(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】空気清浄機
(51)【国際特許分類】
B03C 3/32 20060101AFI20230718BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20230718BHJP
B03C 3/49 20060101ALI20230718BHJP
B03C 3/64 20060101ALI20230718BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230718BHJP
F24F 8/192 20210101ALI20230718BHJP
【FI】
B03C3/32
B03C3/40 A
B03C3/49
B03C3/64 A
B64C39/02
F24F8/192
(21)【出願番号】P 2019562982
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2018045987
(87)【国際公開番号】W WO2019131190
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2017255199
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591012266
【氏名又は名称】株式会社クリエイティブテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100140693
【氏名又は名称】木宮 直樹
(72)【発明者】
【氏名】坪井 和樹
(72)【発明者】
【氏名】平野 信介
(72)【発明者】
【氏名】辰己 良昭
(72)【発明者】
【氏名】羅 莉
【審査官】本間 友孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-131883(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043599(WO,A1)
【文献】実開昭48-048274(JP,U)
【文献】実開昭49-081277(JP,U)
【文献】特開平09-308837(JP,A)
【文献】特開平08-112553(JP,A)
【文献】特開平05-146713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-11/00
B64C 39/02
F24F 8/00ー 8/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を上方から吸気して下方に排気する複数のプロペラが、飛行動作を制御する制御部を有した本体部の周囲に配設され、これら複数のプロペラを推進力として浮動するドローンと、上,下に開口した筒状の集塵電極とこの集塵電極の略中央部位に配設された放電電極とを有し且つ高電圧をこれら集塵電極と放電電極との間に印加して、放電電極の先端部で放電させ、集塵電極内に流入した空気中の塵埃粒子を帯電させて捕集する集塵器とを備える空気清浄機であって、
上記放電電極が上記ドローンの上部略中央に位置するように、上記集塵器をドローンに組み付け、
上記集塵電極の高さ方向の中央位置が上記プロペラの回転面の位置以上であって且つ集塵電極の下端位置がプロペラの回転面の上方近傍の位置以下になるように、上記集塵器の集塵電極の配置位置を設定して、空気をプロペラの回転力によって集塵電極内に吸気することができるようにした、
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項2】
空気を上方から吸気して下方に排気する複数のプロペラが、飛行動作を制御する制御部を有した本体部の周囲に配設され、これら複数のプロペラを推進力として浮動するドローンと、上,下に開口した筒状の集塵電極とこの集塵電極の略中央部位に配設された放電電極とを有し且つ高電圧をこれら集塵電極と放電電極との間に印加して、放電電極の先端部で放電させ、集塵電極内に流入した空気中の塵埃粒子を帯電させて捕集する集塵器とを備える空気清浄機であって、
上記複数のプロペラのうちの少なくとも1つ以上のプロペラに、上記集塵器をそれぞれ配設し、
各放電電極が上記ドローンの各プロペラの上部略中央に位置するように、各集塵器を各プロペラに組み付け、
各集塵電極の高さ方向の中央位置が各プロペラの回転面の位置以上であって且つ当該集塵電極の下端位置がプロペラの回転面の上方近傍の位置以下になるように、各集塵器の集塵電極の配置位置を設定して、空気をプロペラの回転力によって集塵電極内に吸気することができるようにした、
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の空気清浄機において、
上記集塵器の集塵電極は、周囲の空気を流入するための複数の孔を有する、
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の空気清浄機において、
上記集塵器の集塵電極の上開口が下開口よりも大径になるように設定した、
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の空気清浄機において、
上記集塵器を、上記ドローンに着脱自在に組み付けた、
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の空気清浄機において、
上記集塵器の集塵電極の最大径を、10cm以上に設定すると共に、当該集塵電極の高さを2.5cm以上に設定した、
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の空気清浄機において、
アルミ蒸着膜又は塩化ビニルシートのいずれかを、上記集塵器の集塵電極の内面側に有する、
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の空気清浄機において、
前記集塵電極は、前記
高さ方向に延び
、上,下に開口する筒状の集塵電極本体と、前記
高さ方向に
交差する方向に前記集塵電極本体から、前記集塵電極本体の中央部に延びるリブと、を有する、
ことを特徴とする空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空中を浮動して、空気中の塵埃を捕集することができる空気清浄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空気清浄機としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載の技術がある。
