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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】イオン注入のための箔シートアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/08 20060101AFI20230714BHJP
   H01J 27/04 20060101ALI20230714BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20230714BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
H01J27/08
H01J27/04
H01J37/08
H01J37/317 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021502694
(86)(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 US2019018883
(87)【国際公開番号】W WO2019190660
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】15/941,163
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500324750
【氏名又は名称】バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャニー, クレイグ アール
(72)【発明者】
【氏名】マクラフリン, アダム エム.
(72)【発明者】
【氏名】サージェント, ジェームズ エー.
(72)【発明者】
【氏名】アベシャウス, ジョシュア エム.
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2007-0007621(KR,A)
【文献】実開平03-077354(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0221669(US,A1)
【文献】特表2012-518267(JP,A)
【文献】特開2005-210140(JP,A)
【文献】特開2015-204185(JP,A)
【文献】特開2013-211232(JP,A)
【文献】特開2014-139889(JP,A)
【文献】特開2014-044886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/08
H01J 27/04
H01J 37/08
H01J 37/317
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源であって、
プラズマを生成するためのイオン源チャンバ、及び
複数の積み重ねられた箔層を含む箔ライナであって、隣接する箔層同士の間に間隔を有し、各箔層は1.27mm(0.050インチ)未満の厚さを有し、該箔ライナは、前記イオン源チャンバ内に配置され、かつ前記イオン源チャンバの内面と前記プラズマとの間に配置される、箔ライナ
を備え、
前記複数の積み重ねられた箔層のうちの1つが、隣接する箔層同士の間の前記間隔を増加させるための突起を含む、イオン源。
【請求項2】
前記箔ライナが、前記イオン源チャンバの側面と底部に近接して配置されるように「U」字形をしている、請求項1に記載のイオン源。
【請求項3】
前記複数の積み重ねられた箔層がそれぞれ、タングステン箔を含む、請求項1に記載のイオン源。
【請求項4】
前記箔ライナが第1の箔層及び第2の箔層を含み、前記第1の箔層と前記第2の箔層とが異なる耐熱性金属でできている、請求項1に記載のイオン源。
【請求項5】
前記複数の積み重ねられた箔層のうちの1つが絶縁材料を含む、請求項1に記載のイオン源。
【請求項6】
複数の積み重ねられた箔層を含む、イオン源チャンバ内で使用するための箔ライナであって、隣接する箔層同士の間に間隔を有し、各箔層は1.27mm(0.050インチ)未満の厚さを有前記複数の積み重ねられた箔層のうちの1つが、隣接する箔層間の前記間隔を増加させるための突起を含む、箔ライナ。
【請求項7】
前記複数の積み重ねられた箔層のうちの1つがスペーサ層を含む、請求項に記載の箔ライナ。
【請求項8】
前記スペーサ層が1つ以上の間隙を含む、請求項に記載の箔ライナ。
【請求項9】
