(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】天然ガス液化装置
(51)【国際特許分類】
F25J 1/00 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
F25J1/00 B
(21)【出願番号】P 2021553934
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2019042391
(87)【国際公開番号】W WO2021084621
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】519355493
【氏名又は名称】日揮グローバル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 祥徳
(72)【発明者】
【氏名】澤柳 薫
(72)【発明者】
【氏名】井上 智晴
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 優一
(72)【発明者】
【氏名】清和 優仁
(72)【発明者】
【氏名】市村 賢
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-038193(JP,A)
【文献】特表2018-531355(JP,A)
【文献】特開2005-147568(JP,A)
【文献】国際公開第2016/001952(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガスを液化する天然ガス液化装置において、
予冷用冷媒を用い、前記天然ガス液化装置に供給された天然ガスを予冷する予冷用熱交換器を含む処理部である予冷部と、
液化用冷媒を用い、前記予冷された後の天然ガスを液化する液化用熱交換器を含む処理部である液化部と、
気化した前記予冷用冷媒を圧縮する第1の圧縮機と、気化した前記液化用冷媒を圧縮する第2の圧縮機と、を含む圧縮部と、
上面から見て長方形に構成された架構構造体であり、前記天然ガス液化装置内で取り扱われる流体が流れる複数の配管を保持すると共に、その上面に、前記第1の圧縮機にて圧縮された前記予冷用冷媒、及び前記第2の圧縮機にて圧縮された前記液化用冷媒を含む被冷却流体の冷却を行う複数の空冷式クーラーが整列配置されたパイプラックと、
前記予冷用冷媒を用い、前記空冷式クーラーにて冷却された後の前記液化用冷媒を冷却する冷媒冷却熱交換器を含む処理部である冷媒冷却部と、を備え、
下記(a)~(c)のいずれかの組み合わせにて前記処理部及び前記圧縮部が配置された領域である第1の配置領域と第2の配置領域との少なくとも一部が、前記パイプラックの前記長方形の長辺を挟んで互いに対向する位置に配置されていることと、
前記第1の配置領域と前記第2の配置領域とに挟まれた位置の前記パイプラックには、前記予冷用冷媒または前記液化用冷媒が流れる複数の配管を、前記パイプラックの前記長方形の短辺方向に沿って配置するために、前記空冷式クーラーが配置されていない領域が設けられていることと、
前記空冷式クーラーが配置されていない領域には、前記複数の配管を上面側から覆う天板が設けられていることと、を特徴とする天然ガス液化装置。
(a)第1の配置領域:前記予冷部、前記液化部、及び前記冷媒冷却部からなる処理部群から少なくとも1つ選択された処理部と、前記圧縮部
第2の配置領域:前記第1の
配置領域に配置されない処理部
(b)第1の配置領域:前記圧縮部
第2の配置領域:前記予冷部、前記液化部、及び前記冷媒冷却部
(c)第1の配置領域:前記圧縮部の第1の圧縮機及びその駆動機と前記予冷部
第2の配置領域:前記圧縮部の第2の圧縮機及びその駆動機と前記液化部
第1の配置領域又は第2の配置領域のいずれか:前記冷媒冷却部
【請求項2】
前記空冷式クーラーが配置されていない領域には、前記空冷式クーラーが配置されている領域における
前記空冷式クーラーの下方側の空間である冷却用空気の取り込み空間
