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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】熱電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/13 20230101AFI20230718BHJP
   H10N 10/17 20230101ALI20230718BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20230718BHJP
   H10N 10/01 20230101ALN20230718BHJP
【FI】
H10N10/13
H10N10/17 A
H02N11/00 A
H10N10/01
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019046544
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020150139
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】398032289
【氏名又は名称】株式会社テックスイージー
(74)【代理人】
【識別番号】100111084
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 義昭
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆秀
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕之
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-041775(JP,A)
【文献】特開平04-190572(JP,A)
【文献】特開平06-097512(JP,A)
【文献】特開2011-061031(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110407(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/13
H10N 10/17
H02N 11/00
H10N 10/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの熱電発電部を備えた熱電変換モジュールであって、
前記熱電発電部は、
高温端が電気的に接続された一対の熱電素子と、
当該一対の熱電素子それぞれの低温端に接続された一対の低温側導電部と
を備え、
前記一対の低温側導電部はそれぞれ、対応する熱電素子と同じ極性のゼーベック係数を有する
ことを特徴とする熱電変換モジュール。
【請求項2】
前記熱電発電部を、複数備える
ことを特徴とする請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【請求項3】
前記低温側導電部は、電線で構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱電変換モジュール。
【請求項4】
前記熱電発電部は、前記一対の熱電素子の高温端を電気的に接続する高温側電極を更に備える
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の熱電変換モジュール。
【請求項5】
前記熱電発電部の高温側に配置された絶縁基板を更に備える
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の熱電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュール、特に、熱電発電に使用される熱電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱電発電用の熱電変換モジュールが知られている。このような熱電変換モジュールは、一般に、複数の熱電素子(n型半導体素子及びp型半導体素子)と、複数の熱電素子を電気的に接続するための複数の金属電極と、複数の熱電素子及び複数の金属電極を挟持する一対の絶縁基板(例えば、セラミック基板)とによって構成されている。
【0003】
熱電発電用の熱電変換モジュールにおいては、高温面(高温側絶縁基板)と低温面(低温側絶縁基板)との間に所定(例えば、300℃程度)の温度差を与えることによって発電が行われる。
【0004】
