(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】腫瘍特異的殺傷アデノウイルスおよび免疫チェックポイント阻害剤を含む抗癌用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/761 20150101AFI20230714BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230714BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230714BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230714BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230714BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230714BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20230714BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20230714BHJP
C12N 15/19 20060101ALN20230714BHJP
【FI】
A61K35/761
A61K45/00
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
C12N7/01 ZNA
C12N15/24
C12N15/19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021071018
(22)【出願日】2021-04-20
(62)【分割の表示】P 2019547084の分割
【原出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】10-2017-0026339
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519209439
【氏名又は名称】ジーンメディスン・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チェ・オク・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョ・ミン・アン
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】Oncotarget, 2016, Vol.7, No.51, pp.84965-84980
【文献】Biomedicines, 2016, Vol.4, No.23, pp.1-14
【文献】Cancer Immunol Res., 2015, 3(5):449-54
【文献】Molecular Therapy, 2016, Vol.24, Supp.1, pp.S203, Abstract Number:509
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 39/00-39/44
A61K 45/00-45/08
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00-15/90
CAplus/WPIDS/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の予防または治療用薬学的組成物であって、前記組成物が、(a)IL-12(Interleukin 12)を暗号化する遺伝子
、および、VEGF(Vascular endothelial growth factor)の発現を抑制するshRNA(short hairpin ribonucleic acid)を暗号化する遺伝子を含む
、組換え腫瘍溶解性(oncolytic)アデノウイルス
;(b)薬学的に許容される担体(carrier);および(c)免疫チェックポイント阻害剤を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記組換えアデノウイルスは、E1BおよびE3領域よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上の領域が欠失されていることを特徴とする、請求項1に記載の
薬学的組成物。
【請求項3】
前記組換えアデノウイルスは、前記E1B領域にIL-12を暗号化する遺伝子が挿入されており、および、
前記E3領域にVEGF(Vascular endothelial growth factor)の発現を抑制するshRNAを暗号化する遺伝子が挿入されているものである、請求項2に記載の
薬学的組成物。
【請求項4】
前記組換えアデノウィルスは、免疫チェックポイント阻害剤と同時に、別途に、または順次に併用投与されるものである、請求項
1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1(programmed cell death-1)拮抗剤、PD-L1(programmed cell death-ligand 1)拮抗剤、PD-L2(programmed cell death-ligand 2)拮抗剤、CD27(cluster of differentiation 27)拮抗剤、CD28(cluster of differentiation 28)拮抗剤、CD70(cluster of differentiation 70)拮抗剤、CD80(cluster of differentiation 80、also known as B7-1)拮抗剤、CD86(cluster of differentiation 86、also known as B7-2)拮抗剤、CD137(cluster of differentiation 137)拮抗剤、CD276(cluster of differentiation 276)拮抗剤、KIRs(killer-cell immunoglobulin-like receptors)拮抗剤、LAG3(lymphocyte-activation gene 3)拮抗剤、TNFRSF4(tumor necrosis factor receptor superfamily、member 4、also known as CD134)拮抗剤、GITR(glucocorticoid-induced TNFR-related protein)拮抗剤、GITRL(glucocorticoid-induced TNFR-related protein ligand)拮抗剤、4-1BBL(4-1BB ligand)拮抗剤、CTLA-4(cytolytic T lymphocyte associated antign-4)拮抗剤、A2AR(Adenosine A2A receptor)拮抗剤、VTCN1(V-set domain-containing T-cell activation inhibitor 1)拮抗剤、BTLA(B- and T-lymphocyte attenuator)拮抗剤、IDO(Indoleamine 2、3-dioxygenase)拮抗剤、TIM-3(T-cell Immunoglobulin domain and Mucin domain3)拮抗剤、VISTA(V-domain Ig suppressor of T cell activation)拮抗剤、およびKLRA(killer cell lectin-like receptor subfamily A)拮抗剤、およびこれらの組合せよりなる群から選ばれるいずれか一つである、請求項
1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記癌は、胃癌、肺癌、非小細胞性肺癌、乳癌、卵巣癌、肝癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、すい臓癌、膀胱癌、結腸癌、子宮頸癌、骨癌、非小細胞性骨癌、血液癌、皮膚癌、頭部または頸部癌、子宮癌、直腸癌、肛門付近癌、卵管癌、子宮内膜癌、膣癌、陰門癌、ホジキン病(Hodgkin’s disease)、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、リンパ球リンパ腫、腎臓または輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫、唾液腺腫瘍、肉腫癌、仮性粘液腫、肝芽腫、睾丸癌、膠芽腫、口脣癌、卵巣生殖細胞腫瘍、基底細胞癌、多発性骨髄腫、胆のう癌、脈絡膜黒色腫、ファーテル膨大部癌、腹膜癌、舌癌、小細胞癌、小児リンパ腫、神経芽細胞腫、十二指腸癌、星状細胞腫、髄膜腫、腎盂癌、外陰部癌、胸腺癌、中枢神経系(central nervous system、CNS)腫瘍、1次中枢神経系リンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫および脳下垂体腺腫よりなる群から選ばれるいずれか一つである、請求項
1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記癌は、再発癌(Recurrent cancer)であることを特徴とする、請求項
1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記組成物は、抗腫瘍免疫性(Antitumor immunity)を増進させることを特徴とする、請求項
1に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍特異的殺傷アデノウイルスおよび免疫チェックポイント阻害剤を含む抗癌用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療剤の急速な発展にもかかわらず、癌は、依然として全世界的に死亡率が高い疾患の一つである。既存の臨床的に使用されている主な癌治療方法は、外科的手術、放射線治療、抗癌剤治療方法であるか、またはこれを併行する治療として最大限癌細胞を患者から除去する方法である。しかし、このような治療は、比較的初期癌であって、転移にならない状態で、癌細胞を完全に除去したときにのみ治療効果を示し、早く分裂する他の正常な細胞も殺して、様々な副作用を起こすことができるという短所がある。したがって、最近には、免疫治療方法として、身体の腫瘍特異的免疫活性を利用した癌を治療する研究がなされている。
