(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】抗GP73抗体及びイムノコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20230718BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230718BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230718BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230718BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230718BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230718BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230718BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230718BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230718BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230718BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230718BHJP
A61K 31/537 20060101ALI20230718BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20230718BHJP
A61K 31/5517 20060101ALI20230718BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20230718BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230718BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230718BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20230718BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20230718BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20230718BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20230718BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61K47/68
A61K31/537
A61K31/704
A61K31/5517
A61K31/706
A61K39/395 D
A61K39/395 N
G01N33/53 N
G01N33/574 A
G01N33/48 P
G01N33/536 C
G01N33/536 D
G01N33/53 Y
C12N5/0783
(21)【出願番号】P 2019547778
(86)(22)【出願日】2017-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2017079870
(87)【国際公開番号】W WO2018091724
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-09-03
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519177426
【氏名又は名称】キュレアブ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ステナー-リーヴェン, フランク
(72)【発明者】
【氏名】マークリー, ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】リーヴェン, ハイケ
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105699653(CN,A)
【文献】特表2016-516045(JP,A)
【文献】特表2015-531750(JP,A)
【文献】国際公開第2016/037985(WO,A1)
【文献】特表2016-533721(JP,A)
【文献】特表2016-515132(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105734059(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0259423(US,A1)
【文献】Collin Bachert, et al,Traffic,2007年07月29日,8.10,1415-1423,https://doi.org/10.1111/j.1600-0854.2007.00621.x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GP73又はその抗原部分に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
a)SSRSVDLQTRIMELEGRVRR
(配列番号30
);
b)SSRSVELQTRIVELEGRVRR
(配列番号31
);及び/又は
c)SSRSVDLQTRIVELEGRVRR
(配列番号32
)
のアミノ酸配列内のエピトープに結合し、且つ細胞内に内部移行される、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
エピトープがアミノ酸配列RIMELEGRVRR(配列番号33)内にある、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
抗体又はその抗原結合断片が二重特異性抗
体である、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
モノクローナル抗体、キメラ抗体、組換え抗体、組換え抗体の抗原結合断片、ヒト化抗体、又はファージの表面に提示されるか若しくはキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の表面に提示される抗体である、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
IgG1、IgG2a又はIgG2b、IgG3又はIgG4抗体である、請求項4に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
配列番号4に記載のCDR1、配列番号5に記載のCDR2、及び配列番号6に記載のCDR3を含む可変重(VH)鎖と、配列番号7に記載のCDR1、配列番号8に記載のCDR2、及び配列番号9に記載のCDR3を含む可変軽(VL)鎖とを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
配列番号2若しくは配列番号35のアミノ酸配列、又は配列番号2若しくは配列番号35に対して90
%の配列同一性を有する配列を含む可変重(VH)鎖配列、及び
配列番号3若しくは配列番号36のアミノ酸配列、又は配列番号3若しくは配列番号36に対して90
%の配列同一性を有する配列を含む可変軽(VL)鎖配列を含む、請求項6に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
配列番号12に記載のCDR1、配列番号13に記載のCDR2、及び配列番号14に記載のCDR3を含む可変重(VH)鎖と、配列番号15に記載のCDR1、配列番号16に記載のCDR2、及び配列番号17に記載のCDR3を含む可変軽(VL)鎖配列とを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
配列番号10若しくは配列番号37のアミノ酸配列、又は配列番号10若しくは配列番号37に対して90
%の配列同一性を有する配列を含む可変重(VH)鎖配列、及び
配列番号11若しくは配列番号38のアミノ酸配列、又は配列番号11若しくは配列番号38に対して90
%の配列同一性を有する配列を含む可変軽(VL)鎖配列を含む、請求項8に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
抗原結合断片がFab断片、F(ab’)
2断片又はFv断片である、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
GP73又はその抗原部分に特異的に結合する抗体の可変重(VH)鎖配列及び可変軽(VL)鎖配列をコードするポリヌクレオチドであって、抗体が、
a)SSRSVDLQTRIMELEGRVRR
(配列番号30
);
b)SSRSVELQTRIVELEGRVRR
(配列番号31
);及び/又は
c)SSRSVDLQTRIVELEGRVRR
(配列番号32
)
のアミノ酸配列内のエピトープに結合し、且つ細胞内に内部移行される、ポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
【請求項13】
請求項12に記載の宿主細胞を培養することを含む、
GP73又はその抗原部分に特異的に結合する抗体を製造するための方法
であって、抗体が、
a)SSRSVDLQTRIMELEGRVRR(配列番号30);
b)SSRSVELQTRIVELEGRVRR(配列番号31);及び/又は
c)SSRSVDLQTRIVELEGRVRR(配列番号32)
のアミノ酸配列内のエピトープに結合し、且つ細胞内に内部移行されるものである、方法。
【請求項14】
GP73又はその抗原部分に特異的に結合する抗体を製造するための方法であって、
抗体が、
a)SSRSVDLQTRIMELEGRVRR(配列番号30);
b)SSRSVELQTRIVELEGRVRR(配列番号31);及び/又は
c)SSRSVDLQTRIVELEGRVRR(配列番号32)
のアミノ酸配列内のエピトープに結合し、且つ細胞内に内部移行されるものであり、
a)SSRSVDLQTRIMELEGRVRR (配列番号30);
b)SSRSVELQTRIVELEGRVRR (配列番号31);及び
c)SSRSVDLQTRIVELEGRVRR (配列番号32)
から選択されるポリペプチドを非ヒト対象に投与することを含
む、方法。
【請求項15】
請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体と、細胞傷害性剤又は細胞傷害性剤のプロドラッグとを含む、イムノコンジュゲート。
【請求項16】
式Ab(-L-D)p
(式中:
a)Abは、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体であり;
b)Lは、リンカーであり;
c)Dは、細胞傷害性剤であり;且つ
d)pは、1-8の範囲である)
を有する請求項15に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項17】
細胞傷害性剤が、メイタンシノイド、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン及びネモルビシン誘導体から選択される、請求項15又は16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項18】
Dが式A:
[式中、
波線はリンカーへの共有結合部位を示し;
点線は、二重結合の任意選択の存在を示し(二重結合は、例えばC1とC2、又はC2とC3の間に存在し得る);
R
2及びR
12は、-H、-OH、=O、=CH
2、-CN、-R、-OR、=CH-R
D、=C(R
D)
2、-O-SO
2-R、-CO
2R、-COR、及び-ハロゲンから各々独立に選択され;
ここでR
Dは、-H、-CO
2R、-C(O)R、CHO、CO
2H、-R、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH
2、-NHR、-NRR´、-NO
2、Me
3Sn-、及び-ハロゲンから独立に選択され;
R
6、R
9、R
16及びR
19は、-H、-R、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH
2、-NHR、-NRR’、-NO
2、Me
3Sn-、及び-ハロゲンから独立に選択され;
R
7及びR
17は、-H、-R、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH
2、-NHR、-NRR’、-NO
2、Me
3Sn-、及び-ハロゲンから独立に選択され;
Qは、-O-、-S-、及び-N(H)-から独立に選択され;
R
11は-Hか-Rのいずれかであるか、又はQが-O-である場合、R
11は-SO
3Mであってもよく、ここでMはアルカリ金属又はアルカリ土類金属カチオンであり;
R及びR’は、置換されていてもよいC
1-12アルキル、C
3-8ヘテロシクリル、C
3-20複素環及びC
5-20アリール基から各々独立に選択され、且つ、R及びR’は、同じ窒素原子に結合する場合は、それらが結合する窒素原子と共に、置換されてもよい4、5、6又は7員の複素環式環を形成することができ;
R″は、1個以上の炭素原子が、O、NH及びSから選択されるヘテロ原子、並びに/又は置換されていてもよい芳香族環によって置き換えられてもよいC
3-12アルキレン基であり;
ここで芳香族環は、5又は6個の炭素原子と、N又はNHから選択される1つ又は2つのヘテロ原子とを含み;
X及びX’は、O、S及びN(H)から独立に選択される]
のピロロベンゾジアゼピン、並びにその塩(例:薬学的に許容される塩)及び溶媒和物(例:薬学的に許容される溶媒和物)である、請求項17に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項19】
Dが構造:
(式中、nは、0又は1である)
を有する、請求項18に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項20】
Dがネモルビシン誘導体である、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項21】
Dが、
;及び
から選択される構造を有する、請求項20に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項22】
リンカーが、プロテアーゼによって切断可能であり、酸に不安定であり、且つ/又はヒドラゾンを含む、請求項16から21のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項23】
から選択される式を有する、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項24】
pが2-5の範囲である、請求項16から23のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項25】
請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と、機能性剤とを含むイムノコンジュゲートであって、機能性剤がエンドソームのエスケープドメイン(EED)ペプチドである、イムノコンジュゲート。
【請求項26】
式Ab(-EEDL-EEDペプチド)を有する請求項25に記載のイムノコンジュゲートであって、式中、Abが請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片であり、EEDLがEEDリンカーである、イムノコンジュゲート。
【請求項27】
請求項26に記載のイムノコンジュゲートであって、EEDペプチドが、配列番号42のアミノ酸配列を含むデングウイルスEEDペプチドであり、EEDリンカーが、配列番号43のアミノ酸配列を含む、イムノコンジュゲート。
【請求項28】
請求項15から27のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲートと薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項29】
更なる治療剤を含む、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項31】
更なる治療剤を含む、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
GP73陽性がんを有する対象を治療するための医薬であって、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項15から27のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート又は請求項28から31のいずれか一項に記載の薬学的組成物の有効量を含む、医薬。
【請求項33】
GP73陽性がんが肝がんである、請求項32に記載の医薬。
【請求項34】
追加的治療剤を更に含む、請求項32又は33に記載の医薬。
【請求項35】
前記医薬の投与が、静脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、腫瘍内、膀胱内、子宮内、関節内、鼻腔内、皮下、局所、浣腸として、又は胃洗浄としてである、請求項32から34のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項36】
GP73陽性細胞の増殖を阻害するための医薬であって、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項15から27のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲートを含み、前記医薬が、前記細胞の表面上のGP73への前記抗体又はその抗原結合断片又は前記イムノコンジュゲートの結合を許容する条件下で投与され、それにより前記細胞の増殖を阻害する、医薬。
【請求項37】
前記細胞が肝がん細胞である、請求項36に記載の医薬。
【請求項38】
生物学的試料中のヒトGP73を検出するためのキットであって、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含み、前記抗体又はその抗原結合断片が、天然に存在するヒトGP73への抗体又はその抗原結合断片の結合を許容する条件下で、生物学的試料と接触させられ、生物学的試料中に抗体又はその抗原結合断片と天然に存在するヒトGP73との複合体が形成されているかどうかが検出される、キット。
【請求項39】
検出することが、免疫組織化学、免疫蛍光イメージング、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、及び蛍光標識細胞分取(FACS)、ウェスタンブロット、免疫沈降法又は放射線画像撮影法を含む、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
疾患を有するとして対象を同定するためのキットであって、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含み、対象からの試料における、前記抗体又はその抗原結合断片のGP73ポリペプチド又はその抗原部分との特異的結合レベルが決定され、コントロール試料と比較した特異的結合レベルの増加を検出することが、疾患を有するとして対象を同定し、疾患ががんである、キット。
【請求項41】
がんが、肝がん、卵巣がん、子宮内膜がん腫、悪性黒色腫、前立腺がん、胃がん、結腸直腸がん、肺がん及び白血病から選択される、請求項40に記載のキット。
【請求項42】
配列番号1で示されるヒトGP73のアミノ酸配列におけるアミノ酸36-55内のエピトープに結合することができるキメラ抗原受容体CAR T細胞。
【請求項43】
更なる治療剤が、EGFRシグナル伝達を阻害するEGFR抗体又は小分子であり、薬学的組成物が、がんの治療における使用のためのものである、請求項29又は31に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
GP73の異常発現に関連する疾患の治療における使用のための医薬であって、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項15から27のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート、又は請求項28から31のいずれか一項に記載の薬学的組成物を含み、疾患ががんである、医薬。
【請求項45】
請求項44に記載の使用のための医薬であって、疾患ががんで
ある、医薬。
【請求項46】
請求項45に記載の使用のための医薬であって、がんが肝がん、卵巣がん、子宮内膜がん腫、黒色腫、前立腺がん、結腸直腸がん腫及び/又は乳がんである、医薬。
【請求項47】
血漿中の循環可溶性GP73(sGP73)のレベルを低下させる、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項15から27のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート、又は請求項28から31のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項48】
請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項15から27のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート、又は請求項28から31のいずれか一項に記載の薬学的組成物による治療に対する対象の応答をモニターするためのキットであって、対象の治療の前の1つ以上の時点で、及び対象の治療の後の1つ以上の時点で血漿中の循環sGP73のレベルが測定され、治療ががんの治療である、キット。
【請求項49】
対象の血漿における治療の前の時点と比較した治療後の時点での循環sGP73レベルの低下を検出することが、治療に応答性であるとして対象を同定する、請求項
48に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GP73又はその抗原部分に特異的に結合する抗原結合分子、好ましくは抗体又はその抗原結合断片に関し、ここで、抗原結合分子は、通常タンパク質分解切断の後に細胞内に内部移行されるGP73の細胞外部分内のエピトープに結合する。本発明は更に、抗原結合分子、特に抗GP73抗体又はその抗原結合断片を含むイムノコンジュゲートに関する。本発明の抗原結合分子及びイムノコンジュゲートは、治療用コンジュゲートとして単独で、又は診断用コンジュゲートとして他のネイキッド抗体若しくは治療剤若しくは他のイムノコンジュゲートと組み合わせて投与され得る。本発明はまた、抗GP73抗体をコードするヌクレオチド配列、並びに該ヌクレオチド配列を含むイムノコンジュゲート、ベクター及び宿主細胞、並びに抗GP73抗体を作製する方法に関する。本発明の抗原結合分子、抗体及び組成物は、GP73の発現が変化する、特にGP73が過剰発現する疾患、例えばがんの診断及び治療用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
ゴルジタンパク質73(GP73)(別名ゴルジ膜タンパク質1(GOLM1))又はゴルジ関連リンタンパク質(Golgi-associated-Phosphoprotein)2(GOLPH2)は、II型1回膜貫通タンパク質である。その本来の機能は不明である。GP73のゲノム配列は、11のエクソンと2つのスプライシングバリアントを予測している。転写バリアント1(NM_016548.3)は、長さが3100ntであり、エクソン2から11を含むが、転写バリアント2(NM_177937.2)は、長さが3092ntであり、エクソン1及び3から11を含む。スプライシングバリアントも転写バリアントも、同じオープンリーディングフレームをコードする。これらのバリアントの生物学的意義は現在明らかではない。Kimら,Golgi phosphoprotein 2 in physiology and in diseases.Cell&Bioscience 2012 2:31を参照されたい。定常状態条件下で、GP73は、シス-及びメディアルゴルジ装置の必須膜タンパク質である。しかしながら、GP73は、シスゴルジからエンドソーム及び細胞表面に循環することができる。Puri Sら,Cycling of early Golgi proteins via the cell surface and endosomes upon lumenal pH disruption Traffic 2002,3:641-653を参照されたい。GP73のエンドソーム輸送がプロタンパク質転換酵素フーリン媒介切断を可能にし、その細胞外空間への放出をもたらし、HCCの血清バイオマーカーとしてのその存在についての分子的説明を提供するというエビデンスがある。Bachert Cら,Endosomal trafficking and proprotein convertase cleavage of cis Golgi protein GP73 produces marker for hepatocellular carcinoma Traffic 2007,8:1415-1423;Marrero JAら,GP73,a resident Golgi glycoprotein,is a novel serum marker for hepatocellular carcinoma J Hepatol 2005,43:1007-1012;Mao Yら,Golgi protein 73(GOLPH2) is a valuable serum marker for hepatocellular carcinoma Gut 2010,59:1687-1693);Li Xら,Serum golgi phosphoprotein 2 level:a better marker than alpha-fetoprotein for diagnosing early hepatocellular carcinoma Hepatology 2009,50:1682又はZhuら,Biomarkers for hepatocellular carcinoma:progression in early diagnosis,prognosis,and personalized therapyBiomark Res 2013,1:10を参照されたい。GP73は、肝細胞、胆管細胞、食道、腎臓、前立腺がん及び他の様々ながん腫を含むいくつかの悪性腫瘍において高度に発現することが示されているが、隣接する非腫瘍組織においてはそうではない。GP73陽性HCC患者は、GP73陰性HCC患者よりも高い腫瘍グレードを有する。胆管がん腫(BDC)において、GP73発現は良好な全生存と相関するが、HCCにおいて、GP73過剰発現は、転移のリスクの増加、より高い再発の確率、及びより低い生存性と関連することが見出されている。Rienerら,Golgi phosphoprotein 2(GOLPH2)expression in liver tumors and its value as a serum marker in hepatocellular carcinomas.Hepatology 2009,49:1602-1609及びYeら,2016,Cancer Cell 30,444-458 September 12,2016を参照されたい。GP73を標的とするための抗体は、国際公開第2014/144355号、中華人民共和国特許第105699653号及び中華人民共和国特許第105734059号に記載されている。がん患者におけるGP73を阻害して細胞媒介性免疫を増強するための抗体の使用は、国際公開第2012/112798号に記載されている。GP73は、肺がんの診断のためのバイオマーカーとして(国際公開第2011/093675号)、又は全身性炎症状態、例えば敗血症の検査として(国際公開第2013/083781号)提案されている。近年、GP73(GOLM1)は、この腫瘍細胞の増殖及び転移の促進によってEGFR/RTKと相互作用することが記載されている。Yeら,2016,Cancer Cell 30,444-458 September 12,2016を参照されたい。
【0003】
したがって、がん及び感染症など、GP73の発現の変化を伴う状態及び疾患の診断及び治療のためのGP73を標的とする薬剤へのニーズが存在する。上記の技術的問題は、特許請求の範囲に規定されている実施態様によって解決される。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、以下に関する。
1. GP73又はその抗原部分に特異的に結合する抗原結合分子であって、
a) SSRSVDLQTRIMELEGRVRR 配列番号30
b) SSRSVELQTRIVELEGRVRR 配列番号31、及び/又は
c) SSRSVDLQTRIVELEGRVRR 配列番号32
のアミノ酸配列内のエピトープに結合する、抗原結合分子。
2. エピトープがアミノ酸配列RIMELEGRVRR(配列番号33)、好ましくはEGRVRR(配列番号34)内にある、実施態様1に記載の抗原結合分子。
3. 抗原結合分子が抗体、その抗原結合断片、二重特異性抗体、設計アンキリンリピートタンパク質(DARPIN)、アプタマー又は別の抗体模倣物である、実施態様1又は2に記載の抗原結合分子。
4. 抗体がモノクローナル抗体、キメラ抗体、組換え組換え抗体、組換え抗体の抗原結合断片、ヒト化抗体、又はファージの表面に提示されるか若しくはキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の表面に提示される抗体である、実施態様3に記載の抗原結合分子。
5. 抗体がIgG1、IgG2a又はIgG2b、IgG3又はIgG4抗体である、実施態様4に記載の抗原結合分子。
6. 抗体が、配列番号6に記載のCDR3を含む可変重(VH)鎖と、配列番号9に記載のCDR3を含む可変軽(VL)鎖とを含む、実施態様3、4又は5に記載の抗原結合分子。
7. 抗体が:
a) 配列番号4に記載のCDR1、配列番号5に記載のCDR2、及び配列番号6に記載のCDR3を含む可変重(VH)鎖と、配列番号7に記載のCDR1、配列番号8に記載のCDR2、及び配列番号9に記載のCDR3を含む可変軽(VL)鎖とを含むか、又は
b) (a)の抗体と同じエピトープに結合する抗体である、
実施態様3から6のいずれか1つに記載の抗原結合分子。
8. 抗体が:
a) 配列番号2若しくは配列番号35のアミノ酸配列、又は配列番号2若しくは配列番号35に対して90%、好ましくは95%の配列同一性を有する配列を含む可変重(VH)鎖配列、及び
配列番号3若しくは配列番号36のアミノ酸配列、又は配列番号3若しくは配列番号36に対して90%、好ましくは95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽(VL))鎖配列を含むか、又は
b) (a)の抗体と同じエピトープに結合する抗体である、
実施態様3から7のいずれか1つに記載の抗原結合分子。
9. 抗体が、配列番号14に記載のCDR3を含む可変重(VH)鎖と、配列番号17に記載のCDR3を含む可変軽(VL)鎖配列とを含む、実施態様3、4又は5の抗原結合分子。
10. 抗体が:
a) 配列番号12に記載のCDR1、配列番号13に記載のCDR2、及び配列番号14に記載のCDR3を含む可変重(VH)鎖と、配列番号15に記載のCDR1、配列番号16に記載のCDR2、及び配列番号17に記載のCDR3を含む可変軽(VL)鎖配列とを含むか、又は
b) (a)の抗体と同じエピトープに結合する抗体である、
実施態様3、4、5又は9の抗原結合分子。
11. 抗体が:
a) 配列番号10若しくは配列番号37のアミノ酸配列、又は配列番号10若しくは配列番号37に対して90%、好ましくは95%の配列同一性を有する配列を含む可変重(VH)鎖配列、及び
配列番号11若しくは配列番号38のアミノ酸配列、又は配列番号11若しくは配列番号38に対して90%、好ましくは95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽(VL))鎖配列を含むか、又は
b) (a)の抗体と同じエピトープに結合する抗体である、
実施態様3、4、5、9又は10に記載の抗原結合分子。
12. 抗原結合断片がFab断片、F(ab’)2断片又はFv断片である、実施態様3に記載の抗原結合分子。
13. 抗原結合分子が細胞内に
内部移行される、実施態様1から12のいずれか1つに記載の抗原結合分子。
14. GP73又はその抗原部分に特異的に結合する抗体の可変重(VH)鎖配列及び/又は可変軽(VL)鎖配列の少なくとも一方をコードするポリヌクレオチドであって、抗体が、
a) SSRSVDLQTRIMELEGRVRR 配列番号30
b) SSRSVELQTRIVELEGRVRR 配列番号31;及び/又は
c) SSRSVDLQTRIVELEGRVRR 配列番号32
のアミノ酸配列内のエピトープに結合する、ポリヌクレオチド。
15. 実施態様14に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
16. 実施態様15に記載の宿主細胞を培養することを含む、抗体を製造するための方法。
17. ポリペプチド又はその抗原部分に特異的に結合する抗体を製造するための方法であって、
a) SSRSVDLQTRIMELEGRVRR 配列番号30
b) SSRSVELQTRIVELEGRVRR 配列番号31;及び
c) SSRSVDLQTRIVELEGRVRR 配列番号32
から選択されるポリペプチドを対象に投与することを含む、方法。
18. 実施態様1から17のいずれか1つに記載の抗体と、細胞傷害性剤又は細胞傷害性剤のプロドラッグとを含むイムノコンジュゲート。
19. 式Ab(-L-D)p(式中:
a) Abは、実施態様1から18のいずれか1つに記載の抗体であり;
b) Lは、リンカーであり;
c) Dは、細胞傷害性剤であり;且つ
d) pは1-8の範囲である)
を有する実施態様18に記載のイムノコンジュゲート。
20. 細胞傷害性剤が、メイタンシノイド、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン及びネモルビシン誘導体から選択される、実施態様18又は19に記載のイムノコンジュゲート。
21. Dが、式A:
のピロロベンゾジアゼピン、並びにその塩(例:薬学的に許容される塩)及び溶媒和物(例:薬学的に許容される溶媒和物)であり、式中、
波線は、リンカーへの共有結合部位を示し;
点線は、二重結合の任意選択の存在を示し(二重結合は、例えばC1とC2、又はC2とC3の間に存在し得る);
R
2及びR
12は、-H、-OH、=O、=CH
2、-CN、-R、-OR、=CH-R
D、=C(R
D)
2、-O-SO
2-R、-CO
2R、-COR、及び-ハロゲンから各々独立に選択され;
ここでR
Dは、-H、-CO
2R、-C(O)R、CHO、CO
2H、-R、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH
2、-NHR、-NRR´、-NO
2、Me
3Sn-、及び-ハロゲンから独立に選択され;
R
6、R
9、R
16及びR
19は、-H、-R、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH
2、-NHR、-NRR’、-NO
2、Me
3Sn-、及び-ハロゲンから独立に選択され;
R
7及びR
17は、-H、-R、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH
2、-NHR、-NRR’、-NO
2、Me
3Sn-、及び-ハロゲンから独立に選択され;
Qは、-O-、-S-、及び-N(H)-から独立に選択され;
R
11は-Hか-Rのいずれかであるか、又はQが-O-である場合、R
11は-SO
3Mであってもよく、ここでMはアルカリ金属又はアルカリ土類金属カチオンであり;
R及びR’は、置換されていてもよいC
1-12アルキル、C
3-8ヘテロシクリル、C
3-20複素環及びC
5-20アリール基から各々独立に選択され、且つ、R及びR’は、同じ窒素原子に結合する場合は、それらが結合する窒素原子と共に、置換されてもよい4、5、6又は7員の複素環式環を形成することができ;
R″は、1個以上の炭素原子が、O、NH及びS
から選択されるヘテロ原子、並びに/又は置換されていてもよい芳香族
環によって置き換えられてもよいC
3-12アルキレン基であり;
ここで芳香族環は、5又は6個の炭素原子と、N又はNHから選択される1つ又は2つのヘテロ原子とを含み;
X及びX’は、O、S及びN(H)から独立に選択される、
実施態様19のイムノコンジュゲート。
22. Dが構造:
(式中、nは0又は1である)
を有する、実施態様21に記載のイムノコンジュゲート。
23. Dがネモルビシン誘導体である、実施態様19に記載のイムノコンジュゲート。
24. Dが、
から選択される構造を有する、実施態様23に記載のイムノコンジュゲート。
25. リンカーが、プロテアーゼによって切断可能であり、酸に不安定であり、且つ/又はヒドラゾンを含む、実施態様19から24のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
26.
