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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】防汚性布帛およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/27 20060101AFI20230718BHJP
   D06M 15/277 20060101ALI20230718BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20230718BHJP
【FI】
D06M15/27
D06M15/277
D06M101:32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018101683
(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公開番号】P2019206769
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 耕二
(72)【発明者】
【氏名】三谷 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】高月 珠里
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108675(JP,A)
【文献】国際公開第2008/149676(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/092736(WO,A1)
【文献】特開2013-072165(JP,A)
【文献】特開2008-163472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 15/27
D06M 15/277
D06M 101/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系繊維からなる布帛の表面に、親水性セグメントを有するフッ素系撥水剤と、親水性モノマーを重合してなる親水性ポリマーとを、含有する樹脂組成物からなる一層の被膜を含み
前記被膜における前記フッ素系撥水剤の固形分と前記親水性ポリマーとの質量比が、(フッ素系撥水剤固形分)/(親水性ポリマー)=1/5~1/30であり、
前記被膜はトリメチロールメラミンを含有し、
JIS L 1096のF-2法にしたがって30回洗濯を行い、乾燥させた後の汚れ除去性の等級が3級以上であり、
JIS L1907滴下法による吸水性が110秒以下であることを特徴とする、防汚性布帛。
【請求項2】
前記フッ素系撥水剤の固形分および前記親水性ポリマーの付着量の合計が、前記ポリエステル系繊維からなる布帛の質量に対して0.5~10質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の防汚性布帛。
【請求項3】
前記親水性ポリマーが、構成単位として、2官能ビニル系モノマーを主体とするポリマーであることを特徴とする、請求項1または2の何れか1項に記載の防汚性布帛。
【請求項4】
請求項1~3に記載の防汚性布帛を製造する方法であって、
ポリエステル系繊維からなる布帛の表面に、親水性セグメントを有するフッ素系撥水剤、親水性モノマー、トリメチロールメラミン、および重合開始剤を含む水溶液を接触させた後に、蒸気加熱処理を行い、次いで液流染色機で高速液流処理により洗浄処理する工程を含み、
前記高速液流処理が、
布帛を滞留させる染色槽と、
前記染色槽の両端部を連結している移送管と、
前記移送管の先端に設けられ、通過している織編物に対して全方向から洗浄液を噴射するフィラメントノズルと、を有する液流染色機を用いて行われ、かつ無端ループ状に連結された布帛が、前記染色槽の出口部から移送管に移動し、前記移送管内を洗浄液と共に移送され、再び前記染色槽染色槽に戻るように循環させて行われることを特徴とする防汚性布帛の製造方法。
【請求項5】
前記水溶液中の前記フッ素系撥水剤の固形分と前記親水性モノマーとの質量比が、(フッ素系撥水剤固形分)/(親水性モノマー)=1/5~1/30であることを特徴とする、請求項4に記載の防汚性布帛の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚性布帛およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル系繊維は、強度、イージーケア性、乾燥速度、染色堅牢度などに優れており、加えて加工性に優れるため、ユニフォームやスポーツ用途などの幅広い分野の用途において利用されている。しかしながら、ポリエステル系繊維は、綿などのセルロース繊維と比較すると、親水性に劣るものである。そのため汚れやすいという問題があり、ポリエステル系繊維からなる布帛(以下、「ポリエステル系繊維布帛」と称する場合がある)の防汚性を改善するために、種々の検討がなされている。