【0003】
しかし、癌は、腫瘍内免疫抑制環境(immunosuppression tumor microenvironment)を誘導することによって、多様な宿主免疫反応を巧妙に回避し、破壊して、結果的に、腫瘍の生存を持続的に維持すると共に、免疫体系が活性化したとしても、活性化した抗腫瘍免疫反応から逃避できる能力を有するという点から、免疫治療に困難を経験しているのが現状である。したがって、腫瘍内免疫抑制環境を改善して癌細胞に対する免疫反応を増進させるために、IL-12、IL-18、IL-23、IFN-γ(interferon-gamma)、GM-CSF(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)、TNF-α(tumor necrosis factor alpha)のようなサイトカイン遺伝子、B7分子のような同時刺激誘発因子、直接的に抗原提示細胞(antigen presenting cell;APC)の役割をする樹枝状細胞(dendritic cell;DC)、腫瘍抗原で活性化させたT細胞、自然殺害細胞(natural killer cell;NK)等を利用した研究が多角的に進行されている。特に、IL-12は、主に単核細胞(monocytes)、大食細胞(macrophages)、DCなどのようなAPCから分泌され、癌細胞を効果的に除去できる細胞毒性T細胞(cytotoxic T lymphocyte;CTL)とNK細胞に直接作用してこれらを活性化させ、IFN-γの分泌を誘導すると共に、癌細胞に対する殺傷能力も増強させると知られている。また、ナイーブ(naive)CD4+リンパ球に作用してTh1(T helper 1)細胞への分化を促進させて、抗癌免疫反応に中枢的な役割をする細胞媒介免疫反応(cell-mediated immune response)を誘導し、増強させることによって、抗癌免疫反応を活性化させるのに重要な役割をする。また、VEGFは、血管形成および血管新生を促進させる細胞により生産される信号タンパク質であって、骨髄でT細胞前駆体に影響を与えて、T細胞および樹枝状細胞の増殖および成熟を抑制すると共に、血管新生において重要な機能をして、癌転移という副作用を示す。したがって、VEGFは、腫瘍成長の促進因子だけでなく、抗癌免疫における抑制因子としても作用し、VEGF shRNAによるVEGF下向き調節によって免疫反応が回復され、抗癌効果が増加すると予想される。また、GM-CSFは、DCを刺激してAPCへの分化を促進させて、CD4+およびCD8+T細胞の免疫反応を強化させる役割をし、また、1次単核細胞(primary monocyte)でMHC(major histocompatibility complex)classIIを構成する分子の発現調節にも関与する。また、腫瘍内にGM-CSF発現の効果によって腫瘍の周辺に多くのAPCが集まるように誘導することによって、腫瘍抗原を効果的にプロセッシングして、強い抗癌免疫反応が誘導されることが報告されたことがある。
【0004】
これに基づいて、本研究室でも、E1B 55kDa遺伝子が消失した腫瘍選択的殺傷アデノウイルスであるYKL-1(Ad-E1B55)を利用して、IL-12の抗腫瘍効果を報告したことがあり、E1B遺伝子の消失とE1AのRb結合部位が変異されて腫瘍選択的殺傷能が増進されたRdBアデノウイルスを利用して、GM-CSFの抗腫瘍効果も報告したことがある。しかし、腫瘍内免疫抑制環境が改善されても、腫瘍の低い免疫原性によって依然として免疫治療法で癌を完全に治療するには多くの限界点を表わしているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、腫瘍の免疫監視(immune surveillance)回避を克服するための免疫治療療法を開発するために鋭意努力した結果、IL-12およびshVEGF(vascular endothelial growth factor(VEGF)-targeting short hairpin ribonucleic acid)、またはIL-12およびGM-CSF-Relaxinを同時に発現する組換えアデノウイルスを製造して、これらの優れた抗癌効果をin vivo上で確認しただけでなく、免疫チェックポイント阻害剤との併用を通じて組換えアデノウイルスの抗癌効果が向上することを確認し、これに基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
したがって、本発明の目的は、IL-12およびshVEGF、またはIL-12およびGM-CSF-Relaxinを同時発現する組換えアデノウイルスを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、癌の予防または治療のための前記組換えアデノウイルスの医薬的用途を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、免疫チェックポイント阻害剤との併用製剤として、癌の予防または治療のための前記組換えアデノウイルスの医薬的用途を提供することにある。
【0009】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明は、IL-12(Interleukin 12)を暗号化する遺伝子;GM-CSF(Granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)を暗号化する遺伝子;およびRelaxinを暗号化する遺伝子を含む組換えアデノウイルス、またはIL-12(Interleukin 12)を暗号化する遺伝子;およびVEGF発現を抑制するshRNAを暗号化する遺伝子を含む組換えアデノウイルスを提供する。
【0011】
本発明の一具現例として、前記組換えアデノウイルスは、E1およびE3領域よりなる群から選ばれるいずれか一つ以上の領域が欠失されていてもよい。
【0012】
本発明の他の具現例として、前記IL-12を暗号化する遺伝子は、IL-12A(p35)遺伝子配列、IRES配列およびIL-12B(p40)遺伝子配列を含み、組換えアデノウイルスのE1またはE3領域に挿入されていてもよい。
【0013】
本発明のさらに他の具現例として、前記GM-CSFおよびRelaxinを暗号化する遺伝子は、GM-CSF遺伝子配列、IRES配列、およびRelaxin遺伝子配列を含み、組換えアデノウイルスのE1またはE3領域に挿入されていてもよい。
【0014】
本発明のさらに他の具現例として、前記VEGF発現を抑制するshRNAを暗号化する遺伝子は、VEGFのmRNAに相補的に結合し、組換えアデノウイルスのE1またはE3領域に挿入されていてもよい。
【0015】
また、本発明は、前記組換えアデノウイルス;および薬学的に許容される担体を含む癌の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0016】
本発明の一具現例として、前記組成物は、PD-1拮抗剤、PD-L1拮抗剤、PD-L2拮抗剤、CD27拮抗剤、CD28拮抗剤、CD70拮抗剤、CD80拮抗剤、CD86拮抗剤、CD137拮抗剤、CD276拮抗剤、KIRs拮抗剤、LAG3拮抗剤、TNFRSF4拮抗剤、GITR拮抗剤、GITRL拮抗剤、4-1BBL拮抗剤、CTLA-4拮抗剤、A2AR拮抗剤、VTCN1拮抗剤、BTLA拮抗剤、IDO拮抗剤、TIM-3拮抗剤、VISTA拮抗剤、およびKLRA拮抗剤、およびこれらの組合よりなる群から選ばれるいずれか一つの免疫チェックポイント阻害剤と併用投与され得る。
【0017】
本発明の他の具現例として、前記組成物は、抗腫瘍免疫性を増進させることができる。
【0018】
本発明のさらに他の具現例として、前記癌は、胃癌、肺癌、非小細胞性肺癌、乳癌、卵巣癌、肝癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、すい臓癌、膀胱癌、結腸癌、子宮頸癌、骨癌、非小細胞性骨癌、血液癌、皮膚癌、頭部または頸部癌、子宮癌、直腸癌、肛門付近癌、卵管癌、子宮内膜癌、膣癌、陰門癌、ホジキン病(Hodgkin’s disease)、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、リンパ球リンパ腫、腎臓または輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫、唾液腺腫瘍、肉腫癌、仮性粘液腫、肝芽腫、睾丸癌、膠芽腫、口脣癌、卵巣生殖細胞腫瘍、基底細胞癌、多発性骨髄腫、胆のう癌、脈絡膜黒色腫、ファーテル膨大部癌、腹膜癌、舌癌、小細胞癌、小児リンパ腫、神経芽細胞腫、十二指腸癌、尿管癌、星状細胞腫、髄膜腫、腎盂癌、外陰部癌、胸腺癌、中枢神経系(central nervous system、CNS)腫瘍、1次中枢神経系リンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫および脳下垂体腺腫よりなる群から選ばれ、また、前記癌は、再発癌であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
IL-12およびshVEGF、またはIL-12およびGM-CSF-Relaxinが導入された、本発明の組換えアデノウイルスは、免疫機能を向上させて、優れた抗癌効果を示し、このような抗癌効果は、免疫チェックポイント阻害剤との併用を通じて顕著に増進されることを確認することができたところ、本発明は、癌治療分野の核心技術に活用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、IL-12とVEGF shRNAを同時発現する腫瘍殺傷アデノウイルスの特徴を示したものであって、RdB/IL12/shVEGF Adの遺伝的構造を模式化した図である。RdBは、変異されたE1A(open star-Rbタンパク質結合部位の突然変異)を含んでおり、E1B 19および55kDa(E1B)、およびE3領域(E3)が欠失されており;マウスIL-12およびマウスshVEGFは、アデノウイルスゲノムのE1またはE3領域にそれぞれ挿入された。
【
図2】
