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特許7313383容器のヘッドスペース内のガスを検出するための装置
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  • 特許-容器のヘッドスペース内のガスを検出するための装置 図1
  • 特許-容器のヘッドスペース内のガスを検出するための装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】容器のヘッドスペース内のガスを検出するための装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20230714BHJP
   G01N 21/39 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01N21/39
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020567978
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2019064696
(87)【国際公開番号】W WO2019234118
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】00738/18
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】513032334
【氏名又は名称】ヴィルコ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ヘルドリチュカ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・カール
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-233701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0286054(US,A1)
【文献】特表2007-508567(JP,A)
【文献】特表2017-535761(JP,A)
【文献】特開2010-038846(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03650840(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(10)のヘッドスペースの第1のガスの濃度を測定するため、および/または圧力を測定するための装置のための送信機‐受信機構成(1)であって、前記送信機‐受信機構成は、前記ヘッドスペースを収容する測定ゾーン(11)を画定し、前記送信機‐受信機構成は、
前記第1のガスの吸収線を含む波長範囲をカバーする電磁放射(5)を放出するよう構成された送信機(2)と、
前記波長範囲の電磁放射(5’)を受信するよう構成された受信機(3)であって、前記受信機および前記送信機は、前記送信機から前記測定ゾーンを横切り前記受信機までの前記電磁放射の放射経路を画定するように互いに対して配向される、受信機(3)と、
前記送信機‐受信機構成を前記装置または充填および/または閉鎖機に固定するための固定要素(7)と、
電気制御可能なアクチュエータ構成(8)であって、
前記固定要素に対する前記送信機および前記受信機の共通の直進および/または回転変位、
前記受信機に対する前記送信機の相互の相対的な直進および/または回転変位
の少なくとも一方を生じるように構成された電気制御可能なアクチュエータ構成(8)と、
を備え、
前記送信機‐受信機構成が、内部空間を画定しかつ外部空間を向く外面を有するケーシング(9)をさらに備え、前記外部空間が前記測定ゾーンを含み、前記電気制御可能なアクチュエータ構成が前記内部空間内に配置されている
送信機‐受信機構成(1)。
【請求項2】
前記第1のガスが非不活性ガスである、請求項1に記載の送信機‐受信機構成(1)。
【請求項3】
前記第1のガスが酸素であり、前記波長範囲が760nm波長を含む、請求項2に記載の送信機‐受信機構成(1)。
【請求項4】
前記送信機(2)は、前記波長範囲の電磁放射を放出するよう適合された調整可能なダイオードレーザーを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の送信機‐受信機構成(1)。
【請求項5】
前記送信機(2)が前記内部空間に配置され、前記波長範囲を透過し、かつ前記外面の少なくとも一部を形成する窓(6)によって前記測定ゾーンから分離され、
前記受信機が前記内部空間に配置され、前記波長範囲を透過し、かつ前記外面の少なくとも一部を形成する前記窓(6)またはさらなる窓(6’)によって前記測定ゾーンから分離される、請求項1~4のいずれか一項に記載の送信機‐受信機構成(1)。
【請求項6】
