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特許7313362バインダ分布が最適化した二次電池用負極及びこれを含む二次電池
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  • 特許-バインダ分布が最適化した二次電池用負極及びこれを含む二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】バインダ分布が最適化した二次電池用負極及びこれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20230714BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230714BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20230714BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20230714BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/48
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020543752
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 KR2019011104
(87)【国際公開番号】W WO2020046026
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】10-2018-0103144
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0100358
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522151617
【氏名又は名称】エスケー オン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ビュン-ウク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ヒュン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン-ファン
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/115051(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/098021(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/230296(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/62
H01M 4/587
H01M 4/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体;及び前記負極集電体上に形成され、負極活物質、導電材、ゴム系バインダ及び水溶性高分子系バインダを含む負極合剤層を含む非水電解質二次電池用負極であって、
前記負極合剤層は、負極合剤層の総重量に対してゴム系バインダ1.0~2.5重量%、及び水溶性高分子系バインダ0.5~1.5重量%を含み、
前記負極合剤層は、負極集電体を基準として厚さ方向に10等分したとき、ゴム系バインダの全含量に対する0~3の間の区間におけるゴム系バインダの含量の比(C)と水溶性高分子系バインダの全含量に対する0~3の間の区間における水溶性高分子系バインダの含量の比(C)の割合(C/C)が1.0を超え、7~10の間の区間におけるC/Cが1.0未満である、非水電解質二次電池用負極。
【請求項2】
前記ゴム系バインダは、前記0~3の間の区間における含量が前記7~10の間の区間における含量より多い、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項3】
0~3の間の区間におけるC/Cは1.02~1.50の範囲であり、7~10の間の区間におけるC/Cは0.50~0.98の範囲である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項4】
0~3の間の区間におけるC/Cは1.07~1.48の範囲であり、7~10の間の区間におけるC/Cは0.52~0.95の範囲である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項5】
前記ゴム系バインダは、全区間の平均含量に比べて0~3の間の区間における含量がより大きく、7~10の間の区間における含量がより小さい、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項6】
前記ゴム系バインダは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素系ゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルアクリレートゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム、アクリル系ゴム及びシラン系ゴムからなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項7】
前記水溶性高分子系バインダは、カルボキシメチルセルロース、セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート及びこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項8】