図2は、IL-12とGM-CSFおよびRelaxin(GMCSF-Relaxin)を同時発現する腫瘍殺傷アデノウイルスの特徴を示したものであって、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adの遺伝的構造を模式化した図である。IL-12およびGMCSF-Relaxinは、アデノウイルスゲノムのE1またはE3領域にそれぞれ挿入された。GMCSFとRelaxinは、IRES(internal ribosome entry site)により連結された発現システムによっても発現することができ、本発明でIRESは、複数種のウイルスおよび細胞のRNAsで発見される調節配列である。
【
図3a】
図3は、黒色腫マウスにおいてRdB/IL12/shVEGF Adの投与、およびRdB/IL12/shVEGF Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1抗体)の併用による抗癌効果を確認したものであって、
図3aは、腫瘍の体積変化を確認した結果であり、
図3bは、黒色腫マウスの生存率の変化を確認した結果である。C57BL/6マウスの腫瘍内にAd 5×10
9 viral particle(VP)(
図3a;初期腫瘍体積:80~100mm
3)アデノウイルスを1日、3日および5日目に投与し、抗PD-L1抗体を200μgで腹腔内に投与した。腫瘍の体積は、実験終了時まで毎日モニタリングして記録した。赤色の矢印は、アデノウイルスの注入時期を、黒色の矢印は、抗体の注入時期を示す。
【
図3b】
図3は、黒色腫マウスにおいてRdB/IL12/shVEGF Adの投与、およびRdB/IL12/shVEGF Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1抗体)の併用による抗癌効果を確認したものであって、
図3aは、腫瘍の体積変化を確認した結果であり、
図3bは、黒色腫マウスの生存率の変化を確認した結果である。C57BL/6マウスの腫瘍内にAd 5×10
9 viral particle(VP)(
図3a;初期腫瘍体積:80~100mm
3)アデノウイルスを1日、3日および5日目に投与し、抗PD-L1抗体を200μgで腹腔内に投与した。腫瘍の体積は、実験終了時まで毎日モニタリングして記録した。赤色の矢印は、アデノウイルスの注入時期を、黒色の矢印は、抗体の注入時期を示す。
【
図4a】
図4は、黒色腫マウスにおいてRdB/IL12/GMCSF-RLX Adの投与、およびRdB/IL12/GMCSF-RLX Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1抗体)の併用による抗癌効果を確認したものであって、
図4aは、腫瘍の体積変化を確認した結果であり、
図4bは、黒色腫マウスの生存率の変化を確認した結果である。
【
図4b】
図4は、黒色腫マウスにおいてRdB/IL12/GMCSF-RLX Adの投与、およびRdB/IL12/GMCSF-RLX Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1抗体)の併用による抗癌効果を確認したものであって、
図4aは、腫瘍の体積変化を確認した結果であり、
図4bは、黒色腫マウスの生存率の変化を確認した結果である。
【
図5】
図5は、黒色腫マウスにおいてRdB/IL12/shVEGF Adの投与およびRdB/IL12/shVEGF Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の併用による抗癌効果を確認したものであって、相対的に低い用量である1×10
9 VPのRdB/IL12/shVEGF Adを投与した場合、腫瘍の体積変化を確認した結果である。
【
図6】
図6は、黒色腫マウスにおいてRdB/IL12/GMCSF-RLX Adの投与、およびRdB/IL12/GMCSF-RLX Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の併用による抗癌効果を確認したものであって、相対的に低い用量である1×10
9 VPのRdB/IL12/GMCSF-RLX Adを投与した場合、腫瘍の体積変化を確認した結果である。
【
図7】
図7は、黒色腫マウスにおいてHmT-Rd19-K35/IL21 Ad、RdB/GMCSF/shVEGF Ad、およびYKL-1/GMCSF/B7.1 Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の併用による抗癌効果を確認した結果である。
【
図8a】
図8は、黒色腫マウスにおいてRdB/IL12/GMCSF-RLX Adの投与、およびRdB/IL12/GMCSF-RLX Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の併用による抗癌効果を確認したものであって、
図8aは、腫瘍の体積変化を確認した結果であり、
図8bは、黒色腫マウスの生存率の変化を確認した結果である。
【
図8b】
図8は、黒色腫マウスにおいてRdB/IL12/GMCSF-RLX Adの投与、およびRdB/IL12/GMCSF-RLX Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の併用による抗癌効果を確認したものであって、
図8aは、腫瘍の体積変化を確認した結果であり、
図8bは、黒色腫マウスの生存率の変化を確認した結果である。
【
図9a】
図9は、黒色腫マウスにおいてRdB/IL12/GMCSF-RLX Adの投与、およびRdB/IL12/GMCSF-RLX Adと免疫チェックポイント阻害剤(項CTLA-4抗体)の併用による抗癌効果を確認したものであって、
図9aは、腫瘍の体積変化を確認した結果であり、
図9bは、黒色腫マウスの生存率の変化を確認した結果である。
【
図9b】
図9は、黒色腫マウスにおいてRdB/IL12/GMCSF-RLX Adの投与、およびRdB/IL12/GMCSF-RLX Adと免疫チェックポイント阻害剤(項CTLA-4抗体)の併用による抗癌効果を確認したものであって、
図9aは、腫瘍の体積変化を確認した結果であり、
図9bは、黒色腫マウスの生存率の変化を確認した結果である。
【
図10a】
図10は、黒色腫マウスにおいてRdB/IL12/shVEGFの投与、およびRdB/IL12/shVEGF Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1抗体)の併用による抗癌免疫記憶(antitumor immune memory)効果を確認したものであって、
図10aは、RdB/IL12/shVEGF Adを投与した場合、2次腫瘍の体積変化を確認した結果であり、
図10bは、RdB/IL12/shVEGF Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)を併用した場合、2次腫瘍の体積変化を確認した結果である。
【
図10b】
図10は、黒色腫マウスにおいてRdB/IL12/shVEGFの投与、およびRdB/IL12/shVEGF Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1抗体)の併用による抗癌免疫記憶(antitumor immune memory)効果を確認したものであって、
図10aは、RdB/IL12/shVEGF Adを投与した場合、2次腫瘍の体積変化を確認した結果であり、
図10bは、RdB/IL12/shVEGF Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)を併用した場合、2次腫瘍の体積変化を確認した結果である。
【
図11】
図11は、シリアンハムスターのすい臓癌細胞株(Hap-T1)にRdB/IL12/GMCSF-RLX Adを感染させた後、multiplicityof infection(MOI)によるIL-12およびGMCSFの発現変化をEnzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)を通じて確認した結果である。
【
図12】
図12は、シリアンハムスターのすい臓癌細胞株(Hap-T1)にRdB/IL12/GMCSF-RLX Adを感染させた後、MOIによるRelaxinの発現変化をReverse transcription polymerase chain reaction(RT-PCR)を通じて確認した結果である。
【
図13】
図13は、シリアンハムスターの腫瘍動物モデルにおいてRdB/IL12/GMCSF-RLX Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の併用による腫瘍の体積変化を確認した結果である。
【
図14】
図14は、シリアンハムスターの腫瘍動物モデルにおいてRdB/IL12/GMCSF-RLX Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の併用による腫瘍組織の変化を免疫組織学的方法で確認した結果である。
【
図15】
図15は、draining lymph node(DLN)でRdB/IL12/GMCSF-RLX Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の併用によるinterferon(IFN)-γ-発現CD4
+またはCD8
+ T細胞の群集変化を確認した結果である。
【
図16】
図16は、腫瘍組織内浸潤されたリンパ球でRdB/IL12/GMCSF-RLX Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の併用によるinterferon(IFN)-γ-発現CD4
+またはCD8
+ T細胞の群集変化を確認した結果である。
【
図17】
図17は、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の併用による腫瘍組織内IFN-γの発現変化を確認した結果である。
【
図18】
図18は、免疫チェックポイント阻害剤に対する抵抗性を有する条件下で、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の併用による腫瘍の体積変化を確認した結果である。
【
図19】
図19は、免疫チェックポイント阻害剤に対する抵抗性を有する条件下で、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の併用による腫瘍の体積変化を投与後23日目に確認した結果である。
【
図20】
図20は、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adの投与による免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の腫瘍組織内浸透変化を確認したものであって、腫瘍組織内Alexa 488-αPD-1の蓄積を免疫蛍光分析を通じて定量化した結果である。
