(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】腫瘍細胞の枯渇を亢進するための薬剤の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230714BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230714BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230714BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
A61K39/395 E ZMD
A61K39/395 T
A61K45/00 101
A61P35/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021098639
(22)【出願日】2021-06-14
(62)【分割の表示】P 2018510767の分割
【原出願日】2016-08-26
【審査請求日】2021-07-07
(32)【優先日】2015-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】シュノール,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】チャブラ,アカンクシャ
(72)【発明者】
【氏名】シズル,ジュディス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェイスマン,アーヴィング エル.
(72)【発明者】
【氏名】エイスコーフ,キップ アンドリュー
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/069703(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/105995(WO,A1)
【文献】特表2018-525421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍細胞と免疫細胞の集団とを含む細胞の集団に接触させる組み合わされた薬剤であって、
(i)CD47活性を遮断する抗CD47抗体と、(ii)アゴニストである抗CD137抗体と、(iii)腫瘍特異的抗体と
を、それぞれが前記腫瘍細胞を抑制するための1mg/kg~100mg/kgの範囲内の有効量にて含む、組み合わされた薬剤。
【請求項2】
前記腫瘍細胞の
抑制は、(i)抗CD47抗体、または(ii)抗CD137抗体による単一療法で観察される抑制
よりも高い、請求項1に記載の組み合わされた薬剤。
【請求項3】
前記抗CD47抗体は、IgG4 Fc領域を含む、請求項1または2に記載の
組み合わされた薬剤。
【請求項4】
腫瘍細胞を含む前記細胞の集団は、ヒトの細胞である、請求項1~3のいずれか一項に記載の
組み合わされた薬剤。
【請求項5】
前記抗CD47抗体は、5F9-G4である、請求項4に記載の
組み合わされた薬剤。
【請求項6】
前記腫瘍特異的抗体は、抗ヒトEGFR抗体である、請求項
1に記載の
組み合わされた薬剤薬剤の組み合わせ。
【請求項7】
前記腫瘍特異的抗体は、抗ヒトc-キット抗体である、請求項
1に記載の
組み合わされた薬剤。
【請求項8】
前記腫瘍特異的抗体は、抗CD20抗体である、請求項
1に記載の
組み合わされた薬剤。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
細胞の代謝回転は、アポトーシスプログラムまたは、除去、ならびにマクロファージ、樹状細胞などを含む食細胞によるマーカーのその後の認識のために当該細胞を標識する他の細胞変化の誘導を用いて開始する。この過程には、望ましくない細胞の特異的かつ選択的除去を必要とする。健常細胞と望ましくない/加齢した/死滅する細胞との識別は、マーカーまたはリガンドのいわゆる「eat-me(食べてくれ)」シグナル、すなわち、順に食細胞上の受容体によって認識されることができる「自己変化」を示す。
【0002】
健常細胞は、食作用を活発に阻害する「don’t eat-me(食べないでくれ)」シグナルを示すことがあり、これらのシグナルは、死滅する細胞において下方調節されるかまたは変化したコンフォメーションにおいて存在するかのいずれかである。健常細胞上の細胞表面タンパク質CD47及びその結合する食細胞受容体SIRPαは、アポトーシス細胞の除去及びFcR仲介性食作用を含む複数の様式によって仲介される貪食を遮断することができる、主要な「don’t eat-me(食べないでくれ)」シグナルを構成する。食細胞上でのSIRPαのCD47仲介性結合を遮断すること、またはノックアウトマウスにおけるCD47発現の喪失は、生細胞及び加齢していない赤血球の除去を生じることができる。あるいは、SIRPαの認識を遮断することは、通常では食作用を受けない標的の貪食も可能にする。
【0003】
CD47は、単一のIg様細胞外ドメイン及び5つの膜貫通領域を有する広範に発現する膜貫通糖タンパク質である。CD47は、SIRPαのNH2 末端V様ドメインを通じて仲介される結合を用いて、SIRPαに対する細胞リガンドとして機能する。SIRPαは、マクロファージ、顆粒球、骨髄樹状細胞(DC)、肥満細胞を含む骨髄系細胞ならびに単球及び造血幹細胞を含む当該骨髄系細胞の前駆体において主として発現する。CD47結合を仲介するSIRPα上での構造的な決定因子は、Lee et al.(2007)J.Immunol.179:7741-7750,Hatherley et al.(2007)J.B.C.282:14567-14575によって考察され、CD47結合におけるSIRPαcis二量体化の役割は、Lee et al.(2010)J.B.C.285:37953~37963によって考察されている。
【0004】
T細胞及びNK細胞のような免疫細胞も、免疫細胞上の特定の同時刺激受容体を結合する抗原提示細胞上の分子によって提供され得る抗原非特異的同時刺激シグナルを含むシグナル伝達経路によって調節される。同時刺激は、適応免疫の有効な免疫応答の発達にとって決定的である。
【0005】
T細胞によって発現する最もよく特徴づけられた同時刺激受容体のうちの1つは、CD28であり、これは、APCの膜上でCD80(B7-1)及びCD86(B7-2)と相互作用する。CD28は、ほぼすべてのT細胞上で恒常的に発現し、天然T細胞のための主要な同時刺激受容体である。腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリーのいくつかのメンバーは、初期のT細胞活性化後に機能して、T細胞またはNK細胞の応答を持続させる。これらの同時刺激TNFRファミリーメンバーの作用はしばしば、CD28の作用とは、また互いとは機能的に、時間的に、または空間的に分離することができる。
【0006】
TNFRファミリーメンバーは、TNF受容体関連因子(TRAR)アダプタータンパク質を動員して、核因子κB(NF-κB)シグナル伝達経路を活性化して、当該メンバーをCD28またはICOSのような同時刺激因子とは根本的に異ならせることができる。CD40及びそのリガンドであるCD154は、TNFR/TNFスーパーファミリーのメンバーとして識別された最初の同時刺激分子であったので、B細胞及び樹状細胞(DC)の機能にとって重大である。CD27/CD70、CD30/CD30L、OX40/OX40L、4-1BB(CD137)/4-1BBL、糖質コルチコイド誘導性TNF受容体(GITR)/GITRリガンド、ヘルペスウイルス侵入仲介因子(HVEM)/(LIGHT)経路に関する研究は、これらのTNFR/TNFファミリーメンバーが重要な同時刺激シグナルを提供することを示している。CD27を除き、TNFRは、T細胞またはNK細胞の活性化の際にのみ発現する。
【0007】
近年の研究は、OX40/OX40L及びCD137/CD137Lの相互作用が、エフェクターとTreg応答との間の平衡状態を調節する上で主要な役割を担っていることを示している。CD137の主要な役割は、CD8+T細胞に及ぼす優先的な作用を用いた活性化型T細胞及び記憶T細胞の生存のためである。しかしながら、他の同時刺激シグナルが制限されているとき、CD137シグナルは、TCR誘導性シグナルと同時作動して、エフェクター機能の増殖及び発展を亢進させることができる。Fc受容体のトリガの際に、ヒトNK細胞はCD137を上方調節し、それによりこれらの活性化型NK細胞の殺滅機能を亢進させることができる。アゴニストの抗CD137モノクローナル抗体(BMS-663513,ウレルマブ)は目下、単一療法としての、または癌の治療のための腫瘍特異的抗体と併用した臨床試験にある。
【発明の概要】
【0008】
限定することはないが腫瘍細胞を含む、枯渇のための標的細胞を、免疫調節シグナル伝達を調節する薬剤の組み合わせと接触させることを含む治療計画において、当該細胞を標的とするための方法が提供される。免疫調節仲介薬には、(i)CD47活性を遮断する薬剤、及び(ii)免疫同時刺激分子、例えばCD137を刺激する薬剤が含まれる。当該治療計画はさらに、標的細胞へ特異的に結合する薬剤、例えば、抗体またはその生物活性フラグメントもしくは誘導体を含み得る。標的細胞の枯渇レベルは、単一の免疫調節薬が使用される治療計画に対して高く、当該作用は、単一の免疫調節薬が使用される治療計画に対して相乗的であり得る。
【0009】
当該組み合わせにおける薬剤は併用投与され、すなわち、各薬剤は、当該組み合わせにおける他の薬剤(複数可)に関して、約7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、1日間以内に、または実質的に同時に投与される。投与は、標的細胞集団の枯渇の必要に応じて反復され得る。
【0010】
