(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】血管内デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 5/293 20210101AFI20230718BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20230718BHJP
A61B 5/271 20210101ALI20230718BHJP
【FI】
A61B5/293
A61N1/36
A61B5/271
(21)【出願番号】P 2023034487
(22)【出願日】2023-03-07
(62)【分割の表示】P 2022169232の分割
【原出願日】2022-10-21
【審査請求日】2023-03-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521061715
【氏名又は名称】株式会社E.P.Medical
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】石田 宏輝
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-111118(JP,A)
【文献】特表平08-506034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25-5/297
A61N 1/00-1/44
A61M 25/00-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部が生物の血管内に配置され、血管外に位置する神経組織の活動の検知又は刺激のための電極を前記第1端部側に備える血管内デバイスであって、
導電性を備え
、前記第1端部側に設けられた小径部と、前記小径部よりも太く形成され前記小径部よりも前記第1端部とは反対側の第2端部側に設けられた大径部とを有する線状デリバリー部材と、
前記小径部よりも大きな外径を有して前記第1端部側に設けられ、前記線状デリバリー部材と電気的に接続された少なくとも1つの電極部材と、
前記電極部材よりも前記第2端部側に少なくとも一部が設けられ、かつ、前記大径部よりも前記第1端部側に設けられ、前記電極部材の外径と前記線状デリバリー部材の外径との外径差による段差を低減する段差低減部と、
を備え、
前記電極部材と、前記線状デリバリー部材
の第2端部と、の間の電気抵抗値が100Ω以下である、血管内デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の血管内デバイスにおいて、
前記段差低減部は、前記線状デリバリー部材の周囲に設けられたコイル状部材と、前記線状デリバリー部材の周囲又は線状デリバリー部材に沿って設けられた撚り線状部材と、前記線状デリバリー部材の周囲に設けられた樹脂製の管状部材と、の少なくとも一つを含む、血管内デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の血管内デバイスにおいて、
前記コイル状部材の少なくとも一部が前記電極部材に内挿されている、血管内デバイス。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の血管内デバイスにおいて、
前記管状部材の少なくとも一部が前記コイル状部材に外挿されている、血管内デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の血管内デバイスにおいて、
前記電極部材と前記線状デリバリー部材とは離間して配置され、導電体により前記電極部材と前記線状デリバリー部材とが電気的に接続されている、血管内デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の血管内デバイスにおいて、
前記導電体は、コイル又は撚り線である、血管内デバイス。
【請求項7】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の血管内デバイスにおいて、
前記電極部材は、金属線を螺旋状に巻いた形態である、血管内デバイス。
【請求項8】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の血管内デバイスにおいて、
前記電極部材と前記線状デリバリー部材とは、溶接されている、血管内デバイス。
【請求項9】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の血管内デバイスにおいて、
前記血管内デバイスは、1日以上に亘って血管内に留置される、血管内デバイス。
【請求項10】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の血管内デバイスにおいて、
