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特許7313599硬質焼結体用の基材、硬質焼結体および切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】硬質焼結体用の基材、硬質焼結体および切削工具
(51)【国際特許分類】
   B22F 7/00 20060101AFI20230718BHJP
   B23B 51/00 20060101ALI20230718BHJP
   B23C 5/16 20060101ALI20230718BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20230718BHJP
   B23B 27/20 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B22F7/00 H
B23B51/00 M
B23C5/16
B23B27/14 B
B23B27/20
B22F7/00 K
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019061639
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020158852
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】越山 将行
(72)【発明者】
【氏名】松尾 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】深田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】浜田 陽一
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/066231(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/122166(WO,A1)
【文献】特表2003-511253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 7/00
B23B 51/00
B23C 5/16
B23B 27/14
B23B 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を有し、前記中心軸の軸方向に延びる柱部を備える硬質焼結体用の基材であって、
前記柱部は、
前記柱部の外周部に配置され、前記外周部の一部を構成する第1外周部と、
前記柱部の外周部に配置され、前記外周部の一部を構成する第2外周部と、
前記中心軸に垂直な横断面視において互いに繋がる前記第1外周部と前記第2外周部との接続部分に位置し、軸方向に延びる基材凸条部と、を有し、
前記横断面視で、周方向または径方向に延びる前記第1外周部のうち一方側部分は、他方側部分よりも径方向内側に位置し、
前記横断面視で、周方向または径方向に延びる前記第2外周部のうち一方側部分は、他方側部分よりも径方向外側に位置し、
前記基材凸条部は、前記第1外周部の他方側部分と前記第2外周部の一方側部分との接続部分に位置して径方向外側に突出し、
前記横断面視で、前記第1外周部の径方向外端部および前記中心軸を通り径方向に延びる第1直線と直交し前記第1外周部の径方向外端部上を通る第2直線に対して、前記第1外周部が傾斜する角度が、4°以上90°以下であり、
前記横断面視で、前記第1外周部が、凹曲線状であり、前記第2外周部が、凹曲線状である、
硬質焼結体用の基材。
【請求項2】
前記角度が、10°以上30°以下である、
請求項1に記載の硬質焼結体用の基材。
【請求項3】
前記横断面視で、前記基材凸条部は、凸曲線状である、
請求項1に記載の硬質焼結体用の基材。
【請求項4】
前記第1外周部は、複数設けられ、
前記第2外周部は、複数設けられ、
前記基材凸条部は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、
前記横断面視において複数の前記基材凸条部が、前記中心軸を中心として回転対称に配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の硬質焼結体用の基材。
【請求項5】
前記柱部は、前記横断面視において互いに繋がる前記第1外周部と前記第2外周部との接続部分に位置し、軸方向に延びる基材凹条部を有し、
前記基材凹条部は、前記第1外周部の一方側部分と前記第2外周部の他方側部分との接続部分に位置して径方向内側に窪む、
請求項1からのいずれか1項に記載の硬質焼結体用の基材。
【請求項6】
前記横断面視で、前記柱部は、正多角形状であり、
前記第1外周部の数が、6以上18以下である、
請求項1からのいずれか1項に記載の硬質焼結体用の基材。
【請求項7】
中心軸を有し、前記中心軸の軸方向に延びる柱部を備える硬質焼結体用の基材と、
前記柱部を径方向外側から覆う筒状であり、前記硬質焼結体用の基材よりも線膨張係数が小さく、かつ硬度が高く、前記硬質焼結体用の基材と一体に焼結された筒部と、を備え、
前記柱部は、
前記柱部の外周部に配置され、前記外周部の一部を構成する第1外周部と、
前記柱部の外周部に配置され、前記外周部の一部を構成する第2外周部と、
前記中心軸に垂直な横断面視において互いに繋がる前記第1外周部と前記第2外周部との接続部分に位置し、軸方向に延びる基材凸条部と、を有し、
記横断面視で、周方向または径方向に延びる前記第1外周部のうち一方側部分は、他方側部分よりも径方向内側に位置し、
前記横断面視で、周方向または径方向に延びる前記第2外周部のうち一方側部分は、他方側部分よりも径方向外側に位置し、
前記基材凸条部は、前記第1外周部の他方側部分と前記第2外周部の一方側部分との接続部分に位置して径方向外側に突出し、
前記筒部は、
前記筒部の内周部に配置され、前記内周部の一部を構成する第1内周部と、
前記筒部の内周部に配置され、前記内周部の一部を構成する第2内周部と、
前記横断面視において互いに繋がる前記第1内周部と前記第2内周部との接続部分に位置し、軸方向に延びる筒部凹条部と、を有し、
前記横断面視で、周方向または径方向に延びる前記第1内周部のうち一方側部分は、他方側部分よりも径方向内側に位置し、
前記横断面視で、周方向または径方向に延びる前記第2内周部のうち一方側部分は、他方側部分よりも径方向外側に位置し、
前記筒部凹条部は、前記第1内周部の他方側部分と前記第2内周部の一方側部分との接続部分に位置して径方向外側に窪み、
前記第1外周部と前記第1内周部とが、互いに接合され、
前記第2外周部と前記第2内周部とが、互いに接合され、
前記基材凸条部と前記筒部凹条部とが、互いに接合され、
前記横断面視で、前記第1外周部の径方向外端部および前記中心軸を通り径方向に延びる第1直線と直交し前記第1外周部の径方向外端部上を通る第2直線に対して、前記第1外周部が傾斜する角度が、4°以上90°以下であり、
前記横断面視で、前記第1外周部が、凹曲線状であり、前記第2外周部が、凹曲線状である、
硬質焼結体。
【請求項8】
前記角度が、10°以上30°以下である、
請求項に記載の硬質焼結体。
【請求項9】
前記第1外周部は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、
前記横断面視において、複数の前記第1外周部の各前記角度が、互いに等しい、
請求項7または8に記載の硬質焼結体。
【請求項10】
前記硬質焼結体用の基材は、ヤング率が300GPa以上であり、
前記筒部は、ヤング率が600GPa以上である、
請求項からのいずれか1項に記載の硬質焼結体。
【請求項11】
前記硬質焼結体用の基材は、超硬合金製、サーメット製およびセラミクス製のいずれかであり、
前記筒部は、多結晶ダイヤモンド製および多結晶立方晶窒化ホウ素製のいずれかである、
請求項から10のいずれか1項に記載の硬質焼結体。
【請求項12】
請求項から11のいずれか1項に記載の硬質焼結体の外周部に、軸方向に延びる切屑排出溝および切刃が設けられた刃部と、
前記刃部と軸方向に接続されるシャンクと、を備え、
前記切刃は、前記筒部に配置される、
切削工具。
【請求項13】
径方向から見て、前記第1外周部の他方側部分と前記切刃とが交わる、
請求項12に記載の切削工具。
【請求項14】
前記第1外周部は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、
前記切刃は、1つ以上設けられ、
前記第1外周部の数が、前記切刃の数よりも多い、
請求項12または13に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質焼結体用の基材、硬質焼結体および切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばエンドミル、リーマおよびドリル等の切削工具が知られている。切削工具は、円柱状の工具素材に研削加工を施して、切屑排出溝や切刃等を形成し製造される。工具素材は、刃部を構成する硬質焼結体と、超硬合金製のシャンクとをロウ付けにより接合し製作される。
【0003】
硬質焼結体は、多段円柱状の基材と、基材の小径部を覆う円筒状の筒部と、を備える。基材は超硬合金製であり、筒部は多結晶ダイヤモンド(PCD)製や多結晶立方晶窒化ホウ素(PcBN)製である。基材と筒部とは一体に焼結されて、硬質焼結体とされる。従来の硬質焼結体として、例えば特許文献1、2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5906355号公報
【文献】特許第3055803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の硬質焼結体を、例えばエンドミル、リーマおよびドリル等の切削工具(回転切削工具)に用いた場合に、基材と筒部との界面近傍に亀裂や欠けが生じるおそれがあった。詳しくは、切削加工時に切削工具にかかる負荷のうち、工具の中心軸に対して垂直方向にかかる負荷が、基材と筒部との界面に沿っており、せん断方向の力が作用するため、上記の不具合が生じるものと考えられる。
例えば、切削加工時の送り量を小さくするなど、切削条件を調整して切削工具への負荷を低減させれば、加工能率は低下する。また、例えば炭素繊維強化プラスチック(carbon fiber reinforced plastic:CFRP)等の難削材の加工需要は増える傾向にあり、切削工具への負荷もより大きくなることが見込まれている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、基材と筒部との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制できる硬質焼結体用の基材、硬質焼結体および切削工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様は、中心軸を有し、前記中心軸の軸方向に延びる柱部を備える硬質焼結体用の基材であって、前記柱部は、前記柱部の外周部に配置され、前記外周部の一部を構成する第1外周部と、前記柱部の外周部に配置され、前記外周部の一部を構成する第2外周部と、前記中心軸に垂直な横断面視において互いに繋がる前記第1外周部と前記第2外周部との接続部分に位置し、軸方向に延びる基材凸条部と、を有し、前記横断面視で、周方向または径方向に延びる前記第1外周部のうち一方側部分は、他方側部分よりも径方向内側に位置し、前記横断面視で、周方向または径方向に延びる前記第2外周部のうち一方側部分は、他方側部分よりも径方向外側に位置し、前記基材凸条部は、前記第1外周部の他方側部分と前記第2外周部の一方側部分との接続部分に位置して径方向外側に突出し、前記横断面視で、前記第1外周部の径方向外端部および前記中心軸を通り径方向に延びる第1直線と直交し前記第1外周部の径方向外端部上を通る第2直線に対して、前記第1外周部が傾斜する角度が、4°以上90°以下であり、前記横断面視で、前記第1外周部が、凹曲線状であり、前記第2外周部が、凹曲線状である
【0008】