一部の実施形態において、CD47遮断は、高親和性SIRPαバリアントポリペプチドであり得る可溶性SIRPαポリペプチドを投与することによって達成される。他の実施形態において、SIRPα及びCD47のうちの1つまたは両方に特異的な抗体が投与される。一部の実施形態において、同時刺激アゴニストは、同時刺激分子へ、例えば、アゴニストである抗CD137抗体へ選択的に結合する抗体である。
【0011】
標的細胞の接触は、例えば、治療目的のためにインビボで、ならびに例えばスクリーニングアッセイなどのためにインビトロで実施され得る。関連する実施形態において、腫瘍細胞、例えば、癌腫、肉腫、黒色腫などのような固形腫瘍、白血病、リンパ腫などは、食細胞、NK細胞、T細胞などを含む免疫細胞を、当該腫瘍細胞の近傍で、CD47とSIRPαとの間の相互作用を遮断するために有効であるCD47遮断薬と、免疫同時刺激分子、例えば、CD137を刺激する薬剤との組み合わせと接触させることによって、枯渇のために標的化される。任意に、標的細胞へ特異的に結合する薬剤は、当該組み合わせに含まれる。これらの態様において、免疫調節薬の組み合わせは、1つ以上の追加の腫瘍細胞マーカーに対するモノクローナル抗体と組み合わせることができ、当該組成物は、単一の薬剤の使用と比較して食作用を亢進すること及び腫瘍細胞の除去において相乗的であることができる。有効量の当該組み合わされた薬剤は、腫瘍細胞の枯渇を高める。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
対象における細胞の標的化枯渇のための方法が提供され、ここで、標的細胞は、対象における免疫調節経路を調節する薬剤の組み合わせによって選択的に切除される。免疫調節シグナル伝達を修飾する1つの薬剤は、CD47シグナル伝達を遮断する。第2の薬剤は、免疫同時刺激分子例えばCD137のアゴニストである。
【0014】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。
【0015】
本発明の作用薬及び方法を説明する前に、説明される特定の方法、装置及び製剤はもちろん変化し得るので、このような方法論、製品、装置及び因子に本発明が限定されないことは理解される。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためにあり、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることになる本発明の範囲を制限するように企図されるものではないことも、理解されたい。
【0016】
本明細書において及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、別段の明確な記載がない限り、単数形「a」、「及び」、及び「the」が複数形の指示物を含むことは留意されなければならない。したがって、例えば、「薬剤候補」に対する参照は、このような候補のうちの1つまたは混合物を指し、「当該方法(前記方法)」に対する参照は、等価のステップ及び当業者に公知の方法に対する参照などを含む。
【0017】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語はすべて、本発明の属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で言及される公開物はすべて、当該公開物において説明され及び現在説明されている本発明と関連して使用され得る装置、製剤及び方法を説明及び開示する目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
値の範囲が提供される場合、各介在値は、文脈に別段の明確な記載がない限り、下限単位の10分の1まで、当該記載の範囲における当該範囲の上限と下限との間、及びその他の記載値または介在値が本発明内に包含されることは理解される。独立して、より小さな範囲に含まれることがあるこれらのより小さな範囲の上限値及び下限値は、記載の範囲において任意の具体的に除外される限界値に供される、本発明の範囲内に包含される。記載の範囲が両限界値のうちの1つまたは両方を含む場合、当該両限界値を含むもののうちのいずれか両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0019】
以下の説明において、数値特異的詳細は、本発明のより完全な理解を提供するために明らかにされる。しかしながら、本発明が、これらの具体的な詳細のうちの1つ以上なしで実施され得ることは、当業者に明らかであろう。他の場合において、当業者に周知である周知の特長及び手順は、本発明を不明瞭にすることを回避するために、説明されていない。
【0020】
概して、当該技術分野の技術内であるタンパク質合成、組換え細胞培養及びタンパク質分離、ならびに組換えDNA技術に関する従来法を、本発明において採用する。このような技術は、文献において完全に説明されており、例えば、Maniatis,Fritsch and Sambrook,Molecular Cloning: A Laboratory Manual(1982)、Sambrook,Russell and Sambrook,Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2001)、Harlow,Lane and Harlow,Using Antibodies: A Laboratory Manual: Portable Protocol No.I,Cold Spring Harbor Laboratory(1998)、及びHarlow and Lane,Antibodies: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory;(1988)を参照されたい。
【0021】
定義
抗CD47薬。CD47は、単一のIg様ドメイン及び5つの膜貫通領域を有する広範に発現する膜貫通糖タンパク質であり、SIRPαのNH2 末端V様ドメインを通じて仲介される結合を用いてSIRPαに対する細胞リガンドとして機能する。SIRPαは主として、マクロファージ、顆粒球、骨髄系樹状細胞(DC)、肥満細胞、及び造血幹細胞を含めてこれらの前駆細胞を含む、骨髄系細胞に発現する。CD47結合を仲介するSIRPαに対する構造的な決定因子は、Lee et al.(2007)J.Immunol.179:7741-7750;Hatherley et al.(2008)Mol Cell.31(2):266~277;Hatherley et al.(2007)J.B.C.282:14567-75によって考察されており、CD47結合におけるSIRPαシス二量体化の役割は、Lee et al.(2010)J.B.C.285:37953-37963によって考察されている。正常細胞の食作用を阻害するCD47の役割を踏まえて、当該役割は造血幹細胞(HSC)及び前駆細胞の遊走相の直前及び間に当該細胞に関して一過性に上方調節され、これらの細胞に関するCD47のレベルは、インビボで貪食される確率を決定するという証拠がある。
【0022】
本明細書で使用する場合、「抗Cd47薬」または「CD47遮断をもたらす薬剤」という用語は、SIRPα(例えば、食細胞上の)に対するCD47(例えば、標的細胞上の)の結合を低下させる任意の薬剤を指す。適切な抗CD47試薬の非限定例としては、高親和性SIRPαポリペプチド、抗SIRPα抗体、可溶性CD47ポリペプチド、及び抗CD47抗体または抗体フラグメントを含むがこれらに限定されない、SIRPα試薬が挙げられる。一部の実施形態において、適切な抗CD47薬(例えば、抗CD47抗体、SIRPα試薬など)は、CD47へ特異的に結合して、SIRPαに対するCD47の結合を低下させる。
【0023】
一部の実施形態において、適切な抗CD47薬(例えば、抗SIRPα抗体、可溶性CD47ポリペプチドなど)は、SIRPαを特異的に結合して、SIRPαに対するCD47の結合を低下させる。SIRPαを結合する適切な抗CD47薬は、SIRPαを活性化しない(例えば、SIRPαを発現する食細胞において)。適切な抗CD47薬の有効性は、当該薬剤をアッセイすることによって評価することができる。例示的なアッセイにおいて、標的細胞は、候補薬の存在下または非存在下でインキュベートされる。本発明の方法における使用のための薬剤は、当該薬剤の非存在下での食作用と比較して、少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも120%、少なくとも140%、少なくとも160%、少なくとも180%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%)食作用を上方調節することになる。同様に、SIRPαのチロシンリン酸化のレベルについてのインビトロでのアッセイは、当該候補薬の非存在下で観察されるリン酸化と比較して少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%)リン酸化の低下を示すことになる。
【0024】
一部の実施形態において、抗CD47薬は、結合の際にCD47を活性化しない。CD47が活性化されると、アポトーシス(すなわち、プログラム化された細胞死)と類似の過程が生じ得る(Manna and Frazier,Cancer Research,64,1026-1036,Feb.1,2004)。したがって、一部の実施形態において、抗CD47薬は、CD47発現細胞の細胞死を直接誘導することはない。
【0025】
SIRPα試薬。SIRPα試薬は、認識可能な親和性においてCD47を結合するために十分な、シグナル配列と膜貫通ドメインとの間に通常存在するSIRPα部分または結合活性を保有するそのフラグメントを含む。適切なSIRPα試薬は、天然タンパク質SIRPαとCD47との間の相互作用を低下させる(例えば、遮断する、防止する、など)。SIRPα試薬は通常、少なくともSIRPαのd1ドメインを含むことになる。
【0026】