前記スペーサ層が複数のストリップを含む、請求項に記載の箔ライナ。
【請求項10】
前記複数の積み重ねられた箔層のうちの1つが絶縁材料を含む、請求項に記載の箔ライナ。
【請求項11】
イオン源であって、
プラズマを生成するためのイオン源チャンバ
複数の積み重ねられた箔層を含む箔ライナであって、隣接する箔層同士の間に間隔を有し、各箔層は1.27mm(0.050インチ)未満の厚さを有し、該箔ライナは、前記イオン源チャンバ内に配置され、かつ前記イオン源チャンバの内面と前記プラズマとの間に配置され、前記複数の積み重ねられた箔層が、最内層、最外層、及び1つ以上の中間層を含み、前記最内層が耐熱性金属で構成され、前記複数の積み重ねられた箔層のうちの1つが絶縁材料で構成されている、箔ライナ、及び
前記最内層を前記イオン源チャンバに電気的に接続するコネクタ
を備えた、イオン源。
【請求項12】
前記最内層がタングステンを含み、前記複数の積み重ねられた箔層のうちの1つが異なる耐熱性金属を含む、請求項11に記載のイオン源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、間接加熱カソード(IHC)イオン源におけるライナとして使用するための箔シートアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
間接加熱カソード(IHC)イオン源は、カソードの後ろに配置されたフィラメントに電流を供給することによって動作する。フィラメントは熱電子を放出し、これがカソードに向かって加速されてカソードを加熱し、次にカソードがイオン源チャンバ内に電子を放出する。カソードは、イオン源チャンバの一端に配置される。リペラ(反射電極)は通常、カソードとは反対側のイオン源チャンバの端に配置される。リペラに電子をはじくようにバイアスをかけて、電子をイオン源チャンバの中心に戻るように方向づけることができる。幾つかの実施形態では、電子をイオン源チャンバ内にさらに閉じ込めるために、磁場が用いられる。電子はプラズマを生成させる。次に、抽出口を介してイオン源チャンバからイオンが抽出される。
【0003】
イオン源チャンバは通常、導電性が良好で融点が高い導電性材料でできている。イオン源チャンバは、ある特定の電位に維持することができる。加えて、カソードとリペラは、イオン源チャンバ内に配置され、通常、イオン源チャンバとは異なる電位に維持される。
【0004】
イオン源チャンバは、イオン源の寿命を延ばすために裏打ちされていることが多い。例えば、タングステンのライナがイオン源チャンバ内に取り付けられることがよくある。これらのタングステンライナは、イオン衝撃及び極端な温度にさらされる。これらのタングステンライナは崩壊することから、それを交換することで、イオン源チャンバ全体を交換することはない。タングステン又は他の高温耐熱性金属は、その電気コンダクタンスに起因して、しばしば選択される。
【0005】
タングステンライナもまた熱伝導性であることから、プラズマの熱は通常、イオン源チャンバに伝達される。しかしながら、ある特定の実施形態では、プラズマとイオン源チャンバとの間の温度差を維持することが有利でありうる。具体的には、イオン源チャンバの温度は、特に炭素及び三フッ化ホウ素などの核種にとっては、不要な材料の堆積が表面に蓄積し、均一性、寿命、及びコストに影響を与える、重要なパラメータである。
【0006】
したがって、プラズマとイオン源チャンバとの間に温度勾配を導入することが可能なライナが存在するならば有益であろう。さらには、これらのライナが低コストかつ容易に交換できるならば有利であろう。
【発明の概要】
【0007】
複数の箔層を含む箔ライナが開示される。箔層は、それぞれ、互いの上に積み重ねられた導電性材料でありうる。隣接する箔層間の間隔は、プラズマの温度がイオン源チャンバの温度よりも高くなるように、温度勾配を生成することができる。他の実施形態では、箔層は、プラズマがイオン源チャンバの温度よりも低くなるように、プラズマから熱を吸収するようにアセンブリ(組み立て)されうる。幾つかの実施形態では、温度勾配に影響を与えるために、間隙又は突起が1つ以上の箔層に配置される。ある特定の実施形態では、1つ以上の箔層は、温度勾配にさらに影響を与えるために、絶縁材料で構成される。箔ライナは、イオン源チャンバ内で容易にアセンブリ、設置、及び交換することができる。
【0008】
