(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】ホッパ装置、研磨石入替装置及びバレル研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 31/12 20060101AFI20230718BHJP
B24B 31/16 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B24B31/12 A
B24B31/16
(21)【出願番号】P 2019146291
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】396019631
【氏名又は名称】株式会社チップトン
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 達樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 稔
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-225854(JP,A)
【文献】特開2002-119931(JP,A)
【文献】特開2003-019654(JP,A)
【文献】特開昭51-069210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 31/12
B24B 31/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル研磨機のバレル槽から排出された研磨石を収容可能なホッパを有し、
前記バレル槽内が前記ホッパ内よりも低圧になったときに、前記ホッパ内の前記研磨石が導入管を介して前記バレル槽に導入されるようになっている
ホッパ装置であって、
前記ホッパの底面より下方に設けられた接続部と、
前記ホッパの底面に形成され、前記接続部に向けて下向きに開口する落下口、とを備え、
前記接続部は、前記落下口の真下に位置する受け部と、前記受け部から水平に突出した筒状部とを有し、
前記筒状部には前記導入管の上流側接続端部が接続されており、
前記受け部には、前記受け部を前記筒状部の突出方向と平行に貫通した形態であり、前記導入管の上流端部が大気圧よりも低圧になったときに、前記ホッパの外部のエアを前記接続部内に吸引するエア流入口が形成され、
前記接続部内に吸引されることによって前記落下口の真下へ水平に流入した前記エアは、前記受け部から前記筒状部に向かって水平に流れて前記導入管の上流端部に至る水平方向の空気流を生成することを特徴とするホッパ装置。
【請求項2】
前記ホッパを振動させる振動モータと、
前記ホッパの底面を構成する異物排出網とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のホッパ装置。
【請求項3】
前記ホッパは、複数の貫通形態の開口部が形成された底面支持部と、前記底面支持部の外周縁から立ち上がる周壁部とを有しており、
前記異物排出網は、前記底面支持部及び前記周壁部とは別体の部品であり、前記底面支持部に対し載置した状態で着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のホッパ装置。
【請求項4】
前記ホッパは、前記落下口への前記研磨石の進入量を増減する調節部材を有していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のホッパ装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかのホッパ装置と、
前記バレル槽と前記ホッパを連通させる導入管と、
前記バレル槽内を前記ホッパ内よりも低圧にする差圧発生装置とを備えていることを特徴とする
研磨石入替装置。
【請求項6】
前記差圧発生装置が、
前記バレル槽内を減圧する減圧装置と、
前記バレル槽と前記減圧装置とを連通させる吸引管と、
前記吸引管に設けられた水回収装置とを備えて構成されていることを特徴とする請求項5に記載の
研磨石入替装置。
【請求項7】
バレル槽内に研磨石とワークを収容し、前記研磨石により前記ワークを研磨するバレル研磨機と、
請求項5又は請求項6の研磨石入替装置とを備えていることを特徴とする
