(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像診断装置、及び医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230718BHJP
G16H 30/40 20180101ALI20230718BHJP
【FI】
A61B6/03 360D
A61B6/03 375
A61B6/03 377
G16H30/40
(21)【出願番号】P 2018237960
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 昂彦
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-213633(JP,A)
【文献】特開2018-130231(JP,A)
【文献】特開2015-033578(JP,A)
【文献】特開2017-018457(JP,A)
【文献】特開2017-064370(JP,A)
【文献】特開2014-138870(JP,A)
【文献】特開2003-245275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14、5/055、8/00-8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の注入を受けた被検体に対して放射線を用いたスキャンを実行することで、前記第1の注入における薬剤の前記被検体の関心領域における濃度変化を表す第1の濃度変化情報を取得する第1取得部と、
前記被検体の静脈から注入された前記薬剤が前記関心領域に到達するまでに通過する心臓の体積に関する情報を取得する第2取得部と、
前記第1の注入における前記薬剤の第1の注入量、前記第1の濃度変化情報、及び、前記体積に関する情報を含む入力データに基づいて、前記被検体に対する第2の注入において注入される薬剤の前記関心領域における濃度変化を表す第2の濃度変化情報、及び、前記第2の注入における薬剤の第2の注入量のうち、少なくともいずれかを推定する推定部と
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
第1の注入を受けた被検体に対して放射線を用いたスキャンを実行することで、前記第1の注入における薬剤の前記被検体の関心領域における濃度変化を表す第1の濃度変化情報を取得する第1取得部と、
前記薬剤が前記関心領域に到達するまでに通過する臓器の体積に関する情報を取得する第2取得部と、
前記第1の注入における前記薬剤の第1の注入量、前記第1の濃度変化情報、及び、前記体積に関する情報を含む入力データに基づいて、前記被検体に対する第2の注入において注入される薬剤の前記関心領域における濃度変化を表す第2の濃度変化情報、及び、前記第2の注入における薬剤の第2の注入量のうち、少なくともいずれかを推定する推定部と
を備え、
前記第2取得部は、前記第2の注入において目標とする第2の濃度変化情報をさらに取得し、
前記推定部は、前記第1の注入量、前記第1の濃度変化情報、前記体積に関する情報、及び、前記目標とする第2の濃度変化情報を含む入力データに基づいて、前記第2の注入量を推定する、医用画像処理装置。
【請求項3】
第1の注入を受けた被検体に対して放射線を用いたスキャンを実行することで、前記第1の注入における薬剤の前記被検体の関心領域における濃度変化を表す第1の濃度変化情報を取得する第1取得部と、
前記薬剤が前記関心領域に到達するまでに通過する臓器の体積に関する情報を取得する第2取得部と、
前記第1の注入における前記薬剤の第1の注入量、前記第1の濃度変化情報、及び、前記体積に関する情報を含む入力データに基づいて、前記被検体に対する第2の注入において注入される薬剤の前記関心領域における濃度変化を表す第2の濃度変化情報、及び、前記第2の注入における薬剤の第2の注入量のうち、少なくともいずれかを推定する推定部と
を備え、
過去に得られた前記第1の注入量、前記第1の濃度変化情報、前記第2の注入量、前記第2の濃度変化情報、及び、前記体積に関する情報を用いた学習により、前記入力データから前記第2の濃度変化情報を推定する、入力される前記第2の注入量ごとに異なる複数の学習済みモデルを記憶する記憶部をさらに有し、
前記推定部は、前記第2の濃度変化情報として、前記複数の学習済みモデルにより推定された複数の前記第2の濃度変化情報を推定する、医用画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の注入における薬剤として、造影剤が注入され、
前記第2の注入における薬剤として、前記造影剤又はその他の薬剤が注入される、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記第2取得部は、前記第2の注入において予定される薬剤の第2の注入量に関する情報をさらに取得し、
前記推定部は、前記第1の注入量、前記第1の濃度変化情報、前記体積に関する情報、及び、前記第2の注入量に関する情報を含む入力データに基づいて、前記第2の濃度変化情報を推定する、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記第1取得部は、前記第1の濃度変化情報として、前記第1の注入において計測された前記薬剤の濃度の最高値に関する情報、及び、前記濃度の最高値を計測した時点に関する情報のうち、少なくともいずれかを取得し、
前記推定部は、前記第2の濃度変化情報として、前記第2の注入において予想される薬剤の濃度の最高値に関する情報、及び、予想される前記濃度の最高値に到達する時点に関する情報のうち、少なくともいずれかを推定する、請求項5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
過去に得られた前記第1の注入量、前記第1の濃度変化情報、前記第2の濃度変化情報、前記第2の注入量、及び、前記体積に関する情報を少なくとも用いた学習により生成された、前記入力データから前記第2の濃度変化情報を推定する学習済みモデルを部位ごとに記憶する記憶部をさらに有し、
前記推定部は、記憶された前記学習済みモデルのうち、前記関心領域を含む部位に対応する学習済みモデルを用いて、前記第2の濃度変化情報を推定する、請求項5又は6に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記第1取得部は、前記第1の濃度変化情報として、前記第1の注入において計測された前記薬剤の濃度の最高値に関する情報、及び、前記濃度の最高値を計測した時点に関する情報のうち、少なくともいずれかを取得し、
前記第2取得部は、前記目標とする第2の濃度変化情報として、前記第2の注入において目標とする前記薬剤の濃度の最高値に関する情報、及び、目標とする前記濃度の最高値に到達する時点に関する情報のうち、少なくともいずれかを取得する、請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
過去に得られた前記第1の注入量、前記第1の濃度変化情報、前記第2の濃度変化情報、前記第2の注入量、及び、前記体積に関する情報を少なくとも用いた学習により生成された、前記入力データから前記第2の濃度変化情報を推定する推定する学習済みモデルを部位ごとに記憶する記憶部をさらに有し、
前記推定部は、記憶された前記学習済みモデルのうち、前記関心領域を含む部位に対応する学習済みモデルを用いて、前記第2の注入量を推定する、請求項2又は8に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記第2取得部は、前記第2の注入において目標とする前記第2の濃度変化情報をさらに取得し、
前記推定部は、前記複数の学習済みモデルのうち、目標とする前記第2の濃度変化情報に最も合致する学習済みモデルを特定し、当該学習済みモデルに対応する前記第2の注入量を、前記第2の注入量として推定する、請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記記憶部は、前記複数の学習済みモデルを部位ごとに記憶し、
前記推定部は、記憶された前記複数の学習済みモデルのうち、前記関心領域を含む部位に対応する学習済みモデルを用いて、複数の前記第2の濃度変化情報を推定する、請求項3又は10に記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記第2取得部は、前記被検体の静脈から注入された前記薬剤が前記関心領域に到達するまでに通過する心臓に関する情報、前記体積に関する情報、予定する前記第2の注入量に関する情報、及び、前記第2の注入における目標とする前記第2の濃度変化情報のうち、少なくともいずれかの入力を受け付けて取得する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記第2取得部は、前記薬剤が前記関心領域に到達するまでに通過する臓器に関する情報、前記体積に関する情報、予定する前記第2の注入量に関する情報、及び、前記第2の注入における目標とする前記第2の濃度変化情報のうち、少なくともいずれかの入力を受け付けて取得する、請求項2又は3に記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
第1の注入を受けた被検体に対して放射線を用いたスキャンを実行するスキャン部と、
