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特許7313636興奮性細胞および非興奮性細胞でCa2+を画像化するための低親和性赤色蛍光指示薬
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】興奮性細胞および非興奮性細胞でCa2+を画像化するための低親和性赤色蛍光指示薬
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20230718BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230718BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230718BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230718BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20230718BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20230718BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230718BHJP
【FI】
C12Q1/02 ZNA
C12N15/12
C12N5/10
C07K14/47
G01N21/64 F
G01N21/78 C
C12N15/62 Z
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020545529
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 CA2019050254
(87)【国際公開番号】W WO2019165563
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】62/637,808
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507388960
【氏名又は名称】ザ・ガバナーズ・オブ・ザ・ユニバーシティー・オブ・アルバータ
(73)【特許権者】
【識別番号】503250595
【氏名又は名称】ザ・チャンセラー・マスターズ・アンド・スカラーズ・オブ・ザ・ユニヴァーシティ・オブ・オックスフォード
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ユー - フェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ジアフイ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルズ、マシュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル、ロバート イー.
【審査官】中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/048808(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/034298(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/190083(WO,A1)
【文献】特開2014-001161(JP,A)
【文献】国際公開第2017/087542(WO,A1)
【文献】Development of red fluorescent protein-based calcium ion and glutamate indicators by Jiahui Wu,A thesis submitted in partial fulfillment of the requirements for the degree of Doctor of Philosophy,2014年,p. 1- 182
【文献】Red fluorescent genetically encoded Ca2+ indicators for use in mitochondria and endoplasmic reticulum,Biochem. J.,Vol. 464,2014年,p. 13-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00- 19/00
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00- 15/90
C12Q 1/00- 3/00
G01N 21/64
G01N 21/78
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内のCa2+レベルの変化を検出する方法であって、
該方法が、
a.蛍光性でありかつ20μM超のKdで、Ca2+に対する親和性を有する配列番号12、14、16及び18、並びに前記のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチド、但し配列番号2を除く、からなる群から選択される1つまたは複数の低親和性Ca2+指示薬を発現するように設計された細胞を含む試料を得るステップと;
b.細胞を励起光に曝露するステップと;
c.細胞を可視化または画像化することによって、ER、SRおよび/またはミトコンドリアのCa2+レベルの変化を検出するステップと
を含む、上記方法。
【請求項2】
試料が、細胞培養物、幹細胞または哺乳動物血漿を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料が、安定な不死化細胞株の細胞培養物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
細胞培養物がHL1細胞株を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
指示薬がレシオメトリックである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
指示薬がインテンシオメトリックである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
指示薬が別の蛍光指示薬と組み合わせて使用される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
単一波長を有する励起光が、指示薬と別の蛍光指示薬の両方を励起するのに使用され、前記指示薬と別の蛍光指示薬とが二つの異なる色を発光する単一波長二色画像化法を使用する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
他の蛍光指示薬が細胞質のカルシウム指示薬である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
指示薬が、オルガネラ特異的標的化配列によりオルガネラに標的化される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
低親和性蛍光Ca2+ポリペプチドであって、
該ポリペプチドが、蛍光性でありかつ20μM超のKdで、Ca2+に対する親和性を有する、配列番号12、14、16及び18、並びに前記のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドからなる群から選択され、但し配列番号2を除く、上記低親和性蛍光Ca2+ポリペプチド。
【請求項12】
配列番号12、14、16または18のうちの1つのアミノ酸配列を有する、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
オルガネラ特異的標的化配列をさらに含む、請求項11または12に記載のポリペプチド。
【請求項14】
配列番号19の標的化配列を含む、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
I54A、I330M、およびD327N/I330M/D363Nからなる群から選択される配列番号4における突然変異を含む、請求項11または12に記載のポリペプチド。
【請求項16】
60μM超のCa2+に対するKdを有する、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項17】
請求項11から16のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項18】
請求項17に記載のポリヌクレオチドであって、
a.配列番号11、13、15または17;
b.配列番号11、13、15または17のうちの1つと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ20μM超のCa2+に対するKdを有する蛍光Ca2+指示薬をコードする核酸配列、但し配列番号1を除く;
c.配列番号12、14、16または18のアミノ酸配列を含む蛍光Ca2+指示薬をコードする核酸配列;および
d.20μM超のCa2+に対するKdを有し、かつ配列番号12、14、16または18のアミノ酸配列(但し配列番号2を除く)と少なくとも90%の配列同一性を有する蛍光Ca2+指示薬をコードする核酸配列、
からなる群から選択される核酸配列を含む、上記ポリヌクレオチド。
【請求項19】
オルガネラ特異的標的化配列をコードする配列をさらに含む、請求項17または18に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
オルガネラ特異的標的化配列が配列番号19をコードする、請求項19に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
I54A、I330M、およびD327N/I330M/D363Nからなる群から選択される配列番号4における突然変異を含む、請求項17または18に記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
請求項17から21のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項23】
請求項17から21のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド配列、または請求項22に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項24】
心筋細胞である、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項25】