一部の実施形態において、対象の抗CD47薬は、SIRPα由来のポリペプチド及びその類似体(例えば、CV1-hlgG4、及びCV1単量体)を含む「高親和性SIRPα試薬」である。高親和性SIRPα試薬は、参照により本明細書により具体的に組み込まれる国際出願PCT/US13/21937において説明されている。高親和性SIRPα試薬は、天然SIRPαタンパク質のバリアントである。親和性の亢進をもたらすアミノ酸の変化は、d1ドメインに局在し、したがって、高親和性SIRPα試薬は、d1ドメイン内の野生型配列に対して少なくとも1個のアミノ酸の変化を有するヒトSIRPαのd1ドメインを含む。このような高親和性SIRPα試薬は任意に、追加のアミノ酸配列、例えば、抗体Fc配列、天然タンパク質または通常d1ドメインと連続したフラグメントであるそのフラグメントの残基150~374を含むがこれらに限定されないd1ドメイン以外の野生型ヒトSIRPαタンパク質の複数の部分などを含む。高親和性SIRPα試薬は、単量体または多量体、すなわち、二量体、三量体、四量体などであり得る。一部の実施形態において、高親和性SIRPα試薬は、可溶性であり、ここで、当該ポリペプチドは、SIRPα膜貫通ドメインを欠失しており、野生型SIRPα配列に対して少なくとも1個のアミノ酸の変化を含み、当該アミノ酸の変化は、CD47に対するSIRPαポリペプチド結合の親和性を、例えば、脱離速度を少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、またはそれより大きく低下させることによって亢進する。
【0027】
任意に、SIRPα試薬は、例えば、第2のポリペプチドとフレームの中で融合した融合タンパク質である。一部の実施形態において、第2のポリペプチドは、融合タンパク質の大きさを増大させることができ、例えば、それにより、融合タンパク質は、循環から迅速に除去されないことになる。一部の実施形態において、第2のポリペプチドは、免疫グロブリンFc領域の一部または全体である。Fc領域は、「eat me(食べてくれ)」シグナルを提供することによって食作用を支援し、このことが、高親和性SIRPα試薬によって提供される「don’t eat me(食べないでくれ)」シグナルの遮断を亢進する。他の実施形態において、第2のポリペプチドは、大きさの増大、多量体化ドメイン、及び/または追加の結合もしくはIg分子との相互作用を提供する、Fcと実質的に類似している任意の適切なポリペプチドである。
【0028】
抗CD47抗体。一部の実施形態において、対象の抗CD47薬は、CD47を特異的に結合して(すなわち、抗CD47抗体)、ある細胞(例えば、感染した細胞)上のCD47と別の細胞(例えば、食細胞)上のSIRPαとの間の相互作用を低下させる抗体である。一部の実施形態において、適切な抗CD47抗体は、結合の際にCD47を活性化しない。一部の抗CD47抗体は、SIRPαに対するCD47の結合を低下させず(それゆえ、本明細書では「抗CD47薬」であるとはみなしていない)、このような抗体は、「非遮断性抗CD47抗体」と呼ぶことができる。「抗CD47薬」である適切な抗CD47抗体は、「CD47遮断性抗体」と呼ぶことができる。適切な抗体の非限定例としては、クローンB6H12、5F9、8B6、及びC3が挙げられる(例えば、本明細書において参照により具体的に組み込まれる国際特許公開WO2011/143624において説明されるように)。適切な抗CD47抗体には、このような抗体の完全なヒト版、ヒト化版またはキメラ版が含まれる。例えば、IgG4 Fc領域を含むヒト化抗体(例えば、hu5F9-G4)は、その低い抗原性により、ヒトにおけるインビボでの適用に特に有用である。同様に、イヌ化、ネコ化抗体などは、イヌ、ネコ、及び他の種においてそれぞれ、適用に特に有用である。関心対象の抗体には、ヒト化抗体、またはイヌ化、ネコ化、ウマ化、ウシ化、ブタ化抗体など、及びこれらのバリアントが含まれる。
【0029】
抗SIRPα抗体。一部の実施形態において、対象の抗CD47薬は、SIRPαを特異的に結合して(すなわち、抗SIRPα抗体)、ある細胞(例えば、感染した細胞)上のCD47と別の細胞(例えば、食細胞)上のSIRPαとの間の相互作用を低下させる抗体である。適切な抗SIRPα抗体は、SIRPαの活性化が食作用を阻害することになるため、SIRPαを介するシグナル伝達を活性化することまたは刺激することなく、SIRPαを結合することができる。代わりに、適切な抗SIRPα抗体は、正常細胞よりも、罹患した細胞の優先的な食作用を容易にする。他の細胞(非罹患細胞)に対して高レベルのCD47を発現する罹患細胞(例えば、感染した細胞)は、優先的に食作用を受けることになる。したがって、適切な抗SIRPα抗体は、SIRPαを(食作用を阻害するために十分なシグナル伝達応答を活性化/刺激することなく)特異的に結合し、SIRPαとCD47との間の相互作用を遮断する。適切な抗SIRPα抗体には、このような抗体の完全なヒト版、ヒト化版またはキメラ版が含まれる。ヒト化抗体は、その低い抗原性により、ヒトにおけるインビボでの適用に特に有用である。同様に、イヌ化、ネコ化抗体などは、イヌ、ネコ、及び他の種においてそれぞれ、適用に特に有用である。関心対象の抗体には、ヒト化抗体、またはイヌ化、ネコ化、ウマ化、ウシ化、ブタ化抗体など、及びこれらのバリアントが含まれる。
【0030】
可溶性CD47ポリペプチド。一部の実施形態において、対象の抗CD47薬は、SIRPαを特異的に結合して、ある細胞(例えば、感染した細胞)上のCD47と別の細胞(例えば、食細胞)上のSIRPαとの間の相互作用を低下させる可溶性CD47ポリペプチドである。適切な可溶性CD47ポリペプチドは、SIRPαの活性化が食作用を阻害することになるため、SIRPαを介するシグナル伝達を活性化することまたは刺激することなく、SIRPαを結合することができる。代わりに、適切な可溶性CD47ポリペプチドは、感染していない細胞よりも、感染した細胞の優先的な食作用を容易にする。正常な非標的細胞(正常細胞)に対して高レベルのCD47を発現する細胞(例えば、感染した細胞)は、優先的に食作用を受けることになる。したがって、適切な可溶性CD47ポリペプチドは、食作用を阻害するために十分なシグナル伝達応答を活性化/刺激することなく、SIRPαを特異的に結合する。
【0031】
一部の場合、適切な可溶性CD47ポリペプチドは、融合タンパク質であり得る(例えば、参照により本明細書に具体的に組み込まれる米国特許公開US20100239579において構造的に説明される)。しかしながら、SIRPαを活性化/刺激しない融合タンパク質のみが、本明細書に提供される方法に適している。適切な可溶性CD47ポリペプチドには、SIRPαを特異的に結合でき、食作用を阻害するために十分なSIRPα活性を刺激することなくCD47とSIRPαとの間の相互作用を阻害することができる、バリアントを含む任意のペプチドもしくはペプチドフラグメントまたは天然に存在するCD47配列(例えば、細胞外ドメイン配列または細胞外ドメインバリアント)も含まれる。
【0032】
ある特定の実施形態において、可溶性CD47ポリペプチドは、シグナルペプチドを含むCD47の細胞外ドメインを含み、それにより、CD47の細胞外部分は典型的には、長さ142アミノ酸となる。本明細書に説明される可溶性CD47ポリペプチドには、アミノ酸配列を少なくとも65%~75%、75%~80%、80~85%、85%~90%、または95%~99%(または65%~100%で具体的に列挙されていない任意の%同一性)含むCD47細胞外ドメインバリアントも含まれ、当該バリアントは、SIRPαシグナル伝達を刺激することなく、SIRPαへ結合する能力を保有している。
【0033】
ある特定の実施形態において、シグナルペプチドアミノ酸配列は、別のポリペプチド(例えば、免疫グロブリンまたはCTLA4)に由来するシグナルペプチドアミノ酸配列と置換され得る。例えば、外側の細胞膜を通過する細胞表面ポリペプチドである全長のCD47とは異なり、可溶性CD47ポリペプチドは分泌され、したがって、可溶性CD47ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドには、細胞から正常に分泌されるポリペプチドと結合するシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列が含まれ得る。
【0034】
他の実施形態において、可溶性CD47ポリペプチドは、シグナルペプチドを欠失しているCD47の細胞外ドメインを含む。本明細書で説明する場合、シグナルペプチドは、分泌されたタンパク質または膜貫通タンパク質の細胞表面上で曝露されていないが、これは、シグナルペプチドが当該タンパク質の転位の間に開裂するか、またはシグナルペプチドが外側の細胞膜中に固定されたままになっているからである(このようなペプチドは、シグナルアンカーとも呼ばれる)。CD47のシグナルペプチド配列は、CD47ポリペプチド前駆体からインビボで開裂すると考えられている。
【0035】
他の実施形態において、可溶性CD47ポリペプチドは、CD47細胞外ドメインバリアントを含む。このような可溶性CD47ポリペプチドは、SIRPαシグナル伝達を刺激することなく、SIRPαへ結合する能力を保有する。CD47細胞外ドメインバリアントは、天然のCD47配列と少なくとも65%~75%、75%~80%、80~85%、85%~90%、または95%~99%同一である(説明した範囲のいずれか1つの間の任意の%同一性を含む)アミノ酸配列を有し得る。
【0036】
免疫調節シグナル伝達分子。CD47/SIRPα軸に加えて、免疫調節シグナル伝達分子には、免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、抗原提示細胞などの上で発現する同時刺激ポリペプチドが含まれ得る。同時刺激分子の活性化、すなわちアゴニズムは、エフェクター細胞の機能を亢進する。多くのこのような同時刺激分子は、腫瘍壊死因子受容体ファミリー(TNFR)のメンバー、例えば、OX40、GITR、CD30、ICOSなどである。TNFR関連分子は、いかなる公知の酵素活性も有しておらず、下流のシグナル伝達経路の活性化のための細胞質タンパク質の動員に依存している。
