(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】円テーブル装置のピッチエラー補正システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/404 20060101AFI20230714BHJP
B23Q 16/02 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
G05B19/404 G
B23Q16/02 C
B23Q16/02 A
(21)【出願番号】P 2021116425
(22)【出願日】2021-07-14
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】591028072
【氏名又は名称】株式会社日研工作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三▲角▼ 進
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-035904(JP,A)
【文献】特開平03-029005(JP,A)
【文献】特開平06-275496(JP,A)
【文献】特開平10-111706(JP,A)
【文献】特開2015-058506(JP,A)
【文献】特開2019-215846(JP,A)
【文献】米国特許第05767645(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00-15/28
G05B 19/18-19/416
G05B 11/01
G05B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な円テーブルと、
前記円テーブルを回転させる駆動機構と、
所定角度毎のピッチエラー補正値パラメータおよび一つのピッチエラー補正倍率を格納し、前記ピッチエラー補正値パラメータおよび前記ピッチエラー補正倍率に基づき、前記駆動機構に回転角度指令を出力する数値制御を行う数値制御部と、
前記円テーブルを任意の所定角度ずつ正回転あるいは逆回転させて該所定角度毎の割出精度を順次測定して出力する測定部と、
前記所定角度毎の割出精度を解析して、前記所定角度毎のピッチエラー補正値を順次算出するピッチエラー補正値計算を行うピッチエラー補正値算出部と、
前記数値制御部に格納される前記ピッチエラー補正値パラメータを前記算出された一連のピッチエラー補正値に書き換える補正値パラメータ書き換え部と、を備え、
前記ピッチエラー補正値パラメータを書き換えることによって前記割出精度を改善する円テーブル装置の構成システムにおいて、
前記所定角度毎の割出精度を解析して最適な前記一つのピッチエラー補正倍率を算出する補正倍率算出部と、
前記数値制御部に格納されていた前記ピッチエラー補正倍率を前記算出されたピッチエラー補正倍率に書き換える補正倍率書き換え部と、をさらに備え、
前記ピッチエラー補正値算出部は、前記所定角度毎のピッチエラー補正値を順次算出する際に、直前に算出されたピッチエラー補正値がピッチエラー補正値パラメータに書き込むことができる所定の下限値を下回りあるいは所定の上限値を上回る場合、その差分(前記算出されたピッチエラー補正値―前記下限値あるいは前記上限値)
に基づいて、異なる次のピッチエラー補正値を算出する
方法を選択して繰り越し計算を実行することを特徴とする、円テーブル装置のピッチエラー補正システム。
【請求項2】
前記所定角度毎に前記ピッチエラー補正値を順次算出する該ピッチエラー補正値の点数を補正点数と定義し、
前記正回転あるいは前記逆回転に係る前記補正点数の全体における前記所定角度毎の割出精度の総和を累積割出精度と定義し、
前記補正倍率算出部は、前記累積割出精度を前記補正点数で除算した値と前記上限値とを比較し、
前記累積割出精度を前記補正点数で除算した商が前記上限値以下であれば1を前記最適なピッチエラー補正倍率とし、
前記累積割出精度を前記補正点数で除算した商が前記上限値よりも大きければ前記累積割出精度を前記補正点数で除算した商に、1を足した値を、前記最適なピッチエラー補正倍率とする、請求項1に記載の円テーブル装置のピッチエラー補正システム。
【請求項3】
前記補正倍率算出部は、
前記正回転あるいは前記逆回転に係る前記所定角度を1ピッチとして、該1ピッチ間における前記割出精度の差分の絶対値をそれぞれ算出し、これらの絶対値のうち最大絶対値を、前記上限値で除算した商を求めて、
当該商≦1ならば、1を前記最適なピッチエラー補正倍率とし、
当該商>1ならば、当該商を前記最適なピッチエラー補正倍率とする、請求項1に記載の円テーブル装置のピッチエラー補正システム。
【請求項4】
前記繰り越し計算は、前記ピッチエラー補正倍率を
用いて計算される、請求項1~3のいずれかに記載の円テーブル装置のピッチエラー補正システム。
【請求項5】
繰り越される値の初期値は0とする、請求項1~4のいずれかに記載の円テーブル装置のピッチエラー補正システム。
【請求項6】
前記測定部は、正回転で0度から前記所定角度毎に360度まで前記割出精度を順次測定し、
前記ピッチエラー補正値算出部は、0度のピッチエラー補正値を、360度の前記割出精度と当該360度より1つ前の位置(360度-所定角度)の前記割出精度から算出する、請求項1~5のいずれかに記載の円テーブル装置のピッチエラー補正システム。
【請求項7】
前記円テーブルは、0°より大きく360°未満の範囲で回転角度に制限がある、請求項1~5のいずれかに記載の円テーブル装置のピッチエラー補正システム。