特許文献1に記載の空気清浄機は、空気中の塵埃を吸着するための塵埃捕集体と、この塵埃捕集体をプロペラによって空気中に浮遊させる飛行手段と、この飛行手段を制御する制御装置とを備えている。
かかる構成により、飛行手段を駆動させて、空気清浄機を室内に浮遊させると、浮遊した空気清浄機が、塵埃捕集体の表面の固定電子不織布によって、空気中に漂う塵埃を吸着する。また、室内に置かれている家具の天面や棚に付着している塵埃を、プロペラによって空中に巻き上げ、この固定電子不織布に吸着させる。
【0003】
一方、特許文献2に記載の空気清浄機は、プロペラ推進のバルーンで構成された飛行体と、この飛行体に取り付けられた集塵器とを備えている。集塵器は、互いに逆極性に帯電させることができる吸気口と排気口とを有する容器で形成されている。
かかる構成により、飛行体を、プロペラの推進力により、空中で移動させると、空気が、給気口を通って集塵器内に流入する。これにより、空気中の帯電した塵埃が、集塵器の給気口付近や内部及び排気口付近で捕集されるようなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-131883号公報
【文献】特表2014-515086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来の空気清浄機では、次のような課題があった。
特許文献1及び特許文献2に記載された空気清浄機は、共に、飛行体をプロペラの推力で動かしながら、塵埃を集塵器に接触させて捕集する構造である。このため、単位時間当たりの塵埃捕集率が、飛行体の速度や経路に依存する。したがって、飛行体の速度が遅く且つ飛行体が余り動き回らない場合には、塵埃の捕集率が低下する。つまり、これらの空気清浄機は、集塵能力が低い。
【0006】
特に、特許文献2に記載の空気清浄機のように、集塵器の吸気口と排出口とが異なる電荷を有する構造では、高電圧を印加させて、塵埃を帯電させる構造にした場合、絶縁のために、吸気口と排気口との電極間に距離をあけて、吸気口と排気口とが離れた構造にする必要がある。
このような構造の集塵器を、飛行体の推進機構の気流に影響する位置に取り付けると、飛行体の推進力に大きな影響を与えることとなる。また、集塵器が大きくなるため、空気清浄機全体の重心が、集塵器の取り付け位置によって移動していまう。このため、飛行体の制御が非常に難しくなる。
【0007】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、より広範囲の空気を効率よく集塵器内に多量に吸入することができ、しかも、軽量で且つメインテナンスが容易な空気清浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、空気を上方から吸気して下方に排気する複数のプロペラが、飛行動作を制御する制御部を有した本体部の周囲に配設され、これら複数のプロペラを推進力として浮動するドローンと、上,下に開口した筒状の集塵電極とこの集塵電極の略中央部位に配設された放電電極とを有し且つ高電圧をこれら集塵電極と放電電極との間に印加して、放電電極の先端部で放電させ、集塵電極内に流入した空気中の塵埃粒子を帯電させて捕集する集塵器とを備える空気清浄機であって、放電電極がドローンの上部略中央に位置するように、上記集塵器をドローンに組み付け、集塵電極の高さ方向の中央位置がプロペラの回転面の位置以上であって且つ集塵電極の下端位置がプロペラの回転面の上方近傍の位置以下になるように、集塵器の集塵電極の配置位置を設定して、空気をプロペラの回転力によって集塵電極内に吸気することができるようにした構成とする。
かかる構成により、複数のプロペラを制御部によって制御し、ドローンを浮動させることができる。そして、ドローンの浮動状態において、集塵器を作動させ、高電圧を集塵電極と放電電極との間に印加すると、放電が放電電極の先端部で起こり、空気イオンが放電電極近傍に発生する。すると、放電電極の極性と同極性の空気イオンが集塵電極側に引き寄せられ、当該空気イオンが集塵電極に至る間に、集塵電極内に流入した空気中の塵埃粒子が同極性に帯電される。これにより、帯電した塵埃粒子が集塵電極側に引き寄せられて、集塵電極に捕集される。
つまり、この発明の空気清浄機によれば、空気イオンが放電電極と集塵電極との間の広い空間を移動し、この広い空間内に流入した多量の塵埃粒子を帯電させ、帯電した多量の塵埃粒子を捕集することができる。
ところで、ドローンのプロペラによって上方から吸気した空気の速度の方が、下方に排気した空気の速度よりもはるかに遅い。したがって、プロペラが上方から吸気した空気をイオン化させる方が、下方に排気した空気をイオン化させるよりも、多量の塵埃粒子を捕集することができる。
かかる点を考慮し、この発明の空気清浄機では、放電電極がドローンの上部略中央に位置するように、集塵器がドローンの本体部に組み付けられ、しかも、集塵電極の高さ方向の中央位置がプロペラの回転面の位置以上で設定されている。これにより、集塵器の集塵電極内に流入した空気のうち、吸気側の空気をメインにイオン化させることができる。
しかし、集塵器の高さ位置が、プロペラに対して余り高すぎると、十分な空気を集塵電極内に吸気することができない。
このため、この発明の空気清浄機では、集塵電極の下端位置がプロペラの回転面の上方近傍の位置以下になるように設定されており、所望量の空気を集塵電極内に吸気することができる。
【0009】
請求項2の発明は、空気を上方から吸気して下方に排気する複数のプロペラが、飛行動作を制御する制御部を有した本体部の周囲に配設され、これら複数のプロペラを推進力として浮動可能なドローンと、上,下に開口した筒状の集塵電極とこの集塵電極の略中央部位に配設された放電電極との間に高電圧を印加すると、放電電極の先端部で放電し、上開口から集塵電極内に流入した空気中の塵埃粒子を帯電させて集塵電極に捕集可能な集塵器とを備える空気清浄機であって、複数のプロペラのうちの少なくとも1つ以上のプロペラに、集塵器をそれぞれ配設し、各放電電極がドローンの各プロペラの上部略中央に位置するように、各集塵器を各プロペラに組み付け、各集塵電極の高さ方向の中央位置が各プロペラの回転面の位置以上であって且つ当該集塵電極の下端位置がプロペラの回転面の上方近傍の位置以下になるように、各集塵器の集塵電極の配置位置を設定して、空気をプロペラの回転力によって集塵電極内に吸気することができるようにした構成とする。