【0037】
関心対象の同時刺激分子は、CD137であり、Ly63、ILAまたは4-1BBとも呼ばれ得、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーのメンバーである。この受容体ファミリーのメンバー及びそれらの構造上関連しているリガンドは、広範な種々の生理学的過程の重要な調節因子であり、免疫応答の調節において重要な役割を担っている。CD137は、活性化されたNK細胞、Tリンパ球及びBリンパ球、ならびに単球/マクロファージによって発現する。当該遺伝子は、細胞外ドメインにおける3つのシステインの豊富なモチーフ(この受容体ファミリーに特徴的)、膜貫通領域、及び潜在的リン酸化部位を含有する短鎖N末端細胞質部分を有する255アミノ酸タンパク質をコードする。初代細胞における発現は、厳密には活性化依存的である。当該受容体に対するリガンドは、TNFSF9である。ヒトCD137は、そのリガンドへのみ結合することが報告されている。アゴニストには、天然のリガンド(TNFSF9)、アプタマー(McNamara et al.(2008)J.Clin.Invest.118:376-386を参照されたい)、及び抗体が含まれる。
【0038】
CD137の2つの完全ヒト化mAbであるウレルマブ(BMS-663513)及びPF-05082566は、臨床的使用のために開発されてきた。ウレルマブは、完全ヒトIgG4mAbであり、PF-05082566は、完全ヒトIgG2mAbである。
【0039】
CD134。OX40(CD134)及びその結合パートナーであるOX40L(CD252)は、TNFRスーパーファミリーのメンバーである。OX40発現は、TCR/CD3架橋後に、IL-1、IL-2、及びTNF-αを含む炎症性サイトカインの存在によって誘導される。ヒトにおいて、かなりの割合の腫瘍浸潤CD4 T細胞は、OX40を発現する。同様に、活性化された末梢CD8 T細胞も、OX40を発現することが示されてきた。CD8及び従来の(非調節性)CD4 T細胞上での、その天然リガンド(OX40L)またはアゴニスト抗体のいずれかを用いたOX40のライゲーションは、これらの生存及び増殖を促進する。
【0040】
野生型動物におけるTCR刺激とともにアゴニスト抗OX40モノクローナル抗体(mAb)を用いた処置は、CD4及びCD8 T細胞の増殖、分化、及び生存率の増加を誘導する。抗OX40の投与は、自己抗原に対するCD8 T細胞の耐容性を克服することができ、当該細胞毒性活性を回復し、OX40アゴニストに対する治療能力を強調する。このことは、腫瘍に対するT細胞の耐容性が治療様式にとって主要な障害であるので、癌患者にとって特に重要である。
【0041】
抗OX40単一療法の使用は、固形腫瘍患者における第1相治験において検査された。OX40アゴニストを調査する第1相臨床試験には、生物学的MEDI6383を用いたNCT02318394、NCT02205333、及びNCT02221960が含まれる。
【0042】
アゴニスト性OX40薬は、抗CD47薬の有効性を亢進することができる。アゴニスト性OX40薬は、抗CD47薬と実質的に同時に投与され得、または抗CD47を用いた治療の前及び当該治療と同時に投与されて、OX40薬を介して増殖することができる腫瘍特異的T細胞クローンのプライミングを刺激し得る。
【0043】
CD30。膜貫通受容体CD30(TNFRSF8)及びそのリガンドであるCD30L(CD153、TNFSF8)は、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバーであり、活性化された免疫細胞の部分母集団において制限された発現を示す。CD30は、TNF受容体スーパーファミリーのI型膜貫通糖タンパク質である。CD30に対するリガンドは、CD30L(CD153)である。CD30Lに対するCD30の結合は、細胞の増殖、活性化、分化、及びアポトーシス性細胞死を含む多面的な作用を仲介する。癌についての臨床試験における抗体には、CD30アゴニストであるSGN-30、XmAb2513及びMDX-1401が含まれる。
【0044】
GITR。糖質コルチコイド誘導性TNFR関連(GITR)タンパク質は、腫瘍壊死因子受容体/腫瘍壊死因子スーパーファミリーに属し、獲得免疫及び先天免疫の両方を刺激する。これは、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞を含むいくつかの細胞及び組織において発現し、主として抗原提示細胞及び上皮細胞上に発現する、そのリガンドであるGITRLによって活性化される。GITR/GITRL系は、自己免疫/炎症性応答の発症に関与し、NK細胞の同時活性化を含む機序によって、感染及び腫瘍に対する応答を増強する。臨床試験における抗体には、GITRアゴニストであるTRX518が含まれる。
【0045】
誘導性同時刺激因子(ICOS)。ICOSは、CD28ファミリーのメンバーである。ICOSの発現は、容易に検出可能な静止状態であり得るが、活性化の際に上方調節される。ICOS及びICOS-Lは、一雌一雄の対であるように見える。ICOSの同時刺激は、エフェクター機能を亢進する。ICOS特異的アゴニスト抗体であるGSK3359609またはJTX-2011は、腫瘍浸潤CD4陽性T細胞上で発現するICOSを標的として当該ICOSへ結合する。このことは、ICOS陽性T細胞増殖を刺激し、細胞毒性Tリンパ球(CTL)の生存を亢進し、腫瘍細胞に対するCTL仲介性免疫応答を高める。T細胞特異的なCD28スーパーファミリー同時刺激分子及び免疫チェックポイントタンパク質であるICOSは通常、ある特定の活性化されたT細胞上で発現し、T細胞の増殖及び活性化における主要な役割を担っている。
【0046】
アゴニストには、先に説明した天然のリガンド、アプタマー、当該受容体を活性化する誘導性同時刺激分子に特異的な抗体、ならびに同時刺激分子へ選択的に結合する抗体の誘導体、バリアント、及び生物活性フラグメントが含まれる。「バリアント」ポリペプチドは、天然の配列ポリペプチドと100%未満の配列同一性を有する、先に定義した生物活性ポリペプチドを意味する。このようなバリアントには、1つ以上のアミノ酸残基が当該天然配列のN末端もしくはC末端でまたは当該天然配列内で付加され、約1~40のアミノ酸残基が欠失し、1つ以上のアミノ酸残基によって任意に置換されたポリペプチド、及び結果として生じる生成物が非天然のアミノ酸を有するようアミノ酸残基が共有結合的に修飾した先のポリペプチドの誘導体が含まれる。通常、生物活性バリアントは、天然配列ポリペプチドと少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有することになる。当該バリアントポリペプチドは、天然または非天然にグリコシル化することができ、すなわち、当該ポリペプチドは、対応する天然タンパク質において認められるグリコシル化パターンとは異なるグリコシル化パターンを有する。
【0047】
同時刺激分子に特異的なリガンドまたは抗体のフラグメント、特に生物活性フラグメント及び/または機能的ドメインに対応するフラグメントは、関心対象である。関心対象のフラグメントは典型的には、長さが少なくとも約10アミノ酸~少なくとも約15アミノ酸となり、通常長さが少なくとも約50アミノ酸であるが、通常長さは約200アミノ酸を超えず、ここで、当該フラグメントは、誘導されるポリペプチドと同一のアミノ酸の連続鎖を有することになる。「長さが少なくとも20アミノ酸」のフラグメントは例えば、CD137に特異的な抗体由来の、またはTNFSF9由来の20個以上の連続したアミノ酸を含むように企図される。この脈絡において、「約」には、特に列挙された値またはいくつか(5、4、3、2、または1個)のアミノ酸だけ大きなもしくは小さな値が含まれる。本明細書で説明されるタンパク質バリアントは、本発明の範囲内であるポリヌクレオチドによってコード化される。遺伝暗号は、適切なコドンを選択して対応するバリアントを構築するために使用することができる。当該ポリヌクレオチドは、ポリペプチドを生成するために使用され得、これらのポリペプチドは、公知の方法によって抗体を生成するために使用され得る。「融合」ポリペプチドは、異種性ポリペプチドへ融合または結合したポリペプチドまたはその部分(例えば、1つ以上のドメイン)を含むポリペプチドである。
【0048】
一部の実施形態において、同時刺激分子アゴニストは抗体である。「抗体」または「抗体部分」という用語は、エピトープへ適合して当該エピトープを認識する特異的形状を有する任意のポリペプチド鎖含有分子構造を含むように企図されており、ここで、1つ以上の非共有結合性相互作用は、当該分子構造と当該エピトープとの間の複合体を安定化させる。本発明において利用される抗体は、ポリクローナル抗体であり得るが、モノクローナル抗体が好ましく、その理由は、細胞培養によってまたは組換えで再生され得、その抗原性を低下させるために修飾することができるからである。
【0049】
一部の実施形態において、本発明の薬剤の組み合わせの投与は、患者のヘマトクリット値を増大させる有効量の薬剤、例えば、エリスロポエチン刺激薬(ESA)と組み合わされる。このような薬剤は、当該技術分野で公知であり、使用されており、Aranesp(登録商標)(ダルベポエチンアルファ)、Epogen(登録商標)NF/Procrit(登録商標)NF(エポエチンアルファ)、Omontys(登録商標)(ペギネサチド)、Procrit(登録商標)などが含まれる。
【0050】
他の併用療法には、細胞特異的抗体、例えば、腫瘍細胞マーカー、放射線、手術、及び/またはホルモン欠乏に選択的な抗体を用いた投与が含まれる(Kwon et al,Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,96:15074~15079,1999)。いくつかの抗体は癌の治療のために現在臨床的に使用されており、その他は、臨床開発の種々の段階にある。本発明の方法のための関心対象の抗体は、ADCCを介して作用し得、典型的には腫瘍細胞に対して選択的であるが、当業者は、一部の臨床上有用な抗体が非腫瘍細胞、例えばCD20に作用することを認識するであろう。