前記外面の少なくとも主要部分は、過酸化水素に耐性のある材料によって形成され、および/または前記外面は、1.6マイクロメートル以下の算術平均粗さを有し、および/または前記外面にはくぼみがなく、および/または前記外面は、水平面が存在しない配向とされた幾何学形状を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の送信機‐受信機構成(1)。
【請求項7】
前記ケーシングは気密である、請求項のいずれか一項に記載の送信機‐受信機構成(1)。
【請求項8】
前記電磁放射の前記放射経路に沿った領域を第2のガスで溢れさせるように構成された第2のガス源をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載の送信機‐受信機構成(1)。
【請求項9】
容器のヘッドスペースの第1のガスの濃度を測定する、および/または圧力を測定するための装置(30)であって、前記装置は、
請求項1~のいずれか一項に記載の送信機‐受信機構成と、
前記受信機に動作可能に接続され、かつ前記受信によって受信された前記電磁放射に基づいて、前記ヘッドスペースの前記第1のガスの濃度および/または圧力を示す数値を生成するよう構成された評価ユニットと、
を備える、装置(30)。
【請求項10】
容器に充填するための充填および/または閉鎖機であって、液体または固体の内容物を容器に充填するための充填ステーションと、請求項に記載の装置(30)と、前記容器を前記充填ステーションから前記装置の測定ゾーンに輸送するよう構成されたコンベヤシステムと、を備える充填および/または閉鎖機。
【請求項11】
容器のヘッドスペースの第1のガスのガス濃度を決定する、および/または圧力を測定する方法であって、前記方法は、請求項に記載の装置を使用し、前記方法は、前記電気制御可能なアクチュエータ構成によって前記送信機および/または受信機の位置または空間的方向を調整するステップを備える、方法。
【請求項12】
液体または固体の内容物の上のヘッドスペースに気相を含む、テスト済みの閉鎖容器を製造する方法であって、前記気相は、所定のテスト制限値以下の第1のガスのガス濃度を有し、前記方法は、
前記内容物を前記容器に充填するステップであって、それにより前記内容物がない前記ヘッドスペースを確立するステップと、
第2のガス、特に不活性ガスを前記容器に導入することにより先の気相を前記容器の内部から移動させるステップと、
充填済容器を閉鎖手段によって閉鎖するステップと、
請求項に記載の装置を用いて、充填済および閉鎖容器の前記ヘッドスペースの前記第1のガスのガス濃度を決定するステップと、
測定された前記第1のガスのガス濃度が前記テスト制限値を超えている場合に前記充填済および閉鎖容器を拒否するステップ、またはそうでなければ、前記充填済および閉鎖容器をテスト済み閉鎖容器として許可するステップと、
を備える、方法。
【請求項13】
前記第1のガスが酸素である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記電気制御可能なアクチュエータ構成によって前記送信機または受信機を移動または回転することにより、前記測定ゾーンを前記容器の前記ヘッドスペースにオーバーラップさせるさらなるステップが充填済容器の前記ヘッドスペースの前記第1のガスのガス濃度を決定するステップの前に実行される、請求項1113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法のステップが請求項10に記載の充填および/または閉鎖機によって実行され、充填済容器が連続的に前記測定ゾーンを通過する、または処理システムが充填済容器のサンプルを個別に選択し、前記測定ゾーンに移動する、請求項1114のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で取り上げる本発明は、特定のガスの濃度を測定するための、および/または容器のヘッドスペース内の圧力を測定するための装置に関する。さらなる態様では、本発明は、特定のガスの濃度を測定する方法、および/または装置を利用して容器のヘッドスペース内の圧力を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスとの接触、特に酸素などの不活性でないガスとの接触は、時間の経過とともに食品または医薬品の品質を低下させる可能性があることが知られている。例えば、医薬品の容器内の残留酸素量が少ないことは、それぞれの製品の十分に長い貯蔵寿命を達成するために不可欠である。これを実現するために、不活性ガス通常は窒素)がパッケージングプロセスの過程で容器に導入され、容器から空気を排出する。敏感な医薬品の場合、残留酸素の割合に通常必要な制限は、酸素の1~2%の範囲である。要件は、残留酸素の0.5%以下の方向に向かう傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