一実施形態によれば、イオン源が開示される。イオン源は、プラズマを生成するためのイオン源チャンバと、複数の積み重ねられた箔層を含み、イオン源チャンバ内に配置され、かつ該イオン源チャンバの内面とプラズマとの間に配置された箔ライナとを備えている。ある特定の実施形態では、箔ライナは、イオン源チャンバの側面と底部に近接して配置されるように「U」字形をしている。ある特定の実施形態では、複数の積み重ねられた箔層は、それぞれ、タングステン箔を含む。ある特定の実施形態では、箔ライナは、第1の箔層及び第2の箔層を含み、第1の箔層と第2の箔層とは異なる耐熱性金属でできている。ある特定の実施形態では、複数の積み重ねられた箔層のうちの1つは、隣接する箔層間の間隔を増加させるための突起を含む。ある特定の実施形態では、複数の積み重ねられた箔層のうちの1つは、雲母、石英、石英ウール、又は他の可撓性の絶縁体でありうる、絶縁材料を含む。
【0009】
別の実施形態によれば、イオン源チャンバ内で使用するための箔ライナが開示される。箔ライナは、複数の積み重ねられた箔層を含む。ある特定の実施形態では、複数の積み重ねられた箔層のうちの1つは、別の箔層の表面積よりも小さい表面積を有するスペーサ層を含む。ある特定の実施形態では、スペーサ層は、間隙、複数の垂直ストリップ、又は複数の水平ストリップを含みうる。ある特定の実施形態では、スペーサ層は、所望の経路に従って、熱をイオン源チャンバの中心から遠ざかる方向に方向づけるように構成される。ある特定の実施形態では、複数の積み重ねられた箔層のうちの1つは絶縁材料を含む。ある特定の実施形態では、複数の積み重ねられた箔層のうちの1つは、隣接する箔層間の間隔を増加させるための突起を含む。
【0010】
別の実施形態によれば、イオン源が開示される。イオン源は、プラズマを生成するためのイオン源チャンバと、複数の積み重ねられた箔層を含み、イオン源チャンバ内に配置され、かつ該イオン源チャンバの内面とプラズマとの間に配置された箔ライナとを備えており、複数の積み重ねられた箔層は、最内層、最外層、及び1つ以上の中間層を含み、最内層は、耐熱性金属で構成される。ある特定の実施形態では、複数の積み重ねられた箔層のうちの1つは絶縁材料で構成され、イオン源は、最内層をイオン源チャンバに電気的に接続するコネクタをさらに含む。ある特定の実施形態では、最内層はタングステンを含み、複数の積み重ねられた箔層のうちの1つは異なる耐熱性金属を含む。
【0011】
本開示をよりよく理解するために、参照することによって本明細書に組み込まれる、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態によるイオン源
図2】箔ライナを有する図1のイオン源の端面図
図3A】一実施形態による箔ライナ
図3B】一実施形態による箔ライナ
図4】第2の実施形態による箔ライナ
図5】第3の実施形態による箔ライナ
図6】第4の実施形態による箔ライナ
図7】第5の実施形態による箔ライナ
図8】最内層をイオン源チャンバに電気的に接続する機構を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述のように、間接加熱カソードイオン源は、ライナとともに使用されることがよくある。ライナは、下にあるイオン源チャンバを保護するために用いられる。プラズマからのイオンがライナに衝突し、時間の経過とともにライナに崩壊又は損傷を生じさせる。その後、ライナは新しいライナと交換される。動作中、イオン源チャンバの壁はライナによって保護され、影響を受けない。これらのライナは通常、ライナの製造に用いられる材料に基づく特定の熱伝導率を有している。その結果、イオン源チャンバの温度に影響を与えずに、プラズマの温度を変化させることは困難である。しかしながら、上記のように、ある特定の実施形態では、プラズマとイオン源チャンバとの間の温度差を維持することが有利でありうる。具体的には、イオン源チャンバの温度は、特に炭素及び三フッ化ホウ素などの核種にとっては、不要な材料の堆積が表面に蓄積し、均一性、寿命、及びコストに影響を与える、重要なパラメータでありうる。
【0014】