前記血管内デバイスが配置される血管は、脳静脈である、血管内デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、神経組織の活動の検知又は刺激に用いられる血管内デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、動物、人間等の生体の脳波測定を行う場合には、頭皮に電極を貼り付けて脳波を測定する経頭蓋的な測定が行われてきた。この方法であれば、簡便に脳波を測定できる一方で、以下の欠点があった。すなわち、脳の表面からの情報のみしか得られないため、脳の表面付近の脳波についてしか測定できておらず、脳の深部で発生している脳波については測定ができなかった。また、頭蓋骨を脳波が通過する際に脳波が減衰するため精度のよい測定が困難であった。
【0003】
このような欠点を解消する手法として、特許文献1には、神経組織の活動の検知又は刺激に用いられる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の装置では、芯材及び絶縁体の側面から電極が露出して設けられていることから、例えば、脳血管内に挿入されるような極細の外形形状においてこの電極を安定して製造することが難しかった。また、螺旋状部を有する形態では、血管内でのデリバリー性が悪かった。
【0006】
本開示の課題は、神経組織の活動の検知又は刺激に用いられ、かつ、血管へのデリバリー性に優れ、検知又は刺激の感度が高い血管内デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本開示の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0008】
第1の開示は、第1端部(1a)が生物の血管内に配置され、血管外に位置する神経組織の活動の検知又は刺激のための電極を前記第1端部(1a)側に備える血管内デバイス(1、1B、1C)であって、導電性を備える線状デリバリー部材(10)と、前記第1端部(1a)側に設けられ、前記線状デリバリー部材(10)と電気的に接続された少なくとも1つの電極部材(20、21、22)と、前記電極部材(20、21、22)の外径と前記線状デリバリー部材(10)の外径との外径差による段差を低減する段差低減部(30、40、70)と、を備え、前記電極部材(20、21)と、前記線状デリバリー部材(10)の前記第1端部(1a)とは反対側の第2端部(1b)と、の間の電気抵抗値が100Ω以下である、血管内デバイス(1、1B、1C、1D)である。
【0009】
第2の開示は、第1の開示に記載の血管内デバイス(1、1C)において、前記段差低減部(30、40)は、前記線状デリバリー部材(10)の周囲に設けられたコイル状部材(30)と、前記線状デリバリー部材(10)の周囲又は前記線状デリバリー部材(10)に沿って設けられた撚り線状部材(80)と、前記線状デリバリー部材(10)の周囲に設けられた樹脂製の管状部材(40)と、の少なくとも一つを含む、血管内デバイス(1、1C)である。
【0010】
第3の開示は、第2の開示に記載の血管内デバイス(1、1C)において、前記コイル状部材(30)の少なくとも一部が前記電極部材(20、21)に内挿されている、血管内デバイス(1、1C)である。
【0011】
第4の開示は、第2の開示又は第3の開示に記載の血管内デバイス(1、1C)において、前記管状部材(40)の少なくとも一部が前記コイル状部材(30)に外挿されている、血管内デバイス(1、1C)である。
【0012】
第5の開示は、第1の開示に記載の血管内デバイス(1D)において、前記電極部材(22)と前記線状デリバリー部材(10)とは離間して配置され、導電体(80)により前記電極部材(22)と前記線状デリバリー部材(10)とが電気的に接続されている、血管内デバイス(1D)である。
【0013】
第6の開示は、第5の開示に記載の血管内デバイス(1D)において、前記導電体(80)は、コイル又は撚り線である、血管内デバイス(1D)である。
【0014】
第7の開示は、第1の開示から第4の開示までのいずれかに記載の血管内デバイス(1、1B)において、前記電極部材(20)は、金属線を螺旋状に巻いた形態である、血管内デバイス(1、1B)である。
【0015】
第8の開示は、第1の開示から第5の開示までのいずれかに記載の血管内デバイス(1、1B、1C)において、前記電極部材(20、21)と前記線状デリバリー部材(10)とは、溶接されている、血管内デバイス(1、1B、1C)である。
【0016】
第9の開示は、第1の開示から第6の開示までのいずれかに記載の血管内デバイス(1、1B、1C)において、前記血管内デバイス(1、1B、1C、1D)は、1日以上に亘って血管内に留置される、血管内デバイス(1、1B、1C、1D)である。
【0017】
第10の開示は、第1の開示から第7の開示までのいずれかに記載の血管内デバイス(1、1B、1C)において、前記血管内デバイス(1、1B、1C、1D)が配置される血管は、脳静脈である、血管内デバイス(1、1B、1C、1D)である。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、神経組織の活動の検知又は刺激に用いられ、かつ、血管へのデリバリー性に優れ、検知又は刺激の感度が高い血管内デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示による血管内デバイス1の第1実施形態を示す図である。
