(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】樹脂量を検出する機能を備えた光造形装置およびその動作方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20230714BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20230714BHJP
B29C 64/255 20170101ALI20230714BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20230714BHJP
B29C 64/343 20170101ALI20230714BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230714BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230714BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20230714BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20230714BHJP
G01F 23/292 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/124
B29C64/255
B29C64/268
B29C64/343
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
B33Y50/02
G01F23/292 Z
(21)【出願番号】P 2020572948
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(86)【国際出願番号】 FI2019050195
(87)【国際公開番号】W WO2020002755
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-03-10
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】591036309
【氏名又は名称】プランメカ オイ
【氏名又は名称原語表記】Planmeca Oy
【住所又は居所原語表記】Asentajankatu 6, 00880 Helsinki, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミリライラ ツォーマス
(72)【発明者】
【氏名】ラッコライネン テロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォリオ ヴィレ
(72)【発明者】
【氏名】コポネン ヤリ
(72)【発明者】
【氏名】トイメラ ラッセ
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-098948(JP,A)
【文献】特表2006-506249(JP,A)
【文献】特開2000-141494(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0192312(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105181082(CN,A)
【文献】特開2000-193510(JP,A)
【文献】特開2000-230850(JP,A)
【文献】特開昭56-129822(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0048177(KR,A)
【文献】特開2000-298054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
G01F 23/00-23/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定バット(401)または光造形3D印刷プロセスで使用するための樹脂を保持する取り外し可能なバットを受け入れるホルダと、
前記固定または取り外し可能なバット(401)の一部にパターンを投影するように構成された光放射器(901)と、
視野を有する光学撮像検出器(501)であって、
前記投影されたパターンの反射光のパターンを検出するための光学撮像検出器(501)と、
前記光学撮像検出器(501)から
前記反射光のパターンを含む光学画像データを受信するために前記光学撮像検出器(501)に結合されたコントローラ(502、2001)と、を有し、
前記コントローラ(502、2001)は、前記光学画像データ
内の、前記バット(401)または前記バット(401)の背後の面に反射された前記反射光のパターンに基づいて、前記固定または取り外し可能なバット(401)内の樹脂の量および/または表面レベルを算出するように構成されている、
光造形装置。
【請求項2】
前記光放射器(901)は、レーザ光の少なくとも1つの分布パターンを前記固定または取り外し可能なバット(401)の前記一部に投影するように構成されたレーザである、請求項1に記載の光造形装置。
【請求項3】
前記固定または取り外し可能なバット(401)の前記一部は、前記固定または取り外し可能なバット(401)のリム(1301)の一部を有し、前記レーザは、前記リム(1301)のエッジ部から前記固定または取り外し可能なバット(401)の底部(1302)に向かって直線的に延在するように、前記少なくとも1つの分布パターンを前記リム(1301)上に投影するように構成されている、請求項2に記載の光造形装置。
【請求項4】
前記レーザは、前記リム(1301)の水平方向エッジ部から前記固定または取り外し可能なバット(401)の前記底部(1302)に向かって垂直に(1501)延在するように、前記少なくとも1つの分布パターンを前記リム(1301)上に投影するように構成されている、請求項3に記載の光造形装置。
【請求項5】
前記レーザは、前記リムの水平方向エッジ部から前記固定または取り外し可能なバット(401)の前記底部(1302)に向かって斜めに(1601)延在するように、前記少なくとも1つの分布パターンを前記リム(1301)上に投影するように構成されている、請求項3に記載の光造形装置。
【請求項6】
前記光放射器(901)は、レーザ光の少なくとも2つの個別の分布パターンを前記固定または取り外し可能なバット(401)上に投影するように構成されている、請求項3~5のいずれかに記載の光造形装置。
【請求項7】
前記レーザは、少なくとも1つのレーザ源と、前記レーザ源によって生成された線状のレーザビームを扇状の形状に広げるように構成された少なくとも1つのレンズと、を有する、請求項2~4のいずれかに記載の光造形装置。
【請求項8】
前記光放射器(901)は、少なくとも1つのパターンを前記固定または取り外し可能なバットの中心部分に投影するように構成されたレーザである、請求項1に記載の光造形装置。
【請求項9】
前記光放射器(901)は、光造形において樹脂を光重合するのに使用される波長よりも長い所定のカットオフ波長よりも長いまたはせいぜい等しい波長の光放射のみを放出するように構成されている、請求項1~8のいずれかに記載の光造形装置。
【請求項10】
前記コントローラ(502、2001)は、前記光学画像データから前記投影されたパターンの反射の画像を認識するように構成され、且つ、前記反射の前記画像の1つ以上の検出された寸法から前記バット(401)内に保持された樹脂の前記量および/または表面レベルを算出するように構成されている、請求項1~9のいずれかに記載の光造形装置。
【請求項11】
光造形装置の動作方法であって、
前記光造形装置の固定または取り外し可能なバット(401)の一部にパターンを光学的に投影する工程(2201)と、
前記固定または取り外し可能なバット(401)の前記一部および/または前記投影されたパターンが反射される表面の光学画像のデジタル表現を、前記投影された
パターンの反射光のパターンで生成する工程(2101)と、
前記デジタル表現
内の前記反射光のパターンに基づき、前記固定または取り外し可能なバット(401)内の樹脂の量および/または表面レベルを算出する工程(2103)と、
を有する、前記方法。
【請求項12】
前記パターンは、前記固定または取り外し可能なバット(401)のリム(1301)の一部上のレーザ光の分布パターンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記分布パターンは、前記リム(1301)の一部を横切る線を有し、前記方法は、前記デジタル表現から、前記線の第1の部分(1501、1601)であって前記線の残りの部分とは光学的に異なって見える部分の長さを検出する工程を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記パターンは、前記固定または取り外し可能なバットの中心部分上のレーザ光のパターンであり、前記方法は、前記デジタル表現から、前記固定または取り外し可能なバット内の樹脂の表面レベルに応じて異なる位置に光学的に現れる二次反射の位置を検出する工程を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
樹脂を保持するためのバット(401)と、
前記バット(401)に保持された前記樹脂の液面に光のパターンを投影するように構成された光放射器(901)と、
前記投影された光のパターンの反射光のパターンのうち、前記バット(401)または前記バット(401)の背後の面に反射された前記反射光のパターンを検出するように構成された光撮像検出器(501)と、
