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特許7313349材料体積に対するボイド体積の比が高い片面三方向割出し可能なミーリングインサートおよびそのためのインサートミル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】材料体積に対するボイド体積の比が高い片面三方向割出し可能なミーリングインサートおよびそのためのインサートミル
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/20 20060101AFI20230714BHJP
   B23C 5/10 20060101ALN20230714BHJP
【FI】
B23C5/20
B23C5/10 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020528413
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 IL2018051292
(87)【国際公開番号】W WO2019106663
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】62/592,751
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘヒト ギル
(72)【発明者】
【氏名】シャピール アディ
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102008019426(DE,A1)
【文献】実開平07-003972(JP,U)
【文献】特開昭57-008003(JP,A)
【文献】独国特許発明第102008016732(DE,B3)
【文献】特表2010-507496(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03050655(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第10215876(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0142581(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/06-10、20
B23B 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジティブな基本形状を有する片面三方向割出し可能な切削インサート(14)であって、
前記切削インサート(14)の材料の量によって規定される材料体積VFと、
すくい面(24)と、
前記すくい面(24)と対向して位置するベース支持面(26)と、
前記ベース支持面(26)に対して垂直で、前記切削インサート(14)の中心を通って延在するインサート軸AIであって、前記ベース支持面(26)から前記すくい面(24)に向かう上向き方向DUと、前記上向き方向DUと反対の下向き方向DDと、前記上向き方向および前記下向き方向(DU、DD)に垂直で、前記インサート軸AIから離れるように延在する外向き方向DOを規定する、インサート軸AIと、
前記ベース支持面(26)から前記すくい面(24)の最高点まで、前記インサート軸AIに平行に測定可能な切削インサート高さHIと、
前記すくい面(24)と前記ベース支持面(26)とを接続する周面(28)と、
前記周面(28)と前記すくい面(24)との交点に沿って形成された切削刃(32)であって、前記インサート軸AIに沿う前記下向き方向 D に見て、刃外接直径DEを有する仮想刃外接円CEを規定する、切削刃(32)と、
前記すくい面(24)および前記ベース支持面(26)に開口するねじ穴(30)であって、
前記ベース支持面(26)との交点にあるねじ穴底部(31)と、
前記すくい面(24)との交点にあるねじ穴頂部(33)と、
前記ねじ穴底部(31)から前記ねじ穴頂部(33)まで延在するボイドの体積として計算されるボイド体積VSと、
前記インサート軸AI沿う前記下向き方向D D に見て、前記すくい面(24)と前記ねじ穴(30)との交点で規定される穴円CSであって、穴径DSを有する、穴円CSと、を備える、ねじ穴(30)と、
を備え、
前記ベース支持面(26)は、前記インサート軸AI沿う前記上向き方向D U に見て、ベース直径DBを有する仮想ベース外接円CBを規定し、
前記周面(28)は、第一、第二、第三、第四、第五および第六の側部当接面(38A、38B、38C、38D、38E、38F)を備え、
前記切削刃(32)は、前記インサート軸AI沿う前記下向き方向D D に見て、刃内接直径DMを有する刃内接円CMを規定し、前記切削刃(32)は、3つの主副刃(48A、48B、48C)と3つの二次副刃(47A、47B、47C)を備え、前記主副刃(48A、48B、48C)は前記二次副刃(47A、47B、47C)と交互に並び、前記主副刃と前記二次副刃の間の各交点にコーナー副刃(46、46A、46B、46C、46D、46E、46F)を有し、
前記ベース直径DBが前記刃外接直径DEよりも小さく、
前記ボイド体積VSと前記材料体積VFとの体積比がVS/VF≧0.30の条件を満たし、
前記刃外接直径DEが、DE<6mmの条件を満たす、切削インサート(14)。
【請求項2】
前記体積比がVS/VF>0.35の条件を満たす、請求項1に記載の切削インサート(14)。
【請求項3】
前記穴径DSと前記刃内接直径DMとの直径比が、DS/DM>0.60の条件を満たす、請求項1または2に記載の切削インサート(14)。
【請求項4】
両側に隣接する前記コーナー副刃(46、46A、46B、46C、46D、46E、46F)の半分を含む主副刃長LMと、両側に隣接する前記コーナー副刃(46、46A、46B、46C、46D、46E、46F)の半分を含む二次副刃長LSとの刃長比が、LM/LS>0.80の条件を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項5】
各二次副刃(47、47A、47B、47C)に隣接する前記周面(28)の一部分を除き、前記二次副刃に隣接する前記周面(28)の残部分は、前記インサート軸AIと平行である、請求項1~4のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項6】
前記インサート軸AI沿う前記下向き方向D D に見て、前記主副刃と前記二次副刃(48A、48B、48C、47A、47B、47C)との間に形成される全ての内角λが鈍角である、請求項1~5のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項7】
前記刃外接直径DEが、DE>4mmの条件を満たす、請求項1~6のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項8】
前記ベース支持面(26)が前記切削インサートの唯一の研削面である、請求項1~7のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項9】
6つの前記側部当接面(38A、38B、38C、38D、38E、38F)は前記ベース支持面(26)に対して垂直である、請求項1~8のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項10】
逃げ面が、各二次副刃(48A、48、48C、47A、47B、47C)の一部分の下に形成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項11】