前記スキャンを実行することで、前記第1の注入における薬剤の前記被検体の関心領域における濃度変化を表す第1の濃度変化情報を取得する第1取得部と、
前記被検体の静脈から注入された前記薬剤が前記関心領域に到達するまでに通過する心臓の体積に関する情報を取得する第2取得部と、
前記第1の注入における前記薬剤の第1の注入量、前記第1の濃度変化情報、及び、前記体積に関する情報を含む入力データに基づいて、前記被検体に対する第2の注入において注入される薬剤の前記関心領域における濃度変化を表す第2の濃度変化情報、及び、前記第2の注入における薬剤の第2の注入量のうち、少なくともいずれかを推定する推定部と
を備える医用画像診断装置。
【請求項15】
医用画像診断装置のスキャン部が、第1の注入を受けた被検体に対して放射線を用いたスキャンを実行
し、
前記医用画像診断装置または医用画像処理装置が、
前記第1の注入における薬剤の前記被検体の関心領域における濃度変化を表す第1の濃度変化情報を取得し、
前記被検体の静脈から注入された前記薬剤が前記関心領域に到達するまでに通過する心臓の体積に関する情報を取得し、
前記第1の注入における前記薬剤の第1の注入量、前記第1の濃度変化情報、及び、前記体積に関する情報を含む入力データに基づいて、前記被検体に対する第2の注入において注入される薬剤の前記関心領域における濃度変化を表す第2の濃度変化情報、及び、前記第2の注入における薬剤の第2の注入量のうち、少なくともいずれかを推定する
、
ことを含む医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像診断装置、及び医用画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CT(Computed Tomography)撮影により、被検体の冠動脈等の関心領域(Region Of Interest、以下「ROI」と表記する場合がある)を診断する際に、診断精度を向上させるために、被検体に造影剤を注入する場合がある。その際、スキャン時におけるROIに流れる造影剤の濃度に応じて、CT値が変化する。そこで、スキャン時におけるCT値を推測する方法として、TI(Test Injection)法が知られている。TI法は、本スキャンを行う前に少量の造影剤を被検体に注入してスキャンを行い、ROIにおける造影剤の時間濃度曲線(Time Density Curve、以下「TDC」と表記する場合がある)を計測することにより、本スキャン時における最大CT値(以下「ピークCT値」と表記する場合がある。)及び最大CT値に到達するまでの時間(以下「ピーク時間」と表記する場合がある。)を推測する方法である。
【0003】
しかし、TI法におけるスキャン時と、本スキャン時とでは、造影剤の注入量など、撮影条件に違いがあることから、TI法により計測された結果を用いても、ピークCT値及びピーク時間を的確に推測することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-113715号公報
【文献】特開2015-213633号公報
【文献】特開2015-33578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、TI法により計測された結果を有効に活用することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用画像処理装置は、第1取得部と、第2取得部と、推定部とを備える。第1取得部は、第1の注入を受けた被検体に対して放射線を用いたスキャンを実行することで、前記第1の注入における薬剤の前記被検体の関心領域における濃度変化を表す第1の濃度変化情報を取得する。第2取得部は、前記薬剤が前記関心領域に到達するまでに通過する臓器の体積に関する情報を取得する。推定部は、前記第1の注入における前記薬剤の第1の注入量、前記第1の濃度変化情報、及び、前記体積に関する情報を含む入力データに基づいて、前記被検体に対する第2の注入において注入される薬剤の前記関心領域における濃度変化を表す第2の濃度変化情報、及び、前記第2の注入における薬剤の第2の注入量のうち、少なくともいずれかを推定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態におけるTDCの一例を説明するための図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態におけるROIの一例を説明するための図であり、心臓の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る医用画像処理システムの構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る登録処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1の実施形態におけるAIを用いた学習の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態における学習済みモデルを利用した処理の一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態におけるTDCの別の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態におけるAIを用いた学習の一例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態における学習済みモデルを利用した処理の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態におけるAIを用いた学習の一例を説明するための図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態における学習済みモデルを利用した処理の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第4の実施形態に係る医用画像処理装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に図面を参照して、医用画像処理装置及び医用画像診断装置の実施形態について詳細に説明する。なお、本願に係る医用画像処理装置及び医用画像診断装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、医用画像診断装置をX線コンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography)装置に適用した場合の例を説明する。以下、X線CT装置と医用画像処理装置とを含む医用画像処理システムを例に挙げて説明する。
【0010】
第1の実施形態においては、
図1に示すようなTI(Test Injection)時のTDC(Time Density Curve)に基づいて、本スキャン時のTDCを推定する構成について説明する。
図1は、第1の実施形態におけるTDCの一例を説明するための図である。
図1において、TDCの横軸は、造影剤が被検体Pに注入されてからの経過時間を表し、縦軸は、被検体PのROI(Region Of Interest)におけるCT値を表す。CT値は、被検体Pに流れる造影剤の濃度に対応し、単位としては、例えば、HU(Hounsfield Unit)が用いられる。なお、
図1に示すTDCは、時間濃度曲線の一例である。
【0011】
図2は、第1の実施形態におけるROIの一例を説明するための図であり、心臓の構成を示す図である。
図2に示すように、第1の実施形態では、例えば、被検体Pの心臓の左心室を含む領域がROIに指定されるが、これに限られず、肺、脳、肝臓等のその他の臓器内の領域であってもよく、また骨等の臓器以外の部位の領域であってもよい。
図2に示すように、血液は、大静脈、心臓(右心房、右心室)、肺動脈、肺、肺静脈、心臓(左心房、左心室)、大動脈、全身の器官及び組織の順に流れる。このため、被検体Pの静脈から注入された造影剤は、被検体Pの心臓の右心房及び右心室、並びに肺を通った後にROIを通過する。
図1に示すように、TDCにおいて、造影剤が被検体Pに注入された後にROIを通過する際にCT値がピーク値に達し、その後、CT値が徐々に下がる。
【0012】
例えば、
図1に示すように、TI法におけるスキャン時の濃度変化情報は、TDCにおいて、TI法におけるスキャン時の注入を開始した時点IT1からCT値がピーク値(ピークCT値)に達するまでの時間(ピーク時間)tTと、ピークCT値PkTとを含む。更に、TI法におけるスキャン時の濃度変化情報は、TDCにおいて、CT値が閾値(CT値Pth)を超えてからピークCT値PkTに達した後に閾値(CT値Pth)を下回るまでの通過時間ΔtTと当該CT値との関係を表す面積ArTを含む。TI法におけるスキャン時のピークCT値PkTは、TI法におけるスキャン時の造影剤がROIに流れてきたときの造影剤の濃度のピーク値に相当する。TI法におけるスキャン時のピーク時間tTは、TI法におけるスキャン時の造影剤がROIに流れてきたときに造影剤の濃度がピークCT値に達するまでの時間に相当する。面積ArTは、TI法におけるスキャン時の造影剤がROIに流れてきたときの造影剤の量に相当する。なお、TI法におけるスキャン時の注入は、第1の注入の一例であり、TI法におけるスキャン時の濃度変化情報は、第1の濃度変化情報の一例である。また、ピークCT値は、薬剤の濃度の最高値に関する情報の一例であり、ピーク時間は、濃度の最高値を計測した時点に関する情報の一例である。