【0051】
いくつかの抗体は癌の治療のために現在臨床的に使用されており、その他は、臨床開発の種々の段階にある。例えば、B細胞悪性腫瘍の治療のためのいくつかの抗原及び対応するモノクローナル抗体がある。1つの標的抗原はCD20である。リツキシマブは、CD20抗原に対するキメラ非共役型モノクローナル抗体である。CD20は、B細胞の活性化、増殖、及び分化において重要な機能的役割を有している。CD52抗原は、慢性リンパ性白血病の治療に適用されるモノクローナル抗体アレムツズマブによって標的とされる。CD22は、いくつかの抗体によって標的とされ、化学療法耐性がある有毛細胞白血病における毒素と組み合わされた有効性を近年実証した。CD20を標的とする2つの新たなモノクローナル抗体であるトシツモマブ及びイブリツモマブは、米国食品医薬品局(FDA)へ提出された。これらの抗体は、放射性同位体と共役している。アレムツズマブ(キャンパス)は、慢性リンパ性白血病の治療において使用されており、ゲムツズマブ(マイロターグ)は、急性骨髄性白血病の治療における使用を見出しており、イブリツモマブ(ゼバリン)は、非ホジキンリンパ腫の治療における使用を見出しており、パニツムマブ(ベクチビクス)は、結腸癌の治療における使用を見出している。
【0052】
CD52抗原は、慢性リンパ性白血病、結腸癌及び肺癌の治療に適用されるモノクローナル抗体であるアレムツズマブによって標的とされる。CD22は、いくつかの抗体によって標的とされており、化学療法耐性がある有毛細胞白血病における毒素と組み合わされた有効性を近年実証した。
【0053】
ゲムツズマブ(マイロターグ)は、急性骨髄性白血病の治療における使用を見出しており、イブリツモマブ(ゼバリン)は、非ホジキンリンパ腫の治療における使用を見出しており、パニツムマブ(ベクチビクス)は、結腸癌の治療における使用を見出している。
【0054】
セツキシマブ(エルビツクス)も、本発明の方法における使用に対する関心対象である。当該抗体は、EGF受容体(EGFR)へ結合し、結腸癌及び頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)を含む固形腫瘍の治療において使用されてきた。
【0055】
固形腫瘍において使用されてきた本発明の方法において有用なモノクローナル抗体には、エドレコロマブ及びトラスツズマブ(ハーセプチン)が含まれるが、これらに限定されない。エドレコロマブは、結腸直腸癌において見られる17-1A抗原を標的とし、これらの適応症に対して欧州での使用にすでに認可されている。トラスツズマブは、HER-2/neu抗原を標的とする。この抗原は、乳癌の25%~35%において見られる。セツキシマブ(エルビツクス)も本発明の方法における使用に対する関心対象である。当該抗体は、EGF受容体(EGFR)へ結合し、結腸癌及び頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)を含む固形腫瘍の治療において使用されてきた。
【0056】
本明細書で使用する場合、「抗体」には、特定の抗原と免疫学的に反応する免疫グロブリン分子に対する参照が含まれ、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方が含まれる。当該用語には、キメラ抗体(例えば、ヒト化ネズミ抗体)及びヘテロ共役型抗体のような遺伝的に操作した形態も含まれる。「抗体」という用語には、抗原結合能を有するフラグメント(例えば、Fab’、F(ab’)2 、Fab、Fb及びrIgG)を含む、抗体の抗原結合形態も含まれる。当該用語は、組換え一本鎖Fvフラグメント(scFv)も指す。抗体という用語には、二価もしくは二重特異性の分子、二重特異性抗体、三重特異性抗体、及び四重特異性抗体も含まれる。
【0057】
抗体の選択は、選択性、親和性、細胞毒性などを含む種々の基準に基づき得る。抗体へ「特異的に(または選択的に)結合する」という語句または「特異的に(または選択的に)~と免疫反応する」という語句は、タンパク質またはペプチドを指すときに、当該タンパク質の存在を、タンパク質及び他の生物製剤の異種性集団において決定する結合反応を指す。したがって、指定したイムノアッセイ条件下で、ある抗体は、特定のタンパク質配列へ、自然の少なくとも2倍で、より典型的には自然の10~100倍超で結合する。概して、本発明の抗体は、エフェクター細胞(ナチュラルキラー細胞またはマクロファージのような)の存在下で標的細胞の表面上にある抗原を結合する。エフェクター細胞上のFc受容体は、結合した抗体を認識する。Fc受容体の架橋は、エフェクター細胞に、細胞溶解またはアポトーシスによって標的細胞を殺滅するようにシグナル伝達する。一実施形態において、当該誘導は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を介して達成される。
【0058】
特定の抗原と免疫学的に反応する抗体は、ファージもしくは類似のベクターにおける組換え抗体のライブラリの選択のような組換え法によって、または抗原を用いてもしくは抗原をコードするDNAを用いて動物を免疫化することによって作製することができる。ポリクローナル抗体を調製する方法は、当業者に公知である。抗体は、代替としてモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法を用いて調製され得る。ハイブリドーマ法において、適切な宿主動物は典型的には、免疫化薬へ特異的に結合することになる抗体を産生するまたは産生することができるリンパ球を誘発するための免疫化薬を用いて免疫化される。代替として、リンパ球は、インビトロで免疫化され得る。次に、当該リンパ球は、ポリエチレングリコールのような適切な融合薬を用いて不死化細胞株と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成する。
【0059】
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む当該技術分野で公知の種々の技術を用いて作製することができる。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に失活したトランスジェニック動物、例えばマウスへと導入することによって作製することができる。投与の際に、ヒト抗体産生が観察され、このことは、遺伝子再編成、構築、及び抗体レパートリーを含むすべての点においてヒトにおいて見られるものと密接に類似している。
【0060】
抗体は、種々のペプチダーゼを用いた消化によって生成される十分に特徴づけられたいくつかのフラグメントとしても存在する。したがって、ペプシンは、ヒンジ領域においてジスルフィド結合の下で抗体を消化して、それ自体がジスルフィド結合によってVH-CH1へ結合した軽鎖であるFabの二量体であるF(ab’)2 を生成する。F(ab’)2 は、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合を破壊するための緩徐な条件下で還元し、それにより、F(ab’)2 二量体をFab’単量体へ変換し得る。Fab’単量体は本質的に、ヒンジ領域の一部を有するFabである。種々の抗体フラグメントは、無処置の抗体の消化の点で定義されるが、当業者は、このようなフラグメントが化学的にまたは組換えDNA法を用いることによってのいずれかでデノボ合成され得る。したがって、抗体という用語には、本明細書で使用する場合、抗体全体の修飾によって生成された抗体フラグメント、または組換えDNA法を用いてデノボ合成された抗体フラグメント(例えば、一本鎖Fv)またはファージディスプレイライブラリを用いて識別された抗体フラグメントも含まれる。
【0061】
「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有する免疫グロブリン分子である。ヒト化抗体には、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラットまたはウサギのような非ヒト種のCDR由来の残基(ドナー抗体)によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれる。一部の場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体は、レシピエント抗体においても移植されたCDRもしくはフレームワーク配列においても認められない残基も含み得る。概して、ヒト化抗体は、CDR領域の全部または実質的に全部が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、フレームワーク(FR)領域の全部または実質的に全部がヒト免疫グロブリンの共通配列のFR領域である、少なくとも1つ及び典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含むことになる。ヒト化抗体は最適には、免疫グロブリンの定常部(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部も含むことになる。
【0062】
関心対象の抗体は、ADCC(抗体依存性細胞傷害)を誘導する当該抗体の能力について検査され得る。抗体関連ADCC活性は、溶解した細胞からの標識もしくは乳酸脱水素酵素の放出のいずれかの検出、または低下した標的細胞生存の検出(例えば、アネキシンアッセイ)によりモニター及び定量化することができる。アポトーシスについてのアッセイは、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ仲介性ジゴキシゲニン-11-dUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイによって実施され得る(Lazebnikら,Nature:371,346(1994))。細胞傷害性は、Roche Applied Science(Indianapolis,Ind.)製の細胞傷害性検出キットのような、当該技術分野で公知の検出キットによっても直接検出され得る。