前記検出されたパターンに基づいて前記バット(401)内の樹脂の量または表面レベルを算出するコントローラ(502、2001)と、
を有する、光造形装置。
【請求項16】
樹脂を保持するためのバット(401)と、
前記バット(401)に保持された前記樹脂の液面および前記バット(401)のリム(1301)に光のパターンを投影する光放射器(901)と、
前記投影されたパターンのうち、前記リム(1301)に投影されたパターン
の反射光のパターンを検出する光学撮像検出器(501)と、
前記検出された
前記反射光のパターンに基づいて前記バット(401)内の前記樹脂の量または表面レベルを算出するコントローラ(502、2001)と、
を有する、光造形装置。
【請求項17】
バット(401)に保持された樹脂の液面および前記バット(401)のリム(1301)に光のパターンを投影する工程(2201)と
、
前記リム(1301)に投影されたパターン
の反射光のパターンを検出する工程(2101)と、
前記検出された
前記反射光のパターンに基づいて前記バット(401)内の前記樹脂の量または表面レベルを算出する工程(2103)と、
を有する、光造形装置の動作方法。
【請求項18】
樹脂を保持するバット(401)と、
前記バット(401)内の前記樹脂の液面からスポット状の光
のパターンを反射させて、
前記バット(401)または前記バット(401)の背後に配置され
た面に前記光
のパターンを到達させる
ように、前記樹脂の液面に前記光のパターンを投影する光放射器(901)と、
前記
バット(401)または前記バット(401)の背後に配置された面に到達した前記
スポット状の光の
パターンを検出する光学撮像検出器(501)と、
前記検出された前記
スポット状の光の
パターンの高さに基づいて前記バット(401)内の前記樹脂の量または表面レベルを算出するコントローラ(502、2001)と、
を有する、光造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光造形付加製造(stereolithographic additive manufacturing)としても知られる光造形3D印刷(stereolithographic 3D printing)の技術に関する。特に、本発明は、光造形装置において取得した画像データを樹脂の使用の最適化に利用することに関する。
【背景技術】
【0002】
光造形(stereolithogaphy)は、適切な原材料を光重合して所望の物体を製造するのに光放射を使用する3D印刷または付加製造技術である。原材料は、樹脂の形態でプロセスに入る。バットを使用してある量の樹脂を保持し、製造する物体がビルドプラットフォームのビルド表面から始まって層ごとに成長するようにビルドプラットフォームを垂直方向に移動させる。光重合に使用される光放射は、バットの上方から来てもよく、この場合、ビルドプラットフォームは、製造が進行する間中、残りの樹脂を通って下方に移動する。本明細書は、特に、光造形のいわゆる「ボトムアップ」変形例に関する。この場合、光重合用光放射は、バットの下方から来て、ビルドプラットフォームは、製造が進行する間中、上方に移動して残りの樹脂から離れる。
【0003】
一般に、未経験のユーザに対してさえ光造形装置の動作を容易で簡単にすることは、いくつかの課題を伴う。例えば、異なる種類の物体を製造するためには異なる樹脂が必要であり、それらの特性を十分に活用するには、それに応じて光造形装置の動作パラメータの値を設定する必要がある。ユーザは、毎回正しいパラメータ値で当該装置をプログラミングする責任を負うことは面倒で不便であると考えるかもしれない。樹脂は比較的高価であるため、あまりに多くの樹脂がバットに入らないように、且つ、実際の製造作業のためにできるだけ多くの残りの樹脂を利用するように注意しなければならない。樹脂の粘性および粘着性の性質は、樹脂の取り扱いができるだけ自動化されることを必要とする。
【0004】
従来技術は、バット内の樹脂の表面レベルを測定するさまざまな解決策を含む。これらの中のいくつかは、粘着性の樹脂材料と接触する部品を含むか、または、アルミニウム製のバットのような、どんな種類のバットでの使用にも適用できない技術を適用する。
【発明の概要】
【0005】
これらの課題に鑑みて、バット内の樹脂の表面レベルの検出または量の計算を、好ましくは十分に単純かつ安価に行い、しかも十分に信頼できるものにする構造的解決策および動作方法が必要とされている。
【0006】
本発明は、ユーザがその使用を便利で安全であると考える光造形装置およびその動作方法を提供することを目的とする。
【0007】
これらおよび他の有利な目的は、光造形装置に光放射器および光学撮像検出器を装備することによって達成され、その視野は本装置の作動領域の少なくとも一部をカバーする。
【0008】
第1の態様によれば、光造形装置が、固定バットまたは光造形3D印刷プロセスで使用するための樹脂を保持する取り外し可能なバットを受け入れるホルダと、前記固定または取り外し可能なバットの一部にパターンを投影するように構成された光放射器と、視野を有する光学撮像検出器であって、前記固定または取り外し可能なバットの前記一部および/または前記投影されたパターンが反射される表面が、前記光学撮像検出器が動作位置にあるときに前記視野内にあるように設置され、方向付けられた光学撮像検出器と、前記光学撮像検出器から光学画像データを受信するために前記光学撮像検出器に結合されたコントローラと、を有する。前記コントローラは、前記光学画像データを使用して、前記固定または取り外し可能なバット内の樹脂の量を算出するように構成されている。
【0009】
前記光造形装置の一実施形態において、前記光放射器は、レーザ光の少なくとも1つの分布パターンを前記固定または取り外し可能なバットの前記一部に投影するように構成されたレーザである。
【0010】
前記光造形装置の一実施形態において、前記固定または取り外し可能なバットの前記一部は、前記固定または取り外し可能なバットのリムの一部を有し、前記レーザは、前記リムのエッジ部から前記固定または取り外し可能なバットの底部に向かって直線的に延在するように、前記少なくとも1つの分布パターンを前記リム上に投影するように構成されている。
【0011】
前記光造形装置の一実施形態において、前記レーザは、前記リムの水平方向エッジ部から前記固定または取り外し可能なバットの前記底部に向かって垂直に延在するように、前記少なくとも1つの分布パターンを前記リム上に投影するように構成されている。
【0012】
前記光造形装置の一実施形態において、前記レーザは、前記リムの水平方向エッジ部から前記固定または取り外し可能なバットの前記底部に向かって斜めに延在するように、前記少なくとも1つの分布パターンを前記リム上に投影するように構成されている。
【0013】
前記光造形装置の一実施形態において、前記光放射器は、レーザ光の少なくとも2つの個別の分布パターンを前記固定または取り外し可能なバット上に投影するように構成されている。
【0014】
前記光造形装置の一実施形態において、前記レーザは、少なくとも1つのレーザ源と、前記レーザ源によって生成された線状のレーザビームを扇状の形状に広げるように構成された少なくとも1つのレンズと、を有する。
【0015】
前記光造形装置の一実施形態において、前記光放射器は、少なくとも1つのパターンを前記固定または取り外し可能なバットの中心部分に投影するように構成されたレーザである。
【0016】
前記光造形装置の一実施形態において、前記光放射器は、光造形において樹脂を光重合するのに使用される波長よりも長い所定のカットオフ波長よりも長いまたはせいぜい等しい波長の光放射のみを放出するように構成されている。
【0017】
前記光造形装置の一実施形態において、前記コントローラは、前記光学画像データから前記投影されたパターンの反射の画像を認識するように構成され、且つ、前記反射の前記画像の1つ以上の検出された寸法から前記バット内に保持された樹脂の前記量を算出するように構成されている。
【0018】
第2の態様によれば、光造形装置の動作方法が、前記光造形装置の固定または取り外し可能なバットの一部にパターンを光学的に投影する工程と、前記固定または取り外し可能なバットの前記一部および/または前記投影されたパターンが反射される表面の光学画像のデジタル表現を、前記投影されたまたは反射されたパターンで生成する工程と、前記デジタル表現を使用して、前記固定または取り外し可能なバット内の樹脂の量を算出する工程と、を有する。
【0019】
前記方法の一実施形態において、前記パターンは、前記固定または取り外し可能なバットのリムの一部上のレーザ光の分布パターンである。
【0020】
前記方法の一実施形態において、前記分布パターンは、前記リムの一部を横切る線を有し、前記方法は、前記デジタル表現から、前記線の第1の部分であって前記線の残りの部分とは光学的に異なって見える部分の長さを検出する工程を有する。
【0021】
前記方法の一実施形態において、前記パターンは、前記固定または取り外し可能なバットの中心部分上のレーザ光のパターンであり、前記方法は、前記デジタル表現から、前記固定または取り外し可能なバット内の樹脂の表面レベルに応じて異なる位置に光学的に現れる二次反射の位置を検出する工程を有する。
【0022】
上記の態様および実施形態は、互いに任意の組合せで使用されることができることを理解されたい。いくつかの態様および実施形態は、組み合わされて、さらなる実施形態を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
添付の図面は、さらなる理解を実施形態に提供し本明細書の一部を構成するために含まれており、実施形態を例示し、明細書と共に、実施形態の原理を説明するのに役立つ。
【0024】
【
