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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】電気的接触子及び電気的接続装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20230718BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20230718BHJP
   H01R 13/24 20060101ALI20230718BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R31/26 J
H01R13/24
H01L21/66 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019046368
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020148627
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】福士 貴紘
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165670(JP,A)
【文献】特表2017-526920(JP,A)
【文献】特開2017-102073(JP,A)
【文献】特開2012-181096(JP,A)
【文献】特開2010-204082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
G01R 31/26
H01R 13/24
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルスプリングを介して両端を電気的に接続する接触子において、
第1のコイルスプリング部と、
上記第1のコイルスプリング部の内部に存在する第2のコイルスプリング部と、
第1筒部と第2筒部とを有する筒状部材の第1のプランジャーであって、上記第2筒部は、先端側に位置する外側コイル係止部と内端側に位置する内端部とを有し、上記内端部を上記第1のコイルスプリング部に内挿すると共に、上記外側コイル係止部で上記第1のコイルスプリング部の一方の端部を固定し、上記第1筒部は、その先端部を第1接触対象に接触させる第1のプランジャーと、
上記第1のプランジャーに内挿されて第1接触対象に接触する棒状で先端が尖った第1棒部と、上記第1棒部の外径よりも大きく、上記第2のコイルスプリング部の先端側への移動を規制する太径部と、上記太径部の外径よりも小さく、上記第2のコイルスプリング部に内挿されると共に、上記第2のコイルスプリング部の一方の端部を固定する第2棒部とを有する第2のプランジャーと、
上記第1のコイルスプリング部の他方の端部と、上記第2のコイルスプリング部の他方の端部とを固定し、第2接触対象に接触する第3のプランジャーと
を備え、
上記第2のプランジャーは、上記第2棒部の長さが、上記第1棒部の長さよりも長く、
上記第2のプランジャーの上記太径部の先端部が、上記第1のプランジャーの上記第2筒部の内端部と接触可能であり、
上記第2のプランジャーの上記太径部は、その外周が上記第1のコイルスプリング部の内側に位置し、外径が上記第1のコイルスプリング部の内径よりもわずかに小さくなっており、
上記第2のプランジャーの上記太径部の先端部は、上記第1棒部の外周面と上記太径部の外周面との間の段差を繋ぐ面であって、上記太径部側に行くほど径が大きくなるテーパ面を有しており、
上記第1のプランジャーの上記第2筒部の内端部は、上記第2のプランジャーの上記太径部の先端部のテーパ面に合わせて先端側に行くほど径が小さくなるテーパ面を有している
ことを特徴とする電気的接触子。
【請求項2】
上記第3のプランジャーと上記第1のコイルスプリングの少なくとも一方は、それらの接触面に絶縁膜が被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の電気的接触子。
【請求項3】
上記第1のプランジャーの上記第2筒部と上記第1のコイルスプリングの少なくとも一方は、それらの接触面に絶縁膜が被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の電気的接触子。
【請求項4】
被検査体の電極端子に接触して試験を行う電気的接続装置において、
上記被検査体の電極端子に対応する位置に配設され、上記電極端子に電気的に接触する電気的接触子を備え、
上記電気的接触子として請求項1~のいずれかに記載の電気的接触子を用いたことを特徴とする電気的接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的接触子及び電気的接続装置に関し、例えば、被検査体の電気的特性を検査するために、被検査体の電極に接触させる電気的接触子及び複数の電気的接触子を有する電気的接続装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、集積回路の製造工程では、パッケージされた集積回路について電気的特性の検査(例えば、パッケージテストやファイナルテストなど)が行なわれる。そのような検査では、複数の電気的接触子(「接触子」、「プローブ」等とも呼ぶ。)を備える電気的接続装置(いわゆるテストソケット、ソケットボードなどと呼ばれている。)に、被検査体である集積回路が装着される。集積回路を装着された状態において、電気的接続装置に設けられている各電気的接触子は、一端が集積回路の各電極端子と電気的に接触し、他端が電気的接続装置に設けられている配線基板に電気的に接触する。この配線基板には検査装置(以下では、「テスタ」とも呼ぶ。)が接続されており、検査装置から試験に必要な電気信号や電力が電気的接触子を介して集積回路に供給されることにより、被検査体の電気的特性が検査される。
【0003】
電気的接触子としては、導電性の圧縮コイルスプリング(以下、単に「コイルスプリング」とも呼ぶ。)のコイル中心軸方向の両端に導電性の端子(「プランジャー」とも呼ぶ。)が接続され、両端子がコイル中心軸方向に伸縮可能に形成されていると共に、両端子間がコイルスプリングを介して導通しているものが知られている。以下では、電気的接触子における端子の伸縮方向を「軸方向」と呼ぶ。また、軸方向において他方の端子側を内側と表現し、他方の端子と反対側を外側または先端側として表現する。両端子は、コイルスプリングの弾性力に抗して軸方向内方に押し込むことが可能であると共に、コイルスプリングの弾性力により軸方向外方に弾性的に付勢されるように構成されている。
【0004】
このような電気的接触子として、例えば特許文献1には、1つの導電性を有するコイルスプリングのコイル中心軸方向の両端にそれぞれ導電性を有する端子(導電性針状体)が結合されて、両端子がコイルスプリングを介して導通する電気的接触子が開示されている。両端子は軸方向内端側に延長されている軸部をそれぞれ有しており、それら軸部の対向する内端同士の間の外周に位置する部分のコイルスプリングを密巻にすることにより、コイルスプリングに電流が流れる時に生じるインダクタンスの影響を小さくしている。
【0005】
また、このような電気的接触子において、一方の端子が、筒状部分を有する端子部材(筒状端子部材)と、その筒状部分の貫通孔に挿通される棒状部分を有する端子部材(棒状端子部材)とで構成されているものがある。
【0006】
例えば特許文献2には、導電性を有する端子を両端に有し、その一方の端子(第1ピン部)が、円筒状の部材(第2電極部材)と、その貫通孔に挿入される棒状の部分(延在部)を有する部材(第1電極部材)とで構成されている接触子が開示されている。第1電極部材には、延在部の軸方向内端に延在部の外径より大きい外径を有する鍔部が設けられている。そして、他方の端子(第2ピン部)の内端と第1電極部材の鍔部内端との間に第1のコイルスプリングが配置され、第1電極部材の鍔部の外端と第2電極部材の内端との間に第2のコイルスプリングが配置されており、第1電極部材と第2電極部材が互いに変位可能に構成されている。第2電極部材は、軸方向外端から軸方向内方に押し込まれるに従って回転するように構成されている。第1ピン部が被検査体の電極端子と接触していない状態では、軸方向外方への突出量は、第2電極部材の方が第1電極部材よりも大きくなっており、第1電極部材及び第2電極部材が被検査体の電極端子に接触して押し込まれている状態では、被検査体の電極端子を押す接触圧は、第2電極部材の方が第1電極部材よりも小さくなっている。このように構成された電気的接触子は、第2電極部材には回転して被検査体の電極表面の酸化物や有機物を除去する機能が割り当てられ、第1電極部材には被検査体の電極との接触圧を確保する機能が割り当てられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-239349号公報