従来の熱電変換モジュールは、熱流方向と垂直な面が広く、熱流方向の厚さが薄い平板状の形状を有しているため、高温面を加熱した際、熱源から流入する熱の大部分は、発電に利用されずにそのまま熱伝導によって低温面へ流出してしまうことになる。そのため、そのままでは、低温面の温度が上昇して、充分な温度差が確保できないことになるので、従来の熱電変換モジュールにおいては、低温面にヒートシンクを接合し、さらにそのヒートシンクを強制空冷するなどして、高温面と低温面との間に発電に必要な温度差を確保するようにしていた。
【0005】
しかしながら、熱電変換モジュールとヒートシンクとは、通常、熱伝導性グリース等を介して接合されるため、低温面から雰囲気(例えば、25℃程度の空気)までの熱伝達路に大きな熱抵抗が存在することとなり、その分、冷却効率が低下することになっていた。
【0006】
なお、特開平8-46248号公報には、金属電極をパターニングしてある一対の絶縁性セラミックス基板で、n型熱電材料とp型熱電材料が挟まれた構造をしている熱電素子の性能を高めるため、その外側に放熱板と吸熱板がシリコングリースなどにより接着されている構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-46248号公報(段落0002、図10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、熱電素子の低温側の冷却効率を向上させることが可能な熱電変換モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第一の熱電変換モジュールは、少なくとも一つの熱電発電部を備えた熱電変換モジュールであって、前記熱電発電部は、熱電素子と、当該熱電素子の低温端に接続された低温側導電部とを備え、前記低温側導電部は、前記熱電素子と同じ極性のゼーベック係数を有することを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記熱電素子の高温端に接続された高温側導電部を更に備えるようにしてもよい。この場合、前記高温側導電部は、前記熱電素子とは逆の極性のゼーベック係数を有するようにしてもよい。
【0011】
本発明に係る第二の熱電変換モジュールは、少なくとも一つの熱電発電部を備えた熱電変換モジュールであって、前記熱電発電部は、高温端が電気的に接続された一対の熱電素子と、当該一対の熱電素子それぞれの低温端に接続された一対の低温側導電部とを備え、前記一対の低温側導電部はそれぞれ、対応する熱電素子と同じ極性のゼーベック係数を有することを特徴とする。
【0012】
以上の場合において、前記熱電発電部を、複数備えるようにしてもよい。
【0013】
本発明に係る第三の熱電変換モジュールは、複数の熱電発電部を備えた熱電変換モジュールであって、前記複数の熱電発電部はそれぞれ、熱電素子と、当該熱電素子の低温端に接続された低温側導電部と、前記熱電素子の高温端に接続された高温側導電部とを備え、前記低温側導電部は、ヒートシンクとして機能することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る第四の熱電変換モジュールは、複数の熱電発電部を備えた熱電変換モジュールであって、前記複数の熱電発電部はそれぞれ、高温端が電気的に接続された一対の熱電素子と、当該一対の熱電素子それぞれの低温端に接続された一対の低温側導電部とを備え、前記一対の低温側導電部はそれぞれ、ヒートシンクとして機能することを特徴とする。
【0015】
以上の場合において、前記低温側導電部は、電線で構成されているようにしてもよい。
【0016】
また、上記第一又は第三の熱電変換モジュールにおいて、前記高温側導電部は、電線で構成されているようにしてもよい。
【0017】
また、上記第二又は第四の熱電変換モジュールにおいて、前記熱電発電部は、前記一対の熱電素子の高温端を電気的に接続する高温側電極を更に備えるようにしてもよい。
【0018】
また、以上の場合において、前記熱電発電部の高温側に配置された絶縁基板を更に備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、熱電素子の低温側の冷却効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による熱電発電部の構成を説明するための図である。
図2】本発明による別の熱電発電部の構成を説明するための図である。
図3】本発明による熱電変換モジュールの構成を説明するための図である。
図4】熱電変換モジュール300を使用する際の状態を説明するための図(その1)である。
図5】熱電変換モジュール300を使用する際の状態を説明するための図(その2)である。
