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特許7313323時系列予測システム、時系列予測方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】時系列予測システム、時系列予測方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/22 20090101AFI20230714BHJP
   H04W 16/14 20090101ALI20230714BHJP
   H04W 24/02 20090101ALI20230714BHJP
   H04B 17/373 20150101ALI20230714BHJP
   H04B 17/318 20150101ALI20230714BHJP
【FI】
H04W16/22
H04W16/14
H04W24/02
H04B17/373
H04B17/318
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020144741
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039617
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-05-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省「異システム間の周波数共用技術の高度化に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】長尾 竜也
【審査官】田部井 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-241560(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0128473(US,A1)
【文献】特開平07-253446(JP,A)
【文献】特開2016-042666(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0112179(US,A1)
【文献】国際公開第2012/169400(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
H04B 17/373
H04B 17/318
DB名 3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1無線周波数の電波状態を表す第1電波状態情報と、前記第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の電波状態を表す第2電波状態情報とが各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得部と、
前記観測区域から取得される前記第2電波状態情報の観測値から当該第2電波状態情報の当該観測区域と同じ観測区域において前記第1電波状態情報の推定値を出力する推定モデルを、前記観測データ取得部が取得した前記第1電波状態情報の観測値及び前記第2電波状態情報の観測値に基づいて生成する推定モデル生成部と、
前記第1電波状態情報の推定区域の推定時刻の前記第1電波状態情報の推定値を、前記観測データ取得部が取得した当該推定区域の当該推定時刻の前記第2電波状態情報の観測値から前記推定モデルを使用して取得する電波状態情報推定部と、
前記推定区域の前記第1電波状態情報の推定値の時系列データに基づいて、前記推定区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を算出する時系列予測部と、
を備える時系列予測システム。
【請求項2】
第1無線周波数の電波状態を表す第1電波状態情報と、前記第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の電波状態を表す第2電波状態情報とが各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得部と、
前記観測区域の前記第1電波状態情報の観測値の時系列データに基づいて前記観測区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を算出し、前記観測区域の前記第2電波状態情報の観測値の時系列データに基づいて前記観測区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値を算出する時系列予測部と、
前記観測区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値から当該第2電波状態情報の当該観測区域と同じ観測区域において将来の前記第1電波状態情報の予測値を出力する推定モデルを、前記時系列予測部が算出した前記第1電波状態情報の予測値及び前記第2電波状態情報の予測値に基づいて生成する推定モデル生成部と、
前記第1電波状態情報の推定区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を、前記時系列予測部が算出した当該推定区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値から前記推定モデルを使用して取得する電波状態情報予測推定部と、
を備える時系列予測システム。
【請求項3】
前記推定モデルは、複数の観測区域がクラスタリングされた結果のクラスタ区域ごとに生成される、
請求項1又は2のいずれか1項に記載の時系列予測システム。
【請求項4】
第1無線周波数の電波状態を表す第1電波状態情報と、前記第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の電波状態を表す第2電波状態情報とが各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得ステップと、
前記観測区域から取得される前記第2電波状態情報の観測値から当該第2電波状態情報の当該観測区域と同じ観測区域において前記第1電波状態情報の推定値を出力する推定モデルを、前記観測データ取得ステップで取得した前記第1電波状態情報の観測値及び前記第2電波状態情報の観測値に基づいて生成する推定モデル生成ステップと、
前記第1電波状態情報の推定区域の推定時刻の前記第1電波状態情報の推定値を、前記観測データ取得ステップで取得した当該推定区域の当該推定時刻の前記第2電波状態情報の観測値から前記推定モデルを使用して取得する電波状態情報推定ステップと、