図1は、これらの問題を克服するIHCイオン源10の第1の実施形態を示している。IHCイオン源10は、底部101、2つの対向する端部、及びこれらの端部を接続する側面102、103を有する、イオン源チャンバ100を備えている。イオン源チャンバ100は、導電性材料、例えば、グラファイト、タングステン、又は他の高温材料などで構成されうる。電源170を使用して、イオン源チャンバ100にバイアスをかけることができる。他の実施形態では、イオン源チャンバ100は接地されていてもよい。箔ライナ200は、イオン源チャンバ100内に配置され、イオン源チャンバ100の対向する両端を接続する側面102、103を覆うことができる。箔ライナ200はまた、イオン源チャンバ100の底部101も覆うことができる。カソード110は、イオン源チャンバ100の2つの対向する端部のうちの一方において、イオン源チャンバ100内に配置される。このカソード110は、イオン源チャンバ100に対してカソード110にバイアスをかけるように機能するカソード電源115と連結している。ある特定の実施形態では、カソード電源115は、イオン源チャンバ100に対してカソード110に負のバイアスをかけることができる。例えば、カソード電源115は、0から-150Vの範囲の出力を有しうるが、他の電圧を用いることもできる。ある特定の実施形態では、カソード110は、イオン源チャンバ100に対して0から-40Vの間でバイアスされる。フィラメント160はカソード110の後ろに配置される。フィラメント160は、フィラメント電源165と連結している。フィラメント電源165は、フィラメント160が熱電子を放出するように、フィラメント160に電流を流すように構成される。カソードバイアス電源116は、フィラメント160をカソード110に対して負にバイアスするため、これらの熱電子は、フィラメント160からカソード110に向かって加速され、カソード110の裏面に衝突するときにカソード110を加熱する。カソードバイアス電源116は、例えば、カソード110の電圧よりも負の300Vから600Vの間の電圧を有するように、フィラメント160にバイアスをかけることができる。次に、カソード110は、その前面において熱電子をイオン源チャンバ100に放出する。
【0015】
したがって、フィラメント電源165は、フィラメント160に電流を供給する。カソードバイアス電源116は、フィラメント160にバイアスをかけて、それがカソード110よりも負になるようにし、その結果、電子は、フィラメント160からカソード110の方へと引き付けられる。最後に、カソード電源115は、イオン源チャンバ100よりも負に、カソード110にバイアスをかける。
【0016】
リペラ120は、カソード110の反対側のイオン源チャンバ100の端部においてイオン源チャンバ100内に配置される。リペラ120は、リペラ電源125と連結することができる。名前が示すように、リペラ120は、カソード110から放出された電子をイオン源チャンバ100の中心に向かって戻すようにはじくのに役立つ。例えば、リペラ120は、電子をはじくために、イオン源チャンバ100に対して負の電圧でバイアスされうる。カソード電源115と同様に、リペラ電源125は、イオン源チャンバ100に対してリペラ120に負のバイアスをかけることができる。例えば、リペラ電源125は、0から-150Vの範囲の出力を有しうるが、他の電圧を用いることもできる。ある特定の実施形態では、リペラ120は、イオン源チャンバ100に対して0から-40Vの間でバイアスされる。
【0017】
ある特定の実施形態では、カソード110とリペラ120とを共通の電源に接続することができる。したがって、この実施形態では、カソード電源115とリペラ電源125は同一の電源である。他の実施形態では、リペラ120は、リペラがいかなる電源にも、又は接地にも接続されないように、電気的にフローティング状態でありうる。
【0018】
示されてはいないが、ある特定の実施形態では、イオン源チャンバ100内に磁場が生成される。この磁場は、電子を一方向に沿って閉じ込めることを目的としている。例えば、電子は、カソード110からリペラ120への方向(すなわち、y方向)に平行なカラムに閉じ込められうる。
【0019】
イオン源チャンバ100の上部には、抽出口145を含む面板140が配置されうる。図1では、抽出口145は、X-Y平面に平行な(ページに平行な)面板140上に配置される。面板140は、タングステンなどの導電性材料でありうる。さらには、図示されてはいないが、IHCイオン源10はまた、イオン化されるガスをイオン源チャンバ100に導入するガス入口も備えている。
【0020】
コントローラ180は、電源によって供給される電圧又は電流を変更することができるように、1つ以上の電源と通信することができる。コントローラ180は、マイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ、専用コントローラ、又は別の適切な処理ユニットなどの処理ユニットを含むことができる。コントローラ180はまた、半導体メモリ、磁気メモリ、又は別の適切なメモリなどの非一時的な記憶素子も含みうる。この非一時的な記憶素子は、コントローラ180がフィラメント160、カソード110、及びリペラ120に対して適切な電圧を維持可能にする命令及び他のデータを含みうる。