の下端から前記空冷式クーラーの配置位置
の上端までに対応する高さ範囲内に、複数段に分けて前記複数の配管が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の天然ガス液化装置。
【請求項3】
前記第1の配置領域及び前記第2の配置領域が、前記(a)または前記(b)である場合において、前記第1の圧縮機を駆動する駆動機と、前記第2の圧縮機を駆動する駆動機と、が共通であることを特徴とする請求項1に記載の天然ガス液化装置。
【請求項4】
前記第1の配置領域及び前記第2の配置領域が、前記(a)である場合において、前記圧縮部を2組備え、これらの圧縮部は、前記第1の配置領域に配置された処理部を挟んで配置されていることを特徴とする請求項
3に記載の天然ガス液化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を用いて天然ガスを冷却して液化を行う天然ガス液化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス液化装置(NG液化装置)は、ガス井などで産出した天然ガス(NG:Natural Gas)を冷却、液化し液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)を製造する。
【0003】
NG液化装置は、例えば特許文献1に記載されているように天然ガスの予備冷却を行う予冷熱交換器や、天然ガスの液化を行う極低温熱交換器などの機器を備え、NGは、これらの機器間に接続された配管を介して流通して各処理が順番に行われる。また予冷熱交換器や極低温熱交換器は、夫々冷媒を用いた熱交換によりNGを冷却するように構成され、熱交換器と熱交換に用いた冷媒を圧縮する圧縮機との間に設けられた配管を介してこれらの冷媒を流通させるように構成されている。この他にも多数の機器が設けられるNG液化装置においては、配管を構成する部材など、資材の使用量をできるだけ低減することが可能な機器の配置を探求することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、資材使用量や工事量を抑えた天然ガス液化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の天然ガス液化装置は、天然ガスを液化する天然ガス液化装置において、
予冷用冷媒を用い、前記天然ガス液化装置に供給された天然ガスを予冷する予冷用熱交換器を含む処理部である予冷部と、
液化用冷媒を用い、前記予冷された後の天然ガスを液化する液化用熱交換器を含む処理部である液化部と、
気化した前記予冷用冷媒を圧縮する第1の圧縮機と、気化した前記液化用冷媒を圧縮する第2の圧縮機と、を含む圧縮部と、
上面から見て長方形に構成された架構構造体であり、前記天然ガス液化装置内で取り扱われる流体が流れる複数の配管を保持すると共に、その上面に、前記第1の圧縮機にて圧縮された前記予冷用冷媒、及び前記第2の圧縮機にて圧縮された前記液化用冷媒を含む被冷却流体の冷却を行う複数の空冷式クーラーが整列配置されたパイプラックと、
前記予冷用冷媒を用い、前記空冷式クーラーにて冷却された後の前記液化用冷媒を冷却する冷媒冷却熱交換器を含む処理部である冷媒冷却部と、を備え、
下記(a)~(c)のいずれかの組み合わせにて前記処理部及び前記圧縮部が配置された領域である第1の配置領域と第2の配置領域との少なくとも一部が、前記パイプラックの前記長方形の長辺を挟んで互いに対向する位置に配置されていることと、
前記第1の配置領域と前記第2の配置領域とに挟まれた位置の前記パイプラックには、前記予冷用冷媒または前記液化用冷媒が流れる複数の配管を、前記パイプラックの前記長方形の短辺方向に沿って配置するために、前記空冷式クーラーが配置されていない領域が設けられていることと、
前記空冷式クーラーが配置されていない領域には、前記複数の配管を上面側から覆う天板が設けられていることと、を特徴とする。