図6】熱電変換モジュール300を使用する際の状態を説明するための図(その3)である。
図7】本発明による別の熱電変換モジュールの構成を説明するための図である。
図8】熱電変換モジュール700を使用する際の状態を説明するための図(その1)である。
図9】熱電変換モジュール700を使用する際の状態を説明するための図(その2)である。
図10】熱電変換モジュール700を使用する際の状態を説明するための図(その3)である。
図11】作製した熱電発電部の構成を説明するための図である。
図12】測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】
《第一実施形態》
図1は、本発明による熱電発電部の構成を説明するための図である。
【0023】
同図に示すように、本発明による第一の熱電発電部100は、熱電素子110と、低温側導電部120と、高温側導電部130とを備える。
【0024】
熱電素子110は、所定(例えば、直方体状)の形状を有し、その両端に温度差が与えられると、ゼーベック効果により、起電力を生じさせるものであり、本実施形態においては、n型半導体又はp型半導体によって構成される。熱電素子110の材料としては、例えば、マグネシウムシリサイド(Mg2Si)、鉄シリサイド(FeSi)、マンガンシリサイド(MnSi1.73)等が考えられる。
【0025】
低温側導電部120は、熱電素子110の低温端に接続されて、熱電素子110によって発電された電力を外部に取り出すためのものであり、本実施形態においては、電線(金属線)によって構成されている。低温側導電部121は、例えば、ろう付けによって、熱電素子110の低温端に接合される。
【0026】
低温側導電部120は、熱電素子110と同じ極性の熱起電力(ゼーベック係数)を有する材料で構成されている。すなわち、熱電素子110のゼーベック係数が負の値を有する場合は、ゼーベック係数が負の値を有する材料(例えば、アルメル、コンスタンタン等)で構成され、熱電素子110のゼーベック係数が正の値を有する場合は、ゼーベック係数が正の値を有する材料(例えば、銅、鉄、クロメル等)で構成される。
【0027】
高温側導電部130は、熱電素子110の高温端に接続されて、熱電素子110によって発電された電力を外部に取り出すためのものであり、本実施形態においては、電線によって構成されている。高温側導電部130は、例えば、ろう付けによって、熱電素子110の高温端に接合される。
【0028】
高温側導電部130は、熱電素子110とは逆の極性の熱起電力(ゼーベック係数)を有する材料で構成されている。すなわち、熱電素子110のゼーベック係数が負の値を有する場合は、ゼーベック係数が正の値を有する材料(例えば、銅、鉄、クロメル等)で構成され、熱電素子110のゼーベック係数が正の値を有する場合は、ゼーベック係数が負の値を有する材料(例えば、アルメル、コンスタンタン等)で構成される。
【0029】
低温側導電部120及び高温側導電部130は、充分な長さを有するように構成されており、低温側導電部120は、熱電素子110の低温端を冷却するためのヒートシンク(放熱部)としても機能することになる。低温側導電部120及び高温側導電部130を、充分な長さを有するように構成することで、強制空冷をすることなく、熱電素子110の高温端と低温端との間に必要な温度差を確保することが可能となる。
【0030】
また、熱電発電部100においては、熱電素子110と、ヒートシンク(放熱部)として機能する低温側導電部120とが、絶縁基板や熱伝導性グリースを介することなく、直接接合されているので、従来の熱電変換モジュールと比較して、熱電素子110の低温側の熱抵抗が低減し、熱電素子110の低温側の冷却効率を向上させることができる。
【0031】
また、熱電発電部100においては、低温側導電部120を熱電素子110と同じ極性の熱起電力(ゼーベック係数)を有する材料で構成するようにしているので、低温側導電部120の両端に与えられた温度差によって、低温側導電部120においても、熱電素子110と同じ向きの起電力が生じることとなり、その分、熱電発電部100全体での起電力を大きくすることができる。
【0032】
《第二実施形態》
図2は、本発明による別の熱電発電部の構成を説明するための図である。
【0033】
同図に示すように、本発明による第二の熱電発電部200は、一対の熱電素子211,212と、一対の低温側導電部221,222と、高温側電極230とを備える。
【0034】