【0021】
動作中、フィラメント電源165は、フィラメント160に電流を流し、それにより、フィラメント160に熱電子を放出させる。これらの電子は、フィラメント160よりも正でありうるカソード110の裏面に衝突し、カソード110を加熱させ、それにより、カソード110は、イオン源チャンバ100に電子を放出する。これらの電子は、ガス入口を通ってイオン源チャンバ100に供給されるガスの分子と衝突する。これらの衝突によってイオンが生成され、プラズマ150が形成される。プラズマ150は、カソード110及びリペラ120によって生成された電場によって閉じ込められ、操作されうる。ある特定の実施形態では、プラズマ150は、抽出口145に近接した、イオン源チャンバ100の中心近くに閉じ込められる。次に、イオンは、抽出口145を通してイオンビームとして抽出される。
【0022】
図2は、箔ライナ200の実施形態を示している。この実施形態では、箔ライナ200は、該箔ライナ200がイオン源チャンバ100の側面102、103、及び底部101、又はこれらの表面の一部を覆うように、「U」字形でありうる。図に見られるように、箔ライナ200の丸みを帯びた部分は、イオン源チャンバ100の底部101に近接している。箔ライナ200は、側面102、103、及び/又は底部101と電気的に接触することができ、したがって、イオン源チャンバ100と同じ電位に維持される。箔ライナ200は、プラズマ150とイオン源チャンバ100との間に配置される。箔ライナ200は、イオン源チャンバ100の内面の少なくとも一部をプラズマ150から遮蔽するために用いられる。これは、イオン源チャンバ100をスパッタリング又は他の有害な影響から保護するのに役立つ。
【0023】
図2に示される箔ライナ200は2つの側面102、103、及び底部101を覆うことができるが、イオン源チャンバ100の両端は覆わない。本開示全体を通して、長さ方向とは、イオン源チャンバ100の端部間の方向のことを指し、これは、図1ではY方向として示されている。幅方向とは、イオン源チャンバの側面102、103の間の方向のことを指し、これは、図1ではX方向として示されている。箔ライナ200の厚さとは、Z方向の寸法を指す。
【0024】
上記開示は、箔ライナ200がイオン源チャンバ100と電気的に連結する構成を説明しているが、他の実施形態も可能である。例えば、箔ライナは、ある特定の実施形態では、面板140と連結していてもよい。
【0025】
箔ライナ200と面板140との間の接続は、締まり嵌め、ばね、又は他の機構を含めた、幾つかの方法で行うことができる。
【0026】
図1は、間接加熱カソードイオン源を示しているが、本明細書に記載される箔ライナは他のイオン源にも使用することができる。例えば、箔ライナは、バーナス源、フリーマン源、マルチカスプ源、または任意のタイプのプラズマ源とともに利用することができる。よって、本開示はIHCイオン源に限定されない。したがって、「イオン源」という用語は、イオンを生成するために用いられる任意のタイプのデバイスを指しうる。
【0027】
箔ライナ200は、互いの上に配置された複数の箔層を含む。イオン源チャンバ100と接触している箔層は最外層と呼ぶことができ、一方、プラズマ150に最も近い箔層は最内層と呼ばれる。他のすべての層は、中間層と呼ぶことができる。「箔」及び「箔層」という用語は、0.050インチ未満の厚さを有する材料のシートを示すために用いられる。「箔」又は「箔層」の生成に用いられる材料は、金属又は可撓性絶縁体でありうる。
【0028】
図3A~3Bに示される一実施形態では、箔ライナ300は、サイズ及び形状がすべて等しい複数の箔層310から形成されている。これらの箔層310は、箔ライナ300を形成するために単に互いの上に配置される。箔層310は、タングステン、チタン、又は異なる導電性材料などの任意の適切な材料でありうる。ある特定の実施形態では、タングステンが用いられる。タングステン箔は通常、表面が粗く、隣接する層を自然に離間させるのに役立つ。箔層310間の空間は、絶縁効果を有しており、プラズマ150に近い層310を、イオン源チャンバ100の近くよりも温かくする。ある特定の実施形態では、箔層310は、長さ方向及び幅方向において1から6インチの間であり、0.002から0.020インチの厚さを有する。当然ながら、他の寸法も可能であり、本開示はこれらの寸法に限定されない。箔層310間の間隔は、約0.001から0.025インチの間でありうる。
【0029】