図5】光学撮像検出器の動作位置の一例を示す正面図
【
図6】光学撮像検出器の動作位置の一例を示す側面図
【
図8】グラフィカルに表現された情報を樹脂タンクの目に見える表面上に使用する一例を示す図
【
図11】光放射器を使用してビルド表面を検査する一例を示す図
【
図12】光放射器を使用してビルド表面を検査する一例を示す図
【
図13】光放射器を使用してパターンをバット上に投影する一例を示す図
【
図14】光放射器を使用してパターンをバット上に投影する一例を示す図
【
図15】光放射器を使用してバット内の樹脂量を測定する一例を示す図
【
図16】光放射器を使用してバット内の樹脂量を測定する一例を示す図
【
図17】光放射器を使用してバット内の樹脂量を測定する一例を示す図
【
図18】光放射器を使用してバット内の樹脂量を測定する一例を示す図
【
図19】光学撮像検出器を使用してビルド表面を検査する一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1~
図4は、光造形装置の一例を示す。本装置は、光造形3Dプリンタ、または光造形付加製造装置とも呼ばれ得る。本装置の基本的な部分は、基部101および蓋102であり、このうちの蓋102は、
図1および
図2に示す閉位置と
図3および
図4に示す開位置との間を移動できるように、基部101に移動可能に結合されている。ここでは、移動の方向は垂直方向であるが、これは要求事項ではない。基部101に対する蓋102の移動は、他の方向で行われ得る。この種の可動蓋の重要な利点は、進行中の光造形3D印刷プロセスが蓋102を閉じることによって任意の干渉外部光放射から保護され得ることである。
【0026】
ベース部101には、光造形3D印刷工程で使用する樹脂を保持するためのバット401が設けられている。バット401が光造形装置の固定部でない場合、ベース部分101は、取り外し可能なバットを収容するためのホルダを有することができる。ホルダは、例えば、その上にバット401が配置可能な基本的に水平な上面を有するテーブル405であってもよい。追加的にまたは代替的に、ホルダは、支持レール、位置合わせ補助具、ロック機構、ならびに/またはバットを支持するように、および/もしくは、バットが適切な位置をとり、適切な位置に留まることを確実にするように構成された他の同等の手段を有することができる。本明細書では、バット401への全ての言及が、固定バットの構成と、取り外し可能バット401を前記種類のホルダに収容可能な構成との両方をカバーすることを理解されたい。
【0027】
ビルド表面403を有するビルドプラットフォーム402は、ビルド表面403がバット401に面するようにバット401の上方に支持されている。この配置は、光重合用の放射線がバットの下方から来る、光造形のいわゆる「ボトムアップ」のバリエーションに典型的である。バット401の底部は、前記光重合に使用される放射線の種類に対して、透明または半透明であるか、または、選択的に透明または半透明にすることができる。
【0028】
移動機構が設けられ、第1の極限位置と第2の極限位置との間の作業移動範囲内でビルドプラットフォーム402を移動させるように構成されている。これらのうち、第1の極限位置は、バット401の近位にある位置であり、第2の極限位置は、バット401から遠く離れた位置である。第1の極限位置において、ビルド表面403は、バット401の底部に非常に近い。製造する物体の第1の層は、ビルドプラットフォーム402が第1の極限位置にあるときにビルド表面403上に光重合される。したがって、前記第1の極限位置において、ビルド表面403とバット401の底部との間の距離は、光造形3D印刷プロセスにおける1つの層の厚さのオーダーである。
【0029】
図3および
図4に示す位置は、第2の極限位置であっても、または少なくとも第1の極限位置よりも第2の極限位置に近い位置であってもよい。光造形装置の作業領域は、バット401とビルドプラットフォーム402の第2の極限位置との間に存在すると言うことができる、なぜなら、製造する物体がこの領域内に現れるからである。ビルドプラットフォーム402は、物体の製造中に第2の極限位置まで、またはその近くまで移動する必要はない。第2の極限位置は、物体が完成するとすぐに、製造された物体をビルドプラットフォーム402から容易に取り外すことができるようにするために最も有用であり得る。
【0030】
図1~
図4の実施形態において、ビルドプラットフォーム402を移動させるための移動機構は、基部101の内側にあり、基部101の垂直面に見られる2つのスリット301、およびビルドプラットフォーム402の水平支持体404によって表されるのみである。また、蓋102を基部101に対して移動させるための、同様に隠れた移動機構も存在する。この第2の移動機構は、基部101の内側にある部分および/または蓋102の内側にある部分を含むことができる。基本的に全ての移動機構を基部101および/または蓋102の筐体内に入れることによって、安全性が追加されるという利点が得られる、なぜなら、それによって、そのような機構のどの移動部分によってもユーザが負傷する可能性は起こりそうになくなるからである。
【0031】
ビルドプラットフォーム402の水平支持体404は、図面では概略的にのみ示されている。実用的な実装において、ビルドプラットフォーム402の支持体は、ビルド表面403の向きが適切であることを確実にするためのジョイントおよび/または微調整機構のような、さまざまな高度な技術的特徴を含み得る。しかし、そのような特徴は、本説明の範囲外であり、したがって、ここでは省略する。
【0032】
図1~
図4の例示的な光造形装置の別の特徴は、ユーザインタフェースであり、これは、この例では蓋102に設けられたタッチセンサ式ディスプレイ103である。このユーザインタフェースは、蓋102およびビルドプラットフォーム402の各移動を制御するためのボタンを含むが、これらに限定されず、本装置とそのユーザとの間で対話を行うためのさまざまな機能を有することができる。タッチセンサ式ディスプレイは、特に、光造形装置が、医療クリニックおよび/または歯科医院のように、徹底的な洗浄および消毒が定期的に必要とされる環境で使用される場合に、ユーザインタフェースの有利な特徴である。タッチセンサ式ディスプレイ103および/またはユーザインタフェースの他の部分を蓋102の前部に配置することは、有利である、なぜなら、それによって、ユーザインタフェースのそのような部分をユーザが容易にアクセスできるようになるからである。したがって、ユーザインタフェースの少なくともいくつかの部分は、基部101に実装し得る。さらに別の可能性は、タブレットまたはスマートフォンのような、適切にプログラムされたポータブルユーザデバイスにおけるユーザインタフェースの少なくとも一部を実装することであり、その結果、光造形装置とポータブルユーザデバイスとの間で、近距離の有線または無線通信が設定される。
【0033】
光造形装置に光学撮像検出器を設け、作業領域の少なくとも一部が当該光学撮像検出器の視野内にあるように設置・方向付けされることによって、大きな利点を得ることができる。光学撮像検出器が少なくとも1つの動作位置といくつかの他の位置との間で移動可能である場合、作業領域は、少なくとも光学撮像検出器が前記動作位置にあるときに、光学撮像検出器の視野内に現れなければならない。光学撮像検出器は、その視野内で光学的に検出可能なものを示す光学画像データを生成することができる装置である。ほとんどの光学撮像検出器は、(デジタル)カメラとして特徴付けることができる。しかし、例えば、可視光以外の他の波長で動作する光学撮像検出器があり、これは、必ずしも一般にカメラと呼ばれるわけではない。一般的な適用性を維持するために、本明細書では光学撮像検出器という用語を使用する。
【0034】
図5および
図6は、光学撮像検出器501がどのようにして蓋102の内側に設置され得るかの一例を概略的に示す。蓋102を閉じることによって光学撮像検出器501を動作位置に導く。このとき、作業領域の少なくとも一部は、その視野内にある。これは、
図7にも示されている。
図7では、グラフィカルな明確性のために蓋は省略されている。光学撮像検出器501は、蓋102の、
図5および
図6に概略的に示されている部分以外の部分にも配置され得る。また、光学撮像検出器501を蓋102の内側に配置することは、その位置が十分に保護されているという事実、および、光学撮像検出器を明確に定義された軌道に沿って蓋と共に移動させる可能性など、さらなる利点を伴う。後者は、光学撮像検出器のいくつかの考えられる使用において有用な特性である。
【0035】
光学撮像検出器501を支持するさらに別の方法は、例えば伸縮自在のまたは折り畳み可能な支持アームによって、それを基部101に固定して、必要でないときにはユーザがそれを脇に移動させることができたり、または、必要なときにだけ光造形装置が自動的に光学撮像検出器を動作位置に持っていくことができたりすることである。また、光学撮像検出器501は、支持体404がそれに沿ってビルドプラットフォーム402を移動させるスリット301を有する同じ垂直面のどこかに設置することもできる。
【0036】
図5および
図6に示す光造形装置は、光学撮像検出器501から光学画像データを受け取るために、光学撮像検出器501に結合されたコントローラ502を有する。コントローラ502は、そのような光学画像データを光造形装置の動作の制御に使用するように構成され得る。このような制御の例は、本テキストの後半でより詳細に説明される。光学撮像検出器501とコントローラとの間の結合は、有線結合または無線結合であってもよく、あるいは、互いの代替として、または互いを増強するものとして、有線および無線の両方の構成要素を有するものであってもよい。
【0037】
コントローラ502は、
図5および