バレル研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホッパ装置、研磨石入替装置及びバレル研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バレル槽内にワークと研磨石を投入してバレル研磨を行うバレル研磨装置が開示されている。この種のバレル研磨装置では、研磨が終了すると、バレル槽から排出したワークと研磨石を選別し、ワークを回収する。研磨石は、バレル槽に戻し、再度の研磨に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、研磨石をバレル槽に戻す作業を手作業で行っていたが、この作業は、重労働であるため作業者への負担が大きく、改善が望まれる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、バレル槽から排出された研磨石を、再使用のためにバレル槽に戻せるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明のホッパ装置は、
バレル研磨機のバレル槽から排出された研磨石を収容可能なホッパを有し、
前記バレル槽内が前記ホッパ内よりも低圧になったときに、前記ホッパ内の前記研磨石が導入管を介して前記バレル槽に導入されるようになっているホッパ装置であって、
前記ホッパの底面より下方に設けられた接続部と、
前記ホッパの底面に形成され、前記接続部に向けて下向きに開口する落下口、とを備え、
前記接続部は、前記落下口の真下に位置する受け部と、前記受け部から水平に突出した筒状部とを有し、
前記筒状部には前記導入管の上流側接続端部が接続されており、
前記受け部には、前記受け部を前記筒状部の突出方向と平行に貫通した形態であり、前記導入管の上流端部が大気圧よりも低圧になったときに、前記ホッパの外部のエアを前記接続部内に吸引するエア流入口が形成され、
前記接続部内に吸引されることによって前記落下口の真下へ水平に流入した前記エアは、前記受け部から前記筒状部に向かって水平に流れて前記導入管の上流端部に至る水平方向の空気流を生成する。
【0007】
第2の発明の研磨石入替装置は、
第1の発明のホッパ装置と、
前記バレル槽と前記ホッパを連通させる導入管と、
前記バレル槽内を前記ホッパ内よりも低圧にする差圧発生装置とを備えている。
【0008】
第3の発明のバレル研磨装置は、
バレル槽内に研磨石とワークを収容し、前記研磨石により前記ワークを研磨するバレル研磨機と、
第2の発明の研磨石入替装置とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
第1~第3の発明によれば、バレル槽内がホッパよりも低圧になると、圧力差により、ホッパ内の研磨石が導入管を通ってバレル槽内に導入される。したがって、バレル槽から排出された研磨石を、手作業でバレル槽へ運ばなくても、バレル槽に戻すことができる。また、落下口の真下では、エア流入口から接続部内に流入したエアにより、接続部から導入管側に向かう空気流が生成される。導入管内には、ホッパ側からバレル槽側に向かう空気の流れが生成される。ホッパから落下口を通って接続部内に落下した研磨石は、接続部内の空気流により直ちに導入管側へ送り込まれる。これにより、ホッパ内における研磨石の量や密度に拘わらず、導入管内の研磨石を滞りなくバレル槽側へ移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1~第3の発明は、前記ホッパを振動させる振動モータと、前記ホッパの底面を構成する異物排出網とを備えていてもよい。この構成によれば、バレル研磨の際に研磨石に付着した水や研磨粉等の異物は、異物排出網の上で研磨石が振動することによって研磨石から除去される。したがって、ホッパからバレル槽に研磨石が導入される際に、異物がバレル槽内に侵入することを防止できる。
【0012】
第1~第3の発明は、前記ホッパは、複数の貫通形態の開口部が形成された底面支持部と、前記底面支持部の外周縁から立ち上がる周壁部とを有しており、前記異物排出網は、前記底面支持部及び前記周壁部とは別体の部品であり、前記底面支持部に対し載置した状態で着脱可能に取り付けられていてもよい。この構成によれば、異物排出網を底面支持部から外せるようになっているので、異物排出網のメンテナンスや交換等を容易に行うことができる。
【0015】
第1~第3の発明は、前記ホッパは、前記落下口への前記研磨石の進入量を増減する調節部材を有していてもよい。この構成によれば、研磨石の大きさや形状等に応じて、ホッパから接続部への研磨石の落下量を調節することができる。これにより、ホッパ内の研磨石を効率良く導入管側へ送り出すことや、落下口や導入管内における研磨石の詰まりを防止することが可能となる。
【0016】