【請求項8】
前記数値制御部はバックラッシュ補正値をさらに格納し、当該バックラッシュ補正値に基づき、前記駆動機構に回転角度指令を出力する数値制御を行い、
前記所定角度毎に前記割出精度を順次測定する
前記所定角度毎に設定される点数を測定点数と定義し、
前記円テーブルを0°から360°以下の回転角度上限位置まで正回転させて測定される前記所定角度毎の割出精度を足し合わせることにより正回転時における割出精度の総和を算出し、
前記円テーブルを360°以下の前記回転角度上限位置から0°まで逆回転させて測定される前記所定角度毎の割出精度を足し合わせることにより逆回転時における割出精度の総和を算出し、
前記逆回転時における割出精度の総和から前記正回転時における割出精度の総和を差し引いた差を前記測定点数で除算してバックラッシュ補正値を算出するバックラッシュ補正値計算を行い、前記数値制御部に格納されたバックラッシュ補正値を新しいバックラッシュ補正値に書き換えるバックラッシュ補正値算出部をさらに備える、請求項1~6のいずれかに記載の円テーブル装置のピッチエラー補正システム。
【請求項9】
前記測定部は、前記数値制御部に格納された前記ピッチエラー補正値パラメータおよび前記バックラッシュ補正値が書き換えられた状態で再度割出精度を順次測定して出力し、
前記ピッチエラー補正値算出部は、再度測定した割出精度と所定の割出精度規格と比較して、
前記割出精度規格以内に収まっている場合は、前記書き換えられたピッチエラー補正値パラメータおよび前記バックラッシュ補正値を正しい値とし、
前記割出精度規格をオーバーしている場合は、前記書き換えられたピッチエラー補正値パラメータおよび前記バックラッシュ補正値を一度クリアし、前記再度割出精度を順次測定した結果から前記ピッチエラー補正値と前記バックラッシュ補正値の再算出および前記ピッチエラー補正値パラメータおよび前記バックラッシュ補正値の書き換えを行い、その後、前記測定部にもう一度割出精度を順次測定させて、もう一度測定した割出精度と前記割出精度規格とを比較し、
前記割出精度規格を複数回連続してオーバーする場合は、前記測定部にこれ以上の再測定を行わせることなく、警告を出力する、請求項8に記載の円テーブル装置のピッチエラー補正システム。
【請求項10】
前記ピッチエラー補正値算出部は、前記所定角度毎に測定された割出精度に基づき、これらの測定点間隔を更に細かく等分した補正点間隔で前記ピッチエラー補正値計算を行う、請求項1~9のいずれかに記載の円テーブル装置のピッチエラー補正システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円テーブル装置の数値制御に関する。
【背景技術】
【0002】
円テーブル装置の数値制御に関し、例えば、特許第6663475号公報(特許文献1)に記載されるバックラッシュ補正の技術が知られている。特許文献1に記載される従来技術では、時間を横軸とし、サーボモータの出力トルクと縦軸として、出力トルクの変化をモニタしてバックラッシュ量を推定する。また円テーブルの複数個所でバックラッシュ量を推定し、これに基づいてピッチエラー補正量を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載される従来技術にあっては、さらに改善すべき点があることを本発明者は見いだした。つまり特許文献1記載の技術では、実際の割出精度(割出角度指令と実際の割出角度との差をいい、ここではピッチエラーともいう)を測定することなく、ピッチエラー補正量を推定する。精度向上のためには任意のピッチ角度毎に測定器で割出精度を実際に測定して複数の割出精度データを取得し、かかる割出精度データに基づいてピッチエラー補正量を算出するほうが好ましい。
【0005】
本発明は、上述の実情に鑑み、従来よりも改善されたピッチエラー補正のための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため本発明による円テーブル装置のピッチエラー補正システムは、回転可能な円テーブルと、円テーブルを回転させる駆動機構と、ピッチエラー補正値パラメータおよびピッチエラー補正倍率を格納しピッチエラー補正値パラメータおよびピッチエラー補正倍率に基づき駆動機構に回転角度指令を出力する数値制御を行う数値制御部と、円テーブルを任意の所定角度ずつ正回転あるいは逆回転させて該所定角度毎の割出精度を順次測定して出力する測定部と、かかる所定角度毎の割出精度を解析して所定角度毎のピッチエラー補正値を順次算出するピッチエラー補正値計算を行うピッチエラー補正値算出部と、数値制御部に格納されるピッチエラー補正値パラメータを算出されたピッチエラー補正値に書き換える補正値パラメータ書き換え部と、を備え、ピッチエラー補正値パラメータを書き換えることによって割出精度を改善する円テーブル装置の構成システムを前提とする。そして本発明のシステムは、複数の割出精度を解析して最適なピッチエラー補正倍率を算出する補正倍率算出部と、数値制御部に格納されるピッチエラー補正倍率を算出されたピッチエラー補正倍率に書き換える補正倍率書き換え部と、をさらに備える。またピッチエラー補正値算出部は、ピッチエラー補正値を順次算出する際に、算出されたピッチエラー補正値がピッチエラー補正値パラメータに書き込むことができる所定の下限値を下回りあるいは所定の上限値を上回る場合、その差分(上述の算出されたピッチエラー補正値―下限値あるいは上限値)を考慮して次のピッチエラー補正値を算出する繰り越し計算を実行することを特徴とする。
【0007】