【0063】
本発明では、「患者」には、ヒトならびに、ペット及び実験動物、例えば、マウス、ラット、ウサギなどを含む他の動物、特に哺乳類の両方が含まれる。したがって、当該方法は、ヒト療法及び獣医学的適用の両方へ適用可能である。一実施形態において、患者は、哺乳類、好ましくは霊長類である。他の実施形態において、患者はヒトである。
【0064】
「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は本明細書で、治療のために評価中の及び/または治療中の哺乳類を指すために相互交換可能に使用される。実施形態において、哺乳類はヒトである。「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、限定するものではないが癌に罹患している個体を包含する。対象は、ヒトであり得るが、他の哺乳類、特にヒト疾患のための実験モデルとして有用な哺乳類、例えば、マウス、ラットなども含まれる。
【0065】
「癌」、「新生物」、及び「腫瘍」という用語は本明細書で、細胞増殖にわたる制御の有意な喪失を特徴とする異常な増殖表現型を呈するよう、自律的な、調節されていない増殖を呈する細胞を指すために相互交換可能に使用される。本出願における検出、分析、または治療のための関心対象の細胞には、前癌性(例えば、良性)、悪性、前転移性、転移性、及び非転移性の細胞が含まれる。事実上あらゆる組織の癌が公知である。「癌負荷量」という語句は、対象における癌細胞または癌体積の量を指す。癌負荷量を減少させることはしたがって、対象における癌細胞数または癌体積の数を減少させることを指す。本明細書で使用する「癌細胞」という用語は、癌細胞であるまたは癌細胞に由来する任意の細胞、例えば、癌細胞のクローンを指す。癌の多くのタイプは、当業者に公知であり、癌腫、肉腫、膠芽腫、黒色腫、リンパ腫、骨髄腫などのような固形腫瘍、及び白血病のような血液癌を含む。癌の例としては、卵巣癌、乳癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、泌尿器の癌、甲状腺癌、腎癌、癌腫、黒色腫、頭頸部癌、及び脳癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
癌の「病理学的状態」には、患者の健康を損なう現象がすべて含まれる。これには、異常なもしくは制御できない細胞増殖、転移、隣接細胞の正常機能への干渉、異常なレベルでのサイトカインもしくは他の分泌生成物の放出、炎症性応答もしくは免疫学的応答の抑制もしくは増悪、リンパ節のような周辺のもしくは遠隔の組織もしくは器官の新生物の、前悪性の、悪性の浸潤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書で使用する場合、「癌の再発」及び「腫瘍の再発」という用語ならびにこれらの文法上の異形は、癌の診断後の新生物性細胞または癌細胞のさらなる増殖を指す。特に、再発は、さらなる癌細胞増殖が癌組織において生じるときに起こり得る。「腫瘍の拡散」は同様に、腫瘍の細胞が局所的なまたは遠隔の組織及び器官へと散在するときに起こる。したがって、腫瘍の拡散は腫瘍転移を包含する。「腫瘍の浸潤」は、腫瘍の増殖が局所的に広がって、正常器官の機能の圧迫、破壊、または防止によって、関与組織の機能を損なうときに起こる。
【0068】
本明細書で使用する場合、「転移」という用語は、元の癌性腫瘍の器官へ直接接続していない器官または身体部分における癌性腫瘍の増殖を指す。転移は、元の癌性腫瘍の器官へ直接接続していない器官または身体部分における検出不可能な量の癌細胞の存在である微量転移を含むことが理解されることになる。転移は、元の腫瘍部位からの癌細胞の出発、ならびに身体の他の部分への癌細胞の遊走及び/または浸潤のような、過程のいくつかのステップとしても定義することができる。
【0069】
患者に関する「試料」という用語は、生物学的起源の血液及び他の液体試料、生検標本またはこれに由来する組織培養物もしくは細胞及びこれらの継代のような固形組織試料を包含する。当該定義には、癌細胞のようなある特定の細胞集団についての試薬による処置、洗浄、または濃縮などによる、試料の調達後に任意の方法で操作された試料も含まれる。当該定義には、特定のタイプの分子、例えば、核酸、ポリペプチドなどについて濃縮した試料も含まれる。「生物学的試料」という用語は、臨床試料を包含し、これには、外科的切除によって得られた組織、生検によって得られた組織、培養物中の細胞、細胞上清、細胞可溶化液、組織試料、器官、骨髄、血液、血漿、血清なども含まれる。「生物学的試料」には、患者の癌細胞から得られた試料、例えば、患者の癌細胞から得られたポリヌクレオチド及び/もしくはポリペプチドを含む試料(例えば、ポリヌクレオチド及び/もしくはポリペプチドを含む細胞可溶化液もしくは他の細胞抽出物)、ならびに患者由来の癌細胞を含む試料が含まれる。患者由来の癌細胞を含む生物学的試料には、非癌細胞も含むことができる。
【0070】
「診断」という用語は本明細書で、乳癌、前立腺癌、または他のタイプの癌の分子サブタイプの識別のような、分子のまたは病理学的な状態、疾患または容態の識別を指すために使用される。
【0071】
「予後」という用語は本明細書で、卵巣癌のような、新生物性疾患の再発、転移性拡散、及び薬剤耐性を含む、癌に起因し得る死亡または進行の尤度の予測を指すために使用される。「予測」という用語は、観察、経験、または科学的理由付けを基にした予示または推定に関する行動を指すために使用される。一例において、医師は、癌の再発がないある特定の期間に、原発腫瘍の外科的除去及び/または化学療法後に患者が生存する尤度を予測し得る。
【0072】
本明細書で使用する場合、「治療」、「治療すること」などという用語は、効果を得る目的で、薬剤を投与することまたは手順を実施することを指す。当該効果は、疾患もしくはその症状を完全にもしくは部分的に防止する点で予防的であり得、かつ/または疾患及び/もしくは当該疾患の症状についての部分的なもしくは完全な治癒をもたらす点で治療的であり得る。本明細書で使用する「治療」には、哺乳類における、特にヒトにおける腫瘍の治療が含まれ得、かつ(a)当該疾患または当該疾患の症状が、当該疾患に対して易罹患性であり得るが、まだ当該疾患(原疾患と関連し得るまたはそれによって生じ得る疾患を含む)に罹患していると診断されていない対象において発症することを防止すること、(b)当該疾患を抑制すること、すなわち、その発症を抑止すること、及び(c)当該疾患を緩和すること、すなわち、当該疾患の緩解を生じることが含まれる。
【0073】
治療は、癌の治療または緩解または予防における成功に関する任意の兆候を指し得、当該兆候には寛解のような任意の客観的もしくは主観的パラメータ、軽快、症状の減弱もしくは当該疾患容態を患者に対してより耐性があるようにすること、変性もしくは低下の速度を低下させること、または変性の最終地点をより衰弱させることが含まれる。症状の治療または緩解は、客観的または主観的パラメータに基づくことができ、当該パラメータには、医師による検査の結果が含まれる。したがって、「治療すること」という用語には、癌または他の疾患と関係する症状または容態の発症を予防もしくは遅延させるための、緩和するための、または抑止もしくは抑制するための本発明の化合物または薬剤の投与が含まれる。「治療効果」という用語は、対象における当該疾患、当該疾患の症状、または当該疾患の副作用の低下、除去、または予防を指す。
【0074】
「~との組み合わせにおける」、「併用療法」及び「組み合わせ生成物」は、ある特定の実施形態において、患者への第一の治療薬及び本明細書で使用する化合物の同時投与を指す。組み合わせて投与するとき、各構成要素は、同時にまたは異なる時点で任意の順序において連続的に投与することができる。したがって、各構成要素は、別個に投与することができるが、所望の治療効果を提供するように、時間的に十分近くで投与することができる。
【0075】
癌療法に加えて、本発明の薬剤の組み合わせは、モノクローナル抗体が細胞を枯渇させる目的のために投与される他の療法において、例えば、免疫細胞の枯渇による炎症性疾患の治療において有用である。このような目的のために、本発明の薬剤の組み合わせは、治療用抗体との、例えば、炎症性疾患及び自己免疫容態におけるB細胞の枯渇のためのリツキシマブ、多発性硬化症のためのアレムツズマブ、免疫抑制のためのOKT3、骨髄移植前処置のためのその他のものなどと組み合わせて投与される。
【0076】
癌治療薬であるESAまたは腫瘍に対する抗体と本発明の医薬組成物との「同時投与」は、当該薬剤、ESAまたは抗体及び本発明の組成物のいずれもが治療効果を有する時点で高親和性CD47試薬を用いた投与を意味する。このような同時投与は、本発明の化合物の投与に関して当該薬剤、ESAまたは抗体の同時の(concurrent)(すなわち、同時の(at the same time))、前の、または後の投与を包含し得る。当業者は、特定の薬剤及び本発明の組成物について投与に関する適切なタイミング、順序、及び薬用量を判断することは困難ではないであろう。
【0077】
本明細書で使用する場合、「疾患がない生存」という語句は、患者の寿命に及ぼす癌の作用に関して、診断後にこのような腫瘍の再発及び/または拡散ならびに患者の非運がないことを指す。「全体的な生存」という語句は、患者における死因が直接的に癌の作用によるものではないという可能性にもかかわらず、診断後の患者の運命を指す。「疾患がない生存の尤度」、「再発の危険性」という語句及びこれらの異形は、癌の診断後の患者における腫瘍の再発または拡散の確率を指し、この中で、当該確率は、本発明の過程により判定される。