第2又は第3の発明は、前記差圧発生装置が、前記バレル槽内を減圧する減圧装置と、前記バレル槽と前記減圧装置とを連通させる吸引管と、前記吸引管に設けられた水回収装置とを備えて構成されていてもよい。研磨石の表面に水が付着したままの状態で、研磨石がバレル槽内に導入された場合、研磨石に付着していた水が、吸引管を通って減圧装置に浸入することが懸念される。しかし、減圧装置に吸引された水は、吸引管に設けた水回収装置によって回収されるので、減圧装置に浸入する虞がない。
【0017】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1~
図9を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、
図2,4,7における下方及び
図3,9における左方を、前方と定義する。上下の方向については、
図1,3,5,6,8,9にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、
図1,2,4~8にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。
【0018】
本実施例1のバレル研磨装置Aは、遠心バレル研磨機B(請求項に記載のバレル研磨機)と、研磨石入替装置20とを備えて構成されている。遠心バレル研磨機Bは、ハウジング10と、ハウジング10内に収容されたターレット11と、ターレット11の偏心位置に取り付けた複数(本実施例では4つ)のバレル槽12と、排出シュート17と、排出フィーダ18とを有する。
【0019】
ターレット11は、前後方向の公転軸13を中心として回転駆動されるようになっている。バレル槽12は、公転軸13と平行な自転軸14を中心として回転駆動されるようになっている。バレル槽12は、内部が収容空間となっているバレル本体15と、バレル本体15の開口部を開閉するバレル蓋16とを有する。バレル本体15内にワーク(図示省略)と研磨石(図示省略)と水(図示省略)とコンパウンド(図示省略)を収容し、バレル蓋16を閉めてバレル槽12を遊星回転させると、バレル槽12内でワークが研磨石により研磨される。
【0020】
排出シュート17は、ハウジング10内におけるバレル槽12の下方位置に設けられている。排出シュート17の下方には排出フィーダ18の上流端部が配置されている。排出フィーダ18の下流端部は、ハウジング10の外部前方に位置している。排出フィーダ18には第1振動モータ19が取り付けられている。研磨の終了後に、バレル蓋16を開けてバレル本体15の開口を下に向けると、バレル槽12内のワークと研磨石が、排出シュート17上に落下し、第1振動モータ19によって振動する排出フィーダ18を通ることにより、研磨石入替装置20に送られる。
【0021】
研磨石入替装置20は、ハウジング10(バレル研磨機)の前方に配置されている。研磨石入替装置20は、選別装置21と、洗浄装置26と、ホッパ装置32と、導入管49と、差圧発生装置55とを備えて構成されている。選別装置21は、可動基台22と、振動フレーム64と、囲い壁65と、受け板25と、選別網23と、第2振動モータ24と、ダンパ66とを有する。
【0022】
振動フレーム64は、可動基台22の上面にバネ67を介して取り付けられている。振動レーム64は、バネ67の弾性変形を伴いながら、可動基台22に対して上下方向へ相対変位(振動)し得るようになっている。囲い壁65は、前後左右の4枚の壁板からなり、振動フレーム64の上流端部(左端部)に載置した状態で取り付けられている。囲い壁65は、排出フィーダ18の下流端部の真下に位置する。受け板25は、振動フレーム64の上流端部(左端部)に取り付けられ、囲い壁65の下方において水平に配置されている。排出フィーダ18から受け板25上に落下した研磨石とワークは、囲い壁65の内部に一時的に貯留されるようになっている。
【0023】
選別網23は、振動フレーム64のうち受け板25よりも下流側(右側)の領域に取り付けられ、受け板25と同じ高さで連なるように水平に配置されている。選別網23の網目は、ワークより小さく、研磨石より大きい。第2振動モータ24は、振動フレーム64に取り付けられ、振動フレーム64と囲い壁65と受け板25と選別網23を一体的に振動させる。
【0024】
ダンパ66は、囲い壁65の外壁面に取り付けられ、選別網23の上流端(受け板25に連なる境界部分)の真上に配されている。ダンパ66は、選別網23の上面からの高さを調節することができるようになっている。ダンパ66の高さを変えることにより、選別網23の上面との隙間を増減し、研磨石とワークが受け板25(囲い壁65内)から選別網23へ流出する速度を調節することができる。
【0025】
洗浄装置26は、上記可動基台22と上記第2振動モータ24と上記振動フレーム64と除去網27(
