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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】ウイング車のウイング開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/622 20150101AFI20230718BHJP
   B60J 7/08 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
E05F15/622
B60J7/08 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019114312
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021001448
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000177276
【氏名又は名称】三輪精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小田原 辰雄
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-511720(JP,A)
【文献】特開2016-56658(JP,A)
【文献】特開2013-253446(JP,A)
【文献】特開2005-23633(JP,A)
【文献】特表2012-506335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
B60J 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイング車のウイングの前側を伸縮作動によって開閉する前側電動シリンダ装置と、
ウイング車のウイングの後側を伸縮作動によって開閉する後側電動シリンダ装置と、
前記前側電動シリンダ装置と前記後側電動シリンダ装置とを接続する通信路と、
前記前側電動シリンダ装置に設けられた前側制御回路と、
前記後側電動シリンダ装置に設けられた後側制御回路と、
を備え、
前記後側制御回路は、前記後側電動シリンダ装置の伸縮制御を行うとともに、
前記通信路を経由して受信した前記前側電動シリンダ装置の実測データに基づいて、前記前側電動シリンダ装置の伸縮作動を指令する指令データを演算するとともに、前記通信路を経由して前記前側制御回路に前記指令データ送信し、
前記前側制御回路は、前記指令データに基づいて前記前側電動シリンダ装置の伸縮制御を行うとともに、前記前側電動シリンダ装置の前記実測データを、前記通信路を経由して前記後側制御回路に
送信する、
ことを特徴とするウイング車のウイング開閉装置。
【請求項2】
ウイング車のウイングの前側を伸縮作動によって開閉する前側電動シリンダ装置と、
ウイング車のウイングの後側を伸縮作動によって開閉する後側電動シリンダ装置と、
前記前側電動シリンダ装置と前記後側電動シリンダ装置とを接続する通信路と、
前記前側電動シリンダ装置に設けられた前側制御回路と、
前記後側電動シリンダ装置に設けられた後側制御回路と、
を備え、
前記前側制御回路は、前記前側電動シリンダ装置の伸縮制御を行うとともに、
前記通信路を経由して受信した前記後側電動シリンダ装置の実測データに基づいて、前記後側電動シリンダ装置の伸縮作動を指令する指令データを演算するとともに、前記通信路を経由して前記後側制御回路に前記指令データ送信し、
前記後側制御回路は、前記指令データに基づいて前記後側電動シリンダ装置の伸縮制御を行うとともに、前記後側電動シリンダ装置の前記実測データを、前記通信路を経由して前記前側制御回路に
送信する、
ことを特徴とするウイング車のウイング開閉装置。
【請求項3】
前記前側制御回路または前記後側制御回路の一方は、前記前側電動シリンダ装置および/または前記後側電動シリンダ装置からの実測データによってウイングの全開および全閉のストロークエンド手前の緩停止点を判断して緩停止させる指令データを送信する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のウイング車のウイング開閉装置。
【請求項4】
前記前側制御回路または前記後側制御回路の一方は、前記前側電動シリンダ装置および/または前記後側電動シリンダ装置からの実測データと指令データとの差によってシーケンス制御フローの指令データを補償する、