から選択される式を有する、実施態様19に記載のイムノコンジュゲート。
27. pが2-5の範囲である、実施態様19から26のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
28. 実施態様1から17のいずれか1つに記載の抗体と、機能性剤とを含むイムノコンジュゲートであって、機能性剤が、好ましくはエンドソームのエスケープドメイン(EED)ペプチドであるイムノコンジュゲート。
29. 式Ab(-EEDL-EEDペプチド)を有する実施態様28に記載のイムノコンジュゲートであって、式中、Abが実施態様1から17のいずれか1つに記載の抗体であり、EEDLがEEDリンカーであるイムノコンジュゲート。
30. 実施態様28又は29に記載のイムノコンジュゲートであって、EEDペプチドが、配列番号42のアミノ酸配列を含むデングウイルスEEDペプチドであり、EEDリンカーが、配列番号43のアミノ酸配列を含む、イムノコンジュゲート。
31. 実施態様18から30のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
32. 更なる治療剤を含む、実施態様31に記載の薬学的組成物。
33. 実施態様1から13のいずれか1つに記載の抗原結合分子と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
34. 更なる治療剤を含む、実施態様33に記載の薬学的組成物。
35. GP73陽性がんを有する対象を治療する方法であって、実施態様1から13のいずれか1つに記載の抗原結合分子、実施態様18から30のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート又は実施態様31から34のいずれか1つに記載の薬学組成物の有効量を対象に投与することを含む、方法。
36. GP73陽性がんが肝がんである、実施態様35に記載の方法。
37. 追加的治療剤を個体に投与することを更に含む、実施態様35又は36に記載の方法。
38. 投与が、静脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、腫瘍内、膀胱内、子宮内、関節内、鼻腔内、皮下、局所、浣腸として、又は胃洗浄としてである、実施態様35から37のいずれか1つに記載の方法。
39. GP73陽性細胞の増殖を阻害する方法であって、該細胞表面のGP73への抗原結合分子又はイムノコンジュゲートの結合を許容する条件下で、実施態様1から13のいずれか1つに記載の抗原結合分子又は実施態様18から30のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲートに該細胞を曝露し、それにより該細胞の増殖を阻害することを含む、方法。
40. 細胞が肝がん細胞である、実施態様39に記載の方法。
41. 生物学的試料中のヒトGP73を検出する方法であって、天然に存在するヒトGP73への抗原結合分子の結合を許容する条件下で、実施態様1から13のいずれか1つに記載の抗原結合分子と生物学的試料とを接触させること、及び生物学的試料中に抗原結合分子と天然に存在するヒトGP73との複合体が形成されているかどうかを検出することを含む、方法。
42. 実施態様41に記載の方法であって、検出することが、免疫組織化学、免疫蛍光イメージング、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、及び蛍光標識細胞分取(FACS)、ウェスタンブロット、免疫沈降法、又は放射線画像撮影法(radiographic imaging)を含む、方法。
43. 疾患を有するとして対象を同定するための方法であって、対象からの試料における、実施態様1から13のいずれか1つに記載の抗原結合分子のGP73ポリペプチド又はその抗原部分との特異的結合レベルを決定することを含み、コントロール試料と比較した特異的結合レベルの変化を検出することが、疾患を有するとして対象を同定する、方法。
44. 疾患ががんである、実施態様43に記載の方法。
45. がんが、肝がん、卵巣がん、子宮内膜がん腫、悪性黒色腫、前立腺がん、胃がん、結腸直腸がん腫、肺がん、白血病、及び乳がんの群から選択される、実施態様43に記載の方法。
46. ヒトGP73のアミノ酸36-55内のエピトープに結合することができるRNAアプタマー。
47. ヒトGP73のアミノ酸36-55内のエピトープに結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞。
48. フーリン切断コンセンサス配列EGRVRRに結合し、GP73タンパク質のタンパク質分解切断を阻害する抗原結合分子。
49. がんの治療における使用のための、実施態様1から13のいずれか1つに記載の抗原結合分子と、EGFRシグナル伝達を阻害するEGFR抗体又は小分子とを含む組成物。
50. GP73とEGFRとを標的とし、感受性がん細胞におけるEGFRシグナル伝達を遮断する二重特異性抗体。
51. GP73に結合するが可溶性GP73(sGP73)には結合せず、したがって循環sGP73によって阻害又は中和されない抗体。
52. GP73の異常発現に関する疾患の治療における使用のための、実施態様1から13のいずれか1つに記載の抗原結合分子、実施態様18から30のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート、又は実施態様31から34のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
53. 疾患ががんであり、好ましくはがんは肝がん、卵巣がん、子宮内膜がん腫、黒色腫、前立腺がん、結腸直腸がん腫、肺がん、白血病、及び乳がんである、実施態様52に記載の使用のための抗原結合分子、イムノコンジュゲート又は薬学的組成物。
54. 血漿中の循環可溶性GP73(sGP73)のレベルを低下させる、実施態様1から13のいずれか1つに記載の抗原結合分子、実施態様18から30のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート、又は実施態様31から34のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
55. 実施態様1から13のいずれか1つに記載の抗原結合分子、実施態様18から30のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート、又は実施態様31から34のいずれか1つに記載の薬学的組成物による、治療に対する対象の応答をモニターするための方法であって、対象の治療の前の1つ以上の時点で、及び対象の治療の後の1つ以上の時点で血漿中の循環sGP73のレベルを測定することを含む、方法。
56. 対象の血漿における治療の前の時点と比較した治療後の時点での循環sGP73レベルの低下を検出することが、治療に応答性であるとして対象を同定する、実施態様55に記載の方法。
【0005】
したがって本発明は、GP73又はその抗原部分に特異的に結合する抗原結合分子に関し、ここで、抗原結合分子は、アミノ酸配列SSRSVDLQTRIMELEGRVRR(配列番号30);SSRSVELQTRIVELEGRVRR(配列番号31);及び/又はSSRSVDLQTRIVELEGRVRR(配列番号32)内のエピトープに結合する。したがって本発明は、抗原結合分子、特にGP73の細胞外部分内の特定のエピトープに結合する抗体を提供する。
【0006】
本発明はすなわち、限定されないが、例えばネモルビシン及びその誘導体(例えばPNU-159682)又はアウリスタチン(例えばMMAF)にコンジュゲートした、GP73又はその処理断片に特異的に結合する抗体及び抗体-薬物コンジュゲート(ADC)(抗体又はその抗原結合断片を含む)が、GP73発現がん細胞の死滅及び/又は増殖阻害、並びにGP73発現がんの治療に使用することができるという驚くべき発見に、少なくとも部分的に基づく。理論に縛られることなく、本発明の抗原結合分子は、切断されるのではなく細胞内に内部移行されるGP73の細胞外部分の領域に結合すると考えられる。GP73は、短い細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、及び長い細胞外部分に構造化されている。この細胞外部分は、アミノ酸R55の推定タンパク質分解切断ドメインで終結する、膜貫通ドメインに隣接する短い領域(rGP73という)と、GP73のC末端部分(sGP73という)とを含む。本発明の結合分子は、rGP73を標的とする。細胞膜に隣接し、且つ、この20アミノ酸含有領域内のプロテアーゼ相互作用のすぐ近くにもかかわらず、rGP73へのピーク結合活性を示す2つの抗体が同定された。
【0007】
したがって本発明は、GP73の細胞外部分の前記領域、すなわちrGP73に特異的に結合する抗原結合分子に関する。特定の実施態様において、本発明は抗原結合分子に関し、ここで、結合エピトープの少なくとも一部が、GP73のSSRSVDLQTRIMELEGRVRR(配列番号30);SSRSVELQTRIVELEGRVRR(配列番号31);及び/又はSSRSVDLQTRIVELEGRVRR(配列番号32)内のアミノ酸配列EGRVRR内にある。やはり理論に縛られることなく、アミノ酸配列EGRVRR(配列番号33)は推定フーリン認識モチーフであると考えられる。したがって、本明細書で提供される抗原結合分子、特に抗体の潜在的な作用様式は、
図12及び
図23に示すように、フーリン切断と競合している。本明細書に記載の抗体、例えばG2-2、G2-2opti、G2-1、及びG2-1optiの結合は、フーリンプロテアーゼによる膜結合GP73のプロセシングの低下をもたらす。予想される結果は、
図23に示すように、環境中及び血流中の、タンパク質のC末端部分を含む可溶性GP73の減少である。それぞれの抗体結合及びフーリン部位の遮断によるこのフーリンプロテアーゼプロセスの妨害は、
図13及び
図24に示される増殖阻害の原因である可能性が高い。本発明の抗原結合分子、例えば本明細書に記載の抗体G2-2、G2-2opti、G2-1、及びG2-1optiによる新規の寄与は、GP73タンパク質の主要部分のプロセシング及び分泌後に細胞表面に残る脱落タンパク質の細胞外部分での結合である。循環sGP73に結合し、且つこの結合複合体によって中和されるであろう従来知られている抗体とは対照的に、本発明の抗原結合分子、特に本明細書に開示の抗体は、sGP73に影響されずに起源細胞に到達し、そこでGP73の残りとフーリン切断部位の近位にあるGP73の全長タンパク質とに結合する。この効果を
図11に示す。sGP73含有条件培地は、G2-4というフーリン切断部位結合抗体の遠位の場合、GP73陽性HUH7細胞の細胞表面への抗体結合を減少させる。フーリン切断部位結合抗体G2-2の近位は、上清中の可溶性GP73の存在に影響されない。
【0008】
最近、sGP73に結合する抗体が国際公開第2014/144355号に記載された。国際公開第2014/144355号は特に、GP73のアミノ酸307-339、276-287、344-363、又は63-96内のフーリン切断部位の遠位に結合する抗体を記載している。中華人民共和国特許第105699653号も同様に、Gp73のアミノ酸56-67、すなわちsGP73内で結合する抗体を開示している。
【0009】
中華人民共和国特許第105734059号は、開示された抗体が結合するエピトープを規定することなく、GP73に結合する抗体を記載している。添付の実施例に示されるように、中華人民共和国特許第105734059号の抗体の結合特異性を決定するために、中華人民共和国特許第105734059号の抗体を生成し、エピトープを包含するペプチド又は無関係のコントロールペプチドの結合についてだけではなく、エピトープ領域GP73 AA 36-55の有無にかかわらずGP73の結合について試験した。
図21及び
図22に示されるように、中華人民共和国特許第105734059号のエピトープは、本発明のエピトープと重複しない。
【0010】
したがって本発明の抗体は、rGP73に結合し、内部移行されることよって起源細胞に到達することができるため、当該技術分野において知られているものよりも有利である。本発明の抗体のこの独特の性質は、腫瘍細胞の特異的標的化を可能にする。
【0011】
上記に従って、GP73に結合する本発明の抗原結合分子、特に抗体は、以下の特徴のうちの1つ以上を有する。
a) ヒトGP73のアミノ酸36-55(配列番号1)内のエピトープに結合する;
b) ヒトGP73のアミノ酸E50からR55で推定フーリン切断認識モチーフに及ぶエピトープに結合する;
c) 組換えヒトGP73に結合する;
d) がん細胞の表面の内因性GP73に結合する;
e) 肝細胞がん腫細胞の表面の内因性GP73に結合する;
f) HepG2、Hep3B、HuH7、JHH-4、Alexander(PLC/PRF/5)、HLE、HuCCT1から選択される細胞株の細胞表面の内因性GP73に結合する;
g) Hep-55.1C、Hepa1-6(CRL-1830)、BpRc1(CRL-2217)、B7IFi1(CRL-2711)、4T1(乳がん)から選択される細胞株の細胞表面の内因性マウスGP73に結合する;
h) PC3及びDU145(前立腺がん)、MDA-468(乳がん)、SK-BR-3(乳がん)、CaCo2、SW 480及びHCT 113(結腸直腸がん腫)、H1975(肺がん))から選択される細胞株の細胞表面の内因性ヒトGP73に結合する;
i) ヒト腫瘍組織細胞表面の内因性ヒトGP73に結合する;
j) 悪性黒色腫、子宮内膜がん腫、卵巣がん腫、胃がんから選択されるヒト腫瘍組織細胞表面の内因性ヒトGP73に結合する;
k) 白血球、特に、限定されないが、顆粒球、リンパ球、マクロファージ及び樹状細胞の表面の内因性GP73に結合する;
l) 細胞株THP-1由来の、骨髄性白血病細胞を含む骨髄細胞表面の内因性のGP73に結合する;及び/又は
m) GP73発現細胞(a-lに記載)の表面の切断されていないGP73に結合する。
【0012】
本発明の範囲内で、ヒトGP73は、配列番号1のアミノ酸配列(完全長GP73バリアント1)を有するか、又はヒトGP73は、配列番号1のアミノ酸11-401(完全長GP73バリアント2)を含む。配列番号1は配列番号30を含み、一方、配列番号31と配列番号32はそれぞれ、マウス型、イヌ型のGP73に由来する。
【0013】
いくつかの実施態様では、本発明の抗原結合分子は、抗体若しくはその抗原結合部分、二重特異性抗体若しくはその抗原結合部分、設計アンキリンリピートタンパク質(DARPIN)、アプタマー又は他の抗体模倣物、例えばアフィボディ分子、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、DARPin、フィノマー、クニッツドメインペプチド、モノボディである。
【0014】
本発明の抗体は特に、モノクローナル抗体、キメラ抗体、組換え抗体、組換え抗体の抗原結合断片、ヒト化抗体、又はファージの表面に提示されているか若しくはキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の表面に提示されている抗体であり得る。本発明の抗体は更に、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3又はIgG4抗体であってもよい。上記に従って、本発明の抗体は、ヒトGP73のアミノ酸36-55内のエピトープに結合する。いくつかの実施態様において、抗体は、マウスGP73及び/又はイヌGP73に結合する。したがって、一実施態様では、本発明は、配列番号6に記載のCDR3を含む可変重(VH)鎖と、配列番号9に記載のCDR3を含む可変軽(VL)鎖とを含む抗体に関する。本発明の抗体は、配列番号4に記載のCDR1、配列番号5に記載のCDR2、配列番号6に記載のCDR3を含むVH鎖と、配列番号7に記載のCDR1、配列番号8に記載のCDR2、配列番号9に記載のCDR3を含むVL鎖とを含み得る。いくつかの実施態様において、本発明の抗体は、配列番号2、好ましくは配列番号35のアミノ酸配列又は配列番号2若しくは配列番号35のアミノ酸配列と少なくとも90%、特に95%の配列同一性を有する配列を含むVH鎖配列と、(b)配列番号3、好ましくは配列番号36のアミノ酸配列又は配列番号3若しくは配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも90%、特に95%の配列同一性を有する配列を含むVL配列とを含む。更なる実施態様では、本発明は、配列番号14に記載のCDR3を含む可変重(VH)鎖及び配列番号17に記載のCDR3を含む可変軽(VL)鎖配列を含む抗体に関する。可変軽鎖のCDR3もまた、配列番号44に記載されている通りである。特定の実施態様において、抗体は、配列番号12に記載のCDR1、配列番号13に記載のCDR2及び配列番号14に記載のCDR3を含む可変重(VH)鎖、並びに配列番号15に記載のCDR1、配列番号16に記載のCDR2及び配列番号17に記載のCDR3を含む可変軽(VL)鎖配列を含み得る。やはり、VL鎖配列のCDR3もまた、配列番号44に記載の通りである。なお更なる一実施態様において、抗体は、配列番号10、好ましくは配列番号37のアミノ酸配列又は配列番号10若しくは配列番号37と90%、特に95%の配列同一性を有する配列を含む可変重(VH)鎖配列と、配列番号11、好ましくは配列番号38のアミノ酸配列又は配列番号11若しくは配列番号38と90%、特に95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽(VL)鎖配列とを含む。
【0015】
本明細書に記載の実施態様において、抗体は、モノクローナル抗体であり得る。本明細書に記載の実施態様において、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体であり得る。本明細書に記載の実施態様において、抗体は、GP73に結合する抗体断片であり得る。本明細書に記載の実施態様において、抗体は、IgG1、IgG2a又はIgG2b、lgG3、lgG4、lgM、lgA1、lgA2、lgAsec、lgD、lgEであり得る。本明細書で用いられる場合、「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例:lgM又はlgG1)を指す。これらの抗体は、完全長であってもよく、或いはlgG1、lgG2、lgG3、lgG4、lgM、lgA1、lgA2、lgAsec、lgD又はlgEの抗体定常及び/又は可変ドメインなどの抗原結合断片のみを含んでもよく、或いはFab断片、F(ab’)2断片及びFv断片から構成されてもよい。
【0016】
ある実施態様において、抗体は、配列番号28、好ましくは配列番号39(これは、哺乳動物細胞における発現を最適化するための、配列番号28の改変型である)のアミノ酸配列又は配列番号28若しくは配列番号39と90%、特に95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖定常領域配列を含む。
【0017】
本発明は更に、本発明の抗原結合分子、特に抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。特定の実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは、GP73又はその抗原部分に特異的に結合する抗体の可変重(VH)鎖配列及び/又は可変軽(VL)鎖配列の少なくとも一方をコードし、ここで抗体は、アミノ酸配列SSRSVDLQTRIMELEGRVRR(配列番号30);SSRSVELQTRIVELEGRVRR(配列番号31);及び/又はSSRSVDLQTRIVELEGRVRR(配列番号32)内のエピトープに結合する。
【0018】
本発明は更に、本発明.のポリヌクレオチドを含む宿主細胞に関する。本発明は更に、本発明の宿主細胞を培養することを含む、抗体の製造方法に関し、ここで宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチドを含む。特定の実施態様において、抗体の製造方法は、本発明の抗体を効率的に産生させるのに適した条件下で本発明の宿主細胞を培養することを含む。
【0019】
本発明は更に、ポリペプチド又はその抗原部分に特異的に結合する抗体を製造するための方法に関し、SSRSVDLQTRIMELEGRVRR(配列番号30);SSRSVELQTRIVELEGRVRR(配列番号31);及びSSRSVDLQTRIVELEGRVRR(配列番号32)から選択されるポリペプチドを対象に投与することを含む。
【0020】
本発明はまた、本発明の抗原結合分子、特に抗体と、EEDペプチドと、細胞傷害剤又は細胞傷害剤のプロドラッグとを含むイムノコンジュゲートに関する。
【0021】
いくつかの実施態様では、抗原結合分子とEEDペプチドとを含むイムノコンジュゲートは、式Ab(-EEDL-EEDペプチド)(式中、Abは本発明の抗体であり、EEDLはリンカーである)を有する。好ましい実施態様において、EEDペプチドは、配列番号42のアミノ酸配列を含むデングウイルスEEDである。ある実施態様では、抗原結合分子は、配列番号43のアミノ酸配列を含むEEDリンカーを介してEEDペプチドに結合している。
【0022】
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、式:
Ab(-L-D)p
(式中、
Abは、本発明の抗体であり;
Lは、リンカーであり;
Dは、細胞傷害性剤であり;
pは、1‐8の整数、好ましくは1‐6の整数、より好ましくは2‐5の整数である)
を有する。
【0023】
細胞傷害性剤は好ましくは、メイタンシノイド、カリケアマイシン、ドラスタチン誘導体(これはアウリスタチン(例えばMMAF(本明細書ではモノメチルアウリスタチンFともいう)でもよい)、及びネモルビシン誘導体から選択される。
【0024】
本発明のGP73抗体薬物コンジュゲート(本明細書では「GP73 ADC」又は「ADC」ともいう)は、GP73に対するヒトモノクローナル抗体、特に、バリン-シトルリンリンカーを介して毒素にコンジュゲートした本発明の抗体を含む。
【0025】
Dは、式A:
のピロロベンゾジアゼピン、並びにその塩(例:薬学的に許容される塩)及び溶媒和物(例:薬学的に許容される溶媒和物)であり得、上式中、
波線は、リンカーへの共有結合部位を示し;
点線は、二重結合の任意選択の存在を示し(二重結合は、例えばC1とC2、又はC2とC3の間に存在し得る);
R
2及びR
12は、-H、-OH、=O、=CH
2、-CN、-R、-OR、=CH-R
D、=C(R
D)
2、-O-SO
2-R、-CO
2R、-COR、-O-SO
2-H、-CO
2H、-COH及び-ハロゲンから各々独立に選択され;
ここでR
Dは、-H、-CO
2R、-C(O)R、CHO、CO
2H、-R、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH
2、-NHR、-NRR‘、-NO
2、Me
3Sn-、及び-ハロゲンから独立に選択され;
R
6、R
9、R
16及びR
19は、-H、-R、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH
2、-NHR、-NRR’、-NO
2、Me
3Sn-、及び-ハロゲンから独立に選択され;
R
7及びR
17は、-H、-R、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH
2、-NHR、-NRR’、-NO
2、Me
3Sn-、及び-ハロゲンから独立に選択され;
Qは、-O-、-S-、及び-N(H)-から独立に選択され;
R
11は-Hか-Rのいずれかであるか、又はQが-O-である場合、R
11は-SO
3Mであってもよく、ここでMはアルカリ金属又はアルカリ土類金属カチオンであり;
R及びR’は、置換されていてもよいC
1-12アルキル、C
3-8ヘテロシクリル、C
3-20複素環及びC
5-20アリール基から各々独立に選択され、且つ、R及びR’は、同じ窒素原子に結合する場合は、それらが結合する窒素原子と共に、置換されてもよい4、5、6又は7員の複素環式環を形成することができ;
R″は、1個以上の炭素原子が、O、NH及びS、並びに/又は置換されていてもよい芳香族環から選択されるヘテロ原子によって置き換えられてもよいC
3-12アルキレン基であり;
ここで芳香族環は、5又は6個の炭素原子と、N又はNHから選択される1つ又は2つのヘテロ原子とを含み;
X及びX’は、O、S及びN(H)から独立に選択される。
【0026】
より好ましくは、Dは構造:
(式中、nは0又は1である)
を有する。
【0027】
Dは、ネモルビシン誘導体でもあってもよい。この場合、Dは好ましくは、
から選択される構造を有する。
【0028】
本発明のイムノコンジュゲートはリンカーを含んでもよく、ここでリンカーはプロテアーゼによって切断可能である。或いは、リンカーは、酸に不安定であり得、且つ/又はヒドラゾンを含み得る。
【0029】
本明細書に記載の抗体を含むイムノコンジュゲートが提供され、ここで該イムノコンジュゲートは、
(式中、pは、1-8、好ましくは2-5の範囲であり、
Abは、上で定義した通りである)
から選択される式を有する。
【0030】
本発明は更に、本発明のイムノコンジュゲートと薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物に関する。いくつかの実施態様では、薬学的製剤は追加的治療剤を含む。
【0031】
更なる実施態様では、本発明の抗原結合分子と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物が提供される。特定の実施態様では、薬学的製剤は更なる治療剤を含む。
【0032】
別の態様では、本発明の抗原結合分子、好ましくは抗体、又は本発明のイムノコンジュゲート、又は本発明の薬学的組成物の有効量を対象に投与することを含む、GP73陽性がんを有する対象を治療するための方法が提供される。特定の実施態様では、かかる方法において使用されるイムノコンジュゲートは、モノメチル(Monomethy)アウリスタチンF(MMAF)又はネモルビシン又はネモルビシン代謝物(PNU)又はピロロベンゾジアゼピン(PDB)又は他の毒素とコンジュゲートした、本発明の抗体を含む。特定の実施態様では、GP73陽性がんは、肝がんである。この方法は、例えばセツキシマブ、トラスツズマブのような潜在的に相乗的な抗体、又はソラフェニブ、スニチニブ、レゴラフィニブのような小分子であるがこれらに限定されない追加的治療剤を個体に投与することを更に含み得る。更に、それぞれのGP73陽性腫瘍に有効な従来の化学療法とこれらの抗体との組み合わせは、有利であり得る。最後に、抗体は、介入の過程、例えば外科的切除又は経カテーテル動脈化学塞栓術(TACE)のような腫瘍塞栓術の過程で加えられる。
【0033】
更に、本発明の抗原結合分子、好ましくは抗体、又は本発明のイムノコンジュゲート、又は本発明の薬学的組成物が、GP73陽性がんの治療における使用のために提供される。
【0034】
いくつかの実施態様では、GP73陽性細胞の増殖を阻害する方法が提供される。かかる方法は、細胞表面のGP73への本発明の抗原結合分子又は本発明のイムノコンジュゲートの結合を許容する条件下で、有効量の抗原結合分子又はイムノコンジュゲートを個体に投与し、それにより細胞の増殖を阻害することを含み得る。いくつかの実施態様では、増殖の阻害は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、蛍光標識細胞分取(FACS)及びウェスタンブロットから選択される方法によって検出され得る。いくつかの実施態様では、GP73陽性細胞は、肝がん細胞である。
【0035】
いくつかの実施態様では、生物学的試料中のヒトGP73を検出する方法が提供される。該方法は、天然に存在するヒトGP73への抗原結合分子の結合を許容する条件下で、本発明の抗原結合分子と生物学的試料とを接触させること、及び生物学的試料中に抗原結合分子と天然に存在するヒトGP73との複合体が形成されているかどうかを検出することを含む。いくつかの実施態様では、検出は、免疫組織化学、イメージング、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、及び蛍光標識細胞分取から選択される方法を伴い得る。いくつかの実施態様では、生物学的試料は、肝がん細胞、子宮内膜がん腫細胞、卵巣がん腫細胞又は黒色腫細胞を含む試料であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】正常組織及び罹患組織及び腫瘍組織におけるGP73の発現を示す。GP73の発現は、Sigma及びSanta Cruzからのポリクローナルウサギ及びポリクローナルヤギ抗体によって決定された。
【
図2】異種間のエピトープ異なる種におけるGP73抗原の相同性が示されている。
【
図3A】GP73タンパク質の模式
図GP73の細胞内部分は、iGP73と表される。GP73の膜貫通部分は、tGP73と表される。rGP73は、タンパク質分解切断後に細胞膜に結合した細胞外空間に存在し、後に細胞内に
内部移行されるGP73の残りを表す。これは、本発明の抗原結合分子の、特に抗体の特異的エピトープは、GP73の切断された可溶性部分である。アミノ酸N109、N144、C159、C170、O218、O235及びN398の推定二次修飾部位がマークされている。
【
図3B】ゴルジ装置から細胞膜へエキソサイトーシスにより輸送されるGP73の模式図。例えば炎症などの特定の条件下では、GP73は、残基55でのタンパク質分解切断によるプロセシングを受けて、可溶性GP73(sGP73)及び、細胞外空間に存在する、切断後に細胞膜に結合したGP73の残り(rGP73という)になる。
【
図3C】抗体G2-2とG2-1の結合部位を示す、GP73の模式図。いずれかの抗体の結合により、残基55のタンパク質分解切断部位は遮断される。
【
図3D】治療標的としてのGP73の模式
図A:切断されていないGP73;B:切断されたGP73;C:タンパク質分解切断後、rGP73は、エンドサイトーシスによって細胞内に回収される。ネオ抗原rGP73は、特異的抗体、例えばG2-2によって結合される;D:rGP73及び抗体又はADCは、エンドサイトーシスによって細胞内に共輸送される。ADCの細胞内移動の後、毒素(星印)は、細胞損傷及び死をもたらす。
【
図4】A:ヒトタンパク質アトラスに公開された免疫蛍光画像を示す。Sigmaからのポリクローナルウサギ由来抗体(HPA010638)は、mG2-2よりも更にC末端側でGP73に結合する。これらの抗体の典型的なゴルジ染色が示されている(左向き矢印)。B:Alexander細胞上でC末端抗体(Santa Cruzからのsc-48010)(左向き矢印)及びmG2-2(下向き矢印)を用いた二重染色。ゴルジ装置で染色の重複(先端が触れている2本の矢印)があるが、mG2-2の排他的な外膜染色(下向きの矢印)がある。
【
図5】抗rGOLPH抗体G2-2及びコントロールによる組織の免疫組織化学的染色。実施例3に記載のように、A:正常肝;B:肝炎肝;C及びD:肝細胞がん腫(HCC)のパラフィン包埋組織をマウスG2-2(mG2-2)(A,B,C)又は抗GP73抗体MO6A(Sigma)を用いて染色した後、抗マウス抗体を用いて二次染色し、顕微鏡下で40倍の倍率で検査した。
【
図6】細胞株RAMOS(B細胞起源)、HEK293(ヒト胎児腎臓起源)及びGP73-mycを発現するHEK293(HEK 293 GP73-myc)を、G2-2、G2-1、G2-4、抗Myc抗体又は抗CD19抗体(後者はebiosciencesから)で染色した。実施例4の通り、細胞の表面染色の検出は実線で示され、二次抗体コントロールの検出のみが破線で示されている。
【
図7】ヒト肝細胞がん細胞腫株HuH7及びJHH4上の異なる抗体(mG2-2、G2-1、G2-4及びポリクローナルヤギ抗体SC-48010)を用いて試験した、GP73表面発現。それぞれの細胞株の陽性度は、実施例4に記載の通り、平均蛍光強度(MFI)として表される。
【
図8】競合ELISAアッセイ結合抗体としてホースラディシュ・ペルオキシダーゼ標識G2-1(G2-1-HRP)又はG2-2(G2-2-HRP)及び競合抗体としてG2-1又はG2-2を用いて、ペプチドELISAを実施した。競合的阻害は、G2-1とG2-2-HRP及びG2-2とG2-1-HRP(黒三角)について示されている。実施例5に記載の通り、GP73のペプチドAA 36-55への結合は、ポジティブコントロールとして機能し(黒丸)、ネガティブコントロールは、無関係のペプチドへの結合であった(黒菱形)。
【
図9】G2-1及びG2-2の、pH依存性ペプチド結合GP73のペプチドAA 36-55への結合のpH依存性について試験するために、ペプチドELISAを実施した。実施例5に記載されているように、抗体G2-1とG2-2の双方についての安定な結合は、7.4‐5.4のpH範囲で実証されている。
【
図10】フローサイトメトリーによるG2-2及びG2-1の
内部移行実験マウス肝がん細胞株及びヒト前立腺がん細胞株DU145へのG2-2の
内部移行が、フローサイトメトリーによって試験される。15分後、実施例6に記載されているように、G2-2及びG2-1の細胞表面検出は30%未満に低下し、これは37℃での急速な
内部移行を示す。
【
図11】G2-2及びコントロールの細胞環境に応じた
内部移行各抗体に結合したpH感受性色素pHrodo Greenを用いて、FACSにより抗体
内部移行を測定した。この色素は、pH5.4未満でのみ、すなわち抗体のエンドソームへの
内
部移行及び移動後にのみ、蛍光を呈する。可溶性GP73を含む条件培地でのプレインキュベーションは、sGP73のC末端部分に結合する抗体であるG2-4の
内部
移行を減少させる。rGP73に結合するG2-2の
内部移行は、実施例6に記載されているように、変化しない。
【
図12】GP73へのG2-2又はG2-1の結合に応じたフーリン切断の定量化0ユニットから3ユニットのフーリンの範囲を用いたGP73切断の測定値を示す。G2-2又はG2-1とのプレインキュベーションは、実施例7に記載のように、フーリン切断(3U及び1.5U)に有意な減少をもたらす。
【
図13A】異なる抗体で処理した後のHuH7細胞(ヒト肝細胞がん腫)の増殖。G2-2、G2-2+セツキシマブ;mG2-2、mG2-2+セツキシマブ;セツキシマブ又はコントロール抗体で、それぞれ0.125mg/mlから2mg/mlまで濃度を漸増させながらHuH7細胞を処理した。72時間後に増殖細胞を測定した。細胞増殖は抗体濃度に応じて減少した。この効果は、実施例8に記載の通り、Fc部分、すなわちG2-2中のヒトIgG1又はmG2-2中のマウスIgG2aとは無関係であった。
【
図13B】異なる抗体で処理した後のHuH7細胞(ヒト肝細胞がん)、4T1細胞(マウス乳がん)及びCaCo2細胞(ヒト結腸直腸がん)の増殖。この3種の細胞株をG2-1;G2-1+セツキシマブ;セツキシマブ;ベバシズマブ;又はベバシズマブ+セツキシマブ(合計2mg/ml)で処理した。72時間後に増殖細胞を測定した。実施例8に記載されているように、HuH7細胞においてG2-1とセツキシマブの相加効果がある。
【
図14】G2-2に結合した、マラミド(Malamide)交換リンカーに結合したMMAFから成る抗体薬物コンジュゲートをHuH7細胞に添加した。右の曲線(三角)は、IC50 277nMの薬物成分により決定されたMMAFの毒性を示す。中央の曲線(四角)は、抗体成分により決定された6.34nMのIC50を有するG2-2-Mal-VC-PAB-MMAFを示す。左の曲線(丸)は、実施例9及び10に記載の通り、薬物成分により決定された0.124nMのIC50を有するG2-2-Mal-VC-PAB-MMAFを示す。
【
図15】HuH7異種移植マウスモデルの腫瘍増殖モデル。皮下ヒト肝細胞がん(HuH7)を有するBulb/cネイキッドマウスを、0日目に2mg/kgのG2-2-PNU(ADC)と7日目に1mg/kgのG2-2-PNUで、0日目と7日目に2mg/gのG2-2(ネイキッドmAB)で、2回、すなわち1日目と7日目にG2-2(ネイキッドmAB)及びPNU(ad mix)又はPBS(ビヒクル)で処理した。ADC群とビヒクル群との間の腫瘍増殖の差は、実施例11に記載の通り、21日目で統計的に有意になる(一方向ANOVA p=0.5;SPSS 18.0)。
【
図16】HUH7異種移植マウスモデルのカプランマイヤー生存曲線。ADC群とビヒクル群との間の生存性の差は、統計的に有意である(ログランク/ブレスロー/タローン・ウェアp=0.02;SPSS 18.0)。
【
図17】免疫組織化学:実施例3に記載の通り、卵巣がんを抗GP73抗体MO6(Sigma)及びmG2-2で染色し、続いて抗マウス抗体で二次染色し、顕微鏡下で倍率100xで検査した。
【
図18】免疫組織化学: 実施例3に記載の通り、子宮内膜がんをMO6及びmG2-2で染色し、続いて抗マウス抗体で二次染色し、顕微鏡下で倍率100xで検査した。
【
図19】免疫組織化学:実施例3に記載の通り、黒色腫をMO6及びmG2-2で染色し、続いて抗マウス抗体で二次染色し、顕微鏡下で倍率40xで検査した。
【
図20】実施例13に記載の、結合アッセイに使用されている組換えタンパク質及びペプチドを示す模式図。C末端に10×Hisタグを有する完全長GP73(AA 1-401)は、AA 55でのタンパク質分解切断後にsGP73-Hisとして分泌される。したがってsGP73-Hisは、C末端に10×Hisタグを有するAA 56-401を包含する。対照的に、細胞内部分(iGP73 AA 1-12)及び膜貫通ドメイン(tGP73 AA 13-35)を欠く変異バリアント(R52A)であるGP73 AVRRは、分泌されるが切断されないため、AA 36-401及びC末端の10×Hisタグを包含する。
【
図21A-C】sGP73-HISとGP73-HisAVRRで比較した、(A):アイソタイプコントロール抗体、(B):中華人民共和国特許第105734059号に記載のモノクローナルマウス抗体である8A10(IgG2a)、及び(C):G2-2opti(IgG2a)の結合曲線。(C)のみが、実施例13に記載の、クレームされているエピトープAA 36-55を含むGP73を包含する。
【
図22A-C】実施例13に記載の、クレームされているエピトープであるペプチドrGP73(GP73 AA 36-55)と無関係のコントロールペプチドで比較した、(A):アイソタイプコントロール抗体、(B):中華人民共和国特許第105734059号に記載のモノクローナルマウス抗体である8A10(IgG2a)、及び(C):G2-2opti(IgG2a)の結合曲線。
【
図23】293HEK GP73-His完全長細胞をベバシズマブ又はG2-2opti(IgG1)で処理した後の細胞培養上清中のsGP73の測定値。フーリン切断は、上清中にsGP73が出現するための必須条件である。漸増濃度のG2-2opti(IgG1)は、フーリン切断を遮断し、GP73濃度を低下させる。
【
図24】異なるヒトがん由来の細胞株を1mg/mlの抗体G2-2opti(IgG1)又はG2-2opti-EED(IgG1)又はセツキシマブ又はベバシズマブで96時間処理した。未処理コントロールの増殖と比較した相対的増殖(%)が示されている。試験したがんの実体は、実施例15に記載の通り、結腸直腸がん(HCT116;K-Ras変異G12Vを含むSW40;CaCo2)、卵巣がん(SKOV3)、肝がん(HUH7、Hepa1-6)、前立腺がん(DU145、PC3)、及び肺がん(EGFR変異T790M、L858Rを含むH1975)である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
「抗原結合分子」は、本明細書で用いられる場合、抗原に特異的に又は選択的に結合することができる任意の分子である。結合分子は、抗体若しくはその断片を含み得るか又はそれらであり得る。抗GP73結合分子は、上で更に詳述したように、特異的認識部位、エピトープでGp73抗原に結合する分子、例えば抗GP73抗体又はその断片である。すなわち、本発明の抗原結合分子は、配列番号30、31及び/又は32のいずれか1つのアミノ酸配列内のエピトープに結合する。他の抗GP73結合分子はまた、多価分子、多重特異性分子(例えばダイアボディ)、融合分子、アプチマー、アビマー、又は他の天然に存在する若しくは組換えにより作製された分子を含み得る。本発明において有用な例示的抗原結合分子は、抗体様分子を含む。抗体様分子は、標的分子に結合することによって機能を発揮することができる分子であり(例えばCurrent Opinion in Biotechnology 2006, 17:653-658; Current Opinion in Biotechnology 2007, 18:1-10; Current Opinion in Structural Biology 1997, 7:463-469; Protein Science 2006, 15:14-27参照)、例えばDARPin(国際公開第2002/020565号)、Affibody(国際公開第1995/001937号)、Avimer(国際公開第2004/044011号;国際公開第2005/040229号)、Adnectin(国際公開第2002/032925号)、及びフィノマー(国際公開第2013/135588号)を含む。
【0038】
