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特許7313765ロボット用アーム製造方法およびロボット用アーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】ロボット用アーム製造方法およびロボット用アーム
(51)【国際特許分類】
   B21D 26/035 20110101AFI20230718BHJP
   B21D 26/039 20110101ALI20230718BHJP
   B21D 51/00 20060101ALI20230718BHJP
   B25J 18/00 20060101ALI20230718BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20230718BHJP
   B21D 26/047 20110101ALN20230718BHJP
【FI】
B21D26/035
B21D26/039
B21D51/00
B25J18/00
B25J17/00 Z
B21D26/047
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019180110
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021053676
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591285170
【氏名又は名称】株式会社チューブフォーミング
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】安部 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】森岡 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】中山 一隆
(72)【発明者】
【氏名】大木 康豊
(72)【発明者】
【氏名】土屋 圭一
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06634851(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0092122(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107488820(CN,A)
【文献】特開平08-025929(JP,A)
【文献】特開2002-219526(JP,A)
【文献】特開2007-210027(JP,A)
【文献】特開2018-176337(JP,A)
【文献】特表2002-503578(JP,A)
【文献】特開昭58-077720(JP,A)
【文献】特開平08-281580(JP,A)
【文献】特開2013-018058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 26/033-26/047
B21D 51/00
B25J 18/00
B25J 17/00
B21D 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のパイプ材がキャビティ内に配置された金型を閉じた状態で、前記パイプ材の内部に液体を供給して加圧することにより、膨張した前記パイプ材の外面を前記キャビティの内面に押し付けることによって、ロボット用アームの外形を有するアーム前駆部材を成形し、
成形された該アーム前駆部材の少なくとも一端を加工して、被駆動体に取り付けるためのフランジ部を形成することにより前記ロボット用アームを製造し、
前記アーム前駆部材または前記ロボット用アームの壁面の一部を切断して作業用開口を形成するロボット用アーム製造方法。
【請求項2】
前記パイプ材が、直管状の原材料を前記キャビティ内に配置した第1金型を閉じた状態で、前記原材料の内部に前記液体を供給して加圧しつつ、前記第1金型の前記キャビティの形状を変形させて、前記原材料の両端を同一方向に湾曲させることにより形成される請求項1に記載のロボット用アーム製造方法。
【請求項3】
前記フランジ部が、前記アーム前駆部材の端部を全周にわたって前記パイプ材の径方向に1回以上折り曲げることにより、中央孔を有する環状に形成される請求項1または請求項2に記載のロボット用アーム製造方法。
【請求項4】
前記フランジ部が、前記アーム前駆部材の端部を前記パイプ材の径方向内方に折り曲げることにより形成される請求項3に記載のロボット用アーム製造方法。
【請求項5】
前記フランジ部が、折り曲げられた前記アーム前駆部材の端部に環状の補強部材を接合して構成される請求項3または請求項4に記載のロボット用アーム製造方法。
【請求項6】
前記フランジ部の取付面の裏面と前記アーム前駆部材または前記ロボット用アームの壁面内面とに跨る補強リブを備える請求項1から請求項5のいずれかに記載のロボット用アーム製造方法。