(a)第1の配置領域:前記予冷部、前記液化部、及び前記冷媒冷却部からなる処理部群から少なくとも1つ選択された処理部と、前記圧縮部
第2の配置領域:前記第1の配置領域に配置されない処理部
(b)第1の配置領域:前記圧縮部
第2の配置領域:前記予冷部、前記液化部、及び前記冷媒冷却部
(c)第1の配置領域:前記圧縮部の第1の圧縮機及びその駆動機と前記予冷部
第2の配置領域:前記圧縮部の第2の圧縮機及びその駆動機と前記液化部
第1の配置領域又は第2の配置領域のいずれか:前記冷媒冷却部
【0007】
前記天然ガス液化装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(1)前記空冷式クーラーが配置されていない領域には、前記空冷式クーラーが配置されている領域における前記空冷式クーラーの下方側の空間である冷却用空気の取り込み空間の下端から前記空冷式クーラーの配置位置の上端までに対応する高さ範囲内に、複数段に分けて前記複数の配管が配置されていること。
(2)前記第1の配置領域及び前記第2の配置領域が、前記(a)または前記(b)である場合において、前記第1の圧縮機を駆動する駆動機と、前記第2の圧縮機を駆動する駆動機と、が共通であること。さらに、前記第1の配置領域及び前記第2の配置領域が、前記(a)である場合において、前記圧縮部を2組備え、これらの圧縮部は、前記第1の配置領域に配置された処理部を挟んで配置されていること。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、大口径となる配管を介して接続される処理部や圧縮部が配置された第1の配置領域、第2の配置領域を、パイプラックを挟んで互いに対向する位置に配置しているので、大口径の配管の設置距離を低減できる。さらに、パイプラックに、空冷式クーラーが配置されていない領域を設け、当該領域を横切るように、上述の大口径配管などを配置するので、パイプラック全体の高背化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係るNG液化装置の全体を示す平面図である。
【
図2】第1、第2の配置領域を示す拡大平面図である。
【
図5】NG液化装置のさらに他の例に係る平面図である。
【
図7】比較形態に係るNG液化装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態に係る天然ガス(NG)液化装置の基本構成について
図1を用いて説明する。NG液化装置は、井戸元から産出されたNGに含まれる水銀、酸性ガス(硫化水素、メルカプタン、二酸化炭素など)、水分や重質分などの各種不純物の除去といった前処理を行うホットセクション1A、1Bを備えている。さらに前処理が行われたNGから重質分を分離する重質分除去部20と、重質部除去後のNGを-35℃程度に予冷する予冷部2と、予冷されたNGを-35℃から、-100℃~-120℃に冷却して液化する液化部3と、を備えている。さらに本実施の形態に係るNG液化装置は、液化したLNGを-150℃~-156℃に過冷却する過冷却部4と、過冷却後のLNGの一部を断熱膨張させて-159℃~-162℃程度まで温度を低下させ、常圧で液体のLNGを取得するエンドフラッシュ部40と、を備えている。
【0011】
NG液化装置を構成する各部(ホットセクション1A、1B、予冷部2、重質分除去部20、液化部3、過冷却部4、エンドフラッシュ部40)には、塔槽や熱交換器などの静機器、ポンプなどの動機器、各静機器と動機器との間を接続する接続配管などの多数の機器(機器群)が設けられている。これらの機器群は、各部ごとに骨組み構造の複数階建ての架構内にまとめて配置されている。
【0012】
予冷部2は、予冷用冷媒を用いてNGの予冷を行う熱交換器(
図2の拡大図に示す予冷用熱交換器21)を備える。またNG液化装置には、予冷部にて気化した予冷用冷媒を圧縮する第1の圧縮機91と、圧縮された予冷用冷媒を冷却する複数の空冷式クーラー(ACHE:Air-Cooled Heat Exchanger)100と、が設けられている。