包装後の容器の残留酸素含有量は、オペレーターがオフラインで確認することができる。この目的のために、個々のサンプルが包装ラインから取り出される。破壊的または非破壊的分析方法を適用して、充填および密閉された容器内の残留酸素の量を決定することができる。ただし、これはプロセスの比較的遅い時点であり、誤動作の場合、多数の容器が影響を受ける可能性がある。
この場合、一部のサンプルの残留酸素含有量を分析しても、経済的損失を防ぐことができない場合がある。したがって、プロセスの早い段階で充填された容器のヘッドスペース内のガス濃度を測定することは、高スループットの充填および/または閉鎖機で望まれている。ただし、特に高スループットの充填および/または閉鎖機では、スペースが限られており、追加の処理または測定ステップを実装するのは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、最先端技術の欠点を回避する装置を提供することである。
【0005】
この目的は、請求項1に記載の送信機-受信機構成によって達成される。
【0006】
これは、容器のヘッドスペース内の第1のガスの濃度を測定するための、および/または圧力を測定するための装置のための送信機-受信機構成である。送信機-受信機構成は、ヘッドスペースを収容するための測定ゾーンを定義し、送信機-受信機構成は、
- 第1のガスの吸収線を含む波長範囲をカバーする電磁放射を放出するように構成された送信機、
- 波長範囲の電磁放射を受信するように構成された受信機であって、受信機と送信機は、送信機から測定ゾーンを横切って受信機までの電磁放射の放射経路を定義するように、互いに対して配向されている、受信機、
- 送信機-受信機構成を装置または充填機に固定するための固定要素、および
- 少なくとも以下の1つを引き起こすように構成された電気制御可能なアクチュエータ構成、
- 固定要素に対する送信機および受信機の共通の直進および/または回転変位、
- 受信機に対する前記送信機の相互の相対的な直進および/または回転変位、
- 固定要素に対する送信機および受信機の空間的向きの変化、および
- 受信機の空間的方向に対する送信機の空間的方向の変化
を備える。
【0007】
発明者は、容器内の残留ガス、特に酸素などの非不活性ガスの割合が製品の品質にとって重要であるため、容器に不活性ガスを充填する瞬間のできるだけ近くで容器内の残留ガスの量を監視する必要があることを認識した。この目標は、本発明による送信機-受信機構成によって達成される。具体的には、送信機-受信機構成により、オペレーターが手動で介入することなく、特定の容器のタイプと寸法を調整することができる。これには、送信機-受信機構成をコンパクトに構築でき、スペースが限られている場所に取り付けることができるという利点がある。
【0008】
電気制御可能なアクチュエータ構成は、1つまたは複数のサーボまたはステップモーター駆動の直線軸または回転軸を含み得る。アクチュエータ構成は、送信機と受信機を一共に、分析されるヘッドスペースの垂直位置に対応する垂直位置に移動させるように構成された垂直軸を含み得る。水平軸により、ヘッドスペースを通る経路が最大になる位置、または最小の反射が発生する位置に、入射する電磁放射を向けることができる。容器の壁の屈折特性を補正するために、出力ビームの角度を調整することができる。さらに、ビームを形成し、それを散乱させ、および/またはその形状および/またはその時間的および/または空間的コヒーレンスを変更するために、光学要素を適用することができる。
【0009】
調整可能な位置は、バイアル、シリンジ、カートリッジ、ボトルなどの容器のタイプによって異なる。容器の大きさや充填高さにより異なる。一例として、輸送手段の平面から10mmから120mmの範囲の垂直位置の調整は、垂直に向けられたサーボまたはステップモーター駆動の直線軸によって可能となる。
【0010】
したがって、電気制御可能なアクチュエータ構成は、固定要素に対する送信機および受信機の共通の変位、受信機に対する送信機の変位、固定要素に対する送信機および受信機の空間的方向の変化、および受信機の空間的方向に対する送信機の空間的方向の変化の少なくとも一つを生じさせるように構成される。
【0011】
送信機または受信機の変位により、その位置が変化する。これは、デカルト座標系で定義できる。空間的方向の変化は、例えば、デカルト座標系の軸の周りの回転によって達成され得る。これは、送信機または受信機を傾けることとして説明され得る。
【0012】
一例として、電磁放射は赤外線放射であり得る。赤外線吸収分光法は既知の方法であり、容器内の特定の監視対象ガスの濃度と容器内の圧力を決定するのに適している。この方法では、非侵襲的な方法で、つまり測定装置の一部を容器に入れる必要なしに、容器のヘッドスペース内のガスの濃度および/または圧力を決定することができる。赤外線のみが容器の壁を通過し、ヘッドスペースの気相を通過するという利点がある。赤外線の放射強度は、さまざまな種類のガスに固有の吸収帯で減少する。第1ガスの特徴的な吸収帯が波長範囲内にあるように選択することができる。