【請求項7】
強度を向上するための熱処理を前記ロボット用アームの少なくとも一部に施す請求項1から請求項6のいずれかに記載のロボット用アーム製造方法。
【請求項8】
材料特性の変化を適した状態にするための熱処理を前記ロボット用アームに施す請求項1から請求項7のいずれかに記載のロボット用アーム製造方法。
【請求項9】
一対の開口部を有するパイプ状部分と、
該パイプ状部分の各前記開口部から内方に突出するように設けられたフランジ部とを備え、
一対の前記開口部は前記パイプ状部分の長手方向と平行な面上に位置し、
前記パイプ状部分および前記フランジ部が一体成形され、
前記フランジ部は、前記パイプ状部分の折り曲げにより、対向する面が所定距離離間した状態で形成され、前記フランジ部を他部材に取り付けるときに離間した前記面同士が接近するロボット用アーム。
【請求項10】
前記パイプ状部分の前記開口部に対面する壁面に作業用開口が設けられている請求項9に記載のロボット用アーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アーム状構造体の製造方法およびアーム状構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、産業用ロボットのアームは、軽量化を図りながら強度を保持するために、アルミニウム合金等の金属を鋳造することにより構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-018058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属を鋳造する場合、鋳造湯流れを確保可能な最小限の厚さのキャビティを用意する必要があり、得られる鋳造品の十分な薄肉化が困難である。したがって、鋳造による場合よりも十分な薄肉化を図り、軽量のアーム状構造体を製造することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、金属製のパイプ材がキャビティ内に配置された金型を閉じた状態で、前記パイプ材の内部に液体を供給して加圧することにより、膨張した前記パイプ材の外面を前記キャビティの内面に押し付けることによって、ロボット用アームの外形を有するアーム前駆部材を成形し、成形された該アーム前駆部材の少なくとも一端を加工して、被駆動体に取り付けるためのフランジ部を形成することにより前記ロボット用アームを製造し、前記アーム前駆部材または前記ロボット用アームの壁面の一部を切断して作業用開口を形成するロボット用アーム製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の一実施形態に係るアーム状構造体の製造方法により製造されるアーム状構造体の一例を示す斜視図である。
図2図1のアーム状構造体を製造するための第1形状の原材料を示す縦断面図である。
図3図1のアーム状構造体の製造途中で形成される第2形状の第1中間部材を示す縦断面図である。
図4図1のアーム状構造体の製造方法に使用される開かれた状態の第1金型を説明する縦断面図である。
図5図4の第1金型を閉じた状態を示す縦断面図である。
図6図5の第1金型のキャビティ内に原材料を収容した状態を示す縦断面図である。
図7図4の第1金型を用いたバルジ曲げ加工を説明する縦断面図である。
図8図4の第1金型の上側可動型を交換した後のバルジ曲げ加工を説明する縦断面図である。
図9図4の第1金型を用いたバルジ曲げ加工により形成された第1中間部材の両端を切断した状態を説明する縦断面図である。
図10図9により形成された第2中間部材を第2金型のキャビティ内に収容して行うバルジ成形を説明する縦断面図である。
図11図10の第2金型のキャビティ内において第2中間部材をバルジ成形により膨張させた状態を説明する縦断面図である。
図12図11のバルジ成形により得られた第3中間部材の両端を切断した状態を説明する縦断面図である。
図13図12により成形された第3中間部材の両端にフランジ部を形成する曲げ加工を説明する縦断面図である。
図14図13により成形されたフランジ部に穿孔し、両肩部に作業用開口を形成して形成された図1のアーム状構造体を示す縦断面図である。
図15図1のアーム状構造体の変形例を示す縦断面図である。
図16図1のアーム状構造体の他の変形例を示す拡大斜視図である。
図17図1のアーム状構造体の他の変形例を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の一実施形態に係るアーム状構造体1およびアーム状構造体1の製造方法について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るアーム状構造体1の製造方法は、例えば、図1に示されるアーム状構造体1を製造する方法である。
【0008】