【0013】
また、例えば、
図1に示すように、本スキャン時の濃度変化情報は、TDCにおいて、本スキャン時の注入を開始した時点IT1からピークCT値に達するまでのピーク時間tAと、ピークCT値PkAとを含む。更に、本スキャン時の濃度変化情報は、TDCにおいて、CT値が閾値(CT値Pth)を超えてからピークCT値PkAに達した後に閾値(CT値Pth)を下回るまでの通過時間ΔtAと当該CT値との関係を表す面積ArAを含む。本スキャン時のピークCT値PkAは、本スキャン時の造影剤がROIに流れてきたときの造影剤の濃度のピーク値に相当する。本スキャン時のピーク時間tAは、本スキャン時の造影剤がROIに流れてきたときに造影剤の濃度がピークCT値に達するまでの時間に相当する。面積ArAは、本スキャン時の造影剤がROIに流れてきたときの造影剤の量に相当する。なお、本スキャン時の注入は、第2の注入の一例であり、本スキャン時の濃度変化情報は、第2の濃度変化情報の一例である。
【0014】
上で述べたように、TI法においては、TI法におけるスキャン時のTDCに基づいて、本スキャン時のTDCを推定する。しかし、TI法におけるスキャン時の注入と、本スキャン時の注入とでは、造影剤の注入量が相違するため、本スキャン時の注入量を的確に推定することは難しい。また、静脈から注入される造影剤は、心臓や肺等の臓器を通過する際に、他の静脈から心臓に流れ込む血液により希釈される。このため、ある被検体におけるTI法により推定された結果を、体重等が同じ条件である他の被検体に適用しようとすると、他の被検体との肺の体積等の違いにより、本スキャン時のTDCが推定結果とは異なる場合がある。
【0015】
そこで、第1の実施形態における医用画像処理システムは、TI法において本スキャン時の濃度変化情報又は注入量を推定する際に、造影剤が被検体のROIに到達するまでに通過する臓器の体積に関する情報を用いる。具体的には、医用画像処理システムは、TI法におけるスキャン時の注入により得られた造影剤の注入量及び濃度変化情報と、被検体の臓器の体積に関する情報とを用いて生成された学習済みモデルを用いて、本スキャン時の濃度変化情報又は注入量を推定する。
【0016】
図3は、第1の実施形態に係る医用画像処理システムの構成の一例を示す図である。
図3に示すように、第1の実施形態に係る医用画像処理システム100は、X線CT(Computed Tomography)装置1と、画像保管装置2と、医用画像処理装置3とを備え、ネットワーク200を介して相互に接続される。なお、
図3に示す例は、あくまでも一例であり、ネットワーク200にその他種々の装置(例えば、端末装置等)が接続される場合であってもよい。
【0017】
例えば、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、
図3に示すように、ネットワーク200を介して、画像保管装置2と、医用画像処理装置3に接続される。なお、医用画像処理システム100は、ネットワーク200を介して、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置及びPET(Positron Emission Tomography)装置等の他の医用画像診断装置や、端末装置などにさらに接続されてもよい。また、ネットワーク200は、院内で閉じたローカルネットワークにより構成されてもよいし、インターネットを介したネットワークにより構成されてもよい。
【0018】
画像保管装置2は、各種の医用画像診断装置によって収集された画像データを保管する。例えば、画像保管装置2は、サーバ装置等のコンピュータ機器によって実現される。本実施形態では、画像保管装置2は、ネットワーク200を介してX線CT装置1から投影データやCT画像データを取得し、取得した投影データやCT画像データを装置内又は装置外に設けられた記憶回路に記憶させる。
【0019】
医用画像処理装置3は、ネットワーク200を介して各種の医用画像診断装置から画像データを取得し、取得した画像データを処理する。例えば、医用画像処理装置3は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。本実施形態では、医用画像処理装置3は、ネットワーク200を介してX線CT装置1又は画像保管装置2から投影データやCT画像データを取得し、取得した投影データやCT画像データに対して各種画像処理を行う。医用画像処理装置3は、画像処理を行う前又は行った後のCT画像データをディスプレイ等に表示する。
【0020】
X線CT装置1は、被検体のCT画像データを収集する。具体的には、X線CT装置1は、被検体を略中心にX線管及びX線検出器を旋回移動させ、被検体を透過したX線を検出して投影データを収集する。そして、X線CT装置1は、収集した投影データに基づいて、CT画像データを生成する。
【0021】
図4は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示す図である。
図4に示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。
【0022】
ここで、
図4においては、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。なお、
図4は、説明のために架台装置10を複数方向から描画したものであり、X線CT装置1が架台装置10を1つ有する場合を示す。
【0023】
架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、コリメータ17と、DAS(Data Acquisition System)18とを有する。
【0024】
X線管11は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することで、被検体Pに対し照射するX線を発生する。例えば、X線管11には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0025】
X線検出器12は、X線を検出する検出素子を複数有する。X線検出器12における各検出素子は、X線管11から照射されて被検体Pを通過したX線を検出し、検出したX線量に対応した信号をDAS18へと出力する。X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心とした1つの円弧に沿ってチャンネル方向(チャネル方向)に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャンネル方向に複数の検出素子が配列された検出素子列が列方向(スライス方向、row方向)に複数配列された構造を有する。
【0026】
例えば、X線検出器12は、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、フォトダイオード等の光センサを有する。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0027】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム13は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やウェッジ16、コリメータ17、DAS18等を更に支持することもできる。更に、回転フレーム13は、
図4において図示しない種々の構成を更に支持することもできる。
【0028】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管11が発生するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、図示しない固定フレームに設けられても構わない。
【0029】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う。例えば、制御装置15は、回転フレーム13の回転や架台装置10のチルト、寝台装置30及び天板33の動作等について制御を行う。一例を挙げると、制御装置15は、架台装置10をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させる。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0030】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工したフィルタである。
【0031】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。また、
図4においては、X線管11とコリメータ17との間にウェッジ16が配置される場合を示すが、X線管11とウェッジ16との間にコリメータ17が配置される場合であってもよい。この場合、ウェッジ16は、X線管11から照射され、コリメータ17により照射範囲が制限されたX線を透過して減衰させる。
【0032】
DAS18は、X線検出器12が有する各検出素子によって検出されるX線の信号を収集する。例えば、DAS18は、各検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS18は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0033】
