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  • 特許-ガスケット及び密封構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】ガスケット及び密封構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20230714BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
F16J15/08 H
F16J15/08 J
F02F11/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020509528
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2019041312
(87)【国際公開番号】W WO2020095665
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2018208183
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】相原 主弥
(72)【発明者】
【氏名】丹治 功
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-049354(JP,U)
【文献】特開2013-036607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
F02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、前記金属板の両面に被覆されているゴム層と、を有する一対のガスケット部材を備えるガスケットであって、
前記一対のガスケット部材は、互いに対向しており、夫々、環状平板の基部と、前記基部の外周側の縁部から互いに離間する方向に斜めに延びる外周部と、前記外周部の外周側の縁部から前記基部の延び方向に延びる環状平板の外周側環状部と、前記基部の内周側の縁部から互いに離間する方向に斜めに延びる内周部と、前記内周部の内周側の縁部から前記基部の延び方向に延びる環状平板の内周側環状部と、を備えることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記外周部は、夫々、互いに離間する方向に向かうに連れて拡径しており、前記内周部は、夫々、互いに離間する方向に向かうに連れて縮径していることを特徴とする請求項1記載のガスケット。
【請求項3】
互いに組み合わされて筐体を形成する一対の部材と、前記一対の部材の間に挟持されており、前記一対の部材の間において挟圧されて弾性変形し、前記一対の部材の間を密封しているガスケットと、を備える密封構造であって、
前記ガスケットは、金属板と該金属板の両面に被覆されているゴム層とを有する一対のガスケット部材を備え、
前記一対のガスケット部材は、互いに対向しており、夫々、前記ガスケットと前記一対の部材とを締結するボルトが挿通されるボルト穴と、環状平板の基部と、前記基部の外周側の縁部から互いに離間する方向に斜めに延びる外周部と、前記外周部の外周側の縁部から前記基部の延び方向に延びる環状平板の外周側環状部と、前記基部の内周側の縁部から互いに離間する方向に斜めに延びる内周部と、前記内周部の内周側の縁部から前記基部の延び方向に延びる環状平板の内周側環状部と、を備え、
前記一対の部材は、夫々、外周側の端部に、互いに離間する方向に向かうに連れて拡径する拡径面を備えることを特徴とする密封構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット及び密封構造に関し、特に、車両や汎用機械等において用いられるガスケット及び密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両や汎用機械、例えば自動車において、エンジンや、電子部品を内部に収容する装置等には、筐体を密封するためにガスケットが用いられている。ガスケットは、例えば、組み合わされて筐体を形成する一対の部材の間に圧縮された状態で挟まれることによって弾性変形し、この一対の部材間の密封を図っており、筐体の密閉を図っている。
【0003】
自動車は、海浜地帯や融雪剤が散布されている地帯を走行することがある。このとき、自動車の部品に塩水や融雪剤が付着し、ガスケットを挟圧する部材間の隙間に塩水や融雪剤が侵入し滞留することがある。この滞留した塩水又は融雪剤によってガスケットを挟圧する部材に腐食が発生することがある。
【0004】
ガスケットを挟圧する部材がアルミニウム合金から形成されている場合には、アルミニウムはイオン化傾向が高いため、ガスケットを挟圧する部材が、滞留した塩水又は融雪剤によって腐食しやすい。この腐食された部分がガスケットのシールラインを超えた場合には、ガスケットの密封機能は低下し又は消滅してしまう。このため、ガスケットが用いられている部品に対しては、予め塩水噴霧試験が行われて、耐腐食性能の評価がなされている。
【0005】
塩水噴霧試験においては、ガスケットが設けられた部品において、ガスケットを挟圧する部材間の隙間に塩水を滞留させ、この部品を乾燥状態と湿潤状態とに交互に繰り返しおき、塩水に対する耐腐食性能の評価が行われる。
【0006】
このように、ガスケットの密封性能の低下を抑制するために、ガスケットを挟圧する部材が塩水や融雪材によって腐食しないことが好ましく、ガスケットを挟圧する部材の塩水や融雪材による腐食を抑制するためのガスケットの構造が従来から提案されている。
【0007】