【
図2】血管内デバイス1の第1端部1a付近を拡大した図である。
【
図3】
図2中の矢印A-Aの位置で血管内デバイス1を切断した断面図である。
【
図4】第1実施形態の
図3と同様な位置で第2実施形態の血管内デバイス1Bを切断した断面図である。
【
図5】第1実施形態の
図3と同様な位置で第3実施形態の血管内デバイス1Cを切断した断面図である。
【
図6】第1実施形態の
図3と同様な位置で第4実施形態の血管内デバイス1Dを切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示を実施するための一形態について図面等を参照して説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本開示による血管内デバイス1の第1実施形態を示す図である。なお、
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張したり、省略したりして示している。また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
【0022】
本実施形態の血管内デバイス1は、動物又は人間等の生物の神経活動の検知又は刺激に用いられる。血管内デバイス1は、柔軟性を有して細長い紐状に形成されており、第1端部1aが生物の血管(典型的には脳血管)内に配置され、第2端部1bが不図示の測定器や発振器等に電気的に接続される。血管内デバイス1は、従来から行われている脳血管内手術に用いられるカテーテルを通して脳静脈内へ挿入される。このとき、後述するように、電極は、極細であって柔軟性を備えており、かつ、ワイヤー部材に取り付けられており、さらに外形形状に大きな凹凸もないことから、ステントとは異なり拡張力が無く、また、カテーテルに対する摺動性に優れるから、脳血管へのデリバリー性に優れる。また、ワイヤー部材は血管との接触が抑制される(特に本実施形態のように自然状態で紐状のワイヤー部材は、血管壁にほぼ接触しない)ため、長時間に亘って留置しても有害事象を生じにくい。このため、1日以上(具体的には、2日以上、5日以上、7日以上、2週間以上又は1月以上)に亘って血管内に留置されることが安全に行える。
【0023】
図2は、血管内デバイス1の第1端部1a付近を拡大した図である。
図3は、
図2中の矢印A-Aの位置で血管内デバイス1を切断した断面図である。血管内デバイス1は、ワイヤー部材10と、電極部材20と、インナーコイル30と、管状部材40と、先端部50と、接続部60とを備えている。
【0024】
ワイヤー部材10は、血管内デバイス1の第1端部1aから第2端部1bに亘って延在して設けられている部材(線状デリバリー部材)であり、導電性を備えている。ワイヤー部材は、可撓性を有し全体としてみると線状(又は紐状、又は棒状)に構成されており、筒体と異なり内腔を有していない。線状デリバリー部材としては、本実施形態のように真直線状のワイヤー部材を用いてもよいし、撚り線状のワイヤー部材を用いてもよいし、コイルや多条コイル等の形態の部材を用いてもよい。しかし、電気抵抗を低減するために真直線であることが望ましい。本実施形態のワイヤー部材10は、Ni(ニッケル)とTi(チタン)との合金製の真直線を用いている。なお、ワイヤー部材10は上述した材料に限らず、例えば、ステンレス鋼を用いてもよい。第2端部1b側のワイヤー部材10の大径部10bは、例えば直径0.25mm程度とすることができる。また、第1端部1a側のワイヤー部材10の小径部10aは、大径部10bよりも細く形成されており、例えば直径0.05mm程度とすることができる。小径部10aと大径部10bとの外径差は、外径が徐々に変化する円錐面部10cにより接続されている。なお、図では、円錐面部10cの傾斜を誇張して変化の割合を大きく示しているが、図視したものより円錐面部10cでの外径の変化の割合をより小さくしてもよい。ワイヤー部材10の表面には、絶縁被膜が形成されている。この絶縁被膜としては、例えば、PTFE(polytetrafluoroethylene)コートを用いることができる。また、絶縁被膜に代えてPTFE製やシリコン製やポリイミド製等のチューブや熱収縮チューブ等により被覆してもよい。なお、ワイヤー部材10の先端付近(第1端部1a付近)については、絶縁被膜が設けられていない。これは後述する先端部50の溶接を行うためである。
【0025】