DAS18が生成したデータは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば、固定フレーム等。
図4での図示は省略している)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。ここで、非回転部分とは、例えば、回転フレーム13を回転可能に支持する固定フレーム等である。なお、回転フレーム13から架台装置10の非回転部分へのデータの送信方法は、光通信に限らず、非接触型の如何なるデータ伝送方式を採用してもよいし、接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。
【0034】
寝台装置30は、撮影対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、天板33の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0035】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。なお、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0036】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、投影データやCT画像データを記憶する。また、例えば、メモリ41は、X線CT装置1に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。また、例えば、メモリ41は、後に説明する学習処理に用いる学習済みモデルを記憶する。なお、メモリ41は、X線CT装置1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。なお、メモリ41は、記憶部の一例である。
【0037】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された各種の画像を表示したり、操作者から各種の操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。なお、ディスプレイ42は、表示部の一例である。
【0038】
入力インターフェース43は、操作者から各種の入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、CT画像データを再構成する際の再構成条件や、CT画像データから後処理画像を生成する際の画像処理条件等の入力操作を操作者から受け付ける。
【0039】
例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース43は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、コンソール装置40とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。
【0040】
処理回路44は、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、スキャン制御機能441、前処理機能442、画像再構成機能443、スキャン結果取得機能444、条件取得機能445、推定機能446及び表示制御機能447を実行する。なお、スキャン制御機能441は、スキャン部の一例である。スキャン結果取得機能444は、第1取得部の一例である。条件取得機能445は、第2取得部の一例である。推定機能446は、推定部の一例である。
【0041】
図4に示すX線CT装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41へ記憶されている。処理回路44は、メモリ41からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0042】
なお、
図4においては、スキャン制御機能441、前処理機能442、画像再構成機能443、スキャン結果取得機能444、条件取得機能445、推定機能446及び表示制御機能447の各処理機能が単一の処理回路44によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路44は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0043】
以上、本実施形態に係るX線CT装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係るX線CT装置1は、TI法により計測された結果を有効に活用するために、以下の各処理を実行する。本実施形態に係るX線CT装置1では、処理回路44は、TI法におけるスキャン時の注入において、造影剤が注入された被検体Pに対してX線を用いたスキャンを実行することで、TI法におけるスキャン時の造影剤の濃度変化を表す濃度変化情報を取得する。また、処理回路44は、造影剤が被検体PのROIに到達するまでに通過する臓器の体積に関する情報を取得する。そして、処理回路44は、取得した造影剤の注入量、濃度変化情報、及び、臓器の体積に関する情報を含む入力データに基づいて、被検体Pの本スキャン時における濃度変化情報又は注入量を推定する。
【0044】
次に、第1の実施形態において、処理回路44が実行するスキャン制御機能441、前処理機能442、画像再構成機能443、スキャン結果取得機能444、条件取得機能445、推定機能446及び表示制御機能447の各機能について説明する。
【0045】
図5は、第1の実施形態に係る登録処理の一例を示すフローチャートである。例えば、第1の実施形態では、被検体Pの心臓のCT撮影を行うことにより、TI法により計測された結果を有効に活用する。CT撮影は、TI法におけるスキャン時の注入のときと、本スキャン時の注入のときに、それぞれ行われる。
【0046】
図5のステップS101は、処理回路44がメモリ41からスキャン制御機能441に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。ステップS101において、スキャン制御機能441は、当該被検体Pに対してX線を利用したスキャンを実行する。例えば、スキャン制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、スキャンを制御する。具体的には、スキャン制御機能441は、入力操作に基づいて、X線高電圧装置14に制御信号を送信することで、高電圧発生装置からの出力電圧を制御する。また、スキャン制御機能441は、DAS18に制御信号を送信することで、DAS18によるデータ収集を制御する。
【0047】
図5のステップS102は、処理回路44がメモリ41から前処理機能442に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。ステップS102において、前処理機能442は、DAS18から送信されたX線検出データに対して、対数変換処理や、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なうことで、投影データを生成する。なお、前処理前のデータ(検出データ)および前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。
【0048】
図5のステップS103は、処理回路44がメモリ41から画像再構成機能443に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。ステップS103において、画像再構成機能443は、前処理機能442により生成された投影データを種々の再構成法(例えば、FBP(Filtered Back Projection)などの逆投影法や、逐次近似法など)によって再構成することでCT画像データを生成し、生成したCT画像データをメモリ41に格納する。
【0049】
図5のステップS104は、処理回路44がメモリ41からスキャン結果取得機能444及び表示制御機能447に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。ステップS104において、スキャン結果取得機能444は、メモリ41に格納されたCT画像データを取得する。あるいは、スキャン結果取得機能444は、画像再構成機能443により生成されたCT画像データを取得する。ここで、取得したCT画像データにおいて、被検体PのROIが指定される。例えば、表示制御機能447は、スキャン結果取得機能444により取得されたCT画像データをディスプレイ42に表示させ、ディスプレイ42上のCT画像データにおいて、ROIが指定される。以下においては、
図2に示す被検体Pの心臓の左心室を含む領域がROIに指定されるものとする。
【0050】
スキャン結果取得機能444は、取得したCT画像データのROIに関するCT値を算出する。そして、スキャン結果取得機能444は、ROIに関するCT値を時系列にプロットした時間濃度曲線(TDC)を生成する。例えば、表示制御機能447は、スキャン結果取得機能444により生成されたTDCをディスプレイ42に表示させる。
【0051】
