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特許7313418口腔内の抗炎症剤として用いるためのプロバイオティクス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】口腔内の抗炎症剤として用いるためのプロバイオティクス
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20230714BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20230714BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230714BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230714BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230714BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K8/99
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61P1/02
A61P29/00
A61Q11/00
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021196237
(22)【出願日】2021-12-02
(62)【分割の表示】P 2018538221の分割
【原出願日】2017-01-18
(65)【公開番号】P2022031608
(43)【公開日】2022-02-21
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】16151975.6
(32)【優先日】2016-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM 15313
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM 32131
【微生物の受託番号】CCTCC  CCTCC M 2016652
【微生物の受託番号】NCIMB  NCIMB 8823
(73)【特許権者】
【識別番号】511008850
【氏名又は名称】シムライズ アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】500377549
【氏名又は名称】プロビ アクチボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ マルクス ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ホルムグレン ケルスティン
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】フィービヒ ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ウェイド ウィリアム
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】特許第6899400(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/747
A61K 8/99
A61K 9/08
A61K 9/10
A61K 9/16
A61K 9/20
A61K 9/48
A61P 1/02
A61P 29/00
A61Q 11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯肉炎及び/又は歯周炎の治療及び/又は予防に用いるための医薬組成物であって、
前記組成物が微生物を含むか、又は2以上の微生物を含む混合物、若しくは2以上の微生物からなる混合物を含み、
前記微生物は、ラクトバチルス・プランタラムHeal19(DSM 15313)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)GOS42(DSM 32131)、ラクトバチルス・デルブルエッキー・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)LL-G41(CCTCC M 2016652)、及びラクトバチルス・パラカゼイNS9(NCIMB 8823)からなる群から選択され、及び
歯肉炎及び/又は歯周炎の治療及び/又は予防が、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、プロスタグランジンE2(PGE2)、イソプロスタン、及びマトリックスメタロペプチダーゼ9(MMP9)からなる群から選択される1種以上の炎症性因子の放出を低減又は抑制することによるものである、前記医薬組成物。
【請求項2】
歯肉炎及び/又は歯周炎の治療及び/又は予防に用いるための医薬組成物であって、
前記組成物が微生物を含むか、又は2の微生物を含む混合物、若しくは2の微生物からなる混合物を含み、
前記微生物は、ラクトバチルス・プランタラムHeal19(DSM 15313)及びラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)GOS42(DSM 32131)からなる群から選択され、及び
歯肉炎及び/又は歯周炎の治療及び/又は予防が、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、プロスタグランジンE2(PGE2)、イソプロスタン、及びマトリックスメタロペプチダーゼ9(MMP9)からなる群から選択される1種以上の炎症性因子の放出を低減又は抑制することによるものである、前記医薬組成物。
【請求項3】
前記微生物は、弱毒化微生物又は死んだ微生物、好ましくは熱不活性化された微生物、好ましくは70℃と100℃の間の温度で2~8分間インキュベートすることによって熱不活性化された微生物である、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
口腔医薬組成物、口腔ケア製品又は栄養若しくは楽しみのための製品であって、前記組成物又は製品が歯肉炎及び/又は歯周炎の治療及び/又は予防に用いるためのものであり、
前記組成物又は製品が、ラクトバチルス・プランタラムHeal19(DSM 15313)、ラクトバチルス・プランタラムGOS42(DMS 32131)、ラクトバチルス・デルブルエッキー・サブスピーシーズ・ラクティスLL-G41(CCTCC M 2016652)、及びラクトバチルス・パラカゼイNS9(NCIMB 8823)からなる群から選択される1種以上の微生物を含み、
前記微生物の合計量が、歯肉炎及び/又は歯周炎の治療及び/又は予防に十分であり、