【0003】
ポリエステル繊維布帛の防汚性を改善するための技術として、以下の(1)~(3)のような技術が検討されている。つまり、(1)ポリエステル系繊維布帛に対して、汚れが付着し難くなるようなSG性(Solid Guard)加工をおこなうこと、(2)ポリエステル系繊維布帛に対して、汚れが付着した場合であっても洗濯をおこなうことにより容易に汚れを除去することができるSR性(Solid Release)加工をおこなうこと、(3)ポリエステル系繊維布帛に対して、汚れが付着し難く、なおかつ、汚れが付着した場合であっても該汚れを洗濯により容易に除去することができるSGR性(Solid Guard Release)加工をおこなうことが検討されている。これらの防汚性を改善するための技術の中でも、SGR性の付与は防汚性に特に優れた技術であるため、様々な分野で検討がおこなわれている。
【0004】
上記(1)の技術が適用された布帛として、例えば、特許文献1には、フッ素を50質量%以上含有する撥水撥油剤を用いて合成繊維布帛を処理したのち、さらにその布帛表面を、主鎖の炭素にフッ素原子が結合し、フッ素含有率が20質量%を超え50質量%未満である高分子化合物で処理してなる撥水防汚性布帛が提案されている。
【0005】
また、上記(2)の技術が適用された布帛として、特許文献2には、ポリエステル系繊維布帛の表面に、ポリアルキレングリコールと、芳香族ジカルボン酸と、アルキレングリコールとを共重合してなるブロック共重合体、変性オルガノシリケートおよびアミノプラスト樹脂が付着されてなる防汚性ポリエステル系繊維布帛が提案されている。
【0006】
さらにまた、上記(3)の技術が適用された布帛として、特許文献3には、繊維表面にトリアジン環を含有する樹脂被膜が形成されるか、あるいはフッ素系撥水撥油樹脂およびトリアジン環を含有する樹脂被膜が形成され、この被膜表面を、親水性成分を有するフッ素系撥水撥油樹脂および非親水性のフッ素系撥水撥油樹脂からなる樹脂で被覆してなる繊維構造物が提案されている。さらに、上記(3)の技術が適用された布帛として、特許文献4には、合成繊維布帛上に、親水性セグメントを有するフッ素系撥水撥油剤、非親水性のフッ素系撥水撥油剤および架橋剤を含む防汚性被覆層が形成されてなる防汚性合成繊維布帛が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平3-234870号公報
【文献】特開平9-268472号公報
【文献】特開2008-303511号公報
【文献】特開平10-317281号公報
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された布帛においては、布帛に対していったん汚れが付着すると、洗濯で容易に除去できないという問題がある。また、特許文献2に開示された布帛においては、付着した汚れの洗濯除去性が不十分であるという問題がある。
【0009】
特許文献3および4に開示された布帛においては、繊維表面に対する親水基および非親水性を有する撥水撥油層の固着が不十分であるという問題がある。そのため、洗濯がほどこされた後における防汚性の低下を抑制することができず、つまり十分なSGR性が得られていないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上記のような従来技術の欠点を解消するものであり、洗濯がほどこされた後における防汚性の低下を抑制しうる(つまり、耐洗濯性に優れた防汚性を有する)防汚性布帛を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。
即ち、本発明は、下記に掲げる(1)~(5)の態様の発明を提供する。
(1) ポリエステル系繊維からなる布帛の表面に、親水性セグメントを有するフッ素系撥水剤と、親水性モノマーを重合してなる親水性ポリマーとを、含有する樹脂組成物からなる一層の被膜を含み
前記被膜における前記フッ素系撥水剤の固形分と前記親水性ポリマーとの質量比が、(フッ素系撥水剤固形分)/(親水性ポリマー)=1/5~1/30であり、
前記被膜はトリメチロールメラミンを含有し、
JIS L 1096のF-2法にしたがって30回洗濯を行い、乾燥させた後の汚れ除去性の等級が3級以上であり、
JIS L1907滴下法による吸水性が110秒以下であることを特徴とする、防汚性布帛。
(2) 前記フッ素系撥水剤の固形分および前記親水性ポリマーの付着量の合計が、前記ポリエステル系繊維からなる布帛の質量に対して0.5~10質量%であることを特徴とする、(1)に記載の防汚性布帛。
(3) 前記親水性ポリマーが、構成単位として、2官能ビニル系モノマーを主体とするポリマーであることを特徴とする、(1)または(2)の何れか1項に記載の防汚性布帛。
(4) (1)~(3)に記載の防汚性布帛を製造する方法であって、
ポリエステル系繊維からなる布帛の表面に、親水性セグメントを有するフッ素系撥水剤、親水性モノマー、トリメチロールメラミン、および重合開始剤を含む水溶液を接触させた後に、蒸気加熱処理を行い、次いで液流染色機で高速液流処理により洗浄処理する工程を含み、