前記推定区域の前記第1電波状態情報の推定値の時系列データに基づいて、前記推定区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を算出する時系列予測ステップと、
を含む時系列予測方法。
【請求項5】
第1無線周波数の電波状態を表す第1電波状態情報と、前記第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の電波状態を表す第2電波状態情報とが各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得ステップと、
前記観測区域の前記第1電波状態情報の観測値の時系列データに基づいて前記観測区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を算出し、前記観測区域の前記第2電波状態情報の観測値の時系列データに基づいて前記観測区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値を算出する時系列予測ステップと、
前記観測区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値から当該第2電波状態情報の当該観測区域と同じ観測区域において将来の前記第1電波状態情報の予測値を出力する推定モデルを、前記時系列予測ステップで算出した前記第1電波状態情報の予測値及び前記第2電波状態情報の予測値に基づいて生成する推定モデル生成ステップと、
前記第1電波状態情報の推定区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を、前記時系列予測ステップで算出した当該推定区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値から前記推定モデルを使用して取得する電波状態情報予測推定ステップと、
を含む時系列予測方法。
【請求項6】
コンピュータに、
第1無線周波数の電波状態を表す第1電波状態情報と、前記第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の電波状態を表す第2電波状態情報とが各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得ステップと、
前記観測区域から取得される前記第2電波状態情報の観測値から当該第2電波状態情報の当該観測区域と同じ観測区域において前記第1電波状態情報の推定値を出力する推定モデルを、前記観測データ取得ステップで取得した前記第1電波状態情報の観測値及び前記第2電波状態情報の観測値に基づいて生成する推定モデル生成ステップと、
前記第1電波状態情報の推定区域の推定時刻の前記第1電波状態情報の推定値を、前記観測データ取得ステップで取得した当該推定区域の当該推定時刻の前記第2電波状態情報の観測値から前記推定モデルを使用して取得する電波状態情報推定ステップと、
前記推定区域の前記第1電波状態情報の推定値の時系列データに基づいて、前記推定区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を算出する時系列予測ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
第1無線周波数の電波状態を表す第1電波状態情報と、前記第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の電波状態を表す第2電波状態情報とが各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得ステップと、
前記観測区域の前記第1電波状態情報の観測値の時系列データに基づいて前記観測区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を算出し、前記観測区域の前記第2電波状態情報の観測値の時系列データに基づいて前記観測区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値を算出する時系列予測ステップと、
前記観測区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値から当該第2電波状態情報の当該観測区域と同じ観測区域において将来の前記第1電波状態情報の予測値を出力する推定モデルを、前記時系列予測ステップで算出した前記第1電波状態情報の予測値及び前記第2電波状態情報の予測値に基づいて生成する推定モデル生成ステップと、
前記第1電波状態情報の推定区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を、前記時系列予測ステップで算出した当該推定区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値から前記推定モデルを使用して取得する電波状態情報予測推定ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列予測システム、時系列予測方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、異なる複数の無線通信システムが同じ周波数帯を共用することが検討されている。例えば、既存の無線通信システム(1次事業者システム)に割り当てられている周波数帯(共用周波数帯)を他の無線通信システム(2次事業者システム)が二次的に利用することが検討されている。この異システム間の周波数共用においては、1次事業者システムの運用に支障をきたさないように、2次事業者システムが共用周波数帯を利用可能な時間や場所等には制約が生じる。このため、2次事業者システムの投資判断や利用計画策定等の観点から、1次事業者システムの共用周波数帯の利用状況の将来予測ができることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態の時系列データから確率的ニューラルネットワークを使用して無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態の時系列データの将来のデータを予測する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-101792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に記載の技術では、無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態の時系列データを観測することができない場所に対しては、無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態の時系列データの将来のデータを予測することができない。