別の蛍光カルシウム指示薬を同時発現する、請求項23に記載の宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:Yu-Fen CHANG;Jiahui WU;Matthew J.DANIELS;およびRobert E.CAMPBELL
譲受人 アルバータ大学の理事
出願番号55326.272 PCT
本発明は、概して、小胞体、筋小胞体および/またはミトコンドリアに標的化され得る、低親和性蛍光Ca2+指示薬に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓細胞では、筋小胞体(SR)が、筋フィラメント収縮を誘発する電圧依存性Ca2+侵入を可能にする、Ca2+誘発性Ca2+放出(CICR)の増幅を担っている。収縮はSRの運動に関連しているため、運動アーチファクトを補正するには、(インテンシオメトリック(intensiometric)と対照的に)レシオメトリック(ratiometric)画像化アプローチが必要である。
【0003】
ミトコンドリア、小胞体(ER)、およびSRなどの細胞内コンパートメントは、低マイクロモル濃度から高ミリモル濃度までのカルシウムイオン(Ca2+)濃度範囲を有する。Ca2+濃度が高いコンパートメントでは、細胞質Ca2+(典型的には0.1~10μM範囲)の検出に最適化された蛍光指示薬が飽和し、Ca2+濃度の生理学的に関連する変化に反応しなくなる。この課題に対処するために、遺伝子的にコードされた蛍光タンパク質(FP)を含む、低親和性Ca2+指示薬の開発に相当な研究努力が払われてきた。合成色染料系指示薬とは対照的に、FP系指示薬は、対応するDNAコード配列として細胞に送達され、特定の組織での発現のためのまたは特定の細胞内コンパートメントを標的とする追加の配列を含むことができる。
【0004】
低親和性指示薬の初期の例としては、D1ERおよびD4cpvが挙げられ、これらは、シアンと黄色FPとの間のCa2+依存性フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)に基づいている。FRET系指示薬は本質的にレシオメトリックであり、オルガネラまたは細胞の運動によるアーチファクトの画像化に左右されない定量的測定を提供する。単一FPから設計された指示薬は、インテンシオメトリックになる傾向があり、多くの場合、より大きなシグナル変化を提供する。ERを標的とする最初の単一FP系低親和性Ca2+指示薬はCatchER(商標)であった。より最近では、いくつかの低親和性GCaMP型Ca2+指示薬が発見され、これらはカルモジュリン(CaM)に融合した循環置換(circularly permutated)(cp)FPとCa2+結合型のCaMに結合するペプチドで構成されている。これらには、CEPIA(商標)、LAR-GECO(商標)およびER-GCaMP(商標)シリーズが含まれる。発光レシオメトリックである別の低親和性単一FP系Ca2+指示薬はGEM-CEPIA1er(商標)であるが、これは、多くの場合、光毒性および自家蛍光の増加を伴う高エネルギー紫外光(400nm以下)による励起を要する。
【0005】
多くの場合、光毒性および自家蛍光の減少を伴うので、より長い波長(すなわち、より赤方シフトしたまたは400nm超)光で励起することができる指示薬を使用することが望ましくなり得る。
【0006】
この背景情報は、本出願人が可能性があると考えている既知の情報を本発明に関連付ける目的で提供されている。上記の情報のいずれかが本発明に対する先行技術を構成することを認めることは必ずしも意図されておらず、解釈されるべきでもない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、細胞内のCa2+レベルの変化を検出する方法であって、
(a)LAR-GECO1.5、LAR-GECO2、およびLAR-GECO3、LAR-GECO4、LAREX-GECO1、LAREX-GECO2、LAREX-GECO3、およびLAREX-GECO4、または前記のいずれか1つと実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドからなる群から選択される1つまたは複数の低親和性Ca2+指示薬を発現するように設計された細胞を含む試料を得るステップと;
(b)細胞を励起光に曝露するステップと;
(c)細胞を可視化または画像化することによって、ER、SRおよび/またはミトコンドリアのCa2+レベルの変化を検出するステップと
を含む方法を含み得る。
【0008】
別の態様では、本発明は、LAR-GECO1.5、LAR-GECO2、およびLAR-GECO3、LAR-GECO4、LAREX-GECO1、LAREX-GECO2、LAREX-GECO3、およびLAREX-GECO4、または前記のいずれか1つと実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドからなる群から選択される低親和性蛍光Ca2+ポリペプチドを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドが、配列番号4、6、8、10、12、14、16または18のうちの1つのアミノ酸配列を有し得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドが、I54A、I330M、およびD327N/I330M/D363Nからなる群から選択される突然変異を含み得る。ポリペプチドは、20μM、または好ましくは約60μM超のCa2+に対するKdを有し得る。
【0010】
別の態様では、本発明は、本発明の低親和性蛍光Ca2+ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または実質的に類似のポリヌクレオチド配列を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドが、以下からなる群から選択される核酸配列を含み得る:
(a)配列番号3、5、7、9、11、13、15または17;
(b)配列番号3、5、7、9、11、13、15または17のうちの1つと少なくとも90%の配列同一性を有し、20μM超または場合により約60μM超のCa2+に対するKdを有する蛍光Ca2+指示薬をコードする核酸配列、但し配列番号1を除く;
(c)配列番号4、6、8、10、12、14、16または18のアミノ酸配列を含む蛍光Ca2+指示薬をコードする核酸配列;および
(d)20μM超または場合により約60μM超の蛍光Ca2+をコードし、配列番号4、6、8、10、12、14、16または18のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列、但し配列番号2を除く。
【0011】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドが、I54A、I330M、およびD327N/I330M/D363Nからなる群から選択されるアミノ酸突然変異をコードする突然変異を含む。
【0012】
他の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチド配列を含むベクターまたは宿主細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、宿主細胞が心筋細胞である。
【0013】
図面を参照して、本発明のいくつかの態様を、限定ではなく例として、図に詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】低親和性Ca2+指示薬のエンジニアリングの概略的戦略を示す図である。
【0015】
図2】LAR-GECO1、LAR-GECO1.5、LAR-GECO2、LAR-GECO3およびLAR-GECO4のアミノ酸配列アラインメントを示す図である。
【0016】
図3】LAREX-GECO1、LAREX-GECO2、LAREX-GECO3およびLAREX-GECO4のアミノ酸配列アラインメントを示す図である。
【0017】
図4】Ca2+に対する広範囲の親和性を有する、インテンシオメトリックおよびレシオメトリック赤色Ca2+指示薬を示す図である。
【0018】
図5】LAR-GECOのインビトロ特性評価を示す。(図5A)LAR-GECO1.5の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。 (図5D)LAR-GECO2の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。 (図5G)LAR-GECO3の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。 (図5J)LAR-GECO4の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。(図5B)Ca2+不含状態(点線)とCa2+結合状態(実線)の両方における、LAR-GECO1.5の吸光度スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。 (図5E)Ca2+不含状態(点線)とCa2+結合状態(実線)の両方における、LAR-GECO2の吸光度スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。 (図5H)Ca2+不含状態(点線)とCa2+結合状態(実線)の両方における、LAR-GECO3の吸光度スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。 (図5K)Ca2+不含状態(点線)とCa2+結合状態(実線)の両方における、LAR-GECO4の吸光度スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。(図5C)pHの関数としてLAR-GECO1.5の蛍光強度を示す図である。 (図5F)pHの関数としてLAR-GECO2の蛍光強度を示す図である。 (図5I)pHの関数としてLAR-GECO3の蛍光強度を示す図である。 (図5L)pHの関数としてLAR-GECO4の蛍光強度を示す図である。
【0019】