【0078】
本明細書で使用する場合、「相関する」、または「~と相関する」という用語などは、事象が数、データセットなどを含む当該事象2つの事例の間の統計的な関係を指す。例えば、事象が数を包含する場合、正の相関(本明細書では「直接的な相関」とも呼ぶ)は、あるものが増えると同様に他のものが増えることを意味する。負の相関(本明細書では「逆の相関」とも呼ぶ)は、あるものが増えると他のものが減ることを意味する。
【0079】
「薬用量単位」は、治療されることになっている特定の個体に対して単位薬用量として適切な物理的に離散した単位を指す。各単位は、必要な医薬担体に関して所望の治療効果(複数可)を生じるように算出された、所定の量の有効化合物(複数可)を含有することができる。薬用量単位形態についての仕様は、(a)有効化合物(複数可)の独特な特徴及び達成されることになっている特定の治療効果(複数可)、ならびに(b)このような有効化合物(複数可)を化合する当該技術における固有の制限によって規定することができる。
【0080】
「医薬として許容され得る賦形剤」は、概して安全で、非毒性で、かつ所望である医薬組成物を調製する上で有用である賦形剤を意味し、獣医学的使用にとって、かつヒトの医薬的使用にとって許容され得る賦形剤を含む。このような賦形剤は、固体、液体、半固体、またはエアゾール組成物の場合においては気体であることができる。
【0081】
「医薬として許容され得る塩及びエステル」は、医薬として許容され得かつ所望の薬理学的特性を有する塩及びエステルを意味する。このような塩には、化合物中に存在する酸性プロトンが無機塩基または有機塩基と反応可能である場合に形成されることができる塩が含まれる。適切な無機塩には、アルカリ金属、例えば、ナトリウム及びカリウム、マグネシウム、カルシウム、ならびにアルミニウムとともに形成されるものが含まれる。適切な有機塩には、アミン塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、Nメチルグルカミンなどのような有機塩基とともに形成されるものが含まれる。このような塩には、無機酸(例えば、塩酸及び臭化水素酸)及び有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、ならびにメタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸のようなアルカンスルホン酸及びアレーンスルホン酸)とともに形成された酸付加塩も含まれる。医薬として許容され得るエステルには、化合物、例えばC1-6 アルキルエステルにおいて存在するカルボキシ基、スルホニルオキシ基、及びホスホノキシ基から形成されたエステルが含まれる。2つの酸性基が存在する時、医薬として許容され得る塩またはエステルは、一酸一塩もしくはエステル、または二塩もしくはエステルであることができ、同様に、2つを超える酸性基が存在する場合、このような基の一部または全部は、塩化またはエステル化することができる。本発明において命名された化合物は、塩化もしくはエステル化されていない形態で、または塩化及び/もしくはエステル化された形態で存在することができ、このような化合物の命名は、元の(塩化及びエステル化されていない)化合物ならびにその医薬として許容され得る塩及びエステルの両方を含むように企図される。また、本発明において命名されたある特定の化合物は、1つを超える立体異性体形態で存在し得、このような化合物の命名は、単一の立体異性体全部及びこのような立体異性体の混合物全部(ラセミ体であろうとその他であろうと)を含むように企図される。
【0082】
「医薬として許容され得る」、「生理学的に耐容性がある」という語句及びその文法的な異形は、組成物、担体、希釈剤及び試薬を指す場合、相互交換可能に使用され、当該材料がヒトへまたはヒトに関して、当該組成物の投与を禁止する程度まで望ましくない生理学的作用を生じることなく投与することができることを表す。
【0083】
「治療有効量」は、疾患を治療するために対象へ投与した場合、当該疾患のための治療をもたらすために十分である量を意味する。
【0084】
使用方法
標的細胞を、免疫調節シグナル伝達を調節する薬剤の組み合わせと接触させることを含む治療計画によって、原発性癌または転移性癌としてリンパ腫、白血病、黒色腫、膠芽腫、肉腫、骨髄腫などを含むがこれらに限定されない癌を治療、低下または予防するための方法が提供される。免疫調節薬には、(i)CD47活性を遮断する薬剤、及び(ii)免疫同時刺激分子、例えばCD137を刺激する薬剤を含み、これにより、腫瘍細胞のインビボでの食作用を高める。当該治療計画はさらに、標的細胞へ特異的に結合する薬剤、例えば、抗体またはその生物活性フラグメントもしくは誘導体を含み得る。このような方法には、当該試薬と化学療法薬、腫瘍特異的抗体、またはESAとの組み合わせを含むがこれに限定されない、本発明の組み合わされた治療有効量または有効量の薬剤を、治療を必要とする対象へ投与することが含まれる。
【0085】
例えば癌の処置のための、本発明の組み合わされた薬剤の有効量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬剤、及び処置が予防であるか治療であるかを含む多くの異なる因子によって変わる。通常、患者はヒトであるが、非ヒト哺乳類、例えば、イヌ、ネコ、ウマなどのようなペット、ウサギ、マウス、ラットなどのような実験哺乳類なども処置され得る。処置薬用量は、安全性及び有効性を最適化するために用量設定することができる。
【0086】
一部の実施形態において、各薬剤の治療薬用量は、宿主体重の約0.0001~100mg/kg、より通常は0.01~5mg/kgの範囲であり得る。例えば、薬用量は、1mg/体重kgもしくは10mg/体重kgまたは1~10mg/kgの範囲内であることができる。例示的な処置計画は、2週間に1回、または1か月に1回、または3~6か月に1回の投与を必要とする。本発明の治療実態は通常、複数回投与される。単一の投薬間の間隔は、毎週、毎月または毎年であることができる。間隔は、患者における治療実体の血中レベルを測定することによって示されるように不規則であることもできる。代替として、本発明の治療実態は、持効性製剤として投与することができ、その場合においてもあまり頻繁ではない投与が必要とされる。薬用量及び頻度は、患者における当該ペプチドの半減期によって変わる。
【0087】
予防適用において、比較的少量の薬用量が長期間にわたって、比較的あまり頻繁ではない間隔で投与され得る。一部の患者は、余生の間治療を受け続ける。他の治療的適用において、比較的短い間隔で比較的多い薬用量が時には、当該疾患の進行が低下または終止するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的なまたは完全な緩解を示すまで必要とされる。その後、患者に対して、予防的治療計画を実施することができる。
【0088】
さらに他の実施形態において、本発明の方法には、リンパ腫、白血病、癌腫、黒色腫、膠芽腫、肉腫、骨髄腫などを含む癌の腫瘍増殖、腫瘍転移または腫瘍浸潤を治療、低下または予防することが含まれる。予防適用のために、医薬組成物または薬剤は、疾患に易罹患性のまたはさもなければ当該疾患の危険にある患者へ、危険を除去もしくは低下させるために、重症度を弱化させるために、または当該疾患の生化学的、組織化学的及び/もしくは行動学的症状、当該疾患の発症中に呈するその合併症ならびに中間的な病理学的表現型を含む当該疾患の発症を遅延させるために十分な量で投与される。
【0089】
癌の治療のための組成物は、非経口的、局所的、静脈内、腫瘍内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻内または筋肉内手段によって投与することができる。典型的な投与経路は、静脈内投与または腫瘍内投与であるが、他の経路は同様に有効であり得る。
【0090】
典型的には、組成物は、液体の溶液もしくは懸濁液のいずれかとしての注射製剤として調製され、注射液中の溶液または懸濁液、注射前の液体ビヒクルに適した固体形態も調製することができる。当該調製物は、先に考察したように、アジュバント作用の亢進のためのリポソーム、またはポリラクチド、ポリグリコリド、もしくはコポリマーのようなミクロ粒子の中で乳化または封入することもできる(Langer,Science 249:1527,1990及びHanes,Advanced Drug Delivery Reviews 28:97-119,1997)。本発明の薬剤は、有効成分の持効性放出または拍動性放出を許容するような様式で製剤することができるデポー注射液またはインプラント調製物の形態で投与することが可能である。当該医薬組成物は概して、滅菌済みの、実質的に等張性のものとして、及び米国食品医薬品局の医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則(GMP)の規制全部を完全に遵守して製剤される。
【0091】
本明細書に説明される組み合わされた薬剤の毒性は、細胞培養物または実験動物における標準的な医薬手順によって、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)またはLD100(集団の100%に対して致死的な用量)を判定することによって判断することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数である。これらの細胞培養物アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトにおける使用に対して毒性ではない薬用量範囲を製剤する上で使用することができる。本明細書で説明されるタンパク質の薬用量は好ましくは、ほとんどまたはまったく毒性を有さない有効量を含む循環濃度の範囲内である。当該薬用量は、採用される薬用量形態及び利用される投与経路によってこの範囲内で変えられる。実際の製剤、投与経路及び薬用量は、患者の容態の点で個々の医師によって選択されることができる。
