(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】広告押え具
(51)【国際特許分類】
G09F 21/04 20060101AFI20230718BHJP
G09F 15/00 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
G09F21/04 L
G09F15/00 N
(21)【出願番号】P 2020180038
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000163372
【氏名又は名称】近畿車輌株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520421178
【氏名又は名称】株式会社ホウシン
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】牧野 剛志
(72)【発明者】
【氏名】武智 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 宏
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】実公昭27-007328(JP,Y1)
【文献】実開平04-040282(JP,U)
【文献】特開2015-064453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 7/00- 7/22
G09F 15/00
G09F 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広告シートの上下辺を保持するための上側及び下側レールを有した広告枠に取り付けられ、前記広告シート前面の膨らみを防ぐ広告押え具であって、
前記上側及び下側レールの間を壁面に沿って橋渡すように延びる本体部と、
前記本体部の両端に前記上側及び下側レール内に収まる脚部と、
前記本体部の両端のうち少なくとも一方に、前記上側及び下側レール内に収容可能であり、且つ、前記本体部の長手方向
の外側に凸となる丸みを有し、長手方向に弾性変形可能
であって、前記丸みが前記脚部の先端よりも長さ方向で外側に位置するバネ部とを備え
、
前記本体部とバネ部と脚部は弾性変形可能な短冊状の透明樹脂材で一体形成されている
ことを特徴とする広告押え具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に形成されたレールで矩形の広告シートを保持する鉄道車両の広告枠において、広告シートの前面を押圧固定するための広告押え具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の車内広告のうち、天井近くのスペースを利用して、横長の広告シートを保持する広告枠が知られている。
【0003】
ドアの上方や網棚の上方に設けられる横長の広告枠は、作業負担を軽減するため、上側及び下側のみに、広告シートの端縁を収容するレールが設けられている形態のものが多い。
図6は、従来の横長の広告枠101を示している。この形態の広告枠101に設置される広告シートは、湾曲させながら上下の辺を上側レール102及び下側レール103に差し込むことによって容易に収容される。このような形態の広告枠101では、広告枠全体又はその一部を取り外したり、ねじ締めする作業などが省かれるので作業時間が短縮される。よって、車両の編成数が多い場合などにおいては、作業負担軽減の効果は顕著である。上述の広告枠101については、特許文献1に記載がある。
【0004】
広告枠101に収容された広告シートは、自重による撓みが生じると、上側レール102から上辺が離れて脱落する場合がある。特に、平面又は平面に近い壁面に設けられる広告枠において、この傾向が強い。よって、収容後に広告シートの前面を押圧して固定する広告押え具が用いられる。
【0005】
具体的には、短冊状に形成された可撓性及び弾力性を有する透明部材を広告押え具として用い、端部をそれぞれ広告枠の上側レール及び下側レール内に差し込むように設置する。透明部材なので、広告表示の妨げになることなく、また、可撓性を有しているので、設置が容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、短冊状の広告押え具の長さが、広告枠の上側及び下側レールの間隔に対して正確に一致しない場合、すなわち、広告枠側の取付公差、広告押え具側の製作公差等により、取り付け時にがたつきが生じる場合、広告押え具は広告枠の中で動いてしまう恐れがある。
【0008】