本発明の硬質焼結体用の基材は、径方向外側に突出する基材凸条部を有する。また、基材と一体に焼結される筒部には、基材凸条部と接合される部分(後述する筒部凹条部)が設けられる。このため、基材と筒部とが焼結された硬質焼結体を、切削工具の刃部に用い切削加工を行う際、切削工具にかかる周方向の負荷を、基材凸条部で受けることができる。これにより、切削加工時に切削工具にかかる負荷のうち、工具の中心軸に対して垂直方向にかかる負荷が、基材と筒部との界面に沿って作用することを抑えることができ、つまり界面に沿うせん断力を低減させることができて、基材と筒部との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制できる。したがって、この硬質焼結体を用いて製作される切削工具の耐欠損性を向上させることができ、工具寿命を延ばすことができる。
上記硬質焼結体用の基材において、前記角度が、10°以上30°以下であることとしてもよい。
【0011】
上記硬質焼結体用の基材において、前記横断面視で、前記基材凸条部は、凸曲線状であることとしてもよい。
【0012】
この場合、基材と筒部とが焼結された硬質焼結体を切削工具の刃部に用い、切削加工を行う際、基材凸条部において先端(径方向外端)に荷重が集中することを抑えられる。このため、基材凸条部近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制しやすくできる。
【0013】
上記硬質焼結体用の基材において、前記第1外周部は、複数設けられ、前記第2外周部は、複数設けられ、前記基材凸条部は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、前記横断面視において複数の前記基材凸条部が、前記中心軸を中心として回転対称に配置されることが好ましい。
【0014】
この場合、基材と筒部とが焼結された硬質焼結体を切削工具の刃部に用い、切削加工を行う際、切削工具の周方向の複数箇所において、上述した基材凸条部による機能が得られる。したがって、基材と筒部との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを安定して抑制でき、切削工具の耐欠損性をより向上させることができる。
【0016】
また、基材と筒部とが焼結された硬質焼結体を切削工具の刃部に用い、切削加工を行う際、各基材凸条部に均等に負荷が作用する。すなわち、特定の基材凸条部に大きな負荷が連続して作用することを抑制でき、基材と筒部との界面近傍に亀裂や欠けが生じることをより安定して抑制できる
【0017】
上記硬質焼結体用の基材において、前記柱部は、前記横断面視において互いに繋がる前記第1外周部と前記第2外周部との接続部分に位置し、軸方向に延びる基材凹条部を有し、前記基材凹条部は、前記第1外周部の一方側部分と前記第2外周部の他方側部分との接続部分に位置して径方向内側に窪むことが好ましい。
【0018】
この場合、基材凹条部が設けられることで、第1外周部を周方向へ向けて正対しやすくすることができる。このため、基材と筒部とが焼結された硬質焼結体を切削工具の刃部に用い、切削加工を行う際、第1外周部において荷重をより受けやすくすることができる。また基材において、基材凸条部や第1外周部を配置する自由度が増し、各種の切削工具に用いられる各種の硬質焼結体に容易に対応可能である。
【0019】
上記硬質焼結体用の基材において、前記横断面視で、前記柱部は、多角形状であり、前記第1外周部の数が、6以上18以下であることが好ましい。
【0020】
この場合、本発明の構成を簡単に実現でき、製造が容易である。
【0021】
また、本発明の硬質焼結体の一つの態様は、中心軸を有し、前記中心軸の軸方向に延びる柱部を備える硬質焼結体用の基材と、前記柱部を径方向外側から覆う筒状であり、前記硬質焼結体用の基材よりも線膨張係数が小さく、かつ硬度が高く、前記硬質焼結体用の基材と一体に焼結された筒部と、を備え、前記柱部は、前記柱部の外周部に配置され、前記外周部の一部を構成する第1外周部と、前記柱部の外周部に配置され、前記外周部の一部を構成する第2外周部と、前記中心軸に垂直な横断面視において互いに繋がる前記第1外周部と前記第2外周部との接続部分に位置し、軸方向に延びる基材凸条部と、を有し、前記横断面視で、周方向または径方向に延びる前記第1外周部のうち一方側部分は、他方側部分よりも径方向内側に位置し、前記横断面視で、周方向または径方向に延びる前記第2外周部のうち一方側部分は、他方側部分よりも径方向外側に位置し、前記基材凸条部は、前記第1外周部の他方側部分と前記第2外周部の一方側部分との接続部分に位置して径方向外側に突出し、前記筒部は、前記筒部の内周部に配置され、前記内周部の一部を構成する第1内周部と、前記筒部の内周部に配置され、前記内周部の一部を構成する第2内周部と、前記横断面視において互いに繋がる前記第1内周部と前記第2内周部との接続部分に位置し、軸方向に延びる筒部凹条部と、を有し、前記横断面視で、周方向または径方向に延びる前記第1内周部のうち一方側部分は、他方側部分よりも径方向内側に位置し、前記横断面視で、周方向または径方向に延びる前記第2内周部のうち一方側部分は、他方側部分よりも径方向外側に位置し、前記筒部凹条部は、前記第1内周部の他方側部分と前記第2内周部の一方側部分との接続部分に位置して径方向外側に窪み、前記第1外周部と前記第1内周部とが、互いに接合され、前記第2外周部と前記第2内周部とが、互いに接合され、前記基材凸条部と前記筒部凹条部とが、互いに接合され、前記横断面視で、前記第1外周部の径方向外端部および前記中心軸を通り径方向に延びる第1直線と直交し前記第1外周部の径方向外端部上を通る第2直線に対して、前記第1外周部が傾斜する角度が、4°以上90°以下であり、前記横断面視で、前記第1外周部が、凹曲線状であり、前記第2外周部が、凹曲線状である
また、本発明の切削工具の一つの態様は、上述の硬質焼結体の外周部に、軸方向に延びる切屑排出溝および切刃が設けられた刃部と、前記刃部と軸方向に接続されるシャンクと、を備え、前記切刃は、前記筒部に配置される。
【0022】
本発明の硬質焼結体および切削工具は、中心軸に垂直な横断面視において、基材の第1外周部のうち一方側部分が、他方側部分よりも径方向内側に位置しており、つまり第1外周部は周方向を向いている。またこの横断面視で、筒部の第1内周部のうち一方側部分が、他方側部分よりも径方向内側に位置しており、つまり第1内周部は周方向を向いている。そして、周方向を向く第1外周部と第1内周部とが、互いに接合されている。
この硬質焼結体を切削工具の刃部に用い切削加工を行う際、第1外周部が工具回転方向を向く姿勢とすることにより、切削工具にかかる周方向の負荷を、基材の第1外周部で受けることができる。これにより、切削加工時に切削工具にかかる負荷のうち、工具の中心軸に対して垂直方向にかかる負荷が、基材と筒部との界面に沿って作用することを抑えることができ、つまり界面に沿うせん断力を低減させることができて、基材と筒部との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制できる。したがって、この硬質焼結体を用いて製作される切削工具の耐欠損性を向上させることができ、工具寿命を延ばすことができる。
上記硬質焼結体において、前記角度が、10°以上30°以下であることとしてもよい。
【0026】
また、基材が、径方向外側に突出する基材凸条部を有し、この基材凸条部に、筒部の筒部凹条部が接合されている。このため、硬質焼結体を切削工具の刃部に用い、切削加工を行う際、切削工具にかかる周方向の負荷を基材凸条部で受けることができる。これにより、切削加工時に切削工具にかかる負荷のうち、工具の中心軸に対して垂直方向にかかる負荷が、基材と筒部との界面に沿って作用することを抑えることができ、基材と筒部との界面近傍に亀裂や欠けが生じることをより抑制できる
【0030】
上記硬質焼結体において、前記第1外周部は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、前記横断面視において、複数の前記第1外周部の各前記角度が、互いに等しいことが好ましい。
【0031】
この場合、基材と筒部とが焼結された硬質焼結体を切削工具の刃部に用い、切削加工を行う際、切削工具の周方向の複数箇所において、上述した第1外周部による機能が得られ、かつ、各第1外周部に均等に負荷が作用する。すなわち、特定の第1外周部に大きな負荷が連続して作用することを抑制でき、基材と筒部との界面近傍に亀裂や欠けが生じることをより安定して抑制できる。
【0032】
上記硬質焼結体において、前記硬質焼結体用の基材は、ヤング率が300GPa以上であり、前記筒部は、ヤング率が600GPa以上であることが好ましい。
【0033】
硬質焼結体用の基材のヤング率が300GPa以上であると、この基材を例えばエンドミル等の切削工具に用いた場合に、安定して剛性を確保できる。
また、筒部のヤング率が600GPa以上であると、この筒部を例えばエンドミル等の切削工具に用いた場合に、安定して耐摩耗性を確保できる。
【0034】
上記硬質焼結体において、前記硬質焼結体用の基材は、超硬合金製、サーメット製およびセラミクス製のいずれかであり、前記筒部は、多結晶ダイヤモンド製および多結晶立方晶窒化ホウ素製のいずれかであることが好ましい。
【0035】
上記切削工具において、径方向から見て、前記第1外周部の他方側部分と前記切刃とが交わることが好ましい。
【0036】
この場合、切削工具で切削加工を行う際、切刃にかかる周方向の負荷を、基材の第1外周部でより受けやすくすることができる。このため、基材と筒部との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制でき、切削工具の耐欠損性を向上させることができ、工具寿命を延ばすことができる。
【0037】
上記切削工具において、前記第1外周部は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、前記切刃は、1つ以上設けられ、前記第1外周部の数が、前記切刃の数よりも多いことが好ましい。
【0038】
この場合、径方向から見て、切刃に第1外周部が交差して配置されやすくなる。切削工具で切削加工を行う際、各切刃にかかる周方向の負荷を、基材の各第1外周部で安定して受けやすくすることができる。このため、基材と筒部との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制でき、切削工具の耐欠損性を向上させることができ、工具寿命を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の一つの態様の硬質焼結体用の基材、硬質焼結体および切削工具によれば、基材と筒部との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1(a)は、第1実施形態の硬質焼結体を示す横断面図であり、図1(b)は、第1実施形態の硬質焼結体を示す縦断面図(硬質焼結体用の基材の側面図および筒部の縦断面図)である。
図2図2は、第1実施形態の硬質焼結体用の基材を示す斜視図である。
図3図3は、第1実施形態の硬質焼結体の一部を拡大して示す横断面図である。
図4図4は、第1実施形態の切削工具を示す側面図である。
図5図5は、第1実施形態の硬質焼結体用の基材の第1変形例を示す横断面図である。
図6図6は、第1実施形態の硬質焼結体用の基材の第2変形例を示す横断面図である。
図7図7は、第1実施形態の硬質焼結体用の基材の第3変形例を示す横断面図である。
図8図8は、第1実施形態の硬質焼結体用の基材の第4変形例を示す横断面図である。
図9図9は、第1実施形態の硬質焼結体用の基材の第5変形例を示す横断面図である。
図10図10は、第1実施形態の硬質焼結体用の基材の第6変形例を示す横断面図である。
図11図11は、第1実施形態の硬質焼結体用の基材の第7変形例を示す横断面図である。
図12図12は、第1実施形態の硬質焼結体用の基材の第8変形例を示す横断面図である。
図13図13は、第1実施形態の硬質焼結体用の基材の第9変形例を示す横断面図である。
図14図14は、第1実施形態の硬質焼結体の第10変形例を示す横断面図である。
図15図15(a)は、第1実施形態の硬質焼結体の第11変形例を示す横断面図であり、図15(b)は、第1実施形態の硬質焼結体の第11変形例を示す縦断面図(硬質焼結体用の基材の側面図および筒部の縦断面図)である。
図16図16は、第1実施形態の硬質焼結体用の基材の第12変形例を示す斜視図である。
図17図17(a)は、第1実施形態の硬質焼結体の第13変形例を示す横断面図であり、図17(b)は、第1実施形態の硬質焼結体の第13変形例を示す縦断面図(硬質焼結体用の基材の側面図および筒部の縦断面図)である。