このような従来のガスケットの構造として、例えば、挟圧されていない自由状態において、金属板と、金属板の少なくとも一部を覆う弾性体によって形成された膜状の被覆層とを備えている。金属板は、環状の基部と、基部の内周側の縁である内周縁から延びる内周部と、基部の外周側の縁である外周縁から延びる外周部とを有している。内周部は、基部の下面の面する側に向かって基部の内周縁から斜めに延びており、外周部は、基部の下面の面する側に向かって基部の外周縁から斜めに延びている。
【0008】
そして、このような従来のガスケットの構造では、組み付け状態において、一対の部材の間に挟圧されて、基部の下面の中央部及びその近傍において被覆層を介して一方の部材の平面に接触する。これにより、ガスケットと一対の部材との間に5つのシールラインが形成されるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2017/187978号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来のガスケットの構造では、一方の部材及びガスケットの外周部との間に間隙を有している。ここで、一方の部材及びガスケットの外周部との間の間隙を少なくすることができれば、一方の部材及びガスケットの外周部との間の間隙に塩水が滞留しにくくなり、一方の部材が腐食する速度を更に抑制することが可能となる。このため、従来のガスケットに対しては、ガスケットを挟圧する部材が腐食する速度を更に抑制することができる構造が求められていた。
【0011】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガスケットを挟圧する部材が腐食する速度を更に抑制することができるガスケット及び密封構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るガスケットは、金属板と、前記金属板の両面に被覆されているゴム層と、を有する一対のガスケット部材を備えるガスケットであって、前記一対のガスケット部材は、互いに対向しており、夫々、環状平板の基部と、前記基部の外周側の縁部から互いに離間する方向に斜めに延びる外周部と、前記外周部の外周側の縁部から前記基部の延び方向に延びる環状平板の外周側環状部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、前記一対のガスケット部材は、夫々、前記基部の内周側の縁部から互いに離間する方向に斜めに延びる内周部と、前記一対の内周部の内周側の縁部から前記基部の延び方向に延びる環状平板の内周側環状部と、を更に備える。
【0014】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、前記外周部は、夫々、互いに離間する方向に向かうに連れて拡径しており、前記内周部は、夫々、互いに離間する方向に向かうに連れて縮径している。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る密封構造は、互いに組み合わされて筐体を形成する一対の部材と、前記一対の部材の間に挟持されており、前記一対の部材の間において挟圧されて弾性変形し、前記一対の部材の間を密封しているガスケットと、を備える密封構造であって、前記ガスケットは、金属板と該金属板の両面に被覆されているゴム層とを有するガスケット部材を一対と、前記一対のガスケット部材を連結する連結部材と、を備え、前記一対のガスケット部材は、互いに対向しており、夫々、環状平板の基部と、前記基部の外周側の縁部から互いに離間する方向に斜めに延びる外周部と、前記外周部の外周側の縁部から前記基部の延び方向に延びる環状平板の外周側環状部と、を備え、前記一対の部材は、夫々、外周側の端部に、互いに離間する方向に向かうに連れて拡径する拡径面を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るガスケット及び密封構造によれば、ガスケットを挟圧する部材が腐食する速度を更に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るガスケットの概略構成を示す正面図である。
図2図1に示すガスケットのA-A断面図である。
図3図2に示すガスケットが挟圧された状態を示す密封構造の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るガスケット1の概略構成を示す正面図であり、図2は、図1に示すガスケット1のA-A断面図である。以下、説明の便宜上、図1,2におけるガスケット1の軸線である軸線Y1の方向(以下、軸線Y1方向ともいう)における一方(矢印a方向)を上側とし、他方(矢印b方向)を下側とする。また、図1,2におけるガスケット1の軸線Y1に直交して延在する半径方向における一方(矢印c方向)を内周側(ガスケット1が囲む閉ざされた空間側)とし、他方(矢印d方向)を外周側とする。以下の説明において、各部材の位置関係や方向を上下を用いて説明するときは、あくまで図面における位置関係や方向を示し、実際の車両等に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。
【0020】
ガスケット1は、車両や汎用の産業機械等に用いられ、2つの部材間において挟圧されて弾性変形し、2つの部材間を密封するために用いられる。ガスケット1は、例えば、エンジン等において、筐体を形成する2つの部材間に挟圧されて、筐体を密封する。図1,2においては、筐体を形成する2つの部材間に挟圧されていない、自由状態におけるガスケット1が図示されている。
【0021】