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載のウイング車のウイング開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイング車のウイング開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラックにおける荷の積み下ろし作業を実施し易くするために、ウイングボデーに開閉自在にそれぞれ支持された左ウイングおよび右ウイングを開閉するウイング開閉装置を備えるウイング車、が知られている。
【0003】
従来のこの種のウイング開閉装置として、油圧ポンプユニットおよび前後の油圧シリンダ装置が使用されているものがある。
しかしながら、油圧シリンダ装置が使用されているウイング開閉装置においては、油圧ポンプユニットから前後の油圧シリンダ装置が離れているので、その間のホースが長くなり、油漏れが発生しやすいという問題点がある。
この問題点を解決する手段として、電動シリンダ装置が使用されているものがある。
しかしながら、電動シリンダ装置が使用されているウイング開閉装置においては、前後の電動シリンダ装置の同調が外れてしまうと、ウイングの捩れが発生するという問題点がある。
そこで、前後の電動シリンダ装置を同調させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5984519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前後の電動シリンダ装置を同調させるウイング開閉装置においては、荷台の前部と後部とに電動シリンダ装置が配置されていることにより、前後の電動シリンダ装置や電源およびコマンド装置のような各装置間において複数の長い配線(ハーネス)が引き回されるだけなく、モータ駆動のための大電流が流れてノイズを発生させる原因となるので、ウイング開閉装置についての信頼性が低下するという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、電動シリンダ装置を使用したウイング車のウイング開閉装置において、各装置間の配線を低減して、信頼性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するための手段のうち代表的なものは、次の通りである。
(1)ウイング車のウイングの前側を伸縮作動によって開閉する前側電動シリンダ装置と、
ウイング車のウイングの後側を伸縮作動によって開閉する後側電動シリンダ装置と、
前記前側電動シリンダ装置と前記後側電動シリンダ装置とを接続する通信路と、
前記前側電動シリンダ装置に設けられた前側制御回路と、
前記後側電動シリンダ装置に設けられた後側制御回路と、
を備え、
前記後側制御回路は、前記後側電動シリンダ装置の伸縮制御を行うとともに、
前記通信路を経由して受信した前記前側電動シリンダ装置の実測データに基づいて、前記前側電動シリンダ装置の伸縮作動を指令する指令データを演算するとともに、前記通信路を経由して前記前側制御回路に前記指令データ送信し、
前記前側制御回路は、前記指令データに基づいて前記前側電動シリンダ装置の伸縮制御を行うとともに、前記前側電動シリンダ装置の前記実測データを、前記通信路を経由して前記後側制御回路に
送信する、
ことを特徴とするウイング車のウイング開閉装置。
(2)ウイング車のウイングの前側を伸縮作動によって開閉する前側電動シリンダ装置と、
ウイング車のウイングの後側を伸縮作動によって開閉する後側電動シリンダ装置と、
前記前側電動シリンダ装置と前記後側電動シリンダ装置とを接続する通信路と、
前記前側電動シリンダ装置に設けられた前側制御回路と、
前記後側電動シリンダ装置に設けられた後側制御回路と、
を備え、
前記前側制御回路は、前記前側電動シリンダ装置の伸縮制御を行うとともに、
前記通信路を経由して受信した前記後側電動シリンダ装置の実測データに基づいて、前記後側電動シリンダ装置の伸縮作動を指令する指令データを演算するとともに、前記通信路を経由して前記後側制御回路に前記指令データ送信し、
前記後側制御回路は、前記指令データに基づいて前記後側電動シリンダ装置の伸縮制御を行うとともに、前記後側電動シリンダ装置の前記実測データを、前記通信路を経由して前記前側制御回路に
送信する、
ことを特徴とするウイング車のウイング開閉装置。
【発明の効果】
【0008】