前記負極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン及びケイ素酸化物からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項9】
前記導電材は、アセチレンカーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項10】
前記負極合剤層は、3~5の間の区間におけるC/Cが1.0を超え、5~7の間の区間におけるC/Cが1.0未満である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の負極を含む、非水電解質二次電池。
【請求項12】
前記負極合剤層は、3~5の間の区間におけるC/Cが1.0を超え、5~7の間の区間におけるC/Cが1.0未満である、請求項11に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用負極に関するものであって、より具体的には、二次電池の負極においてバインダ分布を改善することで、電池性能を向上させる技術である。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン、タブレット型PCなどの移動情報端末機の高機能化、小型軽量化が急速に進展している。これらの端末機の駆動電源として、高いエネルギー密度を有し、かつ高容量の非水電解質二次電池が広く用いられている。
【0003】
非水電解質二次電池の負極活物質としては、炭素材料が広く用いられているが、非水電解質二次電池に対する新たな高容量化への要求が高まっており、炭素材料より放電容量の大きいケイ素材料に対する関心が増えている。
【0004】
ケイ素材料を用いた非水電解質二次電池に関する技術として、特許第6128481号公報には、負極芯体上に、負極活物質と結着剤とを有する負極活物質層が形成された負極板を備える非水電解質二次電池において、上記負極活物質は、ケイ素酸化物と、炭素質物と、を有し、上記ケイ素酸化物と上記炭素質物との質量の和に対する上記ケイ素酸化物の質量が1~20質量%であり、上記ケイ素酸化物の酸素原子とケイ素原子との比O/Siが0.5~1.5であり、上記結着剤は、二重結合を有するゴムバインダからなる結着剤Aと、水溶性高分子化合物からなる結着剤Bと、を有し、上記結着剤Aは、上記負極活物質層の表面側より負極芯体側に多く存在する分布であり、上記結着剤Bは、少なくとも上記ケイ素酸化物の周囲に存在することを特徴とする、非水電解質二次電池が開示されている。
【0005】
上記特許文献では、SiOxが含まれた負極板において結着剤Aと結着剤Bのそれぞれの分布を限定しているが、これら相互間の含量については言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6128481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非水電解質二次電池の負極において、負極活物質間の結着力及び負極活物質と負極集電体間の結着力を保持する役割のために、ゴム系バインダと水溶性高分子系バインダを使用することが通常であるが、上記バインダのそれぞれが結着に及ぼす影響力を考慮して、電極位置別に各バインダの分布を最適化することにより、同一含量のバインダを使用する場合と比較して製品の品質及び性能を改善させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、負極集電体及び上記負極集電体の上に塗布されて形成され、負極活物質、導電材、ゴム系バインダ、及び水溶性高分子系バインダが上記負極集電体の上に塗布されて形成された負極合剤層を含む非水電解質二次電池用負極に関するものであって、上記負極合剤層は、負極合剤層の総重量に対してゴム系バインダ1.0~2.5重量%、及び水溶性高分子系バインダ0.5~1.5重量%を含み、上記負極合剤層は負極集電体を基準として厚さ方向に10等分したとき、ゴム系バインダの全含量に対する0~3の間の区間におけるゴム系バインダの含量の比(C)と水溶性高分子系バインダの全含量に対する0~3の間の区間における水溶性高分子系バインダの含量の比(C)との割合(C/C)が1.0を超え、7~10の間の区間におけるC/Cが1.0未満である、非水電解質二次電池用負極を提供する。
【0009】
上記ゴム系バインダは、0~3の間の区間における含量が7~10の間の区間における含量より多いことが好ましい。
【0010】
0~3の間の区間におけるC/Cは1.02~1.50の範囲であり、7~10の間の区間におけるC/Cは0.50~0.98の範囲であることが好ましく、0~3の間の区間におけるC/Cは1.07~1.48の範囲であり、7~10の間の区間におけるC/Cは0.52~0.95の範囲であることがさらに好ましい。
【0011】
上記ゴム系バインダは、全体平均含量に比べて0~3の間の区間の含量がより大きく、7~10の間の区間の含量がより小さいものであってもよい。
【0012】
上記ゴム系バインダは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素系ゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルアクリレートゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム、アクリル系ゴム、及びシラン系ゴムからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0013】
上記水溶性高分子系バインダは、カルボキシメチルセルロース、セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、及びこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0014】