図6では蓋102に設置されて示されているが、代替的に、基部101に設置することもできる。コントローラの機能性は、そのある部分は蓋102に位置する回路で実現され得る一方で、コントローラの機能性の他の部分は基部101に位置する回路で実現され得るように、分散することさえ可能である。コントローラを蓋102に配置することは、ユーザインタフェースのような他の電子機器のかなりの部分が蓋102に配置される場合、有利であり得る、なぜなら、配線がより単純になり得るからである。ユーザインタフェースは、グラフィカルな明確性を高めるために、
図5および
図6には示されていない。
【0038】
コントローラ502は、マシンビジョンプロセスを実行して、光学撮像検出器501から受け取った光学画像データから物体を認識するように構成され得る。光学画像データは、本質的に、光学撮像検出器501によって記録された画像のデジタル表現であり、マシンビジョンは、一般に、画像から情報を抽出することを意味する。したがって、マシンビジョンプロセスを実行することによって、コントローラ502は、光学撮像検出器501によって見られるさまざまな物体を認識することを可能にする情報を抽出することができる。コントローラ502は、そのような認識された物体に基づいて決定を行うように構成され得る。
【0039】
コントローラ502が認識することができる物体の一例は、樹脂タンク、または樹脂タンクによって運ばれるグラフィカルに表現された情報である。この種の出願の背景をいくつか提供するために、以下、樹脂の取り扱いの仕事についていくぶんより詳細に説明する。
【0040】
光造形3D印刷プロセスで使用する樹脂は、光造形装置に持ち込まれ樹脂タンク内に導入され得る。「樹脂タンク」という名称は、本テキスト中では、光造形3D印刷プロセスで使用する樹脂の準備のために樹脂を保持することができるあらゆる種類の容器の一般的な記述子として使用される。光造形装置は、樹脂タンクを光造形装置の動作位置に合わせて取り外し可能に収容するためのホルダを有し得る。このようなホルダの一例を、参照符号701で
図7に示す。樹脂タンクを取り外し可能に収容するためのホルダを設けることは、各光造形3D印刷ジョブにとても最適な樹脂の使用を確実にするために、ユーザが樹脂タンクを容易に交換することができるという利点を伴う。
【0041】
ホルダ701に取り外し可能に収容され得る樹脂タンクは、好ましくは、一方の端部に開口部を覆うカバーまたはプラグを有し、他方の端部に出口が現れる、細長いカプセルの形態を有し得る。出口は、弁、封止、栓、または明示的に望まれない限り樹脂が樹脂タンクから漏れ出ないようにするその他任意の手段を備え得る。このような細長いカプセル形態の樹脂タンクは、開口部を有する端部が上方にあり、出口がバット401の位置もしくはそれに近い位置にあるように、または、樹脂がバット401に流れ得る経路の近くにあるように、ホルダ701に取り外し可能に収容され得る。
【0042】
図7の例示的な実施形態では、ピストン702が、ビルドプラットフォーム402と同じ支持体404に取り付けられている。ビルドプラットフォーム402が、新しい物体を生成するための開始位置である第1の極限位置を取るために、下方に移動すると、ピストン702は、ビルドプラットフォーム402と協調して下方に移動する。ピストン702のこの移動によって、ホルダ701に収容された樹脂タンクから樹脂が送り出されるため、樹脂は出口から流出してバット401に流入する。樹脂タンクの上端の開口部を覆っていたカバーまたは栓は、必要に応じて自動的に開口部および/または出口を開く何らかのメカニズムが設けられない限り出口を閉じていた手段と同様に、当然、それ以前に取り外されていなければならない。
【0043】
ピストン702をビルドプラットフォーム402と協働して移動させることは、単に例示的な実装であることに留意されたい。これは、2つの部分を移動させるために1つの移動機構のみが必要とされるという利点を伴う。しかし、いくつかの用途では、バット401への樹脂の供給を、ビルドプラットフォーム402の移動とは独立して制御可能であることが望ましい場合がある。このような用途のために、ビルドプラットフォーム402を移動させる機構と、樹脂タンクからバット401に樹脂を供給する機構とが別々に存在する実施形態を提示することができる。このような別々の機構は、例えば、その他の点では
図7のピストン702のようなピストンであって、しかし自身の移動機構によって支持・移動されるピストンを含むことができる。
【0044】
1つの樹脂タンクに対する1つのホルダ701のみが図面に示されているが、光造形装置は、2つ以上のホルダを有してもよく、および/または単一のホルダが、2つ以上の樹脂タンクを収容するように構成されてもよい。特に、異なる樹脂タンクからバット401に樹脂を送り出す別々の機構が存在する場合、複数の樹脂タンクを収容するための場所を設けることは、たとえ単一の物体を製造中であったとしても、異なる樹脂を自動的に使用することができるという利点を伴う。このような特徴は、例えば、製造する物体が色のスライド変化を示すべきである場合に、有用であり得る。光造形装置は、異なる色に着色された樹脂の2つのタンクを有することができ、これらの樹脂は、結果として生じるバット内の樹脂の混合物がそれに応じてその色を変えるように、選択された割合でバットに供給されることができる。
【0045】
図8は、樹脂タンク801がホルダ701に収容されている場合を概略的に示す。樹脂タンク801の目に見える表面(光撮像検出器501の視野内で見ることができる)には、グラフィカルに表現された情報の断片(a piece)802が設けられている。
図8の例では、バーコードが使用されるが、樹脂タンク801またはその一部のQRコード(登録商標)、色または色の組み合わせのような、任意の他の形式のグラフィカルに表現された情報を使用することができる。グラフィカルに表現された情報の使用は、光学撮像検出器で読み取ることができるという利点を含み、そのために、光造形装置において他の有利な使用もあり得る。
【0046】
グラフィカルに表現された情報の断片802によって運ばれる情報は、有利には、その特定の樹脂タンク801に含まれるその樹脂のみに関連するものであるか、またはそれを明らかにする。追加的または代替的に、グラフィカルに表現された情報の断片802によって運ばれる情報は、その特定の樹脂タンク自体に関連するものであるか、またはそれを明らかにするものであり得る。当該情報は、例えば、樹脂タンク801に収容された樹脂の識別子、樹脂タンク801に収容された樹脂の量のインジケータ、樹脂タンク801に収容された樹脂の製造日、樹脂タンク801に収容された樹脂の推奨使用期限、樹脂タンク801の固有識別子、樹脂タンク801に収容された樹脂の提供者のデジタル署名、のうちの1つ以上を含み得る。
【0047】
興味深い特別なケースとして、グラフィカルに表現された情報の断片802によって運ばれる情報は、パラメータデータの断片を含むことができる。一方で、コントローラ502は、このようなパラメータデータの断片を光造形装置の動作パラメータの値として使用するように構成され得る。動作パラメータは、特定の測定可能な量であり、その値は、光造形3D印刷がどのように進行するかに直接影響を及ぼす。このような動作パラメータの例には、樹脂の予熱温度、層露光時間、層厚、ビルドプラットフォームの移動速度、または光造形3D印刷における2つの連続する方法ステップの間の待ち時間、が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
取り外し可能に取り付け可能な樹脂タンクを使用して動作パラメータの値を光造形装置に伝達するという概念は、グラフィカルに表現された情報以外をカバーするように一般化することができる。このような他の方法の例は、そのような樹脂タンクの材料に取り付けられたおよび/または埋め込まれたさまざまな種類のメモリ回路を使用することを含むが、これに限定されない。一般的な場合、樹脂タンクは、樹脂タンクの機械可読識別子を有し、光造形装置は、樹脂タンクの機械可読識別子からパラメータデータを読み込むように構成されたリーダ装置を有する。リーダ装置は、樹脂タンクをホルダに収容すると同時にリーダ装置を前記機械可読識別子に接続するように、ホルダ701内に接触部材を有することができる。あるいは、リーダ装置は、当該リーダ装置と当該樹脂タンクとの間の直接的な物理的接触なしにパラメータデータの当該読み取りを実行するように構成された無線リーダ装置であってもよい。このような無線リーダ装置の例は、無線トランシーバ(例えば、NFC、Bluetooth、または他の短距離無線伝送技術を使用する)および光学撮像検出器である。リーダ装置は、樹脂タンクに異なる種類の機械可読識別子を入れるために、複数の接触式および/または無線式の技術を有することができる。
【0049】
また、前記一般的な場合において、光造形装置は、リーダ装置に結合され、且つ、前記リーダ装置によって読み込まれたパラメータデータを受信するように構成されたコントローラを有する。前記コントローラは、前記光造形装置の動作パラメータの値として、少なくとも前記受信されたパラメータデータの一部(a piece)を使用するように構成されてもよい。
【0050】
動作パラメータの値を運ぶこのような方法は、例えば、新しい種類の樹脂を最も適切に取り扱うために自動的に動作する光造形装置を予めプログラムしておく必要なく、その新しい種類の樹脂を使用することができるという利点を伴う。これに対して、グラフィカルに表現された情報の断片802が、樹脂タンクに含まれる樹脂の種類の特定の識別子だけを含むという場合も考えることができる。このような場合、コントローラ502は、特定の樹脂を認識した後、動作パラメータに対して対応する最も適切な値をライブラリから読み取り、使用することができるように、以前に記憶されたパラメータデータのライブラリにアクセスする必要がある。グラフィカルに表現された情報の断片802におけるパラメータデータの1つ以上の値を伝達することによって、より柔軟な動作が可能になる、なぜなら、そのようなライブラリは、まったく必要とされないか、または、グラフィカルに表現された情報の断片802から全てのパラメータ値を読み取ることができるわけではない場合には、パラメータ値の限られたライブラリのみが必要とされるからである。