前記した手段によれば、前側電動シリンダ装置および後側電動シリンダ装置を使用したウイング車のウイング開閉装置において、前側電動シリンダ装置および後側電動シリンダ装置間の配線を低減することができ、信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態であるウイング開閉装置を搭載したウイング車を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態であるウイング開閉装置を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態であるウイング開閉装置の後側電動シリンダ装置における制御回路の送受信フローを示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態であるウイング開閉装置の前側電動シリンダ装置における制御回路の送受信フローを示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態であるウイング開閉装置のウイング開作動時における時間とストロークとの関係を示す後側電動シリンダ装置における制御回路の指令データのグラフである。
図6】本発明の一実施形態であるウイング開閉装置の後側電動シリンダ装置における制御回路による緩起動緩停止指令データ計算フローを示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態であるウイング開閉装置において前後の電動シリンダ装置の位置の差が大きくなった場合の後側電動シリンダ装置における制御回路による緩起動緩停止指令データ計算フローを示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態であるウイング開閉装置のウイング開作動時において前後の電動シリンダ装置の位置の差が大きくなった場合の時間とストロークとの関係を示す後側電動シリンダ装置における制御回路の指令データのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に即して説明する。
【0011】
本実施形態において、本発明に係るウイング車のウイング開閉装置は、図1に示されたウイング車のウイングの開閉を制御するものとして構成されている。
【0012】
図1に示されているように、ウイング車1はトラック2の荷台に搭載されているウイングボデー3を備えており、ウイングボデー3の左右の側壁にはウイング5が一対、支軸4によって回動自在に支持されて、ガルウイング形態に斜め上方に開閉するように設備されている。
なお、左、右のウイング5、5は同一の構造をもって左右対称形状に配設されているため、以下、左側のウイング5について代表的に説明する。
ウイングボデー3の前後壁には前側電動シリンダ装置100および後側電動シリンダ装置200がそれぞれ上向きに配設されており、前側電動シリンダ装置100および後側電動シリンダ装置200は上端がウイング5に回転自在に枢着され、下端がウイングボデー3に回転自在に枢着されている。つまり、ウイング5は前側電動シリンダ装置100およ
び後側電動シリンダ装置200の伸縮作動によって開閉される。
【0013】
図2に示されているように、前側電動シリンダ装置100は、ケーシング101内に回転自在に支持されたボールネジ102と、これに螺合してボールネジ102の回転に伴って直線移動するボールネジナット103と、ボールネジナット103に固定された中空ロッド104と、減速機構105を介してボールネジ102を回転駆動するモータ106と、シリンダコントローラ107と、を備えている。
シリンダコントローラ107は、モータ106を駆動するドライバ109と、モータ106の電流検出器110と、モータ106の回転検出器111と、前側電動シリンダ装置の通信回路112と、これらを制御する制御回路108と、によって構成されている。シリンダコントローラ107にはトラックのバッテリーからの電圧が与えられている(図示せず)。
モータ106には直流モータ(直流電動機)またはブラシレスモータ等の三相モータがある。
ドライバ109は制御回路108の制御によりモータ106を駆動する。ドライバ109の制御方法としてはパルス幅制御(PWM)や120度通電制御やベクトル制御が代表的である。
電流検出器110はドライバ109からモータ106に供給される電流を検出する。
回転検出器111はモータ106の回転角度および回転回数を検出する。
ただし、回転検出器111で回転角度だけを検出し、制御回路108で回転回数を計数することもできる。
ここで、回転角度検出の分解能が高くなるほど、電動シリンダ装置のストロークの位置精度が向上する。
【0014】
後側電動シリンダ装置200は、ケーシング201、ボールネジ202、ボールネジナット203、中空ロッド204、減速機構205、モータ206およびシリンダコントローラ207によって構成されており、シリンダコントローラ207は制御回路208、ドライバ209、電流検出器210、回転検出器211および後側電動シリンダ装置の通信回路212を備えている。
これらは前側電動シリンダ装置100のそれぞれと同様に構成されている。
前側電動シリンダ装置100の通信回路112と後側電動シリンダ装置200の通信回路212とは通信路213によって接続されている。