かかる構成により、ドローンの浮動状態において、集塵器を作動させ、高電圧を各集塵器における集塵電極と放電電極との間に印加すると、各集塵電極内に流入した空気中の塵埃粒子が帯電して、集塵電極に捕集される。
そして、各集塵電極の高さ方向の中央位置が各プロペラの回転面の位置以上であって且つ当該集塵電極の下端位置がプロペラの回転面の上方近傍の位置以下になるように、各集塵器の集塵電極の配置位置が設定されているので、各集塵器の集塵電極内に流入した空気のうち、吸気側の空気をメインにイオン化させることができると共に、所望量の空気を各集塵電極内に吸気することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の空気清浄機において、集塵器の集塵電極は、周囲の空気を流入するための複数の孔を有する構成とした。
かかる構成により、空気を、上開口だけでなく、複数の孔からも集塵電極内に流入させることができるので、空気の流れが、集塵電極によって阻害されずに、スムーズに流れる。この結果、ドローンの安定した飛行が可能となる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の空気清浄機において、集塵器の集塵電極の上開口が下開口よりも大径になるように設定した構成とする。
かかる構成により、多量の空気を、大径の上開口から集塵電極内にスムーズに流入させることができ、ドローンの安定した飛行が可能となる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の空気清浄機において、集塵器を、ドローンに着脱自在に組み付けた構成とする。
かかる構成により、集塵器をドローンに簡単に取り付けたり、ドローンから簡単に取り外したりすることができ、この結果、集塵器の修理やメインテナンスを容易に行うことができる。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の空気清浄機において、集塵器の集塵電極の最大径を、10cm以上に設定すると共に、当該集塵電極の高さを2.5cm以上に設定した構成とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の空気清浄機において、アルミ蒸着膜又は塩化ビニルシートのいずれかを、上記集塵器の集塵電極の内面側に有する構成とした。
【発明の効果】
【0015】
以上詳しく説明したように、この発明の空気清浄機によれば、空気イオンを放電電極と集塵電極との間の広い空間で移動させ、この広い空間内に流入した多量の塵埃粒子を捕集することができるので、集塵能力が非常に高い、という優れた効果がある。
また、集塵器の高さ位置が、集塵電極内に流入した空気のうち、吸気側の空気をメインにイオン化させることができ、しかも、所望量の空気を集塵電極内に確実に流入させることができる位置に設定されているので、さらなる集塵能力の向上を図ることができる、という効果もある。
また、集塵器を1つの集塵電極と放電電極とで構成することにより、集塵器の軽量化と、スムーズな空気の流れを達成することができると共に、かかる構成により、集塵電極を分解することなく、1つの集塵電極の表面を磨き上げるだけで、集塵器をメインテナンスすることができる。
【0016】
特に、請求項3の発明によれば、空気の流れが集塵電極によって阻害されずに、スムーズに流れると共に、集塵器の軽量化を図ることもできる、という効果がある。
【0017】
また、請求項4の発明によれば、多量の空気を集塵電極内にスムーズに流入させることができる、という効果がある。
【0018】
また、請求項5の発明によれば、集塵器の修理やメインテナンスを容易に行うことができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の第1実施例に係る空気清浄機を示す分解斜視図である。
【
図7】集塵器をドローンに対して着脱する方法を説明するための概略断面図である。
【
図8】ドローンと集塵器との制御システムを説明するための概略図である。
【
図9】集塵器を最下位に取り付けた状態を示す概略断面図である。
【
図10】集塵器を最上位に取り付けた状態を示す概略断面図である。
【
図12】空気イオン発生状態を示す概略部分断面図である。
【
図13】空気イオンの流れを示す概略部分断面図である。
【
図14】塵埃を含む空気の流入状態を示す概略断面図である。
【
図15】帯電した塵埃の移動状態を示す概略断面図である。
【
図17】10種の集塵電極の大きさの設定値を示す表図である。
【
図21】第1実施例の一変形例を示す概略断面図である。
【
図22】この発明の第2実施例の要部である集塵器の側面図である。
【
図24】実験に使用した2種の空気清浄機を示す概略図である。
【
図26】第2実施例の一変形例を示す側面図である。
【
図27】この発明の第3実施例に係る空気清浄機を示す概略断面図である。
【
図28】この発明の第4実施例に係る空気清浄機を示す概略断面図である。
【
図29】この発明の第5実施例に係る空気清浄機を示す斜視図である。
【
図30】集塵器を最下位に取り付けた状態を示す概略断面図である。
【
図31】集塵器を最上位に取り付けた状態を示す概略断面図である。
【
図32】この発明の第6実施例に係る空気清浄機を示す概略断面図である。
【
図33】第6実施例の一変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
(実施例1)
図1は、この発明の第1実施例に係る空気清浄機を示す分解斜視図であり、
図2は、空気清浄機の概略断面図である。
図1及び
図2に示すように、この実施例の空気清浄機1-1は、1つの集塵器4をドローン2に組み付けた構成になっている。
【0022】
ドローン2は、プロペラを推進力として、垂直および水平に浮動可能なロータ式のドローンである。ロータ式のドローンとしては、3つのプロペラを有するトライロータ、4つのプロペラを有するクォードロータ、5つのプロペラを有するペンタロータ、6つのプロペラを有するヘキサロータ、8つのプロペラを有するオクトロータ等、多種多様のロータを備えたものが存在する。この実施例では、クォードロータのドローンを、ドローン2として適用した。
【0023】
図3は、ドローン2の平面図である。
図3に示すように、このドローン2は、本体部20と、本体部20の周囲に配設された4つのプロペラ21~24とを有している。
プロペラ21~24は、本体部20から十字状に延出した4本のフレーム25~28の先端部に取り付けられている。具体的には、モータ21a(22a~24a)が、各フレーム25(26~28)の先端上部に取り付けられ、各プロペラ21(22~24)が、各モータ21a(22a~24a)の回転軸21b(22b~24b)に固着されている。