図5参照)と複数の洗浄ノズル28とを備えて構成されている。洗浄装置26は選別装置21と一体をなしている。可動基台22にはキャスターが取り付けられているので、選別装置21と洗浄装置26は、移動させることができる。
【0026】
除去網27は、振動フレーム64に取り付けられ、選別網23の真下において水平に配置されている。除去網27は、第2振動モータ24により、選別網23及び振動フレーム64と一体的に振動する。除去網27の網目は、研磨石より小さい。複数の洗浄ノズル28は、選別網23の上方において、前後方向(選別網23の幅方向)に間隔を空けて配置されている。洗浄ノズル28は選別網23に向けて洗浄水(図示省略)を吐出する。洗浄ノズル28から吐出された洗浄水は、選別網23を通過して除去網27上に降り注ぐ。
【0027】
排出フィーダ18から排出されたワークと研磨石は、第2振動モータ24によって振動する受け板25上(囲い壁65内)に落下する。受け板25上(囲い壁65内)に落下したワークは、ダンパ66の下を潜り抜けて選別網23へ移動し、選別網23の下流端から回収トレイ29上へ進行して回収される。選別網23上の研磨石は、下流側へ移動する過程で除去網27上に落下する。除去網27上に落下した研磨石は、除去網27の下流端から排出トレイ30上へ進行してホッパ装置32に送られる。摩耗して小さくなった研磨石や、細かい異物は、除去網27から落下する。
【0028】
また、ワークには、バレル研磨の工程で発生した研磨粉等の異物が付着しているが、ワークに付着していた異物は、ワークが選別網23上を移動する過程で、洗浄ノズル28から吐出される洗浄水により除去される。また、研磨石にも、バレル研磨の工程で発生した研磨粉等の異物が付着しているが、研磨石に付着していた異物は、研磨石が選別網23上又は除去網27上を移動する過程で洗浄水により除去される。洗浄水は、除去網27から流下し、排水タンク(図示省略)や排水ピット(図示省略)へ排出される。
【0029】
ホッパ装置32は、選別装置21及び洗浄装置26の前方に隣り合うように配置されている。ホッパ装置32は、ホッパ33と、第3振動モータ38(請求項に記載の振動モータ)とを有している。ホッパ33は、平面視の形状が方形をなすフレーム34と、フレーム34によって支持された異物排出網39とを有する。尚、平面視とは、ホッパ33を上から視た状態を意味する。
【0030】
フレーム34は、方形の板状をなす底面支持部35と、底面支持部35の外周縁から立ち上がる周壁部36とを有する。底面支持部35は、ホッパ33の底面を構成する。底面支持部35には、底面支持部35を上下に貫通し、円形に開口する複数の貫通孔37(請求項に記載の開口部)が形成されている。貫通孔37の内径は、研磨石の最大外形寸法より大きい寸法である。尚、底面支持部35は、板状のものに限らず、周壁部36の間に複数本の補強部材を適宜間隔で差し渡したものでもよい。
【0031】
異物排出網39は、金網、ウレタン製のメッシュ部材、金網に樹脂のライニングやコーティングを施したものである。異物排出網39は、底面支持部35の上に載置した状態で取り付けられており、底面支持部35と同様、ホッパ33の底面を構成する。底面支持部35は異物排出網39の変形を防止するための補強部として機能する。底面支持部35と異物排出網39は、右端の上流端部から左端の下流端部に向かって下るように傾斜している。異物排出網39の網目は、貫通孔37の内径より小さく、研磨石より小さい。フレーム34には第3振動モータ38が取り付けられており、底面支持部35と異物排出網39は第3振動モータ38によって振動する。
【0032】
ホッパ33には、異物排出網39の下流端部から上方へ立ち上がる前後対称な一対のガイド壁40が設けられている。平面視において、一対のガイド壁40は、フレーム34の前面壁と後面壁から前後方向中央部に向かって互いに接近するように延出している。一対のガイド壁40は、前後方向(ホッパ33の幅方向)及び左右方向(ホッパ33内で研磨石が移動する方向)の両方向に対して斜めを向いている。即ち、一対のガイド壁40は、異物排出網39の幅方向(前後方向)の寸法が、異物排出網39の下流端部側(左端側)に向かって次第に狭まるように傾斜している。
【0033】
除去網27から排出トレイ30へ進行した研磨石は、振動する異物排出網39の上流端部に落下し、異物排出網39上(ホッパ33内)を下流端側へ移動する。研磨石がホッパ33内を移動する間、研磨石と異物排出網39が振動するので、研磨石に付着していた異物は、異物排出網39の網目から落下する。研磨石は、異物排出網39上を下流端側へ移動する過程で、一対のガイド壁40により幅方向中央部へ集められる。本実施例1では、異物排出網39(ホッパ33)のうち研磨石がガイド壁40によって集積される最下流端の位置を、集積位置41と定義する。集積位置41には、異物排出網39上(ホッパ33内)の研磨石を、異物排出網39の下方へ落下させるための落下口42が形成されている。