熱電素子211,212は、所定(例えば、直方体状)の形状を有し、その両端に温度差が与えられると、ゼーベック効果により、起電力を生じさせるものである。本実施形態においては、一方の熱電素子211は、n型半導体で構成され、他方の熱電素子212は、p型半導体によって構成される。熱電素子211,212の材料としては、例えば、マグネシウムシリサイド(Mg2Si)、鉄シリサイド(FeSi)、マンガンシリサイド(MnSi1.73)等が考えられる。
【0035】
低温側導電部221,222はそれぞれ、熱電素子211,212の低温端に接続されて、熱電素子211,212によって発電された電力を外部に取り出すためのものであり、本実施形態においては、電線によって構成されている。低温側導電部221,222は、例えば、ろう付けによって、熱電素子211,212の低温端に接合される。
【0036】
低温側導電部221,222はそれぞれ、対応する熱電素子211,212と同じ極性の熱起電力(ゼーベック係数)を有する材料で構成されている。すなわち、n型半導体で構成される熱電素子211に接続される低温側導電部221は、ゼーベック係数が負の値を有する材料(例えば、アルメル、コンスタンタン等)で構成され、p型半導体で構成される熱電素子212に接続される低温側導電部222は、ゼーベック係数が正の値を有する材料(例えば、銅、鉄、クロメル等)で構成される。
【0037】
高温側電極230は、熱電素子211,212の高温端に接続されて、熱電素子211,212の高温端を電気的に接続するものであり、本実施形態においては、導電性を有する平板状の部材(金属板)によって構成されている。熱電素子211,212及び高温側電極230によってπ型熱電素子が構成されることになる。高温側電極230は、電気伝導率が高い金属(例えば、銅)で構成されており、例えば、ろう付けによって、熱電素子211及び212の高温端に接合される。
【0038】
低温側導電部221,222は、充分な長さを有するように構成されており、低温側導電部221,222はそれぞれ、対応する熱電素子211、212の低温端を冷却するためのヒートシンク(放熱部)としても機能することになる。低温側導電部221、222を、充分な長さを有するように構成することで、強制空冷をすることなく、熱電素子211,212の高温端と低温端との間に必要な温度差を確保することが可能となる。
【0039】
また、熱電発電部200においては、熱電素子211,212と、ヒートシンク(放熱部)として機能する低温側導電部221,222とが、絶縁基板や熱伝導性グリースを介することなく、直接接合されているので、従来の熱電変換モジュールと比較して、熱電素子211,212の低温側の熱抵抗が低減し、熱電素子211,212の低温側の冷却効率を向上させることができる。
【0040】
また、熱電発電部200においては、低温側導電部221,222を、対応する熱電素子211,212と同じ極性の熱起電力(ゼーベック係数)を有する材料で構成するようにしているので、低温側導電部221,222の両端に生じる温度差によって、低温側導電部221,222においても、対応する熱電素子211,212と同じ向きの起電力が生じることとなり、その分、熱電発電部200全体での起電力を大きくすることができる。
【0041】
《第三実施形態》
次に、前述した第一の熱電発電部100を使用した熱電変換モジュールについて説明する。
【0042】
図3は、本発明による熱電変換モジュールの構成を説明するための図である。
【0043】
同図に示すように、本発明による第一の熱電変換モジュール300は、複数(同図に示した例では、5つ)の熱電発電部100a~100eと、絶縁基板340と備える。
【0044】
なお、同図では、簡単のため、複数の熱電発電部100a~100eを直線状に並列配置した場合を示しているが、従来の熱電変換モジュールと同様に、複数の熱電発電部を面状に並列配置するようにしてもよい。
【0045】
複数の熱電発電部100a~100eはそれぞれ、前述した熱電発電部100と同じ構成を有するものであり、熱電素子110a~110eと、低温側導電部120a~120eと、高温側導電部130a~130eとを備える。
【0046】
複数の熱電発電部100a~100eはそれぞれ、前述した熱電発電部100と同じ構成を有しているので、前述した熱電発電部100と同様の効果を奏することになる。
【0047】
絶縁基板340は、複数の熱電発電部100a~100eの高温側に接合されて、熱電変換モジュール300の高温面を構成するものであり、例えば、セラミックスによって構成される。
【0048】
以上のような構成を有する熱電変換モジュール300は、電源として要求される電圧・電流の仕様に応じて、低温側導電部120a~120e及び高温側導電部130a~130eの端部を適宜、電気的に接続し、複数の熱電発電部100a~100eを直列又は並列に適宜接続した状態で使用されることになる。