かかる本発明によれば、円テーブル装置毎に応じて任意の角度を割出角度(ピッチ角度)とし、当該割出角度指令(所定角度)ずつ円テーブルを回転させ、各所定角度ずつの実回転角度(割出精度)を順次測定して蓄積し、割出精度データを収集することから、推定ではない現実の割出精度を取得することができる。そして複数の割出角度毎にピッチエラー補正値を算出して求めることから、円テーブル装置の可動領域全体において割出精度を向上させることができる。また通常の割出精度を超えてしまうような異常なピッチエラーが生じてしまい、算出されたピッチエラー補正値(計算値)が所定の下限値ないし上限値の範囲を超えても、繰り越し計算によって当該ピッチエラーを解消ないし低減することができる。さらにピッチエラー補正値に関連する最適なピッチエラー補正倍率を求めることから、算出されたピッチエラー補正値(計算値)が所定の下限値ないし上限値の範囲を超えていても、割出精度を向上させることができる。なお、上述した所定の下限値は、所定の上限値の符号をマイナスにした値である。円テーブルは、同じ方向に無限に回転できるため、0度ないし360度で測定される割出精度(ピッチエラー)の累積(総和)は0でなければならない。この理由は、円テーブルの無限回転によってピッチエラーが累積されることを回避するためである。
【0008】
任意の所定角度は特に限定されず、3度、5度、10度というように、360度を割り切る値であればよい。本発明のピッチエラー補正倍率を算出する一局面として、所定角度毎にピッチエラー補正値を順次算出する該ピッチエラー補正値の点数を補正点数と定義し、上述した正回転あるいは逆回転に係る補正点数の全体における所定角度毎の割出精度の総和を累積割出精度と定義し、補正倍率算出部は累積割出精度を補正点数で除算した値と上限値とを比較し、累積割出精度を補正点数で除算した商が上限値以下であれば1を最適なピッチエラー補正倍率とし、累積割出精度を補正点数で除算した商が上限値よりも大きければ累積割出精度を補正点数で除算した商に、1を足した値を、最適なピッチエラー補正倍率とする。かかる局面によれば、円テーブルの可動領域、例えば0度~360度、において割出精度のばらつきが小さな場合に、最適なピッチエラー補正倍率を算出することができる。本発明のピッチエラー補正倍率の求める他の局面として、補正倍率算出部は、上述した正回転あるいは逆回転に係る所定角度を1ピッチとして、該1ピッチ間における割出精度の差分の絶対値をそれぞれ算出し、これらの絶対値のうち最大絶対値を上限値で除算した商を求めて、当該商≦1ならば1を最適なピッチエラー補正倍率とし、当該商>1ならば当該商を最適なピッチエラー補正倍率とする。かかる局面によれば、円テーブルの可動領域、例えば0度~360度、において割出精度のばらつきが大きな場合に、最適なピッチエラー補正倍率を算出することができる。
【0009】
本発明のピッチエラー補正倍率は、通常、1に設定される。繰り越し計算に関し、本発明の一局面として、繰り越し計算はピッチエラー補正倍率を考慮して計算される。かかる局面によれば、ピッチエラー補正倍率=1に設定する通常の繰り越し計算では割出精度が改善されない場合にも、ピッチエラー補正倍率を大きくすることにより、割出精度を改善することができる。
【0010】
繰り越し計算の初期値に関し、本発明の好ましい局面として、繰り越される値の初期値は0とする。かかる局面によれば、繰り越される値の初期値を0とし、繰り越し計算が可能になる。
【0011】
円テーブルの回転角度位置が0度のときのピッチエラー補正値を算出するために、本発明のより好ましい局面として、測定部は正回転で0度から所定角度毎に360度まで割出精度を順次測定し、ピッチエラー補正値算出部は0度のピッチエラー補正値を360度の割出精度と当該360度より1つ前の位置(360度-所定角度)の割出精度から算出する。かかる局面によれば、円テーブルの回転角度位置が0度においても、ピッチエラーが補正される。
【0012】
本発明の円テーブルは、360°を超えて回転してもよいし、あるいは傾斜テーブルの傾斜角度のように360°未満の回転領域に限定されていてもよい。本発明の他の局面として、円テーブルは、0°より大きく360°未満の範囲で回転角度に制限がある。かかる局面によれば、例えば0度~105度の傾斜テーブルというように、可動領域が360度未満の傾斜軸であっても、割出角度が向上する。
【0013】
本発明はバックラッシュ補正を実行してもよく、本発明の一局面として、数値制御部はバックラッシュ補正値をさらに格納し、当該バックラッシュ補正値に基づき駆動機構に回転角度指令を出力する数値制御を行い、所定角度毎に割出精度を順次測定する該割出角度の点数を測定点数と定義し、円テーブルを0°から360°以下の回転角度上限位置まで正回転させて測定される所定角度毎の割出精度を足し合わせることにより正回転時における割出精度の総和を算出し、円テーブルを360°以下の回転角度上限位置から0°まで逆回転させて測定される所定角度毎の割出精度を足し合わせることにより逆回転時における割出精度の総和を算出し、逆回転時における割出精度の総和から正回転時における割出精度の総和を差し引いた差を測定点数で除算してバックラッシュ補正値を算出するバックラッシュ補正値計算を行い、数値制御部に格納されたバックラッシュ補正値を新しいバックラッシュ補正値に書き換えるバックラッシュ補正値算出部をさらに備える。かかる局面によれば、バックラッシュの補正が可能になり、時計回転と反時計回転の差分を解消することができる。本局面は、ウォームねじおよびウォームホイールで駆動される円テーブルに有益である。
【0014】