本実施形態に係るアーム状構造体1は、アルミニウム合金等の金属により一体的に構成されており、例えばロボットアームである。このアーム状構造体1は、横断面形状が滑らかに変化する外面形状を有するパイプ状部分(パイプ材)2の両端に、パイプ状部分2の中心軸に平行な同一平面上に配置されるフランジ面3をそれぞれ備える円環状の一対のフランジ部4を備えている。
【0009】
フランジ部4は、中央に開口する中央孔5を有し、中央孔5の周囲に、周方向に間隔をあけて配置された複数の貫通孔6を備えている。フランジ部4の中央孔5は、パイプ状部分2の内部の中空部に連通している。これにより、一方のフランジ部4の中央孔5を経由してケーブル等の線条体をパイプ状部分2に通し、他方のフランジ部4の中央孔5から取り出す経路に沿って線条体を配線することができる。
【0010】
フランジ部4に設けられた複数の貫通孔6に通したボルトを、ロボットを構成する他部材(被駆動体)、例えば、減速機の出力軸に締結することにより、アーム状構造体1を簡易に減速機に固定することができる。
このアーム状構造体1には、フランジ部4の中心軸方向にフランジ部4と対向する肩部(壁面)を切り取って形成された作業用開口7が設けられている。この作業用開口7を経由して、ボルトの締結および線条体の配線作業等を容易に行うことができる。
【0011】
本実施形態に係るアーム状構造体1の製造方法について、以下に説明する。
本実施形態に係るアーム状構造体1の製造方法は、まず、図2に示される直管状(第1形状)の原材料21を用意し、第1金型30を用いたバルジ成形によって曲げ加工を施すことにより、図3に示されるクランク状(第2形状)の第1中間部材(原材料)22を形成する。
【0012】
第1金型30は、例えば、図4に示されるように、直管状の原材料21を収容可能な水平方向に延びる円柱状のキャビティ31を画定する上型32および下型33を備えている。また、第1金型30は、キャビティ31の一端側からキャビティ31内に挿入されキャビティ31の長さ方向に移動可能に支持されるプランジャ34と、キャビティ31の他端側からキャビティ31内に挿入され長さ方向に移動可能なステム35とを備えている。
【0013】
上型32と下型33とは、キャビティ31の中心軸を含む水平な分割面32a,33aによって分割可能である。上型32には、その長さ方向の中央位置に昇降可能な上側可動型36が設けられている。下型33にも、その長さ方向の中央位置に昇降可能な下側可動型(パンチ)37が設けられている。
【0014】
図5に示されるように、上型32に対して上側可動型36、下型33に対して下側可動型37をそれぞれ円形状のキャビティ31が形成される位置まで移動した状態で、上型32および下型33の分割面32a,33aを密着させ、プランジャ34およびステム35の一部を上型32と下型33との間に配置する。これにより、上型32と下型33との間には、直管状の原材料21をぴったりと収容可能な円柱状のキャビティ31が形成される。
【0015】
プランジャ34はこの状態でのキャビティ31にぴったりと嵌合する円柱状に形成され、原材料21の一端を軸方向に加圧しながらキャビティ31内を長さ方向に移動することができる。
ステム35も、この状態でのキャビティ31にぴったりと嵌合する円筒状に形成され、原材料21の他端を軸方向に加圧しながらキャビティ31内を長さ方向に移動することができる。
【0016】
ステム35には長さ方向に沿って貫通する貫通孔35aが設けられている。この貫通孔35aに、図示しない配管を接続することにより、貫通孔35aを経由して原材料21内部に、配管から高圧の液体Lを供給することができる。また、ステム35同様に、プランジャ34に貫通孔を設けてもよい。
【0017】
図6に示されるように、上側可動型36および下側可動型37をキャビティ31が形成できる状態へ移動し、上型32と下型33との間に直管状の原材料21を収容し、上型32および下型33の分割面32a,33aを密着させる。そして、キャビティ31の両端からプランジャ34およびステム35を挿入してプランジャ34およびステム35の先端を原材料21の両端に突き当てる。この状態で、ステム35の貫通孔35aを経由して高圧の液体Lを原材料21の内部に供給して充填する。
【0018】
そして、図7および図8に示されるように、プランジャ34およびステム35を相互に近接する方向に移動させつつ、上側可動型36および下側可動型37を同期して移動させる。これにより、第1金型30内の原材料21が第1形状から第2形状に滑らかに変形させられ、第1中間部材22(原材料)を構成する。第2形状は、第1形状の原材料21の両端を同軸に維持したまま相互に近接させ、かつ、長さ方向の中央部分のみを鉛直上方、もしくは鉛直下方にスライドさせたクランク形状である。
【0019】
なお、バルジ成形の途中において上側可動型36、もしくは下側可動型37を図8に示されるようにR面を有するものに交換することにより、図3に示されるような角部に滑らかなR面を有するクランク状の第1中間部材22を構成することができる。
