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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】騒音制御
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20230714BHJP
   G10K 11/178 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
H04R1/10 101B
G10K11/178 120
H04R1/10 101Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021556868
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 GB2020050441
(87)【国際公開番号】W WO2020193937
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】1903969.2
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】ピーター レイド
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ダーリン
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-528624(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1796969(KR,B1)
【文献】特開2013-037381(JP,A)
【文献】中国実用新案第206713019(CN,U)
【文献】特開2016-061534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
G10K 11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタアセンブリ及び該フィルタアセンブリを通して気流を発生させるモータ駆動式インペラを収容するハウジングであり、該ハウジングからろ過気流を放出する空気出口を前記フィルタアセンブリの下流に含むハウジングと、
該ハウジングに取り付けられた音響ドライバと、
前記ハウジング内に配設された参照内部騒音センサと、
前記ハウジングに取り付けられた参照周囲騒音センサと、
第1の動作状態で前記参照内部騒音センサにより供給された信号を用いて前記音響ドライバを作動させ、第2の動作状態で前記参照周囲騒音センサにより供給された信号を用いて前記音響ドライバを作動させるよう構成された能動騒音制御回路と
を備えたイヤーカップ。
【請求項2】
請求項1に記載のイヤーカップにおいて、前記能動騒音制御回路は、第1の制御信号の受信に応答して前記第1の動作状態を選択し、第2の制御信号の受信に応答して前記第2の動作状態を選択するよう構成されるイヤーカップ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のイヤーカップにおいて、前記モータ駆動式インペラの回転速度を制御するよう配置されたモータ制御回路をさらに備えたイヤーカップ。
【請求項4】
請求項2に従属する場合の請求項3に記載のイヤーカップにおいて、前記モータ制御回路は、前記モータ駆動式インペラの前記回転速度が閾値を上回ると前記能動騒音制御回路に前記第1の制御信号を送るよう構成されるイヤーカップ。
【請求項5】
請求項2に従属する場合の請求項3に記載のイヤーカップにおいて、前記モータ制御回路は、前記モータ駆動式インペラの前記回転速度が閾値を下回ると前記能動騒音制御回路に前記第2の制御信号を送るよう構成されるイヤーカップ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のイヤーカップにおいて、前記参照内部騒音センサは、前記モータ駆動式インペラと前記音響ドライバとの間に配設されるイヤーカップ。
【請求項7】
請求項6に記載のイヤーカップにおいて、前記インペラ及び前記モータは、インペラケーシング内に配設され、該インペラケーシングは、前記ハウジング内に配設されるイヤーカップ。
【請求項8】
請求項7に記載のイヤーカップにおいて、前記参照内部騒音センサは、前記インペラケーシングと前記音響ドライバとの間に配設されるイヤーカップ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のイヤーカップにおいて、前記参照周囲騒音センサは、前記ハウジング外の環境に音響的に結合されるイヤーカップ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のイヤーカップにおいて、前記ハウジングに取り付けられて該ハウジングと共に開口を有するキャビティを画定するよう配置されたイヤーパッドをさらに備えたイヤーカップ。
【請求項11】
請求項10に記載のイヤーカップにおいて、前記音響ドライバは、前記キャビティに音響的に結合されるイヤーカップ。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のイヤーカップにおいて、前記キャビティに音響的に結合された誤差騒音センサをさらに備え、前記能動騒音制御回路は、前記誤差騒音センサにより供給された信号を用いて前記音響ドライバを作動させるようさらに構成されるイヤーカップ。
【請求項13】
請求項12に記載のイヤーカップにおいて、前記誤差騒音センサは、前記キャビティに対して少なくとも部分的に露出されるイヤーカップ。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のイヤーカップにおいて、前記参照内部騒音センサは、前記誤差騒音センサと同軸上にあるイヤーカップ。
【請求項15】
ヘッドギアと、
請求項1~14のいずれか1項に記載のイヤーカップと
を備えた頭部装着型装置であって、
前記イヤーカップは、前記ヘッドギアに取り付けられ且つユーザの耳に装着されるよう配置される頭部装着型装置。
【請求項16】
請求項15に記載の頭部装着型装置において、前記ユーザの別の耳に装着されるよう配置された別のイヤーカップをさらに備えた頭部装着型装置。
【請求項17】
請求項16に記載の頭部装着型装置において、前記別のイヤーカップは請求項1~14のいずれか1項に記載のものである頭部装着型装置。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか1項に記載の頭部装着型装置において、前記ヘッドギアは、ユーザの頭部に装着されるよう配置されたヘッドバンドを含み、前記イヤーカップは、前記ヘッドバンドの第1の端に取り付けられ、前記別のイヤーカップは、前記ヘッドバンドの反対側の第2の端に取り付けられる頭部装着型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤーカップ又はスピーカアセンブリの騒音制御に関し、特に頭部装着型装置のイヤーカップ内の能動騒音制御の実施に関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染の問題は深刻化しつつあり、人間の健康に有害な影響を及ぼすことが知られている又は疑われているさまざまな大気汚染物質がある。大気汚染が引き起こし得る悪影響は、汚染物質のタイプ及び濃度と、汚染大気への曝露の長さとに応じて変わる。例えば、高い大気汚染度は、心臓血管及び呼吸器の疾病の悪化等の緊急の健康問題を引き起こし得る一方で、汚染大気への長期的な曝露には、肺容量の減少及び肺機能の低下、並びに喘息、気管支炎、気腫、及び場合によっては癌等の疾患の発症等の永続的な健康影響があり得る。