図5のステップS105は、処理回路44がメモリ41から条件取得機能445に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。ステップS105において、条件取得機能445は、TI法におけるスキャン時の注入において、造影剤が被検体PのROIに到達するまでに通過する臓器の体積に関する情報を取得する。また、条件取得機能445は、TI法における造影剤の注入量に関する情報を取得する。さらに、条件取得機能445は、本スキャン時の注入において予定する造影剤の注入量に関する情報を取得する。なお、TI法における造影剤の注入量は、第1の注入量の一例であり、本スキャン時の注入において予定する造影剤の注入量は、第2の注入量の一例である。
【0052】
条件取得機能445は、例えば、入力インターフェース43を通じて、操作者から入力された被検体Pの臓器の体積に関する情報や、造影剤の注入量に関する情報を取得する。また、条件取得機能445は、例えば、被験者の体重や年齢、性別等の情報に基づいて、被検体Pの臓器の体積を算出してもよい。
【0053】
図5のステップS106は、処理回路44がメモリ41から推定機能446及び表示制御機能447に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。ステップS106において、推定機能446は、TI法におけるスキャン時の注入において、スキャン結果取得機能444により取得された濃度変化情報(ピークCT値PkT、ピーク時間tT、面積ArT)及び条件取得機能445により取得された、TI法におけるスキャン時における造影剤の注入量、本スキャン時の造影剤の注入量、及び、臓器の体積に関する情報を含む入力データに基づいて、被検体Pへの本スキャン時における造影剤の濃度変化情報を推定する。例えば、表示制御機能447は、推定機能446が推定した結果をディスプレイ42に表示させる。
【0054】
例えば、推定機能446は、過去に得られたTI法におけるスキャン時の造影剤の注入量及び濃度変化情報、本スキャン時の造影剤の注入量及び濃度変化情報、及び、臓器の体積に関する情報を用いた学習により、スキャン結果取得機能444により取得されたTI法におけるスキャン時の造影剤の注入量及び濃度変化情報、並びに本スキャン時の造影剤の注入量及び臓器の体積に関する情報を含む入力データから、本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定する。当該学習としては、例えば、ニューラルネットワークを基にしたAI(Artificial Intelligence)を用いた学習や、機械学習等が挙げられる。また、推定機能446は、過去に得られたTI法におけるスキャン時の造影剤の注入量及び濃度変化情報、本スキャン時の造影剤の注入量及び濃度変化情報、及び、臓器の体積に関する情報を対応付けるテーブルを参照して、入力データから、本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定してもよい。
【0055】
次に、AIを用いた学習により、被検体Pの本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定する場合について説明する。被検体Pの本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定する場合、AIを用いた学習では、学習済みモデルを生成する処理と、学習済みモデルを利用する処理とが実行される。
【0056】
第1の実施形態において、学習済みモデルは、図示しない装置(以下、「学習済みモデル生成装置」と表記する場合がある)で生成されて、X線CT装置1内に保管される(例えば、メモリ41に記憶させる)。ここで、学習済みモデル生成装置は、院内の装置(例えば、
図3の医用画像処理装置3)により実現してもよいし、外部の装置により実現してもよい。又は、学習済みモデルは、X線CT装置1(例えば、推定機能446)により生成されて、X線CT装置1内に保管されてもよい。以下、学習済みモデルが、学習済みモデル生成装置で生成されて、X線CT装置1内に保管される場合を例にして説明する。
【0057】
図6は、第1の実施形態におけるAIを用いた学習の一例を説明するための図である。
図6は、AIを用いた深層学習(ディープラーニング)を想定したブロック図を示す。
【0058】
学習済みモデルを生成する処理では、
図6に示すように、まず、学習済みモデル生成装置は、過去に被検体に対してX線を利用したTI法におけるスキャン及び本スキャンを実行したときに得られたデータセット501を入力する。データセット501は、過去に取得されたTI法におけるスキャン時の造影剤の注入量及び濃度変化情報(CT値のTI法におけるスキャン時のピークCT値PkT、ピーク時間tT、面積ArT)、及び、本スキャン時の造影剤の注入量及び濃度変化情報(本スキャン時のピークCT値PkA、ピーク時間tA、面積ArA)を含む。更に、データセット501は、例えば、過去に取得された造影剤が被検体のROIに到達するまでに通過する臓器の体積に関する情報、及び、被検体に関するその他の情報等を含む。被検体に関するその他の情報は、被検体の性別、体重、年齢、心機能指標等を含む。心機能指標としては、左室駆出分画(Ejection Fraction;EF)、1回拍出量(Stroke Volume;SV)、心拍出量(Cardiac Output;CO)等が挙げられる。なお、AI等のアルゴリズムは経験から学習していくものであるため、学習に用いられるデータセットは、同一の被検体でなくてもよい。
【0059】
そして、学習済みモデル生成装置は、データセット501を学習用データセット502に加工する。学習用データセット502は、例えば、上で説明した通過時間ΔtT、TI法における濃度変化情報に含まれるピークCT値PkTと本スキャン時の濃度変化情報に含まれるピークCT値PkAとの比率Rp(Rp=PkT/PkA1)、TI法における濃度変化情報に含まれる面積ArTと本スキャン時の濃度変化情報に含まれる面積ArAとの比率Ra(Ra=ArT/ArA)、臓器の体積に関する情報、及び、被検体に関するその他の情報等を含む。
【0060】
学習済みモデル生成装置は、AIのアルゴリズムとして学習用プログラム503を有する。学習済みモデル生成装置は、学習用プログラム503を用いて、学習用データセット502から、本スキャン時の造影剤の濃度変化情報のパターン等を学習して、後述の入力データ505の入力を受けて本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定する後述の出力データ506を出力するように機能付けられた学習済みモデル504を生成する。例えば、生成した学習済みモデル504は、X線CT装置1内に保管される(メモリ41に記憶される)。メモリ41内の学習済みモデル504は、例えば、推定機能446により読み出し可能である。
【0061】
図7は、第1の実施形態における学習済みモデルを利用した処理の一例を説明するための図である。学習済みモデルを利用する処理では、
図7に示すように、推定機能446は、被検体Pに対してX線を利用したTI法におけるスキャンを実行したときに得られた入力データ505を入力する。入力データ505は、スキャン結果取得機能444により取得された、TI法におけるスキャン時の造影剤の注入量及び濃度変化情報(CT値のTI法におけるスキャン時のピークCT値PkT、ピーク時間tT、面積ArT)を含む。更に、入力データ505は、例えば、条件取得機能445により取得された、本スキャン時の造影剤の注入量、臓器の体積に関する情報、及び、被検体に関するその他の情報等を含む。
【0062】
そして、推定機能446は、メモリ41から読み出した学習済みモデル504を用いて、入力データ505から、被検体Pの本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定し、推定した結果を出力データ506として出力する。例えば、表示制御機能447は、出力データ506をディスプレイ42に表示させる。
【0063】
なお、学習済みモデル生成装置は、被検体の情報毎に、学習済みモデル504を生成し、推定機能446は、生成した学習済みモデル504を利用して、入力データ505から、被検体Pの本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定してもよい。例えば、学習済みモデル生成装置は、被検体の性別毎に、男性用、女性用の学習済みモデル504を生成し、推定機能446は、生成した学習済みモデル504を利用して、入力データ505から、被検体Pの本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定してもよい。また、例えば、学習済みモデル生成装置は、被検体の性別だけでなく、被検体の体重、年齢、心機能指標毎に、学習済みモデル504を生成し、推定機能446は、生成した学習済みモデル504を利用して、入力データ505から、被検体Pの本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定してもよい。
【0064】
