IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ トーヨーケム株式会社の特許一覧 ▶ トーアエイヨー株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】セレキシパグを有効成分とする貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4965 20060101AFI20230718BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230718BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230718BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
A61K31/4965
A61K9/70 401
A61K47/32
A61P9/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023505392
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2022041600
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2021185910
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109831
【氏名又は名称】トーアエイヨー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100208889
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 教子
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 豊
(72)【発明者】
【氏名】薦田 俊一
(72)【発明者】
【氏名】西田 尚弘
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-528900(JP,A)
【文献】国際公開第2010/074182(WO,A1)
【文献】特開平08-143451(JP,A)
【文献】特開2000-044904(JP,A)
【文献】特開2011-116757(JP,A)
【文献】特開2003-119132(JP,A)
【文献】国際公開第2007/142295(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P,C09J
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、上記支持体の一面に積層一体化され、セレキシパグ、及びアクリル系粘着剤を含む粘着層とを含み、
上記アクリル系粘着剤が、下記式(1)で示されるアミド構造を有するビニル系モノマー(I)単位を含むアクリル系重合体を含むことを特徴とする貼付剤。
【化1】

(式(1)中、*1、*2、及び*3は結合手である。)
【請求項2】
ビニル系モノマー(I)単位が、下記式(2)で示されるビニル系モノマー単位、又は下記式(3)で示されるビニル系モノマー単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
【化2】

(上記式(2)中、R 1 は、水素原子又はメチル基を示し、R 2 及びR 3 は、互いに同一であっても異なっていてもよいアルキル基であり、R 2 及びR 3 は、互いに結合して、環構造を形成していてもよい。)
【化3】

(上記式(3)中、R 4 は、水素原子又はメチル基を示し、R 5 は、水素原子又はメチル基を示し、R 6 は、アルキル基、アルコキシアルキル基、又は下記式(4)で示される基を示し、
【化4】

上記式(4)において、*4は結合手であり、R 7 はアルキレン基を示し、R 8 はアルキル基を示す。)
【請求項3】
式(2)で示されるビニル系モノマー単位が、N-ビニル-2-ピロリドン単位、N-ビニルピペリドン単位、及びN-ビニル-ε-カプロラクタム単位よりなる群から選択される少なくとも1種を含み、
式(3)で示されるビニル系モノマー単位が、ジアセトンアクリルアミド単位、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド単位、N,N-ジメチルアクリルアミド単位、N,N-ジメチルメタクリルアミド単位、N-オクチルアクリルアミド単位、及びN-イソプロピルメタクリルアミド単位よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項2に記載の貼付剤。
【請求項4】
ビニル系モノマー(I)単位が、N-ビニル-2-ピロリドン単位、及びジアセトンアクリルアミド単位のうち少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
【請求項5】
粘着層中における、ビニル系モノマー(I)単位の含有量に対するセレキシパグの含有量の質量比[上記セレキシパグの含有量(質量部)/上記ビニル系モノマー(I)単位の含有量(質量部)]が、0.2以上且つ1.1以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物としてセレキシパグを経皮投与するための貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)は、心臓から肺に血液を送るための肺動脈の血圧が高くなることで、心臓と肺の機能障害をもたらす予後不良な進行性の疾患である。肺高血圧の治療薬として、セレキシパグ(2-{4-[(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(プロパン-2-イル)アミノ]ブトキシ}-N-メタンスルホニルアセトアミド)が知られている。セレキシパグは、注射剤や経口剤として既に臨床で使用されている。
【0003】
しかしながら、注射剤は、投薬毎に通院が必要であり、患者への負担を招いている。また、経口剤も、投与回数が多く、食後など投与時期の制限もあり、患者への負担を招いている。さらに、経口剤は、急激な血中濃度上昇による副作用が生じることもある。したがって、これまでの注射剤や経口剤における問題点を解決し、患者への負担を低減することが求められている。
【0004】
そこで、貼付剤を皮膚に貼付することにより、皮膚を介して薬剤を人体へ投与する方法が挙げられる。貼付剤によれば、患者自身による皮膚への貼付が可能となり、簡易に投薬が可能となる他、投与回数の低減、投与時期の制限緩和、穏やかな血中濃度上昇による副作用発生の低減などが可能となる。
【0005】
また、肺高血圧症治療薬としては、セレキシパグ以外には、リオシグアトなどが知られている。特許文献1では、リオシグアトを含有する貼付剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6459148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、セレキシパグは経皮吸収性が低く、そのため、セレキシパグを含む貼付剤は実用化に至っていない。
【0008】
そこで、本発明は、セレキシパグの経皮吸収性に優れている貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の貼付剤は、支持体と、上記支持体の一面に積層一体化され、セレキシパグ、及びアクリル系粘着剤を含む粘着層とを含むことを特徴とする。