【0020】
次に、このように形成された第1中間部材22の両端を、図9に示すように切り落とすことにより、U字状に湾曲し、同一方向に開口する両端を有する第2中間部材(原材料)23を製造する。
そして、このように構成された第2中間部材23から、第2金型(金型)40を用いたバルジ成形を行うことにより、第3中間部材24を成形する。
【0021】
第2金型40は、図10に示されるように、第2中間部材23の外形よりも大きなキャビティ41を形成可能な上型および下型43と、キャビティ41の両端に配置された2つのステム44,45とを有している。図10および図11において、上型(図示略)および下型43は、図面の紙面の法線方向に積層され、その間にキャビティ41が形成されるようにしてもよい。また、図10および図11においては、下型43を図面に記載しており、下型43に対して上型は紙面の法線方向に分離されるようになっている。
この第2金型40のキャビティ41内に第2中間部材23を収容して、図10に示されるように第2金型40を閉じ、第2中間部材23の両端にそれぞれステム44,45を嵌合させて両端を密封しつつ、ステム44,45の貫通孔44a,45aを経由して内部に高圧の液体Mを供給する。
【0022】
そして、液体Mによって第2中間部材23を膨張させる方向に加圧しつつ、ステム44,45をキャビティ41内に押し込むことにより、図11に示されるように、膨張させた第2中間部材23の外面を、キャビティ41の内面に押し付ける。これにより、第3中間部材24が形成される。
【0023】
次いで、図12に示されるように、このように形成された第3中間部材24の両端を切り落とすことにより、パイプ状部分2の長手方向と平行な面上に位置する一対の開口部26を有するアーム前駆部材25を形成する。そして、図13に示されるように、アーム前駆部材25の両端を径方向内方に1回折り曲げ、その後径方向外方に1回折り曲げる。これにより、アーム前駆部材25の各開口部26から内側に突出するように、中央孔5を有する円環状のフランジ部4を形成する。
【0024】
そして、円環状のフランジ部4に、周方向に間隔をあけて複数の貫通孔6を形成する。また、アーム前駆部材25の開口部26に対面する壁面、すなわち、両端のフランジ部4の中央孔5の中心軸方向に対向する位置の肩部を切り取って、図14に示されるように、作業用開口7を形成する。これにより、図1に示されるアーム状構造体1が製造される。
【0025】
このように、本実施形態に係るアーム状構造体1の製造方法によれば、バルジ成形によって、パイプ状の原材料21,22,23,24を膨張させてアーム状構造体1を製造する。これにより、鋳造による場合と比較して、薄肉(例えば、厚さ2~3mm)の均一な肉厚を有するアーム状構造体1を簡易に製造することができるという利点がある。なお、
上記のバルジ成形に関しては、熱間・冷間いずれの加工法も含まれる。
【0026】
また、直管状の原材料21をバルジ成形によって曲げ加工した後、クランク形状のパイプ状の第2中間部材23をバルジ成形によって膨張させる。これにより、一部品で製造することができ、表面に段差のない、滑らかな曲面形状を有するアーム状構造体1を製造することができる。滑らかな曲面形状は、作業者が接触する可能性のある協働ロボット用のアーム状構造体に適している。
【0027】
また、フランジ部4が、アーム前駆部材25の各開口部26から内側に突出するように形成されるため、アーム状構造体1の外部に突起物を有しない協働ロボットに適したアームを提供することができる。
また、作業用開口7がアーム前駆部材25の開口部26に対面する壁面に設けられているため、線条体の配線作業等を良好に行える組立作業性に優れたアームを提供することができる。
【0028】
なお、本実施形態においては、直管状の原材料21をクランク形状のパイプ状に湾曲させる方法にもバルジ成形を利用したので、肉厚の変動を抑えつつ、比較的小さい曲げ半径で曲げ加工を行うことができる。これに代えて、第2金型40によって第3中間部材24を成形する際に、他の方法によってクランク形状のパイプ状に形成した第2中間部材23を原材料として用いてもよい。
【0029】
また、上述のようにして製造されたアーム状構造体1に、例えば、T6処理のような熱処理を少なくとも部分的に施すことにしてもよい。これにより、さらに強度の高い薄肉軽量金属からなるアーム状構造体1を製造することができる。
また、本実施形態においては、材料特性および塑性加工の際に生じた特性の変化を、加工工程に適した状態にする為の熱処理を原材料21、第一中間部材22、第二中間部材23、第三中間部材24およびアーム前駆部材25に施してもよい。
【0030】
また、本実施形態においては、アーム前駆部材25の両端を径方向に2回折り曲げることによりフランジ部4を形成したが、これに代えて、1回または3回以上折り曲げてもよい。また、図15に示されるように、環状の補強部材8をリベット等によって接合することにより、フランジ部4の強度を向上してもよい。
