(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】ワーク回収装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/00 20060101AFI20230718BHJP
B23Q 7/08 20060101ALI20230718BHJP
B23B 15/00 20060101ALI20230718BHJP
B65G 11/18 20060101ALN20230718BHJP
【FI】
B23Q7/00 A
B23Q7/08 A
B23B15/00 G
B65G11/18 Z
(21)【出願番号】P 2019138453
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】並木 龍也
(72)【発明者】
【氏名】浅原 徳之
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雅樹
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-114226(JP,A)
【文献】国際公開第2002/092305(WO,A1)
【文献】実開昭56-094249(JP,U)
【文献】実開昭50-141873(JP,U)
【文献】特開昭59-076702(JP,A)
【文献】特開2006-015422(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016209550(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/00
B23Q 7/08
B23B 15/00
B65G 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを受け入れる空間
を仕切って形成する本体部と、
前記空間に受け入れられた前記ワークを案内する案内面を有するシュートと、
前記空間に受け入れられた前記ワークに対する緩衝材が溜められた緩衝容器と、を備え、
前記シュートと前記緩衝容器とが前記空間内のワーク回収位置に選択的に装着され、前記ワークの、前記案内面を移動させる回収と前記緩衝材への投入による回収とが選択的に切り替え可能であり、
前記ワーク回収位置に前記緩衝容器が装着されている状態で、前記本体部と前記緩衝容器との間に、前記シュートを収容する収容空間を有するワーク回収装置。
【請求項2】
前記収容空間に収容された前記シュートを、前記緩衝容器が載せられる載置台とした請求項1に記載のワーク回収装置。
【請求項3】
前記シュートの、前記緩衝容器が接する面と前記案内面とが互いに異なる面からなる請求項2に記載のワーク回収装置。
【請求項4】
前記緩衝容器に凸部が形成され、
前記シュートの前記緩衝容器が接する面に、前記凸部に相対応する凹部が形成され、
前記凸部と前記凹部との嵌合によって、前記シュートに対して前記緩衝容器が位置決めされる請求項2又は3に記載のワーク回収装置。
【請求項5】
前記シュートは、前記案内面の幅方向の両側部に、前記案内面を案内される前記ワークの、前記幅方向への変位を規制する側壁が形成されている請求項1から4のうちいずれか1項に記載のワーク回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械に隣接して配置され、工作機械により加工されて搬出されたワークを回収するワーク回収装置が知られている。
【0003】
このようなワーク回収装置としては、ワークの搬出口から搬出されたワークを案内面で受け、ワークを、その案内面で滑らせたり転がしたりして回収するシュートを用いたもの(例えば、特許文献1参照)や、ワークの搬出口の下方に配置した、オイル等の緩衝材が収容された緩衝容器にワークを落下させて、緩衝容器の底部にワークを沈めるもの(例えば、特許文献2参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-153424号公報