前記高速液流処理が、
布帛を滞留させる染色槽と、
前記染色槽の両端部を連結している移送管と、
前記移送管の先端に設けられ、通過している織編物に対して全方向から洗浄液を噴射するフィラメントノズルと、を有する液流染色機を用いて行われ、かつ無端ループ状に連結された布帛が、前記染色槽の出口部から移送管に移動し、前記移送管内を洗浄液と共に移送され、再び前記染色槽染色槽に戻るように循環させて行われることを特徴とする防汚性布帛の製造方法。
(5) 前記水溶液中の前記フッ素系撥水剤の固形分と前記親水性モノマーとの質量比が、(フッ素系撥水剤固形分)/(親水性モノマー)=1/5~1/30であることを特徴とする、(4)に記載の防汚性布帛の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の防汚性布帛においては、親水性セグメントを有するフッ素系撥水剤と親水性ポリマーとを含有する被膜を含むものであるために、洗濯耐久性に顕著に優れた防汚性を達成することができる。本発明の防汚性布帛は、特に、口紅汚れや食用油汚れ、機械油汚れに対する洗濯耐久性に顕著に優れた防汚性を達成することができるため、有効である。
【0013】
そして、本発明の防汚性布帛の製造方法は、重合開始剤を用いて蒸気加熱処理を行った後、液流染色機で洗浄処理しているため、防汚性の洗濯耐久性だけでなく、堅牢度に優れた防汚性布帛を製造することができる。また、余剰の撥水剤を除去するために、吸水性がいっそう良好な防汚性布帛を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明にについて詳述する。
本発明の防汚性布帛は、ポリエステル系繊維からなる布帛(本明細書においては、「ポリエステル系繊維布帛」と称する場合がある)の表面に、親水性セグメントを有するフッ素系撥水剤および親水性ポリマーを含有する被膜を含むものである。被膜中の親水性ポリマーはポリエステル系繊維表面において親水性モノマーを重合してなる。このような構成を有することにより、本発明の防汚性布帛は、洗濯耐久性に優れた防汚性を満足するものとなる。
【0015】
本発明におけるポリエステル系繊維布帛とは、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂から得られる繊維(ポリエステル系繊維)を含む布帛である。ポリエステル系繊維布帛は、洗濯耐久性の観点から、該布帛中にポリエステル系繊維を50質量%以上含有するものであることが好ましく、より好ましくは80質量%以上含有するものである。また、ポリエステル系繊維の繊度、フィラメント数等は、特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜に選択することができる。
【0016】
本発明においては、上記の布帛中に、ポリエステル系繊維以外の繊維が含有されていてもよい。例えば、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維;アクリル系繊維;ポリウレタン系繊維;綿、獣毛繊維、絹、麻、竹などの天然繊維;ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、溶剤紡糸セルロース繊維などの再生繊維;アセテートなどの半合成繊維が含有されていてもよい。
【0017】
これらのポリエステル系繊維以外の繊維は、ポリエステル系繊維と交撚、混紡、混繊、交織または交編されて布帛に含有される。また、ポリエステル系繊維布帛の形態は、特に限定されず、織物、編物、あるいは不織布などが挙げられ、それらの組織、織密度、編密度等についても特に限定されない。
【0018】
本発明の防汚性布帛は、上述のように、ポリエステル系繊維布帛の表面に、親水性セグメントを有するフッ素系撥水剤、および親水性ポリマーを含有する被膜を含むことで、以下のような効果を奏する。すなわち、該親水性ポリマーは、ポリエステル系繊維の表面において親水性モノマーが重合してなるものである。そして、親水性モノマーの重合段階でフッ素系撥水剤を添加し、親水性モノマーが重合されることで、親水性ポリマーは重合体として繊維に付与されており、被膜に含有されるフッ素系撥水剤が、親水性ポリマーのネットワークの中に取り込まれていると推測される。該被膜においては、被膜に含有されるフッ素系撥水剤における疎水基がポリエステル系繊維に対し垂直に配向するのに対し、フッ素系撥水剤における親水基がポリエステル系繊維に向かうように配されていると考えられる。すなわち、被膜構造として、あたかも親水被膜の中に疎水基が部分的に繊維垂直方向に配されているかのような形態をなしていると考えられる。
【0019】