【文献】特開2013-8628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、コイルスプリングを介して両端の端子が導通する電気的接触子においては、一方の端子が筒状端子部材と棒状端子部材とを備え、それら端子部材に複数のコイルスプリングが作用している場合、各端子部材と、被検査体の電極端子との接触状態や、各端子部材の押し込まれ状態によって導電経路が変化したり、インダクタンスが大きくなったりして、測定に影響が出る場合がある。
【0009】
例えば、特許文献2に示されている接触子の場合、第1電極部材が被検査体の電極端子に接触している場合は、第1電極部材の延在部、鍔部を経て第1コイルスプリングを通り第2ピン部に到る導通経路が主に生じやすいが、第1電極部材の延在部の先端(軸方向外端)が何らかの理由(例えば位置ずれや、酸化物の影響等)で被検査体の電極端子と導通し難い場合は、第2電極部材、第2コイルスプリング、鍔部、第1コイルスプリング、第2ピン部という導電経路が生じる可能性がある。この後者の導電経路においては、二つのコイルスプリングを通るため、導電距離が長くなり、またリアクタンスの影響も大きくなる。
【0010】
また、各端子部材と、被検査体の電極端子との接触状態や、各端子部材の押し込まれ状態によって、複数のコイルスプリングから端子部材に加わる力が変化するため、端子部材に加わる力が弱い場合には、被検査体の電極と端子部材との接触圧が弱くなり接触位置がズレてしまう虞がある。
【0011】
例えば、特許文献2に記載された接触子の場合、第2電極部材には、第1コイルスプリングと第2コイルスプリングが直列接続することにより合成された弾性力が加わるため、これらコイルスプリングの合成バネ定数は単独のバネ定数より小さくなる。そして、第1電極部材と第2電極部材の両方が被検査体の電極端子に接触して押し込まれている状態では、第1コイルスプリングが第1電極部材によっても押し込まれるため、第2電極部材が被検査体の電極を押圧する力はさらに小さくなる。また、第1電極部材には、第1コイルスプリングの弾性力が加わるが、第1電極部材と第2電極部材の両方が被検査体の電極端子に接触して押し込まれている状態では、第2電極部材が第2コイルスプリングを介して第1電極部材の鍔部を押し込むため、第1電極部材が被検査体の電極を押圧する力は小さくなる。
【0012】
また、特許文献2に記載された接触子においては、第1電極部材の接触圧は、第2電極部材の接触圧より大きくなるように設定されてはいるが、接触圧が比較的小さい第2電極部材が被検査体の電極端子に対して位置ズレを起こしてしまうと、第1電極部材の延在部が第2電極部材の貫通孔にガイドされているため、接触圧が比較的大きいはずの第1電極部材も被検査体の電極の位置に対して位置ズレを起こしてしまう虞がある。
【0013】
そこで、コイルスプリングを介して両端の端子が導通する電気的接触子であって、少なくとも一方の端子が筒状端子部材と棒状端子部材とを有し、それら端子部材に作用する複数のコイルスプリングを有する電気的接触子において、被検査体の電極端子に対して安定して接触させて、被検査体の電極端子に対する電気的な接続を確実にでき、精度よく被検査体の通電試験を行うことができるようにする電気的接触子及び電気的接続装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するために、第1の本発明に係る電気的接触子は、コイルスプリングを介して両端を電気的に接続する接触子において、(1)第1のコイルスプリング部と、(2)第1のコイルスプリング部の内部に存在する第2のコイルスプリング部と、(3)第1筒部と第2筒部とを有する筒状部材の第1のプランジャーであって第2筒部は、先端側に位置する外側コイル係止部と内端側に位置する内端部とを有し、内端部を第1のコイルスプリング部に内挿すると共に外側コイル係止部で第1のコイルスプリング部の一方の端部を固1筒部は、その先端部を第1接触対象に接触させる第1のプランジャーと、(4)第1のプランジャーに内挿されて第1接触対象に接触する棒状で先端が尖った第1棒部と、第1棒部の外径よりも大きく、第2のコイルスプリング部の先端側への移動を規制する太径部と、太径部の外径よりも小さく、第2のコイルスプリング部に内挿されると共に、第2のコイルスプリング部の一方の端部を固定する第2棒部とを有する第2のプランジャーと、(5)第1のコイルスプリング部の他方の端部と、第2のコイルスプリング部の他方の端部とを固定し、第2接触対象に接触する第3のプランジャーとを備え、第2のプランジャーは、第2棒部の長さが、第1棒部の長さよりも長く、第2のプランジャーの太径部の先端部が、第1のプランジャーの第2筒部の内端部と接触可能であり、第2のプランジャーの太径部は、その外周第1のコイルスプリング部の内側に位置し、外径が第1のコイルスプリング部の内径よりもわずかに小さくなっており、第2のプランジャーの太径部の先端部は、第1棒部の外周面と太径部の外周面との間の段差を繋ぐ面であって、太径部側に行くほど径が大きくなるテーパ面を有しており、第1のプランジャーの第2筒部の内端部は、第2のプランジャーの太径部の先端部のテーパ面に合わせて先端側に行くほど径が小さくなるテーパ面を有していることを特徴とする。
【0015】
第2の本発明に係る電気的接触子は、被検査体の電極端子に接触して試験を行う電気的接続装置において、上記被検査体の電極端子に対応する位置に配設され、上記電極端子に電気的に接触する複数の電気的接触子を備え、上記各電気的接触子として第1の本発明に係る電気的接触子を用いたことを特徴とする電気的接続装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コイルスプリングを介して両端の端子が導通する電気的接触子であって、少なくとも一方の端子が筒状端子部材と棒状端子部材とを有し、それら端子部材作用する複数のコイルスプリングを有する電気的接触子及び電気的接続装置において、各端子部材と被検査体の電極端子との接触状態や、各端子部材の押し込まれ状態に拘わらず、被検査体の電極端子に対して安定して接触させて、被検査体の電極端子に対する電気的な接続を確実にでき、精度よく被検査体の電気的試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る電気的接触子の内部構成を示す断面図である。
図2】実施形態に係る電気的接続装置の平面図である。
図3図2に示した電気的接続装置のA-A線矢視断面図である。
図4図2に示した電気的接続装置のB-B線矢視断面図である。
図5】実施形態の電気的接続装置において電気的接触子が装着されている部分の要部拡大断面図である。
図6】実施形態に係る電気的接触子の外観構成を示す外観構成図である。
図7】被検査体の電極端子との接触時の電気的接触子の電極端子側の構成を示す拡大図である。
図8】実施形態に係る電気的接触子の導電経路を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明に係る電気的接触子及び電気的接続装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで電気的接続装置は、被検査体の試験に必要な電気信号を授受する検査装置(以下では、「テスタ」とも呼ぶ。)と、被検査体との間に介在させて、被検査体の電気的特性の検査に必要な信号を伝達する装置である。被検査体としては、組立完了した集積回路等の半導体デバイスの場合について説明する。また電気的接続装置としては、そのような半導体デバイスの電気的試験(例えば、パッケージテストやファイナルテスト等)に用いる試験用ICソケット(テストソケットとも呼ぶ。)の場合について説明する。
【0019】