【文献】特開2006-015422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ワークの種類や加工の内容等に応じて、シュートと緩衝容器とを選択的に使い分けたい要望がある。その場合、シュートと緩衝容器とを予め用意しておくことになるが、緩衝容器を使用するときは、シュートを保管しておく必要がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、緩衝容器の使用時に、シュートを保管しておくことができるワーク回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワークを受け入れる空間を有する本体部と、前記空間に受け入れられた前記ワークを案内する案内面を有するシュートと、前記空間に受け入れられた前記ワークに対する緩衝材が溜められた緩衝容器と、を備え、前記シュートと前記緩衝容器とが前記空間内のワーク回収位置に選択的に装着され、前記ワークの、前記シュートを使用した前記案内面を移動させる回収と前記緩衝容器を使用した前記緩衝材への投入による回収とが選択的に切り替え可能であり、前記ワークの回収位置に前記緩衝容器が装着されている状態で、前記本体部と前記緩衝容器との間に、前記シュートを収容する収容空間を有するワーク回収装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るワーク回収装置によれば、緩衝容器の使用時に、本体部内にシュートを保管しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態であるワーク回収装置を示す、シュートを使用した状態の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態であるワーク回収装置を示す、
図1のシュートを含む横断面を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態であるワーク回収装置を示す、オイルバスを使用した状態の斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態であるワーク回収装置を示す、
図3のオイルバスを含む横断面を示す断面図である。
【
図5】
図1~4に示したシュートの詳細を示す斜視図であり、
図1,2に示すように、本来のシュートとして使用するときのおもて面から見た図である。
【
図6】
図1~4に示したシュートの詳細を示す斜視図であり、
図3,4に示すように、本体部の底板とオイルバスとの間の収容空間に収容されて、オイルバスの載置台として使用するときの裏面から見た図である。
【
図7】
図3,4に示したオイルバスの詳細を示す斜視図である。
【
図8】
図3,4に示したオイルバスの詳細を示す、前後方向を含む鉛直面による断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るワーク回収装置の実施形態について説明する。
【0011】
本発明の一実施形態であるワーク回収装置100は、
図1に示すように、工作機械の一例である自動旋盤装置400に隣接して配置される。自動旋盤装置400は、丸棒等の軸方向に長く延びた棒材の外周面を旋削等して加工し、加工して得られたワークWを、ワーク回収装置100に受け渡しする。
【0012】
ワーク回収装置100は、外装である本体部10と、シュート30(
図1,2参照)と、オイルバス40(緩衝容器の一例:
図3,4参照)と、を備えている。本体部10は、
図1に示すように、両側板11,20と、底板12と、段違い底板14と、段違い後板13と、後板15と、天板16と、段違い前板17と、斜板18と、前板19と、開閉扉21と、を備えている。
【0013】
本体部10は、これら両側板11,20、底板12、段違い底板14、段違い後板13、後板15、天板16、段違い前板17、斜板18、前板19、及び開閉扉21によって仕切られた内部空間10Bを有している。
【0014】
斜板18には開口18Aが形成されている。開閉扉21は、
図2に示すように、後ろ側の辺縁付近の軸21c回りに回動することにより、開口18Aを開閉する。開閉扉21が、
図2の実線で示した開いた状態では、開口18Aが、前板19の側となる手前側から大きく開き、開口18Aを通じて内部空間10Bに配置されたシュート30(
図1,2参照)やオイルバス40(
図3,4参照)にアクセスすることができる。
【0015】
一方、開閉扉21が、
図2の二点鎖線で示した閉じた状態では、開口18Aが閉じられて、開口18Aを通じて内部空間10Bのシュート30やオイルバス40にアクセスすることができない。
【0016】
なお、開閉扉21には、