図18図18(a)は、第1実施形態の硬質焼結体の第14変形例を示す横断面図であり、図18(b)は、第1実施形態の硬質焼結体の第14変形例を示す縦断面図(硬質焼結体用の基材の側面図および筒部の縦断面図)である。
図19図19(a)は、第1実施形態の硬質焼結体の第15変形例を示す横断面図であり、図19(b)は、第1実施形態の硬質焼結体の第15変形例を示す縦断面図(硬質焼結体用の基材の側面図および筒部の縦断面図)である。
図20図20は、第2実施形態の硬質焼結体を示す横断面図である。
図21図21は、第2実施形態の硬質焼結体の第1変形例を示す横断面図である。
図22図22は、第2実施形態の硬質焼結体の第2変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態の硬質焼結体用の基材1A(1)、硬質焼結体10および切削工具50について、図1図4を参照して説明する。図1および図3は、本実施形態の硬質焼結体10を示す。図2は、本実施形態の硬質焼結体用の基材1Aを示す。図4は、本実施形態の切削工具50を示す。
なお以下の説明では、硬質焼結体用の基材1Aを、単に基材1Aと呼ぶ場合がある。また硬質焼結体10は、超硬質焼結体10や超高硬度焼結体10と言い換えてもよい。
【0042】
図1(a)および図1(b)に示すように、硬質焼結体10は、硬質焼結体用の基材1Aと、硬質焼結体用の基材1Aと一体に焼結された筒部20と、を備える。基材1Aは、ヤング率が300GPa以上である。基材1Aは、超硬合金製、サーメット製およびセラミクス製のいずれかである。筒部20は、ヤング率が600GPa以上である。筒部20は、多結晶ダイヤモンド(PCD)製および多結晶立方晶窒化ホウ素(PcBN)製のいずれかである。筒部20は、基材1Aよりも線膨張係数(熱膨張係数)が小さく、かつ硬度が高い。
硬質焼結体10は、図示しない円筒状のカプセルに、圧粉成形体とされた基材1A原料と、粉末状の筒部20原料とを充填し、超高温超高圧条件下で焼結することにより製造される。
【0043】
図1図3に示すように、基材1Aは、中心軸Cを中心とする多段柱状である。基材1Aは、小径部2と、大径部3と、基材端面4と、を備える。小径部2は、本発明の構成要素の「柱部」であり、以下の説明では柱部2と呼ぶ場合がある。小径部2は、中心軸Cを有し、中心軸Cの軸方向に延びる。大径部3は、中心軸Cを中心として中心軸Cの軸方向に延びる。
【0044】
本実施形態では、中心軸Cが延びる方向(中心軸Cに沿う方向)を、軸方向と呼ぶ。軸方向において、小径部2と大径部3とは互いに異なる位置に配置されている。軸方向のうち、大径部3から小径部2へ向かう方向を軸方向一方側と呼び、小径部2から大径部3へ向かう方向を軸方向他方側と呼ぶ。
中心軸Cに直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Cに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Cから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
中心軸C回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。周方向のうち、所定の回転方向を周方向一方側R1と呼び、これとは反対の回転方向を周方向他方側R2と呼ぶ。
【0045】
基材1Aの中心軸C、硬質焼結体10の中心軸Cおよび切削工具50の中心軸Cは、共通軸であり、互いに同軸に配置される。
軸方向一方側は、図4に示す切削工具50において先端側(図4の上側)に相当する。軸方向他方側は、切削工具50において後端側(図4の下側)に相当する。
周方向のうち、切削加工時に工作機械の主軸等により切削工具50が回転させられる向きを工具回転方向Tと呼び、これとは反対の回転方向を、工具回転方向Tとは反対方向(反工具回転方向)と呼ぶ場合がある。本実施形態において周方向一方側R1は、工具回転方向Tに相当し、周方向他方側R2は、工具回転方向Tとは反対方向に相当する。
【0046】
図1図3において、小径部(柱部)2は、軸方向に延びる柱状である。本実施形態では柱部2が、多角形柱状である。図1(a)に示すように、中心軸Cに垂直な横断面視で、柱部2は、多角形状である。本実施形態では柱部2が、正多角形状であり、具体的には正8角形状である。
柱部2は、第1外周部11と、第2外周部12と、基材凸条部13と、を有する。
【0047】
第1外周部11は、柱部2の外周部に配置され、柱部2の外周部の一部を構成する。第1外周部11は、柱部2の外周面の周方向の一部を構成する。第1外周部11は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
図3に示す横断面視で、第1外周部11は、周方向または径方向に延びる。本実施形態では各第1外周部11が、周方向に延びる。具体的に各第1外周部11は、柱部2の外接円上に位置する各頂点(各基材凸条部13)から周方向一方側R1へ向けて、それぞれ延びる。柱部2の各頂点は、柱部2の外周面上に位置する。図3に符号Bで示す直線は、柱部2の周方向に隣り合う一対の頂点と、中心軸Cとを結ぶ一対の直線同士の間の角の二等分線Bである。第1外周部11は、周方向において柱部2の頂点と二等分線Bとの間に位置する。第1外周部11は、柱部2の頂点から周方向一方側R1へ向けて、二等分線Bまで延びる。図3に示す横断面視において、本実施形態では第1外周部11が、直線状である。第1外周部11は、柱部2の周方向に隣り合う一対の頂点同士を結ぶ直線上に位置する。
【0048】
図3の横断面視で、第1外周部11のうち一方側部分(第1端部)11aは、他方側部分(第2端部)11bよりも径方向内側に位置する。第1外周部11の一方側部分11aは、二等分線B上に位置する部分を含む。第1外周部11の他方側部分11bは、柱部2の頂点上に位置する部分を含む。第1外周部11は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向内側に位置する。つまり第1外周部11は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向内側へ向けて延びる。
【0049】
第1外周部11の一方側部分11aは、第1外周部11における周方向一方側R1の端部を含む。第1外周部11の他方側部分11bは、第1外周部11における周方向他方側R2の端部を含む。第1外周部11の一方側部分11aは、第1外周部11における径方向内側の端部、つまり径方向内端部を含む。第1外周部11の他方側部分11bは、第1外周部11における径方向外側の端部、つまり径方向外端部を含む。
【0050】
図3の横断面視において、符号L1で示す直線は、第1外周部11の径方向外端部および中心軸Cを通り径方向に延びる第1直線L1である。第1直線L1は、柱部2の頂点(基材凸条部13)および中心軸Cを通る直線でもある。符号L2で示す直線は、第1直線L1と直交し第1外周部11の径方向外端部上を通る第2直線L2である。第2直線L2は、第1直線L1と直交し柱部2の頂点上を通る直線でもある。第2直線L2は、第1外周部11の径方向外端部(基材凸条部13)を通る柱部2の外接円の接線に相当する。
【0051】
本実施形態では、図3の横断面視で、第2直線L2に対して第1外周部11が傾斜する角度θが、4°以上である。具体的にこの横断面視において、角度θは、第1外周部11の他方側部分11bと、第2直線L2との間の角度である。つまり角度θは、第2直線L2から周方向一方側R1の回転方向に第1外周部11が傾斜する角度である。この横断面視で、複数の第1外周部11の各角度θは、互いに等しい。
なお、本実施形態では第1外周部11が径方向外側を向いており、具体的には第1外周部11が、第1外周部11の径方向外端部(基材凸条部13)から周方向一方側R1へ向けて延びており、この場合の角度θは、図3の横断面視において、第2直線L2と第1外周部11とが交差して形成される鋭角および鈍角のうち、鋭角の角度を指す。なお、角度θのより好ましい範囲は、5°以上60°以下である。
【0052】
第2外周部12は、柱部2の外周部に配置され、柱部2の外周部の一部を構成する。第2外周部12は、柱部2の外周面のうち、第1外周部11とは異なる周方向の一部を構成する。第2外周部12は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
図3に示す横断面視で、第2外周部12は、周方向または径方向に延びる。本実施形態では各第2外周部12が、周方向に延びる。具体的に各第2外周部12は、柱部2の外接円上に位置する各頂点(各基材凸条部13)から周方向他方側R2へ向けて、それぞれ延びる。第2外周部12は、周方向において柱部2の頂点と二等分線Bとの間に位置する。第2外周部12は、柱部2の頂点から周方向他方側R2へ向けて、二等分線Bまで延びる。図3に示す横断面視において、本実施形態では第2外周部12が、直線状である。第2外周部12は、柱部2の周方向に隣り合う一対の頂点同士を結ぶ直線上に位置する。すなわち、本実施形態では、柱部2の周方向に隣り合う一対の頂点同士を結ぶ直線上に、第1外周部11と第2外周部12とが、二等分線Bを中心として周方向両側に隣り合って配置される。
【0053】
図3の横断面視で、第2外周部12のうち一方側部分(第1端部)12aは、他方側部分(第2端部)12bよりも径方向外側に位置する。第2外周部12の一方側部分12aは、柱部2の頂点上に位置する部分を含む。第2外周部12の他方側部分12bは、二等分線B上に位置する部分を含む。第2外周部12は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向外側に位置する。つまり第2外周部12は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向外側へ向けて延びる。
【0054】
第2外周部12の一方側部分12aは、第2外周部12における周方向一方側R1の端部を含む。第2外周部12の他方側部分12bは、第2外周部12における周方向他方側R2の端部を含む。第2外周部12の一方側部分12aは、第2外周部12における径方向外側の端部、つまり径方向外端部を含む。第2外周部12の他方側部分12bは、第2外周部12における径方向内側の端部、つまり径方向内端部を含む。
【0055】
本実施形態では、中心軸Cに垂直な横断面視において柱部2が正多角形状であるため、図3の横断面視で、第2直線L2に対して第2外周部12が傾斜する角度は、上述した角度θと同じ値である。具体的にこの横断面視において、前記角度は、第2外周部12の一方側部分12aと、第2直線L2との間の角度である。この横断面視で、複数の第2外周部12の各前記角度は、互いに等しい。
【0056】
複数の第1外周部11と複数の第2外周部12とは、周方向に交互に配置される。図3に示す横断面視において、第1外周部11と第2外周部12とは、互いに繋がる。第1外周部11と第2外周部12とは、周方向において互いに接続する。
周方向に隣り合う第1外周部11と第2外周部12とは、柱部2の頂点上において互いに接続する。すなわち、第1外周部11の他方側部分11bと、第2外周部12の一方側部分12aとは、柱部2の頂点上で繋がる。周方向に隣り合う第1外周部11と第2外周部12とは、二等分線B上において互いに接続する。すなわち、第1外周部11の一方側部分11aと、第2外周部12の他方側部分12bとは、二等分線B上で繋がる。
【0057】
基材凸条部13は、図3に示す横断面視において互いに繋がる第1外周部11と第2外周部12との接続部分に位置し、軸方向に延びる。基材凸条部13は、第1外周部11の他方側部分11bと第2外周部12の一方側部分12aとの接続部分に位置して径方向外側に突出する。本実施形態では基材凸条部13が、基材凸条部13の径方向外端に尖った角を有する。
【0058】
図1(b)および図2に示すように、本実施形態では基材凸条部13が、中心軸Cに沿って軸方向に延びる。基材凸条部13は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。図3の横断面視において複数の基材凸条部13は、中心軸Cを中心として回転対称(点対称)に配置される。つまり複数の基材凸条部13は、周方向に等ピッチで配置される。
【0059】
図1および図2に示すように、大径部3は、軸方向に延びる円柱状である。大径部3は、小径部(柱部)2よりも外径が大きい。大径部3の外径(直径)は、例えば、小径部2の外径の略2倍である。大径部3は、小径部2よりも軸方向の長さが小さい。大径部3の軸方向他方側を向く端面3aは、中心軸Cに垂直な方向に拡がる平面状である。端面3aは、円形状である。