そこで、本発明では、公差の影響を受けずに広告枠の上下のレール間に容易に設置可能な広告押え具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の広告押え具は、広告シートの上下辺を保持するための上側及び下側レールを有した広告枠に取り付けられ、前記広告シート前面の膨らみを防ぐ広告押え具であって、
前記上側及び下側レールの間を壁面に沿って橋渡すように延びる本体部と、
前記本体部の両端に前記上側及び下側レール内に収まる脚部と、
前記本体部の両端のうち少なくとも一方に、前記上側及び下側レール内に収容可能であり、且つ、前記本体部の長手方向の外側に凸となる丸みを有し、長手方向に弾性変形可能であって、前記丸みが前記脚部の先端よりも長さ方向で外側に位置するバネ部とを備え、
前記本体部とバネ部と脚部は弾性変形可能な短冊状の透明樹脂材で一体形成されている
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の広告押え具によれば、広告枠の上側及び下側レール間に両端を差し込んで設置する際に、本体部の少なくとも一方に設けられたバネ部を長手方向に収縮させることができる。これにより、設置作業が容易になる。また、長手方向に生じるプラス又はマイナスの公差を吸収できるので、設置状態が安定する。更に、バネ部は上側及び下側レール内に納まるので、美観を損ねることはない。
【0012】
また、上記効果に加えて本発明の広告押え具は、設置時に全体を撓ませた際、上側及び下側レール近傍に生じる曲げ応力が脚部へ分散されるので、バネ部への応力集中を防ぐことができる。これにより、バネ機構が保護される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る広告押え具を示す図である。
【
図3】広告押え具の上側レールへの収容状態を示す図である。
【
図4】設置作業時における広告押え具の下側レールへの収容状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る広告押え具について図を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る広告押え具1を示す図である。また、
図2は、
図1の広告押え具1の使用状態を示す斜視図である。
【0016】
図1に示した広告押え具1は、
図2に示すように鉄道車両等の車内壁(壁面104)に設置された広告枠101に対して用いられる。
図2中には、説明の便宜のため、矩形の広告シート100を一点鎖線で表している。広告枠101は、互いに平行に延びる上側レール102及び下側レール103を有している。
図2に示すように上側レール102と下側レール103とが別体でそれぞれ壁面104に取り付けられるような構成もあれば、両者の間が一体構成されているものもある。
【0017】
これら上側レール102及び下側レール103は、広告シート100の上下辺を収容するために設けられている。上側レール102及び下側レール103に対して広告シート100の上辺及び下辺の一方を差し込み、湾曲させながら他方を差し込むことによって広告枠101内に広告シート100が設置される。
【0018】
車内に設置される広告シート100には、ボール紙を少し薄くした程度の厚さの紙が用いられることが多い。したがって、上下辺を保持しておけば、ある程度自立することが可能である。しかし、比較的薄手の紙が設置されたり、風などの当たり具合によっては、設置状態が安定しない場合がある。
【0019】
このため、本実施の形態に係る構成では、
図1に示したような広告押え具1が用いられる。
図2に見て取れるように、広告枠101に対して、広告押え具1を複数箇所に配置す
ると、広告シート100は安定する。ここで、
図1を参照しながら広告押え具1の構造について詳しく述べる。
【0020】
図1に示すように、広告押え具1は、短冊状の本体部2の長手方向の両端に脚部6及びバネ部4を有している。本体部2は、
図2に示したように、上側レール102及び下側レール103の間を、壁面104に沿って橋渡すことができる程度の長さを有している。そして、脚部6及びバネ部4は、上側レール102及び下側レール103内に隠すことができる程度の大きさに形成されている。この上側レール102及び下側レール103に対する脚部6やバネ部4の関係については、後に図を用いて説明する。
【0021】
本実施の形態に係る構成では、広告押え具1が弾性変形可能な透明の樹脂材で一体形成されている。よって、バネ部4は脚部6から同一の樹脂材によって片持ち式に延設されている。このように構成されているので、脚部6を支点としてバネ部4が、広告押え具1の長手方向に弾性変形できる。
【0022】
バネ部4は、広告押え具1の長手方向の外側に凸となるように丸みを付けるように形成されている。よって、バネ部4が外側から長手方向に押し込まれても、対象物に対して一定の接触面積を維持することができるので、接触状態が安定する。
【0023】