図6】LAREX-GECOのインビトロ特性評価を示す。(図6A)LAREX-GECO1の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。 (図6D)LAREX-GECO2の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。 (図6G)LAREX-GECO3の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。 (図6J)LAREX-GECO4の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。(図6B)Ca2+不含状態(点線)とCa2+結合状態(実線)の両方における、LAREX-GECO1の吸光度スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。 (図6E)Ca2+不含状態(点線)とCa2+結合状態(実線)の両方における、LAREX-GECO2の吸光度スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。 (図6H)Ca2+不含状態(点線)とCa2+結合状態(実線)の両方における、LAREX-GECO3の吸光度スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。 (図6K)Ca2+不含状態(点線)とCa2+結合状態(実線)の両方における、LAREX-GECO4の吸光度スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。(図6C)pHの関数としてLAREX-GECO1の蛍光強度を示す図である。 (図6F)pHの関数としてLAREX-GECO2の蛍光強度を示す図である。 (図6I)pHの関数としてLAREX-GECO3の蛍光強度を示す図である。 (図6L)pHの関数としてLAREX-GECO4の蛍光強度を示す図である。
【0020】
図7】HeLa細胞で発現されるER-LAREX-GECO4(n=7)が、ヒスタミン刺激後のSR Ca2+動態を検出することができることを示す図である。ΔR/R=(Rinit-R)/Rinit*100%(式中、Rは470nmでの励起の発光強度と595nmでの励起の発光強度の比であり、Rinitは初期比である)。20μΜヒスタミン適用を灰色バーで示す。
【0021】
図8】不死化マウス心房HL1細胞株における低親和性Ca2+指示薬の比較を示す。(図8A)HL1細胞におけるER-LAR-GECO3およびER-LAR-GECO4の発現を示す図である。生細胞画像は左側で赤色に疑似カラー付けされ、共焦点顕微鏡で撮影されたER-LAR-GECO3およびER-LAR-GECO4の固定画像は右側でグレースケールで示される。(図8B)ER-LAR-GECO3による、カフェイン刺激に対する応答におけるER/SR Ca2+の変化の観察を示す図である。 (図8C)ER-LAR-GECO4による、カフェイン刺激に対する応答におけるER/SR Ca2+の変化の観察を示す図である。 (図8D)ER-LAREX-GECO4による、カフェイン刺激に対する応答におけるER/SR Ca2+の変化の観察を示す図である。 (図8E)ER-LAREX-GECO4による、カフェイン刺激に対する応答におけるER/SR Ca2+の変化の観察を示す図である。 (図8F)ER-LAREX-GECO4による、カフェイン刺激に対する応答におけるER/SR Ca2+の変化の観察を示す図である。ER-LAREX-GECO4のレシオメトリック刺激は、488nm(図8D)および594nm(図8E)のレーザー照射で達成した。(図8F)ΔR/Rトレースは(図8D)および(図8E)から計算した。(図8G)ER-LAR-GECO4(n=21)、ER-LAR-GECO3(n=14)、ER-LAREX-GECO2(n=8)、ER-LAREX-GECO1(n=7)、ER-LAREX-GECO4(n=14)、ER-LAREX-GECO3(n=8)、R-CEPIAer(n=15)についての性能の比較を示す図である。インテンシオメトリック指示薬の場合、ΔFSR=(Finit-Fcaf)/Finit*100%(式中、Fは蛍光強度であり、Finitは初期強度であり、Fcafはカフェイン添加直後の強度である)。レシオメトリック指示薬の場合、ΔRSR=(Rinit-Rcaf)/Rinit*100%(式中、Rは488nmでの励起の発光強度と594nmでの励起の発光強度の比であり、Rinitは初期比であり、Rcafはカフェイン添加直後の比である)。
【0022】
図9】G-CEPIAerベンチマークと比較した、ヒト胚性幹細胞由来心筋細胞(hES-CM)におけるER-LAR-GECOおよびER-LAREX-GECOの比較性能を示す図である。hES-CMを、G-CEPIAerと共に、ER-LAR-GECO、ER-LAREX-GECOまたはR-CEPIAerでコトランスフェクトした。単一細胞内の各レポーターペアからの代表的な発光シグナル(パネルの垂直ペア)を、Dual Viewシステムを通して同時に取得した。いくつかの細胞(すなわち、R-CEPIA-G-CEPIAペア)は、収縮および弛緩と同時に起こる自発振動を受けた。挿入図は、0.8分から1分までのG-CEPIAerおよびR-CEPIAerを発現するhES-CMのタイムラプスを示す。カフェイン添加を灰色バーで示す。
【0023】
図10】iPSC由来心筋細胞(iPSC-CM)におけるサイトゾルおよびSR Ca2+の観察を示す。細胞をG-GECOおよびER-LAREX-GECO3でコトランスフェクトして、カフェイン刺激に対する自発活性および応答を可視化した(灰色バー)。G-GECOに488nmのレーザーで照射した。ER-LAREX-GECO3を488nmおよび594nmのレーザー照明によって励起した。2種類の応答が観察された。(図10A)1つの群の細胞では、カフェイン適用に対する大きな初期応答が観察されたが、自発的SR枯渇およびその後のCa2+振動のカップリングは明らかでなかったことを示す図である。 (図10B)1つの群の細胞では、カフェイン適用に対する大きな初期応答が観察されたが、自発的SR枯渇およびその後のCa2+振動のカップリングは明らかでなかったことを示す図である。(図10C)第2の群の細胞が、カフェイン適用の前(青色矢印)および後で、自発的SR排出と、iPS-CMで検出可能な細胞質Ca2+の変化のカップリングを示すことを示す図である。個々の発光チャネルの強度を左側に示し、処理したレシオメトリックデータセットを右側に示す。
【0024】
図11A】HL1細胞における、G-GECO1およびER-LAR-GECO4による、カフェイン刺激に対する応答におけるサイトゾルCa2+およびER/SR Ca2+の変化の観察を示す図である。
図11B】HL 1細胞における、G-GECO1およびER-LAR-GECO3による、カフェイン刺激に対する応答におけるサイトゾルCa2+およびER/SR Ca2+の変化の観察を示す図である。濃灰色トレースは、関連する左のy軸スケールバー(F/Fo(細胞))で、G-GECO1細胞質発光の平均化応答を表す。濃黒色トレースは、右のy軸スケールバー((F/Fo(SR))で、SR標的化赤色シフト指示薬の平均化応答を表す。個々の細胞応答を薄灰色トレースで示す。カフェイン適用を灰色バーで示す。
【0025】
図12】ER-LAREX-GECO3を使用したレシオメトリック測定による、ヒト胚性幹細胞由来心筋細胞(hES-CM)のER/SR貯蔵の特性評価を示す図である。ER-LAREX-GECO3を488nmおよび594nmのレーザー照明によって励起した。カフェインはSR貯蔵を枯渇させ、Ca2+は、レシオメトリック(黒、iii)トレースでより明確に観察される小さなCa2+振動でゆっくり補充する。
【0026】
図13】hES-CMで細胞質Ca2+(G-GECO)およびER/SR Ca2+(ER-LAREX-GECO4)を観察するための単一波長励起の実証を示している。(図13A)青色光によるG-GECOおよびER-LAREX-GECO4の励起を示す図である。ER-LAREX-GECO4の画像を共焦点顕微鏡によってさらに撮影したところ(右のグレースケール画像)、これらの細胞型で通常組織化されていない配置のSRを示した。(図13B)カフェイン処理に対する応答におけるhES-CMのタイムラプスを示す図である。480nm LEDを使用して、G-GECOとER-LAREX-GECO4の両方を励起した。シグナルはデュアルビューシステムによって10Hzで同時に観測される。カフェイン適用を灰色バーで示す。
【0027】
図14】電気ペーシング下でER-LAREX-GECO3を使用したレシオメトリック測定によってiPSC-CMのER/SR Ca2+動態を監視することができることを示している。(図14A)0.5Hzおよび1.0Hzでの電気ペーシングに応答してER-LAREX-GECO3を発現するiPSC-CMのタイムラプスを示す図である。ER-LAREX-GECO3を、レシオメトリック画像化を取得するために、470nm(i)および595nm(ii)のLED照明によって励起した。シグナルを25Hzで観測する。(図14B図14Aから計算したF/F0(式中、Fは蛍光強度であり、F0は静止強度である)を示す図である。Rは、黒線(iii)で示されるF/F0(ex470)/F/F0(ex595)の比である。細胞をC-Pace EP(ION OPTIX)によってペーシングし、電圧条件を15Vで設定した。灰色ボックスは、細胞を電極で刺激したタイムスロットを示す。
【0028】
図15】心筋細胞の同一性を確認するための筋節成分であるトロポニンTおよびαアクチニンの免疫蛍光染色により、細長い外観ではなく典型的な基本の円形を示す、幹細胞由来心筋細胞の免疫蛍光特性評価を示す図である。これらの混合集団内では、細胞のごく一部が二核性であり、図13Aとは対照的に、細胞成熟の進化を潜在的に示す、明らかにより組織化されたSERCA染色の一部の領域がある。スケールバー、10ミクロン。ズームパネルは示される主画像から取った。
【0029】
図16】ミトコンドリアのカルシウム動態をレシオメトリック観察するためのHeLa細胞におけるmt-LAREX-GECO4の発現を示す。(図16A)mt-LAREX-GECO4の細胞内分布を示す図である。スケールバーは10μmを示す。(図16B)20μMヒスタミンに応答して、ミトコンドリアの巨大なCa2+流入が検出されたことを示す図である。mt-LAREX-GECO4を470nmおよび595nmのLED照明によって励起した。ヒスタミン適用を灰色バーで示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に示される詳細な説明および添付の図面は、本発明の種々の実施形態の説明として意図しており、発明者によって企図される唯一の実施形態を表すことを意図しているのではない。詳細な説明は、本発明の包括的な理解を提供する目的で特定の詳細を含むが、特許請求される発明は、このような特定の詳細によって限定され得ない。
【0031】
本発明の例は、有用なダイナミックレンジおよびCa2+親和性を有する新規な赤色シフト低親和性Ca2+指示薬のツールボックス、ならびにこのような指示薬をコードするポリヌクレオチド配列を提供し得る。本明細書に記載されるCa2+指示薬は、オルガネラ特異的標的化配列を指示薬分子に融合することにより、オルガネラで選択的に発現および保持され得る。よって、これらの指示薬を、高濃度Ca2+貯蔵、例えば培養心筋細胞のSRまたはミトコンドリアに標的化することができ、単独でまたは他の指示薬と組み合わせて画像化して、これまで典型的には間接的に試験されてきた疾患関連生物学の重要な側面の直接的可視化を可能にすることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明は、LAR-GECO1(K=24μM)[配列番号2]に由来するインテンシオメトリック赤色蛍光低親和性Ca2+指示薬を含み得る。インテンシオメトリック赤色蛍光低親和性Ca2+指示薬を設計するために、カルモジュリン(CaM)とニワトリ砂嚢ミオシン軽鎖キナーゼ(RS20)からの短ペプチドとの間の相互作用を変化させ、Ca2+に対するCaMの親和性を修正することによって、LAR-GECO1の解離定数を調整した。図1に関連して、本明細書に記載される赤色蛍光低親和性Ca2+指示薬の合成でさまざまな戦略を追求した。