【0003】
大気汚染度が特に高い場所では、多くの人々がこれらの汚染物質への曝露を最小限にするのが有益であることを認識しており、したがって大気中に存在する汚染物質の少なくとも一部を口及び鼻に達する前に除去するためにフェースマスクを装着するようになっている。これらのフェースマスクは、比較的大きな塵埃粒子を除去するにすぎない基本的な防塵マスクから、空気がフィルタエレメント又はカートリッジを通過する必要がある、より複雑なろ過式呼吸用保護具までさまざまである。しかしながら、これらのフェースマスクは、通常は少なくともユーザの口及び鼻を覆うので、正常な呼吸がし辛くなり且つユーザが他人に話し掛け難くもなり得ることから、潜在的な利益があるにもかかわらず、このようなフェースマスクを日常的に利用することには何らかの抵抗がある。
【0004】
結果として、ユーザが装着できるがユーザの口及び鼻を覆う必要がない空気清浄器を開発する様々な試みがなされてきた。例えば、ユーザの首に掛けられて、ユーザの口及び鼻に向けて上向きの空気ジェットを発生させる装着型空気清浄器のさまざまな設計がある。これらは、より社会的に受け入れられるものであり得るが、概して、一部の最高性能の顔面装着型フィルタよりも大気汚染物質へのユーザの曝露を制限する効果が劣る。これは主に、ユーザの口及び鼻に空気ジェットを送出する精度に欠けること、及びユーザの口及び鼻に依然として達することができる未浄化気流があることに起因する。
【0005】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4は全て、フェースマスク及び首掛け型清浄器の両方の代替となる頭部装着型清浄器を記載している。特許文献1は、イヤホンの一方から延びるアームに設けられた空気出口に別個の空気ろ過ユニットがパイプにより接続されるシステムを記載している。続いて、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4のそれぞれは、ファン及びフィルタの両方がイヤーカップの少なくとも一方に組み込まれたヘッドセットを記載している。これらのうち、特許文献3のみが、空気供給ユニットが発生する騒音を低減するために能動騒音制御(ANC)の実施を考慮している。具体的には、特許文献3によれば、空気供給ユニットの騒音を打ち消すための周波数を発生する周波数発生器がイヤーカップに設けられ、これは、従来の騒音低減技術を用いて達成することができる。しかしながら、この主張とは逆に、イヤーカップ内に位置付けられたファンが発生する騒音を減衰させるための能動騒音制御の実施は容易ではない。
【0006】
能動騒音制御は、弱め合う干渉を用いて騒音を減衰させる。望ましくない音の周波数、振幅、及び位相が識別され、同じ周波数及び振幅だが逆の位相の別の音、すなわち「アンチノイズ」音が生成されて、この「アンチノイズ」音が騒音を打ち消すようにする。ヘッドセット内では、アンチノイズ信号が所望の音声信号と合成された後にオーディオトランスデューサにより出力される。
【0007】
能動騒音制御は、フィードフォワード、フィードバック、又はハイブリッドシステムのいずれかを用いて実施することができる。フィードフォワードシステムでは、環境からの騒音を測定して測定された周囲騒音に基づく参照騒音信号を入力としてフィードフォワードANCフィルタに供給するために、参照騒音マイクロホン(通常はフィードフォワードマイクロホンと称する)がヘッドセットの外部の近くの参照位置に位置付けられる。フィードフォワードANCフィルタは、続いて参照騒音マイクロホンからの参照騒音信号を用いて、測定された周囲騒音を減衰させるためのアンチノイズ信号を生成する。フィードバックシステムでは、誤差騒音マイクロホン(通常は誤差騒音センサと称する)をユーザの耳の近くに、通常は音響トランスデューサに隣接して位置付け、ユーザに聞こえる音を測定して測定された音に基づく誤差騒音信号を入力としてフィードバックANCフィルタに供給する。フィードバックANCフィルタは、続いて誤差騒音センサからの入力を所望の音源と比較して不所望の騒音を識別し、識別された騒音を減衰させるためにアンチノイズ信号を生成する。ハイブリッドシステムは、フィードフォワードシステム及びフィードバックシステムの両方を組み合わせて全体的な騒音除去性能を向上させる。基本的なハイブリッドシステムでは、フィードフォワードシステム及びフィードバックシステムが独立して、各自の対応するマイクロホンからの入力に基づき別個のアンチノイズ信号を生成する。これらの別個のアンチノイズ信号は、続いて所望の音声信号と合成された後にオーディオトランスデューサにより出力される。高度ハイブリッドシステムでは、フィードフォワードANCフィルタの性能を向上させるためにフィードバックシステムにより識別された騒音を用いる(すなわち、フィードフォワードANCフィルタの係数を求めるための入力として用いる)ので、フィードフォワードシステム及びフィードバックシステムは相互に完全に独立して機能しない。
【0008】
従来のヘッドセットでは、能動騒音制御は外部で発生した騒音を打ち消す必要しかない。しかしながら、ファンがイヤーカップ内に位置付けられた頭部装着型清浄器では、騒音はファンを駆動するモータとヘッドセットに入る空気の急流とにより内部でも生じる。従来の構成のANCシステムは、外部環境(すなわち外来)騒音及び内部発生(すなわち内的)騒音の両方を減衰することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2017120992号
【文献】中国特許出願公開第103949017号明細書
【文献】韓国特許第101796969号広報
【文献】中国実用新案第203852759号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、イヤーカップと、イヤーカップを備えた、外部環境(すなわち外来)騒音及び内部発生(すなわち内的)騒音の両方を減衰する改良型の能動騒音制御を提供する頭部装着型装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、フィルタアセンブリ及びフィルタアセンブリを通して気流を発生させるモータ駆動式インペラを収容するハウジングを備えたイヤーカップであって、ハウジングはハウジングからろ過気流を放出する空気出口をフィルタアセンブリの下流に含むイヤーカップが提供される。イヤーカップは、直接又は間接的にハウジングにより担持された又はハウジングに取り付けられた音響ドライバと、ハウジング内に配設された参照内部騒音センサと、直接又は間接的にハウジングにより担持された又はハウジングに取り付けられた参照周囲騒音センサとをさらに備える。イヤーカップは、第1の動作状態で参照内部騒音センサにより供給された信号を用いて音響ドライバを作動させ、第2の動作状態で参照周囲騒音センサにより供給された信号を用いて音響ドライバを作動させるよう構成された能動騒音制御回路をさらに備える。能動騒音制御回路は、第1の動作状態では参照周囲騒音センサにより供給された信号を用いて音響ドライバを作動させず、第2の動作状態では参照内部騒音センサにより供給された信号を用いて音響ドライバを作動させないよう構成される。