【0051】
したがって、光造形装置が、パラメータデータならびに樹脂および樹脂タンクに関する他の情報の外部データベースにアクセスできることは、排除されない。例えば、設備が、同じ樹脂タンクの少なくともいくつかが交互に使用され得る2つ以上の光造形装置を有する場合、樹脂タンクおよびこれが含む樹脂についての情報を含む共有データベースを有することが有利であり得る。このような場合、コントローラ502は、樹脂または樹脂タンクについての情報を取得するために、および/または、光造形装置がその樹脂または樹脂タンクで現在行っていることに関する情報でデータベースを更新するために、データベースにアクセスすることによって樹脂タンクのグラフィカルな識別子が見つけられる画像データの受信に応答することができる。
【0052】
リーダ装置が接触式であるか無線式であるかにかかわらず、リーダ装置は、樹脂タンクがホルダにおける動作位置にあるときに、パラメータデータの読み込みを実行するように構成され得る。リーダ装置として光学撮像検出器を使用する場合、これは、ホルダに取り外し可能に収容された樹脂タンクが光学撮像検出器の視野内にあるように光学撮像検出器が方向付けられることを意味し得る。
【0053】
リーダ装置が光学撮像検出器である場合、前述のマシンビジョンプロセスを利用して、光学撮像検出器から光学結像データを受信するために光学撮像検出器に結合されたコントローラは、前記マシンビジョンプロセスを実行して、グラフィカルに表現された情報キャリアの断片をホルダに収容された樹脂タンクによって認識するように構成され得る。コントローラは、前記認識されたグラフィカルに表現された情報からパラメータデータを抽出し、少なくとも前記抽出されたパラメータデータの一部を前記光造形装置の動作パラメータの値として使用するように構成され得る。
【0054】
追加的または代替的に、コントローラは、警告を生成するように、および/または、任意の光造形3D印刷プロセスを中断するように、および/または、抽出されたパラメータデータのうちの少なくとも1つがある警告基準をトリガすることを発見したことに応答して、いかなる光造形3D印刷プロセスも開始しないように構成され得る。例えば、樹脂タンクによって運ばれるグラフィカルに表現された情報の1つが樹脂の推奨使用期限を含み、コントローラがその期限が既に経過したことに気付いた場合、コントローラは、ユーザに警告して、ユーザが次に、樹脂をまだ使用することができるかどうか、または、新しい樹脂のタンクを代わりに設置するべきかどうかを決定することができるようにすることができる。別の例として、樹脂タンクによって運ばれるグラフィカルに表現された情報の1つが、タンクがある量の樹脂を含むことを示し、コントローラが、その量を超える量が必要となることを算出した場合、コントローラは、ユーザに警告して、ユーザが、より大きな樹脂タンクを設置すべきかどうかを考慮することができるようにすることができる。さらに別の例として、樹脂タンクによって運ばれるグラフィカルに表現された情報の1つが、実現できない動作パラメータ値を伝達する場合、コントローラは、ユーザに警告して、ユーザが、別の樹脂に変更するかどうかを考慮することができるようにすることができる。
【0055】
ユーザが常に樹脂タンク801を正しい方法で取り付けて、グラフィカルに表現された情報の断片802が光学撮像検出器501に見えるようにすることを確実にするために、ホルダ701は、樹脂タンク801を所定の向きで光造形装置に収容させるためのメカニカルキーを有することができる。このとき、樹脂タンク801は、当該樹脂タンクを所定の向きで光造形装置に取り付けさせるための、前記メカニカルキー用の相反スロットを有する必要がある。樹脂タンクがメカニカルキーを有し、ホルダが相反スロットを有するように、メカニカルキーと相反スロットの役割を交換することも可能である。ここで、メカニカルキーおよび相反スロットという用語は、一般的な意味で使用される。これは、ユーザが樹脂タンクを光造形装置に所定の向きで取り付けるように導くという目的を果たす、ホルダ701および樹脂タンク801におけるあらゆる種類の相互に係合する機械的設計を意味する。この目的のために、1対、2対、またはそれ以上の対のメカニカルキーおよび相互スロットが使用され得る。
【0056】
光学撮像検出器をリーダ装置として使用することは、同じ光学撮像検出器を光造形装置の他の目的にも使用することができるという特定の利点を伴う。このような他の目的は、たとえそれが樹脂タンクからグラフィカルに表現された情報を読み取るのに使用されない場合であっても、光学撮像検出器の提供を実証することさえできる。以下、このような有利な他の目的のいくつかを説明する。
【0057】
図9および
図10は、第1の光放射器901および第2の光放射器902を有する光造形装置の一部を概略的に示す。同図において、光放射器901および902は、光学撮像検出器501と共に共通の光学モジュールに位置するように示されているが、これは一例にすぎず、いずれか一方または両方を光造形装置の他の場所に配置することも可能である。光造形装置は、第1の光放射器901および第2の光放射器902の一方のみを有することも、または、光学撮像検出器501が他の目的にのみ使用される場合には、そのいずれも有しないことも可能である。また、光造形装置は、2つ以上の光放射器を有することも可能である。
【0058】
第1の光放射器901は、バット401の一部にパターンを投影するように構成されている。換言すれば、第1の光放射器901によって出される光放射の少なくとも一部は、バット401のある部分に当たる。バット401が取り外し可能である場合、これは、バット401が光造形装置内の意図された位置に配置されたときに適用される。
【0059】
バット401の影響を受けた部分は、前記光学撮像検出器501がその動作位置にあるとき(つまり、その内側に光学撮像検出器501が設置されている光造形装置の蓋が、その閉位置にあるとき)、光学撮像検出器501の視野内にある。先に指摘したように、光学撮像検出器501は、光造形装置の蓋の内側に設置する必要はなく、どこか別の場所に設置することもできる。ここで説明する目的のためには、第1の光放射器901がパターンを投影する前記バットの前記部分が、前記光学撮像検出器が動作位置にあるときに視野内にあるように、光学撮像検出器が設置され、方向付けられていることのみが必要である。
【0060】
追加的または代替的に、投影されたパターンがその途中で1つ以上の反射面からそれに反射される表面が存在してもよい。投影パターンがそれに反射される表面は、バット401の一部である表面、および/または、光造形装置内のある他の表面を意味し得る。このような表面は、光学撮像検出器501がその動作位置にあるときに、光学撮像検出器501の視野内にあってもよい。前記1つ以上の反射面は、バット401に属する1つ以上の表面、および/または、バット401内の樹脂の反射面であってもよい。
【0061】
光造形装置のコントローラは、
図9および
図10には示されていないが、それは、存在し、光学画像データを受信するために、光学撮像検出器501に結合されているものとされる。コントローラは、前記光学画像データを使用してバット401内の樹脂の量を算出するように構成されている。
【0062】
バット401内にどれだけの樹脂が存在するかを算出するために光学画像データを使用する原理は、第1の光放射器901によって出される光放射が、バット内にどれだけの樹脂が存在するかに応じて異なる反射をする反射するという事実に基づいている。このために、第1の光放射器901は、バット内にどれだけの樹脂が存在するかに応じて異なるように樹脂で覆われている、バット401の部分に、パターンを投影する必要がある。また、投影されるパターンの輪郭ができるだけシャープであることも、役に立つ。最後に述べた目的を達成するためには、第1の光放射器901が、レーザであり、バット401の前記部分にレーザ光の少なくとも1つのパターンを投影するように構成されていれば、有利である。パターンは、単一のスポットであってもよいし、多数の単一のスポット、線、または照射される2次元領域のような分散パターンであってもよい。
【0063】
分散パターンは、空間分散反射とも呼ぶことができる。これは、(単一のレーザビーム自体によって生成される)まさに単一のスポットを超えるスポットから成るパターンを意味する。レーザ光の分散パターンは、例えば、レーザ源を物理的に回転させることによって、および/または、少なくとも1つのレーザ源と、当該レーザ源によって生成された線状レーザビームを、例えば扇形または円錐形のような形状に広げるように構成された少なくとも1つのレンズとを使用することによって、生成することができる。
図9および
図10では、一例として、扇状の形状が考えられている。
図9では、ビューが扇の平面内にあるため、分散レーザ光の扇状の形状が1本の線として見えている。
図10では、ビューが扇状の平面に垂直であるため、扇状の形状がはっきり見えている。
【0064】
図13は、バット401、光学撮像検出器501、および第1の光放射器901の単純化された不等角投影図であり、スリット301は、これらの部品が光造形装置においてどのように配置されているかのリマインダとして背景に見えている。
