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特許7313322時系列予測システム、時系列予測方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】時系列予測システム、時系列予測方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/22 20090101AFI20230714BHJP
   H04W 16/14 20090101ALI20230714BHJP
   H04W 24/02 20090101ALI20230714BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20230714BHJP
   H04B 17/391 20150101ALI20230714BHJP
   H04B 17/373 20150101ALI20230714BHJP
   G06N 3/04 20230101ALN20230714BHJP
【FI】
H04W16/22
H04W16/14
H04W24/02
G06N20/00
H04B17/391
H04B17/373
G06N3/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020144740
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039616
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-05-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省「異システム間の周波数共用技術の高度化に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】長尾 竜也
【審査官】田部井 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-186862(JP,A)
【文献】特開平07-253446(JP,A)
【文献】特開2019-101792(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220879(WO,A1)
【文献】特開2016-042666(JP,A)
【文献】特開2014-241560(JP,A)
【文献】特開2016-165093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
G06N 20/00
H04B 17/391
H04B 17/373
G06N 3/049
DB名 3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の無線周波数の電波状態を表す電波状態情報が各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得部と、
前記観測区域から取得される前記電波状態情報の観測値から前記観測区域以外の他の区域の前記電波状態情報の推定値を出力する空間方向推定モデルを、前記観測データ取得部が取得した前記電波状態情報の観測値に基づいて生成する空間方向推定モデル生成部と、
前記観測区域以外の他の区域である推定区域の推定時刻の前記電波状態情報の推定値を、前記観測データ取得部が取得した当該推定時刻の観測値から前記空間方向推定モデルを使用して取得する電波状態情報推定部と、
前記推定区域の前記電波状態情報の推定値の時系列データに基づいて、前記推定区域の将来の前記電波状態情報の予測値を算出する時系列予測部と、
を備える時系列予測システム。
【請求項2】
前記空間方向推定モデルは、複数の区域がクラスタリングされた結果のクラスタ区域ごとに生成される、
請求項1に記載の時系列予測システム。
【請求項3】
特定の無線周波数の電波状態を表す電波状態情報が各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得ステップと、
前記観測区域から取得される前記電波状態情報の観測値から前記観測区域以外の他の区域の前記電波状態情報の推定値を出力する空間方向推定モデルを、前記観測データ取得ステップで取得した前記電波状態情報の観測値に基づいて生成する空間方向推定モデル生成ステップと、
前記観測区域以外の他の区域である推定区域の推定時刻の前記電波状態情報の推定値を、前記観測データ取得ステップで取得した当該推定時刻の観測値から前記空間方向推定モデルを使用して取得する電波状態情報推定ステップと、
前記推定区域の前記電波状態情報の推定値の時系列データに基づいて、前記推定区域の将来の前記電波状態情報の予測値を算出する時系列予測ステップと、
を含む時系列予測方法。
【請求項4】
コンピュータに、
特定の無線周波数の電波状態を表す電波状態情報が各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得ステップと、
前記観測区域から取得される前記電波状態情報の観測値から前記観測区域以外の他の区域の前記電波状態情報の推定値を出力する空間方向推定モデルを、前記観測データ取得ステップで取得した前記電波状態情報の観測値に基づいて生成する空間方向推定モデル生成ステップと、
前記観測区域以外の他の区域である推定区域の推定時刻の前記電波状態情報の推定値を、前記観測データ取得ステップで取得した当該推定時刻の観測値から前記空間方向推定モデルを使用して取得する電波状態情報推定ステップと、