本実施形態においては、通信路213にはCAN(Controller Area Network)が使用されており、前側電動シリンダ装置100の通信回路112と後側電動シリンダ装置200の通信回路212とは、HレベルラインおよびLレベルラインの2本の通信路213によって接続されている。
ただし、通信路213はCANに限定するものではなく、有線通信路または無線通信路によって構成してもよい。
【0015】
後側電動シリンダ装置200のシリンダコントローラ207に実装された制御回路208は、後側電動シリンダ装置200の伸縮作動を指令する指令データを発生して、ドライバ209を駆動してモータ206を回転子、伸縮作動を行うとともに、前側電動シリンダ装置100の伸縮作動を指令データを発生して、通信回路212、通信路213を経由して前側電動シリンダ装置100の通信回路112に送信する。すなわち、後側電動シリンダ装置200の制御回路208は後述するフローを実行するように構成されている。
後側電動シリンダ装置200の制御回路208には、左側ウイングを開く時に操作される開スイッチ301および左側ウイングを閉じる時に操作される閉スイッチ302が電気配線303によって接続されている。開スイッチ301および閉スイッチ302は操作盤304に実装されており、操作盤304はトラック2の適当な場所に設置されている。
【0016】
以下、制御回路208の送受信フローおよび電動シリンダ装置の送受信位置制御フローを図3および図4に示されたフローチャートに沿って説明する。
ここでは、図5に示されたウイング開作動時における時間とストロークの関係(関数)を示すグラフ、すなわち、ウイング開作動シーケンス制御フローを実行する場合について説明する。
【0017】
開スイッチ301が投入されると、図3に示されているように、制御回路208は初期化処理した後、第一ステップS1において、「送信後一定時間経過したか」を判断する。
送信時間が一定時間経過した場合(YES)には、第二ステップS2に進む。
送信時間が一定時間経過していない場合(NO)には、第一ステップS1に戻る。
第二ステップS2において、制御回路208は伸長指令データを前側電動シリンダ装置100に、通信回路212、通信路213および通信回路112を経由して送信した後に、第三ステップS3に進む。
第三ステップS3において、制御回路208は後側電動シリンダ装置200の伸縮作動を指令する指令データを発生して、ドライバ209を駆動してモータ206を回転するとともに、第四ステップS4に進む。
伸長指令データは図5に示された時間とストローク関係グラフ、すなわち、ウイング開作動シーケンス制御フローに基づいて制御回路208によって発生される信号である。
図5に示された時間とストローク関係グラフ、すなわち、ウイング開作動シーケンス制御フローは時間とストローク関数によって予め作成(プログラミング)され、ウイング開作動シーケンス制御フローのテーブルとして制御回路208のメモリーに予め記憶されている。
第四ステップS4において、制御回路208は「前側電動シリンダ装置100からの実測データ(回転検出器111の検出データ)を受信したか」を判断する。
実測データを受信した場合(YES)には、第五ステップS5に進む。
実測データを受信していない場合(NO)には、第四ステップS4に戻る。
第五ステップS5において、制御回路208は前側電動シリンダ装置100からの実測データを読み込み、第六ステップS6に進む。
第六ステップS6において、制御回路208は受信した実測データを図5に示されたグラフに適用して指令データを演算した後に、第一ステップS1に戻る。
以降、図5に示されたグラフ、すなわち、ウイング開作動シーケンス制御フローのテーブルが終了するまで、ルーチンが繰り返される。
【0018】
他方、図4に示されているように、前側電動シリンダ装置100の制御回路108および後側電動シリンダ装置200の制御回路208は初期化処理した後、第一ステップS1において、「後側電動シリンダ装置の制御回路からの伸長指令データを受信したか」を判断する。
受信した場合(YES)には、第二ステップS2に進む。
受信していない場合(NO)には、第一ステップS1に戻る。
第二ステップS2において、制御回路108は受信した伸長指令データを読み込み、第三ステップS3に進む。
第三ステップS3において、制御回路108は受信した伸長指令データによってドライバ109を駆動してモータ106を回転させた後に、第四ステップS4に進む。
第四ステップS4において、制御回路108は回転検出器111の実測データを読み込み、後側電動シリンダ装置200の制御回路208に送信する。
以降、図5に示されたグラフ、すなわち、ウイング開作動シーケンス制御フローのテーブルが終了するまで、ルーチンが繰り返される。
【0019】
次に、図5のグラフにおける緩停止作動について、図6に示された緩停止指令データ計算フローのフローチャートに沿って説明する。