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、特定の無線周波数の利用状況を予測する際に、予測の基になる観測データが得られない場所に対しても予測を行うことを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、第1無線周波数の電波状態を表す第1電波状態情報と、前記第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の電波状態を表す第2電波状態情報とが各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得部と、前記観測区域から取得される前記第2電波状態情報の観測値から当該第2電波状態情報の当該観測区域と同じ観測区域において前記第1電波状態情報の推定値を出力する推定モデルを、前記観測データ取得部が取得した前記第1電波状態情報の観測値及び前記第2電波状態情報の観測値に基づいて生成する推定モデル生成部と、前記第1電波状態情報の推定区域の推定時刻の前記第1電波状態情報の推定値を、前記観測データ取得部が取得した当該推定区域の当該推定時刻の前記第2電波状態情報の観測値から前記推定モデルを使用して取得する電波状態情報推定部と、前記推定区域の前記第1電波状態情報の推定値の時系列データに基づいて、前記推定区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を算出する時系列予測部と、を備える時系列予測システムである。
(2)本発明の一態様は、第1無線周波数の電波状態を表す第1電波状態情報と、前記第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の電波状態を表す第2電波状態情報とが各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得部と、前記観測区域の前記第1電波状態情報の観測値の時系列データに基づいて前記観測区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を算出し、前記観測区域の前記第2電波状態情報の観測値の時系列データに基づいて前記観測区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値を算出する時系列予測部と、前記観測区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値から当該第2電波状態情報の当該観測区域と同じ観測区域において将来の前記第1電波状態情報の予測値を出力する推定モデルを、前記時系列予測部が算出した前記第1電波状態情報の予測値及び前記第2電波状態情報の予測値に基づいて生成する推定モデル生成部と、前記第1電波状態情報の推定区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を、前記時系列予測部が算出した当該推定区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値から前記推定モデルを使用して取得する電波状態情報予測推定部と、を備える時系列予測システムである。
(3)本発明の一態様は、前記推定モデルは、複数の観測区域がクラスタリングされた結果のクラスタ区域ごとに生成される、上記の時系列予測システムである。
【0008】
(4)本発明の一態様は、第1無線周波数の電波状態を表す第1電波状態情報と、前記第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の電波状態を表す第2電波状態情報とが各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得ステップと、前記観測区域から取得される前記第2電波状態情報の観測値から当該第2電波状態情報の当該観測区域と同じ観測区域において前記第1電波状態情報の推定値を出力する推定モデルを、前記観測データ取得ステップで取得した前記第1電波状態情報の観測値及び前記第2電波状態情報の観測値に基づいて生成する推定モデル生成ステップと、前記第1電波状態情報の推定区域の推定時刻の前記第1電波状態情報の推定値を、前記観測データ取得ステップで取得した当該推定区域の当該推定時刻の前記第2電波状態情報の観測値から前記推定モデルを使用して取得する電波状態情報推定ステップと、前記推定区域の前記第1電波状態情報の推定値の時系列データに基づいて、前記推定区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を算出する時系列予測ステップと、を含む時系列予測方法である。
(5)本発明の一態様は、第1無線周波数の電波状態を表す第1電波状態情報と、前記第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の電波状態を表す第2電波状態情報とが各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得ステップと、前記観測区域の前記第1電波状態情報の観測値の時系列データに基づいて前記観測区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を算出し、前記観測区域の前記第2電波状態情報の観測値の時系列データに基づいて前記観測区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値を算出する時系列予測ステップと、前記観測区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値から当該第2電波状態情報の当該観測区域と同じ観測区域において将来の前記第1電波状態情報の予測値を出力する推定モデルを、前記時系列予測ステップで算出した前記第1電波状態情報の予測値及び前記第2電波状態情報の予測値に基づいて生成する推定モデル生成ステップと、前記第1電波状態情報の推定区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を、前記時系列予測ステップで算出した当該推定区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値から前記推定モデルを使用して取得する電波状態情報予測推定ステップと、を含む時系列予測方法である。
【0009】
