IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サーティ エス.ピー.エー.の特許一覧

特許7313824音響及び電子製品全般内のサブコンポーネントとして使用するための複合多層ろ過構造
<>
  • 特許-音響及び電子製品全般内のサブコンポーネントとして使用するための複合多層ろ過構造 図1
  • 特許-音響及び電子製品全般内のサブコンポーネントとして使用するための複合多層ろ過構造 図2
  • 特許-音響及び電子製品全般内のサブコンポーネントとして使用するための複合多層ろ過構造 図3
  • 特許-音響及び電子製品全般内のサブコンポーネントとして使用するための複合多層ろ過構造 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】音響及び電子製品全般内のサブコンポーネントとして使用するための複合多層ろ過構造
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/36 20060101AFI20230718BHJP
   B01D 39/08 20060101ALI20230718BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20230718BHJP
   H04R 1/08 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
B01D71/36
B01D39/08 Z
B01D39/16 C
B01D39/16 E
H04R1/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018529661
(86)(22)【出願日】2016-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-09
(86)【国際出願番号】 IB2016000707
(87)【国際公開番号】W WO2017134479
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2018-12-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】102016000011757
(32)【優先日】2016-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512200310
【氏名又は名称】サーティ エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ルチニャーノ,カーマイン
(72)【発明者】
【氏名】ムジチュク,アナ
(72)【発明者】
【氏名】グリモルディ,エリーザ
(72)【発明者】
【氏名】ミエッタ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】カノニコ,パオロ
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】増山 淳子
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-525243(JP,A)
【文献】特表2013-526172(JP,A)
【文献】特開2014-31412(JP,A)
【文献】特開平10-165787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D61/00-71/82
B01D39/00-41/04
H04R1/00-1/06
H04R1/12-1/14
H04R1/42-1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロンオーダの粒子のろ過効率及びろ過媒体の透過性を必要とするろ過用途に使用するための、また、音響及び電子製品、マイクロフォン及びスピーカ内のサブコンポーネントとして使用するための複合多層ろ過構造の製造方法であって、少なくとも第1のポリマーナノ多孔質膜層及び少なくとも第2の合成単繊維精密織物層を備え、前記第1のポリマーナノ多孔質膜層をポリマーフィルムの熱機械的伸張によって作り、その後、前記第1のポリマーナノ多孔質膜層、前記第2の合成単繊維精密織物層に積層法によって結合、それにより、1~2μmの粒子の、また加圧液体の通過を防止するように適合される一体ろ過媒体を提供することを特徴とする、複合多層ろ過構造の製造方法。
【請求項2】
前記複合多層ろ過構造において、前記ポリマーナノ多孔質膜層の膜は、結合面が前記加圧液体の流入方向と直角方向を向くように結合されることを特徴とする、請求項1に記載の複合多層ろ過構造の製造方法。
【請求項3】
前記ポリマーナノ多孔質膜層は、前記合成単繊維精密織物層に、前記合成単繊維精密織物層の両面で結合されることを特徴とする、請求項1に記載の複合多層ろ過構造の製造方法。
【請求項4】
前記ポリマーナノ多孔質膜層は、2つの前記合成単繊維精密織物層の間に積層されることを特徴とする、請求項1に記載の複合多層ろ過構造の製造方法。