図1に示すように、開閉扉21を開いた状態で保持するため開閉リンク22が設けられている。開閉リンク22が開閉扉21を支持しているときは、開閉扉21は開いた状態に保持され、開閉リンク22による支持を解除して、開閉扉21を閉じた状態とすることができる。
【0017】
段違い後板13及び底板12には、
図2,4に示すように、段違い後板13から前方に向けて曲げられた後側ブラケット25が設けられ、底板12の前側の部分には上方に延びて、その上端部が後方に向けて曲げられた前側ブラケット26が設けられている。後側ブラケットには、ボルト52が固定されている。
【0018】
斜板18の前側の部分には、
図2,4に示すように、斜板18から下方に延び、下端が後方に向けて曲げられた前端ブラケット27が設けられている。
【0019】
ワーク回収装置100は、本体部10が自動旋盤装置400に接して配置されている。側板20の、自動旋盤装置400との境界には、開口10Aが形成されている。そして、自動旋盤装置400によって加工されたワークWは、この開口10Aを通じて内部空間10Bに受け入れられる。
【0020】
ワーク回収装置100は、シュート30とオイルバス40とが内部空間10B内のワーク回収位置に選択的に装着され、内部空間10Bに受け入れられたワークWを、シュート30を使用しての回収と、オイルバス40を使用しての回収との2種類の回収形態を選択的に切り替え可能となっている。ワーク回収位置は、ワークWが落下する位置である。
【0021】
シュート30を使用しての回収を行うか、又はオイルバス40を使用しての回収を行うかの選択は、ワークWの素材等に応じて適宜選択される。
【0022】
図5に示すように、シュート30は、開口18Aの幅方向に沿って分割された2つのシュート部材31,32からなり、シュート部材31,32を並べて形成されている。シュート部材31は、概略矩形の平板部31aの幅方向の一方の側部が、平板部31aから立ち上がった側壁31bを形成し、また、平板部31aの幅方向の他方の側部が、平板部31aから立ち下がった側壁31dを形成している。
【0023】
側壁31bがシュート30として幅方向の端部に対応した側部に位置し、側壁31dがシュート30として幅方向の中央部に対応した側部に位置することによって、シュート部材31は、幅方向を含む鉛直面による断面がクランク状に形成されている。なお、この平板部31a、側壁31b及び側壁31dは、金属の1枚の板材を折り曲げて形成してもよいし、樹脂を成型して形成してもよい。
【0024】
また、平板部31aの長手方向の前端部で、平板部31aから立ち上がった端壁31cをシュート30の前端部30Bに形成している。この端壁31cは、立ち上がった先端部31c1が前方に屈曲して形成され、この先端部31c1には、ねじ止め用の切り欠き31fが形成されている。
【0025】
また、平板部31aの長手方向の後端部はシュート30の後端部30Aをなし、位置決め用の孔31gが形成されている。
【0026】
他方のシュート部材32もシュート部材31と同様の構成であり、概略矩形の平板部32aの幅方向の一方の側部が、平板部32aから立ち上がった側壁32bを形成し、平板部32aの幅方向の他方の側部が、平板部31aから立ち下がった側壁32dを形成している。
【0027】
また、平板部32aの長手方向の前端部が、平板部32aから立ち上がった端壁32cを形成し、端壁31cの立ち上がった先端部32c1が前方に屈曲して形成され、この先端部32c1には、ねじ止め用の切り欠き32fが形成されている。また、平板部32aの長手方向の後端部には、位置決め用の孔32gが形成されている。
【0028】
なお、シュート部材31の、後ろ側の側壁31bの上縁は、平板部31aと平行に形成されているのに対して、シュート部材32の、後ろ側の側壁32bの上縁は、後方に行くにしたがって低くなって、平板部32aに対して斜めに傾斜し、側壁32bの後側の部分が、開口10Aに突出するのを防止している。
【0029】
したがって、開口10Aの位置を変更して側壁32bが突出しない構成の場合や、側壁32bが突出しても特に問題がない場合は、側壁32bの上縁を、側壁31bの上縁と同様に、平板部32aと平行に形成してもよい。
【0030】
シュート30は、シュート部材31とシュート部材32とが、側壁31dと側壁32dとが裏面側で、シュート30の幅方向の中央部において背中合わせに接して並べられる。
【0031】
なお、シュート30は、各平板部31a,32aのおもて面(