【0034】
ホッパ33(フレーム34)の下流端部には、底面支持部35の下面から下方へ突出した形態の接続部43が設けられている。接続部43は、上面と左側面が開口した箱状の受け部44と、受け部44から左方(ホッパ33における研磨石の移動方向と平行な方向)へ水平に突出した筒状部45とを有している。受け部44は落下口42の真下に位置している。受け部44(接続部43)内の空間は、落下口42を介してホッパ33内(異物排出網39上)の空間と連通している。
【0035】
筒状部45内の空間と受け部44内の空間は、同じ高さで左右方向(水平方向)に連通している。受け部44と筒状部45が連通する方向は、ホッパ33内(異物排出網39上)の研磨石が落下口42から受け部44(接続部43)内に落下する方向に対して直交する方向である。筒状部45内は、受け部44と落下口42を介してホッパ33内と連通している。
【0036】
ホッパ33の下流端部には、調節部材46が設けられている。調節部材46は、落下口42の真上に位置し、上下方向の位置(高さ)を調節することができるようになっている。調節部材46の位置を高くすると、研磨石が比較的積み重なった状態で落下口42(集積位置41)に進入する。これにより、異物排出網39上の研磨石が落下口42から受け部44(接続部43)内に落下するときの、単位時間当たりの研磨石の落下量が多くなるので、研磨石を導入管49側へ効率良く送り込むことができる。研磨石が比較的小さい場合は、研磨石が比較的積み重なった状態で落下口42に進入しても、研磨石が詰まる虞はほとんどない。
【0037】
調節部材46の位置を低くすると、研磨石が比較的積み重ならない状態で落下口42(集積位置41)に進入するので、研磨石が落下口42で詰まり難くなる。また、調節部材46の位置を低くすると、異物排出網39上から受け部44(接続部43)内への単位時間当たりの研磨石の落下量が少なくなるが、その一方で、研磨石が接続部43内や筒状部45内や導入管49内で詰まることを回避できる。したがって、研磨石が比較的大きい場合や、研磨石の外面形状が複雑で研磨石同士が引っ掛かり易いような場合は、調節部材46の位置を低くすることが好ましい。
【0038】
接続部43には、ホッパ33の外部のエアを接続部43内に流入させるための複数のエア流入口48が形成されている。複数のエア流入口48は、受け部44を構成する右側板を左右方向に貫通した形態である。エア流入口48の貫通方向は、筒状部45が受け部44から突出する方向と平行な方向であり、ホッパ33内の研磨石が落下口42から接続部43(受け部44)内に落下する方向と直交する方向である。エア流入口48から接続部43内に流入したエアは、受け部44から筒状部45に向かって水平方向に流れる。
【0039】
導入管49は、可撓性を有するホースからなる。導入管49の上流側接続端部50は、筒状部45に対し着脱可能であるが、常には筒状部45に対して気密状に接続されている。導入管49は、ハウジング10の左外側面と上面に沿うように配索されている。導入管49の下流側接続端部51は、バレル蓋16の導入口52に対して着脱可能となっている。導入管49は、接続部43を介することにより、ホッパ33内とバレル槽12内とを連通するものである。導入管49内には研磨石が流動するようになっている。
【0040】
差圧発生装置55は、減圧装置56と、水回収装置57と、吸引管60とを有している。減圧装置56は、減圧装置56に接続された機器内のエアを吸引することにより、その機器内を大気圧よりも低圧にするための装置である。本実施例では、減圧装置56によりバレル槽12内が減圧されるようになっている。水回収装置57は、流入部58から水回収装置57内に流入した水を回収し、流出部59から外部へ水が流出しないようにするための装置である。
【0041】
吸引管60は、第1吸引ホース61と第2吸引ホース62とから構成されている。第1吸引ホース61の上流端部は、バレル蓋16の吸引口63に対して着脱可能である。第1吸引ホース61の下流端部は、水回収装置57の流入部58に気密状に接続されている。第2吸引ホース62の上流端部は水回収装置57の流出部59に気密状に接続され、第2吸引ホース62の下流端部は減圧装置56に気密状に接続されている。
【0042】