【請求項5】
前記合成単繊維精密織物層は、2000μm~5μmの開口範囲の、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリビニリデンフルオライト(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、から選択される材料で作られる正方形メッシュ開口を有する合成単繊維精密織物層であることを特徴とする、請求項1に記載の複合多層ろ過構造の製造方法。
【請求項6】
前記第1のポリマーナノ多孔質膜層は、PTFE及びPTFEの誘導体、PVDF、ナイロン6(PA6)、ナイロン612(PA6/12)、ポリアラミド、ポリウレタン樹脂(PUR)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリスチレン(PS)、導電性ポリマー、及び/または、キトサン、ケラチン、コラーゲン、ペプチドから選択されるバイオポリマーから選択される、100nm~3μmのメッシュ開口範囲のポリマー材料からなることを特徴とする、請求項1に記載の複合多層ろ過構造の製造方法。
【請求項7】
前記結合は、ホットメルト結合、熱可塑性結合、ホットカップリング、超音波結合から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の複合多層ろ過構造の製造方法。
【請求項8】
前記複合多層ろ過構造において、前記合成単繊維精密織物層の織物は、延伸PTFE(ePTFE)膜によってコーティングされたポリエステル織物であり、前記織物は、85μmのメッシュ開口;60%の開口面積;90スレッド/cmのセンチメートル密度;24μmのスレッド径;透気度<10000l/ms@200Pa;接触角(CA)(Fibrodatによる)>100°を有し、前記ePTFE膜は、8μmの厚さ、30l/ms@200Paの透気度、及び0.3~0.5μmの孔サイズを有することを特徴とする、請求項1に記載の複合多層ろ過構造の製造方法。
【請求項9】
前記複合多層ろ過構造は、携帯電話のマイクロフォンとスピーカとの間に配置されると、1.5dBより小さい音響減衰または損失を有することを特徴とする、請求項1に記載の複合多層ろ過構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響及び電子製品全般内で、特にまた排他的にではなく使用される複合多層ろ過構造に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、音響用途において、音は、多孔質表面を通過する空気によって、あるいは、フィルムまたは膜等の非常に薄い材料の振動によって伝達される。
【0003】
通過する空気による伝達は、一般に、例えば、マイクロフォンまたはラウドスピーカ、あるいは、電子装置全般を、水または他の流体から保護しないが、望ましくない固体粒子から保護するために設計された織物材料を通して起こる。
【0004】
振動による音伝達は、次に、ラウドスピーカまたは電子装置全般において典型的であり、また、水及び液体貫入から保護するために同様に設計されなければならない。
【0005】
通過する空気による音伝達が、振動音伝達よりよく、それにより、理想的なろ過媒体が、織物の音響特徴及び膜の保護特性を有するべきであるということが更に知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の狙いは、複合ろ過構造を提供することであり、複合ろ過構造は、複合ろ過構造が適用される電子装置について、非常に良好な音響特徴ならびに最適な保護特徴を有する。
【0007】
先に述べた狙いの範囲内で、本発明の主要な目的は、先に示したタイプのろ過構造を提供することであり、そのろ過構造は、考えられる液体の貫入または漏洩に抗する満足のいく能力と共に、非常に正確でかつ選択的なろ過を可能にする。
【0008】
本発明の別の目的は、先に示したタイプのろ過構造を提供することであり、そのろ過構造は、非常に長い、更に構造が適用される音響コンポーネントの動作寿命に等しい動作寿命を有する。
【0009】
本発明の更に別の目的は、先に示したタイプの複合構造を提供することであり、その複合構造は、固体粒子及び液体に対するその良好な保護特徴以外に、現在使用されているアプローチの音響インピーダンスより低い音響インピーダンスを有して、音響用途において適用されるだけでなく、益々小さな粒子に対して構造が関連デバイスを保護すべきである用途であって、その用途について、保護媒体または織物が、相応して益々小さなメッシュ開口を有するべきである、用途においても適用される。
【0010】
本発明の更に別の目的は、先に示したタイプの複合構造を提供することであり、その複合構造は、非常に単純な方法でハンドリングされ処理されて、所望の用途にとって通常必要な小さなサイズの部品を作ることができる。
【0011】