【
図21】
図21は、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adの投与による免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の腫瘍組織内浸透変化を確認したものであって、Alexa 488-αPD-1がCD4
+またはCD8
+ T細胞の発現部位に位置するか否かを免疫染色を通じて確認した結果である。
【
図22】
図22は、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adの投与による免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の浸透変化を全身を対象に確認したものであって、時間の経過による免疫Positron Emission Tomography(PET)イメージを分析した結果である。
【
図23】
図23は、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adの投与による免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の浸透変化を全身を対象として確認したものであって、腫瘍組織を含む多様な組織内
64CU-αPD-1の分布または吸収を%ID/gで評価して比較した結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明することとする。
【0022】
本発明は、(a)IL-12(Interleukin 12)を暗号化する遺伝子;GM-CSF (Granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)を暗号化する遺伝子;およびRelaxinを暗号化する遺伝子を含む組換えアデノウイルス、または(b)IL-12を暗号化する遺伝子;およびVEGF発現を抑制するshRNAを暗号化する遺伝子を含む組換えアデノウイルスを提供する。
【0023】
癌の免疫遺伝子治療法は、去る数十年間さらに有望な接近法として発展してきたが、腫瘍も、免疫監視体系を避けるために数多くの他の戦略を作ってきた。このような障害を克服し、抗癌免疫の効果を増進させるために、免疫抑制を回復し、抗癌免疫を増加させるための適切な治療アジュバント(adjuvant)として、IL-12および血管内皮成長因子(VEGF)shRNA(short hairpin RNA)、またはIL-12およびGM-CSF-Relaxinを同時発現する腫瘍殺傷アデノウイルス(RdB/IL12/shVEGF Ad、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad)システムを構築した。IL-12は、T helper 1細胞の分化を誘導し、細胞毒性Tリンパ球および自然殺傷細胞の細胞毒性を活性化させることによって、抗癌免疫を増加させる。shVEGFは、T細胞および樹枝状細胞の増殖および成熟を促進し、GM-CSFは、DCを刺激してAPCへの分化を促進させて、CD4+およびCD8+ T細胞の免疫反応を強化させる役割をすると知られており、このような効果は、IL-12機能をさらに増幅させるものと予想した。これより、本発明者らは、最初に腫瘍内にIL-2およびshVEGF、またはIL-12およびGM-CSF-Relaxinを同時発現するアデノウイルスを利用した免疫遺伝子治療を試みたという点から技術的特徴がある。本発明の一実施例では、前記組換えアデノウイルス(RdB/IL12/shVEGF Ad、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad)を黒色腫動物モデルに投与した結果、腫瘍の成長阻害率、完全寛解率、およびマウスの生存率が増加することを実験的に確認した。
【0024】
これだけでなく、IL-12は、抗癌免疫治療のための核心サイトカインとして多くの注目を受けており、特に、体内免疫が低下している患者を対象とする抗癌免疫治療療法では、有効な治療的効能を得るために、IL-12の反復投与が頻繁に考慮されているのが現状である。ただし、前記IL-12は、臨床的に全身、特に、腎臓に対するサイトカイン-関連毒性が知られていて、制限された用量の範囲内だけで癌治療剤として使用しなければならないという技術的限界を持っている。このような技術的背景下で、本発明によるIL-12遺伝子と追加遺伝子を同時発現する組換えアデノウイルスは、低いウイルス力価でも高い腫瘍殺傷効果を誘導することによって、従来の抗癌免疫治療の限界と指摘された、IL-12の高用量および反復投与による正常細胞に対する毒性問題を解消したという点からさらに他の技術的特徴がある。
【0025】
したがって、本発明の組換えアデノウイルスは、IL-12を暗号化する遺伝子を含み、GM-CSFを暗号化する遺伝子とRelaxinを暗号化する遺伝子、およびVEGF発現を抑制するshRNAを暗号化する遺伝子のうちいずれか一つを含むことを特徴とする。
【0026】
本発明で使用される「IL-12を暗号化する遺伝子」は、IL-12A(p35)遺伝子配列およびIL-12B(p40)遺伝子配列を含み、Viral Proteinの効果的な翻訳のために、IL-12A(p35)遺伝子配列とIL-12B(p40)遺伝子配列との間にIRES配列を含むことができる。好ましくは、前記IL-12A(p35)遺伝子配列は、配列番号1、前記IL-12B(p40)遺伝子配列は、配列番号2、前記IRES配列は、配列番号3の塩基配列からなり得るが、これらに制限されるものではない。
【0027】
本発明で使用される「GM-CSFを暗号化する遺伝子」および「Relaxinを暗号化する遺伝子」は、それぞれ、GM-CSF遺伝子配列およびRelaxin遺伝子配列を含み、これらも、GM-CSF遺伝子配列とRelaxin遺伝子配列との間にIRES配列を含むことができる。好ましくは、前記GM-CSF遺伝子配列は、配列番号4、前記Relaxin遺伝子配列は、配列番号5、前記IRES配列は、配列番号3の塩基配列からなり得るが、これらに制限されるものではない。
【0028】
本発明で使用される「VEGF発現を抑制するshRNAを暗号化する遺伝子」は、ヘアピン構造を有し、RNA妨害または遺伝子サイレンシングを媒介できる遺伝子を意味する。前記遺伝子は、VEGF mRNAに相補的な配列を含むが、用語「相補的」は、100%相補的な場合だけでなく、RNA妨害(interference)機序を通じてVEGF遺伝子の発現を抑制できるほどの不完全な相補性も包括する意味であり、好ましくは90%の相補性、より好ましくは98%の相補性、最も好ましくは100%の相補性を意味する。本明細書で100%相補性を表現する場合には、「完全相補的(completely complementary)」に特別に記載される。本明細書では、shVEGFとも記載し、これに制限されるものではないが、前記遺伝子は、配列番号6または配列番号7で表されるVEGFのmRNAに相補的に結合して、VEGFの発現を抑制することができる。
【0029】
前記遺伝子配列は、実質的な同一性(substantial identity)または実質的な類似性(substantial similarity)を示す遺伝子配列も含むものと解される。前記の実質的な同一性は、上記した本発明の配列と任意の他の配列を最大限対応するようにアラインし、当業界で通常用いられるアルゴリズムを利用してアラインされた配列を分析した場合に、最小80%の相同性、より好ましくは90%の相同性、最も好ましくは95%の相同性を示す配列を意味する。前記の実質的な類似性は、一つ以上の塩基の欠損または挿入のような遺伝子配列の変化が組換えアデノウイルスベクターとの相同性組換えを最小化する本発明の目的に影響を及ぼさない変化を総称する。したがって、本発明の遺伝子配列は、例示された配列番号1~配列番号6に限定されず、本発明が目的とする最終生成物の活性に実質的に影響を与えない限り、本発明の権利範囲に含まれると解される。
【0030】
一方、本発明の組換えアデノウイルスとしては、当業界で広く知られたoncolyticアデノウイルスが用いられる。本発明の一実施例では、前記組換えアデノウイルスは、活性のE1A遺伝子および不活性化したE1B 19遺伝子、E1B 55遺伝子またはE1B 19/E1B 55遺伝子を含む。本明細書で、遺伝子と関連して使用される用語「不活性化」は、その遺伝子の転写および/または解読が正常に行われず、その遺伝子によりコードされる正常なタンパク質の機能が現れないことを意味する。例えば、不活性化E1B 19遺伝子は、その遺伝子に変異(置換、付加、部分的欠失または全体的欠失)が発生して活性のE1B 19kDaタンパク質を生成しない遺伝子である。E1B 19が欠失される場合には、細胞アポトーシスを増加させることができ、E1B 55遺伝子が欠失された場合には、腫瘍細胞特異性を有するようにする(参照:韓国特許出願第2002-23760号)。本明細書でウイルスゲノム配列と関連して使用される用語「欠失」は、当該配列が完全に欠失されたものだけでなく、部分的に欠失されたものも含む意味を有する。
【0031】
本発明の一実施例によれば、前記組換えアデノウイルスは、E1A領域を含み、E1B領域、すなわちE1B 19および55kDa(E1B)が欠失されており、E3領域(E3)が欠失されている。E1A遺伝子を含む組換えアデノウイルスは、複製可能な特性を有するようになる。前記IL-12を暗号化する遺伝子は、組換えアデノウイルスの欠失されたE1B領域に挿入され、前記GM-CSFおよびRelaxinを暗号化する遺伝子またはVEGF発現を抑制するshRNAを暗号化する遺伝子は、E3領域に挿入される。一方、前記E1A部位は、ElA遺伝子配列に位置するRb結合部位をコードするヌクレオチド配列のうち45番目のGlu残基がGlyで置換された変異および121-127番目アミノ酸配列が全体的にGlyで置換された変異を有する。
【0032】
一方、前記アデノウイルス以外に他のウイルスも本発明で用いられる。本発明に用いられるウイルスは、好ましくはワクシニアウイルス(Puhlmann M.et al.、HumanGeneTherapy 10:649-657(1999))、レンチウイルス(Wang G.et al.、J.Clin.Invest.104(11):R55-62(1999))または単純ヘルペスウイルス(Chamber R.、et al.、Proc.Natl.Acad.Sci USA 92:1411-1415(1995))であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0033】