本発明の防汚性布帛においては、このような構造に由来して、洗濯耐久性に顕著に優れた防汚性を達成することができる。詳しくは、フッ素系撥水剤がより強固にポリエステル系繊維布帛に付着され、疎水基が表面を覆っているために汚れが繊維内部にまで入り込めず、さらに洗濯が繰り返してほどこされてもフッ素系撥水剤が布帛から剥離せず、このため防汚性が低下せず、つまり洗濯耐久性に優れた防汚性が発現するという効果が奏される。そして、洗濯時には親水性ポリマーが膨潤して表面を覆うことで、汚れを浮かして除去することができるため、汚れ除去性にも優れるのである。親水性モノマーが、ポリエステル系繊維表面において重合されていない場合は、該被膜はポリエステル系繊維布帛表面に単にコーティングされた状態になるにすぎず、洗濯耐久性に優れた防汚性を達成することができない。また、親水性ポリマーとフッ素系撥水剤とを単に混合した場合も、上記したような被膜構造(親水被膜の中に疎水基が部分的に繊維垂直方向に配されている)とならないために、洗濯耐久性に優れた防汚性を達成することができない。
【0020】
親水性セグメントを有するフッ素系撥水剤とは、親水性セグメントとフッ素化された疎水性セグメントが共重合されてなる共重合体を含むものである。なお、フッ素系以外の撥水剤を用いた場合は、撥水性に乏しいため防汚性が低下してしまい、耐久性に優れる防汚性を発現するという本発明の効果を奏することができない。
【0021】
親水性セグメントとは、アクリレート、メタアクリレート、酢酸ビニル、塩化ビニルなどのエチレン系不飽和物を変性し、これらの変性物に対して、エチレンオキサイド、水酸基、カルボキシル基、スルフォン酸基等の親水基を導入したものである。なかでも、汚れ除去性が向上し、防汚性に優れる観点から、硫化水素とポリエチレングリコールジメタクリレートとが反応して得られる親水性セグメントであることが好ましい。
【0022】
また、フッ素化された疎水性セグメントとしては、汚れの付着を防止し、防汚性に優れる観点から、パーフルオロアルキル基を含むフルオロアルキルアクリレートが好ましい。
【0023】
具体的には、下記(1)式に示したような共重合体が好ましい。これは、硫化水素とポリエチレングリコールジメタクリレートとが反応して得られる親水性セグメントと、フッ素化された疎水性セグメントとしてのフルオロアルキルアクリレートとが共重合されてなる共重合体である。
【0024】
【化1】
【0025】
上記式中、nは2~10の整数であることが好ましく、aは1~10の整数であることが好ましく、また、bは1~10の整数であることが好ましい。Rは低級アルキル基を示し、なかでも炭素数1~3のアルキル基が好ましい。Rfはパーフルオロアルキル基を示し、なかでも、炭素数4~10のパーフルオロアルキル基が好ましく、さらに自然環境の観点から炭素数4~6が好ましい。
【0026】
上記の撥水剤には、親水性セグメントとフッ素化された疎水性セグメントが共重合されてなる共重合体以外の成分が含有されていてもよい。
【0027】
このようなフッ素系撥水剤は、市販品を好適に使用することができ、具体的には、大原パラジウム化学株式会社製、商品名「パラガードSRF6000」(固形分20質量%)などが挙げられる。なお、「パラガードSRF6000」は、上記式(1)において、Rfが炭素数6のパーフルオロアルキル基であるフッ素系撥水剤である。
【0028】
親水性ポリマーは、親水性モノマーを構成成分として含有するポリマーである。親水性ポリマーを用いることにより、洗濯により汚れを除去しやすいという効果を奏することができる。
【0029】
親水性ポリマーを構成する親水性モノマーとしては、アルキレンオキサイドを含むアクリレート、アルキレンオキサイドを含むメタクリレート、アルキレンオキサイドを含むエポキシアクリレート、アルキレンオキサイドを含むエポキシメタクリレートなどが挙げられる。
【0030】
上記の親水性モノマーのなかでも、ポリエステル系繊維布帛との反応性の観点から、2官能ビニル系モノマーが好ましく、特にアルキレンオキサイドを含むジアクリレートモノマー、および/またはアルキレンオキサイドを含むジメタクリレートモノマーが好ましい。
【0031】
このような親水性モノマーとしては、具体的には、下記式(2)にて示されるポリエチレングリコールジアクリレート、あるいは下記式(3)にて示されるポリエチレングリコールジメタクリレート等を挙げることができる。
【0032】
【化2】
【0033】
上記式(2)中、汚れを容易に除去することができ、防汚性に優れる観点から、nは1~30の整数であることが好ましく、10~25であることがより好ましく、14~23の整数であることがさらに好ましい。
【0034】
【化3】
【0035】
上記式(3)中、汚れを容易に除去することができ、防汚性に優れる観点から、nは1~30の整数であることが好ましく、10~25であることがより好ましく、14~23の整数であることがさらに好ましい。
【0036】
親水性セグメントを有するフッ素系撥水剤と親水性ポリマーを含有する使用量において、親水性セグメントを有するフッ素系撥水剤の固形分と親水性ポリマーの質量比は、(フッ素系撥水剤)/(親水性ポリマー)=1/1~1/30であることが好ましく、吸水性の観点から1/5~1/30であることがより好ましく、1/10~1/30であることがさらに好ましく、1/15~1/25であることが特に好ましい。