【0013】
送信機-受信機構成の一実施形態では、第1のガスは非不活性ガスである。
【0014】
容器内の非不活性ガスの割合は、製品の品質にとって重要であるため、この量を監視する必要がある。
【0015】
送信機-受信機構成の実施形態では、第1のガスは酸素であり、波長範囲は、波長760nmを含む。
【0016】
医薬品や食品を包装する際には、低酸素濃度を確保することが特に重要である。波長760nm付近の特徴的な吸収線を観察することで、分子状酸素を確実に検出することができる。
【0017】
送信機-受信機構成の一実施形態では、送信機は、波長範囲の電磁放射を放出するように適合された調整可能なダイオードレーザーを含む。
【0018】
調整可能なダイオードレーザーを使用すると、第1のガスを検出するために使用される全波長範囲を通して、調整可能なダイオードレーザーによって経時的に放出される比較的狭い波長帯域の中心波長を掃引することによって、所望の波長範囲をカバーすることができる。調整可能なダイオードレーザーを使用すると、レーザー放射の帯域幅よりも広い波長範囲のスキャンが可能になり、その結果、さまざまな波長の波長データセット全体の強度を提供することができる。これを実現するために、レーザーの波長を鋸歯状プロファイルに従って変調することができる。この変調は、受信機側に到着する信号のロックイン増幅または高次高調波分析を可能にするために、たとえば高速正弦波を使用した追加の変調とさらに重ね合わせることができる。
【0019】
一実施形態では、送信機-受信機構成は、内部空間を規定し、外部空間に向かって外面を有するケーシングをさらに含み、外部空間は、測定ゾーンを含み、電気制御可能なアクチュエータ構成は、内部空間に配置される。
【0020】
測定ゾーンをアクチュエータ構成から分離することで、起こりうる清浄度の問題が軽減される。通常、測定ゾーンと容器が充填される場所との間に開放空間が存在する。アクチュエータ部材の動作時に発生する粒子は、ケーシングの内部空間に保持される。さらに、電気制御可能なアクチュエータ構成により移動または回転する可動部との不本意な衝突を防止するため、ケーシングにより操作の安全性が高まる。
【0021】
送信機-受信機構成の一実施形態では、送信機は内部空間に配置され、波長範囲を透過し、外面の少なくとも一部を形成する窓によって測定ゾーンから分離され、受信機は、内部空間に配置され、波長範囲を透過し、外面の少なくとも一部を形成する窓によって、またはさらなる窓によって測定ゾーンから分離されている。
【0022】
この実施形態は、送信機および受信機を測定ゾーンからさらに分離することを可能にする。
【0023】
別の実施形態では、ケーシングは、複数の部分を含み得、内部空間は、複数の部分空間を含み得、特に送信機は、前記内部空間の第1の部分空間に配置され、受信機は、前記内部空間の第2の部分空間に配置され、第2の部分空間は、第1の部分空間から分離されている。
【0024】
送信機-受信機構成の実施形態では、外面の少なくとも主要部分は、過酸化水素に耐性がある材料によって形成され、および/または前記外面は、1.6マイクロメートル以下の算術平均粗さを有し、および/または前記外面にはくぼみがなく、および/または前記外面は、水平面を回避する配向が存在する形状を有する。
【0025】
過酸化水素に耐性のある材料によって形成される外面を用いて、送信機-受信機構成は、送信機-受信機構成を損傷することなく、蒸気過酸化水素が適用される低温滅菌プロセスを受けることができる。適切な材料は、例えばステンレス鋼またはサファイアである。後者はさらに透明な窓にも適している。発明者は、挙げられた外面の特性が、送信機-受信機構成のクリーンルームの適合性に個別におよび組み合わせて寄与することを認識した。したがって、この実施形態による送信機-受信機構成は、クリーンルーム環境を必要とする充填および/または閉鎖ステーションの近くに配置できるという利点を有する。算術平均粗さは、R値とも呼ばれ、評価長内の中心線の周りの偏差から決定されたフィルター処理された粗さプロファイルの算術平均値である。 1.6マイクロメートル以下のR値がクリーンルーム環境で使用される装置の表面に適している。装置または充填機に取り付ける場合、ケーシングの外面は、少なくとも主要部分が水平にならないように取り付けることができる。これを実現するために、外面を湾曲させることができる。一例として、ケーシングは、アーチ型の天井を有する場合がある。水平部を避けるもう一つの方法は、ケーシングの上部を鞍型に成形することである。ケーシングの上面は、取り付け位置で水平方向から30°から45°の角度でずれていることが好ましい。
【0026】
送信機-受信機構成の一実施形態では、ケーシングは気密である。
【0027】