【0013】
また液化部3は、液化用冷媒を用いてNGの液化を行う熱交換器(
図2の拡大図に示す極低温熱交換器(MCHE::Main Cryogenic Heat Exchanger)31)を備える。またNG液化装置は、気化した液化用冷媒を圧縮する第2の圧縮機92及び圧縮された液化用冷媒を冷却する複数のACHE100を有する。
【0014】
過冷却部4は、過冷却用冷媒を用いNGの過冷却を行う熱交換器(過冷却用熱交換器:不図示)を備えている。またNG液化装置は、過冷却用冷媒を圧縮する第3の圧縮機41及び圧縮された過冷却用冷媒を冷却する複数のACHE100を有する。
【0015】
本例において、第1の圧縮機91を駆動する駆動機と、第2の圧縮機92を駆動する駆動機は、共通の駆動機(ガスタービン)90によって駆動されるガスタービンコンプレッサー9として構成されている。そして、本NG液化装置には、このガスタービンコンプレッサー9が2台設けられている。なおガスタービンコンプレッサー9は1台でもよく、さらに第1の圧縮機91、及び第2の圧縮機92が夫々個別の駆動機により駆動される構成でもよい。また駆動機は、モーターによって構成することも可能である。ガスタービンコンプレッサー9及びその付帯機器は、本例の圧縮部5に相当する。
また本実施の形態に係るNG液化装置は、既述の予冷用冷媒を用いて、ACHE100にて冷却された液化用冷媒をさらに冷却する液化用冷媒/予冷用冷媒熱器(以下「冷媒冷却熱交換器81」ともいう)が設けられた冷媒冷却部8を備えている。
【0016】
このように本例のNG液化装置は、3種類の冷媒を用いてLNGの生産を行う構成となっている。これらの冷媒の例としては、予冷用冷媒としてプロパン、液化用冷媒として窒素、メタン、エタン、プロパンなどのMR(混合冷媒)、過冷却用冷媒として窒素を使用する場合を挙げることができる。
【0017】
またNG液化装置は、パイプラック10を備えている。
図1に示すようにパイプラック10は、上面から見て長方形の架構により構成され、
図3に示すように複数の階層、例えば3段の階層構造となっている。パイプラック10の各階層には、NGの処理を行う各部の間でNGの授受を行う配管201や、各熱交換器(予冷用熱交換器21、MCHE31など)、圧縮機91、92、41、及びACHE100の間で冷媒を流すための配管201a(以下、「交差配管201a」ともいう)が設けられている。これらの配管201、201aの配置状態については後述する。
図1などに示すように本例のNG液化装置には、例えば2つのパイプラック10が長辺の向きを揃えて、並べて配置されている。
【0018】
またパイプラック10の上面には、既述の圧縮された予冷用冷媒や液化用冷媒、過冷却用冷媒を含む、各種流体の冷却を行うための多数のACHE100が上面から見て長方形に整列配置されている。なお
図1、2、4~7において、パイプラック10の枠線内に併記した円はACHE100を模式的に示したものである。
【0019】
図3に模式的に示すようにACHE100は、回転式のファンを用いて、ACHE100の下方側(パイプラックの上面の下方)に設けられた空気の吸引口から空気を取り込み、上方に向けて設けられた排出口から排出するように構成される。被冷却流体が流れるチューブを束ねたチューブバンドル(不図示)に向けて冷却用空気を供給することにより、ACHE100に送気された被冷却流体を冷却することができる。
【0020】
なおNG液化装置には、発電用のタービンや発電機、前記タービンの動力源の他、重質分除去部20に設けられた蒸留塔の熱源となる蒸気を発生させるボイラー、または温水、ホットオイルなどの熱媒を加熱する加熱システムなどのユーティリティ機器群が設けられている。なお
図1、2、4~7ではこれらユーティリティ機器群の記載は省略している。
【0021】
本実施の形態に係るNG液化装置の各部の配置について説明する。