【0049】
図4図6は、熱電変換モジュール300を使用する際の状態を説明するための図である。
【0050】
図4は、熱電変換モジュール300が備える5つの熱電発電部100a~100eを直列に接続して使用する例を示し、図5は、熱電変換モジュール300が備える4つの熱電発電部100a~100dを直列に接続して使用する例を示し、図6は、熱電変換モジュール300が備える4つの熱電発電部100a~100c、100eを直列に接続して使用する例を示している。
【0051】
図4に示した例においては、熱電発電部100aの低温側導電部120aと熱電発電部100bの高温側導電部130bとが配線401で接続され、熱電発電部100bの低温側導電部120bと熱電発電部100cの高温側導電部130cとが配線402で接続され、熱電発電部100cの低温側導電部120cと熱電発電部100dの高温側導電部130dとが配線403で接続され、熱電発電部100dの低温側導電部120dと熱電発電部100eの高温側導電部130eとが配線404で接続され、熱電発電部100eの低温側導電部120eと負荷450の一方の端子とが配線405で接続され、負荷450の他方の端子と熱電発電部100aの高温側導電部130aとが配線406で接続されている。
【0052】
また、図5に示した例においては、熱電発電部100aの低温側導電部120aと熱電発電部100bの高温側導電部130bとが配線501で接続され、熱電発電部100bの低温側導電部120bと熱電発電部100cの高温側導電部130cとが配線502で接続され、熱電発電部100cの低温側導電部120cと熱電発電部100dの高温側導電部130dとが配線503で接続され、熱電発電部100dの低温側導電部120dと負荷550の一方の端子とが配線504で接続され、負荷550の他方の端子と熱電発電部100aの高温側導電部130aとが配線505で接続されている。
【0053】
また、図6に示した例においては、熱電発電部100aの低温側導電部120aと熱電発電部100bの高温側導電部130bとが配線501で接続され、熱電発電部100bの低温側導電部120bと熱電発電部100cの高温側導電部130cとが配線502で接続され、熱電発電部100cの低温側導電部120cと熱電発電部100eの高温側導電部130eとが配線506で接続され、熱電発電部100eの低温側導電部120eと負荷550の一方の端子とが配線507で接続され、負荷550の他方の端子と熱電発電部100aの高温側導電部130aとが配線505で接続されている。
【0054】
図4及び図5に示すように、熱電変換モジュール300においては、外部の結線を切り替えることにより、複数の熱電発電部100a~100eを自由に組み合わせて使用することができるので、電源として要求される電圧・電流の仕様に柔軟に対応することが可能となる。
【0055】
また、複数の熱電発電部100a~100eの一部(例えば、熱電発電部100d)が破損した場合でも、図5に示すように、使用していない熱電発電部(例えば、熱電発電部100e)が存在している場合は、図6に示すように、外部の結線を一部変更するだけで、熱電変換モジュール300の使用を継続することが可能となる。
【0056】
《第四実施形態》
次に、前述した第二の熱電発電部200を使用した熱電変換モジュールについて説明する。
【0057】
図7は、本発明による別の熱電変換モジュールの構成を説明するための図である。
【0058】
同図に示すように、本発明による第二の熱電変換モジュール700は、複数(同図に示した例では、5つ)の熱電発電部200a~200eと、絶縁基板740と備える。
【0059】
なお、同図では、簡単のため、複数の熱電発電部200a~200eを直線状に並列配置した場合を示しているが、従来の熱電変換モジュールと同様に、複数の熱電発電部を面状に並列配置するようにしてもよい。
【0060】
複数の熱電発電部200a~200eはそれぞれ、前述した熱電発電部200と同じ構成を有するものであり、一対の熱電素子211a~211e,212a~212eと、一対の低温側導電部221a~221e,222a~222eと、高温側電極230a~230eとを備える。
【0061】
複数の熱電発電部200a~200eはそれぞれ、前述した熱電発電部200と同じ構成を有しているので、前述した熱電発電部200と同様の効果を奏することになる。
【0062】
絶縁基板740は、複数の熱電発電部200a~200eの高温側に接合されて、熱電変換モジュール700の高温面を構成するものであり、例えば、セラミックスによって構成される。
【0063】