更に、前記微生物の合計量が、前記組成物又は製品の合計質量に対し、好ましくは0.01~100%の範囲内、より好ましくは0.1~50%の範囲内、最も好ましくは1~10%の範囲内であり、及び/又は、
前記微生物の合計量が、好ましくは1×103~1×1011コロニー形成単位(CFU)の範囲内であり、より好ましくは1×105~1×1010CFUの範囲内であり、
並びに
歯肉炎及び/又は歯周炎の治療及び/又は予防が、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、プロスタグランジンE2(PGE2)、イソプロスタン、及びマトリックスメタロペプチダーゼ9(MMP9)からなる群から選択される1種以上の炎症性因子の放出を低減又は抑制することによるものである、前記組成物又は製品。
【請求項5】
担体、賦形剤又は更なる活性成分からなる群から選択される1種以上の成分を更に含む、請求項に記載の組成物又は製品。
【請求項6】
前記組成物が、コーティング又はカプセル化されている、請求項のいずれか1項に記載の組成物又は製品。
【請求項7】
前記組成物又は製品が、溶液、懸濁液、乳液、錠剤、顆粒、粉末又はカプセルの形態である、請求項のいずれか1項に記載の組成物又は製品。
【請求項8】
前記組成物又は製品が、練り歯磨き、歯磨きジェル、歯磨き粉、歯クリーニング液体、歯クリーニング泡、マウスウォッシュ、マウススプレー、デンタルフロス、チューイングガム及びトローチ剤からなる群から選択される、請求項のいずれか1項に記載の組成物又は製品。
【請求項9】
請求項のいずれか1項に記載の口腔医薬組成物、口腔ケア製品又は栄養若しくは楽しみのための製品の製造方法であって、
ラクトバチルス・プランタラムHeal19(DSM 15313)、ラクトバチルス・プランタラムGOS42(DMS 32131)、ラクトバチルス・デルブルエッキー・サブスピーシーズ・ラクティスLL-G41(CCTCC M 2016652)、及びラクトバチルス・パラカゼイNS9(NCIMB 8823)からなる群から選択される1種以上の微生物を、1種以上の更なる成分、好ましくは担体、賦形剤又は更に活性成分からなる群から選択される1種以上の成分と混合する工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の炎症の治療及び/又は予防に用いるための、好ましくは歯肉炎及び/又は歯周炎の治療及び/又は予防のための特定の微生物又はそれらの混合物に関する。
【0002】
特に、本発明は、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、腫瘍壊死因子(TNF)、プロスタグランジンE2(PGE2)、イソプロスタン、マトリックスメタロペプチダーゼ9(MMP9)及びNF-κBからなる群から選択される1種以上の炎症性因子の放出を低減又は抑制するための、口腔内の抗炎症剤として用いるための微生物又はそれらの混合物に関する。
【0003】
更に、本発明は、活性剤としての1種以上の抗炎症性微生物を含む口腔医薬組成物、口腔ケア製品又は栄養若しくは楽しみのための製品及びそれらの製造方法を提供する。
【0004】
歯肉の炎症状態は、主として歯垢の形成により誘発される。コロニーを形成する細菌は、食物残渣のみならず唾液成分の存在により助長されて、歯の表面にバイオフィルムを形成する。初期段階で十分に除去されていないと、歯の表面にあるプラークフィルムは、除去することが非常に困難な歯石の堆積物となる。歯肉縁での増大した数の細菌の存在により、歯肉炎として知られる歯肉の炎症を導く。感染しやすい個人においては、歯肉炎は歯周炎へと進行する可能性があり、歯の喪失につながり得る。特に、グラム陰性の細菌中に存在するリポ多糖類(LPS)は、プロスタグランジンE2(PEG2)及び感染組織中のインターロイキン並びにTNFアルファのような炎症メディエーターを放出するLPS刺激されたマクロファージによって非特異的な免疫反応を引き起こす可能性がある。炎症メディエーターは、常在繊維芽細胞から更なるPGE2及びマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の放出を誘発し、周囲組織の細胞外基質を破壊する。これにより、細菌は組織のより深くに貫通すること及び上皮及び歯根の外層から独立した炎症プロセスを促進することができ、歯周ポケットの形成を引き起こす。歯を支える歯槽骨は、細菌の進行より早く吸収し、歯の不安定化を引き起こし、未治療のままにすると、失われる。
【0005】
歯肉の進行性の破壊を回避するために、口腔内の炎症反応は、初期段階で抑制されるか、理想的に予防される必要がある。
【0006】
プラークの機械的除去の改善された方法から、強力な抗細菌特性を備える口腔ケア製品の使用までにわたって、多くの種々のアプローチがこの問題に対処してきた。
【0007】
しかしながら、口腔内に存在する全ての細菌が疾患と関係があるわけではなく、多くは口腔内の健康を促進さえする。従って、不特定の常在細菌を根絶するのではなく、口腔菌叢の健康的な組成の方向へバランスを確立することが望ましい。
【0008】
通常の口腔菌叢は非常に複雑で、700を超える細菌種のみならず古細菌、糸状菌、プロトゾア及びウィルスを含む。乳酸菌及びビフィズス菌等の下腸の共生生物は、プロバイオティクスとして投与されたときに、いくつかの抗炎症性特性を含む腸の健康に有益な効果を有することが分かった。
【0009】
口腔内の細菌のプロバイオティクス活性についていくつかの研究がなされてきたが、用いる種により大きく変化することが分かり、活性は大半無関係の効果に依存する可能性があるため、有効な用途に対する適切なパラメータの確立が困難である。
【0010】
プロバイオティクス活性のうち、疾患関連種に対する一般的な抗細菌効果、すなわち歯の表面への細菌の接着の低減又は予防及び抗炎症性効果が文献で論じられてきた。
【0011】
国際公開第2010/077795号は、連鎖球菌及び乳酸菌の特定の菌株から選択される治療的に有効な量の有益な細菌を含む、口腔の健康を改善するための組成物に関するものである。国際公開第2010/077795号が主に吸引性肺炎の発生率の減少に関するものである一方で、口腔菌叢を有益な細菌の方向へバランスをとることによる歯肉炎及びプラークの予防についても言及されており、一般的にプロバイオティクスは全身性炎症を仲介するレセプター信号伝達部位と競争する可能性があると記載されている。しかしながら、特に種々の炎症性因子に関して、これらの特性の更なる議論がされておらず、開示された菌株に対してそのような効果は評価されていなかった。
【0012】
歯及び口腔のケア製品を含むプロバイオティクスは、独国実用新案第202009011370号によれば、歯周炎及び歯肉炎を予防できるものとして開示されており、乳酸菌、ビフィズス菌、腸球菌、胞子乳酸菌及び連鎖球菌を含む多種多様のプロバイオティクス細菌を列挙している。しかしながら、特定の菌株については言及されておらず、主張されているプロバイオティクス活性は更なる評価がされていない。