脚部6の先端は、バネ部4よりも長手方向に短くなるように設定されている。このため、上側レール102又は下側レール103内に広告押え具1が押し込まれた際、先にバネ部4が当接する。そして、バネ部4がある程度押し込まれると、脚部6の先端が突き当たる。このように、脚部6が設けられているので、過度な力によりバネ部4が押し潰されてしまうのを防ぐことができる。また、バネ部4が弾性変形をしている不安定な状態であっても、脚部6が突き当たることによって広告押え具1の差し込まれる方向を直感的に把握しやすく、作業が容易になる。ここで、
図2に戻って、広告押え具1の使用状態について説明する。
【0024】
図2には、設置後の2本の広告押え具1を実線で表している。そして、これら2本の広告押え具1のうち一方に重ねるように、差し込み動作中の広告押え具1を点線で表している。
図2の点線で描かれた広告押え具1に表れているように、広告押え具1の下端側が下側レール103内へ先に差し込まれる。そして、下端側が差し込まれた状態において、上方が湾曲変形されて上側レール102内に滑り込ませるようにして差し込まれる。本実施の形態の広告押え具1は、
図1を用いて上述したように、長手方向へ弾性変形可能な構造(バネ部4)を有しているので、設置作業が容易である。次に、広告枠101内の広告押え具1の状態について
図3を用いて説明する。
【0025】
図3は、広告押え具1の上側レールへの収容状態を示す図である。上側レール内の構造は点線で表わされている。
図3(a)は、バネ部4だけが上側レール102の奥に当接した状態を示し、
図3(b)は、バネ部4及び脚部6が上側レール102の奥に当接した状態を示している。
【0026】
上述のように、広告押え具1を上側レール102内に差し込むと、先にバネ部4が当接する。ここで、バネ部4は、脚部6よりも長手方向へ突出するように形成されている。よって、バネ部4の可動範囲は、脚部6よりも長手方向へ突出している寸法で決まる。
【0027】
図2に示したような広告枠101では、上側レール102と下側レール103とが別体で構成されているので、レール自体の製作公差に加えて、壁面104(
図2参照)に対する取付公差も考慮に入れる必要がある。また、広告押え具1側の製作公差も加わるため、上側レール102及び下側レール103の間隔よりも広告押え具1の長さの方が長くなる
場合もある。しかし、本発明に係る広告押え具1は、上述のように長手方向へ弾性変形可能に構成されているので、公差分を吸収して、本体部2が撓むことなく常に真っ直ぐの状態で設置される。バネ部4と脚部6との長手方向に対する寸法差によって、上述の公差分を吸収できるように設計される。
【0028】
なお、
図1に示したように、本実施の形態に係る広告押え具1には、両端にバネ部4を有している。したがって、両方のバネ部4の撓み量を合わせると、公差に対する許容範囲を大きく設定することができる。
【0029】
図2には、広告枠101が平坦な壁面104に設置されている構成を例として示した。しかし、湾曲した壁面に対して広告枠が配置される場合もある。この湾曲した壁面の曲率が比較的大きい場合は、広告シート101自体が上側レール及び下側レールに対して突っ張るように設置される。このため、広告シート101の厚みが十分であれば、本実施の形態に示すような広告押え具がなくても広告枠内で広告シート101は安定する。
【0030】
これに対して、比較的曲率が小さい場合は、平面上の壁面と同様に、広告シート101が上側及び下側レールに対して十分に突っ張ることができない。このような場合に、本発明の広告押え具1が有効である。
【0031】
すなわち、設置される壁面が湾曲している場合、上側及び下側レール間の直線距離は、広告シート101の上下方向の幅よりも小さくなる。したがって、設置の際、広告押え具1を一旦広告シート101の上下幅よりも小さくなるように変形させなければならない。
図2において点線で表した状態よりも深く曲げる必要がある。
【0032】
図2の場合は、手前側に凸となるように広告押え具1を曲げると、端部側をスムーズに上側レール102(下側レール103の場合も同様)へ差し込むことができた。しかし、壁面が湾曲している場合は、手前側に凸となるように深く曲げた広告押え具1を、設置時には手前側が凹となる状態にまで変形する必要がある。しかし、本実施の形態に係る広告押え具1のように端部側にバネ部4を備えていると、本体部2に無理な変形を生じさせることなく、長手方向への弾性変形を利用して容易に取り付けることができる。続いて、
図2の点線で示した状態における広告押え具1と下側レール103との関係について
図4を用いて述べる。
【0033】
図4は、設置作業時における広告押え具の下側レールへの収容状態を示す図である。上述のように、広告押え具1の脚部6及びバネ部4は、下側レール103の内側に隠れる寸法に設定されている。