これにより、プロペラ21(22~24)が、モータ21a(22a~24a)の駆動によって、回転軸21b(22b~24b)と一体に回転し、空気を上方から吸気して下方に排気する。つまり、プロペラ21(22~24)は、ドローン2に対する上方への推進力を与える。
【0024】
図1及び
図2において、集塵器4は、放電によって、空気中の塵埃を捕集するための機器であり、4つの放電電極41~44と集塵電極45とを備えている。
図4は、集塵器4の側面図であり、
図5は、集塵器4の上面側を示す平面図であり、
図6は、集塵器4の下面側を示す平面図である。
【0025】
放電電極41~44は、導電性のカーボンブラシであり、
図4に示すように、集塵電極45の上面に設置された中央室40の周面40aに取り付けられている。
具体的には、
図5に示すように、放電電極41~44は、先端部側を露出させた状態で、中央室40の周面40aに90°間隔で組み付けられており、放電電極41~44の後端部が中央室40内部の昇圧部33に接続されている。そして、中央室40は、集塵電極45の後述する中央室取付部47a上に取り付けられている。
【0026】
集塵電極45は、帯電した塵埃を静電吸着して、捕集するための電極であり、上,下に開口した四角筒状の集塵電極本体46と、この集塵電極本体46と中央室40とを支持する複数のリブ47とで構成されている。
具体的には、複数のリブ47は、
図6に示すように、集塵電極本体46の上縁から集塵電極本体46の中央部に向かい、この中央部に設けられたリング状の中央室取付部47aに連結している。なお、複数のリブ47と中央室取付部47aと集塵電極本体46は、導電性部材によって一体に形成されている。
【0027】
図7は、集塵器4をドローン2に対して着脱する方法を説明するための概略断面図である。
図2に示すように、この空気清浄機1-1は、集塵器4をドローン2に自在に着脱することができる着脱機構5を備えている。この着脱機構5は、ドローン2に設けられた4本の支柱51~54と集塵器4に設けられた4つの載置部56~59とで構成されている。
支柱51~54は、
図1及び
図3に示すように、ドローン2の本体部20の周りに等角度間隔で立設され、磁石片51a(52a~54a)が、各支柱51(52~54)の上端に取り付けられている。
一方、載置部56~59は、
図2及び
図6に示すように、集塵器4の中央室取付部47aの下面に設けられている。これらの載置部56~59は、支柱51~54と対応する位置に等角度間隔で垂下され、磁石片56a(57a~59a)が各載置部56(57~59)の下端に取り付けられている。
これにより、
図7に示すように、集塵器4をドローン2の上方に位置させ、集塵器4の中央室40と、ドローン2の略中央に位置する本体部20とを位置合わせした後、集塵器4をドローン2側に下降させることで、集塵器4の載置部56~59の磁石片56a~59aを、ドローン2の支柱51~54の磁石片51a~54aの上に載せることができる。この結果、磁石片56a~59aと磁石片51a~54aとの磁力によって、集塵器4がドローン2上に固定される。
また、集塵器4を、磁石片56a~59aと磁石片51a~54aとの磁力に抗して持ち上げることで、集塵器4をドローン2から容易に取り外すことができる。
つまり、この実施例の空気清浄機1-1によれば、集塵器4をドローン2から容易に取外すことができるので、集塵器4の修理やメインテナンスを容易に行うことができる。
また、上記のごとく、集塵器4がプロペラ21~24の上方に取り付けられることにより、集塵電極本体46とリブ47とで構成される集塵器4が、プロペラ21~24のプロペラガードとして機能する。
【0028】
ドローン2と集塵器4との制御は、ドローン2の本体部20によって行われるようになっている。
図8は、ドローン2と集塵器4との制御システムを説明するための概略図である。
図8に示すように、メモリ30aを有した制御部30と電源部31と受信部34とアンテナ35とが、ドローン2の本体部20に収納され、昇圧部33が、集塵器4の中央室40内に収納されている。
電源部31と受信部34とアンテナ35とは、制御部30に接続され、プロペラ21(22~24)のモータ21a(22a~24a)の回転数は、制御部30によって制御されるようになっている。ここで、電源部31としては、例えば、直流電圧11.1V(ボルト)のリチウム電池が用いられる。
また、配線30b,30cは、電源電圧や制御信号を昇圧部33に送るための配線であり、これらの配線30b,30cは、制御部30から支柱51,53内に引き込まれ、磁石片51a,53aにそれぞれ接続されている。
一方、集塵器4側には、配線33b,33cが設けられている。これら配線33b,33cは、制御部30からの電源電圧や制御信号を受け取るための配線であり、昇圧部33の入力端と載置部56,58の磁石片56a,58aとの間に接続されている。
そして、昇圧部33の出力端には、配線33d,33eが接続され、これらの配線33d,33eが、放電電極41~44,集塵電極45の中央室取付部47aにそれぞれ接続されている。昇圧部33としては、例えば、直流電圧5Vを6kVの高電圧に昇圧する昇圧回路が用いられる。この実施例では、絶縁型DC/DCコンバータ36が、昇圧部33の配線33b,33cと昇圧部33との間に設けられている。この絶縁型DC/DCコンバータ36は、配線33b,33cを通じて送られてきた電源部31からの直流電圧11.1Vを直流電圧5Vに変換して、安定な直流電圧5Vを昇圧部33に入力するように機能する。
つまり、
図7に示したように、集塵器4をドローン2に取り付けると、本体部20の制御部30と中央室40の昇圧部33とが、配線30b,30cと磁石片51a,53aと磁石片56a,58aと配線33b,33cと絶縁型DC/DCコンバータ36とを通じて、電気的に接続される。この結果、電源部31の直流電圧11.1Vが、制御部30から絶縁型DC/DCコンバータ36に入力され、5Vの安定した直流電圧に変換される。そして、この5Vの直流電圧が昇圧部33に入力され、高電圧6kVに昇圧されて、放電電極41~44と集塵電極本体46との間に印加されることとなる。
なお、この実施例では、放電電極41~44側が負極に設定され、集塵電極45側が正極に設定されている。また、集塵器4とドローン2との間は、ほぼ完全に絶縁されている。具体的には、リブ47と集塵電極本体46とが、ドローン2のフレーム25~28に接触しないように、集塵器4がドローン2に組み付けられている。ドローン2と集塵器4とは、支柱51~54と載置部56~59によってのみ接触している。そして、支柱51~54と載置部56~59とは、磁石片51a~54a,56a~59の部分と配線33b,33cの部分以外は全て絶縁性の素材で形成されている。また、集塵器4の中央室40も絶縁性の素材で形成されている。