図1に示すようにNG液化装置のほぼ中央には、2つのパイプラック10が長辺の向きを揃えて並べて配置されている。そして、一方のパイプラック10の長辺に沿って、パイプラック10の一端側から他端側に向かい、一部のホットセクション1A、1台のガスタービンコンプレッサー9、冷媒冷却部8、もう1台のガスタービンコンプレッサー9及びエンドフラッシュ部40がこの順で設けられている。また、他方のパイプラック10の長辺に沿って、当該パイプラック10の一端側から他端側に向かい、残りの一部のホットセクション1B、重質分除去部20、予冷部2、液化部3、過冷却部4、及び第3の圧縮機41がこの順で設けられている。
【0022】
図1に示す実施の形態に係るNG液化装置において、各々ガスタービンコンプレッサー9を含む2つの圧縮部5と、冷媒冷却部8とが配置された領域は、本例の第1の配置領域7Aに相当する。また予冷部2、液化部3が配置された領域は、本例の第2の配置領域7Bに相当する。そして、これら第1の配置領域7A、7Bの少なくとも一部が、パイプラック10の長辺を挟んで互いに対向する位置に設けられている。
【0023】
以上に例示したように各部が配置されたNG液化装置について、
図1にはプロセス流体(NG、液化後のLNG)の概略の流れを実線の矢印で示してある。例えば井戸元から産出されたNGは、ホットセクション1A、1B→重質分除去部20→予冷部2→液化部3→過冷却部4→エンドフラッシュ部40の順にパイプラック10に横架された配管201を介して流れながら処理され、LNGとしてNG液化装置から流出する。なお、NGの処理の流れは上述の例に限定されるものではなく、例えば予冷部2にてNGの予冷を行ってから、重質分除去部20にて重質分の分離を行う場合もあり得る。
【0024】
また
図2には、当該NG液化装置における予冷用冷媒、液化用冷媒の流れる概略の経路の一部を矢印で示してある。実線の矢印が予冷用冷媒、鎖線の矢印が液化用冷媒の流れを示す。
予冷用冷媒は、予冷部2に設けられた予冷用熱交換器21、及び冷媒冷却部8に設けられた冷媒冷却熱交換器81に各々供給され、NGの予冷及び液化用冷媒の冷却に用いられる。予冷用冷媒は、予冷用熱交換器21及び冷媒冷却熱交換器81にて熱交換により気化した後、2台の第1の圧縮機91に並列に送気される。気化した予冷用冷媒は、第1の圧縮機91にて圧縮された後、パイプラック10に送気され、ACHE100にて冷却され、液化、過冷却される。その後、冷却された予冷用冷媒は、各々、予冷用熱交換器21及び冷媒冷却熱交換器81に再び供給される。
【0025】
また液化部3で用いられる液化用冷媒は、液化部3のMCHE31における熱交換にて気化した後、2台の第2の圧縮機92に並列に送気される。第2の圧縮機92にて昇圧された液化用冷媒は、パイプラック10に送気され、ACHE100にて冷却される。ACHE100にて冷却された液化用冷媒は、さらに、冷媒冷却部8にて液化されて、MCHE31に供給される。
【0026】
なお、
図2には記載していないが、過冷却部4にて用いられる過冷却用冷媒についても、過冷却部4の過冷却用熱交換器(不図示)における熱交換した後、第3の圧縮機41に送気される。そして第3の圧縮機41にて昇圧された過冷却用冷媒は、パイプラック10に送気され、ACHE100にて冷却された後、過冷却用熱交換器に再び供給される。
【0027】
上述の実施の形態に係るNG液化装置における、ガスタービンコンプレッサー9及び各処理部(予冷部2、液化部3、冷媒冷却部8)の配置の特徴について、
図7に示す比較形態に係るNG液化装置の配置例と比較しながら説明する。比較形態に係るNG液化装置は、一方側のパイプラック10aの長辺に沿って、処理部である予冷部2と液化部3と冷媒冷却部8とが並べられている。さらに処理部(予冷部2、液化部3、冷媒冷却部8)の並びに沿って、これらの処理部を挟むように、圧縮部5である2台のガスタービンコンプレッサー9が配置されている。また残るホットセクション1、重質分除去部20、及びエンドフラッシュ部40は、他方のパイプラック10aの長辺に沿ってこの順に配置されている。
【0028】
以上に述べたように、