(6)本発明の一態様は、コンピュータに、第1無線周波数の電波状態を表す第1電波状態情報と、前記第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の電波状態を表す第2電波状態情報とが各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得ステップと、前記観測区域から取得される前記第2電波状態情報の観測値から当該第2電波状態情報の当該観測区域と同じ観測区域において前記第1電波状態情報の推定値を出力する推定モデルを、前記観測データ取得ステップで取得した前記第1電波状態情報の観測値及び前記第2電波状態情報の観測値に基づいて生成する推定モデル生成ステップと、前記第1電波状態情報の推定区域の推定時刻の前記第1電波状態情報の推定値を、前記観測データ取得ステップで取得した当該推定区域の当該推定時刻の前記第2電波状態情報の観測値から前記推定モデルを使用して取得する電波状態情報推定ステップと、前記推定区域の前記第1電波状態情報の推定値の時系列データに基づいて、前記推定区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を算出する時系列予測ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
(7)本発明の一態様は、コンピュータに、第1無線周波数の電波状態を表す第1電波状態情報と、前記第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の電波状態を表す第2電波状態情報とが各観測区域で観測された観測値を取得する観測データ取得ステップと、前記観測区域の前記第1電波状態情報の観測値の時系列データに基づいて前記観測区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を算出し、前記観測区域の前記第2電波状態情報の観測値の時系列データに基づいて前記観測区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値を算出する時系列予測ステップと、前記観測区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値から当該第2電波状態情報の当該観測区域と同じ観測区域において将来の前記第1電波状態情報の予測値を出力する推定モデルを、前記時系列予測ステップで算出した前記第1電波状態情報の予測値及び前記第2電波状態情報の予測値に基づいて生成する推定モデル生成ステップと、前記第1電波状態情報の推定区域の将来の前記第1電波状態情報の予測値を、前記時系列予測ステップで算出した当該推定区域の将来の前記第2電波状態情報の予測値から前記推定モデルを使用して取得する電波状態情報予測推定ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の無線周波数の利用状況を予測する際に、予測の基になる観測データが得られない場所に対しても予測を行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る時系列予測システムの構成例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る観測区域の例を示す説明図である。
図3】第1実施形態に係る時系列予測方法の手順を説明するための説明図である。
図4】第2実施形態に係る時系列予測システムの構成例を示すブロック図である。
図5】第2実施形態に係る時系列予測方法の手順を説明するための説明図である。
図6】第3実施形態に係る時系列予測システムの構成例を示すブロック図である。
図7】第3実施形態に係る時系列予測方法の手順を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る時系列予測システムの構成例を示すブロック図である。図1において、時系列予測システム1は、観測データ取得部11と、推定モデル生成部12と、電波状態情報推定部13と、時系列予測部14とを備える。
【0014】
時系列予測システム1の各機能は、時系列予測システム1がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、時系列予測システム1として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えば、時系列予測システム1は、インターネット等の通信ネットワークに接続されるサーバコンピュータを使用して構成されてもよい。また、時系列予測システム1の各機能はクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、時系列予測システム1は、単独のコンピュータにより実現するものであってもよく、又は時系列予測システム1の機能を複数のコンピュータに分散させて実現するものであってもよい。
【0015】
本実施形態では、特定の無線周波数として、第1無線周波数である周波数f1と、第2無線周波数である周波数f2とを利用する。周波数f1と周波数f2とは異なる無線周波数である。周波数f1と周波数f2とは、電波伝搬特性が類似することが好ましい。
【0016】
観測データ取得部11は、周波数f1(第1無線周波数)の電波状態を表す電波状態情報(第1電波状態情報)と、周波数f1(第1無線周波数)とは異なる周波数f2(第2無線周波数)の電波状態を表す電波状態情報(第2電波状態情報)とが各観測区域で観測された観測値を取得する。
【0017】
図2には、周波数f1の観測区域と周波数f2の観測区域との例が示されている。図2には、25個の区域において、周波数f1の観測区域の例として観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22が示される。周波数f1の各観測区域には、周波数f1の電波状態情報を観測する電波センサー等が設置されている。
【0018】
また、図2には、25個の区域において、周波数f2の観測区域の例として観測区域Pf2-4,Pf2-15が示される。周波数f2の各観測区域には、周波数f2の電波状態情報を観測する電波センサー等が設置されている。周波数f2は、例えば広域無線通信システムが利用する無線周波数であって、例えば図2の全ての区域で観測される。
【0019】
電波状態情報は、例えば受信電力である。この場合、周波数f1の各観測区域には、周波数f1の受信電力を観測する電波センサーが設置される。また、周波数f2の各観測区域には、周波数f2の受信電力を観測する電波センサーが設置される。
【0020】
