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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】貨幣処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07G 1/00 20060101AFI20230718BHJP
   G07D 1/00 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
G07G1/00 331A
G07D1/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020197879
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086068
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000116987
【氏名又は名称】旭精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】麻生 恒弘
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-216208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07G 1/00- 1/12
G07D 1/00- 3/16
G07D 9/00-13/00
G06Q 40/00-40/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入金される貨幣を1枚ずつ分離し、分離された前記貨幣の金種を1枚ずつ検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて入金された前記貨幣を金種毎に格納容器に格納し、前記格納容器から前記貨幣を1枚ずつ払い出す払出手段と、
釣銭金額に基づいて、前記格納容器に格納されている前記貨幣から金額の大きい金種の前記貨幣を優先して、払い出す前記貨幣の金種と枚数を演算し、前記払出手段によって釣銭を払い出す制御を行う制御手段と、
前記制御手段によって制御され、外部装置とデータの送受信を行う通信手段と、
を有し、前記外部装置から取得した情報に基づいて前記格納容器に格納されている前記貨幣を払い出す貨幣処理装置において、
前記制御手段は、入金された前記貨幣であって、前記格納容器に格納された前記貨幣の合計金額を演算し、前記通信手段を介して該合計金額を前記外部装置に出力する制御と、
前記通信手段を介して前記外部装置から前記釣銭金額を入力する制御と、
前記釣銭金額は、前記外部装置に出力された前記合計金額と前記外部装置が保有する売上金額の合計との差に基づいて前記外部装置によって演算されたものであり、前記貨幣の金種は、第1の金額の上位金種と、前記第1の金額より少額であって前記第1の金額の約数ではない第2の金額の中位金種と、前記第2の金額より少額であって前記第1の金額の約数である第3の金額の下位金種と、を含み、前記入力された前記釣銭金額に基づいて払い出す前記貨幣の金種と枚数を、金額の大きい金種から小さい金種に向かい順に前記格納容器に格納されている前記貨幣の金種と枚数の範囲内で演算し、前記下位金種の不足によって前記上位金種と前記下位金種または前記上位金種と前記中位金種と前記下位金種を組み合わせて払い出せない場合であって一組の前記上位金種と前記下位金種を組み合わせて払い出す金額が前記第2の金額の倍数の金額である場合、一組の前記上位金種と前記下位金種を組み合わせて払い出す代わりに前記中位金種によって払い出す枚数を演算する制御と、を実行でき、
前記情報が払い出す前記貨幣の金種と枚数である場合は、該払い出す前記貨幣の金種と枚数を払い出し、
前記情報が払い出す前記釣銭金額である場合は、前記釣銭金額に基づいて払い出す前記貨幣の金種と枚数を演算し、該演算によって求められた前記貨幣の金種と枚数を払い出すことを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項2】
前記上位金種の金額は前記下位金種の金額の5倍であり、前記中位金種の金額は前記下位金種の金額の2倍であることを特徴とする請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
前記上位金種と前記下位金種を組み合わせて払い出せない場合の金額が、前記下位金種の金額の6倍または8倍の金額であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記釣銭金額に対して払い出す前記貨幣の金種と枚数を演算する場合に、前記釣銭金額以下であって最大の金額の金種から最小の金額の金種に向かって金額が下がる順に金種毎の払出可能な枚数を判断する制御を含むことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記上位金種と前記下位金種を組み合わせて払い出せる場合であり、かつ前記格納容器に格納されている前記下位金種の格納枚数が所定枚数より少ない場合であり、かつ前記上位金種と前記下位金種を組み合わせて払い出す金額が前記第2の金額の倍数の金額である場合、前記上位金種と前記下位金種を組み合わせて払い出さずに前記中位金種によって払い出す制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項6】
前記外部装置が保有する前記売上金額の合計には、割引額が含まれることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の貨幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入金された貨幣を金種毎に格納し、払い出す金額に基づいて格納されている貨幣を出金する貨幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、国家によって発行する流通貨幣は、複数の金種のコインと紙幣を含む。コインと紙幣は金種毎にサイズ、デザイン、材質などを変えているので、誰にでも容易に金種が識別できる。金種毎に異なる特徴を有するので、機械により金種を識別することも可能である。そこで、機械によって貨幣の金種を識別し、金種に応じた格納部に貨幣を格納し、その格納部から必要に応じて所望の枚数の貨幣を排出する貨幣処理装置が考えられている。
【0003】
例えば、金種毎に格納されたコインを一枚ずつ送り出す装置として、特開2013-143038号公報の貨幣処理装置が知られている。
【0004】
この貨幣処理装置は、まず、入金部から投入された複数枚の貨幣を、一枚ずつに分離して送り出す工程を備える。次に続く行程は、1枚ずつ搬送される貨幣の金種を識別する工程である。その次に続く行程は、識別された貨幣を金種毎に格納する工程である。その次に続く行程は、入金された金額と購入金額から釣銭金額及び金種毎の払出枚数を演算して出金する工程である。貨幣処理装置は、複数の行程を備え、貨幣の入金、格納、払出を行う。
【0005】
また、入金された貨幣は、金種毎に格納され、出金する釣銭に利用される。また、出金する硬貨は、常に全金種が払い出せる状態にあるわけではない。入金が少なく、払出が多い金種の貨幣は、格納枚数が少なくなり、払出に不足が生じる場合がある。このような場合、貨幣処理装置は、不足した金種の貨幣と同額となるように複数枚の少額の金種の貨幣によって代替して払い出す制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-143038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の貨幣処理装置では、釣銭の金額に対して、金額の大きい金種から小さい金種へ順番に、払い出す金種の貨幣の枚数を決める方法がとられている。また、金額の大きい金種の貨幣が不足した場合に、払い出しのできない貨幣の金額と同額となる複数枚の他の貨幣によって代替して出金していた。
【0008】