【0010】
[粘着層]
本発明の貼付剤は、支持体と、上記支持体の一面に積層一体化された粘着層とを含む。粘着層は、セレキシパグ、及びアクリル系粘着剤を含む。
【0011】
(セレキシパグ)
セレキシパグには、遊離塩基型と酸付加塩型が含まれる。粘着層は、遊離塩基型のセレキシパグ及び酸付加塩型のセレキシパグのうち少なくとも一方を含んでいればよい。なかでも、遊離塩基型(フリー体)のセレキシパグが好ましい。遊離塩基型のセレキシパグとは、塩の形態となっていない、セレキシパグ(2-{4-[(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(プロパン-2-イル)アミノ]ブトキシ}-N-メタンスルホニルアセトアミド)そのものを意味する。遊離塩基型のセレキシパグによれば、セレキシパグの経皮吸収性がより優れる貼付剤を提供することができる。粘着層は、遊離塩基型のセレキシパグ及び酸付加塩型のセレキシパグいずれか一方のみを含んでいてもよく、遊離塩基型のセレキシパグ及び酸付加塩型のセレキシパグの双方を含んでいてもよい。
【0012】
酸付加塩型のセレキシパグは、遊離塩基型セレキシパグの生理学的に許容される酸付加塩である。生理学的に許容される酸付加塩としては、特に制限されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩;ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、グルタル酸塩、カンファー酸塩、アジピン酸塩、ソルビン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシレート)、フタル酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、コハク酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、パモ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシレート)、ベンゼンスルホン酸塩(ベシレート)などの有機酸塩が挙げられる。酸付加塩型のセレキシパグは、一種単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0013】
粘着層中におけるセレキシパグの含有比率は、セレキシパグ及びアクリル系粘着剤の総量100質量%中、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がより好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、粘着層中におけるセレキシパグの含有比率は、セレキシパグ及びアクリル系粘着剤の総量100質量%中、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下がより好ましい。粘着層中におけるセレキシパグの含有比率が0.5質量%以上であると、セレキシパグの血中濃度を所望の範囲まで速やかに上昇させることができる。粘着層中におけるセレキシパグの含有比率が30質量%以下であると、過剰量のセレキシパグが粘着層中に結晶として過剰に析出することを低減し、セレキシパグの経皮吸収性や保存安定性を高く維持することができる。
【0014】
なお、本発明の貼付剤において、粘着層中に含まれる各構成成分の含有比率、及び、粘着層中に含まれる構成成分の質量割合やモル割合(例えば、モル比など)を算出するにあたっては、酸付加塩型のセレキシパグの質量として、酸付加塩型のセレキシパグを遊離塩基型に換算して得られるセレキシパグの質量を用いる。酸付加塩型のセレキシパグを遊離塩基型に換算して得られるセレキシパグの質量は、酸付加塩型のセレキシパグと等モル量の遊離塩基型のセレキシパグの質量とする。
【0015】
(アクリル系粘着剤)
粘着層は、アクリル系粘着剤を含む。粘着層において、セレキシパグ及びアクリル系粘着剤を組み合わせて用いることにより、セレキシパグの経皮吸収性が向上された貼付剤を提供することができる。
【0016】
アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体を含んでいることが好ましい。アクリル系重合体としては、特に制限されず、従来の貼付剤においてアクリル系粘着剤として用いられているものを使用することができる。アクリル系重合体は、一種単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0017】
アクリル系重合体は、好ましくは、(メタ)アクリレート系モノマー単位を含む重合体である。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、特に制限されず、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、(メタ)アクリレート系モノマーは、後述する式(1)で示されるアミド構造を有していないことが好ましい。(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0018】
すなわち、アクリル系重合体は、アルキル(メタ)アクリレート単位を含んでいることが好ましい。アルキル(メタ)アクリレート単位は、セレキシパグに対して適度な親和性を有し、配合されたセレキシパグの一部又は全部を溶解させることができ、これによりセレキシパグの皮膚への移行を促進させることができる。したがって、アルキル(メタ)アクリレート単位を含むアクリル系重合体によれば、セレキシパグの経皮吸収性が向上された貼付剤を提供することができる。
【0019】
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、1~16が好ましく、1~14がより好ましく、2~12がより好ましく、2~10が特に好ましい。
【0020】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、エチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましく、エチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートがより好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、一種単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
アクリル系重合体は、(メタ)アクリレート系モノマーの単独重合体であってもよい。このような場合、アクリル系重合体は、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体であることが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体によれば、セレキシパグの経皮吸収性に優れる貼付剤を提供することができる。
【0022】
アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体において、アルキル(メタ)アクリレートが、2種以上のアルキル(メタ)アクリレートを組み合わせて含んでいてもよい。2種以上のアルキル(メタ)アクリレートの組合せとしては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートとエチル(メタ)アクリレートとの組合せ、エチル(メタ)アクリレートとn-オクチル(メタ)アクリレートとの組合せ、及び、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートとエチル(メタ)アクリレートとn-ブチル(メタ)アクリレートとの組合せが好ましい。