(A-1)電気的接続装置の構成
図1は、実施形態に係る電気的接触子の内部構成を示す断面図である。図2は、実施形態に係る電気的接続装置の平面図である。図3は、図2に示した電気的接続装置のA-A線矢視断面図であり、電気的接続装置に収容される被検査体を点線で表している。図4は、図2に示した電気的接続装置のB-B線矢視断面図である。図5は、実施形態の電気的接続装置において電気的接触子が装着されている部分の要部拡大断面図である。
【0020】
なお、以下では、図1、及び図3図5の図中における上下方向に従って、「上」、「下」を言及することとする。また、配線基板上のコンタクトパッドを「第1の接触対象」とも呼び、被検査体の電極端子を「第2の接触対象」とも呼ぶ。
【0021】
図3に示すように、被検査体12は、その下面に複数の電極端子13(第2の接触対象)が設けられている。複数の電極端子13は、被検査体12の下面に、一列、複数列、マトリックス状又は他の配列で備えられている。なお、この実施形態では、被検査体12の形状が略四角形であり、被検査体12の下面には、マトリックス状に複数の電極端子13が配列されている場合を例示するが、被検査体12の形状や複数の電極端子13の配列の仕方は、これに限定されるものではない。また、この実施形態では電極端子13はバンプの場合を例にとって説明する。
【0022】
電気的接続装置11は、主に、被検査体12の電極端子13と配線基板15上に設けられた配線とを導通させる電気的接触子20と、電気的接触子20を保持するハウジング部14と、被検査体12を保持するソケット部19と、ハウジング部14とソケット部19を配線基板15上に固定するフレーム部18とを有している。電気的接続装置11は配線基板15上に設けられている。
【0023】
配線基板15は、例えば、電気絶縁部材で形成された基板に印刷配線技術等により導電性を有する金属材料からなる配線が形成された板状の配線基板である。配線基板15の配線は、被検査体12を試験するテスタ(図示しない)の配線に電気的に繋がっている。配線基板15の上面には、例えばネジや位置決めピンなどの固定部材35により、フレーム部18が固定されている。配線基板15はフレーム部18と協働してハウジング部14を配線基板15上に支持する。配線基板15に形成されている配線上には、電気的接触子20と接触させるためのコンタクトパッド22(第1の接触対象)が配設されている。
【0024】
電気的接触子20は、被検査体12の電極端子13(第2の接触対象)と配線基板15のコンタクトパッド22「第1の接触対象」との間を導通させる部材であり、導電性部材で構成されている。電気的接触子20は、主に、被検査体側プランジャー60と、配線基板側プランジャー63と、コイルスプリング66とで構成されている。電気的接触子20は真っ直ぐな細長の形状をしており、その両端の一方の端部側には、被検査体12の電極端子13に接触させる端子である導電性を有する被検査体側プランジャー60を有し、他方の端部側には配線基板15のコンタクトパッド22に接触させる端子である導電性を有する配線基板側プランジャー63を有している。被検査体側プランジャー60と配線基板側プランジャー63は、導電性を有する複数の圧縮コイルスプリングからなるコイルスプリング66のコイル中心軸方向両端にそれぞれ接続されており、両プランジャー60、63間がコイルスプリング66を介して導通している。両プランジャー60、63は、コイルスプリング66の弾性力により軸方向外方に弾性的に付勢されると共に、コイルスプリング66の弾性力に抗して軸方向内方に移動可能に構成されている。
【0025】
配線基板側プランジャー63は、その先端側に電気的接触子20の外径よりも小さい外径の円柱形状をして先端が尖っている先端部632が形成され、先端部632の内端側には、先端部632の外径よりも大きい外径の突出部633が形成されている。また、被検査体側プランジャー60は、円筒プランジャー61と中針プランジャー62とを有しており、円筒プランジャー61の先端側に電気的接触子20の外径より小さい外径の円筒形状をした第1筒部611が形成され、第1筒部611の内端側には、第1筒部611の外径より大きい外径の突出部615が形成されている。電気的接触子20の詳細については後述する。
【0026】
ハウジング部14は、電気絶縁部材で構成された板状の部材であり、配線基板15の上側に重ね合わせるように配置される。ハウジング部14は、複数の電気的接触子20を被検査体の下面や配線基板の上面に対して垂直に支持するための部材である。ハウジング部14は、下側ハウジング16と上側ハウジング17とを有しており、配線基板15の上側に下側ハウジング16が配置され、下側ハウジング16の上側に上側ハウジング17が重ね合わされている。下側ハウジング16と上側ハウジング17とは、ガイドピン37によって位置合わせされていると共に、ガイドピン37によってフレーム部18に係止されている。
【0027】
下側ハウジング16は、上側ハウジング17の下面に重ね合わされ、上側ハウジング17と協働して複数の電気的接触子20を支持する部材であり、電気的接触子20の下方への移動を制限するように電気的接触子20を係止している。下側ハウジング16には、ガイドピン37の頭部39が嵌合される孔であるピン頭部嵌合孔23(図3参照)が設けられている。ピン頭部嵌合孔23の内径は、ガイドピン37の頭部39の外径とほぼ同じ寸法に設定されて、ガイドピン37の頭部39が遊びなく嵌合するようになっている。
【0028】
下側ハウジング16には、その上下面に対して垂直方向に形成された複数の第1支持孔16Aが設けられており、複数の電気的接触子20のそれぞれの下側が挿入される。第1支持孔16Aの下側の開口は、配線基板15の各コンタクトパッド22の位置に対応するように形成されており、上側の開口は上側ハウジング17に形成された後述する第2支持孔17Aの下側開口に合わさるように形成されている。
【0029】
複数の第1支持孔16Aのそれぞれ内径は、各電気的接触子20の下側部分の挿入を可能とするため、電気的接触子20の外径よりも少し大きく形成されている。また、各第1支持孔16A内には、その下端に内径を小さく形成して電気的接触子20を下側から受けて支持する下側受け部16Bが形成されており、下側受け部16Bの貫通穴の内端側開口の周囲には段差が形成されている。下側受け部16Bの内径は、電気的接触子20の配線基板側プランジャー63の先端部632の外径より少し大きく、かつ突出部633の外径より小さく形成されているので、配線基板側プランジャー63の突出部633が下側受け部16Bの前記段差に引っ掛かり、配線基板側プランジャー63の下方への移動が制限されると共に、配線基板側プランジャー63の先端部632が、下側受け部16Bの貫通孔を通って下側ハウジング16下面から突出する。
【0030】
上側ハウジング17は、下側ハウジング16の上面に重ね合わされ、下側ハウジング16と協働して電気的接触子20を支持する部材であり、電気的接触子20の上方への移動を制限するように電気的接触子20を係止している。上側ハウジング17には、ガイドピン37の軸部40が嵌合される孔であるピン軸部嵌合孔28(図3参照)が設けられている。ピン軸部嵌合孔28の内径は、ガイドピン37の軸部40の外径とほぼ同じ寸法に設定されて、ガイドピン37の軸部40を遊びなく嵌合するようになっている。
【0031】
上側ハウジング17には、その上下面に対して垂直方向に形成された複数の第2支持孔17Aが設けられており、複数の電気的接触子20のそれぞれの上側が挿入される。第2支持孔17Aの上側の開口は、被検査体12の各電極端子13の位置に対応するように形成されており、下側の開口は下側ハウジング16に形成された第1支持孔16Aの上側開口に合わさるように形成されている。
【0032】
複数の第2支持孔17Aのそれぞれの内径は、各電気的接触子20の上側部分の挿入を可能とするため、電気的接触子20の外径よりも少し大きい径、すなわち第1支持孔16Aと同じ内径に形成されている。また、各第2支持孔17A内には、その上端に内径を小さく形成して電気的接触子20を上側から受けて支持する上側受け部17Bが形成されており、上側受け部17Bの貫通穴の内端側開口の周囲には段差が形成されている。上側受け部17Bの内径は、電気的接触子20の被検査体側プランジャー60の第1筒部611の外径より少し大きく、かつ突出部615の外径より小さく形成されているので、被検査体側プランジャー60の突出部615が上側受け部17Bの前記段差に引っ掛かり、被検査体側プランジャー60の上方への移動が制限されると共に、被検査体側プランジャー60の第1筒部611が、上側受け部17Bの貫通孔を通って上側ハウジング17上面から突出する。