【0037】
親水性セグメントを有するフッ素系撥水剤の固形分使用量と親水性ポリマーの質量比率が上記範囲であると、撥水性セグメントが優位となりすぎることがなく、いっそう吸水性に優れるものとなるとともに、汚れの付着防止性(防汚性)にいっそう優れる。
【0038】
フッ素系撥水剤の固形分および親水性ポリマーの付着量の合計が、前記ポリエステル系繊維からなる布帛の質量に対して0.5~10質量%であることが好ましく、1.0~5.0質量%であることが好ましく、2.0~3.0質量%であることがより好ましい。フッ素系撥水剤の固形分および親水性ポリマーの付着量が上記範囲であると、防汚性と吸水性とのバランスにいっそう優れるとともに、加工コスト、染色堅牢度にいっそう優れる。
【0039】
また、本発明では、必要に応じて、被膜にメラミン樹脂が含有されていてもよい。メラミン樹脂は、トリアジン環を含有し重合性官能基を少なくとも2個有する化合物が縮合して得られる熱硬化樹脂であればよく、具体的にはトリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等が挙げられる。当該メラミン樹脂としては、例えば、「リケンレジンMM-3C」、「リケンレジンMM-35」(以上、三木理研工業株式会社製)、「ベッカミンM-3」(DIC北日本ポリマ株式会社製)等のトリメチロールメラミン;「リケンレジンMM-601」、「リケンレジンMM-630」(以上、三木理研工業株式会社製)(以上、三木理研工業株式会社製)等のヘキサメチロールメラミン等の市販品を使用することができる。
【0040】
本発明の防汚性布帛の製造方法について、以下に説明する。
本発明の製造方法は、ポリエステル系繊維からなる布帛の表面に、親水性セグメントを有するフッ素系撥水剤および親水性モノマーを含有と重合開始剤を含む水溶液を接触させた後、蒸気加熱処理を行い、次いで液流染色機で洗浄処理をほどこすものである。
【0041】
ポリエステル系繊維からなる布帛は親水性モノマーを付着させる前に、必要に応じて、糊抜き精錬、プレセット、染色等の加工に供されていてもよい。
【0042】
親水性セグメントを有するフッ素系撥水剤および親水性モノマーを溶解させる水性媒体は、特に限定されず、水、あるいは水と公知の有機溶媒との混合物などが挙げられる。
【0043】
本発明では親水性モノマーのラジカル重合を促進させるために、重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、硝酸セリウムアンモニウム、過酸化水素等の無機系重合開始剤;2,2′-アゾビス(2-アミディノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2′-アゾビス(N,N′-ジメチレンイソブチラミディン)ジハイドロクロライド、2-(カルバモイラゾ)イソブチロニトリル等の有機系ラジカル開始剤等のラジカル開始剤等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記水溶液における重合開始剤の濃度については、特に制限されず、使用する重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、二官能ビニル系モノマー100質量部当たり、重合開始剤が0.1~20質量部、好ましくは0.3~15質量部、更に好ましくは0.5~10質量部が挙げられる。
【0044】
前記水溶液において、フッ素系撥水剤の固形分と前記親水性モノマーとの質量比が、(フッ素系撥水剤固形分)/(親水性モノマー)=1/1~1/30であることが好ましく、1/5~1/30であることがより好ましく、1/10~1/30であることがさらに好ましく、1/15~1/25であることが特に好ましい。質量比がこの範囲であると吸水性と防汚性のバランスにいっそう優れる。
【0045】
また、前記水溶液には重合抑制剤が含まれていてもよい。重合抑制剤が含まれている場合には、低温域での重合を抑制することができ、所望の重合度を有するビニル系ポリマーを得ることが容易になる。重合抑制剤としては、例えば、ベンゾキノン、ハイドロキノン、メトキシフェノール等のキノン類;第三ブチルカテコール等のポリオキ化合物;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルヒドロキシルアミン等の有機硫黄化合物;ニトロ化合物;ジエチルヒドロキシルアミン、イソプロピルヒドロキシルアミン等のアミノ化合物等が挙げられる。これらの重合抑制剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記水溶液における重合抑制剤の濃度については、特に制限されず、使用する重合抑制剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、親水性モノマー100質量部当たり、重合抑制剤が0.01~2質量部、好ましくは0.015~1.5質量部、更に好ましくは0.02~1質量部が挙げられる