【0023】
また、アクリル系重合体は、(メタ)アクリレート系モノマーと他のビニル系モノマーとの共重合体であってもよい。
【0024】
ここで、ビニル系モノマーとは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを意味する。
【0025】
アクリル系重合体は、下記式(1)で示されるアミド構造を有するビニル系モノマー(I)単位を含んでいることが好ましい。
【0026】
【化1】

(式(1)中、*1、*2、及び*3は結合手である。)
【0027】
上記式(1)で示されるアミド構造は、1価、2価、又は3価の原子団である。なお、原子団の価数は、この原子団が結合し得る他の原子又は原子団の数(原子価)を意味する。例えば、上記式(1)で示されるアミド構造が1価の原子団である場合、上記アミド構造は、他の原子又は原子団1個と結合できる。
【0028】
上記式(1)で示されるアミド構造における結合手*1~*3は、単結合であって、結合手*1~*3のうち少なくとも1個の結合手が、ビニル系モノマー(I)のエチレン性不飽和二重結合(炭素-炭素二重結合)を形成している炭素原子に直接又は複数個の原子を介して結合している。
【0029】
上記式(1)で示されるアミド構造における結合手*1~*3のうち、1個又は2個の結合手が、ビニル系モノマー(I)のエチレン性不飽和二重結合(炭素-炭素二重結合)を形成している炭素原子に直接又は複数個の原子を介して結合している場合、残りの結合手は、水素原子などの一価の原子やアルキル基などの一価の原子団に結合していてもよい。
【0030】
上記式(1)で示されるアミド構造における結合手*1~*3のうちの2個の結合手が、原子又は原子団を介して、互いに結合して環構造を形成していてもよい。環構造が形成されている場合、結合手*1と、結合手*2又は*3とが、互いに結合して環構造を形成していることが好ましい。
【0031】
貼付剤の保存中に保存温度が変化することがあるが、貼付剤の保存温度が変化したとしても、粘着層中におけるセレキシパグの溶解状態及び析出状態が保存前後で変化せずに維持されていることが好ましい。セレキシパグの溶解状態及び析出状態が変化すると、セレキシパグの経皮吸収性も変化し、予定していた薬効が得られずに治療に影響を与える可能性があるからである。特に、貼付剤の保存温度の変化によって、セレキシパグの結晶が過剰に析出すると、薬物の経皮吸収性が不均一となったり低下したりする可能性がある。
【0032】
上記式(1)で示されるアミド構造を有するビニル系モノマー(I)は、セレキシパグに対して高い親和性を有しており、セレキシパグの溶解状態を安定化させる効果を持つ。本発明では、上記ビニル系モノマー(I)単位を含むアクリル系重合体を用いることにより、粘着層中でセレキシパグの状態を安定して維持することができる。したがって、貼付剤の保存温度が変化したとしても、粘着層中におけるセレキシパグの溶解状態及び析出状態が変化することを低減して、これによりセレキシパグの経皮吸収性が変化することも低減することができる。このように上記ビニル系モノマー(I)単位を含むアクリル系重合体を用いることにより、セレキシパグの経皮吸収性に優れるだけでなく、セレキシパグの保存安定性にも優れる貼付剤を提供することが可能となる。
【0033】
アクリル系重合体は、好ましくは、上記式(1)で示されるアミド構造を有するビニル系モノマー(I)単位を含んでいる。すなわち、アクリル系重合体は、上記式(1)で示されるアミド構造を有するビニル系モノマー(I)を含むモノマーの重合体であることが好ましい。
【0034】
ビニル系モノマー(I)としては、例えば、下記式(2)で示されるビニル系モノマーが挙げられる。
【0035】
【化2】

(式(2)中、R1は、水素原子又はメチル基を示し、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよいアルキル基であり、R2及びR3は、互いに結合して、環構造を形成していてもよい。)
【0036】
上記式(2)において、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよいアルキル基である。アルキル基は、直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は、1~5が好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、及びn-プロピル基が好ましく、メチル基、及びエチル基がより好ましい。
【0037】
上記式(2)において、R2及びR3は、互いに結合して、それぞれが結合している窒素原子及び炭素原子と共に、環構造を形成していることが好ましい。
【0038】
上記式(2)で示されるビニル系モノマーとして、具体的には、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルピペリドン、及びN-ビニル-ε-カプロラクタムなどが挙げられる。上記式(2)で示されるビニル系モノマーは、一種単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
また、ビニル系モノマー(I)としては、例えば、下記式(3)で示されるビニル系モノマーが挙げられる。
【0040】
【化3】

(上記式(3)中、R4は、水素原子又はメチル基を示し、R5は、水素原子又はメチル基を示し、R6は、アルキル基、アルコキシアルキル基、又は下記式(4)で示される基を示し、
【0041】
【化4】

式(4)において、*4は結合手(単結合)であり、R7はアルキレン基を示し、R8はアルキル基を示す。)
【0042】
上記式(3)のR6で示されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソオクチル基などが挙げられる。
【0043】
上記式(3)のR6で示されるアルコキシアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルコキシアルキル基の炭素数は、2~5が好ましい。アルコキシアルキル基として、例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、プロポキシメチル基、プロポキシエチル基、イソプロポキシメチル基、イソプロポキシエチル基、ブトキシメチル基、sec-ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、及びtert-ブトキシメチル基が挙げられる。
【0044】
上記式(3)におけるR6が、上記式(4)で示される基である場合、上記式(4)において、結合手*4は単結合であり、R7は直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、R8は直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示すことが好ましい。
【0045】
上記式(3)におけるR6が、上記式(4)で示される基である場合、上記式(4)で示される基における結合手*4は、式(3)で示されるビニル系モノマーのアミド構造を形成している窒素原子に直接結合している。
【0046】
7は、好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である。アルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチルメチルメチレン基、イソプロピルメチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、テトラメチレン基、ジメチルエチレン基、エチルエチレン基などが挙げられる。なかでも、ジメチルエチレン基が好ましい。