【0092】
医薬組成物は、投与法によって種々の単位剤形で投与することができる。例えば、経口投与に適した単位剤形には、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤及びロゼンジ剤が含まれるが、これらに限定されない。本発明の組成物が、経口投与される場合、消化から保護されるべきであることは認識されている。このことは典型的には、当該分子を組成物で複合体形成して、当該分子に酸性の及び酵素による加水分解に対する耐性を与えることによって、またはリポソームもしくは保護バリアのような適切に耐性がある担体中に当該分子を包装することによってのいずれかで達成される。薬剤を消化から保護する手段は、当該技術分野で周知である。
【0093】
投与のための組成物は通常、医薬として許容され得る担体、好ましくは水性担体中に溶解した抗体または他の切除性薬剤を含むことになる。種々の水性担体、例えば、緩衝塩類溶液などを使用することができる。これらの液剤は、滅菌済みであり、望ましくない物質を概して含んでいない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌化してもよい。当該組成物は、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどのような、生理学的条件に近似することが必要とされるような医薬として許容され得る助剤を含有してもよい。これらの製剤における有効薬剤の濃度は、広く変わることができ、選択された特定の投与様式及び患者の需要に従って、流体の容積、粘度、体重などに主として基づいて選択されることになる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(15th ed,1980)ならびにGoodman & Gillman,The Pharmacological Basis of Therapeutics(Hardman et al.,eds,1996))。
【0094】
本発明の組成物(例えば、同時刺激分子のアゴニスト、抗CD47薬、任意に、標的細胞へ特異的に結合する抗体、及びこれらの製剤)及び使用説明書を含むキットも本発明の範囲内である。当該キットはさらに、少なくとも1つの追加の試薬、例えば、化学療法薬、抗腫瘍抗体、ESAなどを含有することができる。キットは典型的には、当該キットの内容物の用途を示すラベルを含む。ラベルという用語には、当該キット上にもしくは当該キットとともに供給されるか、さもなければ当該キットに添付の任意の記載物または記録された材料が含まれる。
【0095】
当該組成物は、治療的処置のために投与することができる。組成物は、先に説明したように、標的細胞を実質的に切除するために十分な量で患者へ投与される。これを達成するために十分な量は、「治療有効量」として定義される。当該組成物の単回または複数回投与は、患者によって必要とされかつ耐容される薬用量及び頻度によって投与され得る。処置に必要とされる特定の用量は、当該哺乳類の医学的容態及び病歴、ならびに齢、体重、性別、投与経路、効率などのような他の因子によって決定されることになる。
【実施例】
【0096】
実験 実施例1
免疫枯渇のために細胞を標的とする上でのCD47遮断及びCD137アゴニズムの組み合わせ
【0097】
参照により本明細書に具体的に組み込まれる米国仮出願第62/041,989号に対する優先権を主張する同時係属中の国際出願において説明したように、CD117を発現する造血細胞の枯渇は、抗CD47薬、CD137のアゴニスト、及びCD117を標的化した抗体の組み合わせを投与することによって、抗CD47薬がCD137アゴニストの非存在下で抗CD117とともに投与される比較可能な処置に対して有意に亢進する。これらのデータは、標的細胞集団を枯渇させるための活性を組み合わせる原理を実証しており、当該原理は本明細書において、腫瘍細胞の枯渇を標的とするために拡大される。
【0098】
図1に示すように、8週齢のDBA/2Jマウスにp815マウス肥満細胞腫細胞株を注射した。3匹のマウスに、37℃で2時間インキュベートしかつ後眼窩注射を介して投与した250,000個の未処置のp815細胞を注射した。2匹のマウスに、100ug/mlの抗c-Kit(ACK2)抗体+100ug/mlのクローン3(MIAP410、抗CD47抗体)とともに37℃で2時間インキュベートした250,000個のp815細胞を注射し、その後RO注射した。マウスに0、2及び4日目に、500ugの抗CD137(Lob12.3)の腹腔内注射を行った。
【0099】
P815細胞はGFP+ではないので、死滅についてマウスを評価した。1匹の対照の未処置マウスは、RO注射4週間後に死亡し、別のマウスは、注射12週間後に死亡した。併用療法で処置した検査群マウスはいずれも、注射後12週間にわたって生存していた。
【0100】
実施例2
インビトロ相乗性実験
ADCCアッセイを、マウスまたはヒトNK細胞(エフェクター)及びマウスまたはヒト癌細胞(標的細胞)を用いて実施する。マウスNK細胞を末梢血、骨髄、または脾臓から分離し、ヒトNK細胞を末梢血から分離する。ヒト癌細胞株または初代試料を標的細胞としての使用のために標識する(例えば、クロムまたは蛍光色素を用いる)。
【0101】
NK細胞及び癌細胞をインビトロで組み合わせ、次の処置を用いて同時培養する。
・ビヒクル対照(例えば、PBS)
・CD137アゴニスト単独
・CD47アンタゴニスト単独
・CD47アンタゴニストプラスCD137アゴニスト
・腫瘍結合抗体単独
・腫瘍結合抗体+CD137アゴニスト単独
・腫瘍結合抗体+CD47アンタゴニスト単独
・腫瘍結合抗体+CD47アンタゴニストプラスCD137アゴニスト
【0102】
ADCCを、クロム放出アッセイまたはフローサイトメトリー細胞死アッセイ(例えば、アネキシンV/DAPI染色)を介して測定する。NK細胞サイトカイン(例えば、IFNガンマ)放出を、ELISAを介して測定する。腫瘍結合抗体+CD47アンタゴニストプラスCD137アゴニストの存在下での細胞死及びサイトカイン放出の変化を、先に列挙した単一療法及び二重療法に対して測定する。
【0103】
実施例3
インビボでの実験プロトコル
癌細胞をマウスへ、皮下、後腹膜、または末梢血注射を介して注射し、移植させておく。当該動物を4つの処置群へと無作為に分ける。
1.ビヒクル対照(例えば、PBS)
2.CD137アゴニスト単独
3.CD47アンタゴニスト単独
4.CD47アンタゴニストプラスCD137アゴニスト
【0104】
マウスを毎日、週3回、週2回、または週1回、個々の処置を用いて処置する。腫瘍体積の測定、標識した癌細胞(例えば、ルシフェラーゼ陽性細胞)を用いた生物発光、及び/または末梢血の分析によって腫瘍負荷量を測定する。NK細胞上でのCD137の発現を、末梢血中で及び腫瘍中で測定する。当該マウスの全体的な生存も測定する。
【0105】
実施例4
腫瘍特異的モノクローナル抗体との相乗性についてのインビボでの実験プロトコル
癌細胞をマウスへ、皮下、後腹膜、または末梢血注射を介して注射し、移植させておく。当該動物を4つの処置群へ無作為に分ける。
1.腫瘍結合抗体単独
2.腫瘍結合抗体+CD137アゴニスト単独
3.腫瘍結合抗体+CD47アンタゴニスト単独
4.腫瘍結合抗体+CD47アンタゴニストプラスCD137アゴニスト
【0106】
マウスを毎日、週3回、週2回、または週1回、個々の処置を用いて処置する。腫瘍体積の測定、標識した癌細胞(例えば、ルシフェラーゼ陽性細胞)を用いた生物発光、及び/または末梢血の分析によって腫瘍負荷量を測定する。NK細胞上でのCD137の発現を、末梢血中で及び腫瘍中で測定する。当該マウスの全体的な生存も測定する。
【0107】
抗体及び腫瘍の具体的な組み合わせには、次のものが含まれるが、これらに限定されない。
・マウス肥満細胞腫P815細胞をDBA/2マウスへ移植し、ACK2(抗マウスc-キット抗体)CD47/CD137標的化療法を用いて処置する。
・TUBO-EGFR細胞を野生型マウスへ移植し、セツキシマブ(抗ヒトEGFR)及びCD47/CD137標的化療法を用いて処置する。
・ヒト黒色腫SK-Mel-3細胞をRAG-/-マウスへ移植し、SR-1(抗ヒトc-キット)及びCD47/CD137標的化療法を用いて処置する。
・B16黒色腫細胞を野生型マウスへ移植し、TA99(マウスB16細胞を標的とする抗体)及びCD47/CD137標的化療法を用いて処置する。
・A20マウスリンパ腫細胞を野生型マウスへ移植し、抗マウスCD20抗体及びCD47/CD137標的化療法を用いて処置する。
【0108】
本明細書において引用した各公開物は、その全体がすべての目的のために参照により本明細書により組み込まれる。
【0109】
特定の方法論、プロトコル、細胞株、動物の種または属、及び説明した試薬が変わり得るので、本発明がこれらに限定されないことは理解される。本明細書で使用する用語が、特定の実施形態のみを説明する目的のためであって、本発明の範囲を制限するように企図されるものではないことも理解されており、当該範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることになる。
【0110】
本明細書で使用する場合、別段の明確な記載がない限り、単数形「a」、「及び」、及び「the」は、複数形の指示物を含む。したがって、例えば、「細胞」に対する参照は、複数のこのような細胞を含み、「培養物」に対する参照は、1つ以上の培養物及び当業者に公知のそれらの等価物に対する参照などを含む。別段の明確な記載がない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。
【0111】
関連出願の相互参照
米国特許法第119条(e)項に従って、本出願は、出願の開示が参照により本明細書に組み込まれる2015年8月26日出願の米国仮特許出願番号第62/210,279号の出願日に対する優先権を請求する。