これらの箔層310は、互いの上に積み重ねられて、箔ライナ300を形成する。箔層310は、最内層311、最外層312、及び1つ以上の中間層313を含む。ある特定の実施形態では、箔ライナ300が2つの箔層310を含んで、中間層313が存在しない場合がある。箔ライナ300を形成する箔層310の積み重ねられたセットは、図3Bに示されるように、箔ライナ300の中央が「U」字形に曲がるように、イオン源チャンバ100に挿入される。したがって、図3Aに示される各箔層310の左端及び右端は、イオン源チャンバ100の側面102、103間に延びる。図4~7では、箔層もまたこのように配向されている。ある特定の実施形態では、すべての箔層310の端部が曲げた後に整列するように、外層は内層よりもわずかに大きくなりうる。この実施形態では、すべての箔層310は導電性であり、互いに物理的に接触しているため、最外層312がイオン源チャンバ100と物理的及び電気的に接触している限り、最内層311はイオン源チャンバ100と同じ電位にある。
【0030】
最内層311と最外層312との間の温度勾配は、隣接する層の間の間隔、各箔層310に用いられる材料の熱伝導率、及び中間層313の数によって決定される。例えば、大きい温度勾配は、タングステン又は任意の高温耐熱性金属の3つ以上の中間層313を使用して達成させることができる。より小さい温度勾配は、より少ない中間層313を使用して、又は箔層を押圧してそれらの間の間隔を減じることによって、達成されるであろう。
【0031】
さらには、図3A~3Bの実施形態では、すべての箔層310が同じ材料である必要はない。例えば、タングステン箔層を、チタン又は別の金属でできた箔層とともに使用することができる。ある特定の実施形態では、タングステンは対象とする核種とは容易に区別することができるため、プラズマに曝される最内層311としてタングステンを有することが好ましい場合がある。したがって、ある特定の実施形態では、最内層311はタングステンでありうるが、一方、中間層313又は最外層312の1つ以上は、チタン又は別の高温耐熱性金属でできていてよい。
【0032】
図4は別の実施形態を示している。この実施形態では、箔ライナ400は、複数の箔層410を含む。図3A~3Bの実施形態と同様に、箔層410は、最内層411、最外層412、及び1つ以上の中間層413を含む。ある特定の実施形態では、箔ライナ400がちょうど2つの箔層410を含むように、中間層413が存在しない場合がある。箔層410のうちの少なくとも1つは、複数の突起420を有する。ある特定の実施形態では、最外層412は、突起420を有しうる。ある特定の実施形態では、図4に示されるように、中間層413の1つ以上が突起420を有しうる。しかしながら、突起は、最内層411及び最外層412に配置することもできる。これらの突起420は、打刻、打ち抜き、又は他の方法で箔層410に導入することができる。これらの突起420は、他の高さも可能であるが、箔層410の高さの2倍から0.02インチの間など、任意の適切な高さでありうる。これらの突起420は、ある特定の実施形態では、長さ及び幅方向において0.125から1.0インチの間でありうる。突起420は、長さ及び幅方向において0.125から1.0インチの間で互いに離間されうる。
【0033】
突起420は、隣接する箔層410間の最小の分離又は間隔を確実にするのに役立つ。したがって、箔層410が突起420を含む場合には、箔層410はさらに離間されうる。さらには、突起420はまた、隣接する箔層410間の熱的及び電気的接触の量を制限するのに役立つ。突起420は、箔層410間に最小の間隔を導入するように、非常に滑らかな傾向がある金属箔とともに利用されうる。図3A~3Bの実施形態と同様に、箔層410は同一の材料である必要はない。タングステン、チタン、他の金属箔、又はそれらの任意の組合せを用いることができる。また、図3Bに示されるように、箔ライナ400は、「U」字形を形成するように曲げることもできる。
【0034】
図5は、箔ライナ500の別の実施形態を示している。この実施形態では、1つ以上の箔層510はスペーサ層520でありうる。スペーサ層520は、1つ以上の間隙530をその層に導入する層として定義される。図3A~3Bの実施形態と同様に、箔層510は、最内層511、最外層512、及び1つ以上の中間層513を含む。ある特定の実施形態では、スペーサ層520は、最内層511と最外層512との間に配置される任意の中間層513でありうる。このようにして、スペーサ層520とその隣接する箔層510との間の物理的接続が減少し、最内層と最外層との間の熱伝達が低減する。言い換えれば、スペーサ層520内に間隙530が配置されている領域では、隣接する箔層510間で熱が伝導されない。