【0033】
第1支持孔16Aと第2支持孔17Aとで、電気的接触子20全体を収納して支持する電気的接触子支持孔27(図5参照)が形成されている。電気的接触子20が電気的接触子支持孔27に収納されるように下側ハウジング16と上側ハウジング17が重ね合わされた状態で、ハウジング部14の下面(下側ハウジング16の下面)と配線基板15の上面が接触するようにハウジング部14が配線基板15上に固定されることにより、電気的接触子20の配線基板側プランジャー63の先端部632が、第2支持孔17A内に押し込まれて、電気的接触子20が縮んだ状態となって、コイルスプリング66の弾性エネルギーが蓄勢されて、配線基板側プランジャー63の先端部632が配線基板15上面のコンタクトパッド22を押圧した状態になる。
【0034】
フレーム部18は、配線基板15、下側ハウジング16及び上側ハウジング17を一体的に固定して支持すると共に、ソケット部19を上下動可能に支持する部材である。
【0035】
フレーム部18は、主に、外枠部31、固定用フランジ部32、上下動支持用フランジ部33で構成されている。
【0036】
外枠部31は、下側ハウジング16、上側ハウジング17及びソケット部19の周縁部を囲うように、略四角形の枠体状に形成されている。外枠部31の下面には、位置決め用ピン(又は位置決め用孔;いずれも図示せず)が設けられ、配線基板15の上面には、外枠部31側の位置決め用ピン(又は位置決め用孔)に対応して、位置決め用孔(又は位置決め用ピン;いずれも図示せず)が設けられている。これにより、外枠部31の下面の位置決め用ピン(又は位置決め用孔)と、配線基板15の上面の位置決め用孔(又は位置決め用ピン)とが嵌合して、外枠部31と配線基板15とが正確に位置決めされて支持されるようになっている。外枠部31の四隅には、固定部材35(図2参照)が取り付けられている。固定部材35は、外枠部31の四隅の貫通孔(図示せず)を挿入されて配線基板15のネジ孔(図示せず)にねじ込まれて、これら外枠部31を配線基板15に固定している。
【0037】
固定用フランジ部32は、外枠部31の四角筒状の開口部の対向する内側面に、互いに対向するように2つ設けられている。各固定用フランジ部32は、互いに内側へ水平に伸びた、ほぼ半円板状に形成されている。各固定用フランジ部32の下面の高さ(すなわち、配線基板15から各固定用フランジ部32の下面までの高さ)は、下側ハウジング16及び上側ハウジング17を重ねた高さとほぼ同じ値に設定されている。これにより、フレーム部18が配線基板15に固定された状態において、配線基板15上に重ねられた下側ハウジング16及び上側ハウジング17を、各固定用フランジ部32と配線基板15とで挟んで支持するようになっている。ここで、固定用フランジ部32の下に上側ハウジング17と下側ハウジング16を入れたときに、下側ハウジング16の下面が外枠部31の下面と同じになるようになされている。
【0038】
各固定用フランジ部32の中央には、ガイドピン37が嵌合するピン孔38が形成されている。ピン孔38の内径は、ガイドピン37の軸部40の外径とほぼ同じ寸法に設定されている。
【0039】
ガイドピン37は、頭部39と軸部40とを有する。頭部39は、下側ハウジング16に設けられているピン頭部嵌合孔23の内径とほぼ同じ外径であり、頭部39は円板状に形成されている。軸部40は、上側ハウジング17のピン軸部嵌合孔28及び固定用フランジ部32のピン孔38の内径とほぼ同じ外径であり、軸部40は円柱棒状に形成されている。
【0040】
下側ハウジング16のピン頭部嵌合孔23と、上側ハウジング17のピン軸部嵌合孔28と、各固定用フランジ部32のピン孔38とは、ガイドピン37が通されることにより、同一軸心上に軸が位置するように設けられている。
【0041】
ガイドピン37の頭部39が下側ハウジング16のピン頭部嵌合孔23に嵌合し、軸部40が上側ハウジング17のピン軸部嵌合孔28及び固定用フランジ部32のピン孔38に嵌合し、下側ハウジング16、上側ハウジング17及びフレーム部18の位置決めを行っている。下側ハウジング16及び上側ハウジング17を、フレーム部18の各固定用フランジ部32の下面と配線基板15とで上下から挟んでフレーム部18の開口内に支持することにより、これら配線基板15、下側ハウジング16、上側ハウジング17及びフレーム部18が、互いに正確に位置決めされて一体的に固定されている。
【0042】
上下動支持用フランジ部33は、ソケット部19を上下動可能にフレーム部18の開口内に支持するための部分であり、ソケット部19を上方に弾性的に付勢しながら支持している。上下動支持用フランジ部33は、略四角形の枠体状のフレーム部18における開口部の四隅にそれぞれ形成されている。
【0043】
各上下動支持用フランジ部33は、図4に示すように、主に、板部42と、ガイドネジ46と、スプリング47とで構成されており、板部42にはガイドネジ46が取り付けられるガイドネジ孔43と、スプリング47が支持されるスプリング孔44とが設けられている。
【0044】
板部42は、フレーム部18の外枠部31の四隅のそれぞれに設けられたフレーム部18と一体化している板材であり、隅を形成する2つの枠部分を連絡するように懸架されている。板部42の下面の高さ(すなわち、配線基板15から板部42の下面までの高さ)は、固定用フランジ部32の下面の高さと同じ値になるように設定されている。板部42の上面の高さは、板部42の上面とソケット部19の後述するフランジ部54の下面とが互いに当接した状態で、被検査体12の電極端子13と電気的接触子20の被検査体側プランジャー60とが最適に接触するように設定されている。具体的には、被検査体12の電極端子13と電気的接触子20の被検査体側プランジャー60とが接触して、電気的接触子20が押し縮められる状態になるように板部42の上面の高さが設定されている。
【0045】
ガイドネジ孔43は、ガイドネジ46を螺合するためのネジ孔である。ガイドネジ孔43は、各板部42の中央部に1つずつ設けられている(図2参照)。スプリング孔44は、スプリング47を支持するための孔である。スプリング孔44は、各板部42毎にガイドネジ孔43の両側に2つずつ設けられている(図2参照)。ガイドネジ孔43及びスプリング孔44は、板部42の上面からその垂直方向下方に穿孔されている。
【0046】
ガイドネジ46は、フレーム部18の開口内におけるソケット部19の位置を規定すると共に、ソケット部19の上下動を可能に支持とするためのネジである。ガイドネジ46は、頭部48と、ガイド部49と、ネジ棒部50とを有して構成されている。
【0047】
頭部48は、ソケット部19を上から接触して上方への抜け落ちを防止する部分である。頭部48の上面には、マイナスドライバーが係合するマイナス溝51が形成されている。
【0048】
ガイド部49は、ソケット部19の上下動を案内する部分である。ガイド部49は、頭部48とネジ棒部50との間に設けられ、ソケット部19の後述するガイド孔59に嵌合してソケット部19の上下動を案内する。ガイド部49の長さは、頭部48の下面がソケット部19と接触している状態(ソケット部19が、スプリング47で最大に押し上げられた状態)で、電気的接触子20の被検査体側プランジャー60の先端がソケット部19の後述する縮小孔部57内に位置すると共に、ソケット部19が下方に押し下げられる過程で、電気的接触子20の被検査体側プランジャー60の先端が縮小孔部57の上方開口から突出するように設定されている。図5(A)は、ソケット部19が下方に押し下げられる前の状態であって、電気的接触子20の被検査体側プランジャー60の先端がソケット部19の縮小孔部57内に位置している状態を示しており、図5(B)は、ソケット部19が下方に押し下げられて、電気的接触子20の被検査体側プランジャー60の先端が縮小孔部57の上方開口から突出して、被検査体12の電極端子13に接触している状態を示している。
【0049】
ネジ棒部50は、板部42にガイドネジ46を固定するための部分である。ネジ棒部50は、板部42のガイドネジ孔43と螺合してガイドネジ46を板部42に固定している。