本発明による割出精度の測定は、ピッチエラー補正値パラメータを書き換える前に実行されるが、好ましくはピッチエラー補正値パラメータを書き換えた後に再測定を実行するとよい。本発明の一局面として、測定部は、数値制御部に格納されたピッチエラー補正値パラメータおよびバックラッシュ補正値が書き換えられた状態で再度割出精度を順次測定して出力し、ピッチエラー補正値算出部は再度測定した割出精度と所定の割出精度規格と比較して、割出精度規格以内に収まっている場合は書き換えられたピッチエラー補正値パラメータおよびバックラッシュ補正値を正しい値とし、割出精度規格をオーバーしている場合は書き換えられたピッチエラー補正値パラメータおよびバックラッシュ補正値を一度クリアし、再度割出精度を順次測定した結果からピッチエラー補正値とバックラッシュ補正値の再算出およびピッチエラー補正値パラメータおよびバックラッシュ補正値の書き換えを行い、その後、測定部にもう一度割出精度を順次測定させて、もう一度測定した割出精度と割出精度規格とを比較し、割出精度規格を複数回連続してオーバーする場合は、測定部にこれ以上の再測定を行わせることなく、警告を出力する。かかる局面によれば、所定の精度規格に達するまでピッチエラー補正およびバックラッシュ補正を行うことから割出精度の品質が担保される。また数値制御のみによっては調整不可能なピッチエラーが生じても、機械系のメンテナンスを実行する機会が与えられる。
【0015】
割出精度の測定点数と、ピッチエラー補正値パラメータを書き換える点数(補正点数)は、同数であってよい。あるいは1の所定角度の中で補間計算を実行して、補正点数を測定点数よりも多くしてもよい。本発明の一局面として、ピッチエラー補正値算出部は、所定角度毎に測定された割出精度に基づき、これらの測定点間隔を更に細かく等分した補正点間隔でピッチエラー補正値計算を行う。かかる局面によれば、測定点数よりも多くの補正点数によってピッチエラー補正がきめ細かに実行されることから、割出精度が益々向上する。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、360°を超えて正/逆回転する円テーブルや、360°未満の角度範囲で正/逆方向に傾斜するテーブルにおいて、実測に基づいてピッチエラーが改善され、割出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態になる円テーブル装置のピッチエラー補正システムを示す縦断面図である。
【
図2】同実施形態が実行するピッチエラー補正プログラムのフローチャートである。
【
図4】同実施形態が実行する解析計算のフローチャートである。
【
図5】同実施形態のピッチエラー補正値パラメータを算出されたピッチエラー補正値に書き換えて再測定された割出精度の測定データを示すグラフである。
【
図6】回転角度範囲のうち一部の割出精度が著しく異なる場合の測定データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態になる円テーブル装置のピッチエラー補正システムを示す模式的な全体図である。
図2は、同実施形態が実行するピッチエラー補正プログラムのフローチャートである。本実施形態のシステムは、円テーブル装置11と、円テーブル用数値制御装置21と、測定部31と、コンピュータ41を具備する。
【0019】
円テーブル装置11は、円テーブル12と、円テーブル12を回転自在に支持する筐体13を備える。筐体13は、円テーブル12を所望の回転角度に駆動する駆動機構を内蔵する。駆動機構は例えば電動モータと、電動モータに駆動される小径のウォームねじと、ウォームねじと噛合する大径のウォームホイールを有する。ウォームホイールは円テーブル12の裏面に同軸固定される。
【0020】
円テーブル用数値制御装置21は円テーブル装置11と通信ケーブル、あるいは他の通信手段を介して接続し、円テーブル装置11を数値制御する。具体的には、円テーブル12にチャッキングされるワークを加工するため、割り出しや、ワーク加工用プログラムで決定される回転角度等、円テーブル12を所望の回転角度に回転させる。仕様上公称される回転角度の割出精度の単位は、度・分・秒である。ただしピッチエラー補正プログラムでは、0.001度または0.0001度を使用し、以下の説明では0.001度=1、0.002度=2というように単に整数で表す。円テーブル用数値制御装置21は、円テーブル12の回転角度を数値制御する際、ピッチエラー補正値パラメータおよびピッチエラー補正倍率に基づいた数値制御を実行する。ピッチエラー補正値パラメータおよびピッチエラー補正倍率は、円テーブル用数値制御装置21に格納され、後述するピッチエラー補正プログラムによって書き換えられる。これに重畳して、円テーブル用数値制御装置21は、バックラッシュ補正値に基づいた数値制御を実行する。
【0021】
測定部31は、割出角度測定装置32および測定部本体34を備える。測定部本体34は、円テーブル装置11と隣り合って設置され、通信ケーブル43あるいは他の通信手段を介してコンピュータ41と接続される。測定部31は例えばレーザ33を使用するレーザ測定装置であり、円テーブル12にチャッキングされた割出角度測定装置32からレーザ受信機である測定部本体34にレーザ33を当てて、円テーブル12の実回転角度を所定角度毎に順次測定する。
【0022】