【0029】
ところで、ドローン2の制御飛行には、大きく分けて、自動型制御飛行と操作型制御飛行とがある。自動型制御飛行は、例えば、予め作成された清浄対象空間の3D(3次元)図面データを制御部30に格納しておき、制御部30がこの3D図面データと制御プログラムに基づいて、ドローン2を空間の所望の位置に飛行させる飛行形態である。一方、操作型制御飛行は、ドローン2を、専用操作機、携帯操作機、スマートフォンやGPS等を用いて、近距離又は遠距離からマニュアル操作する飛行形態である。両制御飛行共、ドローン2を、全空間で飛行させたり、所定の場所又は所定高さに限定して飛行させたりすることができる。
これら自動型制御飛行及び操作型制御飛行のシステムは、公知であり、ドローン2には、どちらの制御システムも適用することができる。
この実施例では、自動型制御飛行と操作型制御飛行の双方が可能なシステムを適用した。すなわち、制御部30が、メモリ30aに格納されている制御プログラムや3D図面等のデータに基づいて、プロペラ21~24を制御することができるようになっている。また、外部からの指令電波やGPSからの電波を、アンテナ35を介して、受信部34で受信し、受信した電波に基づいて、制御部30が、プロペラ21~24や昇圧部33を制御することができるようにもなっている。
【0030】
図9は、集塵器4を最下位に取り付けた状態を示す概略断面図であり、
図10は、集塵器4を最上位に取り付けた状態を示す概略断面図である。
図7に示したように、集塵器4の載置部56~59を、ドローン2の支柱51~54の上に載せることで、放電電極41~44を有する中央室40が、ドローン2の上部略中央に位置する本体部20の真上に位置するように、集塵器をドローンの本体部に組み付けることができる。この際、ドローン2に対する集塵器4の高さ位置は、
図9及び
図10に示すように、集塵器4の載置部56~59の長さによって決定される。
ところで、
図9に示すドローン2のプロペラ21~24を回転させると、プロペラ21~24が、空気をプロペラ21~24の回転面Sの上方から吸気して、回転面Sの下方に排気する。このとき、上方から回転面S側に流入する空気の速度の方が、回転面Sから下方に流出する空気の速度よりもはるかに遅い。したがって、プロペラ21~24の回転面Sの上方にある空気を放電させてイオン化させる方が、回転面Sの下方にある空気を放電させてイオン化させるよりも、多量の塵埃粒子を帯電させることができる。
かかる点に着目し、この実施例では、
図9に示すように、集塵電極45の高さ方向の中央位置Mがプロペラ21~24の回転面Sに一致したときに、集塵器4が最下位に位置するように設定した。
しかしながら、集塵器4の高さ位置が、プロペラ21~24に対して余り高すぎると、十分な空気を集塵電極45内に吸気することができない。必要最小限の空気量を、プロペラ21~24の回転力によって吸気できる高さ位置に、集塵器4を設定する必要がある。
かかる点に着目して、この実施例では、
図10に示すように、集塵電極45の下端位置Uがプロペラ21~24の回転面Sの上方近傍の位置するときに、集塵器4が最上位の位置にあるように設定した。
すなわち、この実施例では、集塵電極45の中央位置Mがプロペラ21~24の回転面S以上であって且つ集塵電極45の下端位置Uがプロペラ21~24の回転面Sの上方近傍の位置以下になるように、集塵器4がドローン2上に組み付けられる。
【0031】
次に、この実施例の空気清浄機1-1の作用及び効果について説明する。
図11は、電界集中状態を示す概略断面図であり、
図12は、空気イオン発生状態を示す概略部分断面図であり、
図13は、空気イオンの流れを示す概略部分断面図である。
図2に示したように、集塵器4をドローン2の上部に組み付けた状態で、プロペラ21~24を、制御部30(
図8参照)の制御によって、所望の回転速度で回転させると、上方への推進力が生じ、空気清浄機1-1が浮上する。
【0032】
そして、空気清浄機1-1の浮動状態において、
図8に示した制御部30の制御により、所定の直流電圧を電源部31から昇圧部33に入力すると、この直流電圧が、昇圧部33で高電圧に昇圧されて、高圧電圧が、放電電極41~44と集塵電極本体46との間に印加される。
これにより、
図11に示すように、電界Eが、負極の放電電極41~44と正極の集塵電極本体46との間に発生し、囲み破線Cで示すように、電界Eが放電電極41~44の先端部に集中する。
この結果、コロナ放電等の放電が生じ、
図12に示すように、多数の正の空気イオンA
+と負の空気イオンA
- が、放電電極41~44の先端近傍に発生する。そして、
図13に示すように、正の空気イオンA
+が、負極の放電電極41~44に捕獲され、負の空気イオンA
- が、正極の集塵電極本体46に向かって移動する。
【0033】
図14は、塵埃Pを含む空気Aの流入状態を示す概略断面図であり、
図15は、帯電した塵埃Pの移動状態を示す概略断面図である。
図14に示すように、負の空気イオンA
- が、正極の集塵電極本体46に向かって移動している状態においては、塵埃Pを含んだ空気Aが、上開口45Aから集塵電極本体46内に流入している。
このため、空気イオンA
-が塵埃Pに衝突し、
図15に示すように、負極に帯電した塵埃P
-が発生する。これにより、帯電した塵埃P
-が正極の集塵電極本体46側に移動し、集塵電極本体46に捕獲される。
【0034】
以上のように、この実施例の空気清浄機1-1によれば、
図14に示したように、空気イオンA
-を、放電電極41~44と集塵電極本体46との間の広い空間D内で移動させると共に、多量の空気Aを、この広い空間D内に流入させる構成であるので、一度に多量の塵埃Pを捕集することができる。
また、
図1に示したように、空気清浄機1-1の集塵器4が、1つの集塵電極45と放電電極41~44とで構成されているので、集塵器4の軽量化と、集塵電極本体46内への空気のスムーズな流れを達成することができる。さらに、かかる構成により、集塵器4を分解することなく、たった1つの集塵電極45の表面を磨き上げるだけで、集塵器4をメインテナンスすることができる。
【0035】
発明者等は、2つの実験を行った。
第1の実験は、集塵器の集塵電極の大きさと集塵率との関係を確認するための実験である。
図16は、第1の実験の装置を示す概略図であり、