また、本実施形態においては、フランジ部4は、図12および図13に示されるように、各開口部26から内方に突出するように設けるものを例示したが、これに代えて、各開口部26から外方に突出するように設けてもよい。
【0031】
また、本実施形態においては、2つのフランジ部4を有するアーム状構造体1を例示したが、これに限定されるものではなく、単一のフランジ部4を有するアーム状構造体1に適用してもよい。また、アーム状構造体1の長さ方向に平行なフランジ面3を有する場合を例示したが、アーム状構造体1の長さ方向に交差する方向に延びるフランジ部4を有する場合に適用してもよい。
【0032】
また、本実施形態においては、図16に示されるように、フランジ部4の取付面の裏面とパイプ状部分2の両端における壁面内面、具体的には作業用開口7とフランジ部4との間の内表面とに跨る補強リブ9を備えていてもよい。これにより、パイプ状部分2とフランジ部4とをより強固に固定することができる。
【0033】
また、本実施形態においては、フランジ部4として、図13に示されるように、アーム前駆部材25の両端を径方向外方に折り曲げて対向する面を接触させて形成したものを例示したが、これに代えて、図17に示されるように、アーム前駆部材25の両端を径方向外方に折り曲げて対向する面を所定距離X離間した状態で形成したものを採用してもよい。これにより、貫通孔6に貫通させたボルトによってアーム状構造体1を他部材に取り付けるときに、ボルト締結に伴って上記距離Xを短縮させ、フランジ部4にばね座金と同様の緩み止め機能を奏させることができる。
上記実施形態および変形例に関し、以下の付記を開示する。
(付記1)
金属製のパイプ材がキャビティ内に配置された金型を閉じた状態で、前記パイプ材の内部に液体を供給して加圧することにより、膨張した前記パイプ材の外面を前記キャビティの内面に押し付けることによって、アーム状構造体の外形を有するアーム前駆部材を成形し、
成形された該アーム前駆部材の少なくとも一端を加工して、被駆動体に取り付けるためのフランジ部を形成することにより前記アーム状構造体を製造するアーム状構造体の製造方法。
(付記2)
前記パイプ材が、直管状の原材料を前記キャビティ内に配置した第1金型を閉じた状態で、前記原材料の内部に前記液体を供給して加圧しつつ、前記第1金型の前記キャビティの形状を変形させて、前記原材料の両端を同一方向に湾曲させることにより形成される付記1に記載のアーム状構造体の製造方法。
(付記3)
前記フランジ部が、前記アーム前駆部材の端部を全周にわたって径方向に1回以上折り曲げることにより、中央孔を有する環状に形成される付記1または付記2に記載のアーム状構造体の製造方法。
(付記4)
前記フランジ部が、前記アーム前駆部材の端部を径方向内方に折り曲げることにより形成される付記3に記載のアーム状構造体の製造方法。
(付記5)
前記フランジ部が、折り曲げられた前記アーム前駆部材の端部に環状の補強部材を接合して構成される付記3または付記4に記載のアーム状構造体の製造方法。
(付記6)
前記フランジ部の取付面の裏面と前記アーム前駆部材または前記アーム状構造体の壁面内面とに跨る補強リブを備える付記1から付記5のいずれかに記載のアーム状構造体の製造方法。
(付記7)
前記アーム前駆部材または前記アーム状構造体の壁面の一部を切断して作業用開口を形成する付記2に記載のアーム状構造体の製造方法。
(付記8)
強度を向上するための熱処理を前記アーム状構造体の少なくとも一部に施す付記1から付記7のいずれかに記載のアーム状構造体の製造方法。
(付記9)
材料特性の変化を適した状態にするための熱処理を前記アーム状構造体に施す付記1から付記8のいずれかに記載のアーム状構造体の製造方法。
(付記10)
一対の開口部を有するパイプ状部分と、
該パイプ状部分の各前記開口部から内方に突出するように設けられたフランジ部とを備え、
一対の前記開口部は前記パイプ状部分の長手方向と平行な面上に位置し、
前記パイプ状部分および前記フランジ部が一体成形されているアーム状構造体。
(付記11)
前記パイプ状部分の前記開口部に対面する壁面に作業用開口が設けられている付記10に記載のアーム状構造体。
(付記12)
前記フランジ部は、前記パイプ状部分の折り曲げにより、対向する面が所定距離離間した状態で形成され、前記フランジ部を他部材に取り付けるときに離間した前記面同士が接近する付記10に記載のアーム状構造体。

【符号の説明】
【0034】
1 アーム状構造体
2 パイプ状部分(パイプ材)
4 フランジ部
5 中央孔
7 作業用開口
8 補強部材
21 原材料
22 第1中間部材(原材料)
23 第2中間部材(原材料)
24 第3中間部材
25 アーム前駆部材
26 開口部
30 第1金型
31 キャビティ
40 第2金型(金型)
L,M 液体
X 所定距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17