前記インサート軸AI沿う前記上向き方向D U に見て、側部当接面と隣接する切削刃部分との間の最大間隔(57)が、主副刃(48)に隣接して配置される、請求項1~10のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項12】
工具ホルダ(12)であって、
後端(13A)と、
前端(13B)と、
前記後端から前記前端まで延在する工具外周(13C)と、
前記工具ホルダの中心を通って延在する回転軸ARであって、前記後端から前記前端に向かう前向き方向DFと、前記前向き方向とは反対の後ろ向き方向DRと、前記回転軸ARに垂直で、前記回転軸ARから前記工具外周に向かう外向き方向DOと、前記外向き方向とは反対の内向き方向DIとを規定する、回転軸ARと、
前記後端の前方に延在するシャンク部分(18)と、
前記シャンク部分の前方に前記前端まで延在する切削部分(20)であって、前記前端に工具ホルダ直径(DT)と、前記前端と前記工具外周との交点から後方に延在する正確に2つの円周方向に離間した縦溝(21)とを有する、切削部分(20)とを備える、工具ホルダ(12)において、
前記縦溝のそれぞれは、前記前端と前記工具外周との前記交点に、そこから形成されたポケット(22)を備え、
2つの前記ポケット(22)のそれぞれは、
シート当接面(62)と、
前記シート当接面(62)に開口するねじ付きポケット穴(64)と、
前記シート当接面(62)を横切る第一、第二および第三の横方向当接面(66、66A、66B、66C)と、
を備え、
各第一の横方向当接面(66A)は、前記工具外周(13C)に隣接して位置し、前記外向き方向に向かって前記前向き方向(DO、DF)に傾斜して延在し、
各第二の横方向当接面(66B)は、前記第一の横方向当接面(66A)よりも前記回転軸ARに近く、第一の横方向凹部(67A)によって前記第一の横方向当接面(66A)から分離され、各第二の横方向当接面は、前記内向き方向に向かって前記前向き方向(DI、DF)に傾斜して延在し、
各第三の横方向当接面(66C)は、前記第二の横方向当接面(66B)よりも回転軸ARにより近く、かつより前方に位置し、二の横方向凹部(67B)によって前記第二の横方向当接面(66B)から分離され、各第三の横方向当接面(66C)は、前記内向き方向に向かって前記前向き方向(DI、DF)に傾斜して延在し、
前記工具ホルダ直径(DT)は、DT<11mmの条件を満たし、
前記第二および第三の横方向当接面は、前記シート当接面の平面図において、互いに平行ではなく、
2つの前記ポケット(22)の間で、前記工具ホルダ(12)の前記前端(13B)から凹んだ前記回転軸AR上の最前点(71A)まで支持ウェブ(70)が延在する、工具ホルダ(12)。
【請求項13】
(a)前記支持ウェブ(70)の最前面(71C)の中央部分が平面状である、もしくは(b)前記工具ホルダ(12)の側面図において、前記支持ウェブ(70)の最前面71C)が凹状に形成される、請求項12に記載の工具ホルダ(12)。
【請求項14】
請求項12または13に記載の工具ホルダ(12)と、
前記工具ホルダ(12)の前記ポケット(2)のうちの1つに取り付けられた請求項1~11のいずれか一項に記載の切削インサート(14)であって、
前記切削インサートの主副刃(48、48A、48B、48C)のうちの正確に1つは、前記工具ホルダ(12)の前方に延在し、
前記切削インサートの二次副刃(47、47A、47B、47C)のうちの正確に1つは、前記工具ホルダ(12)の前方に延在し、
前記切削インサートの二次副刃(47、47A、47B、47C)のうちの正確に1つは、前記工具外周(13C)の外向きに延在する、切削インサート(14)と、
を備える、インサートミル(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、インサートミルおよびそのための片面三方向割出し可能なミーリングインサート(以下、「インサート」ともいう)に関する。より詳細には、比較的小さいそのようなインサートおよび工具ホルダであって、送りミーリング操作のために構成されたものに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的のために、エンドミルは、理論的には、2つの一般的なグループ、すなわち、インサートミルおよびソリッドエンドミルに分けることができる。
【0003】
インサートミルは、ポケットを有する工具ホルダと、ポケット内に取り付けられるように構成された、典型的には割出し可能な交換可能なインサートとを備えるミーリング工具である。インサートミルの利点は、比較的高価で硬い材料で作られた交換可能なインサートが、ミーリング工具の比較的小さな部分を構成することである。工具ホルダは、ミーリング中にコレットまたはチャックによってしっかりと保持されるシャンクを備える。
【0004】
小さなインサートを定期的に交換する必要があり、工具ホルダを定期的に交換する必要が少ないインサートミルとは異なり、一体的に形成された歯を備えるソリッドエンドミルは、その全体が摩耗した後に交換される。また、ソリッドエンドミルも、ミーリング中にコレットまたはチャックによってしっかりと保持される一体的に形成されたシャンクを備える。したがって、ソリッドエンドミルは、インサートミルに比べて、著しく高価な材料を利用する。コストが比較的高価であるにもかかわらず、ソリッドエンドミルのインサートミルに対する利点の1つは、ソリッドエンドミルの単一の一体成形ボディが比較的小さな直径(典型的には20mm未満の直径で、より小さい直径がより一般的であり、例えば、約12mm以下の直径)で製造できることであり、インサートミルで可能または実用的である場所よりも、比較的より小さな場所でのミーリングが可能になることである。
【0005】
したがって、本発明は、20mm以下、特に9~16mmの範囲の工具切削直径(「切削直径」とも呼ばれる)において、中実エンドミルと機能的かつ経済的に競合するようにする一連の設計特徴を有するインサートおよびインサートミルを対象とする。より具体的には、9~12mmの範囲のものである。
【0006】
関心のある文献は、特許文献1であり、これは、小径工具ホルダ用の片面二方向割出し可能なインサートを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第3050655号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、改良された三方向割出し可能なミーリングインサートおよびそのためのインサートミルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、小径工具ホルダのために、送りミーリング操作用の片面三方向割出し可能な切削インサートを提供する。特許文献1で開示された2つの割出し可能な位置よりも、3つの割出し可能な位置が一般的に好まれるが、特許文献1で選択された設計は、割出し可能な位置を2つしか有さないことが意図的に選択された。その理由は、おそらく、これが発明者の考案した小径工具ホルダの最適設計だったからである。
【0010】
特に、三方向割出し可能な切削インサートは、二方向割出し可能な切削インサートと比較した場合、多くの点で不利である。第一に、製造上の精度が悪いので、(工具当接面によって形成される鋭角による)逃げ(runout)により大きな影響を及ぼし、機械加工中の安定性がますます悪くなるからである。第二に、切削インサートの寸法が大きくなると、切削刃に切削力が加わったときに、モーメントが大きくなり、機械加工中の安定性がますます悪くなるからである。第三に、そしておそらく最も重要なことは、三方向割出し可能なインサートは幅が広いので、以下でさらに論じるように、小径工具の設計で、より多くの問題があることである。