本明細書で用いられる「抗GP73抗体」及び「GP73に結合する抗体」又は単に「抗体」という用語は、GP73を標的とする際に診断薬及び/又は治療剤として有用であるように十分な親和性でGP73に結合可能な抗体を指す。一実施態様において、抗GP73抗体の、無関係な非GP73タンパク質への結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)で測定して、抗体のGP73への結合の約10%未満である。特定の実施態様では、GP73に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦5nm、≦4nM、≦3nM、≦2nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8M‐10-13M、例えば10-9M‐10-13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の実施態様では、抗GP73抗体は、異なる種由来のGP73間で保存されている、GP73のエピトープに結合する。上で更に詳述したように、本発明の抗体は、GP73細胞外部分内の特定のピトープに結合する。特に、本発明の抗体は、配列番号30、31及び/又は32のアミノ酸配列内のエピトープに結合する。用語「抗体」は通例、本明細書では最も広い意味で用いられ、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び抗体断片(所望の抗原結合活性を示す限り)を含むがこれらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。本発明内の抗体はまた、キメラ抗体、組換え抗体、組換え抗体の抗原結合断片、ヒト化抗体、又はファージの表面に提示されているか若しくはキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の表面に提示されている抗体であり得る。
【0039】
抗体の「抗原結合断片」は、インタクトな抗体の一部分を含み、且つ、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SHは、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
【0040】
タンパク質の特定の領域内の「エピトープに結合する抗体」は、タンパク質に結合するのにその領域内に1以上のアミノ酸の存在を必要とする抗体である。
【0041】
特定の実施態様では、タンパク質の限定された領域内の「エピトープに結合する抗体」は、変異解析によって同定され、ここで、タンパク質のアミノ酸は変異しており、得られた改変タンパク質(例えばエピトープを含む改変タンパク質)への抗体の結合は、未改変タンパク質への結合の少なくとも20%であると決定される。いくつかの実施態様では、タンパク質の限定された領域内の「エピトープに結合する抗体」は、変異解析によって同定され、ここで、タンパク質のアミノ酸は変異しており、得られた改変タンパク質(例えばエピトープを含む改変タンパク質)への抗体の結合は、未改変タンパク質への結合の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%であると決定される。ある実施態様では、抗体の結合は、FACS、WBによって、又はELISAなどの適切な結合アッセイによって決定される。
【0042】
本発明の文脈で提供される抗体又はその抗原結合断片は、上で定義した「抗GP73抗体又はその抗原結合断片」である限り、特に限定されない。したがって該抗体は、配列番号30、31及び/又は32のアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する/それらを特異的に認識する/それらと相互作用する任意の抗体であり得る。したがって本発明はまた、本明細書で提供される任意の特定の抗体と同じエピトープに結合する抗体も提供する。
【0043】
本発明の文脈で使用される「に結合する」という用語は、互いに少なくとも2つの「抗原相互作用部位」の結合(相互作用)を意味する。「抗原相互作用部位」という用語は、本発明によれば、GP73の特定の抗原又は抗原の特定の群との特異的相互作用の能力を示す、ポリペプチドのモチーフ、すなわち本発明の抗体の一部又は抗原結合断片を意味する。前記結合/相互作用はまた、「特異的認識」を意味するとも理解される。「特異的に認識する」という用語は、本発明によれば、抗体が、本明細書に記載のGP73の少なくとも2のアミノ酸と特異的に相互作用及び/又は結合、特に配列番号30、31及び/又は32.のアミノ酸配列内の少なくとも2のアミノ酸と相互作用/結合することができることを意味する。
【0044】
本発明に従って用いられる「特異的相互作用」という用語は、本発明の抗体又はその抗原結合断片が類似の構造のポリ)ペプチドと交差反応しないか又は本質的に交差反応しないことを意味する。したがって、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、配列番号30、31及び/又は32.のアミノ酸配列内の特定のアミノ酸によって形成されたGP73の構造と特異的に結合/相互作用する。かかる分子の特定の具体例は、本明細書で提供されている。
【0045】
調査対象である抗原結合分子、特に抗体又はその抗原結合断片のパネルの交差反応性は、例えば、一般的な条件下で前記抗体又はその抗原結合断片のパネルの、目的の(ポリ)ペプチドへの結合及び多かれ少なかれ(構造的及び/又は機能的に)密接に関連した複数の(ポリ)ペプチドへの結合を評価することによって試験することができる(例えばHarlow 及びLane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1988)及びUsing Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1999)参照)。本明細書に記載されているGP73の特定の構造、例えば本明細書に記載されているGP73の特定のエピトープ又は(ポリ)ペプチド/タンパク質に結合するが、同じGP73の他のいかなるエピトープ又は(ポリ)ペプチドにも結合しないか又は本質的に結合しないコンストラクト(すなわち抗体、その抗原結合断片など)だけが目的のエピトープ又は(ポリ)ペプチド/タンパク質に特異的であると考えられ、本明細書で提供されている方法に従って更なる研究のために選択される。これらの方法は特に、構造的及び/又は機能的に密接に関連した分子についての結合研究、遮断及び競合研究を含み得る。これらの結合研究はまた、FACS解析、表面プラズモン共鳴(SPR、例えばBIAcoreOを用いる)、超遠心分析法、等温滴定熱量測定、蛍光偏光測定法、蛍光分光法又は放射標識リガンド結合アッセイによるものを含む。
【0046】
したがって特異性は、当該技術分野で既知の方法及び本明細書に記載の方法によって実験で決定することができる。かかる方法は、ウェスタンブロット、ELISA-、RIA-、ECL-、IRMA試験及びペプチドスキャンを含むがこれらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、少量で存在し得る自然に生じる可能性のある変異変異体を除き、集団を構成する個々の抗体は同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。モノクローナル抗体は、それらがハイブリドーマ培養によって合成され、本質的に他の免疫グロブリンによって汚染されていないという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団の中のものであるという抗体の特徴を指しており、抗体を何か特定の方法で作製しなければならないことを意味するものではない。前述の通り、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler,Nature 256(1975),495に記載のハイブリドーマ法によって作製することができる。
【0048】
本明細書で使用される「ポリクローナル抗体」という用語は、1以上の他の非同一抗体の間で又はそれらの存在下で産生された抗体を指す。一般に、ポリクローナル抗体は、非同一抗体を産生したいくつかの他のBリンパ球の存在下で、Bリンパ球から産生される。通常、ポリクローナル抗体は、免疫動物から直接得られる。
【0049】
本明細書で使用される「完全ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、マウスにおいて、マウス細胞において又はマウス細胞に由来するハイブリドーマにおいて産生される場合、マウスの炭水化物鎖を含み得る。同様に「マウス抗体」又は「マウスの抗体」は、マウス/マウスの免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、マウスにおいて、ラット細胞において又はラット細胞に由来するハイブリドーマにおいて産生される場合、ラットの炭水化物鎖を含み得る。同様に、「ラット抗体」という用語は、ラット免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は例えば、広く使用されているスクリーニング技術であって、完全ヒト抗体の産生及びスクリーニングを可能にするファージディスプレイによっても産生され得る。ファージ抗体も本発明に関して使用することができる。ファージディスプレイ法は、例えば米国特許第5403484号、同第5969108号、及び同第5885793号に記載されている。完全ヒト抗体の開発を可能にする別の技術は、マウスハイブリドーマ技術の改変を伴う。マウスは、自身のマウス遺伝子と引き換えにヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むようにトランスジェニックされる(例えば米国特許第5877397号参照)。
【0050】
用語「キメラ抗体」とは、(ヒト又は非ヒト(例えばマウス、ウマ、ウサギ、イヌ、ウシ、ニワトリ)種の)他の抗体由来の抗体領域(例:定常領域)と融合又はキメラ化した、本発明の可変領域を含む抗体を指す。
【0051】
抗体という用語はまた、組換えヒト抗体、異種抗体、及びヘテロハイブリッド抗体を指す。「組換え(ヒト)抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックである動物(例:マウス)から単離された抗体など、組換え手段によって調製、発現、作製若しくは単離されるすべてのヒト配列抗体、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現される抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体、又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製、発現、作製若しくは単離される抗体を含む。かかる組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域(存在する場合)を有する。しかしながら、かかる抗体は、in vitro突然変異誘発(又は、ヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物を使用する場合にはin vivo体細胞突然変異誘発)に供することができ、したがって組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VH及びVL配列に由来し、関連しているが、in vivoではヒト抗体生殖細胞系レパートリー内に天然に存在しない可能性がある配列である。
【0052】
「異種抗体」は、このような抗体を産生するトランスジェニック非ヒト有機体に関連して説明される。この用語は、トランスジェニック非ヒト動物から成っておらず、且つ一般にトランスジェニック非ヒト動物以外の種に由来する有機体でみられるアミノ酸配列又はコード核酸配列に対応する、アミノ酸配列又はコード核酸配列を有する抗体を指す。
【0053】
「ヘテロハイブリッド抗体」という用語は、異なる有機体起源の軽及び重鎖を有する抗体を指す。例えば、マウス軽鎖と会合したヒト重鎖を有する抗体は、ヘテロハイブリッド抗体である。ヘテロハイブリッド抗体の例には、キメラ及びヒト化抗体が含まれる。
【0054】
抗体という用語は、ヒト化抗体にも関する。非ヒト(例えばマウス又はウサギ)抗体の「ヒト化」形態とは、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(例えば抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は他の抗原結合サブ配列)である。ヒト化抗体は多くの場合、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギなどの非ヒト種のCDR由来の残基(ドナー抗体)により置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。これらの改変は、抗体性能を更に改善し、最適化するために行われる。ヒト化抗体は一般に、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、ここでCDR領域のすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域のすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、少なくとも免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の一部を含み得る。更なる詳細は、JonesNature 321(1986),522-525;Reichmann Nature 332(1998),323-327、及びPresta Curr Op Struct Biol 2(1992),593-596を参照されたし。
【0055】
抗体のヒト化のための一般的な方法は、CDR移植を伴い、そこでは非ヒト「ドナー」抗体からの機能的抗原結合部位がヒト「アクセプター」抗体に移植される。CDR移植法は、当該技術分野で既知であり、例えば米国特許第5225539号、同第5693761号、及び同第6407213号に記載されている。別の関連する方法は、遺伝子再構成及び遺伝子変換を受けることができる1つ以上のヒト化免疫グロブリン遺伝子座を含有するように遺伝子操作されているトランスジェニック動物からのヒト化抗体の産生である(例えば米国特許第7129084号参照)。
【0056】
したがって本発明の文脈において、「抗体」という用語は、完全免疫グロブリン分子及びかかる免疫グロブリン分子の一部(すなわち「その抗原結合断片」)を指す。上述のように、この用語は更に、修飾及び/又は改変抗体分子も指す。この用語はまた、組換え的又は合成的に生成/合成された抗体も指す。この用語はまた、インタクトな抗体とその抗体断片、例えば分離された軽及び重鎖、Fab、Fv、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2も指す。抗体という用語はまた、完全ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、CDR移植抗体、及び一本鎖Fv(scFv)又は抗体融合タンパク質などの抗体コンストラクトを含むが、これらに限定されない。
【0057】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、本発明の文脈では、抗体のVH及びVLドメインを有し、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖に存在する。一般に、scFvポリペプチドはVHドメインとVLドメインの間に、scFVが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを更に含む。単鎖抗体の産生のための技術は、例えばPluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,N.Y.(1994),269-315に記載されている。
【0058】
本明細書で使用される「Fab断片」は、1つの軽鎖、並びに1つの重鎖のCH1及び可変領域から成る。Fab分子の重鎖は、他の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することはできない。
【0059】
「Fc」領域は、抗体のCH2及びCH3ドメインを含む2つの重鎖断片を含む。2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合によって、及びCH3ドメインの疎水性相互作用によって結合される。
【0060】
「Fab’断片」は、鎖間ジスルフィド結合が2つのFab’断片の2つの重鎖間に形成され、F(ab’)2分子が形成され得るように、1つの軽鎖と、VHドメイン及びCH1ドメインを含む1つの重鎖の一部と、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域とを含む。
【0061】
「F(ab’)2断片」は、鎖間ジスルフィド結合が2つの重鎖間に形成されるように、2つの軽鎖及び、CH1ドメインとCH2ドメインの間の定常領域の一部を含む2つの重鎖を含む。したがってF(ab’)2断片は、2つの重鎖間のジスルフィド結合によって結合される2つのFab’断片で構成されている。
【0062】
「Fv領域」は、重鎖と軽鎖双方の可変領域を含むが、定常領域を欠く。
【0063】
本発明に従って使用される抗体、抗体コンストラクト、抗体断片、抗体誘導体(すべてIg由来)又はそれらの対応する免疫グロブリン鎖は、当該技術分野で既知の従来の技術を使用して、例えばアミノ酸欠失、挿入、置換、付加、及び/若しくは組換え、並びに/又は当該技術分野で既知の他の任意の改変を単独で又は組み合わせて用いることによって、更に改変することができる。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の基礎となるDNA配列にこのような改変を導入するための方法は、当業者によく知られている。例えばSambrook(1989),loc.citを参照のこと。「Ig由来ドメイン」という用語は特に、少なくとも1つのCDRを含む(ポリ)ペプチドコンストラクトに関する。列挙されたIg由来ドメインの断片又は誘導体は、上記の抗体分子の一部であり、且つ/又は化学的/生化学的又は分子生物学的方法によって改変されている(ポリ)ペプチドを指す。対応する方法は、当該技術分野で知られており、特に実験室マニュアルに記載されている(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd edition (1989) and 3rd edition (2001); Gerhardt et al., Methods for General and Molecular Bacteriology ASM Press (1994); Lefkovits, Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques; Academic Press (1997); Golemis, Protein-Protein Interactions: A Molecular Cloning Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press (2002)参照)。
【0064】
本明細書で使用される「CDR」という用語は、「相補的決定領域」を指し、これは当該技術分野においてよく知られている。CDRは、前記分子の特異性を決定し、特定のリガンドと接触する免疫グロブリンの一部である。CDRは、分子の最も可変的な部分であり、前記分子の多様性に寄与する。各Vドメインには、3つのCDR領域、CDR1、CDR2及びCDR3がある。CDR-Hは、可変重鎖のCDR領域を表し、CDR-Lは、可変軽鎖のCDR領域を指す。VHは可変重鎖を意味し、VLは可変軽鎖を意味する。Ig由来領域のCDR領域は、Kabat 「Sequences of Proteins of Immunological Interest」,第5版.NIH Publication no.91-3242アメリカ合衆国保健福祉省(1991);Chothia J. Mol.Biol.196(1987),901-917又はChothia Nature 342(1989),877-883に記載されているように決定することができる。
【0065】
したがって本発明に関して、上記の抗体分子は、完全抗体(IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgA1、IgGA2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgD又はIgEなどの免疫グロブリン)、F(ab)-、Fab’-SH-、Fv-、Fab’-、F(ab’)2断片、キメラ抗体、CDR移植抗体、完全ヒト抗体、二価抗体コンストラクト、抗体融合タンパク質、合成抗体、二価単鎖抗体、三価単鎖抗体、及び多価単鎖抗体から成る群より選択される。
【0066】
「ヒト化手法」は、当該技術分野において良く知られており、特に抗体分子、例えばIg由来分子についての記述がある。「ヒト化」という用語は、非ヒト抗体由来の配列の一部を含む非ヒト(例えばマウス)抗体又はその断片(例えば抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、又は他の抗原結合部分配列)のヒト化形態を指す。ヒト化抗体には、ヒト免疫ブロブリンの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の結合性、特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギなどの非ヒト種のCDR由来の残基により置き換えられているヒト免疫グロブリンが含まれる。ヒト化抗体は一般に、少なくとも1つ、通例2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、ここでCDR領域のすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域のすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。最適には、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含むであろう。特にJones et al.,Nature 321(1986),522-525,Presta,Curr.Op.Struct.Biol.2(1992),593-596を参照のこと。非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野でよく知られている。ヒト化抗体は一般に、その抗体の元の結合活性を依然として保持している非ヒトである供給源からそれに導入された1つ以上のアミノ酸を有する。抗体/抗体分子のヒト化のための方法は、Jones et al.,Nature 321(1986),522-525;Reichmann et al.,Nature 332(1988),323-327;及びVerhoeyen et al.,Science 239(1988),1534-1536に更に詳述されている。ヒト化抗体の具体例、例えばEpCAMに対する抗体は、当該技術分野で既知であり、例えばLoBuglio,Proceedings of the American Society of Clinical Oncology Abstract(1997),1562、及びKhor,Proceedings of the American Society of Clinical Oncology Abstract(1997),847を参照のこと。
【0067】
したがって本発明に関して、ヒト化されており、薬学的組成物において首尾よく使用することができる抗体分子又はその抗原結合断片が提供される。
【0068】
本発明の抗体又は抗原結合断片の特異性は、上記の抗体又は抗原結合断片のアミノ酸配列の性質によってだけでなく、抗体が結合できるエピトープによっても示され得る。したがって本発明は、一実施態様において、本発明の抗体、好ましくは抗体G2-2optiと同じエピトープを認識する抗GP73抗体又はその抗原結合断片に関する。実施例の節で示すように、エピトープは、配列番号30、31及び/又は31、すなわち配列番号1によって示されるGP73の、SSRSVDLQTRIMELEGRVRR(配列番号30)、SSRSVELQTRIVELEGRVRR(配列番号31)及び/又はSSRSVDLQTRIVELEGRVRR(配列番号32)のアミノ酸配列内に位置するリニアエピトープである。好ましい実施態様では、本発明の抗体によって結合されるエピトープは、配列番号30のアミノ酸配列RIMELEGRVRR内、より好ましくはアミノ酸配列EGRVRR内にある。
【0069】
当業者には、エピトープはGP73タンパク質に含まれてもよいがその分解生成物に含まれてもよく、又は化学合成ペプチドであってもよいことが理解され得る。アミノ酸位置は、タンパク質の配列中の、対応するアミノ酸配列の位置を明らかにするために示されているにすぎない。本発明は、エピトープを含む全てのペプチドを包含する。ペプチドは、長さ100超のアミノ酸から成るポリペプチドの一部であっても、又は00未満、好ましくは50未満、より好ましくは25未満のアミノ酸、更に一層好ましくはl16未満のアミノ酸から成る小さいペプチドであってもよい。かかるペプチドのアミノ酸は、天然アミノ酸又は非天然アミノ酸(例:ベータアミノ酸、ガンマアミノ酸、D-アミノ酸)又はそれらの組み合わせであってもよい。更に、本発明は、エピトープのそれぞれのレトロインベルソペプチドを包含し得る。該ペプチドは、結合していなくても結合していてもよい。それは、例えば小分子(例:薬物又はフルオロフォア)に、高分子量ポリマー(例: ポリエチレングリコール (PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)等)に、又はタンパク質、脂肪酸、糖部分に結合していても、或いは膜に挿入されてもよい。
【0070】
当該の抗体と本発明の抗体が同じエピトープを認識するかどうかを試験するために、以下の競合試験を実施することができる。3moi(感染多重度)で感染させたベロ細胞を20時間後に、競合物として様々な濃度の当該の抗体と共に1時間インキュベートする。第2のインキュベーション工程において、本発明の抗体を100nMの一定濃度で塗布し、その結合を、本発明の抗体の定常ドメインに対する蛍光標識抗体を用いてフローサイトメトリーで検出する。当該の抗体の濃度に反比例する結合は、双方の抗体が同じエピトープを認識することを示している。とはいえ、使用され得る多くの他のアッセイが当該技術分野で知られている。
【0071】
本発明はまた、GP73の天然のポリペプチド及び組換えポリペプチドに対する特異的抗体の製造にも関する。この製造は、例えばマウスなどの動物の免疫化に基づく。しかし、抗体/抗血清の製造のための他の動物もまた、本発明の範囲に想定されている。例えば、モノクローナル及びポリクローナル抗体は、ウサギ、マウス、ヤギ、ロバ等によって産生され得る。対応して選択されたGP73のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、適切なベクターにサブクローニングすることができ、ここで組換えポリペプチドは、発現が可能な有機体内、例えば細菌中で発現される。したがって、発現された組換えタンパク質をマウスに腹腔内注射することができ、結果として生じる特異的抗体は例えば、心臓内血管穿刺によって提供されるマウス血清から得ることができる。本発明はまた、添付の実施例に例示されているように、DNAワクチン戦略を用いることによる天然ポリペプチド及び組換えポリペプチドに対する特異的抗体の製造も想定している。DNAワクチン戦略は、当該技術分野でよく知られており、遺伝子銃又はジェット注射及び筋肉内若しくは皮内注射によるリポソーム媒介送達を包含する。従って、GP73のポリペプチド又はタンパク質又はエピトープに対する抗体、特に本明細書で提供されている抗体のエピトープは、GP73の所望のポリペプチド又はタンパク質若しくはエピトープ、特に本発明の抗体のエピトープ(配列番号30、31及び/又は32のアミノ酸配列内にある)を発現するベクターを筋肉内に直接注射することによって動物を直接免疫することにより、得ることができる。得られた特異的抗体の量は、ELISAを用いて定量化することができ、これもまた本明細書中以下に記載される。抗体を製造するための更なる方法は、当該技術分野でよく知られている。例えばHarlow and Lane,「Antibodies,A Laboratory Manual」,CSH Press,Cold Spring Harbor,1988を参照のこと。
【0072】
したがって、指定のアッセイ条件下では、GP73の特定の抗体及び対応するエピトープは互いに結合し、試料中に存在する他の成分には有意な量では結合しない。このような条件下での標的分析物への特異的結合は、特定の標的分析物に対する特異性について選択される結合部分を必要とし得る。特定の抗原と特異的に反応性である抗体を選択するために、様々なイムノアッセイフォーマットを使用することができる。例えば、固相ELISA イムノアッセイは、分析物と特異的に免疫反応性であるモノクローナル抗体を選択するために日常的に使用されている。特異的免疫反応性を決定するために使用され得るイムノアッセイフォーマット及び条件の記述については、Shepherd and Dean(2000),Monoclonal Antibodies:A Practical Approach,Oxford University Press及び/又はHoward and Bethell(2000)Basic Methods in Antibody Production and Characterization,Crc.Pr.Inc.を参照のこと。特異的又は選択的反応は、典型的にはノイズに対するバックグラウンドシグナルの少なくとも2倍であり、より典型的にはバックグラウンドよりも10-100倍大きい。当業者は、新規ポリペプチドに対する特異的結合分子を提供及び生成する立場にある。特異的結合アッセイについては、それは望ましくない交差反応性を回避するために容易に使用することができ、例えばポリクローナル抗体は既知の方法により容易に精製及び選択することができる(Shepherd and Dean, loc. cit.参照)。
【0073】
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体には5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかは、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IGA1及びIgA2等のサブクラス(アイソタイプ)に更に分けられる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0074】
本明細書で用いられる「細胞傷害性剤」という用語は、細胞の機能を阻害若しくは防止し、且つ/又は細胞死若しくは破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害性剤は、限定されるものではないが、放射性同位体(例えばAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体):化学療法剤又は薬物(例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤);増殖阻害剤;酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素;抗生物質;小分子毒素等の毒素、又は細菌、真菌、植物若しくは動物由来の酵素活性毒素(それらの断片及び/又はバリアントを含む)、並びに以下に開示される種々の抗腫瘍剤又は抗がん剤を含む。
【0075】
「エフェクター機能」とは、抗体のアイソタイプにより変わる、抗体のFc領域に起因する生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例には:C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;及びB細胞活性化が含まれる。
【0076】
薬剤、例えば薬学的製剤の「有効量」とは、必要な投与量及び期間で、所望の治療的又は予防的結果を達成するのに有効な量を指す。
【0077】
本明細書で使用される「エンドソームエスケープドメイン」(EED)という用語は、細胞内のエンドソーム循環プロセス(endosomal cycling process)を破壊し、細胞質内のエンドソーム含有量を放出し、それによって細胞機能を阻害若しくは防止し、且つ/又は細胞死若しくは破壊を引き起こすペプチドを指す。EEDには、デングウイルス及び他のウイルス由来のEED及びそのバリアント、細菌由来のEED、並びに2つの芳香族インドール環又は1つのインドール環及び2つの芳香族フェニル基を含むペプチドが含まれるが、これらに限定されない(国際公開第2016/015621号;国際公開第2016/037985号;Kiesgen et al., Protein Eng Des Sel. 27(10):331-7 (2014)及びLohn et al., Sci Rep. 6:32301 (2016))。
【0078】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」は、互換的に使用され、外因性の核酸が導入された細胞とその子孫を指す。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、それには初代形質転換細胞及び、継代の数に関係なく、それに由来する子孫が含まれる。子孫は親細胞と核酸含量が完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。本明細書には、最初に形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異型子孫が含まれる。
【0079】
「イムノコンジュゲート」とは、細胞傷害性剤を含むがそれに限定されない、1以上の異種分子にコンジュゲートした抗体である。
【0080】
「個体」又は「対象」とは、哺乳動物である。哺乳動物は、限定されるものではないが、家畜動物(例えばウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えばヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)を含む。特定の実施態様では、個体又は対象はヒトである。
【0081】
「単離された」核酸とは、その自然環境の成分から分離されている核酸分子を指す。単離された核酸は、核酸分子を通常含む細胞に含まれる核酸分子を含むが、核酸分子は、染色体外に、又はその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0082】
「抗GP73抗体をコードする単離された核酸」は、抗体重鎖及び軽鎖(又はその断片)をコードする1以上の核酸分子を指し、これには、単一のベクター又は別々のベクター中のそのような核酸分子、及び宿主細胞内の1つ以上の位置に存在するそのような核酸分子が含まれる。
【0083】
本明細書で使用される「GP73」という用語は、任意の天然GP73を指す。この用語は、特に断らない限り、霊長類(例えばヒト及びカニクイザル)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物由来のGP73を指す。この用語は、天然に存在するGP73のバリアント、例えばスプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも含む。例示的なヒトGP73タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1に示される。非限定的な例示的マウスGP73タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号29に示される。
【0084】
用語「GP73陽性がん」は、表面にGP73を発現する細胞を含むがんを指す。いくつかの実施態様では、細胞表面のGP73の発現は例えば、免疫組織化学、FACSなどの方法でGP73に対する抗体を使用して決定される。或いは、GP73 mRNA発現は、細胞表面のGP73の発現と相関すると考えられ、in situハイブリダイゼーション及びRT-PCR(定量的RT-PCRを含む)から選択される方法により決定することができる。
【0085】
用語「がん」及び「がん性」は典型的には、無秩序な細胞成長/増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか又は説明している。がんの例としては、がん種、肝がん、肝細胞がん、胃がん、肺がん、食道がん、乳がん、前立腺がん、リンパ腫(例:ホジキン及び非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
用語「GP73陽性細胞」は、表面に完全長又は部分的なGP73を発現する細胞を指す。
【0087】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントを得るように配列をアラインさせ、必要に応じてギャップを導入した後の、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなさない、参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基の百分率として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当分野の技術の範囲内にある種々の方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの一般的に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含めた、配列をアラインさせるための適切なパラメーターを決定することができる。
【0088】
用語「薬学的製剤」又は「薬学的組成物」は、その中に含有されている活性成分の生物学的活性が有効になることを可能にするような形態であって、製剤が投与される対象にとって許容できないほど毒性である追加の成分を含まない調製物を指す。
【0089】
「薬学的に許容される担体」とは、有効成分以外の薬学的製剤中の成分であって、対象に対して非毒性である成分を指す。薬学的に許容される担体には、限定されないが、バッファー、添加剤、安定剤又は保存剤が含まれる。
【0090】
本明細書で用いられる場合、「治療(treatment)」(及び「治療する(treat)」又は「治療すること(treating)」など、その文法的変形)は、治療されている個体の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のため、又は臨床病理の過程において実施され得る。治療の望ましい効果には、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。いくつかの実施態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるか又は疾患の進行を遅くするために使用される。
【0091】
本明細書で使用される用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を伝播することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター及び導入された宿主細胞のゲノムに取り込まれたベクターを含む。ある種のベクターは、それが作動可能に連結された核酸の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」という。
【0092】
[一価の基]
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」とは、直鎖状、分岐状又は環状であり得る一価の飽和炭化水素基を指す。用語「アルキル」は好ましくは、直鎖状でも分岐状でもよく、環状ではない一価の飽和炭化水素基を指す。したがって「アルキル」基は、いかなる炭素-炭素二重結合又はいかなる炭素-炭素三重結合も含まない。「C1-5アルキル」は、1-5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。好ましい例示的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル(例:n-プロピル又はイソプロピル)又はブチル(例:n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル又はtert-ブチル)である。
【0093】
特記しない限り、「アルキル」は、直鎖状、分岐状又は環状でもよく、1-18個の炭素原子、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18個の炭素原子を含む一価の飽和炭化水素基、すなわち「C1-C18アルキル」である。
その例は、メチル(Me、-CH3)、エチル(Et、-CH2CH3)、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CH2CH2CH3)、2-プロピル(i-Pr、i-プロピル、-CH(CH3)2)、1-ブチル(n-Bu、n-ブチル、-CH2CH2CH2CH3)、2-メチル-1-プロピル(i-Bu、i-ブチル、-CH2CH(CH3)2)、2-ブチル(s-Bu、s-ブチル、-CH(CH3)CH2CH3)、2-メチル-2-プロピル(t-Bu、t-ブチル、-C(CH3)3)、1-ペンチル(n-ペンチル、-CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH2CH3)、3-ペンチル(-CH(CH2CH3)2)、2-メチル-2-ブチル(-C(CH3)2CH2CH3)、3-メチル-2-ブチル(-CH(CH3)CH(CH3)2)、3-メチル-1-ブチル(-CH2CH2CH(CH3)2)、2-メチル-1-ブチル(-CH2CH(CH3)CH2CH3)、1-ヘキシル(-CH2CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ヘキシル(CH(CH3)CH2CH2CH2CH3)、3-ヘキシル(-CH(CH2CH3)(CH2CH2CH3))、2-メチル-2-ペンチル(C(CH3)2CH2CH2CH3)、3-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH(CH3)CH2CH3)、4-メチル-2-ペンチル(CH(CH3)CH2CH(CH3)2)、3-メチル-3-ペンチル(-C(CH3)(CH2CH3)2)、2-メチル-3-ペンチル(CH(CH2CH3)CH(CH3)2)、2,3-ジメチル-2-ブチル(-C(CH3)2CH(CH3)2)、及び3,3-ジメチル-2-ブチル(CH(CH3)C(CH3)3である。