【0013】
炎症状態を低減/予防するために、乳酸菌、ビフィズス菌又は連鎖球菌等のプロバイオティクスを投与する方法が米国特許出願公開第2008/0241226号に示されている。
【0014】
国際公開第2010/008879号は、水に接触して直ちに活性化可能な不活性プロバイオティクスを含む菓子組成物を提供するものである。プロバイオティクスとして、乳酸菌及びビフィズス菌の種々の菌株が開示されている。国際公開第2010/008879号で言及されているプロバイオティクス効果は、例えば病原菌を抑制することによる歯肉炎の低減を含む。
【0015】
プロバイオティクス菌株であるラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)・GG(ATCC 53103)による口腔及び歯の健康の改善が米国特許出願公開第2004/0101495号に記載されている。これに関連して、免疫系に対するプロバイオティクスの刺激作用が開示されている。
【0016】
炎症性及び抗炎症性サイトカインのバランスを変化させるプロバイオティクス細菌の能力について、国際公開第2012/022773号で言及されており、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)(ATCC 55730)が歯肉溝滲出液中の炎症メディエーターの濃度に影響を与えることによって歯肉炎を低減することができるものとして言及されている。しかしながら、国際公開第2012/022773号は、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)(CECT 7481)及びラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(CECT 7480)の有効な量を含む口腔の健康のためのプロバイオティクス組成物に主に関するものであり、それらは特定の病原体に対する抗細菌特性を有することが証明されている。
【0017】
要約すると、口腔内の炎症反応に対する特定のプロバイオティクス菌株の影響、特に種々の炎症メディエーターの抑制に関しては、ほとんど知られていない。注目すべきことには、本発明に至る広範な調査において、一般的に認識されているプロバイオティクス細菌のいくつかの菌株もまた、ある服用量で炎症性因子の放出を高める可能性があることが分かった。したがって、適用のための有益な効果を最大限に利用するために、プロバイオティクス口腔ケア製品の組成は、(商業的に)入手可能な菌株の炎症性及び抗炎症性効果に関する詳細な研究を未だに必要とする。
【0018】
本発明の目的は、口腔内の炎症の非常に有効な治療及び/又は予防に用いることができ、特に歯肉炎及び/又は歯周炎の治療及び/又は予防に用いることができる微生物又はそれらの混合物を提供することである。
【0019】
本発明の更なる目的は、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、腫瘍壊死因子(TNF)、プロスタグランジンE2(PGE2)、イソプロスタン、マトリックスメタロペプチダーゼ9(MMP9)及びNF-κB等の1種以上の炎症性因子の放出を低減又は抑制することができる微生物又はそれらの混合物を提供することである。
【0020】
本発明に係る微生物を運ぶ口腔ケア組成物又は製品及びそのような組成物又は製品の製造方法もまた、提供される。
【0021】
本発明の目的は、口腔内の炎症の治療及び/又は予防に用いるための、好ましくは歯肉炎及び/又は歯周炎の治療及び/又は予防に用いるための、微生物、又は、2以上の微生物を含むか若しくは2以上の微生物からなる混合物により達成され、前記微生物は、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)LPc-G110(CCTCC M 2013691)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)GOS42(DSM 32131)、ラクトバチルス・デルブルエッキー・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)LL-G41(CCTCC M 2016652)、ラクトバチルス・プランタラムHeal19(DSM 15313)及びラクトバチルス・パラカゼイNS9(NCIMB 8823)からなる群から選択される。
【0022】
広範なスクリーニングにより、本発明に係る菌株は、特定の炎症性因子の放出を主として抑制的に調節する明確な活性を示すことが確認され、一方で、同時に、それらは他の炎症性因子の放出を高めないか、ごくわずかに(無視できる程度に)高めるのみである。従来技術では、特定の炎症性因子の抑制及び他の炎症性因子の増大に関する種々の菌株の有効性を評価しておらず、炎症性及び抗炎症性サイトカインのバランスに対する有益な効果に一般的に言及するのみである。本発明は今や、これまで可能ではなかった口腔内の炎症状態の予防及び/又は治療のための、商業的に入手可能なプロバイオティクス菌株の最適化された使用を可能にする。
【0023】
ラクトバチルス・パラカゼイLPc-G110の菌株は、ブダペスト条約に基づいて、中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)(Wuhan University,Wuhan4300072,中国)に、2013年12月23日に寄託番号CCTCC M 2013691としてBioGrowing Co.,Ltd.,(No.10666 Songze Rd.,Qingpu Shanghai 201700,中国)により寄託され、ラクトバチルス・プランタラムGOS42の菌株は、ブダペスト条約に基づいて、ライプニッツ研究所ドイツ細胞培養コレクションGmbH(DSMZ)(Inhoffenstr.7B,38124 Braunschweig,ドイツ)に、2015年9月2日に寄託番号DSM 32131としてプロビ アクチボラグにより寄託された。ラクトバチルス・デルブルエッキー・サブスピーシーズ・ラクティスLL-G41の菌株は、ブダペスト条約に基づいて、中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)(Wuhan University,Wuhan4300072,中国)に、2016年11月17日に寄託番号CCTCC M 2016652としてBioGrowing Co.,Ltd.,(No.10666 Songze Rd., Qingpu Shanghai 201700,中国)により寄託され、ラクトバチルス・プランタラムHeal19の菌株は、ブダペスト条約に基づいて、ライプニッツ研究所ドイツ細胞培養コレクションGmbH(DSMZ)(Inhoffenstr.7B,38124 Braunschweig,ドイツ)に、2002年11月27日に寄託番号DSM 15313としてプロビ アクチボラグにより寄託された。ラクトバチルス・パラカゼイNS9の菌株は、英国国立工業食品海洋細菌コレクション(NCIMB)(Ferguson Building,Craibstone Estate,Bucksburn, Aberdeen AB21 9YA,イギリス)で、寄託番号NCIMB 8823(登録日1956年10月1日、バーミンガム大学により)として公的に利用可能である。
