(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】摺動部品
(51)【国際特許分類】
F16J 15/34 20060101AFI20230718BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
F16J15/34 G
F16J15/34 K
F16C17/04 Z
(21)【出願番号】P 2020571159
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2020003646
(87)【国際公開番号】W WO2020162350
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2019017874
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】王 岩
(72)【発明者】
【氏名】井村 忠継
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓志
(72)【発明者】
【氏名】徳永 雄一郎
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/024742(WO,A1)
【文献】特開2017-141962(JP,A)
【文献】国際公開第2016/186019(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/046749(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008038396(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0350407(US,A1)
【文献】国際公開第2018/092742(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34
F16C 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械の相対回転する箇所に配置される環状の摺動部品であって、
前記摺動部品の摺動面には、外径側もしくは内径側
のうちの漏れ側に連通する深溝部と、該深溝部に連通して周方向に延設される浅溝部と、から構成される動圧発生機構が複数設けられており、前記深溝部には、該深溝部内の被密封流体の漏出を抑制するトラップ部が設けられている摺動部品。
【請求項2】
前記深溝部は、外径側に連通する請求項1に記載の摺動部品。
【請求項3】
前記トラップ部は、前記深溝部の内面から延設されたトラップ片である請求項1
または2に記載の摺動部品。
【請求項4】
前記トラップ部は、被密封流体を前記浅溝部に向けて誘導する誘導面を有している請求項1ないし
3のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項5】
前記トラップ部は、少なくとも前記深溝部の漏れ側に連通する開口部よりの箇所に配置されている請求項
1ないし
4のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項6】
前記トラップ部は、少なくとも前記深溝部の前記浅溝部との交差箇所に配置されている請求項1ないし
5のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項7】
前記トラップ部は、前記深溝部の径方向に延びる中心線を基準に線対称に配置されている請求項1ないし
6のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項8】
前記トラップ部は、前記摺動面を構成する基材と一体に成形されている請求項1ないし
7のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項9】
前記トラップ部は、前記深溝部内を蛇行する蛇行溝を構成している請求項1ないし
8のいずれかに記載の摺動部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対回転する摺動部品に関し、例えば自動車、一般産業機械、あるいはその他のシール分野の回転機械の回転軸を軸封する軸封装置に用いられる摺動部品、または自動車、一般産業機械、あるいはその他の軸受分野の機械の軸受に用いられる摺動部品に関する。
【背景技術】
【0002】
被密封液体の漏れを防止する軸封装置として例えばメカニカルシールは相対回転し摺動面同士が摺動する一対の環状の摺動部品を備えている。このようなメカニカルシールにおいて、近年においては環境対策等のために摺動により失われるエネルギーの低減が望まれており、摺動部品の摺動面に高圧の被密封液体側である外径側に連通するとともに摺動面において一端が閉塞する正圧発生溝を設けている。これによれば、摺動部品の相対回転時には、正圧発生溝に正圧が発生して摺動面同士が離間するとともに、正圧発生溝には被密封液体が外径側から導入され被密封液体を保持することで潤滑性が向上し、低摩擦化を実現している。
【0003】
さらに、メカニカルシールは、密封性を長期的に維持させるためには、「潤滑」に加えて「密封」という条件が求められている。例えば、特許文献1に示されるメカニカルシールは、一方の摺動部品において、被密封液体側に連通するレイリーステップ及び逆レイリーステップが設けられている。これによれば、摺動部品の相対回転時には、レイリーステップにより摺動面間に正圧が発生して摺動面同士が離間するとともに、レイリーステップが被密封液体を保持することで潤滑性が向上する。一方、逆レイリーステップでは相対的に負圧が生じるとともに逆レイリーステップはレイリーステップよりも漏れ側に配置されているため、レイリーステップから摺動面間に流れ出た高圧の被密封液体を逆レイリーステップに吸い込むことができる。このようにして、一対の摺動部品間の被密封液体が漏れ側に漏れることを防止して密封性を向上させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/046749号(第14-16頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、逆レイリーステップで被密封液体を被密封液体側へ戻す構造であるため、摺動面間における漏れ側に被密封液体が供給されず、潤滑性に寄与していない部分が生じる虞があり、より潤滑性の高い摺動部品が求められていた。また、逆レイリーステップの開口部から被密封液体が漏れてしまいやすく、より潤滑性が乏しくなる虞があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、被密封流体を摺動面間における漏れ側まで供給して高い潤滑性を発揮するとともに被密封流体の漏れの少ない摺動部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の摺動部品は、
回転機械の相対回転する箇所に配置される環状の摺動部品であって、
前記摺動部品の摺動面には、外径側もしくは内径側に連通する深溝部と、該深溝部に連通して周方向に延設される浅溝部と、から構成される動圧発生機構が複数設けられており、前記深溝部には、該深溝部内の被密封流体の漏出を抑制するトラップ部が設けられている。
これによれば、深溝部は溝の深さが深く容積が大きいので、摺動面の漏れ側まで供給された多くの量の被密封流体を回収して浅溝部に戻すことができ、摺動面の漏れ側まで延びる広い面積を利用して潤滑性を向上させることができる。また、深溝部にトラップ部が設けられているため、深溝部内に被密封流体が保持されやすくなることで、深溝部内からの被密封流体の漏出を抑制することができる。