【0035】
スペーサ層520の使用はまた、イオン源チャンバ100の加熱を方向づける又は集中化するのを助けることができる。図5は、2つの間隙530で形成された中間層513を示している。この実施形態では、間隙530の領域において、スペーサ層520のいずれかの側の箔層510間に大きい空間が存在するであろう。このようにして、最内層511から最外層512への熱伝導は、とりわけ間隙530の近くで低減する。結果として、間隙530が配置されていない領域では、より多くの熱が伝導されるであろう。したがって、間隙530に隣接するイオン源チャンバ100の内部の領域は、間隙530が配置されていない領域よりも温かくなりうる。図5に示されるスペーサ層520を使用すると、間隙530は中心近くに配置されており、一方、スペーサ層520はその縁部に沿って材料を有するため、イオン源チャンバ100の端部は、イオン源チャンバ100の中心よりも低温になりうる。
【0036】
図5は、水平部材531によって分離された2つの間隙530を有するスペーサ層520を示しているが、他の実施形態もまた可能である。例えば、スペーサ層520は、2つより多い又は2つより少ない間隙530を有しうる。さらには、間隙530は、垂直部材又は水平部材、若しくは組合せによって分離されうる。さらには、間隙530は長方形である必要はない。間隙530は、円形、楕円形、又は任意の他の形状でありうる。
【0037】
したがって、図5では、スペーサ層520は1つ以上の間隙530を有する単一の箔である。しかしながら、他の実施形態もまた可能である。
【0038】
図6は、箔ライナ600の別の実施形態を示している。箔ライナ600は、最内層611、最外層612、及びスペーサ層620を含む、複数の箔層610を含む。加えて、中間層もまた箔ライナ600に含まれうる。この実施形態では、スペーサ層620は、複数の垂直ストリップ(帯状部)621、622を含む。垂直ストリップ621、622はそれぞれ、他の箔層610と同じ長さでありうる。U字形に曲げられると、垂直ストリップ621、622は、イオン源チャンバ100の両端の間に延びる、より長い寸法で配向される。この構成は、最内層611と最外層612との間の熱の伝達をさらに低減することができる。上で説明したように、垂直ストリップ621、622の構成は、所望の経路に熱を方向づけるのを助け、したがって、イオン源チャンバ100の内部の温度に影響を及ぼしうる。
【0039】
図7は、箔ライナ700の別の実施形態を示している。箔ライナ700は、最内層711、最外層712、及びスペーサ層720を含む、複数の箔層710を含む。加えて、中間層もまた箔ライナ700に含まれうる。この実施形態では、スペーサ層720は、複数の水平ストリップ721、722、723を含む。水平ストリップ721、722、723は、それぞれ、他の箔層710と同じ幅でありうる。U字形に曲げられると、水平ストリップ721、722、723は、イオン源チャンバ100の2つの側面102、103間に延びる、より長い寸法で配向される。この構成は、最内層711と最外層712との間の熱の伝達をさらに低減することができる。上で説明したように、水平ストリップ721、722、723の構成は、所望の経路に熱を方向づけるのを助け、したがって、イオン源チャンバ100の内部の温度に影響を及ぼしうる。
【0040】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、スペーサ層は、最内層よりも小さい表面積を有する層である。例えば、最内層は、ある特定の表面積をもたらす、ある特定の寸法を有する長方形の形状でありうる。本明細書に記載される実施形態のそれぞれにおいて、スペーサ層は、単一のシートとして構築されるか、複数のより小さいシートとして構築されるかにかかわらず、より少ない表面積を占め、その層内に間隙をもたらす。最内層と最外層との間の温度勾配を増加させるには、これらの間隙が役立つ。さらには、スペーサ層の構造及び構成はまた、熱をイオン源チャンバ100の特定の領域に方向づけ、集中させるのに役立ちうる。例えば、図6に示すように、間隙がスペーサ層の中心近くに配置されている場合、この領域の熱伝達は低減する。したがって、イオン源チャンバ100の中心の温度は、スペーサ層における間隙の配置に起因して、イオン源チャンバ100の端部と比較して上昇しうる。したがって、スペーサ層の構成は、所定の経路に従って熱をイオン源チャンバの中心から遠ざけるように方向づけることができる。