本発明の更に別の目的は、先に示したタイプの複合構造を提供することであり、その個々のろ過コンポーネントを容易に作ることができ、ろ過コンポーネントは、次に、ろ過コンポーネントを音響コンポーネント及びそのケーシングに結合させるための結合手段を容易に備えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、先に述べた狙い及び目的、ならびに、以降でより明らかになることになる更に別の目的は、請求項1による複合ろ過構造によって達成される。
【0013】
本発明による複合ろ過構造の更なる特徴は、従属請求項において規定される。
【0014】
本発明による複合ろ過構造の更なる詳細及び利点は、添付略図において、制限的ではなく指示的な例として示される本発明の現在のところ好ましい実施形態の詳細な開示から以降でより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による複合ろ過構造の現在のところ好ましい実施形態の概略断面図である。
図2】本発明による複合ろ過構造の主要な態様による、織物及び膜を備える積層式または結合式材料の音響特徴を示す図である。
図3】いわゆる「水侵入(water intrusion)」試験の結果を示す更なる図である。
図4】本発明による複合ろ過構造の試料のSEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
先に述べた図を参照すると、本発明による複合ろ過構造は、第1の主要なコンポーネントとして、更に「メッシュ(mesh)」または開口(例えば、合成単繊維で作られ、正方形メッシュ構成を有する)を含む精密織物Tを備える。
【0017】
織物全体をとおして一貫性がある、非常に均等なメッシュ開口構造は、その高い機械的強度及び処理能力と共に、こうした精密単繊維織物材料Tをろ過基本材料として理想的な解決策にする。
【0018】
これらの非常に均等な織物材料は、従来の多繊維織物に比べて、その重量及び厚さ、表面特性、及び温度特徴に関して一定の特性を有する。
【0019】
特徴的な均等性は、バッチからバッチへ織物ロール全体に沿って一定に保持される。
【0020】
更に、本発明による織物Tは、非常に狭い製作公差で作られ、それにより、一貫性のあるろ過効率及び関連する特有の空気流透過性を有するろ過媒体を提供する。
【0021】
一定かつ一貫性のある特徴は、織り作業について使用される単繊維材料の均等な開口または孔サイズの結果に過ぎない。
【0022】
更に、主題の精密織物材料は、大気作用物質、水、及び湿気に対する非常に良好な抵抗を有し、非常に安定性がありかつ再現性のある品質で、工業規模で生産することができる。
【0023】
より具体的には、本発明で使用される精密織物は、非常に高い弾性モジュールを有する糸から始めて作られ、それにより、精密織物Tはかろうじて変形可能な材料であることになり、それは、例えば、本発明の意図される音響用途にとって非常に重要である。
【0024】
同様に、商業的に入手可能なろ過構造を構成する材料のほとんどと異なって、非常に低い「クリープ(CREEP)」または関連する非常に低い「応力緩和(STRESS RELAXATION)」を有するこれらの織物の特徴的な特性は、こうした用途について非常に重要である。
【0025】
本発明の主要な態様は、本発明が、2つ以上の結合式または積層式材料層を含む複合ろ過システムを提供し、材料層のうちで、少なくとも1つの層が、述べたように、合成単繊維正方形メッシュまたは開口精密織物MFで作られ、少なくとも別の層または第2の基本コンポーネントが、透気性マイクロまたはナノ多孔質膜Mからなることである。
【0026】
前記膜Mは、望ましくないいずれの粒子も拘束しながら、膜Mを通って空気が流れることを可能にし、一方、織物Tは、そのろ過機能を十分に実施しながら、所望の構造的抵抗または強度を膜Mに提供する。
【0027】
本出願人によって実施される試験から、音響分野における本発明の複合ろ過構造の特定の用途について、膜M(または多孔質フィルム)が、200Paの圧力損失において5~150l/msの透気度;2~60μmの厚さ、及び150ナノメートル~3μmの典型的な孔サイズを有するべきであることが見出された。
【0028】
本発明によれば、膜Mは、反応性ポリウレタン(PU:reactive polyurethane)結合、超音波(US:ultrasound)積層、及び他の結合方法等の幾つかの積層または結合方法によって単繊維織物Tに結合され、それにより、膜M及び支持織物Tを一体ユニットにして、本発明の更なる主要な態様に従って、単一ろ過媒体または複合構造を提供する。
【0029】
述べたように、織物Tは、そのろ過機能を実施しながら、必要とされる構造的強度を膜Mに提供する。
【0030】
本発明の更なる態様によれば、織物Tの両側または両面に膜M層を堆積させること、及び/または、前記膜を更なる織物Tに積層または接続し、それにより、膜Mが織物T内に含まれる状態で織物Tの「サンドイッチ(sandwich)」を提供することが同様に可能である。
【0031】