【0047】
8は、好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。アルキル基の炭素数は、1~5が好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、及びn-プロピル基が好ましく、メチル基、及びエチル基がより好ましい。
【0048】
上記式(3)で示されるビニル系モノマーとして、具体的には、ジアセトンアクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミドが挙げられる。上記式(3)で示されるビニル系モノマーは、一種単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
【0049】
ビニル系モノマー(I)としては、上述した通り、式(2)で示されるビニル系モノマー、及び上記式(3)で示されるビニル系モノマーが好ましく挙げられる。なかでも、N-ビニル-2-ピロリドン、及びジアセトンアクリルアミドがより好ましく、N-ビニル-2-ピロリドンがより好ましい。ビニル系モノマー(I)は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0050】
アクリル系重合体中におけるビニル系モノマー(I)単位の含有量は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。アクリル系重合体中におけるビニル系モノマー(I)単位の含有量は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がより好ましい。ビニル系モノマー(I)単位の含有量を1質量%以上とすることにより、セレキシパグの経皮吸収性だけでなく保存安定性にも優れる貼付剤を提供することができる。一方、ビニル系モノマー(I)単位の含有量を40質量%以下とすることにより、セレキシパグの優れた経皮吸収性を維持することができる。
【0051】
アクリル系重合体は、上記式(1)で示されるアミド構造を有するビニル系モノマー(I)単位、及びアルキル(メタ)アクリレート単位を含んでいることが好ましい。すなわち、アクリル系重合体は、上記式(1)で示されるアミド構造を有するビニル系モノマー(I)、及びアルキル(メタ)アクリレートを含むモノマーの共重合体であることが好ましい。このようなアクリル系重合体によれば、セレキシパグの経皮吸収性及び保存安定性に優れる貼付剤を提供することができる。
【0052】
アクリル系重合体が、上記式(1)で示されるアミド構造を有するビニル系モノマー(I)単位、及びアルキル(メタ)アクリレート単位を含んでいる場合、アクリル系重合体中におけるアルキル(メタ)アクリレート単位の含有量は、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましい。また、アクリル系重合体が、上記式(1)で示されるアミド構造を有するビニル系モノマー(I)単位、及びアルキル(メタ)アクリレート単位を含んでいる場合、アクリル系重合体中におけるアルキル(メタ)アクリレート単位の含有量は、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量を60質量%以上とすることにより、セレキシパグの経皮吸収性を向上させることができる。アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量を99質量%以下とすることにより、アクリル系重合体中にビニル系モノマー(I)単位を十分な量で含ませることができる。
【0053】
アクリル系重合体は、ビニル系モノマー(I)単位としてN-ビニル-2-ピロリドン単位を含み、アルキル(メタ)アクリレート単位として2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート単位を含むことが好ましい。また、アクリル系重合体は、上記ビニル系モノマー(I)単位としてN-ビニル-2-ピロリドン単位を含み、アルキル(メタ)アクリレート単位として、エチル(メタ)アクリレート単位及びn-オクチル(メタ)アクリレート単位を含むことが好ましい。
【0054】
さらに、アクリル系重合体は、上記ビニル系モノマー(I)単位としてジアセトンアクリルアミド単位を含み、アルキル(メタ)アクリレート単位として、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート単位及びn-ブチル(メタ)アクリレート単位を含むことが好ましい。
【0055】
アクリル系重合体が、上記式(1)で示されるアミド構造を有するビニル系モノマー(I)単位を含む場合、粘着層中における、ビニル系モノマー(I)単位の含有量に対するセレキシパグの含有量の質量比[セレキシパグの含有量(質量部)/ビニル系モノマー(I)単位の含有量(質量部)]は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上がより好ましい。上記質量比を0.1以上とすることにより、セレキシパグの経皮吸収性に優れる貼付剤を提供することができる。
【0056】
アクリル系重合体が、上記式(1)で示されるアミド構造を有するビニル系モノマー(I)単位を含む場合、粘着層中における、ビニル系モノマー(I)単位の含有量に対するセレキシパグの含有量の質量比[セレキシパグの含有量(質量部)/ビニル系モノマー(I)単位の含有量(質量部)]は、1.3以下が好ましく、1.1以下がより好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下がより好ましい。上記質量比を1.3以下とすることにより、セレキシパグの経皮吸収性だけでなく保存安定性にも優れる貼付剤を提供することができる。特に、上記質量比を1.1以下とすることにより、投与終了時に貼付剤に残存するセレキシパグの量を低く抑えることができ、これにより貼付剤を剥がし忘れた時のセレキシパグの過剰投与を防ぎ、安全性の高い貼付剤を提供することができる。
【0057】
なお、粘着層中における、ビニル系モノマー(I)単位の含有量(質量部)は、例えば、下記式に基づいて算出された値である。
粘着層中におけるビニル系モノマー(I)単位の含有量(質量部)
=[W1×C1+W2×C2+・・・+Wn×Cn]/100
(式中、nは、粘着層中に含まれるアクリル系重合体の種類数を表す整数であり、Wnは、粘着層中におけるn種目のアクリル系重合体の含有量(質量部)であり、Cnは、上記n種目のアクリル系重合体中におけるビニル系モノマー(I)単位の含有量(質量%)である。)
【0058】
アクリル系重合体は、上述した通り、好ましくは、(メタ)アクリレート系モノマー単位を含む重合体であり、(メタ)アクリレート系モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート以外にも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びグリシジル(メタ)アクリレートなども挙げられる。
【0059】
したがって、アクリル系重合体は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単位、及びグリシジル(メタ)アクリレート単位など、アルキル(メタ)アクリレート単位以外の(メタ)アクリレート系モノマー単位を含んでいてもよい。アルキル(メタ)アクリレート単位以外の(メタ)アクリレート系モノマー単位は、一種単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