上記負極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素酸化物からなる群から選択される少なくとも一つであってもよく、上記導電材は、アセチレンカーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、及び黒鉛からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0015】
上記負極合剤層は、3~5の間の区間におけるC/Cが1.0を超え、5~7の間の区間におけるC/Cが1.0未満であってもよい。
【0016】
さらに、本発明は上記のような負極を含む非水電解質二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明による負極は、負極合剤層と負極集電体との剥離現象を緩和させるとともに、電池性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】負極合剤層の厚さ方向へのゴム系バインダの含量分布によるリチウムイオンの拡散に対する概念を概略的に示した図である。
図2】(a)及び(b)は、比較例1において、全区間の平均SBR及びCMCの含量に対する各区間における含量の比(C/Cavg)及びC/Cを示すグラフである。
図3】(a)及び(b)は、実施例1において、全区間の平均SBR及びCMCの含量に対する各区間における含量の比(C/Cavg)及びC/Cを示すグラフである。
図4】比較例1及び実施例1の負極表面に対して蒸留水浸透による電極剥離実験による電極内部への蒸留水浸透、及びこれによる剥離現象を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、負極活物質とゴム系バインダ及び水溶性高分子系バインダが負極集電体の上に塗布されて形成された負極合剤層を含む非水電解質二次電池に関するものである。
【0020】
具体的に、本発明により提供される負極は、負極集電体及び上記負極集電体上に負極活物質、導電材、ゴム系バインダ、及び水溶性高分子系バインダが塗布されて形成された負極合剤層を含む。
【0021】
上記バインダは基本的に、負極活物質間の結着力、及び活物質と負極集電体間の結着力を保持する役割を遂行する。上記負極合剤層は、負極合剤層の総重量に対してゴム系バインダ1.0~2.5重量%、及び水溶性高分子系バインダ0.5~1.5重量%を含む。
【0022】
上記負極合剤層において、ゴム系バインダの総含量が1.0重量%未満含まれる場合には、負極活物質間の結合力が低下する恐れがあり、負極合剤層の延性不足により乾燥過程又は圧延過程でクラックが発生しやすく、2.5重量%を超える場合には、電池内の電子及びリチウムイオンの移動を阻害してセル抵抗が大きく増加するという問題がある。
【0023】
上記ゴム系バインダは特に限定しないが、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素系ゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルアクリレートゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム、アクリル系ゴム、及びシラン系ゴムからなる群から選択される少なくとも一つを使用することができる。
【0024】
一方、上記負極合剤層において、水溶性高分子系バインダの含量が0.5重量%未満含まれる場合には、負極活物質間の結合力を低下させるだけでなく、スラリーの粘度低下を招くため、スラリーの相安定性が低下し、コーティング時にエッジ(Edge)部の厚さが厚くなる等の問題がある。なお、水溶性高分子系バインダの含量が1.5重量%を超える場合には、スラリーの粘度が過度に上昇してコーティング作業性が低下するだけでなく、高分子系バインダの均一な溶解が難しくなり、マイクロゲル(micro-gel)が形成される等の問題がある。
【0025】
上記水溶性高分子系バインダは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、及びこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一つを使用することができる。
【0026】
一方、本発明の負極合剤層は、固形分重量を基準として、上記ゴム系バインダ及び水溶性高分子系バインダ以外に、負極活物質及び導電材を含む。上記負極活物質及び導電材は通常、負極合剤層の形成に使用される含量でそれぞれ含まれるものであり、本発明では特に限定しない。
【0027】
上記負極活物質は、黒鉛系物質、非黒鉛系物質、ケイ素酸化物を使用することができる。上記黒鉛系物質としては、天然黒鉛と人造黒鉛等が挙げられ、上記非黒鉛系物質としては、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。これらは、いずれか一つを単独で使用できることは言うまでもなく、2以上を混合して使用することもできる。
【0028】
上記導電材としては、アセチレンカーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛等が挙げられる。これらは、いずれか一つを単独で使用できることは言うまでもなく、2つ以上を混合して使用することもできる。
【0029】
負極合剤層は、上記のような負極活物質、導電材、ゴム系バインダ及び水溶性高分子系バインダの混合物に水を添加してスラリー化した後、製造されたスラリーを負極集電体に塗布し、乾燥することで製造される。このとき、上記スラリーを製造するためには、特に限定するものではないが、スラリーの全重量に対して水、例えば、蒸留水を40~60重量%の範囲で含むことができる。
【0030】
本発明により得られた負極合剤層は、水溶性高分子系バインダ及びゴム系バインダにより負極活物質の相互間を結着させ、かつ、負極活物質を負極集電体に結着させる。
【0031】