【0008】
前記深溝部は、外径側に連通していてもよい。
これによれば、外径側に連通する深溝部にトラップ部が設けられているため、摺動部品の相対回転により被密封流体に生じる遠心力に抗して深溝部内に被密封流体を保持することで、深溝部内から外径側への被密封流体の漏出を抑制することができる。
【0009】
前記深溝部は、漏れ側に連通していてもよい。
これによれば、漏れ側に連通する深溝部にトラップ部が設けられているため、漏れ側への被密封流体の漏出を抑制することができる。さらに、深溝部が外径側に連通するものにあっては、摺動部品の相対回転により被密封流体に生じる遠心力及び被密封流体の漏れ方向に抗して深溝部内に被密封流体を保持することで、深溝部から外径側に位置する漏れ側への被密封流体の漏出をさらに抑制することができる。
【0010】
前記トラップ部は、前記深溝部の内面から延設されたトラップ片であってもよい。
これによれば、深溝部の内面からトラップ片を延設することで、剛性の高いトラップ部を容易に構成することができる。
【0011】
前記トラップ部は、被密封流体を前記浅溝部に向けて誘導する誘導面を有していてもよい。
これによれば、トラップ片により深溝部内に保持した被密封流体を、その誘導面に沿って浅溝部に誘導することができる。
【0012】
前記トラップ部は、少なくとも前記深溝部の漏れ側に連通する開口部よりの箇所に配置されていてもよい。
これによれば、深溝部内に保持される被密封流体の量を確保することができる。
【0013】
前記トラップ部は、少なくとも前記深溝部の前記浅溝部との交差箇所に配置されていてもよい。
これによれば、深溝部から浅溝部へ移動する被密封流体を保持して、確実に動圧を発生させることができる。
【0014】
前記トラップ部は、前記深溝部の径方向に延びる中心線を基準に線対称に配置されていてもよい。
これによれば、周方向の両方に回転する摺動部品に対応して被密封流体の保持機能を発揮させることができる。
【0015】
前記トラップ部は、前記摺動面を構成する基材と一体に成形されていてもよい。
これによれば、トラップ部の成形加工を容易に行うことができる。
【0016】
前記トラップ部は、前記深溝部内を蛇行する蛇行溝を構成していてもよい。
これによれば、蛇行溝により被密封流体の保持機能を高めることができる。
【0017】
尚、本発明に係る摺動部品の浅溝部が周方向に延設されているというのは、浅溝部が少なくとも周方向の成分をもって延設していればよく、好ましくは径方向よりも周方向に沿った成分が大きくなるように延設されていればよい。また深溝部が径方向に延びているというのは、深溝部が少なくとも径方向の成分をもって延設していればよく、好ましくは周方向よりも径方向に沿った成分が大きくなるように延設されていればよい。
【0018】
また、被密封流体は、液体であってもよいし、液体と気体が混合したミスト状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1におけるメカニカルシールの一例を示す縦断面図である。
【
図2】静止密封環の摺動面を軸方向から見た図である。
【
図4】静止密封環の摺動面における部分拡大図である。
【
図5】(a)~(c)は相対回転初期に液体誘導溝部の内径側から吸い込まれた被密封液体が摺動面間に流出される動作を説明する概略図である。
【
図6】静止密封環の摺動面における要部拡大図である。
【
図7】本発明の実施例2における静止密封環の摺動面を軸方向から見た図である。
【
図8】静止密封環の摺動面における要部拡大図である。
【
図9】本発明の実施例3における静止密封環の摺動面を軸方向から見た図である。
【
図10】本発明の実施例4における静止密封環の摺動面における要部拡大図である。
【
図11】本発明の実施例5における静止密封環の摺動面における要部拡大図である。
【
図12】本発明の実施例6における静止密封環の摺動面における要部拡大図である。
【
図13】本発明の実施例7における静止密封環の摺動面における要部拡大図である。
【
図14】本発明の実施例8における静止密封環の摺動面における要部拡大図である。
【
図15】本発明の実施例9における静止密封環の摺動面における要部拡大図である。
【
図16】本発明の実施例10における静止密封環の摺動面における要部拡大図である。
【
図17】本発明の実施例11における静止密封環の摺動面における要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る摺動部品を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0021】
実施例1に係る摺動部品につき、
図1から
図6を参照して説明する。尚、本実施例においては、摺動部品がメカニカルシールである形態を例に挙げ説明する。また、メカニカルシールを構成する摺動部品の内径側を被密封流体側としての被密封液体側(高圧側)、外径側を漏れ側としての大気側(低圧側)として説明する。また、説明の便宜上、図面において、摺動面に形成される溝等にドットを付すこともある。
【0022】
図1に示される一般産業機械用のメカニカルシールは、摺動面の内径側から外径側に向かって漏れようとする被密封液体Fを密封するアウトサイド形のものであって、回転軸1にスリーブ2を介して回転軸1と共に回転可能な状態で設けられた円環状の摺動部品である回転密封環20と、被取付機器のハウジング4に固定されたシールカバー5に非回転状態かつ軸方向移動可能な状態で設けられた摺動部品としての円環状の静止密封環10と、から主に構成され、ベローズ7によって静止密封環10が軸方向に付勢されることにより、静止密封環10の摺動面11と回転密封環20の摺動面21とが互いに密接摺動するようになっている。尚、回転密封環20の摺動面21は平坦面となっており、この平坦面には凹み部が設けられていない。
【0023】
静止密封環10及び回転密封環20は、代表的にはSiC(硬質材料)同士またはSiC(硬質材料)とカーボン(軟質材料)の組み合わせで形成されるが、これに限らず、摺動材料はメカニカルシール用摺動材料として使用されているものであれば適用可能である。尚、SiCとしては、ボロン、アルミニウム、カーボン等を焼結助剤とした焼結体をはじめ、成分、組成の異なる2種類以上の相からなる材料、例えば、黒鉛粒子の分散したSiC、SiCとSiからなる反応焼結SiC、SiC-TiC、SiC-TiN等があり、カーボンとしては、炭素質と黒鉛質の混合したカーボンをはじめ、樹脂成形カーボン、焼結カーボン等が利用できる。また、上記摺動材料以外では、金属材料、樹脂材料、表面改質材料(コーティング材料)、複合材料等も適用可能である。
【0024】
図2に示されるように、静止密封環10に対して回転密封環20が矢印で示すように相対摺動するようになっており、静止密封環10の摺動面11には当該摺動面11を構成する基材と一体に成形された複数の動圧発生機構14が静止密封環10の周方向に均等に配設されている。摺動面11の動圧発生機構14以外の部分は平端面を成すランド12となっている。
【0025】
次に、動圧発生機構14の概略について
図2~
図4に基づいて説明する。尚、以下、静止密封環10及び回転密封環20が相対的に回転したときに、
図4の紙面左側を後述するレイリーステップ9A内を流れる被密封液体Fの下流側とし、
図4の紙面右側をレイリーステップ9A内を流れる被密封液体Fの上流側として説明する。
【0026】