図1を参照すると、本明細書に示す複合構造は、例えば、2つの層を備え、2つの層は、好ましくはポリエステルで作られた合成単繊維精密織物Tの下部層、及び、好ましくは、例えば、開始フィルムが適切に伸張される伸張プロセスによってPTFEで作られる、あるいは、同じプロセスまたはエレクトロスピニングプロセスによってPVDFで作られる、「高い(high)」透気度を有するナノ多孔質膜Mの上部層である。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、織物Tの機械的特性を最適化するため、膜Mは、外部に配置される、すなわち、加圧液体L(図1)と接触する、一方、織物Tは、内部に配置され、それにより、特に、織物T自体の単繊維MFに作用する、加圧液体Lによって加えられる力に等しいまたはそれと逆の反応に有利に働く。
【0033】
これに関連して、織物Tのメッシュサイズを減少させることによって、膜Mの剛性を増加させ、それにより、前記膜のその使用中における変形をより減少させsることが可能となることが明らかになるべきである。しかし、これに関連して、多数の単繊維MFについて、単繊維MFの直径がプリセットされる場合、織物Tが、構造の重量の増加をもたらすことになることが指摘されるべきである。
【0034】
本発明の基本的な狙いは、空気通過及び媒体振動である先に述べた2つの音伝達機構による最適化された音伝達を提供することであり、織物Tの重量の増加は、結果として、音響性能の低下をもたらすことになる。
【0035】
図2を参照すると、図2は、述べるように、本発明による織物+膜の積層式材料の音響特徴を示す図を示す。
【0036】
この図は、前記マイクロフォン自体、更に、乾燥状態における複合構造の「ダイカット(die-cut)」部分、更に、適切な水侵入試験を実施した後の複合構造のダイカット部分の特徴付け(ベースライン)のために使用されるマイクロフォンの周波数応答を特に示す。
【0037】
述べた3つ全ての場合において、所与の音圧レベル、この場合、94dBの音を放出する同じスピーカが使用される。
【0038】
「ベースライン」と第2の曲線との間のΔ(デルタ)から、マイクロフォンとスピーカとの間における本発明の複合構造の介在による、音響減衰または挿入損失を、相応して決定することが可能であることになる。
【0039】
図2は、同様に、2つの曲線が全く同じ構成を有すること、及び、減衰値が非常に減少し、通常、1.5dB未満であることを示す。
【0040】
同様に、第2の曲線と第3の曲線を比較することによって、先に述べた水侵入試験の結果として、材料の考えられる修飾による更なる減衰を決定することが可能である。
【0041】
この特定の場合に、述べたデルタがほぼゼロであり、最適な性能及び水貫入抵抗に対応することになり、その水は、特定の開示される場合に、300mbarの水圧で、30分間、膜(1~6mmの直径を有する試料)の表面に衝当するように強制されることがわかる。
【0042】
図3は、述べるように、水侵入試験の結果を示す図であり、図において、1~6mmの直径を有する複合構造の試料が、200mbarで30分間、水侵入試験を受けた。
【0043】
試験の終りに、本発明の複合構造を通過し易い水滴の存在の可能性を検出するため、試料表面が観測される。
【0044】
図3の図によって示すように、水を検出することが可能でなかったため、試験は、30分になる以前に全く中断されなかった。
【0045】
本発明の複合構造の試料のSEM画像である図4から、ポリエステル精密織物T上に堆積されたPTFEで作られたナノ多孔質膜Mを見ることが可能である。織物上での膜の担持ポイントは、明るい色調を有する領域として明瞭に見られ得る。
【0046】
本発明によれば、膜を構成する有機ポリマーは、PTFEまたはPTFEの派生物、PVDF、PA6、PA6/12、ポリアラミド、PUR、PES、PVA、PVAC、PAN、PEO、PS、ならびに、導電性ポリマー(ポリチオフェン)、フッ素化ポリマー、バイオポリマー等から選択することができる。
【0047】
前記バイオポリマーは、キトサン、ケラチン、コラーゲン、ペプチド等を含むことができる。
【0048】
もちろん、膜Mのメッシュ開口、密度、厚さ、及び透気度、積層済み層の厚さ、及び前記膜Mを構成するポリマーに関する基本織物Tの選択は、意図される特定の用途について必要とされる特徴に基づいて行われることになる。
【0049】
特に、織物/膜の積層式ろ過構造を調査するとき、SAATI(すなわち、本出願の出願人)による織物の選択、及び、膜Mのために使用されるポリマーの選択が使用された。
【0050】
膜及び積層される下位層は、乾燥状態と湿潤状態の両方において小さな音響損失を提供するような圧力損失及び透気度によって最大のろ過効率を達成するように調査された。
【0051】
述べたように、こうした用途のために使用することができる膜は、位相反転、ナノファイバのエレクトロスピニング、ポリマーフィルムの熱機械的伸張等の異なる製作方法によって作ることができる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態において、PTFEであり、PTFEフィルムを熱機械的伸張することによって作られるePTFEの膜が使用されてきた。
【0053】