また、従来の技術では、金種毎に、収納枚数がニアエンプティかニアフルかその何れでも無いかを判断していた。そして、ニアエンプティとなった金種の貨幣は、払い出し枚数が不足する可能性があるので、貨幣処理装置は払い出しを行わない制御をしていた。また、ニアフルの金種の貨幣は、入金された貨幣を格納できなくなる可能性があるので、貨幣処理装置は、優先的に払い出す制御をしていた。また、何れでも無い場合は、貨幣処理装置は通常の払い出しの制御をしていた。このように、貨幣処理装置は、格納枚数に応じて、払い出しの制御を行っていた。
【0009】
ここで、一千円紙幣、二千円紙幣、五千円紙幣の紙幣が格納され、これらを用いて釣銭を払い出す貨幣処理装置であって、高額の金種を優先して払い出す貨幣処理装置の例を説明する。6000円の釣銭を払い出すときに、各紙幣が十分に格納されている場合は、貨幣処理装置から五千円紙幣が1枚、二千円紙幣が0枚、一千円紙幣が1枚払い出される。しかし、一千円紙幣が不足している場合に、6000円に対して高額紙幣から順番に払い出し枚数を決めると、5千円紙幣を一枚払い出す判断の後、残りは1000円となる。しかし、一千円紙幣が無く、また、一千円紙幣を代替する金種の貨幣も無いので、釣銭が払い出せない結果となる。仮に、1000円を代替できる硬貨が格納されていれば、その硬貨によって代替出金されるが、その硬貨も不足していれば、釣銭は払い出せない。
【0010】
本発明は、不足の貨幣を他の貨幣によって貨幣単位で代替するだけでは無く、払い出す金額に基づいて貨幣を払い出す制御を行う貨幣処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のコイン処理装置は、入金される貨幣を1枚ずつ分離し、分離された前記貨幣の金種を1枚ずつ検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて入金された前記貨幣を金種毎に格納容器に格納し、前記格納容器から前記貨幣を1枚ずつ払い出す払出手段と、釣銭金額に基づいて、前記格納容器に格納されている前記貨幣から金額の大きい金種の前記貨幣を優先して、払い出す前記貨幣の金種と枚数を演算し、前記払出手段によって釣銭を払い出す制御を行う制御手段と、前記制御手段によって制御され、外部装置とデータの送受信を行う通信手段と、を有し、前記外部装置から取得した情報に基づいて前記格納容器に格納されている前記貨幣を払い出す貨幣処理装置において、前記制御手段は、入金された前記貨幣であって、前記格納容器に格納された前記貨幣の合計金額を演算し、前記通信手段を介して該合計金額を前記外部装置に出力する制御と、前記通信手段を介して前記外部装置から前記釣銭金額を入力する制御と、前記釣銭金額は、前記外部装置に出力された前記合計金額と前記外部装置が保有する売上金額の合計との差に基づいて前記外部装置によって演算されたものであり、前記貨幣の金種は、第1の金額の上位金種と、前記第1の金額より少額であって前記第1の金額の約数ではない第2の金額の中位金種と、前記第2の金額より少額であって前記第1の金額の約数である第3の金額の下位金種と、を含み、前記入力された前記釣銭金額に基づいて払い出す前記貨幣の金種と枚数を、金額の大きい金種から小さい金種に向かい順に前記格納容器に格納されている前記貨幣の金種と枚数の範囲内で演算し、前記下位金種の不足によって前記上位金種と前記下位金種または前記上位金種と前記中位金種と前記下位金種を組み合わせて払い出せない場合であって一組の前記上位金種と前記下位金種を組み合わせて払い出す金額が前記第2の金額の倍数の金額である場合、一組の前記上位金種と前記下位金種を組み合わせて払い出す代わりに前記中位金種によって払い出す枚数を演算する制御と、を実行でき、前記情報が払い出す前記貨幣の金種と枚数である場合は、該払い出す前記貨幣の金種と枚数を払い出し、前記情報が払い出す前記釣銭金額である場合は、前記釣銭金額に基づいて払い出す前記貨幣の金種と枚数を演算し、該演算によって求められた前記貨幣の金種と枚数を払い出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上位装置から入力された釣銭金額に基づいて、払い出す貨幣の金種と枚数を演算し、格納されている貨幣の中から、演算結果に基づく金種と枚数の貨幣を払い出す貨幣処理装置を提供できる。また、払い出す貨幣が不足した場合に、払い出す金額に応じて払い出す貨幣の金種と枚数を演算することで、好適に釣銭を払い出すことができる貨幣処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、コイン処理装置の概要を説明する外観図である。
図2図2は、コイン処理装置の概要を説明する図である。
図3図3は、コイン処理装置のブロック図である。
図4図4は、コイン処理装置の動作を説明する第1のフローチャートである。
図5図5は、コイン処理装置の動作を説明する第2のフローチャートである。
図6図6は、コイン処理装置の処理に使用するデータを説明する図である。図6(a)は、演算に用いるデータの例であり、図6(b)は、各金種のデータの例である。
図7図7は、コイン処理装置の動作を説明する第3のフローチャートである。
図8図8は、コイン処理装置の動作を説明する第4のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0015】
まず、貨幣処理装置として、コイン処理装置の外観を説明する。図1は、コイン処理装置の概要を説明する外観図である。図1では、振分部5のカバーを外した状態の外観の斜視図である。貨幣処理装置1として、入金したコインを格納し、格納されているコインを払い出すコイン処理装置を用いて説明する。貨幣処理装置1は、外装4に覆われている。振分部5のカバーがあれば、略立方体状の外形である。
【0016】
コインを投入する投入口2の開口が上面に配置されている。払出されるコインを受けるトレー3が、貨幣処理装置1の一方の面に配置されている。トレー3側を表側とすると、裏側の方向に、投入口2、振分部5が配置されている。
【0017】
例えば、貨幣処理装置1が釣銭機であった場合、物品の代金として、投入口2にコインを入れる。後述する制御回路によって、投入されたコインの金種及び枚数が取得され、投入された入金額が取得される。POSシステムなどの外部装置に入金額を送信し、売上金額と入金額とから釣銭の有無及び釣銭金額が演算される。また、入金額と釣銭額の差が、コインホッパーに格納される格納金額となる。通常は、商品などの売上金額が貨幣処理装置1に格納する格納金額となるが、割引などがあれば、その分を差し引いた値が格納金額となる場合がある。釣銭がある場合は、釣銭金額が外部装置から貨幣処理装置1に送信され、貨幣処理装置1によって払い出す貨幣の金種、枚数が演算され、貨幣が格納されているコインホッパーを制御して釣銭としての貨幣を排出する。釣銭は、トレー3に送られる。
【0018】
次に、貨幣処理装置1の内部構成の概要について図2を用いて説明する。図2は、コイン処理装置の概要を説明する図である。一般に使用されているコインは、複数の金種によって構成される。コインは、サイズ、材質、デザインなどの要素が金種毎に異なっている。コイン処理装置は、コインを識別して金種毎に分けて格納容器に格納することができる。また、格納されたコインは、払出しなどに再利用される。
【0019】
貨幣処理装置1は、例えば、自動釣銭機、自動両替機等である。貨幣処理装置1には、容器に格納された複数のコインを一枚ずつ分離して搬送する分離搬送機構が備わる。また、投入口2には、同時に複数枚のコイン10を入れることができ、投入されたコイン10は、分離部6の貯留部に一時的に格納される。貯留部に格納された複数のコイン10は、分離部6によって一枚ずつに分けられ、受渡部8を介して識別部7に受け渡される。識別部7はコイン10の金種を識別し、振分部5に受け渡す。識別部7によって識別されたコイン10は、振分部5によって金種毎に格納される。金種毎に格納されているコイン10は、払出に使用される。識別部7は、コインの金種を検出する検出手段とも言える。
【0020】
貨幣処理装置1は、大きく分けて3つの部分に分けられる。投入口2から投入されたコイン10を一時的に格納し、1枚ずつ区分して送り出す分離部6、コイン10の金種を識別する識別部7、コイン10を金種毎に分けて格納する振分部5である。コイン送出装置は、投入されたコイン10を1枚ずつ区分して送り出す装置であり、分離部6を含む。また、コイン送出装置は、分離部6に加えて識別部7など他の機能を含む構成でも良い。ここでは、コイン送出装置として分離部6と識別部7を含む構成の装置として説明する。