気密ケーシングは、特に粒子密度または無菌環境に関して厳しい要件が存在する分野で、可能なアプリケーションの範囲をさらに広げる。さらに、気密ケーシングは、測定される第1のガスとは異なる第2のガスで恒久的に満たされ、その結果、ケーシング内にある、送信機と受信機の間の放射経路のセクションに沿った第1のガスの存在から測定信号への望ましくない寄与が生じない。
【0028】
一実施形態では、送信機-受信機構成は、電磁放射のための放射経路に沿った領域を第2のガスで溢れさせるように構成された第2のガスの供給源をさらに含む。
【0029】
この実施形態では、第1のガスは、容器の周囲から移動することができ、その結果、第1のガスの測定信号特性への寄与は、試験される容器の周囲から生じない。第2のガスは、例えば、酸素が第1のガスである場合、窒素であり得る。第2のガス源は、そのようなケーシングが存在する場合、送信機-受信機構成のケーシングの内部空間をあふれさせるように構成され得る。第2ガス源には、測定ゾーンに向けられた開口部が含まれる場合がある。
【0030】
別の実施形態では、例えば1つまたは複数の光ファイバを含む光導波路などのビーム誘導ビーム送達システムを使用して、測定ビームをエミッタから測定ゾーンに通過させて、ビーム上の周囲のガスの影響を回避することができる。
【0031】
先に述べた実施形態は、矛盾しない限り、他の実施形態と組み合わせることができる。
【0032】
さらに、本発明の範囲には、請求項10に記載の装置が含まれる。第1ガスの濃度を測定したり、容器のヘッドスペース内の圧力を測定したりする装置である。装置は、
- 本発明による送信機-受信機構成、および
- 受信機に動作可能に接続され、受信機によって受信された電磁放射に基づいて、第1のガスの濃度および/またはヘッドスペース内の圧力を示す数値を生成するように構成された評価ユニット、
を含む。
【0033】
さらに、本発明の範囲には、請求項11に記載の充填および/または閉鎖機が存在する。充填および/または閉鎖機は、液体または固体の内容物を容器に充填するための充填ステーション、本発明による装置、および容器を充填ステーションから装置の測定ゾーンに輸送するように構成されたコンベヤシステムとを備える。
【0034】
充填および/または閉鎖機は、ケーシングを有する本発明の装置を含み得る。ケーシングは、クリーンルーム環境に適した構造にすることができる。充填機内部の取付位置では、ケーシングに水平面がない場合がある。ケーシングの天井の面は、アーチ型であるか、水平面に対して20°から120°の間、特に30°から45°の間の傾斜角を持っている可能性があります。つまり、面の法線は、重力方向に対して20°から120°、特に30°から45°の間の角度を形成する。
【0035】
さらに、本発明の範囲には、請求項12に記載の方法が含まれる。この方法は、容器のヘッドスペース内第1ガスのガス濃度および/または圧力を測定する方法である。この方法は、本発明による装置を使用する。この方法は、電気制御可能なアクチュエータ構成によって、送信機および/または受信機の位置または空間的方向を調整するステップを含む。
【0036】
本発明はさらに、請求項13に記載の方法に関する。これは、液体または固体の内容物の上のヘッドスペースに気相を含むテスト済みの密閉容器を製造する方法である。この方法で得られた製品では、気相の第1ガスのガス濃度は、所定の試験限界を下回っている。この方法は、
- 内容物を容器に充填し、それによって内容物のないヘッドスペースを確立するステップ、
- 第2のガス、特に不活性ガスを容器に導入することにより、前の気相を容器の内部から移動させるステップ、
- 充填された容器を閉鎖手段で閉鎖するステップ、
- 請求項10に記載の装置を使用することにより、充填および密閉された容器のヘッドスペース内の第1のガスのガス濃度を決定するステップ、および
- 第1のガスの決定されたガス濃度がテスト限界を超えている場合に充填および密閉容器を拒否するステップ、またはそうでなければ充填および密閉容器をテスト済み密閉容器として許可するステップ、
を含む。
【0037】
本発明の方法の変形において、第1のガスは酸素である。
【0038】
本発明の方法の変形において、電気制御可能なアクチュエータ構成によって送信機または受信機を移動または回転させることによって測定ゾーンを容器のヘッドスペースとオーバーラップさせるさらなるステップが、充填された容器のヘッドスペース内の第1のガスのガス濃度を決定するステップの前に実行される。
【0039】
この方法の変形には、特に無菌環境内で、さまざまなタイプおよびサイズの容器を手動での介入なしに処理できるという利点がある。測定ゾーンを測定対象の容器のヘッドスペースとオーバーラップさせるステップは、同一の容器のバッチで測定を開始するときに実行され得る。この場合に必要な位置と空間方向は、さまざまなタイプの容器のそれぞれの情報を含むデータベースから読み取ることができる。次に、電気制御可能なアクチュエータ構成を制御して、送信機と受信機をそれぞれの位置に移動させ、それらの空間的方向を調整することができる。さらに、このような初期配置では、または代わりに、送信機と受信機の位置と空間的方向を個々の容器ごとに調整することができる。このような調整は、同じタイプの異なる容器の個々の変動、または装置に対するそれらの位置の変動によるものである。この調整は、たとえば、受信した電磁放射の強度を最大に近づけるようフィードバックループを適用することによって実行することができる。