図13では、バット401内に樹脂は存在しない。第1の光放射器901がそのパターンを投影するバット401の部分は、バット401のリム1301の一部を含む。第1の光放射器901は、投影されたパターンの反射がリム1301のエッジ部からバット401の底部1302に向かって直線的に延在するように、分散パターンをリム1301に投影するように構成されている。
【0065】
図14は、第1の光放射器501がバット401の複数の部分に複数のパターンを投影する方法の一例を示す。
図14において、第1の光放射器901は、少なくとも2つの別々の分散パターンのレーザ光を前記リムに投影するように構成されている。ここでは、2つのレーザビームが存在し、それぞれ扇形の形状に広げられているため、各分散パターンの反射は、リムのエッジ部からバット401の底部に向かって直線的に延在している。
【0066】
図15において、状況はその他の点で
図13と同じであるが、しかしバット401には樹脂が存在している。ここで、樹脂は、第1の光放射器901によって出されたレーザ光を比較的効果的に吸収する一方で、バット401の材料は、比較的良好な反射器であり、その表面に非常に明瞭でシャープな反射が現れるものとされる。線状反射1501の長さは、リム1301がどの程度乾燥しているか(つまり、樹脂によって濡れていないか)を示す。バット401の寸法が既知の場合、線状反射1501の長さを測定することは、バット401内の樹脂の量を算出するのに十分である。一般に、光学画像データを受信するために光学撮像検出器501に結合されたコントローラは、前記光学画像データから前記投影されたパターンの画像を認識するように構成され、且つ、前記投影されたパターンの前記反射の1つ以上の検出された寸法からバット501内に保持されている樹脂の量を算出するように構成されていると言うことができる。
【0067】
光造形装置のコントローラは、マシンビジョンプロセスを実行して上述のステップを行うように構成され得る。コントローラは、まず、光学撮像検出器501によって撮影された少なくとも1つの画像であって投影されたパターンの観察された反射がバット401の影響を受けた部分および/または影響を受けた他の表面に現れる画像を見つけて選択することができる。前記少なくとも1つの画像において、コントローラは、パターンの観察された反射に寄与する画素の、画像フレームの座標系内の座標を調べることができる。コントローラは、観察された反射の端部を表すように見える画素の座標を見つけ、これらの座標間の差を算出することができる。算出された差を、考えられる算出された差のルックアップテーブルにマッピングすることによって、または、他の何らかの形態の意思決定アルゴリズムを実行することによって、結果として、バット内の樹脂の測定量を得ることができる。
【0068】
図13~15における共通の特徴は、反射が前記リムの水平エッジ部からバットの底部に向かって垂直に延在するように、第1の光放射器901におけるレーザが、少なくとも1つの分散パターンをリム上に投影するように構成されていることである。換言すれば、線状反射1501は、バット401のリム1301上の垂直線である。これは、唯一の可能性ではない。
図16は、代替的実施形態を概略的に示す。この場合、レーザは、前記リムの水平エッジ部から前記バットの底部に向かって斜めに延在するように、前記少なくとも1つの分散パターンを前記リム上に投影するように構成されている。言い換えれば、
図16では、リム1301上の線状反射1601は、斜めに方向付けられている。
【0069】
図16のような形状は、多くの利点を提供する、なぜなら、光学撮像検出器501によって生成される光学画像データは、分析する特徴を
図15の場合よりも多く含んでいるからである。バット内の樹脂のレベルの変化は、リム1301の表面上の扇形のレーザビームの線状反射1601に、
図15よりも大きな変化をもたらす。これにより、バット401内の樹脂の量の小さな変化でさえ容易に検出することができるようになる。また、樹脂の表面が十分に滑らかで反射性である場合、リム1301の表面上に二次反射1602を観察することができるため、反射1601と反射1602との間のコーナポイントは、バット401内の樹脂表面のレベルをかなり正確に示している。マシンビジョンプロセスがこのようなコーナポイントを認識する場合、バット401内の樹脂量の算出でかなり正確な結果を与えることができる。
【0070】
図17は、分散パターンが、連続的ではなく、区別できるスポットから成っている、さらに別の代替実施形態を示す。たとえ
図17においてスポットが直線状に配置されているとしても、これは必要条件ではない。パターンは、どのように反射が完全に空のバットから得られるパターンと異なるかを観察することによって、およびバットの寸法を知ることによって、バット内に現在存在する樹脂の量を算出することを可能にする任意の形状であり得る。
【0071】
図18は、さらに別の代替的実施形態を示す。ここで、第1の光放射器901は、バット401の中央部分にスポット状のパターンを投影するように構成されており、この場合、バット401内に樹脂があれば、そのパターンは樹脂の上面から反射される。二次反射1801は、光造形装置内のバット401の背後にある垂直面に現れる。二次反射1801が現れる高さ1802は、バット401内の樹脂の表面レベルに依存する。コントローラは、光学撮像検出器501によって撮像された少なくとも1つの画像であって投影されたスポット状パターンの観察された二次反射1801が前記影響を受けた表面上に現れる画像を見つけて選択することができる。前記少なくとも1つの画像において、コントローラは、観察された二次反射に寄与する画素の、画像フレームの座標系内の座標を検査し得る。二次反射はスポット状であるため、コントローラは、それらの画素の平均高さ座標が観察される反射に寄与することを発見し得る。これは、本実施形態において樹脂量を算出することができる反射の像の検出された寸法の一例である。平均高さを考えられる高さのルックアップテーブルに対してマッピングすることによって、または、ある他の形態の意思決定アルゴリズムを実行することによって、結果として、バット401内の樹脂の測定量を得ることができる。
【0072】
(固定または取り外し可能な)バット内の樹脂の量を決定するものとしてここに記載される全ての実施形態において、実際に検出される量は、バット内の樹脂の表面レベルであり、バット内の樹脂の現在の体積ではない(少なくとも直接的ではない)ことに留意されたい。検出された量がどのように利用されるかは、コントローラのプログラミングに依存するため、本テキストの目的のために、樹脂の量を算出または決定することへの全ての言及は、樹脂の表面レベルを検出することと同義であり、意味が十分に等しいと考えることができる。
【0073】
光造形装置がバット内の樹脂の表面レベルを自動的に検出することを可能にすることは、多くの利点を伴う。一例として、より多くの樹脂をバットに送り出す前に、当該装置は、すでにどれくらいの樹脂(もしあれば)が存在するかをチェックすることができる。樹脂は比較的高価であり、また、任意の樹脂を任意の種類のタンクまたは他の長期保管場所に戻すことは煩わしいため、すでにバット内に送り出されたすべての樹脂を常に使い果たすことが望ましい。これは、光造形3D印刷の次の既知のタスクを完了するために必要とされるだけの、バット内に既に存在するものを増強するための、新しい樹脂を供給することのみとほぼ同義である。特定の三次元物体を製造するための命令を受け取る制御ソフトウェアの一部に対して、製造する物体の体積を算出することは比較的簡単である。このとき、算出された体積は、実際に物体を製造するのに必要とされる樹脂の量と同じである。
【0074】
光造形は、樹脂のいくつかの厳密に限定された部分のみを光重合することに基づいていると考えると、意図しない光重合を引き起こす可能性がある他の目的(バット内の未使用の樹脂の量を測定するなど)のためにこのような光放射器を使用しないように注意すべきである。したがって、第1の光放射器901は、所定のカットオフ波長よりも長いかまたはせいぜい等しい波長の光放射のみを放出するように構成されるように、選択されることが望ましい。前記カットオフ波長は、光造形において樹脂を光重合するのに使用される波長よりも長くなるように選択されるべきである。紫外線がしばしば光重合に使用されるため、前記カットオフ波長は、可視光の範囲内であり得る。レーザ光は単色であるため、第1の光放射器901にレーザ光源が使用される場合、レーザ光の波長は、前記カットオフ波長と同義である。当然、第1の光放射器901の波長は、その反射が光学撮像検出器501によって容易に検出可能であるように選択されなければならない。
【0075】
光学撮像検出器501が、第2の光放射器902と共に、光造形装置で使用され得る別の目的が、
図11および
図12に示されている。背景をいくつか提供するために、ビルドプラットフォーム402のビルド表面403が、光造形3D印刷ジョブの開始時にバットの底部に非常に近づくことに留意されたい。このため、ビルド表面403は、ビルドプラットフォーム402が先に述べた第1の極限位置である開始位置に下降される前に、適切に方向付けられ、且つ、どんな固体物質のどんな断片もない状態であるべきである。あいにく、ユーザが以前に製造された物体をビルド表面403から取り外すことを忘れてしまうことが起こり得る。たとえユーザが以前に製造された実際の物体を取り外した場合であっても、固体の部分がいくつかビルド表面403上に残ることが起こり得る。これらは、例えば、たとえそれらが製造する実際の物体の一部を形成しなかったとしても、機械的安定性を提供するために、以前の3D印刷ジョブの一部として生成されなければならなかった支持ストランドまたはブリッジまたは基層であり得る。
【0076】