上記水溶性高分子系バインダは水分との親和度が高い性質を有するが、これらが水分に晒される場合には水分を吸着することで、膨潤現象が発生するようになる。このような水溶性高分子系バインダが負極合剤層と負極集電体の界面に相対的に多く存在する場合には、負極活物質、バインダ及び負極集電体の相互間に作用する結合の一部が、水分及びバインダの相互間に作用する結合に代わり、これにより負極活物質と負極集電体間の結着力を低下させる結果をもたらし得る。このような結着力の低下は、電解液が充填された状態で負極集電体と負極合剤層間の剥離を引き起こす可能性がある。
【0032】
一方、ゴム系バインダは、水分との親和度が低い性質を有するため、このような水分吸着による結着力低下の問題を大きく引き起こさない。したがって、負極集電体に近い区間では、水溶性高分子系バインダよりはゴム系バインダを使用することにより、基材、すなわち、負極集電体と負極活物質間の結着力を向上させることが好ましい。
【0033】
しかし、上記ゴム系バインダは、小さい粒子の形で負極活物質の間に不均一に存在するが、負極合剤層内、特に負極合剤層の表面にこのようなゴム系バインダが多く存在すると、負極活物質の間の空隙を塞ぐようになり、正極から伝達されるリチウムイオンが負極の内部に拡散することを阻害する可能性がある。
【0034】
上記ゴム系バインダの含量分布によるリチウムイオンの拡散に対する概念を図1に概略的に示した。図1に示したように、ゴム系バインダが負極合剤層の表面に多量分布する場合には、リチウムイオンの伝達を妨げ、リチウムイオンが負極の内部に拡散することを阻害するという問題を引き起こすようになる。
【0035】
その結果、電池抵抗が上昇したり高率充電する際に、電極の表面からのリチウム塩の析出により充放電効率を低下させる可能性がある。しかし、表面に存在するゴム系バインダの量が少ない場合には、リチウムイオンが容易に負極の内部に拡散でき、かかる問題を防止することができる。
【0036】
このように、ゴム系バインダ及び水溶性高分子系バインダのそれぞれは、結着に及ぼす影響力と電池性能に及ぼす影響力とが異なるため、このような影響力を考慮して、電極位置ごとに各バインダの分布を最適化することで、製品の品質及び性能を同時に向上させる。
【0037】
そこで、本発明は、負極合剤層において、活物質間の結合力を阻害しない範囲内で、集電体の付近では、合剤層と集電体との剥離現象を緩和させるためにゴム系バインダの役割を増加させ、合剤層の表面では、電池性能を向上させるために水溶性高分子系バインダの役割を増加させた負極を提供する。
【0038】
より具体的に、本発明の上記負極合剤層は、集電体を基準として厚さ方向に10等分したとき、0~3の間の区間においてゴム系バインダの含量比(C)と水溶性高分子系バインダの含量比(C)の割合(C/C)が1.0を超え、7~10の間の区間におけるC/Cが1.0未満であることが好ましい。より好ましくは、上記0~3の間の区間においてC/Cは1.02~1.50の範囲、さらに好ましくは1.07~1.48であってもよく、7~10の間の区間におけるC/Cは0.50~0.98の範囲、またさらに好ましくは0.52~0.95であってもよい。このとき、上記ゴム系バインダ又は水溶性高分子系バインダの含量比、C又はCは、当該区間に含まれた各バインダの含量を全区間に含まれたバインダの含量で除した値を意味する。
【0039】
各区間を0~3の間、そして7~10の間に限定した理由は、本発明において改善しようとする製品の品質及び性能が合剤層の両側界面の付近における特性と関連するものであり、これらの区間でのみ上記条件を満たしても、所望する水準の特性を十分に実現できるためである。
【0040】
このとき、上記ゴム系バインダは0~3の間の区間における含量が7~10の間の区間における含量より多いことが好ましい。また、全区間におけるゴム系バインダの平均含量に比べて上記0~3の間の区間における含量がより大きく、7~10の間の区間の含量がより小さいことが好ましい。そうでない場合、0~3の間の区間においてC/Cが1.0超過、7~10の間の区間においてC/Cが1.0未満である分布を同時に満たすためには、各区間において水溶性高分子系バインダの含量変化の幅を大きくする必要があるが、非水溶性のゴム系バインダとは異なり、水溶性高分子系バインダは含量変化に応じて製造されるスラリーの粘度が大きく変わり得るため、スラリーの粘度を一定に保持しなければならないコーティング工程で不良を引き起こす可能性が高くなるという問題がある。
【0041】
さらに、3~5の間の区間において、ゴム系バインダの含量比(C)と水溶性高分子系バインダの含量比(C)の割合(C/C)が1.0を超え、5~7の間の区間におけるC/Cが1.0未満であってもよい。
【0042】
このような本発明によると、負極合剤層内のバインダ分布において、ゴム系バインダは負極合剤層の表面より負極集電体の付近における含量を高く制御し、水溶性高分子系バインダは負極集電体の付近より負極合剤層の表面における含量を高く制御することで、負極合剤層と負極集電体との剥離現象を緩和させるとともに、電池性能を向上させることができる。
【0043】
上記負極合剤層の形成は特に限定するものではない。例えば、上記のように、0~3の間の区間に適したバインダ含量を有するようにする負極合剤層形成スラリー(スラリー1)及び7~10の間の区間に適したバインダ含量を有するようにする負極合剤層形成スラリー(スラリー2)をそれぞれ製造した後に、これらを負極集電体として銅箔上にスラリー1及びスラリー2を同時又は順次塗布した後、一度に乾燥して形成することができる。または、上記スラリー1の塗布後にスラリーを乾燥し、次いで、スラリー2を塗布した後、乾燥して製造することも可能である。
【実施例
【0044】
実施例
以下、本発明の実施例を挙げてより具体的に説明する。しかし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0045】
実施例1
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が1.8%、1.2%、96%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約50%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー1を製造した。