前記推定区域の前記電波状態情報の推定値の時系列データに基づいて、前記推定区域の将来の前記電波状態情報の予測値を算出する時系列予測ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列予測システム、時系列予測方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、異なる複数の無線通信システムが同じ周波数帯を共用することが検討されている。例えば、既存の無線通信システム(1次事業者システム)に割り当てられている周波数帯(共用周波数帯)を他の無線通信システム(2次事業者システム)が二次的に利用することが検討されている。この異システム間の周波数共用においては、1次事業者システムの運用に支障をきたさないように、2次事業者システムが共用周波数帯を利用可能な時間や場所等には制約が生じる。このため、2次事業者システムの投資判断や利用計画策定等の観点から、1次事業者システムの共用周波数帯の利用状況の将来予測ができることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態の時系列データから確率的ニューラルネットワークを使用して無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態の時系列データの将来のデータを予測する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-101792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に記載の技術では、無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態の時系列データを観測することができない場所に対しては、無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態の時系列データの将来のデータを予測することができない。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、特定の無線周波数の利用状況を予測する際に、予測の基になる観測データが得られない場所に対しても予測を行うことを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、特定の無線周波数の電波状態を表す電波状態情報が各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得部と、前記観測区域から取得される前記電波状態情報の観測値から前記観測区域以外の他の区域の前記電波状態情報の推定値を出力する空間方向推定モデルを、前記観測データ取得部が取得した前記電波状態情報の観測値に基づいて生成する空間方向推定モデル生成部と、前記観測区域以外の他の区域である推定区域の推定時刻の前記電波状態情報の推定値を、前記観測データ取得部が取得した当該推定時刻の観測値から前記空間方向推定モデルを使用して取得する電波状態情報推定部と、前記推定区域の前記電波状態情報の推定値の時系列データに基づいて、前記推定区域の将来の前記電波状態情報の予測値を算出する時系列予測部と、を備える時系列予測システムである。
(2)本発明の一態様は、前記観測データ取得部は、さらに、前記特定の無線周波数とは異なる他の無線周波数の電波状態を表す電波状態情報が各観測区域で観測された観測値を取得し、前記時系列予測部は、前記観測データ取得部が取得した前記他の無線周波数の前記電波状態情報の観測値の時系列データをさらに加えて、前記推定区域の将来の前記電波状態情報の予測値を算出する、上記(1)の時系列予測システムである。
(3)本発明の一態様は、前記空間方向推定モデルは、複数の区域がクラスタリングされた結果のクラスタ区域ごとに生成される、上記(1)又は(2)のいずれかの時系列予測システムである。
【0008】
(4)本発明の一態様は、特定の無線周波数の電波状態を表す電波状態情報が各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得ステップと、前記観測区域から取得される前記電波状態情報の観測値から前記観測区域以外の他の区域の前記電波状態情報の推定値を出力する空間方向推定モデルを、前記観測データ取得ステップで取得した前記電波状態情報の観測値に基づいて生成する空間方向推定モデル生成ステップと、前記観測区域以外の他の区域である推定区域の推定時刻の前記電波状態情報の推定値を、前記観測データ取得ステップで取得した当該推定時刻の観測値から前記空間方向推定モデルを使用して取得する電波状態情報推定ステップと、前記推定区域の前記電波状態情報の推定値の時系列データに基づいて、前記推定区域の将来の前記電波状態情報の予測値を算出する時系列予測ステップと、を含む時系列予測方法である。
【0009】
(5)本発明の一態様は、コンピュータに、特定の無線周波数の電波状態を表す電波状態情報が各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得ステップと、前記観測区域から取得される前記電波状態情報の観測値から前記観測区域以外の他の区域の前記電波状態情報の推定値を出力する空間方向推定モデルを、前記観測データ取得ステップで取得した前記電波状態情報の観測値に基づいて生成する空間方向推定モデル生成ステップと、前記観測区域以外の他の区域である推定区域の推定時刻の前記電波状態情報の推定値を、前記観測データ取得ステップで取得した当該推定時刻の観測値から前記空間方向推定モデルを使用して取得する電波状態情報推定ステップと、前記推定区域の前記電波状態情報の推定値の時系列データに基づいて、前記推定区域の将来の前記電波状態情報の予測値を算出する時系列予測ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の無線周波数の利用状況を予測する際に、予測の基になる観測データが得られない場所に対しても予測を行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る時系列予測システムの構成例を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る観測区域の例を示す説明図である。