【0060】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、一種単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
【0061】
さらに、アクリル系重合体は、上述した(メタ)アクリレート系モノマー単位やビニル系モノマー(I)単位以外にも、他のビニル系モノマー単位を含んでいてもよい。他のビニル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、α-オレフィン、及びスチレンなどが挙げられる。他のビニル系モノマーは、一種単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。なかでも、(メタ)アクリル酸が好ましい。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0062】
アクリル系重合体中における(メタ)アクリル酸単位の含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がより好ましい。アクリル系重合体中における(メタ)アクリル酸単位の含有量は、0.1質量%以上が好ましい。
【0063】
アクリル系重合体を形成する方法としては、従来公知の方法にて行なえばよい。例えば、重合開始剤の存在下で、(メタ)アクリレート系モノマー又はビニル系モノマー(I)など、上述したモノマーを重合する方法が挙げられる。具体的には、所定量のモノマー、重合開始剤、及び重合溶媒を反応器に供給し、60~80℃の温度で4~48時間に亘って加熱して、モノマーをラジカル重合させる。
【0064】
重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-(2,4’-ジメチルバレロニトリル)などのアゾビス系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド(LPO)、ジ-tert-ブチルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、シクロヘキサンやトルエンなどが挙げられる。更に、重合反応は、窒素ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0065】
アクリル系粘着剤中におけるアクリル系重合体の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。すなわち、アクリル系粘着剤はアクリル系重合体のみからなることが特に好ましい。アクリル系重合体の含有量を80質量%以上とすることにより、セレキシパグの経皮吸収性に優れた貼付剤を提供することができる。
【0066】
粘着層中におけるアクリル系粘着剤の含有比率は、セレキシパグ及びアクリル系粘着剤の総量100質量%中、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、92質量%以上がより好ましく、94質量%以上がより好ましい。また、粘着層中におけるアクリル系粘着剤の含有比率は、セレキシパグ及びアクリル系粘着剤の総量100質量%中、99.5質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下がより好ましく、97質量%以下がより好ましく、96質量%以下がより好ましく、95質量%以下がより好ましい。アクリル系粘着剤の含有比率を70質量%以上とすることにより、セレキシパグの経皮吸収性に優れる貼付剤を提供することができる。アクリル系粘着剤の含有比率を99.5質量%以下とすることにより、必要な量でセレキシパグを粘着層に含ませることができる。
【0067】
(可塑剤)
粘着層は、可塑剤を含んでいることが好ましい。可塑剤を用いることにより、セレキシパグの拡散性を変化させ、放出性を調整することができる。
【0068】
可塑剤としては、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、及びパルミチン酸セチルなどの脂肪酸エステル;ミリスチルアルコール、セタノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、及びステアリルアルコールなどの1価脂肪族アルコール、並びにオクタンジオールなどの2価脂肪族アルコールなど脂肪族アルコール;流動パラフィン、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、及び芳香族系プロセスオイルなどの石油系オイル、及びラウリン酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸アミドなどが挙げられる。なかでも、脂肪酸エステル、及び石油系オイルが好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、及び流動パラフィンがより好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、及びパルミチン酸イソプロピルがより好ましい。可塑剤は、一種単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
粘着層中における可塑剤の含有量は、アクリル系粘着剤100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がより好ましい。粘着層中における可塑剤の含有量は、アクリル系粘着剤100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がより好ましい。可塑剤の含有量が1質量部以上であると、セレキシパグの拡散性を変化させ、放出性を調整することができる。可塑剤の含有量が30質量部以下であると、粘着層の貼付性を良好に保つことができるため、取り扱いの容易な貼付剤を提供することができる。
【0070】
粘着層は、粘着付与剤、及び充填剤などの他の添加剤を含んでいてもよい。
【0071】
(粘着付与剤)
粘着付与剤としては、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン、水素添加ロジン、ロジンエステル、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂などが挙げられる。粘着付与剤は、一種単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。粘着層中における粘着付与剤の含有量は、アクリル系粘着剤100質量部に対して、15~80質量部が好ましく、20~70質量部がより好ましい。
【0072】
(充填剤)
充填剤は、粘着層の形状保持性を調整するために用いられる。充填剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機充填剤;炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの有機金属塩類;乳糖、結晶セルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体;架橋ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。充填剤は、一種単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。粘着層中における充填剤の含有量は、アクリル系粘着剤100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。