【0050】
スプリング47は、ソケット部19を弾性的に上方に付勢して支持するための部材である。スプリング47は板部42のスプリング孔44にコイル中心軸の向きが垂直になるように装着されており、スプリング47の上端は、ソケット部19の後述するフランジ部54の裏面に当接されている。合計8本のスプリング47が、4本のガイドネジ46のガイド部49に上下動可能に支持されたソケット部19を下側から付勢している。これにより、ソケット部19のフランジ部54がガイドネジ46の頭部48の下面に接触するまで上方へ押し上げられ、コンタクト前の待機状態になっている。
【0051】
ソケット部19は、絶縁性部材からなり、被検査体12を電気的接続装置11に装着する際に、被検査体12を位置決めして支持すると共に、被検査体12の各電極端子13と、対応する電気的接触子20とを整合させるための部材である。ソケット部19は、主に、受入凹部53と、フランジ部54とで構成されている。
【0052】
受入凹部53は、被検査体12を受け入れて支持するための部材であり、その上面中央に上方から下方に窪んだ凹部52を有し、ほぼ四角形の皿状に形成されている。凹部52は、その上面開口側に位置する上側開口部53Aと、底側に位置する底部53Cと、上側開口部53Aと底部53Cとの間に位置する傾斜面53Bとを有する。
【0053】
底部53Cは、略四角形に形成され、その寸法は被検査体12の外形よりも僅かに大きく設定されている。これにより、被検査体12が受入凹部53の凹部の底部分に装着された状態で、被検査体12の位置決めがなされるようになっている。ここでは、被検査体12が四角形のため、受入凹部53の凹部の底部分も四角形に形成されているが、被検査体12が他の形状の場合には、受入凹部53の凹部の底部分も被検査体12に合わせた形状になる。上側開口部53Aは、底部53Cより一回り大きい寸法の略四角形に形成されている。傾斜面53Bは、上側開口部53Aと底部53Cとを繋ぐ部分であり、上側に向かって開口が広くなるように傾斜した内側面を有している。傾斜面53Bは、被検査体12を案内して受入凹部53の底部に導くためのものである。
【0054】
受入凹部53の凹部52の底部53Cを形成する底板部55には、多数のガイド孔56が設けられている。ガイド孔56は、被検査体12の各電極端子13を上方から案内して受け入れると共に、各電気的接触子20の被検査体側プランジャー60の先端が被検査体12の各電極端子13に下方から接触するのを可能にするための貫通孔である。各ガイド孔56の上側部分は、電極端子13よりも僅かに大きく形成され、電極端子13を容易に受け入れられるようになっている。各ガイド孔56は、被検査体12の各電極端子13に対応する位置に設けられており、被検査体12が受入凹部53の凹部に装着されることにより、被検査体12の各電極端子13が各ガイド孔56の上側部分に受け入れられるようになっている。
【0055】
ガイド孔56の下端部には、その上側部分より細い孔であって、電極端子13を通さず、電気的接触子20の被検査体側プランジャー60の先端部分を下方から通すことができる縮小孔部57が形成されている。縮小孔部57は、ソケット部19のフランジ部54が、ガイドネジ46の頭部48の下面と接触している状態(ソケット部19が、スプリング47で最大に押し上げられた状態)では、電気的接触子20の被検査体側プランジャー60の先端部を、その先端が縮小孔部57内に位置する状態で受け入れ、ソケット部19が下方に押し下げられると、電気的接触子20の被検査体側プランジャー60の先端部分が縮小孔部57を貫通する事を許して、その上方開口から突出した被検査体側プランジャー60の先端が被検査体12の電極端子13と当接することを可能にする。
【0056】
フランジ部54は、フレーム部18の上下動支持用フランジ部33に対応する受入凹部53の四隅の位置に形成されている。各フランジ部54には、ガイドネジ46の頭部48が当接する座刳り部58が設けられている。座刳り部58には、ガイドネジ46のガイド部49に上下動可能に嵌合するガイド孔59が設けられている。フランジ部54のガイド孔59にガイドネジ46のガイド部49が嵌合して上下動可能に支持され、フランジ部54による支持によりスプリング47でソケット部19が上方へ付勢される。
【0057】
(A-2)電気的接触子の構成
次に、この実施形態に係る電気的接触子20の構成を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0058】
図1は、この実施形態に係る電気的接触子20の内部構成を示す断面図である。図6は、この実施形態に係る電気的接触子20の外観構成を示す外観構成図である。
【0059】
電気的接触子20は、被検査体12の電極端子13と、配線基板15のコンタクトパッド22とのそれぞれに接触して、上記電極端子13と上記コンタクトパッド22の間を電気的に導通させるものである。
【0060】
電気的接触子20は導電性の高い金属部材で構成されており、図1及び図6に示すように、被検査体側プランジャー60と、配線基板側プランジャー63と、コイルスプリング66とを有する。コイルスプリング66は外側コイルスプリング64と、内側コイルスプリング65とを有する。被検査体側プランジャー60は、円筒プランジャー61と、中針プランジャー62とを有する。以下では、円筒プランジャー61を「第1のプランジャー」、中針プランジャー62を「第2のプランジャー」、配線基板側プランジャー63を「第3のプランジャー」とも呼ぶ。また、外側コイルスプリング64を「第1のコイルスプリング」、内側コイルスプリングを「第2のコイルスプリング」とも呼ぶ。
【0061】
コイルスプリング66は、それぞれコイル径が異なる2つの圧縮コイルスプリング(外側コイルスプリング64及び内側コイルスプリング65)で構成されており、両コイルスプリング64,65は導電性を有する部材で形成されている。外側コイルスプリング64のコイル内径は、内側コイルスプリング65のコイル外径より大きくなっており、内側コイルスプリング65は外側コイルスプリング64のコイル内部に収容され、コイルスプリング66は内外二重に形成されている。外側コイルスプリング64及び内側コイルスプリング65の一方の端部側に被検査体側プランジャー60が設けられ、外側コイルスプリング64及び内側コイルスプリング65の他方の端部側に配線基板側プランジャー63が設けられている。
【0062】
被検査体側プランジャー60を構成する円筒プランジャー61は、導電性を有する略円筒形状の部材であり、軸方向外方及び内方に開口する貫通孔618を有している。円筒プランジャー61はその先端を被検査体12の電極端子13に接触させるものであり、先端側(図1及び図6における上方)に位置する第1筒部611と、内端側(図1及び図6における下方、すなわち配線基板側プランジャー63側)に位置する第2筒部613とを有している。第1筒部611と第2筒部613は、いずれも内径が同じ円筒形状をしており、それらの中心軸が同一の軸上に位置するように一体に形成されている。第1筒部611と第2筒部613のそれぞれの貫通孔は連通して貫通孔618を構成している。
【0063】
第1筒部611は、その先端部612が被検査体12の電極端子13と接触する部分となる。先端部612の形状は、例えば、その先端が軸方向に対して垂直な同一平面上に位置するようにしても良いし、軸方向に突出した部分を複数有するようにしても良い。本実施の形態では、軸方向への凹凸を周方向にジグザグに連ねて複数の尖端を形成したクラウン形状をしている。先端部612をクラウン形状にした場合は、先端部612に形成された尖端がボール形状等の電極端子13に対して当たる事で確実に接触する事ができ、また、ズレも防止できるため好ましい。
【0064】
第2筒部613は、第1筒部611の内端側に位置しており、外側コイルスプリング64を係止するための外側コイル係止部614と、中針プランジャー62と接触する内端部617とを有する。外側コイル係止部614は、内端側に位置するコイル圧入部616と、先端側に位置する突出部615とを有する。
【0065】
コイル圧入部616は、外側コイルスプリング64の一方の端部に圧入して外側コイルスプリング64と接続される部分である。コイル圧入部616は、外側コイルスプリングのコイル内径より少し大きい外径を持つ円筒形状をしており、本実施の形態ではコイル圧入部616の外径は第1筒部611の外径と同程度に形成されている。コイル圧入部616を外側コイルスプリング64の一端からそのコイル内径を拡げるようにして圧入することによって、外側コイルスプリング64の一方の端部は円筒プランジャー61に固定される。