【0094】
「アルキル」の好ましい例は、直鎖状、分岐状又は環状でもよく、1-12個の炭素原子、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を含む一価の飽和炭化水素基である「C1-C12アルキル」である。
【0095】
「アルキル」の更に好ましい例は、直鎖状、分岐状又は環状でもよく、1-8個の炭素原子、すなわち1、2、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を含む一価の飽和炭化水素基を指す「C1-C8アルキル」である。
代表的な「C1-C8アルキル」基には、-メチル、-エチル、-n-プロピル、-n-ブチル、-n-ペンチル、-n-ヘキシル、-n-ヘプチル、及び-n-オクチルが含まれるがこれらに限定されない。
分岐状「C1-C8アルキル」には、-イソプロピル、-sec-ブチル、-イソブチル、-tert-ブチル、-イソペンチル、2-メチルブチルが含まれるがこれらに限定されない。
【0096】
「アルキル」の更に一層好ましい例は、直鎖状、分岐状又は環状でもよく、1-5個の炭素原子、すなわち1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含む一価の飽和炭化水素基を指す「C1-C6アルキル」である。
代表的な「C1-C6アルキル」基には、-メチル、-エチル、-n-プロピル、-n-ブチル、-n-ペンチル、及び-n-ヘキシル(-and n-hexyl)が含まれるがこれらに限定されない。
分岐状「C1-C6アルキル」には、-イソプロピル、-sec-ブチル、-イソブチル、-tert-ブチル、-イソペンチル、及び2-メチルブチルが含まれるがこれらに限定されない。
【0097】
本明細書で用いられる用語「C1-C4アルキル」は、直鎖状、分岐状又は環状でもよく、1-4個の炭素原子、すなわち1、2、3又は4個の炭素原子を含む一価の飽和炭化水素基を指す。
代表的な「C1-C4アルキル」基には、-メチル、-エチル、-n-プロピル、-n-ブチルが含まれるがこれらに限定されない。分岐状「C1-C4アルキル」には、-イソプロピル、-sec-ブチル、-イソブチル、-tert-ブチルが含まれるがこれらに限定されない。
【0098】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニル」は、直鎖状、分岐状又は環状でもよく、1つ以上の(例えば1つ又は2つの)炭素-炭素二重結合を含むが炭素-炭素三重結合は全く含まない一価の飽和炭化水素基を指す。
【0099】
特記しない限り、「アルケニル」は、2-18個の炭素原子、すなわち2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18個の炭素原子を含むC2-C18の一価の飽和炭化水素基であって、直鎖状、分岐状又は環状でもよく、且つ、1つ以上の(例えば1つ又は2つの)炭素-炭素二重結合を含むが炭素-炭素三重結合は全く含まない。
【0100】
「アルケニル」の好ましい例は、2-8個の炭素原子、すなわち2、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を有するアルケニル基を意味する「C2-C8アルケニル」である。好ましい例示的なアルケニル基は、エテニル、プロペニル(例:プロパ-1-エン-1-イル、プロパ-1-エン-2-イル又はプロパ-2-エン-1-イル)、ブテニル、ブタジエニル(例:ブタ-1,3-ジエン-1-イル又はブタ-1,3-ジエン-2-イル)、ペンテニル又はペンタジエニル(例えばイソプレニル)である。更なる例には、エチレン又はビニル(-CH=CH2)、アリル(-CH2CH=CH2)、-1-ブテニル、-2-ブテニル、-イソブチレニル、-1-ペンテニル、-2-ペンテニル、-3-メチル-1-ブテニル、-2-メチル-2-ブテニル、シクロペンテニル(-C5H7)、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、5-ヘキセニル(-CH2CH2CH2CH2CH=CH2)、及び-2,3-ジメチル-2-ブテニルが含まれるがこれらに限定されない。
【0101】
C2-C6アルケニルの例には、-ビニル、-アリル、-1-ブテニル、-2-ブテニル、-イソブチレニル、-1-ペンテニル、-2-ペンテニル、-3-メチル-1-ブテニル、-2-メチル-2-ブテニル、-2,3-ジメチル-2-ブテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、及び3-ヘキセニルが含まれるがこれらに限定されない。
【0102】
「アルケニル」の更に好ましい例は、2-4個の炭素原子を有するアルケニル基を意味する、「C2-C4アルケニル」である。故に、例としては、-ビニル、-アリル、-1-ブテニル、-2-ブテニル、及び-イソブチレニルである。
【0103】
本明細書で使用される場合、用語「アルキニル」は、直鎖状、分岐状又は環状でもよく、1つ以上の(例えば1つ又は2つの)炭素-炭素三重結合と、場合により1つ以上の炭素-炭素二重結合を含む、一価の飽和炭化水素基を指す。
他に定義されない限り、用語「アルキニル」は、2-8個の炭素原子を有するアルキニル基を意味する、「C2-8アルキニル」を指す。好ましい例示的なアルキニル基は、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、シクロペンテニル、3-メチル-1-ブチニル、5-ヘキセニル、ビニル、エチレンである。
好ましいアルキニル基は、2-6個の炭素原子を有するアルキニル基を意味する「C2-6アルキニル」及び2-4個の炭素原子を有するアルキニル基を意味する「C2-4アルキニル」である。
【0104】
用語「アルコキシ」は、「-O-アルキル」によって表される基を指し、ここで「アルキル」は、アルキルの好ましい例を含めて、上で定義した通りである。
例示的アルコキシ基には、限定されないが、メトキシ(-OCH3)及びエトキシ(-OCH2CH3)が含まれる。
【0105】
「アルコキシ」の好ましい例は、1-5個の炭素原子を有するアルコキシ基であり、「-O-C1-C5アルキル」と記すことができる「C1-C5アルコキシ」である。
【0106】
本明細書で使用される場合、用語「カルボシクリル(carbocyclyl)」は、単環式環、並びに架橋環、スピロ環及び/又は縮合環系(これは、例えば2つ又は3つの環から構成され得る)を含む環基を指し、ここで1つ以上の炭素環原子が酸化されていてもよく(すなわちオキソ基を形成する)、更にここで前記環基は、飽和、部分不飽和(すなわち不飽和だが芳香族ではない)又は芳香族であり得る。「カルボシクリル」基の好ましい例は、1個の水素原子が引き抜かれている下記の「カルボシクリル」の定義に対応する。
用語「炭素環(carbocycle)」は好ましくは、3-7個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和単環又は7-12個の炭素原子を有する二環を指す。単環式炭素環は好ましくは、3-6個の環原子、より好ましくは5又は6個の環原子を有し、以下に定義されているようなフェニルを含む。二環式炭素環は典型的には、例えばビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]若しくは[6,6]系として配置されている7-12個の環原子を有するか、又はビシクロ[5,6]若しくは[6,6]系として配置されている9若しくは10個の環原子を有する。単環式炭素環の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1-シクロペント-1-エニル、1-シクロペント-2-エニル、1-シクロペント-3-エニル、シクロヘキシル、1-シクロヘキサ-1-エニル、1-シクロヘキサ-2-エニル、1-シクロヘキサ-3-エニル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが含まれる。
【0107】
「C3-C8炭素環」は、3、4、5、6、7又は8員の飽和又は不飽和非芳香族環状炭素である。代表的なC3-C8炭素環には、限定されないが、-シクロプロピル、-シクロブチル、-シクロペンチル、-シクロペンタジエニル、-シクロヘキシル、-シクロヘキセニル、-1,3-シクロヘキサジエニル、-1,4-シクロヘキサジエニル、-シクロヘプチル、-1,3-シクロヘプタジエニル、-1,3,5-シクロヘプタトリエニル、-シクロオクチル、及び-シクロオクタジエニルが含まれる。
【0108】
「C3-C8カルボシクロ」は、炭素環基の水素原子のうちの1つが結合で置換されている、上で定義したC3-C8炭素環基を指す。
【0109】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」は、単環式芳香環、並びに少なくとも1つの芳香環を含有する架橋環及び/又は縮合環系(例えば2又は3個の縮合環から成る環系)を含む芳香族炭化水素環基を指し、ここで、これらの縮合環の少なくとも1つは芳香族であるか、又は2つもしくは3つの環から成る架橋環系であり、これらの架橋環の少なくとも1つは芳香族である。「アリール」は、例えばフェニル、ナフチル、ジアリニル(dialinyl)(すなわち1,2-ジヒドロナフチル、テトラリニル(すなわち1,2,3,4-テトラヒドロナフチル)、アントラセニル又はフェナントレニルを指す。
他に定義されない限り、用語「アリール」は、炭素環式芳香族環に5-20個の炭素原子を有するアリール基である「C5-C20アリール」を指す。
アリール基のより好ましい例は、炭素環式芳香族環に5-14個の炭素原子を有するアリール基である、「C5-C14アリール」である。
【0110】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロシクリル」は、環、並びに架橋環、スピロ環及び/又は縮合環系(例えば2つ又は3つの環から構成され得る)を含む環基を指し、ここで前記環基は、O、S、P及びNから独立に選択される1つ以上(例えば1、2、3又は4個)の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子は炭素原子であり、1つ以上のP環原子(存在する場合)及び/若しくはS環原子(存在する場合)、並びに/又は1つ以上のN環原子(存在する場合)は酸化されていてもよく、ここで1つ以上の炭素環原子も酸化されていてもよく(すなわちオキソ基を形成する)、更にここで前記環基は、飽和、部分不飽和(すなわち不飽和だが芳香族ではない)又は芳香族であり得る。他に定義されない限り、「ヘテロシクリル」は好ましくは、ヘテロアリールを指す。
【0111】
「ヘテロシクリル」の好ましい例は、O、S及びNから成る群からのヘテロ原子により環炭素原子のうちの1-4個が独立に置換されている芳香族又は非芳香族C3-C8炭素環である、「C3-C8ヘテロシクリル」を指す。C3-C8複素環の代表的な例には、限定されないが、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェン、インドリル、ベンゾピラゾリル、クマリニル、イソキノリニル、ピロリル、チオフェニル、フラニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、キノリニル、ピリミジニル、ピリジニル、ピリドニル(pyridonyl)、ピラジニル、ピリダジニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル及びテトラゾリルが含まれる。
例示的な複素環は、例えばPaquette,Leo A.,「Principles of Modem Heterocyclic Chemistry」(W.A. Benjamin, New York, 1968)、特に1、3、4、6、7及び9章;「The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A series of Monographs」(John Wiley & Sons, New York,1950年から現在)、特に13、14、16、19及び28巻;並びにJ.Am.Chem.Soc.(1960)82:5566に記載がある。
【0112】
複素環の例には、限定ではなく例として、ピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル(thianaphthalenyl)、インドリル、インドレニル(indolenyl)、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ピペリジニル、4-ピペリドニル(4-piperidonyl)、ピロリジニル、2-ピロリドニル(2-pyrrolidonyl)、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、ビステトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ビス-テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル(phenoxathinyl)、2H-ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H-インドリル、1H-インダゾリル、プリニル、4H-キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4aH-カルバゾリル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、オキシインドリル、ベンゾオキサゾリニル、及びイサチノイル(isatinoyl)が含まれる。
【0113】
限定ではなく例として、炭素結合複素環は、ピリジンの2、3、4、5又は6位、ピリダジンの3、4、5又は6位、ピリミジンの2、4、5又は6位、ピラジンの2、3、5又は6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール又はテトラヒドロピロールの2、3、4又は5位、オキサゾール、イミダゾール又はチアゾールの2、4又は5位、イソオキサゾール、ピラゾール又はイソチアゾールの3、4又は5位、アジリジンの2又は3位、アゼチジンの位置2、3又は4位、キノリンの2、3、4、5、6、7又は8位、或いはイソキノリンの1、3、4、5、6、7又は8位で結合される。更に典型的には、炭素結合複素環には、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、5-ピリジル、6-ピリジル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル、6-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピラジニル、5-ピラジニル、6-ピラジニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル又は5-チアゾリルが含まれる。
【0114】
限定ではなく例として、窒素結合複素環は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H-インダゾールの1位、イソインドール又はイソインドリンの2位、モルホリンの4位、及びカルバゾール又はβ-カルボリンの9位で結合される。更に典型的には、窒素結合複素環には、1-アジリジル、1-アゼテジル(1-azetedyl)、1-ピロリル、1-イミダゾリル、1-ピラゾリル、及び1-ピペリジニルが含まれる。
【0115】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロアリール」とは、単環式芳香族環、並びに少なくとも1つの芳香族環を含有する架橋環及び/又は縮合環系(例えば、縮合環の少なくとも1つは芳香族である、2つ又は3つの縮合環から成る環系;又は架橋環の少なくとも1つは芳香族である、2つ又は3つの環から成る架橋環系)を含む芳香環基を指し、ここで前記芳香環基は、O、S、P及びN,から独立に選択される1つ以上(例えば1、2、3又は4個)の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子は炭素原子であり、ここで1つ以上のS環原子(存在する場合)及び/又は1つ以上のP環原子(存在する場合)及び/又は1つ以上のN環原子(存在する場合)は酸化されていてもよく、更にここで1つ以上の炭素環原子も酸化されていてもよい(すなわちオキソ基を形成する)。「ヘテロアリール」は例えば、チエニル(すなわちチオフェニル)、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3-b]チエニル、チアントレニル(thianthrenyl)、フリル(すなわちフラニル)、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチイニル、ピロリル(例:2H-ピロリル)、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル(すなわちピリジニル;例:2-ピリジル、3-ピリジル又は4-ピリジル)、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル(例:3H-インドリル)、インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、ベータカルボニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル(perimidinyl)、フェナントロリニル(例:[1,10]フェナントロリニル、[1,7]フェナントロリニル又は[4,7]フェナントロリニル)、フェナジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、フラザニル(furazanyl)、フェノキサジニル(phenoxazinyl)、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジニル(例:ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)、1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、1H-テトラゾリル、2H-テトラゾリル、クマリニル又はクロモニル(chromonyl)を指す。
【0116】
他に定義されない限り「ヘテロアリール」は、好ましくは、O、S、P及びNから独立に選択される1つ以上(例えば1、2、3又は4個)の環ヘテロ原子を含む5-14員(より好ましくは5-10員)単環式環又は縮合環系を指し、ここで1つ以上のS環原子及び/又は1つ以上のP環原子(存在する場合)及び/又は1つ以上のN環原子(存在する場合)は酸化されていてもよく、ここで1つ以上の炭素環原子も酸化されていてもよく;「ヘテロアリール」は、更に一層好ましくは、O、S、P及びNから独立に選択される1つ以上(例えば1、2、又は3個)の環ヘテロ原子を含む5又は6員単環式環を指し、ここで1つ以上のS環原子及び/又は1つ以上のP環原子(存在する場合)及び/又1つ以上のN環原子(存在する場合)は酸化されていてもよく、ここで1つ以上の炭素環原子も酸化されていてもよい。
【0117】
好ましいヘテロアリール基は、3-20個の炭素原子と、N、O、P及びSから選択される1-3個のヘテロ原子とを含む。他の好ましいヘテロアリール基は、3-7個の環員(ring member)(2-6個の炭素原子と、N、O、P及びSから選択される1-3個のヘテロ原子)を有する単環、又は7-10個の環員(4-9個の炭素原子と、N、O、P及びSから選択される1-3個のヘテロ原子)を有する二環、例えば:ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]又は[6,6]系である。
【0118】
用語「アリールアルキル」は、「-(アルキレン)-(アリール)」、「-(アルケニレン)-(アリール)」及び「-(アルキニレン)-(アリール)」(「アルキレン」、「アルケニレン」及び「アルキニレン」は以下に定義される通りであり、「アリール」は上で定義されている)で表される基を指す。アルキレンは、好ましくはC1-C6アルキレンであり、且つ、好ましくは非環式である。アリール基は、好ましくはC5-C14アリール基である。言い換えれば、用語「アリールアルキル」は、炭素原子、典型的には末端又はsp3炭素原子に結合した水素原子の1つがアリールラジカルで置換されている非環式アルキルラジカルを指す。典型的なアリールアルキル基には、限定されないが、ベンジル、2-フェニルエタン-1-イル、2-フェニルエテン-1-イル、ナフチルメチル、2-ナフチルエタン-1-イル、2-ナフチルエテン-1-イル、ナフトベンジル、2-ナフトフェニルエタン-1-イル等が含まれる。アリールアルキル基は6-20個の炭素原子を含み、例えば、アリールアルキル基の、アルキル、アルケニル又はアルキニル基を含むアルキル部分は1-6個の炭素原子であり、アリール部分は5-14個の炭素原子である。
【0119】
用語「ヘテロアリールアルキル」は、「-(アルキレン)-(ヘテロアリール)」、「-(アルケニレン)-(ヘテロアリール)」及び「-(アルキニレン)-(ヘテロアリール)」(「アルキレン」、「アルケニレン」及び「アルキニレン」は以下に定義される通りであり、「アリール」は上で定義されている)で表される基を指す。言い換えれば、「ヘテロアリールアルキル」は、炭素原子、典型的には末端又はsp3炭素原子に結合した水素原子の1つがヘテロアリールラジカルで置換されている非環式アルキルラジカルを指す。典型的なヘテロアリールアルキル基には、限定されないが、2-ベンズイミダゾリルメチル、2-フリルエチルなどが含まれる。ヘテロアリールアルキル基は6-20個の炭素原子を含み、例えば、ヘテロアリールアルキル基の、アルカニル、アルケニル又はアルキニル基を含むアルキル部分は1-6個の炭素原子であり、ヘテロアリール部分は5-14個の炭素原子、並びにN、O、P及びSから選択される1-3個のヘテロ原子である。ヘテロアリールアルキル基のヘテロアリール部分は、3-7個の環員を有する単環(2-6個の炭素原子)又は7-10個の環員を有する二環(4-9個の炭素原子と、N、O、P,及びSから選択される1-3個のヘテロ原子)、例えば:ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]又は[6,6]系であり得る。
【0120】
[二価の基]
本明細書で使用される場合、用語「アルキレン」とは、「アルキル」という用語に対応する二価の基を指し、ここで水素の1つが除去されており、典型的には結合によって置き換えられている。特に明記しない限り、「アルキレン」という用語は好ましくは、親アルカンの同じか又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去することにより得られる2つの一価のラジカル中心を有する、1-18個の炭素原子から成る飽和分岐若しくは直鎖又は環状炭化水素ラジカルを指す。典型的なアルキレンラジカルには、限定されないが、メチレン(-CH2-)1,2-エチレン(-CH2CH2-)、1,3-プロピレン(-CH2CH2CH2-)、及び1,4-ブチレン(-CH2CH2CH2CH2-)等が含まれる。
「アルキレン」の好ましい例は、式-(CH2)1-10-の直鎖状飽和炭化水素基である、「C1-C10アルキレン」である。C1-C10アルキレンの例には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン(ocytylene)、ノニレン及びデカレンが含まれる。
【0121】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニレン」とは、「アルケニル」という用語に対応する二価の基を指し、ここで水素の1つが除去されており、典型的には結合によって置き換えられている。特に明記しない限り、「アルキレン」という用語は、親アルケンの同じか又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去することにより得られる2つの一価のラジカル中心を有する、2-18個の炭素原子から成る不飽和分岐若しくは直鎖又は環状炭化水素ラジカルを指す。好ましいアルケニレンは、2-12個の炭素原子、2-8個の炭素原子又は2-4個の炭素原子を含む。典型的なアルケニレンラジカルには、限定されないが、1,2-エチレン(-CH=CH-)が含まれる。
【0122】
本明細書で使用される場合、用語「アルキニレン」とは、「アルキニル」という用語に対応する二価の基を指し、ここで水素の1つが除去されており、典型的には結合によって置き換えられている。特に明記しない限り、「アルキニレン」という用語は、親アルキンの同じか又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去することにより得られる2つの一価のラジカル中心を有する、2-18個の炭素原子から成る不飽和分岐若しくは直鎖又は環状炭化水素ラジカルを指す。好ましいアルキニレンは、2-12個の炭素原子、2-8個の炭素原子又は2-4個の炭素原子を含む。典型的なアルキニレンラジカルには、限定されないが、アセチレン(-C≡C-)、プロパルギル(-CH2C≡C-)、及び4-ペンチニル(-CH2CH2CH2C≡C-)が含まれる。
【0123】
本明細書で使用される場合、用語「アリーレン」とは、「アリール」という用語に対応する二価の基を指し、ここで水素の1つが除去されており、典型的には結合によって置き換えられている。原子価は、芳香族炭化水素環基内の任意の位置にあってよい。一例としてフェニレン基において、原子価は、以下の構造に示されるように、オルト、メタ又はパラ位にある。
【0124】
[置換基]
本明細書において、様々な基が「置換されていてもよい」か又は「置換されている」とされる。一般に、これらの基は、1つ以上の置換基、例えば1、2、3又は4つの置換基を有し得る。置換基の最大数は、置換される部分の利用可能な結合部位の数によって制限されることが理解されよう。他に定義されない限り、本明細書で言及される「置換されていてもよい」基とは、好ましくは2つ以下の置換基を有し、特に1つの置換基のみを有し得る。更に、他に定義されない限り、任意選択の置換基が存在しないこと、すなわち対応する基が無置換であることが好ましい。
【0125】
アルキル、アリール、アリールアルキレン、アリールアルキル、アルキレン、アルケニレン及びアルキニレンの置換基には、限定されないが、-X、-R、-OH,-OR、-SR、-SH、-NR2、-NR3、=NR、-CX3、-CN、-OCN、-SCN、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N2、-N3、NC(=O)R、-C(=O)R、-C(=O)NR2、-SO3
-、-SO3H、-S(=O)2R、-OS(=O)2OR、-S(=O)2NR、-S(=O)R、-OP(=O)(OR)2、-P(=O)(OR)2、-P(OH)3、-PO3H2、-C(=O)R、-C(=O)X、-C(=S)R、-CO2R、-CO2-、-C(=S)OR、-C(=O)SR、-C(=S)SR、-C(=O)NR2、-C(=S)NR2、-C(=NR)NR2が含まれ;
ここで、各Xは独立に、F、Cl、Br及びIから選択されるハロゲンであり;且つ、
各Rは独立に、-H、C1-C18アルキル、C6-C20アリール、C3-C14ヘテロシクリル、保護基又はプロドラッグ部分である。
【0126】
アルキル、アリール、アリールアルキレン、アリールアルキル、アルキレン、アルケニレン及びアルキニレンの好ましい置換基には、-C1-C8アルキル、-O-(C1-C8 アルキル)、-アリール、-C(O)R’、-OC(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NH2、-C(O)NHR’、-C(O)N(R’)2、-NHC(O)R’、-SO3R’、-S(O)2R’、-S(O)R’、-OH、-ハロゲン、-N3、-NH2、-NH(R’)、-N(R’)2及び-CNが含まれ;ここで各R’は独立に、H、-C1-C8アルキル及びアリールから選択される。
【0127】
他に定義されない限り、置換基には、限定されないが、C1-C8アルキル、-O-(C1-C8アルキル)、-アリール、-C(O)R’、-OC(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NH2、-C(O)NHR’、-C(O)N(R’)2、-NHC(O)R’、-SO3R’、-S(O)2R’、-S(O)R’、-OH、-ハロゲン、-N3、-NH2、-NH(R’)、-N(R’)2及び-CNが含まれ;ここで各R’は独立に、H、-C1-C8アルキル及びアリールから選択される。
【0128】
アルキル基の置換基はアルキル基を含まないことが好ましい。
【0129】
置換されていると記載されているフェニル基は好ましくは、上で定義した1-4つの置換基を含有する。置換されていると記載されているC3-C8ヘテロシクリル基は好ましくは、上で定義した1-7つの置換基を含有する。置換されていると記載されているC3-C8ヘテロシクロ基は好ましくは、1-6つの上で定義された置換基を含有する。置換されていると記載されているC3-C20複素環基は好ましくは、1-7つの上で定義された置換基を含有する。置換されていると記載されているC3-C8炭素環基は好ましくは、上で定義した1-7つの置換基を含有する。
【0130】
本明細書で使用される場合、用語「ハロゲン」は、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)又はヨード(-I)を指す。
【0131】
本明細書で使用される場合、「任意選択の(optional)」、「(場合によって)~してもよい/任意選択的に(optionally)」及び「~でもよい/~し得る(may)」という用語は、示された特徴(feature)が存在し得るが存在しなくてもよいことを意味する。「任意選択の」、「(場合によって)~してもよい/任意選択的に」及び「~でもよい/~し得る」という用語が使用するときは必ず、本発明は、両方の可能性、すなわち対応する特徴が存在すること、又は対応する特徴が存在しないことの両方の可能性に特に関する。例えば「XはYで置換されていてもよい」(又は「XはYで置換され得る」)という表現は、XはYで置換されているか又は無置換であることを意味する。同様に、組成物の成分が「任意選択」であると示されている場合、本発明は、両方の可能性、すなわち対応する成分が存在する(組成物に含まれている)こと、又は対応する成分が組成物に存在しないことの両方の可能性に特に関する。
【0132】
用語「リンカー」は、抗体を共有結合的に薬物部分に結合させる原子の鎖又は共有結合を含む化学部分を指す。リンカーの例には、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレル若しくは-(CR2)nO(CR2)n-などの二価のラジカル、又はアルキルオキシ(例えばポリエチレンオキシ、PEG、ポリメチレンオキシ)及びアルキルアミノ(例えばポリエチレンアミノ、JeffamineTM)の繰り返し単位;並びにスクシネート、スクシンアミド、ジグリコレート、マロネート及びカプロアミドを含む二価酸エステル及びアミドが含まれる。様々な実施態様では、リンカーは、1以上のアミノ酸残基、例えばバリン、フェニルアラニン、リジン及びホモリジンを含むことができる。
【0133】
用語「キラル」は、その鏡像パートナーに重ね合わせることができないという特性を有する分子を指し、一方、用語「アキラル」は、その鏡像パートナーに重ね合わせることができる分子を指す。
【0134】
用語「立体異性体」は、同一の化学構造を有するが、原子又は基の空間配置の点で異なる化合物を指す。
【0135】
「ジアステレオマー」とは、2つ以上のキラル中心を持つ立体異性体であって、その分子が互いに鏡像関係にない立体異性体を指す。ジアステレオマーは、異なる物理的性質、例えば融点、沸点、スペクトル特性及び反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、例えば電気泳動法及びクロマトグラフィーなどの高分解能分析手順の下で分離することができる。
【0136】
「エナンチオマー」とは、互いに重ね合わせることができない鏡像である、化合物の2つの立体異性体を指す。
【0137】
本明細書で使用される立体化学的定義及び慣例は、S.P.Parker,Ed.,McGraw-Hill Dictionary of Chemical Tenns(1984)McGraw-Hill Book Company,New York;及びEliel,E.and Wilen,S.,Stereochemistry of Organic Compounds(1994)John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkに概ね従う。多くの有機化合物は、光学的に活性な形態で存在する、すなわち、それらは平面偏光面を回転させる能力を有する。光学活性化合物を記載する際、接頭語D及びL、又はR及びSを使用して、そのキラル中心の周りでの分子の絶対配置を表す。接頭語d及びl又は(+)及び(-)は、化合物による平面偏光の回転の符号を示すために用いられ、(-)又はlは化合物が左旋性であることを示す。接頭語(+)又はdを有する化合物は、右旋性である。所与の化学構造の場合、これらの立体異性体は、互いの鏡像であること以外は同一である。特定の立体異性体は、エナンチオマーとも称され、このような異性体の混合物は、しばしばエナンチオマー混合物と呼ばれる。エナンチオマーの50:50混合物は、ラセミ混合物又はラセミ体と称され、化学反応又はプロセスにおいて立体選択又は立体特異性がなかった場合に生じ得る。用語「ラセミ混合物」及び「ラセミ体」は、2つのエナンチオマー種の等モル混合物を指し、光学活性を欠く。
【0138】
「脱離基」は、他の官能基によって置換され得る官能基を指す。ある種の脱離基は、当該技術分野で周知であり、その例には、限定されないが、ハロゲン化物(例えば塩化物、臭化物、ヨウ化物)、メタンスルホニル(メシル)、p-トルエンスルホニル(トシル)、トリフルオロメチルスルホニル(トリフラート)、及びトリフルオロメチルスルホネートが含まれる。
【0139】
用語「保護基」は、化合物の他の官能基に反応しながら特定の官能基をブロック又は保護するために一般に用いられる置換基を指す。例えば、「アミノ保護基」は、化合物のアミノ官能基をブロック又は保護する、アミノ基に結合する置換基である。適切なアミノ保護基には、限定されないが、アセチル、トリフルオロアセチル、t-ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)及び9-フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)が含まれる。保護基及びそれらの使用の概要については、T.W.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley&Sons,New York,1991又はそれ以降の版を参照されたい。
【0140】
本発明の範囲は、プロトン化を受けやすい孤立電子対を有する原子、例えばアミノ基の、無機若しくは有機酸によるプロトン化によって、又は生理学的に許容されるカチオンを有する酸基(例えばカルボン酸基)の塩として形成され得る、本明細書に開示の化合物の全ての薬学的に許容される塩形態を包含する。例示的な塩基付加塩は、例えば、ナトリウム若しくはカリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム若しくはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;亜鉛塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロカイン塩、メグルミン塩、エチレンジアミン塩又はコリン塩等の脂肪族アミン塩;N,N-ジベンジルエチレンジアミン塩、ベンザチン塩、べネタミン(benethamine)塩等のアラルキルアミン塩;ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩又はイソキノリン塩等の複素環芳香族アミン塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩又はテトラブチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩;及びアルギニン塩、リジン塩又はヒスチジン塩等の塩基性アミノ酸塩を包含する。例示的な酸付加塩は、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩(例:硫酸塩又は硫酸水素塩)、硝酸塩、リン酸塩(例:リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩)、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩又はチオシアン酸塩等の鉱酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、オクタン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、デカン酸塩、ウンデカン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、グルコン酸塩、グリコール酸塩、ニコチン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、樟脳酸塩、グルコヘプタン酸塩又はピバル酸塩等の有機酸塩;メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、エタンスルホン酸塩(エシル酸塩)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、2-ナフタレンスルホン酸塩(ナプシル酸塩)、3-フェニルスルホン酸塩又はカンファースルホン酸塩等のスルホン酸塩;グリセロリン酸塩;アスパラギン酸塩又はグルタミン酸塩などの酸性アミノ酸塩を包含する。本明細書に開示の化合物の薬学的に許容される好ましい塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、メシル酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、及びリン酸塩が含まれる。本明細書に開示の化合物の薬学的に許容される特に好ましい塩は、塩酸塩である。したがって、本明細書に開示の化合物は、塩酸塩、臭化水素酸塩、メシル酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、酢酸塩又はクエン酸塩の形態であることが好ましく;且つ、式(I)の化合物が塩酸塩であることが特に好ましい。
【0141】
更に本発明の範囲は、例えば水との溶媒和物(例えば水和物)又は有機溶媒(例えばメタノール、エタノール又はアセトニトリル)との溶媒和物、すなわちそれぞれ、メタノレート(methanolate)、エタノレート(ethanolate)又はアセトニトリレート(acetonitrilate)としてのものも含めた、本明細書に開示のいかなる溶媒和形態或いはいかなる多形形態の化合物をも包含する。本明細書に開示の化合物のかかる溶媒和物には、本明細書に開示の化合物の薬学的に許容される塩の溶媒和物も含まれることを理解されたい。
【0142】
本書で言及されている全ての刊行物、特許出願、特許及び特許文書は、あたかも個々に参照により援用されているかのように、本明細書においてその全体が参照により援用される。そのように参照により援用されているそれらの文書と本書との間に矛盾する用法がある場合、援用されている参考文献における用法は、本書のそれに対する捕捉とみなされるものとし、両立しない矛盾については、本書での用法に従う。
【0143】
一態様では、本発明は部分的には、GP73に結合する抗体と、このような抗体を含むイムノコンジュゲートに基づく。本発明の抗体及びイムノコンジュゲートは、例えばGP73陽性がんの診断又は治療のために有用である。
【0144】
本明細書では、GP73に結合する単離された抗体が提供される。2つの例示的な天然に存在するヒトGP73アイソフォームは配列番号1に示され、プロセシングされた、例えばプロテアーゼにより切断された、対応するGP73形態(アミノ酸56-401)は、
図3に示される。
【0145】
いくつかの実施態様では、本発明の抗GP73抗体は、以下の特性のうちの少なくとも1つ以上を、任意の組み合わせで有する:
a) 組換えヒトGP73に結合する;
b) がん細胞の表面の内因性GP73に結合する;
c) がん細胞表面のヒトGP73のアミノ酸36-55内のエピトープ(ネオエピトープ)に結合する;
d) 肝細胞がん細胞表面の内因性GP73に結合する;
e) HepG2、Hep3B、HuH7、JHH-7、Alexander(PLC/PRF/5)、HLE、HuCCT1から選択される細胞株の細胞表面の内因性GP73に結合する;
f) SKBR3(乳がん)、SKOV3(卵巣がん)、PC3及びDU145(前立腺がん)、HCT116、CaCo2、SW480(結腸直腸がん)、H1975(肺がん)から選択される細胞株の細胞表面の内因性GP73に結合する;
g) Hep55-1C、Hepa1-6、Hep33.1cから選択される細胞株の細胞表面の内因性GP73に結合する;