区域P-1,P-15,P-22は、周波数f1の観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である。区域P-4は、周波数f1の観測データが得られない区域(非観測区域)であるが、周波数f2の観測区域である。周波数f1の非観測区域には、周波数f1の電波状態情報を観測する電波センサー等が設置されていない。したがって、観測データ取得部11は、区域P-4等の周波数f1の非観測区域については、周波数f1の電波状態情報(例えば受信電力)の観測値を取得することができない。
【0021】
観測データ取得部11は、周波数f1の各観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・で観測された周波数f1の電波状態情報の観測値A-Pf1-1,A-Pf1-15,A-Pf1-22,・・・と、周波数f2の各観測区域Pf2-1,Pf2-4,Pf2-15,Pf2-22,・・・で観測された周波数f2の電波状態情報の観測値A-Pf2-1,A-Pf2-4,A-Pf2-15,A-Pf2-22,・・・とを取得する。
【0022】
推定モデル生成部12は、推定モデルCを生成する。推定モデルCは、周波数f2の観測区域から取得される周波数f2の電波状態情報の観測値から周波数f1の電波状態情報の推定値を出力するモデルである。推定モデル生成部12には、周波数f1の観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である区域で観測された周波数f1の電波状態情報の観測値B及び周波数f2の電波状態情報の観測値Bが観測データ取得部11から入力される。推定モデル生成部12は、観測データ取得部11から入力された周波数f1の電波状態情報の観測値B及び周波数f2の電波状態情報の観測値Bに基づいて推定モデルCを生成する。
【0023】
推定モデルCの生成方法の一例として、推定モデル生成部12は、機械学習モデルを使用して推定モデルCを生成する。機械学習モデルは、例えばニューラルネットワークである。推定モデル生成部12は、周波数f1の電波状態情報の観測値Bと周波数f2の電波状態情報の観測値Bとを使用して、機械学習モデル(例えばニューラルネットワーク)の機械学習を行う。この機械学習は、周波数f1と周波数f2との間における電波状態情報の変動パターンの関係性を学習するものである。この機械学習により、推定モデルCは、周波数f2の電波状態情報の観測値の時系列データから周波数f1の電波状態情報の推定値の時系列データを出力するように、構成される。
【0024】
推定モデルCによれば、図2において周波数f1の非観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である例えば区域P-4に対して、区域P-4から取得される周波数f2の電波状態情報の観測値から区域P-4の周波数f1の電波状態情報の推定値を得ることができる。
【0025】
電波状態情報推定部13は、観測データ取得部11が取得した周波数f2の観測値Bから、推定モデル生成部12が生成した推定モデルCを使用して、周波数f1の非観測区域(推定区域)の周波数f1の電波状態情報の推定値Dを取得する。より具体的には、電波状態情報推定部13は、周波数f1の非観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である周波数f1の推定区域に対して、観測データ取得部11が取得した当該推定区域の推定時刻の周波数f2の観測値Bから、推定モデルCを使用して、当該推定区域の当該推定時刻の周波数f1の電波状態情報の推定値Dを取得する。例えば、電波状態情報推定部13は、図2において周波数f1の非観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である区域P-4に対して、区域P-4から取得された推定時刻tの周波数f2の電波状態情報の観測値Bから、推定モデルCを使用して、区域P-4の推定時刻tの周波数f1の電波状態情報の推定値Dを取得する。
【0026】
時系列予測部14は、周波数f1の電波状態情報の時系列データに基づいて、周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する。また、時系列予測部14は、周波数f2の電波状態情報の時系列データに基づいて、周波数f2の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する。
【0027】
時系列予測部14は、周波数f1の観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である例えば図2の区域P-1に対して、観測データ取得部11が取得した区域P-1の周波数f1の電波状態情報の観測値Bの時系列データに基づいて、区域P-1の周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する。また、時系列予測部14は、当該区域P-1に対して、観測データ取得部11が取得した区域P-1の周波数f2の電波状態情報の観測値Bの時系列データに基づいて、区域P-1の周波数f2の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する。
【0028】
時系列予測部14は、周波数f1の非観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である例えば図2の区域P-4に対して、電波状態情報推定部13が取得した区域P-4(推定区域)の周波数f1の電波状態情報の推定値Dの時系列データに基づいて、区域P-4(推定区域)の周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する。また、時系列予測部14は、当該区域P-4に対して、観測データ取得部11が取得した区域P-4の周波数f2の電波状態情報の観測値Bの時系列データに基づいて、区域P-4の周波数f2の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する。
【0029】
時系列予測部14においては、時系列予測方法として例えばLSTM(Long Short Term Memory)やGRU(Gated Recurrent Unit)を利用する。
【0030】
次に図3を参照して本実施形態に係る時系列予測方法を説明する。図3は、第1実施形態に係る時系列予測方法の手順を説明するための説明図である。以下、図2の周波数f1の観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・、周波数f2の観測区域Pf2-4,Pf2-15,・・・及び周波数f1の非観測区域(推定区域)P-4を例に挙げて説明する。またここでは、電波状態情報として受信電力を例に挙げて説明する。
【0031】