【0021】
コイン10を投入口2へ入れると、第1のセンサー47によってコイン10を検出する。コイン10を検出すると、コンベヤー11を駆動し、コイン10を搬送する。搬送されたコイン10は、コイン通路12に落とされる。コイン10はコイン通路12を通り、貯留容器13に一時的に格納される。コイン10を一時的に格納する貯留部は貯留容器13を含む。金種に関係無く複数のコイン10を貯留容器13に一時的に格納できる。コンベヤー11は、コイン10を搬送する装置であり、ベルト式、ローラー式、チェーン式、スクリュー式など様々なタイプのものが使用できる。また、投入口2から貯留容器13までのコイン10の搬送経路の途中にコンベヤー11が配置されている。第1のセンサー47は、投入口2から貯留容器13までのコイン10の搬送経路の途中に配置される。例えば、第1のセンサー47は、コンベヤー11の近傍に配置され、コンベヤー11に載置されているコイン10を検出する。また、第1のセンサー47は、コイン10の搬送経路において、貯留容器13よりも上流に配置される。貯留容器13にコイン10が入る前に、コイン10が投入口2から投入されているか否かを検出する必要があるからである。
【0022】
コンベヤー11を駆動すれば、コイン10を貯留容器13に格納でき、コンベヤー11を停止すれば、コイン10の貯留容器13への格納を停止できる。また、投入口2から貯留容器13までのコイン10の搬送経路の途中に、この搬送経路を開閉する開閉部材、例えばフラップやシャッターなど、を設けることでも、コイン10の移動を制御することができる。開閉部材を開けることでコイン10の移動を可能とし、閉めることでコイン10の移動を停止する。開閉部材は、コイン10の搬送経路を開閉するシャッターなどでも良い。
【0023】
ディスク15はコイン10が摺動する保持ベース14の上を、ディスク回転軸16を中心にして矢印で示されるディスク回転方向18に回転する。保持ベース14は、表面を鉛直方向に対して交差する方向に、例えば45度の角度で、傾斜した状態で配置されている。傾斜角度は、30度から80度程度でも良いが、40度から50度の間が好ましい。傾きが小さいと不要なコインを凹部から滑り落せなくなり、傾斜が大きいと凹部にコインが入り難くなる。
【0024】
ディスク15には、3カ所の凹部17が設けられ、そこにコイン10が入る。ディスク15の鉛直方向側、すなわち下方側には、貯留容器13が配置されている。貯留容器13は図中破線で示されている。ディスク15の外周に沿って、貯留容器13の底部が形成されている。貯留容器13は、ディスク15の下側半分から三分の一程度を覆う。貯留容器13には、複数のコイン10を堆積させることができる。また、保持ベース14の上にコイン10が堆積するように傾斜させているので、コイン10がディスク15側にもたれ掛ると共に貯留容器13の下部に堆積する。コイン10がディスク15側にもたれ掛る状態でディスク15を回転させると、コイン10が凹部17に一枚ずつ入り、搬送される。すなわち、貯留容器13と対向する位置にディスク15及び保持ベース14が配置されている。貯留容器13、保持ベース14、ディスク15によって囲われたコイン10の貯留部に、識別部7によって金種を識別する前の複数枚のコイン10が一時的に格納される。
【0025】
保持ベース14のディスク15の外周の外側に、ディスク15の外周を取り囲むように外壁が設けられ、コイン10の移動を制限している。この外壁とディスク15に設けられた凹部17によって、コイン10を1枚ずつ保持することができる。コイン10は、保持ベース14の平坦な底面に、表面又は裏面が対向するように保持される。そして、コイン10の周面は、凹部17の内側の側面に当接し、コイン10の周面が押され、保持ベース14の上を摺動する。ディスク15を回転させることで、コイン10が受渡部8に移動する。受渡部8は、分離部6から識別部7にコイン10を受け渡す受渡領域であり、外壁が配置されていない。また、受渡部8は、ホイール19が回転したときのホイール19の先端の軌跡にコイン10が係わる位置から、ディスク15からホイール19にコイン10が受け渡され、ディスク15からコイン10が離れる位置までを含む。また受渡部8は、ディスク15が回転したときのディスク15の先端の軌跡からコイン10が係わらなく位置までを含む。
【0026】
ディスク15もホイール19も回転体である。ディスク15を第1の回転体、ホイール19を第2の回転体とすると、コイン10は、第1の回転体から第2の回転体に受け渡されることになる。分離部6の上部であり、識別部7の下部である位置においてコイン10が受け渡される。ディスク15によって分離部6の上部に搬送されたコイン10は、ディスク15から識別部7へ送り出される。また、貯留容器13の下部には、第2のセンサー48が配置されている。貯留容器13に格納されているコイン10は、第2のセンサー48によって検出することができる。後述する制御回路は、第2のセンサー48の検出結果に基づいて貯留容器13にコイン10が格納されているか否かを判断することができる。
【0027】
識別部7では、平坦な保持ベース14の上をホイール19が、ホイール回転軸20を中心にして矢印で示されているホイール回転方向21に回転する。ホイール19は、ディスク15の回転と連動して回転している。分離部6から送り出されるコイン10は、コイン10の周面がホイール19と当接し、押されて保持ベース14の上を移動する。コイン10は、識別部7の検出領域を移動中に、サイズ、材質等の特徴を識別センサー9によって検出し、後述する制御回路によってコイン10の金種を識別する。識別センサー9と後述する制御回路は、コイン10の金種を識別する識別手段とも言える。ホイール19は、識別センサー9の検出領域にコイン10を搬送する。コイン10は、一枚ずつ区分して搬送されるので、金種が好適に識別される。コイン10は、案内部22に沿って移動し、次工程の振分部5に受け渡される。
【0028】
振分部5には、案内部22に続くレール46が配置されている。このレール46に沿ってコイン10が搬送される。レール46に沿って搬送ベルト24が配置されている。搬送ベルト24には、搬送ピン23が等間隔で配置されている。隣り合う搬送ピン23間に1枚のコイン10が入る。搬送ピン23に押されてコイン10がレール46に沿って搬送される。搬送ベルト24は、無端ベルトであり、ディスク15およびホイール19と連動して、矢印で示されている搬送ベルト回転方向25に回転する。搬送ピン23に区切られ、コイン10を一枚ずつ搬送することができる。
【0029】
レール46に沿って、第1スライダー26、第2スライダー27、第3スライダー28、第4スライダー29、第5スライダー30、第6スライダー31、第7スライダー32、第8スライダー33、第9スライダー34が配置されている。これらのスライダーは、予め決められた金種のコインホッパーに接続されている。コイン10は、対応する金種のスライダーに落とされ、その後、対応する金種のコインホッパーの格納容器に格納される。コインホッパーはコインを1枚ずつ排出する払出手段を備え、格納容器に格納されているコインを払出手段によって一枚ずつ排出する。
【0030】
第1スライダー26は第1コインホッパー35に、第2スライダー27は第2コインホッパー36に、第3スライダー28は第3コインホッパー37に、第4スライダー29は第4コインホッパー38に、第5スライダー30は第5コインホッパー39に、第6スライダー31は第6コインホッパー40に、第7スライダー32は第7コインホッパー41に、第8スライダー33は第8コインホッパー42に、第9スライダー34は第9コインホッパー43に接続されている。
【0031】
コインホッパーが9台配置されているので9種類までの金種のコイン10に対応することができる。例えば、第9コインホッパー43は、旧コインの流通を抑制するために、コインの回収用に使用できる。このように第9コインホッパー43を使用した場合には、他のコインホッパーによって8金種までのコインに対応できる。また、使用量の多い金種がある場合は、同一金種に対して2台のコインホッパーを用いることができる。コインホッパーを交互に使用する制御や、一方がフルまたはエンプティーになった場合に切替える制御をすることで、同一金種に対して2台をあてがうことができる。
【0032】