いずれにしても、主要な態様は、本発明による複合構造の物理的幾何学的特性の態様であり、その複合構造は、200Paの圧力降下について5~150l/msの透気度、2~60μmの厚さ、及び150ナノメートル~3μmの典型的な孔サイズを有するべきである。
【0054】
膜特性は、大きな比表面/高い表面・体積比、小さな孔寸法、高い多孔度、3次元特徴、空気通過に対する高い透過性/低い抵抗、粒子の良好な分離、粉末を拘束する高い能力、改善された物理的・機械的特性、ファイバアクティブエリアに関して自明の「利得(gain)」を提供する特有の機能特性、改善されたろ過特性、及び自明の流れの利点を含む。
【0055】
そのため、改善された性能を有し、特定の用途について機能する織物が、相応して作られる。
【0056】
織物を膜に結合または積層するためのプロセスのパラメータは、異なるろ過特性を有するろ過システムを提供するために変更することができる。
【0057】
本発明に関して実施された実用的な実験的試験において、最も意味のあるパラメータが検出され、関連する試験が、前記パラメータの値を変更しながら、最終製品を最適化するまで繰返されて、孔寸法の均一な分布を提供する、幾何学的に、寸法的に、また構造的に均一なファイバを達成しており、そのファイバは、層の厚さ及び膜孔の平均サイズを調節することによって、制御された高い透過性を保持しながら、マイクロメトリックサイズの粒子のろ過を有し、高いろ過効率を有する。
【0058】
試料は、以下の項目で特徴付けられた:
-透気度の測定値によって作られる積層式材料の流れ抵抗;
-音響インピーダンスを測定することによる音通過抵抗;
-所与の条件における水侵入抵抗;
-水侵入試験後の音通過抵抗。
【0059】
PTFEポリマー膜によってコーティングされたポリエステル織物の幾つかの試料が作られ、特徴付けられた。
【0060】
最も意味のある結果は、ここで以下に示される:
ePTFE膜によってコーティングされたポリエステル織物
基本織物の特徴
メッシュ開口=85μm
開口エリア60%
センチメートル密度90スレッド/cm
スレッド直径24μm
透気度>10000l/ms@200Pa
CA Fibrodat>100°
開始膜の特性
厚さ:8μm
透気度:30/ms@200Pa
孔サイズ0.3~0.5mm
【0061】
図2は、述べたように、織物+膜の積層式または結合式材料の音響特徴を示す。水侵入試験を実施すると、3つの曲線のデルタから、スピーカとマイクロフォンとの間における複合構造の介在によるdB損失及び複合構造のdB損失を決定することが可能である。
【0062】
非常に重要な利点は、本発明の複合構造が、従来の膜と比較して、高い透過性を達成することを可能にする。
【0063】
更に、本構造は、2μmまでについて99%効率を、したがって、粒子<5μm(ろ過精密織物の現在の限界である)について高いろ過効率を有するろ過媒体を作ることを可能にする。
【0064】
更に、本発明の複合ろ過構造は、ろ過織物上に液体を拘束する改善された能力を有する。
【0065】
本発明が、意図される狙い及び目的を完全に達成することが見出された。
【0066】
実際には、本発明による複合構造は、良好な液体拘束能力と連携して精密織物に典型的であるろ過精度及び選択性を提供する。
【0067】
前記構造は、膜だけの音響インピーダンスより低い音響インピーダンスを有する(織物が、現在、粉末及び液体に対する携帯電話の内部部品の保護機能を提供し、それにより、通過する音を減少させないよう、低いインピーダンスを有する益々小さなメッシュ開口が必要とされる、音響用途についての主要な特徴)。
【0068】
更に、本複合構造は、構造であって、単繊維精密織物によって適切に支持されない場合、ろ過システムに典型的である流れの通過に耐えることができない、構造の不充分な機械強度による従来の膜の使用制限を克服することを可能にする。
【0069】
本発明の複合構造の更に別の利点は、複合構造が、例えば、「ダイカッティング(die-cutting)」によって容易に機械加工されて、複数のろ過モジュール式ユニットを提供することができ、複数のろ過モジュール式ユニットと、例えば、両面ポリマーストリップであって、適切に輪郭付けされ、構造化され、ダイカット済みの各ろ過モジュール式ユニットに結合される、両面ポリマーストリップとを容易に一体にすることが可能であり、それにより、各ろ過モジュールを、適切なガスケットの介在によって、保護される音響コンポーネントに、また、関連する電子デバイス、例えば、モバイルフォン、タブレット、またはコンピュータのケーシングまたは外側ハウジングに接着する/組立てることを可能にしながら、複合構造のアクティブ部分内での複合構造の発汗特性を提供することである。
【0070】
更に、先の開示を通して、本発明によるろ過構造の主要なパラメータの特定の値が示されたが、これらの値は、用語「約(about)」によって修飾可能であると考えられるべきである。
【0071】
本発明の複合ろ過構造を実際に作るとき、使用される材料ならびに付随するサイズ及び形状は、所定の要件に応じて任意であり得る。
図1
図2
図3
図4