【0011】
それにもかかわらず、本発明は、非常に小さい直径のインサートミル(すなわち、9~12mm、またはより具体的には約10mmの切削直径を有するもの)の場合でさえ、例えば、(少なくとも主切削刃に関して)略三角形の形状の三方向割出し可能なインサートが、公知の先行技術と比較して全体的な利益を提供し得ると考える。
【0012】
上述のように、送りミーリング操作のための三方向割出し可能なインサートは、例えば、特許文献1(米国特許出願公開第2018/015554号でもある)に示されるタイプの二方向割出し可能インサートよりも比較的広い。別の言い方をすれば、半径方向の寸法(すなわち、工具ホルダに取り付けられた場合には、回転軸に対して垂直な方向)が比較的大きいので、従来は、比較的大きな直径の工具での使用に限定されてきた。この理由は、合理的なサイズの主切削刃(送りミーリングインサートミルの主切削刃がこの操作を提供する刃である)と三方向対称性を提供するために、インサートの半径方向寸法は切削刃長に依存するからである。このことは、特許文献1に示されている長尺インサートタイプの側部支持面には当てはまらない。これは、主切削刃の切削刃長に依存しない半径方向寸法を有し、そのねじ穴に隣接して必要とされる最小限の壁強度に応じて、最小限に抑えることができる。三方向割出し可能なインサートは、その半径方向寸法を同じように最小化することができないので、そのようなインサートを保持するように構成された工具は、そのコアの材料を削減している。このような削減は、主に軸方向の力を有するドリル、または依然として大きなコアサイズを有する直径の大きなドリルではそれほど重要ではないが、大きな半径方向切削力を有する小径ミーリング工具に関する本発明では非常に重要である。特許文献1の図13に注目すると、この図では、コア径は、図示された各切削インサートの幅に概ね対応していることが分かる。コア径を小さくすると、工具ホルダが許容できないほど曲がる可能性の生じる懸念があることが理解されるであろう。比較的小径のドリルが知られているが、工具ホルダの非軸方向の動きを含むミーリング操作の性質により、インサートミルは、ドリルよりも大きな半径方向の力を受けることが理解されるであろう。
【0013】
したがって、本発明は、特に三方向割出し可能なインサートを提供する場合に、より大きな切削工具直径を有するインサートミルよりも設計が著しく困難な9mm~12mmの切削工具直径、特に約10mmの切削工具直径のためのインサートミルを提供する。
【0014】
さらに、いくつかの有利な特徴が組み込まれており、それらの各々は、以下に記載されるように、小径のインサートミルが、同様の直径のソリッドエンドミルに対して競合するために、経済的に製造できるように設計される。
【0015】
本発明の第一の態様によれば、ポジティブな基本形状を有し、ボイド体積Vと、切削インサートの材料体積によって規定される材料体積Vとの体積比V/Vを有し、V/V≧0.30の条件を満たす片面三方向割出し可能な切削インサートが提供される。
【0016】
本発明の第二の態様によれば、ポジティブな基本形状を有する片面三方向割出し可能な切削インサートが提供され、この切削インサートは、切削インサートの材料の量によって規定される材料体積(V)と、すくい面と、すくい面と対向して位置するベース支持面と、ベース支持面に対して垂直で、インサートの中心を通って延在するインサート軸(A)であって、ベース支持面からすくい面に向かう上向き方向と、上向き方向と反対の下向き方向と、上向き方向および下向き方向に垂直で、インサート軸から離れるように延在する外向き方向を規定する、インサート軸(A)と、ベース支持面からすくい面の最高点まで、インサート軸に平行に測定可能な切削インサート高さ(H)と、すくい面とベース支持面とを接続する周面と、周面とすくい面との交点に沿って形成された切削刃であって、インサート軸(A)と平行な図において、刃外接直径(D)を有する仮想刃外接円(C)を規定する、切削刃と、すくい面およびベース支持面に開口するねじ穴であって、ベース支持面との交点にあるねじ穴底部と、すくい面との交点にあるねじ穴頂部と、ねじ穴底部からねじ穴頂部まで延在するボイドの体積として計算されるボイド体積(V)と、インサート軸(A)に平行な図では、すくい面とねじ穴との交点で規定される穴円(C)であって、穴径(D)を有する、穴円(C)と、を備える、ねじ穴と、を備え、ベース支持面は、インサート軸(A)に平行な底面図において、ベース直径(D)を有する仮想ベース外接円(C)を規定し、周面は、第一、第二、第三、第四、第五および第六の側部当接面を備え、切削刃は、インサート軸(A)に平行な上面図において、刃内接直径(D)を有する刃内接円(C)を規定し、切削刃は、正確に3つの主副刃と正確に3つの二次副刃を備え、主副刃は二次副刃と交互に並び、主副刃と二次副刃の間の各交点にコーナー副刃を有し、ベース外接直径(D)が刃外接直径(D)よりも小さく、ボイド体積Vと材料体積(V)の体積比が、V/V≧0.30の条件を満たす。
【0017】
ポジティブな基本形状を有することにより、インサートのベース支持面を逃がすこと(すなわち、図9Aに示されるように、切削工具直径から内側に離間すること)が可能になる。これは、極めて小径のインサートミルを対象とする本発明にとって重要である。
【0018】
加えて、特許文献1(段落[0034])に開示されているように、機械加工を可能な限り少なくして、プレスプロセスをできるようにすることは、本設計の経済的利点にも貢献する。用語「ポジティブな基本形状」とは、より具体的には、インサートのベース支持面により近い断面積が、インサートからさらに離れた断面積よりも小さいことを意味するが、周面のすべてが連続的に傾斜している必要はないことに留意されたい。例えば、インサートのある部分では、表面は、インサート軸と平行に延在してもよい。ポジティブな基本形状を規定する1つの方法は、ベース外接直径Dが刃外接直径Dより小さいことである。
【0019】
インサート自体の材料の量を最小限に抑えることができる。上記で規定した体積比V/Vが正常に実行されていることが分かった。インサートのサイズは最小限に抑えねばならないが、構造強度のために最小限の量の材料が必要であることが理解されよう。さらに、材料の量を最小限に抑え、三方向割出し可能な位置を提供するによって、経済的利点を提供することができる。
【0020】
本発明の第三の態様によれば、穴径Dと刃内接直径Dとのインサート厚さ直径比D/Dが、D/D>0.60が条件を満たす片面三方向割出し可能切削インサートが提供される。
【0021】
この態様は、異なる方法ではあるが、構造強度のために必要とされる材料の最小体積を規定するという点で、上記の態様に類似している。図面から、インサートの最も弱い構造部分は、穴径Dと刃内接直径Dとの間にほぼ位置する材料であることに注意されたい。したがって、上記の数値に従ったインサート厚さ直径比D/Dが正常に実行された。
【0022】
本発明の第四の態様によれば、主副刃を有する片面三方向割出し可能な可能切削インサートが提供され、ここで、主刃長Lと、隣接するコーナー副刃の半分をそれぞれ含む二次刃長Lの刃長比L/Lは、L/L>0.80の条件を満たす。
【0023】
通常、送りインサートは、上記で規定した刃長比L/Lよりも著しく大きい刃長比を有する。これは、送り操作の大部分が主副刃で行われるため、主副刃をより長くし、加工時間を短縮することが望ましいからである。限定的ではないが、好ましい一実施形態において、主刃長は、より速いテーブル速度を可能にするために短くされる。
【0024】
本発明の第五の態様によれば、主副刃を有する片面三方向割出し可能な切削インサートが提供され、刃外接直径Dは、D<6mmの条件を満たす。
【0025】