h) MDA及び4T1(乳がん)等から選択される細胞株の細胞表面の内因性GP73に結合する;
i) CRL2212から選択される細胞株の細胞表面の内因性GP73に結合する;
j) GP73発現細胞(a-iに記載)表面の切断されていないGP73に結合する;
k) ヒトGP73のアミノ酸36-55内のエピトープに結合する;
l) ヒトGP73の推定フーリン切断認識モチーフE50-R55にわたるエピトープに結合する
【0146】
いくつかの実施態様では、抗体の特性は、例えば後述の実施例に記載されるように決定される。いくつかの実施態様では、抗体の特性は、293HEK細胞内で産生された組換えGP73タンパク質によって決定される。非限定的な例として、いくつかの実施態様では、完全長GP73又はGP73非切断型突然変異体(R52A)が細胞内(例えば293HEK細胞)で発現され、野生型GP73若しくはGP73非切断型突然変異体又はN末端切断型GP73(AA56-401)に結合する抗体がELISA又はFACSによって検出される。
【0147】
本明細書で提供される特定の実施態様は、部分的に、ヒトGP73タンパク質のアミノ酸35-55内のエピトープに結合する抗体G2-2及び/又はG2-2optiの開発に基づく。いくつかの実施態様では、本明細書で提供される抗体は、ヒトGP73のアミノ酸35-55内のエピトープに結合する。いくつかのそのような実施態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体G2-2の1つ以上のCDR配列を含む。
【0148】
したがって、いくつかの実施態様では、本発明は、(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号7のアミノ酸配列を含CDR-L1;(e)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(f)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5又は6のCDRを含む抗GP73抗体を提供する。
【0149】
一態様では、本発明は、(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つ全てのVH CDR配列を含む抗体を提供する。一実施態様において、抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む。一実施態様において、抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3と、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3とを含む。更なる実施態様において、抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2を含む。更なる実施態様において、抗体は、(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む。
【0150】
別の態様では、本発明は、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つ全てのVL CDR配列を含むl抗体を提供する。一実施態様において、抗体は、
(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む。
【0151】
別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つ全てのVH CDR配列を含むVHドメイン;並びに
(b) (i)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(iii)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つ全てのVL CDR配列を含むVLドメイン
を含む。
【0152】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(e)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(f)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む抗体を提供する。
【0153】
別の態様では、抗GP73抗体は、配列番号2又は配列番号35のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の実施態様において、配列番号2又は配列番号35のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、その配列を含む抗GP73抗体は、GP73への結合能を保持する。ある実施態様では、配列番号2又は配列番号35において、合計1から10のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。ある実施態様では、配列番号2又は配列番号35において、合計1から5のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。ある実施態様では、置換、挿入又は欠失は、CDRの外側の(すなわちFR内の)領域で生じる。好ましい実施態様では、哺乳動物細胞における発現を最適化するために、配列番号2の合計3つのアミノ酸が置換されている(配列番号35)。任意選択的に、抗GP73抗体は、配列番号2又は配列番号35のVH配列を含み、その配列の翻訳後修飾も含む。特定の実施態様において、VHは、(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRH2;及び(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される1つ、2つ又は3つのCDRを含む。
【0154】
別の態様において、配列番号3又は配列番号36のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、抗GP73抗体が提供される。ある実施態様において、配列番号3又は配列番号36のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、その配列を含む抗GP73抗体は、GP73への結合能を保持する。ある実施態様では、配列番号3又は配列番号36において、合計1から10のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。ある実施態様では、配列番号3又は配列番号36において、合計1から5のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。特定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(すなわちFR内で)生じる。好ましい実施態様では、哺乳動物細胞における発現を最適化するために、配列番号3の合計8つのアミノ酸が置換されている(配列番号36)。任意選択的に、抗GP73抗体は、配列番号3又は配列番号36のVL配列を含み、その配列の翻訳後修飾も含む。特定の実施態様において、VLは、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される1つ、2つ又は3つのCDRを含む。
【0155】
別の態様では、上記実施態様のいずれかにおけるVH、及び上記実施態様のいずれかにおけるVLを含む抗GP73抗体が提供される。好ましい実施態様では、抗体は、配列番号35のVH配列及び配列番号36のVL配列を含み、これらの配列の翻訳後修飾も含む。別の好ましい実施態様では、抗GP73抗体は、配列番号35のVH配列及び配列番号36のVL配列を含む抗体のヒト化形態を含む。一実施態様では、該抗体は、配列番号2のVH配列及び配列番号3のVL配列を含み、これらの配列の翻訳後修飾も含む。別の実施態様では、抗GP73抗体は、配列番号2のVH配列及び配列番号3のVL配列を含む抗体のヒト化形態を含む。
【0156】
本明細書では、更なる態様において、本明細書で提供される抗GP73抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。好ましい実施態様では、配列番号37のVH配列及び配列番号38のVL配列を含む抗GP73抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。ある実施態様において、配列番号10のVH配列及び配列番号11のVL配列を含む抗GP73抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。
【0157】
本発明の更なる態様では、上記実施態様による抗GP73抗体は、ヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。一実施態様において、抗GP73抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、又はF(ab’)2断片である。別の実施態様では、抗体は、実質的に完全長抗体であり、例えば、本明細書に記載のIgG1抗体、IgG2a抗体又は他の抗体クラス若しくはアイソタイプである。
【0158】
更なる態様では、上記実施態様による抗GP73抗体は、配列番号28、好ましくは配列番号39(これは哺乳動物細胞における発現を最適化するための、配列番号28の改変型である)のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域配列を含む。別の態様では、抗GP73抗体は、配列番号28又は配列番号39のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖定常領域配列を含む。
【0159】
更なる態様では、上記実施態様による抗GP73抗体は、後述の特徴のいずれかを、単独で又は組み合わせて含む。
【0160】
本明細書で提供される特定の実施態様は、部分的に、ヒトGP73タンパク質のアミノ酸36-55内のエピトープに結合する抗体G2-2の開発に基づく。いくつかの実施態様では、本明細書で提供される抗体は、ヒトGP73のアミノ酸347-366内のエピトープに結合する。いくつかのそのような実施態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体G2-1の1つ以上のCDR配列を含む。
【0161】
いくつかの実施態様では、本発明は、(a)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号15のアミノ酸配列を含CDR-L1;(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(f)配列番号17又は配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5又は6のCDRを含む抗GP73抗体を提供する。
【0162】
一態様では、本発明は、(a)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つ全てのVH CDR配列を含むl抗体を提供する。一実施態様において、抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む。別の実施態様において、抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3と、配列番号17又は配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR-L3とを含む。更なる実施態様において、抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号17又は配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及び配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2を含む。更なる実施態様において、抗体は、(a)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む。
【0163】
別の態様では、本発明は、(a)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L2;(c)配列番号17又は配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つ全てのVL CDR配列を含むl抗体を提供する。一実施態様において、抗体は、
(a)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(b)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(c)配列番号17又は配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む。
【0164】
別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つ全てのVH CDR配列を含むVHドメイン;並びに
(b) (i)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(ii)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(iii)配列番号17又は配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つ全てのVL CDR配列を含むVLドメイン
を含む。
【0165】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(e)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(f)配列番号17又は配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む抗体を提供する。
【0166】
別の態様では、抗GP73抗体は、配列番号10又は配列番号37のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の実施態様において、配列番号10又は配列番号37のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、その配列を含む抗GP73抗体は、GP73への結合能を保持する。ある実施態様では、配列番号10又は配列番号37において、合計1から10のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。ある実施態様では、配列番号10又は配列番号37において、合計1から5のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。ある実施態様では、置換、挿入又は欠失は、CDRの外側の(すなわちFR内の)領域で生じる。好ましい実施態様では、哺乳動物細胞における発現を最適化するために、配列番号10の合計6つのアミノ酸が置換されている(配列番号37)。任意選択的に、抗GP73抗体は、配列番号10又は配列番号37のVH配列を含み、その配列の翻訳後修飾も含む。特定の実施態様において、VHは、(a)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDRH2;及び(c)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される1つ、2つ又は3つのCDRを含む。
【0167】
別の態様において、配列番号11又は配列番号38のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、抗GP73抗体が提供される。ある実施態様において、配列番号11又は配列番号38のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、その配列を含む抗GP73抗体は、GP73への結合能を保持する。ある実施態様では、配列番号11又は配列番号38において、合計1から10のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。ある実施態様では、配列番号11又は配列番号38において、合計1から5のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。特定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(すなわちFR内で)生じる。好ましい実施態様では、哺乳動物細胞における発現を最適化するために、配列番号11の合計10つのアミノ酸が置換されている(配列番号38)。任意選択的に、抗GP73抗体は、配列番号11又は配列番号38のVL配列を含み、その配列の翻訳後修飾も含む。特定の実施態様において、VLは、(a)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(c)配列番号17又は配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される1つ、2つ又は3つのCDRを含む。
【0168】
別の態様では、上記実施態様のいずれかにおけるVH、及び上記実施態様のいずれかにおけるVLを含む抗GP73抗体が提供される。好ましい実施態様では、抗体は、配列番号37のVH配列及び配列番号38のVL配列を含み、これらの配列の翻訳後修飾も含む。別の実施態様では、抗GP73抗体は、配列番号37のVH配列及び配列番号38のVL配列を含む抗体のヒト化形態を含む。一実施態様では、該抗体は、配列番号10のVH配列及び配列番号11のVL配列を含み、これらの配列の翻訳後修飾も含む。別の実施態様では、抗GP73抗体は、配列番号10のVH配列及び配列番号11のVL配列を含む抗体のヒト化形態を含む。
【0169】
本明細書では、更なる態様において、本明細書に提供される抗GP73抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。好ましい実施態様では、配列番号35のVH配列及び配列番号36のVL配列を含む抗GP73抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。ある実施態様において、配列番号2のVH配列及び配列番号3のVL配列を含む抗GP73抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。
【0170】
本発明の更なる態様では、上記実施態様による抗GP73抗体は、ヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。一実施態様において、抗GP73抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、又はF(ab’)2断片である。別の実施態様では、抗体は、実質的に完全長抗体であり、例えば、本明細書に記載のIgG1抗体、IgG2a抗体又は他の抗体クラス若しくはアイソタイプである。
【0171】
更なる態様では、上記実施態様による抗GP73抗体は、配列番号28、好ましくは配列番号39のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域配列を含む。別の態様では、抗GP73抗体は、配列番号28又は配列番号39のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖定常領域配列を含む。
【0172】
更なる態様では、上記実施態様による抗GP73抗体は、後述の特徴のいずれかを、単独で又は組み合わせて含む。
【0173】
ある実施態様では、本明細書で提供される抗体は、≦1μM、≦100nM、≦50nm、≦10nM、≦5nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM、場合によって10-13M(例えば10-8M以下、例えば10-8Mから10-13M、例えば10-9Mから10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0174】
一実施態様では、-10反応単位(RU)に固定化された抗原CM5チップを用いた25℃のBIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000(ニュージャージー州ピスカタウェイのBIAcore,Inc.,)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイを使用してKdを測定する。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5,BIACORE,Inc.)を、供給業者の指示書に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化する。抗原を10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(-0.2μM)に希釈し、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流速で注入する。抗原の注入後、未反応基をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。反応速度論的な測定のために、抗体の2倍の段階希釈(0.58nMから200nM)を、25℃、約25μl/分の流速で、0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20TM)界面活性剤(PBST)を含むPBSに注入する。会合センサーグラムと解離センサーグラムを同時にフィッティングすることによる単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)T100評価ソフトウェア)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を計算する。平衡解離定数(Kd)をkoff)/kon比として計算する。例えば、Chenら,J.Mol.Biol.293:865-881(1999))を参照のこと。上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる会合速度が106M-1s-1を上回る場合、会合速度は、分光計、例えばストップフロー装置付き分光光度計(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AmincoTM 分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される漸増濃度の抗原の存在下で、PBS(pH7.2)中20nMの抗抗原抗体の25℃での蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)の増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて測定することができる。
【0175】
表1-1:1結合についてのBiacoreデータフィット
GP73ペプチド:SSRSVDLQTRIMELEGRVRR
解析ソフトウェア:Biacore T100 評価ソフトウェア(GEヘルスケアライフサイエンス)
【0176】
ある実施態様において、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望まれる。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することにより、又はペプチド合成により調製することができる。このような改変は、例えば抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失及び/又は残基への挿入及び/又は残基の置換を含む。最終コンストラクトが所望の特性、例えば抗原結合を有していることを条件として、欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせが、最終構築物に到達するまでなされ得る。
【0177】
ある実施態様では、1以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換突然変異誘発の対象部位には、CDR及びFRが含まれる。保存的置換は、表2の「好ましい置換」という見出しの下に示されている。より実質的な変更は、表2で「例示的置換」という見出しの下に示し、アミノ酸側鎖のクラスに関して更に後述する。アミノ酸置換は、目的の抗体に導入することができ、生成物を所望の活性、例えば保持/改善された抗原結合、低下した免疫原性又は改善されたADCC若しくはCDCについてスクリーニングすることができる。
【0178】
【0179】
アミノ酸は共通の側鎖特性に従って部ループ分けすることができる。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1クラスのメンバーを別のクラスのものと交換することを必要とする。
【0180】
置換バリアントの1つの種類は、親抗体(例えばヒト化又はヒト抗体)の1以上の超可変領域残基の置換を伴う。一般的には、更なる研究のために選択される、結果として得られたバリアントは、親抗体と比較して、特定の生物学的特性(例えば増加した親和性、低下した免疫原性)の改変(例えば改善)を有し、且つ/又は親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持する。例示的な置換バリアントは、親和性成熟抗体であり、例えば本明細書に記載のファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を用いて、簡便に生成することができる。簡潔に言えば、1以上のHVR残基が突然変異し、バリアント抗体がファージ上に表示され、特定の生物学的活性(例えば結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0181】
変更例えば置換)は、例えば抗体の親和性を向上させるために、CDR内で行われ得る。このような変更は、CDR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟過程中に高頻度で突然変異を経るコドンによりコードされた残基(例えばChowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008)を参照)、及び/又はSDR(a-CDR)内で行うことができ、得られたバリアントVH又はVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリーから構築し選択し直すことによる親和性成熟が、例えばHoogenboomらMethods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, (2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施態様において、多様性が、様々な方法(例えばエラープローンPCR、鎖シャッフリング又はオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発)のいずれかにより、成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリーが作製される。次いで、該ライブラリーは、所望の親和性を持つ任意の抗体バリアントを同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、複数のCDR残基(例えば、一度に4から6残基)がランダム化されるCDR指向の手法を含む。抗原結合に関与するCDR残基は、例えばアラニンスキャニングアラニンスキャニング突然変異誘発又はモデリングを用いて、特異的に同定することができる。特にCDR H3及びCDR-L3が、多くの場合標的とされる。
【0182】
特定の実施態様では、置換、挿入又は欠失は、かかる変更が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1以上のCDR内で生じ得る。例えば、実質的に結合親和性を低下させない保存的変更(例えば本明細書において提供される保存的置換)をCDR内で行うことができる。このような変更は、CDR「ホットスポット」又はSDRの外側であってもよい。上記のバリアントVH配列及びVL配列に関するある実施態様において、各CDRは変化しないか又はわずか1つ、2つ若しくは3つのアミノ酸置換を含む。
【0183】
突然変異誘発のために標的とすることができる抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085により記載されているように、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、標的残基の残基又はグループ(例えばarg、asp、his、lys及びglu等の荷電残基)が同定され、抗原と抗体の相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えばアラニン又はポリアラニン)により置換される。更なる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の位置に導入され得る。代わりに又は更に、抗原抗体複合体の結晶構造を用いて抗体と抗原との接触点を同定する。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされるか又は排除され得る。バリアントをスクリーニングして、それらが所望の特性を含むかどうかを決定することができる。
【0184】
アミノ酸配列挿入物は、 1残基から、100以上の残基を有するポリペプチドの長さに及ぶアミノ-及び/又はカルボキシル末端融合体、 並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例は、N末端メチオニル残基を有する抗体を含む。抗体分子の他の挿入バリアントは、抗体のN末端又はC末端と酵素との融合(例えばADEPTの場合)、又は抗体の血清半減期を延ばすポリペプチドとの融合を含む。
【0185】
特定の実施態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を上昇又は低下させるように改変される。グリコシル化部位の抗体への付加又は欠失は、1以上のグリコシル化部位が作製又は除去されるようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成することができる。
【0186】
抗体がFc領域を含む場合には、それに結合する炭水化物を改変することができる。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、通常Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合により結合した分岐状の二分岐オリゴ糖を典型的に含む。例えばWrightらTIBTECH 15:26-32(1997)を参照。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えばマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「幹」におけるGlcNAcに結合したフコースを含み得る。いくつかの実施態様において、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を有する抗体バリアントを作製するためになされ得る。
【0187】
一実施態様において、抗体バリアントは、Fc領域に(直接的に又は間接的に)結合するフコースを欠く炭水化物構造を有して提供される。そのような抗体のフコースの量は、例えば1%から80%、1%から65%、5%から65%又は20%から40%であり得る。フコースの量は、例えば国際公開第2008/077546号に記載されているように、MALDI-TOF質量分析法によって測定されるAsn297に結合している全ての糖構造体の合計(例えば複合、ハイブリッド及び高マンノース構造体)に対して、Asn297の糖鎖中のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域のおよそ297位に位置する(Fe領域残基のEU番号付け)アスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体のわずかな配列変異に起因して、297位のおよそ±3アミノ酸上流又は下流に、すなわち294位から300位に位置する場合もある。このようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta, L.);同第2004/0093621号(協和発酵工業株式会社)を参照。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体バリアントに関連する出版物の例としては、米国特許出願公開第2003/0157108号、国際公開第2000/61739号、国際公開第2001/29246号、米国特許出願公開第2003/0115614号、同第2002/0164328号、同第2004/0093621号、同第2004/0132140号、同第2004/0110704号、同第2004/0110282号、同第2004/0109865号、国際公開第2003/085119号、同第2003/084570号、同2005/035586号、同第2005/035778号、同第2005/053742号、同第2002/031140号、OkazakiらJ.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-OhnukiらBiotech.Bioeng.87:614(2004)が含まれる。脱フコシル化抗体を産生できる細胞株の例は、タンパク質フコシル化を欠損しているLec13 CHO細胞(Ripkaら, Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986)、Presta, Lの米国特許出願公開第2003/0157108号、及びAdamsらの国際公開第2004/056312号(特に実施例11))及びノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えばYamane-Ohnukiら, Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)、Kanda, Y.ら, Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006)、及び国際公開第2003/085l07号を参照)を含む。
【0188】
抗体バリアントは、二分(bisected)オリゴ糖、例えば抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されているオリゴ糖を更に備えている。そのような抗体バリアントは、低下したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば国際公開第2003/011878号(Jean-Mairettら);米国特許第6602684号(Umanaら);及び米国特許出願公開第2005/0123546号(Umanaら)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも1のガラクトース残基を持つ抗体バリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。このような抗体バリアントは、例えば国際公開第1997/30087号(Patelら);同第1998/58964号(Raju,S.);及び同第1999/22764号(Raju,S.)に記載されている。
【0189】
特定の実施態様において、1以上のアミノ酸改変を、本明細書で提供される抗体のFc領域に導入し、それによりFc領域バリアントを生成することができる。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0190】
特定の実施態様において、本発明は、抗体のin vivoの半減期は重要であるが、ある種のエフェクター機能(例えば補体及びADCC)は不要又は有害である用途のための望ましい候補とならしめる、全てではないがいくつかのエフェクター機能を有する抗体バリアントを意図している。in vitro及び/又はin vivo細胞傷害性アッセイを実施して、CDC及び/又はADCCの活性の低下/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して、抗体がFcR結合を欠く(したがっておそらくADCC活性を欠く)がFcRn結合能力を保持することを確かめることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞はFcRIIIのみを発現するが、単球はFcRI、FcRII、及びFcRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁の表3に要約されている。目的分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5500362号(例えばHellstrom,I et al.Proc. Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照)及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985)、5,821,337(Bruggemann, M. et al.,J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987)を参照)に記載されている。
【0191】
或いは、非放射性アッセイ法を用いることができる(例えば、フローサイトメトリー用のACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(カリフォルニア州マウンテンビューのCellTechnology,Inc.);及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(ウィスコンシン州マディソンのPromega)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。
【0192】
代わりに又は更に、目的の分子のADCC活性は、例えばClynesら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて、in vivoで評価することができる。また、C1q結合アッセイを実施して、抗体がC1qに結合できないこと、したがってCDC活性を欠くことを確認することができる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)、Cragg, M.S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003)、及びCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照)。FcRn結合、及びin vivoのクリアランス/半減期の測定もまた、当該分野で知られている方法を用いて行うことができる(例えばPetkova, S.B. et al., Int’l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006)を参照)。
【0193】
エフェクター機能が低下した抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327及び329のうちの1つ以上の置換を伴うものを含む(米国特許第6737056号)。そのようなFc変異体は、残基265及び297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc突然変異体を含め、アミノ酸位265、269、270、297及び327のうちの2以上における置換を有するFc突然変異体を含む(米国特許第7332581号)。
【0194】
FcRへの結合が改善又は減少した特定の抗体バリアントが記載されている。(例えば、米国特許第6737056号;国際公開第2004/056312号、及びShields et al., J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照)。
【0195】
特定の実施態様では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位,及び/又は334位(残基のEU番号付け)における置換を有するFc領域を含む。
【0196】
いくつかの実施態様では、例えば米国特許第6194551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogieらのJ.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されているように、改変された(すなわち改善されたか減少した)C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を生じる、Fc領域における変更がなされる。
【0197】
増加した半減期を持ち、胎仔への母性IgGの移送を担う、新生児Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体(Guyerら、J. Immunol.117:587 (1976)及びKimら、J. Immunol. 24:249 (1994))が、米国特許出願公開第2005/0014934号(Hintonら)に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1以上の置換を有するFc領域を含む。このようなFcバリアントは、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434のうちの1つ以上における置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものを含む(米国特許第7371826号)。