【0060】
基材端面4は、大径部3の外周面の軸方向一方側の端部と小径部2の軸方向他方側の端部との間に位置し、軸方向一方側を向く。基材端面4は、大径部3の外周面の軸方向一方側の端部と、小径部2の外周面の軸方向他方側の端部との間に配置される。基材端面4は、中心軸Cを中心とする円形環状である。本実施形態では基材端面4が、中心軸Cに垂直な方向に拡がる平面状である。
【0061】
図1(a)および図1(b)に示すように、筒部20は、小径部(柱部)2を径方向外側から覆う筒状である。筒部20は、中心軸Cを中心とする円筒状であり、軸方向に延びる。本実施形態では筒部20が、有頂筒状である。筒部20は、周壁部21と、頂壁部22と、筒部端面23と、を有する。
【0062】
周壁部21は、軸方向に延びる円筒状である。周壁部21は、径方向において柱部2を外側から囲う。図1(a)に示す横断面視で、周壁部21の内周面は、多角形状である。本実施形態では周壁部21の内周面が、正多角形状であり、具体的には正8角形状である。周壁部21の内周面は、柱部2の外周面と固定される。周壁部21の内周面(つまり筒部20の内周面)は、柱部2の外周面と接合されている。
周壁部21は、第1内周部31と、第2内周部32と、筒部凹条部33と、を有する。つまり筒部20は、第1内周部31と、第2内周部32と、筒部凹条部33と、を有する。
【0063】
第1内周部31は、周壁部21の内周部に配置される。すなわち第1内周部31は、筒部20の内周部に配置され、筒部20の内周部の一部を構成する。第1内周部31は、周壁部21(筒部20)の内周面の周方向の一部を構成する。第1内周部31は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
図3に示す横断面視で、第1内周部31は、周方向または径方向に延びる。本実施形態では各第1内周部31が、周方向に延びる。具体的に各第1内周部31は、周壁部21の内周面上に位置する各頂点(各筒部凹条部33)から周方向一方側R1へ向けて、それぞれ延びる。上述した二等分線Bは、周壁部21の内周面において周方向に隣り合う一対の頂点と、中心軸Cとを結ぶ一対の直線同士の間の角の二等分線Bでもある。第1内周部31は、周方向において、周壁部21の内周面の頂点と二等分線Bとの間に位置する。第1内周部31は、周壁部21の頂点から周方向一方側R1へ向けて、二等分線Bまで延びる。図3に示す横断面視において、本実施形態では第1内周部31が、直線状である。第1内周部31は、周壁部21の内周面において周方向に隣り合う一対の頂点同士を結ぶ直線上に位置する。
【0064】
図3の横断面視で、第1内周部31のうち一方側部分(第1端部)31aは、他方側部分(第2端部)31bよりも径方向内側に位置する。第1内周部31の一方側部分31aは、二等分線B上に位置する部分を含む。第1内周部31の他方側部分31bは、周壁部21の内周面の頂点上に位置する部分を含む。第1内周部31は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向内側に位置する。つまり第1内周部31は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向内側へ向けて延びる。
【0065】
第1内周部31の一方側部分31aは、第1内周部31における周方向一方側R1の端部を含む。第1内周部31の他方側部分31bは、第1内周部31における周方向他方側R2の端部を含む。第1内周部31の一方側部分31aは、第1内周部31における径方向内側の端部、つまり径方向内端部を含む。第1内周部31の他方側部分31bは、第1内周部31における径方向外側の端部、つまり径方向外端部を含む。
【0066】
上述した第1直線L1は、第1内周部31の径方向外端部および中心軸Cを通り径方向に延びる直線でもある。第1直線L1は、周壁部21の内周面の頂点(筒部凹条部33)および中心軸Cを通る直線でもある。上述した第2直線L2は、第1直線L1と直交し第1内周部31の径方向外端部上を通る直線でもある。第2直線L2は、第1直線L1と直交し周壁部21の内周面の頂点上を通る直線でもある。
本実施形態では、図3の横断面視で、第2直線L2に対して第1内周部31が傾斜する角度θが、4°以上である。具体的にこの横断面視において、角度θは、第1内周部31の他方側部分31bと、第2直線L2との間の角度である。この横断面視で、複数の第1内周部31の各角度θは、互いに等しい。
【0067】
各第1内周部31は、各第1外周部11と接触する。第1外周部11と第1内周部31とは、互いに接合される。第1外周部11の一方側部分11aと、第1内周部31の一方側部分31aとは、径方向に対向し、互いに接合されている。第1外周部11の他方側部分11bと、第1内周部31の他方側部分31bとは、径方向に対向し、互いに接合されている。
【0068】
第2内周部32は、周壁部21の内周部に配置される。すなわち第2内周部32は、筒部20の内周部に配置され、筒部20の内周部の一部を構成する。第2内周部32は、周壁部21の内周面のうち、第1内周部31とは異なる周方向の一部を構成する。第2内周部32は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
図3に示す横断面視で、第2内周部32は、周方向または径方向に延びる。本実施形態では各第2内周部32が、周方向に延びる。具体的に各第2内周部32は、周壁部21の内周面上に位置する各頂点(各筒部凹条部33)から周方向他方側R2へ向けて、それぞれ延びる。第2内周部32は、周方向において、周壁部21の内周面の頂点と二等分線Bとの間に位置する。第2内周部32は、周壁部21の頂点から周方向他方側R2へ向けて、二等分線Bまで延びる。図3に示す横断面視において、本実施形態では第2内周部32が、直線状である。第2内周部32は、周壁部21の内周面において周方向に隣り合う一対の頂点同士を結ぶ直線上に位置する。すなわち、本実施形態では、周壁部21の内周面の周方向に隣り合う一対の頂点同士を結ぶ直線上に、第1内周部31と第2内周部32とが、二等分線Bを中心として周方向両側に隣り合って配置される。
【0069】
図3の横断面視で、第2内周部32のうち一方側部分(第1端部)32aは、他方側部分(第2端部)32bよりも径方向外側に位置する。第2内周部32の一方側部分32aは、周壁部21の内周面の頂点上に位置する部分を含む。第2内周部32の他方側部分32bは、二等分線B上に位置する部分を含む。第2内周部32は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向外側に位置する。つまり第2内周部32は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向外側へ向けて延びる。
【0070】
第2内周部32の一方側部分32aは、第2内周部32における周方向一方側R1の端部を含む。第2内周部32の他方側部分32bは、第2内周部32における周方向他方側R2の端部を含む。第2内周部32の一方側部分32aは、第2内周部32における径方向外側の端部、つまり径方向外端部を含む。第2内周部32の他方側部分32bは、第2内周部32における径方向内側の端部、つまり径方向内端部を含む。
【0071】
本実施形態では、中心軸Cに垂直な横断面視において周壁部21の内周面が正多角形状であるため、図3の横断面視で、第2直線L2に対して第2内周部32が傾斜する角度は、上述した角度θと同じ値である。具体的にこの横断面視において、前記角度は、第2内周部32の一方側部分32aと、第2直線L2との間の角度である。この横断面視で、複数の第2内周部32の各前記角度は、互いに等しい。
【0072】
複数の第1内周部31と複数の第2内周部32とは、周方向に交互に配置される。図3に示す横断面視において、第1内周部31と第2内周部32とは、互いに繋がる。第1内周部31と第2内周部32とは、周方向において互いに接続する。
周方向に隣り合う第1内周部31と第2内周部32とは、周壁部21の内周面の頂点上において互いに接続する。すなわち、第1内周部31の他方側部分31bと、第2内周部32の一方側部分32aとは、周壁部21の頂点上で繋がる。周方向に隣り合う第1内周部31と第2内周部32とは、二等分線B上において互いに接続する。すなわち、第1内周部31の一方側部分31aと、第2内周部32の他方側部分32bとは、二等分線B上で繋がる。
【0073】
各第2内周部32は、各第2外周部12と接触する。第2外周部12と第2内周部32とは、互いに接合される。第2外周部12の一方側部分12aと、第2内周部32の一方側部分32aとは、径方向に対向し、互いに接合されている。第2外周部12の他方側部分12bと、第2内周部32の他方側部分32bとは、径方向に対向し、互いに接合されている。
【0074】
筒部凹条部33は、図3に示す横断面視において互いに繋がる第1内周部31と第2内周部32との接続部分に位置し、軸方向に延びる。筒部凹条部33は、第1内周部31の他方側部分31bと第2内周部32の一方側部分32aとの接続部分に位置して径方向外側に窪む。
【0075】
本実施形態では筒部凹条部33が、中心軸Cに沿って軸方向に延びる。筒部凹条部33は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。図3の横断面視において複数の筒部凹条部33は、中心軸Cを中心として回転対称に配置される。つまり複数の筒部凹条部33は、周方向に等ピッチで配置される。
各筒部凹条部33は、各基材凸条部13と接触する。基材凸条部13と筒部凹条部33とは、互いに接合される。
【0076】
図1(b)に示すように、頂壁部22は、周壁部21の軸方向一方側の端部に接続する。頂壁部22は、中心軸Cを中心とする円板状である。頂壁部22の一対の板面は、軸方向を向く。頂壁部22の軸方向他方側を向く板面は、柱部2の軸方向一方側を向く端面2aと固定される。柱部2の軸方向一方側を向く端面2aは、中心軸Cに垂直な平面状である。柱部2の軸方向一方側を向く端面2aは、多角形状である。頂壁部22の軸方向他方側を向く板面は、柱部2の軸方向一方側を向く端面2aと接合されている。
【0077】
筒部端面23は、周壁部21の軸方向他方側の端部に位置し、軸方向他方側を向く。筒部端面23は、中心軸Cを中心とする円形環状である。本実施形態では筒部端面23が、中心軸Cに垂直な方向に拡がる平面状である。筒部端面23は、基材端面4と固定される。筒部端面23は、基材端面4と接合されている。
【0078】
切削工具50は、回転切削工具(転削工具)であり、具体的にはエンドミル、リーマおよびドリル等である。図4に示すように、本実施形態の切削工具50は、エンドミルである。
【0079】
切削工具50は、上述した硬質焼結体10の外周部に、軸方向に延びる切屑排出溝55および切刃(外周刃)56が設けられた刃部51と、刃部51と軸方向に接続されるシャンク52と、を備える。すなわち、刃部51は、硬質焼結体10の外周部に、研削砥石等により切屑排出溝55および切刃56が研削加工されることで製作される。つまり硬質焼結体10は、刃部51を製作するための素材であり、切削工具50の製造過程で製作される刃部51の中間体である。刃部51の外周面は、筒部20の周壁部21に配置される。
【0080】
シャンク52は、超硬合金製である。シャンク52は、軸方向に延びる円柱状である。刃部51とシャンク52とは、例えばAgロウを用いた真空下における誘導加熱でのロウ付けにより、互いに接合される。すなわち、刃部51の軸方向他方側を向く端面(大径部3の端面)3aと、シャンク52の軸方向一方側を向く端面52aとが、ロウ付けにより互いに接合されている。
【0081】
切削工具50は、シャンク52が図示しない工作機械の主軸等に着脱可能に取り付けられ、工作機械の主軸等により中心軸C回りに回転させられて、被削材を切削加工(転削加工)する。本実施形態の切削工具50は、被削材として、例えば、非鉄材料のチタン合金やアルミニウム合金、炭素繊維強化プラスチック(carbon fiber reinforced plastic:CFRP)、C-Cコンポジットと呼ばれる炭素繊維強化炭素複合材料等の難削材などを切削加工するのに適している。
【0082】
切屑排出溝55は、切削工具50の外周面から径方向内側に窪み、軸方向に延びる。本実施形態では切屑排出溝55が、切削工具50の軸方向一方側の端部(先端部)から軸方向他方側(後端側)へ向かうに従い工具回転方向Tとは反対方向へ向けて、螺旋状に延びる。