【0024】
好ましい抗炎症性プロバイオティクス及びプロバイオティクス材料は逐次試験においてその有効性を示す。前記試験では、ヒト一次単球(human primary monocytes)においてそれらの抗炎症性効果を測定し、有望であれば、線維芽細胞における抗炎症性効果を評価することにより立証する。すなわち、炎症性のパラメータとして、インターロイキン1ベータ(IL-1ベータ)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFアルファ)、プロスタグランジンE2(PGE2)、8-イソプロスタン及びマトリックスメタロペプチダーゼ9(MMP9)をヒト一次単球において評価し、一方でPGE2、IL-6、IL-8、8-イソプロスタン及びNF-κB活性をヒト歯肉線維芽細胞において測定した。
【0025】
ラクトバチルス・プランタラムHeal19を、抗炎症性反応の調節のための効力のある薬剤として選択した。有効なヒト一次単球モデルにおいて、それは選択されたバイオマーカーの発現を著しくダウンレギュレートした。この菌株により抑制される主要な制御因子は、急性期タンパク質の増加した分泌物中に現れる初期の炎症の刺激物質であるIL-1ベータ及びPGE-2、先天性から後天性免疫への転移スイッチであるIL-6、又はイソプロスタンと同様に好中球の走化性のリクルートの誘発剤であり、痛覚のメディエーターであるIL-8である。更に、ラクトバチルス・プランタラムHeal19は、一度弱毒化すると、炎症マーカーであるIL-1及びPGE2に対して、さほど顕著ではないが同様の効果を示す。
【0026】
ラクトバチルス・パラカゼイNS9は、生存状態のみならず弱毒化状態において炎症反応の効力のある調節因子としての機能を果たす。有効なヒト一次単球モデルにおいて、それは選択されたバイオマーカーの発現を著しくダウンレギュレートした。この菌株により抑制される主要な制御因子は、急性期タンパク質の増加した分泌物中に現れる初期の炎症の刺激物質であるIL-1ベータ及びPGE-2、先天性から後天性免疫への転移スイッチであるIL-6、又はイソプロスタンと同様に局所及び全身性炎症の一般的なマーカーであり、痛覚のメディエーターであるTNFアルファである。最も興味深いことには、パラプロバイオティクスとして弱毒化された状態でさえも、上記マーカーはすべて、より少ない程度ではあるがダウンレギュレーションされる。それでもなお、ラクトバチルス・パラカゼイNS9は、弱毒化された状態においても炎症性反応の最も効力のある調節因子である。
【0027】
ラクトバチルス・デルブルエッキー・サブスピーシーズ・ラクティスLL-G41は、生存状態における炎症性反応の最も効力のある調節因子の一つである。有効なヒト一次単球モデルにおいて、それは選択されたバイオマーカーの発現を著しくダウンレギュレートした。この菌株により抑制される主要な制御因子は、急性期タンパク質の増加した分泌物中に現れる初期の炎症の刺激物質であるIL-1ベータ及びPGE-2、先天性から後天性免疫への転移スイッチであるIL-6、イソプロスタンと同様に局所及び全身性炎症の一般的なマーカーであり、痛覚のメディエーターであるTNFアルファ、又はイソプロスタンと同様に好中球の走化性のリクルートの誘発剤であり、痛覚のメディエーターであるIL-8である。最も興味深いことには、パラバイオティクスとして弱毒化された状態でさえも、PGE-2、IL-6及びIL-8はより少ない程度ではあるがダウンレギュレートされる。
【0028】
上記で説明したように、疾患関連細菌による口腔粘膜のコロニー形成及びプラークの形成は、口腔内の細菌バランスを有害な微生物の蓄積(ディスバイオシス(dysbiosis)とも呼ばれる)の方向へと傾ける可能性がある。したがって、本発明に係る口腔内の炎症の予防及び/又は治療に用いる微生物は、プラーク及びプラーク関連疾患の予防及び/又は治療における使用を含み、口腔菌叢を健康な状態の方向にバランスをとることによる口腔のディスバイオシスを回避することを有利に助ける。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、上記の微生物は、弱毒化微生物又は死んだ微生物であり、好ましくは熱不活性化された微生物であり、好ましくは70℃と100℃の間の温度で2~8分間インキュベートすることによって熱不活性化された微生物である。
【0030】
以下に記載する研究において、本発明に係る微生物が、不活性な状態でさえも炎症性因子の放出に対して抑制的な効果を提供できることを証明した。したがって、死んだ又は例えば熱不活性化された微生物を用いることも可能である。注目すべきことに、熱不活性な菌株は、特定の因子に対して同様の又は幾分わずかに向上した抗炎症性活性を示す可能性がある。
【0031】
ある態様において、本発明は、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、腫瘍壊死因子(TNF)、プロスタグランジンE2(PGE2)、イソプロスタン、マトリックスメタロペプチダーゼ9(MMP9)及びNF-κBからなる群から選択される1種以上の炎症性因子の放出を低減又は抑制するために口腔内の抗炎症剤として使用するための上記に列挙される微生物に関する。
【0032】
今回初めて、プロバイオティクス菌株が多くの種々の炎症性因子の放出を効果的に抑制することができることを個別に解明した。したがって、全体として最も有効な菌株を選択することにより、口腔内の炎症状態の治療及び/又は予防のためのプロバイオティクス菌株の使用を最適化することができる。
【0033】
本発明の他の態様によれば、上述の態様のいずれかに定義されるような1種以上の微生物の断片を口腔内の炎症の治療及び/又は予防に用いてもよく、好ましくは歯肉炎及び/又は歯周炎の治療及び/又は予防に用いてもよい。
【0034】
微生物の断片(例えば、分解した細胞の残がい)さえ含む混合物であれば発明の効果を提供するのに十分であるので、本発明に係るプロバイオティクス微生物の全細胞を必ずしも用いなくてもよい。
【0035】