(ステップS1) 観測データ取得部11は、周波数f1の観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である区域P-1,P-15,P-22,・・・に関して、周波数f1の各観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・で観測された周波数f1の電波状態情報(受信電力)の観測値A-Pf1-1,A-Pf1-15,A-Pf1-22,・・・と、周波数f2の各観測区域Pf2-1,Pf2-15,Pf2-22,・・・で観測された周波数f2の電波状態情報(受信電力)の観測値A-Pf2-1,A-Pf2-15,A-Pf2-22,・・・とを、一定の周期で取得する。これにより、周波数f1の観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である区域P-1,P-15,P-22,・・・の周波数f1の電波状態情報(受信電力)の観測値Bの時系列データと、周波数f2の電波状態情報(受信電力)の観測値Bの時系列データとが取得される。
【0032】
(ステップS2) ステップS2は、周波数f1の観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である区域P-1,P-15,P-22,・・・に対する時系列予測処理である。時系列予測部14は、周波数f1の観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・ごとに、観測データ取得部11が取得した各観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・の周波数f1の電波状態情報(受信電力)の観測値Bの時系列データに基づいて、各観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・の周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eを算出する。また、時系列予測部14は、周波数f2の観測区域Pf2-1,Pf2-15,Pf2-22,・・・ごとに、観測データ取得部11が取得した各観測区域Pf2-1,Pf2-15,Pf2-22,・・・の周波数f2の電波状態情報(受信電力)の観測値Bの時系列データに基づいて、各観測区域Pf2-1,Pf2-15,Pf2-22,・・・の周波数f2の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eを算出する。
【0033】
(ステップS10) 推定モデル生成部12は、周波数f1の観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である区域P-1,P-15,P-22,・・・の周波数f1の電波状態情報(受信電力)の観測値Bの時系列データと、周波数f2の電波状態情報(受信電力)の観測値Bの時系列データとに基づいて、周波数f1の非観測区域(推定区域)P-4を含むモデル生成対象区域の推定モデルCを生成する。推定モデルCの生成に使用される時系列データは、全ての観測区域の時系列データであってもよく、又は一部の観測区域の時系列データであってもよい。
【0034】
(ステップS20) 観測データ取得部11は、周波数f1の非観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である区域P-4(観測区域Pf2-4)で観測された周波数f2の電波状態情報(受信電力)の観測値A-Pf2-4を、一定の周期で取得する。これにより、周波数f1の非観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である区域P-4の周波数f2の電波状態情報(受信電力)の観測値Bの時系列データとが取得される。
【0035】
(ステップS21) 電波状態情報推定部13は、周波数f1の非観測区域(推定区域)P-4の周波数f2の電波状態情報(受信電力)の観測値Bの時系列データから、ステップS10で生成された推定モデルCを使用して、当該推定区域P-4の周波数f1の電波状態情報(受信電力)の推定値Dの時系列データを取得する。
【0036】
なお、推定モデルCは、必要に応じて更新されるものであってもよい。この場合、推定モデルCが新たに更新されるまでは更新前の推定モデルCが継続して使用される。例えば、モデル生成対象区域の電波伝搬特性に一定以上の変化が生じる場合に、当該モデル生成対象区域の推定モデルCが更新される。
【0037】
また、特定の期間においてモデル生成対象区域の電波伝搬特性に一定以上の変化が生じる場合に、当該特定の期間用のモデル生成対象区域の推定モデルCが生成されてもよい。例えば平日と週末とでモデル生成対象区域の電波伝搬特性に一定以上の変化が生じる場合、平日用のモデル生成対象区域の推定モデルCと週末用のモデル生成対象区域の推定モデルCとがそれぞれ生成されてもよい。
【0038】
(ステップS22) ステップS22は、周波数f1の非観測区域(推定区域)であり且つ周波数f2の観測区域である区域P-4に対する時系列予測処理である。時系列予測部14は、周波数f1の非観測区域(推定区域)である区域P-4に対して、電波状態情報推定部13が取得した区域P-4の周波数f1の電波状態情報(受信電力)の推定値Dの時系列データに基づいて、区域P-4の周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eを算出する。また、時系列予測部14は、周波数f2の観測区域である区域P-4に対して、観測データ取得部11が取得した区域P-4の周波数f2の電波状態情報(受信電力)の観測値Bの時系列データに基づいて、区域P-4の周波数f2の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eを算出する。
【0039】
周波数f1の受信電力は、周波数f1の利用状況を示す情報であって、周波数f1の無線チャネルの使用の有無を示す情報として利用される。無線チャネルの使用の有無の判定方法として、例えば、ある区域の周波数f1の受信電力が所定の閾値以上である場合に当該区域の周波数f1の無線チャネルの使用ありと判定し、そうではない場合に当該区域の周波数f1の無線チャネルの使用なしと判定することが挙げられる。したがって、各区域の周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eは、各区域の周波数f1の無線チャネルの将来の使用の有無を予測するための情報になる。
【0040】