【0083】
切屑排出溝55は、切削工具50に1つ以上設けられる。本実施形態では切屑排出溝55が、複数設けられる。複数の切屑排出溝55は、周方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では複数の切屑排出溝55が、中心軸Cに関して回転対称位置となるように、切削工具50の外周に周方向に互いに等間隔をあけて(等ピッチで)配置される。なお、複数の切屑排出溝55は、周方向に互いに不等間隔をあけて(不等ピッチで)配置されてもよい。
【0084】
切刃56は、刃部51に配置されて軸方向に延びる。切刃56は、切屑排出溝55の工具回転方向Tを向く壁面と、刃部51の外周面と、の交差稜線に形成される。切刃56は、刃部51の軸方向一方側の端部(先端部)から軸方向他方側へ向かうに従い工具回転方向Tとは反対方向へ向けて、螺旋状に延びる。
【0085】
切刃56は、1つ以上設けられる。切刃56の数は、切屑排出溝55の数と同じである。本実施形態では切刃56が、複数設けられる。各切刃56は、各切屑排出溝55に沿って延びる。本実施形態では複数の切刃56が、中心軸Cに関して回転対称位置となるように、刃部51の外周に周方向に互いに等間隔をあけて(等ピッチで)配置される。なお、複数の切刃56は、周方向に互いに不等間隔をあけて(不等ピッチで)配置されてもよい。
【0086】
切刃56は、硬質焼結体10の筒部20の周壁部21に配置されて、刃部51の外周部の一部を構成する。
切屑排出溝55は、筒部20の周壁部21および柱部2にわたって配置される。切屑排出溝55の工具回転方向Tを向く壁面のうち、切刃56に隣接する外周部、つまり切刃56のすくい面は、筒部20の周壁部21に配置される。
刃部51の外周面のうち、切刃56に隣接する部分、つまり切刃56の逃げ面は、筒部20の周壁部21に配置される。
【0087】
図4に示すように径方向から見て、基材1Aの第1外周部11の他方側部分11bと、切刃56とは、交わる。径方向から見て、基材凸条部13と切刃56とは、交差する。本実施形態では第1外周部11の数が、切刃56の数以上である。基材凸条部13の数は、切刃56の数以上である。
【0088】
本実施形態の刃部51は、切屑排出溝55および切刃56以外に、ギャッシュ57と、底刃58と、を有する。ギャッシュ57は、切屑排出溝55の軸方向一方側の端部に位置する。ギャッシュ57は、径方向に延びる溝状である。ギャッシュ57は、複数の切屑排出溝55にそれぞれ設けられる。
底刃58は、刃部51の軸方向一方側の端部に配置されて、径方向に延びる。底刃58は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。底刃58は、筒部20の頂壁部22に配置されてもよい。
【0089】
以上説明した本実施形態の硬質焼結体用の基材1Aは、径方向外側に突出する基材凸条部13を有する。また、基材1Aと一体に焼結される筒部20には、基材凸条部13と接合される部分(筒部凹条部33)が設けられる。このため、基材1Aと筒部20とが焼結された硬質焼結体10を、切削工具50の刃部51に用い切削加工を行う際、切削工具50にかかる周方向の負荷を、基材凸条部13で受けることができる。これにより、切削加工時に切削工具50にかかる負荷のうち、工具の中心軸Cに対して垂直方向にかかる負荷が、基材1Aと筒部20との界面に沿って作用することを抑えることができ、つまり界面に沿うせん断力を低減させることができて、基材1Aと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制できる。したがって、この硬質焼結体10を用いて製作される切削工具50の耐欠損性を向上させることができ、工具寿命を延ばすことができる。
【0090】
また本実施形態では、基材凸条部13が、径方向外端に尖った角を有するので、上述した基材凸条部13による機能(作用)がより高められる。
【0091】
また本実施形態では、基材凸条部13が、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
この場合、基材1Aと筒部20とが焼結された硬質焼結体10を切削工具50の刃部51に用い、切削加工を行う際、切削工具50の周方向の複数箇所において、上述した基材凸条部13による機能が得られる。したがって、基材1Aと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを安定して抑制でき、切削工具50の耐欠損性をより向上させることができる。
【0092】
また本実施形態では、中心軸Cに垂直な横断面視において、複数の基材凸条部13が、中心軸Cを中心として回転対称に配置される。
この場合、基材1Aと筒部20とが焼結された硬質焼結体10を切削工具50の刃部51に用い、切削加工を行う際、各基材凸条部13に均等に負荷が作用する。すなわち、特定の基材凸条部13に大きな負荷が連続して作用することを抑制でき、基材1Aと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることをより安定して抑制できる。
【0093】
また本実施形態では、中心軸Cに垂直な横断面視で、柱部2が多角形状である。
この場合、本実施形態の構成を簡単に実現でき、製造が容易である。
【0094】
また本実施形態の硬質焼結体10および切削工具50は、中心軸Cに垂直な横断面視において、基材1Aの第1外周部11のうち一方側部分11aが、他方側部分11bよりも径方向内側に位置しており、つまり第1外周部11は周方向(周方向一方側R1)を向いている。またこの横断面視で、筒部20の第1内周部31のうち一方側部分31aが、他方側部分31bよりも径方向内側に位置しており、つまり第1内周部31は周方向(周方向他方側R2)を向いている。そして、周方向を向く第1外周部11と第1内周部31とが、互いに接合されている。
この硬質焼結体10を切削工具50の刃部51に用い切削加工を行う際、第1外周部11が工具回転方向Tを向く姿勢とすることにより、切削工具50にかかる周方向の負荷を、基材1Aの第1外周部11で受けることができる。これにより、切削加工時に切削工具50にかかる負荷のうち、工具の中心軸Cに対して垂直方向にかかる負荷が、基材1Aと筒部20との界面に沿って作用することを抑えることができ、つまり界面に沿うせん断力を低減させることができて、基材1Aと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制できる。したがって、この硬質焼結体10を用いて製作される切削工具50の耐欠損性を向上させることができ、工具寿命を延ばすことができる。
【0095】
また本実施形態では、第1外周部11が、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向内側に位置し、第1内周部31が、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向内側に位置する。
この場合、基材1Aの第1外周部11は、周方向一方側R1を向く。この硬質焼結体10を切削工具50の刃部51に用い切削加工を行う際、周方向一方側R1を工具回転方向Tとすることにより、切削工具50にかかる周方向の負荷を、基材1Aの第1外周部11で受けることができる。これにより、切削加工時に切削工具50にかかる負荷のうち、工具の中心軸Cに対して垂直方向にかかる負荷が、基材1Aと筒部20との界面に沿って作用することを抑えることができ、基材1Aと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制できる。
【0096】
また本実施形態の硬質焼結体10は、基材1Aが、径方向外側に突出する基材凸条部13を有し、この基材凸条部13に、筒部20の筒部凹条部33が接合されている。このため、硬質焼結体10を切削工具50の刃部51に用い、切削加工を行う際、切削工具50にかかる周方向の負荷を基材凸条部13で受けることができる。これにより、切削加工時に切削工具50にかかる負荷のうち、工具の中心軸Cに対して垂直方向にかかる負荷が、基材1Aと筒部20との界面に沿って作用することを抑えることができ、基材1Aと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることをより抑制できる。
【0097】
また本実施形態では、中心軸Cに垂直な横断面視で、第1外周部11の径方向外端部(基材凸条部13)上を通る第2直線L2(柱部2の外接円の接線)に対して、第1外周部11が傾斜する角度θが、4°以上である。
中心軸Cに垂直な横断面視において第2直線L2に対して第1外周部11が傾斜する角度θが、4°以上であると、基材1Aと筒部20とが焼結された硬質焼結体10を切削工具50の刃部51に用い、切削加工を行う際、第1外周部11が工具回転方向Tを向く姿勢とすることにより、切削工具50にかかる周方向の負荷を、基材1Aの第1外周部11で安定して受けることができる。これにより、切削加工時に切削工具50にかかる負荷のうち、工具の中心軸Cに対して垂直方向にかかる負荷が、基材1Aと筒部20との界面に沿って作用することを抑えることができ、基材1Aと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることをより抑制できる。なお、切削工具50にかかる周方向の負荷を第1外周部11でより安定して受けるには、角度θが5°以上であることが望ましい。
【0098】
また本実施形態のように、第1外周部11が、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる場合、中心軸Cに垂直な横断面視で、第2直線L2に対して第1外周部11が傾斜する角度θが60°以下であると、基材1Aにおける第1外周部11近傍の肉厚が確保され、基材1Aの剛性が確保される。
【0099】
また本実施形態では、中心軸Cに垂直な横断面視において、複数の第1外周部11の各角度θが、互いに等しい。
この場合、基材1Aと筒部20とが焼結された硬質焼結体10を切削工具50の刃部51に用い、切削加工を行う際、切削工具50の周方向の複数箇所において、上述した第1外周部11による機能が得られ、かつ、各第1外周部11に均等に負荷が作用する。すなわち、特定の第1外周部11に大きな負荷が連続して作用することを抑制でき、基材1Aと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることをより安定して抑制できる。
【0100】
また本実施形態では、硬質焼結体用の基材1Aのヤング率が300GPa以上であり、焼結後の筒部20のヤング率が600GPa以上である。
硬質焼結体用の基材1Aのヤング率が300GPa以上であると、この基材1Aを本実施形態のようにエンドミル等の切削工具50に用いた場合に、安定して剛性を確保できる。
また、筒部20のヤング率が600GPa以上であると、この筒部20を本実施形態のようにエンドミル等の切削工具50に用いた場合に、安定して耐摩耗性を確保できる。
【0101】
また本実施形態の切削工具50は、径方向から見て、第1外周部11の他方側部分11b(基材凸条部13)と切刃56とが交わる。
この場合、切削工具50で切削加工を行う際、切刃56にかかる周方向の負荷を、基材1Aの第1外周部11でより受けやすくすることができる。このため、基材1Aと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制でき、切削工具50の耐欠損性を向上させることができ、工具寿命を延ばすことができる。
【0102】
また本実施形態では、第1外周部11の数が、切刃56の数以上である。
この場合、径方向から見て、切刃56に第1外周部11が交差して配置されやすくなる。切削工具50で切削加工を行う際、各切刃56にかかる周方向の負荷を、基材1Aの各第1外周部11で安定して受けやすくすることができる。このため、基材1Aと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制でき、切削工具50の耐欠損性を向上させることができ、工具寿命を延ばすことができる。
【0103】
図5は、本実施形態の第1変形例の硬質焼結体用の基材1B(1)を示す。この第1変形例では、図5に示す中心軸Cに垂直な横断面視で、基材凸条部13が、凸曲線状である。すなわちこの横断面視で、基材凸条部13は、径方向外側に突出する凸曲線状である。この横断面視で、第1外周部11の他方側部分11bのうち周方向他方側R2の端部は、凸曲線状であり、第2外周部12の一方側部分12aのうち周方向一方側R1の端部は、凸曲線状である。