【0040】
本発明による方法の変形例では、方法のステップは、請求項11に記載の充填および/または閉鎖機によって実行され、充填された容器が連続的に測定ゾーンを通過するか、または処理システムが充填された容器のサンプルを個別に選択し、測定ゾーンに移動する。
【0041】
したがって、方法を適用する場合、本発明による装置は、2つの動作モードで使用することができる。1つ目は、充填された容器のバッチから選択された個々のサンプルを試験すること。2つ目は、充填されたすべての容器のインラインテストを実行することである。
【0042】
ここで、本発明は、図の助けを借りてさらに例示されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明による送信機-受信機構成の概略図である。
図2】第1のガスの濃度を測定するための、および/または容器のヘッドスペース内の圧力を測定するための装置の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、本発明による送信機-受信機構成1を概略的かつ簡略化して示している。送信機-受信機構成は、動作中の状態で示されている。送信機2は、測定ゾーン11に向けて電磁放射5を放出する。電磁放射は、二重の矢印で示されている。測定ゾーンを通過した放射線5’は、受信機3で受信される。固定要素7は、その環境内の要素への送信機-受信機構成の固定を可能にする。電気制御可能なアクチュエータ構成8は、送信機と受信機を固定要素に対して、および互いに対して移動または回転させるように構成される。アクチュエータ構成の動作によって発生する可能性のある動きは、矢印で象徴的に示されている。破線では、送信機-受信機構成の一部ではない容器10が可能な測定位置に示されている。測定ゾーン11は、容器のヘッドスペース、つまり容器の内容物の上のスペースと重なっている。表示されているアクチュエータ構成は、多軸アクチュエータ構成である。これは例えば送信機と受信機の上下の位置を同時に移動することにより固定要素に対する測定ゾーンの高さを調節することができる。送信機と受信機の間の距離も調整することができる。送信機の回転または傾斜移動を適用して、容器壁の屈折効果を考慮して送信機と受信機の相対的な空間的方向を調整することができ、これにより、測定ゾーンから出る放射線が受信機に確実に当たるようにすることができる。固定要素に直接取り付けられた水平直線軸により、送信機と受信機を全体として水平方向に変位させることができる。破線で示される評価ユニット4は、受信機3に動作可能に接続され、送信機-受信機構成1を、第1のガスの濃度を測定するための、および/または容器のヘッドスペース内の圧力を測定するための装置に補完することができる。
【0045】
図2は、第1のガスの濃度を測定するための、および/または容器のヘッドスペース内の圧力を測定するための装置の実施形態を概略的かつ簡略化して示している。図1の文脈ですでに説明した要素に加えて、ケーシング9を備えている。ケーシングは、送信機2、受信機3、およびアクチュエータ構成8を含む内部空間を規定する。測定ゾーン11を構成する外部空間を規定する。窓6およびさらなる窓6’は、第1のガスを検出するために使用される波長範囲の電磁放射を透過する。送信機からの放射線5は、窓6を通過して測定ゾーン11に到達する。測定ゾーンを通過した放射線5’は、さらなる窓6’を通って内部空間に入り、受信機3によって受信される。装置30は、破線で示される機械ベッド21に取り付けることができる。このような機械ベッドは、充填機に属している可能性がある。さらに、容器10を装置に輸送するための輸送手段20が示されている。このような輸送手段は、充填機のコンベヤシステムに属している場合がある。示されている実施形態では、第2のガスの供給源22は、容器の周囲および装置の内部空間を、測定される第1のガスとは異なり、例えば第1のガスが酸素の場合窒素であり得る第2のガスで洗い流すように構成される。ケーシングの天井9’は、水平面を避けるために、この図に示す断面に直交する方向に形成されたアーチ型または鞍型屋根の形状にすることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 送信機-受信機構成
2 送信機
3 受信機
4 評価ユニット
5,5’ 放射線
6,6’ 透過窓
7 固定要素
8 アクチュエータ構成
9 ケーシング
9’ ケーシングの天井
10 容器
11 測定ゾーン
20 輸送手段
21 機械ベッド
22 第2のガス源
30 容器のヘッドスペースの第1ガスの濃度を測定する、および/または圧力を測定する装置
図1
図2