【0012】
参照内部騒音は、ハウジング外の環境に音響的に結合され得る。参照内部騒音センサ及び参照周囲騒音センサの両方が、騒音を検出/測定して検出/測定された騒音を示す信号を出力するよう配置される。参照内部騒音センサは、参照内部騒音マイクロホンを含み得る。参照周囲騒音センサは、参照周囲騒音マイクロホンを含み得る。
【0013】
イヤーカップは、サーカムオーラル型イヤーカップ及びスープラオーラル型イヤーカップのいずれかとして構成することができ、サーカムオーラル型イヤーカップとして構成されることが好ましい。
【0014】
能動騒音制御回路は、第1の制御信号の受信に応答して第1の動作状態を選択し、第2の制御信号の受信に応答して第2の動作状態を選択するよう構成され得る。
【0015】
イヤーカップは、モータ駆動式インペラの回転速度を制御するよう配置されたモータ制御回路をさらに備え得る。モータ制御回路は、モータ駆動式インペラの回転速度が閾値を上回ると能動騒音制御回路に第1の制御信号を送るよう構成され得る。モータ制御回路は、モータ駆動式インペラの回転速度が閾値を下回ると能動騒音制御回路に第2の制御信号を送るよう構成される。
【0016】
参照内部騒音センサは、モータ駆動式インペラと音響ドライバとの間に配設され得る。イヤーカップは、インペラを駆動するよう配置されたモータをさらに備え得る。インペラ及びモータは、インペラケーシング内に配設されることができ、インペラケーシングは、ハウジング内に配設されることができる。インペラケーシングは、複数の弾性支持体によりハウジング内に吊設/支持され得る。参照内部騒音センサは、インペラケーシングと音響ドライバとの間に配設され得る。
【0017】
イヤーカップは、ハウジングに取り付けられてハウジングと共に開口を有するキャビティを画定するよう配置されたイヤーパッドをさらに備え得る。音響ドライバは、キャビティに音響的に結合され得る。音響ドライバは、キャビティに対して少なくとも部分的に露出され得る。音響ドライバは、キャビティ内に又はキャビティに隣接して配設され得る。イヤーカップは、キャビティに音響的に結合された誤差騒音センサをさらに備えることができ、能動騒音制御回路は、その場合、誤差騒音センサにより供給された信号を用いて音響ドライバを作動させるようさらに構成され得る。能動騒音制御回路は、その場合、誤差騒音センサにより供給された信号と参照内部騒音センサ及び参照周囲騒音センサにより供給された信号の一方又は他方とを同時に用いて音響ドライバを作動させるようさらに構成され得る。
【0018】
誤差騒音センサは、キャビティに対して少なくとも部分的に露出され得るものであり、キャビティ内に又はキャビティに隣接して配設されることが好ましい。誤差騒音センサは、誤差騒音マイクロホンを含み得る。
【0019】
第2の態様によれば、ヘッドギアと第1の態様によるイヤーカップとを備えた頭部装着型装置であって、イヤーカップはヘッドギアに取り付けられ且つユーザの耳に装着されるよう配置される頭部装着型装置が提供される。頭部装着型装置は、ユーザの別の耳に装着されるよう配置された別のイヤーカップをさらに備え得る。別のイヤーカップは、第1の態様によるイヤーカップであり得る。
【0020】
ヘッドギアは、ユーザの頭部に装着されるよう配置されたヘッドバンドを含むことができ、イヤーカップは、ヘッドバンドの第1の端に取り付けることができ、別のイヤーカップは、ヘッドバンドの反対側の第2の端に取り付けることができる。
【0021】
第3の態様によれば、ユーザの第1の耳に装着されるよう配置された第1のスピーカアセンブリとユーザの第2の耳に装着されるよう配置された第2のスピーカアセンブリとを備えた頭部装着型空気清浄器であって、第1のスピーカアセンブリは第1の態様によるイヤーカップを含む頭部装着型空気清浄器が提供される。第2のスピーカアセンブリは、第1の態様によるイヤーカップを含み得る。
【0022】
頭部装着型空気清浄器は、ヘッドギアをさらに備えることができ、第1のスピーカアセンブリ及び第2のスピーカアセンブリの両方が、ヘッドギアに取り付けられる。ヘッドギアは、ユーザの頭部に装着されるよう配置されたヘッドバンドを含み得る。
【0023】
フィードバックANCシステムが外部発生騒音と略同レベルの減衰をイヤーカップ内のモータから生じる内部発生騒音に与えることができる一方で、従来のフィードフォワードANCシステムはこのような内部発生騒音の減衰をそれ以上達成しないことを、本発明者らは見出した。従来のフィードフォワードANCシステムでは、外向きの参照周囲騒音センサ(通常はフィードフォワードマイクロホン)がヘッドセットの外部の近くに位置付けられて環境からの騒音を直接測定し、この測定値を入力としてフィードフォワードANCフィルタに供給する。この付加的な内的騒音の減衰を改善するために、ハウジング内で生じる音を検出するよう配置され且つ内的騒音を最適に検出するようにモータとスピーカドライバとの間に好ましくは配設される参照内部騒音センサからの入力に基づき騒音を減衰するよう構成された、内側フィードフォワードANCシステムを用いることを、本発明者らは提案する。
【0024】
この内側フィードフォワードANCシステムは、従来のフィードバックANCシステムと組み合わせることによりハイブリッドANCシステムの一部として用いることができる。また、このフィードフォワードANCシステムを従来の(又は「外側」)フィードフォワードANCシステムと組み合わせて、フィードフォワードANCによる内的騒音及び外来騒音の両方の減衰を最適化することができる。最適な性能のために、内側フィードフォワードANCシステムは、両方のシステムが同時に動作するように従来の外側フィードフォワードANCシステムと組み合わせられる。しかしながら、この最適な手法は、特にフィードバックANCシステムとも組み合わせられる場合に従来のANC回路の大幅な改変を必要とする。性能と複雑さとの間の妥協点として、モータが減衰を必要とするに足るレベルの騒音を発生しているときに内側フィードフォワードANCシステムのみが機能し、モータ騒音がこの閾値レベルを下回るときには従来の外側フィードフォワードANCシステムが機能するように、内側フィードフォワードANCシステムを従来の外側フィードフォワードANCシステムと組み合わせることができる。内側フィードフォワードANCシステムと従来の外側フィードフォワードANCシステムとのをこのように切り替えることで、内的騒音が全騒音の最重要部分である可能性が高い場合にその減衰が改善される一方で、そうでない場合は外来騒音の減衰が最適化される。
【0025】
次に、本発明の一実施形態を、添付図面を参照して単なる例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a】本明細書に記載の頭部装着型装置の一実施形態の正面斜視図である。
