を急速に行うことが好ましい。急冷することで、密着力の緩和が進み易くなる。また、加熱及び冷却は複数回おこなってもよい。
【0055】
このように上記密着力の緩和方法に少なくとも管板20の加熱及び冷却を行う方法を用いることで、伝熱管10の切削を伴わずに直管部12を引き抜くことが可能となる。
【0056】
<引抜工程>
引抜工程S4では、円弧部除去工程S1、溶接部分除去工程S2及び拡径部分処理工程S3後に、直管部12を引き抜く。
【0057】
具体的には、管板20から複数の直管部12を1本ずつ引き抜いていく。直管部12は、管板20及び管支持板14に支えられ、管板20に対して垂直となる方向に姿勢が維持されているので、比較的容易に引き抜くことができる。
【0058】
ここで、管板20は、直管部12が中心軸に垂直方向に動かない程度に支えているが、管支持板14は直管部12を動かない程度にまで固定するものではない。また、直管部12は一般に比較的長い。直管部12を表面側から引き抜くと、まず直管部12は管板20から離脱することとなる。そうすると、直管部12は管支持板14のみを通って引き抜かれることとなるが、管支持板14は直管部12を中心軸に垂直方向に動かない程度に固定するものではないため、直管部12の姿勢を保ち難く、直管部12が管支持板14に引っかかり易い。
【0059】
このため、引抜工程S4で、管板20の裏面側から引き抜くとよい。このように引抜工程S4で直管部12を管板20の裏面側から引き抜くことで、直管部12が最後まで管板20で支持されるため、長い直管部12を安定して引き抜くことが可能となる。
【0060】
回収した直管部12は、放射性物質が付着しているため、放射性物質として廃棄される。一方、直管部12が引き抜かれた管板20には、放射性物質が付着していたとしても物理的に除去することが容易であるため、そのまま金属材料として再利用することができる。
【0061】
<その他>
管板除去部を再利用する場合は、当該熱交換器の解体方法は、管板除去部から直管部12の貫通部分を除去する工程を備えるとよい。管板除去部から直管部12の貫通部分の除去は、拡径部分処理工程S3と同様の手法を用いて行うことができる。
【0062】
<利点>
当該熱交換器の解体方法では、管板20を平行に輪切りすることで、直管部12の管板20への溶接部分21を除去する。このため、伝熱管10の本数に関わらず一度の切断で全ての直管部12を移動可能な状態とできる。また、当該熱交換器の解体方法では、溶接部分除去工程S2後に、直管部12を引き抜くので、管板20内の直管部12も同時に引き抜かれる。このため、直管部12を引き抜いた管板20をそのまま金属材料として再利用することができる。従って、当該熱交換器の解体方法は、作業性に優れ、かつ管板20を金属材料として容易に再利用できる。
【0063】
[その他の実施形態]
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0064】
上記実施形態では、拡径部分処理工程を備える場合を説明したが、この工程は必須の工程ではなく、例えば拡径部分を有さない伝熱管が用いられている場合など省略することができる。
【0065】
上記実施形態では、円弧部除去工程と溶接部分除去工程とをこの順に行う場合を説明したが、これらの工程は逆順に、つまり溶接部分除去工程後に円弧部除去工程を行うことも可能である。なお、逆順に行う場合にあっては、円弧部除去工程の後、つまり最後に引抜工程を行うこととなる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の熱交換器の解体方法は、作業性に優れ被ばく量をさらに低減できるとともに、管板を金属材料として容易に再利用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 熱交換器
10 伝熱管
11 円弧部
12 直管部
12a 拡径部分
13 楔止め金具
14 管支持板
20 管板
20a 表面
20b 裏面
21 溶接部分
30 胴部
31 水室
C 切断位置
D ドリル
S 間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8