ビルド表面に何か固体が付着した状態でビルドプラットフォームを最初の極限位置に移動させることは、バットの底部を壊したり、ビルドプラットフォームの移動機構および/または支持構造に損傷を与えたりするなど、深刻な結果を招く場合がある。考えられる防護対策の1つは、ビルドプラットフォームを最初の極限位置に向かって移動させるときに移動機構が受ける荷重を監視し、荷重が増大しているように見える場合にその移動を停止することである。しかし、移動機構の荷重が増大していることを観察することは、ビルド表面上の望ましくない固体残留物とバットの底部との間にすでに接点が形成されており、すでに遅すぎるかもしれないことを意味する。
【0077】
図9~
図12は、(第2の)光放射器902および光学撮像検出器501を使用して、ビルド表面403上に望ましくない固体残留物が存在する場合に、ビルドプラットフォーム402が誤ってバット401の底部に近づき過ぎないようにするのに役立つ防護対策を設定する原理を示す。当該原理は、第2の光放射器902が光学撮像検出器501の視野内にある間に、第2の光放射器902を使用してパターンをビルド表面403上に投影し、前記パターンの反射を調べて、この反射の観察された形態が、ちょうどそこにあるべき平面以外のものが存在する可能性があることを示すかどうかを判断することに基づいている。
【0078】
前述の説明から、光造形装置は、ビルドプラットフォーム402を第1の極限位置と第2の極限位置との間の作業移動範囲内で移動させるように構成された移動機構を有することが思い出され得る。第2の光放射器902は、ビルドプラットフォーム4302が前記第1の極限位置と前記第2の極限位置との間の少なくとも1つの所定位置にあるときに、ビルド表面403上にパターンを投影するように構成されている。光学撮像検出器501は、ビルドプラットフォーム402が前記所定の位置にあるときに前記投影されたパターンの反射がその視野内にあるように設置され、方向付けられている。光造形装置のコントローラは、光学撮像検出器501から光学像データを受け取るために、光学撮像検出器501に結合されている。また、コントローラは、前記光学画像データを使用して、ビルド表面のデフォルト形態からの例外がないかビルド表面403を検査するように構成されている。
【0079】
ビルド表面403のどの部分も望ましくない固体残留物を含まないことを確認するためには、投影されたパターンでビルド表面403全体を覆うことが有利であろう。これは、例えば、レーザ源と、レーザビームを互いに近いドットの規則的な二次元マトリックスに分配するレンズとを使用することによって行うことができる。そして、マシンビジョンアルゴリズムが、光学撮像検出器501によって撮像された画像を分析して、その画像に見られるドットのアレイに何らかの不規則性があるか否かを伝えることができる。
【0080】
図9~12の実施形態では、わずかに異なるアプローチが採用されている。第2の光放射器902は、ビルド表面403の影響を受けた部分に前記パターンを投影するように構成されており、この影響を受けた部分は、ビルドプラットフォーム402が
図11の矢印1101に従って第1の極限位置と第2の極限位置との間の途中の位置の範囲を移動するときに、ビルド表面403を横切って位置を変える。
【0081】
前記位置範囲は、第1の極端位置と第2の極端位置との間の全範囲を占める必要はなく、好ましくは、それの小さなサブ範囲のみを占める。しかし、この位置範囲全体にわたって、光学撮像検出器501は、投影されたパターンの反射が現れる、ビルド表面403の少なくともその部分を見るべきである。換言すれば、前記位置範囲内の各位置は、上記した所定の位置、つまり、第2の光放射器902によってビルド表面403上に投影されたパターンの反射が光学撮像検出器501の視野内にある位置でなければならない。
【0082】
この実施形態では、第2の光放射器902が光放射を放出する方法は、ビルドプラットフォーム402が前記位置範囲を移動する間、同じままであってもよい。前記移動によって、放出された光放射が、前記位置範囲の各位置でビルド表面403の異なる部分に当たるようになるため、結局、放出された光放射は、次々にビルド表面403の実質的に全ての部分に当たったことになる。放出された光放射がビルド表面403の完全に平坦な(またはその他周知の)形態上に生成すべき反射の形態を知っていることにより、このような予想される形態からの例外が光学撮像検出器501によって観察されれば、それは、そこにはないはずの何かがビルド表面403上にあることを意味する。
【0083】
図9~
図12に示す実施形態において、第2の光放射器902は、ビルド表面403の影響を受けた部分に、レーザ光の少なくとも1つの分散反射を投影するように構成されたレーザである。先に説明した第1の光放射器901の実施形態と同様の比較的単純なアプローチが使用される場合、第2の光放射器902のレーザは、少なくとも1つのレーザ源と、前記レーザ源によって生成された線状レーザビームを扇状の形状に広げるように構成された少なくとも1つのレンズと、を有することができる。ビルド表面403に連続して生成されるパターンは、ビルドプラットフォーム402が存在する高さに依存する位置でビルド表面403と交差する直線1102である。
【0084】
光造形装置のコントローラは、マシンビジョンプロセスを実行して、光学撮像検出器501から受信した光学画像データがビルド表面403のデフォルト形態からの例外を示すかどうかを決定するように構成され得る。ビルド表面403が平坦であり、第2の光放射器902が扇形のレーザビームを生成する上記の実施形態において、コントローラは、まず、光学撮像検出器501によって撮影された全ての画像であって扇形のレーザビームの観察された反射がビルド表面403上に現れる全ての画像を見つけて選択することができる。これらの選択された画像のそれぞれにおいて、コントローラは、扇形レーザビームの観察された反射に寄与する画素の、画像フレームの座標系内の座標を調べることができる。コントローラは、これらの画素の座標に直線を当てはめ、前記画素の座標がその当てはめられた直線の方程式にどれだけ良好に従うかを示す1つまたは複数の統計的記述子を算出することができる。これらの統計的記述子のいずれかがある所定の閾値よりも大きい場合、コントローラは、ビルド表面403のデフォルト形態からの例外が見つかったと判断することができる。
【0085】
ビルド表面上の投影されたパターンの観察された反射の代わりに(または加えて)、ある他の表面上の二次反射を使用することができる。ビルド表面がきれいであれば、例えば、ビルドプラットフォームの移動中にそのビルドプラットフォームの隣にある本体部の垂直面に、規則的に形成された二次反射を生成することができる。ビルド表面上に固化した樹脂が残存していると、二次反射に歪みが生じる場合がある。これは、ビルド表面上の(一次)反射に関連して上述したのと同様の方法で検出することができる。
【0086】
一般に、コントローラは、前記ビルド表面の前記デフォルト形態からの例外が見つからなかったことに対する応答として光造形装置の動作の継続を許容し、または、前記ビルド表面の前記デフォルト形態からの例外が見つかったことに対する応答として光造形装置の動作を中断するように構成され得る。動作を中断することは、ユーザインタフェースを介して当該装置のユーザに警告を与え、ユーザにビルド表面をチェックし、固化した樹脂の残留物を除去するように促すことを伴い得る。
【0087】
光造形は、樹脂のいくつかの厳密に限定された部分のみを光重合することに基づいていると考えると、意図しない光重合を引き起こす可能性がある他の目的(ビルド表面のデフォルト形態からの例外がないかビルド表面を検査するなど)のためにこのような光放射器を使用しないように注意すべきである。したがって、第2の光放射器902は、所定のカットオフ波長よりも長いかまたはせいぜい等しい波長の光放射のみを放出するように構成されるように、選択されることが望ましい。前記カットオフ波長は、光造形において樹脂を光重合するのに使用される波長よりも長くなるように選択されるべきである。紫外線がしばしば光重合に使用されるため、前記カットオフ波長は、可視光の範囲内であり得る。レーザ光は単色であるため、第2の光放射器902にレーザ光源が使用される場合、レーザ光の波長は、前記カットオフ波長と同義である。当然、第2の光放射器902の波長は、その反射が光学撮像検出器501によって容易に検出可能であるように選択されなければならない。
【0088】
図19は、上記の実施形態の代わりに、またはそれに加えて、ビルド表面のデフォルト形態からの例外がないかビルド表面を検査するのに使用し得る実施形態を示す。
図19の実施形態において、少なくとも光学撮像検出器501が1つの位置にあるときに、ある所定の種類のパターン1901が光学撮像検出器501の視野内に現れる。さらに、パターン1901の位置は、光学撮像検出器501およびビルドプラットフォーム402のある相互位置決めにおいて後者が前者の視野内のパターン1901を部分的に覆うように、選択されている。特に、光学撮像検出器501およびビルドプラットフォーム402の前記相互位置決めにおいて、ビルド表面403に正確に沿って光学撮像検出器501から見たビューは、パターン1901と交差する。
【0089】
ビルド表面403が清浄で平面である場合、前記相互位置決めにおいて光学撮像検出器501によって撮像された画像は、直線に沿ってきれいに切られたパターン1901を示す。光造形装置のコントローラは、マシンビジョンプロセスを実行して、これが真であるかどうか、または、画像内に見えるパターン1901の部分が何らかの形で歪んで見えるかどうかを検査することができる。画像内に見えるパターン1901の部分を区切る線のいかなる歪みも、固化した樹脂の残存物がいくつかビルド表面403上に残されている可能性があることを示している。
【0090】
図19に現れる光学撮像検出器501およびビルドプラットフォーム402の相互位置決めは、例えば、ビルドプラットフォーム402が、