以上のような構成を有する熱電変換モジュール700は、熱電変換モジュール300と同様、電源として要求される電圧・電流の仕様に応じて、低温側導電部221a~221e,222a~222eの端部を適宜、電気的に接続し、複数の熱電発電部200a~200eを直列又は並列に適宜接続した状態で使用されることになる。
【0064】
図8図10は、熱電変換モジュール700を使用する際の状態を説明するための図である。
【0065】
図8は、熱電変換モジュール700が備える5つの熱電発電部200a~200dを直列に接続して使用する例を示し、図9は、熱電変換モジュール700が備える4つの熱電発電部200a~200dを直列に接続して使用する例を示し、図10は、熱電変換モジュール700が備える4つの熱電発電部200a~200c、200eを直列に接続して使用する例を示している。
【0066】
図8に示した例においては、熱電発電部200aの低温側導電部221aと熱電発電部200bの低温側導電部222bとが配線801で接続され、熱電発電部200bの低温側導電部221bと熱電発電部200cの低温側導電部222cとが配線802で接続され、熱電発電部200cの低温側導電部221cと熱電発電部200dの低温側導電部222dとが配線803で接続され、熱電発電部200dの低温側導電部221dと熱電発電部200eの低温側導電部222eとが配線804で接続され、熱電発電部200eの低温側導電部221eと負荷850の一方の端子とが配線805で接続され、負荷850の他方の端子と熱電発電部200aの低温側導電部222aとが配線806で接続されている。
【0067】
また、図9に示した例においては、熱電発電部200aの低温側導電部221aと熱電発電部200bの低温側導電部222bとが配線901で接続され、熱電発電部200bの低温側導電部221bと熱電発電部200cの低温側導電部222cとが配線902で接続され、熱電発電部200cの低温側導電部221cと熱電発電部200dの低温側導電部222dとが配線903で接続され、熱電発電部200dの低温側導電部221dと負荷950の一方の端子とが配線904で接続され、負荷950の他方の端子と熱電発電部200aの低温側導電部222aとが配線905で接続されている。
【0068】
また、図10に示した例においては、熱電発電部200aの低温側導電部221aと熱電発電部200bの低温側導電部222bとが配線901で接続され、熱電発電部200bの低温側導電部221bと熱電発電部200cの低温側導電部222cとが配線902で接続され、熱電発電部200cの低温側導電部221cと熱電発電部200eの低温側導電部222eとが配線906で接続され、熱電発電部200eの低温側導電部221eと負荷950の一方の端子とが配線907で接続され、負荷950の他方の端子と熱電発電部200aの低温側導電部222aとが配線905で接続されている。
【0069】
図8及び図9に示すように、熱電変換モジュール700においては、外部の結線状態を適宜変更することにより、複数の熱電発電部200a~200eを自由に組み合わせて使用することができるので、電源として要求される電圧・電流の仕様に柔軟に対応することが可能となる。
【0070】
また、複数の熱電発電部200a~200eの一部(例えば、熱電発電部200d)が破損した場合でも、図9に示すように、使用していない熱電発電部(例えば、熱電発電部200e)が存在している場合は、図10に示すように、外部の結線を一部変更するだけ、熱電変換モジュール700の使用を継続することが可能となる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、当然のことながら、本発明の実施形態は上記のものに限られない。例えば、上述した第二実施形態及び第四実施形態においては、高温側電極を介して、一対の熱電素子の高温端を電気的に接続するようにしていたが、一対の熱電素子の高温端を直接接合するようにすることも考えられる。
【実施例
【0072】
次に、本発明による熱電発電部の実施例について説明する。
【0073】
まず、以下のようにして、マグネシウムシリサイド(Mg2Si)製のn型熱電素子を作製した。
【0074】
まず、化学量論比がMg2.02Si0.99Sb0.01となるように、純度99.9%、粒径180μmのマグネシウム(Mg)粉末、純度99.9%、粒径180μmのケイ素(Si)粉末及び純度99.999%、粒径180μmのアンチモン(Sb)粉末の秤量を行った。
【0075】
次に、原料粉末が均一になるように混合し、半密閉可能な蓋付き炭素製容器に収容した上で電気炉内に入れ、アルゴンガス雰囲気中、700℃にて1時間、熱処理を行い、Mg2Si系熱電材料の固溶体を得た。
【0076】