本発明の実施の形態に係るガスケット1は、金属板11,21と、金属板11,21の両面(上面11a,21a、下面11b,21b)に被覆されているゴム層(上側ゴム層12a,22a、下側ゴム層12b,22b)とを有するガスケット部材(上側ガスケット部材10、下側ガスケット部材20)を一対備えている。一対のガスケット部材(上側ガスケット部材10及び下側ガスケット部材20)は、互いに対向している。
【0022】
一対のガスケット部材(上側ガスケット部材10及び下側ガスケット部材20)は、夫々、環状平板の基部(上側基部13,下側基部23)と、外周部(上側外周部14,下側外周部24)と、環状平板の外周側環状部(上側外周側環状部15,下側外周側環状部25)と、を備えている。外周部(上側外周部14,下側外周部24)は、基部(上側基部13,下側基部23)の外周側(矢印d方向)の縁部(外周縁部13d,23d)から互いに離間する方向(軸線Y1方向(矢印ab方向))に斜めに延びている。
【0023】
外周側環状部(上側外周側環状部15,下側外周側環状部25)は、外周部(上側外周部14,下側外周部24)の外周側の縁部(外周縁部14d,24d)から基部(上側基部13,下側基部23)の延び方向(径方向(矢印cd方向))に延びている。以下、ガスケット1の構成について具体的に説明する。
【0024】
ガスケット1は、図2に示すように、上側ガスケット部材10及び下側ガスケット部材20を有している。上側ガスケット部材10は、図1に示すように、外形が、円環状に形成されており、その中央部分には、円環状の開口部10hが形成されている。すなわち、上側ガスケット部材10は、全体として環状平板に形成されている。
【0025】
上側ガスケット部材10には、上側ガスケット部材10の外周面から外周側(矢印d方向)に向かって突出する略半円状の複数(図1においては4つ)の位置決め部30が設けられている。複数の位置決め部30には、2つの部材を締結してこの部材間においてガスケット1が挟持されるようにするためのボルトが挿通される貫通穴であるボルト穴31が形成されている。
【0026】
上側ガスケット部材10は、ラバーコーテッドメタル(以下、RCMともいう。)である。つまり、上側ガスケット部材10は、図2に示すように、金属板11と、金属板11の上側(矢印a方向)の面である上面11aに被覆されている上側ゴム層12aと、金属板11の下側(矢印b方向)の面である下面11bに被覆されている下側ゴム層12bとを有している。
【0027】
金属板11は、例えば、鋼板、ステンレス、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合板等である。金属板11は、一枚の弾性を有する金属板から形成されていてもよく、複数枚の弾性を有する金属板が積層されて重ね合わされて形成されていてもよい。上側ゴム層12a及び下側ゴム層12bは、例えば、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム及びシリコンゴムのうちの少なくとも一種を含む合成ゴム(発泡ゴムを含む)等である。金属板11、上側ゴム層12a及び下側ゴム層12bの厚さは、夫々、一様又は略一様になっている。なお、上側ゴム層12a及び下側ゴム層12bは、ゴムの減衰性を鑑みると、ソリッドゴムよりも発泡ゴムのほうが好ましい。
【0028】
上側ガスケット部材10は、環状平板の上側基部13と、上側基部13の外周側(矢印d方向)の縁部である外周縁部13dから上側(矢印a方向)に斜めに延びる上側外周部14と、上側外周部14の外周側の縁部である外周縁部14dから上側基部13の延び方向(径方向(矢印cd方向))に延びる環状平板の上側外周側環状部15と、を備えている。上側基部13、上側外周部14及び上側外周側環状部15は、夫々、金属板11、上側ゴム層12a及び下側ゴム層12bにより形成されている。
【0029】
上側基部13は、円環状に無端状に延びている部分である。上側基部13の内周側(矢印c方向)の縁部である内周縁部13c及び外周縁部13dは滑らかに円環状に延びている。外周縁部13dには、図1に示すように、ボルト穴31が形成されている部分の近傍において外周側にボルト穴31に沿って位置決め部30が滑らかに広がっている。内周縁部13cと外周縁部13dとの間には、互いに背向する平面である上面13a及び下面13bが広がっている。上面13aは、図2において上側(矢印a方向)の面であり、下面13bは、図2において下側(矢印b方向)の面である。
【0030】
上側外周部14は、上側基部13の外周縁部13dから上側(矢印a方向)に斜めに曲げられて形成されている。上側外周部14は、上側基部13の上面13aに続く面である上面14aと、上側基部13の下面13bに続く面である下面14bとを有している。上側外周部14は、上側基部13の外周縁部13dから上側(矢印a方向)に向かうに連れて拡径している部分である。つまり、上側外周部14は、円錐筒状の形状を呈している。なお、上側外周部14は、トランペット状等他の滑らかな曲面を有する円環状の形状であってもよい。
【0031】
上側外周側環状部15は、上側外周部14の外周縁部14dから円環状に無端状に延びている部分である。上側外周側環状部15は、上側外周部14の外周縁部14dから下側(矢印b方向)及び外周側(矢印d方向)に斜めに曲げられて形成されている。上側外周側環状部15は、径方向(矢印cd方向)において上側基部13と平行又は略平行に延びている。上側外周側環状部15は、上側外周部14の上面14aに続く面である上面15aと、上側外周部14の下面14bに続く面である下面15bとを有している。
【0032】
また、上側ガスケット部材10は、上側基部13の内周側(矢印c方向)の縁部である内周縁部13cから上側(矢印a方向)に斜めに延びる上側内周部16と、上側内周部16の内周側の縁部である内周縁部16cから上側基部13の延び方向(径方向(矢印cd方向))に延びる環状平板の上側内周側環状部17と、を備えている。