動圧発生機構14は、大気側に連通して内径方向に延びる深溝部としての液体誘導溝部15と、液体誘導溝部15の内径側端部から下流側に向けて静止密封環10と同心状に周方向に延びる浅溝部としてのレイリーステップ9Aと、液体誘導溝部15の流路の幅を外径側から内径側に向かうほどに漸次狭めるトラップ部13と、を備えている。すなわち、動圧発生機構14は、液体誘導溝部15、レイリーステップ9Aにより、摺動面11を直交する方向から見て逆L字形状を成している。尚、本実施例1の液体誘導溝部15は、静止密封環10の軸に直交するように径方向に延びている。また、液体誘導溝部15とレイリーステップ9Aとは連通しており、連通部分には深さ方向の段差18が形成されている。
【0027】
また、レイリーステップ9Aは、下流側の端部に回転方向に対して直交する壁部9aが形成されている。尚、壁部9aは、回転方向に直交することに限られるものではなく、例えば回転方向に対して傾斜していてもよいし、階段状に形成されていてもよい。
【0028】
液体誘導溝部15は、静止密封環10の外周に開口して大気側と連通する開口部15aを有している。また、液体誘導溝部15の深さ寸法L10は、レイリーステップ9Aの深さ寸法L20よりも深くなっている(L10>L20)。具体的には、本実施例1における液体誘導溝部15の深さ寸法L10は、100μmに形成されており、レイリーステップ9Aの深さ寸法L20は、5μmに形成されている。すなわち、液体誘導溝部15とレイリーステップ9Aとの間には、液体誘導溝部15における下流側壁面15bとレイリーステップ9Aの底面とにより深さ方向の段差18が形成されている。尚、液体誘導溝部15の深さ寸法がレイリーステップ9Aの深さ寸法よりも深く形成されていれば、液体誘導溝部15及びレイリーステップ9Aの深さ寸法は自由に変更でき、好ましくは寸法L10は寸法L20の5倍以上である。
【0029】
尚、レイリーステップ9Aの底面は平坦面を成しランド12に平行に形成されているが、平坦面に微細凹部を設けることやランド12に対して傾斜するように形成することを妨げない。さらに、レイリーステップ9Aの周方向に延びる2つの円弧状の面はそれぞれレイリーステップ9Aの底面に直交している。また、液体誘導溝部15の底面15dは平坦面を成しランド12に平行に形成されているが、平坦面に微細凹部を設けることやランド12に対して傾斜するように形成することを妨げない。さらに、
図3を参照して、液体誘導溝部15は、径方向に延びて周方向に対向する下流側壁面15b及び上流側壁面15cと、これら壁面15b,15cに直交する底面15dとを有している。すなわち、下流側壁面15b、上流側壁面15c及び底面15dは、液体誘導溝部15の内面を構成している。
【0030】
トラップ部13は、レイリーステップ9Aの外径側に位置する液体誘導溝部15の下流側壁面15bから当該液体誘導溝部15の周方向の中央側に向かって内径側に延びるトラップ片13Aと、トラップ片13Aと対向して液体誘導溝部15の上流側壁面15cから当該液体誘導溝部15の周方向の中央側に向かって内径側に延びるトラップ片13Bと、から構成されている。これらのトラップ片13A,13Bは、液体誘導溝部15の径方向に延びる仮想の中心線を基準に線対称に配置されている。尚、以降の説明において、特に断らない限りトラップ片13Aについて説明し、トラップ片13Bの説明については省略する。
【0031】
トラップ片13Aは、レイリーステップ9Aの周方向に延びる低圧側壁面9cよりも外径側に位置する液体誘導溝部15の下流側壁面15bから当該液体誘導溝部15の周方向の中央側に向かって内径側に延びる低圧側壁面13aと、レイリーステップ9Aの低圧側壁面9cと連続して液体誘導溝部15の下流側壁面15bから液体誘導溝部15の周方向の中央側に向かって内径側に延びる高圧側壁面13cと、が形成されている。これら、トラップ片13Aの低圧側壁面13a、高圧側壁面13cは、平坦面を成しているが、平坦面に微細凹部を設けることや、その端面がラウンドしていることを妨げない。
【0032】
また、トラップ片13Aは、回転密封環20の摺動面21と対向する端面がランド12と同一平面を成して連続している。また、トラップ片13Aは、ランド12と同一平面を成す、回転密封環20の摺動面21と対向する端面から液体誘導溝部15の底面15dに亘って連続している。
【0033】
次いで、静止密封環10と回転密封環20との相対回転時の動作について説明する。まず、回転密封環20が回転していない一般産業機械の非稼動時には、摺動面11,21間には摺動面11,21よりも外径側の被密封液体Fが毛細管現象によって僅かに進入しているとともに、動圧発生機構14には一般産業機械の停止時に残っていた被密封液体Fと摺動面11,21よりも内径側から進入した大気とが混在した状態となっている。尚、被密封液体Fは気体と比べ粘度が高いため、一般産業機械の停止時に動圧発生機構14から低圧側に漏れ出す量は少ない。
【0034】
一般産業機械の停止時に動圧発生機構14に被密封液体Fがほぼ残っていない場合には、回転密封環20が静止密封環10に対して相対回転(
図2の黒矢印参照)すると、
図4に示されるように、大気側の低圧側流体Aが矢印L1に示すように液体誘導溝部15から導入されるとともに、レイリーステップ9Aによって低圧側流体Aが回転密封環20の回転方向に矢印L2に示すように追随移動するため、レイリーステップ9A内に動圧が発生するようになる。
【0035】
レイリーステップ9Aの下流側端部である壁部9a近傍が最も圧力が高くなり、低圧側流体Aは矢印L3に示すように壁部9a近傍からその周辺に流出する。尚、レイリーステップ9Aの上流側に向かうにつれて漸次圧力が低くなっている。
【0036】
また、静止密封環10と回転密封環20との相対回転時には、摺動面11,21間にそれらの内径側から高圧の被密封液体Fが随時流入しており、いわゆる流体潤滑を成すようになっている。このとき、レイリーステップ9A近傍の被密封液体Fは、上述したようにレイリーステップ9Aの特に下流側は高圧となっているため、矢印H1に示すように、ランド12に位置したままで、レイリーステップ9Aにはほぼ進入しない。一方、液体誘導溝部15の近傍の被密封液体Fは、液体誘導溝部15が深溝部であってかつ低圧側に連通していることから、矢印H2に示すように、液体誘導溝部15に進入しやすくなっている。加えて、被密封液体Fは液体であって表面張力が大きいことから、液体誘導溝部15の側壁面に沿って移動して液体誘導溝部15に進入しやすくなっている。
【0037】
次いで、液体誘導溝部15に吸い込まれた被密封液体Fが摺動面11,21間に流出される動作を説明する。
【0038】
動圧発生機構14に被密封液体Fがほぼ残っていない場合に、回転密封環20が静止密封環10に対して相対回転(
図2の黒矢印参照)すると、
図5(a)に示されるように、液体誘導溝部15に侵入した被密封液体Fは、符号H3に示すように、塊状の液滴となる。その後、
図5(b)に示されるように、液滴がある程度の体積となると、レイリーステップ9Aの上流側に形成された相対的に低い圧力によってトラップ部13の間を通過して、符号H4に示すように、レイリーステップ9Aに引き込まれる。同時に、新たに液体誘導溝部15に被密封液体Fが進入し、液滴H3’となる。このとき、液体誘導溝部15には、
図5(a)における相対回転の初期状態よりも多くの被密封液体Fが進入する。
【0039】
その後、
図5(c)に示されるように、レイリーステップ9Aに引き込まれた被密封液体Fは回転密封環20から大きなせん断力を受け、圧力が高められながらレイリーステップ9A内を下流側に移動し、矢印H5に示すように壁部9a近傍からその周部に流出する。同時に、新たに液体誘導溝部15により多くの被密封液体Fが進入し、液滴H3’’となるとともに、液滴H3’が符号H4’に示すように、レイリーステップ9Aに引き込まれる。
【0040】
その後、