【0046】
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が1.2%、1.2%、96.6%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約52%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー2を製造した。
【0047】
上記負極スラリー1を銅箔(厚さ8μm)の一面に60μmの厚さで塗布して第1合剤層を形成した。次いで、上記第1合剤層上に負極スラリー2を60μmの厚さで塗布して第2合剤層を形成した。
【0048】
これにより、銅箔の表面を基準として厚さ方向に0~5の間の区間の第1合剤層及び5~10の間の区間の第2合剤層の構造で形成した後、4つの区域で形成された乾燥炉において次の条件のように乾燥した。
【0049】
1区域の温度100℃、風速0.42m/s、乾燥時間20秒
2区域の温度110℃、風速0.47m/s、乾燥時間20秒
3区域の温度115℃、風速0.50m/s、乾燥時間20秒
4区域の温度125℃、風速0.77m/s、乾燥時間20秒
【0050】
その後、上記第1及び第2合剤層を圧延して、最終厚さが80μmの負極を製造した。
【0051】
実施例2
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が1.8%、1.3%、95.9%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約52%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー1を製造した。
【0052】
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が1.2%、1.3%、96.5%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約52%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー2を製造した。
【0053】
その後、実施例1と同じ方法により銅箔の表面に負極合剤層を有する負極を製造した。
【0054】
実施例3
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が1.8%、1.2%、96%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約50%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー1を製造した。
【0055】
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が0.8%、1.2%、97%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約50%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー2を製造した。
【0056】
その後、実施例1と同じ方法により銅箔の表面に負極合剤層を有する負極を製造した。
【0057】
実施例4
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が1.8%、1.2%、96%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約50%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー1を製造した。
【0058】
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が0.8%、1.2%、97%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約50%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー2を製造した。
【0059】
上記負極スラリー1を銅箔(厚さ8μm)の一面に60μmの厚さで塗布した後、4つの区域で形成された乾燥炉において次の条件のように乾燥して第1合剤層を形成した。
【0060】
1区域の温度130℃、風速2.01m/s、乾燥時間10秒
2区域の温度140℃、風速2.01m/s、乾燥時間10秒
3区域の温度140℃、風速0.60m/s、乾燥時間10秒
4区域の温度150℃、風速1.01m/s、乾燥時間10秒
【0061】
次いで、上記第1合剤層上に負極スラリー2を60μmの厚さで塗布した後、上記第1合剤層の形成と同様に、4つの区域で形成された乾燥炉において同一の条件で乾燥して第2合剤層を形成した。
【0062】
これにより、銅箔の表面を基準として厚さ方向に0~5区間の第1合剤層及び5~10区間の第2合剤層の構造で形成した。
【0063】
その後、上記第1及び第2合剤層を圧延して、最終厚さが80μmの負極を製造した。
【0064】
実施例5
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が1.6%、1.2%、96.2%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約50%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー1を製造した。
【0065】
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が1.4%、1.2%、96.4%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約50%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー2を製造した。