【0033】
第1の戦略は、元の非循環置換(ncp)FP末端(すなわち、いわゆる「camgaroo」トポロジー、指示薬のポーチにより小さなコンパニオンを搭載しているため)を元通りにしながら、RS20のN末端をCaMのC末端に融合することによる、指示薬のトポロジーの修正を伴っていた。LAR-GECO1バリアントを表すためにここで使用される循環置換(cp)R-GECO1(PDB ID 4I2Y)の構造を、図1Aの左側に示す。赤色蛍光タンパク質ドメインは、カルモジュリン(橙色円柱)とRS20(灰色円柱)で構成されるCa2+結合ドメインに連結している。Ca2+を紫色球として表す。図1Aの右側には、非循環置換(ncp)LAR-GECO1.5[配列番号4]の描写がある。青色線は、cpリンカーまたはncpトポロジーのCaM-RS20リンカーを表す。
【0034】
代替戦略は、部位特異的突然変異誘発、例えば、CaM-RS20界面のアラニンスキャンによるこの相互作用の弱体化、Ca2+結合部位の外側の位置での突然変異の組み込み、またはCaMのCa2+結合部位への突然変異の組み込みを伴っていた。第2、第3および第4の戦略の例を図1Bに概略的に示す。左側に、戦略2~4の標的化残基を強調したLAR-GECO1.5構造を示す。右側に、LAR-GECO1.5構造と同様に、標的化残基を強調したRS20とCaMの一次配列がある。
【0035】
図1に示される戦略1に基づいて、LAR-GECO1をncpトポロジーに変換して、CaMとRS20がGly-Gly-Gly-Gly-Ser-Val-Aspリンカーによって接続されており、FP末端が回復されているLAR-GECO1.5を得た。理論に制限されるものではないが、この変更されたトポロジーには2つの可能な利点がある。1つ目は、RS20とCaMとの間のリンカーを設計して、有効なKを潜在的に変更することができる可能性があることである。2つ目は、RS20とCaMとの間の直接結合により、これらがERまたはSRの内因性タンパク質との相互作用にあまり利用可能でなくなることである。
【0036】
LAR-GECO1.5はLAR-GECO1と類似のCa2+親和性を有するが、7.4倍のCa2+に対する蛍光応答を維持しており、ncpトポロジーがこの機能に悪影響を及ぼさないことを示している。図4は、緩衝液(10mM MOPS、100mM KCl、pH7.2)中の遊離Ca2+濃度の関数としての正規化された蛍光強度を示している。LAR-GECO1.5のトレースは、LAR-GECO1と本質的に同じである。結果として、ncpトポロジーは、低親和性Ca2+指示薬の設計およびエンジニアリングのために保持された。
【0037】
LAR-GECO1.5をテンプレートとして使用して、戦略2、3および4(ならびに/あるいはこれらの組み合わせ)を調査して、遺伝的バリアントを作成して、これらを大腸菌(Escherichia coli)コロニーの状況で発現させた。コロニーの蛍光画像化を使用して、明るい蛍光クローンを特定し、これらを選抜し、培養し、Ca2+応答および親和性について試験した。この手順により、Ca2+に対する親和性が低下した3つの例示的な指示薬が特定された。
【0038】
アラニンスキャン構築物の中で、Ile54Ala突然変異を有する指示薬(LAR-GECO2[配列番号6]と呼ぶ)は、60μMのCa2+を示し、Ca2+に結合すると蛍光が5.7倍増加することが発見された。Ile330Met突然変異に基づいて、110μMのKを有し、Ca2+に対する蛍光応答が7.5倍の指示薬(LAR-GECO3[配列番号8]と呼ぶ)が発見された。Asp327Asn、Ile330MetおよびAsp363Asnの突然変異に基づいて、540μMのKを有し、Ca2+に対する蛍光応答が13倍の指示薬(LAR-GECO4[配列番号10]と呼ぶ)が発見された。
【0039】
LAR-GECO2、3および4の低い親和性は、特定された突然変異に関連しているため、本発明のいくつかの実施形態は、他のドメインが異なるが、同じまたは類似の機能を保持し、これらの突然変異の1つまたは複数を保持するバリアントポリペプチドを含み得る。
【0040】
ER標的化および保持配列への全ての指示薬の遺伝的融合ならびにHeLa細胞での発現は、ER局在化および明るい赤色蛍光の予想されるパターンを示した。図7は、HeLa細胞で発現されるER-LAREX-GECO4が、ヒスタミン刺激後のER/SR Ca2+動態を検出することができることを示している。
【表1】
【0041】
よって、表1に要約されるように、LAR-GECO2、-3および-4は、インテンシオメトリックで、親指示薬LAR-GECO1よりも親和性が低い赤色蛍光Ca2+指示薬である。
【0042】
別の態様では、本発明は、レシオメトリック低親和性赤色GECOを含む。いくつかの実施形態では、これらの指示薬が、運動に対する感度を減少させ、定量的測定を改善し、二色画像化戦略で単一波長励起を可能にすることができるレシオメトリック特性を有する。よって、いくつかの実施形態では、本発明は、ここでLAREX-GECOと記載される、146μM~1023μMに及ぶCa2+に対する親和性を有する、少なくとも4つの新たなレシオメトリック低親和性赤色GECOを含む。
【0043】
これらの新規な新たな指示薬は、ncpトポロジーに設計された、以前に報告された励起レシオメトリック赤色Ca2+指示薬であるREX-GECO1から誘導した。次いで、上記のLAR-GECO3および-4を設計するために使用したのと同じ突然変異を導入して、新たな指示薬LAREX-GECO1[配列番号12]およびLAREX-GECO2[配列番号14]を作製した。図4、パネルBは、緩衝液(10mM MOPS、100mM KCl、pH7.2)中の遊離Ca2+濃度の関数としての正規化された励起比を示している。励起比=480nm/580nm励起蛍光強度比。KはCa2+の解離定数である。REX-GECO1(Kが240nM)と比較して、LAREX-GECO1およびLAREX-GECO2と呼ばれる新規な指示薬は、それぞれ146μMおよび1023μMという実質的に低いCa2+親和性をもたらす。
【0044】
他の実施形態では、REX-GECO1のCaM部分を、以前に報告されたインテンシオメトリック低親和性赤色Ca2+指示薬であるR-CEPIA1erのCaM部分で置き換えた、さらなるLAREX-GECO誘導体を作製した。LAREX-GECO3[配列番号16]と呼ばれる、結果として得られた新たな指示薬は、564μMのCa2+および23倍のダイナミックレンジを示す。LAREX-GECO3タンパク質をncpトポロジーに変換すると、593μMという類似のKおよび18倍のダイナミックレンジを有するLAREX-GECO4[配列番号18]と呼ばれる別の新たな指示薬が得られた。
【0045】
LAREX-GECOの特性評価を表2に要約する。
【表2】
【0046】
表3は、指示薬のカルシウム親和性の概要を提供する。これらの指示薬の特性評価を以下に記載する。
【表3】
【0047】
心筋細胞におけるCa2+動態の観察
心筋細胞(cardiomyocyte)と呼ばれる心筋細胞(heart muscle cell)では、収縮および弛緩にCa2+の周期的放出および再取り込みが必要であり、結果として、Ca2+は収縮の重要な調節因子となる。典型的には、細胞質濃度は、拡張期範囲(約0.1μM遊離Ca2+)から1桁高い収縮期範囲(約1μM遊離Ca2+)まで変化する。細胞内Ca2+緩衝は重要であるので、この変化をもたらすためには、約100μMの総Ca2+が必要となる。必要なCa2+のほとんどはSRに由来し、SRは細胞体積の一部のみを構成しているため、細胞質よりもはるかに高いCa2+濃度を含有している。結果として、低親和性Ca2+指示薬の欠如により、SRのCa2+動態の観察は困難である。このため、さまざまな化学的阻害剤の存在下または非存在下でのカフェイン誘発性SR排出に対する応答における細胞質Ca2+の間接的測定が典型的に使用される。
【0048】
低親和性Ca2+染料Fluo-5N(K=97μM)が、単離され、透過処理された成人の心室筋細胞におけるSR Ca2+の変化を可視化するために使用されているが、細胞質汚染なしでの特定のSR負荷を達成するのが困難であり、インテンシオメトリック指示薬として、運動アーチファクトに影響されやすくなり得る。幹細胞由来心筋細胞は、心室筋細胞に見られる典型的な空間T管/SR構造を欠いており、したがって、誤った細胞質シグナルを位置情報に基づいて特定することができない。
【0049】
一実施形態では、本発明の指示薬は、これらの課題を軽減し、細胞培養物;および幹細胞由来心筋細胞で直接可視化することができる、SR Ca2+の生理学的拍動間変化を提供することができる。
【0050】
細胞培養物で可視化されたSR Ca2+の生理学的変化
【0051】
多種多様なモデルが心血管研究で使用されている。本発明の一態様では、マウス心房心筋細胞に由来する、HL1細胞株として知られる安定な不死化細胞株の細胞培養物をモデルとして使用する。
【0052】
図8(パネルA、BおよびC)および図11に関連して、HL1細胞株における細胞質G-GECO1の同時発現を用いて、ER-LAR-GECO3およびER-LAR-GECO4を評価した。10mMのカフェイン添加に応答して、細胞質Ca2+シグナルの上昇は、ER/SR Ca2+シグナルの低下を伴い得る。
【0053】
図8、パネルD、EおよびFに関連して、488nmでの励起の発光強度を594nm励起での発光強度で割ることによって、ER-LAREX-GECO4のレシオメトリック画像化を達成した。
【0054】
図8、パネルGに関連して、HL1細胞株におけるカフェイン刺激時の本発明のさまざまな指示薬のインテンシオメトリックまたはレシオメトリック応答(ΔFSRまたはΔRSR)の比較は、ER-LAREX-GECO4およびER-LAREX-GECO3が最大のシグナル変化を示す(それぞれ-72.9+/-15.2%および-76.0+/-16.1%変化)ことを示している。本発明はまた、SRの心筋細胞における周期的な拡張期(約1000~1500μM)から収縮期(約300~600μM)のCa2+変化を検出するための、大きなダイナミックレンジおよび最適なK値を有するER-LAREX-GECO4(ダイナミックレンジ18倍、K=593μM)およびER-LAREX-GECO3(ダイナミックレンジ23倍、K=564μM)を実証するインビトロ特性評価を提供する。
【0055】