【0046】
さらに、また、前記水溶液には、重合効率を高めるために、必要に応じて、過酸化物と還元性物質とからなるレドックス系開始剤が含まれていてもよい。レドックス系開始剤に使用される過酸化物としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられ、レドックス系開始剤に使用される還元性物質として、スルホキシル酸ナトリウムとホルマリンとの反応物、ハイドロサルファイト等が挙げられる。
【0047】
ポリエステル系繊維布帛に水溶液を接触させて、付与する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、以下のような方法が挙げられる。つまり、パッディング法、スプレー法、キスロール法、スリットコータ法などの公知の方法で該水溶液をポリエステル系繊維布帛に塗布することが挙げられる。
【0048】
ポリエステル系布帛に前記水溶液を含浸させた後に、蒸気加熱処理をおこない親水性モノマーを重合させる。すなわち、いわゆる、ラジカル重合が進行する。蒸気加熱処理の温度は80~180℃、好ましくは98~150℃のスチームの存在下で1~30分間、好ましくは3~15分間処理すればよい。なお、重合効率にいっそう優れるために、蒸気加熱処理の前に乾燥工程を実行しないことが好ましい。また、重合の手法としては、蒸気加熱処理の他、吸尽処理、電子線処理、紫外線処理、マイクロ波処理等の手法があるが、本発明においては、設備の汎用性、生産効率(重合効率)の観点から、蒸気加熱処理を行うことを必須とする。
【0049】
本発明では親水性モノマーのラジカル重合の後に、得られた布帛(ポリエステル系繊維の表面にビニル系ポリマーが付着している布帛)を高速液流処理による洗浄に供する。このように高速液流処理に供することによって、残存するモノマー及び繊維間に付着した余剰の撥水剤などが適切に除去され、ポリエステル系繊維の表面に親水性ポリマーと親水性セグメントを有するフッ素系撥水剤とを含む被膜が、構成繊維の各々の表面に均一に形成された状態になる。これによって、本発明の防汚性布帛では、繊維表面を疎水性にすることなく、優れた汚れ除去性を備えつつ、加工ムラを抑制することが可能になる。また、このような高速液流処理によって、防汚性布帛が硬い風合いになるのを抑制し、更に残存するモノマーの溶出によって変色が発現したり、染色堅牢度が低下したりするのを抑制することも可能になる。
【0050】
本発明において、高速液流処理とは、高速で噴射されている洗浄液に布帛を晒す洗浄処理である。
【0051】
好適な高速液流処理として、高速で噴射されている洗浄液に布帛を通過させることによって液流洗浄する処理が挙げられる。以下、かかる態様の高速液流処理について詳述する。
【0052】
高速液流処理は、通過している布帛に対して一方向から洗浄液を噴射してもよいが、液流染色等に使用されているフィラメントノズルやスパンノズル等を使用して、通過している布帛に対して全方向から洗浄液を噴射することが好ましい。このように通過している布帛に対して全方向から洗浄液を噴射することによって、残存するモノマーをより効率的に除去することが可能になる。フィラメントノズルは、ノズルパイプと外輪(ノズルボス)とを組み合わせることによって構成されており、フィラメントノズルの内部空間を通過する布帛に対して、当該ノズルパイプとノズルボスとの間の隙間から洗浄液を噴射できるように構成されている。また、スパンノズルは、中空状の円錐台形の部材を1~3段に組み合わせることによって構成されており、スパンノズルの内部空間を通過する布帛に対して、当該部材の隙間から洗浄液を噴射できるように構成されている。
【0053】
また、高速液流処理において、布帛に対して洗浄液を噴射する角度については、高速液流処理の時間、洗浄液の温度等に応じて適宜設定すればよいが、通常、通過している布帛の進行方向に対して10°以上の角度で洗浄液を噴射することが重要になる。このような角度で洗浄液を噴射することによって、布帛に十分な押圧を付与し、残存するモノマー及び繊維間に付着した余剰のポリマーを所望の程度にまで除去して、工業洗濯耐久性に優れた制電性・吸水性、加工ムラの抑制、及び良好な風合いを実現することが可能になる。洗浄液を噴射する角度としては、通過している布帛の進行方向に対して、好ましくは10~40°、更に好ましくは15~40°が挙げられる。
【0054】
高速液流処理において、高速で噴射されている洗浄液に対して、布帛を通過させる速度については、特に制限されないが、例えば、50~600m/分、好ましくは100~500m/分、更に好ましくは200~400m/分が挙げられる。なお、高速液流処理において、布帛は噴射される洗浄液の押圧によって一方向に移動するので、高速で噴射されている洗浄液に布帛を通過させる手段は特段設けなくてもよい。
【0055】