電極部材20は、第1端部1a側のワイヤー部材10の周囲に設けられ、ワイヤー部材10と電気的に接続されている。電極部材20は、人間や動物の体内で生じる脳波等の微弱な電流を検出したり、発振器が発する電流を体内へ伝えたりするために表面に露出して設けられた導電体により構成されている。本実施形態では、電極部材20は、Pt(プラチナ)とW(タングステン)との合金の金属線を螺旋状に巻いて密着コイル状の形態とした。電極部材20にPt(プラチナ)を含む合金を用いることにより、X線で観察したときの視認性を良好にすることができる。電極部材20がコイル状の形態であることから、電極部材20も柔軟性を備えることができ、血管へのデリバリー性を良好にすることができ、かつ、血管を損傷するリスクを低減できる。電極部材20の直径は、例えば、0.1mm以上0.28mm以下とすることができ、本実施形態では、0.25mmとした。また、電極部材20は、適切に電流を検出したり、伝えたりするために、外部側へ露出している部分の長手方向の長さは、1mm以上であることが望ましく、2mm以上であることがより望ましい。本実施形態では、電極部材20の長手方向の長さは、3mmとした。また、電極部材20の先端領域20a(第1端部1a側の端部)は、電極部材20の他の部分(先端側よりも第2端部1b側の部分)よりも外径を細く構成してデリバリー性を良好にしてもよい。本実施形態では、電極部材20の先端領域20aは、電極部材20の他の部分よりも外径を細く構成している。
【0026】
インナーコイル30は、ワイヤー部材10の周囲に設けられたコイル状部材である。インナーコイル30は、電極部材20の内径よりも僅かに外径が小さく構成されており、インナーコイル30の先端側(第1端部1a側)の電極部材20が設けられている範囲では、電極部材20に内挿されている。すなわち、この範囲では、インナーコイル30は、ワイヤー部材10と電極部材20との間に配置されている。インナーコイル30が電極部材20に内挿される長手方向の範囲(長さ)は、少なくともインナーコイル30の位置が安定する長さとするとよい。本実施形態では、電極部材20が設けられている範囲の全ての範囲においてインナーコイル30が電極部材20に内挿されている。また、本実施形態では、インナーコイル30の長手方向の長さ(全長)は、40mmとした。また、インナーコイル30の後端側(第2端部1b側)は、管状部材40に内挿されている。本実施形態では、インナーコイル30は、電極部材20と同様に、Pt(プラチナ)とW(タングステン)との合金の金属線を螺旋状に巻いて構成した。インナーコイル30にPt(プラチナ)を含む合金を用いることにより、電極部材20と同様にX線で観察したときの視認性を良好にすることができる。また、インナーコイル30の素材と電極部材20の部材とを同じ材料とすると、後述する先端部50の溶接時に溶接性を良好にすることができる。なお、本実施形態では、インナーコイル30は、電極部材20と同様に、Pt(プラチナ)とW(タングステン)との合金とする例を例示したが、インナーコイル30は、例えば、ステンレス鋼等、他の素材により形成してもよい。また、インナーコイル30は、密着コイル状とはせずに、間隔を空けたコイル状として構成した。これにより、インナーコイル30も柔軟性を備えることができ、血管へのデリバリー性を良好にすることができ、かつ、血管を損傷するリスクを低減できる。
【0027】
管状部材40は、ワイヤー部材10の周囲に設けられた樹脂製の部材であり、インナーコイル30が設けられている範囲では、インナーコイル30に外挿されている。本実施形態では、インナーコイル30は絶縁処理されていないことから、インナーコイル30に管状部材40を外挿することにより、インナーコイル30の絶縁をしている。また、本実施形態では、管状部材40の長手方向の長さ(全長)は、200mmとした。管状部材40の先端側(第1端部1a側)は、電極部材20の後端(第2端部1b側の端部)に近接して配置されている。また、管状部材40の後端側(第2端部1b側)は、ワイヤー部材10の円錐面部10cの途中に位置している。管状部材40は、例えば、PTFE製、PFA(Poly Tetra Fluoro Etylene)製、FEP(Fluorinated Ethylene Propylene)製等のフッ素系樹脂製やシリコン製やポリイミド製等のチューブや熱収縮チューブ等により構成することが望ましく、本実施形態では、フッ素系樹脂製の熱収縮チューブを用いている。管状部材40の外径は、電極部材20の外径と略同一となっている。
【0028】
インナーコイル30及び管状部材40は、電極部材20の外径とワイヤー部材10の外径との外径差による段差を低減する段差低減部としての機能を有している。すなわち、インナーコイル30がワイヤー部材10に外挿され、かつ、電極部材20に内挿されて設けられていることにより、電極部材20の外径とワイヤー部材10の外径との外径差による段差が低減される。さらに、インナーコイル30に管状部材40が外挿されていることから、電極部材20の外径とワイヤー部材10の外径との外径差による段差が略無くなり、電極部材20の表面と管状部材40の表面とが略面一となる。
【0029】
先端部50は、第1端部1a側の最先端に設けられており、略半球形状に形成されている。先端部50は、電極部材20とワイヤー部材10とが溶接されて構成されている。すなわち、先端部50は、電極部材20とワイヤー部材10とが溶融されて混合された合金によって構成されている。先端部50が設けられていることにより、電極部材20とワイヤー部材10とが電気的に接合されている。なお、本実施形態では、先端部50において、電極部材20とワイヤー部材10とに加えて、インナーコイル30についても溶接されているが、インナーコイル30については、先端部50において溶接されていなくてもよい。