また、学習済みモデル生成装置は、ROI毎に、又は造影剤が被検体のROIに到達するまでに通過する臓器に関する情報毎に、学習済みモデル504を生成し、推定機能446は、生成した学習済みモデル504を利用して、入力データ505から、被検体Pの本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定してもよい。例えば、学習済みモデル生成装置は、通過する臓器に関する情報毎に、心臓及び肺を通過する場合用、並びに、心臓のみを通過する場合用の学習済みモデル504を生成し、推定機能446は、生成した学習済みモデル504を利用して、入力データ505から、被検体Pの本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定してもよい。
【0065】
なお、本実施形態では、学習済みモデル生成装置は、TDCから取得されたTI法における濃度変化情報及び本スキャン時の濃度変化情報を含む入力データ505を入力し、入力データ505を学習用データセット502に加工し、学習用プログラム503を用いて、学習用データセット502から、本スキャン時の造影剤の濃度変化情報のパターン等を学習して、学習済みモデル504を生成している。しかし、これに限定されない。例えば、学習済みモデル生成装置は、TDCの形状そのものを学習させてもよい。すなわち、学習済みモデル生成装置は、TDCを含むデータセット501を入力し、学習用プログラム503を用いて、入力データ505から、本スキャン時の造影剤の濃度変化情報のパターン等を学習して、学習済みモデル504を生成してもよい。
【0066】
以上の説明により、第1の実施形態に係るX線CT装置1では、被検体Pの臓器の体積に関する情報を用いた推定により、TI法により計測された結果に基づいて、本スキャン時の造影剤の濃度変化情報をより的確に推定することができる。
【0067】
上述したように、本スキャン時の造影剤の濃度変化情報は、TI法における造影剤の注入量との違いや、被検体に関するその他の情報に加えて、造影剤が被検体のROIに到達するまでに通過する臓器の体積によってもばらつきが生じるため、TI法におけるスキャン結果に基づいて予測することが難しい。
【0068】
本スキャン時の造影剤の濃度変化情報のばらつきについて説明する。
図8は、第1の実施形態におけるTDCの別の一例を説明するための図である。
図8において、TDC210a、210b及び210cは、それぞれ、
図1に示すようなTI時のTDCが得られた被検体に対する、本スキャン時における注入開始時点IT2以降の造影剤の濃度変化情報を示す。
図8は、例えば、造影剤が通過する臓器の体積がそれぞれ異なる被検体a、b及びcに対する本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を示す。
図8に示すように、例えば、各被検体の臓器の体積がそれぞれ異なる場合、ピークCT値212a、212b及び212c、並びにピーク時間211a、211b及び211cはそれぞれ異なる場合がある。このような場合において、第1の実施形態に係るX線CT装置1では、TI法におけるスキャン結果に加えて、被検体の臓器の体積に関する情報を用いて本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定することで、より的確に本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定する、すなわちTI法により計測された結果を有効に活用することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、本スキャン時の注入量に基づいて、TI法におけるスキャン結果から本スキャン時の濃度変化情報を推定する場合について説明した。第2の実施形態では、本スキャン時に期待される濃度変化情報に基づいて、TI法におけるスキャン結果から本スキャン時の注入量を推定する場合について説明する。第2の実施形態に係るX線CT装置1は、
図4に示したX線CT装置1と同様の構成を有し、条件取得機能445及び推定機能446による処理の一部が相違する。以下、第1の実施形態において説明した構成と同様の構成を有する点については、
図4と同一の符号を付し、説明を省略する。なお、以下においても、第1の実施形態と同様に、
図2に示す被検体Pの心臓の左心室を含む領域がROIに指定されるものとする。
【0070】
図5のステップS105において、条件取得機能445は、TI法におけるスキャン時の注入における造影剤の注入量に関する情報、及び、造影剤が被検体PのROIに到達するまでに通過する臓器の体積に関する情報を取得する。また、条件取得機能445は、本スキャン時において目標とする造影剤の濃度変化情報に関する情報を取得する。例えば、条件取得機能445は、本スキャン時において目標とする造影剤の濃度の最高値に関する情報、又は、目標とする濃度の最高値に到達するまでの時間に関する情報を取得する。
【0071】
図5のステップS106において、推定機能446は、TI法におけるスキャン時の注入において、スキャン結果取得機能444により取得された濃度変化情報(ピークCT値PkT、ピーク時間tT、面積ArT)及び条件取得機能445により取得された、TI法における造影剤の注入量、本スキャン時において目標とする造影剤の濃度変化情報、及び、臓器の体積に関する情報を含む入力データに基づいて、被検体Pへの本スキャン時において、目標とする造影剤の濃度変化情報を得るために必要な造影剤の注入量を推定する。例えば、表示制御機能447は、推定機能446が推定した結果をディスプレイ42に表示させる。
【0072】
次に、第2の実施形態において、AIを用いた学習により、本スキャン時の造影剤の注入量を推定する場合について説明する。本実施形態においても、AIを用いた学習では、学習済みモデルを生成する処理と、学習済みモデルを利用する処理とが実行される。
【0073】
第2の実施形態においても、学習済みモデルは、図示しない学習済みモデル生成装置で生成されてもよい。又は、学習済みモデルは、X線CT装置1(例えば、推定機能446)により生成されて、X線CT装置1内に保管されてもよい。以下、第1の実施形態と同様に、学習済みモデルが、学習済みモデル生成装置で生成されて、X線CT装置1内に保管される場合を例にして説明する。
【0074】
図9は、第2の実施形態におけるAIを用いた学習の一例を説明するための図である。
図9は、
図6と同様に、AIを用いた深層学習を想定したブロック図を示す。
【0075】
第2の実施形態における学習済みモデルを生成する処理では、
図9に示すように、第1の実施形態における学習済みモデルを生成する処理と同様のデータセット501を入力する。学習済みモデル生成装置は、データセット501を学習用データセット512に加工する。学習用データセット512は、例えば、第1の実施形態における学習用データセット502と同様の情報であってもよい。
【0076】
第2の実施形態における学習済みモデル生成装置は、AIのアルゴリズムとして、学習用プログラム513を有する。学習済みモデル生成装置は、学習用プログラム513を用いて、学習用データセット502から、本スキャン時の造影剤の濃度変化情報と造影剤の注入量との関係等を学習して、後述の入力データ515の入力を受けて本スキャン時の造影剤の注入量を推定する後述の出力データ516を出力するように機能付けられた学習済みモデル514を生成する。なお、第2の実施形態においても、学習済みモデル生成装置は、被検体の情報毎に、又はROI毎に、学習済みモデル514を生成し、推定機能446は、生成した学習済みモデル514を利用して、入力データ515から、被検体Pの本スキャン時に必要な造影剤の注入量を推定してもよい。
【0077】
図10は、第2の実施形態における学習済みモデルを利用した処理の一例を示す図である。学習済みモデルを利用する処理では、
図10に示すように、推定機能446は、被検体Pに対してX線を利用したTI法におけるスキャンを実行したときに得られた入力データ515を入力する。第2の実施形態において、入力データ515は、スキャン結果取得機能444により取得された、TI法におけるスキャン時の造影剤の注入量及び濃度変化情報(TI法におけるスキャン時のピークCT値PkT、ピーク時間tT、面積ArT)を含む。更に、入力データ515は、例えば、条件取得機能445により取得された、本スキャン時に期待される造影剤の濃度変化情報、臓器の体積に関する情報、及び、被検体に関するその他の情報等を含む。
【0078】
そして、推定機能446は、メモリ41から読み出した学習済みモデル514を用いて、入力データ515から、被検体Pの本スキャン時に必要な造影剤の注入量を推定し、推定した結果を出力データ516として出力する。例えば、表示制御機能447は、出力データ516をディスプレイ42に表示させる。
【0079】
なお、本実施形態においても、学習済みモデル生成装置は、TDCの形状そのものを学習させてもよい。すなわち、学習済みモデル生成装置は、過去に得られた、本スキャン時におけるTDCを含むデータセット501を入力し、学習用プログラム513を用いて、データセット501から、本スキャン時の造影剤の濃度変化情報と造影剤の注入量との関係等を学習して、学習済みモデル514を生成してもよい。
【0080】
以上説明したように、第2の実施形態に係るX線CT装置1は、TI法により計測された結果に基づいて、本スキャン時の造影剤の注入量をより的確に推定することができる。
【0081】
なお、本実施形態において取得する本スキャン時の造影剤の濃度変化情報は、例えばピークCT値PkAや、ROIを流れる造影剤の量に相当する面積ArAであるが、これに限られない。例えば、第2の実施形態に係る条件取得機能445は、本スキャン時に目標とするCT値(以下において「目標CT値」と表記する場合がある)等の目標とする濃度変化情報を取得してもよい。なお、目標CT値は、濃度の目標値の一例である。