各コインホッパーは、排出ベルト44に沿って配置され、排出ベルト44の上にコイン10を排出できる。排出ベルト44を駆動することで、各コインホッパーから排出されたコイン10をトレー3に搬送できる。
【0033】
投入口2に入れられたコイン10は、一枚ずつ金種が識別され、識別結果に対応するコインホッパーの格納容器に格納される。また、各コインホッパーの格納容器から必要な枚数のコイン10が排出され、トレー3に送られる。投入口2から投入されたコイン10を、払出用に再利用できる。
【0034】
次に、コイン処理装置についてブロック図を用いて説明する。図3は、コイン処理装置のブロック図である。
【0035】
貨幣処理装置1は、制御回路50、メモリー51、タイマー52、割込回路53、識別センサー9、外部IF54、第1のセンサー47、第2のセンサー48、コンベヤー駆動回路55、コイン搬送部駆動回路56、フラップ駆動回路57、ホッパー駆動回路58、排出ベルト駆動回路59を有する。また、外部IF54は外部装置60とデータの送受信を行うためのインターフェースであり、外部IF54には、外部装置60が接続されている。
【0036】
制御回路50はCPUを含み、メモリー51に記憶されているプログラム、設定値に従って、装置全体の各種制御を行う制御手段である。
【0037】
メモリー51は制御回路50の制御によって動作し、プログラム、初期設定値などを記憶するROM、一時的なデータの保存、ワーキングメモリ、設定値などを記憶するRAMを含む。
【0038】
タイマー52は、制御回路50の制御によって動作する。タイマー52は時刻を計時し、また時間を計測することができる。制御回路50は、時刻や時間を取得できる。また発振回路の信号を分周し、所定のタイミングや所定周期で信号を出力することができる。
【0039】
割込回路53は、制御回路50の制御によって動作する。割込回路53は、各種入力手段の入力に連動して割込信号を生成し、制御回路50に出力することができる。また、割込回路53は、タイマー52からの信号に基づいて割込信号を生成し、制御回路50に出力することができる。これにより、タイマー52に基づき定期的な割込を生じさせることができる。
【0040】
識別センサー9は、制御回路50の制御によって動作する。識別部7に配置され、コイン10の特徴を検出する。制御回路50は、識別センサー9によって検出された検出信号を取得することができる。制御回路50は、取得した検出信号に基づいて、コイン10の金種を判断することができる。判断の基礎となるデータはメモリー51に記憶されている。メモリー51に記憶されているデータと取得した検出信号を比較し、コイン10の金種を識別できる。制御回路50は、識別した金種に基づいて、各種制御を行う。
【0041】
外部IF54は、制御回路50の制御によって動作する。外部IF54は、外部装置60との間でデータの送受信を行うインターフェースである。外部装置60は、貨幣処理装置1の外部に配置された装置であり、インターネットなどのネットワークに接続されている。貨幣処理装置1は、通信手段を備える。通信手段は、外部IF54を含み、また、制御回路50の処理の一部を含む。貨幣処理装置1は、外部IF54を介して、ネットワークに接続されている外部装置60とデータ通信を行うことができる。
【0042】
外部装置60は、例えば、POSシステムの制御装置などである。貨幣処理装置1は、外部装置60に、制御回路50が取得した情報を送信することができる。また貨幣処理装置1は、外部装置60から情報を取得することができる。例えば、POSシステムから、金種、枚数が指定されたコインの払い出し処理の指示があれば、制御回路50は、指定された金種のコインホッパーから、指定された枚数のコイン10を排出する制御を行う。
【0043】
第1のセンサー47は、制御回路50の制御によって動作する。第1のセンサー47は、投入口2にコイン10が投入されたか否かを検出する。制御回路50は、検出結果に基づいて、コンベヤー11の上のコイン10の有無を判断することができる。第1のセンサー47は、例えば2種類以上のセンサーを配置し、検出漏れを防止する構成が好ましい。
【0044】
第2のセンサー48は、制御回路50の制御によって動作する。第2のセンサー48は、貯留容器13にコイン10が入っているか否かを検出する。制御回路50は、検出結果に基づいて、貯留容器13の下部に堆積するコイン10の有無を判断することができる。すなわち、制御回路50は、貯留部にコイン10が残っているか判断できる。
【0045】
コンベヤー駆動回路55は、制御回路50の制御によって動作する。コンベヤー駆動回路55は、制御回路50の制御によってコンベヤー11を駆動する。コンベヤー11は無端ベルトを備え、一対のプーリーにかけ回されている。プーリーを不図示のモーターによって回動させることで、コンベヤー11を駆動する。
【0046】
コイン搬送部駆動回路56は、制御回路50の制御によって動作する。コイン10の搬送部は、分離部6のディスク15、識別部7のホイール19、振分部5の搬送ベルト24を含む。これらの搬送部を制御回路50の制御によって駆動する。不図示のモーターによって、ディスク15とホイール19、搬送ベルト24が駆動される。ディスク15とホイール19は、それぞれ逆方向に同期して回転するように不図示の輪列によって接続されている。ディスク15が左回転し、この回転に同期してホイール19が右回転する。また、ホイール19と搬送ベルト24も同期して回転する。このように同期させて駆動することで、分離部6で一枚ずつ繰り出されたコイン10を、一枚ずつ管理しながら搬送することができる。
【0047】
フラップ駆動回路57は、制御回路50の制御によって動作する。搬送ベルト24によって搬送されるコイン10は、識別された金種に応じて、第1スライダー26、第2スライダー27、第3スライダー28、第4スライダー29、第5スライダー30、第6スライダー31、第7スライダー32、第8スライダー33、第9スライダー34の何れかに落とされる。各スライダーにはフラップが設けられている。このそれぞれのフラップをフラップ駆動回路57が制御回路50の制御によって個別に駆動する。フラップを駆動することで、コイン10を通過させるか、スライダーに落とすことができる。
【0048】
ホッパー駆動回路58は、制御回路50の制御によって動作する。ホッパー駆動回路58は、制御回路50の制御によって、第1コインホッパー35、第2コインホッパー36、第3コインホッパー37、第4コインホッパー38、第5コインホッパー39、第6コインホッパー40、第7コインホッパー41、第8コインホッパー42、第9コインホッパー43のそれぞれのコインホッパーを個別に駆動し、一枚ずつコイン10を排出する。また、それぞれのコインホッパーはコインの排出を検出し、排出検出信号をホッパー駆動回路58に出力する。ホッパー駆動回路58は、排出検出信号を取得し、制御回路50に出力する。制御回路50は、ホッパー駆動回路58からの排出検出信号を取得する。排出検出信号はコインホッパーからコインが排出される毎に出力される。この信号を取得し計数することで排出したコインの枚数が分かる。すなわち、制御回路50は、各コインホッパーが排出したコイン10の枚数に基づいて各コインホッパーに格納されている枚数を演算し、取得することができる。制御回路50は、格納枚数に基づく処理が可能となる。
【0049】
排出ベルト駆動回路59は、制御回路50の制御によって動作する。排出ベルト駆動回路59は、制御回路50の制御によって排出ベルト44を駆動する。排出ベルト44を駆動することで、排出ベルト44の上のコイン10をトレー3に移動することができる。
【0050】
次に貨幣処理装置の動作について、貨幣処理装置としてコイン処理装置を用いて説明する。図4は、コイン処理装置の動作を説明する第1のフローチャートである。外部装置60と貨幣処理装置1について動作を説明する。制御回路50は、メモリー51に記憶されているプログラムに従って、貨幣処理装置1の全体を制御する。
【0051】
まず、ステップS1では、貨幣処理装置1に接続されているPOSシステムなどの外部装置60において、商品毎に、売上金額が入力され、全ての商品について売上金額が入力されたか否かが判断される。入力が完了すればステップS4へ、入力が完了していなければステップS2へ移行する。
【0052】