図5において上面)はワークWが案内される案内面をなし、それぞれ、平板部31a,32aよりも軟らかい素材の緩衝板31k,32kが、ねじボス31j,31j又はねじ32j,32jを介して固定されて積層されている。
【0032】
シュート30は、
図5の矢印で示すように、各シュート部材31,32をそれぞれ裏返すことができる。そして、各シュート部材31,32をそれぞれ裏返して、
図6に示すように、側壁31bと側壁32bとが裏面側で、シュート30の幅方向の中央部において背中合わせに接して並べた状態とされることにより、、オイルバス40を使用してワークWを回収する場合のオイルバス40の載置台として使用することができる。
【0033】
このとき、
図5において平板部31a,32aの裏面が
図6において上面を向き、
図5において裏面側に位置していた側壁31d,32dが
図6においておもて面側に位置して、シュート30の幅方向の両端の側壁となる。
【0034】
また、平板部31a及び平板部32aの幅方向の中央付近には、長手方向の後端部付近と中央部付近とにそれぞれ、凹部31i,31i及び凹部32i,32iが形成されている。凹部31i,32iは、例えば皿モミで形成することができるが、皿モミに限定されない。
【0035】
オイルバス40は、
図7に示した幅方向の寸法が、平板部31a,32aの裏面を上向きにした姿勢(
図6に示す姿勢)のシュート30の側壁31d,32d間の寸法よりも短く設定されている。
【0036】
オイルバス40は、外側容器41と内側容器42とオイル45とを備えている。外側容器41及び内側容器42はいずれも、四方の側板と底板とで仕切られた内部空間を形成している。外側容器41は、前側の側板の外側に、取っ手41aが設けられている。
【0037】
内側容器42は、外側容器41の内部空間内に配置することができる。内側容器42の側板や底板には内部空間と外部空間とを通じさせる貫通孔42bが形成されている。なお、内側容器42の側板や底板が、貫通孔42bが全体に形成されたパンチングメタルで形成されていてもよい。
【0038】
内側容器42は、
図7,8に示すように、対向する2つの側板の内面(内部空間に向いた面)にそれぞれ、上方に突出して、持ち手42aが設けられている。これら2つの持ち手42a,42aを両手で掴んで上方に引き上げることにより、内側容器42を外側容器41と分離することができる。
【0039】
外側容器41の内部空間には、オイル45が溜められている。外側容器41の内部空間に内側容器42が配置されている状態のときは、外側容器41の内部空間に溜められているオイル45が、内側容器42の貫通孔42bを通じて内側容器42の内部空間に流入するため、内側容器42の内部空間までオイル45が溜められている状態となっている。
【0040】
そして、内側容器42を外側容器41に対して引き上げたときは、内側容器42の内部空間に溜められていたオイル45は、貫通孔42bを通じて内側容器42の外側の外側容器41の内部空間に流出する。
【0041】
外側容器41の底板には、下方に突出した凸部41bが形成されている。凸部41bは、底板の四隅にそれぞれ近い位置に、シュート30の凹部31i,31i,32i,32iに対応して設けられている。凸部41bは、例えば袋ナットで形成することができるが、袋ナットに限定されない。
【0042】
オイルバス40が、裏面を上向きにした姿勢のシュート30の平板部31a,32aに載せられて、各凸部41bが凹部31i,31i,32i,32iに嵌め合わされることにより、オイルバス40は、シュート30の後端部付近に位置決めされる
【0043】
以上のように構成された本実施形態のワーク回収装置100の作用について説明する。まず、自動旋盤装置400によって加工され、内部空間10Bに搬入されたワークWを、シュート30を使用して回収する場合について説明する。
【0044】
図2に示すように、開閉扉21が開けられた状態で保持される。そして、開口18Aを通じて、内部空間10Bにシュート30が、緩衝板31k,32kが上方を向いた姿勢(
図5に示した姿勢)で搬入される。
【0045】
まず、図示右側のシュート部材32が、内部空間10Bに搬入され、
図2に示すように、後端部30Aが、段違い後板13と段違い底板14とが接続された角部に乗り上げた状態とし、先端部32c1が、前端ブラケット27に載せられる。シュート部材32には、搬入作業用に側壁32bに孔32eが形成されている。
【0046】