図6に示されているように、第一ステップS1において、制御回路208は「操作中か」を判断する。
操作中でない場合(NO)には、第二ステップS2に進む。
操作中である場合(YES)には、第三ステップS3に進む。
第二ステップS2において、制御回路208は「増加分A=0」の処理を行い、第九ステップS9に進む。
第三ステップS3において、制御回路208は「始動時ではないか」を判断する。 始動時である場合(NO)には、第四ステップS4に進む。
始動時でない場合(YES)には、第五ステップS5に進む。
第四ステップS4において、制御回路208は「増加分A=緩起動の増加分」の処理を行い、第九ステップS9に進む。
第五ステップS5において、制御回路208は前後の電動シリンダ装置の実測データにより緩停止開始点を判定した後に、第六ステップS6に進む。
第六ステップS6において、制御回路208は「緩停止ではないか」を判断する。 緩停止である場合(NO)には、第七ステップS7に進む。
緩停止でない場合(YES)には、第八ステップS8に進む。
第七ステップS7において、制御回路208は「増加分A=緩停止の増加分」の処理を行い、第九ステップS9に進む。
第八ステップS8において、制御回路208は「増加分A=通常時の増加分」の処理を行い、第九ステップS9に進む。
第九ステップS9において、制御回路208は「伸長指令データ=前回の伸長指令データ+増加分A」の処理を行い、前側電動シリンダ装置100に伸長指令データを送信するとともに、増加した伸縮データに基づいて後側電動シリンダ装置200のドライバ209を駆動してモータ206を回転する。
なお、緩起動および緩停止の増加分Aは、経過時間や実測データにより変化させることができる。
ウイング開作動時(電動シリンダ装置伸長時)は、増加分Aはプラスとなるが、ウイング閉操作時(電動シリンダ装置短縮時)は、増加分Aはマイナスとなる。
【0020】
次に、図8のグラフにおける電動シリンダ装置からの実測データと指令データとの差によってシーケンス制御フローの指令データを補償する動作について、図7に示された補償動作を行う指令データ計算フローのフローチャートに沿って説明する。
図7に示されているように、第一ステップS1において、制御回路208は「操作中か」を判断する。
操作中でない場合(NO)には、第二ステップS2に進む。
操作中である場合(YES)には、第三ステップS3に進む。
第二ステップS2において、制御回路208は「増加分A=0」の処理を行い、第十一ステップS11に進む。
第三ステップS3において、制御回路208は「始動時ではないか」を判断する。
始動時である場合(NO)には、第四ステップS4に進む。
始動時でない場合(YES)には、第五ステップS5に進む。
第四ステップS4において、制御回路208は「増加分A=緩起動の増加分」の処理を行い、第九ステップS9に進む。
第五ステップS5において、制御回路208は前後の電動シリンダ装置の実測データにより緩停止開始点を判定した後に、第六ステップS6に進む。
第六ステップS6において、制御回路208は「緩停止ではないか」を判断する。 緩停止である場合(NO)には、第七ステップS7に進む。
緩停止でない場合(YES)には、第八ステップS8に進む。
第七ステップS7において、制御回路208は「増加分A=緩停止の増加分」の処理を行い、第九ステップS9に進む。
第八ステップS8において、制御回路208は「増加分A=緩停止の増加分」の処理を行い、第九ステップS9に進む。
第九ステップS9において、制御回路208は「伸長指令データと両電動シリンダ装置の実測データとの差が許容範囲か」を判断する。
許容範囲でない場合(NO)、すなわち、前側電動シリンダ装置100および後側電動シリンダ装置200から送信される実測データとシーケンスフローの伸長指令データとの差が大きくなり、挽回不可能と判断した場合には、第十ステップS10に進む。
許容範囲である場合(YES)、すなわち、前側電動シリンダ装置100および後側電動シリンダ装置200から送信される実測データとシーケンスフローの伸長指令データとの差が小さく、挽回可能と判断した場合には、第十一ステップS11に進む。
第十ステップS10において、制御回路208は「増加分Aを減少する」の処理を行い、第十一ステップS11に進む。
第十一ステップS11において、制御回路208は「伸長指令データ=前回の伸長指令データ+増加分A」の処理を行い、前側電動シリンダ装置100に伸長指令データを送信するとともに、増加した伸縮データに基づいて後側電動シリンダ装置200のドライバ209を駆動してモータ206を回転する。
すなわち、図8に示されているように、シーケンス制御フローの勾配を減少させ、勾配を減少した後に、実測データと指令データとの差が小さくなったと判断した場合に、勾配を増加(復帰)させる。