ステップS2では、売上金額の入力が未完了であるので、残された商品の売上金額を入力する。ステップS3では、入力された売上金額の合計を計算する。そして、ステップS1へ移行する。
【0053】
ステップS4では、外部装置60が、貨幣処理装置1に対して、入金するように要求する。すなわち、商品の対価として貨幣処理装置1への貨幣の入金を要求する。
【0054】
ステップS5では、貨幣処理装置1による入金がされる。投入口2に投入されたコイン10を、コンベヤー駆動回路55を駆動してコンベヤー11を回転させ、貯留容器13に導く。
【0055】
次にステップS6では、貯留容器13に格納されたコイン10は、識別部7に搬送され、金種を識別される。金種を識別されたコイン10は、振分部5に搬送され、金種に応じたコインホッパーに格納される。また、制御回路50は、投入されたコイン10の金種と枚数を取得する。
【0056】
次にステップS7では、入金が完了したか否かを判断する。入金が完了していればステップS8に、入金が未完了ならばステップS5に移行する。制御回路50は、プログラムに従い、入金額が売上金額以上になったか否かを判断し、また、コンベヤー11や貯留容器13内にコイン10が残っているか否かを判断し、入金が完了したか否かを判断する。
【0057】
次にステップS8では、入金された合計の金額を計算する。
【0058】
次にステップS9では、入金された入金額を外部装置60に通知する。
【0059】
次にステップS10では、売上合計金額を入金額から差し引いて、釣銭額を演算する。
【0060】
次にステップS11では、求めた釣銭額を貨幣処理装置1に通知し、釣銭の払出を要求する。但し、釣銭額が0の場合は、釣銭を払出す必要がないので、ステップS17に移行する。
【0061】
次にステップS12では、外部装置60から取得した釣銭額に基づいて、払出す金種と枚数を演算する。
【0062】
次にステップS13では、演算の結果である払出す金種と枚数と、貨幣処理装置1に格納されているコイン10の金種と枚数とに基づいて、払出が可能か否かを判断する。払出が可能ならばステップS14に、払出が不可能ならばステップS16に移行する。例えば、金種毎に、払出す枚数と、格納されている枚数を比較する。貨幣処理装置1に格納されているコイン10の枚数が、払出す枚数より少なければ、その金種については、払出すことができない。払出すことができない金種があれば、払出が不可能と判断する。
【0063】
次にステップS14では、釣銭の払出が可能と判断され、演算で求めた金種と枚数のコイン10を、貨幣処理装置1から払出す。
【0064】
次にステップS15では、貨幣処理装置1に格納されているコイン10の枚数に変化が生じたので、格納しているコイン10の枚数を更新する。
【0065】
次にステップS16では、釣銭が、払出されたことを通知する。払い出した金種と枚数も通知する。
【0066】
次にステップS17では、釣銭が払出されたことの通知を受け、払い出した金種と枚数と金額を記録する。また、外部装置60においても、貨幣処理装置1のコイン10の格納数を管理する場合は、入金されたコイン10の金種と枚数、払出したコイン10の金種と枚数のデータを更新する。入金があればデータに加え、払出があればデータから減らす。
【0067】
この様に、貨幣処理装置1では、払出す釣銭金額を外部装置から入力し、金種と枚数を演算し、格納されているコイン10から払出を行う。
【0068】
次に釣銭金額から払出す金種と枚数を演算する処理について図5図6を用いて説明する。図5は、コイン処理装置の動作を説明する第2のフローチャートである。図6は、コイン処理装置の処理に使用するデータを説明する図である。図6(a)は、演算に用いるデータの例であり、図6(b)は、各金種のデータの例である。
【0069】
払出す釣銭金額に対して、金種と枚数を演算する場合に、問題となるのは、格納されている貨幣が不足した場合である。格納されている貨幣が無い金種がある場合に、他の金種の貨幣で代替が可能か否かを判断するとともに、代替可能の場合は代替して払出す金種と枚数を演算する。払出す金種と枚数を演算する場合に、払出す総枚数が少なくなるように、金額の大きい金種を優先して、なるべく少額の金種の貨幣が少なくなるように払出す枚数を決める。
【0070】
ユーロコインは2ユーロ、1ユーロ、50セント、20セント、10セント、5セント、2セント、1セントの8金種のコインが広く使われている。20は50の約数ではなく、また2は5の約数ではない。よって50セントコインは、20セントコインだけでは代替することができない。また、5セントコインは、2セントコインだけでは代替することができない。日本の貨幣の場合でも、5000円紙幣は、2000円紙幣だけでは代替することができない。貨幣には、金額が約数となっていない金種があり、1金種だけでは代替することができない場合がある。貨幣の例としてユーロや円を示しているが、これらに限られることは無い。また、硬貨のみを処理する装置、紙幣のみ処理する装置に限らず、硬貨と紙幣を処理する装置にも適用できる。
【0071】
例えば、代替して払い出す場合に、上位金種から払出す金種と枚数を決めていく場合を考える。ここで、第1の金額として50セントを上位金種、第2の金額として20セントを中位金種、第3の金額として10セントを下位金種とする。釣銭額が80セントの場合に、各金種のコインが十分に多く格納されていれば、払出す金種と枚数は、50セントコイン1枚、20セントコイン1枚、10セントコイン1枚となる。ここで、10セントユーロ以下の金種の貨幣が格納されていなかった場合に問題が生じる。まず、50セントコインを1枚払出す設定にすると、残額が30セントとなる。次に、20セントコインを1枚払出す設定にすると、残額が10セントとなる。10セント以下の貨幣が格納されていない場合は、払出ができないと判断される。しかし、釣銭額80セントは、20セントコイン4枚で払出すことも可能である。上位金種を中位金種、下位金種に対して優先して、すなわち最高額の金種から最少額の金種に向かって順番に判断する場合に、払出ができる場合であっても、払出ができないと判断してしまう場合がある。釣銭の払出ができない問題が生じると、不足コインの補充などの機器のメンテナンスが必要となる。このような問題を解決することで、メンテナンスの回数を減らすことができ、また釣銭を受ける者にとっても釣銭が払い出されるので利便性が向上する。第1の金額の上位金種と、第1の金額より少額であって第1の金額の約数ではない第2の金額の中位金種と、第2の金額より少額であって第1の金額の約数である第3の金額の下位金種と、を含み、上位金種または下位金種の不足によって上位金種と下位金種を組み合わせて払い出せない場合であって上位金種と下位金種を組み合わせて払い出す金額が第2の金額の倍数の金額である場合、中位金種によって払い出すことができる場合がある。
【0072】
貨幣処理装置1は、外部装置60から釣銭金額と釣銭の払出の指示がされた場合に、釣銭金額から払い出す貨幣の金種と枚数を演算し、求めた貨幣の金種と枚数に基づいて、貨幣処理装置1に格納されている貨幣から払出す。次に、釣銭金額から払い出す金種と枚数を演算する処理について説明する。
【0073】
図6(a)には、処理に用いるデータを図に示した。データは、制御に用いるためにメモリー51に記憶される。処理データ表70は、項目欄71とデータ欄72があり、それぞれ対応している。売上金額Nは、買われた商品の料金の合計金額であり、外部装置60によって計算される。入金額Mは貨幣処理装置1に入金された貨幣の合計金額である。貨幣処理装置1は、入金された貨幣の金種を識別し、入金された貨幣の枚数をカウントし、入金された貨幣の金種毎の枚数からを取得し、さらに入金された貨幣の合計金額を演算し、求めることができる。釣銭額Xは外部装置60により演算され貨幣処理装置1に渡される。釣銭額Xは、入金額Mから売上金額Nを減算して求めることができる。払出の可否は、データが1であれば釣銭の払出が可であり、0であれば釣銭の払出が不可であることを示している。払い出す貨幣が不足した場合に釣銭の払出が不可となる。演算に用いる金種の金額の内上位の金種の金額は、演算時上位金種金額Y1と示して用いる。また、下位の金種の金額は、演算時下位金種金額Y2と示して用いる。演算時商Tは、例えば釣銭額Tを演算時上位金種金額Y1で除した場合の商の値である。演算時余Sは、例えば釣銭額Tを演算時上位金種金額Y1で除した場合の余りの値である。演算では、演算時商T、演算時余Sは、0以上の整数を用いる。また、図6(b)を用いて処理に用いる貨幣について説明する。データは、制御に用いるためにメモリー51に記憶される。金種表73には、金種74、金種の金額75、格納枚数76、払出枚数77の項目があり、それぞれ対応している。金種74が第1金種の場合、金額75は1ユーロであり、格納枚数76はGであり、払出枚数77はgで示される。他の金種も同様に示される。格納枚数76は、コインホッパーの格納容器に格納されている貨幣の枚数である。格納枚数76は、新たに格納されれば、その分加えられた値となり、払い出されれば、その分減らされた値となる。図6(a)、図6(b)のような値は、メモリー51に記憶され、制御回路50によって各種制御に用いられる。