図1b図1aの頭部装着型装置の正面図である。
図2a図1aの頭部装着型装置のイヤーカップの側面図である。
図2b図2aのイヤーカップの斜視図である。
図3a図2aのイヤーカップの断面図である。
図3b図2aのイヤーカップのさらに別の断面図である。
図4a】本明細書に記載の構成での使用に適したANC回路の一例の概略図である。
図4b】本明細書に記載の構成での使用に適したANC回路の代替例の概略図である。
図5】イヤーカップの第2の例の断面図である。
図6】イヤーカップの第3の例の断面図である。
図7】イヤーカップの第4の例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、イヤーカップと、イヤーカップを備えた、外部環境(すなわち外来)騒音及び内部発生(すなわち内的)騒音の両方を減衰する改良型の能動騒音制御を提供する頭部装着型空気清浄器とを説明する。本明細書で用いる用語「空気清浄器」は、大気からの汚染物質の除去及び浄化又はろ過空気の供給の放出が可能な装置又はシステムを指す。用語「頭部装着型」は、本明細書において、ある物品がユーザの頭部に装着可能であるか又はユーザの頭部への装着に適していると定義するために用いられる。好ましい構成において、頭部装着型空気清浄器は、ヘッドバンドに取り付けられた一対のスピーカアセンブリを備えたヘッドホンシステムを含み、スピーカアセンブリの一方又は両方が本明細書に記載のイヤーカップを含む。
【0028】
本明細書で用いる用語「ヘッドホン」は、ユーザの頭部に装着されるよう設計されたヘッドバンドにより繋がれた一対の小型ラウドスピーカ、つまりスピーカを指す。通常、スピーカは、電気信号を対応する音に変換する電気音響トランスデューサにより提供される。フルサイズ又はオーバーイヤーヘッドホンと称する場合が多いサーカムオーラル型ヘッドホンは、耳全体を包み込むように形状が閉ループ(例えば円形、楕円形等)の形状であるイヤーパッドを有する。これらのヘッドホンは、耳を完全に包囲するので、サーカムオーラル型ヘッドホンは、外部騒音を減衰させるために頭部に対して完全にシールするよう設計することができる。オンイヤーヘッドホンと称する場合が多いスープラオーラル型ヘッドホンは、耳の周囲を押さえるのではなく耳に押し当たるイヤーパッドを有する。このタイプのヘッドホンは、概してサーカムオーラル型ヘッドホンよりも小型且つ軽量である結果として外部騒音の減衰が少なくなる傾向がある。
【0029】
イヤーカップは、音響ドライバと、フィルタアセンブリと、フィルタアセンブリを通る気流を発生させるモータ駆動式インペラと、フィルタアセンブリの下流にあるろ過気流をイヤーカップから放出する空気出口とを備える。イヤーカップは、イヤーカップ内に配設された参照内部騒音センサと、参照内部騒音センサにより供給された信号を用いて音響ドライバを作動させるよう構成された能動騒音制御(ANC)回路とをさらに備える。具体的には、参照内部騒音センサは、ハウジング内で生じる音を検出/測定して検出/測定された騒音を示す信号を出力するよう配置される。ANC回路は、その場合、参照内部騒音センサにより供給された信号を用いてこの騒音を減衰させるように音響ドライバを作動させるよう構成される。従来のフィードフォワードANCシステムとは対照的に、参照内部騒音センサは、モータ駆動式インペラが発生する内的騒音を最適に検出するようにモータ駆動式インペラと音響ドライバとの間に配設されることが好ましい。参照内部騒音センサは、音を検出するよう構成されたマイクロホン又は機械振動を検出するよう構成された振動センサ(例えば加速度計)であり得る。
【0030】
図1a及び1bは、頭部装着型空気清浄器1000の一実施形態の外観図である。頭部装着型空気清浄器1000は、弧状のヘッドバンド1200により接続された一対の略円筒形のイヤーカップ又はスピーカアセンブリ1100a、1100bと、両方のイヤーカップ1100a、1100b間に延びてこれらに両端が接続されたノズル1300とを備える。次に、図2aは、図1a及び1bの空気清浄器1000のイヤーカップ1100の側面図を示し、図2bは、図1a及び1bの空気清浄器1000のイヤーカップ1100の斜視図を示す。次に、図3a及び3bは、図2aのイヤーカップ1100の代替的な断面図を示す。
【0031】
イヤーカップ1100a、1100bのそれぞれが、ハウジング1101及びハウジング1101に取り付けられたイヤーパッド1102を備え、ハウジング1101及びイヤーパッド1102は、開口1104を有するキャビティ1103を共に画定する。その場合、スピーカ又は音響ドライバユニット1105が、キャビティ1103に対して少なくとも部分的に露出されるようにハウジング1101に取り付けられる。
【0032】
イヤーカップ1100のそれぞれは、ハウジング1101内に配設された、ハウジング1101を通る気流を発生させるよう配置されたモータ駆動式インペラ1109をさらに備える。したがって、ハウジング1101には、モータ駆動式インペラ1109によりハウジング1101に気流を引き込むことができる空気入口1110と、ハウジング1101から気流を放出する空気出口1111とが設けられる。フィルタアセンブリ1112もハウジング1101内に配設されることで、モータ駆動式インペラ1109が発生する気流がフィルタアセンブリ1112を通過するように、且つイヤーカップ1100から放出された気流がフィルタアセンブリ1112によりろ過/浄化されるようになっている。したがって、フィルタアセンブリ1112は、ハウジング1101の空気入口1110の(すなわち、インペラ1109が発生する気流に対して)下流且つ空気出口1111の上流に位置付けられる。図示の実施形態において、フィルタアセンブリ1112は、モータ駆動式インペラ1109に対して上流にも位置付けられる。
【0033】
図示の実施形態において、ハウジング1101は、音響ドライバユニット1105が取り付けられたスピーカシャーシ1114と、音響ドライバユニット1105の上からスピーカシャーシ1114に取り付けられた略円錐台形状のスピーカカバー1115とを含む。スピーカシャーシ1114は、円筒形の側壁1114bにより囲まれた略円形のベース1114aを含む。ハウジングの空気出口1111は、その場合、円筒形の側壁1114bに形成された開口部により画定される。イヤーカップ1100には、ハウジング1101から延び且つイヤーカップ1100の空気出口1111をノズル1300の空気入口に接続するよう配置された中空で剛性の出口ダクト1130も設けられる。
【0034】
スピーカシャーシの中央部は、音響ドライバユニット1105を位置付けることができるドライバ支持板1114cを提供する。略円錐台形状のスピーカカバー1115は、その場合、音響ドライバユニット1105がスピーカカバー1115により覆われるようにドライバ支持板1114cの全体にわたってスピーカシャーシ1114に取り付けられる。スピーカシャーシ1114のドライバ支持板1114cには、音響ドライバユニット1105が発生する音がスピーカシャーシ1114を通過してイヤーパッド1102で囲まれたキャビティ1103に入ることを可能にする開口部の配列が設けられる。さらに、ドライバ支持板1114cは、スピーカシャーシ1114のベース1114aの周辺部に対して角度又は傾斜が付いている。ドライバ支持板1114cの角度又は傾斜は、イヤーカップ1100をユーザの耳に被せて頭部装着型空気清浄器1000がユーザの頭部に装着されると、音響ドライバユニット1105が耳と実質的に平行になるように選択される。例えば、図示の実施形態において、ベース1114aの周辺部に対するドライバ支持板1114cの角度は、10°~15°である。