図2に示すように、手前側に広告押え具1を湾曲させるとき、下側レール103内に差し込まれている端部側(脚部6)には、曲げ応力が生じている。しかし、バネ部4は、脚部6から延設されているので、バネ部4自体に大きな曲げ応力が集中することはない。バネ部4の脇の2箇所に形成された脚部6に曲げ応力が分散されるので、大きく曲げた場合であっても、バネ部4は保護される。このように、脚部6には、差込時の安定化と曲げ応力の分散によるバネ部4の保護機能がある。次に、これまで説明してきた広告押え具1の変形例を示す。
【0034】
<変形例>
図5は、
図1の広告押え具の変形例を示す図である。
【0035】
図5(a)は、長手方向の一方にのみバネ機構を備えた広告押え具11を示している。2箇所に形成された脚部16から内側へ向けてそれぞれに片持ち式のバネ部14が設けられている構成は、
図1の広告押え具1と同様である。しかし、他端側の端部18には、バネ機構は設けられていない。これは、上側レール及び下側レールが一体に形成されている
広告枠など、公差の影響が比較的小さい場合に有用である。端部18には、繊細なバネ機構が設けられていないので、ラフな作業であっても安全に設置できる。
【0036】
図5(b)の広告押え具21は、長手方向の両側にそれぞれバネ機構を備えている点において、
図1の広告押え具1と共通している。しかし、
図5(b)の広告押え具21のバネ機構は、
図1の広告押え具1とは異なっている。広告押え具21では、2箇所の脚部26とは別に本体部22からバネ部24が湾曲するように延設されている。このように構成されているので、万が一、脚部26が破損した場合であっても、公差を吸収する機能を損なうことなく十分な広告押え機能が得られる。
【0037】
図5(c)の広告押え具31は、長手方向の一方にのみ、
図5(b)と同様のバネ機構(バネ部34)を有しており、他方側は、
図5(a)と同様のバネ機構を備えない端部38で形成されている。
【0038】
図5(d)の広告押え具41は、長手方向の両側にバネ機構を有しているが、それぞれにバネ部44が1箇所ずつ形成されている。このバネ部44は、
図1の広告押え具1のバネ部4や、
図5(a)の広告押え具11のバネ部14と同型であり、脚部46から延設されている。このように、少なくとも1箇所のバネ部44があれば、上述の各種広告押え具と同様の効果を得ることができる。
【0039】
図5(e)の広告押え具51は、
図5(d)と同様に長手方向の両側にバネ機構を備え、それぞれに一箇所ずつのバネ部54を備えている。このバネ部54は、脚部56から独立しており、
図5(c)のバネ部34と同型である。
【0040】
以上に述べてきたような構成は本発明の一例であり、以下のような変形例も含まれる。
【0041】
(1)上記の実施の形態では、広告押え具1の本体部2が短冊状に形成された構成を例として示した。しかし、本体部2のように長手方向に一定の幅で形成されていなくても構わない。例えば、差し込み作業時に曲げ安いように弱化部を形成していても構わない。
【0042】
(2)上記の実施の形態では、バネ部4に弾性変形機能を持たせ、脚部6に曲げ応力を分散したり設置状態を安定させる機能を持たせた構成を例として示した。しかし、脚部自体にバネ性を持たせるような構成であっても構わない。
【0043】
(3)上記の実施の形態では、本体部2の幅よりも脚部6の形成されている端部の幅の方が広くなるような構成を例として示した。しかし、長手方向への弾性変形が可能であり、十分に曲げ応力を分散できる構成であれば、脚部が構成される部分の幅が本体部よりも狭くても構わない。
【0044】
(4)上記の実施の形態では、変形例も含めて一方の端部にバネ部が1又は2箇所設けられている構成を例としてしめした。しかし、バネ部が3箇所以上形成されていても構わない。
【0045】
(5)上記の実施の形態では、脚部6よりも内側にバネ部4が設けられている構成を例として示した。しかし、バネ機構が脚部よりも幅方向の外側に形成されていても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の広告押え具は、鉄道車両に限らず公共交通機関で用いられる車両に対して広く利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 広告押え具
2 本体部
4 バネ部
6 脚部
11 広告押え具
12 本体部
14 バネ部
16 脚部
18 端部
21 広告押え具
22 本体部
24 バネ部
26 脚部
31 広告押え具
32 本体部
34 バネ部
36 脚部
38 端部
41 広告押え具
42 本体部
44 バネ部
46 脚部
51 広告押え具
52 本体部
54 バネ部
56 脚部
100 広告シート
101 広告枠
102 上側レール
103 下側レール
104 壁面