【0066】
コイル圧入部616の内端部617は、後述する中針プランジャー62の太径部624の先端側と接触する部分であり、後述する太径部のテーパに合わせて傾斜している。内端部617は外側コイルスプリング64の挿入を容易にするために外径を小さくしてもよい。
【0067】
突出部615は、コイル圧入部616に取り付けられた外側コイルスプリング64の先端側への移動を規制する部分である。また、上側ハウジング17の上側受け部17Bに接触して、電気的接触子20がハウジング部14内に支持される部分である。
【0068】
突出部615は、コイル圧入部616の先端側、すなわち第1筒部611とコイル圧入部616との間に位置し、第1筒部611やコイル圧入部616の外径よりも大きい外径を有する円筒形状をしている。これにより、突出部615の外周面とコイル圧入部616の外周面との間には段差を有しており、この段差を繋ぐ部分に軸方向に垂直な平面からなる段差面619を形成している。この段差面619によって外側コイルスプリング64の先端側への移動が確実に規制される。
【0069】
中針プランジャー62は、導電性を有する細長の棒状の部材である。中針プランジャー62は、円筒プランジャー61の貫通孔618に収納される略円柱形状の第1棒部621と、第1棒部621の内端側に位置する略円柱形状の太径部624と、太径部624の内端側に位置する略円柱形状の第2棒部626とを有する。第1棒部621、太径部624、及び第2棒部626は、それぞれの中心軸が同一の軸上に位置するように一体的に形成されている。
【0070】
中針プランジャー62の第1棒部621は、被検査体12の電極端子13と接触する先端部622を有すると共に、円筒プランジャー61の貫通孔618の内壁面と接触可能な部分である。第1棒部621の外径は、円筒プランジャー61の貫通孔618の内径、すなわち第1筒部611及び第2筒部613のそれぞれの貫通孔の内径よりもわずかに小さく形成されており、第1棒部621は、円筒プランジャー61の貫通孔618の内部、すなわち第1筒部611及び第2筒部613のそれぞれの貫通孔の内部に挿入された状態で軸方向に摺動可能である。第1棒部621は、例えばニードルタイプの棒状部であり、第1棒部621の先端部622は、その先端が尖った針状をしている。
【0071】
中針プランジャー62の太径部624は円筒プランジャー61の内端部617と接触可能な部分を先端に有すると共に、内側コイルスプリング65の先端側への移動を規制する部分を内端に有する部分である。太径部624は中針プランジャー62の第1棒部621の内端側に設けられており、その外径は、第1棒部621の外径よりも大きく設定されている。また、太径部624の外径は、円筒プランジャー61の第2筒部613の外径及び外側コイルスプリング64のコイル内径よりも僅かに小さく設定されている。第1棒部621の外周面と太径部624の外周面との間には段差が形成されており、この段差を繋ぐ面が円筒プランジャー61の第2筒部613の内端部617と接触する筒部接触部623となっている。
【0072】
筒部接触部623は、下方に行くほど径が大きくなっているテーパ面(傾斜面)となっている。これに対して、筒部接触部623と対向する円筒プランジャー61の第2筒部613の内端部617は、上方に行くほど径が小さくなっているテーパ面(傾斜面)となっている。従って、中針プランジャー62の筒部接触部623が円筒プランジャー61の第2筒部613と接触する際、中針プランジャー62が円筒プランジャー61の第2筒部613に中央に向けて誘い込まれる構造となっている。そのため、中針プランジャー62の先端部622が円筒プランジャー61の先端部612の略中央に位置となるように位置決めすることができると共に、中針プランジャー62の筒部接触部623と円筒プランジャー61の第2筒部613の後端部との接触性を良好とすることができる。
【0073】
中針プランジャー62の第2棒部626は、内側コイルスプリング65を圧入により係止すると共に、内側コイルスプリング65のコイル内と接触する部分であり、第2棒部626は太径部624の内端側に設けられている。第2棒部626は、太径部624側に位置する内側コイル圧入部625と、その内端側に位置する延長部627とを有する。内側コイル圧入部625は、内側コイルスプリング65のコイル内径より僅かに大きい外径に設定され、延長部627の外径は内側コイルスプリング65のコイル内径より僅かに小さい外径に設定されている。第2棒部626と太径部624との間には段差が形成されており、この段差は、内側コイルスプリング65の先端側への移動を規制する部分となる。
【0074】
内側コイル圧入部625は、内側コイルスプリング65の端部に挿通され圧入されることにより、内側コイルスプリング65を係止する部分である。延長部627は、内側コイルスプリング65のコイル内に収納される部分である。第2棒部626が内側コイルスプリング65のコイル内に挿入されていることにより、外側コイルスプリング64及び内側コイルスプリング65の部分で電気的接触子20が曲がるのを抑止することができる。
【0075】
中針プランジャー62の各部の軸方向の長さは、第1棒部621及び第2棒部626の長さが、太径部624の長さより長く設定されている。このように構成することにより、第2棒部626の内端側で内側コイルスプリング65のコイル内に接触し易くなるため好ましく、第2棒部626の長さが第1棒部621の長さと同程度か、それより長くすると更に好ましい。この場合、中針プランジャー62の傾きによる中心からのずれが第2棒部626の内端側で大きくなり、延長部627のより内端側で内側コイルスプリング65のコイル内に接触する事ができる。
【0076】
配線基板側プランジャー63は、導電性の部材で形成された棒状の部材である。配線基板側プランジャー63は、その先端側(図1及び図6の下側)に位置する先端側棒部631と、内端側(図1及び図6の上側、すなわち被検査体側プランジャー60側)に位置する内端側棒部635とを有する。先端側棒部631と内端側棒部635は一体的に形成されている。
【0077】
配線基板側プランジャー63の先端側棒部631は、外側コイルスプリング64を圧入により係止すると共に配線基板15のコンタクトパッド22と接触する部分である。先端側棒部631は、配線基板15のコンタクトパッド22と接触する先端を有する先端部632と、外側コイルスプリング64の端部を係止するための外側コイル係止部637とを有する。先端部632は先端側棒部631の先端側に設けられ、外側コイル係止部637は、先端側棒部631の内端側に設けられている。
【0078】
先端側棒部631の先端部632は、略円柱形状をして先端が尖っており、その先端が配線基板15のコンタクトパッド22と接触する部分となる。
【0079】
先端側棒部631の外側コイル係止部637は、その内端側に位置する外側コイル圧入部636と、先端側に位置する突出部633とを有している。
【0080】
外側コイル係止部637の外側コイル圧入部636は、外側コイルスプリング64のコイル内径より僅かに大きい外径の円柱形状をしている。外側コイル圧入部636に外側コイルスプリング64の端部が圧入されることによって外側コイルスプリング64が外側コイル圧入部636に固定される。
【0081】
外側コイル係止部637の突出部633は、外側コイル圧入部636の先端側に位置し、外側コイル圧入部636の外径より大きい外径の円柱形状をしており、突出部633の外周面と外側コイル圧入部636の外周面との間には段差を有している。この段差によって、外側コイル圧入部636に取り付けられている外側コイルスプリング64の端部が、先端側へ移動するのを確実に規制する
【0082】
配線基板側プランジャー63の内端側棒部635は、内側コイルスプリング65を圧入により係止すると共に内側コイルスプリング65のコイル内と接触する部分である。内端側棒部635は、外側コイル係止部637の外側コイル圧入部636の内端側に繋がっている。内端側棒部635は、先端側に位置する内側コイル圧入部634と内端側に位置する延長部638とを有する。
【0083】