次に、本実施例1の作用を説明する。遠心バレル研磨機Bによる研磨を行う際には、導入管49を導入口52から外すとともに、第1吸引ホース61を吸引口63から外しておく。そして、導入口52と吸引口63をキャップ(図示省略)で閉塞するか、導入口52及び吸引口63の無い蓋に交換しておく。バレル研磨が終了すると、バレル本体15からバレル蓋16を外してバレル本体15を上下反転させ、ワークと研磨石と水とコンパウンドをバレル本体15から排出シュート17内に排出する。
【0043】
ワークと研磨石と水とコンパウンドを排出した後は、バレル本体15にバレル蓋16を組み付け、導入管49の下流側接続端部51をバレル蓋16の導入口52に気密状に接続するとともに、第1吸引ホース61を吸引口63に気密状に接続する。この後、減圧装置56を起動し、バレル槽12内のエアを第1吸引ホース61と水回収装置57と第2吸引ホース62を介して吸引する。バレル槽12内は、エアを吸引されることにより大気圧(ホッパ33内)よりも低圧となる。バレル槽12内とホッパ33内は導入管49を介して連通しているので、バレル槽12内とホッパ33内との間で差圧(圧力差)が生じる。導入管49内においても、下流側(バレル槽12側)が上流側(ホッパ33側)よりも低圧になる。
【0044】
また、導入管49の上流端部が、大気圧(接続部43の外部)よりも低圧になる。この差圧(圧力差)により、接続部43外及びホッパ33外のエアが、エア流入口48から接続部43内(落下口42の真下)に吸引される。接続部43に吸引されたエアは、落下口42の真下から、受け部44と筒状部45を順に通過して導入管49の上流端部に至る水平方向の空気流を生成する。ホッパ33内の空気は、落下口42を通って接続部43内に流入し、エア流入口48から流入したエアによる空気流と合流する。
【0045】
バレル槽12から排出されたワークと研磨石は、排出フィーダ18を経由して選別装置21と洗浄装置26へ送られる。選別装置21では、ワークと研磨石が選別され、ワークのみが回収される。洗浄装置26では、選別装置21から除去網27上に落下した研磨石から異物が除去される。洗浄装置26を通過した研磨石は、ホッパ装置32の上流端部に送られる。
【0046】
バレル槽12からホッパ装置32へ排出された研磨石は、振動する異物排出網39上を移動する。洗浄装置26を通過した後も研磨石に付着していた異物は、研磨石が異物排出網39上を移動する過程で研磨石から除去される。異物を除去された研磨石は集積位置41に集合するので、集積位置41の近傍では研磨石の密度が高まる。そのため、バレル槽12に連通している接続部43内の圧力が、ホッパ33のうち集積位置41よりも上流側の空間(大気圧)よりも低圧になる。
【0047】
集積位置41に集中した研磨石は、接続部43内が減圧されることに起因する吸引力と、研磨石の自重とにより、落下口42から接続部43(受け部44)内に引き込まれるように落下する。バレル槽12内は接続部43内よりも低圧なので、接続部43内に落下した研磨石は、導入管49を通ってバレル槽12内に導入される。また、接続部43内には、エア流入口48から流入したエアによる空気流が生成されているので、落下口42から落下した研磨石は、滞ることなく空気流に乗じてバレル槽12側へ送り出される。
【0048】
バレル槽12内では、導入管49を通過した研磨石とエアが導入される。研磨石は、自重によりバレル本体15(バレル槽12)の底部に溜まる。エアは、吸引口63から第1吸引ホース61を通って水回収装置57に流入し、第2吸引ホース62を通って減圧装置56に流入し、減圧装置56から大気中へ放出される。
【0049】
また、研磨石に付着した水が、洗浄装置26やホッパ装置32では除去又は排出されずに、導入管49内を移動する過程で研磨石から除去された場合は、導入管49内の水がバレル槽12内に導入される。バレル槽12内に導入された水は、エアと一緒に第1吸引ホース61を通って水回収装置57に流入する。水回収装置57内においては、流入した水が底部の排水管(図示省略)を通して排水タンク(図示省略)や排水ピット(図示省略)へ排出される。したがって、バレル槽12から水回収装置57に流入した水は、第2吸引ホース62へ流出しない。これにより、水が減圧装置56に浸入することを防止できる。排水管には逆止弁(チェック弁)が設けられているので、減圧中の水回収装置57内は気密状態に保たれる。
【0050】
バレル槽12への研磨石の導入が完了したら、減圧装置56を停止する。そして、導入管49の下流側接続端部51をバレル蓋16の導入口52から外すとともに、第1吸引ホース61の上流端をバレル蓋16の吸引口63から外す。次に、バレル槽12内にワーク、水、コンパウンドを投入し、必要に応じて摩耗した分の研磨石を補給する。この後は、導入口52と吸引口63にキャップ(図示省略)を取り付けるか、導入口52及び吸引口63の無い蓋に交換すれば、遠心バレル研磨を行う準備が整う。
【0051】