図5(c)に示される状態よりも液体誘導溝部15に進入する被密封液体Fの量が増え、レイリーステップ9Aから連続的に被密封液体Fが摺動面11,21間に流出する定常状態となる。定常状態では、摺動面11,21間にそれらの外径側やレイリーステップ9Aから高圧の被密封液体Fが随時流入しており、上述したように流体潤滑となっている。尚、
図5(a),(b),(c)を経て定常状態となるまでは過渡的な短い時間である。また、一般産業機械の停止時に動圧発生機構14に被密封液体Fが残っている場合には、動圧発生機構14に被密封液体Fが残存している量によって、
図5(a)の状態、
図5(b)の状態、
図5(c)の状態、定常状態のいずれかから動作が開始することとなる。
【0041】
ここで、液体誘導溝部15が深溝部であってかつ低圧側に連通していることから、矢印H5で示す被密封液体Fは、隣接する液体誘導溝部15内に引き込まれやすくなっており、摺動面11,21間の被密封液体Fの量が安定し、高い潤滑性を維持できるようになっている。また、固体に対する界面張力は気体よりも液体の方が大きいので、摺動面11,21間には被密封液体Fが保持されやすく大気は静止密封環10、回転密封環20よりも外径側に排出されやすい。
【0042】
また、
図5を参照して、液滴H3,H3’,H3’’によって例示されるように、トラップ部13は、被密封液体Fの流入方向である内径側に向かって壁面15b,15cから液体誘導溝部15の周方向の中央側に傾斜するトラップ片13A,13Bの低圧側壁面13a,13aが被密封液体Fをレイリーステップ9A側に誘導する誘導面として機能するため、トラップ部13によって液体誘導溝部15の流路が狭められていても、被密封液体Fの移動を妨げ難くなっている。
【0043】
また、
図6を参照して、矢印H6に示すように、トラップ片13Aの高圧側壁面13cは、レイリーステップ9Aの低圧側壁面9cと連続していることから、高圧側壁面13cから直接レイリーステップ9Aの低圧側壁面9cに被密封液体Fを誘導することができる。このため、レイリーステップ9A内への被密封液体Fの引き込み効率がよい。
【0044】
また、
図6に示されるように、本実施例のメカニカルシールはアウトサイド形であることから、矢印Cで示すように、回転密封環20の回転によって生じる遠心力が被密封液体Fに作用するため、液体誘導溝部15内の被密封液体Fが外径側である大気側に向かって漏出方向に付勢される。しかしながら、被密封液体Fは液体であって気体よりも粘性が高く、かつトラップ部13は、被密封液体Fの漏出方向である外径側に向かって液体誘導溝部15の周方向の中央部から壁面15b,15cに傾斜するトラップ片13A,13Bの高圧側壁面13c,13cによって被密封液体Fに作用する遠心力に対抗できるため、大気側への漏出を抑制することができる。さらに、トラップ片13Aの高圧側壁面13cは、上述したように、被密封液体Fを直接レイリーステップ9Aに誘導することができるため、液体誘導溝部15内からレイリーステップ9A内への被密封液体Fの引き込み効率を、遠心力を利用して高めることができる。
【0045】
また、トラップ部13では、トラップ片13A,13Bの間の幅が狭められていることから、トラップ片13A,13Bの間に存在する被密封液体Fに作用する表面張力によって被密封液体Fに作用する遠心力に対抗するようになっている。これにより、
図6内の網点部で示すように、被密封液体Fをトラップ部13の内径側に保持する保持能力が高められている。
【0046】
以上のように、静止密封環10と回転密封環20との相対回転時において、レイリーステップ9Aには、液体誘導溝部15を介して大気側にある低圧側流体Aを引き込んで動圧が発生している。液体誘導溝部15は溝の深さが深く容積が大きいので、摺動面11の大気側まで供給された多くの量の被密封液体Fを回収してレイリーステップ9Aに戻すことができ、摺動面11の低圧側まで延びる広い面積を利用して潤滑性を向上させることができる。また、液体誘導溝部15にトラップ部13が設けられているため、静止密封環10の相対回転により被密封液体Fに生じる遠心力に抗して液体誘導溝部15内に被密封液体Fを保持することで、外径側に位置する大気側への被密封液体Fの漏出を抑制することができる。
【0047】
また、多くの量の被密封液体Fが液体誘導溝部15に保持されるため、レイリーステップ9A内に引き込まれる被密封液体Fの量を十分に確保できるとともに、液体誘導溝部15に保持される被密封液体Fの量が短い時間において増減しても、レイリーステップ9A内に引き込まれる被密封液体Fの量を略一定とすることができ、摺動面11,21が貧潤滑となることを回避できる。また、液体誘導溝部15が低圧側に連通しているので、摺動面11,21間の被密封液体Fの圧力に比べ液体誘導溝部15内の圧力は低くなっており、液体誘導溝部15近傍の被密封液体Fは液体誘導溝部15内に引き込まれやすくなっている。
【0048】
また、液体誘導溝部15は、径方向に延びている。具体的には、液体誘導溝部15は、静止密封環10の中心軸と直交する方向に延びており、その外径側端部からレイリーステップ9Aが交差するように周方向に配置されているため、レイリーステップ9A内で生じる被密封液体Fの流れの慣性や、動圧の影響を受けにくくなっている。このことから、静止密封環10の内側面に付着した被密封液体Fや低圧側流体Aが液体誘導溝部15の内径側から直接レイリーステップ9Aに吸い込まれ難くなっている。また、動圧の影響を直接的に受けずに、被密封液体Fを液体誘導溝部15に保持できる。
【0049】
また、トラップ片13A,13Bは、回転密封環20の摺動面21と対向する端面から液体誘導溝部15の底面15dまで軸方向に亘って連続しており、軸方向に作用する外力に対する剛性が高められている。加えて、トラップ片13A,13Bは、それぞれ液体誘導溝部15の下流側壁面15b,上流側壁面15cに連続していることから、周方向に対する剛性も高められている。すなわち、液体誘導溝部15の下流側壁面15b、上流側壁面15c、底面15dからトラップ片13A,13Bを延設することで、剛性の高いトラップ部13を容易に構成することができる。
【0050】
また、トラップ部13は、液体誘導溝部15とレイリーステップ9Aとの交差箇所に配置されていることから、液体誘導溝部15からレイリーステップ9Aへ移動する被密封液体Fを保持して、確実に動圧を発生させることができる。
【0051】
また、トラップ部13は、摺動面11を構成する基材と一体に成形されていることから、トラップ部13の成形加工を容易に行うことができる。
【0052】
また、液体誘導溝部15の周方向の幅を短くして静止密封環10の周方向に多く配置できるので設計自由度が高い。尚、液体誘導溝部15は、静止密封環10の中心軸と直交する方向に限られず、静止密封環10の中心軸と直交する位置から傾いていてもよいが、45度未満の傾きであることが好ましい。さらに、液体誘導溝部15の形状は円弧状など自由に変更できる。
【0053】
また、レイリーステップ9Aと液体誘導溝部15との連通部分には、液体誘導溝部15における下流側の側面とレイリーステップ9Aの底面とにより段差18が形成されているので、動圧の影響を直接的に受けずに被密封液体Fを液体誘導溝部15に保持できる。
【0054】
また、レイリーステップ9Aは、径方向の全幅に亘って液体誘導溝部15に連通しているため、レイリーステップ9Aの液体誘導溝部15への開口領域を確保でき、液体誘導溝部15に保持された被密封液体Fを効率的に吸い上げることができる。
【0055】
また、静止密封環10に動圧発生機構14が設けられているため、静止密封環10及び回転密封環20の相対回転時に、液体誘導溝部15内を大気圧に近い状態に保ちやすい。
【0056】