【0041】
上記の開示は、プラズマがイオン源チャンバ100よりも高い温度に維持されるように、最内の箔と最外層との間に温度勾配を作り出すためのさまざまな方法を説明している。しかしながら、他の実施形態では、箔層は、さまざまな箔層間の熱伝達を最大化するために、互いにしっかりと押圧されてもよい。
【0042】
ある特定の実施形態では、1つ以上の箔層は導電性ではなくてもよい。例えば、最内層は導電性でありうるが、他の箔層のいずれも導電性である必要はない。ある特定の実施形態では、雲母、石英、石英ウール、又は他の任意の可撓性絶縁体などの絶縁材料を使用して、箔層の1つを形成することができる。
【0043】
これらの実施形態では、最も内側の箔層は、絶縁層が介在することから、イオン源チャンバ100に電気的に接続されない可能性がある。これらの実施形態では、クリップ又は他のコネクタを使用して、最内層をイオン源チャンバに電気的に接続することができる。図8は、このような一実施形態を示している。この図では、絶縁層820は、最内層810とイオン源チャンバ100との間に配置されている。その結果、コネクタ800は、最内層810をイオン源チャンバ100に電気的に接続するために使用することができる。コネクタ800は、任意の導電性材料であってよく、任意の適切な方法でイオン源チャンバ100を取り付けることができる。ある特定の実施形態では、最内層810は、ばね力が最内層810を適所に保持し、コネクタ800に電気的に接続するように、コネクタ800の後ろに配置される。ある特定の実施形態では、最内層810とイオン源チャンバ100との間に温度勾配が存在しうるように、最内層810とコネクタ800とが互いに接触する領域は最小化される。他の実施形態では、最内層810は、面板に電気的に接続されうる。絶縁層の使用は、最内層810とイオン源チャンバ100との間の温度勾配を増加させるのにさらに役立ちうる。
【0044】
この箔ライナをアセンブリするために、箔ライナは「U」字形に曲げられ、イオン源チャンバ100に挿入される。箔シートが真っ直ぐになる自然な傾斜により、箔ライナを適所に固定する必要なしに、最内層810がコネクタ800に接触する。
【0045】
これらの実施形態のいずれかによる箔ライナは、幾つかの異なる方法でパッケージすることができる。一実施形態では、箔層のスタックがともにパッケージされる。この実施形態では、オペレータは、単に、スタックを「U」字形に曲げ、箔ライナをイオン源チャンバに取り付けるだけである。別の実施形態では、箔層は別々にパッケージされ、オペレータは所望の動作条件に従って箔層のスタックをアセンブリする。スタックは、ひとたびアセンブリされると、「U」字形に曲げられ、イオン源チャンバに取り付けられる。
【0046】
ある特定の実施形態では、箔層は、仮付け溶接されるか、又は限られた数の点でそれらを固定する他の手段を採用することができ、したがって、層間の移動を可能にする。
【0047】
本出願における上記の実施形態は、多くの利点を有しうる。第一に、箔ライナは、設置及び交換が簡単であり、予防保全手順が簡素化される。第二に、異なる材料及び/又は間隙又は突起などの異なる属性を有する、異なる箔層の選択により、箔ライナをアセンブリし、イオン源チャンバ内で任意の所望の動作条件を達成することが可能となる。加えて、これらのライナは交換可能な構成要素であるため、箔ライナを使用することでコストが削減されうる。さらには、ライナ用の特定の材料を選択することにより、特定の注入核種の出力を増加させることができるか、あるいは、ガスと固体との組合せに起因した化合物の形成を排除することができよう。
【0048】
本開示は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲を限定されるべきではない。実際、当業者には、本明細書に記載されたものに加えて、本開示の他のさまざまな実施形態及び修正は、前述の説明及び添付の図面から明らかであろう。したがって、このような他の実施形態及び修正は、本開示の範囲内に入ることが意図されている。さらには、本開示は、特定の目的のための特定の環境における特定の実施の文脈で本明細書に記載されているが、当業者は、その有用性がそれに限定されず、本開示が任意の数の目的のために任意の数の環境で有益に実施されうることを認識するであろう。したがって、以下に記載される特許請求の範囲は、本明細書に記載される本開示の全容及び趣旨を考慮して解釈されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8