【0104】
図6は、本実施形態の第2変形例の硬質焼結体用の基材1C(1)を示す。この第2変形例では、図6に示す中心軸Cに垂直な横断面視で、第1外周部11が、凹曲線状であり、第2外周部12が、凹曲線状である。すなわちこの横断面視で、第1外周部11は、径方向内側に窪む凹曲線状であり、第2外周部12は、径方向内側に窪む凹曲線状である。
第1外周部11と第2外周部12とは、柱部2の周方向に隣り合う一対の頂点(基材凸条部13)を通る1つの凹曲線上に位置し、周方向に互いに隣り合って配置される。
【0105】
第1外周部11は、周方向の単位長さあたりの径方向への変位量(つまり周方向に対する傾き)が、周方向他方側R2へ向かうに従い大きくなる。すなわち、第1外周部11のうち周方向他方側R2の端部を含む他方側部分11bにおける周方向の単位長さあたりの径方向への変位量は、第1外周部11のうち周方向一方側R1の端部を含む一方側部分11aにおける周方向の単位長さあたりの径方向への変位量よりも大きい。
【0106】
第2外周部12は、周方向の単位長さあたりの径方向への変位量が、周方向一方側R1へ向かうに従い大きくなる。すなわち、第2外周部12のうち周方向一方側R1の端部を含む一方側部分12aにおける周方向の単位長さあたりの径方向への変位量は、第2外周部12のうち周方向他方側R2の端部を含む他方側部分12bにおける周方向の単位長さあたりの径方向への変位量よりも大きい。
【0107】
図7は、本実施形態の第3変形例の硬質焼結体用の基材1D(1)を示す。この第3変形例では、図7に示す中心軸Cに垂直な横断面視で、第1外周部11が、凹曲線状であり、第2外周部12が、凹曲線状である。またこの横断面視で、基材凸条部13が、凸曲線状である。
【0108】
図5の基材1Bおよび図7の基材1Dは、中心軸Cに垂直な横断面視で、基材凸条部13が凸曲線状である。
この場合、基材1と筒部20とが焼結された硬質焼結体10を切削工具50の刃部51に用い、切削加工を行う際、基材凸条部13において先端(径方向外端)に荷重が集中することを抑えられる。このため、基材凸条部13近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制しやすくできる。
【0109】
図6の基材1Cおよび図7の基材1Dは、第1外周部11の周方向の単位長さあたりの径方向への変位量が、周方向他方側R2へ向かうに従い大きくなる。
この場合、第1外周部11のうち周方向他方側R2の端部を含む他方側部分11bが、周方向一方側R1へ向けて正対しやすくなる。このため、基材1と筒部20とが焼結された硬質焼結体10を切削工具50の刃部51に用い、切削加工を行う際、第1外周部11の他方側部分11bにおいて荷重をより受けやすくすることができる。したがって、基材1と筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを安定して抑制でき、切削工具50の耐欠損性をより向上させることができる。
【0110】
図8は、本実施形態の第4変形例の硬質焼結体用の基材1E(1)を示す。図9は、本実施形態の第5変形例の硬質焼結体用の基材1F(1)を示す。図10は、本実施形態の第6変形例の硬質焼結体用の基材1G(1)を示す。
第4~第6変形例では、柱部2が、基材凹条部14を有する。基材凹条部14は、図8図10に示す中心軸Cに垂直な横断面視において、互いに繋がる第1外周部11と第2外周部12との接続部分に位置し、軸方向に延びる。基材凹条部14は、第1外周部11の一方側部分11aと第2外周部12の他方側部分12bとの接続部分に位置して径方向内側に窪む。特に図示しないが、基材凹条部14は、中心軸Cに沿って軸方向に延びる。
【0111】
基材凹条部14は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。基材凹条部14の数は、基材凸条部13の数と同じであり、具体的には8つである。図8図10の各横断面視において、複数の基材凹条部14は、中心軸Cを中心として回転対称に配置される。つまり複数の基材凹条部14は、周方向に等ピッチで配置される。基材凹条部14は、二等分線B上に位置する(図3参照)。
【0112】
特に図示しないが、基材1E、1F、1Gと一体に焼結される各筒部20は、筒部凸条部を有する(図21に示す筒部凸条部34を参照)。筒部凸条部は、中心軸Cに垂直な横断面視において互いに繋がる第1内周部31と第2内周部32との接続部分に位置し、軸方向に延びる。筒部凸条部は、第1内周部31の一方側部分31aと第2内周部32の他方側部分32bとの接続部分に位置して径方向内側に突出する。筒部凸条部は、中心軸Cに沿って軸方向に延びる。
【0113】
筒部凸条部は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。複数の筒部凸条部は、中心軸Cを中心として回転対称に配置される。つまり複数の筒部凸条部は、周方向に等ピッチで配置される。筒部凸条部は、二等分線B上に位置する。
筒部凸条部は、基材凹条部14と接触する。基材凹条部14と筒部凸条部とは、互いに接合される。
【0114】
図8図10の基材1E、1F、1Gによれば、基材凹条部14が設けられることで、第1外周部11を周方向へ向けて正対しやすくすることができる。このため、基材1と筒部20とが焼結された硬質焼結体10を切削工具50の刃部51に用い、切削加工を行う際、第1外周部11において荷重をより受けやすくすることができる。また基材1において、基材凸条部13や第1外周部11を配置する自由度が増し、各種の切削工具50に用いられる各種の硬質焼結体10に容易に対応可能である。
【0115】
図11は、本実施形態の第7変形例の硬質焼結体用の基材1H(1)を示す。この変形例では、図11に示す中心軸Cに垂直な横断面視で、柱部2が5角形状であり、具体的には正5角形状である。つまり柱部2の頂点(基材凸条部13)の数が、8つ未満である。
この場合、中心軸Cに垂直な横断面視で柱部2が例えば8角形状である場合と比べて、各第1外周部11を周方向へ向けてより正対しやすくすることができる。
【0116】
図12は、本実施形態の第8変形例の硬質焼結体用の基材1I(1)を示す。図13は、本実施形態の第9変形例の硬質焼結体用の基材1J(1)を示す。
第8変形例および第9変形例では、柱部2が基材凹条部14を有しており、基材凹条部14の数が、8つ未満である。
この場合、基材凸条部13や第1外周部11を配置する自由度が増し、各種の切削工具50に用いられる各種の硬質焼結体10に対応可能である。
【0117】
図14は、本実施形態の第10変形例の硬質焼結体10およびその硬質焼結体用の基材1K(1)を示す。この第10変形例では、柱部2が、第3外周部15と、第4外周部16と、を有する。また周壁部21(筒部20)が、第3内周部35と、第4内周部36と、を有する。
【0118】
第3外周部15は、柱部2の外周部に配置され、柱部2の外周部の一部を構成する。第3外周部15は、柱部2の外周面の周方向の一部を構成する。第3外周部15は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
図14に示す横断面視で、第3外周部15は、周方向または径方向に延びる。本実施形態では各第3外周部15が、周方向に延びる。具体的に各第3外周部15は、第1外周部11の一方側部分11aの周方向一方側R1の端部から周方向一方側R1へ向けて、それぞれ延びる。第3外周部15は、周方向において第1外周部11の一方側部分11aの周方向一方側R1の端部と二等分線Bとの間に位置する。第3外周部15は、第1外周部11の一方側部分11aから周方向一方側R1へ向けて、二等分線Bまで延びる。図14に示す横断面視において、本実施形態では第3外周部15が、直線状である。第3外周部15は、周方向に隣り合う第1外周部11の一方側部分11aの周方向一方側R1の端部と第2外周部12の他方側部分12bの周方向他方側R2の端部とを結ぶ直線上に位置する。
【0119】
図14の横断面視で、第3外周部15のうち一方側部分(第1端部)15aは、他方側部分(第2端部)15bよりも径方向内側に位置する。第3外周部15の一方側部分15aは、二等分線B上に位置する部分を含む。第3外周部15の他方側部分15bは、第1外周部11の一方側部分11aと接続する。第3外周部15は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向内側に位置する。つまり第3外周部15は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向内側へ向けて延びる。
【0120】
第3外周部15の一方側部分15aは、第3外周部15における周方向一方側R1の端部を含む。第3外周部15の他方側部分15bは、第3外周部15における周方向他方側R2の端部を含む。第3外周部15の一方側部分15aは、第3外周部15における径方向内側の端部、つまり径方向内端部を含む。第3外周部15の他方側部分15bは、第3外周部15における径方向外側の端部、つまり径方向外端部を含む。
【0121】
第1外周部11の周方向の単位長さあたりの径方向への変位量(つまり周方向に対する傾き)は、第3外周部15の周方向の単位長さあたりの径方向への変位量よりも大きい。
【0122】
第4外周部16は、柱部2の外周部に配置され、柱部2の外周部の一部を構成する。第4外周部16は、柱部2の外周面の周方向の一部を構成する。第4外周部16は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
図14に示す横断面視で、第4外周部16は、周方向または径方向に延びる。本実施形態では各第4外周部16が、周方向に延びる。具体的に各第4外周部16は、第2外周部12の他方側部分12bの周方向他方側R2の端部から周方向他方側R2へ向けて、それぞれ延びる。第4外周部16は、周方向において第2外周部12の他方側部分12bの周方向他方側R2の端部と二等分線Bとの間に位置する。第4外周部16は、第2外周部12の他方側部分12bから周方向他方側R2へ向けて、二等分線Bまで延びる。図14に示す横断面視において、本実施形態では第4外周部16が、直線状である。第4外周部16は、周方向に隣り合う第1外周部11の一方側部分11aの周方向一方側R1の端部と第2外周部12の他方側部分12bの周方向他方側R2の端部とを結ぶ直線上に位置する。すなわち、本実施形態では、周方向に隣り合う第1外周部11の一方側部分11aと第2外周部12の他方側部分12bとを結ぶ直線上に、第3外周部15と第4外周部16とが、二等分線Bを中心として周方向両側に隣り合って配置される。
【0123】
図14の横断面視で、第4外周部16のうち一方側部分(第1端部)16aは、他方側部分(第2端部)16bよりも径方向外側に位置する。第4外周部16の一方側部分16aは、第2外周部12の他方側部分12bと接続する。第4外周部16の他方側部分16bは、二等分線B上に位置する部分を含む。第4外周部16は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向外側に位置する。つまり第4外周部16は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向外側へ向けて延びる。
【0124】
第4外周部16の一方側部分16aは、第4外周部16における周方向一方側R1の端部を含む。第4外周部16の他方側部分16bは、第4外周部16における周方向他方側R2の端部を含む。第4外周部16の一方側部分16aは、第4外周部16における径方向外側の端部、つまり径方向外端部を含む。第4外周部16の他方側部分16bは、第4外周部16における径方向内側の端部、つまり径方向内端部を含む。
【0125】
図14に示す横断面視において、第3外周部15と第4外周部16とは、互いに繋がる。第3外周部15と第4外周部16とは、周方向において互いに接続する。
周方向に隣り合う第3外周部15と第4外周部16とは、二等分線B上において互いに接続する。すなわち、第3外周部15の一方側部分15aと、第4外周部16の他方側部分16bとは、二等分線B上で繋がる。
【0126】
第2外周部12の周方向の単位長さあたりの径方向への変位量は、第4外周部16の周方向の単位長さあたりの径方向への変位量よりも大きい。
【0127】