【0035】
イヤーカップ1100のそれぞれは、種々の電子回路が配設又は搭載された1つ又は複数の回路基板1107も備える。例えば、この電子回路は、インペラ1109を駆動するモータ1113の回転速度を制御するよう配置されたモータ制御回路、音声再生を制御するよう配置された音声制御回路、及び能動騒音制御を実施して不所望の騒音を減衰させるよう配置されたANC回路を含み得る。図示の実施形態において、1つ又は複数の回路基板1107は、スピーカシャーシ1114の周辺部に配設又は搭載される。したがって、回路基板1107は、音響ドライバユニット1105がドライバ支持板1114cに取り付けられると音響ドライバユニット1105を少なくとも部分的に囲む(すなわち、音響ドライバユニット1105の周辺の外側/周囲に配設される)。
【0036】
インペラ1109及びモータ1113を収容する略円錐台形状のインペラケーシング1116が、インペラケーシング1116の裏/後ろにより画定された凹部又はキャビティ内に音響ドライバユニット1105が収納されるようにスピーカカバー1115の上に配設される。このインペラケーシング1116は、インペラ1109及びモータ1113を包囲する略円錐台形状のインペラハウジング1117と、インペラハウジング1117のベースに流体接続されてインペラハウジング1117から排出された空気を受け取る環状ボリュート1118とを含む。インペラハウジング1117には、インペラ1109により空気を引き込むことができる空気入口1119と、インペラハウジング1117から環状ボリュート1118へ空気を放出する空気出口1120とが設けられる。インペラハウジング1117の空気入口1119は、インペラハウジング1117の小径端の開口部/開口により設けられ、空気出口1120は、インペラハウジング1117の大径端又はベースの周りに形成された環状スロットにより設けられる。
【0037】
環状ボリュート1118は、インペラハウジング1117から排出された空気を受け取ってボリュート1118の空気出口1121へ空気を導くよう配置されたスパイラル(すなわち徐々に広がる)ダクトを含む。ボリュート1118の空気出口1121は、その場合、スピーカアセンブリ1100の空気出口1111に流体接続される。本明細書で用いる用語「ボリュート」は、インペラが圧送する流体を受け取り、吐出口に近づくにつれて面積を増すスパイラルファンネルを指す。したがって、ボリュート1118の空気出口1121は、インペラハウジング1117の空気出口1120を形成する周方向環状スロットから排出される空気を回収するための効率的で静かな手段となる。
【0038】
図示の実施形態において、インペラ1109は、略円錐形又は円錐台形を有する斜流インペラである。インペラ1109は、インペラ1109の後側/裏側が略円錐台形状の凹部を画定するような中空である。モータ1113は、その場合はこの凹部内に収納/配設される。好ましくは、インペラ1109は、セミオープン/セミクローズド斜流インペラであり、すなわち主板1122のみを有する。インペラ1109の主板1122は、その場合、モータ1113を内部に収納/配設する凹部を画定する。
【0039】
インペラケーシング1116は、インペラケーシング1116からスピーカハウジング1101への振動の伝達を低減する複数の弾性支持体1123によりハウジング1101内に支持/吊設される。そのために、複数の弾性支持体1123は、それぞれがエラストマー又はゴム材料等の弾性材料を含む。図示の実施形態において、スピーカハウジング1101とインペラケーシング1116との間の唯一の直接接続は、弾性支持体1123により与えられる。
【0040】
フィルタアセンブリ1112は、インペラ1109の上流に設けられてインペラケーシング1116に被さるよう配置されるように、スピーカシャーシ1114に取り付けられる。フィルタアセンブリ1112は、1つ又は複数のフィルタエレメント1125、1126を支持するフィルタシート1124を含む。図示の実施形態において、フィルタアセンブリ1112は、微粒子フィルタエレメント1125及びケミカルフィルタエレメント1126の両方を含み、微粒子フィルタエレメント1125はケミカルフィルタエレメント1126に対して上流に位置付けられる。
【0041】
フィルタシート1124には、フィルタシート1124の前面からフィルタシート1124の後面/裏面に空気を通す複数の開口部1127が設けられ、前面は、複数の開口部1127にわたってフィルタエレメント1125、1126を支持するよう配置される。フィルタシート1124はさらに、フィルタシート1124の後面/裏面とインペラケーシング1116の空気入口1119との間に、インペラケーシング1116の空気入口1119へ空気を導くよう配置された空気通路又は流路1128を画定する。この空気通路1128は、フィルタシート1124の後面/背面とインペラケーシング1116の前面との間に画定されたキャビティにより設けられる。したがって、空気は、フィルタエレメント1125、1126を通過してからしか、フィルタシート1124の開口部1127を通過して、インペラケーシング1116の空気入口1119に通じる空気通路1128に入ることができない。
【0042】
図示の実施形態では、フィルタシート1124は、スピーカシャーシ1114に取り付けられてインペラハウジング1117の上に位置付けられ、インペラハウジング1117は、フィルタシート1124の裏により規定された体積内に部分的に配設される。特に、フィルタシート1124は、略円錐台形状の周辺部及び略円筒形の中央部を含む。フィルタシート1124の略円錐台形の周辺部は、複数の開口部1127が設けられ、複数の開口部1127にわたって1つ又は複数の略円錐台形のフィルタエレメント1125、1126を支持するよう配置される。インペラハウジング1117は、その場合、フィルタシート1124の略円筒形の中央部内に少なくとも部分的に配設される。特に、インペラハウジング1117の空気入口1119は、フィルタシート1124の円筒形の中央部の裏により規定された体積内に配設される。
【0043】
ハウジング1101は、スピーカシャーシ1114に取り付けられた外カバー1129をさらに含む。この外カバー1129は、フィルタアセンブリ1112に外嵌する(したがって概してこれに一致する)よう配置され且つ開口部の配列が設けられ、開口部は外カバー1129に空気を通過させ、したがって外カバー1129の空気入口1110を画定する。これらの開口部は、大きな粒子がフィルタアセンブリ1112を通過してフィルタエレメント1125、1126を塞ぐか又は他の形で損傷を与えることを防止するサイズである。代替として、空気を通過させるために、外カバー1129は、外カバー1129の窓内に取り付けられた1つ又は複数のグリル又はメッシュを含むことができる。代替的な配列パターンが発明の範囲内で想定されることも明らかであろう。