次に、得られた固溶体を、自動乳鉢によって、粒径30μm以下となるように粉砕を行った。
【0077】
次に、得られた固溶体粉末を、放電プラズマ焼結用の30φの円柱状冶具に充填した上で、放電プラズマ焼結装置内に入れて、焼結温度850℃、焼結時圧力30MPa、焼結時間25分の条件で焼結を行った。
【0078】
その後、室温まで自然冷却させ、得られた焼結体を、10×10×17mmの直方体に加工して、最終的な熱電素子を得た。
【0079】
次に、得られた熱電素子を使用して熱電発電部を作製した。
【0080】
図11は、作製した熱電発電部の構成を説明するための図である。
【0081】
同図に示すように、熱電発電部1100は、n型熱電素子1110と、低温側導電部としての銅線1121及びアルメル線1122と、高温側導電部としての銅線1130とを備える。
【0082】
なお、本実施例においては、便宜上、一つの熱電素子1100の低温端に対して、材料の異なる2つの低温側導電部1121,1122を電気的に接続するようにしている。
【0083】
同図に示すような構成を有する熱電発電部1100を、以下のようにして作製した。
【0084】
まず、熱電素子1110の両端部(銅線接合部分)をSiC研磨紙で荒らした上で、超音波はんだ付け装置を使用して、黒田テクノ株式会社(神奈川県横浜市港北区)製の特殊はんだ(セラソルザ・エコ)でコーティングした。
【0085】
次に、特殊はんだをコーティングした熱電素子1110の両端部のそれぞれに、銅線(径2.0mm、長さ470mm)の一方の端部をヤニなしのPbフリーはんだで接合した。
【0086】
次に、アルメル線(径2.3mm、長さ470mm)の一方の端部(銅線接合部分)に、上記特殊はんだのコーティングを施した上で、当該端部を、熱電素子1110の低温端付近において、低温側銅線1121にPbフリーはんだで接合した。
【0087】
最後に、銅線1121,1130及びアルメル線1122それぞれの他方の端部に、出力用端子としてY型端子を接続した。
【0088】
次に、以下のようにして、作製した熱電発電部1100の発電性能の測定を行った。
【0089】
まず、熱電素子1110の高温端をホットプレート上で加熱した状態で、熱電素子1110の高温端及び銅線1121の出力端それぞれの温度を熱電対で測定すると共に、銅線1121及び銅線1130の出力端間の電圧をデジタル電圧計で測定した。
【0090】
同様に、熱電素子1110の高温端をホットプレート上で加熱した状態で、熱電素子1110の高温端及びアルメル線1122の出力端それぞれの温度を熱電対で測定すると共に、アルメル線1122及び銅線1130の出力端間の電圧をデジタル電圧計で測定した。
【0091】
図12は、測定結果を示す図である。同図において、「Th」は、熱電素子1110の高温端の温度(単位:℃)を、「Tc」は低温側導電部1121,1122の出力端の温度(単位:℃)を、「Vout」は、出力端間の電圧(単位:μV)を、「αout」は、温度差1度あたりの出力電圧(Vout/(Th-Tc))(単位:μV/℃)を表している。
【0092】
同図に示すように、低温側導電部として、銅線を使用した場合より、アルメル線を使用した場合の方が、より大きな出力電圧を得ることができている。
【0093】
熱電素子1110は、n型半導体であり、負のゼーベック係数を有する。一方、銅線は正のゼーベック係数を有し、アルメル線は、負のゼーベック係数を有する。つまり、低温側導電部として、熱電素子1110と同じ極性(すなわち、負)のゼーベック係数を有するアルメル線を使用した場合の方が、熱電素子1110とは逆の極性(すなわち、正)のゼーベック係数を有する銅線を使用した場合より、大きな出力電圧が得られていることになる。
【符号の説明】
【0094】
100,100a~100e 熱電発電部
110,110a~110e 熱電素子
120,120a~120e 低温側導電部
130,130a~130e 高温側導電部
200,200a~200e 熱電発電部
211,211a~211e,212,212a~212e 熱電素子
221,221a~221e,222,222a~222e 低温側導電部
230,230a~230e 高温側電極
300 熱電変換モジュール
340 絶縁基板
401~406 配線
450 負荷
501~507 配線
550 負荷
700 熱電変換モジュール
740 絶縁基板
801~806 配線
850 負荷
901~907 配線
950 負荷
1100 熱電発電部
1110 熱電素子
1121 低温側銅線
1122 アルメル線
1130 高温側銅線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12