先端部32c1の切り欠き32fを通じて前端ブラケット27にねじ込まれるねじ51により、先端部32c1が前端ブラケット27に固定され、シュート部材32は所定位置に配置して固定される。
【0047】
図示左側のシュート部材31もシュート部材32と同様に、側壁31bに形成された孔31e等を使用して、内部空間10Bに搬入され、後端部30Aが、段違い後板13と段違い底板14とが接続された角部に乗り上げた状態とし、先端部31c1が、前端ブラケット27に載せられる。
【0048】
先端部31c1の切り欠き31fを通じて前端ブラケット27にねじ込まれるねじ51により、先端部31c1が前端ブラケット27に固定され、シュート部材31が所定位置に配置される。
【0049】
このシュート部材31,32の所定位置は、緩衝板31k,32kの後方の部分が、段違い前板17よりも後方で、かつ段違い後板13よりも前方となる位置であり、内部空間10Bに搬入されたワークWの鉛直下方に配置される。これにより、平板部31a,32a及び緩衝板31k,32kが、前側下がりの傾斜姿勢となる。シュート30は、前端部30Bが前端ブラケット27固定され、斜めに傾斜した状態に支持され、緩衝板31k,32kが同一面内となる、
図5に示す形態で保持される。
【0050】
次いで、開閉扉21が閉じられた状態とされ、自動旋盤装置400から内部空間10Bに受け入れられたワークWが下方に落とされると、ワークWは、シュート30の緩衝板31k,32k上に落ちて、緩衝板31k,32kを介して案内面に案内されて、傾斜に沿って下方(前方)に滑り落ち又は転がり落ちる。そして、ワークWは、端壁31c,32cに当たって停止する。後続するワークWも同様に、緩衝板31k,32kを介して案内面に案内されて、傾斜に沿って下方(前方)に滑り落ち又は転がり落ち、ワークWは、シュート30上に溜められて回収される。
【0051】
ここで、緩衝板31k,32kの上を案内されるワークWが側壁31b,32bに当たることにより、ワークWが緩衝板31k,32kから脱落する変位を規制し、ワークWがシュート30から脱落するのを防いでいる。
【0052】
シュート30上にワークWが所定数量溜められた後、開閉扉21が開かれて、シュート30上に溜められたワークWは、開口18Aを通じて外部に回収される。
【0053】
次に、自動旋盤装置400によって加工され、内部空間10Bに搬入されたワークWを、オイルバス40を使用して回収する場合について説明する。
【0054】
この場合、
図2に示すように、開閉扉21が開けられた状態で、前端ブラケット27にねじ込まれたねじ51が緩められ、シュート30の先端部31c1,32c1が前端ブラケット27から取り外される。このとき、まず、シュート30のうち図示左側のシュート部材31が取り外される。シュート部材31は、孔31e等を使用して、内部空間10Bから引き上げられる。
【0055】
次いで、図示右側のシュート部材32が、孔32e等を使用して、内部空間10Bから引き上げられる。
【0056】
取り外された各シュート部材31,32は、緩衝板31k,32kが裏面側に配置されるように裏返され、
図6に示す姿勢とされる。そして、まず、図示右側のシュート部材32が、内部空間10Bに搬入され、
図4に示すように、後端部30Aが後側ブラケット25に載せられ、前端部30Bが前側ブラケット26に載せられた状態とする。シュート部材32には、搬入作業用として側壁32dに孔32hが形成されている。
【0057】
このとき、後側ブラケット25に固定されたボルト52が、シュート部材32の後端部30Aに形成された位置決め用の孔32gに嵌め合わされるように、シュート部材32の位置が調整されることにより、シュート部材32は予め設定された所定の位置に配置される。
【0058】
次いで、図示左側のシュート部材31が、側壁31dに形成された孔31h等を使用して、内部空間10Bに搬入され、シュート部材32と同様に、後端部30Aが後側ブラケット25に載せられ、前端部30Bが前側ブラケット26に載せられた状態とするそして、後側ブラケット25に固定されたボルト52が、シュート部材31の後端部30Aに形成された位置決め用の孔31gに嵌め合わされるように、シュート部材31の位置が調整されることにより、シュート部材31も予め設定された所定の位置に配置される。
【0059】
このようにして、後側ブラケット25に位置決めされ、後側ブラケット25と前側ブラケット26とに載せられて配置されたシュート30は、平板部31a,32aが底板12に平行な水平姿勢で、