高速液流処理において、洗浄液の噴射条件については、特に制限されないが、例えば、フィラメントノズルを使用する場合であれば、ノズル径(フィラメントノズルの内部空間の直径;布帛の通過方向に対する垂直方向の断面の直径)が70~130mm且つ洗浄液を噴射する隙間が2~6mmであるフィラメントノズルを使用し、洗浄液を噴霧する際のノズル圧が0.15~0.5Mpa、好ましくは0.15~0.4Mpa、更に好ましくは0.15~0.3Mpaに設定し、更に洗浄液の噴射時の流量を800~1500l/分、好ましくは900~1400l/分、更に好ましくは1000~1300l/分となるように設定すればよい。
【0056】
また、高速液流処理において、噴射されている洗浄液に布帛を通過させる回数については、残存するモノマーを所望の程度にまで除去できる範囲で適宜設定すればよいが、例えば3~60回、好ましくは5~50回、更に好ましくは10~40回が挙げられる。ここで、噴射されている洗浄液に布帛を通過させる回数とは、高速液流処理によって布帛1カ所当たり、噴射されている洗浄液を通過する回数である。
【0057】
布帛に対する高速液流処理は、布帛の端部同士を繋いだロープ状にして、噴射されている洗浄液に布帛が繰り返し通過するように、ロープ状の布帛を循環させることによって行うことが望ましい。
【0058】
高速液流処理に使用される洗浄液は、水であればよいが、残存するモノマーの除去効率を高めるために、必要に応じて界面活性剤が添加された水溶液であってもよい。
【0059】
高速液流処理において、洗浄液の温度については、特に制限されないが、例えば、40~100℃、好ましくは50~90℃、更に好ましくは60~80℃が挙げられる。このような温度の洗浄液を使用することによって、残存するモノマー及び繊維間に付着した余剰のポリマーを効率的に除去することができる。
【0060】
高速液流処理を行う装置については、特に制限されないが、布帛の染色に使用されている液流染色機を好適に使用することができる。液流染色機は、布帛を滞留させる染色槽と、当該染色槽の両端部を連結している移送管と、移送管の先端に設けられ、処理液(本発明の場合は洗浄液)を噴射する噴射ノズルとを有し、無端ループ状に連結された布帛が、当該染色槽の出口部から移送管に移動し、当該移送管内を処理液と共に移送され、再び染色槽に戻るように循環するように構成されている装置である。噴射ノズルの角度等の条件を前記範囲に調整した液流染色機を使用することによって、本発明における高速液流処理を効率的に行うことができる。液流染色機に設けられる噴射ノズルは、前述の通り、フィラメントノズルやスパンノズル等を使用すればよいが、好ましくはフィラメントノズルである。
【0061】
斯くして高速液流処理を行った後に、乾熱処理を行うことにより本発明の防汚性布帛が得られる。乾熱処理は、130~190℃の温度でおこなうことが好ましく、150~170℃でおこなうことが好ましい。130℃未満であると、パーフルオロアルキル基などの疎水基を、上記のように繊維垂直方向に十分に配することができず、その結果、撥水性の向上が不十分となるため汚れが付き易くなり、防汚性に劣るものとなる場合がある。一方、温度が190℃を超えると、熱により被膜が劣化してしまい、洗濯などによる汚れ除去性が低下し、防汚性に劣るものとなる場合がある。
【0062】
上述のようにして得られた防汚性布帛は、油性汚れや口紅、ファンデーションなどに対しての防汚性の特性を備え、さらに洗濯がほどこされた場合であっても、防汚性の低下が顕著に抑制された(つまり、洗濯耐久性に優れた防汚性を有する)ものである。
【0063】
また、上記の高速液流処理に付することにより、余剰のフッ素系撥水剤を除去することができ、布帛表面が完全にフッ素系撥水剤でおおわれていないため、適度な吸水性をより発揮し易くなり、着用快適性にも優れている。
【0064】
本発明の防汚性布帛は、例えば、病院の白衣、食品工場ユニフォームに代表される工場作業服や厨房服、オフィスシャツ・ブラウスなどの女性用ブラウス、清掃員などの作業服、ゴルフシャツ、スポーツシャツ、などのスポーツウエア全般等の分野において、特に好適に使用することができる。
【実施例
【0065】
以下、実施例によって本発明を詳しく説明する。但し、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0066】
1.測定・試験方法
以下の実施例及び比較例における測定及び評価は下記の方法に従って行った。
1.試料
測定に供すべき試料として、JIS L 1096のF-2法に従って、30回洗濯をしたもの(以下、「30回洗濯後」と称する場合がある)と、当該洗濯前のもの(以下、「加工上がり」と称する場合がある)との2種を用意した。これら2種類の試料について、評価を行った。
【0067】
2.汚れ除去性試験
2-1.口紅に対する汚れ除去性
10cm×10cmの試料を採取した。そして、ポリエチレン製のフィルム表面上に直径1.5cmの円を描き、当該円の中を、口紅(カネボウ化粧品社製)0.03gを均一に塗布した。そして、口紅を塗布したフィルム表面に、試料の上にゴムブロック(直径24mm、質量26.4g)を置き、指で7kgの圧力で10秒間押し当てた。その後、JIS L 0217の103法にしたがって洗濯を1回行い、乾燥させた後、汚れの程度を汚染用グレースケールにて判定した。