【0044】
外カバー1129は、フィルタアセンブリ1112を覆うようにスピーカシャーシ1114に着脱可能に取り付けられる。例えば、外カバー1129は、外カバー1129及びスピーカシャーシ1114に設けられた協働するねじ山を用いて且つ/又は何らかのキャッチ機構を用いて、スピーカシャーシ1114に取り付けることができる。スピーカシャーシ1114に取り付けられると、外カバー1129は、例えば輸送中にフィルタエレメント1125、1126を損傷から保護し、清浄器1000の全体的な外観に合わせたフィルタアセンブリ1112を覆う見栄えのよい外面も提供する。
【0045】
図示の実施形態において、外カバー1129は、開放端を有する中空の円錐台として設けられる。外カバー1129の開放大径端は、フィルタアセンブリ1112の大径端の周辺に外嵌するよう配置される一方で、外カバー1129の開放小径端は、フィルタアセンブリ1112の小径端の周辺及びフィルタシート1124の略円筒形の中央部の両方に外嵌するよう配置される。したがって、フィルタシート1124の略円筒形の中央部の円形前面1124aは、外カバー1129の開放小径端内で露出することによりスピーカアセンブリ1100の外面の一部を形成する。好ましくは、フィルタシート1124の円形前面1124aは透明であることにより、ユーザがインペラケーシング1116の空気入口1119を通してインペラ1109の回転を見る窓を形成する。これにより、ユーザは、インペラ1109の速度を目視確認してインペラ1109が適切に機能していることを確認することができる。
【0046】
図1bに示すように、ノズル1300の第1の開放端は、第1のスピーカアセンブリ1100aのハウジング1101から延びる剛性の出口ダクト1130に接続される。ノズル1300は、その場合、第1のイヤーカップ1100aから延びて、第2のイヤーカップ1100bのスピーカハウジング1101から延びる剛性の出口ダクト1130にノズル1300の反対側の第2の開放端が接続するように弧状の形状をとる。ノズル1300は、第1のイヤーカップ1100aをユーザの第1の耳に被せ且つ第2のイヤーカップ1100bをユーザの第2の耳に被せて、清浄器1000がユーザに装着されると、ノズル1300がユーザの顔の周りで一方の側から他方の側まで、且つユーザの口の前に延びることができるように配置される。特に、ノズル1300は、ユーザの顔の口、鼻、又は周囲領域に接触せずに、ユーザの顎の周りで一方の頬付近から他方の頬付近まで延びる。したがって、ユーザが他人にはっきりと話し掛けることができなくならないようにノズル1300を通してユーザの口が見えるように、ノズル1300の少なくとも一部が透明又は部分的に透明な材料で形成されることが好ましい。例えば、ノズルの中央部は、ポリウレタン等の可撓性の透明プラスチック製とすることができる一方で、2つの端部はそれぞれ、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)等の硬い透明プラスチック製とすることができる。代替として、ノズル1300全体を単一の透明又は部分的に透明な材料から形成することができる。
【0047】
ノズル1300には、ろ過空気をユーザに放出/送出する空気出口1301が設けられる。例えば、ノズル1300の空気出口1301は、ノズル1300の一部に形成された開口部の配列を含むことができ、これらの開口部は、ノズル1300により画定された内部通路からノズル1300の外面まで延びる。代替として、ノズル1300の空気出口1301は、ノズル1300の窓内に取り付けられた1つ又は複数のグリル又はメッシュを含み得る。
【0048】
使用の際、第1のイヤーカップ1100aをユーザの第1の耳に被せ且つ第2のイヤーカップ1100bをユーザの第2の耳に被せて、清浄器1000をユーザに装着し、ノズル1300がユーザの顔の周りで一方の耳から他方の耳まで、且つユーザの少なくとも口の前に延びることができるようにする。各イヤーカップ1100a、1100b内で、モータ1113によるインペラ1109の回転が、インペラケーシング1116を通して気流を発生させることで、外カバー1129の開口部を通してスピーカアセンブリ1100に空気が引き込まれる。この気流は、続いて、外カバー1129とフィルタシート1124との間に配設されることにより気流をろ過及び/又は浄化するフィルタエレメント1125、1126を通過する。得られるろ過気流は、続いて、フィルタシート1124の円錐台形状の部分に設けられた開口部1127を通過し、インペラケーシング1116とフィルタシート1124の反対面との間の空間により設けられた空気通路1128に入り、空気通路1128は、続いてインペラケーシング1116の空気入口1119へ気流を導く。インペラ1109は、続いて、インペラハウジング1117の空気出口1120を提供する環状スロットを通してインペラケーシング1116のボリュート1118にろ過空気を押し出す。ボリュート1118は、続いて、スピーカアセンブリ1100の空気出口1111を通し、ハウジング1101から延びる剛性の出口ダクト1130を通して、ノズル1300の開放端の一方により提供される空気入口からノズル1300にろ過気流を導く。
【0049】
イヤーカップ1100のそれぞれは、モータ駆動式インペラ1109が発生させた内的を最適に検出するように、ハウジング1101内でモータ駆動式インペラ1109と音響ドライバ1105との間に配設されたマイクロホンにより提供される参照内部騒音センサも備える。図示の実施形態において、参照内部騒音マイクロホン1106は、モータ駆動式インペラ1109及びインペラケーシング1116の裏/後ろに向けてスピーカカバー1115に取り付けられる。1つ又は複数の回路基板1007に設けられた能動騒音制御(ANC)回路は、その場合、参照内部騒音マイクロホン1106及び音響ドライバ1105の両方に接続される。このANC回路は、参照内部騒音マイクロホン1106により供給された信号(例えば参照内部騒音信号)を用いて騒音を減衰させるように音響ドライバ1105を作動させるよう構成される。具体的には、参照内部騒音マイクロホン1106により供給された信号は、参照内部騒音マイクロホン1106により検出された騒音を示し、ANC回路は、参照内部騒音信号を受信して音響ドライバ1105にこの騒音を減衰させる出力(例えば内側フィードフォワードフィルタ出力)を生成するよう構成された内側フィードフォワードフィルタを含む。
【0050】
さらに、イヤーカップ1100のそれぞれは、ANC回路に同じく接続されたマイクロホン1108により提供される外向きの参照周囲騒音センサをさらに備える。参照内部騒音マイクロホン1106とは対照的に、参照周囲騒音マイクロホン1108は、ハウジング1101外の環境に音響的に結合されるようにハウジング1101に取り付けられる。図示の実施形態において、参照周囲騒音マイクロホン1108は、イヤーカップ1100の外部に向けて、ハウジング1101の外面に隣接して設けられる。具体的には、参照周囲騒音マイクロホン1108は、フィルタシート1124の円形前面1124aの内面に取り付けられる。したがって、ANC回路は、参照周囲騒音マイクロホン1108により供給された信号(例えば参照周囲騒音信号)を用いて騒音を減衰させるように音響ドライバ1105を作動させるようにも構成される。具体的には、参照周囲騒音マイクロホン1108により供給された信号は、参照周囲騒音マイクロホン1108により検出された騒音を示し、ANC回路は、参照周囲騒音信号を受信して音響ドライバ1105にこの騒音を減衰させる出力(例えば外側フィードフォワードフィルタ出力)を生成するよう構成された外側フィードフォワードフィルタを含む。