内端側棒部635の延長部638は、内側コイルスプリング65のコイル内と接触する部分であり、細長い略円柱形状をしており、その外径は内側コイルスプリング65のコイル内径より僅かに小さく設定されている。延長部638は、内側コイルスプリング65の内部に収納される部分である。内端側棒部635が内側コイルスプリング65の下側に内挿されることにより、外側コイルスプリング64及び内側コイルスプリング65の部分で電気的接触子20が曲がるのを抑止することができる。
【0084】
内端側棒部635の内側コイル圧入部634は、内側コイルスプリング65の端部を圧入することにより、内側コイルスプリング65を固定する部分であり、その外径は内側コイルスプリング65のコイル内径より僅かに大きく設定されている。内側コイル圧入部634の外径は、外側コイル係止部637の外側コイル圧入部636の外径より小さいため、内側コイル圧入部634と外側コイル圧入部636との間には段差が形成されており、この段差は内側コイルスプリング65の端部の先端側への移動を確実に規制する部分となる。
【0085】
このように構成された電気的接触子20は、外側コイルスプリング64は、被検査体側プランジャー60の円筒プランジャー61と配線基板側プランジャー63との間に接続され、内側コイルスプリング65は、被検査体側プランジャー60の中針プランジャー62と配線基板側プランジャー63との間に接続されている。
【0086】
この電気的接触子20が両端から押し込まれていない状態(以下、無負荷状態と呼ぶ)においては、中針プランジャー62の太径部624の筒部接触部623と、円筒プランジャー61の内端(第2筒部613の内端部617の内端)とは接触しているように構成されている。このとき、中針プランジャー62が円筒プランジャー61を軸方向外方に負勢するように設定されていると好ましい。また、中針プランジャー62の太径部624の筒部接触部623と、円筒プランジャー61の第2筒部613の内端部617の内端とが接触している状態では、中針プランジャー62の先端(第1棒部621の先端部622の先端)と、円筒プランジャー61の先端(第1筒部611の先端部612の先端)とは、軸方向において同じ位置になるか、中針プランジャー62の先端が少し引っ込んでいるように設定されている。中針プランジャー62の先端が少し引っ込んでいるように設定されている場合は、被検査体12の電極端子13がバンプの場合の様に表面中央が高い曲面形状をした場合においても、円筒プランジャー61の先端が中針プランジャー62の先端より先に電極端子13に接触できるため好ましい。
【0087】
また、このように構成された電気的接触子20は、無負荷状態において、太径部624の外周と外側コイルスプリング64のコイル内との間には僅かに隙間が生じている。また、延長部627と内側コイルスプリング65のコイル内との間には、僅かに隙間が生じているか、中針プランジャー62の軸方向への移動が妨げられない範囲で僅かに触れている状態になっている。
【0088】
また、中針プランジャー62の内端(第2棒部626の延長部627の内端)と、配線基板側プランジャーの内端(内端側棒部635の延長部638の内端)とは、両プランジャーが検査時に想定される最大に押し込まれた状態においても接触しないように、間隔を空けている。なお、この間隔は、極力狭くすると、導電距離が短くなり、リアクタンスの影響も小さくなるので好ましく、この両プランジャーの内端同士の間隔が生じている部分に対応する内側コイルスプリング部分を密巻にするとさらに好ましい。
【0089】
このように構成された電気的接触子20は、被検査体側プランジャー60が軸方向内方に押されると、コイルスプリング66の弾性力により軸方向外方に付勢されつつ、コイルスプリング66の弾性力に抗して内方に移動することができるが、コイルスプリング66を構成する複数のコイルスプリング64,65の被検査体側プランジャー60への作用の仕方は、押され時の状態によって異なる。すなわち、円筒プランジャー61の内端と太径部624の筒部接触部623とが接触している状態では、円筒プランジャー61が押し込まれると、中針プランジャー62の太径部624が押されて中針プランジャー62も一緒に内方に押し込まれる。従って内側コイルスプリング65と外側コイルスプリング64と並列接続により合成された弾性力が生じるため、円筒プランジャー61の先端には比較的強い力の弾性力が生じる。また、円筒プランジャー61の内端と太径部624の筒部接触部623とが接触せずに円筒プランジャー61が押し込まれている状態(中針プランジャー62も押し込まれている状態)では、円筒プランジャー61には外側コイルスプリング64単独の弾性力が加わる。また、円筒プランジャー61の内端と太径部624の筒部接触部623とが接触せずに中針プランジャー62が押し込まれている状態では、中針プランジャー62には内側コイルスプリング65単独の弾性力が加わる。
【0090】
このようにコイルスプリング66の弾性力が被検査体側プランジャー60に加わることにより、被検査体12の電極端子13と被検査体側プランジャー60先端との位置がずれていたとしても、円筒プランジャーの先端が強い押圧力で電極端子に当たるため、円筒プランジャーが位置ずれを起こしにくくなる。また、被検査体12の電極端子13と被検査体側プランジャー60先端との位置がずれていない場合には、円筒プランジャー61は外側コイルスプリング64に押圧され、中針プランジャー62は内側コイルスプリング65に押圧されるため、設定された圧力でそれぞれ押圧することができる。
【0091】
内側コイルスプリング65の一方の端部(上端部)の内部には、中針プランジャー62の第2棒部626が内挿されており、内側コイルスプリング65の一方の端部(上端部)は、中針プランジャー62のコイル係止部に係止されている。また、内側コイルスプリング65の他方の端部(下端部)の内部には、配線基板側プランジャー63の内端側棒部635が内挿されており、内側コイルスプリング65の他方の端部(下端部)は、配線基板側プランジャー63の内側コイル圧入部634に係止されている。また、内側コイルスプリング65の内部には、中針プランジャー62の第2棒部626と配線基板側プランジャー63の内端側棒部635とが内挿されているので、電気的接触子20の変形(例えば座屈等)を抑止することができる。
【0092】
外側コイルスプリング64の内径は、内側コイルスプリング65の外径よりも大きく、電気的接触子20が組み立てられた状態において、外側コイルスプリング64の内側に内側コイルスプリング65が設けられている。外側コイルスプリング64の一方の端部(上端部)の内部には、円筒プランジャー61の第2円筒部が内挿されており、外側コイルスプリング64の一方の端部は、円筒プランジャー61の外側コイル係止部614に係止されている。また、外側コイルスプリング64の他方の端部(下端部)は、配線基板側プランジャー63の外側コイル係止部637に係止されている。従って、円筒プランジャー61のクラウン形状の先端部612が被検査体12の電極端子13と接触する際に、クラウン形状の先端部612の中心で、中針プランジャー62の先端部622が電極端子13に突き刺すように接触する。また、電極端子13に対して電気的接触子20を接触する際、ミスアライメントにより、円筒プランジャー61の先端部612が電極端子13に1点のみしかコンタクトしない場合でも、円筒プランジャー61の先端部612の中心で、中針プランジャー62の先端部622が電極端子13とコンタクトすることができるため、多点接触を実現することができる。
【0093】
中針プランジャー62の針状の先端部622の位置は、円筒プランジャー61のクラウン形状の先端部612の位置と同程度若しくはわずかに先端部612の位置よりも低い位置となっていることが望ましい。これにより、中針プランジャー62は内側コイルスプリング65の弾性力を受けて、円筒プランジャー61とは別に独立して上下に移動でき、円筒プランジャー61の先端部612が電極端子13に対してコンタクトする際に、中針プランジャー62の先端部622が確実に電極端子13に対してコンタクトすることができるようになる。
【0094】
さらに、第2棒部626が、内側コイルスプリング65の内部に収納されているため、内側コイルスプリング65が圧縮されたときや、中針プランジャーが傾いたときに、第2棒部626が内側コイルスプリング65の内側と接触するため、被検査体12の電極端子13と、配線基板15のコンタクトパッド22との間の配線基板の導電経路を確保することができる。