幹細胞で可視化されたSR Ca2+の生理学的変化
別の態様では、本明細書に記載される指示薬は、ヒト胚性幹細胞(hES)またはヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)に由来する心筋細胞などにおける、SR Ca2+レベルの変化の可視化を提供し得る。このような幹細胞は、遺伝性心疾患のモデル、またはインビトロでの薬物毒性および薬物スクリーニングのプラットフォームとなり得る。
【0056】
図9に関連して、緑色低親和性指示薬G-CEPIAer(ダイナミックレンジ4.7倍、K=672μMを報告)を内部標準として使用して、細胞表現型の変動性および未成熟性の影響を最小限に抑えた。本明細書に記載される指示薬を、幹細胞由来心筋細胞で、緑色低親和性指示薬G-CEPIAerと比較した。本発明は、カフェイン適用に応答して引き起こされるSR Ca2+枯渇に加えて、生理学的拍動間SR排出の可視化を可能にすることができる。
【0057】
強度トレースから、赤色指示薬の応答(ΔFSR)を、G-CEPIAerについてのペアΔFSRで割って、同じ細胞での比較R赤色/緑色比を得ることができる(赤色チャネルからのΔFSR/G-CEPIAerからのΔFSR)。ER-LAREX-GECO3(R赤色/緑色=1.03+/-0.08)これはG-CEPIAerと同等に見える。ER-LAREX-GECO3とER-LAREX-GECO4の両方(R赤色/緑色=0.71+/-0.02)が、この系でR-CEPIAer(R赤色/緑色=0.60+/-0.06)よりも性能が良いように見え、これはHL1培養細胞株およびインビトロデータで得られた結果と一致している。例えばG-CEPIAerトレースのみを使用した、細胞間の孤立した比較により、現在のインビトロ幹細胞由来心筋細胞モデルの弱点である可能性がある、個々の応答の有意な不均一性が明らかになり得る。
【0058】
レシオメトリックLAREX-GECO3およびLAREX-GECO4指示薬は、インビトロ系で利点を提供する可能性があり、幹細胞モデルでさらに特徴付けることができる。
【0059】
いくつかのインテンシオメトリック指示薬と比較したレシオメトリックの利点は、細胞運動を自己補正することができることである。SRの排出は、培養された心筋細胞の通常の振動収縮および弛緩よりも大きな運動を引き起こし得るので、これはカフェイン刺激法にとって特に問題である。このレシオメトリック画像化は、自発的拍動間Ca2+放出および再取り込みの観察を提供する。図12に関連して、カフェインを適用してSRのCa2+濃度を枯渇させた後、SRへのCa2+の再取り込み中の振動を簡単に検出することができる。
【0060】
別の態様では、図14に示されるように、電気ペーシング下でのiPSC-CMの拍動間Ca2+濃度の変化もER-LAREX-GECO3によって検出することができる。
【0061】
レシオメトリック指示薬は、図12に示されるSR排出および補充の情報のほとんどを捕捉するように思われる、図6に示される青緑色光スペクトルのCa2+依存性励起を有するので、本発明の実施形態は、図13に示されるように、幹細胞由来心筋細胞におけるG-GECO1およびER-LAREX-GECO4を使用した単一波長二色画像化を含み得る。これは、照明光源を切り替える必要性を避けるので、状況によっては望ましくなり得る、高フレームレート画像化または長時間の観察のための戦略となる。
【0062】
図9に関連して、たとえそれらが全て目に見えて収縮していたとしても、G-CEPIAを発現している全ての細胞で生理学的SR Ca2+枯渇を検出することができるわけではないため、本発明は、図10に示されるように、iPSC心筋細胞でのG-GECOおよびER-LAREX-GECO3の同時発現を使用したサイトゾルCa2+観察によるSR Ca2+放出のレシオメトリック測定を可能にし得る。
【0063】
図10パネルBに関連して、いくつかの細胞は、初期カフェイン誘発SR Ca2+枯渇と細胞質Ca2+蓄積との間の初期カップリングを有するように見えるが、その後の振動は関連していないことが分かる。しかしながら、図10パネルCに関連して、同じ幹細胞分化からの他の細胞は、自発的サイトゾルCa2+過渡応答と隣接SRのCa2+変動のカップリングを示し、カフェイン処理前のサイトゾルCa2+に寄与するSR貯蔵からの生理学的Ca2+放出を示している。カフェイン適用後、これらの細胞は、細胞質Ca2+一過性回復の振幅とSR Ca2+含有量の段階的回復とその後の振動中の細胞質シグナルとSRシグナルの永続性のあるカップリングとの間の相関を示す。
【0064】
この細胞の自律的挙動は、細胞質Ca2+トレースのみを使用しても特定できない可能性があり、インビトロ成熟の異なる段階を反映している可能性がある。これを支持して、幹細胞由来心筋細胞のごく一部がSERCA(商標)などの成分に対して高次構造を発達させ、これが、図13に示されるように、興奮と収縮のカップリングに関与していると考えられる。
【0065】
ミトコンドリアでのCa2+動態の観察
カルシウムシグナル伝達がミトコンドリア機能の調節に重要な役割を果たすことが知られている。ミトコンドリアカルシウム(Ca2+)の過負荷は、ミトコンドリアの腫脹を誘発するアポトーシス促進方法の1つである。よって、異なる刺激に対する細胞状態または応答の予測におけるCa2+動態のリアルタイムの監視が興味深いだろう。しかしながら、ER/SRと同様に、ミトコンドリアも高濃度のCa2+を含有しているので、ミトコンドリアでのカルシウムシグナル伝達の研究に使用するために最適化されたバリアントは比較的少数である。本発明の低親和性指示薬が、解決策を提供することができる。図16は、ミトコンドリアのカルシウム動態をレシオメトリック観察するためのHeLa細胞におけるmt-LAREX-GECO4の発現を示す。(図16A)mt-LAREX-GECO4の細胞内分布。スケールバーは10μmを示す。(B)20μMヒスタミンに応答して、ミトコンドリアの巨大なCa2+流入が検出された。mt-LAREX-GECO4を470nmおよび595nmのLED照明によって励起した。ヒスタミン適用を灰色バーで示す。
【0066】
ポリペプチドおよびヌクレオチド配列
本発明の態様は、示されるアミノ酸配列、または実質的に類似のアミノ酸配列を有する、本明細書に記載される蛍光ポリペプチドを含む。実質的に類似のアミノ酸配列は、同じまたは類似の機能を有する、少なくともあるレベルの配列同一性を有する。多くのレベルの配列同一性がポリペプチドの同定に有用であり、このようなポリペプチドが同じまたは類似の機能または活性を有することは、当業者には十分理解されている。同一性%が90%以上(すなわち、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%)が有用となり得る。
【0067】
本発明の例では、ポリペプチドが、同様に蛍光性であり、20μM超、より好ましくは約60μM超のKdで、Ca2+に対する低親和性を有する場合、同じまたは類似の機能を有する。しかしながら、前駆体蛍光ポリペプチドLAR-GECO1およびREX-GECO1は、実質的に類似した配列を有するものとして含まれず、前駆体蛍光ポリペプチドをコードするいずれの核酸配列も含まれないことが理解されるだろう。
【0068】
本明細書で使用される場合、「核酸」はポリヌクレオチドを意味し、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマーを含む。核酸はまた、断片および修飾ヌクレオチドも含み得る。よって、「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」または「核酸断片」という用語は互換的に使用され、一本鎖または二本鎖であり、場合により合成、非天然または変化したヌクレオチド塩基を含有するRNAまたはDNAのポリマーである。ヌクレオチド(通常は5’-一リン酸型で見られる)は、以下のように1文字で表記される:「A」はアデニル酸またはデオキシアデニル酸(それぞれRNAまたはDNA)、「C」はシチジル酸またはデオキシシチジル酸、「G」はグアニル酸またはデオキシグアニル酸、「U」はウリジル酸、「T」はデオキシチミジル酸、「R」はプリン(AまたはG)、「Y」はピリミジン(CまたはT)、「K」はGまたはT、「H」はAまたはCまたはT、「I」はイノシン、「N」は任意のヌクレオチド。
【0069】
「相同性」、「相同な」、「実質的に類似の」および「実質的に対応する」という用語は、本明細書で互換的に使用される。これらは、1つまたは複数のヌクレオチド塩基の変化が、核酸断片が遺伝子発現を媒介するまたは一定の表現型をもたらす能力に影響を及ぼさない核酸断片を指す。これらの用語はまた、最初の非修飾断片と比較して、得られる核酸断片の機能的特性を実質的に変化させない1つまたは複数のヌクレオチドの欠失または挿入などの核酸断片の修飾も指す。したがって、当業者が理解するように、本発明は特定の例示的な配列よりも多くを包含することが理解される。
【0070】
本発明はまた、本明細書に記載されるアミノ酸配列、または実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列、ならびに実質的に類似の核酸配列を含み得る。実質的に類似の核酸配列は、90%以上の配列同一性(すなわち、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%)を有し得る。
【0071】
核酸またはポリペプチド配列の文脈における「配列同一性」または「同一性」は、特定の比較窓にわたる最大の対応のためにアラインメントされた場合に同じである、2つの配列中の核酸塩基またはアミノ酸残基を指す。よって、「配列同一性の割合」は、比較窓上で最適にアラインメントされた2つの配列を比較することによって決定される値を指し、比較窓内のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の一部は、2つの配列の最適なアラインメントのための参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して、付加または欠失(すなわちギャップ)を含み得る。この割合は、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両配列中に生じる位置の数を決定して、一致した位置の数を得て、一致した位置の数を比較窓中の位置の総数で割り、この結果に100を掛けて、配列同一性の割合を得ることによって計算される。これらの同一性は、本明細書に記載されるプログラムのいずれかの使用を含めて、当業者が決定することができる。
【0072】
配列アラインメントおよび同一性または類似性%の計算は、それだけに限らないが、LASERGENEバイオインフォマティクス計算スイート(DNASTAR Inc.、Madison、Wis.)のMegAlign(商標)プログラムを含む、相同配列を検出するために設計されたさまざまな比較方法を使用して決定することができる。本出願の文脈内では、配列分析ソフトウェアを分析に使用する場合、分析の結果が、特に指定されない限り、参照されるプログラムの「デフォルト値」に基づくことが理解される。本明細書で使用される場合、「デフォルト値」は、最初に初期化した際に元々ソフトウェアと共にロードされる値またはパラメータのセットを意味する。