【0082】
また、本実施形態における推定機能446は、例えば目標CT値に到達するために必要な造影剤の注入量を推定するが、これに限られない。例えば、推定機能446は、注入開始時点IT2から目標CT値に到達するまでの時間や、目標CT値に到達するための注入時間や、注入する造影剤の濃度等を推定してもよい。
【0083】
(第3の実施形態)
上述した第2の実施形態では、TI法におけるスキャン結果から本スキャン時の注入量を推定する際に、単一の学習済みモデルを用いる場合について説明した。第3の実施形態では、本スキャン時の造影剤の注入量ごとに生成された学習済みモデルを用いて、造影剤の注入量ごとに本スキャン時の濃度変化情報を推定する場合について説明する。第3の実施形態に係るX線CT装置1も、
図4に示したX線CT装置1と同様の構成を有し、条件取得機能445及び推定機能446による処理の一部が相違する。以下、第1の実施形態において説明した構成と同様の構成を有する点については、
図4と同一の符号を付し、説明を省略する。なお、以下においても、第1の実施形態と同様に、
図2に示す被検体Pの心臓の左心室を含む領域がROIに指定されるものとする。
【0084】
図5のステップS105において、条件取得機能445は、TI法におけるスキャン時の注入における造影剤の注入量、及び、造影剤が被検体PのROIに到達するまでに通過する臓器の体積に関する情報を取得する。なお、条件取得機能445は、本スキャン時において期待される造影剤の濃度変化情報に関する情報を取得してもよい。
【0085】
図5のステップS106において、推定機能446は、TI法におけるスキャン時の注入において、スキャン結果取得機能444により取得された濃度変化情報(ピークCT値PkT、ピーク時間tT、面積ArT)及び条件取得機能445により取得された、TI法における造影剤の注入量、及び、臓器の体積に関する情報を含む入力データに基づいて、本スキャン時の造影剤の注入量ごとに、本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定する。例えば、表示制御機能447は、推定機能446が推定した結果をディスプレイ42に表示させる。なお、
図5のステップS105において、条件取得機能445が、本スキャン時において期待される造影剤の濃度変化情報に関する情報を取得した場合、推定機能446は、本スキャン時の造影剤の注入量ごとに推定された濃度変化情報と、期待される造影剤の濃度変化情報に関する情報との合致度を算出してもよい。
【0086】
次に、第3の実施形態において、AIを用いた学習により、本スキャン時の造影剤の注入量を推定する場合について説明する。本実施形態においても、AIを用いた学習では、学習済みモデルを生成する処理と、学習済みモデルを利用する処理とが実行される。以下、第1の実施形態と同様に、学習済みモデルが、学習済みモデル生成装置で生成されて、X線CT装置1内に保管される場合を例にして説明する。
【0087】
図11は、第3の実施形態におけるAIを用いた学習の一例を説明するための図である。
図11は、
図6と同様に、AIを用いた深層学習を想定したブロック図を示す。
【0088】
第3の実施形態における学習済みモデルを生成する処理では、
図11に示すように、まず、学習済みモデル生成装置は、過去に被検体に対してX線を利用したTI法におけるスキャン及び本スキャンを実行したときに得られたデータセット601及び611を入力する。データセット601及び611は、過去に取得されたTI法におけるスキャン時の造影剤の注入量及び濃度変化情報(CT値のTI法におけるスキャン時のピークCT値PkT、ピーク時間tT、面積ArT)、及び、本スキャン時の濃度変化情報(本スキャン時のピークCT値PkA、ピーク時間tA、面積ArA)が、本スキャン時の造影剤の注入量ごとに分類されたデータを含む。例えば、
図11の(a)に示すデータセット601は、本スキャン時の造影剤の注入量が「10ml」である、過去に被検体に対してX線を利用したTI法におけるスキャン及び本スキャンを実行したときに得られたデータを含む。また、例えば、
図11の(b)に示すデータセット611は、本スキャン時の造影剤の注入量が「12ml」である、過去に被検体に対してX線を利用したTI法におけるスキャン及び本スキャンを実行したときに得られたデータを含む。また、データセット601及び611は、第1の実施形態におけるデータセット501と同様に、例えば、過去に取得された造影剤が被検体のROIに到達するまでに通過する臓器の体積に関する情報、及び、被検体に関するその他の情報等を含む。
【0089】
そして、学習済みモデル生成装置は、データセット601を学習用データセット602に加工し、データセット611を学習用データセット612に加工する。学習用データセット602及び612に含まれる情報は、例えば学習用データセット502に含まれる情報と同様であってもよい。
【0090】
学習済みモデル生成装置は、AIのアルゴリズムとして複数の学習用プログラム603及び613を有する。学習済みモデル生成装置は、学習用プログラム603を用いて、学習用データセット602から、本スキャン時の造影剤の濃度変化情報のパターン等を学習して、後述の入力データ605の入力を受けて本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定する後述の出力データ606を出力するように機能付けられた学習済みモデル604を生成する。同様に、学習済みモデル生成装置は、学習用プログラム613を用いて、学習用データセット612から、本スキャン時の造影剤の濃度変化情報のパターン等を学習して、後述の入力データ615の入力を受けて本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定する後述の出力データ616を出力するように機能付けられた学習済みモデル614を生成する。例えば、生成した複数の学習済みモデル604及び614は、X線CT装置1内に保管される(メモリ41に記憶される)。メモリ41内の複数の学習済みモデル604及び614は、例えば、推定機能446により読み出し可能である。なお、学習用プログラム603及び613は、同一の学習用プログラムであってもよい。
【0091】
なお、
図11では、本スキャン時の造影剤の注入量が「10ml」と「12ml」の2つの学習済みモデルを生成する場合について説明したが、後述する学習済みモデル624を含む、3以上の学習済みモデルを生成してもよい。また、本スキャン時の造影剤の注入量は、例えば「9ml以上11ml未満」のように、特定の範囲を含むデータであってもよい。なお、第3の実施形態においても、学習済みモデル生成装置は、被検体の情報毎に、又はROI毎に、複数の学習済みモデル604及び614を生成し、推定機能446は、生成した複数の学習済みモデル604及び614を利用して、入力データ605から、被検体Pの本スキャン時に必要な造影剤の注入量を推定してもよい。
【0092】
図12は、第3の実施形態における学習済みモデルを利用した処理の一例を示す図である。学習済みモデルを利用する処理では、
図12に示すように、推定機能446は、被検体Pに対してX線を利用したTI法におけるスキャンを実行したときに得られた入力データ605を入力する。第3の実施形態において、入力データ605は、スキャン結果取得機能444により取得された、TI法におけるスキャン時の造影剤の注入量及び濃度変化情報(TI法におけるスキャン時のピークCT値PkT、ピーク時間tT、面積ArT)を含む。更に、入力データ515は、例えば、条件取得機能445により取得された、臓器の体積に関する情報、及び、被検体に関するその他の情報等を含む。
【0093】
そして、推定機能446は、メモリ41から読み出した複数の学習済みモデル604、614及び624を用いて、入力データ605から、各学習済みモデルに対応する注入量ごとに、ピークCT値等の濃度変化情報を推定し、推定した結果を出力データ606、616及び626として出力する。例えば、表示制御機能447は、学習済みモデル604による出力データ606として、造影剤の注入量「10ml」及びピークCT値「280HU」、学習済みモデル614による出力データ616として、造影剤の注入量「12ml」及びピークCT値「310HU」、及び学習済みモデル624による出力データ626として、造影剤の注入量「14ml」及びピークCT値「320HU」を含む画面をディスプレイ42に表示させる。これにより、操作者は最適なピークCT値に対応する造影剤の注入量を選択することができる。
【0094】
なお、例えば、条件取得機能445が、目標CT値を取得した場合、推定機能446は、目標CT値を満たす出力データを特定してもよい。例えば、目標CT値が「300HU」である場合、推定機能446は、目標CT値を上回る出力データとして、出力データ616及び626を特定する。そして、推定機能446は、各出力データのうち、対応する造影剤の注入量が最も少ない出力データ616を、目標CT値を満たす出力データを特定してもよい。この場合、例えば、表示制御機能447は、学習済みモデル614による出力データ616に含まれるピークCT値「310HU」、及び、当該学習済みモデル614に対応する造影剤の注入量「12ml」を含む画面をディスプレイ42に表示させる。