図6に示す形態で保持され、底板12から僅かに離反して浮いた状態で載置される。
【0060】
そして、開口18Aを通じて、内部空間10Bにオイルバス40が入れられて、オイルバス40は、平板部31a,32a上の前側部分に配置される。オイルバス40は、平板部31a,32a上を後方に押され、
図8に示すように、オイルバス40の凸部41bが平板部31a,32aの凹部31i,32iに嵌め合わされて、オイルバス40はシュート30上の所定位置に位置決めされる。
【0061】
このオイルバス40の所定位置は、オイルバス40の後ろ側の部分が、段違い前板17よりも後方で、かつ段違い後板13よりも前方となる位置であり、内部空間10Bに受け入れられたワークWの鉛直下方の位置である。
【0062】
オイルバス40が平板部31a,32a上を後方に押されて移動する際、側壁31d,32dが、オイルバス40に当たることで、オイルバス40の幅方向のへ変位を規制し、オイルバス40が平板部31a,32aから飛び出した状態となるのを防いでいる。
【0063】
次いで、開閉扉21が閉じられた状態とされると、オイルバス40が内部空間10Bの所定位置に配置された状態で、シュート30は内部空間10B内において、オイルバス40と底板12との間に形成された空間(収容空間)10Cに配置されている。つまり、シュート30は、オイルバス40と底板12との間の収容空間10Cに収容された状態となっている。
【0064】
そして、内部空間10Bに受け入れられたワークWが下方に落とされると、ワークWは、オイルバス40の内側容器42の内部空間に溜まっているオイル45に投入され、オイル45内を沈下する間に落下速度が低減され、オイルバス40の内側容器42の内部空間の底面に当たって停止する。後続するワークWも同様に、オイル45に投入され、ワークWは内側容器42の内部空間の底部に溜められる。
【0065】
オイルバス40の内部空間にワークWが所定数量溜められた後、開閉扉21が開かれて、オイルバス40が、開口18Aを通じて外部に搬出される。内側容器42に設けられた持ち手42a,42aを手で掴んで、外側容器41に対して引き上げることにより、オイル45は、貫通孔42bを通じて内側容器42の内部空間から外側容器41の内部空間に流れ落ち、ワークWは内側容器42の内部空間に残される。したがって、内側容器42には、オイル45が切られたワークWだけが残されて、ワークWは回収される。
【0066】
以上、詳細に説明したように、本実施形態のワーク回収装置100によれば、シュート30を使用したワークWの回収と、オイルバス40を使用したワークWの回収との2種類の回収形態を選択的に切り替えることができる。
【0067】
また、本実施形態のワーク回収装置100は、オイルバス40を使用した回収の形態で、オイルバス40と本体部10の底板12との間に、シュート30を保管する収容空間10Cを備えている。したがって、オイルバス40の使用時に、シュート30をワーク回収装置100の外部に放置することがなくなり、シュート30を外部に放置した場合に起こりうる、ワーク回収装置100の外部におけるシュート30の保管場所の確保や、シュート30の紛失といった問題が生じるのを未然に防止することができる。
【0068】
また、本実施形態のワーク回収装置100は、オイルバス40の使用時に、収容空間10Cに収容されたシュート30の平板部31a,32a上にオイルバス40を載置しているため、オイルバス40を平板部31a,32aという平らな面上を所定の位置まで移動させることで、移動の労力を低減することができる。
【0069】
しかも、オイルバス40を載置するのは、平板部31a,32aの、緩衝板31k,32kが積層されている面の裏面側であるため、緩衝板31k,32kがオイルバス40の載置や移動によって損傷するのを防ぐこともできる。
【0070】
なお、本実施形態のワーク回収装置100は、収容空間10Cに収容されたシュート30が、オイルバス40を使用した回収が選択されている状態のオイルバス40が載せられる載置台として機能するが、収容空間10Cに収容されたシュート30が、オイルバス40を使用した回収が選択されている状態のオイルバス40が載せられる載置台として機能するものでなくてもよい。したがって、収容空間10Cに収容されているシュート30がオイルバス40と接しない状態であってもよい。
【0071】