【0074】
図5は、釣銭額から払い出す貨幣の金種と枚数を演算する処理のフローチャートである。
【0075】
ステップS20では、処理に用いる釣銭額Xに、外部装置60から取得した釣銭金額を設定する。
【0076】
次に、ステップS21では、演算に用いる演算時上位金種金額Y1に、最初の金種の金額を設定する。例えば、Y1に最大の金額の金種である第1金種の2ユーロを設定する。またこの時、演算時下位金種金額Y2に、Y1で示される金種の次に額の大きい金種を設定する。例えば、Y2に第2金種の金額の1ユーロを設定する。
【0077】
次に、ステップS22では、XをY1で除し、TとSを求める。求めたTと、Y1で示される金種の格納枚数とを比較し払い出せるか否かを判断する。例えば金種が2ユーロの場合、格納枚数G≧演算時商Tならば払出が可能と判断する。
【0078】
ここで、格納枚数G<演算時商Tならば、Y1で示される金種の貨幣による払出可能枚数はG枚である。そして、T-G=tを演算しY1で示される金種の貨幣で払い出せない枚数tを求める。そして、新たにTの値をG枚とし、新たにSの値をS+Y1×tとする。Sの値に払い出せない分の金額を加える。
【0079】
次に、ステップS23では、余りSがあるか否かを判断する。余りがあればステップS24に移行し、無ければステップS28に移行する。余りがないということは、釣銭額Xを払い出すための金種と枚数が決まった状態である。ここでステップS28に移行した場合、ステップS28では、求めたTをY1が示す金種の払出枚数として記憶する。例えば図6に示されるように、Y1が示す金種に対応する払出枚数77をT枚とする。また、余がないので新たなXは0である。そのため、Y1を金額の高い金種から金額の低い金種に順番に変えて処理を進めた場合に、T及びSは0のままで処理が進み、ステップS29、S30、S31、S22、S23、S28の処理をループし、最終的には、ステップS29からステップS32に移行する。ステップS32では、釣銭の払出の可否を判断する。X>0の場合は、釣銭が払い出せない場合であり、払出を不可とする。X=0の場合は、釣銭が払い出せる場合であり、払出を可とする。また、払い出す金種と枚数は、各金種に対応する払出枚数aからhで示される枚数となる。
【0080】
次に、ステップS24では、Y2がY1の約数であるか否を判断する。約数であれば、ステップS28に移行し、約数でなければステップS25に移行する。例えば、Y1が50セントであり、Y2が20セントならば、約数ではないのでステップS25に移行する。例えば、Y1が2ユーロであり、Y2が1ユーロならば、約数であるのでステップS28に移行する。
【0081】
ステップS25は、約数でない場合の続きの処理である。余りSについて、Y2で示す金種以下の金種によって、払い出せるか否かを演算する。
【0082】
次にステップS26では、ステップS25の演算結果が払い出せると判断された場合はステップS28に移行し、払い出させないと判断された場合はステップS27に移行する。
【0083】
ステップS27では、T-1をY1で示す金種によって払い出す枚数として記憶する。例えば、図6に示されるように、Y1が示す金種に対応する払出枚数77をT-1枚とする。そして、払出金種と枚数の未定の残りの釣銭額Xについて、新たなXをSにY1の金額を加えた値とする。そしてステップS29に移行する。
【0084】
ステップS28では、TをY1で示す金種によって払い出す枚数として記憶する。例えば、図6に示されるように、Y1が示す金種に対応する払出枚数77をT枚とする。そして、払出金種と枚数の未定の残りの釣銭額Xについて、新たなXをSとする。そしてステップS29に移行する。
【0085】
次にステップS29では、Y1が最小の金種であるか確認する。Y1が最小の金種であった場合はステップS32へ移行し、最小の金種で無ければステップS30に移行する。
【0086】
ステップS30では、新たなY1を、現在のY1の次に金額の少ない金種の金額とする。
【0087】
次に、ステップS31では、新たなY2をY1の次に金額の少ない金種の金額とする。ここで、Y1の次に金額の少ない金種が無ければ、すなわち、Y1が最小の金額の金種ならば、新たなY2はY1と同額にする。そして、ステップS22に移行する。
【0088】
次に、ステップS32では、釣銭の払出の可否を判断する。X>0の場合は、釣銭が払い出せない場合であり、払出を不可とする。X=0の場合は、釣銭が払い出せる場合であり、払出を可とする。また、払い出す金種と枚数は、各金種に対応する払出枚数aからhで示される枚数となる。
【0089】
ここで、具体的な値で考えてみる。例えば、釣銭金額が62セントであり、格納されているコインは、2ユーロコイン0枚、1ユーロコイン0枚、50セントコイン10枚、20セントコイン10枚、10セントコイン0枚、5セントコイン1枚、2セントコイン4枚、1セントコイン0枚であったとする。
【0090】
まず、ステップS20において、X=62セントが設定される。
【0091】
次にステップS21では、Y1=2ユーロ、Y2=1ユーロが設定される。
【0092】
Y1=50セントになるまで、ステップS22からステップS31の処理がループする。Y1=50セント、Y2=20セントが設定され、ステップS22に処理が移行した場合、Y1=50セント、T=1枚の払出が可能であり、余りS=12セントとなる。
【0093】
ステップS23ではS>0なので、ステップS24に移行する。
【0094】
ステップS24では、Y2はY1の約数では無いので、ステップS25に移行する。
【0095】
ステップS25では、S=12セントをY2以下の金種で払い出せるか演算する。払い出せないので、ステップS27に移行する。
【0096】
ステップS27では、新たなTを1-1=0と設定する。新たなSを12+50=62を設定する。
【0097】
ステップS29では、Y1は最小金種で無いので、ステップS30に移行する。
【0098】
ステップS30では、Y1=20セントを設定する。
【0099】
ステップS31では、Y2=10セントを設定する。
【0100】
再び、ステップS22に戻り、演算し、T=3枚、S=2セントを得る。
【0101】
ステップS23では、ステップS24に移行する。
【0102】
ステップS24では、ステップS25に移行する。
【0103】
ステップS25では、演算の結果は、Y2以下で払い出せる。
【0104】
ステップS26では、演算の結果からステップS28に移行する。
【0105】
ステップS28では、払い出す金種をY1=20セント、T=3枚を記憶し、新たなXをX=2セントとする。
【0106】
ステップS29では、ステップS30に移行する。
【0107】
ステップS30では、Y1=10セント、Y2=5セントを設定する。
【0108】
このような状態では、Y1=2セント、Y2=1セントになるまで、ステップS22からステップS31の処理がループする。
【0109】
Y1=2セントと設定された状態で、ステップS22の処理がされた場合、T=1、S=0となり、ステップS23において、ステップS28に移行する。Y1=2セント、T=1枚を記憶し、新たなXはX=0と設定される。
【0110】
以下、Y1=1セントが設定された状態で、ステップS29の処理になるまで、ステップS22からステップS31の処理がループする。Y1=1セントが設定された状態で、ステップS29の処理がされた場合、ステップS32に移行し、残額が無く、払出可が設定される。62セントの釣銭は、20セント3枚、2セント1枚によって払い出される。
【0111】