【0073】
「アラインメントのClustal Vメソッド」は、Clustal Vとラベル付けされ(HigginsおよびSharp、CABIOS.5:151~153(1989);Higgins,D.G.ら(1992)Comput.Appl.Biosci.8:189-191)、LASERGENEバイオインフォマティクス計算スイート(DNASTAR Inc.、Madison、Wis.)のMegAlign(商標)プログラムに見られるアラインメントメソッドに対応する。複数のアラインメントの場合、デフォルト値はGAP PENALTY=10およびGAP LENGTH PENALTY=10に対応する。Clustalメソッドを使用したペアワイズアラインメントおよびタンパク質配列の同一性%の計算のデフォルトパラメータは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5である。核酸の場合、これらのパラメータはKTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4およびDIAGONALS SAVED=4である。Clustal Vプログラムを使用して配列をアラインメントした後、同じプログラムの「配列距離」表を表示することによって「同一性%」を取得することが可能である。
【0074】
「アラインメントのBLASTNメソッド」は、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)が提供する、デフォルトパラメータを使用してヌクレオチド配列を比較するためのアルゴリズムである。
【0075】
さらに、当業者であれば、本発明に包含される実質的に類似の核酸配列が、本明細書に例示される配列、または本明細書に開示され、本明細書に開示される核酸配列のいずれかと機能的に同等であるヌクレオチド配列の任意の部分とハイブリダイズする能力(中程度にストリンジェントな条件下、例えば、0.5xSSC、0.1%SDS、60℃)によっても定義されることを認識する。ストリンジェンシー条件を調整して、遠縁の生物からの相同配列などの中程度に類似の断片から、近縁の生物からの機能的酵素を複製する遺伝子などの非常に高度に類似の断片までスクリーニングすることができる。ハイブリダイゼーション後の洗浄が、ストリンジェンシー条件を決定する。
【0076】
「選択的にハイブリダイズする」という用語は、非標的核酸配列とのハイブリダイゼーションよりも検出可能により大きな程度(例えば、バックグラウンドに対して少なくとも2倍)および非標的核酸配列を実質的に排除する程度の、特定の核酸標的配列との核酸配列の、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下での、ハイブリダイゼーションへの言及を含む。選択的ハイブリダイズ配列は、典型的には、互いに少なくとも約80%の配列同一性、または85%、90%もしくは95%の配列同一性、最大100%および100%を含む配列同一性(すなわち、完全に相補的)を有する。
【0077】
「ストリンジェントな条件」または「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という用語は、プローブがその標的配列に選択的にハイブリダイズする条件への言及を含む。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、状況によって異なる。ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件のストリンジェンシーを制御することにより、プローブと100%相補的な標的配列を同定することができる(相同プロービング)。あるいは、より低い程度の類似性が検出されるように、ストリンジェンシー条件を調整して、配列内のいくつかのミスマッチを可能にすることができる(異種プロービング)。一般に、プローブは約1000ヌクレオチド長未満であり、場合により500ヌクレオチド長未満である。
【0078】
典型的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度が約1.5M Naイオン未満、典型的にはpH7.0~8.3で約0.01~1.0M Naイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば、10~50ヌクレオチド)の場合、少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチド超)の場合、少なくとも約60℃である条件となる。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤を添加して達成することもできる。例示的な低ストリンジェンシー条件には、37℃で30~35%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝液によるハイブリダイゼーション、および50~55℃で1×~2×SSC(20×SSC=3.0M NaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム)での洗浄が含まれる。例示的な中程度のストリンジェンシー条件には、37℃で40~45%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSでのハイブリダイゼーション、および55~60℃で0.5×~1×SSCでの洗浄が含まれる。例示的な高ストリンジェンシー条件には、37℃で50%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSでのハイブリダイゼーション、および60~65℃で0.1×SSCでの洗浄が含まれる。
【0079】
特異性は典型的には、ハイブリダイゼーション後の洗浄の関数であり、重要な因子は最終洗浄溶液のイオン強度および温度である。DNA-DNAハイブリッドの場合、TはMeinkothら、Anal.Biochem.138:267~284(1984)の式から近似できる:T=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)-0.61(%form)-500/L(式中、Mは一価カチオンのモル濃度であり、%GCはDNA中のグアノシンおよびシトシンヌクレオチドの割合であり、%formはハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの割合であり、Lは塩基対中のハイブリッドの長さである)。Tは、(定義されたイオン強度およびpHの下で)相補的標的配列の50%が完全に一致したプローブにハイブリダイズする温度である。Tは、1%のミスマッチごとに約1℃低下する;よって、T、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件を、所望の同一性の配列とハイブリダイズするように調整することができる。例えば。90%超の同一性を有する配列が求められる場合、Tを10℃下げることができる。一般に、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度およびpHで、特定の配列とその相補物についての熱融点(T)よりも約5℃低くなるように選択される。しかしながら、厳格にストリンジェントな条件は、熱融点(T)よりも1、2、3または4℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができる;中程度にストリンジェントな条件は、熱融点(T)よりも6、7、8、9または10℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができる;低ストリンジェンシー条件は、熱融点(T)よりも11、12、13、14、15または20℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができる。方程式、ハイブリダイゼーションおよび洗浄組成、ならびに所望のTを使用して、当業者であれば、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄溶液のストリンジェンシーの変動が本質的に説明されることを理解するだろう。所望のミスマッチの程度が45℃(水溶液)または32℃(ホルムアミド溶液)未満のTをもたらす場合、より高い温度を使用することができるようにSSC濃度を増加させることが好ましい。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範な手引きは、Tijssen,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes、パートI、第2章「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays」、Elsevier、ニューヨーク(1993);およびCurrent Protocols in Molecular Biology、第2章、Ausubelら編、Greene Publishing and Wiley-Interscience、ニューヨーク(1995)に見出される。ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件は、少なくとも10、30、60、90、120または240分間適用することができる。
【0080】

本発明の実施形態を、以下の例を参照して説明する。これらの例は、例示のみのために提供される。
【0081】
例1A:LAR-GECOのエンジニアリング
【0082】
pBAD/His B vector(商標)(Life Technologies)のLAR-GECO1を、LAR-GECO1.5を組み立てるための最初のテンプレートとして使用した(戦略1-図1)。LAR-GECO1の開発は、許可される場合、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Wuら Red fluorescent genetically encoded Ca2+indicators for use in mitochondria and endoplasmic reticulum、Biochem J.2014年11月15日;464(1):13~22に記載されている。
【0083】