図17は、10種の集塵電極の大きさの設定値を示す表図である。
図16に示すように、この実験では、集塵器100-1(100-2~100-10)を、体積2.744m
3 のアクリル製のチャンバ110内に上向き配置し、チャンバ110内にある線香の粒子濃度を測定することで、各集塵器100-1(100-2~100-10)の集塵率を求めた。
具体的には、各集塵器100-1(100-2~100-10)を、集塵電極101と集塵電極101の中心に配したカーボンブラシ状の放電電極102とで形成し、6kVの直流電圧を昇圧回路103から集塵電極101と放電電極102との間に印加して、各集塵器100-1(100-2~100-10)を作動させる構成とした。
また、図示しない線香の煙を、チャンバ110内に充満させ、線香の煙が安定した時点で、集塵器100-1(100-2~100-10)の下側に配したドローン(図示せず)のプロペラを所定の回転速度で回転させて、風速1.5m/sの空気を上方から集塵器100-1(100-2~100-10)内に流入させるようにした。
この実験では、
図17に示すように、10種の大きさの集塵器100-1~100-10を用いた。すなわち、集塵電極101の高さL(cm)と直径R(cm)との組(L,R)が、それぞれ(1.25,10)、(2.5,10)、(5,10)、(2.5,20)、(5,20)、(10,20)、(2.5,5)、(5,5)、(10,10)、(1.25,5)である10種の集塵器100-1~100-10を用いた。
実験は、各集塵器100-1(100-2~100-10)を、チャンバ110内に配して、作動させ、その際の線香の粒子濃度を10分間測定した。また、実験は、各集塵器100-1(100-2~100-10)において、時間を異ならしめて、2回行い、2回の平均の粒子濃度値から、各集塵器100-1(100-2~100-10)の集塵率を求めた。なお、集塵器100-3,100-5については、時間を異ならしめて、4回行った。
【0036】
図18は、第1の実験の結果を示す表図である。
図18は、各集塵器100-1(100-2~100-10)に関する減衰率λ(1/min)と自然減衰λ
0(1/min)とCADR(m
3/min:Clean Air Delivery Rate)と集塵率とを示している。ここで、CADRとは、減衰率と自然減衰との差にチャンバ110の体積を乗じた値、即ち、(λ-λ
0)×Vである。また、集塵率とは、CADRを、集塵電極101内を通過する風量Qで除した値、即ちCADR/Qである。
図18に示すように、電極高さLと直径Rとが共に大きい方が、減衰率、CADR、が高く、集塵率は、直径Rが小さい方が高いことを、この実験で確認した。
【0037】
第2の実験は、集塵器の集塵電極の大きさと拡散イオン数との関係を確認するための実験である。
図19は、第2の実験の装置を示す概略図である。
図19に示すように、この実験では、集塵器100-1(100-2~100-10)を、チャンバ110内に横向き配置し、サーキュレータ200を集塵器の10cm右側に配置した。このとき、サーキュレータ200による風速の分布が一様になるように、網目の大きさが異なる2つのハニカムメッシュ201,202を、重ねた状態で、サーキュレータ200の前面にセットした。そして、イオン数測定器210を、集塵器100-1(100-2~100-10)の50cm左側に配置した。
集塵器100-1(100-2~100-10)を作動させると、負のイオン(
図2の空気イオンA
-)が、放電電極102の先端部で発生し、これらの負のイオンが、集塵電極101側に向かう。しかし、サーキュレータ200からの風が、集塵器100-1(100-2~100-10)の集塵電極101内を流れると、これらの負のイオンが集塵電極101外に拡散される。
イオン数の測定は、この拡散した負のイオンを、イオン数測定器210によって測定し、その濃度を求めることで行った。
具体的には、チャンバ110内の湿度を確認しながら、風速を変えて、風をサーキュレータ200から作動状態の各集塵器100-1(100-2~100-10)に送った。
サーキュレータ200の風速設定は、A~Dの4種類である。設定Aでは、サーキュレータ200の前面の中心から半径5cm以内の領域に流れる平均風速v1が、1.5m/sであり、中心から半径10cm以内の領域に流れる平均風速v2が、1.55m/sであり、中心から半径20cm以内の領域に流れる平均風速v3が、1.38m/sである。そして、設定B、C、Dでは、平均風速(v1,v2,v3)が、それぞれ(0.90m/s,0.90m/s,0.79m/s)、(0.65m/s,0.63m/s,0.60m/s)、(0.50m/s,0.49m/s,0.47m/s)である。
【0038】
実験は、サーキュレータ200の風速を設定A~設定Dに変化させながら、各集塵器100-1(100-2~100-10)に送風し、各風速設定時に、イオン数測定器210で測定された負のイオンの数に基づいて、負のイオンの濃度を求めた。この際、集塵器100-1,100-3,100-4,100-6~100-10についての実験は、2回行い、集塵器100-2,100-5についての実験は、3回行った。
図20は、第2の実験の結果を示す表図である。
図20に示すように、集塵電極101の直径Rが大きい集塵器の方が、拡散されるイオン数が多く、また、集塵電極101の高さLが小さい集塵器の方が、拡散されるイオン数が多いことが確認された。また、集塵電極101の直径Rと高さLとの比が同じ集塵器は、特性が似ており、そして、直径Rが5cmの場合には、イオンは拡散されないことが確認された。
【0039】
負イオンを集塵器外部に拡散させずに集塵器内部に留めることができると同時に、帯電した塵埃粒子も逃さずに捕集できる形状が集塵率がよいと考えられる。そして、第1及び第2の実験結果を比較すると、「集塵率が高いサンプル」と「負イオンを拡散させないサンプル」が対応していることがわかり、このことを裏付けていることが確認できる。したがって、電極高さLが大きく、直径Rが小さい方が集塵率は高い。ただし、最終的に問題となる集塵能力CADRは、処理できる風量Qに比例している。この風量Qは、およそ集塵器の風の通過断面積に比例しており、直径Rの二乗に比例していると推定できる。第1の実験結果より、電極高さLと直径Rとが共に大きい方が、集塵能力CADRが大きいことが確認できる。
【0040】
(変形例1)
図21は、第1実施例の一変形例を示す概略断面図である。
上記第1実施例では、放電電極41~44を中央室40の周面40aに取り付けたが、