【0198】
Fc領域のバリアントのその他の例に関しては、Duncan & Winter,Nature 322:738-40(1988)、米国特許第5648260号、同第5624821号、及び国際公開第94/29351号も参照のこと。
ある実施態様において、抗体の1以上の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作抗体、例えば「チオMAb」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施態様において、置換される残基は、抗体の接近可能な部位に存在する。これらの残基をシステインで置換することによって反応性チオール基が抗体の接近可能部位に配置され、そしてこの反応性チオール基を用いて、本明細書中に更に記載されるように、抗体を他の部分、例えば薬物部分又はリンカー-薬剤部分にコンジュゲートさせ、免疫コンジュゲートを作製することができる。ある実施態様において、次の残基のいずれか1つ又はそれ以上がシステインと置換され得る:軽鎖のV205(Kabat番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作抗体は、例えば米国特許第7521541号に記載のように作製することができる。
【0199】
ある実施態様において、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野で知られていて容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むように更に改変されてもよい。抗体の誘導体化に適した部分は、限定されるものではないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにこれらの混合物を含む(ただし、これらに限定されない)。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のために製造上の利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量であってよく、分岐状でも非分岐状でもよい。抗体に結合するポリマーの数は変化してもよく、2つ以上のポリマーが結合している場合、それらは同じ分子でも異なる分子でもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、改善されるべき抗体の特定の特性又は機能、その抗体誘導体が規定の条件下での治療に使用されるかどうかを含めた(但しこれらに限定されない)考慮事項に基づいて決定され得る。
【0200】
別の実施態様において、放射線への曝露によって選択的に加熱されてもよい、非タンパク質部分と抗体とのコンジュゲートが提供される。一実施態様では、非タンパク質部分はカーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線は、任意の波長であってよく、通常の細胞に害を与えないが抗体-非タンパク質部分の近位細胞が死滅する温度に非タンパク質部分を加熱する波長を含むがこれに限定されない。
【0201】
抗体は、例えば米国特許第4816567号に記載されているように、組換え方法及び組成物を用いて製造される。一実施態様では、本明細書に記載される抗GP73抗体をコードする単離された核酸が提供される。このような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列、及び/又は抗体のVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードし得る。更なる実施態様では、そのような核酸を含む1以上のベクター(例えば発現ベクター)が提供される。更なる実施態様では、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような一実施態様において、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及びVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、又は(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第ニのベクターを含む(例えば、これらで形質転換されている)。一実施態様において、宿主細胞は、真核生物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はリンパ系細胞(例えばY0、NS0、Sp20細胞)である。一実施態様において、上述のように、抗体の発現に適した条件下で、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、任意選択的に宿主細胞(又は宿主細胞培地)から抗体を回収することとを含む、抗GP73抗体を作製する方法が提供される。
【0202】
抗GP73抗体の組換え生産のために、例えば上述のような、抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞内での更なるクローニング及び/又は発現のために1以上のベクターに挿入される。そのような核酸は、容易に単離可能であり、従来の手順を用いて(例えば抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定することができる。
【0203】
抗体をコードするベクターのクローニング又は発現に適した宿主細胞は、本明細書に記載の原核生物細胞又は真核細胞を含む。例えば、特に、グリコシル化及びFcエフェクター機能が必要ない場合には、抗体は、細菌内で製造され得る。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば米国特許第5648237号、同第5789199号及び同第5840523号を参照。(また、大腸菌における抗体断片の発現について記載している、Charlton, Methods in Molecular Biology, 第248 巻(B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), 245-254頁も参照のこと)。発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離し、更に精製することができる。
【0204】
原核生物に加えて、グリコシル化経路が「ヒト化」されていて、部分的又は完全なヒトのグリコシル化パターンを有する抗体の生成をもたらす真菌株及び酵母株を含めた糸状菌又は酵母などの真核微生物も、抗体をコードするベクターのための適切なクローニング宿主又は発現宿主である。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)及びGerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)を参照。
【0205】
グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)からも得られる。無脊椎動物細胞の例は、植物細胞及び昆虫細胞を含む。多数のバキュロウイルス株が同定されており、これらは特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と併せて使用することができる。
【0206】
植物細胞培養物を宿主として利用することもできる。例えば、米国特許第5959177号、同第6040498号、同第6420548号、同第7125978号、及び同第6417429号(トランスジェニック植物における抗体産生に関するPLANTIBODIESTM技術を記載)を参照のこと。
【0207】
脊椎動物細胞も宿主として用いることができる。例えば、懸濁液中で増殖するように適合されている哺乳動物細胞株は有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株のその他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CVl株(COS-7);ヒト胚腎臓株(例えばGraham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されている293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えばMather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されているTM4細胞);サル腎臓細胞(CV l);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頚がん細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(Wl38);ヒト肝臓細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562);例えばMatherら,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載されているTRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));並びにYO、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体生産に適した特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えばYazaki及びWu,Methods in Molecular Biology,Val.248(B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), 255-268頁(2003)を参照。
【0208】
本明細書で提供される抗GP73抗体は、当該技術分野で既知の様々なアッセイによって、同定され、物理的/化学的性質及び/又は生物学的活性についてスクリーニングされ、又は特徴づけられる。
【0209】
一態様では、本発明の抗体は、その抗原結合活性について、例えばELISA、BIACore(登録商標)、FACS、免疫蛍光法又は免疫組織化学等の既知の方法により試験される。
【0210】
別の態様では、GP73への結合について本明細書に記載の抗体のいずれかと競合する抗体を同定するために、競合アッセイが使用される。特定の実施態様では、このような競合抗体は、本明細書に記載の抗体によって結合されるのと同じエピトープ(例えば直鎖状又は立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的方法は、Methods in Molecular Biology 第66巻(Humana Press, Totowa, NJ)に掲載のMorris(1996)「Epitope Mapping Protocols」に示されている。
【0211】
例示的競合アッセイでは、固定化GP73は、GP73に結合する第1の標識抗体(例えば、本明細書に記載の抗体のいずれか)と、GP73への結合について第1の抗体と競合する能力を試験される第2の非標識抗体とを含む溶液中でインキュベートされる。コントロールとして、固定化GP73が、第1の標識抗体を含むが第2の非標識抗体は含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のGP73への結合を許容する条件下でインキュベートした後、過剰な未結合抗体が除去され、固定化されたGP73に結合した標識の量が測定される。固定化GP73に結合した標識の量がコントロール試料と比較して試験試料中で実質的に減少している場合、それは、第2の抗体が第1の抗体とGP73への結合に関して競合していることを示している。Harlow及びLane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照。
【0212】
本発明はまた、エンドソームエスケープドメイン(EED)ペプチド又は1つ以上の細胞傷害性剤、例えば化学療法剤若しくは化学療法薬、増殖抑制剤、毒素(例えばタンパク毒素、細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素活性毒素又はその断片)又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)等、にコンジュゲートする、本明細書の抗GP73抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。
【0213】
イムノコンジュゲートは、腫瘍への薬物部分の標的化送達を可能にし、いくつかの実施態様では、非コンジュゲート薬の全身投与が正常細胞に対して許容できないレベルの毒性をもたらし得る、腫瘍中の細胞内蓄積を可能にする(Polakis P. (2005) Current Opinion in Pharmacology 5:382-387)。
【0214】
抗体-EEDコンジュゲート化合物の例示的な実施態様は、腫瘍細胞を標的とする抗体(Ab)、EEDペプチド、及びAbをEEDペプチドに結合させるEEDリンカー(EEDL)を含む。EEDは、配列番号43に示されるような適切なリンカーペプチドによって、タグとして抗体に直接結合され得る。例示的な抗体-EEDコンジュゲート化合物は、式Ab(-EEDL-EEDペプチド)を有する。EEDペプチドには、限定されないが、デングウイルス及びその他のウイルス由来のEEDペプチド、並びにそれらのバリアント、2つの芳香族インドール環又は1つのインドール環及び2つの芳香族フェニル基を含む細菌由来のEED並びにペプチドが含まれる(国際公開第2016/015621号;国際公開第2016/037985号;Kiesgen et al., Protein Eng Des Sel. 27(10):331-7 (2014) 及びLohn et al., Sci Rep. 6:32301 (2016))。
【0215】
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、強力な細胞傷害性薬物を抗原発現腫瘍細胞に対して標的化する(Teicher, B.A. (2009) Current Cancer Drug Targets 9:982-1004)ことによって抗体と細胞傷害性薬物双方の特性を組み合わせ、それにより有効性を最大にし、且つ、オフターゲット毒性を最小にすることで治療指数を高める標的化学療法分子である(Carter, and Senter P.D. (2008) The Cancer Jour. 14(3):154-169; Chari, R.V. (2008) Ace. Chem. Res. 41:98-107)。
【0216】
本発明のADC化合物は、抗がん活性を有するものを含む。いくつかの実施態様では、ADC化合物は、薬物部分にコンジュゲートした、すなわち共有結合した抗体を含む。いくつかの実施態様では、抗体は、リンカーを介して薬物部分に共有結合している。本発明の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、有効用量の薬物を腫瘍組織に選択的に送達し、それにより、治療指数(「治療濃度域」)を増大させながらより高い選択性、すなわちより低い有効用量を達成することができる。
【0217】
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の薬物部分(D)は、細胞傷害又は細胞増殖抑制効果を有する任意の化合物、部分又は基を含む。薬物部分は、チューブリン結合、DNA結合又はインターカレーション、並びにRNAポリメラーゼ、タンパク質合成及び/又はトポイソメラーゼの阻害を含むがこれらに限定されないメカニズムによって、その細胞傷害又は細胞増殖抑制効果を与え得る。例示的な薬物部分には、限定されないが、メイタンシノイド、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、ネモルビシン及びその誘導体、PNU-159682、アントラサイクリン、ズオカルマイシン、ビンカアルカロイド、タキサン、トリコテセン、CC1065、カンプトテシン、エリナフィド(elinafide)、並びに細胞傷害活性を有するこれらの立体異性体、同配体、アナログ及び誘導体が含まれる。このようなイムノコンジュゲートの非限定的な例を以下で更に詳細に論ずる。
【0218】
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)化合物の例示的な実施態様は、腫瘍細胞を標的とする抗体(Ab)、薬物部分(D)、及びAbをDに結合させるリンカー部分(L)を含む。いくつかの実施態様では、抗体は、リジン及び/又はシステインなどの1以上のアミノ酸残基を介してリンカー部分(L)に結合している。
【0219】
1.1 1.例示的な抗体-薬物コンジュゲート
1.2
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)化合物の例示的な実施態様は、腫瘍細胞を標的とする抗体(Ab)、薬物部分(D)、及びAbをDに結合させるリンカー部分(L)を含む。抗体は、リジン及び/又はシステインなどの1以上のアミノ酸残基を介してリンカー部分(L)に結合していてもよい。
例示的なADCは、式I:
Ab(-L-D)p I
(式中、pは1~約20である)
を有する。
【0220】
抗体にコンジュゲートすることのできる薬物部分の数は、遊離システイン残基の数によって制限され得る。遊離システイン残基は、本明細書に記載される方法によって、抗体のアミノ酸配列に導入することができる。式Iの例示的なADCは、限定されないが、1、2、3又は4の操作されたシステインアミノ酸を有する抗体を含む(Lyon, R. et al (2012) Methods in Enzym. 502:123-138)。いくつかの実施態様では、工学的操作を用いなくとも、1以上の遊離システイン残基が既に抗体中に存在し、その場合、既存の遊離システイン残基を使用して、抗体を薬物にコンジュゲートさせることができる。いくつかの実施態様では、抗体は、1以上の遊離システイン残基を生成するために、抗体のコンジュゲーションに先立ち還元条件に曝される。
【0221】
a.例示的リンカー
「リンカー」(L)は、1以上の薬物部分(D)を抗体(Ab)に結合させて式1の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を形成するのに使用できる、二官能性又は多官能性部分である。いくつかの実施態様では、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、薬物及び抗体に共有結合するための反応性官能基を有するリンカーを用いて調製することができる。例えば、いくつかの実施態様では、抗体(Ab)のシステインチオールは、リンカーの反応性官能基又は薬物-リンカー中間体との結合を形成し、ADCをつくる。
【0222】
一態様では、リンカーは、抗体上に存在する遊離システインと反応して共有結合を形成することができる官能基を有する。このような反応官能基の非限定的な例には、マレイミド、ハロアセトアミド、α-ハロアセチル、活性化エステル、例えばスクシンイミドエステル、4-ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、無水物、酸クロリド、スルホニルクロリド、イソシアネート、及びイソチオシアネートが含まれる。例えば、Klussmanら(2004),Bioconjugate Chemistry 15(4):765-773の766頁に開示されているコンジュゲーション方法、及び本明細書に開示の実施例を参照されたい。
【0223】
リンカーは、抗体上に存在する求電子基と反応できる官能基を有する。例示的な求電子基には、限定されないが、アルデヒド基及びケトンカルボニル基が含まれる。いくつかの実施態様では、リンカーの反応性官能基のヘテロ原子は、抗体上の求電子基と反応し、抗体単位への共有結合を形成することができる。このような反応性官能基の非限定的な例には、限定されないが、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、及びアリールヒドラジンが含まれる。
【0224】
リンカーは、1以上のリンカー成分を含み得る。例示的なリンカー成分には、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、及び4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「MCC」)が含まれる。様々なリンカー成分が当該技術分野で既知であり、そのうちのいくつかについて後述する。
【0225】
リンカーは、薬物の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であり得る。非限定的で例示的な切断可能なリンカーには、酸不安定性リンカー(例えばヒドラゾンを含む)、プロテアーゼ感受性(例えばペプチダーゼ感受性)リンカー、光解離性リンカー又はジスルフィド含有リンカーが含まれる(Chari et al., Cancer Research 52:127-131 (1992);米国特許第5208020号)。
【0226】
リンカー成分は、別のリンカー成分又は薬物部分に抗体を結合させる「ストレッチャー単位」を含み得る。非限定的で例示的なストレッチャー単位を以下に示す(波線は、抗体、薬物又は追加的リンカー成分への共有結合の部位を示す):
【0227】
リンカー成分は、直接的に又はストレッチャー単位及び/若しくはアミノ酸単位を介して薬物部分に抗体を結合させる「スペーサー」単位を含み得る。スペーサー単位は、「自壊性」でも「非自壊性」でもよい。「非自壊性」のスペーサー単位は、スペーサー単位の一部又は全部がADCの切断時に薬物部分に結合したままであるものである。非自壊性スペーサー単位の例には、限定されないが、グリシンスペーサー単位及びグリシン-グリシンスペーサー単位が含まれる。腫瘍細胞関連プロテアーゼによるグリシン-グリシンスペーサー単位を含むADCの酵素切断は、ADCの残りの部分からのグリシン-グリシン-薬物部分の放出をもたらし得る。いくつかのこのような事例では、グリシン-グリシン-薬物部分を腫瘍細胞中で加水分解工程に付し、それにより薬物部分からグリシン-グリシンスペーサー単位を切断する。
【0228】
「自壊性」スペーサー単位は、薬物部分の放出を可能にする。リンカーのスペーサー単位は、p-アミノベンジル単位を含み得る。更に、p-アミノベンジルアルコールをアミド結合を介してアミノ酸単位に結合させることができ、カルバメート、メチルカルバメート又は炭酸塩がベンジルアルコールと薬物の間に作られる(Hamann et al. (2005) Expert Opin. Ther. Patents (2005) 15:1087-1103)。スペーサー単位は、p-アミノベンジルオキシカルボニル(paminobenzyloxycarbonyl)(PAB)であってもよい。自壊性リンカーを含むADCは、以下の構造を有し得る。
式中、Qは、-C
1-C
8アルキル、-O-(C
1-C
8アルキル)、-ハロゲン、-ニトロ又は-シアノであり;
mは、0から4の整数であり;
pは、1-約20の範囲である。好ましくは、pは、1-10、1-7、1-5又は1-4の範囲である。
Aは任意選択のアシル基であり、aは0-8の範囲であり;Wは任意選択の第2の自壊性基であり、wは0-1である。
【0229】
自壊性スペーサーの他の例には、限定されないが、PAB基と電子化学的に類似している芳香族化合物、例えば2-アミノイミダゾール-5-メタノール誘導体(米国特許第7375078号;Hay et al. (1999) Bioorg. Med. Chem. Lett. 9:2237)及びオルト-又はパラ-アミノベンジルアセタールが含まれる。置換及び無置換4-アミノ酪酸アミド(Rodrigues et al (1995) Chemistry Biology 2:223)、適切に置換されたビシクロ[2.2.1]及びビシクロ[2.2.2]環系(Storm et al (1972) J. Amer. Chem. Soc. 94:5815)、並びに2-アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberry, et al (1990) J. Org. Chem. 55:5867)等の、アミド結合加水分解時に環化を受けるスペーサーを使用することができる。グリシン残基のα炭素への薬物の結合は、ADCにおいて有用であり得る自壊性スペーサーの別の例である(Kingsbury et al (1984) J. Med. Chem. 27:1447)。
【0230】
リンカーLは、分岐した多官能性リンカー部分を介して抗体に2つ以上の薬物部分を共有結合させるための樹状型リンカーであってもよい(Sun et al (2002) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12:2213-2215; Sun et al (2003) Bioorganic & Medicinal Chemistry 11:1761-1768)。樹状リンカーは、抗体に対する薬物のモル比、すなわち負荷を増加させることができ、これはADCの効力に関連する。したがって、抗体が1つの反応性システインチオール基をのみを有する場合、樹状リンカーを介して多数の薬物部分を結合することができる。
【0231】
いくつかの実施態様では、リンカーは、溶解度及び/又は反応性を調節する基で置換される。非限定的な例として、スルホネート(-SO3
-)又はアンモニウムなどの荷電置換基は、リンカー試薬の水溶解度を高め、ADCを調製するために用いられる合成経路に応じて、リンカー試薬と抗体及び/又は薬物部分とのカップリング反応を容易にすることができ、又はAb-L(抗体-リンカー中間体)とDとの、又はD-L(薬物-リンカー中間体)とAbとのカップリング反応を容易にすることができる。いくつかの実施態様では、リンカーの一部を抗体に結合させ、且つ、リンカーの一部を薬物に結合させ、その後Ab-(リンカー部分)aを薬物-(リンカー部分)bに結合させて式1のADCを形成する。いくつかの実施態様では、抗体は、式1のADCにおいて2以上の薬物が抗体に結合されるように、2以上の(リンカー部分)a置換基を含む。
【0232】
本発明の化合物は、限定するものではないが、ビス-マレイミド-トリオキシエチレングリコール(BMPEO)、N-(β-マレイミドプロピルオキシ)-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(BMPS)、N-(ε-マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミドエステル(EMCS)、N-[γ-マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル(GMBS)、1,6-ヘキサン-ビスビニルスルホン(HBVS)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロン酸)(LC-SMCC)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、4-(4-N-マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、スクシンイミジル3-(ブロムアセトアミド)プロピオネート(SBAP)、スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチラート(SMPB)、スクシンイミジル6-[(ベータ-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート](SMPH)、イミノチオラン(IT)、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB(スルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドフェニル)ブチラート))及びスクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート(SVSB)、並びに以下のビスマレイミド試薬:ジチオビスマレイミドエタン(DTME)、1,4-ビスマレイミドブタン(BMB)、1,4-ビスマレイミジル-2,3-ジヒドロキシブタン(BMDB)、ビスマレイミドヘキサン(BMH)、ビスマレイミドエタン(BMOE)、BM(PEG)
2(以下に示す)及びBM(PEG)
3(以下に示す);イミドエステルの二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビス‐アジド化合物(例えばビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン-2,6-ジイソシアネート)及びビス活性フッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を含む、リンカー試薬を用いて調製されたADCを特に含む。
【0233】
ビス-マレイミド試薬は、抗体中のシステインのチオール基がチオール含有薬物部分、リンカー又はリンカー-薬物中間体に結合することを許容し得る。チオール基と反応性の他の官能基には、限定されないが、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、ビニルピリジン、ジスルフィド、ピリジルジスルフィド、イソシアネート及びイソチオシアネートが含まれる。
【0234】
特定の有用なリンカー試薬は、Pierce Biotechnology,Inc.(イリノイ州ロックフォード),Molecular Biosciences Inc.(コロラド州ボルダー)等の様々な商業的供給源から入手することができ、又は、例えばDubowchikら(1997)Tetrahedron Letters,38:5257-60;Walker,M.A.(1995)J.Org.Chem.60:5352-5355;Frischら(1996)Bioconjugate Chem.7:180-186;米国特許第6214345号;国際公開第02/088172号;米国特許出願公開第2003/130189号;同第2003/096743号;国際公開第03/026577号;同第03/043583号;及び同第04/032828号等、当該技術分野で記載されている手順に従って合成することができる。
【0235】
炭素-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのためのキレート剤の例である。例えば、国際公開第94/11026号を参照のこと。
【0236】
b.例示的薬物部分
(1)メイタンシン及びメイタンシノイド
イムノコンジュゲートは、1以上のメイタンシノイド分子にコンジュゲートした抗体を含んでもよい。メイタンシノイドはメイタンシンの誘導体であり、C1のメチル基は好ましくは、チオエタニル基又はCH
2C(CH
3)
2SHで置換されている。メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害することにより作用する有糸分裂阻害剤である。メイタンシンは、東アフリカの灌木メイテナスセラタ(Maytenus serrata)から最初に単離された(米国特許第3896111号)。続いて、特定の微生物もメイタンシノイド(例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステル)を生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノイドは、例えば、米国特許第4137230号;同第4248870号;同第4256746号;同第4260608号;同第4265814号;同第4294757号;同第4307016号;同第4308268号;同第4308269号;同第4309428号;同第4313946号;同第4315929号;同第4317821号;同第4322348号;同第4331598号;同第4361650号;同第4364866号;同第4424219号;同第4450254号;同第4362663号;及び同第4371533号に開示されている。
【0237】
メイタンシノイド薬物部分は抗体-薬物コンジュゲートの魅力的な薬物部分である。なぜなら、この薬物部分は、(i)発酵生成物の発酵又は化学修飾又は誘導体化により調製するために比較的到達可能であり、(ii)非ジスルフィドリンカーを介した抗体へのコンジュゲーションに適した官能基による誘導化を行い易く、(iii)血漿中で安定であり、且つ、(iv)様々な腫瘍細胞株に対して有効であるからである。
【0238】
メイタンシノイド薬物部分としての使用に適した特定のメイタンシノイドは、当該技術分野で周知であり、既知の方法に従って天然供給源から単離することができるか、又は工学的操作を用いて製造することができる(例えばYu et al (2002) PNAS 99:7968-7973参照)。メイタンシノノイドは、既知の方法に従って合成的に調製することもできる(米国特許出願公開第2011/158991号)。
【0239】
例示的メイタンシノイド薬物部分には、限定されないが、修飾された芳香族環を有するもの、例えばC-19-デクロロ(米国特許第4256746号)(例えばアンサマイトシンP2の水素化アルミニウムリチウム還元により調製);C-20-ヒドロキシ(又はC-20-デメチル)+/-C-19-デクロロ(米国特許第4361650号及び同第4307016号)(例えばストレプトミセス属(Streptomyces)若しくはアクチノミセス属(Actinomyces)を用いる脱メチル化又はLAH(水素化アルミニウムリチウム;米国特許第4294757号参照)を用いる脱塩素化により調製)及びC-20-デメトキシ、C-20-アシルオキシ(-OCOR)、+/-デクロロ(米国特許第4294757号)(例えば塩化アシルを用いるアシル化により調製)、並びに芳香族環のその他の位置に修飾を有するものが含まれる。
【0240】
また、例示的なメイタンシノイド薬物部分には、修飾を有するもの、例えばC-9-SH(米国特許第4424219号)(例えばメイタンシノールとH2S又はP2S5との反応により調製);C-14-アルコキシメチル(デメトキシ/CH2 OR)(米国特許第4331598号);C-14-ヒドロキシメチル又はアシルオキシメチル(CH2OH又はCH2OAc)(米国特許第4450254号)(例えばノカルジア属(Nocardia)から調製);C-15-ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4364866号)(例えばストレプトミセス属(Streptomyces)によるメイタンシノールの変換により調製);C-15-メトキシ(米国特許第4313946号及び同第4315929号)(例えばトレウィア ヌディフローラ(Trewia nudiflora)から単離);C-18-N-デメチル(米国特許第4362663号及び同第4322348号)(例えばストレプトマイセス属によるメイタンシノールの脱メチル化により調製);及び4,5-デオキシ(米国特許第4371533号)(例えばメイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元により調製)が含まれる。
【0241】
メイタンシノイド化合物上の多数の位置が、結合位置として有用である。例えばエステル結合は、従来のカップリング技術を使用してヒドロキシル基との反応により形成され得る。いくつかの実施態様では、この反応は、ヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じ得る。いくつかの実施態様では、結合は、メイタンシノール又はメイタンシノールアナログのC-3位で形成される。
【0242】
メイタンシノイド薬物部分は、構造:
(式中、波線はメイタンシノイド薬物部分の硫黄原子の、ADCのリンカーへの共有結合を示す。各Rは独立に、H又はC
1-C
6アルキルである。
アミド基を硫黄原子に結合させる「アルキレン」鎖、すなわち(CR
2)
mは上に定義した通りであり、例えばメチレン、エチレン、プロピレンであってもよく、すなわちmは1、2又は3である)
を有するものを含む。(US633410;米国特許第5208020号;Chari et al. (1992) Cancer Res. 52:127-131; Liu et al (1996) Proc. Natl. Acad. Sci USA 93:8618-8623);これらは全体が参照により援用される。
【0243】
メイタンシノイド薬物部分の全ての立体異性体、すなわち不斉炭素におけるR及びS立体配置(configuration)の任意の組み合わせが本発明のADCのために考慮される(米国特許第7276497号;同第6913748号;同第6441163号;米国再発行特許第39151号;米国特許第5208020号;Widdison et al (2006) J. Med. Chem. 49:4392-4408,これらは全体が参照により援用される)。
【0244】
いくつかの実施態様では、メイタンシノイドの薬物部分は以下の立体化学を有する
【0245】
メイタンシノイドの薬物部分の例示的実施態様には、限定されないが、以下の構造:
(式中、波線は薬物の硫黄原子の、抗体-薬物コンジュゲートのリンカー(L)への共有結合を示す)
を有するDM1、DM3及びDM4が含まれる。
【0246】
その他の例示的なメイタンシノイド抗体-薬物コンジュゲートは、以下の構造及び略語を有する。
(式中、Abは抗体であり、pは1-約20、好ましくはpは1-10、pは1-7、pは1-5、pは1-4、又はpは1-2である)SMCCは、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレートであり、DM1は上に定義した通りである。
(式中、Abは抗体であり、pは1-約20、好ましくはpは1-10、pは1-7、pは1-5、pは1-4、又はpは1-2である)SPPは、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエートであり、DM1は上に定義した通りである。
【0247】
DM1がBMPEO(ビス-マレイミド-トリオキシエチレングリコール)リンカーを介して抗体のチオール基に結合している例示的な抗体-薬物コンジュゲートは、以下の構造を有する。
(式中、Abは抗体であり;nは0、1又は2であり;pは1~約20、好ましくはpは1-10、pは1-7、pは1-5、pは1-4、又はpは1-4である)
【0248】
メイタンシノイドを含有するイムノコンジュゲート、その作製方法及び治療用途は、例えば米国特許第5208020号、同第5416064号、米国特許出願公開第2005/0276812号;及び欧州特許第0425235号に開示されており、これらの開示内容は、参照により本明細書に明示的に援用される。更にはLiu et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618-8623(1996);及びChari et al.Cancer Research 52:127-131(1992)を参照のこと。
【0249】
抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体又はメイタンシノイド分子いずれの生物活性も大きく低下させることなく、抗体をメイタンシノイド分子に化学的に結合させることにより調製することができる。例えば、米国特許第5208020号参照(開示内容は参照により本明細書に明示的に援用される)。抗体分子1つに平均3-4個のメイタンシノイド分子がコンジュゲートしているADCは、抗体の機能又は溶解度に悪影響を与えることなく、標的細胞の細胞傷害性の増大に効果を示している。場合によっては、1分子の毒素/抗体でさえ、ネイキッド抗体の使用よりも細胞傷害性を増大させると予想される。
【0250】
抗体-メイタンシノイドコンジュゲートを作製するための例示的な結合基には、例えば、本明細書に記載されるもの、並びに米国特許第5208020号;欧州特許第0425235号;Chari et al.Cancer Research 52:127-131(1992);米国特許出願公開第2005/0276812号及び同第2005/016993号に開示されるものが含まれ、これら文献の開示内容は参照により本明細書に明示的に援用される。
【0251】
1.1.1.1 (2)カリケアマイシン
イムノコンジュゲートは、1以上のカリケアマイシン分子にコンジュゲートした抗体を含んでもよい。抗生物質のカリケアマイシンファミリー及びそのアナログは、ピコモル以下の濃度において二本鎖DNA破壊を生じさせることができる(Hinman et al., (1993) Cancer Research 53:3336-3342; Lode et al., (1998) Cancer Research 58:2925-2928)。カリケアマイシンは細胞内作用部位を有するが、場合によっては原形質膜を容易に横切らない。したがって、抗体媒介性内部移行によるこれらの薬剤の細胞取り込みは、場合によっては薬剤の細胞傷害性効果を大きく増大させる。カリケアマイシンの薬物部分との抗体-薬物コンジュゲートを調製する非限定的で例示的な方法は、例えば米国特許第5712374号;同第5714586号;同第5739116号;及び同第5767285号に記載されている。
【0252】
(4)ピロロベンゾジアゼピン