尚、本実施例1では、液体誘導溝部15とレイリーステップ9Aとが摺動面11を直交する方向から見て逆L字形状を成している形態を例示したが、例えば、液体誘導溝部15とレイリーステップ9Aとが交差することなく滑らかに、例えば直線状、円弧状を成すように連通していてもよい。
【0057】
また、液体誘導溝部15とレイリーステップ9Aとの連通部分に段差18が設けられていなくてもよく、例えば、液体誘導溝部15とレイリーステップ9Aとが傾斜面で連通していてもよい。この場合、例えば、5μm以下の深さ寸法を有する部分が浅溝部としてのレイリーステップ9Aとなり、5μmよりも深い部分を深溝部としての液体誘導溝部15とすることができる。
【0058】
また、浅溝部は、静止密封環と同心状に周方向に延びる形態に限られず、例えば、下流側端部が高圧側に向くように円弧状に形成されていてもよい。また、浅溝部は、深溝部から直線状に延設されるようになっていてもよいし、蛇行して延設されていてもよい。
【0059】
また、トラップ部13は、動圧発生溝であるレイリーステップ9A側に配置されたトラップ片13Aのみで構成されていてもよく、トラップ片13Aの寸法が適宜変更されてもよく、レイリーステップ9Aの低圧側壁面9cに対して径方向に離間して配置されている態様であってもよい。同様にトラップ部13は、レイリーステップ9Aに対向する側に配置されたトラップ片13Bのみで構成されていてもよい。
【0060】
また、トラップ片13Aは、ランド12と同一平面を成している形態を例示したが、例えば、ランド12よりも軸方向に凹んでいてもよい。また、トラップ片13Aは、液体誘導溝部15の底面15dまで軸方向に亘って連続している形態を例示したが、例えば、トラップ片13Aの下端部が液体誘導溝部15の底面15dと離間していてもよく、トラップ片13Aの軸方向の一部が途中で分断していてもよい。すなわち、トラップ片13Aは、遠心力により被密封液体Fが液体誘導溝部15内から大気側への漏出することを抑制可能であればよく、その形状は適宜変更されてもよい。
【0061】
また、トラップ片13Aは、摺動面11を構成する基材と一体に成形されている態様として説明したが、これに限らず、摺動面11を構成する基材とは別体に形成されたトラップ片が液体誘導溝部15の内面に固定されていてもよい。
【実施例2】
【0062】
次に、実施例2に係る摺動部品につき、
図7,
図8を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0063】
図7,
図8に示されるように、静止密封環101に設けられる動圧発生機構141は、液体誘導溝部15と、レイリーステップ9Aと、液体誘導溝部15の内径側端部から上流側に向けて静止密封環101と同心状に周方向に延びる浅溝部としての逆レイリーステップ9Bと、トラップ部13と、を備えている。すなわち、動圧発生機構141は、摺動面11を直交する方向から見てT字形状を成している。また、逆レイリーステップ9Bは、レイリーステップ9Aと同じ5μmの深さ寸法で形成されている。
【0064】
トラップ片13Bは、逆レイリーステップ9Bの周方向に延びる低圧側壁面9cよりも外径側に位置する液体誘導溝部15の上流側壁面15cから当該液体誘導溝部15の周方向の中央側に向かって内径側に延びる低圧側壁面13aと、逆レイリーステップ9Bの低圧側壁面9cと連続して液体誘導溝部15の上流側壁面15cから液体誘導溝部15の周方向の中央側に向かって内径側に延びる高圧側壁面13cと、が形成されている。
【0065】
図7の実線矢印で示す紙面反時計回りに回転密封環20が回転する場合には、低圧側流体Aが矢印L1,L2,L3の順に移動してレイリーステップ9A内に動圧が発生する。また、
図7の点線矢印で示す紙面時計回りに回転密封環20が回転する場合には、低圧側流体Aが矢印L1,L2’,L3’の順に移動して逆レイリーステップ9B内に動圧が発生する。すなわち、
図7の紙面時計回りに回転密封環20が回転する場合には、逆レイリーステップ9Bがレイリーステップとして機能し、レイリーステップ9Aが逆レイリーステップとして機能する。
【0066】
このように、液体誘導溝部15から周方向両側にレイリーステップ9A及び逆レイリーステップ9Bが延設されており、レイリーステップ9A及び逆レイリーステップ9Bのいずれか一方を動圧発生用の浅溝部として利用できるため、静止密封環101と回転密封環20との相対回転方向に関わらず使用できる。
【0067】
また、動圧発生機構141におけるレイリーステップ9Aは、隣接する動圧発生機構141’の逆レイリーステップ9Bと周方向に隣接している。これによれば、動圧発生機構141におけるレイリーステップ9Aの壁部9a近傍からその周部に流出し、内径側に移動しようとする被密封液体Fが隣接する動圧発生機構141’における逆レイリーステップ9Bから吸い込まれるため、被密封液体Fの低圧側への漏れを低減できる。
【0068】
また、トラップ部13は、
図8の実線矢印で示す紙面反時計回りに回転密封環20が回転する場合には、前記実施例1と同様に、外径側に位置する大気側への被密封液体Fの漏出を抑制することができる。また、
図8の点線矢印で示す紙面時計回りに回転密封環20が回転する場合には、トラップ部13が大気側から被密封液体F側への被密封液体Fの移動を妨げることがなく、矢印H7で示すように、低圧側壁面9cと連続しているトラップ片13Bの高圧側壁面13cにより逆レイリーステップ9Bへの被密封液体Fの引き込み効率が良く、トラップ片13A,13Bの間の幅が狭められていることから、トラップ片13A,13Bの間に存在する被密封液体Fに表面張力が発生し、この表面張力によって被密封液体Fに作用する遠心力に対抗するようになっており、網点部で示すように、被密封液体Fをトラップ部13の内径側に保持する保持能力が高められている。すなわち、周方向の両方に回転する静止密封環101に対応して被密封液体Fの保持機能を発揮させることができる。
【0069】
尚、本実施例2では、レイリーステップ9A及び逆レイリーステップ9Bが同一の深さ寸法である場合を例示したが、異なる深さ寸法に形成されていてもよい。また、両者は周方向長さ、径方向幅についても同じであっても異なっていてもよい。
【0070】
また、動圧発生機構141におけるレイリーステップ9Aと隣接する動圧発生機構141’の逆レイリーステップ9Bとを周方向に長い距離離間させ、摺動面11,21間を離間させる圧力をより高めるようにしてもよい。
【実施例3】
【0071】
次に、実施例3に係る摺動部品につき、
図9を参照して説明する。尚、前記実施例2と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0072】
図9に示されるように、静止密封環102には、動圧発生機構141と、特定動圧発生機構16と、が複数形成されている。特定動圧発生機構16は、高圧側に連通する液体誘導溝部161と、液体誘導溝部161の外径側端部から下流側に向けて静止密封環102と同心状に周方向に延びるレイリーステップ17Aと、液体誘導溝部161の外径側端部から上流側に向けて静止密封環102と同心状に周方向に延びる逆レイリーステップ17Bと、を備えている。液体誘導溝部161と液体誘導溝部15とは、周方向に対応する位置に形成されている。また、液体誘導溝部161は、特定動圧発生機構16の深溝部として機能しており、レイリーステップ17A及び逆レイリーステップ17Bは、特定動圧発生機構16の浅溝部として機能している。
【0073】
動圧発生機構141のレイリーステップ9A及び逆レイリーステップ9Bは、特定動圧発生機構16のレイリーステップ17A及び逆レイリーステップ17Bよりも周方向に長く形成されている。また、レイリーステップ17A及び逆レイリーステップ17Bの深さ寸法は、レイリーステップ9A及び逆レイリーステップ9Bと同じ5μmに形成されている。また、レイリーステップ17A及び逆レイリーステップ17Bの径方向の幅は、レイリーステップ9A及び逆レイリーステップ9Bの径方向の幅よりも小幅に形成されている。すなわち、動圧発生機構141の容積は、特定動圧発生機構16の容積よりも大きくなっている。