【0073】
粘着層の厚みは、20~200μmが好ましく、30~150μmがより好ましく、50~120μmが特に好ましい。粘着層の厚みが20μm以上であると、所望する薬効を得るために必要な量のセレキシパグを粘着層中に含有させることができる。粘着層の厚みが200μm以下であると、粘着層中の残存溶媒を低減するために製造時に強い乾燥条件を必要としないため、粘着層中のセレキシパグの揮散又は分解を抑制することができる。
【0074】
[支持体]
本発明の貼付剤では、支持体の一面に粘着層が積層一体化される。支持体は、粘着層中の薬物の損失を防ぎ、貼付剤に自己保持性を付与するための強度を有することが求められる。このような支持体としては、樹脂フィルム、不織布、織布、編布、アルミニウムシートなどが挙げられる。
【0075】
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、酢酸セルロース、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート、可塑化酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ナイロン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。なかでも、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0076】
不織布を構成する素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ナイロン、ポリエステル、ビニロン、SIS共重合体、SEBS共重合体、レーヨン、綿などが挙げられ、ポリエステルが好ましい。なお、これらの素材は、一種単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0077】
支持体は、単層であっても、複数層が積層一体化された積層シートであってもよい。積層シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートシートと、不織布や柔軟な樹脂フィルムとが積層一体化された積層シートが挙げられる。
【0078】
支持体の厚みは、特に制限されないが、2~200μmが好ましく、2~100μmがより好ましい。
【0079】
[剥離ライナー]
本発明の貼付剤では、粘着層の一面に、剥離ライナーが剥離可能に積層されていてもよい。剥離ライナーは、粘着層中の薬物の損失防止や粘着層を保護するために用いられる。
【0080】
剥離ライナーとしては、例えば、紙及び樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。剥離ライナーの粘着層と対向させる面には離型処理が施されていることが好ましい。
【0081】
[貼付剤の製造方法]
本発明の貼付剤の製造方法としては、例えば、(1)セレキシパグ、アクリル系粘着剤、及び溶媒を含む粘着層形成溶液を、支持体の一面に塗工した後に乾燥させることにより、支持体の一面に粘着層を積層一体化し、必要に応じて、粘着層に剥離ライナーを、剥離ライナーの離型処理が施された面が粘着層に対向した状態となるように積層する方法、(2)上記粘着層形成溶液を剥離ライナーの離型処理が施された面上に塗工し、乾燥させることにより、剥離ライナー上に粘着層を形成し、この粘着層に支持体を積層一体化させる方法などが挙げられる。
【0082】
粘着層形成溶液は、セレキシパグ、アクリル系粘着剤、及び溶媒、並びに、必要に応じて他の添加剤を均一に撹拌することにより得られる。溶媒としては、例えば、トルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、及び酢酸エチルなどが挙げられる。溶媒は、一種単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【発明の効果】
【0083】
本発明の貼付剤は、上述した構成を有するので、セレキシパグの経皮吸収性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下に、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例
【0085】
実施例及び比較例でアクリル系粘着剤として使用したアクリル系重合体の調製方法又は詳細を、以下に記載する。
【0086】
(アクリル系重合体(A1)の調製)
2-エチルヘキシルアクリレート65質量部、及びN-ビニル-2-ピロリドン35質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル185質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド0.6質量部を酢酸エチル16質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を14時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A1)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A1)溶液を得た。
【0087】
(アクリル系重合体(A2)の調製)
2-エチルヘキシルアクリレート75質量部、及びN-ビニル-2-ピロリドン25質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル50質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド1.2質量部を酢酸エチル30質量部及びシクロヘキサン20質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を24時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A2)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A2)溶液を得た。
【0088】
(アクリル系重合体(A3)の調製)
2-エチルヘキシルアクリレート75質量部、N-ビニル-2-ピロリドン22質量部、及びアクリル酸3質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル150質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド0.6質量部を酢酸エチル17質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を24時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A3)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A3)溶液を得た。
【0089】
(アクリル系重合体(A4)の調製)