本実施例1のバレル研磨装置Aは、遠心バレル研磨機Bと研磨石入替装置20とを備えている。遠心バレル研磨機Bは、バレル槽12内に研磨石とワークを収容して、バレル槽12を遊星回転させ、研磨石によってワークを研磨する。研磨石入替装置20は、ホッパ装置32と、導入管49と、差圧発生装置55とを備えている。ホッパ装置32は、バレル研磨機のバレル槽12から排出された研磨石を収容可能なホッパ33を有する。導入管49は、バレル槽12とホッパ33を連通させるように設けられている。差圧発生装置55は、バレル槽12内のエアを吸引することにより、バレル槽12内をホッパ33内よりも低圧にする。
【0052】
上記構成によれば、バレル槽12内の研磨石をホッパ33内へ排出し、バレル槽12内をホッパ33よりも低圧にすると、ホッパ33とバレル槽12との間の圧力差により、ホッパ33内の研磨石が導入管49を通ってバレル槽12内に導入される。したがって、バレル槽12から排出した研磨石を、手作業でバレル槽12へ運ばなくても、バレル槽12に戻すことができる。
【0053】
ホッパ装置32は、ホッパ33を振動させる第3振動モータ38と、ホッパ33の底面を構成する異物排出網39とを備えている。この構成によれば、バレル研磨の際に研磨石に付着した水や研磨粉等の異物は、異物排出網39の上で研磨石が振動することによって研磨石から除去される。したがって、ホッパ33からバレル槽12に研磨石が導入される際に、異物がバレル槽12内に侵入することを防止できる。
【0054】
ホッパ33は、複数の貫通形態の貫通孔37(開口部)が形成された底面支持部35と、底面支持部35の外周縁から立ち上がる周壁部36とを有している。異物排出網39は、底面支持部35及び周壁部36とは別体の部品であり、底面支持部35に対し載置した状態で着脱可能に取り付けられている。この構成によれば、異物排出網39を底面支持部35から外せるようになっているので、異物排出網39のメンテナンスや交換等を容易に行うことができる。
【0055】
ホッパ装置32は、ホッパ33内に連通するように設けられ、導入管49の上流端が接続される接続部43を有している。接続部43には、ホッパ33の外部から導入管49内にエアを流入させるエア流入口48が設けられている。この構成によれば、エア流入口48から接続部43内及び導入管49内に流入するエアにより、接続部43内及び導入管49内には、ホッパ33側からバレル槽12に向かう空気の流れが生成される。これにより、ホッパ33内における研磨石の量や密度に拘わらず、導入管49内の研磨石をバレル槽12側へ滞りなく送り込むことができる。
【0056】
ホッパ33の底面には、接続部43内に向けて下向きに開口する落下口42が形成されている。エア流入口48は、ホッパ33の外部のエアを落下口42の真下へ水平に流入させるように開口している。この構成によれば、落下口42の真下では、エア流入口48から接続部43内に流入したエアにより、接続部43から導入管49側に向かう水平な空気流が生成される。ホッパ33から落下口42を通って接続部43内に落下した研磨石は、接続部43内の空気流により直ちに導入管49側へ送り込まれる。
【0057】
ホッパ33は、落下口42への研磨石の進入量を増減する調節部材46を有しているので、研磨石の大きさや形状等に応じて、ホッパ33から接続部43への研磨石の落下量を調節することができる。これにより、ホッパ33内の研磨石を効率良く導入管49側へ送り出すことや、落下口42や導入管49内における研磨石の詰まりを防止することが可能となる。
【0058】
研磨石が集積位置41へ到達する速度は、第3振動モータ38の振動数を変更したり、第3振動モータ38の振動方向を変更したり、第3振動モータ38の数を変更したりすることにより、調節することが可能である。また、平面視におけるガイド壁40の傾き角度を変えることによっても、研磨石が集積位置41へ到達する速度を調節することができる。
【0059】
差圧発生装置55は、バレル槽12内を減圧する減圧装置56と、バレル槽12と減圧装置56とを連通させる吸引管60とを備えており、吸引管60には水回収装置57が設けられている。研磨石の表面に水が付着したままの状態で、研磨石がバレル槽12内に導入された場合、研磨石に付着していた水が、吸引管60を通って減圧装置56に浸入することが懸念される。しかし、減圧装置56に吸引された水は、吸引管60に設けた水回収装置57によって回収されるので、減圧装置56に浸入する虞がない。
【0060】