第3内周部35は、周壁部21の内周部に配置される。すなわち第3内周部35は、筒部20の内周部に配置され、筒部20の内周部の一部を構成する。第3内周部35は、周壁部21(筒部20)の内周面の周方向の一部を構成する。第3内周部35は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
図14に示す横断面視で、第3内周部35は、周方向または径方向に延びる。本実施形態では各第3内周部35が、周方向に延びる。具体的に各第3内周部35は、第1内周部31の一方側部分31aの周方向一方側R1の端部から周方向一方側R1へ向けて、それぞれ延びる。第3内周部35は、周方向において、第1内周部31の一方側部分31aの周方向一方側R1の端部と二等分線Bとの間に位置する。第3内周部35は、第1内周部31の一方側部分31aから周方向一方側R1へ向けて、二等分線Bまで延びる。図14に示す横断面視において、本実施形態では第3内周部35が、直線状である。第3内周部35は、周方向に隣り合う第1内周部31の一方側部分31aの周方向一方側R1の端部と第2内周部32の他方側部分32bの周方向他方側R2の端部とを結ぶ直線上に位置する。
【0128】
図14の横断面視で、第3内周部35のうち一方側部分(第1端部)35aは、他方側部分(第2端部)35bよりも径方向内側に位置する。第3内周部35の一方側部分35aは、二等分線B上に位置する部分を含む。第3内周部35の他方側部分35bは、第1内周部31の一方側部分31aと接続する。第3内周部35は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向内側に位置する。つまり第3内周部35は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向内側へ向けて延びる。
【0129】
第3内周部35の一方側部分35aは、第3内周部35における周方向一方側R1の端部を含む。第3内周部35の他方側部分35bは、第3内周部35における周方向他方側R2の端部を含む。第3内周部35の一方側部分35aは、第3内周部35における径方向内側の端部、つまり径方向内端部を含む。第3内周部35の他方側部分35bは、第3内周部35における径方向外側の端部、つまり径方向外端部を含む。
【0130】
第1内周部31の周方向の単位長さあたりの径方向への変位量(つまり周方向に対する傾き)は、第3内周部35の周方向の単位長さあたりの径方向への変位量よりも大きい。
【0131】
各第3内周部35は、各第3外周部15と接触する。第3外周部15と第3内周部35とは、互いに接合される。第3外周部15の一方側部分15aと、第3内周部35の一方側部分35aとは、径方向に対向し、互いに接合されている。第3外周部15の他方側部分15bと、第3内周部35の他方側部分35bとは、径方向に対向し、互いに接合されている。
【0132】
第4内周部36は、周壁部21の内周部に配置される。すなわち第4内周部36は、筒部20の内周部に配置され、筒部20の内周部の一部を構成する。第4内周部36は、周壁部21の内周面の周方向の一部を構成する。第4内周部36は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
図14に示す横断面視で、第4内周部36は、周方向または径方向に延びる。本実施形態では各第4内周部36が、周方向に延びる。具体的に各第4内周部36は、第2内周部32の他方側部分32bの周方向他方側R2の端部から周方向他方側R2へ向けて、それぞれ延びる。第4内周部36は、周方向において、第2内周部32の他方側部分32bの周方向他方側R2の端部と二等分線Bとの間に位置する。第4内周部36は、第2内周部32の他方側部分32bから周方向他方側R2へ向けて、二等分線Bまで延びる。図14に示す横断面視において、本実施形態では第4内周部36が、直線状である。第4内周部36は、周方向に隣り合う第1内周部31の一方側部分31aの周方向一方側R1の端部と第2内周部32の他方側部分32bの周方向他方側R2の端部とを結ぶ直線上に位置する。すなわち、本実施形態では、周方向に隣り合う第1内周部31の一方側部分31aと第2内周部32の他方側部分32bとを結ぶ直線上に、第3内周部35と第4内周部36とが、二等分線Bを中心として周方向両側に隣り合って配置される。
【0133】
図14の横断面視で、第4内周部36のうち一方側部分(第1端部)36aは、他方側部分(第2端部)36bよりも径方向外側に位置する。第4内周部36の一方側部分36aは、第2内周部32の他方側部分32bと接続する。第4内周部36の他方側部分36bは、二等分線B上に位置する部分を含む。第4内周部36は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向外側に位置する。つまり第4内周部36は、周方向一方側R1へ向かうに従い径方向外側へ向けて延びる。
【0134】
第4内周部36の一方側部分36aは、第4内周部36における周方向一方側R1の端部を含む。第4内周部36の他方側部分36bは、第4内周部36における周方向他方側R2の端部を含む。第4内周部36の一方側部分36aは、第4内周部36における径方向外側の端部、つまり径方向外端部を含む。第4内周部36の他方側部分36bは、第4内周部36における径方向内側の端部、つまり径方向内端部を含む。
【0135】
図14に示す横断面視において、第3内周部35と第4内周部36とは、互いに繋がる。第3内周部35と第4内周部36とは、周方向において互いに接続する。
周方向に隣り合う第3内周部35と第4内周部36とは、二等分線B上において互いに接続する。すなわち、第3内周部35の一方側部分35aと、第4内周部36の他方側部分36bとは、二等分線B上で繋がる。
【0136】
第2内周部32の周方向の単位長さあたりの径方向への変位量は、第4内周部36の周方向の単位長さあたりの径方向への変位量よりも大きい。
【0137】
各第4内周部36は、各第4外周部16と接触する。第4外周部16と第4内周部36とは、互いに接合される。第4外周部16の一方側部分16aと、第4内周部36の一方側部分36aとは、径方向に対向し、互いに接合されている。第4外周部16の他方側部分16bと、第4内周部36の他方側部分36bとは、径方向に対向し、互いに接合されている。
【0138】
この第10変形例によれば、基材1Kが第3外周部15および第4外周部16を有するので、例えば図13に示す基材1Jに比べて、柱部2の肉厚を確保でき、柱部2の剛性が確保される。そして、第1外周部11を周方向へ向けて正対しやすくすることができる。また、基材1Kと筒部20とが焼結された硬質焼結体10を切削工具50の刃部51に用い、切削加工を行う際、第1外周部11および第3外周部15により、荷重を受けやすくすることができる。したがって、基材1Kと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを安定して抑制でき、切削工具50の耐欠損性をより向上させることができる。
【0139】
図15(a)および図15(b)は、本実施形態の第11変形例の硬質焼結体10およびその硬質焼結体用の基材1L(1)を示す。この第11変形例では、図15(a)に示す中心軸Cに垂直な横断面視で、基材1Lの柱部2が16角形状であり、具体的には正16角形状である。つまり柱部2の頂点(基材凸条部13)の数が、8つを超える。
この場合、中心軸Cに垂直な横断面視で柱部2が例えば8角形状である場合と比べて、第1外周部11および基材凸条部13を切刃56の直下へより配置しやすくすることができる。つまり径方向から見て、第1外周部11および基材凸条部13と、切刃56とが、より交差しやすくなる。これにより、切削加工時に、第1外周部11および基材凸条部13において負荷をより受けやすくすることができる。したがって、基材1Lと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを安定して抑制でき、切削工具50の耐欠損性をより向上させることができる。
【0140】
図16は、本実施形態の第12変形例の硬質焼結体用の基材1M(1)を示す。この第12変形例では、基材凸条部13が、軸方向へ向かうに従い周方向へ向けて延びる。すなわち基材凸条部13は、中心軸Cを中心として螺旋状にねじれて延びる。具体的には基材凸条部13が、軸方向一方側へ向かうに従い周方向一方側R1へ向けて延びる。
特に図示しないが、この基材1Mと一体に焼結される筒部20は、周壁部21に筒部凹条部33を有する。筒部凹条部33は、軸方向へ向かうに従い周方向へ向けて延びる。すなわち筒部凹条部33は、中心軸Cを中心として螺旋状にねじれて延びる。具体的には筒部凹条部33が、軸方向一方側へ向かうに従い周方向一方側R1へ向けて延びる。
【0141】
この第12変形例によれば、例えば、切削工具50がリーマ等であり、切刃56が中心軸Cに沿って延びるいわゆる直刃であっても、径方向から見て、第1外周部11の他方側部分11b(基材凸条部13)と、切刃56とを安定して交差させやすくすることができる。このため、切削工具50で切削加工を行う際、切刃56にかかる周方向の負荷を、基材1Mの第1外周部11および基材凸条部13でより受けやすくすることができる。基材1Mと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制でき、切削工具50の耐欠損性を向上させることができ、工具寿命を延ばすことができる。
【0142】
なおこの第12変形例を、中心軸Cを中心に螺旋状にねじれて延びる切刃56を有するエンドミル等の切削工具50に用いる場合は、基材1Mの第1外周部11の他方側部分11b(基材凸条部13)が、切刃56の直下、つまり径方向から見て切刃56と略重なる位置に配置されて、切刃56と等しいねじれ角で中心軸Cを中心に螺旋状にねじれて延びる構成としてもよい。
また、基材凸条部13がねじれる向きを、切刃56がねじれる向きとは反対方向としてもよい。すなわち、切刃56が軸方向一方側へ向かうに従い周方向一方側R1に向けて延びる場合には、基材凸条部13が、軸方向一方側へ向かうに従い周方向他方側R2に向けて延びる構成としてもよい。この場合、径方向から見て、第1外周部11の他方側部分11b(基材凸条部13)と切刃56とが、より安定して交差させられる。
【0143】
図17(a)および図17(b)は、本実施形態の第13変形例の硬質焼結体10およびその硬質焼結体用の基材1N(1)を示す。この第13変形例では、基材1Nが、小径部(柱部)2を有し、大径部3および基材端面4を有さない。柱部2の軸方向他方側を向く端面2bは、軸方向他方側に露出される。柱部2の軸方向他方側を向く端面2bは、中心軸Cに垂直な平面状である。柱部2の軸方向他方側を向く端面2bは、多角形状である。筒部20の筒部端面23は、柱部2の軸方向他方側を向く端面2bと面一に配置される。筒部端面23は、軸方向他方側に露出される。
【0144】
図18(a)および図18(b)は、本実施形態の第14変形例の硬質焼結体10およびその硬質焼結体用の基材1P(1)を示す。この第14変形例では、筒部20が、周壁部21および筒部端面23を有し、頂壁部22を有さない。柱部2の軸方向一方側を向く端面2aは、軸方向一方側に露出される。周壁部21の軸方向一方側を向く端面21aは、中心軸Cを中心とする円形環状である。周壁部21の軸方向一方側を向く端面21aは、中心軸Cに垂直な平面状である。周壁部21の軸方向一方側を向く端面21aは、柱部2の軸方向一方側を向く端面2aと面一に配置される。周壁部21の軸方向一方側を向く端面21aは、軸方向一方側に露出される。
【0145】
図19(a)および図19(b)は、本実施形態の第15変形例の硬質焼結体10およびその硬質焼結体用の基材1Q(1)を示す。この第15変形例では、筒部20が、柱部2(基材1Q)を径方向外側から覆い、かつ軸方向両側から覆う。筒部20は、周壁部21と、頂壁部22と、底壁部24と、を有する。底壁部24は、周壁部21の軸方向他方側の端部に接続する。底壁部24は、中心軸Cを中心とする円板状である。底壁部24の一対の板面は、軸方向を向く。底壁部24の軸方向一方側を向く板面は、柱部2の軸方向他方側を向く端面2bと固定される。底壁部24の軸方向一方側を向く板面は、柱部2の軸方向他方側を向く端面2bと接合されている。
【0146】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の硬質焼結体30および切削工具50について、図20を参照して説明する。なお第2実施形態では、第1実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0147】