N-ビニル-2-ピロリドン10質量部、エチルアクリレート50質量部、及びn-オクチルアクリレート40質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル50質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド1質量部を酢酸エチル30質量部及びシクロヘキサン20質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を24時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A4)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A4)溶液を得た。
【0090】
(アクリル系重合体(A5)の調製)
N-ビニル-2-ピロリドン5質量部、エチルアクリレート50質量部、及びn-オクチルアクリレート45質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル140質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド0.4質量部を酢酸エチル20質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を14時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A5)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A5)溶液を得た。
【0091】
(アクリル系重合体(A6)の調製)
2-エチルヘキシルアクリレート57質量部、n-ブチルアクリレート29質量部、ジアセトンアクリルアミド14質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル150質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド0.6質量部を酢酸エチル17質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を14時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A6)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A6)溶液を得た。
【0092】
(アクリル系重合体(A7)の調製)
2-エチルヘキシルアクリレート75質量部、及びエチルアクリレート25質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル75質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド0.6質量部を酢酸エチル17質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を14時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A7)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A7)溶液を得た。
【0093】
(アクリル系重合体(A8)の調製)
エチルアクリレート56質量部、及びn-オクチルアクリレート44質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル122質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド0.431質量部を酢酸エチル20質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を14時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A8)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A8)溶液を得た。
【0094】
(アクリル系重合体(A9)の調製)
2-エチルヘキシルアクリレート57質量部、エチルアクリレート14質量部、n-ブチルアクリレート29質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル75質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド0.6質量部を酢酸エチル17質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を14時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A9)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A9)溶液を得た。
【0095】
・アクリル系重合体(A10)
(2-エチルヘキシルアクリレート単位68.15質量%、酢酸ビニル単位26.5質量%、ヒドロキシエチルアクリレート単位5.2質量%、及びグリシジルメタクリレート単位0.15質量を含むアクリル系重合体、Henkel社製 商品名「DURO-TAK 387-2287」)
【0096】
(実施例1~6、及び参考例1~4
各成分を表1に示す配合量で含む粘着層が得られるように、アクリル系重合体(A1)~(A10)をそれぞれ83.6質量部含む溶液に、遊離塩基型セレキシパグを4.4質量部、およびミリスチン酸イソプロピルを12.0質量部配合し、粘着層形成溶液を作製した。
【0097】
次に、シリコーン離型処理が施された厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離ライナーとして用意した。このポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン離型処理面に、粘着層形成溶液を塗布し、60℃で30分間乾燥させることにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン離型処理面に厚さ70μmの粘着層が形成された積層体を作製した。そして、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体として用意し、この支持体の一面と、上記積層体の粘着層とが対向するように重ね合わせて、積層体の粘着層を支持体に転写させて積層一体化させることによって貼付剤を製造し、後述する方法に従って各種性能を評価した。なお、得られた粘着層中における遊離塩基型セレキシパグの含有量は4.4質量%であった。
【0098】
参考例5、比較例1及び2)
各成分を表2に示す配合量で含む粘着層が得られるように、遊離塩基型セレキシパグ、下記アクリル系重合体(A11)、下記ゴム系粘着剤(B1)及び(B2)、並びにミリスチン酸イソプロピル及び下記粘着付与剤を含む粘着層形成溶液を作製し、実施例1と同様にして貼付剤を製造し、後述する方法に従って各種性能を評価した。
【0099】
・アクリル系重合体(A11)(2-エチルヘキシルアクリレート単位、アクリル酸単位、n-ブチルアクリレート単位、及び酢酸ビニル単位を含むアクリル系重合体、Henkel社製 商品名「DURO-TAK 387-2051」)
・ゴム系粘着剤(B1)(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、Kraton社製 商品名「クレイトンD DX401」および、商品名「クレイトンD D1117PT」の質量比1:1.54混合物)
・ゴム系粘着剤(B2)(ポリイソブチレン(PIB)、BASF社製 商品名「OPPANOL B100」、商品名「OPPANOL B30」および商品名「OPPANOL B12」の質量比1:1:1混合物)
・粘着付与剤:脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業社製 商品名「アルコン P-90」)