図7に示す比較形態に係るNG液化装置は、予冷用冷媒、液化用冷媒の使用や処理(圧縮や冷却)を行う各処理部(予冷部2、液化部3、冷媒冷却部8)やガスタービンコンプレッサー9がパイプラック10aに沿って分散して配置されている。この場合には、これらの冷媒の授受を行う配管についてもパイプラック10aの長辺方向に沿って配置する必要がある。
【0029】
大型のNG液化装置においては、パイプラック10aの長辺は100メートル以上にもなる場合がある。一方で、予冷用冷媒や液化用冷媒が流れる配管には、直径が数十インチに達する大口径のものが含まれていることもある。このように、大口径の配管を長距離に亘って配置することは、配管材料の使用量の増大につながる。
【0030】
そこで本実施の形態のNG液化装置は、
図1、
図2に示すように、2台のガスタービンコンプレッサー9及び冷媒冷却部8が配置された領域である第1の配置領域7Aと、予冷部2及び液化部3が配置された領域である第2の配置領域7Bとが、パイプラック10の長辺を挟んで互いに対向する位置に配置されている。この配置により、
図2示すように、予冷用冷媒や液化用冷媒が流れる大口径の交差配管201aを、パイプラック10の短辺方向に沿って配置することが可能となり、
図7に記載の比較形態と比べて配管材料の使用量を大幅に削減することができる。
【0031】
一方で
図3に示すように、パイプラック10の各階には、NG液化装置に設けられた各機器間で授受される流体が流れる多数の配管201が、当該パイプラック10の長さ方向に沿って配置されている。このように、パイプラック10の長辺方向に沿って配管201が配置されるべき領域に、これらの配管201の延伸方向と交差するように大口径の交差配管201aを配置するためには、互いの配管201、201aの干渉を避けなければならない。
【0032】
このため、例えば配管201の上方位置に交差させる交差配管201aを配置せざるを得なくなってしまう。この結果、大口径の交差配管201aを配置する空間を確保するため、パイプラック10の各階の高さを十分に確保しなければならず、パイプラック10全体が高背化して、架構の構成材の使用量が増大してしまうおそれが生じる。
【0033】
そこで
図1~
図3に示すように、本実施の形態のNG液化装置は、第1の配置領域7Aと第2の配置領域7Bとに挟まれた位置のパイプラック10に、ACHE100が配置されていない領域(非配置領域101)を設けている。そして、この非配置領域101を利用し、パイプラック10の長辺に沿って配管201が配置されている階層とは異なる高さ領域に、予冷用冷媒や液化用冷媒が流れる複数の交差配管201aを配置している。
【0034】
図3に示した例においては、非配置領域101には、ACHE100が配置されている領域における冷却用空気の取り込み空間(ACHE100の下方側の空間)から、ACHE100の配置位置までに対応する高さ範囲内に、複数段(
図3の例では2段)に分けて交差配管201aが配置されている。
なお、非配置領域101には、予冷用冷媒や液化用冷媒以外の流体が流れる交差配管201aを配置してもよいことは勿論である。
【0035】
上述の構成によれば、パイプラック10全体を高背化しなくても、パイプラック10の短辺方向に沿って交差配管201aを配置する空間を確保できる。非配置領域101を設ける分だけ、パイプラック10は長辺方向に沿って長くなる場合があるが、パイプラック10全体を高背化する場合に比べれば架構の構成材の使用量の増大は小さく抑えられる。
【0036】
一方で、パイプラック10を挟んで第1の配置領域7A、第2の配置領域7Bを対向して配置することにより、配管材料の使用量は大幅に削減することができるので、NG液化装置全体としての資材の使用量を低減可能な構成となっている。この結果、NG液化装置を建設する際の工事量も抑制でき、建設コストのさらなる削減につながる。
【0037】
また、
図3に示す例において非配置領域101には、交差配管201aを上面側から覆う天板102が設けられている。この天板102を配置することにより、ACHE100から排出された温度の高い空気が、非配置領域101を介してACHE100の下面側から取り込まれ、当該ACHE100の冷却能力を低下させるHAR(Hot Air Recirculation)の発生を抑制することができる。