また、本実施形態のワーク回収装置100は、シュート30が2つのシュート部材31,32に分割されているため、本体部10の狭い内部空間10Bの所定位置に、一体のシュートを配置する場合に比べて、2つに分割されたシュート部材31,32を順次配置することで、配置の労力を低減することができる。
【0072】
また、本実施形態のワーク回収装置100は、ワークWを落下させてシュート30として使用する際の平板部31a,32aに緩衝板31k,32kが積層されているため、ワークWが落下してきた際に、緩衝板31k,32kに当たった衝撃を緩衝する。したがって、本実施形態のワーク回収装置100は、落下してきたワークWが平板部31a,32aに当たる場合に比べて、落下の衝撃を低減することができる。これにより、ワークWとして、より柔らかい素材のもの用いることができる。
【0073】
本実施のワーク回収装置100は、緩衝容器として、オイル45が溜められたオイルバスを適用したが、本発明に係るワーク回収装置は、この形態に限定されるものではない。すなわち、本発明に係るワーク回収装置は、オイルバスに代えて、オイル以外の液体やゲルなどの落下速度を低減させる緩衝材が溜められた容器(緩衝容器)を適用することができる。
【0074】
また、本発明に係るワーク回収装置における緩衝容器は、本実施形態におけるオイルバス40のように、外側容器41と内側容器42という二重の構造のものに限定されない。したがって、本発明に係るワーク回収装置における緩衝容器は、緩衝材を溜めた単一の緩衝容器であってもよい。
【0075】
また、本実施形態のワーク回収装置100におけるシュート30は、2つのシュート部材31,32に分離できる構造であるが、本発明に係るワーク回収装置におけるシュートは、2つの分離できるものに限定されない。したがって、本発明に係るワーク回収装置におけるシュートは、一体に形成された単一のシュートであってもよいし、3つ以上のシュート部材に分離できるものであってもよい。
【0076】
また、本実施形態のワーク回収装置100におけるシュート30は、平板部31a,32aに積層された緩衝板31k,32kを備えたものであるが、本発明に係るワーク回収装置におけるシュートは、緩衝板31k,32kを備えたものに限定されない。したがって、本発明に係るワーク回収装置におけるシュートは、緩衝板を備えないものであってもよい。なお、シュートが緩衝板を備えないものであるときは、シュートの平板部31a,32aが、ワークWを案内する案内面として機能する。
【0077】
また、本実施形態のワーク回収装置100におけるシュート30は、オイルバス40の使用時であるシュート30の収容状態では、オイルバス40の載置台として使用したものであるが、本発明に係るワーク回収装置は、緩衝容器の使用時に、シュートが緩衝容器の載置台として使用させるものに限定されない。したがって、本発明に係るワーク回収装置におけるシュートは、緩衝容器の使用時に緩衝容器の載置台として使用することなく、単に、緩衝容器と本体部との間に形成された収容空間に収納されていればよい。
【0078】
また、本実施形態のワーク回収装置100におけるシュート30は、オイルバス40の載置台として使用した収容状態では、シュートとして使用するときに対して、平板部31a,32aを裏返しの姿勢としたが、本発明に係るワーク回収装置におけるシュートは、収容状態において、シュートとして使用するときに対して、平板部31a,32aを裏返しの姿勢とするものに限定されない。したがって、本発明に係るワーク回収装置におけるシュートは、緩衝容器が使用されている状態である収容状態では、シュートとして使用するときと同じ向きのままとしてもよい。
【0079】
また、本実施形態のワーク回収装置100におけるシュート30は、オイルバス40の載置台として使用した収容状態では、前端部30Bを前側ブラケット26に載せ、後端部30Aを後側ブラケット25に載せることにより、シュート30が、本体部10の底板12から浮かせて、シュート30が底板12に接しない状態としたが、本発明に係るワーク回収装置におけるシュートは、収容状態で、本体部10の底板12から浮かせた状態としなくてもよい。したがって、本発明に係るワーク回収装置におけるシュートは、収容状態で、底板12に接していてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 本体部
10B 内部空間
10C 収容空間
12 底板
18A 開口
21 開閉扉
30 シュート
31,32 シュート部材
31k,32k 緩衝板
40 オイルバス
45 オイル
100 ワーク回収装置
W ワーク