図3】第1実施形態に係る時系列予測方法の手順を説明するための説明図である。
図4】第2実施形態に係る時系列予測システムの構成例を示すブロック図である。
図5】第2実施形態に係る観測区域の例を示す説明図である。
図6】第2実施形態に係る時系列予測方法の手順を説明するための説明図である。
図7】第3実施形態に係る時系列予測システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る時系列予測システムの構成例を示すブロック図である。図1において、時系列予測システム1は、観測データ取得部11と、空間方向推定モデル生成部12と、電波状態情報推定部13と、時系列予測部14とを備える。
【0014】
時系列予測システム1の各機能は、時系列予測システム1がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、時系列予測システム1として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えば、時系列予測システム1は、インターネット等の通信ネットワークに接続されるサーバコンピュータを使用して構成されてもよい。また、時系列予測システム1の各機能はクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、時系列予測システム1は、単独のコンピュータにより実現するものであってもよく、又は時系列予測システム1の機能を複数のコンピュータに分散させて実現するものであってもよい。
【0015】
観測データ取得部11は、特定の無線周波数の電波状態を表す電波状態情報が各観測区域で観測された観測値を取得する。以下、特定の無線周波数を周波数f1と称する。
【0016】
図2には、周波数f1の観測区域の例が示されている。図2には、25個の区域において、周波数f1の観測区域の例として観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22が示される。周波数f1の各観測区域には、周波数f1の電波状態情報を観測する電波センサー等が設置されている。電波状態情報は、例えば受信電力である。この場合、周波数f1の各観測区域には、周波数f1の受信電力を観測する電波センサーが設置される。観測データ取得部11は、各観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・で観測された周波数f1の電波状態情報(例えば受信電力)の観測値A-Pf1-1,A-Pf1-15,A-Pf1-22,・・・を取得する。
【0017】
また、図2には、25個の区域において、周波数f1の観測データが得られない区域(非観測区域)の例として区域P-4が示される。周波数f1の非観測区域には、周波数f1の電波状態情報を観測する電波センサー等が設置されていない。したがって、観測データ取得部11は、区域P-4等の周波数f1の非観測区域については、周波数f1の電波状態情報(例えば受信電力)の観測値を取得することができない。
【0018】
空間方向推定モデル生成部12は、空間方向推定モデルCを生成する。空間方向推定モデルCは、周波数f1の観測区域から取得される周波数f1の電波状態情報の観測値から周波数f1の観測区域以外の他の区域(周波数f1の非観測区域)の周波数f1の電波状態情報の推定値を出力するモデルである。空間方向推定モデル生成部12には、各観測区域で観測された周波数f1の電波状態情報の観測値Bが観測データ取得部11から入力される。空間方向推定モデル生成部12は、周波数f1の電波状態情報の観測値Bに基づいて空間方向推定モデルCを生成する。
【0019】
空間方向推定モデルCの生成方法の一例として、空間方向推定モデル生成部12は、機械学習モデルを使用して空間方向推定モデルCを生成する。機械学習モデルは、例えばニューラルネットワークである。空間方向推定モデル生成部12は、各観測区域で観測された周波数f1の電波状態情報の観測値Bと、周波数f1の非観測区域の周波数f1の電波状態情報の教師データとを使用して、機械学習モデル(例えばニューラルネットワーク)の機械学習を行う。この機械学習の結果として空間方向推定モデルCが生成される。周波数f1の非観測区域の周波数f1の電波状態情報の教師データは、当該非観測区域で教師データの取得のために実測された観測データであってもよく、又は当該非観測区域の周辺の観測区域で取得された観測データであってもよい。
【0020】
また、空間方向推定モデルCの生成方法の他の例として、空間方向推定モデル生成部12は、電波伝搬モデルを使用して空間方向推定モデルCを生成してもよい。
【0021】
空間方向推定モデルCによれば、図2の例えば観測区域Pf1-1から取得される周波数f1の電波状態情報の観測値から、周波数f1の非観測区域である区域P-4の周波数f1の電波状態情報の推定値を得ることができる。
【0022】
電波状態情報推定部13は、空間方向推定モデル生成部12が生成した空間方向推定モデルCを使用して、周波数f1の観測区域以外の他の区域(周波数f1の非観測区域)の周波数f1の電波状態情報の推定値Dを取得する。より具体的には、電波状態情報推定部13は、周波数f1の非観測区域である推定区域の推定時刻の周波数f1の電波状態情報の推定値Dを、観測データ取得部11が取得した当該推定時刻の観測値Bから空間方向推定モデルCを使用して取得する。例えば、電波状態情報推定部13は、図2の例えば観測区域Pf1-1から取得された推定時刻tの周波数f1の電波状態情報の観測値Bから、空間方向推定モデルCを使用して、周波数f1の非観測区域である推定区域P-4の推定時刻tの周波数f1の電波状態情報の推定値Dを取得する。