本実施形態の硬質焼結体30は、基材1R(1)と、基材1Rと一体に焼結された筒部20と、を備える。
基材1Rは、柱部2を有する。柱部2は、1つの第1外周部11と、1つの第2外周部12と、を有する。筒部20は、周壁部21を有する。周壁部21は、1つの第1内周部31と、1つの第2内周部32と、を有する。
第1外周部11と第1内周部31とは、互いに接合される。第2外周部12と第2内周部32とは、互いに接合される。
【0148】
本実施形態の切削工具50は、上述した硬質焼結体30の外周部に、軸方向に延びる切屑排出溝55および切刃56が設けられた刃部51と、刃部51と軸方向に接続されるシャンク52と、を備える(図4を参照)。
【0149】
本実施形態によれば、硬質焼結体30を切削工具50の刃部51に用い切削加工を行う際、第1外周部11が工具回転方向Tを向く姿勢とすることにより、切削工具50にかかる周方向の負荷を、基材1Rの第1外周部11で受けることができる。これにより、切削加工時に切削工具50にかかる負荷のうち、工具の中心軸Cに対して垂直方向にかかる負荷が、基材1Rと筒部20との界面に沿って作用することを抑えることができ、つまり界面に沿うせん断力を低減させることができて、基材1Rと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制できる。したがって、この硬質焼結体30を用いて製作される切削工具50の耐欠損性を向上させることができ、工具寿命を延ばすことができる。
【0150】
図21は、本実施形態の第1変形例の硬質焼結体30およびその硬質焼結体用の基材1S(1)を示す。この第1変形例では、基材1Sの柱部2が、周方向に互いに間隔をあけて配置される複数の第1外周部11と、周方向に互いに間隔をあけて配置される複数の第2外周部12と、周方向に互いに間隔をあけて配置される複数の基材凹条部14と、を有する。筒部20の周壁部21は、周方向に互いに間隔をあけて配置される複数の第1内周部31と、周方向に互いに間隔をあけて配置される複数の第2内周部32と、周方向に互いに間隔をあけて配置される複数の筒部凸条部34と、を有する。
各第1外周部11と各第1内周部31とは、互いに接合される。各第2外周部12と各第2内周部32とは、互いに接合される。各基材凹条部14と各筒部凸条部34とは、互いに接合される。
【0151】
この第1変形例によれば、基材1Sと筒部20とが焼結された硬質焼結体30を切削工具50の刃部51に用い、切削加工を行う際、切削工具50の周方向の複数箇所において、上述した第1外周部11による機能が得られる。したがって、基材1Sと筒部20との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを安定して抑制でき、切削工具50の耐欠損性をより向上させることができる。
また基材凹条部14が設けられることで、第1外周部11を周方向へ向けて正対しやすくすることができる。このため、硬質焼結体30を切削工具50の刃部51に用い切削加工を行う際、第1外周部11において荷重をより受けやすくすることができる。
【0152】
図22は、本実施形態の第2変形例の硬質焼結体30およびその硬質焼結体用の基材1T(1)を示す。この第2変形例では、基材1Tの柱部2が、周方向に互いに間隔をあけて配置される複数の溝部17と、複数の第1外周部11と、を有する。溝部17は、柱部2の外周面から径方向内側に窪み、軸方向に延びる。第1外周部11は、溝部17の周方向一方側R1を向く壁面に配置される。第1外周部11は、柱部2の外周部(つまり径方向外端部)に配置され、柱部2の外周部の一部を構成する。
【0153】
図22に示す中心軸Cに垂直な横断面視で、第1外周部11のうち一方側部分(第1端部)11aは、他方側部分(第2端部)11bよりも径方向内側に位置する。第1外周部11の他方側部分11bは、柱部2の外周面上に位置する部分を含む。第1外周部11は、周方向他方側R2へ向かうに従い径方向内側に位置する。つまり第1外周部11は、周方向他方側R2へ向かうに従い径方向内側へ向けて延びる。
【0154】
第1外周部11の一方側部分11aは、第1外周部11における周方向他方側R2の端部を含む。第1外周部11の他方側部分11bは、第1外周部11における周方向一方側R1の端部を含む。第1外周部11の一方側部分11aは、第1外周部11における径方向内側の端部、つまり径方向内端部を含む。第1外周部11の他方側部分11bは、第1外周部11における径方向外側の端部、つまり径方向外端部を含む。
【0155】
筒部20の周壁部21は、周方向に互いに間隔をあけて配置される複数の挿入部37と、複数の第1内周部31と、を有する。挿入部37は、周壁部21の内周面から径方向内側に突出し、軸方向に延びる。各挿入部37は、各溝部17内に配置される。各挿入部37は、各溝部17と接合される。第1内周部31は、挿入部37の周方向他方側R2を向く壁面に配置される。第1内周部31は、筒部20の内周部(つまり径方向内端部)に配置され、筒部20の内周部の一部を構成する。
【0156】
図22に示す中心軸Cに垂直な横断面視で、第1内周部31のうち一方側部分(第1端部)31aは、他方側部分(第2端部)31bよりも径方向内側に位置する。第1内周部31の他方側部分31bは、周壁部21の内周面上に位置する部分を含む。第1内周部31は、周方向他方側R2へ向かうに従い径方向内側に位置する。つまり第1内周部31は、周方向他方側R2へ向かうに従い径方向内側へ向けて延びる。
【0157】
第1内周部31の一方側部分31aは、第1内周部31における周方向他方側R2の端部を含む。第1内周部31の他方側部分31bは、第1内周部31における周方向一方側R1の端部を含む。第1内周部31の一方側部分31aは、第1内周部31における径方向内側の端部、つまり径方向内端部を含む。第1内周部31の他方側部分31bは、第1内周部31における径方向外側の端部、つまり径方向外端部を含む。
第1外周部11と第1内周部31とは、互いに接合される。
【0158】
図22の横断面視で、第1外周部11の径方向外端部および中心軸Cを通り径方向に延びる第1直線L1と直交し第1外周部11の径方向外端部上を通る第2直線L2に対して、第1外周部11が傾斜する角度θ´は、170°以下である。角度θ´は、第2直線L2から周方向他方側R2の回転方向に第1外周部11が傾斜する角度である。この横断面視で、複数の第1外周部11の各角度θ´は、互いに等しい。
なお、この第2変形例では第1外周部11が径方向内側を向いており、具体的には第1外周部11が、第1外周部11の径方向外端部から周方向他方側R2へ向けて延びており、この場合の角度θ´は、図22の横断面視において、第2直線L2と第1外周部11とが交差して形成される鋭角および鈍角のうち、鈍角の角度を指す。
中心軸Cに垂直な横断面視において第2直線L2に対して第1外周部11が傾斜する角度θ´が、170°以下であると、基材1Tにおける第1外周部11近傍の肉厚が確保され、基材1Tの剛性が確保される。例えば、基材1Tが部分的に薄肉になって亀裂の起点となるような不具合が抑えられる。このため、第1外周部11による機能が安定する。
【0159】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0160】
前述の実施形態では、切削工具50がエンドミルである例を挙げたが、これに限らない。切削工具50は、エンドミル以外のリーマ、ドリルおよびそれ以外の回転切削工具等であってもよい。例えば、切削工具50がドリルの場合、刃部51は、切屑排出溝55および切刃56以外に、先端刃、シンニング、マージンおよび二番取り面等を備える。
【0161】
前述の実施形態および変形例では、図3に示すように第1外周部11が径方向外側を向く場合には、角度θが90°未満であり、図22に示すように第1外周部11が径方向内側を向く場合には、角度θ´が90°を超えるが、これらに限らない。すなわち、中心軸Cに垂直な横断面視で、第1外周部11の径方向外端部および中心軸Cを通り径方向に延びる第1直線L1と直交し第1外周部11の径方向外端部上を通る第2直線L2に対して、第1外周部11が傾斜する角度は、90°でもよい。なお前記角度は、第2直線L2に対して第1外周部11が交差する角度と言い換えてもよい。この場合、中心軸Cに垂直な横断面視で、第1外周部11は、径方向に沿って延びる。
【0162】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0163】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されない。
【0164】
本発明の実施例、および、比較例として、硬質焼結体をそれぞれ用意した。硬質焼結体の基材は超硬合金製であり、筒部はPCD製である。実施例および比較例ともに、焼結後の基材のヤング率は、570GPaであり、筒部のヤング率は、920GPaである。
本発明の実施例では、硬質焼結体10の基材1は、中心軸Cに垂直な横断面視で、柱部2が正多角形状である。柱部2の中心軸Cから基材凸条部13(第1外周部11の径方向外端部)までの距離、つまり半径は、5mmとし、中心軸Cから筒部20の外周面までの距離つまり半径は、7mmとした。柱部2の横断面形状、第1外周部11の数および角度θについては、下記表1の通りとした。基材1と筒部20とを一体に焼結し製作した硬質焼結体10に、超硬合金製のシャンク52をAgロウ材を用いてロウ付けにより接合した。この硬質焼結体10に研削加工を施して、3枚刃エンドミルの刃部51とした。なお刃部51の直径(刃径)は、12mmとした。
【0165】
比較例では、硬質焼結体の基材は、中心軸に垂直な横断面視で、柱部が円形状である。つまり比較例の基材は、柱部が円柱状であり、第1外周部11を有さない。柱部の半径は5mmとし、筒部の半径は7mmとした。基材と筒部とを一体に焼結し製作した硬質焼結体に、超硬合金製のシャンクをAgロウ材を用いてロウ付けにより接合した。この硬質焼結体に上記実施例と同様に研削加工を施して、3枚刃エンドミルの刃部とした。刃部の直径(刃径)は、12mmとした。
【0166】
実施例および比較例ともに、下記の切削条件にて切削試験を行った。
<切削条件>
・被削材:CFRP(板厚5mm)
・切削速度:300m/min
・送り速度:955mm/min
・切り込み量:5mm
・乾式切削(エアブロー)
そして一定の切削長毎に、基材と筒部との界面や筒部に亀裂や欠けが有るか無いかを観察し、有った場合には、切削開始からその時までの総切削長を寿命(寿命切削長)と判断した。なお観察には、光学顕微鏡または電子顕微鏡を用いた。結果を表1に示す。
【0167】
【表1】
【0168】
表1に示すように、本発明の実施例1~6は、寿命切削長がすべて16m以上であり、比較例に比べて、基材と筒部との界面や筒部に亀裂や欠けが生じることを抑制でき、工具寿命が延びることが確認された。その中でも実施例2~5は、寿命切削長が22m以上と優れており、実施例3は、寿命切削長が30mと特に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明の硬質焼結体用の基材、硬質焼結体および切削工具によれば、基材と筒部との界面近傍に亀裂や欠けが生じることを抑制できる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0170】
1(1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1I,1J,1K,1L,1M,1N,1P,1Q,1R,1S,1T)…基材、2…小径部(柱部)、10,30…硬質焼結体、11…第1外周部、11a…第1外周部の一方側部分、11b…第1外周部の他方側部分、12…第2外周部、12a…第2外周部の一方側部分、12b…第2外周部の他方側部分、13…基材凸条部、14…基材凹条部、20…筒部、31…第1内周部、31a…第1内周部の一方側部分、31b…第1内周部の他方側部分、32…第2内周部、32a…第2内周部の一方側部分、32b…第2内周部の他方側部分、33…筒部凹条部、50…切削工具、51…刃部、52…シャンク、55…切屑排出溝、56…切刃、C…中心軸、L1…第1直線、L2…第2直線、R1…周方向一方側、R2…周方向他方側、θ,θ´…角度
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