また、インサートサイズが小さくなると、そのようなインサートを取り外すことができるようにチップサイズを小さくするので、効率が悪くなることが理解されるであろう。それにもかかわらず、2つのインサートを小さい切削直径の工具ホルダに収容するためには、特に小さいインサートが必要である。これは、同様のサイズの二方向割出し可能なインサートを収容することがはるかに容易であったという事実にもかかわらずのことである。
【0026】
本発明の切削インサートは小型であるため、焼結工程に起因する歪みが合理的な許容範囲内であり、かつ切削インサートの周辺研削を回避できることが分かった。このように、インサートには、研削されていない下部サブ面を設けることができる。当分野で知られているように、研削面は、平面状の研削面が終了し、非研削面が開始する研削ラインおよび不連続ラインによって識別することができる。
【0027】
上述の主な設計の特徴(すなわち、体積比、インサートの厚さ直径比、刃長比、および小さな刃外接直径D)のそれぞれは、個々に有利であると考えられるが、本発明は、ポジティブな基本形状で、三方向割出し可能な片面インサート上の任意のそのような特徴の任意の組合せが、さらに有利であることを想定することを理解されたい。
【0028】
同様に、以下の任意の特徴のいずれも、上記の各態様に適用することができる。
【0029】
体積比V/Vが大きいほど、利用する材料が少なくなることが理解されるであろう。したがって、体積比は、V/V>0.35の条件を、あるいはV/V>0.40の条件を満たすことが好ましい。許容可能な現在の切削条件で、近似的な最大体積比は、理論的に、V/V<0.50の条件を、合理的な安全係数を有する最大体積比は、V/V<0.45の条件を満たすと考えられる。
【0030】
同様に、インサート厚さ直径比D/Dが大きいほど、利用する材料が少なくなる。したがって、体積比は、D/D>0.65の条件を満たすことが好ましい。許容可能な現在の切削条件で、近似的な最大インサート厚さ直径比は、理論的に、D/D<0.80の条件を、合理的な安全係数を有する最大比は、D/D<0.75の条件を満たすと考えられる。
【0031】
刃長比L/Lを大きくすると、主送り刃長を短くして、許容可能な切削幅を確保できる。したがって、いくつかの実施形態では、刃長比L/Lは、L/L>0.80の条件を、より好ましくはL/L>1.0の条件を満たす。経済的な機械加工で、近似的な最大インサート厚さ比は、理論的に、L/L<1.2の条件を満たすと考えられる。
【0032】
二次刃長Lは、二次刃がそれに隣接するコーナー副刃の半分を含む長さであり、有効ランプ刃長Lは、逃げ周面部分に隣接して測定された二次刃の長さである。いくつかの実施形態によれば、有効ランプ刃長Lは、0.4L>L>0.8Lの条件を満たす。
【0033】
上で規定された刃外接直径Dは、下部サブ面が研削されないことを可能にするが、より小さいサイズでさえも、工具ホルダによって、より容易に収容されることが理解されるであろう。したがって、刃外接直径Dは、D<5.5mmの条件を満たすことが好ましい。
【0034】
このように三方向割出し可能なインサートで、許容可能な現在の切削条件が可能である近似的で実現可能な最小サイズは、理論的には、D>4mmの条件を、合理的な安全係数を有する最大刃外接直径Dは、D>4.5mmの条件を満たすと考えられる。
【0035】
好ましくは、正のすくい角が切削刃全体に沿って形成される。
【0036】
好ましくは、インサート軸Aに平行な上面図において、主副刃と二次副刃との間に形成される全ての内角λは鈍角である。しかしながら、交互の内角のみが同一の値を有してもよいことが理解される。
【0037】
インサートの周面は、下部サブ面および上部サブ面を備えることができ、下部サブ面は、ベース支持面から上向き、または上向きおよび外向きに延在し、第一、第二、第三、第四、第五、および第六の側部当接面を備え、上部サブ面は下部サブ面とすくい面とを接続し、上部サブ面は、ベース支持面の最小上面高さHで上向き方向に始まる。
【0038】
好ましくは、下部サブ面は、上向きにのみ延在する(すなわち、ベース支持面に対して垂直に延在する)。これは、安定した取り付け位置を提供し、また工具ホルダポケットのミーリング製造を単純化する(その単純な直交ミーリングを可能にする)と考えられる。
【0039】
好ましくは、上部サブ面は、下部サブ面よりも外側に延在する。
【0040】
最小上部サブ面高さHが高いほど、下部サブ面高さをより高くすることが理解されよう。下部サブ面は、軸受機能を提供し、したがって、その高さを最大にすると、ポケット内に取り付けられたとき、インサートの安定性がより高くなる。逆に、切削機能のためには、上部サブ面に十分なサイズが必要である。したがって、最小上部サブ面高さHは、0.35H≦H≦0.85Hの条件を、また最も好ましくは0.40H≦H≦0.60Hの条件を満たすことが好ましい。
【0041】
上部サブ面は、好ましくは、インサートの全周の周りに延在する少なくとも1つの張出し部分を備えることができる。
【0042】
好ましくは、各二次刃に隣接する周面の一部分を除き、切削刃に隣接する周面の残部分は、インサート軸と平行である。
【0043】
好ましくは、逃げ凹部は、各二次副刃の一部分の下に形成される。
【0044】
インサート軸Aに平行な底面図において、第一、第二、第三、第四、第五および第六の側部当接面は、隣り合う切削刃部分から不均等に離間されている。隣接する切削刃部分から当接面への最大間隔は、主副刃に隣接して配置することができる。隣接する切削刃部分から当接面への最小間隔は、二次副刃に隣接して配置することができる。
【0045】
切削インサートは、好ましくは、インサート軸に対して120°回転対称であり得る。別の言い方をすれば、切削インサートは、3つの同一の側面を有することができる。
【0046】
切削インサートは、3つの同一サイズの主副刃および3つの同一サイズの二次副刃を備えることができる。
【0047】
好ましい一例によれば、それぞれの主副刃は、刃長Lを有し、1.8mm<L<2.8mmの条件を満たす。
【0048】
最も好ましくは、ベース支持面は、研削される。一実施形態において、切削インサートのベース支持面のみが研削される。これは、インサートの製造にとって最も経済的である。全ての場合において、下部サブ面が研削されていない場合が有利であることが理解されるであろう。
【0049】
追加のすくい面の研削操作を行う必要がある実施形態では、ベース支持面および切削刃全体が研削される。別の言い方をすれば、研削操作は、全周面で行われるのではなく、インサートの頂部に沿って行われるだけで、したがって、刃全体が平面内に収容される(すなわち、平面上に存在する)。インサートのこのような頂部研削は、複数のインサートが単一パスで研削されることを可能にすることが理解されるであろう。
【0050】
また、ベース支持面に平行な平面上に存在する切削刃、すなわち、インサートの側面図において平面状である切削刃を作製することもできる。当業者に知られているように、平面状の切削刃を研削する方が、三次元で平面上に存在しない切削刃よりも経済的である。
【0051】
好適な性能を提供するために、切削刃に沿った任意の位置で取られた、インサート軸に対して垂直に測定可能な切削刃ランド幅Wは、W≦0.14mmの条件を満たす。ランド幅Wは、0.02mm≦W≦0.14mmの条件を、あるいは、さらに好ましくは0.03mm≦W≦0.11mmの条件を、最も好ましくは0.04mm≦W≦0.08mmの条件を満たすことが好ましい。
【0052】