さらに、内端側棒部635が、内側コイルスプリング65の内部に収納されているため、電気的接触子20が撓み、内側コイルスプリング65が傾いたときに、内端側棒部635が内側コイルスプリング65の内側と接触するため、被検査体12の電極端子13と、配線基板15のコンタクトパッド22との間の配線基板の導電経路を確保することができる。
【0095】
(A-3)被検査体12の電極端子13と接触する電気的接触子20の構成
図7は、被検査体12の電極端子13と接触時の電気的接触子20の電極端子側の構成を示す拡大図である。
【0096】
図7(A)は、円筒プランジャー61の先端部612及び中針プランジャー62の先端部622が電極端子13に対して多点接触する様子を説明する説明図である。
【0097】
図7(B)は、円筒プランジャー61の先端部612が被検査体12の電極端子13に接触するときの様子を説明する説明図である。図7(B)では、説明を容易にするために、電極端子13に接触する円筒プランジャー61の先端部612の動きを実際よりも大きく示している。
【0098】
電気的接触子20は、外側コイルスプリング64及び内側コイルスプリング65で形成されているので、コイルスプリング66の柔軟性により、電気的接触子20は電極端子13に対して安定して接触することができる。
【0099】
理想的には、電気的接触子20が電極端子13と接触する際、円筒プランジャー61のクラウン形状の先端部612が電極端子13を覆うようにして接触する。このとき、図7(A)に示すように、中針プランジャー62の針状の先端部622は、ボール形状の電極端子13の頂点を突き刺すように接触する。そうすると、中針プランジャー62は、下方向(配線基板15のコンタクトパッド22側)に相対的に移動するので、中針プランジャー62の筒部接触部623は、円筒プランジャー61の第2筒部613の端部から離れる。つまり、中針プランジャー62は、円筒プランジャー61とは別に独立して上下動に移動することができる。
【0100】
上述したように、円筒プランジャー61のクラウン形状の先端部612がボール形状の電極端子13を覆うようにして接触することが望ましいが、図7(B)に示すように、円筒プランジャー61の先端部612が電極端子13に対してずれた状態で接触することが起こり得る。
【0101】
このとき、電極端子13と接触する円筒プランジャー61が傾いたりすることがある。その場合、円筒プランジャー61のクラウン形状の先端部612の頂点(この実施形態では4つの頂点)うちの一部のみが電極端子13と接触することも起こり得るが、中針プランジャー62の先端部622が電極端子13を突き刺すように接触している状態であれば、電極端子13に対して多点接触が維持でき、中針プランジャー62の先端部622が電極端子13に接触していない場合には、円筒プランジャー61に内側コイルスプリング65と外側コイルスプリング64との弾性力が並列に接続された力が加わるため、電極端子13に対して確実に接触できる。
【0102】
(A-4)導電経路について
図8は、実施形態に係る電気的接触子20の導電経路を説明する説明図である。図8において、太線が導電経路を概念的に表した部分である。
【0103】
円筒プランジャー61に中針プランジャー62を内挿させることにより、円筒プランジャー61の先端部612及び中針プランジャー62の先端部622が電極端子13に接触するため、被検査体側プランジャーは電極端子13に対して多点接触となる。中針プランジャー62の先端部622を起点とする導電経路は、第1棒部621、太径部624、第2棒部626の順に通り、第2棒部626が内側コイルスプリング65と接触している部分の最も内端側で内側コイルスプリング65に繋がる。
また、円筒プランジャー61の先端部612を起点とする導電経路は、円筒プランジャー61を通り、その貫通孔618内面と中針プランジャー62の第1棒部の接触部分、又は、第2筒部613の内端部617と中針プランジャー62の太径部624の筒部接触部623との接触部分から中針プランジャー62に繋がり、その後は上述した中針プランジャー62の先端部622を起点とする導電経路で説明した経路と同様に内側コイルスプリング65に繋がる。
【0104】
上述のいずれかの経路で内側コイルスプリングに繋がった後は、内側コイルスプリング65のコイル内が配線基板側プランジャー63の内端側棒部635と接触している部分の最も内端側で配線基板側プランジャー63に繋がる。配線基板側プランジャー63の内端側棒部635に繋がった後は、その内端側棒部635から先端側棒部631を通って、その先端に繋がる。
【0105】
このように被検査体側プランジャー60が筒状体と針状体との複数の部材から構成され、しかもそれぞれの部材の被検査体12への接触状態や押し込まれ状態が変わる場合であっても、導電経路は太径部624に集約されてから内側コイルスプリング66に繋がるため、導電経路の変化が少なくなり、測定への影響を小さくできる。
【0106】
また、中針プランジャー62の第2棒部626の内端と配線基板側プランジャー63の内端側棒部635の内端とは、互いに接触しないで距離が近づくようになっているため、内側コイルスプリング65の螺旋長の影響による高インダクタンス化を防止することができる。特に、中針プランジャー62の太径部624から第2棒部626の内端までの長さを、太径部624から第1棒部621の先端までの長さ以上にすることにより、第2棒部626の延長部627と内側コイルスプリング65のコイル内との接触が、より延長部627の内端側で接触し易くなり、内側コイルスプリングを通る距離を短くできるため好ましく、太径部624から第2棒部626の内端までの長さを、太径部624から第1棒部621の先端までの長さより長くするとより好ましい。その結果、電気的接続装置11を用いた被検査体12の通電試験の電気的接続を良好とすることができ、精度よく試験することができる。
【0107】
なお、被検査体12の電極端子13と配線基板15のコンタクトパッド22との間の導電経路を確実にするために、電気的接触子20の各構成要素の一部表面に、絶縁膜を被膜するようにしてもよい。例えば、配線基板側プランジャー63と外側コイルスプリング64との接触面に絶縁膜を被膜してもよいし、これに加えて又はこれとは別に、円筒プランジャー61の第2筒部613と外側コイルスプリング64との接触面に絶縁膜を被膜するようにしてもよい。
【0108】
(A-5)実施形態の効果
上述したように、この実施形態によれば、被検査体の電極端子に対して柔軟かつ安定して接触させて、被検査体の電極端子に対する電気的な接続を確実させて、精度よく被検査体の通電試験を行うことができる。
なお、本実施の形態では、電気的接続装置がテストソケットの場合で説明したが、プローブカードや中継基板であることができる。
【符号の説明】
【0109】
11…電気的接続装置、12…被検査体、13…電極端子、15…配線基板、16…下側ハウジング、16A…第1支持孔、16B…下側受け部、17…上側ハウジング、17A…第2支持孔、17B…上側受け部、18…フレーム部、19…ソケット部、22…コンタクトパッド、23…ピン頭部嵌合孔、27…電気的接触子支持孔、28…ピン軸部嵌合孔、31…外枠部、32…固定用フランジ部、33…上下動支持用フランジ部、35…固定部材、37…ガイドピン、38…ピン孔、39…頭部、40…軸部、42…板部、43…ガイドネジ孔、44…スプリング孔、46…ガイドネジ、47…スプリング、48…頭部、49…ガイド部、50…ネジ棒部、51…マイナス溝、53…受入凹部、53A…上側開口、53B…傾斜面、54…フランジ部、55…底板部、56…ガイド孔、57…縮小孔部、58…座刳り部、59…ガイド孔、
20…電気的接触子、60…被検査体側プランジャー、64…外側コイルスプリング、65…内側コイルスプリング、
61…円筒プランジャー、611…第1筒部、612…先端部、614…外側コイル係止部、613…第2筒部、615…突出部、
62…中針プランジャー、621…第1棒部、622…先端部、623…筒部係止部、624…太径部、625…コイル係止部、626…第2棒部、
63…配線基板側プランジャー、631…本体部、632…先端部、633…外側コイル係止部、634…内側コイル係止部、635…棒部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8