ADCは、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)を含んでもよい。PDBダイマーは、特定のDNA配列を認識し、これに結合する。天然物のアントラマイシンであるPBDが最初に報告されたのは、1965年である(Leimgruber, et al., (1965) J. Am. Chem. Soc., 87:5793-5795; Leimgruber, et al., (1965) J. Am. Chem. Soc., 87:5791-5793)。それ以来、複数のPBD(天然に存在するものとアナログの両方)が報告されている(Thurston, et al., (1994) Chem. Rev. 1994, 433-465;三環式PBD足場のダイマー(米国特許第6884799号;同第7049311号;同第7067511号;同第7265105号;同第7511032号;同第7528126号;同第7557099号)を含む)いかなる特定の理論にも束縛されることを意図するものではないが、ダイマー構造は、B型DNAの副溝とのイソヘリシティー(isohelicity)に適した三次元形状を付与し、結合部位に嵌合をもたらすと考えられる(Kohn, In Antibiotics III. Springer-Verlag, New York, pp. 3-11 (1975); Hurley and Needham VanDevanter, (1986) Ace. Chem. Res., 19:230-237)。C2アリール置換基を有する二量体PBD化合物は、細胞傷害性剤として有用であることが示されている(Hartley et al (2010) Cancer Res. 70(17):6849-6858; Antonow (2010) J. Med. Chem. 53(7):2927-2941; Howard et al (2009) Bioorganic and Med. Chem. Letters 19(22):6463-6466)。
【0253】
PBD化合物は、in vivoで除去可能な窒素保護基によってN10位でそれらを保護することにより、プロドラッグとして使用することができる(国際公開第00/12507号;同第2005/023814号)。
【0254】
PBDダイマーは抗体にコンジュゲートされており、その結果得られたADCは抗がん特性を有することが示されている(米国特許出願公開第2010/0203007号)。PBDダイマー上の非限定的で例示的な結合部位には、5員ピロロ環、PBD単位間のテザー、及びN10-C11イミン基が含まれる(国際公開第2009/016516号;米国特許出願公開第2009/304710号;同第2010/047257号;同第2009/036431号;同第2011/0256157号;国際公開第2011/130598号)。
【0255】
ADCの非限定的で例示的なPBDダイマー成分は、式A:
のもの、並びにその塩(例:薬学的に許容される塩)及び溶媒和物(例:薬学的に許容される溶媒和物)であり、上式中:
波線はリンカーへの共有結合部位を示し;
点線は、二重結合の任意選択の存在を示し(二重結合は、例えばC1とC2、又はC2とC3の間に存在し得る);
R
2及びR
12は、-H、-OH、=O、=CH
2、-CN、-R、-OR、=CH-R
D、=C(R
D)
2、-O-SO
2-R、-CO
2R、-COR、及び-ハロゲンから各々独立に選択され;
ここでR
Dは、-H、-CO
2R、-C(O)R、CHO、CO
2H、-R、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH
2、-NHR、-NRR´、-NO
2、Me
3Sn-、及び-ハロゲンから独立に選択され;
R
6、R
9、R
16及びR
19は、-H、-R、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH
2、-NHR、-NRR’、-NO
2、Me
3Sn-、及び-ハロゲンから独立に選択され;
R
7及びR
17は、-H、-R、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH
2、-NHR、-NRR’、-NO
2、Me
3Sn-、及び-ハロゲンから独立に選択され;
Qは、-O-、-S-、及び-N(H)-から独立に選択され;
R
11は-Hか-Rのいずれかであるか、又はQが-O-である場合、R
11は-SO
3Mであってもよく、ここでMはアルカリ金属又はアルカリ土類金属カチオンであり;
R及びR’は、置換されていてもよいC
1-12アルキル、C
3-8ヘテロシクリル、C
3-20複素環及びC
5-20アリール基から各々独立に選択され、且つ、R及びR’は、同じ窒素原子に結合する場合は、それらが結合する窒素原子と共に、置換されてもよい4、5、6又は7員の複素環式環を形成することができ;
R″は、1個以上の炭素原子が、O、NH及びSO、並びに/又は置換されていてもよい芳香族環から選択されるヘテロ原子によって置き換えられてもよいC
3-12アルキレン基であり;
ここで芳香族環は、5又は6個の炭素原子と、N又はNHから選択される1つ又は2つのヘテロ原子とを含み;
X及びX’は、O、S及びN(H)から独立に選択される。
【0256】
好ましくは、R及びR’は各々独立に、置換されていてもよいC1-12アルキル、C3-20ヘテロシクリル及びC5-20アリール基から選択され、R及びR’は、同じ窒素原子に結合する場合は、それらが結合する窒素原子と共に、置換されていてもよい4,5,6又は7員の複素環式環を形成することができる。
【0257】
好ましくは、R9及びR19は、-Hである。
好ましくは、R6及びR16は、-Hである。
好ましくは、R7及びR17は共に-OR7Aであり、R7Aは、置換されてもよいC1-4アルキルである。
より好ましくは、R7AはMeである。或いは、R7AはCH2Phであり、Phはフェニル基である。
好ましくは、XはOである。
好ましくは、R11はHである。
好ましくは、各モノマー単位中のC2とC3の間に二重結合が存在する。
【0258】
好ましくは、R2及びR12は、H及びRから独立に選択される。より好ましくは、R2及びR12は独立に、Rである。更に一層好ましくは、R2及びR12は独立に、置換されていてもよいC5-20アリール又はC5-10アリール又はC5-7アリールである。なお一層好ましくは、R2及びR12は独立に、置換されてもよいフェニル、チエニル、ナフチル(napthyl)、ピリジル、キノリニル,又はイソキノリニルである。或いは、R2及びR12は、=O、=CH2、=CH-RD及び=C(RD)2から独立に選択される。好ましくは、R2及びR12は、各々=CH2であるか、又はR2及びR12は、各々Hである。或いは、R2及びR12は、各々=Oであるか、又はR2及びR12は、各々=CF2である。R2及び/又はR12はまた、独立に=C(RD)2でもあり得る。好ましくは、R2及び/又はR12は、独立に=CH-RDである。
【0259】
R
2及び/又はR
12が=CH-R
Dである場合、各基は独立に、以下に示す立体配置のいずれかを有する。
【0260】
好ましくは、=CH-RDは、立体配置(I)にある。
【0261】
R″は好ましくは、C3アルキレン基又はC5アルキレン基である。
【0262】
ADCの例示的なPBDダイマー成分は、式A(I)の構造を有する。
上式中、nは、0又は1である。
【0263】
ADCの別の例示的なPBDダイマー成分は、式A(II)の構造を有する。
上式中、nは、0又は1である。
【0264】
ADCの別の例示的なPBDダイマー成分は、式A(III)の構造を有する。
上式中、R
E及びR
E”は、H又はR
Dから各々独立に選択され、
ここでR
Dは上記のように定義され;且つ
上式中、nは0又は1である。
【0265】
好ましくは、nは、0又は1である。RE及び/又はRE”は、好ましくはHである。更に好ましくは、RE及びRE”はHである。或いは、RE及び/又はRE”はRDでもよく、ここでRDは、置換されてもよいC1-12アルキルである。好ましくは、RE及び/又はRE”はRDであり、ここでRDはメチルである。
【0266】
ADCの例示的なPBDダイマー成分は、式A(IV)の構造を有する。
上式中、Ar
1及びAr
2は各々独立に、置換されていてもよいC
5-20アリールであり;
Ar
1とAr
2は、同じでも異なっていてもよく;
nは、0又は1である。
【0267】
ADCの別の例示的なPBDダイマー成分は、式A(V)の構造を有する。
上式中、Ar
1及びAr
2は各々独立に、置換されていてもよいC
5-20アリールであり;
Ar
1とAr
2は、同じでも異なっていてもよく;
nは、0又は1である。
【0268】
好ましくは、Ar1及びAr2は、各々独立に、置換されてもよいフェニル、フラニル、チオフェニル及びピリジルから選択される。更に好ましくは、Ar1及びAr2は、各々独立に、置換されてもよいフェニルである。或いは、Ar1及びAr2は、各々独立に、置換されてもよいチエン-2-イル又はチエン-3-イルである。或いは、Ar1及びAr2は、各々独立に、置換されてもよいキノリニル又はイソキノリニルである。キノリニル又はイソキノリニル基は、任意の利用可能な環位置を介してPBDのコアに結合していてよい。キノリニルは例えば、キノリン-2-イル、キノリン-3-イル、キノリン-4-イル、キノリン-5-イル、キノリン-6-イル、キノリン-7-イル及びキノリン-8-イルである。いくつかの実施態様では、キノリニルは、キノリン-3-イル及びキノリン-6-イルから選択される。イソキノリニルは、イソキノリン-1-イル、イソキノリン-3-イル、イソキノリン-4-イル、イソキノリン-5-イル、イソキノリン-6-イル、イソキノリン-7-イル及びイソキノリン-8-イルとすることができる。好ましくは、イソキノリニルは、イソキノリン-3-イル及びイソキノリン-6-イルから選択される。
【0269】
更なる非限定的で例示的な、ADCのPBDダイマー成分は、式B:
のもの、並びにその塩及び溶媒和物であり、上式中:
波線はリンカーへの共有結合部位を示し;
OHに接続する波線は、S又はR立体配置を示し;
R
v1及びR
v2は独立に、H、メチル、エチル及びフェニル(このフェニルは、特に4位において、フルオロで置換されてもよい)、及びC
5-6ヘテロシクリルから選択され、ここでR
v1とR
v2は同じでも異なってもよく;nは、0又は1である。
好ましくはR
v1及びR
v2は独立に、H、フェニル及び4-フルオロフェニルから選択される。
【0270】
リンカーは、B環のN10のイミン、C環のC-2エンド/エクソ位、又はA環に結合するテザー単位を含む、PBDダイマー薬物部分の様々な部位の1つに結合することができる(以下の構造式C(I)及びC(II)を参照)。
【0271】
非限定的で例示的な、ADCのPBDダイマー成分は、式C(I)及びC(II)のものを含む。
ここで、式C(I)及びC(II)は、それらのN10-C11のイミン型で示されている。例示的なPBD薬物部分はまた、以下の表:
に示されるように、カルビノールアミン型及び保護されたカルビノールアミン型も含み、
上式中、
XがCH
2の場合、nは1-5であり;
XがN又はOの場合、nは1であり;
Z及びZ’は、OR及びNR
2から独立に選択され、ここでRは、1-5個の炭素原子を含有する一級、二級又は三級アルキル鎖であり;
R
1、R’
1、R
2及びR’
2は各々独立に、H、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、C
5-20アリール(置換アリールも含む)、C
5-20ヘテロアリール基、-NH
2、-NHMe、-OH及び-SHから選択され、この場合、アルキル、アルケニル及びアルキニル鎖は最大5個の炭素原子を好ましくは含み;
R
3及びR’
3は、H、OR、NHR及びNR
2から独立に選択され、ここでRは、1-5個の炭素原子を含有する一級、二級又は三級アルキル鎖であり;
R
4及びR’
4は、H、Me,及びOMeから独立に選択され;
R
5は、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、C
5-20アリール(ハロ、ニトロ、シアノ、アルコキシ、アルキル及びヘテロシクリルで置換されたアリールも含む)及びC
5-20ヘテロアリール基から選択され、いくつかの実施態様ではここで、アルキル、アルケニル及びアルキニル鎖が最大5個の炭素原子を含み;
R
11は、H、C
1-C
8アルキル又は保護基(例えばアセチル、トリフルオロアセチル、t-ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、9-フルオレニルメチレンオキシカルボニル(fluorenylmethylenoxycarbonyl)(Fmoc)、又はバリン-シトルリン-PAB)などの自壊単位(self-immolating unit)を含む部分であり;
R
12は、H、C
1-C
8アルキル又は保護基であり;
ここでR
1、R’
1、R
2、R’
2、R
5若しくはR
12のうちの1つにおける水素又はA環の間の-OCH
2CH
2(X)
nCH
2CH
2O-スペーサーにおける水素は、ADCのリンカーに連結する結合に置換される。
【0272】
例示的な、ADCのPDBダイマー部分には、限定されないが、以下が含まれる(波線は、リンカーへの共有結合部位を示す)。
【0273】
更なる非限定的で例示的な、PBDダイマーを含有するADCは、モノメチルジスルフィドN10結合PBD(monomethyl disulfide N10-linked PBD)(以下に示す)
を抗体にコンジュゲートさせ、以下のモノメチルジスルフィドN-10結合PBD抗体-薬物コンジュゲート:を製造することにより、作製され得る。
【0274】
PBDダイマー-マレイミド-アセタールのリンカーは、酸不安定性である。
【0275】
PBDダイマー及びPBDダイマーを含むADCは、当該技術分野で既知の方法に従って調製され得る。例えば、国際公開第2009/016516号;米国特許出願公開第2009/304710号;同第2010/047257号;同第2009/036431号;同第2011/0256157号;国際公開第2011/130598号を参照されたい。
【0276】
c,アントラサイクリン
いくつかの実施態様では、ADCはアントラサイクリンを含む。アントラサイクリンは、細胞傷害活性を呈する抗生物質化合物である。いかなる特定の理論にも束縛されることを意図するものではないが、研究により、アントラサイクリンが複数の異なるメカニズムにより細胞を死滅させるように作用するかもしれないことが示されており、このようなメカニズムには以下が含まれる。
1)薬物分子の、細胞のDNAへのインターカレーション、それによるDNA依存性核酸合成の阻害
2)細胞の巨大分子と反応して細胞に損傷を与えるフリーラジカル薬物による産生;及び/又は
3)薬物分子と細胞膜との相互作用(例:C. Peterson et al., 「Transport And Storage Of Anthracycline In Experimental Systems And Human Leukemia」 in Anthracycline Antibiotics In Cancer Therapy; N.R. Bachur, “Free Radical Damage” id. at pp.97-102参照)。
【0277】
アントラサイクリンは、その細胞傷害能力により、白血病、乳がん、肺がん、卵巣腺がん及び肉腫等、複数のがんの治療に使用されてきた (例えばP.H- Wiernik, in Anthracycline: Current Status And New Developments p 11参照)。
【0278】
非限定的で例示的なアントラサイクリンには、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノマイシン、ネモルビシン及びこれらの誘導体が含まれる。ダウノルビシン及びドキソルビシンのイムノコンジュゲート及びプロドラッグが調製され、研究されている(Kratz et al (2006) Current Med. Chem. 13:477-523; Jeffrey et al (2006) Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362; Torgov et al (2005) Bioconj. Chem. 16:717-721; Nagy et al (2000) Proc. Natl. Acad. Sei. USA 97:829-834; Dubowchik et al (2002) Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532; King et al (2002) J. Med. Chem. 45:4336-4343; EP 0 328 147; US 6,630,579)。抗体-薬物コンジュゲートのBR96-ドキソルビシンは、腫瘍関連抗原ルイスYと特異的に反応するものであり、第I及びII相試験において評価されている(Saleh et al (2000) J. Clin. Oncology 18:2282-2292; Ajani et al (2000) Cancer Jour. 6:78-81; Tolcher et al (1999) J. Clin. Oncology 17:478-484)。
【0279】
PNU-159682は、ネモルビシンの強力な代謝産物(又は誘導体)である(Quintieri, et al. (2005) Clinical Cancer Research 11(4):1608-1617)。ネモルビシンは、ドキソルビシンのグリコシドアミノ上に2-メトキシモルホリノ基を有する、ドキソルビシンの半合成アナログであり、臨床評価段階にあるもので(Grandi et al (1990) Cancer Treat. Rev. 17:133; Ripamonti et al (1992) Brit. J. Cancer 65:703)あり、この臨床評価には、肝細胞がんの第II/III相試験が含まれている(Sun et al (2003) Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 22, Abs 1448; Quintieri (2003) Proceedings of the American Association of Cancer Research, 44: Ist Ed, Abs 4649; Pacciarini et al (2006) Jour. Clin. Oncology 24: 14116)。
【0280】
ネモルビシン又はネモルビシン誘導体を含む、非限定的で例示的なADCは、式Ib:
に示され、
上式中、R
1は、水素原子、ヒドロキシ又はメトキシ基であり;
R
2は、C
1-C
5アルコキシ基、
又は薬学的に許容されるその塩であり;
R
1及びR
2は共に、メトキシ(-OMe)である。
【0281】
L1及びZは共に、本明細書に記載のリンカー(L)である。
Tは、本明細書に記載の抗体(Ab)であり;
mは、1-約20であり、好ましくはmは、1-10、1-7、1-5又は1-4である。
【0282】
ネモルビシン又はネモルビシン誘導体を含む更なる非限定的で例示的なADCは、式Ib:
に示され、
上式中、R
1は、水素原子、ヒドロキシ又はメトキシ基であり;
R
2は、C
1-C
5アルコキシ基、又は
薬学的に許容されるその塩であり;
L
2及びZは共に、本明細書に記載のリンカー(L)であり;
Tは、本明細書に記載の抗体(Ab)であり;
mは、1-約20であり、好ましくはmは、1-10、1-7、1-5又は1-4である。
R
1及びR
2は共に、メトキシ(-OMe)である。
【0283】
ネモルビシン含有ADCのネモルビシン成分は、PNU-159682である。このような場合には、ADCの薬物部分は、以下の構造:
のうちの1つを有し、式中、波線はリンカー(L)への結合を示す。
【0284】
PNU-159682を含めたアントラサイクリンは、複数の結合部位と本明細書に記載のリンカーを含めた様々なリンカー(米国特許出願公開第2011/0076287号;国際公開第2009/099741号;米国特許出願公開第2010/0034837号;国際公開第2010/009124号)を介して抗体にコンジュゲートすることができる。
【0285】
ネモルビシンを含む例示的なADC及びリンカーには、限定されないが:
PNU-159682-マレイミドアセタールAb
及び
PNU-159682-マレイミド-Ab
が含まれる。
【0286】
PNU-159682マレイミドアセタール-Abのリンカーは、酸不安定性である。
【0287】
(6)その他の薬物部分
薬物部分はまた、ゲルダナマイシン(Mandler et al (2000) J. Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581; Mandler et al (2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028; Mandler et al (2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791);及び酵素活性毒素及びその断片を含み、これには、限定されないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII及びPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポンソウ(sapaonaria oficinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトギリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。例えば、国際公開第93/21232号を参照のこと。
【0288】
薬物部分は、核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ)も含む。
【0289】
イムノコンジュゲートは、放射性原子を含み得る。放射性コンジュゲート抗体の製造のために、種々の放射性同位体が利用される。
例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体がある。いくつかの実施態様において、イムノコンジュゲートは、検出用に使用される場合、シンチグラフ検査のための放射性原子、例えばTc99若しくはI123、又は核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、MRIとしても知られている)のためのスピン標識、例えばジルコニウム89、ヨウ素123、ヨウ素131、インジウム111、フッ素19、炭素13、窒素15、酸素17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含んでもよい。ジルコニウム89は、例えばPET画像法のために、様々な金属キレート剤と複合化し、抗体にコンジュゲートすることができる(国際公開第2011/056983号)。
【0290】
放射能標識又は他の標識は、既知の方法でイムノコンジュゲートに取り込むことができる。例えばペプチドは、例えば1つ以上の水素の代わりに1つ以上のフッ素19原子を含む適切なアミノ酸前駆体を用いて、生合成又は化学合成することができる。例えばTc99、I123、Re186、Re188及びIn111等の標識を、抗体中のシステイン残基を介して結合させることができる。イットリウム90を、抗体のリジン残基を介して結合させることができる。IODOGEN法(Fraker et al (1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80 49-57)を用いて、ヨウ素123を取り込むことができる。「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal,CRC Press 1989)には、いくつかの他の方法が記載されている。
【0291】
イムノコンジュゲートは、プロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートした抗体を含み得る。プロドラッグ活性化酵素は例えば、プロドラッグ(例:ペプチジル化学療法剤、国際公開第81/01145号参照)を、抗がん薬などの活性薬物に変換することができる。このようなイムノコンジュゲートは、いくつかの実施態様では、抗体依存性酵素媒介性プロドラッグ療法(「ADEPT」)において有用である。抗体にコンジュゲートすることが可能な酵素には、限定されないが、以下が含まれる:ホスフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換させるのに有用なアルカリホスファターゼ;スルフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換させるのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性の5-フルオロシトシンを抗がん薬の5-フルオロウラシルに変換させるのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に変換させるのに有用なプロテアーゼ、例えば、セラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ、及びカテプシン(例えばカテプシンB及びL);D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグを変換させるのに有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化されたプロドラッグを遊離薬物に変換させるのに有用な炭水化物切断酵素、例えばβ-ガラクトシダーゼ及びノイラミニダーゼ;β-ラクタムで誘導体化されている薬物を遊離薬物に変換させるのに有用なβ-ラクタマーゼ;並びにアミン窒素においてフェノキシアセチル基又はフェニルアセチル基によって誘導体化されている薬剤を遊離薬物に変換させるのに有用なペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれ、ペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼ。いくつかの実施態様では、当該技術分野で周知の組換えDNA技術によって、酵素を抗体に共有結合させることができる。例えばNeubergerら,Nature 312:604-608(1984)を参照のこと。
【0292】
特定の実施態様では、イムノコンジュゲートは、プロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートした抗体を含み得る。いくつかのこのような実施態様では、プロドラッグ活性化酵素は、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公開第81/01145号参照))を抗がん薬などの活性薬物に変換する。このようなイムノコンジュゲートは、いくつかの実施態様では、抗体依存性酵素媒介性プロドラッグ療法(「ADEPT」)において有用である。抗体にコンジュゲートし得る酵素には、限定されないが、以下が含まれる:ホスフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換させるのに有用なアルカリホスファターゼ;スルフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換させるのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性の5-フルオロシトシンを抗がん薬の5-フルオロウラシルに変換させるのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に変換させるのに有用なプロテアーゼ、例えば、セラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ、及びカテプシン(例えばカテプシンB及びL);D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグを変換させるのに有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化されたプロドラッグを遊離薬物に変換させるのに有用な炭水化物切断酵素、例えばβ-ガラクトシダーゼ及びノイラミニダーゼ;β-ラクタムによって誘導体化された薬物を遊離薬物に変換させるのに有用なβ-ラクタマーゼ;並びにアミン窒素においてフェノキシアセチル基又はフェニルアセチル基によって誘導体化された薬剤を遊離薬物に変換させるのに有用なペニシリンアミダーゼ、例えば、それぞれペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼ。いくつかの実施態様では、当該技術分野で周知の組換えDNA技術によって、酵素を抗体に共有結合させることができる。例えば、Neubergerら,Nature 312:604-608(1984)を参照のこと。
【0293】
薬物負荷は、式Iの分子における1抗体当たりの薬物部分の平均数であるpにより表される。薬物負荷は、1抗体当たり1-20の範囲の薬物部分(D)である。式IのADCは、1-20の範囲の薬物部分とコンジュゲートした抗体の集合を含む。コンジュゲーション反応からのADCの調製における1抗体当たりの薬物部分の平均数は、質量分析、ELISAアッセイ及びHPLC等の一般的な手段により特徴づけることができる。また、pを単位としてADCの定量的分布が決定され得る。場合によっては、均質ADC(pが一定値である)の、他の薬物負荷を有するADCからの分離、精製及び特徴づけは、逆相HPLC又は電気泳動などの手段により達成され得る。
【0294】
いくつかの抗体-薬物コンジュゲートについては、pは抗体上の結合部位の数によって制限され得る。例えば、上記特定の例示的実施態様にあるように、結合がシステインチオールである場合、抗体は、1つのみ若しくは複数のシステインチオール基を有してもよく、又は1つのみ若しくは複数の十分に反応性のチオール基であって、それを介してリンカーが結合し得る反応性チオール基を有してもよい。特定の実施態様では、より高い薬物負荷、例えばp>5は、特定の抗体-薬物コンジュゲートの凝集、不溶化、毒性、又は細胞透過性の喪失を引き起こすことがある。特定の実施態様では、ADCの平均薬物負荷は、1-約8、約2-約6、又は約3-約5の範囲である。実際、特定のADCについて、1抗体当たりの薬物部分の最適な比は8未満であってもよく、約2-約5であってもよいことが示されている(米国特許第7498298号)。
【0295】
特定の実施態様では、理論的最大値を下回る薬物部分が、コンジュゲーション反応中に抗体にコンジュゲートする。後述するように、抗体は例えば、薬物-リンカー中間体又はリンカー試薬と反応しないリジン残基を含有してもよい。通常、抗体は、薬物部分に結合し得る、反応性の遊離システインチオール基を多くは含まず、実際、抗体中の大部分のシステインチオール残基はジスルフィド架橋として存在する。特定の実施態様では、抗体は、部分的又は完全還元条件下で、ジチオスレイトール(DTT)又はトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤により還元されて、反応性システインチオール基を生成し得る。特定の実施態様では、抗体は、リジン又はシステインといった反応性求核基を明らかにするために、変性条件にさらされる。
【0296】
ADCの負荷(薬物/抗体比)は、異なる方法、例えば(i)抗体に対して過剰モルの薬物-リンカー中間体又はリンカー試薬を制限すること、(ii)コンジュゲーション反応時間又は温度を制限すること、及び(iii)システインチオール修飾のための部分的又は限定的還元条件によって制御することができる。
【0297】
複数の求核基が薬物-リンカー中間体又はリンカー試薬と反応する場合、結果として得られる生成物は、抗体に結合した1つ以上の薬物部分の分布を有するADC化合物の混合物であることを理解されたい。1抗体当たりの薬物の平均数は、この混合物から、抗体に特異的であって、且つ、薬物に特異的である二重ELISA抗体アッセイによって計算することができる。個々のADC分子は混合物において質量分析で同定し、HPLC、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィーによって分離することができる(例えばMcDonagh et al (2006) Prot. Engr. Design & Selection 19(7):299-307; Hamblett et al (2004) Clin. Cancer Res. 10:7063-7070; Hamblett, K.J., et al. 「Effect of drug loading on the pharmacology, pharmacokinetics, and toxicity of an anti-CD30 antibody-drug conjugate」, Abstract No. 624, American Association for Cancer Research, 2004 Annual Meeting, March 27-31, 2004, Proceedings of the AACR, Volume 45, March 2004; Alley, S.C., et al. 「Controlling the location of drug attachment in antibody-drug conjugates」, Abstract No. 627, American Association for Cancer Research, 2004 Annual Meeting, March 27-31, 2004, Proceedings of the AACR, Volume 45, March 2004参照)。特定の実施態様では、単一の負荷値を有する均質ADCは、電気泳動又はクロマトグラフィーによってコンジュゲート混合物から単離され得る。
【0298】
式IのADCは、(1)共有結合を介し、抗体の求核基を二価性リンカー試薬と反応させてAb-Lを形成し、続いて薬物部分Dと反応させる;(2)共有結合を介し、薬物部分の求核基を二価性リンカー試薬と反応させてD-Lを形成し、続いて抗体の求核基と反応させることを含む、当業者に既知の有機化学反応、条件、及び試薬を用いる複数の経路により調製することができる。
【0299】
抗体上の求核基は、(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基、例えばリシン、(iii)側鎖チオール基、例えばシステイン、及び(iv)抗体がグリコシル化される糖のヒドロキシル基又はアミノ基を含むがこれらに限定されない。アミン、チオール及びヒドロキシル基は求核性であり、(i)NHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート及び酸ハロゲン化物などの活性エステル、(ii)アルキル及びベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド;並びに(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基を含む、リンカー部分及びリンカー試薬上の求電子基と反応して共有結合を形成することができる。特定の抗体は、還元可能な鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体は、完全に又は部分的に還元されるように、DTT(ジチオスレイトール)又はトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤を用いる処理によって、リンカー試薬とのコンジュゲーションに対して反応性にさせることができる。したがって、各システイン架橋は、理論的には2の反応性チオール求核試薬を形成する。リジン残基の改変、例えば、リジン残基と2-イミノチオラン(Trautの試薬)との反応によって、追加的な求核基を抗体内に導入することができ、その結果、アミンがチオールに変換される。また、反応性チオール基も、1、2、3、4又はそれ以上のシステイン残基を導入することによって(例えば1以上の非天然システインアミノ酸残基を含むバリアント抗体を調製することによって)、抗体内に導入することができる。
【0300】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、アルデヒド又はケトンカルボニル基などの抗体上の求電子基と、リンカー試薬又は薬物上の求核基との間の反応によっても生成され得る。リンカー試薬上の有用な求核基には、限定されないが、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート及びアリールヒドラジドが含まれる。一実施態様では、抗体は、リンカー試薬又は薬物上の求核置換基と反応することができる求電子部分を導入するために改変される。別の実施態様では、グリコシル化された抗体の糖は、例えば過ヨウ素酸酸化剤で酸化させ、リンカー試薬又は薬物部分のアミン基と反応し得るアルデヒド又はケトン基を形成させることができる。得られたイミンシッフ塩基群は、安定な結合を形成するか、又は、例えば水素化ホウ素試薬により還元され、安定なアミン結合を形成することもある。一実施態様では、グリコシル化抗体の炭水化物部分とガラクトースオキシダーゼ又はメタ過ヨウ素酸ナトリウムとの反応により、薬物上の適切な基と反応することができる抗体中にカルボニル(アルデヒド及びケトン)基が生じる(Hermanson,Bioconjugate Techniques)。別の実施態様では、N末端セリン又はスレオニン残基を含有する抗体は、メタ過ヨウ素酸ナトリウムと反応して、第1のアミノ酸の代わりにアルデヒドを生成することができる(Geoghegan & Stroh, (1992) Bioconjugate Chem. 3:138-146;米国特許第5362852号)。このようなアルデヒドは、薬物部分又はリンカー求核試薬と反応させることができる。
【0301】
薬物部分上の例示的求核基は、(i)NHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート及び酸ハロゲン化物等の活性エステル;(ii)アルキル及びベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基を含む、リンカー部分及びリンカー試薬上の求電子基と反応して共有結合を形成することができる、アミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート及びアリールヒドラジド基を含むがこれらに限定されない。
【0302】
ADCを調製するために使用される非限定的且つ例示的な架橋試薬は、本明細書の「例示的リンカー」の項に記載されている。このような架橋試薬を使用して、タンパク質性部分と化学的部分とを含む2つの部分を結合させ方法は、当該技術分野で既知である。いくつかの実施態様では、抗体と細胞傷害性剤とを含む融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製することができる。組換えDNA分子は、抗体をコードする領域と、互いに隣接しているか又はコンジュゲートの所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により分離されているコンジュゲートの細胞傷害性部分とを含み得る。
【0303】
また別の実施態様では、腫瘍の事前標的化に利用するための「受容体」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートすることができ、この場合抗体-受容体コンジュゲートが患者に投与され、続いて清澄剤を使用して循環から未結合コンジュゲートを取り除き、その後細胞傷害性剤(例:薬物又は放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートしている「リガンド」(例:アビジン)の投与が行われる。
【0304】
特定の実施態様では、本明細書において提供される抗GP73抗体のいずれもが、生物学的試料中のGP73の存在を検出するために有用である。本明細書で使用する「検出(する)」という用語は、定量的又は定性的検出を包含する。「生物学的試料」には、例えば、細胞又は組織(例えば、リンパ球、リンパ芽球、単球、骨髄性単球、及びこれらの混合物といった、がん性又はがん性の可能性があるリンパ組織を含む生検材料)が含まれる。
【0305】
一実施態様では、診断又は検出の方法における使用のための抗GP73抗体が提供される。更なる態様では、生物学的試料中のGP73の存在を検出する方法が提供される。特定の実施態様では、該方法は、抗GP73抗体のGP73への結合を許容する条件下で、生物学的試料を本明細書に記載の抗GP73抗体と接触させることと、生物学的試料中に抗GP73抗体とGP73との複合体が形成されているかどうかを検出することとを含む。そのような方法は、in vitro法又はin vivo法であり得る。一実施態様では、抗GP73抗体は、抗GP73抗体を用いる療法に適した対象を選択するために使用され、例えばGP73は患者の選択のためのバイオマーカーである。更なる実施態様では、生物学的試料は細胞又は組織である。
【0306】
更なる実施態様では、例えばがんの診断、予後判定若しくは進行度診断、適切な治療過程の決定、又は治療法に対するがんの応答のモニタリングのために、抗GP73抗体をin vivoで(例えば生体イメージングにより)使用して、対象におけるGP73陽性がんを検出する。当該技術分野で既知のin vivoでの検出のための1つの方法は、免疫陽電子放出断層撮影(免疫PET)であり、これは例えば、van Dongenら,The Oncologist 12:1379-1389(2007)及びVerelら,J.Nucl.Med.44:1271-1281(2003)に記載されている。このような実施態様では、方法は、対象におけるCD33陽性がんの検出のために提供され、この方法は、標識抗GP73抗体を、GP73陽性がんを有する又は有すると疑われる対象に投与すること、及び対象において標識抗CD33抗体を検出することを含み、標識抗GP73抗体の検出は、対象におけるGP73陽性がんを示す。このような実施態様のいくつかにおいて、標識抗GP73抗体は、68Ga、18F、64Cu、86Y、76Br、89Zr及び124I等の陽電子放射体にコンジュゲートした抗GP73抗体を含む。