【0033】
上側内周部16は、上側基部13の内周縁部13cから下側(矢印b方向)に斜めに曲げられて形成されている。上側内周部16は、上側基部13の上面13aに続く面である上面16aと、上側基部13の下面13bに続く面である下面16bとを有している。上側内周部16は、上側基部13の内周縁部13cから上側(矢印a方向)に向かうに連れて縮径している部分である。つまり、上側内周部16は、円錐筒状の形状を呈している。なお、上側内周部16は、トランペット状等他の滑らかな曲面を有する円環状の形状であってもよい。
【0034】
上側内周側環状部17は、上側内周部16の内周縁部16cから円環状に無端状に延びている部分である。上側内周側環状部17は、上側内周部16の内周縁部16cから下側(矢印b方向)及び内周側(矢印c方向)に斜めに曲げられて形成されている。上側内周側環状部17は、径方向(矢印cd方向)において上側基部13と平行又は略平行に延びている。上側内周側環状部17は、上側内周部16の上面16aに続く面である上面17aと、上側内周部16の下面16bに続く面である下面17bとを有している。
【0035】
上側内周部16及び上側内周側環状部17と上側外周部14及び上側外周側環状部15とは、上側基部13の外周側(矢印d方向)及び内周側(矢印c方向)において対称に形成されている。上側内周部16の長さは、上側外周部14の長さと同じ又は略同じ長さとなっており、上側内周部16の上側基部13に対する角度θ1は、上側外周部14の上側基部13に対する角度θ2と同じ又は略同じ角度となっている。
【0036】
また、上側内周側環状部17の軸線Y1方向(矢印ab方向)における高さh1は、上側外周側環状部15の軸線Y1方向における高さh2と同じ又は略同じ高さとなっており、上側内周側環状部17の径方向(矢印cd方向)における幅w1は、上側外周側環状部15の径方向における幅w2と同じ又は略同じ幅となっている。なお、上側内周部16及び上側内周側環状部17と上側外周部14及び上側外周側環状部15とは、非対称であってもよい。
【0037】
ガスケット1において、下側ガスケット部材20は、図1に示す上側ガスケット部材10と同じ又は略同じ形状である。つまり、下側ガスケット部材20は、外形が、円環状に形成されており、その中央部分には、円環状の開口部(図示せず)が形成されている。すなわち、下側ガスケット部材20は、全体として環状平板に形成されている。
【0038】
下側ガスケット部材20には、上側ガスケット部材10の位置決め部30と軸線方向(矢印ab方向)において同じ又は略同じ位置に、下側ガスケット部材20の外周面から外周側(矢印d方向)に向かって突出する略半円状の複数の位置決め部(図示せず)が設けられている。複数の位置決め部には、夫々、上側ガスケット部材10のボルト穴31と軸線Y1方向(矢印ab方向)において同じ又は略同じ位置に、ガスケット1が挟持されるようにするためのボルトが挿通される貫通穴であるボルト穴(図示せず)が形成されている。
【0039】
下側ガスケット部材20は、RCMである。つまり、下側ガスケット部材20は、図2に示すように、金属板21と、金属板21の上側(矢印a方向)の面である上面21aに被覆されている上側ゴム層22aと、金属板21の下側(矢印b方向)の面である下面21bに被覆されている下側ゴム層22bを有している。金属板21、上側ゴム層22a及び下側ゴム層22bは、上側ガスケット部材10の金属板11、上側ゴム層12a及び下側ゴム層12bと同じ又は略同じ材料により形成されている。
【0040】
金属板21、上側ゴム層22a及び下側ゴム層22bの厚さは、夫々、一様又は略一様になっている。また、金属板21、上側ゴム層22a及び下側ゴム層22bの厚さは、上側ガスケット部材10の金属板11、上側ゴム層12a及び下側ゴム層12bの厚さと同じ又は略同じ厚さとなっている。
【0041】
下側ガスケット部材20は、上側ガスケット部材10の下側(矢印b方向)に、上側ガスケット部材10と対向して配置されている。下側ガスケット部材20は、軸線Y1方向(矢印ab方向)において上側ガスケット部材10と対称に形成されている。
【0042】
下側ガスケット部材20は、環状平板の下側基部23と、下側基部23の外周側(矢印d方向)の縁部である外周縁部23dから下側(矢印b方向)に斜めに延びる下側外周部24と、下側外周部24の外周側の縁部である外周縁部24dから下側基部23の延び方向(径方向(矢印cd方向))に延びる環状平板の下側外周側環状部25と、を備えている。下側基部23、下側外周部24及び下側外周側環状部25は、夫々、金属板21、上側ゴム層22a及び下側ゴム層22bにより形成されている。
【0043】
下側基部23は、円環状に無端状に延びている部分である。下側基部23の内周側(矢印c方向)の縁部である内周縁部23c及び外周縁部23dは滑らかに円環状に延びている。外周縁部23dには、ボルト穴(図示せず)が形成されている部分の近傍において外周側にボルト穴に沿って位置決め部(図示せず)が滑らかに広がっている。内周縁部23cと外周縁部23dとの間には、互いに背向する平面である上面23a及び下面23bが広がっている。上面23aは、図2において上側(矢印a方向)の面であり、下面23bは、図2において下側(矢印b方向)の面である。下側基部23の径方向(矢印cd方向)における幅は、上側基部13の径方向における幅と同じ又は略同じ幅となっている。
【0044】
下側外周部24は、下側基部23の外周縁部23dから下側(矢印b方向)に斜めに曲げられて形成されている。下側外周部24は、下側基部23の上面23aに続く面である上面24aと、下側基部23の下面23bに続く面である下面24bとを有している。下側外周部24は、下側基部23の外周縁部23dから下側(矢印b方向)に向かうに連れて拡径している部分である。つまり、下側外周部24は、円錐筒状の形状を呈している。なお、下側外周部24は、トランペット状等他の滑らかな曲面を有する円環状の形状であってもよい。