【0030】
血管外の組織から適切に電流を検出したり、血管外の組織へ伝えたりするために、電極部材20とワイヤー部材10の後端部(第2端部1b側の端部)との間の電気抵抗値は、100Ω以下であることが望ましく、75Ω以下であることがさらに望ましい。本実施形態では、ワイヤー部材10に真直線を用いていること、及び、先端部50において電極部材20とワイヤー部材10とが溶接されていることから、70Ω以下という非常に低い抵抗値を実現している。
【0031】
接続部60は、電極部材20の後端部(第2端部1b側の端部)と管状部材40の第1端部1a側の端部とを接続する。接続部60は、例えば、紫外線硬化型、2剤混合型エポキシ接着剤、シアノアクリル系瞬間接着剤、シリコン接着剤等の接着剤により構成することができる。
【0032】
上述した第1実施形態の血管内デバイス1は様々な用途に利用することができる。例えば、脳血管内で左脳及び右脳の各々に近い箇所に、本実施形態の血管内デバイス1を適切に配置して脳波を検出すれば、てんかん焦点の特定やてんかん発作の検知に使用することができる。また、脳深部に原因部位が存在する疾病(てんかん、うつ病、パーキンソン病等による不随意運動、遷延性意識障害等)について、本発明の血管内デバイスを原因部位に対して適切に配置して電気刺激を供給すれば、これらの疾病治療に使用することができる。
【0033】
以上説明したように、第1実施形態の血管内デバイス1によれば、ワイヤー部材10と、電極部材20と、インナーコイル30と、管状部材40とを用いた簡単な構成によって、製造が容易にすることができる。また、第1実施形態の血管内デバイス1によれば、血管へのデリバリー性に優れ、検知又は刺激の感度が高い血管内デバイスを提供することができる。
【0034】
(第2実施形態)
図4は、第1実施形態の
図3と同様な位置で第2実施形態の血管内デバイス1Bを切断した断面図である。第2実施形態の血管内デバイス1Bは、インナーコイル30の代わりに第2管状部材70を配置した点が異なる他は、第1実施形態の血管内デバイス1と同様な形態をしている。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0035】
第2管状部材70は、電極部材20の内径よりも僅かに外径が小さく構成されており、第2管状部材70の先端側(第1端部1a側)の電極部材20が設けられている範囲では、電極部材20に内挿されている。すなわち、この範囲では、第2管状部材70は、ワイヤー部材10と電極部材20との間に配置されている。また、第2管状部材70の後端側(第2端部1b側)は、管状部材40に内挿されている。第2管状部材70は、例えば、PTFE製、PFA(Poly Tetra Fluoro Etylene)製、FEP(Fluorinated Ethylene Propylene)製等のフッ素系樹脂製ややシリコン製やポリイミド製等のチューブや熱収縮チューブ等により構成することが望ましく、本実施形態では、フッ素系樹脂製のチューブを用いている。第2管状部材70の内径は、少なくとも組立て前の状態ではワイヤー部材10の小径部10aの外径よりも僅かに大きい。第2管状部材70に熱収縮チューブを用いる場合には、収縮後の第2管状部材70の内径は、ワイヤー部材10の小径部10aの外径と等しくなる。
【0036】
上述した第2実施形態では、インナーコイル30の代わりに第2管状部材70を配置したので、寸法安定性が高まり、また、プッシャビリティ―がさらに良好となることから、血管へのデリバリー性を良好にすることができ、任意の血管へのアクセスを容易にできる。
【0037】
(第3実施形態)
図5は、第1実施形態の
図3と同様な位置で第3実施形態の血管内デバイス1Cを切断した断面図である。第3実施形態の血管内デバイス1Cは、電極部材21の形態が異なる他は、第1実施形態の血管内デバイス1と同様な形態をしている。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0038】
第3実施形態の電極部材21は、第1実施形態の電極部材20と同様な位置に設けられているが、円筒形状である点で、第1実施形態の電極部材20と異なっている。第3実施形態の電極部材21は、第1実施形態の電極部材20と同様な材料で構成することができる。
【0039】
第3実施形態の血管内デバイス1Cは、電極部材21が円筒形状であることから、金属同士が接触している部分に発生しやすい腐食を抑制することができる。よって、第3実施形態の血管内デバイス1Cは、長期に亘って血管内に留置される場合であっても、腐食による検出能力や信号伝達能力の低下といった悪影響を防ぐことができる。
【0040】
(第4実施形態)
図6は、第1実施形態の
図3と同様な位置で第4実施形態の血管内デバイス1Dを切断した断面図である。第4実施形態の血管内デバイス1Dは、第4実施形態の血管内デバイス1Dは、第1実施形態におけるインナーコイル30を備えておらず、また、電極部材22とワイヤー部材10とが離間して配置されており、導線80を備えている点で、第1実施形態と異なるが、その他の点については、第1実施形態の血管内デバイス1と同様な形態をしている。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0041】