【0307】
更なる実施態様では、診断又は検出の方法は、基質に固定化されている第1の抗GP73抗体を生物学的試料と接触させて、GP73の存在について試験すること、この基質を第2の抗GP73抗体に曝露すること、及び第2の抗GP73が生物学的試料中の第1の抗GP73抗体とGP73との複合体に結合したかどうかを検出することを含む。基質は、任意の支持媒体、例えばガラス、金属、セラミック、ポリマービーズ、スライド、チップ、及びその他の基質とすることができる。特定の実施態様では、生物学的試料は、細胞又は組織を含む。特定の実施態様では、第1の又は第2の抗GP73抗体は、本明細書に記載される抗体のいずれかである。
【0308】
上記実施態様のいずれかによって診断又は検出得る例示的な障害には、限定されないが、GP73陽性肝がん、GP73陽性肝細胞がん、GP73陽性胃がん、GP73陽性食道がん、GP73陽性膵臓がん、GP73陽性肺がん、GP73陽性結腸がん、GP73陽性乳がん、GP73陽性前立腺がん、GP73陽性白血病及びGP73陽性リンパ腫等のGP73陽性がんが含まれる。いくつかの実施態様では、GPC陽性がんは、肝がんである。いくつかの実施態様では、GPC陽性がんは、肝細胞がんである。いくつかの実施態様では、GP73陽性がんは、「0」より大きい抗GP73免疫組織化学(IHC)又はin situハイブリダイゼーション(ISH)スコアを与えられるがんであり、この「0」のスコアは、>90%の腫瘍細胞における非常に弱い染色又は無染色に該当する。別の実施態様では、GP73陽性がんは、1+、2+又は3+のレベルでGP73を発現する。いくつかの実施態様において、GP73陽性がんは、GP73 mRNAを検出する逆転写酵素PCR(RT-PCR)アッセイに従って、GP73を発現するiがんである。いくつかの実施態様では、RT-PCRは定量的RT-PCRである。
【0309】
特定の実施態様では、標識された抗GP73抗体が提供される。標識は、限定されるものではないが、直接検出される標識又は部分(例えば蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識及び放射性標識等)及び、例えば酵素反応又は分子間相互作用を介して間接的に検出される部分(例えば酵素又はリガンド)が含まれる。
例示的な標識は、限定されるものではないが、放射性同位体32P、14C、125I、3H及び131I;フルオロフォア、例えば希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体;ダンシル;ウンベリフェロン;ルシフェラーゼ、例えばホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4737456号);ルシフェリン;2,3-ジヒドロフタラジンジオン;ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP);アルカリホスファターゼ;β-ガラクトシダーゼ;グルコアミラーゼ;リゾチーム;糖質酸化酵素、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ;過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化する酵素(例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ又はミクロペルオキシダーゼ)に結合している複素環式オキシダーゼ、例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ;ビオチン/アビジン;スピン標識;バクテリオファージ標識;安定なフリーラジカル等を含む。別の実施態様では、標識は陽電子放射体である。陽電子放射体には、限定されないが、68Ga、18F、64Cu、86Y、76Br、89Zr及び124Iが含まれる。特定の一実施態様では、陽電子放射体は89Zrである。
【0310】
本明細書に記載の抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートの薬学的製剤は、所望の純度を有する当該抗体又はイムノコンジュゲートを、1つ以上の任意選択の薬学的に許容される担体と混合することによって(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態に調製される。通常、薬学的に許容される担体は、用いられる用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、限定されるものではないが、以下を含む:リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えばオクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及びその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤。本明細書における薬学的に許容される例示的担体は、介在性(insterstitial)薬物分散剤、例えば、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質を更に含む。特定の例示的なsHASEGP及び使用法は、rHuPH20を含み、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1以上の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0311】
例示的な凍結乾燥抗体製剤又はイムノコンジュゲート製剤は、米国特許第6267958号に記載されている。水性抗体製剤又は水性イムノコンジュゲート製剤は、米国特許第6171586号及び国際公開第2006/044908号に記載されているものを含み、後者の製剤はヒスチジン-酢酸バッファーを含む。
【0312】
本明細書中の製剤はまた、治療される特定の適応症に必要な、複数の活性成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものを含有してもよい。
【0313】
活性成分は、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルション中で、例えばコアセルベーション法又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセルに封入することができる。これらの技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版,Osol,A.編.(1980)に開示されている。
【0314】
徐放性調製物が調製されてもよい。徐放性調製物の適切な例は、抗体又はイムノコンジュゲートを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、このマトリックスは、成形品の形態、例えばフィルム又はマイクロカプセルである。in vivo投与のために使用される製剤は、一般に無菌である。無菌状態は、例えば無菌濾過膜に通す濾過により、容易に達成することができる。
【0315】
本明細書で提供される抗原結合分子、抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートのいずれもが、方法、例えば治療方法において使用され得る。
【0316】
一態様では、本明細書に提供される抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートは、GP73陽性細胞の増殖を阻害する方法において使用され、この方法は、細胞の表面のGP73への抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートの結合を許容する条件下で、細胞を抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートに曝露し、それにより細胞の増殖を阻害することを含む。特定の実施態様では、方法は、in vitro又はin vivo法である。更なる実施態様では、細胞は、顆粒球又は骨髄芽球である。
【0317】
in vitroでの細胞増殖の阻害は、Promega(ウィスコンシン州マディソン)より市販されているCellTiter-GloTM Luminescent Cell Viability Assayを用いてアッセイすることができる。そのアッセイは、代謝的に活性な細胞の指標である存在するATPの定量化に基づいて、培養物中の生細胞の数を決定する。Crouchら(1993)J.Immunol.Meth.160:81-88,米国特許第6602677号参照。このアッセイは96ウェル又は384ウェルフォーマットで実施され、自動ハイスループットスクリーニング(HTS)に適したものにされる。Creeら(1995)AntiCancer Drugs 6:398-404参照。
【0318】
アッセイ手順は、単一の試薬(CellTiter-Glo(登録商標)試薬)を培養細胞に直接添加することを伴う。これにより細胞溶解が起こり、ルシフェラーゼ反応により生じる発光シグナルが生成される。発光シグナルは存在するATPの量に比例し、これは培養物中に存在する生細胞の数に正比例する。データは、ルミノメーター又はCCDカメラ撮像装置により記録することができる。発光出力は、相対発光量(RLU)として表わされる。
【0319】
別の態様では、医薬としての使用のための抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートが提供される。更なる態様では、治療方法における使用のための抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートが提供される。特定の実施態様では、GP73陽性がんの治療における使用のための抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートが提供される。特定の実施態様では、本発明は、GP73陽性がんを有する個体の治療方法における使用のための抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートを提供し、この方法は、有効量の抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートを個体に投与することを含む。そのような一実施態様において、該方法は、少なくとも1種の追加の治療剤、例えば下記に記載のものの有効量を該個体に投与することを更に含む。
【0320】
更なる態様において、本発明は、医薬の製造又は調製における抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートの使用を提供する。一実施態様では、医薬は、GP73陽性がんの治療のためのものである。更なる実施態様では、医薬は、GP73陽性がんを治療する方法における使用のためのものであり、この方法は、GP73陽性がんを有する個体に有効量の該医薬を投与することを含む。そのような一実施態様において、該方法は、少なくとも1種の追加の治療剤(例えば下記に記載のもの)の有効量を該個体に投与することを更に含む。
【0321】
更なる態様では、本発明は、GP73陽性がんを治療するための方法を提供する。一実施態様では、方法は、このようなGP73陽性がんを有する個体に対し、有効量の抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートを投与することを含む。このような一実施態様では、該方法は、後述するような少なくとも1種の追加の治療剤の有効量を該個体に投与することを更に含む。
【0322】
上記実施態様によるGP73陽性がんは、例えばGP73陽性肝がん、GP73陽性肝細胞がん、GP73陽性膵臓がん、GP73陽性肺がん、GP73陽性結腸がん、GP73陽性乳がん、GP73陽性前立腺がん、GP73陽性白血病又はGP73陽性リンパ腫である。いくつかの実施態様では、GP73陽性がんは、「0」より大きい抗GP73免疫組織化学(IHC)又はin situハイブリダイゼーション(ISH)スコアを与えられるがんであり、この「0」のスコアは、>90%の腫瘍細胞における非常に弱い染色又は無染色に該当する。別の実施態様では、GP73陽性がんは、1+、2+又は3+のレベルでGP73を発現する。
【0323】
上記実施態様に記載の「個体」は、ヒトであってよい。
【0324】
更なる態様では、本発明は、例えば、上記治療方法おける使用のための、本明細書で提供される抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートを含む薬学的製剤を提供する。一実施態様では、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートと薬学的に許容される担体とを含む。別の実施態様では、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗GP73抗体又はイムノコンジュゲートと、例えば後述のような少なくとも1種の追加の治療剤とを含む。
【0325】
本発明の抗体又はイムノコンジュゲートは、治療において、単独で、又は他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の抗体又はイムノコンジュゲートは少なくとも1種の追加的な治療剤と同時投与され得る。
【0326】
上記のかかる併用療法は、併用投与(2種以上の治療剤が同一又は別々の製剤に含まれている)と、本発明の抗体又はイムノコンジュゲートの投与が追加の治療剤及び/又はアジュバントの投与前、投与と同時及び/又は投与後に起き得る分離投与とを包含する。本発明の抗体又はイムノコンジュゲートは、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
【0327】
本発明の抗体又はイムノコンジュゲート(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内及び鼻腔内、また、局所治療のために望ましい場合は、病巣内、子宮内又は膀胱内投与を含む任意の適切な手段により投与され得る。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与が含まれる。投薬は、その投与が短期間か又は長期であるかどうかに部分的に依存し、任意の適切な経路、例えば静脈内又は皮下注射などの注射によるものであってよい。限定されないが、様々な時点にわたる、単回又は複数回投与、ボーラス投与及びパルス注入を含めた様々な投薬計画が本明細書において考慮される。
【0328】
本発明の抗体又はイムノコンジュゲートは、医療実施基準(good medical practice)に合致するように製剤化、調薬及び投与される。これに関連して考慮すべき因子は、治療中の特定の障害、治療中の特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与計画、及び医療従事者に既知の他の因子を含む。本発明の抗体又はイムノコンジュゲートは、必ずしも必須ではないが任意選択的に、当該障害を予防j又は治療するのに目下使用されている1種以上の薬剤と共に製剤化される。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体又はイムノコンジュゲートの量、障害又は治療の種類、及び上で論じた因子以外の因子によって決まる。これらは一般的には、本明細書に記載されているのと同じ投薬量及び投与経路で、又は本明細書に記載されている用量の約1%から99%で、又は経験的に/臨床的に妥当であると決定された任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0329】
疾患の予防又は治療のための、本発明の抗体又はイムノコンジュゲートの適切な用量は(単独で、又は1種以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用されるとき)、治療される疾患の種類、抗体又はイムノコンジュゲートの種類、疾患の重症度及び経過、抗体又はイムノコンジュゲートが予防目的で又は治療目的で投与されるのか、治療歴、患者の病歴及び抗体又はイムノコンジュゲートに対する応答、並びに主治医の判断に依拠するであろう。抗体又はイムノコンジュゲートは、単回で、又は一連の治療にわたって適切に患者に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば1回以上の別個の投与によるか、連続注入によるかに関わらず、約1μg/kg-15mg/kg(例えば0.1mg/kg-10mg/kg)の抗体又はイムノコンジュゲートが患者への投与のための初期候補用量となり得る。一つの典型的な1日用量は、上記因子に応じて約1μg/kg-100mg/kg以上の範囲だろう。数日以上にわたる反復投与に関しては、治療は状態に応じて通常、症状の望まれる抑制が起こるまで持続されるであろう。抗体又はイムノコンジュゲートの1つの例示的な用量は、約0.05mg/kg-約10mg/kgであろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kgの1つ以上の用量(又はこれらの任意の組み合わせ)を患者に投与してよい。このような用量は、断続的に、例えば毎週又は3週毎(例えば患者が抗体の約2から約20、例えば約6用量を受けるように)投与してよい。初期の高負荷用量の後、1以上の低用量を投与してよい。しかしながら、他の用量レジメンも有用であり得る。本療法の進捗は、一般的な手法及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0330】
上記製剤又は治療方法のいずれもが、本発明のイムノコンジュゲートと抗GP73抗体の両方を使用して実施できると理解される。
【0331】
本発明の別の態様では、上述した障害の治療、予防及び/又は診断に有用な物質を含有する製造品が提供される。製造品は、容器と、容器に貼られているか又は容器に付随するラベル又は添付文書とを含む。好適な容器は、例えばビン、バイアル、シリンジ、IV輸液バッグ等を含む。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、障害の治療、予防、及び/又は診断に有効な、単独の又は別の組成物と併用される組成物を保持し、無菌のアクセスポートを有することができる(例えば、容器は皮下注射針により穿孔可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1種の活性剤は、本発明の抗体又はイムノコンジュゲートである。ラベル又は添付文書は、組成物が選択された状態の治療のために使用されることを示している。
更に製造品は、(a)本発明の抗体又はイムノコンジュゲートを含む組成物を中に収容する第1の容器;及び(b)更なる細胞傷害性剤又はその他の治療剤含む組成物を中に収容する第2の容器を備えていてもよい。本発明のこの実施態様における製造品は、特定の状態を治療するために組成物が使用され得ることを示す添付文書を更に備えていてもよい。代わりに又は更に、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液又はデキストロース溶液を含む第2(又は第3)の容器を更に備えていてもよい。それは、他のバッファー、希釈液、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及び使用者の観点から望まれる他の物質を更に含んでもよい。
【実施例】
【0332】
以下は、本発明の方法及び組成物の実施例である。上に提供された一般的な説明を前提として、他の様々な実施態様が実施され得ることが理解される。
【0333】
実施例1:モノクローナル抗体の生成
GP73細胞外ドメイン抗体検出及び特徴づけ
以下の手順を用いて、2つのヒトscFVライブラリー(Creative Biolabs)を、短い残りのヒトGP73細胞外ドメインを包含するペプチド(rGP73、配列番号1 AA 36-55)でスクリーニングすることによって、ヒトGP73に対するモノクローナル抗体を生成した。4回のパンニングを実施し、41種のバインダーをELISAで試験し、6種を検証し、配列決定した。2種の完全scFvクローンを同定し、(i)G2-2及びG2-1のヒトIgG1重鎖及びヒトIgk軽鎖定常領域と共に、並びに(ii)mG2-2のマウスIgG2a重鎖及びヒトIgk軽鎖定常領域と共にクローニングした。抗体G2-2の重鎖及び軽鎖可変領域配列は、それぞれ配列番号2及び3に示される。抗体G2-1の重鎖及び軽鎖可変領域配列は、それぞれ配列番号10及び11に示される。ヒト重鎖定常領域(IgG1)は、配列番号26に示され、ヒトカッパ軽鎖配列は、配列番号27に示される。マウス重鎖定常領域(IgG2a)は、配列番号28に示される。
【0334】
B.GP73可溶性断片抗体検出及び特徴づけ
以下の手順を用いて、ヒトGP73のAA 347-366を含むペプチド(配列番号1)で2頭のBalb/cマウスを免疫することによって、ヒトGP73に対するモノクローナル抗体を生成した。融合後、6つのハイブリドーマが、ペプチド347-366に結合する抗体を発現した。3つの抗体を配列決定し、抗体製造のために培養し続けた。
【0335】
陽性のクローンを増やし、ELISA及びFACSにより、ヒトGP73、Hep3B細胞、HepG2細胞及びHuH 7細胞への結合について再度スクリーニングした。1つの抗体、G2-4を選択し、精製した。抗体G2-4の重鎖及び軽鎖可変領域配列は、それぞれ配列番号18及び19に示される。
【0336】
更に大規模な抗体製造のために、CHO及び293HEK細胞中で抗体を生成した。VL及びVHをコードするベクターを、CHO細胞中にトランスフェクトし、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによりIgGを細胞培養培地から精製した。
【0337】
実施例2:免疫蛍光分析
Alexander細胞を4つのチャンバースライド上で増殖させ、4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.2%サポニンで処理し、10%ウシ血清アルブミンでブロックした。細胞をヤギ抗GP73(サンタクルスsc-48010)及びmG2-2と共に1時間インキュベートし、洗浄した。結合抗体を抗ヤギAlexa Fluor 488(abcam ab150129)及び抗マウスAlexa Fluor 647(abcam ab150115)で染色した。核をDAPIで処理した。
【0338】
実施例3:各種腫瘍の免疫組織化学分析
正常肝、肝炎肝、肝細胞がん(HCC)、子宮内膜がん、卵巣がん、黒色腫、小細胞肺がん及び胃がんのパラフィン包埋組織をマウスG2-2(mG2-2)又はマウス抗GOLPH(MO6A Sigma)で染色し、続いて抗マウスIgGで二次染色した。核をヘマトキシリン(青)で染色し、細胞質をヘマラム-エオシンで染色した。
【0339】
実施例4:抗GOLPH抗体G2-2、G2-1及びコントロールを用いた各種細胞株のフローサイトメトリー
異なるヒト及びマウス細胞株、例えばHuH7、JHH4、HEK293、HEK293-GP73-myc及びRamosを、それらの細胞表面でのGP73の発現並びに、G2-2、G2-1及びG2-4の結合についてフローサイトメトリー分析により試験した。細胞を培養し、ペレットにし、PFA4%で固定し、mG2-2、mG2-1、G2-4、抗myc又は抗CD19IgG(BD HIB19)と共にインキュベートし、洗浄し、二次蛍光抗マウス抗体(Alexa Fluor 488)で染色した。
【0340】
実施例5: 競合及びpH依存性ペプチドELISA
一晩ビオチン化ペプチドでコーティングした96ウェルプレート中でELISAを実施し、2%ゼラチンでブロックした。ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ標識化抗体G2-1(G2-1-HRP)又はG2-2(G2-2-HRP)を塗布し、1,5時間インキュベートした。競合試験のために、非標識G2-1又はG2-2を高濃度で添加した。pH依存的結合のために、リン酸バッファーpH4.4、5.4、6.4又は7.4中で抗体を用いた。十分に洗浄した後、発色基質(TMB Amersham)を加えてペルオキシダーゼを検出した。反応を停止させ、吸光度を450nmで読み取った。
【0341】
実施例6:G2-2の内部移行
細胞株DU145(前立腺がん)及びHep55.1C(肝細胞がん)を、抗体G2-2及びG2-1を内部移行する能力について試験した。細胞を、10μg/mlのG2-2又はG2-1と共にPBS中4℃で1時間インキュベートした。未結合G2-2を洗い流し、細胞を、10%FCSを含む組織培養培地に移し、その後37℃に温めて内部移行させるか、4℃で維持した。15、30、60又は120分後に、細胞を0.1%アジ化ナトリウム(sodium acide)を含む氷冷バッファーに移すことにより、内部移行プロセスを停止させた。細胞を、APCコンジュゲートヤギ抗ヒトFab(Jackson Immuno)で染色し、FACSで分析した。細胞表面G2-2の残存レベルを平均蛍光強度(MFI)に基づいて計算した。15分後、G2-2及びG2-1の細胞表面検出は、HuH7では30%に、DU145では10%未満に減少した。
【0342】
C末端GP73結合抗体、例えばG2-4が結合を阻害される条件下でG2-2及びG2-1がGP73に結合し、内部移行されることを実証するために、抗体をGreen STP Ester(Thermofisher)で標識した。この色素は、中性pHでは非蛍光性であるが、例えばエンドソーム中のように、pHがより酸性になるにつれて蛍光が増す。標識化抗体をサイズ排除(40K MWCO)により精製した。バックグラウンド蛍光のコントロールとして、pHrodo(登録商標)Green STP Ester(Iso.)で標識されていない非結合アイソタイプ抗体を使用した。10μg/mlの各抗体を新鮮な培地又は条件培地のいずれかで、4℃で一晩プレインキュベートした。条件培地として、72時間培養したHEK 293又はHEK 293 GP73-myc細胞のいずれかからの上清を供給し、それをそれぞれ1Lの新鮮培地に対して透析した(10k MWCO)。透析後の分泌された可溶性GP73の存在を確認するために、抗myc抗体を用いてウェスタンブロットにより上清を分析した。300μl/ウェルの各プレインキュベートした抗体を、24ウェルプレート中で37℃、5%CO2で24時間増殖している0.6x106HuH7細胞に与えた。細胞を洗浄し、FACSで分析した。
【0343】
実施例7:G2-2又はG2-1結合に依存する、GP73のフーリン切断分析
フーリン切断の試験は、抗体G2-1及びG2-2がフーリン切断部位56Rで、又はそのN末端でGP73に結合するのに対して、C末端HISタグを有する組換えGP73(GP73-HIS)はGP73のC末端で抗HIS抗体によって検出されるという事実を利用する。プレート結合抗ヒトIgGは、GP73-HISに結合するG2-1又はG2-2を捕捉することができる。G2-1又はG2-2が既にGP73-HISに結合している設定でフーリン切断が起こると、GP73のN末端部分のみがG2抗体に存在することになる。対照的に、フーリン切断がG2抗体によって妨げられている場合、GP73-HISは、抗HIS抗体によって検出することができる。
【0344】
フーリン切断を、1.5mlチューブ中で行った。G2抗体がフーリン切断を妨げることができるどうかを試験するために、組換えGOLPH-HISタンパク質(Biolegend)及びG2-2又はG2-1を100mM HEPES及び1mM CaCl2バッファー(pH7.5)中で2時間インキュベートし、抗体をGP73に結合させた。30℃、2時間の切断のために、各反応物に3U、1.5U、0.75U、0.375U又は0Uのフーリン(New England Biolabs)を補充した。本アッセイ設定における最大フーリン切断を試験するために、組換えGOLPH-HISタンパク質(Biolegend)及び3U、1.5U、0.75U、0.375U又は0Uのいずれかのフーリンを100mM HEPES及び1mM CaCl2バッファー(pH7.5)中で2時間インキュベートし、フーリン切断を可能にした。30℃で結合させるために、各反応物にG2-2又はG2-1のいずれかを2時間補充した。
各反応物から2x100μlを、抗ヒトIgGで一晩コートした96ウェルプレートのウェルに移し、1%セラチンでブロックした。室温で1時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、抗HIS-hrp抗体と共に1時間インキュベートし、再度洗浄し、発色基質(TMB Amersham)と共にインキュベートしてペルオキシダーゼを検出し、停止して450nmで読み取った。結果は、G2-1及びG2-2の結合に起因するフーリン切断の減少を実証している。
【0345】
実施例8:抗GP73抗体と、種々の細胞株の細胞生存性に対するその効果
細胞株HuH7(ヒト肝細胞がん)、4T1マウス乳がん)及びCaCo2(ヒト結腸直腸がん)由来の細胞を、10%ウシ胎児血清(FCS)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、標準条件下、37℃5%CO2で培養した。G2-2、G2-2+セツキシマブ;mG2-2、mG2-2+セツキシマブ;セツキシマブ又はコントロール抗体で、それぞれ0.125mg/mlから2mg/mlまで濃度を漸増させながらHuH7細胞を96ウェルプレートに移した。各試験は、三重で実施した。72時間後、各ウェルにPrestoBlue試薬(ThermoFischer)を補充し、37℃で20分間インキュベートした。蛍光を615nmで読み取り、細胞生存性定量化した。PrestoBlue試薬は、代謝的に活性な細胞によって減少する。細胞生存性は抗体濃度に応じて減少した。この効果はFc部分、すなわちG2-2におけるヒトIgG1又はmG2-2におけるマウスIgG2aとは無関係であった。
【0346】
異なる細胞株に対するG2-1の効果を試験するために、HuH7、4T1及びCaCo2細胞を96ウェルプレートに移した。各ウェルを、G2-1 2mg/ml、G2-1 1mg/ml+セツキシマブ 1mg/ml、セツキシマブ 2mg/ml、ベバシズマブ 2mg/ml又はベバシズマブ 1mg/ml+セツキシマブ 1mg/mlのいずれかで処理した。各試験は、3重で実施した。72時間後、PrestoBlue試薬を使用し、615nmで蛍光を測定して、細胞生存性を定量化した。また、G2-1とセツキシマブの相加効果がHuH7細胞に見られた。
【0347】
実施例9:抗GP73抗体-薬物コンジュゲート(ADC)
抗GP73抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、部分的に還元されたG2-2(ヒトIgG1/カッパ)及びmG2-2(マウスIgG2/カッパ)を薬物-リンカー部分マレイミドアセタールPNU-159682又はメイタンシノイド(MMAF)にコンジュゲートすることによって製造した。前述のように、例えばJunutulaら(2008)Nat.Biotechnol.26:925-932及び米国特許出願公開第2011/0301334号では、抗体を薬物-リンカー部分と組み合わせることにより、抗体の遊離システイン残基への薬物-リンカー部分のコンジュゲーションが可能になっている。数時間後、ADCを精製した。各ADCの薬物負荷(1抗体当たりの薬物部分の平均数)を決定したところ、PNUコンジュゲートは2であり、MMAFコンジュゲートも2であった。
【0348】
実施例10:HuH7細胞におけるG2-2-ADCの有効性
G2-2にマラメイド(malameide)交換リンカーによって結合されたMMAFから成る抗体薬物コンジュゲートを、様々な濃度でHUH7細胞の細胞培地に添加した。1時間後に培地を交換した。98時間後、PrestoBlue試薬(ThermoFischer)を使用して細胞生存率を分析した。黒い曲線は、抗体成分によって決定した、6.34nMのIC50を有するG2-2-Mal-VC-PAB-MMAFを示す。赤い曲線は、抗体成分によって決まる、0.124nMのIC50を有するG2-2-Mal-VC-PAB-MMAFを示す。青い曲線は、薬物成分によって決定まる、IC50 277nMのMMAFの毒性を示す。MMAFの毒性は、
図10に示されるように、G2-2抗体への結合のためにファクター2234によって増強された。
【0349】
実施例11:細胞株異種移植モデルにおけるG2-2-ADCの有効性
ヒトHuH7異種移植モデルを用いて、抗GP73 ADCの有効性を調べた。メスBalb/cヌードマウス(中国、北京のCharles River Laboratories)の各々の側腹部に10百万個のHuH7細胞を皮下接種した。異種移植片腫瘍が平均腫瘍体積183mm3に達したとき(0日目)、動物をそれぞれ12頭のマウス群にランダム化し、0日目に2mg/kg ADC及び7日目に1mg/kg ADCの静脈内注射又はコントロール物質を与えた。試験期間を通して一日おきに、マウスの腫瘍及び体重を測定した。体重の減少が開始時体重の20%を超えたとき、マウスを速やかに安楽死させた。腫瘍が2000mm3に達したとき、全ての動物を安楽死させた。異種移植マウスから単離されたHuH7細胞及びHuH7腫瘍の表面でのGP73の発現は、FACS及びIHCによって確認された。
【0350】
図15に示すように、かなりの腫瘍増殖がG2-2-PNUで得られた。累積生存性の差異は、
図12に示すように、ビヒクル群とADC群との間で統計的に有意であった。データは、SPSSを用いて分析された。
【0351】
前述の発明は明確な理解のために例示及び実施例によってある程度詳細に説明されているが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示内容は、その全体が出典明示により本明細書に援用される。
【0352】
実施例12:最適化された抗GP73抗体
抗体G2-2及びG2-1は、一般に利用可能なデータベース(例:IMGT/mAb-DB)に見出される抗体とのコンピューター比較に由来する定方向突然変異誘発によって、哺乳動物細胞における発現について最適化された。それぞれの調整は、マウス重鎖の可変領域及び定常領域のフレームワークに影響を与えた。それによって、CDRは元のままであった。これらの最適化された配列は、G2-2opti(IgG1)及びG2-1opti(IgG1)と命名された。いくつかの実験のために、G2-2opti(IgG1)を、マウスCH2及びCH2を有するキメラヒト/マウス型であるG2-2opti(IgG2a)に変換した。機能アッセイにおいて、これらのコンストラクトは、それぞれG2-2又はG2-1と同じ科祖霊協の性能を示した。
【0353】
実施例13:中華人民共和国特許第105734059号の抗体8A10、並びにGP73タンパク質及びペプチドに対するG2-2の差次的結合
中華人民共和国特許第105734059号の抗体8A10を、GP73に対するG2-2と比較してGP73に対する8A10の差次的結合を試験するために作製した。具体的には、8A10が本発明の抗体と同じエピトープを認識するかどうかを試験するために実験を行った。
【0354】
中華人民共和国特許第105734059号の抗体8A10の公開されたヌクレオチド配列は、カッパ軽鎖の定常領域に点突然変異(Y193C)を含んでいた。十分な発現のために、この配列をY193への逆突然変異によって、標準的マウスカッパ配列に合わせた。8A10の、その他の点では変更されていないヌクレオチド配列は、米国ニュージャージー州のGenScriptによって合成された。マウスIgG2aの適切な配列を補った重鎖及びN末端において、分泌シグナルを添加した。HEK293細胞の一過性トランスフェクションのために、各鎖を哺乳動物発現ベクターにクローニングした。抗体を固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)により細胞上清から抽出し、ウェスタンブロット法及びELISAにより完全性について試験した。
【0355】
C末端に10xHISタグをタグ付けされた完全長GP73 AA 1-401を含むcDNA、又はR52A突然変異を有するAA 36‐401を含むGP73ΔNバリアントのいずれかを293HEK細胞にトランスフェクトし、10xHISタグをC末端にタグ付けされた切断不能なバリアントGP73-His AVRR)を得た。双方のコンストラクトにおいて、分泌シグナルがインフレームでN末端に付加された。完全長GP73発現細胞の上清は、GP73 AA 56-401(sGP73;配列番号40)を包含するsGP73-10xHisを含み、これは、フーリン又は別のプロテアーゼによりAA 55でタンパク質分解的に切断されている。GP73ΔNバリアントの上清は、
図20に示すように、GP73 AA 36-401(GP73 AVRR;配列番号41)を包含するGP73-10xHis AVRRを含む。2つのコンストラクトのうち後者のみが、rGP73エピトープを含む。両タンパク質は、IMACによって単離された。
【0356】
sGP73又はGP73 AVRRで一晩コーティングした96ウェルプレート内でELISAを実施し、2%ゼラチンでブロックした。抗体8A10、G2-2opti(IgG2a)又はアイソタイプコントロール抗体を塗布し、1,5時間インキュベートし、洗い流した。二次ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ標識抗マウス抗体を1時間添加し、徹底的に洗浄した後、発色基質(TMB Amersham)を塗布してペルオキシダーゼを検出した。反応を停止させ、吸光度を450nmで読み取って
図21に示した。結果は、8A10がsGP73にのみ結合し、GP73 AVRRには結合しないのに対して、G2-2opti(IgG2a)はGP73 AVRRに結合するがsGP73には結合しないことを実証し、認識されたエピトープが重複しないことを示唆する。
【0357】
ビオチン化ペプチドgp73 AA 36-55又は無関係なペプチドで一晩コーティングした96ウェルプレート内でELISAを実施し、2%ゼラチンでブロックした。抗体8A10、G2-2opti(IgG2a)又はアイソタイプコントロール抗体(IgG2a)を塗布し、1,5時間インキュベートし、その後洗い流した。二次ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ標識抗マウス抗体を1時間添加し、徹底的に洗浄した後、発色基質(TMB Amersham)を塗布してペルオキシダーゼを検出した。反応を停止させ、吸光度を450nmで読み取って
図22に示した。結果は、8A10がrGP73に結合しないことを実証し、8A10とG2-2opti(IgG2a)の認識されたエピトープが重複しないことを裏付けている。
【0358】
実施例14:HEK293-GP73-His細胞におけるフーリン切断実験
HEK293 GP73-His完全長細胞を、96ウェルプレートに1ウェル当たり1500細胞を播種し、一晩培養した。翌日、培地を交換し、細胞をベバシズマブ31.3μg/ml、ベバシズマブ62,5μg/ml、G2-2opti(IgG1)31.3μg/ml又はG2-2opti(IgG1)62.5μg/mlで処理した。フーリン切断阻害を調べるために、細胞増殖に影響を及ぼさない範囲でそれぞれの抗体濃度を選択した。96時間後、アップコンバージョン蛍光体技術(Up-converting Phosphor Technology)(UCP)を利用して、sGP73の測定のために上清を回収し、残りの細胞層を実施例8に記載のPrestoBlue試薬(Thermofisher)を用いる増殖アッセイにおいて使用した。ここで、G2-2opti(IgG1)は、HEK293 GP73-His完全長細胞による上清へのsGP73分泌を減少させるのに対して、アイソタイプコントロールであるベバシズマブは、上清中のsGP73レベルに影響を及ぼさない。
【0359】
sGP73の検出のために、抗GP73 UCP標識抗体を含有するHotgen希釈バッファー中で各上清を1:1に希釈した。その0.1mlを、マウス抗GP73抗体コート済みニトロセルロースメンブレン(C線)を含むHotgen GP73試験カセットにロードし、15分間クロマトグラフィープロセスのためにインキュベートし、それによってヤギ抗マウス標識抗体でコーティングしたメンブレン部分(T線)に到達した。試験カセットをHotgen Up-converting Phosphor Technology(UCP) Analyserに挿入することによって測定されたC線とT線での発光の差からGP73濃度を推定した。
【0360】
実施例15:異なる細胞株の細胞生存率に対する抗体G2-2opti(IgG1)とG2-2opti-EED(IgG1)の効果
最適化された抗体G2-2opti(IgG1)及びその抗体バリアント、G2-2opti-EED(IgG1)(後者はエンドソームエスケープ配列(EED)を有する)の有効性について、ヒト及びマウスのがん細胞株で試験した。ヒトがん細胞HCT 116 p53wt、HCT 116 p53-/-、SW 480 K-Ras G12V変異、Caco2(全て結腸直腸がん細胞株)、SKOV3(卵巣がん)、HUH7(ヒト肝細胞がん腫細胞株)、Hepa1-6(マウス肝細胞がん腫細胞株)、DU145、PC3(ヒト前立腺がん細胞株)及びH1975(EGFR変異T790M及びL858Rを有する肺がん細胞株)を96ウェルプレートに1ウェル当たり1500細胞で播種し、一晩DMEM中で培養した。翌日培地を交換し、細胞を1mg/mlのG2-2opti(IgG1)又はG2-2opti-EED(IgG1)又はセツキシマブ又はベバシズマブ又はPBSで処理した。96時間後、実施例8に記載の通りにPrestoBlue試薬(Thermofisher)を用いて、細胞生存率を定量化した。PBS処理細胞の結果は、100%生存率レベルとなった(
図23参照)。
【配列表】