RS20のN末端とLAR-GECO1のCaMのC末端をアミノ酸配列(GGGGSVD)によって接続した一方、元のncp FP末端をオーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって元通りにした。LAR-GECO2、3および4の開発につながった戦略2、3および4を調査するために、製造業者の指示に従ってQuikchange Lightning Site-Directed Mutagenesis Kit(商標)(Agilent)を使用して、表4に列挙される点突然変異をLAR-GECO1.5に導入した。特定の突然変異を含むオリゴヌクレオチドを、Agilentのオンライン突然変異誘発プライマー設計プログラムを使用して設計した。
【表4】
【0084】
例1B:LAREX-GECOのエンジニアリング
LAREX-GECO1および2を設計するために、pBAD/His Bベクター(Life Technologies)のREX-GECO1を、最初に上記のようにオーバーラップ伸長PCRによってncpトポロジーに変換した。次いで、LAR-GECO3および4からの点突然変異を、前記のようにQuikchange Lightning Site-Directed Mutagenesis Kit(Agilent)を使用してREX-GECO1のこのncpバージョンに導入して、それぞれLAREX-GECO1および2を作製した。LAREX-GECO3を構築するために、REX-GECO1のCaMドメインを、オーバーラップ伸長PCRによってR-CEPIA1erのCaMドメインに置き換えた。pCMV R-CEPIA1er(商標)は、Masamitsu Iino(商標)(Addgeneプラスミド番号58216)からの贈り物であった。LAREX-GECO4は、LAREX-GECO3のトポロジーを上記のようにncpに変更することによって構築した。全てのLAR-GECOおよびLAREX-GECO構成物の配列を、配列決定によって検証した。
【0085】
全てのLAR-GECOおよびLAREX-GECOバリアントのCa2+親和性を試験するために、pBAD/His Bベクター(Life Technologies)の各バリアントを大腸菌(E.coli)株DH10B(商標)(Invitrogen)に電気穿孔した。次いで、これらのバリアントを含む大腸菌(E.coli)を、400μg/mLアンピシリン(Sigma)および0.02%(wt/vol)L-アラビノース(Alfa Aesar)を補充した10cm LB-寒天ペトリ皿で、37℃で一晩培養した。次いで、これらのペトリ皿を室温で24時間置いた後、画像化した。画像化中、大腸菌(E.coli)コロニーを照射するための542/27nm(LAR-GECOバリアントの場合)、または438/24nmと542/27nmの両方(LAREX-GECOバリアントの場合)の励起フィルター、および609/57nmの発光フィルターを使用して、ペトリ皿ごとに画像を捉えた。次いで、各バリアントの赤色蛍光を発する単一の大腸菌(E.coli)コロニーを選抜し、100μg/mLアンピシリンおよび0.02%(wt/vol)L-アラビノースを含む4mL液体LBで、37℃で一晩培養した。次いで、製造業者の指示に従ってB-PER(商標)(Pierce)によって液体LB培養物からタンパク質を抽出した。次いで、各バリアントの抽出したタンパク質溶液をCa2+滴定に供した。Ca2+滴定では、抽出したタンパク質溶液を、さまざまな遊離Ca2+濃度のCa2+緩衝液に添加した。Ca2+/HEDTA、およびCa2+/NTA緩衝液を、Ca2+飽和およびCa2+不含緩衝液(30mM MOPS、100mM KCl、10mMキレート試薬、pH7.2、10mM Ca2+有または無)を混合して0mM~1.3mMの緩衝液Ca2+濃度を達成することによって調製した。さまざまなCa2+濃度の各バリアントの蛍光スペクトルを、Safire2(商標)蛍光マイクロプレートリーダー(Tecan)を使用して記録した。次いで、これらの蛍光強度をCa2+濃度に対してプロットし、ヒルの式に当てはめて各バリアントのCa2+に対する解離定数を計算した。
【0086】
例2:インビトロ特性評価
【0087】
LAR-GECOの詳細な特性評価のために、Wu J、Liu L、Matsuda T、Zhao Y、Rebane A、Drobizhev MらImproved orange and red Ca2+indicators and photophysical considerations for optogenetic applications.ACS Chem Neurosci.2013;4:963~972(Wuら2013)に記載されるようにタンパク質を発現させ、精製した。10mM EGTAまたは10mM CaNTA、30mM MOPS、100mM KCl、pH7.2を含有する溶液でスペクトル測定を実施した。LAR-GECOおよびLAREX-GECOの蛍光量子収率を測定するために、mCherryおよびLSS-mKate2を標準として使用した。Ca2+についての蛍光量子収率、消衰係数、pK、Kの測定手順は、Wuら2013に記載されている。Ca2+滴定では、精製タンパク質をCa2+/HEDTAおよびCa2+/NTA緩衝液に添加し、蛍光測定を上記のように実施した。
【0088】
図5に関連して、LAR-GECO1.5、LAR-GECO2、LAR-GECO3およびLAR-GECO4のインビトロ特性評価は、4つ全てのncp Ca2+指示薬が、その前駆体であるLAR-GECO1と実質的に同一のスペクトル特性を共有することを示している。さらに、これらの新たなLAR-GECOは、Ca2+不含状態で類似のpHに対する単相性依存を示す。Ca2+に結合すると、このpHへの依存が、単相性から二相性に切り替わり、これはLAR-GECO1のpH依存性と非常に類似である。
【0089】
図6に関連して、新たなLAREX-GECOは、その前駆体であるREX-GECO1と非常に類似のスペクトル特性を共有している。さらに、これらのLAREX-GECOは、REX-GECO1と類似のpH依存性プロファイルを示し、pH7~9の間に生じる比の最大のCa2+依存変化を有する。
【0090】
例3:哺乳動物細胞画像化用のプラスミド
【0091】
ER標的化配列(MLLPVPLLLGLLGAAAD[配列番号19])およびER保持シグナル配列(KDEL)を含むプライマーを使用して、ER標的化GECO遺伝子を作製した。PCR産物をBamHI(商標)およびEcoRI(商標)制限酵素(Thermo)による消化に供した。消化されたDNA断片を、以前に同じ2つの酵素で消化された修飾pcDNA3プラスミドと連結した。プラスミドをGeneJET miniprep kit(商標)(Thermo)で精製し、次いで、配列決定して、挿入された遺伝子を確認した。
【0092】
例4:細胞培養条件およびトランスフェクション
【0093】
HL1細胞株を培養するために、37℃で一晩、フラスコをゼラチン/フィブロネクチンでプレコーティングした。細胞を、補充Claycomb Medium(商標)(10%ウシ胎児血清(Sigma Aldrich 12103C(Batch 8A0177))、1U/mlペニシリン/ストレプトマイシン、0.1mMノルエピネフリンおよび2mM L-グルタミンを含むClaycomb Medium)で培養し、コンフルエントに達したら1:3に分割した。トランスフェクション試薬、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を使用して細胞を48時間トランスフェクトした後、画像を取得した。
【0094】
OxF2ヒト胚性幹細胞株を、DMEM/F12(商標)(Invitrogen)、20%Knockout Serum Replacer(商標)(KSR、Invitrogen)、1mMグルタミン、1%非必須アミノ酸、125μMメルカプトエタノール、0.625%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび4ng/ml塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(Peprotech)を含有するES培地中マウス胚性線維芽細胞(MEF)上で培養した。分化の1週間前に、ESコロニーを手動で切断し、mTeSR1培地(商標)(Stemcell)のGeltrex(商標)(Gibco)コーティング6ウェルプレートに配置した。
【0095】
ヒトiPSC由来心筋細胞(ヒトiPSC心筋細胞-男性|ax2505(商標))をAxol Bioscienceから購入した。細胞を6ウェルプレートのうちの2つのウェルに蒔き、AxolのCardiomyocyte Maintenance Medium(商標)で8日間培養して、80~90%コンフルエントにした。次いで、細胞をフィブロネクチン/ゼラチン(0.5%/0.1%)でコーティングされたガラス底皿に再度蒔き、トランスフェクション試薬、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を使用してトランスフェクトした。タイロード緩衝液を最終観察に使用した。
【0096】
HeLa細胞を、10%ウシ胎児血清(Invitrogen)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(Sigma-Aldrich)中の自家製35mmガラス底皿で培養した。Lipofectamine 2000(Invitrogen)のトランスフェクション試薬を使用して、細胞をCMV-mito-LAREX-GECO4、ER-LAREX-GECO3およびER-LAREX-GECO4でトランスフェクトした。
【0097】
例5:ヒト多能性幹細胞からの心筋細胞の分化
【0098】
このプロトコルは、Lian X、Zhang J、Azarin SM、Zhu K、Hazeltine LB、Bao Xら Directed cardiomyocyte differentiation from human pluripotent stem cells by modulating Wnt/β-catenin signaling under fully defined conditions.Nat Protoc.2013;8:162~175に報告される方法に基づく。ES細胞コロニーを、Accutaseを使用して単一細胞に解離し、rock阻害剤、Y27632(10μM)を添加したmTeSR1中Geltrexでコーティングした6ウェルプレートに、1ウェル当たり0.5×10個細胞で入れた。3日目に、80~90%コンフルエンスで、培地を12μM GSK-3阻害剤、CHIR 99021Tocris(商標)を含有するRPMI/B27(インスリンを含まないB27補充-Gibco)に交換した。24時間後、培地を交換してCHIRを除去した。48時間後、各ウェルからの培地の半分(1ml)を吸引し、最終濃度5μMのwnt阻害剤、IWP 2(商標)(Tocris)を含有する新鮮なRPMI/B27で置き換えた。48時間後、IWPを除去し、さらに48時間後、培地を、インスリンを含むRPMI+B27(商標)(Gibco)に交換した。培養物をこの培地で維持し、この培地を週に2回交換した。次いで、細胞をフィブロネクチン/ゼラチン(0.5%/0.1%)でコーティングされたガラス底皿に再度蒔き、トランスフェクション試薬、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を使用してトランスフェクトした。