【0074】
図9の実線矢印で示す紙面反時計回りに回転密封環20が回転する場合には、被密封液体Fが矢印L11,L12,L13の順に移動してレイリーステップ17A内に動圧が発生する。また、
図9の点線矢印で示す紙面時計回りに回転密封環20が回転する場合には、被密封液体Fが矢印L11,L12’,L13’の順に移動して逆レイリーステップ17B内に動圧が発生する。このよに、静止密封環102と回転密封環20との相対回転方向に関わらず特定動圧発生機構16内に動圧を発生させることができる。
【0075】
また、特定動圧発生機構16で発生する動圧により摺動面11,21間を離間させて適当な液膜を生成しつつ、摺動面11から低圧側に漏れようとする被密封液体Fを動圧発生機構141によって回収できる。
【0076】
また、動圧発生機構141の容積が特定動圧発生機構16の容積よりも大きいので、動圧発生機構141のレイリーステップ9A及び逆レイリーステップ9Bの吸い込み力を大きくして、低圧側の動圧発生機構141と高圧側の特定動圧発生機構16との動圧のバランスを調整できる。
【0077】
また、動圧発生機構141の終端である壁部9aと、特定動圧発生機構16の終端である壁部17aとが周方向にずれているため、摺動面11,21の周方向に圧力を分散できバランスがよい。
【0078】
尚、レイリーステップ9A及び逆レイリーステップ9Bの周方向の長さは、レイリーステップ17A及び逆レイリーステップ17Bと同一、またはレイリーステップ17A及び逆レイリーステップ17Bよりも短く形成されていてもよい。また、レイリーステップ17A及び逆レイリーステップ17Bは、レイリーステップ9A及び逆レイリーステップ9Bと異なる深さ寸法に形成されていてもよい。また、レイリーステップ17A及び逆レイリーステップ17Bの径方向の幅は、レイリーステップ9A及び逆レイリーステップ9Bの径方向の幅よりも大幅に形成されていてもよい。好ましくは、動圧発生機構141の容積が特定動圧発生機構16の容積よりも大きくなっていればよい。
【0079】
また、摺動面11は、摺動面11の外径側端縁から動圧発生機構141のレイリーステップ9Aの外径側端縁までの径方向の寸法と、動圧発生機構141のレイリーステップ9Aの内径側端縁から特定動圧発生機構16のレイリーステップ17Aの外径側端縁までの径方向の寸法と、特定動圧発生機構16のレイリーステップ17Aの内径側端縁から摺動面11の内径側端縁までの径方向の寸法と、を適宜変更してもよく、これにより、回転密封環20の回転速度や被密封液体Fの圧力に応じて、摺動面11,21間から大気側に漏出する被密封液体Fの量と動圧発生機構に回収される被密封液体Fの量とを、より好適にバランスさせることができる。すなわち、被密封液体Fの大気側への漏出を抑制することができる。
【実施例4】
【0080】
次に、実施例4に係る静止密封環につき、
図10を参照して説明する。尚、前記実施例2と同一構成で重複する構成の説明を省略する。また、ここでは、動圧発生機構142の形態のみ説明する。
【0081】
動圧発生機構142は、液体誘導溝部151と、液体誘導溝部151の径方向中央から周方向下流側(図示左側)に延びるレイリーステップ91Aと、このレイリーステップ91Aよりも内径側である液体誘導溝部151の径方向内径側端部から周方向上流側(図示右側)に延びる逆レイリーステップ91Bと、トラップ部131と、を備えている。トラップ部131は、径方向に互い違いに配置されたトラップ片131A,131Bによって構成されている。
【0082】
これにより、回転密封環20が反時計回りに回転した際に、トラップ部131では、液体誘導溝部151内の被密封液体Fに対し大気側に向かって遠心力が作用し、トラップ片131Bよりも内径側の被密封液体Fが内径側壁部131cにより下流側に誘導され、トラップ片131Aの内径側壁部131cによりさらに下流側のレイリーステップ91Aに誘導されるため、トラップ部131よりも大気側へ移動し難くなっている。言い換えれば、トラップ部131は、被密封液体Fを径方向に向かって直線状に移動させ難くしているため、液体誘導溝部151内における被密封液体Fの保持機能を高めることができる。
【0083】
また、トラップ部131では、トラップ片131A,131Bの間の幅が狭められていることから、トラップ片131A,131Bの間に存在する被密封液体Fに表面張力が発生し、この表面張力によって被密封液体Fに作用する遠心力に対抗するようになっており、網点部で示すように、被密封液体Fをトラップ部131の内径側に保持する保持能力が高められている。
【実施例5】
【0084】
次に、実施例5に係る静止密封環につき、
図11を参照して説明する。尚、前記実施例2と同一構成で重複する構成の説明を省略する。また、ここでは、動圧発生機構143の形態のみ説明する。
【0085】
動圧発生機構143は、レイリーステップ9Aと、逆レイリーステップ9Bと、液体誘導溝部152と、トラップ部132と、を備えている。トラップ部132は、液体誘導溝部152の開口部152a近傍からレイリーステップ9Aと交差する内径側端部近傍に亘って所定間隔置きに配置された複数のトラップ片132Aと、液体誘導溝部152の径方向に延びる仮想の中心線を基準にトラップ片132Aと線対称に配置された複数のトラップ片132Bと、液体誘導溝部152の周方向中央部にて隣り合う四方のトラップ片132A,132A,132B,132Bに囲まれた箇所に配置された複数のトラップ片132Cと、から構成されている。
【0086】
トラップ片132Aは、液体誘導溝部152の下流側から当該液体誘導溝部152の周方向の中央側に向かって外径側に延びている。また、トラップ片132Aは、液体誘導溝部152の下流側から上流側に向かって外径側に延びる低圧側壁面132aと、低圧側壁面132aの上流側の端部に直交して当該端部から上流側に向かって内径側に延びる中央側壁面132bと、中央側壁面132bの内径側の端部に直交して当該端部から下流側に向かって内径側に延びる下流側壁面132cと、が形成されている。
【0087】
トラップ片132Cは、液体誘導溝部152の径方向に延びる仮想の中心線を基準に線対称に形成されており、液体誘導溝部152の周方向の中央部から下流の内径側及び上流の内径側へ延びている。また、トラップ片132Cは、液体誘導溝部152の周方向の中央部から下流の内径側及び上流の内径側に延びる低圧側壁面132d,132dと、低圧側壁面132d,132dの下流側の端部及び上流側の端部に直交して当該端部から上流側または下流側に向かって内径側に延びる中央側壁面132e,132eと、中央側壁面132e,132eの内径側の端部に直交して当該端部から上流側または下流側に向かって外径側に延びる内径側壁部132f,132fと、が形成されている。トラップ片132Cは、回転密封環20の摺動面21と対向する端面がランド12と同一平面を成すとともに、液体誘導溝部152の底面152dまで軸方向に亘って連続している。
【0088】
また、トラップ片132Cの下流側端部は、隣り合うトラップ片132Aの上流側端部と周方向に重なって互い違いとなるように配置されており、トラップ片132Cの上流側端部は、隣り合うトラップ片132Bの下流側端部と周方向に重なって互い違いとなるように配置されている。
【0089】