【0066】
上記負極スラリー1を銅箔(厚さ8μm)の一面に60μmの厚さで塗布した後、4つの区域で形成された乾燥炉において次の条件のように乾燥して第1合剤層を形成した。
【0067】
1区域の温度130℃、風速2.01m/s、乾燥時間10秒
2区域の温度140℃、風速2.01m/s、乾燥時間10秒
3区域の温度140℃、風速0.60m/s、乾燥時間10秒
4区域の温度150℃、風速1.01m/s、乾燥時間10秒
【0068】
次いで、上記第1合剤層上に負極スラリー2を60μmの厚さで塗布した後、上記第1合剤層の形成と同様に、4つの区域で形成された乾燥炉において同一の条件で乾燥して第1合剤層を形成した。
【0069】
これにより、銅箔の表面を基準として厚さ方向に0~5の間の区間の第1合剤層及び5~10の間の区間の第2合剤層の構造で形成した。
【0070】
その後、上記第1及び第2合剤層を圧延して、最終厚さが80μmの負極を製造した。
【0071】
比較例1
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が1.5%、1.2%、96.3%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約50%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー1を製造した。
【0072】
上記負極スラリー1を銅箔(厚さ8μm)の一面に120μmの厚さで塗布した後、4つの区域で形成された乾燥炉において次の条件のように乾燥して厚さ区間が0~10の間の区間の第1合剤層を形成した。
【0073】
1区域の温度100℃、風速0.42m/s、乾燥時間20秒
2区域の温度110℃、風速0.47m/s、乾燥時間20秒
3区域の温度115℃、風速0.50m/s、乾燥時間20秒
4区域の温度125℃、風速0.77m/s、乾燥時間20秒
【0074】
このように製造された合剤層を圧延して、最終厚さが80μmの負極を製造した。
【0075】
比較例2
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が1.5%、1.3%、96.2%、及び1%となるように混合した後、固形分重量が約52%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー1を製造した。
【0076】
上記負極スラリー1を銅箔(厚さ8μm)の一面に120μmの厚さで塗布した後、比較例1と同一の条件で乾燥して厚さ区間が0~10区間の第1合剤層を形成した。
【0077】
このように製造された第1合剤層を圧延して、最終厚さが80μmの負極を製造した。
【0078】
比較例3
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が0.8%、1.2%、97%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約50%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー1を製造した。
【0079】
上記負極スラリー1を銅箔(厚さ8μm)の一面に120μmの厚さで塗布した後、比較例1と同一の条件で乾燥して厚さ区間が0~10区間の第1合剤層を形成した。
【0080】
このように製造された第1合剤層を圧延して、最終厚さが80μmの負極を製造した。
【0081】
比較例4
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が1.8%、1.2%、96%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約50%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー1を製造した。
【0082】
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が1.2%、1.2%、96.6%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約52%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー2を製造した。
【0083】
上記負極スラリー1を銅箔(厚さ8μm)の一面に60μmの厚さで塗布し、第1合剤層を形成した。次いで、上記第1合剤層上に負極スラリー2を60μmの厚さで塗布して第2合剤層を形成した。
【0084】
これにより、銅箔の表面を基準として厚さ方向に0~5の間の区間の第1合剤層及び5~10の間の区間の第2合剤層の構造で形成した後、4つの区域で形成された乾燥炉において次の条件のように乾燥した。
【0085】
1区域の温度130℃、風速2.01m/s、乾燥時間10秒
2区域の温度140℃、風速2.01m/s、乾燥時間10秒
3区域の温度140℃、風速0.60m/s、乾燥時間10秒
4区域の温度150℃、風速1.01m/s、乾燥時間10秒
【0086】
その後、上記第1及び第2合剤層を圧延して、最終厚さが80μmの負極を製造した。
【0087】
比較例5
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が1.4%、1.6%、96%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約50%となるように蒸留水を入れ、100分間混合した。
【0088】
しかし、粘度が高くてスラリーが得られず、負極製造のための以後の過程は中断した。
【0089】
比較例6
バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、A)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、B)、そして負極活物質として人造黒鉛、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ重量比が2%、0.4%、96.6%及び1%となるように混合した後、固形分重量が約50%となるように蒸留水を入れ、100分間混合して負極スラリー1を製造した。
【0090】
上記負極スラリー1を銅箔(厚さ8μm)の一面に120μmの厚さで塗布した。しかし、スラリーの粘度が低くてスラリーが安定的に銅箔上にコーティング層を形成しない現象が発生し、負極製造のための以後の過程は中断した。
【0091】
合剤層内のバインダ分布測定
実施例1~5及び比較例1~4で製造された負極の合剤層について、厚さ方向によるバインダの分布を測定し、その結果を表1に示した。
【0092】
上記バインダ分布測定は、負極合剤層をOsOで電極を染色(staining)した後、電極の断面を切断してSEM-EDAX分析を行った。
【0093】
SEM分析において、合剤層の断面におけるOs元素の分布は、ゴム系バインダの分布を示し、Na元素の分布は水溶性バインダの分布を示すものである。
【0094】
このとき、表1中、Cは全SBR含量に対して所定の区間(集電体からの厚さ方向0~3の間の区間及び7~10の間の区間)に含まれたSBRの比を示し、Cは全CMC含量に対して所定の区間(集電体からの厚さ方向0~3の間の区間及び7~10の間の区間)に含まれたCMCの含量の比を示し、C/Cは所定の区間(集電体からの厚さ方向0~3の間の区間及び7~10の間の区間)に含まれたCに対するCの比を示す。
【0095】
さらに、実施例1及び比較例1において、全区間の平均SBRの含量及びCMCの含量に対する各区間における含量の比(C/Cavg)及びC/C図2及び図3にそれぞれ示した。図2及び図3において、(a)はC/Cavgのグラフであり、(b)はC/Cのグラフである。
【0096】
集電体の接着力測定
実施例1~5及び比較例1~4で製造された電極における合剤層と集電体との接着力を測定するために、幅18mmの3Mテープを各電極の上に貼り付け、90度剥離(peel)テストを行った。
【0097】
合剤層と集電体が分離する際のロード(load)値を測定し、これをテープの幅で除することで集電体の接着力を計算し、その値を表1に示した。
【0098】
電極剥離の有無の測定
実施例1~5及び比較例1~4で製造された電極を5cm×5cmのサイズに切り出した後、四隅をテープで固定した。
【0099】
上記電極の合剤層の上に蒸留水を約1ml滴下した後、30分間放置した。
【0100】
蒸留水が合剤層の内部に浸透して合剤層と集電体との剥離が発生するか否かを目視で観察し、剥離の有無を○(剥離)及び×(未剥離)で表1に示した。
【0101】
電池の充/放電効率測定
実施例1~5及び比較例1~4で製造された電極を用いて電池を作製した。
【0102】
各作製された電池を用いて1.5CのCC(Constant Current)モードで電圧が4.2Vに到達するまで充電し、充電された容量を確認した。
【0103】
その後、0.3CのCC(Constant Current)モードで電圧が2.5Vに到達するまで放電し、放電容量を確認した。
【0104】
このようにして測定された放電容量を充電容量で除して充/放電効率を計算した。これにより得られた計算結果を表1に示した。
【0105】
【表1】
【0106】
上記表1と図2及び図3の結果から分かるように、集電体側に近接した0~3の区間において、SBRの含量比(C)がCMCの含量比(C)に比べて大きい場合(C/C>1)である実施例1~5の電極は充放電効率に優れており、蒸留水に対する電極の剥離現象が発生しなかった。しかし、比較例1及び2の場合には、集電体の付近である0~3の区間において、CMCの含量比(C)がSBRの含量比(C)より高くて、水によるバインダ膨潤現象による電極剥離現象が発生した。比較例1及び実施例1の負極表面に対して蒸留水浸透による電極剥離実験を行った。このとき、実施例1及び比較例1の電極に対して電極内部への蒸留水浸透現象を撮影し、その写真を図4に示した。
【0107】
図4から分かるように、比較例1の場合には、CMCの含量比が高くて蒸留水が容易に浸透する結果となったが、実施例1の場合には、蒸留水が容易に浸透しないことが分かる。これにより、本発明の場合、水分浸透による集電体からの電極剥離を抑制できることが分かる。
【0108】
そして、比較例1~4の負極は充放電効率が実施例1~5の負極に比べて低い結果を示した。比較例1~4の場合には、負極表面側である7~10の区間において、SBRの含量比(C)が高いが、多量のSBR粒子が活物質の表面空隙を埋め、リチウムイオンが負極の内部に拡張することを妨げるためと考えられる。
【0109】
したがって、本発明による実施例1~5の負極においては、同一含量のバインダを使用しても、電極位置ごとに各バインダの分布を最適化することにより、製品の品質だけでなく、性能の改善にも寄与することができる。
【0110】
比較例3のように、SBRの含量が低い場合には、集電体に対する接着力が著しく低い結果を示し、集電体からの電極合剤層又は負極活物質の剥離現象が発生するという問題があることが分かる。比較例3は、バインダの分布を制御した負極スラリーを使用したものではないものの、SBRの含量が過度に低い場合には、区間別のバインダ含量を制御しても、このような集電体に対する接着力が著しく低くなることは予測しやすい。
【0111】
一方、比較例4は、実施例1と同じ負極スラリー1及び負極スラリー2を使用しているが、乾燥条件を実施例1と異なるように行った場合を示すものである。比較例4と実施例1の結果から分かるように、同一の負極スラリーを使用したにもかかわらず、乾燥条件に応じて負極合剤層における厚さ方向の区間別に存在するバインダの分布が異なることが分かる。
【0112】
このような結果から、乾燥工程を制御することにより、本発明のように区間別バインダの含量が制御された負極合剤層を有する負極を製造できることが分かる。
図1
図2
図3
図4