図21に示すように、放電電極41~44を中央室40の下側に突出するように、中央室40の下面40bに取り付けることもできる。
【0041】
(実施例2)
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図22は、この発明の第2実施例の要部である集塵器の側面図であり、
図23は、空気Aの流れを示す概略部分断面図である。
図22に示すように、この実施例の空気清浄機1-2は、複数の孔46aを集塵器4の集塵電極本体46に有している点が、上記第1実施例と異なる。
すなわち、集塵電極本体46には、集塵電極本体46を貫通した円形又は楕円形の孔46aが、複数穿設されており、これにより、
図23に示すように、プロペラ21(22~24)を回転させると、空気Aが、集塵電極本体46の上開口45Aからだけでなく、複数の孔46aからも、集塵電極本体46内部に流入する。
したがって、この実施例の空気清浄機1-2によれば、複数の孔46aによる肉抜きによって、空気清浄機の軽量化を図ることができるだけでなく、空気Aの流れをスムーズにし、ドローン2の飛行を安定にする。
すなわち、プロペラ21(22~24)の周囲が集塵電極本体46によって囲まれていると、空気Aがプロペラ21(22~24)側に吸気されなくなり、プロペラ21(22~24)の吸気側の気圧が下がってしまう。すると、余計な負荷が、プロペラ21(22~24)に加わったり、異音がプロペラ21(22~24)から発生するので、大きな電力がプロペラ21(22~24)の駆動に必要となったり、場合によっては、ドローン2が飛行しなくなる。
そこで、この実施例のように、複数の孔46aを集塵電極45の集塵電極本体46に設けることで、空気Aを、上開口45Aだけでなく、複数の孔46aからもを集塵電極本体46内に流入させることができる。この結果、空気Aの流れが、集塵電極本体46によって阻害されずに、プロペラ21(22~24)側にスムーズに流れ込み、ドローン2の安定した飛行が可能となるのである。
【0042】
ところで、複数の孔46aを集塵器4の集塵電極本体46に設けると、集塵電極本体46の電極面積が減少し、集塵器4の集塵能力に影響を与えるおそれがある。
そこで、発明者等は、孔46aを設けた集塵器4と設けない集塵器4との集塵能力の比較実験を行った。
図24は、実験に使用した2種の空気清浄機を示す概略図である。
図24に示す空気清浄機10-1は、第1実施例の空気清浄機1-1とほぼ同構造の機器であり、孔46aを集塵電極本体46に有していない。一方、
図24に示す空気清浄機10-3は、第2実施例の空気清浄機1-2とほぼ同構造の機器であり、孔46aを集塵電極本体46に有している。空気清浄機10-1,10-3の大きさは、同じである。
実験は、
図16に示した集塵率の実験と同じく、各空気清浄機10-1(10-3)を、チャンバ110内に配置し、チャンバ110内の線香の粒子濃度を測定することで、各空気清浄機10-1(10-3)の減衰率とCADRとを求めた。
すなわち、図示しない線香の煙を、チャンバ110内に充満させ、線香の煙が安定した時点で、空気清浄機10-1(10-3)を作動させ、線香の粒子濃度を10分間測定した。また、実験は、各空気清浄機10-1(10-3)において、2回行い、2回の平均の粒子濃度値から、各空気清浄機10-1(10-3)の減衰率とCADRとを求めた。
【0043】
図25は、実験の結果を示す表図である。
図25は、各空気清浄機10-1(10-3)に関する減衰率λ(1/min)とCADR(m
3/min)とを示している。
図25に示すように、2種の空気清浄機10-1,1-3の減衰率やCADRは、ほぼ同じであった。空気清浄機10-1,10-3間の差は、実験誤差の範囲であり、差異は殆ど生じないと判断することができる。
つまり、この実験により、複数の孔46aを有した空気清浄機の集塵能力と孔46aを有しない空気清浄機の集塵能力とに差異はなく、集塵電極本体46の電極面積が、孔46aによって減少しても、集塵器4の集塵能力に影響を与えるおそれはほとんどないことが確認された。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0044】
(変形例2)
図26は、第2実施例の一変形例を示す側面図である。
上記第2実施例では、円形又は楕円形の孔46aを集塵電極本体46に設けた例を示した。
しかし、孔は、円形又は楕円形に限定されるものではない。
図26に示すように、集塵電極本体46を貫通した縦長スリット状の孔46bを、集塵電極本体46の周方向に一定間隔で設けることもできる。
【0045】
(実施例3)
次に、この発明の第3実施例について説明する。
図27は、この発明の第3実施例に係る空気清浄機を示す概略断面図である。
図27に示すように、この実施例の空気清浄機1-3に適用される集塵器4は、集塵電極本体46が、断面テーパ状になっている。
すなわち、集塵電極本体46の上半部がテーパ状に広がり、上開口45Aの開口径が下開口45Bの開口径よりも大きい。
【0046】
かかる構成により、大量の空気が、プロペラ21(22~24)の回転によって、大径の上開口45Aから集塵電極本体46内にスムーズに吸い込まれ、下開口45Bから強制的に排出される。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1及び第2実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0047】
(実施例4)
次に、この発明の第4実施例について説明する。
図28は、この発明の第4実施例に係る空気清浄機を示す概略断面図である。
図28に示すように、この実施例の空気清浄機1-4においては、集塵器4の集塵電極45を逆向きにしてドローン2上に取り付けれた構成になっている。
具体的には、上記実施例で例示した集塵電極45を上向きにして、中央室40を集塵電極45内に配し、中央室40をリブ47の中央室取付部47a上に取り付けた。
また、プロペラ21~24が十分な空気を集塵電極45内に吸気することができるように、集塵電極45の下端位置Uをプロペラ21~24の回転面Sの上方近傍の位置に設定した。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1~第3実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0048】
(実施例5)
次に、この発明の第5実施例について説明する。
図29は、この発明の第5実施例に係る空気清浄機を示す斜視図である。