コンピュータ41は、円テーブル用数値制御装置21と通信ケーブル42、あるいは他の通信手段を介して接続し、円テーブル用数値制御装置21にプログラム指令を出力して、これを制御する。またコンピュータ41は、円テーブル12の回転角度の精度向上を目的として、後述のピッチエラー補正プログラムの開始ないし終了と、ピッチエラー補正値の計算を実行するものであって、通信ケーブル43を介して測定部31と通信を行い、また通信ケーブル42を介して円テーブル用数値制御装置21と通信を行い、円テーブル12のピッチエラーの測定および補正を行う。
【0023】
なおコンピュータ41の配置と、コンピュータ41および他の装置間の通信手段は、本実施形態の通信ケーブル42,43に限定されない。コンピュータ41は、通信の相手である装置の近傍に設置されていてもよいし、あるいは遠隔地に設置されていてもよい。本実施形態の通信手段はbluetooth(登録商標)、Wifi(登録商標)等のインターネット回線、あるいは他のネットワーク手段、あるいは他の無線通信であってもよい。円テーブル用数値制御装置21と円テーブル装置11を接続する通信手段51も同様である。
【0024】
コンピュータ41は、所定角度毎の割出精度を解析して、所定角度毎のピッチエラー補正値を順次算出するピッチエラー補正値計算を行うピッチエラー補正値算出部と、複数の割出精度を解析して最適なピッチエラー補正倍率を算出する補正倍率算出部と、数値制御部に格納される古いピッチエラー補正値パラメータを算出された新しいピッチエラー補正値に書き換える補正値パラメータ書き換え部と、数値制御部に格納される古いピッチエラー補正倍率を算出された新しいピッチエラー補正倍率に書き換える補正倍率書き換え部と、を備える。そしてピッチエラー補正値パラメータおよびピッチエラー補正倍率を書き換えることによって割出精度を改善する。具体的には、
図2に模式的に示すピッチエラー補正プログラムを実行する。ピッチエラー補正プログラムを開始すると(START)、コンピュータ41は、円テーブル用数値制御装置21に対して、現時点で書き込まれているピッチエラー補正値およびバックラッシュ補正値を全て0に書き換えること(1)と、円テーブル12の割出精度を測定する所定の測定プログラムを出力すること(2)と、同測定プログラムを開始すること(5)を指令する。またコンピュータ41は、測定部31に対して、割出角度(ピッチ角度)や回転角度の範囲といった測定条件を設定(3)し、測定の開始を指令する(4)。割出角度は、任意の所定角度である。この所定角度は、1度、2度、3度、4度、5度、あるいは6度、というように、360度を割り切る数値である。測定プログラムは例えば、円テーブル12を所定角度ずつ正回転および/または逆回転させて、時計回りおよび/または反時計回りに360度回転させる。
【0025】
測定の開始の指令を入力された測定部31は、ステップS100で、円テーブル12の実際の回転角度を所定角度毎に測定する。測定結果として得られた円テーブル12の実回転角度(測定データともいう)を逐次、あるいはまとめて、コンピュータ41へ出力する。これによりコンピュータ41は、例えば0度から360度というように、円テーブル12が回転する角度範囲で、測定データを収集する。収集された測定データはコンピュータ41へ出力される(6)。
【0026】
十分な測定データを収集したコンピュータ41は、次のステップS200で、該測定データの解析計算を行う(7)。次にコンピュータ41は、ステップS300で、解析計算の結果に応じて、ピッチエラー補正値およびピッチエラー補正倍率およびバックラッシュ補正値を算出し(8)、新しく算出したこれらの値を円テーブル用数値制御装置21に出力する(9)。そうすると円テーブル用数値制御装置21に格納されたピッチエラー補正値パラメータおよびピッチエラー補正倍率およびバックラッシュ補正値は、最新のものに書き換えられる。
【0027】
次のステップS400で、上述した測定プログラムを再び実行(10)(11)し、所定角度毎の円テーブル12の実回転角度を再測定する。次のステップS500で、ステップS400で作成される測定データから割出精度を算出し、かかる割出精度が所定の精度規格以内かどうか判定する。精度規格は、例えば累積20秒の範囲内である。
【0028】
精度規格以内である場合(Yes)、ステップS600へ進み、ピッチエラー補正値Cと、バックラッシュ補正値と、改善された割出精度の測定データを出力して、本制御のピッチエラー補正プログラムを終了する(END)。参考のため改善された割出精度の測定データを
図5(バックラッシュ補正なし)に示す。
【0029】
これに対し精度規格をオーバーする場合(No)、上述したSTARTへ戻り(13)、本制御のピッチエラー補正プログラムになるSTARTからステップS500までを再び実行する(リトライ)。再び実行しても繰り返し精度規格をオーバーする場合(連続No)、リトライアウト(13)し、STARTへ戻ることなくコンピュータ41の画面に警告を出力する。この場合、本実施形態の数値制御のみで精度規格を守ることができないので、作業者は円テーブル装置11の機械系を調整する。
【0030】
図3は、測定部31によって測定され、コンピュータ41で算出された円テーブル12の割出精度を示すグラフであり、横軸が0°~360°の目標回転角度(単位は1度)を表し、縦軸が実回転角度(単位は秒)をプラス・マイナスの過不足で表す。そして所定角度毎の割出精度は、時計回転CWと、反時計回転CCWとプロットされる。なお回転方向を特に限定しない場合、時計回転CWおよび反時計回転CCWを、正回転および逆回転ともいう。本実施形態では、360°を補正点数P=120で等分して、所定角度(ピッチ角度)を3°とする。円テーブル12は、0°から開始して、3°、6°、・・・・360°までの各目標回転角度に従って回転し、時計回転CWの割出精度が得られる。次に円テーブル12は、360°から開始して、357°、354°、・・・・0°までの各目標回転角度に従って回転し、反時計回転CCWの割出精度が得られる。