更なる態様において、本発明はまた、口腔医薬組成物、口腔ケア製品又は栄養若しくは楽しみのための製品に関し、前記組成物又は製品は、ラクトバチルス・パラカゼイLPc-G110(CCTCC M 2013691)、ラクトバチルス・プランタラムGOS42(DSM 32131)、ラクトバチルス・デルブルエッキー・サブスピーシーズ・ラクティスLL-G41(CCTCC M 2016652)、ラクトバチルス・プランタラムHeal19(DSM 15313)及びラクトバチルス・パラカゼイNS9(NCIMB 8823)からなる群から選択される1種以上の微生物又はそれらの断片を含み、前記微生物又はそれらの断片の合計量は、口腔内の炎症の治療及び/又は予防、好ましくは歯肉炎及び/又は歯周炎の治療及び/又は予防に十分であり、更に、前記微生物又はそれらの断片の合計量は、前記組成物の合計質量に対し、好ましくは0.01~100%の範囲内、より好ましくは0.1~50%の範囲内、最も好ましくは1~10%の範囲内であり、及び/又は、前記微生物又はそれらの断片の合計量は、好ましくは1×103~1×1011コロニー形成単位(CFU)の範囲内であり、より好ましくは1×105~1×1010CFUの範囲内である。
【0036】
当業者は、本発明に係る組成物又は製品に用いられるプロバイオティクス生物が、その活性がバッチに伴って変化するかもしれず、製品又は処理方法にも依存する生物由来材料を意味することを認識している。したがって、与えられた範囲内で好適な量を適宜調節することができる。
【0037】
更に、本発明は、口腔内の炎症の治療及び/又は予防に用いるための、好ましくは歯肉炎及び/又は歯周炎の治療及び/予防に用いるための上述したような組成物又は製品に関する。
【0038】
本発明に係る組成物は、担体、賦形剤又は更に活性成分からなる群から選択される1種以上の成分を更に含んでもよく、前記成分は例えば、非ステロイド系消炎剤、抗生物質、ステロイド、抗TNFアルファ抗体又は他のバイオテクノロジー的に製造された活性剤及び/又は活性物質に加え、鎮痛剤、デクスパンテノール、プレドニゾロン、ポビドンヨード(polyvidoniodide)、クロルヘキシジン-ビス-D-グルコン酸、ヘキセチジン、塩酸ベンジダミン、リドカイン、ベンゾカイン、マクロゴールラウリルエーテル、ベンゾカインと塩化セチルピリジニウムとの組み合わせ、又はマクロゴールラウリルエーテルと子牛血液由来のタンパク質フリー血液透析液との組み合わせの群からの活性剤、並びに、例えば、フィラー(例えばセルロース、炭酸カルシウム)、可塑剤若しくは流動改善剤(例えば滑石粉、ステアリン酸マグネシウム)、コーティング剤(例えば酢酸ビニルフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、崩壊剤(例えばでんぷん、架橋ポリビニルピロリドン)、造粒(ラクトース、ゼラチン)用の軟化剤(例えばクエン酸トリエチル、ジブチルフタレート)、遅延剤(例えば懸濁液中のポリ(メタ)アクリル酸メチル/エチル/2-トリメチルアミノメチルエステル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体)、圧縮剤(例えば微結晶セルロース、ラクトース)、溶媒、懸濁剤若しくは分散剤(例えば水、エタノール)、乳化剤(例えばセチルアルコール、レシチン)、レオロジー特性改善剤(シリカ、アルギン酸ナトリウム)、微生物安定剤(例えば塩化ベンザルコニウム、ソルビン酸カリウム)、防腐剤及び酸化防止剤(例えばDL-アルファ-トコフェノール、アスコルビン酸)、pH調整剤(乳酸、クエン酸)、膨張剤若しくは不活性ガス(例えばフッ化塩化炭化水素、二酸化炭素)、色素(酸化鉄、酸化チタン)、軟膏の基本成分(例えばパラフィン、蜜ロウ)並びに文献(例えばSchmidt,Christin.Wirk- und Hilfsstoffe fur Rezeptur,Defektur und Groβherstellung.1999;Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH Stuttgart oder Bauer,Fromming Fuhrer.Lehrbuch der Pharmazeutischen Technologie.8.Auflage,2006.Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH Stuttgart)に記載されている他の成分等である。
【0039】
本発明に係る組成物又は製品はまた、コーティング又はカプセル化されてもよい。
【0040】
本発明に係る組成物のカプセル化は、制御された放出(例えば水と接触して直ちに)又は長期間に亘る連続的な放出を許容するという利点を有し得る。更に、組成物は分解から保護されてもよく、それにより製品寿命が改善される。活性成分のカプセル化の方法は技術的によく知られており、固有の要求事項に従って、多くのカプセル化材料及び組成物にそれらを適用する方法が利用可能である。
【0041】
更に、本発明に係る組成物又は製品は、溶液、懸濁液、乳液、錠剤、顆粒、粉末又はカプセルの形態であってもよい。
【0042】
本発明に係る組成物又は製品は、練り歯磨き、歯磨きジェル、歯磨き粉、歯クリーニング液体、歯クリーニング泡、マウスウォッシュ、マウススプレー、デンタルフロス、チューイングガム及びトローチ剤からなる群から選択されてもよい。
【0043】
そのような組成物又は製品は、ケイ酸塩、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム及び/又はヒドロキシアパタイト等の研磨系(研磨剤及び/又は光沢剤)、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム及び/又はコカミドプロピルベタイン等の界面活性剤、グリセロール及び/又はソルビトール等の保湿剤、例えばカルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、カラギナン及び/又はラポナイト(登録商標)等の増粘剤、サッカリン、芳香剤及び不快味の印象に対する味覚是正剤等の甘味料、味覚修正物質(例えばリン酸イノシトール、ヌクレオチド(例えばグアノシン一リン酸塩、アデノシン一リン酸塩又は他の物質(例えばグルタミン酸ナトリウム又は2-フェノキシプロピオン酸)))、メントール誘導体(例えばL-メンチル乳酸、L-メンチルアルキルカーボネート、メントンケタール)、イシリン及びイシリン誘導体等の冷却剤、安定剤、及びフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、二フッ化スズ、4級フッ化アンモニウム、クエン酸亜鉛、硫酸亜鉛、ピロリン酸スズ、二塩化スズ、種々のピロリン酸塩の混合物、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸カリウム、窒化カリウム、塩化カリウム、塩化ストロンチウム、過酸化水素、芳香物質、重炭酸ナトリウム及び/又は香り修正剤等の活性剤を含んでもよい。
【0044】