【0100】
(実施例7~8)
各成分を表3に示す配合量で含む粘着層が得られるように、遊離塩基型セレキシパグ4.4質量部に対し、アクリル系重合体(A4)の配合量、および可塑剤の種類と配合量を変え、実施例1と同様にして貼付剤を製造し、後述する方法に従って各種性能を評価した。
【0101】
(実施例9~13
各成分を表4に示す配合量で含む粘着層が得られるように、ミリスチン酸イソプロピルの配合量を12.0質量部とし、遊離塩基型セレキシパグの配合量とアクリル系重合体(A4)の配合量を変え、実施例1と同様にして貼付剤を製造し、後述する方法に従って各種性能を評価した。
【0102】
(実施例14~17)
各成分を表5に示す配合量で含む粘着層が得られるように、遊離塩基型セレキシパグ4.4質量部に対し、アクリル系重合体(A4)の配合量、およびミリスチン酸イソプロピルの配合量を変え、実施例1と同様にして貼付剤を製造し、後述する方法に従って各種性能を評価した。
【0103】
[評価]
実施例及び比較例の貼付剤について、下記手順に従って、皮膚透過性、及び遊離塩基型セレキシパグの溶解状態を評価した。
【0104】
[皮膚透過性試験(累積皮膚透過量)]
貼付剤について、製造直後及び40℃にて1カ月保存後、皮膚透過性を評価するために、以下の方法でヘアレスマウス皮膚透過性試験を行った。なお、貼付剤の保存は、貼付剤を遮光したアルミ袋中に密封し、40℃の温度雰囲気下で1カ月に亘って保存することにより行った。
【0105】
貼付剤を切断して、直径が1cm、面積が0.8cm2の平面円形状の試験片を得た。32℃に保持されたFranz型の拡散セルのレセプター側をレセプター液で満たした後、Franz型の拡散セルにヘアレスマウスの皮膚を固定し、皮膚の真皮側をレセプター液と接触させた。この皮膚の角質層側に、剥離ライナーを剥離除去した試験片を粘着層によって貼付した。なお、レセプター液は、pH7.4に調整したリン酸緩衝生理食塩水とポリエチレングリコール400とを、体積比(リン酸緩衝生理食塩水:ポリエチレングリコール400)6:4で含んでいた。
【0106】
試験片を皮膚に貼付してから24時間後に、皮膚下側のレセプター液を採取し、遊離塩基型セレキシパグ濃度をHPLCを用いて測定した。次に、遊離塩基型セレキシパグ濃度とレセプター液量から遊離塩基型セレキシパグ透過量を算出した。算出した遊離塩基型セレキシパグ透過量を、試験片の面積(0.8cm2)で除して得られた値を、遊離塩基型セレキシパグの24h累積皮膚透過量(μg/cm2)とした。得られた結果を、表1~5の「24h累積皮膚透過量」の欄に示した。
【0107】
また、試験片の粘着層に含まれている遊離塩基型セレキシパグの理論量をQT(μg/cm2)とし、上記皮膚透過性試験において得られた遊離塩基型セレキシパグの24h累積皮膚透過量をQE(μg/cm2)とし、下記式に基づいて、貼付から24時間後における遊離塩基型セレキシパグの累積皮膚透過率(%)(以下、「24h累積皮膚透過率(%)」という)を算出した。
24h累積皮膚透過率(%)=(QE/QT)×100
【0108】
なお、試験片の粘着層に含まれている遊離塩基型セレキシパグの理論量QT(μg/cm2)は、次の通りに算出される値とした。先ず、製造直後の貼付剤を切断して得られた試験片について、上記試験片中の粘着層の質量(μg)を上記試験片の面積(0.8cm2)で除することにより、上記試験片の単位面積あたりの粘着層の質量WT(μg/cm2)を求めた。また、製造直後の貼付剤に含まれる粘着層中における遊離塩基型セレキシパグの含有量(質量%)をCsとした。そして、下記式に基づいて求められた値を、試験片の粘着層に含まれている遊離塩基型セレキシパグの理論量QT(μg/cm2)とした。
T(μg/cm2)=WT×Cs/100
【0109】
さらに、製造直後の貼付剤の遊離塩基型セレキシパグの24h累積皮膚透過率をY0とし、40℃にて1カ月保存後の貼付剤の遊離塩基型セレキシパグの24h累積皮膚透過率をY1とし、下記式に基づいて、遊離塩基型セレキシパグの24h累積皮膚透過率の変化率を算出した。結果を、表1~5の「変化率」の欄に示した。
遊離塩基型セレキシパグの24h累積皮膚透過率の変化率=100×(Y1-Y0)/Y0
【0110】
[溶解状態]
貼付剤の製造直後において、貼付剤から面積が5cm2の平面正方形状の試験片を打ち抜いた。次に、試験片から剥離ライナーを剥離除去し、偏光顕微鏡を用いて倍率40倍で試験片のほぼ中央部の1cm2の範囲の粘着層表面を観察し、写真撮影を行った。得られた写真を観察し、遊離塩基型セレキシパグの結晶の析出状態を観察し、結晶径の大きさによって各結晶を以下に示す「小結晶・中結晶・大結晶」のいずれかに分類し、さらに各大きさの結晶の個数を以下に示す「A・B・C」のいずれかに分類し、評価した。
【0111】
次に、観察後の試験片をアルミ包材に密封した後、40℃の温度雰囲気下で1ヶ月間保存し、その後さらに25℃の温度雰囲気下で24時間保存した。保存後、試験片を取り出して速やかに製造直後の場合と同様にして、遊離塩基型セレキシパグの結晶の析出状態を観察し、同様に評価した。
【0112】
<結晶径の大きさ>
小結晶:結晶径が10μm以上で且つ110μm未満であった結晶
中結晶:結晶径が110μm以上で且つ1000μm未満であった結晶
大結晶:結晶径が1000μm以上であった結晶
【0113】
なお、結晶径とは、写真上において結晶を包囲し得る最小径の真円の直径を意味する。
【0114】
<結晶の個数>
A:結晶の個数が、0個であった。
B:結晶の個数が、1個以上で且つ100個未満であった。
C:結晶の個数が、100個以上であった。
【0115】
評価結果を表1~5の「溶解状態」の欄に示す。上記欄において、丸括弧内に、小結晶、中結晶、及び大結晶の順で、各大きさの結晶の個数を上記基準に従って表記した。
【0116】
例えば、
小結晶が0個、中結晶が0個、大結晶が0個の場合は(A、A、A)、
小結晶が0個、中結晶が3個、大結晶が0個の場合は(A、B、A)、
小結晶が100個以上、中結晶が0個、大結晶が0個の場合は(C、A、A)のように表記した。
【0117】
即ち、(A、A、A)は、遊離塩基型セレキシパグの全量が溶解し、遊離塩基型セレキシパグの結晶の析出が無かったことを意味する。
【0118】
また、40℃、1カ月保存によって結晶が成長すると、製造直後は(A、A、A)であったものが(A、B、A)になったり、製造直後は(A、B、A)であったものが(A、A、B)になったり、製造直後は(C、A、A)であったものが(A、C、A)になったりする。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明によれば、上述した通り、セレキシパグの経皮吸収性に優れている貼付剤を提供することができる。
【0125】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年11月15日に出願された日本国特許出願第2021-185910号に基づく優先権を主張し、この出願の開示はこれらの全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【要約】
セレキシパグの経皮吸収性に優れている貼付剤を提供する。本発明の貼付剤は、支持体と、上記支持体の一面に積層一体化され、セレキシパグ、及びアクリル系粘着剤を含む粘着層とを含むことを特徴とする。粘着層中において、セレキシパグとアクリル系粘着剤とを組み合わせて用いることにより、セレキシパグの経皮吸収性に優れている貼付剤を提供することができる。この貼付剤によれば、薬物としてセレキシパグを経皮投与することができる。