【0031】
本実施形態では、時計回転CW時の割出精度がマイナス側に振れ、反時計回転CCW時の割出精度がプラス側に振れる。正回転時の割出精度と逆回転時の割出精度の差分は、円テーブル装置11のバックラッシュBLを表す。
【0032】
図3中、時計回転CW時の各補正点数におけるそれぞれの割出精度がプロットされる。所定角度毎にプロットされる割り出し精度は0、正、または負の整数である。所定角度毎にプロットされる割り出し精度を、補正点数全体に亘って足し合わせた値を、時計回転CWの累積割出精度Eacと称する。同様に反時計回転CCWの累積割出精度も算出される。
【0033】
次に
図4を参照して、ステップS200(
図2)の解析計算を詳細に説明する。
【0034】
図4は円テーブル12を0度から360度まで1回転、正回転させ、所定角度(本実施形態では3度)ずつ進むたびにピッチエラー補正値を算出する場合を表し、0度を除く測定点数および補正点数Pは120である。
【0035】
まずステップS201で、累積割出精度Eacを補正点数Pで除算し、この値がピッチエラー補正値パラメータの所定の上限値MAX(=下限値MINの絶対値)を超えるか否か判定する。本実施形態において上限値MAXは+7であり、下限値MINは‐7である(単位は0.001度あるいは0.0001度)。下限値MINの絶対値は上限値に等しい。上限値は整数である。除算値が上限値MAXを超えない場合、つまり上限値MAX以下である場合(Yes)、ステップS202へ進み、ピッチエラー補正倍率MULに1を格納する。あるいは除算値が上限値MAXを超える場合(No)、ステップS203へ進み、最適なピッチエラー補正倍率を求める。最適なピッチエラー補正倍率MULは、累積割出精度Eacを、補正点数Pと上限値MAXの積で除算し、この除算値の商に1を足した値(整数)である。ここで附言すると、通常、Eac/P≦MAXであるから、MUL=1(S202)である。
【0036】
ステップS202またはステップS203から、次のステップS204へ進む。ステップS204では、補正値カウンタiに初期値1を格納する(i=1)。本実施形態では、0度から1個のピッチ角度(3度)だけ進んだ回転角度の解析計算を意味する。次にステップS205へ進む。
【0037】
ステップS205では最初の繰越値Kに0を格納する(K=0)。本実施形態では、0度から1個のピッチ角度だけ進んだ回転角度の解析計算を意味するので繰り越される値がないためである。繰り越される値については後述する。次にステップS206へ進む。ステップS206では、補正値カウンタi―1(1個前のピッチ角度)における割出精度Ai―1と、補正値カウンタiにおける割出精度Aiとの差分Dを求める。割出精度Ai―1および割出精度Aiおよび差分Dは、正または負の整数(単位は0.001度あるいは0.0001度)で表される。次にステップS207へ進む。
【0038】
ステップS207では差分Dと繰越値Kの和の絶対値と、上限値MAXとピッチエラー補正倍率MULの積とを対比し、対比結果に応じて、ステップS208、S210、S212のいずれかへ進む。ステップS208、210、212は、今回の補正値カウンタiにおけるピッチエラー補正値Cを設定する。
【0039】
ステップS207で差分Dと繰越値Kの和の絶対値が上限値MAXとピッチエラー補正倍率MULの積と同じあるいは小さい場合(≦)、ステップS208へ進む。ステップS208では、差分Dと繰越値Kの和を、ピッチエラー補正倍率MULで除算し、その商を補正値カウンタiのピッチエラー補正値Cに格納し、ステップS209へ進む。Cは正または負の整数である。
[式1]C=商{(D+K)/MUL}
【0040】
ステップS209では、差分Dと繰越値Kの和を、ピッチエラー補正倍率MULで除算し、その余を次の補正値カウンタi+1で使用する繰越値Kに格納し、ステップS214へ進む。
[式2]K=余{(D+K)/MUL}
【0041】
説明をステップS207に戻すと、ステップS207で差分Dと繰越値Kの和が上限値MAXとピッチエラー補正倍率MULの積よりも大きい場合(>)、差分Dと繰越値Kの和が0以上であれば(D+K≧0)ステップS210へ進み、差分Dと繰越値Kの和が0より小さければ(D+K<0)ステップS212へ進む。
【0042】
上述したステップS210では、上限値MAXを補正値カウンタiのピッチエラー補正値Cに格納し、ステップS211へ進む。本実施形態の上限値MAXは7である。
[式3]C=MAX
【0043】
ステップS211では、差分Dと繰越値Kの和から、上限値MAXとピッチエラー補正倍率MULの積を引き算し、その算出値を繰越値Kに格納する。これを繰り越し計算という。次に、ステップS214へ進む。
【0044】
上述したステップS212では、ピッチエラー補正値パラメータの所定の下限値MINを補正値カウンタiのピッチエラー補正値Cに格納し、ステップS213へ進む。本実施形態の下限値MINは―7である。ピッチエラー補正値Cに格納可能な数値は無限ではなく、数値制御における限界があるためである。ピッチエラー補正値Cに格納可能な下限値MINは、同様の上限値MAXにマイナスを付した値である。
[式4]C=MIN
【0045】
ステップS213では、差分Dと繰越値Kの和から、下限値MINとピッチエラー補正倍率MULの積を引き算し、その算出値を繰越値Kに格納する。これを繰り越し計算という。次に、ステップS214へ進む。