これにより、トラップ部132は、被密封液体Fの流入方向に向かって内径側に傾斜するトラップ片132A,132Bの中央側壁面132b,132b、トラップ片132Cの低圧側壁面132d,132d及び中央側壁面132e,132eが被密封液体Fをレイリーステップ9A側へ誘導する誘導面として機能するため、トラップ部132によって流路が狭められていても、被密封液体Fの液体誘導溝部152内への進入を妨げ難くなっている。
【0090】
また、トラップ部132では、トラップ片132A,132B,132Cの間の幅が狭められていることから、トラップ片132A,132B,132Cの間に存在する被密封液体Fに表面張力が発生し、この表面張力によって被密封液体Fに作用する遠心力に対抗するようになっており、網点部で示すように、被密封液体Fをトラップ部132の内径側に保持する保持能力が高められている。
【0091】
また、トラップ片132Cは、内径側壁部132f,132fによって、液体誘導溝部152内から大気側に漏出しようとする被密封液体Fを捕集することができるため、好適に被密封液体Fの大気側への漏出を抑制することができる。
【0092】
また、トラップ片132Cは、液体誘導溝部152の底面152dまで軸方向に亘って連続しており、軸方向に作用する外力に対する剛性が高められている。すなわち、液体誘導溝部152の底面152dからトラップ片132Cを延設することで、剛性の高いトラップ部132を容易に構成することができる。
【実施例6】
【0093】
次に、実施例6に係る静止密封環につき、
図12を参照して説明する。尚、前記実施例2と同一構成で重複する構成の説明を省略する。また、ここでは、動圧発生機構144の形態のみ説明する。
【0094】
動圧発生機構144は、レイリーステップ9Aと、逆レイリーステップ9Bと、液体誘導溝部153と、トラップ部133と、を備えている。トラップ部133は、液体誘導溝部153の開口部153a近傍からレイリーステップ9Aと交差する内径側端部近傍に亘って所定間隔置きに配置された複数のトラップ片133Aと、液体誘導溝部153の径方向の仮想の中心線を基準にトラップ片133Aと線対称に配置された複数のトラップ片133Bと、液体誘導溝部153の周方向中央部にて隣り合う四方のトラップ片133A,133A,133B,133Bに囲まれた箇所に配置された複数のトラップ片133Cと、から構成されている。
【0095】
トラップ片133Aは、液体誘導溝部153の下流側壁面153bに直交して当該液体誘導溝部153の径方向の中央部側に延びている。またトラップ片133Cは、トラップ片133A,133Bと平行に延びている。
【0096】
これにより、トラップ部133では、トラップ片133A,133B,133Cの間の幅が狭められていることから、トラップ片133A,133B,133Cの間に存在する被密封液体Fに表面張力が発生し、この表面張力によって被密封液体Fに作用する遠心力に対抗するようになっており、網点部で示すように、被密封液体Fをトラップ部133の内径側に保持する保持能力が高められている。
【実施例7】
【0097】
次に、実施例7に係る静止密封環につき、
図13を参照して説明する。尚、前記実施例2と同一構成で重複する構成の説明を省略する。また、ここでは、動圧発生機構145の形態のみ説明する。
【0098】
動圧発生機構145は、レイリーステップ9Aと、逆レイリーステップ9Bと、液体誘導溝部154と、トラップ部134と、を備えている。トラップ部134は、液体誘導溝部154の開口部154aに配置されており、液体誘導溝部154の下流側壁面154bから当該液体誘導溝部154の周方向中央側に延びているトラップ片134Aと、液体誘導溝部154の径方向に延びる仮想の中心線を基準にトラップ片134Aと線対称に配置されたトラップ片134Bと、から構成されている。
【0099】
これにより、トラップ部134では、トラップ片134A,134Bの間の幅が狭められていることから、トラップ片134A,134Bの間に存在する被密封液体Fに表面張力が発生し、この表面張力によって被密封液体Fに作用する遠心力に対抗するようになっており、網点部で示すように、被密封液体Fをトラップ部133の内径側に保持する保持能力が高められている。
【0100】
また、トラップ部134は、液体誘導溝部154の開口部154aに配置されていることから、トラップ部134よりも内径側の液体誘導溝部154の容積を好適に確保することができる。すなわち、液体誘導溝部154内に保持される被密封液体Fの量を確保することができる。尚、トラップ部は、開口部を含めた液体誘導溝部の高圧側よりも低圧側に連通する開口部よりの箇所に配置されていることにより、液体誘導溝部内に保持される被密封液体Fの量を確保することができるものであるが、ここでいう開口部よりの箇所とは、開口部から、液体誘導溝部の径方向の寸法の3分の1以内に配置されていればよく、好ましくは、液体誘導溝部の径方向の寸法の4分の1以内に配置されていればよい。
【実施例8】
【0101】
次に、実施例8に係る静止密封環につき、
図14を参照して説明する。尚、前記実施例2と同一構成で重複する構成の説明を省略する。また、ここでは、動圧発生機構146の形態のみ説明する。
【0102】
動圧発生機構146は、レイリーステップ92Aと、逆レイリーステップ92Bと、レイリーステップ92A及び逆レイリーステップ92Bの間の径方向中央部から外径方向に延びる液体誘導溝部155と、トラップ部135と、を備えている。トラップ部135は、液体誘導溝部155の内径側端部のレイリーステップ92A,逆レイリーステップ92Bと交差する箇所に形成されており、その深さ寸法がレイリーステップ92A及び逆レイリーステップ92Bの深さ寸法と同一である浅溝であり、レイリーステップ92A、逆レイリーステップ92B及び液体誘導溝部155と連通している。
【0103】
これにより、実線矢印で示す紙面反時計回りに回転密封環20が回転する場合には、トラップ部135では、矢印H10に示すように、トラップ部135や逆レイリーステップ92Bの内径側から流入する被密封液体Fの大半は、矢印H11に示すように、レイリーステップ92Aに吸引されるため、矢印H12に示すように、遠心力によって液体誘導溝部155に流入する被密封液体Fの流入量が低減されている。これにより、相対的に液体誘導溝部155から大気側への漏出を抑制することができる。尚、直接の図示は省略するが、紙面時計回りに回転密封環20が回転する場合にも、矢印H11の向きが反対向きとなる点以外、同様である。
【実施例9】
【0104】
次に、実施例9に係る静止密封環につき、
図15を参照して説明する。尚、前記実施例2と同一構成で重複する構成の説明を省略する。また、ここでは、動圧発生機構147の形態のみ説明する。
【0105】
動圧発生機構147は、レイリーステップ93Aと、逆レイリーステップ93Bと、液体誘導溝部156と、トラップ部136A,136Bと、を備えている。トラップ部136A,136Bは、その深さ寸法が液体誘導溝部156の深さ寸法と同一である深溝であり、液体誘導溝部156の径方向に延びる仮想の中心線を基準に線対称に配置されている。トラップ部136Aは、液体誘導溝部156の内径側端部からレイリーステップ93Aと同一曲率で周方向に延びる周部136aと、この周部136aに連通して径方向に延びる径部136bと、から構成されている。トラップ部136Aの周部136aは、レイリーステップ93A及び液体誘導溝部156と連通しており、トラップ部136Bの周部136aは、液体誘導溝部156及び逆レイリーステップ93Bと連通している。
【0106】
これにより、実線矢印で示す紙面反時計回りに回転密封環20が回転する場合には、トラップ部136A,136Bでは、実線矢印H22に示すように、逆レイリーステップ93Bから遠心力によって外径側に漏出した被密封液体Fがトラップ部136Bの径部136bに流入し、実線矢印H23に示すように、液体誘導溝部156の下流側壁面156bから周方向下流側(紙面左側)に漏出した被密封液体Fがトラップ部136Aの径部136bに流入するため、動圧発生機構147から大気側への漏出を抑制することができる。