【0045】
下側外周部24の長さは、上側ガスケット部材10の上側外周部14の長さと同じ又は略同じ長さとなっており、下側外周部24の下側基部23に対する角度θ4は、上側ガスケット部材10における上側外周部14の上側基部13に対する角度θ2と同じ又は略同じ角度となっている。
【0046】
下側外周側環状部25は、下側外周部24の外周縁部24dから円環状に無端状に延びている部分である。下側外周側環状部25は、下側外周部24の外周縁部24dから上側(矢印a方向)及び外周側(矢印d方向)に斜めに曲げられて形成されている。下側外周側環状部25は、径方向(矢印cd方向)において下側基部23と平行又は略平行に延びている。下側外周側環状部25は、下側外周部24の上面24aに続く面である上面25aと、下側外周部24の下面24bに続く面である下面25bとを有している。
【0047】
下側外周側環状部25の下側基部23に対する軸線Y1方向(矢印ab方向)における高さh4は、上側外周側環状部15の上側基部13に対する軸線Y1方向における高さh2と同じ又は略同じ高さとなっており、下側外周側環状部25の径方向(矢印cd方向)における幅w4は、上側外周側環状部15の径方向における幅w2と同じ又は略同じ幅となっている。
【0048】
また、下側ガスケット部材20は、下側基部23の内周側(矢印c方向)の縁部である内周縁部23cから下側(矢印b方向)に斜めに延びる下側内周部26と、下側内周部26の内周側の縁部である内周縁部26cから下側基部23の延び方向(径方向(矢印cd方向))に延びる環状平板の下側内周側環状部27と、を備えている。
【0049】
下側内周部26は、下側基部23の内周縁部23cから下側(矢印b方向)に斜めに曲げられて形成されている。下側内周部26は、下側基部23の上面23aに続く面である上面26aと、下側基部23の下面23bに続く面である下面26bとを有している。下側内周部26は、下側基部23の内周縁部23cから下側(矢印b方向)に向かうに連れて縮径している部分である。つまり、下側内周部26は、円錐筒状の形状を呈している。なお、下側内周部26は、トランペット状等他の滑らかな曲面を有する円環状の形状であってもよい。
【0050】
下側内周部26の長さは、上側ガスケット部材10の上側内周部16の長さと同じ又は略同じ長さとなっており、下側内周部26の下側基部23に対する角度θ3は、上側ガスケット部材10における上側内周部16の上側基部13に対する角度θ1と同じ又は略同じ角度となっている。
【0051】
下側内周側環状部27は、下側内周部26の内周縁部26cから円環状に無端状に延びている部分である。下側内周側環状部27は、下側内周部26の内周縁部26cから上側(矢印a方向)及び内周側(矢印c方向)に斜めに曲げられて形成されている。下側内周側環状部27は、径方向(矢印cd方向)において下側基部23と平行又は略平行に延びている。下側内周側環状部27は、下側内周部26の上面26aに続く面である上面27aと、下側内周部26の下面26bに続く面である下面27bとを有している。
【0052】
下側内周側環状部27の下側基部23に対する軸線Y1方向(矢印ab方向)における高さh3は、上側内周側環状部17の上側基部13に対する軸線Y1方向における高さh1と同じ又は略同じ高さとなっており、下側内周側環状部27の径方向(矢印cd方向)における幅w3は、上側内周側環状部17の径方向における幅w1と同じ又は略同じ幅となっている。
【0053】
下側内周部26及び下側内周側環状部27と下側外周部24及び下側外周側環状部25とは、下側基部23の外周側(矢印d方向)及び内周側(矢印c方向)において対称に形成されている。下側内周部26の長さは、下側外周部24の長さと同じ又は略同じ長さとなっており、下側内周部26の下側基部23に対する角度θ3は、下側外周部24の下側基部23に対する角度θ4と同じ又は略同じ角度となっている。
【0054】
また、下側内周側環状部27の軸線Y1方向(矢印ab方向)における高さh3は、下側外周側環状部25の軸線Y1方向における高さh4と同じ又は略同じ高さとなっており、下側内周側環状部27の径方向(矢印cd方向)における幅w3は、下側外周側環状部25の径方向における幅w4と同じ又は略同じ幅となっている。なお、下側内周部26及び下側内周側環状部27と下側外周部24及び下側外周側環状部25とは、非対称であってもよい。また、下側ガスケット部材20は、軸線Y1方向(矢印ab方向)において上側ガスケット部材10と非対称であってもよい。
【0055】
続いて、ガスケット1が密封対象の一方部材101及び他方部材102に取り付けられた状態について説明する。図3は、図2に示すガスケット1が挟圧された状態を示す密封構造100の拡大断面図である。ガスケット1の上側(矢印a方向)に、自動車等の車両における密封対象である2部材のうちの一方、例えば、内燃機関のシリンダヘッド等でなる一方部材101が配置されている。また、ガスケット1の下側(矢印b方向)に、自動車等の車両における密封対象である2部材のうちの他方、例えば、内燃機関のシリンダブロック等でなる他方部材102が配置されている。
【0056】
一方部材101及び他方部材102は、夫々、外周側(矢印d方向)の端部に、互いに離間する方向(矢印ab方向)に向かうに連れて拡径する拡径面103,104を備えている。具体的に、一方部材101の外周側(矢印d方向)の端部には、図3に示すように、環状の拡径面103が形成されている。拡径面103は、一方部材101の平面101aから上側(矢印a方向)に斜めに外周側(矢印d方向)に拡径して延びている。また、他方部材102の外周側(矢印d方向)の端部には、環状の拡径面104が形成されている。拡径面104は、他方部材102の平面102aから下側(矢印b方向)に斜めに外周側(矢印d方向)に拡径して延びている。