【0099】
例6:hES由来心筋細胞の特性評価のための免疫染色
【0100】
一次抗体は、マウスモノクローナル抗アクチニン(Sigma番号A7811)、ウサギポリクローナル抗トロポニンI(abcam、ab47003)およびマウスモノクローナル抗SERCA2 ATPase(商標)(ABR番号MA3-910)とした。二次抗体は、Fab断片抗マウス488および抗ウサギ568(商標)(Molecular Probes)とした。手順は以下の通りであった:4%パラホルムアルデヒド固定(室温で10分間)、Tris緩衝生理食塩水中0.1%Triton x-100(TBST)で透過処理および洗浄、TBST中2%BSAと0.001%アジ化ナトリウムでブロッキング(室温で1時間)、1:200の一次抗体(室温2時間)、TBSTで3回洗浄(1洗浄当たり5分)、二次抗体1:1000(室温で1時間)、TBSTで3回洗浄(1洗浄当たり5分)、カバースリップを乾燥させ、Vectorshield(商標)(Vector Laboratories)にマウント。蛍光画像化は、488nmおよび543nm励起で63倍オイルレンズを使用してLeica SP5共焦点顕微鏡で行った。
【0101】
例7:生細胞画像化条件
【0102】
非レシオメトリック画像化では、60倍の対物レンズ(NA 1.42(商標)、Olympus)および多波長LED光源(OptoLED(商標)、CARIN)を備えた倒立顕微鏡(IX81(商標)、Olympus)を使用した。青色(470nm)および緑色(550nm)励起を使用して、それぞれG-GECOまたはG-CEPIAおよびLAR-GECOを照明した。GFPフィルターセット(DS/FF02-485/20-25、T495lpxrダイクロイックミラー、およびET525/50発光フィルター)を使用して、HL1細胞のG-GECOシグナルを観察した。RFPフィルターセット(DS/FF01-560/25-25、T565lpxrダイクロイックミラー、およびET620/60発光フィルター)を使用して、HL1細胞のLAR-GECO3およびLAR-GECO4のシグナルを観察した。クワッドバンドバンドパスフィルター(DS/FF01-387/485/559/649-25、Semrock)、ダイクロイッククワッドエッジビームスプリッター(DS/FF410/504/582/669-Di01-25x36(商標)、Semrock)およびクワッドバンドバンドパス発光フィルター(DS/FF01-440/521/607/700-25(商標)、Semrock)を含むクワッドバンドフィルターセットを使用して、ES-CMでG-CEPIAとLAR-GECOまたはG-GECOとLAR-GECOを同時に観察した。蛍光シグナルは、ソフトウェア(CellR(商標)、Olympus)によって制御されるEM-CCDカメラ(ImagEM(商標)、Hamamatsu)への緑色(520/30nm)および赤色(630/50nm)チャネルを有するDual-Viewシステム(DC2(商標)、Photometrics)を通して記録した。
【0103】
LAREX-GECOによるHL1細胞、ES-CMおよびiPS-CMのレシオメトリック画像化には、63倍1.40 NAオイル対物レンズおよびマルチアルゴンイオンレーザーを備えた倒立共焦点顕微鏡ZEISS LSM710(商標)を使用した。HL1細胞では、LAREX-GECOの赤色蛍光および遠赤色シグナルの画像を、488nm励起および594nm励起を使用して、それぞれ、560~710nmおよび630~720nmの波長範囲で検出した。iPS-CMでの同時のレシオメトリックERと細胞質Ca2+過渡応答では、緑色、赤色および遠赤色シグナルを、488nm励起および594nm励起を使用して、それぞれ、492~540nm、630~728nmおよび630~728nmの波長範囲で検出した。
【0104】
HeLa細胞(図7および図16)およびiPSC-CM(図14)でのレシオメトリック画像化では、63倍対物レンズ(NA 1.4、Zeiss)および多波長LED光源(pE-4000、CoolLED)を備えた倒立顕微鏡(D1、Zeiss)を使用した。青色(470nm)および橙色(595nm)励起を使用して、レシオメトリック励起のためにLAREX-GECOを照明した。LAREXの画像化には、RFPフィルターセット(T590lpxrダイクロイックミラー、およびET 590lp発光フィルター)を使用した。蛍光シグナルは、ソフトウェア(HC Image)によって制御されるCMOSカメラ(ORCA-Flash4.0LT、HAMAMATSU)を使用して記録した。
【0105】
例8:CMV-mito-LAREX-GECO4ベクターの構築
【0106】
LAREX-GECO4を、以下の通りpcDNA3-LAREX-GECO4(ER標的化および保持配列なし)からサブクローニングした:5’BamHIリンカー(MT-BamHI-LAREX_GECO4-F)および3’HindIIIリンカー(MT-HindIII-LAREX-GECO4-R)を有するPCRプライマーを使用して、pcDNA3-LAREX-GECO4プラスミドから、ER標的化(MLLPVPLLLGLLGAAAD[配列番号19])および保持配列(KDEL)を含まないLAREX-GECO4を増幅し、BamHI、HindIII消化CMV-mito-LAR-GECO1.2(Addgene 番号61245)と連結してLAR-GECO1.2断片を置き換えた。開始コドン(ATG)を付加してER標的化配列を置き換え、終止コドン(TAA)を保持配列の代わりに付加した。
【0107】
クローニングステップに使用されるオリゴヌクレオチドは、MT-BamHI-LAREX_GECO4-F:5’-GATCGGATCCAACCATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGGAT-3’[配列番号20]およびMT-HindIII-LAREX_GECO4-R:5’-GATCAAGCTTTTACTTGTACAGCTCGTCCATGCC-3’[配列番号21]である。
【0108】
配列表
本出願に関連する配列表は、e-PCTを介して電子形式で提出され、全体が参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は55326-272-Mar1-2019.txtである。テキストファイルのサイズは48KBであり、テキストファイルは2019年3月1日に作成された。
【0109】
解釈
本発明の説明を、例示および説明の目的で提示してきたが、網羅的であること、または開示される形態の発明に限定されることは意図していない。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、多くの修正および変形が当業者には明らかであるだろう。本発明の原理および実際の用途を最もよく説明し、当業者が、企図される特定の使用に適したさまざまな修正を加えたさまざまな実施形態について発明を理解できるようにするために、実施形態を選択し、説明した。以下の説明が本発明の具体的な実施形態または特定の使用に関するものである限り、それは例示のみを意図しており、特許請求される発明を限定するものではない。
【0110】
本明細書に添付される特許請求の範囲における全ての手段またはステップと機能要素の対応する構造、材料、作用および等価物は、具体的に特許請求される他の特許請求される要素と組み合わせて機能を実施するための任意の構造、材料または作用を含むことを意図している。
【0111】
本明細書における「一実施形態」、「ある実施形態」等への言及は、記載される実施形態が特定の態様、特徴、構造または特性を含み得るが、全ての実施形態がその態様、特徴、構造または特性を必ずしも含むわけではないことを示す。さらに、このような句は、必ずしもそうではないが、本明細書の他の部分で言及される同じ実施形態を指す場合がある。さらに、特定の態様、特徴、構造または特性がある実施形態に関連して記載されている場合、このような結びつきまたは組み合わせが明示的に記載されているかどうかにかかわらず、このような態様、特徴、構造または特性を他の実施形態に組み合わせる、影響を及ぼすまたは結びつけることは当業者の知識の範囲内である。換言すれば、2つの間に自明のもしくは本質的な矛盾がない限り、または明示的に除外されない限り、任意の要素または特徴を、異なる実施形態において任意の他の要素または特徴と組み合わせることができる。
【0112】
特許請求の範囲は、任意選択の要素を排除するように起草され得ることにさらに留意されたい。よって、この記載は、特許請求される要素の列挙に関しての「単独で」、「のみ」などの排他的用語の使用または「否定的」な限定の使用に対する先行する基礎として役立つことを意図している。「好ましくは」、「好ましい」、「好む」、「場合により」、「であり得る」および同様の用語は、言及される項目、条件またはステップが本発明の任意の(必須ではない)特徴であることを示すために使用される。
【0113】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。「および/または」という用語は、この用語が関連する項目のいずれか1つ、項目の任意の組み合わせ、または項目の全てを意味する。
【0114】
当業者によって理解されるように、特に記述された説明を提供することに関して、ありとあらゆる目的のために、本明細書に列挙される全ての範囲は、ありとあらゆる可能な部分範囲およびその部分範囲の組み合わせ、ならびにその範囲を構成する個々の値、特に整数値も包含する。列挙された範囲(例えば、重量パーセントまたは炭素基)には、その範囲内のそれぞれの具体的な値、整数、小数または同一性が含まれる。列挙された範囲は、同範囲を十分に記載し、これを少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1または10分の1に分解できるようにするものとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書に論じられるいずれの範囲も、下3分の1、中3分の1および上3分の1等に容易に分解することができる。
【0115】
また、当業者によって理解されるように、「~まで(up to)」、「少なくとも(at least)」、「超(greater than)」、「未満(less than)」、「超(more than)」、「以上(or more)」などの、本明細書に記載される全ての範囲および全ての言語は、列挙された数を含み、このような用語は、後に上に論じられる部分範囲に分解することができる範囲を指す。
図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
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