【0051】
イヤーカップ1100のそれぞれはまた、不所望の騒音を識別できるようにユーザに届いている音を取得するために、音響ドライバ1105に隣接してキャビティ1103内に配設されたマイクロホン1132により提供される誤差騒音センサをさらに備える。図示の実施形態において、誤差騒音マイクロホン1132は、音響ドライバ1105とキャビティ1103の開口1104との間でスピーカシャーシ1114に取り付けられ、キャビティ1103の開口1104を向いている。したがって、ANC回路は、誤差騒音マイクロホン1132により供給された信号(例えばフィードバック信号)を用いて騒音を減衰させるように音響ドライバ1105を作動させるようにも構成される。具体的には、誤差騒音マイクロホン1132により供給されたフィードバック信号は、誤差騒音マイクロホン1132により検出された騒音を示し、ANC回路は、フィードバック信号及び所望の音声信号の両方を受信して音響ドライバ1105に騒音を減衰させる出力(例えばフィードバックフィルタ出力)を生成するよう構成されたフィードバックフィルタを含む。
【0052】
図示の実施形態において、参照内部騒音マイクロホン1106及び参照周囲騒音マイクロホン1108の両方は、誤差騒音マイクロホン1132と略同軸上にある。したがって、3つ全てのマイクロホン1106、1108、1132の軸が相互に整列する。この点で、マイクロホンの軸は、捕音ダイヤフラムに対して垂直な線である。参照騒音マイクロホン1106、1108及び誤差騒音マイクロホン1132の両方に届く騒音がコヒーレントである可能性を高めるために、参照騒音マイクロホン1106、1108と誤差騒音マイクロホン1132との軸上配置は必須ではないが好ましい。図示の実施形態において、参照内部騒音マイクロホン1106、参照周囲騒音マイクロホン1108、及び誤差騒音センサ1132は、音響ドライバ1105とも略同軸上にある。したがって、3つ全てのマイクロホン1106、1108、1132の軸は、音響ドライバ1105の中心軸と整列する。任意の方向からイヤーカップに到達し得る外来騒音に対処する際のAMCの有効性を最適化するために、参照騒音マイクロホン1106、1108と誤差騒音マイクロホン1132との軸上配置は必須ではないが好ましい。
【0053】
図4aは、本明細書に記載の構成での使用に適したANC回路400の例を概略的に示す。この例では、ANC回路400は、参照内部騒音マイクロホン、参照周囲騒音マイクロホン、誤差騒音マイクロホンのそれぞれにより供給された信号を同時に用いてANCを実施する強化形態のハイブリッドANCを実施するよう構成される。図4aの例では、ANC回路400は、外側フィードフォワードANCフィルタ401、内側フィードフォワードANCフィルタ402、フィードバックANCフィルタ403、及びコンバイナ404を含む。参照周囲騒音信号は、従来の参照周囲騒音マイクロホンによりANC回路400に供給されて入力として外側フィードフォワードANCフィルタ401に渡され、外側フィードフォワードANCフィルタ401は続いてこの信号を用いて外側フィードフォワードアンチノイズ出力405を生成する。参照内部騒音信号は、参照内部騒音マイクロホンによりANC回路400に供給されて入力として内側フィードフォワードANCフィルタ402に渡され、内側フィードフォワードANCフィルタ402は続いてこの信号を用いて内側フィードフォワードアンチノイズ出力406を生成する。フィードバック信号は、誤差騒音センサによりANC回路400に供給されて入力としてフィードバックANCフィルタ403に渡され、フィードバックANCフィルタ403は続いてこのフィードバック信号及び所望の音声信号の両方を用いてフィードバックアンチノイズ出力407を生成する。外側フィードフォワードANCフィルタ401、内側フィードフォワードANCフィルタ402、及びフィードバックANCフィルタ403は、同時に動作するよう構成され、各フィルタのアンチノイズ出力が続いてコンバイナ404により所望の音声信号と加算された後に、出力音声信号408として音響ドライバに渡される。
【0054】
最適な性能は、外側フィードフォワードANCシステム及び内側フィードフォワードANCシステムの両方の同時使用により達成される可能性が最も高いが、この手法は、特にフィードバックANCシステムと組み合わせられる場合に従来のANC回路の大幅な改変を必要とする。したがって、図4bは、本明細書に記載の構成での使用に適したANC回路410の代替例を概略的に示す。この例では、ANC回路410は、モータ駆動式インペラの状態に応じて外側フィードフォワードANCシステムと内側フィードフォワードANCシステムとを切り替えるハイブリッドANCの形態を実施するよう構成される。図4bの例では、ANC回路410は、外側フィードフォワードANCフィルタ411、内側フィードフォワードANCフィルタ412、フィードバックANCフィルタ413、コンバイナ414、及びスイッチ419を含む。外側フィードフォワードANCフィルタ411、内側フィードフォワードANCフィルタ412、及びフィードバックANCフィルタ413は、図4aの回路と本質的に同様に動作するよう構成される。しかしながら、各自のアンチノイズ出力415、416、417をコンバイナ414に直接供給するのではなく、外側フィードフォワードANCフィルタ411及び内側フィードフォワードANCフィルタ412は、その代わりに各自のアンチノイズ出力415、416をスイッチ419に供給するよう配置される。スイッチ419は、その場合、モータの状態に応じてこれらのアンチノイズ出力415、416の一方を選択するよう構成される。具体的には、モータが第1の動作状態のとき、スイッチ419は、内側フィードフォワードANCフィルタ412により供給されたアンチノイズ出力416を選択してこのアンチノイズ出力416をコンバイナ414に供給するよう構成される。結果として、モータが第1の動作状態のとき、内側フィードフォワードANCフィルタ412及びフィードバックANCフィルタ413のアンチノイズ出力416、417がコンバイナ414により所望の音声信号と加算された後に、出力音声信号418として音響ドライバに渡される。逆に、モータが第2の動作状態のとき、スイッチ419は、外側フィードフォワードANCフィルタ411により供給されたアンチノイズ出力415を選択してこのアンチノイズ出力415をコンバイナ414に供給するよう構成される。結果として、モータが第2の動作状態のとき、外側フィードフォワードANCフィルタ411及びフィードバックANCフィルタ413のアンチノイズ出力415、417は、コンバイナ414により所望の音声信号と加算された後に、出力音声信号418として音響ドライバに渡される。
【0055】