第4実施形態の血管内デバイス1Dは、ワイヤー部材10と、電極部材22と管状部材41と、導電線80とを備えている。第4実施形態のワイヤー部材10は、電極部材22と直接接触(溶接)しておらず、電極部材22と離間して配置されている他は、第1実施形態のワイヤー部材10と、同様である。
【0042】
電極部材22は、ワイヤー部材10から離間して配置されている。電極部材22は、先端が球形状の略円筒形状となっている。電極部材22は、例えば、Pt(プラチナ)とW(タングステン)との合金等、第1実施形態の電極部材20と同様な素材で構成することができる。
【0043】
管状部材41は、ワイヤー部材10の周囲に設けられた樹脂製の部材であり、先端が電極部材22に外挿されて電極部材22と接続されている。管状部材41と電極部材22との接続には、例えば、接着剤を用いることができる。管状部材41は、第1実施形態の管状部材40と同様な材料により形成することができる。
【0044】
導線80は、ワイヤー部材10と電極部材22とを電気的に接続する導電体である。本実施形態では、ニッケルチタン製の線材を複数撚った撚り線(撚り線状部材)を用いている。なお、導線80は、ニッケルチタン製に限らず、例えばステンレス鋼製としてもよい。また、導線80としては撚り線に限らず真直線であってもよいし、コイル状や棒状や板状の導電体を用いてもよい。なお、
図6では、導線80は、ワイヤー部材10の円錐面部10cで接続されている形態を示したが、ワイヤー部材10の先端付近(第1端部1a付近)で接続されるようにしてできるだけ短い物理的距離で接続し、より電気抵抗を少なくするようにしてもよい。本実施形態では、導線80と管状部材41とが段差低減部として機能する。
【0045】
第4実施形態によれば、ワイヤー部材10と電極部材22とが固定されていないことから管状部材41が柔軟に変形することが可能であり、穿孔リスクを低くすることができる。
【0046】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本開示の範囲内である。
【0047】
(1)第1実施形態において、規則的に等ピッチで螺旋状に巻かれたコイル状のインナーコイル30を段差低減部の一部構成として配置した例を例示した。これに限らず、例えば、より線状の線材をワイヤー部材10に沿わせたり、ワイヤー部材10に巻き付けたりして段差低減部の一部構成として配置してもよい。
【0048】
(2)各実施形態において、電極部材20(又は電極部材21)は、第1端部1aの最端部に配置されている例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、第1端部1aの最端部から離れた位置、すなわち、第1端部1aから第2端部1b側へ寄った位置に電極部材を設けてもよい。また、電極部材は1つに限らず、複数設けてもよい。
【0049】
(3)第1実施形態において、インナーコイル30と管状部材40とを段差低減部として設けた例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、撚り線状部材と管状部材とによって段差低減部を構成してもよい。撚り線状部材としては、第4実施形態に示した導線80のような形態の他、編み込まれて管状に形成された撚り線状の部材としてもよい。また、撚り線状部材は、ワイヤー部材の周囲に配置してもよいし、巻き付けてもよいし、沿わせて配置してもよい。
【0050】
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本開示は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0051】
1、1B、1C 血管内デバイス
1a 第1端部
1b 第2端部
10 ワイヤー部材(線状デリバリー部材)
10a 小径部
10b 大径部
10c 円錐面部
20 電極部材
20a 先端領域
21 電極部材
30 インナーコイル(コイル状部材、段差低減部)
40 管状部材(段差低減部)
50 先端部
60 接続部
70 第2管状部材(段差低減部)
【要約】
【課題】神経組織の活動の検知又は刺激に用いられ、かつ、血管へのデリバリー性に優れ、検知又は刺激の感度が高い血管内デバイスを提供する。
【解決手段】血管内デバイス1は、第1端部1aが生物の血管内に配置され、血管外に位置する神経組織の活動の検知又は刺激のための電極を第1端部1a側に備える血管内デバイスであって、導電性を備えるワイヤー部材10と、第1端部1a側に設けられ、ワイヤー部材10と電気的に接続された少なくとも1つの電極部材20と、電極部材20の外径とワイヤー部材10の外径との外径差による段差を低減する段差低減部(30、40)とを備え、電極部材20と、ワイヤー部材10の第1端部1aとは反対側の第2端部1bと、の間の電気抵抗値が100Ω以下である。
【選択図】
図3