本発明の第六の態様によれば、ポジティブな基本形状を有する片面三方向割出し可能な切削インサートが提供され、この切削インサートは、すくい面と、すくい面と対向して位置するベース支持面と、すくい面およびベース支持面に開口するねじ穴であって、ベース支持面に対して垂直で、インサートの中心を通って延在するインサート軸(A)に沿って延在するねじ穴と、を備え、インサート軸であって、ベース支持面からすくい面に向かう上向き方向と、上向き方向と反対の下向き方向と、上向き方向および下向き方向に垂直で、インサート軸から離れるように延在する外向き方向を規定する、インサート軸と、すくい面とベース支持面とを接続する周面であって、すくい面に隣接し、張出し部分を備える上部サブ面と、上部サブ面とベース支持面との間の下部サブ面であって、6つの当接面を備えるサブ面を有する、下部サブ面とを有する、周面と、周面とすくい面との交点に沿って形成された切削刃であって、3つの二次副刃と交互に並んだ主副刃と、各主副刃および各二次副刃に配置され、鈍角の内角を形成するコーナー副刃を備える、切削刃と、を備え、各二次副刃は、1つのコーナー副刃に隣接する第一の刃部分と、第一の刃部分から隣接するコーナー副刃の方向に延在する第二の刃部分とを備え、上部サブ面の張出し部分は、第一の刃部分の下の非逃げ面と、第二の刃部分の下の逃げ凹部とを備え、逃げ凹部は、各二次副刃に沿った方向にステップ形状を有する。
【0053】
切削インサートは、6つの同一の側部当接面を備えることもできる。
【0054】
ベース支持面は、下部サブ面に形成された6つの側部当接面のそれぞれと内部直角(β1)を形成することができる。
【0055】
切削刃全体は、平面上に位置することができる。
【0056】
切削インサートは、切削インサートの材料の量によって規定される材料体積(V)と、ベース支持面からすくい面の最高点まで、インサート軸に平行に測定可能な切削インサート高さ(H)と、によって、さらに規定され、切削刃は、インサート軸(A)と平行な上面図において、刃内接直径(D)を有する仮想刃内接円(C)と、刃外接直径(D)を有する仮想刃外接円(C)を規定し、各主副刃は、それに隣接するコーナー刃の長さの半分を含む主副刃長(L)を有し、各二次副刃は、それに隣接するコーナー刃の長さの半分を含む二次副刃長(L)を有し、ベース支持面は、インサート軸(A)に平行な底面図において、ベース直径(D)を有する仮想ベース外接円(C)を規定し、ねじ穴は、ベース支持面との交点にあるねじ穴底部と、すくい面との交点にあるねじ穴頂部と、ねじ穴底部からねじ穴頂部まで延在するボイドの体積として計算されるボイド体積(V)と、すくい面とねじ穴との交点にあるインサート軸(A)と平行な図において、規定される穴円(C)であって、穴径(D)を有する穴円とを備え、ベース外接直径(D)は、刃外接直径(D)よりも小さく、材料体積(V)に対するボイド体積(V)の体積比は、V/V≧0.30の条件を満たす。
【0057】
本発明の第七の態様によれば、2つのポケットを備える工具ホルダが提供され、2つのぽポケットは、シート当接面と、シート当接面に開口するねじ付きポケット穴と、直線であり、シート当接面に対して垂直に配向された第一、第二、および第三の横方向当接面とを備え、各第一の横方向当接面は、工具外周に隣接して位置し、外向きおよび前向き方向に延在し、各第二の横方向当接面は、第一の横方向当接面よりも回転軸に近く、第一の逃げ凹部によって第一の横方向当接面から分離され、第二の横方向当接面は、内向きおよび前向き方向に延在し、各第三の横方向当接面は、第二の横方向当接面よりも回転軸により近く、かつより前方に位置し、第二の逃げ凹部によって第二の横方向当接面から分離され、第三の横方向当接面は、内向きおよび前向き方向に延在し、工具直径Dは、D<11mmの条件を満たす。
【0058】
本発明の第八の態様によれば、工具ホルダであって、後端と、前端と、後端から前端まで延在する工具外周と、工具ホルダの中心を通って延在する回転軸であって、後端から前端まで延在する前向き方向と、前向き方向とは反対の後ろ向き方向と、回転軸に垂直で、回転軸から工具外周に向かう外向き方向と、外向き方向とは反対の内向き方向とを規定する、回転軸と、後端の前方に延在するシャンク部分と、シャンク部分の前方に前端まで延在する切削部分であって、前端に工具直径(D)と、前端と工具外周との交点から後方に延在する正確に2つの円周方向に離間した縦溝とを有する、切削部分とを備える、工具ホルダが提供され、縦溝のそれぞれは、前端と工具外周との交点に形成されたポケットを備え、2つのポケットのそれぞれは、シート当接面と、シート当接面に開口するねじ付きポケット穴と、シート当接面を横切る第一、第二および第三の横方向当接面と、を備え、各第一の横方向当接面は、工具外周に隣接して位置し、外向き方向および前向き方向に延在し、各第二の横方向当接面は、第一の横方向当接面よりも回転軸に近く、第一の逃げ凹部によって第一の横方向当接面から分離され、各第二の横方向当接面は、内向き方向および前向き方向に延在し、各第三の横方向当接面は、第二の横方向当接面よりも回転軸により近く、かつより前方に位置し、第二の逃げ凹部によって第二の横方向当接面から分離され、各第三の横方向当接面は、内向き方向および前向き方向に延在し、工具直径(D)は、D<11mmの条件を満たす。
【0059】
このような小さな直径の工具ホルダが製造されたとは信じられない(2つのポケットが半径方向に部分的に開口し、ミーリング操作中に工具ホルダの前端の不安定性を増大させ、比較的幅の広い三方向割出し可能なインサートを受け入れるように構成されている)。
【0060】
さらに、本発明の工具ホルダは、工具ホルダの前端のポケットにのみ関係することに留意されたい。
【0061】
好ましくは、第二および第三の横方向当接面は、シート当接面の平面図において、互いに平行ではないことが好ましい。
【0062】
好ましくは、各縦溝は、単一のポケットのみを含む。
【0063】
好ましくは、工具ホルダは、2つのポケットの間で、工具ホルダの前端から凹んだ最前点まで延在する支持ウェブを備える。
【0064】
このような小径の工具ホルダでは、構成強度を付加する各要素が重要であることが理解されるであろう。インサートが近接していることを考えると、支持ウェブは、損傷する危険にさらされることなく、それらの間に追加することができなかった。妥協がなされて、工具の前端までずっと延在しない制限されたサイズの支持ウェブの形態となった。
【0065】
好ましくは、支持ウェブは薄い細長い形状を有する。
【0066】
好ましくは、支持ウェブの最前面の中央部分は平面状である。
【0067】
好ましくは、工具ホルダの側面図において、支持ウェブの最前面は凹状に形成される。
【0068】
好ましくは、第三の横方向当接面は、支持ウェブ上に少なくとも部分的に形成される。
【0069】
好ましくは、工具直径Dは、ソリッドエンドミルと競合するようにできるだけ小さくする。上記の特徴により、工具直径DがD<10mmの条件を満たすことに、試験で成功した。工具ホルダの前端で測定される工具直径は、切削工具直径Dよりもわずかに小さいことが理解されよう。近似的な最小工具直径は、理論的に、D>9mmの条件を満たすと考えられる。
【0070】
このような小径の2つのインサートを収容するために取られた更なる別の手段は、それらの位置を互いに対して調整することであった。通常、両方のインサートがそれらのすくい面を概ね整列させることが好ましいが、小径の工具ホルダの場合には、(例えば、インサートが接触するであろうから)これは不可能である。本発明の好ましい解決策は、各インサートの周面の一部分が他方のインサートに隣接するようにインサートを整列させることである。この特徴に関して、例えば、工具ホルダのポケットと関連して、以下のように説明することもできる。
【0071】