チューイングガム又はデンタルケアチューイングガムは、例えば、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリエチレン、(低分子又は中分子の)ポリイソブタン(PIB)、ポリブタジエン、イソブテン/イソプレン共重合体、ポリビニルエチルエーテル(PVE)、ポリビニルブチルエーテル、ビニルエステルとビニルエーテルとの共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体(SBR)、又は例えば酢酸ビニル/ラウリン酸ビニル、酢酸ビニル/ステアリン酸ビニル若しくはエチレン/酢酸ビニル及び例えば欧州特許第0242325号、米国特許第4518615号、米国特許第5093136号、米国特許第5266336号、米国特許第5601858号若しくは米国特許第6986709号に記載されたエラストマーの混合物に基づくビニルエラストマー等のエラストマーを含むチューイングガム基剤を含んでもよい。加えて、チューイングガム基剤は、更に、例えば炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化ケイ素、滑石粉、酸化アルミニウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、水酸化マグネシウム及びそれらの混合物等の(鉱物)フィラー、可塑剤(例えばラノリン、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、酢酸エチル、ジアセチン(グリセロールジアセテート)、トリアセチン(グリセロールトリアセテート)及びクエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、レシチン並びに例えばグリセロールモノステアレート等の脂肪酸のモノ及びジグリセリド等のリン脂質)、酸化防止剤、ワックス(例えばパラフィンワックス、カンデリラワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス及びポリエチレンワックス)、脂肪又は脂肪油(例えば硬化(水素化)植物性又は動物性脂肪)及びモノ、ジ又はトリグリセリド等の更なる成分を含んでもよい。
【0045】
最後に本発明はまた、上述したような口腔医薬組成物、口腔ケア製品又は栄養若しくは楽しみのための製品の製造方法に関し、次の工程を含むものである。
【0046】
ラクトバチルス・パラカゼイLPc-G110(CCTCC M 2013691)、ラクトバチルス・プランタラムGOS42(DMS 32131)、ラクトバチルス・デルブルエッキー・サブスピーシーズ・ラクティスLL-G41(CCTCC M 2016652)、ラクトバチルス・プランタラムHeal19(DSM 15313)及びラクトバチルス・パラカゼイNS9(NCIMB 8823)からなる群から選択される1種以上の微生物又はそれらの断片を、1種以上の更なる成分、好ましくは担体、賦形剤又は更に活性成分からなる群から選択される1種以上の成分と混合する工程。
【0047】
本発明に関連して、被験者又は、個々の、患者の治療方法、特に(本明細書に記載されるような)口腔内の炎症を治療及び/又は予防するための方法も本明細書に記載されており、前記方法は、本明細書に記載の微生物又は混合物を被験者/患者に、好ましくはそれらを必要としている被験者/患者に、好ましくは炎症を治療又は予防するのに十分な量投与する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1A-1F】図1は、ヒト一次単球における、インターロイキン1ベータ(A)、インターロイキン6(B)、インターロイキン8(C)、プロスタグランジンE2(D)、腫瘍壊死因子アルファ(E)及びイソプロスタン(F)に対するラクトバチルス・パラカゼイLPc-G110(CCTCC M 2013691)の抗炎症性効果を示す図である。左の列は未処理の細胞を、右の列は弱毒化細胞を意味する。
図2A-2B】図2は、ヒト歯肉線維芽細胞における、インターロイキンに対する未処理形態(A)及び弱毒化形態(B)のラクトバチルス・パラカゼイLPc-G110(CCTCC M 2013691)の抗炎症性効果を示す図である。左の列はインターロイキン6を、右の列はインターロイキン8を意味する。
図3A-3F】図3は、ヒト一次単球における、インターロイキン1ベータ(A)、インターロイキン6(B)、インターロイキン8(C)、プロスタグランジンE2(D)、腫瘍壊死因子アルファ(E)及びイソプロスタン(F)に対するラクトバチルス・プランタラムGOS42(DSM 32131)の抗炎症性効果を示す図である。左の列は未処理の細胞を、右の列は弱毒化細胞を意味する。
図4図4は、ヒト歯肉線維芽細胞における、インターロイキンに対する弱毒化形態のラクトバチルス・プランタラムGOS42(DSM 32131)の抗炎症性効果を示す図である。左の列はインターロイキン6を、右の列はインターロイキン8を意味する。
図5A-5G】図5は、ヒト一次単球における、インターロイキン1ベータ(A)、インターロイキン6(B)、インターロイキン8(C)、腫瘍壊死因子アルファ(D)、プロスタグランジンE2(E)、イソプロスタン(F)及びメタロペプチダーゼ9(MMP-9、G)に対するラクトバチルス・パラカゼイ(NCIMB 8823)の抗炎症性効果を示す図である。左の列は未処理の細胞を、右の列は弱毒化細胞を意味する。
図6A-6F】図6は、ヒト一次単球における、インターロイキン1ベータ(A)、インターロイキン6(B)、インターロイキン8(C)、プロスタグランジンE2(D)、イソプロスタン(E)及びマトリックスメタロペプチダーゼ9(MMP-9、F)に対するラクトバチルス・プランタラムHeal19(DSM 15313)の抗炎症性効果を示す図である。
図7A-7G】図7は、ヒト一次単球における、インターロイキン1ベータ(A)、インターロイキン6(B)、インターロイキン8(C)、腫瘍壊死因子アルファ(D)、プロスタグランジンE2(E)、イソプロスタン(F)及びマトリックスメタロペプチダーゼ9(MMP-9、G)に対するラクトバチルス・デルブルエッキーLL-G41(CCTCC M 2016652)の抗炎症性効果を示した図である。左の列は未処理の細胞を、右の列は弱毒化細胞を意味する。
図8図8は、ヒト歯肉線維芽細胞における、インターロイキン6及びインターロイキン8に対する弱毒化ラクトバチルス・パラカゼイ(NCIMB 8823)の抗炎症性効果を示す図である。左の列はインターロイキン6を、右の列はインターロイキン8を意味する。
【実施例
【0049】
以下の実施例は範囲の限定を意図することなく本発明を説明するために加えられる。
【0050】
実施例1:培養の確立及びプロバイオティクス菌株の取扱い
本発明の菌株は、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・LAFTI(Lactobacillus LAFTI)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・ガゼリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・セロビオスス(Lactobacillus cellobiosus)、ラクトバチルス・サリヴァリウス(Lactobacillus salivarius)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(streptococcus thermophilus)及びラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)を含む、試験される50以上の候補であるプロバイオティクス菌株から選択される。