下位の金種が上位の金種の約数で無い場合であって、下位の金種以下の貨幣で釣銭の残金を払い出せない場合に、上位の金種の払出枚数を1枚減らし、釣銭の残金にその分加える。新たな釣銭の残金について、上位の金種の約数で無い下位の金種の貨幣によって払い出せるかを演算する。上位金種の貨幣を下位金種の貨幣で代替するだけでは、払い出せない場合であっても、上位金種の払出枚数を1枚減らすことで、下位金種の貨幣で払い出せる場合がある。
【0112】
ここで、ステップS27の処理に移行する場合は、何れかのコインが不足していることを意味する。上記一連の処理は、所定の金種の格納枚数が所定枚数より少なくなった場合だけに、応急的に行う処理であることが好ましい。また、コインが十分に格納されていれば、応急的に行う処理が無くとも良い。そこで、所定の金種の格納枚数が所定枚数より少ない場合に、コインの補充を促す報知を行うとともに、ステップS23のYesの移行先をステップS29とし、所定の金種の格納枚数が所定枚数以上ならばステップS24に移行するように切り替える。このようにすれば、応急的に行う処理は、必要な場合だけ行うことになる。例えば、下位金種である10セントコインが9枚以下になったら、50セントコインと10セントコインの組み合わせで払い出す場合の内、20セントコインで払い出せる場合は、20セントコインで払い出す処理をしても良い。10セントコインが不足すれば、払い出せなくなる可能性が高くなるので、不足する可能性の高い10セントコインの払い出し枚数を少なくする制御を行うのが好ましい。また、他の例としては、下位の金種が、上位の金種のコインを代替できない枚数となったら補充を促す報知を行い、応急的に行う処理を実施する。例えば、上位の金種が10セントコインなら、それよりも下位の金種である5、2、1セントコインを用いて10セントコインを代替できない枚数となった場合である。この様になる金種と枚数の組み合わせは、複数の組み合わせがあるが、予めそのような金種と枚数の組み合わせの条件設定し、格納枚数に変化がある毎に条件を確認する処理を行うことで実施できる。
【0113】
次に、釣銭額から払い出す貨幣の金種と枚数を演算する別の方法を説明する。図7は、コイン処理装置の動作を説明する第3のフローチャートである。
【0114】
ユーロ貨幣の場合であて、50セント以下の金額の金種によって釣銭金額を払い出すときの貨幣の金種と枚数を演算する処理について説明する。
【0115】
ステップS40では、取得した釣銭金額を演算上の残金として設定する。
【0116】
次にステップS41では、残金について50セントコインによって払出が可能な枚数aを演算する。また、50セントコインによって払い出せない残金を求める。
【0117】
次に、ステップS42では、残金の有無を判断し、あればステップS43に移行し、無ければステップS74に移行する。
【0118】
次に、ステップS43では、残金について20セントコインによって払出が可能な枚数bを演算する。また、20セントコインによって払い出せない残金を求める。
【0119】
次に、ステップS44では、残金の有無を判断し、あればステップS45に移行し、無ければステップS74に移行する。
【0120】
次に、ステップS45では、残金について10セントコインによって払出が可能な枚数cを演算する。また、10セントコインによって払い出せない残金を求める。
【0121】
次に、ステップS46では、残金の有無を判断し、あればステップS47に移行し、無ければステップS74に移行する。
【0122】
次に、ステップS47では、残金について5セントコインによって払出が可能な枚数dを演算する。また、5セントコインによって払い出せない残金を求める。
【0123】
次に、ステップS48では、残金の有無を判断し、あればステップS49に移行し、無ければステップS74に移行する。
【0124】
次に、ステップS49では、残金について2セントコインによって払出が可能な枚数eを演算する。また、2セントコインによって払い出せない残金を求める。
【0125】
次に、ステップS50では、残金の有無を判断し、あればステップS51に移行し、無ければステップS74に移行する。
【0126】
次に、ステップS51では、残金について1セントコインによって払出が可能な枚数fを演算する。また、1セントコインによって払い出せない残金を求める。
【0127】
次に、ステップS52では、残金の有無を判断し、あればステップS53に移行し、無ければステップS74に移行する。
【0128】
次に、ステップS53では、50セントコインでの払出があるか否かを判断する。あればステップS54に移行し、無ければステップS66に移行する。残金が在り、50セントコインで支払いがあった場合に、20セントコインで払い出せる可能性があるので、払い出せるか否かを演算する。50は20の約数では無いので、50セントコインの払い出しを1枚減らせば、20セントコイン以下のコインで払い出せる可能性がある。
【0129】
ステップS54では、新たな残金として、ここまでの処理で求めたaよりも1枚少なくした場合における残金を設定する。すなわち、「当初設定した残金-50セント×(a-1)」を演算し、新たな残金とする。
【0130】
次に、ステップS55では、新たなaの値として、ステップS53までの処理で求めたaより1枚少なくした値を設定する。
【0131】
次に、ステップS56では、新たに設定した残金について20セントコインによって払出が可能な枚数bをあらためて演算する。また、20セントコインによって払い出せない残金を求める。
【0132】
次に、ステップS57では、残金の有無を判断し、あればステップS58に移行し、無ければステップS74に移行する。
【0133】
次に、ステップS58では、残金について10セントコインによって払出が可能な枚数cをあらためて演算する。また、10セントコインによって払い出せない残金を求める。
【0134】
次に、ステップS59では、残金の有無を判断し、あればステップS60に移行し、無ければステップS74に移行する。
【0135】
次に、ステップS60では、残金について5セントコインによって払出が可能な枚数dをあらためて演算する。また、5セントコインによって払い出せない残金を求める。
【0136】
次に、ステップS61では、残金の有無を判断し、あればステップS62に移行し、無ければステップS74に移行する。
【0137】
次に、ステップS62では、残金について2セントコインによって払出が可能な枚数eをあらためて演算する。また、2セントコインによって払い出せない残金を求める。
【0138】
次に、ステップS63では、残金の有無を判断し、あればステップS64に移行し、無ければステップS74に移行する。
【0139】
次に、ステップS64では、残金について1セントコインによって払出が可能な枚数fを演算する。また、1セントコインによって払い出せない残金を求める。
【0140】
次に、ステップS65では、残金の有無を判断し、あればステップS66に移行し、無ければステップS74に移行する。
【0141】
次に、ステップS66では、5セントコインでの払出があるか否かを判断する。あればステップS67に移行し、無ければステップS73に移行する。残金が在り、5セントコインで支払いがあった場合に、2セントコインで払い出せる可能性があるので、払い出せるか否かを演算する。5は2の約数では無いので、5セントコインの払い出しを1枚減らせば、2セントコイン以下のコインで払い出せる可能性がある。
【0142】
ステップS67では、新たな残金として、ここまでの処理で求めたdよりも1枚少なくした場合における残金を設定する。すなわち、「当初設定した残金-(50セント×a+20セント×b+10セント×c+5セント×(d-1))」を演算し、新たな残金とする。
【0143】
次に、ステップS68では、新たなdの値として、ステップS66までの処理で求めたdより1枚少なくした値を設定する。
【0144】
次に、ステップS69では、新たに設定した残金について2セントコインによって払出が可能な枚数eをあらためて演算する。また、2セントコインによって払い出せない残金を求める。
【0145】
次に、ステップS70では、残金の有無を判断し、あればステップS71に移行し、無ければステップS74に移行する。
【0146】