この切り替えを実施するために、ANC回路410には、モータの状態を示す入力420が供給され、スイッチ419は、その場合、この入力420の変化に応答して第1の動作状態と第2の動作状態との間で選択するよう構成される。例えば、スイッチ419は、入力420が第1の制御信号(例えば高)を供給すると第1の動作状態を選択し、入力420が第2の制御信号(例えば低)を供給すると第2の動作状態を選択するよう構成され得る。モータの状態を示す入力420は、モータの回転速度を制御するモータ制御回路により供給され得る。モータ制御回路は、その場合、モータ駆動式インペラの回転速度が閾値を上回る場合はANC回路410に第1の制御信号を送り、モータ駆動式インペラの回転速度がこの閾値を下回る場合はANC回路410に第2制御信号を送るよう構成され得る。例として、モータ制御回路がモータをオンにするとすぐに、ANC回路410が第1の制御信号に応答して第1の動作状態になり、したがって内側フィードフォワードANCフィルタ412により供給されたアンチノイズ出力416を利用するように、閾値回転速度をゼロに設定することができる。ANC回路410はさらに、モータ制御回路がモータをオフにするとすぐに、第2の制御信号に応答して第2の動作状態になり、したがって外側フィードフォワードANCフィルタ411により供給されたアンチノイズ出力415を利用する。代替例として、低速でモータ駆動式インペラが発生する騒音が内側フィードフォワードANCシステムの使用を妥当とするのに十分でないと考えられる場合、閾値回転速度は非ゼロ値に設定され得る。ANC回路410は、その場合、モータの回転速度が特定の減衰を必要とする騒音レベルとなるほど高い場合に、第1の制御信号に応答して第1の動作状態になり、したがって内側フィードフォワードANCフィルタ412により供給されたアンチノイズ出力416を利用するだけである。
【0056】
図4bに示す例の代替として、ANCの切り替えフィードフォワード動作は、図4aのANC回路400を用いても達成することができる。そのために、モータの状態を示す入力420を用いて外側フィードフォワードANCフィルタ411及び内側フィードフォワードANCフィルタ412のアンチノイズ出力間を切り替えるのではなく、この入力420を用いて、外側フィードフォワードANCシステム及び内側フィードフォワードANCシステムの一方を選択的にオフに切り替える。外側フィードフォワードANCシステム及び内側フィードフォワードANCシステムの一方のマイクロホン及び/又はANCフィルタをオフに切り替えることで、これらのうち一方のみが非ゼロのアンチノイズ出力をコンバイナに供給するようになっている。
【0057】
本明細書に記載のイヤーカップは、参照内部騒音マイクロホン、参照周囲騒音マイクロホン、及び誤差騒音マイクロホンを有し、したがってこれらのマイクロホンのそれぞれにより供給された信号を用いるよう構成されたANC回路も有することが好ましいが、簡略化実施形態では、参照周囲騒音マイクロホンも誤差騒音マイクロホンも用いずに、参照内部騒音マイクロホンのみを利用することが望ましい場合がある。したがって、図5は、イヤーカップ1500が参照内部騒音マイクロホン1506を備えており参照周囲騒音マイクロホンも誤差騒音マイクロホンも備えていない、かかる実施形態の一例を示す。かかる実施形態は、その場合、騒音を減衰させるのに、対応する内側フィードフォワードANCフィルタと組み合わせた参照内部騒音マイクロホン1506に依存する。代替的な簡略化実施形態において、参照周囲騒音マイクロホン及び誤差騒音マイクロホンの一方のみと組み合わせて参照内部騒音マイクロホンを利用することが代わりに望ましい場合がある。したがって、図6及び図7は、これらの実施形態のそれぞれの例を示す。具体的には、図6は、イヤーカップ1600が参照内部騒音マイクロホン1606及び参照周囲騒音マイクロホン1608を備え誤差騒音マイクロホンを備えない、実施形態の例を示す。かかる実施形態は、内側フィードフォワードANCフィルタと組み合わせた参照内部騒音マイクロホン1606と、外側フィードフォワードANCフィルタと組み合わせた参照周囲騒音マイクロホン1608とを利用しして、騒音を減衰させる。次に、図7は、イヤーカップ1700が参照内部騒音マイクロホン1706及び誤差騒音マイクロホン1732を備え参照周囲騒音マイクロホンを備えない、実施形態の例を示す。かかる実施形態は、その場合、内側フィードフォワードANCフィルタと組み合わせた参照内部騒音マイクロホン1706と、フィードバックANCフィルタと組み合わせた誤差騒音センサ1732とを利用して、騒音を減衰させる。
【0058】
上述の個々の事項は、単独で又は図示若しくは説明に記載した他の事項と組み合わせて用いることができ、相互に同じ一節又は相互に同じ図面で言及された事項を、相互に組み合わせて用いる必要はないことが理解されよう。さらに、「手段」という表現は、所望に応じてアクチュエータ又はシステム又は装置に置き換えることができる。さらに、「備える」又は「からなる」への言及には限定の意図は一切なく、読者は説明及び特許請求の範囲を適宜解釈すべきである。
【0059】
さらに、本発明を上記の好ましい実施形態に関して説明したが、これらの実施形態は例示にすぎないことを理解されたい。当業者であれば、添付の特許請求の範囲内に入ると考えられる、本開示を考慮した変更形態及び代替形態をなすことができるであろう。例えば、上記実施形態において、頭部装着型空気清浄器は、2つのスピーカアセンブリがヘッドバンドの両端に設けられたヘッドホンシステムを備える。しかしながら、頭部装着型空気清浄器は、第1のスピーカアセンブリをユーザの第1の耳上で支持し第2のスピーカアセンブリをユーザの第2の耳上で支持するのに用いることができる任意の頭部装着物を同様に備え得る。例えば、頭部装着型空気清浄器は、安全帽、自転車用ヘルメット、オートバイ用ヘルメットを含む帽子又はヘルメット等の任意のタイプのヘッドギアを含み得る。
【0060】
さらに、上記実施形態では、両方のスピーカアセンブリがモータ駆動式インペラ及びフィルタアセンブリを含み、両方のスピーカアセンブリがろ過/浄化空気をノズルに供給するが、2つのスピーカアセンブリの一方のみがモータ駆動式インペラ及びフィルタアセンブリを含んで、単一のスピーカアセンブリのみがろ過/浄化空気をノズルに供給するようにすることも可能である。しかしながら、かかる構成は上記実施形態のものほど効果的とはならない。
【0061】
さらに、上記実施形態では、内側フィードフォワードANCシステムが内側フィードフォワードマイクロホンを利用するが、本発明者らの認識では、内部モータ駆動式インペラが発生する内的騒音の主因がイヤーカップの構造を通して伝達される機械振動であり、したがって内側フィードフォワードANCシステムは、マイクロホンではなく加速度計等の機械振動センサを利用することができる。内側フィードフォワードANCセンサは、その場合、音ではなく機械振動として不所望の内部騒音を検出する。機械振動センサを内側フィードフォワードセンサとして用いることで、このセンサによる他の騒音源(例えば外来騒音又は周囲騒音)の検出の有効性が制限されるが、モータに対して内側フィードフォワードセンサを位置付ける自由度は潜在的に大きくなる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7