【0023】
時系列予測部14は、周波数f1の電波状態情報の時系列データに基づいて、周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する。時系列予測部14は、周波数f1の観測区域例えば図2の観測区域Pf1-1に対して、観測データ取得部11が取得した観測区域Pf1-1の周波数f1の電波状態情報の観測値Bの時系列データに基づいて、観測区域Pf1-1の周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する。また、時系列予測部14は、周波数f1の非観測区域例えば図2の区域P-4に対して、電波状態情報推定部13が取得した区域P-4(推定区域)の周波数f1の電波状態情報の推定値Dの時系列データに基づいて、区域P-4(推定区域)の周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する。
【0024】
時系列予測部14においては、時系列予測方法として例えばLSTM(Long Short Term Memory)やGRU(Gated Recurrent Unit)を利用する。
【0025】
次に図3を参照して本実施形態に係る時系列予測方法を説明する。図3は、第1実施形態に係る時系列予測方法の手順を説明するための説明図である。以下、図2の周波数f1の観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・及び周波数f1の非観測区域(推定区域)P-4を例に挙げて説明する。またここでは、電波状態情報として受信電力を例に挙げて説明する。
【0026】
(ステップS1) 観測データ取得部11は、周波数f1の各観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・で観測された周波数f1の電波状態情報(受信電力)の観測値A-Pf1-1,A-Pf1-15,A-Pf1-22,・・・を、タイムスタンプの時刻t-2,t-1,t,・・・ごとに取得する。
【0027】
(ステップS2) 時系列予測部14は、周波数f1の観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・ごとに、観測データ取得部11が取得した各観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・の周波数f1の電波状態情報(受信電力)の観測値Bの時系列データに基づいて、各観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・の周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eを算出する。
【0028】
(ステップS10) 空間方向推定モデル生成部12は、時刻t-2,t-1,tごとに、観測データ取得部11が取得した各時刻t-2,t-1,tの各観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・の周波数f1の電波状態情報(受信電力)の観測値Bに基づいて、周波数f1の非観測区域(推定区域)P-4を含むモデル生成対象区域の各時刻t-2,t-1,tの空間方向推定モデルCを生成する。空間方向推定モデルCの生成に使用される観測値Bは、全ての観測区域の観測値Bであってもよく、又は一部の観測区域の観測値Bであってもよい。
【0029】
(ステップS21) 電波状態情報推定部13は、周波数f1の非観測区域(推定区域)P-4の推定時刻の周波数f1の電波状態情報(受信電力)の推定値Dを、観測データ取得部11が取得した当該推定時刻の観測値Bから当該推定時刻の空間方向推定モデルCを使用して取得する。より具体的には、電波状態情報推定部13は、周波数f1の推定区域P-4の推定時刻t-2の周波数f1の電波状態情報(受信電力)の推定値Dを、観測データ取得部11が取得した当該推定時刻t-2の観測値Bから当該推定時刻t-2の空間方向推定モデルCを使用して取得する。電波状態情報推定部13は、周波数f1の推定区域P-4の推定時刻t-1の周波数f1の電波状態情報(受信電力)の推定値Dを、観測データ取得部11が取得した当該推定時刻t-1の観測値Bから当該推定時刻t-1の空間方向推定モデルCを使用して取得する。電波状態情報推定部13は、周波数f1の推定区域P-4の推定時刻tの周波数f1の電波状態情報(受信電力)の推定値Dを、観測データ取得部11が取得した当該推定時刻tの観測値Bから当該推定時刻tの空間方向推定モデルCを使用して取得する。
【0030】
なお、空間方向推定モデルCは、必要に応じて更新されるものであってもよい。この場合、空間方向推定モデルCが新たに更新されるまでは更新前の空間方向推定モデルCが継続して使用される。例えば、モデル生成対象区域の電波伝搬特性に一定以上の変化が生じる場合に、当該モデル生成対象区域の空間方向推定モデルCが更新される。
【0031】
また、特定の期間においてモデル生成対象区域の電波伝搬特性に一定以上の変化が生じる場合に、当該特定の期間用のモデル生成対象区域の空間方向推定モデルCが生成されてもよい。例えば平日と週末とでモデル生成対象区域の電波伝搬特性に一定以上の変化が生じる場合、平日用のモデル生成対象区域の空間方向推定モデルCと週末用のモデル生成対象区域の空間方向推定モデルCとがそれぞれ生成されてもよい。
【0032】