回転軸Aに平行な前端の図において、シート当接面のうちの一方の前縁から延びる第一の仮想延長線は、他方のシート当接面の前縁から延びる第二の仮想延長線に平行であることができ、中央工具平面Pは、回転軸Aに平行に規定され、各シート当接面が中央工具平面Pに面するように第一の延長線と第二の延長線の間に位置し、第一のシート距離DS1は、第一の延長線から中央工具平面Pまでで規定され、第二のシート距離DS2は、第二の延長線から中央工具平面Pまでで規定され、第一のシート距離DS1と第二のシート距離DS2の合計である総距離DS3は、DS3<0.35Dの条件を満たす。好ましくは、総距離DS3は、DS3<0.30Dの条件を満たす。最小寸法は、好ましくは、DS3>0.20Dである。
【0072】
好ましくは、各ポケットは、工具ホルダ内に同一に形成され、配向される。
【0073】
好ましくは、ポケット穴は、横方向当接面までの距離と比較して、同様に、断面を比較的大きくすることができる。これは、ポケット穴径および横方向当接面までの距離から分かり、本発明の寸法を考慮すれば理解できる。
【0074】
ねじ軸は、好ましくは、シート当接面の中心からオフセットすることができ、すなわち、第一および第二の横方向当接面が互いに最も近い場所に、わずかに近接し、その結果、切削インサートをポケットに保持するねじが、切削インサートを第一および第二の横方向当接面に向かって付勢することになる。
【0075】
本発明の第九の態様によれば、工具ホルダであって、後端と、前端と、後端から前端まで延在する工具外周と、工具ホルダの中心を通って延在する回転軸であって、後端から前端まで延在する前向き方向と、前向き方向とは反対の後ろ向き方向と、回転軸に垂直で、回転軸から工具外周に向かう外向き方向と、外向き方向とは反対の内向き方向とを規定する、回転軸と、後端の前方に延在するシャンク部分と、シャンク部分の前方に前端まで延在する切削部分であって、前端に工具直径(D)と、前端と工具外周との交点から後方に延在する正確に2つの円周方向に離間した縦溝とを有する、切削部分とを備える、工具ホルダが提供され、縦溝のそれぞれは、前端と工具外周との交点に形成された単一のポケットを備え、支持ウェブは、ポケットの間で、工具ホルダの前端から凹んだ最前点まで延在する。
【0076】
本発明の第十の態様によれば、第七~第九の態様による工具ホルダと、それに取り付けられた第一~第六の態様のいずれか一態様による少なくとも1つのインサートとを備えるインサートミルが提供される。
【0077】
本発明の第十一の態様によれば、上記態様のいずれか1つによる工具ホルダと、上記態様のいずれか1つによる切削インサートであって、切削インサートが工具ホルダのポケットの1つに取り付けられる切削インサートとを備え、インサートの主副刃のうちの正確に1つが工具ホルダの前方に延在し、インサートの副刃のうちの正確に1つが工具ホルダの前方に延在し、インサートの副刃のうちの正確に1つが工具外周の外側に延在するインサートミルが提供される。
【0078】
本発明の第十二の態様によれば、2つの切削インサートと工具ホルダとを備えるインサートミルが提供され、工具ホルダは、後端と、前端と、後端から前端まで延在する工具外周と、工具ホルダの中心を通って延在する回転軸であって、後端から前端まで延在する前向き方向と、前向き方向とは反対の後ろ向き方向と、回転軸に垂直で、回転軸から工具外周に向かう外向き方向と、外向き方向とは反対の内向き方向とを規定する、回転軸と、後端の前方に延在するシャンク部分と、シャンク部分の前方に前端まで延在する切削部分であって、前端に工具直径Dと、前端と工具外周との交点に、そこから後方に延在する正確に2つの円周方向に離間した縦溝とを有する、切削部分とを備え、縦溝のそれぞれは、前端と工具外周との交点に形成された単一のポケットを備え、各ポケットは、その中に取り付けられた切削インサートを有し、各ポケットは外向き方向に開口し、各切削インサートの主副刃が工具ホルダの前端を越えて前方に延在し、切削インサートの外向き方向の延在は、切削工具直径Dをさらに規定し、切削インサートのそれぞれは、周面とそのすくい面との交点に沿って形成された同一の切削刃を備え、各切削刃は、インサート軸Aに平行な図において、刃外接直径Dを有する仮想刃外接円Cを規定し、(D+D)/Dとして規定されるインサートミル比RIMは、RIM>0.9の条件を満たす。
【0079】
好ましくは、インサートミル比RIMは、RIM>1.0を満たす。最大寸法は、好ましくはDS3<1.4であり、好ましくはDS3<1.2である。
【0080】
好ましくは、回転軸Aに平行する前端から見て、各インサートの周面は、他方のインサートの周面部分の一部分に隣接している。
【0081】
総距離DS3は、切削インサート高さHよりも大きいことが好ましい。
【0082】
本発明の主題をより良く理解するために、また、本発明が実際にどのように実行され得るかを示すために、スケールモデルから導出された添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1A】本発明の主題による工具ホルダおよびインサートを備えるインサートミルの側面図で、インサートのうちの1つの側面図を示すために回転させた図である。
図1B図1Aのインサートミルの側面図であり、インサートのうちの1つの正面図を示すために回転させた図である。
図1C図1Bのインサートミルの正面端面図である。
図2図1Aに示すインサートのうちの1つの斜視図である。
図3図2のインサートの上面図である。
図4A図3の線IVAに沿った断面図である。
図4B図3の線IVBに沿った断面図である。
図4C図3の線IVCに沿った断面図である。
図5A図2のインサートの側面図である。
図5B図5Aのインサートの上面図である。
図5C図5Aのインサートの底面図である。
図6図5Bの線VI-VIに沿った断面図である。
図7A図1Aに示すインサートミルの工具ホルダの側面図であり、ポケットのうちの1つの側面図を示すために回転させた図である。
図7B図7Aの工具ホルダの側面図であり、ポケットのうちの1つの正面図を示すために回転させた図である。
図7C図7Aの工具ホルダの正面端面図である。
図7D図7Aの工具ホルダの一部分の斜視図である。
図8A図7Aの工具ホルダのポケットの斜視図である。
図8B図8Aのポケットの側面図である。
図8C図8Aのポケットの上面(すなわち軸方向)図であり、また、ポケットのシート当接面の平面図を構成する。
図9A図1Cに示されているインサートの図であり、工具ホルダおよびねじが示されておらず、工具外接切削直径の円を概略的に示す図である。
図9B図9Aに示されているインサートの側面図であり、図1Bに示されているようなインサートの向きにも対応している。
図9C図9Bに示されているインサートと、そのインサートを工具ホルダに取り付けるためのねじの側面図で、図1Aに示されているようなインサートの向きに対応するように回転された図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1A図1Cは、送りミーリング操作のために構成されたインサートミル10を示す。
【0085】
インサートミル10は、工具ホルダ12と、切削インサート14と、切削インサート14を工具ホルダ12に固定するためのねじ16を備える。
【0086】
インサートミル10は、その中心を通って長手方向に延びる回転軸Aを中心に回転するように構成される。
【0087】
回転軸Aは、相対する軸方向前向き方向とDと軸方向後ろ向き方向Dと、相対する回転切削方向Dと回転非切削方向Dを規定する。
【0088】
工具ホルダ12は、後端13Aと、前端13Bと、それらの間に延在する工具外周13Cとを備える。
【0089】
工具ホルダ12は、シャンク部分18と、そこから前方に延在する切削部分20とをさらに備える。
【0090】
切削部分20は、正確に2つの縦溝21を含む。各縦溝21は、前端13Bと工具外周13Cとの交点に形成されたポケット22(図8A参照)を備える。
【0091】