本実施形態によれば、周波数f1の観測データが得られる観測区域だけではなく、周波数f1の観測データが得られない非観測区域に対しても、周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eを求めることができる。これにより、周波数f1の利用状況を予測する際に、予測の基になる観測データが得られない場所(周波数f1の非観測区域)に対しても予測を行うことができるという効果が得られる。
【0041】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る時系列予測システムの構成例を示すブロック図である。図4において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0042】
図4に示される時系列予測システム1aでは、まず時系列予測部14が各観測区域に対して、周波数f1の電波状態情報の観測値Bから周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eを算出し、周波数f2の電波状態情報の観測値Bから周波数f2の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する。次いで、推定モデル生成部12aが周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eと周波数f2の将来の電波状態情報の予測値Eとに基づいて推定モデルCaを生成する。この推定モデルCaは、周波数f1の推定区域の周波数f2の将来の電波状態情報の予測値Eから、当該推定区域の周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eaを出力するモデルである。次いで、電波状態情報予測推定部30が、周波数f1の非観測区域(推定区域)であり且つ周波数f2の観測区域である区域に対して、当該区域の周波数f2の将来の電波状態情報の予測値Eから、推定モデルCaを使用して、当該区域の周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eaを取得する。
【0043】
推定モデル生成部12aは、推定モデルCaを生成する。推定モデルCaは、周波数f2の観測区域の将来の電波状態情報の予測値から周波数f1の将来の電波状態情報の予測値を出力するモデルである。推定モデル生成部12aには、周波数f1の観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である区域の周波数f1の電波状態情報の予測値E及び周波数f2の電波状態情報の予測値Eが時系列予測部14から入力される。推定モデル生成部12aは、時系列予測部14から入力された周波数f1の電波状態情報の予測値E及び周波数f2の電波状態情報の予測値Eに基づいて推定モデルCaを生成する。
【0044】
電波状態情報予測推定部30は、周波数f1の非観測区域(推定区域)であり且つ周波数f2の観測区域である区域に対して、時系列予測部14が算出した当該区域の周波数f2の将来の電波状態情報の予測値Eから、推定モデルCaを使用して、当該区域の周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eaを取得する。例えば、電波状態情報予測推定部30は、図2において周波数f1の非観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である区域P-4に対して、時系列予測部14が算出した区域P-4の周波数f2の将来の電波状態情報の予測値Eから、推定モデルCaを使用して、区域P-4の周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eaを取得する。
【0045】
次に図5を参照して本実施形態に係る時系列予測方法を説明する。図5は、第2実施形態に係る時系列予測方法の手順を説明するための説明図である。図5において図3の各ステップに対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0046】
ここでは、図2の周波数f1の観測区域Pf1-1,Pf1-15,Pf1-22,・・・、周波数f2の観測区域Pf2-4,Pf2-15,・・・及び周波数f1の非観測区域(推定区域)P-4を例に挙げて説明する。またここでは、電波状態情報として受信電力を例に挙げて説明する。
【0047】
ステップS1,S2は、上述した第1実施形態と同じである。
【0048】
(ステップS10a) 推定モデル生成部12aは、周波数f1の観測区域であり且つ周波数f2の観測区域である区域P-1,P-15,P-22,・・・の周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eと周波数f2の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eとに基づいて推定モデルCaを生成する。推定モデルCaの生成に使用される予測値Eは、全ての観測区域の予測値Eであってもよく、又は一部の観測区域の予測値Eであってもよい。
【0049】
ステップS20,S22は、上述した第1実施形態と同じである。但し、本実施形態のステップS22では、周波数f1の非観測区域(推定区域)であり且つ周波数f2の観測区域である区域P-4に対して、区域P-4の周波数f2の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eのみを算出する。
【0050】
(ステップS30) 電波状態情報予測推定部30は、周波数f1の非観測区域(推定区域)P-4の周波数f2の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eから、ステップS10aで生成された推定モデルCaを使用して、当該推定区域P-4の周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eaを取得する。
【0051】
本実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様に、周波数f1の観測データが得られる観測区域だけではなく、周波数f1の観測データが得られない非観測区域に対しても、周波数f1の将来の電波状態情報(受信電力)の予測値Eaを求めることができる。これにより、周波数f1の利用状況を予測する際に、予測の基になる観測データが得られない場所(周波数f1の非観測区域)に対しても予測を行うことができるという効果が得られる。
【0052】
[第3実施形態]
図6は、第3実施形態に係る時系列予測システムの構成例を示すブロック図である。図6において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。図6に示される時系列予測システム1bでは、区域クラスタリング部20を設ける。