本発明で用いられる組換えアデノウイルスは、動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞で作動可能なプロモーターを含む。本発明に適合したプロモーターは、哺乳動物ウイルスに由来するプロモーターおよび哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーターを含み、例えば、CMV(Cytomegalovirus)プロモーター、U6プロモーターおよびH1プロモーター、MLV(Murine Leukemia Virus)LTR(Long terminal repeat)プロモーター、アデノウイルス初期プロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、RSVプロモーター、EF1アルファプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ベータ-アクチンプロモーター、ヒトIL-2遺伝子のプロモーター、ヒトIFN遺伝子のプロモーター、ヒトIL-4遺伝子のプロモーター、ヒトリンフォトキシン遺伝子のプロモーター、ヒトGM-CSF遺伝子のプロモーター、inducibleプロモーター、癌細胞特異的プロモーター(例えば、TERTプロモーター、modified TERTプロモーター、PSAプロモーター、PSMAプロモーター、CEAプロモーター、Survivinプロモーター、E2Fプロモーター、modified E2Fプロモーター、AFPプロモーター、modified AFPプロモーター、E2F-AFP hybridプロモーター、およびE2F-TERT hybridプロモーター)および組織特異的プロモーター(例えば、アルブミンプロモーター)、ヒトホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターを含むが、これらに限定されるものではない。最も好ましくは、CMVプロモーターである。トランス遺伝子を発現させるための発現コンストラクトでトランス遺伝子のダウンストリームにポリアデニル化配列が結合されていることが好ましい。前記ポリアデニル化配列は、ウシ成長ホルモンターミネーター(Gimmi、E.R.、et al.、NucleicAcids Res.17:6983-6998(1989))、SV40由来ポリアデニル化配列(Schek、N、et al.、Mol.Cell Biol.12:5386-5393(1992))、HIV-1 polyA(Klasens、B.I.F.、et al.、Nucleic Acids Res.26:1870-1876(1998))、β-グロビンpolyA(Gil、A.、et al、Cell 49:399-406(1987))、HSV TK polyA(Cole、C.N.and T.P.Stacy、Mol.Cell.Biol.5:2104-2113(1985))またはポリオーマウイルスpolyA(Batt、D.B and G.G.Carmichael、Mol.Cell.Biol.15:4783-4790(1995))を含むが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明で用いられる組換えアデノウイルスにおいて、IL-12遺伝子配列とGM-CSF-Relaxin遺伝子配列またはshVEGF遺伝子配列は、プロモーターに作動的に連結されている。本明細書で、用語「作動的に結合される核酸発現調節配列(例:プロモーター、シグナル配列、または転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸配列間の機能的な結合を意味し、これによって、前記調節配列は、前記他の核酸配列の転写および/または解読を調節することになる。
【0035】
本発明の組換えアデノウイルスは、選択標識として抗生剤耐性遺伝子およびレポータ遺伝子(例えば、GFP(green fluorescence protein)、ルシフェラーゼおよびβ-グルクロニダーゼ)をさらに含むことができる。前記抗生剤耐性遺伝子は、当業界で通常用いられる抗生剤耐性遺伝子を含み、例えばアンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシンおよびテトラサイクリンに対する耐性遺伝子があり、好ましくはネオマイシン耐性遺伝子である。前記の選択標識は、別途のプロモーターまたはIRES(internal ribosome entry site)、2A system(F2A system、P2A system、T2A system)により連結された発現システムによっても発現することができ、本発明で用いられるIRESは、複数種のウイルスおよび細胞のRNAsで発見される調節配列である。
【0036】
本発明の他の様態として、前記組換えアデノウイルス、および薬学的に許容される担体(carrier)を含む癌の予防または治療用薬学的組成物;癌の予防または治療のための前記組換えアデノウイルスの医薬的用途;および治療学的有効量の前記組換えアデノウイルスを個体に投与する段階を含む癌の治療方法を提供する。
【0037】
本発明の薬学的組成物は、上述した組換えアデノウイルスを利用するので、これらの両者間に共通した内容は、本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0038】
本発明で使用される用語「予防」とは、本発明による薬学的組成物の投与によって癌(腫瘍)を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0039】
本発明で使用される用語「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与によって癌(腫瘍)に対する症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0040】
本発明で 用語「個体」とは、病気の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非ヒトである霊長類、げっ歯類(ラット、ネズミ、ギニアピッグなど)、マウス(mouse)、犬、猫、馬、牛、ヒツジ、豚、ヤギ、ラクダ、レイヨウなどの哺乳類を意味する。
【0041】
本発明の薬学的組成物による予防または治療対象病気である「癌(cancer)」は、細胞が正常な成長限界を無視し、分裂および成長する攻撃的(aggressive)特性、周囲組織に浸透する浸透的(invasive)特性および体内外他の部位に広がる転移的(metastatic)特性を有する細胞による病気を総称する。本発明で前記癌は、悪性腫瘍(malignant tumor)と同じ意味に使用され、固体腫瘍および血液腫瘍(blood born tumor)を含むことができる。例えば、本発明で癌は、胃癌、肺癌、非小細胞性肺癌、乳癌、卵巣癌、肝癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、すい臓癌、膀胱癌、結腸癌、子宮頸癌、骨癌、非小細胞性骨癌、血液癌、皮膚癌、頭部または頸部癌、子宮癌、直腸癌、肛門付近癌、卵管癌、子宮内膜癌、膣癌、陰門癌、ホジキン病(Hodgkin’s disease)、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、リンパ球リンパ腫、腎臓または輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫、唾液腺腫瘍、肉腫癌、仮性粘液腫、肝芽腫、睾丸癌、膠芽腫、口脣癌、卵巣生殖細胞腫瘍、基底細胞癌、多発性骨髄腫、胆のう癌、脈絡膜黒色腫、ファーテル膨大部癌、腹膜癌、舌癌、小細胞癌、小児リンパ腫、神経芽細胞腫、十二指腸癌、尿管癌、星状細胞腫、髄膜腫、腎盂癌、外陰部癌、胸腺癌、中枢神経系(central nervous system、CNS)腫瘍、1次中枢神経系リンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫および脳下垂体腺腫よりなる群から選ばれるいずれか一つであってもよく、また、再発癌であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0042】
一方、本発明の薬学的組成物は、免疫チェックポイント阻害剤(Immune checkpoint inhibitor)をさらに含むことができる。
【0043】
本発明で使用される用語「免疫チェックポイント」は、免疫細胞表面で免疫反応の刺激または抑制信号を誘発するのに関与するタンパク質を総称し、癌細胞は、このような免疫チェックポイントを通じて免疫反応の刺激およびこれによる癌細胞の抑制が正確に進行されないように操作して免疫体系の監視網を回避することになる。好ましくは、前記免疫チェックポイントタンパク質は、PD-1拮抗剤、PD-L1拮抗剤、PD-L2拮抗剤、CD27拮抗剤、CD28拮抗剤、CD70拮抗剤、CD80拮抗剤、CD86拮抗剤、CD137拮抗剤、CD276拮抗剤、KIRs拮抗剤、LAG3拮抗剤、TNFRSF4拮抗剤、GITR拮抗剤、GITRL拮抗剤、4-1BBL拮抗剤、CTLA-4拮抗剤、A2AR拮抗剤、VTCN1拮抗剤、BTLA拮抗剤、IDO拮抗剤、TIM-3拮抗剤、VISTA拮抗剤、およびKLRA拮抗剤、またはこれらの組合せであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0044】
免疫チェックポイント阻害剤は、このような免疫チェックポイントタンパク質を標的とする拮抗剤または抗体であって、免疫反応を刺激させるタンパク質を増進させたり免疫反応を抑制するタンパク質を遮断して免疫反応による抗癌効果を示す。免疫チェックポイント阻害剤は、一般的な細胞毒性抗癌剤より嘔吐や脱毛のような副作用が少なく、治療効果が大きいという長所以外にも、記憶能に優れた免疫反応体系を利用するので、薬物投与を中断した後にも、治療効果が長期間持続され得るが、組換えアデノウイルスとの併用を通した抗癌効果増進については知られていないのが現状である。これより、本発明者らは、前記組換えアデノウイルスの抗癌効果を増進させるために、免疫チェックポイント阻害剤との併用を試み、免疫チェックポイント阻害剤との併用製剤として、癌の予防または治療のための前記組換えアデノウイルスの医薬的用途を提供したという点から、さらに他の技術的特徴がある。