【0046】
ステップS214では、補正値カウンタiに1を加えるカウントアップを行い、ステップS215へ進む。補正値カウンタiが1個ずつ歩進し、任意の所定角度(3度)毎にピッチエラー補正値Cの解析計算をする。本実施形態では、ピッチ角度に相当する所定角度が3度であるから、3度ずつ120個の解析計算を行い、0度から360度までの回転角度範囲について120個のピッチエラー補正値Cを計算する。
[式5]i=i+1
【0047】
ステップS215では、補正値カウンタiと所定の最終値を対比する。補正値カウンタiが最終値と同じあるいは小さい場合(≦)、上述したステップS206へ戻り(丸B)、補正値カウンタiが最終値に達するまで、補正値カウンタiを+1する度に、ピッチエラー補正値Cの算出を繰り返し実行する。これに対し、補正値カウンタiが最終値よりも大きい場合(>)、ステップS200の解析計算を終了する。本実施形態では、i=1からi=120まで、(丸B)を繰り返す計算を実行し、補正値カウンタi個分のピッチエラー補正値Cを計算する。
【0048】
図5は、本実施形態のピッチエラー補正プログラムが実行される前の割出精度CWe、CCWeと、本実施形態のピッチエラー補正プログラムが実行された後の円テーブル12の割出精度CWm、CCWmを示すグラフである。CWは時計回転を、CCWは反時計回転を表す。
図5を対比して理解されるように、本実施形態によれば、所定角度毎のピッチエラー補正値Cによってピッチエラーが補正され、所定角度毎の割出精度(縦軸)が0に近づいているので、円テーブル12の割出精度が向上する。特に本実施形態によれば、上述した繰り越し計算を実行することから、ピッチエラー補正値Cが上限値MAXおよび下限値MINに制限される場合であっても、円テーブル12の割出精度が向上する。
【0049】
次にバックラッシュ補正値に基づいた数値制御につき説明する。
【0050】
円テーブル用数値制御装置21は、バックラッシュ補正値を格納し、円テーブル12の回転角度を数値制御する際、バックラッシュ補正値に基づいた数値制御を実行する。コンピュータ41は
図3に示す割出精度に基づいて新しいバックラッシュ補正値を算出するバックラッシュ補正値算出部を有し、円テーブル用数値制御装置21に格納されたバックラッシュ補正値を書き換える。バックラッシュ補正値はバックラッシュBL(
図3)の解消に資する。
【0051】
まず、所定角度毎に割出精度を順次測定する該割出角度の点数を測定点数と定義する。本実施形態では
図3に示すように3度の所定角度毎に120個の測定点数を定義する。
【0052】
次に円テーブル12を360度正回転させて測定される所定角度毎の割出精度を足し合わせることにより正回転時における割出精度の総和を算出し、次に円テーブル12を360度逆回転させて測定される所定角度毎の割出精度を足し合わせることにより逆回転時における割出精度の総和を算出する。次に逆回転時における割出精度の総和から正回転時における割出精度の総和を差し引いた差を測定点数で除算してバックラッシュ補正値を算出する。次に、円テーブル用数値制御装置21に格納されたバックラッシュ補正値を新しいバックラッシュ補正値に書き換える。
【0053】
本実施形態によれば、正回転の割出精度と逆回転の割出精度の差が解消され、割出精度が向上する。
図5に示すように、補正される前の割出精度CWe、CCWe同士が乖離しているのに対し、補正された後の割出精度CWm、CCWm同士は
図6に示すように、略一致していることが理解される。
【0054】
本実施形態は、360度連続回転可能な円テーブル12、および円テーブル12を回転させる駆動機構を備える円テーブル装置11と、ピッチエラー補正値パラメータおよびピッチエラー補正倍率を格納し、ピッチエラー補正値パラメータおよびピッチエラー補正倍率に基づき、円テーブル装置11の駆動機構に回転角度指令を出力する数値制御を行う円テーブル用数値制御装置21と、円テーブル12を任意の所定角度ずつ正回転あるいは逆回転させて該所定角度毎の割出精度(
図3)を順次測定して出力する測定部31と、所定角度毎の割出精度を解析して所定角度毎のピッチエラー補正値Cを順次算出するピッチエラー補正値計算を行うコンピュータ41のピッチエラー補正値算出部と、円テーブル用数値制御装置21に格納されるピッチエラー補正値パラメータを算出された補正値カウンタi毎のピッチエラー補正値Cに書き換えるコンピュータ41の補正値パラメータ書き換え部と、を備え、ピッチエラー補正値パラメータおよびピッチエラー補正倍率を書き換えることによって割出精度を改善する円テーブル装置11の構成システムであることを前提とする。
【0055】
そして本実施形態は、複数の割出精度を解析して最適なピッチエラー補正倍率を算出するコンピュータ41の補正倍率算出部と、円テーブル用数値制御装置21に格納されるピッチエラー補正倍率を最適なピッチエラー補正倍率に書き換えるコンピュータ41の補正倍率書き換え部と、をさらに備える。コンピュータ41のピッチエラー補正値算出部は、ピッチエラー補正値を所定角度毎に順次算出する際に、ステップS207のように算出された1のピッチエラー補正値(計算値)がピッチエラー補正値パラメータに書き込むことができる所定の下限値を下回りあるいは所定の上限値を上回る場合、その差分(算出されたピッチエラー補正値―下限値/上限値)を考慮して次のピッチエラー補正値を算出する繰り越し計算を実行する。これにより所定角度毎の割出精度が向上する。
【0056】