【0107】
また、点線矢印で示す紙面時計回りに回転密封環20が回転する場合には、トラップ部136A,136Bでは、点線矢印H20に示すように、逆レイリーステップ93Bから遠心力によって外径側に漏出した被密封液体Fがトラップ部136Aの径部136bに流入し、点線矢印H21に示すように、液体誘導溝部156の下流側壁面156bから周方向下流側(紙面右側)に漏出した被密封液体Fがトラップ部136Bの径部136bに流入するため、動圧発生機構147から大気側への漏出を抑制することができる。
【0108】
また、動圧発生機構147は、液体誘導溝部156ばかりでなく、トラップ部136A,136Bにおいても、被密封液体Fを保持可能であるとともに、周部136a,136aを通じて、レイリーステップ93A、逆レイリーステップ93Bに被密封液体Fが流入可能であることから、より多くの量の被密封液体Fを保持することが可能となっている。
【実施例10】
【0109】
次に、実施例10に係る静止密封環につき、
図16を参照して説明する。尚、前記実施例2と同一構成で重複する構成の説明を省略する。また、ここでは、動圧発生機構148の形態のみ説明する。
【0110】
動圧発生機構148は、レイリーステップ9Aと、逆レイリーステップ9Bと、液体誘導溝部157と、トラップ部137と、を備え、トラップ部137は、液体誘導溝部157の下流側壁面157b及び上流側壁面157cから対向する上流側または下流側に突出する凸部を複数有するトラップ壁部137A,137Bから構成されている。尚、図中の破線は仮想的な壁面を示している。
【0111】
トラップ壁部137A,137Bは、互いに所定間隔離間して互い違いに配置されており、トラップ壁部137A,137Bの間には、下流側壁面157b側及び上流側壁面157c側にて屈曲しながら連続して蛇行する蛇行溝30が構成されている。また、トラップ壁部137A,137Bは、回転密封環20の摺動面21と対向する端面が位置する深さ寸法がレイリーステップ9A及び逆レイリーステップ9Bよりも深い10μmの位置に配置されており、トラップ壁部137A,137Bの回転密封環20の摺動面21と対向する端面から液体誘導溝部157の底面157dまで軸方向に亘って連続している。尚、トラップ壁部137A,137Bの回転密封環20の摺動面21と対向する端面が位置する深さ寸法は、例えばレイリーステップ9A及び逆レイリーステップ9Bと同じ寸法、レイリーステップ9A及び逆レイリーステップ9Bよりも浅い寸法、または10μmに限定されないレイリーステップ9A及び逆レイリーステップ9Bよりも深い寸法であってもよい。
【0112】
これにより、トラップ部137は、蛇行溝30により被密封液体Fを被密封液体F側から大気側に向かって直線状に移動させ難くしているため、液体誘導溝部157内における被密封液体Fの保持機能を高めることができる。
【0113】
また、トラップ部137では、トラップ壁部137A,137Bによって蛇行溝30の幅が狭められていることから、蛇行溝30内に存在する被密封液体Fに表面張力が発生し、この表面張力によって被密封液体Fに作用する遠心力に対抗するようになっており、網点部で示すように、被密封液体Fをトラップ部137の内径側に保持する保持能力が高められている。
【実施例11】
【0114】
次に、実施例11に係る静止密封環につき、
図17を参照して説明する。尚、前記実施例2と同一構成で重複する構成の説明を省略する。また、ここでは、動圧発生機構149の形態のみ説明する。
【0115】
動圧発生機構149は、レイリーステップ94Aと、逆レイリーステップ94Bと、液体誘導溝部158と、トラップ部138と、を備えている。トラップ部138は、外径側から内径側に向かって下流側壁面158bまたは上流側壁面158cの液体誘導溝部158の径方向の中央部側に傾斜する直角三角形状の凸部19が径方向に連続配置されたトラップ壁部138A,138Bから構成されている。尚、凸部19の外径側から内径側に向かって液体誘導溝部158の径方向の中央部側に傾斜する端面を外径側端面19aとし、外径側端面19aの液体誘導溝部158の径方向中央部側の端部から液体誘導溝部158に向かって延びる端面を内径側端面19bとする。
【0116】
トラップ壁部138A,138Bは、互いに所定間隔離間して液体誘導溝部158の径方向の中心線を基準に線対称に配置されている。また、トラップ壁部138Aは、トラップ壁部138Aの回転密封環20の摺動面21と対向する端面がランド12と同一平面を成している。
【0117】
これにより、トラップ部138は、被密封液体Fが液体誘導溝部158内を大気側から被密封液体F側へ流入する際に、凸部19の外径側端面19aが被密封液体Fをレイリーステップ94A側に誘導する誘導面として機能するため、レイリーステップ94A内への被密封液体Fの回収を妨げ難くなっている。
【0118】
また、トラップ部138は、被密封液体Fが液体誘導溝部158内を被密封液体F側から大気側へ流入する際に、網点部で示すように、凸部19の内径側端面19bによって被密封液体Fを捕集可能であるため、液体誘導溝部158内における被密封液体Fの保持機能を高めることができる。
【0119】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0120】
例えば、前記実施例では、摺動部品として、一般産業機械用のメカニカルシールを例に説明したが、自動車やウォータポンプ用等の他のメカニカルシールであってもよい。また、メカニカルシールに限られず、すべり軸受などメカニカルシール以外の摺動部品であってもよい。
【0121】
また、前記実施例では、動圧発生機構を静止密封環にのみ設ける例について説明したが、動圧発生機構を回転密封環20にのみ設けてもよく、静止密封環と回転密封環の両方に設けてもよい。
【0122】
また、前記実施例では、摺動部品に同一形状の動圧発生機構が複数設けられる形態を例示したが、形状の異なる動圧発生機構が複数設けられていてもよい。また、動圧発生機構の間隔や数量などは適宜変更できる。
【0123】
また、トラップ部は、前記実施例1,4~11それぞれのトラップ部を適宜組み合わせて構成されていてもよく、低圧側への漏出を抑制することができる構成のものであればその構成が適宜変更されていてもよい。
【0124】
また、前記実施例では、メカニカルシールは、摺動面の内径側から外径側に向かって漏れようとする被密封液体Fを密封するアウトサイド形のものとして説明したが、摺動面の外径側から内径側に向かって漏れようとする被密封液体Fを密封するインサイド形のものであってもよい。
【0125】
また、被密封流体側を高圧側、漏れ側を低圧側として説明してきたが、被密封流体側が低圧側、漏れ側が高圧側となっていてもよいし、被密封流体側と漏れ側とは略同じ圧力であってもよい。
【符号の説明】
【0126】
9A レイリーステップ(浅溝部)
9B 逆レイリーステップ(浅溝部)
10 静止密封環(摺動部品)
11 摺動面
13 トラップ部
13A,13B トラップ片
13a 低圧側壁面(誘導面)
14 動圧発生機構
15 液体誘導溝部(深溝部)
15a 開口部
15b 下流側壁面(内面)
15c 上流側壁面(内面)
15d 底面(内面)
19a 外径側端面(誘導面)
20 回転密封環(摺動部品)
21 摺動面
30 蛇行溝
91A~94A レイリーステップ(浅溝部)
91B~94B 逆レイリーステップ(浅溝部)
131~138 トラップ部
141~149 動圧発生機構
151~158 液体誘導溝部(深溝部)