【0045】
本発明の薬学的組成物は、有効成分以外に、薬学的に許容される担体を含むことができる。この際、薬学的に許容される担体は、製剤時に通常に用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。また、前記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適合した薬剤学的に許容される担体および製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.、1995)に詳細に記載されている。
【0046】
本発明の薬学的組成物は、目的とする方法によって経口投与したり非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)することができ、本発明の一実施例によれば、本発明の抗腫瘍免疫性増進組成物は、好ましくは腫瘍内に(intratumorally)直接的に投与され得る。投与量は、患者の状態および体重、病気の程度、薬物形態、投与経路および時間によって異なるが、当業者により適切に選択され得る。
【0047】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において薬学的に有効な量は、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/リストの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定され得る。本発明による薬学的組成物は、個別治療剤として投与したり他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次または同時に投与することができ、単一または多重投与することができる。上記した要素を全部考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者により容易に決定され得る。
【0048】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるわけではない。
【0049】
[実施例]
実験材料および実験方法
1.動物実験
Charles River Laboratories International、Inc.(Wilmington、MA)から6週~8週齢の雄性C57BL/6マウスを購入して、無菌状態のラミナエアフローキャビネットで飼育した。すべての動物実験は、AAALAC(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care)の承認下に行われ、漢陽大学校動物管理および利用委員会(University of Hanyang Institutional Animal Care and Use Committee)のガイドラインに基づいて行われた。
【0050】
2.腫瘍殺傷アデノウイルスの製作
E1領域にIL-12、E3領域にGM-CSF-RelaxinまたはshVEGFが導入されたアデノウイルス(Ad)を
図1および
図2に示されたように製作した。
【0051】
具体的に、IL-12を発現するAd E1シャトルベクターを構築するために、pCA14/IL12からマウスIL-12遺伝子を切り出し、pXC1RdB E1シャトルベクターにサブクローニングして、pXC1RdB/IL12 E1シャトルベクターを製作した。また、shVEGF発現E3シャトルベクターを構築するために、骨髄-由来活性樹枝状細胞から得られた全体RNAを利用して、全長(full-length)マウスshVEGF相補的DNAをRT-PCRでクローニングした。shVEGF相補的DNA(53-982 nucleotides of National Center for Biotechnology Information L15435)は、次のプライマーセットを利用して製作した:sense(5’-gatcccggaaggagagcagaagtcccatgttcaagagacatgggacttctgctctcctt tttttttggaaa-3’)、antisense(5’-tttccaaaaaaa aaggagagcagaagtcccatgtctcttgaacatgggacttctgctctccttccgggatc-3’)。前記PCR生成物をBamHI/HindIIIで切った後、BamHI/HindIII処理したpSP72 E3/CMV-polA Ad E3シャトルベクターにクローニングして、pSP72 E3/shVEGF E3シャトルベクターを製作した。また、pSP72 E3/CMV-polA Ad E3シャトルベクターにGMCSF-IRES-Relaxin遺伝子をクローニングして、pSP72 E3/GMCSF-RLX E3シャトルベクターを製作した。
【0052】
相同組換えのために、前記pXC1RdB/IL12 E1シャトルベクターとpdE1/shVEGFまたはpdE1/GMCSF-RLXを大腸菌BJ5183に同時形質転換させ、これにより、pRdB/IL12/shVEGF AdおよびpRdB/IL12/GMCSF-RLX Adを製作した。すべてのウイルスは、293細胞を利用して製作し、アデノウイルスの精製、滴定(titration)および品質分析は、先行技術によって行った。
【0053】
3.動物モデルを利用した抗癌効果の評価
B16-F10細胞(5×105)を6~7週齢の雄性C57BL/6正常免疫(immune-competent)マウスの右側の脇腹の皮下に注入した。腫瘍体積が約100mm3に到達すれば、類似した腫瘍サイズを有するグループに分類し、1日、3日、および5日目に、腫瘍殺傷アデノウイルス(RdB/IL12/shVEGF Ad;RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad)を5×109 VP濃度で腫瘍内投与した。また、免疫チェックポイント阻害剤との併用による抗癌効果を確認するために、3日、6日、および9日目に、前記腫瘍殺傷アデノウイルスが投与されたマウスに免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体を200μg濃度で腹腔内投与し、さらに免疫チェックポイント阻害剤との併用による相乗効果を評価するために、5×109 VPを利用した以前の実験より5倍さらに低い用量の腫瘍殺傷アデノウイルス(1×109 VP)を利用して上記と同じ実験を再度実施した。一方、本実験で、対照群としては、PBS処理群(PBS)、免疫チェックポイント阻害剤単独処理群(抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体)を利用した。
【0054】
以後、キャリパーで腫瘍の垂直直径を測定して腫瘍の成長を毎日モニタリングし、時間の経過による生存率の変化を確認することによって、動物モデルを利用して抗癌効果を評価した。一方、腫瘍体積は、次の公式で計算した:volume=0.523L(W)2、Lは、長さ(length)、Wは、幅(width)を示す。
【0055】
4.免疫記憶による抗癌効果の評価
黒色腫が誘導された前記3の動物モデルのうち、1次腫瘍を注入した後、50日目、成功裏に治療されたマウス(1次腫瘍を促進できない時点から25日目)を対象として、2次腫瘍を再注入(rechallenge)した。以後、前記と同様に、腫瘍の垂直直径を測定して腫瘍の成長を隔日でモニタリングし、腫瘍の平均体積を算出することによって、抗腫瘍免疫記憶効果を評価した。本実験で、対照群としては、正常マウスに黒色腫を誘導した群(Normal)を利用した。
【0056】
5.統計分析
すべてのデータは、平均標準誤差で示した。Stat View software(Abacus Concepts、Inc.、Berkeley、CA)およびthe Mann-Whitney test(non-parametric rank sumtest)を利用して比較した。0.05以下のP valueは、統計的に有意性あることを示す(*、P<0.05;**、P<0.01)。
【0057】
実験結果
1.黒色腫マウスにおける抗癌効果の確認
本発明者らは、黒色腫マウス内注入された腫瘍の体積および完全寛解の有無とマウスの生存率を比較して、組換えアデノウイルスおよび/または免疫チェックポイント阻害剤の抗癌効果を確認しようとした。
【0058】
その結果、PBSまたは抗PD-L1抗体を処理した対照群では、それぞれ11日または15日目に腫瘍の体積が3,000mm
3以上に達するほど早く増殖して、侵襲的腫瘍成長(aggressive tumor growth)を示した反面、RdB/IL12/shVEGF AdまたはRdB/IL12/GMCSF-RLX Adを処理した群の場合、22日目に、PBS処理群と比較した結果、それぞれ99.3%または99.5%と腫瘍の成長が抑制されることを確認した(
図3aおよび
図4a)。また、前記アデノウイルスと抗PD-L1抗体を併用した場合(RdB/IL12/shVEGF Ad+PD-L1、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad+PD-L1)、上記と同様に、腫瘍の体積がアデノウイルスまたは抗PD-L1抗体を単独で処理した群より顕著に減少した。たとえ27日目までアデノウイルス単独処理群(RdB/IL12/shVEGF Ad、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad)と類似した程度の抗癌効果を示したが、1ヶ月経過後からは、抗PD-L1抗体を併用投与した群では、持続的に腫瘍成長が抑制された反面、アデノウイルスを単独処理した群は、腫瘍の成長が、時間が経つにつれて増加して、アデノウイルスと抗体を併用投与した群間に腫瘍体積の有意的差異を確認することができた(
図3aおよび
図4a)。また、50日目に、PBSまたは抗PD-L1抗体を処理した対照群では、完全寛解(complete remission)を確認することができなかった反面、RdB/IL12/shVEGF AdまたはRdB/IL12/GMCSF-RLX Ad群では、それぞれ66%(4/6)、50%(3/6)、前記アデノウイルスと抗PD-L1抗体を併用した場合には、66%(4/6)、100%(6/6)が完全寛解されることが分かった。また、RdB/IL12/shVEGF Ad+PD-L1またはRdB/IL12/GMCSF-RLX Ad+PD-L1群のすべてのマウスは、それぞれ44日または50日まで全部生存した反面、同じ時点にRdB/IL12/shVEGF AdまたはRdB/IL12/GMCSF-RLX Ad群は、すべて66%(4/6)の生存率を示し、対照群のすべてのマウスは、腫瘍によって死ぬことを確認した(