(ステップS22) 時系列予測部14は、周波数f1の推定区域P-4に対して、電波状態情報推定部13が取得した推定区域P-4の周波数f1の電波状態情報(受信電力)の推定値Dの時系列データに基づいて、推定区域P-4の周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eを算出する。
【0033】
周波数f1の受信電力は、周波数f1の利用状況を示す情報であって、周波数f1の無線チャネルの使用の有無を示す情報として利用される。無線チャネルの使用の有無の判定方法として、例えば、ある区域の周波数f1の受信電力が所定の閾値以上である場合に当該区域の周波数f1の無線チャネルの使用ありと判定し、そうではない場合に当該区域の周波数f1の無線チャネルの使用なしと判定することが挙げられる。したがって、各区域の周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eは、各区域の周波数f1の無線チャネルの将来の使用の有無を予測するための情報になる。
【0034】
本実施形態によれば、周波数f1の観測データが得られる観測区域だけではなく、周波数f1の観測データが得られない非観測区域に対しても、周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eを求めることができる。これにより、周波数f1の利用状況を予測する際に、予測の基になる観測データが得られない場所(周波数f1の非観測区域)に対しても予測を行うことができるという効果が得られる。
【0035】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る時系列予測システムの構成例を示すブロック図である。図4において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。図4に示される時系列予測システム1aでは、周波数f1の非観測区域に対して周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する際に、当該非観測区域で観測される周波数f2の電波状態情報の観測値を利用する。周波数f2は、周波数f1とは異なる他の無線周波数である。
【0036】
観測データ取得部11aは、周波数f1の観測区域で観測された周波数f1の電波状態情報の観測値と、周波数f2の観測区域で観測された周波数f1の電波状態情報の観測値とを取得する。
【0037】
図5には、周波数f1の観測区域と周波数f2の観測区域との例が示されている。図5には、25個の区域において、周波数f1の観測区域の例として観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22が示される。また、周波数f2の観測区域の例として観測区域Pf2-4,Pf2-15が示される。区域P-15は、周波数f1の観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である。区域P-4は、周波数f1の非観測区域であるが、周波数f2の観測区域である。観測データ取得部11は、周波数f1の各観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・で観測された周波数f1の電波状態情報の観測値A-Pf1-1,A-Pf1-15,A-Pf1-22,・・・と、周波数f2の各観測区域Pf2-4,Pf2-15,・・・で観測された周波数f2の電波状態情報の観測値A-Pf2-4,A-Pf2-15,・・・とを取得する。
【0038】
時系列予測部14aは、周波数f1の観測区域に対しては、上述した第1実施形態の時系列予測部14と同様に、観測データ取得部11が取得した当該観測区域の周波数f1の電波状態情報の観測値Bの時系列データに基づいて、当該観測区域の周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する。
【0039】
一方、時系列予測部14aは、周波数f1の非観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である例えば図5の区域P-4に対しては、電波状態情報推定部13が取得した区域P-4(推定区域)の周波数f1の電波状態情報の推定値Dの時系列データと、観測データ取得部11aが取得した区域P-4の周波数f2の電波状態情報の観測値Bの時系列データとに基づいて、区域P-4(推定区域)の周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する。
【0040】
次に図6を参照して本実施形態に係る時系列予測方法を説明する。図6は、第2実施形態に係る時系列予測方法の手順を説明するための説明図である。図6において図3の各ステップに対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0041】
ここでは、図5において周波数f1の非観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である区域P-4を周波数f1の推定区域の例に挙げて説明する。また、電波状態情報として受信電力を例に挙げて説明する。
【0042】
ステップS1,S2,S10,S21は、上述した第1実施形態と同じである。
【0043】
(ステップS22a) 時系列予測部14aは、周波数f1の非観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である周波数f1の推定区域P-4に対して、電波状態情報推定部13が取得した推定区域P-4の周波数f1の電波状態情報(受信電力)の推定値Dの時系列データと、観測データ取得部11aが取得した区域P-4(周波数f2の観測区域Pf2-4)の周波数f2の電波状態情報(受信電力)の観測値Bの時系列データとに基づいて、推定区域P-4の周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eを算出する。