次に、ステップS71では、残金について1セントコインによって払出が可能な枚数fをあらためて演算する。また、1セントコインによって払い出せない残金を求める。
【0147】
次に、ステップS72では、残金の有無を判断し、あればステップS73に移行し、無ければステップS74に移行する。
【0148】
次に、ステップS73では、取得した釣銭金額は格納されている貨幣では払出が不可能であることを設定する。
【0149】
次に、ステップS74では、演算の過程で、残金が0となった場合に、このステップに移行した場合は、払出が可能であることが分かる。演算の結果、残金>0であれば、貨幣が不足し、払出が不可能であることが分かる。払い出せるか否かを設定し、払い出す貨幣の金種と枚数を設定する。図6(b)にあるように、各金種74における払出枚数77を確定する。この組み合わせについては、メモリー51に記憶され、制御回路50によって、各種制御に用いられる。
【0150】
例えば、釣銭金額が110セントであり、格納されているコインが、50セントコイン2枚、20セントコイン5枚、10セント以下のコインが0枚であった場合を考える。上位金種から、払出可能な枚数を設定すると、50セントコインが2枚設定され、残金が10セントとなり、払出が不可能となる。そこで、50セントコイン1枚分を残金に含め、新たな残金を60セントとし、あらためて20セントコインから払出が可能か判断する。新たな残金は、20セントコイン3枚で払出が可能であり、残金が0となる。その結果、払出可能と判断され、払い出される硬貨は50セントコイン1枚、20セントコイン3枚が設定される。このように、上位金種の硬貨を下位金種の硬貨で代替する演算では、払出ができない場合であっても、払い出す金額によって払い出す金種及び枚数を演算することで、払い出しが可能となる場合がある。釣銭を払い出し可能とすることで、釣銭の補給に関するメンテナンス作業の回数が削減できる。
【0151】
図8は、コイン処理装置の動作を説明する第4のフローチャートである。日本の2000円紙幣を釣銭に含める場合の処理について説明する。図2等で説明した貨幣処理装置1はコインを処理する装置について説明した。紙幣を処理する場合は、紙幣の分離部、搬送部、識別部、振分部、格納部、記憶部、制御部を備え、格納部から1枚ずつ紙幣を払い出す払出部を備える。これら各部は、制御部によって制御される。また、紙幣と硬貨を処理する装置を搭載することで、紙幣と硬貨を混在させて釣銭を払い出すことも可能である。
【0152】
外部装置60から、釣銭金額の値を取得し、その釣銭金額に対して、格納されている紙幣から、払い出す紙幣の金種と枚数を演算する処理を説明する。紙幣の金種、格納枚数、払出枚数は記憶部に記憶される。釣銭として用いる紙幣の金種は、5000円紙幣、2000円紙幣、1000円紙幣である。それぞれの払出枚数をa、b、c枚とする。
【0153】
まず、ステップS80では、残金として、外部装置から取得した釣銭金額を設定する。
【0154】
次に、ステップS81では、残金について5000円紙幣によって払出が可能な枚数aを演算する。また、5000円紙幣によって払い出せない残金を求める。
【0155】
次に、ステップS82では、残金の有無を判断し、あればステップS83に移行し、無ければステップS95に移行する。
【0156】
ステップS83では、残金について2000円紙幣によって払出が可能な枚数bを演算する。また、2000円紙幣によって払い出せない残金を求める。
【0157】
次に、ステップS84では、残金の有無を判断し、あればステップS85に移行し、無ければステップS95に移行する。
【0158】
ステップS85では、残金について1000円紙幣によって払出が可能な枚数bを演算する。また、1000円紙幣によって払い出せない残金を求める。
【0159】
ステップS86では、残金の有無を判断し、あればステップS87に移行し、無ければステップS95に移行する。
【0160】
ステップS87では、5000円紙幣での払出があるか否かを判断する。あればステップS88に移行し、無ければステップS95に移行する。残金が在り、5000円紙幣で支払いがあった場合に、2000円紙幣で払い出せる可能性があるので、払い出せるか否かを演算する。5000は2000の約数では無いので、5000円紙幣の払い出しを1枚減らせば、2000円紙幣以下の紙幣で払い出せる可能性がある。
【0161】
ステップS88では、新たな残金として、ここまでの処理で求めたaよりも1枚少なくした場合における残金を設定する。すなわち、「当初設定した残金-5000円×(a-1)」を演算し、新たな残金とする。
【0162】
次に、ステップS89では、新たなaの値として、ステップS87までの処理で求めたaより1枚少なくした値を設定する。
【0163】
次に、ステップS90では、新たに設定した残金について2000円紙幣によって払出が可能な枚数bをあらためて演算する。また、2000円紙幣によって払い出せない残金を求める。
【0164】
次に、ステップS91では、残金の有無を判断し、あればステップS92に移行し、無ければステップS95に移行する。
【0165】
次に、ステップS92では、残金について1000円紙幣によって払出が可能な枚数cをあらためて演算する。また、1000円紙幣によって払い出せない残金を求める。
【0166】
次に、ステップS93では、残金の有無を判断し、あればステップS94に移行し、無ければステップS95に移行する。
【0167】
次に、ステップS94では、演算の結果、残金があるので、取得した釣銭金額は格納されている貨幣では払出が不可能であることを設定する。
【0168】
次に、ステップS95では、演算の過程で、残金が0となった場合に、このステップに移行した場合は、払出が可能であることが分かる。また、演算の結果、残金>0であれば、貨幣が不足し、払出が不可能であることが分かる。ステップS95では、払い出せるか否かを設定し、払い出せる場合には、払い出す紙幣の金種と枚数を設定する。
【0169】
例えば、図6の硬貨と同様に、紙幣の金種、格納枚数、払出枚数が、メモリー51に記憶されている。釣銭の払出が可能である場合は、払い出す紙幣の各金種74における払出枚数77を確定する。この組み合わせについては、メモリー51に記憶され、制御回路50によって、各種制御に用いられる。
【0170】
例えば、残金すなわち釣銭金額が6000円であり、格納されている紙幣が、5000円紙幣1枚、2000円紙幣3枚、1000円紙幣0枚である場合を考える。上位金種から払出可能な枚数を設定すると、5000円紙幣が1枚設定され、残金が1000円となり、払出が不可能となる。そこで、5000円紙幣1枚分を残金に含め、新たな残金を6000円とし、あらためて次に高額の金種の2000円紙幣によって払出が可能かを判断する。新たな残金は、2000円紙幣3枚で払出が可能であり、残金が0となる。その結果、払出可能と判断され、払い出される硬貨は2000円紙幣3枚が設定され、払い出される。上位金種から順番に払い出す枚数を設定するだけではなく、上位金種に対して次に金額の小さい下位の金種の金額が約数であるか否かを判断し、約数で無い場合は、上位金種の払出枚数を減らすとともに、あらためて下位の金種によって残額を払い出せるかを判断する。
【符号の説明】
【0171】
1 貨幣処理装置
2 投入口
3 トレー
4 外装
5 振分部
6 分離部
7 識別部
8 受渡部
9 識別センサー
10 コイン
11 コンベヤー
12 コイン通路
13 貯留容器
14 保持ベース
15 ディスク
16 ディスク回転軸
17 凹部
18 ディスク回転方向
19 ホイール
20 ホイール回転軸
21 ホイール回転方向
22 案内部
23 搬送ピン
24 搬送ベルト
25 搬送ベルト回転方向
26 第1スライダー
27 第2スライダー
28 第3スライダー
29 第4スライダー
30 第5スライダー
31 第6スライダー
32 第7スライダー
33 第8スライダー
34 第9スライダー
35 第1コインホッパー
36 第2コインホッパー
37 第3コインホッパー
38 第4コインホッパー
39 第5コインホッパー
40 第6コインホッパー
41 第7コインホッパー
42 第8コインホッパー
43 第9コインホッパー
44 排出ベルト
46 レール
47 第1のセンサー
48 第2のセンサー

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8