バレル槽12からホッパ33に至る排出経路には、バレル槽12から排出された研磨石に付着している異物を除去する洗浄装置26が設けられている。バレル研磨の際に研磨石に付着した水や研磨粉等の異物は、洗浄装置26において研磨石から除去されるので、ホッパ33に混入するおそれがない。したがって、ホッパ33からバレル槽12に研磨石を導入する際に、異物がバレル槽12内に侵入することを防止できる。除去網27の上方には、バレル槽12から排出された研磨石とワークのうち研磨石のみを除去網27上へ落下させる選別網23(選別装置21)が設けられている。選別網23と除去網27が上下に並ぶように配されるので、平面視において装置全体の小型化を図ることができる。
【0061】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2を
図10を参照して説明する。本実施例2のホッパ装置70は、実施例1のホッパ33に、ゲート71と複数のバッフル72を設け、ホッパ33から調節部材46を取り除いたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0062】
ゲート71は、異物排出網39の上方に隙間を空けて配置されている。平面視において、ゲート71は、ガイド壁40と平行をなす。また、ホッパ33における研磨石の移動方向において、ゲート71は、ガイド壁40よりも上流側(
図10における右方)に配置されている。ゲート71は、研磨石の大きさや形状等に応じて高さを調節できるようになっている。ゲート71を高くすると、落下口42への研磨石の移動量が多くなり、ゲート71を低くすると、落下口42への研磨石の移動量が少なくなる。
【0063】
ホッパ33における研磨石の移動方向において、複数のバッフル72は、ゲート71よりも上流側(
図10における右方)に配置されている。複数のバッフル72は、前後方向(ホッパ33における研磨石の移動方向と直交する幅方向)に間隔を空けて配置されている。異物排出網39上を移動する研磨石は、バッフル72に当たることにより、前後(幅方向)に分散される。これにより、落下口42への研磨石の移動量が抑制される。
【0064】
<実施例3>
次に、本発明を具体化した実施例3を
図11を参照して説明する。本実施例3のホッパ装置73は、接続部74とエア流入口79を上記実施例1と異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0065】
本実施例3の接続部74は、受け部75からの筒状部76の突出寸法が、実施例1の筒状部45よりも大きくなっている。筒状部76の上面部には、正面視においてL字形に屈曲した吸気管77が形成されている。吸気管77は、筒状部76から上方へ立ち上がり、左方(筒状部76から導入管49へ研磨石が移動する方向)へ屈曲している。吸気管77は筒状部76と連通している。吸気管77の左向きに開口する先端部に蓋板78が取り付けられ、蓋板78に複数のエア流入口79が形成されている。
【0066】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施例では、バレル槽を遊星回転させる遠心バレル研磨機に適用した例を説明したが、本発明は、遠心バレル研磨機に限らず、回転バレル研磨機、振動バレル研磨機、渦流バレル研磨機等、バレル槽に研磨石とワークを投入して研磨を行う全てのバレル研磨機に適用することができる。
上記実施例では、バレル槽に水を投入する湿式のバレル研磨機に適用した例について説明したが、本発明は、バレル槽に水を投入しない乾式のバレル研磨機にも適用することができる。乾式のバレル研磨機にも適用した場合、研磨石の摩耗粉が異物排出網の隙間から抜け落ちる。
上記実施例では、ホッパ内の研磨石が落下口から導入管内に落下するようになっているが、ホッパ内の研磨石が、導入管内へ水平に滑りながら送り込まれるようにしてもよい。
上記実施例では、落下口への研磨石の進入量を増減する調節部材を設けたが、調節部材を設けない構成としてもよい。
上記実施例では、差圧発生装置が、バレル槽内の空気を排出する減圧装置と吸引管とを備えて構成されているが、差圧発生装置は、ホッパ内に加圧空気を圧送する加圧装置によって構成されるものであってもよい。
上記実施例では、吸引管に水回収装置を設けたが、吸引管に水回収装置を設けない形態としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
A…バレル研磨装置
B…遠心バレル研磨機(バレル研磨機)
12…バレル槽
20…研磨石入替装置
32,70,73…ホッパ装置
33…ホッパ
35…底面支持部
36…周壁部
37…貫通孔(開口部)
38…第3振動モータ(振動モータ)
39…異物排出網
42…落下口
43,74…接続部
46…調節部材
48,79…エア流入口
49…導入管
55…差圧発生装置
56…減圧装置
57…水回収装置
60…吸引管