図3bおよび
図4b)。このような結果は、免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-L1抗体の単独処理による抗癌効果は、比較的微小であった反面、RdB/IL12/shVEGF AdまたはRdB/IL12/GMCSF-RLX Adは、優れた抗癌効果を示し、このような組換えアデノウイルスの抗癌効果は、上記の抗PD-L1抗体と併用される場合、さらに上昇することになることを意味するものである。
【0059】
2.免疫チェックポイント阻害剤との併用による抗癌効果
本発明者らは、免疫チェックポイント阻害剤との併用による相乗効果をさらに詳細に評価するために、5×109 VPを利用した以前の実験より5倍さらに低い用量の腫瘍殺傷アデノウイルス(1×109 VP)を利用して組換えアデノウイルス単独投与と組換えアデノウイルスおよび免疫チェックポイント阻害剤併用投与との間に抗癌効果を比較した。また、前記結果に基づいて、免疫チェックポイント阻害剤として抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体または抗CTLA-4抗体を利用した場合、これらの抗癌効果を比較し、本実験で組換えアデノウイルスは、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adを使用した。
【0060】
その結果、18日目に、PBS処理群と腫瘍の体積を比較した結果、RdB/IL12/shVEGF Ad群の腫瘍成長抑制率は、92.9%であったが、抗PD-1抗体との併用投与によって99.7%と上昇し、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad群の腫瘍成長抑制率(90.1%)も、抗PD-1抗体との併用によって98.9%と大きく上昇した(
図5および
図6)。また、RdB/IL12/shVEGF Ad群で17%(1/6)だけが完全寛解されたが、RdB/IL12/shVEGF Ad+PD-1群は、83%(5/6)と大きく増加した。
【0061】
一方、他の形態の組換えアデノウイルスについても、免疫チェックポイント阻害剤との併用による相乗効果を示すが確認するために、HmT-Rd19-K35/IL21 Ad、RdB/GMCSF/shVEGF Ad、またはYKL-1/GMCSF/B7.1 Adと抗PD-1抗体を併用投与した後、これらの抗癌効果を確認した。その結果、
図7に示したように、多くの組換えアデノウイルスは、抗PD-1抗体との併用を通じて腫瘍の体積がある程度減少したことは事実であるが、本発明の組換えアデノウイルス(RdB/IL12/shVEGF Ad、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad)ぐらいの顕著な効果を示さず、特に、YKL-1/GMCSF/B7.1 Adの場合には、全般的に抗PD-1抗体単独処理群に比べても効果が優秀でなかった。このような結果に鑑みると、免疫チェックポイント阻害剤との併用による相乗効果は、すべての組換えアデノウイルスに適用されるものではなく、本発明の組換えアデノウイルス固有の効果であることが分かる。
【0062】
また、免疫チェックポイント阻害剤の種類による抗癌効果を確認した結果、PBS、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、または抗CTLA-4抗体を処理した対照群マウスは、それぞれ11日、15日、18日、または11日目に腫瘍の体積が3,000mm
3以上に達するほど早く増殖して侵襲的腫瘍成長を示した反面、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad+抗PD-L1抗体、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad+抗PD-1抗体、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad+抗CTLA-4抗体を処理した群の場合、21日目、PBS処理群と比較した結果、それぞれ、99.9%、99.9%、または99.2%と腫瘍の成長が大きく抑制されることを確認した(
図4a、8aおよび9a)。また、50日目に、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad群において完全寛解率は、50%(3/6)であった反面、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体または抗CTLA-4抗体を併用した場合、それぞれ100%(6/6)、83%(5/6)、83%(5/6)と増加した。また、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad+抗PD-L1抗体、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad+抗PD-1抗体、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad +抗CTLA-4抗体を処理したマウスは、それぞれ、50日、50日、または30日目まで全部生存した反面、同じ時点にRdB/IL12/GMCSF-RLX Ad群は、それぞれ66%(4/6)、66%(4/6)、83%(5/6)の生存率を示した(
図4b、
図8bおよび
図9b)。このような結果は、抗PD-L1抗体だけでなく、抗PD-1抗体または抗CTLA-4抗体を利用した場合にも、組換えアデノウイルスの抗癌効果が上昇することを示すものであって、ただし、抗CTLA-4抗体より抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体を併用した場合、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adの抗癌効果関連相乗作用がさらに優れていることが分かった。
【0063】
3.再発癌に対する免疫記憶効果の確認
本発明者らは、黒色腫マウス内注入された2次腫瘍の体積などを比較して、本発明の組換えアデノウイルス、または前記組換えアデノウイルスと免疫チェックポイント阻害剤の併用による免疫記憶効果と再発癌に対する抗癌効果を確認しようとした。
その結果、RdB/IL12/shVEGF Ad群で2次腫瘍の成長が明確に阻害され(
図10a)、特に、免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1抗体との併用によって2次腫瘍の成長は、さらに顕著に阻害されることを確認することができた(
図10b)。このような結果は、本発明の組換えアデノウイルスは、免疫記憶による抗腫瘍免疫反応の増進効果を通じて腫瘍の再発を未然に防止することができることを意味し、前述した抗癌効果と同様に、このような効果は、免疫チェックポイント阻害剤との併用を通じて上昇することができることを示唆するものである。
【0064】
4.RdB/IL12/GMCSF-RLX Adの抗癌効果の検証
(1)IL-12、GM-CSF、およびRelaxinの発現様相の確認
IL-12、GM-CSF、およびRelaxin(RLX)遺伝子の同時発現による抗癌効果を再度検証するために、前述したように、IL-12遺伝子がアデノウイルスのE1領域に、GM-CSFおよびrelaxin遺伝子がE3領域に挿入されたアデノウイルスであるRdB/IL12/GMCSF-RLX Adを製作した。前記RdB/IL12/GMCSF-RLX Adは、アデノウイルスの初期遺伝子であるE1B遺伝子が消失され、E1A遺伝子が変異された癌細胞特異的殺傷アデノウイルスであって、製作されたアデノウイルスによるIL-12、GM-CSF、またはRLXの発現量を確認した。具体的に、シリアンハムスターのすい臓癌細胞株(Hap-T1)に0.2、0.5、1、2、および5 MOI(multiplicityof infection)のRdB/IL12/GMCSF-RLXを感染させ、これから48時間後にこれらの培地を回収した。以後、Enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)を通じてIL-12、およびGM-CSFの発現量を確認し、Reverse transcription polymerase chain reaction(RT-PCR)を通じてRelaxinの発現量を確認した。
【0065】
その結果、
図11および
図12に示したように、アデノウイルスのMOIに依存的にIL-12、GM-CSF、またはRelaxinの発現量が増加したところ、前記遺伝子の同時発現を実験的に確認することができた。
【0066】
(2)シリアンハムスターの腫瘍動物モデルにおいてαPD-1との併用投与による抗癌効果の相乗
RdB/IL12/GMCSF-RLX AdとαPD-1の併用による抗癌効果の相乗を検証するために、HaP-T1すい臓癌細胞株を皮下注射して誘導されたシリアンハムスターの腫瘍動物モデルに7×107 viral particles(VP)/30μlのRdB/IL12/GMCSF-RLX Adを腫瘍内投与し、これと共に、10mg/kgのαPD-1を腹腔内投与した後、これによる腫瘍の体積変化を観察した。一方、比較群としては、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad単独投与群を利用した。
【0067】
その結果、
図13に示したように、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adが単独投与された腫瘍組織では、持続的に成長して一番目のウイルス投与後30日目に、腫瘍の体積は、1.982±126mm
3に達した反面、RdB/IL12/GMCSF-RLX AdおよびαPD-1併用投与群では、一番目のウイルス投与後に30日目まで腫瘍の成長を抑制して、腫瘍成長を単独投与群対比約79%水準と抑制させた(P<0.001)。また、RdB/IL12/GMCSF-RLX AdおよびαPD-1併用投与群では、腫瘍の完全寛解率が約50%程度であったが、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad単独投与群では、完全寛解が全く観察されなかった(不図示)。すなわち、このような結果は、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adの抗癌治療効能がαPD-1との併用によって顕著に向上したことを示唆するものである。