図29に示すように、この実施例の空気清浄機1-5は、小型の集塵器4’をドローン2のプロペラ21~24の全てに組み付けた点が上記第1~第4の実施例の空気清浄機1-1~1-4と異なる。
【0049】
各集塵器4’の構成は、上記した集塵器4とほぼ同様であり、放電電極41~44と集塵電極45’とで構成されている。
すなわち、集塵電極45’は、上,下に開口した円筒状の集塵電極本体46’と、この集塵電極本体46’と中央室40とを支持する複数のリブ47’とで構成されている。
これらの集塵器4’は、図示しない組み付け体により、各プロペラ21(22~24)の上に組み付けられており、各集塵器4’の昇圧部33が、図示しない配線によって、本体部20内の制御部30に接続されている。
【0050】
図30は、集塵器4’を最下位に取り付けた状態を示す概略断面図であり、
図31は、集塵器4’を最上位に取り付けた状態を示す概略断面図である。
図30及び
図31に示すように、各集塵器4’においても、上記実施例の集塵器4と同様に、各集塵電極45’の中央位置Mが各プロペラ21(22~24)の回転面S以上であって且つ各集塵電極45’の下端位置Uが各プロペラ21(22~24)の回転面Sの上方近傍の位置以下になるように、各集塵器4’が各プロペラ21(22~24)の上に組み付けられている。
【0051】
かかる構成により、ドローン2の浮動状態において、4つの集塵器4’を作動させることにより、各集塵電極45’内に流入した空気中の塵埃粒子を、集塵電極本体46’によって捕集することができる。
しかも、 各集塵電極45’の中央位置Mが各プロペラ21(22~24)の回転面S以上であって且つ各集塵電極45’の下端位置Uが回転面Sの上方近傍の位置以下になるように、集塵器4’が各プロペラ21(22~24)に組み付けられているので、上記実施例と同様に、高い集塵能力を発揮する。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1~第4実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0052】
(実施例6)
次に、この発明の第6実施例について説明する。
図32は、この発明の第6実施例に係る空気清浄機を示す概略断面図である。
この実施例の空気清浄機1-6は、集塵器4の集塵電極本体46が、アルミ蒸着膜を有する点が上記第1~第5実施例と異なる。
一般に、集塵電極となる導電性部材だけの集塵効果よりも、導電性部材の表面に絶縁体に近いが完全な絶縁体ではなく且つ適度な体積抵抗率を持つ素材を配置した方が、集塵効果が高いと考えられている。
この実施例は、かかる点に着目したものである。具体的には、
図32に示すように、アルミ蒸着膜48aを、強度があり絶縁性の高いPET(ポリエチレンポリフタレート)で形成された支持枠48bの内面に形成することで、集塵電極本体46を構成した。そして、アルミ蒸着膜48aが導電性有するリブ47に電気的に接続するように、集塵電極本体46をリブ47に組み付けた。
これにより、高電圧を、導電性のアルミ蒸着膜48aと放電電極41~44との間に印加させると、塵埃がアルミ蒸着膜48a側で捕集されるが、アルミ蒸着膜48の表面に生じているアルミ酸化膜が、絶縁体に近いが完全な絶縁体ではなく且つ適度な体積抵抗率を持つ素材であるので、かかるアルミ酸化膜の影響によって、集塵電極本体46の集塵率がさらに高まる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1~第5実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0053】
(変形例3)
図33は、第6実施例の一変形例を示す概略断面図である。
上記第6実施例を提示した観点と同様の観点から、
図33に示すような集塵電極本体46も提示することができる。
すなわち、導電性のカーボンインク49aを支持枠48bの内面に設け、塩化ビニルシート49bをカーボンインク49aの表面に貼り付けて、集塵電極本体46を構成した。
これにより、高電圧を、導電性のカーボンインク49aと放電電極41~44との間に印加させると、塵埃がカーボンインク49a側で捕集されるが、カーボンインク49aの表面に設けられている塩化ビニルシート49bが、適度な体積抵抗率を持つ素材であるので、かかる塩化ビニルシート49bの影響によって、集塵電極本体46の集塵率がさらに高まる。
【0054】
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記実施例では、放電電極41~44を負極に設定し、集塵電極本体46,46’を正極に設定したが、放電電極41~44を正極極に設定し、集塵電極本体46,46’を負極に設定した空気清浄機も、この発明の範囲に含まれる。
また、上記実施例では、カーボンブラシを用いた放電電極41~44を例示したが、ブラシ状でなく、針状または先鋭の導体片を用いた放電電極を有する空気清浄機も、この発明の範囲に含まれる。
さらに、上記第5実施例では、集塵器4’を4つのプロペラ21~24の全てに組み付けた例を示したが、集塵器4’を、4つのプロペラ21~24のうちの少なくとも1つ以上に配設すればよい。集塵器4’をプロペラ21~24のうちのいずれかにのみ組み付けた空気清浄機も、この発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1-1~1-6,10-1~10-4…空気清機、 2…ドローン、 4,4’,100-1~100-10…集塵器、 5…着脱機構、 20…本体部、 21~24…プロペラ、 21a~24a…モータ、 21b~24b…回転軸、 25~28…フレーム、 30…制御部、 30a…メモリ、 30b,30c,33b~33e…配線、 31…電源部、 33,103…昇圧部、 34…受信部、 35…アンテナ、 36…絶縁型DC/DCコンバータ、 40…中央室、 40a…周面、 40b…下面、 40c…上面、 41~44,102…放電電極、 45,45’,101…集塵電極、 45A…上開口、 45B…下開口、 46,46’…集塵電極本体、 46a,46b…孔、 47,47’…リブ、 47a…中央室取付部、 48a…アルミ蒸着膜、 48b…支持枠、 49a…カーボンインク、 49b…塩化ビニルシート、 51~54…支柱、 51a~54a…磁石片、 56~59…載置部、 56a~59a…磁石片、 110…チャンバ、 200…サーキュレータ、 201,202…ハニカムメッシュ、 210…イオン数測定器、 A…空気、 A+,A-…空気イオン、 D…空間、 E…電界、 M…中央位置、 P…塵埃、 P-…帯電塵埃、 S…回転面、 U…下端位置。