【0051】
最適な成長条件及び採取する時点を同定し、スクリーニングされるプロバイオティクス細菌のコロニー形成単位(CFU)を測定するために、まず対数期と成長期の終点とを測定した。
【0052】
細菌の成長
(-80℃の)凍ったプロバイオティクスのストックを4℃で一晩かけて解凍し、翌朝6mlの無菌の9%NaCl溶液を1.2mlの細菌に加えた。サンプルを遠心分離(5分、5000rpm)し、上澄みを廃棄し、沈殿物を8mlの9%NaClで洗浄し、再度500rpmで5分間遠心分離した。それから沈殿物を1.2mlの9%NaClに再懸濁させ、1mlのサンプルを37℃の温かい培地50ml(MRSブイヨン、Carl Roth KG、カールスルーエ)に加え、37℃でインキュベートした。インキュベートは、50mlの無菌のポリプロピレン管(Greiner)中で行い、成長曲線を評価するために種々の時間点でプローブを採取した。
【0053】
OD測定
ODの測定のために、500μlの細菌懸濁液を移し、1.5mlのPSキュベット(Brand)中で、1mlのMRSブイヨン中に希釈した。OD測定は、600nmで行い(ThermoScientific、Helios Epsilon)、1.5mlのMRSブイヨンをブランクとして使用した。
【0054】
CFUの測定
CFU測定のために、細菌を希釈し(1:10,000,000、1:50,000,000及び1:100,000,000)、MRS寒天プレート(MRS寒天、X924、Carl Roth)上に置き、37℃で2日間インキュベートした。それから成長したコロニーを数え、CFUを計算した。
【0055】
細菌は、開始直後から、それらが分裂停止期に到達し始める7~8時間まで対数期に入っていた。播種される細菌の量は、曲線の形を変化させない。対数期における細菌を採取すべき最も急な成長期の点として5時間を選択し、対数期の終点でそれらを採取する点として7時間を選択した。
【0056】
実施例2:プロバイオティクスによるヒト単球の刺激の確立
プロバイオティクスによる単球細胞の培養物の刺激は、粉末として得られる菌株を用いて確立された。まず、成長した細菌(対数期から採取した)、成長した細菌の培養物の上澄み、溶解した粉末の直接的使用及び上澄みの粉末の使用等のいくつかの適用形態が試験された。結果に従って、対数期の終点の細菌が、凍結された菌株の2つのバッチを用いて、この試験がされた。上澄みの使用の代わりに、これらの2つの菌株の熱不活性化が確立され、不活性化した細菌と活性化した細菌とを比較した。
【0057】
サイトカインの測定;ヒト一次単球におけるMMP-9及びPGE2
健康的なヒトの血液ドナーの軟膜からヒト一次単球を分離した。ELISA実験のために、細胞を24ウェルプレート中に播種した。LPSとともに細胞を24時間インキュベートした。プロバイオティクス(5回分)を、LPS処理の30分前に添加した。24時間後、上澄みを除去し、遠心分離し、製造業者の手順を用いて、EIAs(PGE2はAssayDesignから、イソプロスタンはCaymanから)又はELISAs(全てのサイトカインはImmunotoolsから、MMP-9はGE Healthcareから)によって、IL-1ベータ、TNFアルファ、IL-6、IL-8、MMP-9、イソプロスタン-8及びPGE2の濃度を調査した。各回は、2人の異なるドナーからの2つの軟膜について2~3回調査した。
【0058】
まず、ヒト単球の刺激のための、種々のタイプのプロバイオティクス凍結乾燥粉末製剤を試験した。
【0059】
プロバイオティクスを採取し、それから遠心分離した。細胞を新鮮な培地に溶解させ、ヒト単球に適用した。
【0060】
それから単球をプロバイオティクスとともに30分間インキュベートし、それからLPSを添加し、24時間後に上澄みを除去し、炎症性のパラメータの測定に用いる。
【0061】
実施例3:熱不活性化された菌株の試験
熱不活性化の確立
熱不活性化は、2つのバッチに対して確立された。細菌の成長の対数期の終点で、細菌懸濁液のアリコートを除去し、未使用の50mlのチューブに加え、ウォーターバスの中で、80℃で5分間インキュベートした。80℃での5分により細菌が不活性化し、従ってそれらの成長が停止した。
【0062】
熱不活性化された菌株のバッチを試験すると、IL-1及びTNFに対する向上した効果は、熱処理により影響されないことが明らかになった。更に、熱不活性化は、両方の菌株によるPGE2の抑制に影響しないか、僅かに影響するのみであった。
【0063】
実施例4:ヒト単球に対するプロバイオティクスのスクリーニング及びNF-kappaB活性化に対する効果
LPS誘発されたヒト一次単球に対する様々なプロバイオティクス菌株を、活性化及び弱毒化(熱不活性化)形態でスクリーニングした(IL-1ベータ、IL-6、IL-8、TNFアルファ、PGE2、8-イソプロスタン、及びMMP-9の測定)。
【0064】
実施例1~4による菌株の典型的な抗炎症性パターンは、図1及び図3に示されている。
【0065】
線維芽細胞NIH3T3中のTNFにより誘発されるNF-kappaBの活性化に対する効果を試験する実験を、NF-kappaB依存性のプロモーターにより安定してトランスフェクトされたルシフェラーゼの遺伝子ドライブを含む線維芽細胞株において行った。細胞をプロバイオティクスの存在下又は不存在下、TNFで刺激した。6時間の刺激後、細胞を溶解させ、ルシフェラーゼの活性を照度計で測定した。最も効力のある菌株を選択した。
【0066】
実施例5:ヒト歯肉線維芽細胞に対する選択されたプロバイオティクスのスクリーニング
選択された菌株をヒト歯肉線維芽細胞に適用した。線維芽細胞の培養物を、製造業者の手順に記載の通りに保存した。刺激に先立って、ELISA実験のために、細胞を24ウェルプレート中に播種する。細胞を、IL-1ベータの不存在下(刺激なしのコントロール)又は存在下で24時間インキュベートした。プロバイオティクス(5回分、スクリーニングアッセイの結果による)を、IL-1処理の30分前に添加する。24時間後、上澄みを除去し、遠心分離し、製造業者の手順を用いて、EIA(AssayDesignからのPGE2、Caymanからのイソプロスタン)又はELISA(IL-6、IL-8、Immunotoolsから)によって、IL-6、IL-8、イソプロスタン及びPGE2の濃度を調査した。各回は少なくとも2~3回調査した。菌株はIL-6抑制効果を示した。
【0067】
実施例5による菌株の抗炎症性パターンは、図2及び図4に示されている。
【0068】