【0057】
ガスケット1は、取付状態において、密封対象の一方部材101及び他方部材102の間に挟持されており、一方部材101及び他方部材102の間において挟圧されて弾性変形し、一方部材101及び他方部材102の間を密封している。具体的には、一方部材101に形成された平面101aと他方部材102に形成された平面102aとが互いに対向した状態で一方部材101と他方部材102とが締結され、平面101aと平面102aとの間においてガスケット1は挟圧されて弾塑性変形する。
【0058】
一方部材101及び他方部材102は、例えば、エンジンのシリンダブロック及びシリンダヘッド、シリンダブロック及びオイルパン、燃料電池スタックのケース、その他の装置の筐体を形成する部材等である。平面101a,102aは、例えば、一方部材101及び他方部材102に形成されたフランジ部に形成されている。
【0059】
ガスケット1は、一方部材101及び他方部材102の締結過程において、図2に示す自由状態から弾性変形していき、一方部材101及び他方部材102との接触部(シールライン)において所望の接触圧力が発生するまで締結作業が行われる。締結は、例えば、ボルトを螺合させることによって行われる。
【0060】
一方部材101及び他方部材102が締結されていき、上側ガスケット部材10の上側外周側環状部15の上面15a及び上側内周側環状部17の上面17aが一方部材101の平面101aに接触(面接触)して下側(矢印b方向)に押圧される。また、下側ガスケット部材20の下側外周側環状部25の下面25b及び下側内周側環状部27の下面27bが他方部材102の平面102aに接触(面接触)して上側(矢印a方向)に押圧される。
【0061】
これにより、上側ガスケット部材10の金属板11が弾性変形していき、上側外周部14及び上側内周部16が上側基部13に対して下側(矢印b方向)に曲げられて角度θ2,θ1が減少していき、上側外周側環状部15の高さh2及び上側内周側環状部17の高さh1が減少していく。また、下側ガスケット部材20の金属板21が弾性変形していき、下側外周部24及び下側内周部26が下側基部23に対して上側(矢印a方向)に曲げられて角度θ4,θ3が減少していき、下側外周側環状部25の高さh4及び下側内周側環状部27の高さh3が減少していく。
【0062】
一方部材101及び他方部材102が更に強く締結されていくと、平面101aと平面102aとの間の間隔が更に狭まっていき、平面101aと平面102aとの間の間隔がある間隔となった際に、上側ガスケット部材10の上側外周部14及び上側内周部16の曲げ変形によって発生する上側基部13に対する反力が所定の値を超え、図3に示すように、上側基部13が上側(矢印a方向)に向かって突出するように反り曲がる。これにより、上側ガスケット部材10の上側基部13と下側ガスケット部材20の下側基部23との面接触は解消される。
【0063】
そして、上側ガスケット部材10は、上側基部13と上側外周部14との接続部(外周縁部13d)の近傍の部分(以下、上側外周接触部10aという。)と、上側基部13と上側内周部16の接続部(内周縁部13c)の近傍の部分(以下、上側内周接触部10bという。)とにおいて、下側ガスケット部材20の後述する下側外周接触部20a及び下側内周接触部20bと接触する。また、上側ガスケット部材10は、上側基部13の上面13aの中央部及びその近傍(以下、上面中央接触部10cという。)において一方部材101の平面101aに接触するようになる。
【0064】
また、このとき、上側外周側環状部15は、上面15aにおいて一方部材101の平面101aに接触し続けており、上側内周側環状部17も同様に、上面17aにおいて一方部材101の平面101aに接触し続けている。このように、一方部材101と下側ガスケット部材20との間には、上側ガスケット部材10により5つのシールラインが形成される。
【0065】
一方、平面101aと平面102aとの間の間隔がある間隔となった際に、下側ガスケット部材20の下側外周部24及び下側内周部26の曲げ変形によって発生する下側基部23に対する反力が所定の値を超え、図3に示すように、下側基部23が下側(矢印b方向)に向かって突出するように反り曲がる。これにより、下側ガスケット部材20の下側基部23と上側ガスケット部材10の上側基部13との面接触は解消される。
【0066】
そして、下側ガスケット部材20は、下側基部23と下側外周部24との接続部(外周縁部23d)の近傍の部分(以下、下側外周接触部20aという。)と、下側基部23と下側内周部26の接続部(内周縁部23c)の近傍の部分(以下、下側内周接触部20bという。)とにおいて、上側ガスケット部材10の上側外周接触部10a及び上側内周接触部10bと接触する。また、下側ガスケット部材20は、下側基部23の下面23bの中央部及びその近傍(以下、下面中央接触部20cという。)において他方部材102の平面102aに接触するようになる。
【0067】
また、このとき、下側外周側環状部25は、下面25bにおいて他方部材102の平面102aに接触し続けており、下側内周側環状部27も同様に、下面27bにおいて他方部材102の平面102aに接触し続けている。このように、他方部材102と上側ガスケット部材10との間には、下側ガスケット部材20により5つのシールラインが形成される。
【0068】
そして、一方部材101及び他方部材102の締結力、即ちボルトの軸力が所定の設定値になると一方部材101及び他方部材102の締結が完了し、ガスケット1は取付状態となる。このようにして、ガスケット1は、平面101aと平面102aとの間を所望の密封性を持って密封するように挟圧された状態となる。