切削インサート14と、ねじ16と、ポケット22は、与えられた例では、同一であり、したがって、1つに関して記載された特徴は、その全てに適用されると考えられるべきである。
【0092】
ここで、切削インサート14を図2図6を参照して説明する。
【0093】
切削インサート14は、ポジティブな基本形状を有する片面三方割出し可能な切削インサートである。この切削インサートは、すくい面24と、ベース支持面26と、周面28と、ねじ穴30と、切削刃32とを備える。
【0094】
インサート軸A図6)は、ベース支持面26に垂直に、インサート14の中心を通って延びている。インサート軸Aは、切削インサート14の方向および特徴を規定するのに役立つように設けられる。一般に、本発明のねじ穴は、インサートの中心に位置し、ベース支持面に対して垂直であることが最も好ましいが、その結果、インサートのインサート軸もねじ穴の中心を貫通して延びることになる。ねじ穴を切削インサートに対して傾斜させることも、あるいは、ねじ穴を完全に中心にしないこともできるが、その結果、ねじ穴軸(図示せず)がインサート軸Aと同軸でないようにすること(一方、本好適な例では、これらは同軸である)も可能なことが理解されるであろう。それにもかかわらず、本発明は、可能な限り材料の使用を最小限に抑えようとするならば、確かに、構造的強度の目的のためには、例示された中心にある垂直のねじ穴が好ましい。したがって、所与の例では、インサート軸Aも、ねじ穴30の中心を通って延びる。
【0095】
図6を参照すると、ねじ穴30は、ねじ穴底部31と、ねじ穴頂部33を備えることができる。
【0096】
図5Bでは、穴径Dを規定する穴円Cが示されている。
【0097】
インサート軸Aは、相対する上向き方向Dと下向き方向Dを規定し、図5Cに例示されるように、相対する内向き方向Dと外向き方向Dを規定する。外向き方向Dは、1つの特定方向を規定することを意味せず、むしろ、インサート軸Aから360°外向き方向の考えられる全ての方向を規定することを意味し、4つのそのような方向が例示される。これは、逆方向において、内向き方向Dについても当てはまるが、一例のみしか1つの図示されていない。これは、図1Cのインサートミル10に関して示されている内向き方向Dおよび外向き方向Dにも当てはまる。
【0098】
例えば、図4A図4Cおよび図6に示すように、すくい面24は、好ましくは、チップ形成の目的で鋭角の内角αを形成するために、切削刃32から内向きおよび下向きに傾斜することができる。すくい面24と周面28との間に形成される鋭角の内角αは、正のすくい角とも呼ばれる。このような正の角度は、この非限定的であるが好適な例では、回転軸Aに対して傾斜して延在するシート当接面の向きを補償し、正の切削角度自体を提供しない。
【0099】
ベース支持面26は、図示されるように、略平面であるが、この規定は、例えば、特許文献1の図7に示されるように、周面28とベース支持面26との間に小さな丸みを帯びた遷移刃を含める可能性を妨げるものではないことが理解されるであろう。図示の実施形態では、面取り部27(図5Aおよび図5C)が設けられている。明細書および特許請求の範囲の目的のために、ベース支持面26は、最下面であり、すなわち、いかなる面取り領域もまたは丸みを帯びた領域も含まないものと考えられる。したがって、図5Cでは、ベース支持面26は、インサート軸Aと平行な図において、ベース直径Dを有する仮想ベース外接円Cを規定する。
【0100】
図5Cを参照すると、切削インサート14のポジティブな基本形状は、ベース支持面26が、切削刃32(図5B)の外接直径Dよりも小さいベース直径Dを有することを意味する。
【0101】
図2図5Cおよび図6を参照すると、周面28は、下部サブ面34および上部サブ面36を備える。下部サブ面34は、研削されておらず、ベース支持面26から上方に延在し、第一、第二、第三、第四、第五、および第六の側部当接面38A、38B、38C、38D、38E、38F(以下、同一の側部当接面は、一般に「側部当接面38」として識別される)を備える。半径部分39(図2)は、側部当接面38の間に延在するが、図示の例では当接機能を有さない。
【0102】
インサートの当接面38は、図6に最も良く示されているように、ベース支持面26と内部直角β1を形成する支持面として機能することに留意されたい。
【0103】
側部当接面38のそれぞれは、略平面状である。詳細に説明すると、誇張された概略的な凸状膨出部40が図3に示されている。膨出部40は、典型的には、焼結工程から生じる。本発明のインサートは小さいので、このような膨出部40をもたらす歪みは、研削を必要としないほど十分に小さい。一般的に言えば、このような凸部または凹部(図示しないが、これは、本明細書の目的のために内向き「膨出部」と考えることができる)は、インサートの隣接するコーナーをこのような膨出部に接続する平面からの最大距離として測定される。
【0104】
したがって、インサートは、研削されていない下部サブ面を有すると述べられる。図2において、例えば、研削されていない下部サブ面が不連続ライン42を有するように見えるとしても、これは、湾曲線を示すこの特定の図面の単なる結果である。研削されていない実際の製品は、識別可能なラインを有さず、略平面部分から半径部分39に滑らかに移行する。
【0105】
上部サブ面36は、この例ではインサート14全体の周りに延在する張出し部分44を含む(図4A図4Cに例示される)。
【0106】
図2を参照すると、切削インサート14は、6つのコーナー刃46A、46B、46C、46D、46E、46F(以下、一般に「コーナー刃46」と呼ばれる)と、3つの同一の主副刃48A、48B、48C(以下、一般に「主副刃48」と呼ばれる)と、3つの同一の二次副刃47A、47B、47C(以下「二次副刃47」と呼ばれる)とを備えることができる。
【0107】
図5Bを参照すると、切削刃32に関連して、刃外接直径Dを有する仮想刃外接円Cと、刃内接直径Dを有する仮想刃内接円Cとが示されている。刃外接円Cは、円周方向に延びる切削刃32の全ての部分を囲む最小直径の円であり、一方、刃内接円Cは、円周方向に延びる切削刃32内に完全に収まる最大直径の円である。
【0108】
様々な特徴の寸法は以下のように示される。すなわち、各コーナー副刃46は半径R(図5C)を有することができ、各主副刃48は、境界コーナー副刃46の中心から測定された主副刃長Lを有することができ、主副刃長Lは、送り操作中に使用可能な実際の寸法である。さらに、(境界コーナー副刃46の中心から測定される)各二次副刃47は、二次刃長Lを有することができ、二次副刃47の各ランピング部分43、すなわち、その下に逃げ周面部分を有する部分、すなわち、その下に逃げ凹部53を有する部分は、有効ランプ刃長Lを有することができ、切削刃ランド幅Wは、図4Bに示される。
【0109】
図6を参照すると、切削インサート14のボイド体積Vは、ねじ穴30の境界によって規定される。具体的には、ねじ穴高さHは、ベース支持面26からねじ穴30の上縁49までと規定される(図4にも示される)。別の言い方をすれば、ボイド体積Vは、インサート軸Aに垂直な下面Pで規定されたねじ穴30の底部から、ねじ穴30とすくい面24との交点に垂直な上面Pで規定されたねじ穴30の頂部まで延在する、すなわち、上縁49の高さで延在するボイド体積として計算される。より正確には、上縁49は、湾曲したコーナー51とすくい面24との交点である。
【0110】
材料体積Vは、切削インサート14を構成する実際の材料の体積である。
【0111】
各側部当接面38は、好ましくは、図6に示す直角β1でベース支持面26から上方に延びている。
【0112】
切削インサート高さHは、ベース支持面26からすくい面24の最高点まで延在する(切削刃はすくい面24の一部であることに留意されたい)。