【0095】
なお、本実施形態においても、学習済みモデル生成装置は、TDCの形状そのものを学習させてもよい。すなわち、学習済みモデル生成装置は、過去に得られた、本スキャン時におけるTDCを含むデータセット601及び611を入力し、学習用プログラム603及び613を用いて、データセット601及び611から学習済みモデル604及び614を生成してもよい。この場合において、例えば、条件取得機能445が、本スキャン時の造影剤がROIに流れてきたときの造影剤の量に相当する面積ArAについて期待される形状を取得した場合、推定機能446は、出力データ606、616及び626に含まれる面積ArAの形状と、期待される形状との合致度を算出してもよい。
【0096】
以上説明したように、第3の実施形態に係るX線CT装置1は、TI法により計測された結果に基づいて、本スキャン時において最適な造影剤の注入量を特定することができる。
【0097】
(第4の実施形態)
これまで第1乃至第3の各実施形態について説明したが、上述した各実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0098】
上述した実施形態では、モダリティ装置としてX線CT装置1を例にして説明したが、CT撮影だけでなく、造影剤を用いて撮影するMRI装置等のモダリティ装置にも適用することができる。
【0099】
また、上述した実施形態では、X線CT装置1が各種処理を実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、医用画像処理装置3において各種処理が実行される場合であってもよい。
図13は、第4の実施形態に係る医用画像処理装置の構成の一例を示す図である。
【0100】
例えば、
図13に示すように、医用画像処理装置3は、入力インターフェース310と、ディスプレイ320と、記憶回路330と、処理回路340とを有する。
【0101】
入力インターフェース310は、種々の設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。
【0102】
入力インターフェース310は、処理回路340に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路340に出力する。なお、本明細書において入力インターフェース310は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路340へ出力する処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0103】
ディスプレイ320は、処理回路340に接続され、処理回路340から出力される各種情報及び各種画像データを表示する。例えば、ディスプレイ320は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。例えば、ディスプレイ320は、操作者の指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、種々の表示画像、処理回路350による種々の処理結果(例えば、散布図や、解析画像など)を表示する。
【0104】
記憶回路330は、処理回路340に接続され、各種データを記憶する。例えば、記憶回路330は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。例えば、記憶回路330は、X線CT装置1又は画像保管装置2から受信したCT画像データなどを記憶する。また、記憶回路330は、処理回路340によって実行される各処理機能に対応するプログラムを記憶する。
【0105】
処理回路340は、入力インターフェース310を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用画像処理装置3が有する各構成要素を制御する。例えば、処理回路340は、プロセッサによって実現される。本実施形態では、処理回路340は、入力インターフェース310から出力されるCT画像データを記憶回路330に記憶させる。また、処理回路340は、記憶回路330からCT画像データを読み出し、ディスプレイ320に表示する。
【0106】
そして、処理回路350は、
図13に示すように、制御機能341、画像再構成機能343、スキャン結果取得機能344、推定機能346及び表示制御機能347を実行する。制御機能341は、医用画像処理装置300の全体を制御する。なお、画像再構成機能343は、上述した画像再構成機能443と同様の処理を実行する。スキャン結果取得機能344は、上述したスキャン結果取得機能444と同様の処理を実行する。条件取得機能345は、上述した条件取得機能445と同様の処理を実行する。推定機能346は、上述した推定機能446と同様の処理を実行する。表示制御機能347は、上述した表示制御機能447と同様の処理を実行する。
【0107】
上述した実施形態では、X線CT装置1及び医用画像処理装置3による独立した処理について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、X線CT装置1と医用画像処理装置3とが協働する医用画像処理システムとして機能する場合であってもよい。かかる場合には、X線CT装置1によって収集されたCT画像データが、医用画像処理装置3に転送され、医用画像処理装置3において、種々の処理が実行される。
【0108】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、メモリ41又は記憶回路330に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0109】
なお、
図4においては、単一のメモリ41が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。また、
図13においては、単一の記憶回路330が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数のメモリ41を分散して配置するとともに、処理回路44が個別のメモリ41から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、例えば、複数の記憶回路330を分散して配置するとともに、処理回路340が個別の記憶回路330から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ41又は記憶回路330にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0110】
また、処理回路44及び処理回路340は、ネットワークを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路44は、メモリ41から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、X線CT装置1とネットワークNWを介して接続された外部のワークステーションやクラウドを計算資源として利用することにより、
図4に示す各機能を実現する。また、例えば、処理回路340は、記憶回路330から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、医用画像処理装置3とネットワークNWを介して接続された外部のワークステーションやクラウドを計算資源として利用することにより、
図13に示す各機能を実現する。
【0111】
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0112】
また、上述した実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0113】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、TI法により計測された結果を有効に活用することができる。
【0114】
また、TI法における造影剤の濃度変化情報に基づいて、本スキャン時の造影剤の濃度変化情報を推定する構成について説明したが、実施の形態はこれに限られない。例えば、TI法におけるCT値がROIにおける造影剤の濃度に相当することに着目して、推定機能446は、TI法における濃度変化情報に基づいて、造影剤以外の検査薬や治療薬等の薬剤の濃度を推定してもよい。また、例えば、TI法におけるTDCのグラフが示す面積ArT及び本スキャン時のTDCのグラフが示す面積ArAが、ROIにおける造影剤の量に相当することに着目して、推定機能446は、TI法における濃度変化情報に基づいて、造影剤以外の検査薬や治療薬等の薬剤の量を推定してもよい。これにより、抗がん剤やがんマーカといったその他の薬剤の投与量の推定など、造影剤の濃度変化情報や注入量の推定以外の用途にも、TI法により計測された結果を有効に活用することができる。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0116】
1 X線CT装置
3 医用画像処理装置
341 制御機能
343 画像再構成機能
344 スキャン結果取得機能
345 条件取得機能
346 推定機能
347 表示制御機能
441 スキャン制御機能
442 前処理機能
443 画像再構成機能
444 スキャン結果取得機能
445 条件取得機能
446 推定機能
447 表示制御機能