【0069】
この取付状態に挟圧されたガスケット1において、上側外周側環状部15は、上側ゴム層12aが一方部材101の平面101aに所望の大きさの圧力で押圧されて平面101aに密接されており、この接触部分に形成されたシールラインs2には所望の大きさの面圧が発生している。また、上側内周側環状部17は、上側ゴム層12aが一方部材101の平面101aに所望の大きさの圧力で押圧されて平面101aに密接されており、この接触部分に形成されたシールラインs1には所望の大きさの面圧が発生している。
【0070】
また、上側外周接触部10aは、下側ゴム層12bが下側ガスケット部材20に所望の大きさの圧力で押圧されて下側外周接触部20aに密接されており、この接触部分に形成されたシールラインs4には所望の大きさの面圧が発生している。また、上側内周接触部10bは、下側ゴム層12bが下側ガスケット部材20に所望の大きさの圧力で押圧されて下側内周接触部20bに密接されており、この接触部分に形成されたシールラインs3には所望の大きさの面圧が発生している。
【0071】
また、上面中央接触部10cは、上側ゴム層12aが一方部材101の平面101aに所望の大きさの圧力で押圧されて平面101aに密接されており、この接触部分に形成されたシールラインs5には所望の大きさの面圧が発生している。
【0072】
一方、下側外周側環状部25は、下側ゴム層22bが他方部材102の平面102aに所望の大きさの圧力で押圧されて平面102aに密接されており、この接触部分に形成されたシールラインs7には所望の大きさの面圧が発生している。また、下側内周側環状部27は、下側ゴム層22bが他方部材102の平面102aに所望の大きさの圧力で押圧されて平面102aに密接されており、この接触部分に形成されたシールラインs6には所望の大きさの面圧が発生している。
【0073】
また、下側外周接触部20aは、上側ゴム層22aが上側ガスケット部材10に所望の大きさの圧力で押圧されて上側外周接触部10aに密接されており、この接触部分に形成されたシールラインs9には所望の大きさの面圧が発生している。また、下側内周接触部20bは、上側ゴム層22aが上側ガスケット部材10に所望の大きさの圧力で押圧されて上側内周接触部10bに密接されており、この接触部分に形成されたシールラインs8には所望の大きさの面圧が発生している。
【0074】
また、下面中央接触部20cは、下側ゴム層22bが他方部材102の平面102aに所望の大きさの圧力で押圧されて平面102aに密接されており、この接触部分に形成されたシールラインs10には所望の大きさの面圧が発生している。
【0075】
これにより、ガスケット1は、取付状態において、平面101aと平面102aとの間を密封し、内周側(矢印c方向)から平面101a,102a間の隙間を介して、一方部材101及び他方部材102内部の物体、例えば潤滑油等が漏れ出ることを抑制している。また、ガスケット1は、外周側(矢印d方向)から平面101a,102a間の隙間を介して外部の塩水や融雪剤、ダスト等が侵入することを防止している。
【0076】
また、この取付状態に挟圧されたガスケット1において、上側ガスケット部材10の上側外周側環状部15の外周側の縁部である外周縁部15dは、径方向(矢印cd方向)において、一方部材101の平面101aの拡径面103における下側(矢印b方向)の角部と同じ位置に位置している。また、下側ガスケット部材20の下側外周側環状部25の外周側の縁部である外周縁部25dは、径方向(矢印cd方向)において、他方部材102の平面102aの拡径面104における上側(矢印a方向)の角部と同じ位置に位置している。
【0077】
このようにして、本発明の実施の形態に係るガスケット1は、上側ガスケット部材10及び下側ガスケット部材20が対向して配置されている。上側ガスケット部材10は、環状平板の上側基部13と、上側基部13の外周縁部13dから上側(矢印a方向)に斜めに延びる上側外周部14と、上側外周部14の外周縁部14dから上側基部13の延び方向(径方向(矢印cd方向))に延びる環状平板の上側外周側環状部15と、を備えている。また、下側ガスケット部材20は、環状平板の下側基部23と、下側基部23の外周縁部23dから下側(矢印b方向)に斜めに延びる下側外周部24と、下側外周部24の外周縁部24dから下側基部23の延び方向(径方向(矢印cd方向))に延びる環状平板の下側外周側環状部25と、を備えている。
【0078】
このため、取付状態に挟圧されたガスケット1において、上側外周側環状部15の上面15aと一方部材101の平面101aとの接触部分に形成されたシールラインs2に所望の大きさの面圧が発生している。また、下側外周側環状部25の下面25bと他方部材102の平面102aとの接触部分に形成されたシールラインs7には所望の大きさの面圧が発生している。
【0079】
従って、密封対象の一方部材101の平面101aと上側ガスケット部材10の上側外周側環状部15の上面15aとの間に間隙を有していないため、一方部材101の平面101aと上側外周側環状部15の上面15aとの間に塩水が滞留することを防止することができ、一方部材101が腐食する速度を更に抑制することができる。また、密封対象の他方部材102の平面102aと下側ガスケット部材20の下側外周側環状部25の下面25bとの間に間隙を有していないため、他方部材102の平面102aと下側外周側環状部25の下面25bとの間に塩水が滞留することを防止することができ、他方部材102が腐食する速度を更に抑制することができる。
【0080】