【0068】
(3)シリアンハムスター腫瘍モデルにおいてαPD-1との併用投与による腫瘍組織の変化
RdB/IL12/GMCSF-RLX AdとαPD-1の併用による腫瘍組織内変化を具体的に確認するために、7×107 VPのRdB/IL12/GMCSF-RLX Adと10mg/kgのαPD-1を前述したように併用投与した後、採取した腫瘍組織を免疫組織学的に評価した。一方、比較群としてαPD-1またはRdB/IL12/GMCSF-RLX Ad単独投与群、対照群としては、PBS投与群を利用した。
【0069】
その結果、
図14に示したように、PBSが投与された腫瘍組織では、壊死部位がほとんど確認されない反面、RdB/IL12/GMCSF-RLX AdとαPD-1が併用投与された腫瘍組織は、大概壊死されたことを確認することができた。また、このような併用投与による効果、すなわち、顕著に低い腫瘍細胞の増殖(PCNA)と増加した細胞アポトーシス(TUNEL)は、αPD-1またはRdB/IL12/GMCSF-RLX Adが単独投与された場合に比べて非常に顕著なものであった。
【0070】
(4)αPD-1との併用投与による細胞群集およびIFN-γの腫瘍組織内発現変化
RdB/IL12/GMCSF-RLX AdによってαPD-1の腫瘍組織内浸透が増加するにつれて、腫瘍組織内T細胞の浸潤および活性化が誘導できるかを評価するために、draining lymph node(DLN)と腫瘍組織内浸潤されたリンパ球でinterferon(IFN)-γ-発現CD4
+またはCD8
+ T細胞の群集変化を評価した。その結果、
図15および
図16に示したように、RdB/IL12/GMCSF-RLX AdまたはαPD-1単独投与群、およびRdB/IL12/GMCSF-RLX AdとαPD-1併用投与群は、PBSまたはαPD-1単独投与群に比べてIFN-γ-発現CD4
+およびCD8
+ T細胞の群集が高い水準で観察された(P<0.001またはP<0.01)。特に、RdB/IL12/GMCSF-RLX AdとαPD-1併用投与群は、RdB/IL12/GMCSF-RLX AdまたはαPD-1単独投与した群に比べてもIFN-γ-発現CD4
+およびCD8
+ T細胞の群集が有意的に増加することを確認することができたところ(P<0.001)、このような結果は、RdB/IL12/GMCSF-RLX AdとαPD-1の併用投与は、interferon(IFN)-γ-発現CD4
+およびCD8
+ T細胞の腫瘍内浸潤および活性化を誘導することを示すものである。
【0071】
また、前記アデノウイルスが投与された腫瘍組織内でのIFN-γの発現量を評価するために、アデノウイルスなどが投与されたマウスから腫瘍組織を摘出して微細に粉砕した後、IFN-γELISA分析を行った。その結果、
図17に示したように、PBSまたはαPD-1を腫瘍内単独投与した場合、IFN-γが全く検出されず、RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad単独投与群では、腫瘍組織1g当たり8.3pg/mgのIFN-γだけが検出された反面、RdB/IL12/GMCSF-RLX AdとαPD-1併用投与群では、腫瘍組織1g当たり18.7pg/mgのIFN-γが検出されることを確認することができた。すなわち、前記の併用投与は、腫瘍内IFN-γの発現を増加させることによって、免疫細胞の活性を増大させ、究極的に抗癌効果の相乗に寄与することが明らかにされた。
【0072】
(5)免疫チェックポイント阻害剤に対する抵抗性を有する条件下で抗癌効果の確認
免疫チェックポイント阻害剤に対する抵抗性を有する条件下で、RdB/IL12/GMCSF-RLX AdとαPD-1の併用が有効な治療効能を示すことができるかを評価するために、αPD-1で前処理された腫瘍を対象として併用投与による腫瘍の成長抑制効果を評価した。具体的に、αPD-1単独投与によって腫瘍の成長がこれ以上効果的に抑制されないとき(一番目の抗体治療後9日目)、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adを2日間隔で総4回投与した。一方、比較群としてαPD-1単独投与群を利用した。
【0073】
その結果、
図18に示したように、腫瘍の体積が915±78mm
3であるときに始まったRdB/IL12/GMCSF-RLX Adの投与は、投与の最初日から10日間腫瘍成長を効果的に抑制した。興味深く、αPD-1単独投与群は、腫瘍成長速度の急激な増加を示して腫瘍成長を抑制できなかった反面、併用投与群では、前記期間の間にも腫瘍の成長を持続的に抑制した。また、腫瘍の体積変化を比較した結果(投与後23日目)、
図19に示したように、併用投与群での成長抑制効果が最も顕著であった。すなわち、前記の併用投与は、免疫チェックポイント阻害剤に対する抵抗性を有する条件下でも有効な抗癌治療効能を示した。したがって、前記の併用投与は、免疫チェックポイント阻害剤の単一療法に対して耐性を有する患者に有益な治療療法になり得ることを示唆するものである。
【0074】
(6)RdB/IL12/GMCSF-RLX Ad投与によるαPD-1の腫瘍組織内浸透変化
腫瘍組織内RLXの発現は、αPD-1の腫瘍内浸透を促進させることによって、相乗的(synergistic)抗癌治療効能を示すものと予想した。したがって、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adが繊維組織型(desmoplastic)すい臓腫瘍組織にαPD-1の腫瘍内浸透を増加させるか否かを評価しようとした。RdB/IL12/GMCSF-RLX Adは、0日または2日目に、腫瘍組織内に直接投与され、αPD-1は、2日目に腹腔内投与され(c:RdB/IL12/GMCSF-RLX+Alexa 488-anti PD-1)、比較群としては、Alexa 488-接合されたαPD-1単独投与群(b;Alexa 488-anti PD-1)、対照群としては、PBS単独投与群(a;PBS)が用いられた。上記のように処理された腫瘍組織を7日目に採取し、腫瘍組織内Alexa 488-αPD-1の蓄積を免疫蛍光分析を通じて定量化した。組織面積当たりAlexa 488-αPD-1の蓄積を定量化した結果、
図20に示したように、PBS単独投与群またはαPD-1単独投与群は、それぞれ14±2A.U./μm
2または21±1A.U./μm
2を示した反面、併用投与群は、32±6A.U./μm
2を示した。このような結果から、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adは、腫瘍組織にαPD-1の浸透を顕著に向上させ、腫瘍組織内αPD-1の局所化(localization)を向上させることに寄与することが分かった。また、前記Alexa 488-αPD-1がCD4
+またはCD8
+ T細胞の発現部位に位置するか否かを確認するために、PBS(a:PBS)、Alexa 488-接合されたαPD-1単独(b:Alexa 488-anti PD-1)またはRdB/IL12/GMCSF-RLX AdおよびAlexa 488-接合されたαPD-1併用投与(c:RdB/IL12/GMCSF-RLX+Alexa 488-anti PD-1)されたそれぞれ腫瘍組織に対して、CD4
+またはCD8
+に対する免疫染色を行った。その結果、
図21に示したように併用投与群は、Alexa 488-αPD-1単独投与群に比べてαPD-1とCD4またはCD8の共同-局所化が高く観察された。
【0075】
全身(whole body)に対するαPD-1の腫瘍内浸透を評価するために、1、4、7、10-テトラアザシクロドデカン-1、4、7、10-テトラ酢酸を使用してαPD-1と
64Cuを接合させた、
64Cu-αPD-1を前述した方法でRdB/IL12/GMCSF-RLX AdとともにHaP-T1-移植ハムスターに投与して、免疫PETイメージを取得した。PETスキャンは、
64Cu-αPD-1投与後、2、12、36、および60時間目に行われ、主なPETイメージは、解剖学的描写のためにCTとともに行われた。比較群としては、
64Cu-αPD-1単独投与群が利用された。その結果、
図22に示したように、SUVとして算出された併用投与群と単独投与群の腫瘍内
64Cu-αPD-1の吸収は、次の通りである:2時間目に0.26±0.06および0.36±0.05(P=0.072);12時間目に0.90±0.22および1.68±0.45(P=0.018);36時間目に2.14±0.19および2.97±0.67(P=0.062);60時間目に3.37±0.57および4.50±1.02(P=0.043)。すなわち、前記のすべての時点で併用投与群の腫瘍内
64Cu-αPD-1の吸収が
64Cu-αPD-1単独投与群に比べて有意的に高く観察された。また、
64Cu-αPD-1投与後60時間目に、腫瘍組織を含む多様な組織内
64Cu-αPD-1の分布または吸収を%ID/gで算出した。その結果、
図23に示したように、単独投与群および併用投与群の吸収は、腫瘍組織でそれぞれ1.80±0.13%ID/g、2.80±0.41%ID/g(P<0.05);脾臓でそれぞれ1.10±0.11%ID/g、1.94±0.23%ID/g(P<0.05)を示して、腫瘍組織および脾臓の両方で
64Cu-αPD-1の吸収が向上することを確認することができた。また、これらの組織以外にもT細胞の濃縮部位と知られているdraining lymph node(DLN)も、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adの感染によって肥大化していた(結果は不図示)。すなわち、前記の実験結果を総合してみると、RdB/IL12/GMCSF-RLX Adの感染は、腫瘍組織内細胞外基質を再配列(remodeling)または分解させ、IL-12およびGM-CSFによる増進された免疫反応によってαPD-1の腫瘍組織内吸収を向上させることによって、併用投与の相乗効果が発生することが分かった。
【0076】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
【配列表】