3級以上であるものを実使用に耐えうるものであると判断した。
【0068】
2-2.食品油に対する汚れ除去性
縦5cm×横5cmの試料を採取した。そして、マイクロピペッターで食品用油を0.4μL量り取り、試料の中心に付着させ、24時間放置した。その後、JIS L 0217の103法にしたがって洗濯を1回行い、乾燥させた後、汚れの程度を汚染用グレースケールにて判定した。
3級以上であるものを実使用に耐えうるものであると判断した。
【0069】
2-3 グリースによる汚れ除去性
縦9cm×横9cmの試料を採取した。また、グリースの質量に対して5質量%の関東ローム層を練り込み汚染源を作成した。そして、汚染源を0.1g試料に測りとったのち指の腹でサンプルの上に塗り広げる。2時間放置後、家庭洗濯103法(浴比1:100)で洗濯を1回行い、乾燥させたのち、汚れの程度を汚染用グレースケールにて判定した。
3級以上であるものを実使用に耐えうるものであると判断した。
【0070】
3.吸水性
縦20cm×横20cmの試験片を採取した。試験片に、JIS L-1907:2010の「7.1.1 滴下法」に規定されている方法により測定した。
【0071】
4・付着量
実施例および比較例にて得られた布帛について、以下の式に従って、フッ素系撥水剤の固形分および親水性ポリマーの付着量の付着率(%)を求めた。
付着率(%)={(W1-W0)/W0}×100
W0:水溶液による処理前の布帛の単位面積当たりの質量
W1:水溶液による処理および高速液流処理を行って得られた布帛の単位面積当たりの質量
【0072】
実施例1~3、参考例4、比較例1
経糸としてポリエステルマルチフィラメント加工糸(167dtex/48f)を用い、緯糸としてポリエステルマルチフィラメント加工糸(334dtex/96f)を用いて、綾織物(経糸密度:128本/2.54cm、緯糸密度:58本/2.54cm、目付:200g/cm)を製織した。この綾織物に対して通常の方法で精練し、テンター(株式会社市金工業社製)にて190℃で30秒間プレセットを行った。次いで、液流染色機(「サーキュラーMF」、株式会社日阪製作所製)を用いて、下記染色処方で、温度130℃、時間30分の条件で染色し、目付180g/mの白色の綾織物を得た。
<染色処方>
・蛍光染料 1%o.m.f
・酢酸(48%) 0.2cc/l
・水 残部
なお、蛍光染料は、「Hakkol STR」(昭和化学工業株式会社製)を使用した。
【0073】
次に、この綾織物を表1に示す組成の水溶液に浸漬した後、マングルで70質量%の絞り率で絞り、乾燥することなく、Jボックススチーマー(京都機械株式会社製)にて103℃の飽和蒸気処理を5分間行い、親水性モノマーのラジカル重合を行った。なお、表1に示した水溶液の組成において、残部は水である。
【0074】
なお、親水性モノマーは、ポリエチレングリコールジメタクリレート(上記一般式(1)において、R1及びR2がメチル基、R3がエチレン基、nが23である化合物)(新中村化学工業株式会社製)を使用した。メラミン樹脂としてトリメチロールメラミン80重量%含有水溶液「ベッカミンM-3」(三木理研工業株式会社製)を使用した。フッ素系撥水剤は、大原パラジウム化学株式会社製、商品名「パラガードSRF6000」(固形分20質量%)を使用した。オキサゾリン化合物として、オキサゾリン化合物40質量%含有水溶液「エポクロスWS500」(日本触媒株式会社製)を使用した
【0075】
その後、高速液流処理を行った。高速液流処理は、具体的には、液流染色機(「サーキュラーMF」、株式会社日阪製作所製)を用いて、洗浄液の噴射角度(織物の進行方向に対する洗浄水の噴射角度)が40°であるフィラメントノズル(ノズル径90mm、洗浄液を噴射する隙間4mm)を装着し、洗浄水として水を使用して、ノズル圧0.2Mpa、洗浄液の噴射時の流量1200l/分、布速300m/分、浴比1:10、温度60℃で5分間の条件で、織物(長さ(50m/反×6反=300m)をエンドレスのロープ状にして循環させることにより行った。
【0076】
次いで、ドラム乾燥機にて120℃、2分間の条件で乾燥を行い、テンターにて170℃、1分間のセットを行い、実施例1~3、参考例4、及び比較例1の布帛を得た。
【0077】
実施例および比較例で得られた布帛の性能評価の結果を表1に示す。
【0078】
【0079】
表1から明らかなように、実施例1~の防汚性布帛は、防汚性に優れていた。加えて、30回洗濯後の防汚性にも優れており、つまり洗濯耐久性に優れるものであった。さらに、吸水性にも優れていた。そして、実施例1~3は、親水性ポリマーと、撥水剤固形分の質量比が好ましいものであるために、撥水性と吸水性とのバランスに顕著に優れ、防汚性のみならず吸水性にも優れるものであった。比較例1はフッ素系撥水剤を用いなかったために、洗濯後の防汚性は言うまでもなく、初期の防汚性にすら劣っていた。