【0113】
張出し部分44は、ベース支持面26の上方の最小上部サブ面高さHに最下点60(図6)を有する。
【0114】
上部サブ面36(図6A)は、上向き方向に、ベース支持面26の上方の最小上部サブ面高さHから始まり、最小上部サブ面高さHは、インサート軸Aに平行に測定可能である。
【0115】
図2に見られるように、二次副刃47Aは、1つのコーナー副刃46Bに隣接する第一の刃部分54と、隣接するコーナー副刃46Aの方向に第一の刃部分54から延在する第二の刃部分56とを有する。図2図4Aおよび図4Bを参照すると、各二次副刃47の第二の刃部分56の下に逃げ凹部53が形成されている。逃げ凹部53は、二次副刃47に(下側に)沿った方向にできるだけ短くすることで、切削刃の隣接部分を弱めることなく所望のランピング機能能力を提供する。例えば、二次副刃47Aの第一の部分54の下には、図2および図4Aに示すように、張出し部分44に逃げ部がない。その結果、垂直に延在する平面状の非逃げ面55が得られ、この非逃げ面は、第一の刃部分54の下方に、これに沿って延在する。これとは対照的に、二次副刃47Aの第二の刃部分56の下方には、張出し部分44がベース支持面26の方向に内向きに傾斜しており、そのため、図2および図4Bに示すように、第二の刃部分56の下方に、これに沿って逃げ凹部53を形成する。別の言い方をすれば、逃げ凹部53は、二次副刃47に沿った方向にステップ形状を有するものとして説明することができる。
【0116】
ステップ形状により、切削刃の残部分を強化することができる。代替として、第二の副刃47に沿った方向に徐々に逃げ形状を使用することもできる。
【0117】
図4Bは、逃げ角εを示す。注目すべきは、断面図4Aおよび図4Cのすくい面24に隣接する他方の面は垂直であり、それによって、好ましいより強力な切削刃の支持を提供する。
【0118】
図5Cを参照すると、隣接する切削刃部分からの当接面への最大間隔57が、主副刃48に隣接して示されている。最小間隔59は、二次副刃47に隣接して示されている。より詳細には、逃げ凹部53に隣接している。
【0119】
ここで、図7A図8Cを参照すると、ポケット22は、シート当接面62と、シート当接面62に開口し、最小ポケット穴内接円Iおよび関連する最小ポケット穴径Dを規定するねじ付きポケット穴64を備え、シート当接面62に垂直な第一、第二、および第三の横方向当接面66A、66B、66C(集合的に「横方向当接面66」と呼ばれる)が示されている。
【0120】
横方向当接面66の間には、第一および第二の横方向凹部67A、67B(集合的に「横方向凹部67」と呼ばれる)がある。横方向凹部67の使用は、インサート14とポケット22との接触点を規定するのに役立つ。特に、接触点は、図8Aにハッチング線で示されている。
【0121】
ポケット穴64は、横方向当接面までの距離と比較して、同様に、断面を比較的大きくすることができる。これは、ポケット穴径Dと、ポケット穴64から横方向当接面66までの距離から分かる。
【0122】
第一、第二および第三の横方向当接面66A、66B、66Cは、好ましくは、インサートの当接面38と同じ直交内角β1で配向される。
【0123】
ねじ軸Aは、好ましくは、シート当接面62の中心からオフセットすることができ、すなわち、横方向当接面66が互いに最も近い場所(すなわち、全体的に68で指定される領域)にわずかに近接し、その結果、切削インサートをポケット22に保持するねじが切削インサートを横方向当接面に向かって付勢することになる。
【0124】
図7Aに示すように、ポケットは、ポケット傾斜角μによって示されるように、回転軸Aに関して前向き方向Dおよび切断方向Dに傾いていることが好ましい。ポケット傾斜角μは、好ましくは2°≦μ≦9°の条件を、より好ましくは5°≦μ≦8°の条件を満たすことができる。
【0125】
図7Cを参照すると、一方のシート当接面62の前縁72から延びる第一の仮想延長線Lは、他方のシート当接面62の前縁74から延びる第二の仮想延長線Lと並行とすることができる。中央工具平面Pは、回転軸Aを含み、第一の延長線Lと第二の延長線Lとの間に、それらに平行に配置され、こうして、各シート当接面62が中央工具平面Pに面するようになる。第一のシート距離DS1は、第一の延長線Lから中央工具平面Pまで規定される。第二のシート距離DS2は、第二の延長線Lから中央工具平面Pまで規定される。総距離DS3とは、第一のシート距離DS1と第二のシート距離DS2の合計である。
【0126】
総距離DS3は、インサートに対して相対的に規定することもできる。図1Cを参照すると、総距離DS3は切削インサート高さHよりも大きくなっている(図1Cではインサートが傾斜しているため、図6にのみ表示されている)。寸法が与えられると、空間に制限があることが理解されるであろう。インサートが、本配置の代わりにそれらの周面が互いに離れて置かれる場合(すなわち、図7Cの右側のインサートをページの下部に向かって、左側のインサートを上部に向かって移動させる場合)、(インサートを支持する材料が少ないので)ポケット22の工具ホルダの構造強度が弱まることも理解されるであろう。逆に、インサート14を逆方向に動かすと、縦溝内のチップ排出空間が不十分になる可能性がある。したがって、最も好ましい配置は、周面が互いに隣接していることである。
【0127】
図9Aおよび図9Bを参照すると、図9Bは、工具の正面端面図におけるように、着座した切削インサートの相対位置を示しており、切削インサート間には、小さな隙間しかない。これを軽減するために、インサートは、図9Aに示されるように、ポジティブな基本形状と、その位置決めが提供される(すなわち、切削刃は隣接せず、各インサートの周面は、他方のインサートの周辺部分の一部に隣接する)。このような特徴を使用することは、(工具ホルダの直径に対して)比較的大きなインサートを、比較的小さい外接切削直径の円C内に取り付ける1つの方法である。これらの特徴に対する比は、上述されている。
【0128】
図7Aおよび図7Dを参照すると、インサート14が近接しているために、長さに制約のある支持ウェブ70が提供されている。
【0129】
支持ウェブ70は、工具ホルダ12の前端13Bから後方に凹んだ最前点71A(その中心において、回転軸Aとも一致する)まで延びている。なお、図示の円形状71Bは、単に平面を示しているに過ぎない。図7Aに示されるように、最前面71Cは凹状に形成される。
【0130】
ねじ16は、取り付けられると、切削インサート14を固定し、それによって、ベース支持面26がシート当接面62に当接し、インサートの当接面38のうちの3つがポケットの3つの横方向当接面66に当接する。切削インサート14は、ポケット22内で、位置決めを3回繰り返すことができ、どの特定の当接面が任意の所与の時間に接触するかの正確な指定は重要ではないことが理解されよう。
【0131】
例えば、図1Aから、上部サブ面36は工具ホルダ12に接触せず、したがって、わずかに異なる切削刃を有するインサートを同じ工具ホルダ12に取り付けることができることに留意されたい。
【0132】
図1Bにおいて、送り操作のために、主切削副刃48は、ワークピース(図示せず)に接触する。切削深さAは、他のタイプのミーリング操作と比較して比較的浅くなる。
【0133】
なお、この非限定的な例では、主切削副刃48は、回転軸Aから離間している(間隔Fで例示)。これは、典型的には不利であるが、非常に小径のインサートミルに許容可能な切削幅Aを与える。
【0134】
ランピング操作の場合、ランピング部分43のみがワークピースに接触する(二次副刃47の残部分は使用されない)。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C