【0044】
時系列予測部14aの時系列予測においては、時系列予測方法として例えばLSTMを使用し、周波数f1の電波状態情報(受信電力)の推定値Dの時系列データと周波数f2の電波状態情報(受信電力)の観測値Bの時系列データとをLSTMへの入力データにして、LSTMにより周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eを算出する。
【0045】
本実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様に、周波数f1の観測データが得られる観測区域だけではなく、周波数f1の観測データが得られない非観測区域に対しても、周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eを求めることができる。これにより、周波数f1の利用状況を予測する際に、予測の基になる観測データが得られない場所(周波数f1の非観測区域)に対しても予測を行うことができるという効果が得られる。
【0046】
さらに、時系列予測部14aの時系列予測において、周波数f1の非観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である区域P-4に対して、周波数f1の電波状態情報(受信電力)の推定値Dの時系列データに加えて周波数f2の電波状態情報(受信電力)の観測値Bの時系列データも使用することにより、周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測精度を向上させることができる。これは、周波数f1とは異なる周波数f2の観測値ではあるが、区域P-4の実際の観測値を基にして時系列予測が行われるので、区域P-4の実際の電波伝搬特性が周波数f1の時系列予測に反映されるからである。
【0047】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態に係る時系列予測システムの構成例を示すブロック図である。図7において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。図7に示される時系列予測システム1bでは、区域クラスタリング部20を設ける。
【0048】
区域クラスタリング部20は、空間方向推定モデルCを生成する対象のモデル生成対象区域として、複数の区域をクラスタリングする。区域クラスタリング部20は、そのクラスタリングの結果のクラスタ区域Gをモデル生成対象区域として空間方向推定モデル生成部12bへ通知する。空間方向推定モデル生成部12bは、クラスタ区域Gごとに、各空間方向推定モデルCを生成する。したがって、空間方向推定モデルCは、複数の区域がクラスタリングされた結果のクラスタ区域ごとに生成される。
【0049】
モデル生成対象区域として複数の区域をクラスタリングする方法として、例えば、区域間の距離や、区域内の人口密度や、区域内の建物の密集度などに基づいてクラスタリングすることが挙げられる。例えば、区域間の距離が一定の範囲内の区域同士を同一のクラスタ区域にクラスタリングする。例えば、区域内の人口密度が同程度の区域同士を同一のクラスタ区域にクラスタリングする。例えば、区域内の建物の密集度が同程度の区域同士を同一のクラスタ区域にクラスタリングする。これらのクラスタリング方法によれば、電波伝搬特性が同様の区域同士を同一のクラスタ区域にクラスタリングすることができる。これにより、同一のクラスタ区域に属する各区域に対して同一の空間方向推定モデルCを適用することができる。
【0050】
なお、区域クラスタリング部20は上述した第2実施形態の時系列予測システム1a(図4)に適用してもよい。
【0051】
上述した各実施形態に係る時系列予測システム1,1a,1bは、既存の無線通信システム(1次事業者システム)に割り当てられている周波数帯(共用周波数帯)を他の無線通信システム(2次事業者システム)が二次的に利用する場合において、1次事業者システムの共用周波数帯(周波数f1)の将来の利用状況を予測するシステムに適用することができる。
【0052】
なお、上述した実施形態では電波状態情報として受信電力を例に挙げたが、電波状態情報は受信電力に限定されない。例えば、電波状態情報は歩行者数であってもよい。区域内に存在する歩行者数が多いほど、当該区域の電波状態に影響を及ぼす可能性が大きくなる。また、歩行者数は無線通信の利用状況を示す情報であって、区域内に存在する歩行者数が多いほど、当該区域の無線通信の利用者数が多くなると考えられる。このことから、電波状態情報として歩行者数を使用し、各区域の将来の歩行者数を予測することによって周波数f1の利用状況の予測に寄与することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0054】
また、上述した時系列予測システムの機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0055】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,1a,1b…時系列予測システム、11,11a…観測データ取得部、12,12b…空間方向推定モデル生成部、13…電波状態情報推定部、14,14a…時系列予測部、20…区域クラスタリング部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7