また、上側ガスケット部材10の上側外周側環状部15の上側ゴム層12aが一方部材101の平面101aに押圧されて平面101aに密接されているため、上側ガスケット部材10の金属板11が一方部材101に接触して一方部材101を破損することを防止することができる。また、下側ガスケット部材20の下側外周側環状部25の下側ゴム層22bが他方部材102の平面102aに押圧されて平面102aに密接されているため、下側ガスケット部材20の金属板21が他方部材102に接触して他方部材102を破損することを防止することができる。
【0081】
また、上側ガスケット部材10の上側外周側環状部15の上面15aが一方部材101の平面101aに押圧されて平面101aに密接されているため、上側外周側環状部15により一方部材101及び他方部材102の間を広い範囲で閉塞することができる。また、下側ガスケット部材20の下側外周側環状部25の下面25bが他方部材102の平面102aに押圧されて平面102aに密接されているため、下側外周側環状部25により一方部材101及び他方部材102の間を広い範囲で閉塞することができる。これにより、ガスケット1では、外周側(矢印d方向)から平面101a,102a間の隙間を介して外部の塩水や融雪剤、ダスト等が侵入することを更に防止することができる。
【0082】
また、上側ガスケット部材10は、上側基部13の外周縁部13dから上側(矢印a方向)に斜めに延びる上側内周部16と、上側内周部16の内周縁部16cから上側基部13の延び方向(径方向(矢印cd方向))に延びる環状平板の上側内周側環状部17と、を備えている。下側ガスケット部材20は、下側基部23の内周縁部23cから下側(矢印b方向)に斜めに延びる下側内周部26と、下側内周部26の内周縁部26cから下側基部23の延び方向(径方向(矢印cd方向))に延びる環状平板の下側内周側環状部27と、を備えている。
【0083】
このため、上側ガスケット部材10の上側内周側環状部17の上面17aが一方部材101の平面101aに押圧されて平面101aに密接されているため、上側内周側環状部17により一方部材101及び他方部材102の間を広い範囲で閉塞することができる。また、下側ガスケット部材20の下側内周側環状部27の下面27bが他方部材102の平面102aに押圧されて平面102aに密接されているため、下側内周側環状部27により一方部材101及び他方部材102の間を広い範囲で閉塞することができる。これにより、内周側(矢印c方向)から平面101a,102a間の隙間を介して、一方部材101及び他方部材102内部の潤滑油等が漏れ出ることを更に抑制することができる。
【0084】
また、本発明の実施の形態に係る密封構造100は、一方部材101及び他方部材102が、夫々、外周側(矢印d方向)の端部に、互いに離間する方向(矢印ab方向)に向かうに連れて拡径する拡径面103,104を備えている。また、本発明の実施の形態に係る密封構造100は、上側外周側環状部15の外周縁部15dが一方部材101の平面101aの拡径面103における下側(矢印b方向)の角部と同じ位置に位置しており、下側外周側環状部25の外周縁部25dが他方部材102の平面102aの拡径面104における上側(矢印a方向)の角部と同じ位置に位置している。このため、一方部材101の平面101a及び他方部材102の平面102aに塩水が滞留することを防止することができ、一方部材101及び他方部材102が腐食する速度を更に抑制することができる。
【0085】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0086】
例えば、本発明の実施の形態に係るガスケット1においては、上側外周側環状部15及び下側外周側環状部25が自由状態において形成されている場合を一例に本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、取付状態に挟圧されたガスケット1において、上側外周側環状部15及び下側外周側環状部25が曲げられて形成されるようにしてもよい。
【0087】
また、本発明の実施の形態に係るガスケット1においては、上側内周部16、上側内周側環状部17、下側内周部26及び下側内周側環状部27を有している場合を一例に本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、上側内周部16、上側内周側環状部17、下側内周部26及び下側内周側環状部27を有していなくてもよく、上側ガスケット部材10及び下側ガスケット部材20の内周側(矢印c方向)の形状は一方部材101及び他方部材102内部の潤滑油等が漏れ出ることを抑制することができる任意の形状であればよい。
【符号の説明】
【0088】
1…ガスケット、10…上側ガスケット部材、11…金属板、11a…上面、11b…下面、12a…上側ゴム層、12b…下側ゴム層、13…上側基部、13a…上面、13b…下面、13c…内周縁部、13d…外周縁部、14…上側外周部、14a…上面、14b…下面、14d…外周縁部、15…上側外周側環状部、15a…上面、15b…下面、15d…外周縁部、16…上側内周部、16a…上面、16b…下面、16c…内周縁部、17…上側内周側環状部、17a…上面、17b…下面、20…下側ガスケット部材、21…金属板、21a…上面、21b…下面、22a…上側ゴム層、22b…下側ゴム層、23…下側基部、23a…上面、13b…下面、13c…内周縁部、13d…外周縁部、24…下側外周部、24a…上面、24b…下面、24d…外周縁部、25…下側外周側環状部、25a…上面、25b…下面、25d…外周縁部、26…下側内周部、26a…上面、26b…下面、26c…内周縁部、27…下側内周側環状部、27a…上面、27b…下面、30…位置決め部、31…ボルト穴、s1~10…シールライン、Y1…軸線
図1
図2
図3