さらに非配置領域101には、HARの発生を抑えるため、ACHE100やその下方の冷却用空気の取り込み空間との間を側方から仕切る側板を設けてもよい。
【0038】
以上に説明した特徴を備える本実施の形態に係るNG液化装置によれば、大口径の交差配管201aを介して接続される処理部(予冷部2、液化部3、冷媒冷却部8)やガスタービンコンプレッサー9が配置された第1の配置領域7A、第2の配置領域7Bを、パイプラック10を挟んで互いに対向する位置に配置しているので、大口径の交差配管201aの設置距離を低減できる。
さらにパイプラック10に対し、ACHE100が配置されていない領域(非配置領域101)を設け、当該非配置領域101を横切るように、上述の大口径の交差配管201aを配置するので、パイプラック10全体の高背化を抑制できる。
【0039】
ここで、第1の配置領域7Aに配置する処理部は、
図2に示す冷媒冷却部8の例に限定されない。
例えば予冷部2または液化部3を第1の配置領域7A側に配置してもよい。この場合において第2の配置領域7Bには、液化部3と冷媒冷却部8、または予冷部2と冷媒冷却部8が配置される。
【0040】
この他、
図4に示すように、ガスタービンコンプレッサー9と共に配置される第1の配置領域7A側に、予冷部2、液化部3、及び冷媒冷却部8を含む処理部群から選択した2つの処理部(
図4に示す例では冷媒冷却部8、予冷部2)を配置してもよい。この場合には、第2の配置領域7B側に残る1つの処理部(同図の例では液化部3)が配置される。
【0041】
さらに他の例として、
図5に示すように第1の配置領域7Aには圧縮部5であるガスタービンコンプレッサー9のみを設けてもよい。この場合には、第2の配置領域7Bには予冷部2、冷媒冷却部8、液化部3(第1の配置領域7Aに配置されないすべての処理部)が配置される。
また
図6は、上述の各例とは別の例として、第1の圧縮機91、第2の圧縮機92を駆動する駆動機90を個別に設けた例を示している。この場合には、第1の圧縮機91を備えた圧縮部5と、第2の圧縮機92を備えた圧縮部5とを別々に設けることが可能となる、この結果、
図6に示すように、第1の配置領域7Aには第1の圧縮機91を備えた圧縮部5と予冷部2とを配置し、第2の配置領域7Bには第2の圧縮機92を備えた圧縮部5と液化部3とを配置する構成を採用することも可能となる。この場合、冷媒冷却部8は、第1の配置領域7A、第2の配置領域7Bのいずれに設けてもよい(
図6の例は、第1の配置領域7A側に冷媒冷却部8を設けてある)。
なお、
図2に示した例と同様、
図4~
図6においても非配置領域101には、パイプラック10の短辺方向に沿って、予冷用冷媒や液化用冷媒を流すための交差配管201aが設けられているが、図示の便宜上、記載を省略してある。
【0042】
第1の配置領域7Aとの第2の配置領域7Bとは、パイプラック10を挟んでこれらの領域7A、7Bの少なくとも一部が対向していればよく、これら第1の配置領域7A、第2の配置領域7Bに挟まれた位置を含むパイプラック10内の領域に、非配置領域101が設けられる。
【0043】
また、上述の各実施形態にかかるNG液化装置は、NGの処理量やLNGのランダウン温度などに応じて、過冷却部4、圧縮機41やエンドフラッシュ部40の設置を適宜、省略してもよい。
【0044】
またNG液化装置で用いられる冷媒の組み合わせ例も既述の例に限定されない。予冷用冷媒についてもメタン、エタン、プロパン、ブタンなどの混合冷媒を用いてもよい。既述のように過冷却部4を設けない場合には、過冷却用冷媒は使用されない。
【符号の説明】
【0045】
2 予冷部
3 液化部
5 圧縮部
7A 第1の配置領域
7B 第2の配置領域
8 冷媒冷却部
9 ガスタービンコンプレッサー
10 パイプラック
100 ACHE
101 非配置領域
201a 交差配管