【0053】
区域クラスタリング部20は、推定モデルCを生成する対象のモデル生成対象区域として、複数の区域をクラスタリングする。区域クラスタリング部20は、そのクラスタリングの結果のクラスタ区域Gをモデル生成対象区域として推定モデル生成部12bへ通知する。推定モデル生成部12bは、クラスタ区域Gごとに、各推定モデルCを生成する。したがって、推定モデルCは、複数の区域がクラスタリングされた結果のクラスタ区域ごとに生成される。
【0054】
モデル生成対象区域として複数の区域をクラスタリングする方法として、例えば、区域間の距離や、区域内の人口密度や、区域内の建物の密集度などに基づいてクラスタリングすることが挙げられる。例えば、区域間の距離が一定の範囲内の区域同士を同一のクラスタ区域にクラスタリングする。例えば、区域内の人口密度が同程度の区域同士を同一のクラスタ区域にクラスタリングする。例えば、区域内の建物の密集度が同程度の区域同士を同一のクラスタ区域にクラスタリングする。これらのクラスタリング方法によれば、電波伝搬特性が同様の区域同士を同一のクラスタ区域にクラスタリングすることができる。これにより、同一のクラスタ区域に属する各区域に対して同一の推定モデルCを適用することができる。
【0055】
次に図7を参照して本実施形態に係る時系列予測方法を説明する。図7は、第3実施形態に係る時系列予測方法の手順を説明するための説明図である。
【0056】
図7の例では、周波数f1は、複数の無線通信システムで共用される無線周波数(共用周波数)である。共用周波数f1に対しては観測区域と非観測区域とが存在する。また、周波数f2は、広域無線通信システムの一例であるLTE(Long Term Evolution)システムが利用する無線周波数(LTE周波数)である。LTE周波数f2は、図7に例示される全ての区域で観測される。なお、ここでは、区域のことをメッシュと称する場合がある。
【0057】
(ステップS50) 区域クラスタリング部20は、所定の複数の区域をクラスタリング対象にしてクラスタリングする。図7の例では、25個のメッシュがクラスタリング対象である。また、図7の例では、区域クラスタリング部20は、25個のメッシュが上空から撮像された航空写真の画像から画像認識処理によって認識された地理的情報に基づいて、類似する地理的特徴を有するメッシュ同士を同一のクラスタ区域にクラスタリングする。例えば、メッシュ内の建物の密集度が同程度のメッシュ同士を同一のクラスタ区域にクラスタリングする。図7の例では、クラスタリングの結果、25個のメッシュから3個のクラスタ区域「第1クラスタ」,「第2クラスタ」,「第3クラスタ」が生成される。
【0058】
(ステップS51) 推定モデル生成部12bは、共用周波数f1の推定区域である予測対象メッシュ(Prediction Mesh)が属するクラスタ区域「第1クラスタ」をモデル生成対象区域として推定モデルCを生成する。この推定モデルCの生成では、推定モデル生成部12bは、クラスタ区域「第1クラスタ」に属するメッシュのうち、共用周波数f1の観測区域であり且つLTE周波数f2の観測区域であるメッシュ(リファレンスメッシュ(Reference Mesh))の観測データを抽出する。この抽出された観測データは、共用周波数f1の電波状態情報の観測値B及びLTE周波数f2の電波状態情報の観測値Bを有する。
【0059】
次いで、推定モデル生成部12は、その抽出された観測データを使用して、機械学習モデル(例えばニューラルネットワーク)の機械学習を行う。この機械学習は、共用周波数f1とLTE周波数f2との間における電波状態情報の変動パターンの関係性を学習するものである。この機械学習により、推定モデルCは、LTE周波数f2の電波状態情報の観測値の時系列データから共用周波数f1の電波状態情報の推定値の時系列データを出力するように、構成される。
【0060】
(ステップS52) 電波状態情報推定部13は、予測対象メッシュのLTE周波数f2の電波状態情報の観測値Bの時系列データから、ステップS51で生成された推定モデルCを使用して、当該予測対象メッシュの共用周波数f1の電波状態情報の推定値Dの時系列データを取得する。
【0061】
(ステップS53) 時系列予測部14は、予測対象メッシュに対して、電波状態情報推定部13が取得した当該予測対象メッシュの共用周波数f1の電波状態情報の推定値Dの時系列データに基づいて、当該予測対象メッシュの共用周波数f1の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する。また、時系列予測部14は、予測対象メッシュに対して、観測データ取得部11が取得した当該予測対象メッシュのLTE周波数f2の電波状態情報の観測値Bの時系列データに基づいて、当該予測対象メッシュのLTE周波数f2の将来の電波状態情報の予測値Eを算出する。
【0062】
なお、区域クラスタリング部20は上述した第2実施形態の時系列予測システム1a(図4)に適用してもよい。
【0063】
上述した各実施形態に係る時系列予測システム1,1a,1bは、既存の無線通信システム(1次事業者システム)に割り当てられている周波数帯(共用周波数帯)を他の無線通信システム(2次事業者システム)が二次的に利用する場合において、1次事業者システムの共用周波数帯(周波数f1)の将来の利用状況を予測するシステムに適用することができる。
【0064】
なお、上述した実施形態では電波状態情報として受信電力を例に挙げたが、電波状態情報は受信電力に限定されない。例えば、電波状態情報は歩行者数であってもよい。区域内に存在する歩行者数が多いほど、当該区域の電波状態に影響を及ぼす可能性が大きくなる。また、歩行者数は無線通信の利用状況を示す情報であって、区域内に存在する歩行者数が多いほど、当該区域の無線通信の利用者数が多くなると考えられる。このことから、電波状態情報として歩行者数を使用し、各区域の将来の歩行者数を予測することによって周波数f1の利用状況の予測に寄与することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0066】
また、上述した時系列予測システムの機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0067】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,1a,1b…時系列予測システム、11…観測データ取得部、12,12a,12b…推定モデル生成部、13…電波状態情報推定部、14…時系列予測部、20…区域クラスタリング部、30…電波状態情報予測推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7