図19の矢印1902によって示されるように、光造形3D印刷の開始位置に向かって下方に移動するその移動中に達成され得る。前記相互位置決めを達成する別の可能性は、光学撮像検出器501が、光学撮像検出器501が設置される閉蓋の一部として、矢印1903によって示されるように下方に移動する場合である。また、前記相互位置決めは、ビルドプラットフォーム402または光学撮像検出器501のうちの少なくとも1つを、主としてある他の目的を果たす移動の一部としてではなく、単にこの目的のために意図的に移動させることによって達成され得る。
【0091】
図20は、一実施形態による光造形装置の一例のいくつかの部分を示す概略ブロック図である。
【0092】
コントローラ2001は、本装置の動作において中心的な役割を果たす。構造的かつ機能的には、少なくとも1つの内蔵メモリまたは着脱可能メモリを含むことができる1つ以上のメモリに記憶された機械可読命令を実行するように構成された1つ以上のプロセッサに基づくことができる。
【0093】
蓋機構2002は、作業領域を開閉する蓋を移動させる目的に役立つ機械的および電気的部品を有する。
【0094】
ビルドプラットフォーム機構2003は、ビルドプラットフォームをその第1の極限位置と第2の極限位置との間で移動させる目的を果たす機械的および電気的部品を有する。また、ビルドプラットフォーム機構2003は、ビルドプラットフォームの正確な角度位置決めを確実にするのに役立つ部品を有し得る。
【0095】
樹脂供給機構2004は、樹脂をバット内に送り出し、場合によっては、未使用の樹脂をバットからある長期保管場所に排出する目的を果たす機械的および電気的部品を有する。
【0096】
露光発光体部2005は、光造形3D印刷プロセス中に樹脂の選択的光重合を引き起こす放射線を制御可能に放出する目的を果たす機械的、電気的、および光学的部品を有する。
【0097】
露光放射器用冷却器部2006は、露光発光体部2005をその最適動作温度に維持する目的で機能する機械的、電気的、および熱的部品を有する。
【0098】
樹脂ヒータ部2007は、光造形3D印刷プロセスの間、適当な動作温度に樹脂を予備加熱し、そこに維持する目的に役立つ機械的、電気的、および熱的部品を有する。
【0099】
リーダおよび/またはセンサブロック2008は、リーダまたはセンサとして分類することができるすべてのデバイスを含む。例えば、光造形3D印刷プロセス中に樹脂を光重合すること以外の目的を果たす、前述の種類のすべての光学撮像検出器、ならびに光学発光体は、リーダおよび/またはセンサブロック2008に属する。
【0100】
光造形装置は、他のデバイスとデータを交換するためのデータインタフェース2009を有することができる。データインタフェース2009は、例えば、ある他のデバイスから、どのような種類の物体が光造形3D印刷によって生成されるべきかを記述する3Dモデリングデータを受信するために使用され得る。また、データインタフェース2009は、光造形装置の動作に関する診断データを監視コンピュータなどの他のデバイスに提供するために使用することもできる。
【0101】
光造形装置は、1人または複数のユーザと情報を交換するためのユーザインタフェース2010を有することができる。ユーザインタフェース2010は、光造形装置の隣のユーザとの即座の対話を容易にするための有形のローカルユーザインタフェース手段を有することができる。追加的または代替的に、ユーザインタフェース2010は、例えば、スマートフォンまたは他のパーソナルワイヤレス通信デバイスなどの別個のユーザのデバイスにインストールされたネットワークまたはアプリケーションを介して、光造形装置の遠隔動作を容易にするためのソフトウェアおよび通信手段を有することができる。
【0102】
光造形装置は、電力分配ネットワークからのACなどの動作電力を、装置の種々の部品によって必要とされる電圧および電流に変換し、そのような電圧および電流を装置の前記部品に安全かつ確実に送達するように構成された電源ブロック2011を有することができる。
【0103】
図21は、光造形装置を動作させる方法を概略的に示す図である。本方法のこの実施形態は、ステップ2101において、光学撮像検出器を使用して、光造形装置の作業領域の少なくとも一部から光学画像データを取得する工程を有する。本方法は、ステップ2102において、光造形装置のコントローラに前記光学画像データを伝達する工程と、ステップ2103において、前記光学画像データを光造形装置の動作の制御に使用する工程とを有する。
【0104】
図22は、本方法がステップ2101の前のステップ2201として、前記光造形装置のバットの一部に第1のパターンを光学的に投影する工程をどのように有することができるかを示す。この場合、
図21に示すステップ2101は、前記バットの前記一部または前記パターンの反射が現れる表面の光学画像のデジタル表現を生成する工程を有することができる。一方、ステップ2103は、前記デジタル表現を使用して前記バット内の樹脂の量を算出する工程を有することができる。ステップ2201で投影される第1のパターンは、スポット状のパターン、または前記バットのリムの一部で反射されたレーザ光の分散パターンであり得る。第1のパターンは、前記リムの一部を横切る線を有することができ、本方法は、前記デジタル表現から、前記線の残りの部分とは光学的に異なるように見える前記線の第1の反射部分の長さを検出する工程を有することができる。追加的または代替的に、第1のパターンは、バットの中央部分にスポットを含むことができ、本方法は、前記デジタル表現から、バット内の樹脂の表面レベルに応じて異なる位置に光学的に現れる二次反射の位置を検出する工程を有することができる。
【0105】
図23は、本方法がステップ2101の前のステップ2301として、前記光造形装置のビルドプラットフォームのビルド表面上に第2のパターンを光学的に投影する工程をどのように有することができるかを示す。この場合、
図21に示すステップ2101は、第2のパターンが投影される前記ビルド表面のその部分の光学像のデジタル表現を生成する工程を有することができる。一方、ステップ2103は、前記デジタル表現を使用して、前記ビルド表面のデフォルト形態からの例外がないか前記ビルド表面を検査する工程を有することができる。前記第2のパターンは、前記ビルド表面の前記部分を横切る線を含むことができ、本方法は、前記デジタル表現から、前記線の反射の任意の光学的に現れる不規則性を検出する工程を有することができる。本方法は、前記光学画像内に見出される前記第2のパターンの表現を前記第2のパターンのデフォルト表現と比較する工程をさらに有することができる。この方法は、前記パターンの前記表現が前記デフォルト表現と同じであることを見つけたことに対する応答として光造形装置の動作を継続させることを許可し、または、前記パターンの前記表現が前記デフォルト表現と異なることを見つけたことに対する応答として光造形装置の動作を中断することのいずれかをさらに有することができる。
【0106】
図24は、光造形装置を動作させる方法を概略的に示す図である。本方法のこの実施形態は、光造形装置のコントローラが動作パラメータについての値を取得することを可能にして、たとえ光造形装置自体の動作パラメータ値のどのライブラリにも事前にちょうどその樹脂に対する最適な動作パラメータ値が格納されていない場合であっても、その動作パラメータについての値が現在使用されている樹脂に最適であるようにするのに特に適している。
【0107】
図24の方法は、ステップ2401において、リーダ装置を使用して樹脂タンクからパラメータデータを読み込む工程を有する。ステップ2401で使用されるリーダ装置は、光学撮像検出器であってもよく、またはある他の種類のリーダ装置であってもよい。
【0108】
また、本方法は、読み込まれたパラメータデータを前記光造形装置のコントローラに伝達する工程を有する。通常、ステップ2402において、例えば、コントローラが光学撮像検出器または他の種類のリーダ装置から受信したデジタル画像データに現れたビット列が所定の復号化方法に従って数値に変換されるように、読み取りパラメータデータを復号化する必要がある。また、本方法は、ステップ2403において、前記伝達されたパラメータデータの一部を前記光造形装置の動作パラメータの値として使用する工程を有する。
【0109】
伝達されるパラメータデータの一部は、樹脂の予熱温度、層露光時間、層厚、ビルドプラットフォームの移動速度、および/または光造形3D印刷における2つの連続する方法ステップの間の待ち時間を含み、且つ、それとして使用され得る。伝達されたパラメータデータの一部を他の目的に使用することは、除外されない。
【0110】
本方法は、前記伝達されたパラメータデータの前記部分を、パラメータ値の許容範囲を示す情報と比較する工程を有することができる。この種の情報は、光造形装置が安全でないか、さもなければ推奨できないパラメータ値で動作しようとしないことを保証するために、光造形装置のメモリに予め記憶されてもよい。本方法は、参照符号2404で示されるように、前記伝達されたパラメータデータの前記一部が前記パラメータ値の許容範囲内にあることを見つけたことに対する応答として光造形装置の動作を継続することを許容する工程を有することができる。また、本方法は、参照符号2406で示されるように、前記伝達されたパラメータデータの前記一部が前記パラメータ値の許容範囲外であることを見つけたことに対する応答としてステップ2405に従って光造形装置の動作を阻止または中断する工程を有することができる。
【0111】
技術の進歩に伴い、本発明の基本概念を様々な方法で実施することができることは、当業者には明らかである。したがって、本発明およびその実施形態は上述の例に限定されず、その代わりに、特許請求の範囲内で変更することができる。