実施例6:プロバイオティクストローチ剤又はコンプリメイト(comprimate)
【0069】
製造方法:
・成分1及び6を50℃の真空箱型乾燥機中、最大圧力10mbarで16時間乾燥する。
・全ての成分を正確に秤量する。
成分1、2、3、4及び5を合わせ、十分に混合した(ブロックA)。プロバイオティクス材料は、1グラムあたり約105~1012コロニー形成単位(CFU)の活性を有する凍結乾燥の形態で用いる。
・次にブロックAを成分6に加え、5分間十分に混合する。
・タブレットプレスEK0(Korsch AG社製、ベルリン)の中で、15~20kNの調整圧力で粉末混合物をタブレットへと圧縮する。
目標パラメータは:
・タブレット直径:20mm
・タブレット重さ:2.0g
・密封したアルミニウムの小袋に室温で保管する。5個のトローチ剤に対し1gの乾燥剤を除湿のために用いる(真空箱型乾燥機中で、105℃で3時間保管することにより活性化する)。
【0070】
実施例7:粉末歯磨剤
【0071】
製造方法:
・成分7を50℃の真空箱型乾燥機中、最大圧力10mbarで16時間乾燥する。
・全ての成分を正確に秤量する。
・成分1、2、3及び4を合わせ、十分に混合する(ブロックA)。
・必要であれば、成分5及び6を合わせ、十分に混合する(ブロックB)。プロバイオティクス材料は、1グラムあたり約105~1012コロニー形成単位(CFU)の活性を有する凍結乾燥の形態で用いる。
・続いてブロックA及びBを合わせ、十分に混合する。
・混合物に成分7を追加し、十分に5分間混合する。
・粉末混合物がそれぞれ0.5gの割り当てとなるように調製し、密閉されたアルミニウムの小袋中の1割り当てに対し1gの乾燥剤(真空箱型乾燥機中で、105℃で3時間保管することにより活性化する)とともに室温で保管する。
【0072】
実施例8:粉末歯磨剤
【0073】
製造方法
・成分6、9及び10を、50℃の真空箱型乾燥機中、最大圧力10mbarで16時間乾燥する。
・全ての成分を正確に秤量する。
・成分1、2、3、4、5及び6を合わせ、十分に混合する(ブロックA)。
・成分7及び8を合わせ、十分に混合する(ブロックB)。プロバイオティクス材料は、1グラムあたり約105~1012コロニー形成単位(CFU)の活性を有する凍結乾燥の形態で用いる。
・続いてブロックA及びBを合わせ、十分に混合する。
・成分9及び10を合わせ、十分に混合する(ブロックC)。
・2つの混合物(ブロックA/B及びブロックC)を合わせ、5分間十分に混合する。
・タブレットプレスEK0(Korsch AG、ベルリン)の中で、15~20kNの調整圧力で粉末混合物をタブレットへと圧縮する。
目標パラメータ
・タブレット直径:9mm
・タブレット重さ:0.3g
・密封したアルミニウムの小袋に室温で保管する。3個のタブレットに対し1gの乾燥剤を除湿のために用いる(真空箱型乾燥機中で105℃で3時間保管することにより活性化する)。
【0074】
実施例9:チューイングガム
【0075】
製造方法:
・成分2を50℃の真空箱型乾燥機中、最大圧力10mbarで16時間乾燥する。
・全ての成分を正確に秤量する。
・成分1を、均一な塊が得られるまで加熱ニーダーを備えるチューイングガムラボニーダー中で45~59℃で混錬する。加熱は混合プロセスの間中行われる。
・続いて成分2、3及び4を加え、混合物が均一になり、粉末がもはや見えなくなるまで混錬する。
・成分6を、成分5(ブロックC)又は成分7(ブロックD)のいずれかに入れ込む。プロバイオティクス材料は、1グラムあたり約105~1012コロニー形成単位(CFU)の活性を有する凍結乾燥の形態で用いる。一様な懸濁液が得られるまで成分を混合する。
・まず、ブロックCをチューイングガムの塊に加え、均一な塊が得られるまで再度混錬する。
・最後に、ブロックDを適宜処理する。追加後、組成物は均一なチューイングガムの塊が得られるまで混錬しなければならない。
・ミキサーから塊を取り出し、エンボス加工セット“slabs”を用いて、エンボスローラーによりミニスティックに加工する。
・密封したアルミニウムの小袋に室温で保管する。7個のチューイングガムに対し1gの乾燥剤を除湿のために用いる(真空箱型乾燥機中で、105℃で3時間保管することにより活性化する)。
【0076】
実施例10:プロバイオティクスビーズレット(beadlets)
【0077】
製造方法:
アルギン酸塩ビーズレットの沈殿のための塩化カルシウム溶液の製造:
・2%の塩化カルシウム溶液を蒸留水及び塩化カルシウムから製造する。CaCl2が完全に溶解するように注意しなければならない。
【0078】
アルギン酸塩溶液の製造(アルギン酸塩の代わりにペクチン又はゲランガムを用いてもよい):
・撹拌機を備え、バッチサイズに適した反応容器の中に水を供給する。
・撹拌機を作動させ、高レベルで撹拌しながら、アルギン酸塩、アラビアガム、小麦繊維及びプロバイオティクスに加えて任意で要求されるゲランガムのそれぞれの量を追加する。
・混合物を撹拌しながら80℃に加熱し、5分間この温度を維持する。この工程の間、ゲル形成成分が溶解する。
・その後、加熱をやめ、塊がなくなるまで更に少なくとも30分間熱いゲル溶液を撹拌する。
・続いて、溶液を撹拌しながら39~43℃に冷蔵により冷却する。
・必要であれば、別の容器の中に芳香剤及び染料を供給し、十分に混合する。芳香剤を用いない場合、染料をグリセロールと混合する。
・染料分散液を均一に混合したら、アルギン酸塩溶液とともにバッチ容器に加える。混合容器を約10%の量のアルギン酸塩水溶液で数回洗浄し、懸濁液に加える。
・アルギン酸塩懸濁液を少なくとも更に5分間撹拌する。
・続いて、潜在的に存在する空気を除去するために、バッチを少なくとも更に15分低スピードで撹拌する。
【0079】
ビーズレットの沈殿のためのアルギン酸溶液の塩化カルシウム溶液への滴下:
・2つの排出口を備える堅く密閉可能な圧力安定反応容器にアルギン酸塩懸濁液を移す。1つの排出口には加圧空気を適用する。第2の排出口はチューブを経由して滴下ユニットのノズルへと導く。
・アルギン酸塩溶液が約45℃の温度に到達するように、反応容器を加熱プレート上で調節する。溶液をマグネチックスターラーで僅かに撹拌する。
・反応容器に圧力を適用した後、アルギン酸塩溶液を発振器により振動を設定したノズルに向かって押し出する。圧力及び発振器の周波数の適応により、ノズル先端で得られる液滴の大きさを調節してもよい。
・ノズル先端に形成するアルギン酸塩溶液の液滴が、最初に調製する塩化カルシウム溶液が循環する漏斗状の回収容器に落ちる。
・硬化したアルギン酸塩ビーズレットが漏斗を通して塩化カルシウム溶液とともに通過し、ふるいに集められ、回収した塩化カルシウム溶液をドリッピングユニットの下の漏斗に戻して再利用する。
排気温度が45℃に到達するまで、供給温度80℃の空気流乾燥機中(Aeromatic flowbed-drier)でビーズレットを乾燥させる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図8