また本実施形態によれば、補正値カウンタiを歩進させて所定角度毎にピッチエラー補正値Cを順次算出する該ピッチエラー補正値の点数(例えば120個)を補正点数と定義し、補正倍率算出部はステップS203で、補正点数の全体における所定角度毎の割出精度の総和である累積割出精度Eacを補正点数で除算した商に、1を足した値を最適なピッチエラー補正倍率とする。
【0057】
また本実施形態によれば、ステップS210~S213の繰り越し計算は、S203のピッチエラー補正倍率を考慮して計算されることから、ピッチエラー補正倍率MUL=1では対応できないピッチエラーであっても補正される。
【0058】
また本実施形態によれば、ステップS205で繰越値の初期値を0に設定することから、補正値カウンタi=1である初期のピッチエラー補正値計算を適正に実行することができる。
【0059】
本実施形態の測定部31は、円テーブル12の正回転で0度から所定角度(3度)毎に360度まで割出精度(
図3)を順次測定する。そこで、コンピュータ41のピッチエラー補正値算出部は、補正値カウンタi=0(円テーブル12の回転角度が0度)のピッチエラー補正値Cを、360度の割出精度A
i=120と当該360度より1つ前の位置(360度-所定角度3度)の割出精度A
i=119から算出してもよい。これにより、円テーブル12の回転角度が0度のときのピッチエラー補正値を算出することができる。
【0060】
ここで附言すると、本実施形態の円テーブルは、0°より大きく360°未満の範囲で回転角度に制限があってもよい。また本実施形態のピッチエラー補正プログラムは、傾斜軸のように回転角度範囲が360度未満の場合にも適用可能である。
【0061】
本実施形態のステップS300で円テーブル用数値制御装置21に格納されたピッチエラー補正値パラメータおよびバックラッシュ補正値が新しいピッチエラー補正値Cおよびバックラッシュ補正値に書き換えられる。次のステップS400で測定部31は再度割出精度を順次測定して出力する。次のステップS500でコンピュータ41のピッチエラー補正値算出部は、再度測定された再度割出精度と所定の割出精度規格と比較する。そして再度割出精度が、割出精度規格以内に収まっている場合は、ステップS600へ進み、ステップS300で書き換えられたピッチエラー補正値パラメータを正しい値とし、ピッチエラー補正値パラメータおよび再度割出精度を出力する。かかるピッチエラー補正値パラメータは以降の作業に使用される。反対にステップS500で再度割出精度が割出精度規格をオーバーしている場合はSTARTに戻って上述したSTARTからステップS500までを実行し、前回実行したステップS300で書き換えられたピッチエラー補正値パラメータに代えて、今回実行したステップS300で再度割出精度を順次測定した結果からピッチエラー補正値Cとバックラッシュ補正値を改めて算出して、ピッチエラー補正値パラメータおよびバックラッシュ補正値の書き換えを改めて行い、その後、今回のステップS400でもう一度割出精度を順次測定して、もう一度順次測定した割出精度と割出精度規格とを比較する。かくしてSTARTからステップS500までを複数回繰り返すことになって、割出精度規格を複数回連続してオーバーする場合は、これ以上の再測定を行うことなく、リトライアウトして警告を出力する。この出力は例えばコンピュータ41の画面への表示である。これにより円テーブル装置11に対して機械系のメンテナンスを行う機会を提供する。
【0062】
次に本発明の変形例になるピッチエラー補正プログラムを説明する。
図6は、変形例の補正対象になる他の割出精度の例を示すグラフであり、前述した
図3とは異なる。前述したピッチエラー補正プログラムは、
図3に示すように回転角度領域の全体において割出精度の差が小さい場合に有効である。これに対し変形例のピッチエラー補正プログラムは、
図5および
図6に示すように回転角度領域の一部の割出精度が残りの領域の割出精度と著しく異なる場合に有効である。
図5および
図6の例では、165°~180°の領域における正回転CW時の割出精度が、残りの領域の割出精度と著しく異なる。
【0063】
変形例では、コンピュータ41の補正倍率算出部が、1ピッチを意味する所定角度に関し、該1ピッチ間における割出精度の差分Dの絶対値を求め、該絶対値をピッチエラー補正値パラメータの上限値で除算した商を求める。そして、当該商≦1ならば、1を最適なピッチエラー補正倍率とする。反対に、当該商>1ならば、当該商を最適なピッチエラー補正倍率とする(2以上の整数)。これにより回転角度領域の一部が残りの領域の割出精度と著しく異なる場合でも割出精度を向上させることができる。
【0064】
次に本発明の別な変形例になるピッチエラー補正プログラムを説明する。コンピュータ41のピッチエラー補正値算出部は、所定角度(例えば3度)毎に測定された割出精度に基づき、これらの測定点間隔(例えば3度)を、更に細かく等分した補正点間隔(例えば1度)でピッチエラー補正値Cの補間計算を行う。補間計算は例えば比例配分である。かかる変形例によれば、1ピッチ間で補間計算がなされることから、測定点数よりも多くの補正点数によってピッチエラー補正がきめ細かに実行され、割出精度が益々向上する。
【0065】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、工作機械において有利に利用される。
【符号の説明】
【0067】
11 円テーブル装置、 12 円テーブル、 13 筐体、
21 円テーブル用数値制御装置、 31 測定部、
32 割出角度測定装置、 33 レーザ、 34 測定部本体、
41 コンピュータ。