以降、図8に示されたグラフ、すなわち、電動シリンダ装置からの実測データと指令データとの差によってシーケンス制御フローの指令データを補償する動作がウイング開作動フィードバック制御フローのテーブルが終了するまで、ルーチンが繰り返される。
【0021】
なお、ウイング閉作動時の場合も、前述したウイング開作動の場合と同様のシーケンス制御フローまたはフィードバック制御フローが実行される。
【0022】
本実施形態によれば、次の効果が得られる。
【0023】
(1)ウイング開閉装置に電動シリンダ装置を使用することにより、ウイング開閉装置に油圧シリンダ装置が使用されている場合に比べて、油圧装置や油圧配管等の油圧系を省略することができるので、イニシャルコストおよびランニングコストを大幅に低減することができる。
【0024】
(2)前側電動シリンダ装置と後側電動シリンダ装置との間の接続は通信回線路だけであり、複数の長い配線の引き回しを省くことができるので、ウイング開閉装置全体としての遠隔操作構造を簡単化かつ軽量化することができるばかりでなく、コストを低減することができるとともに、メンテナンス性能を向上させることができる。
【0025】
(3)Duty制御を行う所謂パワーラインの配線は前側電動シリンダ装置および後側電動シリンダ装置の内部だけとなることにより、外部のハーネスにモータ駆動の大電流が流れてノイズを発生させる原因がなくなるので、ウイング開閉装置の信頼性を向上することができる。
【0026】
(4)指令データに対する前側電動シリンダ装置および後側電動シリンダ装置の実測データが明確になるので、お互いを監視することにより、ウイング開閉装置全体としての信頼性を向上することができる。
【0027】
(5)ウイング開閉装置のシーケンス制御フローをウイング開閉装置の個体毎にそれぞれ対応して作成(プログラミング)することができるので、各ウイング開閉装置相互間の個性の相違を補償することができる。
【0028】
(6)前側電動シリンダ装置および後側電動シリンダ装置のシーケンス制御フローをそれぞれ別々に対応して作成(プログラミング)することにより、前側電動シリンダ装置と後側電動シリンダ装置との間の相違を補償することができるので、ウイングの捩れの発生を予め回避することができる。
【0029】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0030】
例えば、以上の実施形態とは逆に前側電動シリンダ装置から後側電動シリンダ装置への指令信号を送信し、後側電動シリンダ装置から前側電動シリンダ装置へ実測データを送信してもよい。
すなわち、図3図6および図7の制御フローを前側電動シリンダ装置で行うとともに、図4の制御フローを後側電動シリンダ装置で行うことができる。その場合は、図3および図4の「前側」とあるのを「後側」に、「後側」とあるのを「前側」に読み替えればよい。
【0031】
電動シリンダ装置の実測データとしては回転検出器の検出データを使用するに限らず、ボールネジナットのケーシングに対する移動距離を検出して電気量に変換する位置センサをケーシングとボールネジナットとの間に介設し、位置センサの検出データをウイングのストロークの実測データとして使用してもよい。
【0032】
前側電動シリンダ装置および後側電動シリンダ装置からの実測データだけでなく、温度や電流値のようなその他のデータも制御回路に送信することにより、ウイングの開度等の情報や異常の発生を監視することができる。
【0033】
操作盤の開スイッチおよび閉スイッチは前側電動シリンダ装置に接続してもよい。
【0034】
ウイングの開作動時および閉作動時における緩起動の制御は省略してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…ウイング車、2…トラック、3…ウイングボデー、4…支軸、5…ウイング、
100…前側電動シリンダ装置、101…ケーシング、102…ボールネジ、103…ボールネジナット、104…中空ロッド、105…減速機構、106…モータ、107…シリンダコントローラ、108…制御回路、109…ドライバ、110…電流検出器、111…回転検出器、112…前側電動シリンダ装置の通信回路、
200…後側電動シリンダ装置、201…ケーシング、202…ボールネジ、203…ボールネジナット、204…中空ロッド、205…減速機構、206…モータ、207…シリンダコントローラ、208…制御回路、209…ドライバ、210…電流検出器、211…回転検出器、212…後側電動シリンダ装置の通信回路、213…通信路、
301…開スイッチ、302…閉スイッチ、303…電気配線、304…操作盤。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8